(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】電池監視システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20250409BHJP
G08C 15/06 20060101ALI20250409BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20250409BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250409BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250409BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20250409BHJP
【FI】
G01R31/396
G08C15/06 H
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
G01R31/3835
(21)【出願番号】P 2021173211
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 壮耶
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
(72)【発明者】
【氏名】松川 和生
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 善行
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044854(WO,A1)
【文献】特開2004-282441(JP,A)
【文献】特開2019-053579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0086475(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G08C 15/06
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池の電池状態を監視する電池監視システム(100)であって、
電池監視ECU(10)と、
複数の電池監視装置(30)と、を備え、
前記電池監視ECUと複数の前記電池監視装置とは、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続のいずれかの接続形態で接続されており、
かつ前記複数の電池監視装置(30)の各々は一の電池監視装置が他の一の電池監視装置と前段・後段の関係になるように接続されており、
前記電池監視ECUは、
第1クロック信号を生成するクロック生成部(12)と、
前記電池監視装置の少なくとも一つに、前記第1クロック信
号と、前記電池の監視に関する指示とを出力し、前記電池監視装置の少なくとも一つから前記指示の結果を受け取る送受信部(16)と、を備え、
前記電池監視装置は、
前記前段に相当する前記電池監視ECUまたは前記他の一の電池監視装置からの信号を受け取る受信部(42)と、
自身の動作の基準となる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部(50)と、
前記第2クロック信号の周波数を補正する周波数補正部と、
前記第2クロック信号を用いて前記電池を監視する電池監視部(54)と、
前記受信部を介して
前段に相当する前記電池監視ECUまたは前記他の一の電池監視装置から受信した信号に
含まれる前記電池の監視に関する指示が前記第2クロック信号の補正の指示である場合には、前記周波数補正部に前記第2クロック信号の周波数
を前記第1クロック信号
の周波数に同期するよう補正させ、補正後の第2クロック
信号を用いて前記電池監視部に前記監視を行なわせる制御部(48)と、
前記電池の監視結果を
含む信号を出力する送信部(44)と、
前記
第2クロック信号の補正の指示があった場合には、前段から送られた信号
を後段に出力
し、それ以外では前記電池の監視結果を含む信号を後段に出力するように切り替
えを行なう切替部(46)と、
を備える、
電池監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池監視システムであって、
前記電池監視装置の前記切替部は、前記電池監視ECUからの指示を受け、前段から送られた信号を後段に出力する状態に回路構成を切り替える、もしくは、当段で生成された
前記監視結果を含む信号を後段に出力する状態に回路構成を切り替える、電池監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電池監視システムであって、
前記切替部は、前記電池監視ECUからの
前記第2クロック信号の周波数の補の指示を受け、
前記補正の指示を受けている期間については、前段から送られた信号
を後段に出力する状態に回路構成を切り替え、
前記期間以外は、当段で生成された
前記電池の監視結果を含む信号を後段に出力する状態に回路構成を切り替える、電池監視システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電池監視システムであって、
前記周波数補正部は、前段から受信した
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号の周波数のズレを検知し、前記第2クロック信号の周波数を補正する、電池監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電池監視システムであって、
前記周波数補正部は、前段から受信した信号と前記第2クロック信号のカウント差を用いるカウンタ方式、位相ロックループ方式、遅延ロックループ方式のいずれかの方式により前記第1クロック信号と前記第2クロック信号の周波数のズレを検知する、電池監視システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電池監視システムであって、
前記切替部は、前記受信部より前段側、かつ、前記送信部より後段に設けられている、電池監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の電池監視システムであって、
前記送受信部は、前記第1クロック信号の信号レベルを、
前記電池監視装置を通過することによる減衰の大きさと前記前段・後段の組み合わせの数とに基づき、最後段の前記電池監視装置においても検出可能な信号レベルとな
る大きさとして出力する、電池監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電池監視システムであって、
前記送受信部は、前記第1クロック信号のパルス幅を、
前記電池監視装置を通過することによるパルス幅が狭くなる程度と前記前段・後段の組み合わせの数とに基づき、最後段の前記電池監視装置においても検出可能なパルス幅
以上となるパルス幅で出力する、電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池を利用した車両や飛行体のような移動体が増加している。二次電池の電気的特性を測定することによって、二次電池の残量(State of Charge: SOC)を始めとする電池内部の状態を取得する電池監視システム(Battery Management System: BMS)の需要が高まっている。特許文献1には、複数の電池監視ICによって複数の電池を監視し、それら複数の電池監視ICをデイジーチェーン接続した電池監視システムが開示されている。こうした電池監視システムでは、全体の制御を司る電池監視ECUが設けられ、電池監視ECUから、初段の電池監視装置に、指示等が出力されると、デイジーチェーン接続された複数の電池監視装置の各々は、前段から受け取った情報に、自身のデータ等を加えて、後段に向けて送り出す。最終段の電池監視装置は、全ての情報を、電池監視ECUに出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池監視装置のそれぞれは、発振器を備え、その発振周波数を用いて動作しているので、複数の電池監視装置をデイジーチェーン接続して、電池監視装置から動作タイミングに関する高精度なデータを転送しようとすると、精度が維持できない場合があり得た。例えば、各電池監視装置で、交流インピーダンス計測などを行なうケースでは、個々の電池監視装置が計測に用いる周波数の精度を高めるために、電池監視ECUが備える高精度の発振器を利用して、精密なタイミングデータを、電池監視装置に出力することが想定される。この場合、各電池監視装置が、デイジーチェーン接続により、電池監視ECUから受け取ったタイミングデータを後段の電池監視装置に送っていくと、各電池監視装置の受信・送信動作に伴う誤差が重畳され、後段に行くほど、タイミングデータには誤差が累積されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、複数の電池の電池状態を監視する電池監視システム(100)が提供される。この電池監視システムは、電池監視ECU(10)と、複数の電池監視装置(30)と、を備え、前記電池監視ECUと複数の前記電池監視装置とは、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続のいずれかの接続形態で接続されており、かつ前記複数の電池監視装置(30)の各々は一の電池監視装置が他の一の電池監視装置と前段・後段の関係になるように接続されており、前記電池監視ECUは、第1クロック信号を生成するクロック生成部(12)と、前記電池監視装置の少なくとも一つに、前記第1クロック信号と、前記電池の監視に関する指示とを出力し、前記電池監視装置の少なくとも一つから前記指示の結果を受け取る送受信部(16)と、を備え、前記電池監視装置は、前記前段に相当する前記電池監視ECUまたは前記他の一の電池監視装置からの信号を受け取る受信部(42)と、自身の動作の基準となる第2クロック信号を生成する第2クロック生成部(50)と、前記第2クロック信号の周波数を補正する周波数補正部と、前記第2クロック信号を用いて前記電池を監視する電池監視部(54)と、前記受信部を介して前段に相当する前記電池監視ECUまたは前記他の一の電池監視装置から受信した信号に前記第2クロックの補正の指示が含まれる場合には、前記周波数補正部に前記第2クロック信号の周波数を前記第1クロック信号の周波数に同期するよう補正させ、補正後の第2クロックを用いて前記電池監視部に前記監視を行なわせる制御部(48)と、前記電池の監視結果を含む信号を出力する送信部(44)と、前記電池監視ECUからの指示を受けて、前段から送られた信号を後段に出力するか、前記電池の監視結果を含む信号を後段に出力するかの切り替えを行なう切替部(46)と、を備える。この形態の電池監視システムによれば、周波数誤差が蓄積されなくできる。その結果、複数の電池監視装置を備える電池監視システムは、低コストで複数の電池監視装置間の発振周波数を同期できる。
【0007】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、電池監視方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図3】
電池監視システムの制御部が実行する処理フローチャートである。
【
図4】
電池監視装置の制御部が実行する処理フローチャートである。
【
図5】測定モードにおける電池監視ECUの送信信号と、各
電池監視装置の受信信号、送信信号の周期(1/周波数)を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図7】第3実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図8】第4実施形態の電池監視システムの概略構成図である。
【
図9】第5実施形態における補正モードの電池監視ECUが送信する第1重畳信号と、各
電池監視装置が受信し、送信する第1重畳信号を示す説明図である。
【
図10】第6実施形態における補正モードの電池監視ECUが送信する第1重畳信号と、各
電池監視装置が受信し、送信する第1重畳信号を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・第1実施形態:
・・電池監視システム100の構成:
図1に示すように、電池監視システム100は、電池監視ECU10と、複数個(本実施形態ではm個、mは2以上の整数)の電池監視装置30と、を備える。各段の電池監視装置30は、各段の電池組CSx(xは1からmのいずれか)に含まれるn個(nは1以上の整数)の二次電池(以下「電池」と呼ぶ。)の状態を監視する。したがって、電池監視システム100は、複数(本実施形態では、m×n個)の電池C11からCmnの電池状態を監視する。なお、本実施形態では、各段の電池監視装置30が監視する電池の数は、n個と同数であるが、各段の電池監視装置30が監視する電池の数は、異なっていてもよい。
【0010】
電池監視ECU10は、2つの接続部18、20を備えており、各々の電池監視装置30は、それぞれ2つの接続部34、36を備えている。電池監視ECU10と、複数の電池監視装置30とは、リング接続されている。すなわち、電池監視ECU10の一方の接続部18は、伝送路22により1段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。1段目の電池監視装置30の他方の接続部36は、伝送路24により2段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。2段目の電池監視装置30の他方の接続部34は、伝送路25により3段目の電池監視装置30の一方の接続部34と接続されている。以下、最終段まで、前段の他方の接続部36は、当段の一方の接続部34と伝送路により接続されている。最終段であるm段目の電池監視装置30の他方の接続部36は、伝送路26により電池監視ECU10の他方の接続部20と接続されている。このように、電池監視ECU10と、複数の電池監視装置30とは、1つのリングを形成するように、接続されている。
【0011】
詳細については後述するが、電池監視ECU10は、自己が発生する第1クロック信号を基に動作し、電池監視装置30は、自己が発生する第2クロック信号を基に動作する。電池監視装置30は、電池監視ECU10の指示によって切り替えられる補正モードと測定モードの2つの動作モードを有している。補正モードは、第2クロック信号を補正して第1クロック信号に同期させる処理を行う動作モードであり、測定モードは、第2クロック信号を用いて電池の状態を取得する処理を行う動作モードである。
【0012】
補正モードでは、電池監視装置30は、リング接続の前段から第1重畳信号を受信する。第1重畳信号とは、第1クロック信号にクロック周波数情報と電池監視情報とが重畳された信号である。電池監視装置30は、第1重畳信号から第1クロック信号と同じ周波数の参照クロック信号を生成する。電池監視装置30は、自己が発生する第2クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数と同じになるように、第2クロック信号を、参照クロック信号に同期させる。この結果、第2クロック信号は、第1クロック信号に同期される。また、補正モードでは、電池監視装置30は、前段から受信した第1重畳信号をそのまま後段に送信する。
【0013】
一方、測定モードでは、各段の電池監視装置30は、自己が発生させた第2クロック信号を用い、自己の電池監視装置30に接続されている電池組のn個の電池の残量(State of Charge:SOC)を始めとする電池の状態を取得する。電池監視装置30は、第2クロック信号に、1段目から前段までの測定結果と、当段の電池の 状態の測定結果を重畳した第2重畳信号を生成し、後段に送信する。
【0014】
以下、電池監視ECU10と電池監視装置30の構成について説明する。
電池監視ECU10は、第1クロック生成部12と、制御部14と、送受信部16と、上述した接続部18、20を備える。第1クロック生成部12は、電池監視ECU10の動作の基となる第1クロック信号を生成する。第1クロック生成部12は、水晶発振器を用いて、高精度なクロック信号である第1クロック信号を生成する。第1クロック生成部12は、水晶発振器以外の発振器、例えば、シリコンMEMS発振器を用いてもよい。また、第1クロック生成部12は、GNSS衛星からGNSS基準周波数発生器が発生させる信号を受信して、第1クロック信号を生成してもよい。
【0015】
制御部14は、第1クロック信号に、クロック周波数情報と電池監視情報とを重畳させた第1重畳信号を生成し、送受信部16に送る。クロック周波数情報は、第1クロック信号の周波数を示す情報である。電池監視情報は、電池監視装置30が監視すべき電池を特定する情報や、電池監視装置30を第2クロック信号の周波数の補正を実行する補正モードに移行させるか、電池監視装置30に電池を監視させる測定モードに移行させるかを指示するモード切替指示を含む。電池監視情報における監視すべき電池の特定する情報は、どの電池を監視すべきかを示す。監視すべき電池は、特定の組の特定の1個の電池でもよく、特定の組の特定の複数の電池でもよく、特定の組の全部の電池でもよく、全ての組の全ての電池でもよい。
【0016】
第1クロック信号へのクロック周波数情報と電池監視情報の重畳は、例えば、マンチェスタ符号を用いた位相符号化により行われる。電池監視情報の重畳は、マンチェスタ符号を用いた位相符号化以外の方法、例えば、位相変調(Phase shift keying)により行われてもよい。
【0017】
送受信部16は、電池監視装置30の少なくとも一つに、電池の監視に関する指示を出力し、電池監視装置30の少なくとも一つから指示の結果を受け取る。送受信部16は、第1重畳信号から差動信号を生成し、接続部18を介して伝送路22に送信する。差動信号とは、一つの信号を、互いに逆位相の2つの信号とした信号である。電池監視ECU10と電池監視装置30とを接続する伝送路22、26、電池監視装置30と電池監視装置とを接続する伝送路24、25、・・・は、それぞれ2本の信号線を有している。送受信部16は、伝送路22の2本の信号線の一方の信号線に元の信号を、他方の信号線に、一方の信号線の信号にHとLが逆転した逆位相の信号を送る。接続部18は、コンデンサを有しており、送受信部16と伝送路22とをコンデンサを介して接続している。そのため、接続部18は、信号の直流成分を伝送させず、交流成分のみを伝送させる。
【0018】
送受信部16は、また、最終段の電池監視装置30から伝送路26、接続部20を介して、電池監視結果が重畳された第2重畳信号の作動信号を受信し、第2重畳信号を復元する。電池監視結果は、各電池監視装置30が電池監視ECU10から受け取った電池監視情報により、電池の監視処理を実行した結果であり、監視した電池を特定する情報と、監視した電池の状態の測定結果を含んでいる。接続部20は、接続部18と同様に、コンデンサを有しており、伝送路26と送受信部16とをコンデンサを介して接続している。接続部20は、信号の直流成分を伝送させず、交流成分のみを伝送させる。なお、接続部18、20は、コンデンサの他、トランスにより構成されていていてもよい。
【0019】
電池監視装置30は、電池監視IC40と、フィルタ60と、を備える。電池監視IC40は、受信部42と、送信部44と、切替部46と、制御部48と、第2クロック生成部50と、周波数補正部52と、電池監視部54と、上述した接続部34、36と、を備える。接続部34には受信部42が接続され、接続部36には送信部44が接続されている。受信部42と送信部44は、切替部46に接続され、切替部46には、制御部48が接続されている。制御部48には、第2クロック生成部50と、周波数補正部52と、電池監視部54が接続されている。電池監視部54は、フィルタ60を介して電池に接続されている。
【0020】
1段目の電池監視装置30の受信部42は、接続部34、伝送路22、接続部18を介して電池監視ECU10の送受信部16に接続されている。2段目からm段目までの電池監視装置30の受信部42は、それぞれ、接続部34、伝送路24、25・・・、接続部36を介して、前段の電池監視装置30の送信部44に接続されている。m段目の電池監視装置30の送信部44は、接続部36、伝送路26、接続部20を介して、電池監視ECU10の送受信部16に接続されている。
【0021】
受信部42は、前段の装置から作動信号を受信し、重畳信号を復元する。ここで、前段の装置は、制御部48が1段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視ECU10であり、制御部48が2段目からm段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視装置30である。送信部44は重畳信号から作動信号を生成し、後段の装置に送信する。ここで、後段の装置は、制御部48が1段目からm-1段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視装置30であり、制御部48がm段目の電池監視装置30の制御部48であれば電池監視ECU10である。
【0022】
制御部48は、受信部42が受信した重畳信号から、参照クロック信号を生成するとともに、クロック周波数情報と、電池監視情報とを復号する。重畳信号は、第1重畳信号または第2重畳信号のいずれかである。第1重畳信号は、上述したように、電池監視ECU10が、第1クロック信号に、第1クロック信号のクロック周波数情報と、電池監視情報とを重畳させた重畳信号である。一方、第2重畳信号は、後述するが、前段の電池監視装置30が第2クロック信号に、第2クロック信号のクロック周波数情報と、電池監視情報と、電池監視結果とを重畳させた重畳信号である。重畳信号が第1重畳信号になるか、第2重畳信号になるかは、電池監視装置30の位置、及び、前段の電池監視装置30の動作モードによる。電池監視装置30の動作モードが、補正モードと測定モードのいずれかは、電池監視ECU10が指示する。この動作モードの切替については、後述する。
【0023】
1段目の電池監視装置30では、受信する重畳信号は、動作モードに関わらず第1重畳信号である。2段目からm段目の電池監視装置30では、受信する重畳信号は、前段の電池監視装置30が補正モードの時は、第1重畳信号であり、前段の電池監視装置30が測定モードの時は、第2重畳信号である。制御部48は、重畳信号に重畳された電池監視情報のモード切替指示にしたがって、電池監視装置30の動作モードを、補正モードあるいは測定モードに移行させる。補正モードでは、制御部48は、前段から受信した第1重畳信号を後段に送信する。一方、測定モードでは、制御部48は、クロック周波数情報と、電池監視情報と、電池監視結果とを第2クロック信号に重畳させた第2重畳信号を生成し、送信部54を介して生成した第2重畳信号を後段に送信する。
【0024】
参照クロック信号は、受信した重畳信号から重畳前のクロック信号を復元したものである。したがって、1段目の電池監視装置30では、参照クロック信号の周波数は、第1クロック信号と同じであり、2段目からm段目の電池監視装置30では、参照クロック信号の周波数は、前段の電池監視装置30が補正モードの時は、第1クロック信号の周波数と同じとなり、前段の電池監視装置30が測定モードの時は、前段の第2クロック信号の周波数と同じとなる。
【0025】
第2クロック生成部50は、自身の電池監視装置30の動作の基準となる第2クロック信号を発生させる。第2クロック生成部50は、第1クロック生成部12に用いられる水晶発振器に比べ簡易なLC発振器を用いて構成されている。そのため、第2クロック信号は、第1クロック信号と比較すれば低精度のクロック信号となる。第2クロック生成部50は、LC発振器を用いるので、後述する周波数補正部52からの指示により、LC発振器を構成するコンデンサの容量、あるいは、インダクタを構成するインダクタンスを変更することで、発振周波数を変更・補正できる。
【0026】
制御部48は、前段から受信した重畳信号を復号した電池監視情報信号のモード切替指示に従って、当段の電圧測定装置30を補正モードに移行し、あるいは、測定モードに移行する。
【0027】
補正モードでは、制御部48は、周波数補正部52に、第2クロック生成部50が生成する第2クロック信号の周波数が参照クロック信号、ひいては第1クロック信号の周波数と一致するように、第2クロック生成部50が発生させる第2クロック信号を補正させる補正指示を送る。制御部48から補正指示を受けると、周波数補正部52は、前段から受信した信号と第2クロック信号の周波数のズレを検知し、第2クロック生成部50に対し、発生させる第2クロック信号の発振周波数を補正させる。周波数補正部52は、第2クロック信号を補正する際の補正方式として、制御部48が重畳信号から生成した参照クロック信号と、第2クロック生成部50が生成した第2クロック信号とのカウント差を用いるカウンタ方式を用いる。周波数補正部52は、カウンタ差がゼロとなるように第2クロック生成部50の発振周波数を補正させる。また、補正モードでは、制御部48は、切替部46に対し、前段から受信した重畳信号を後段に伝送するように通信経路を切り替えさせる。
【0028】
測定モード時には、制御部48は、電池監視部54に対し、電池監視情報により指定された電池を監視させ、電池の状態の測定結果を取得する。電池監視部54は、電池の状態を、第2クロック信号を用いた交流インピーダンス法により取得する。なお、制御部48は、電池監視部54に対し、常時、電池の状態を監視させておき、電池監視情報に、指定された電池があった場合に、電池監視部54から当該電池の状態の測定結果を取得してもよい。制御部48は、クロック周波数情報と、電池監視情報と、監視した電池の状態の測定結果と、を第2クロック信号に重畳させて第2重畳信号を生成し、第2重畳信号を切替部46に送る。制御部48は、切替部46に対し、生成した第2重畳信号を送信部54に伝送するように通信経路を切り替えさせる。
【0029】
切替部46は、受信部42、送信部44と、制御部48との間に配置されている。切替部46は、電池監視ECU10と複数の電池監視装置30の間の接続形態を維持したまま送信部44に送る信号を、前段から受信した重畳信号、すなわち、受信部42からの信号とするか、制御部48からの第2重畳信号とするか、を切り替える。切替部46は、補正モードでは、送信部44に送る信号を、前段から受信した重畳信号とする。一方、測定モードでは、送信部44に送る信号を、制御部48からの第2重畳信号とする。
【0030】
図2は、切替部46の構成を示す説明図である。切替部46は、2つの入力部in1、in2と、2つの出力部out1、out2と、セレクタ47とを備える。入力部in1は、受信部42に接続され、入力部in2と出力部out1は、制御部48に接続されている。出力部out2は、送信部44に接続されている。受信部42から入力in1に入力された信号は、2つに分岐し、一方は、そのまま出力部out1に出力され、制御部48に送られる。入力in1に入力され、分岐した信号の他方は、セレクタ47に入力される。制御部48から入力in2に入力された信号は、セレクタ47に入力されている。セレクタ47から出力された信号は、出力部out2から出力され、送信部44に送られる。切替信号Ssは、制御部48が生成し、切替部46に入力される。例えば、切替信号Ssは補正モードでは、「H」レベルであり、測定モードでは、「L」レベルである。切替信号Ssが「H」レベルのとき、セレクタ47は、入力in1から入力された重畳信号を出力する。一方、切替信号Ssが「L」レベルのとき、セレクタ47は、制御部48からの第2重畳信号を出力する。
【0031】
・・
電池監視システム100の動作:
図3は、
電池監視システム100の制御部14が実行する処理フローチャートである。ステップS10では、
電池監視ECU10の制御部14は、全ての
電池監視装置30に対し、補正モードへの移行を指示する。具体的には、
電池監視ECU10の制御部14は、モード切替指示として、
電池監視装置30を、第2クロック信号の周波数の補正を実行する補正モードに移行させる指示を含む電池監視情報が重畳された第1重畳信号を1段目の
電池監視装置30に伝送する。この第1重畳信号は、1段目の
電池監視装置30が補正モードに移行すると、1段目の
電池監視装置30の切替部46は、前段からの重畳信号を後段に伝送するように、切り替えられる。その結果、第1重畳信号は、2段目の
電池監視装置30に伝送される。同様に、2段目の
電池監視装置30が補正モードに移行すると、2段目の
電池監視装置30の切替部46は、前段からの重畳信号を後段に伝送するように、切り替えられる。その結果、第1重畳信号は、3段目の
電池監視装置30に伝送される。以下同様に、第1重畳信号は、順次、後段の
電池監視装置30に伝送される。最終段の
電池監視装置30から
電池監視ECU10に第1重畳信号が戻ると、全ての
電池監視装置30の補正モードへの移行が完了する。
【0032】
ステップS20では、制御部14は、全ての電池監視装置30において、第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数に同期し、補正が完了した真(T)と判断すると処理をステップS30に移行する。ステップS20において、制御部14が第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数に同期せず、補正が完了していない偽(F)と判断すると、真(T)と判断されるまでステップS20の処理を繰り返す。なお、第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数に同期するには、一定時間がかかる。したがって、制御部14は、最終段の電池監視装置30から電池監視ECU10に第1重畳信号が戻ってから一定時間経過するまでは、ステップS20の判断を偽(F)と判断し、その後、ステップS20の判断を真(T)とすればよい。
【0033】
ステップS30では、制御部14は、全ての電池監視装置30に対し、測定モードへの移行を指示する。具体的には、電池監視ECU10の制御部14は、モード切替指示として電池監視装置30に電池を監視させる測定モードに移行させる指示を含む電池監視情報が重畳された第1重畳信号を1段目の電池監視装置30に伝送する。1段目の電池監視装置30が測定モードに移行すると、1段目の電池監視装置30の制御部48が生成した第2重畳信号が2段目の電池監視装置30に伝送され、2段目の電池監視装置30が測定モードに移行すると、2段目の電池監視装置30の制御部48が生成した第2重畳信号が2段目の電池監視装置30に伝送されるように、順次後段の電池監視装置30に第2重畳信号が伝送される。最終段の電池監視装置30から電池監視ECU10に第2重畳信号が戻ると、全ての電池監視装置30が測定モードに移行する。ステップS40では、制御部14は、第2重畳信号を復号して、監視した電池の状態を取得する。
【0034】
図4は、
電池監視装置30の制御部48が実行する処理フローチャートである。ステップS100では、制御部48は、受信部42を通して、前段の装置から重畳信号を受信する。ここで、前段の装置は、
電池監視装置30が1段目の
電池監視装置の場合は、
電池監視ECU10であり、
電池監視装置30が2段目からm段目の
電池監視装置の場合は、
電池監視装置30である。
【0035】
ステップS110では、制御部48は、受信した重畳信号から、参照クロック信号を生成する。また、ステップS120では、制御部48は、重畳信号を復号して、クロック周波数情報と、電池監視装置30を補正モードに切り替えるべきか、測定モードに切り替えるべきかのモード切替指示を取得する。なお、制御部48は、ステップS110、S120のどちらを先に実行してもよい。ステップS130では、制御部48は、モード切替指示が、電池監視装置30を補正モードに切り替えるべき旨の指示か否かを判断する。制御部48は、モード切替指示が、電池監視装置30を補正モードに切り替えるべき旨の指示である真の場合(T)には、処理をステップS140に移行する。一方、モード切替指示が、電池監視装置30を補正モードに切り替えるべき旨の指示でない偽の場合(F)には、モード切替指示が電池監視装置30を測定モードに切り替えるべき旨の指示であり、処理をステップS170に移行する。
【0036】
ステップS140では、制御部48は、電池監視装置30を補正モードに移行し、切替信号Ssを、「H」レベルとする。ステップS150では、制御部48は、周波数補正部52に対し、第2クロック生成部50が発生させる第2クロック信号の周波数を補正させる。ステップS160では、制御部48は、切替部46に、前段から受信した重畳信号を後段に伝送させる。これにより、第1重畳信号が、次段の電池監視装置30に伝送される。
【0037】
全ての電池監視装置30の第2クロック信号が補正され、第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数と同期した場合には、電池監視ECU10は、電池監視装置30を測定モードに移行させる。
【0038】
電池監視ECU10が電池監視装置30を測定モードに移行させる場合の、電池監視装置30におけるステップS100~S130の処理は、同じである。しかし、ステップS130における判断結果が偽(F)であるため、電池監視装置30は、処理をステップS170に移行する。
【0039】
ステップS170では、制御部48は、電池監視装置30を測定モードに移行し、切替信号Ssを、「L」レベルとする。ステップS180では、制御部48は、電池監視部54に電池の状態を取得させる。ステップS190では、制御部48は、クロック周波数情報と、電池監視装置30を測定モードに切り替えるべき旨の指示と、電池監視情報とを、監視結果である電池の状態と、を第2クロック信号に重畳させた第2重畳信号を生成する。なお、監視結果である電池の状態は、順次付加されていく。すなわち、1段目の電池監視装置30で生成される第2重畳信号には、第1組CS1の電池の監視結果が含まれ、2段目での電池監視装置30で生成される第2重畳信号には、第1段Cs1と第2段CS2の電池の監視結果が含まれる。x段目の電池監視装置30で生成される第2重畳信号には、第1段Cs1からx段目Cx1までの電池の監視結果が含まれる。ステップS200では、制御部48は、切替部46に、第2重畳信号を後段に伝送させる。これにより、当段までの測定結果が重畳された第2重畳信号が、次段の電池監視装置30に伝送される。
【0040】
図5は、測定モードにおける電池監視ECU10の送信信号と、各
電池監視装置30の受信信号、送信信号の周期(1/周波数)を示す説明図である。
電池監視装置30の制御部48が本実施形態における補正を実施しない場合、
電池監視ECU10が送信する第1重畳信号(第1クロック信号)の周期をp0とすると、1段目の
電池監視装置30の受信部42が受信する第1重畳信号(第1クロック信号)の周期もp0となる。1段目の
電池監視装置30の送信部44が送信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期p1は、電池監視ECU10の周期p0に誤差 pc を加えたp0+pc となる。2段目の
電池監視装置30の受信部42が受信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期もp0+pcとなる。2段目の
電池監視装置30の送信部44が送信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期p2は、1段目の電池監視装置30の周期p1に誤差 pc を加えたp1+pc、すなわち、p0+2pc となる。したがって、x段後の周期pxは、p0+xpcとなり、後段ほど誤差が蓄積し、最終段であるm段目で最大の誤差となる。
【0041】
これに対し、電池監視装置30の制御部48が本実施形態における補正を実行した場合、1段目の電池監視装置30の送信部44が送信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期p1は、電池監視ECU10の第1重畳信号(第1クロック信号)の周期p0と同じになる。また、2段目の電池監視装置30の受信部42が受信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期、及び、2段目の電池監視装置30の送信部44が送信する第2重畳信号(第2クロック信号)の周期も、電池監視ECU10の第1重畳信号(第1クロック信号)の周期p0と同じになる。このように、全ての電池監視装置30の第2クロックの周期、すなわち、周波数は、第1クロック信号の周期、周波数と同一となり、周波数誤差が蓄積しない。なお、「同一」とは、電池監視装置30による補正上の誤差を含む。
【0042】
以上、本実施形態によれば、電池監視装置30は、電池監視ECU10からの指示を受けて、前段から送られた信号を、第2クロック信号を用いることなく、後段に出力する状態に回路構成を切り替える切替部46を備える。その結果、電池監視システム100は、低コストで、周波数誤差の拡大を抑制し、周波数を同期できる。
【0043】
本実施形態によれば、切替部46は、あらかじめ定められた期間のみ前段から送られた信号を、後段に出力する状態に回路構成を切り替え、あらかじめ定められた期間以外は、当段で生成された信号を後段に出力する状態に回路構成を切り替える。その結果、あらかじめ定められた期間以外において、当段で監視された電池の状態を電池監視ECU10に送ることができる。
【0044】
本実施形態によれば、電池監視装置30は、参照クロック信号(第1クロック信号)と第2クロック信号の周波数のズレを検知し、第2クロック信号の周波数を補正する周波数補正部52を備えるので、第2クロック信号の周波数が第1クロック信号の周波数に近づくように、第2クロック信号の周波数を補正できる。
【0045】
本実施形態によれば、周波数補正部52は、様々な方式により、第1クロック信号と前記第2クロック信号の周波数のズレを検知できる。例えば、周波数補正部52が第1クロック信号と第2クロック信号のカウント差を用いるカウンタ方式を用いれば、カウント差により、簡単に周波数のズレを検知できる。また、周波数補正部52は位相ロックループ方式、遅延ロックループ方式を採用してもよい。
【0046】
本実施形態によれば、受信部42、送信部44の制御部48側に切替部46を備えるので、切替部46を通過した信号の強度を、送信部44により強くできる。
【0047】
・第2実施形態:
図6は、第2実施形態の電池監視システム101の概略構成図である。第1実施形態では、
電池監視装置30は、切替部46を、受信部42、送信部44と、制御部48との間に備えているが、第2実施形態の電池監視システム101では、
電池監視装置31は、切替部46を、接続部34、36と、受信部42、送信部44の間に備える点で相違する。しかし、第2実施形態においても、第1実施形態と動作は同じであり、第1実施形態と同様に、低コストで、周波数誤差の拡大を抑制し、第2クロック信号の周波数を同期できる。
【0048】
・第3実施形態:
図7は、第3実施形態の電池監視システム102の概略構成図である。第3実施形態の電池監視システム102では、電池監視装置32は、受信部42と送信部44に変えて送受信部43を備えており、
電池監視ECU10と、複数の
電池監視装置32は、デイジーチェーン接続されている点で第1実施形態の
電池監視システム100と相違する。電池監視装置32は、2つの接続部34、36を備えているが、最後段であるm段目の電池監視装置32の接続部36には、終端装置28が接続されている。なお、送受信部43の構成によっては、接続部36に、終端装置28が接続されていなくてもよい。第1実施形態では、接続部34が入力部、接続部36が出力部として用いられたが、第3実施形態では、接続部34が入力部、接続部36が出力部として機能するが、接続部36が入力部、接続部34が出力部としても機能するように切り替え可能である。補正モード時には、第1実施形態と同様に第1重畳信号が、1段目の
電池監視装置32から最終段の
電池監視装置32まで順に伝送される。第3実施形態においても、第1実施形態と補正モードの動作は同じであり、第1実施形態と同様に、低コストで、周波数誤差の拡大を抑制し、周波数を同期できる。なお、測定モード時には、測定結果が重畳された第2重畳信号が最終段の
電池監視装置32に伝送された後に伝えられた後、最終段の
電池監視装置32から逆順に1段目の
電池監視装置32に伝送され、電池監視ECU10に伝送される。
【0049】
・第4実施形態:
図8は、第4実施形態の電池監視システム103の概略構成図である。第4実施形態の電池監視システム103では、電池監視ECU11に対し、複数の電池監視装置33がマルチドロップ接続されている。電池監視ECU11の送受信部16は、接続部18を介して伝送路27に接続されている。各々の電池監視装置33において、受信部42と送信部44は、1つの接続部34に接続されており、接続部34は、伝送路27に接続されている。
【0050】
第4実施形態の電池監視システム103においては、電池監視ECU11からの信号は、接続部18、伝送路27を介して1段目の電池監視装置33の受信部42に伝えられる。1段目の電池監視装置33から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して次段である2段目の電池監視装置33の受信部42に伝えられる。以下同様に、x段の電池監視装置33から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して次段である第(x+1)段の電池監視装置33の受信部42に伝えられる。最終段のm段目の電池監視装置33から出力される信号は、送信部44から接続部34、伝送路27を介して電池監視ECU11の送受信部16に伝えられる。この様に、各電池監視装置30は、同一の伝送路27を用いて重畳信号を順次伝送する。伝送に関しては、トークンを用いて、各電池監視装置30が順次伝送路27の使用権をもって、後段へ重畳信号を伝送する。
【0051】
第4実施形態においても、第1実施形態と動作は同じであり、第1実施形態と同様に、低コストで、周波数誤差の拡大を抑制し、周波数を同期できる。
【0052】
以上、第1実施形態から第4実施形態からわかるように、電池監視ECUと複数の電池監視装置の接続形態は、リング接続、デイジーチェーン接続、マルチドロップ接続など様々な接続形態が可能である。
【0053】
・第5実施形態:
図9は、第5実施形態における補正モードの電池監視ECU10が送信する第1重畳信号と、各
電池監視装置30が受信し、送信する第1重畳信号を示す説明図である。第1重畳信号が切替部46のセレクタ47を通過する際にセレクタ47のオン抵抗により電圧が低下する。第5実施形態における電池監視ECU10は、どの
電池監視装置30の受信部42でも受信可能な信号レベルを超えるように、第1重畳信号の信号レベルを、高く設定する。その結果、第1重畳信号の信号レベルは、各段の
電池監視装置30を通るごとに低下するが、最終段の
電池監視装置30の受信部42においても、信号レベルを検知可能となる。
【0054】
・第6実施形態:
図10は、第6実施形態における補正モードの電池監視ECU10が送信する第1重畳信号と、各
電池監視装置30が受信し、送信する第1重畳信号を示す説明図である。第1重畳信号が切替部46のセレクタ47を通過する際にセレクタ47におけるH、Lの判定閾値により、パルス幅が狭くなる。第6実施形態における電池監視ECU10は、どの
電池監視装置30の受信部42でも検出可能なパルス幅レベルを超えるように、第1重畳信号のパルス幅を幅広く設定する。その結果、第1重畳信号のパルス幅は、各段の
電池監視装置30を通るごとに狭くなるが、最終段の
電池監視装置30の受信部42においても、パルスを検知可能となる。
【0055】
上記各実施形態では、電池監視部54は、補正後の第2クロックを用いて電池を監視しているが、第2クロックを用いない監視も行なってもよく、補正しない第2クロックを用いた監視を行なってもよい。
【0056】
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10、11…電池監視ECU、12…第1クロック生成部、14…制御部、16…送受信部、18、20…接続部、22、24、25、26、27…伝送路、28…終端装置、30、31、32、33…電池監視装置、34、36…接続部、40…電池監視IC、42…受信部、43…送受信部、44…送信部、46…切替部、47…セレクタ、48…制御部、50…第2クロック生成部、52…周波数補正部、54…電池監視部、60…フィルタ、100、101、102、103…電池監視システム