IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

特許7663478差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法
<>
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図1
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図2
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図3
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図4
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図5
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図6
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図7
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図8
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図9
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図10
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図11
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図12
  • 特許-差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20250409BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20250409BHJP
   G11C 7/06 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
H03F3/34 220
H03F3/45 210
G11C7/06 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021181109
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069328
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】下井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】中野 全也
(72)【発明者】
【氏名】三谷 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】金田 義宣
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-72863(JP,A)
【文献】特開2005-102108(JP,A)
【文献】特開2020-113347(JP,A)
【文献】特表2017-511949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
G11C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動増幅器であって、
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と、
前記第2の電源に接続されており、前記オフセットキャンセル動作を開始する前に、前記入力端子対を前記第2の電源の電位に初期化する初期化回路と
当該差動増幅器の状態が、スタンバイ状態、オフセットキャンセル動作状態、センス動作状態、前記スタンバイ状態の順に切り替わるように、当該差動増幅器を構成する回路または素子を制御する状態制御回路と、を備え、
前記初期化回路は、前記スタンバイ状態の期間中に前記入力端子対を前記第2の電源の電位に初期化し、前記スタンバイ状態とは異なる状態の期間では、前記入力端子対と切り離され、
前記電流制御回路は、前記オフセットキャンセル動作状態の期間では、前記電流源が供給可能な電流を前記第2の電流となるように制御し、前記センス動作状態の期間では、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流となるように制御する、
差動増幅器。
【請求項2】
差動増幅器であって、
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と、
前記第2の電源に接続されており、前記オフセットキャンセル動作を開始する前に、前記入力端子対を前記第2の電源の電位に初期化する初期化回路と
当該差動増幅器の状態が、スタンバイ状態、オフセットキャンセル動作状態、センス動作状態、前記スタンバイ状態の順に切り替わるように、当該差動増幅器を構成する回路または素子を制御する状態制御回路と、
前記オフセットキャンセル動作状態の期間に、前記負荷素子対に流れる電流の総和を、前記第1の電流の50%~150%の電流となるように制御する負荷制御回路と、を備える、
差動増幅器。
【請求項3】
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と
電流が流れる素子対
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記負荷素子対が、前記素子対とともにカレントミラー回路を構成するよう、前記負荷素子対の接続先を切り替える負荷制御回路と、を備える、
差動増幅器。
【請求項4】
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と
前記外部入力端子対に第5の電源を接続させ、前記外部入力端子対を前記第5の電源の電位にプリチャージするプリチャージ回路と、を備え、
前記プリチャージ回路によりプリチャージ動作が行われている期間に、前記オフセットキャンセル動作を行わせ、
次に、前記オフセットキャンセル動作を停止させ、
前記オフセットキャンセル動作の停止以降に、前記プリチャージ動作を停止させて前記外部入力端子対のディスチャージ動作を開始させ、
前記出力信号対に基づく出力の読出し動作の開始を可能にする、
差動増幅器。
【請求項5】
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、
前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と
前記外部入力端子対に第5の電源を接続させ、前記外部入力端子対を前記第5の電源の電位にプリチャージするプリチャージ回路と、を備え、
前記プリチャージ回路によりプリチャージ動作が行われている期間に、前記オフセットキャンセル動作を行わせ、
前記オフセットキャンセル動作の期間中に、前記プリチャージ動作を停止させて前記外部入力端子対のディスチャージ動作を開始させ、
前記ディスチャージ動作の開始後に、前記オフセットキャンセル動作を停止させ、
前記出力信号対に基づく出力の読出し動作の開始を可能にする、
差動増幅器。
【請求項6】
請求項5に記載の差動増幅器において、
前記プリチャージ回路は、
前記容量素子対と前記外部入力端子対との間に接続された第2のスイッチング素子対と、
前記容量素子対と前記第2のスイッチング素子対との接続点対と前記第5の電源との間に接続された第3のスイッチング素子対と、
前記第2のスイッチング素子対と前記外部入力端子対との接続点対と第6の電源との間に接続された第4のスイッチング素子対と、を備え、
前記第2のスイッチング素子対が不活性化され、前記第3および第4のスイッチング素子対が活性化された状態から、第4のスイッチング素子対が不活性化された状態に移行させることにより、前記プリチャージ動作を停止させ、前記ディスチャージ動作を開始させる、
差動増幅器。
【請求項7】
請求項に記載の差動増幅器において、
前記電流制御回路は、前記オフセットキャンセル動作を行う際に、電流供給の経路が前記第1の電源とは異なる第3の電源を前記電流源に接続する、
差動増幅器。
【請求項8】
請求項に記載の差動増幅器において、
前記外部入力端子対に、電源電圧が前記第1の電源より高い第4の電源を接続させ、前記外部入力端子対を前記第4の電源の電位にプリチャージするプリチャージ回路を備える、
差動増幅器。
【請求項9】
請求項に記載の差動増幅器において、
前記第2の電源の電源電圧は、当該差動増幅器の接地電圧である、
差動増幅器。
【請求項10】
複数のメモリセルと、
複数の前記メモリセルの中から1つを選択する選択回路と、
参照信号を生成して参照信号線に出力する参照信号生成器と、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の差動増幅器とを備え、
前記差動増幅器の前記外部入力端子対の一方の端子に、前記選択回路により選択された前記メモリセルのビット線が接続され、前記外部入力端子対の他方の端子に、前記参照信号線が接続される、
半導体装置。
【請求項11】
差動増幅器の入力端子対のオフセット電圧をキャンセルするオフセットキャンセル方法であって、
前記差動増幅器は、
供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、
前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、
電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、
外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、
電流が流れる素子対と、
負荷制御回路と、を備え、
前記差動増幅器は、前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うステップと、
前記差動増幅器は、前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御するステップと、
前記負荷制御回路は、前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記負荷素子対が、前記素子対とともにカレントミラー回路を構成するよう、前記負荷素子対の接続先を切り替えるステップと、を備える、
オフセットキャンセル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動増幅器、半導体装置、およびオフセットキャンセル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置におけるメモリからのデータ読出しは、メモリセルに保持されたデータを基準電位からの微弱な電位差に変換させ、この電位差を差動増幅器(センスアンプ)によって差動増幅することにより行われる。一方、差動増幅器はオフセット電圧が発生しないように対称性を考慮して設計されるが、差動増幅器を構成するペアトランジスタの特性は製造上のばらつきがあり、差動増幅器の入力端子対にオフセット電圧が僅かながら存在する。このオフセット電圧の存在は、差動増幅器への上記電位差の正確な入力を妨げ、データの読み出し誤りにつながるため、オフセット電圧による影響は極力抑える必要がある。
【0003】
差動増幅器のオフセット電圧による影響を抑える手段として、例えば、特許文献1に記載されたデジタル式オフセットキャンセル機構が知られている。このデジタル式オフセットキャンセル機構は、オフセット電圧の検出結果をラッチ回路に保持させ、ラッチ回路の動作により補償用の定電流源をオンオフさせてオフセットを補償する機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-086111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のデジタル式オフセットキャンセル機構では、オフセット電圧の補償精度を上げるのに、ラッチ回路および定電流源の数を増やす必要がある。この場合、ラッチ回路等の数に応じて回路面積が増大するだけでなく、製品出荷時にオフセット電圧の補償に要する時間が長くなりテストコストが増大する。そのため、市場におけるデータ読出しの更なる高速化への要求に応えることが難しくなってきている。
【0006】
上記事情により、差動増幅器のオフセット電圧の影響を抑制しつつ、データ読出しの高速化を図ることができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態による差動増幅器は、供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、前記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、電源電圧が前記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、前記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、外部入力端子対と前記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、前記出力端子対と前記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、前記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を前記容量素子対に生じさせるように前記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対と、前記オフセットキャンセル動作を行う際に、前記電流源の供給可能な電流を前記第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御する電流制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によれば、差動増幅器のオフセット電圧の影響を抑制しつつ、データ読出しの高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】半導体記憶装置の構成を模式的に示す図である。
図2】基準技術によるセンスアンプの構成を示す図である。
図3】基準技術によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。
図4】実施形態1によるセンスアンプの構成を示す図である。
図5】実施形態1によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。
図6】オフセットキャンセル動作を説明するための図である。
図7】プリチャージ動作を説明するための図である。
図8】センス動作を説明するための図である。
図9】実施形態2によるセンスアンプの構成を示す図である。
図10】実施形態2によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。
図11】実施形態3によるセンスアンプの構成を示す図である。
図12】ディスチャージ時間とセンスアンプ入力電圧差との関係を示す図である。
図13】センスアンプの動作時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これより、実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、本願発明を実現するための一例であり、本願発明の技術範囲を限定するものではない。また、以下の各実施形態において、同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0011】
本願の適用範囲は、特定の半導体装置に限定されるものではなく、センスアンプ(差動増幅器)を用いてデータの読出しを行う種々の半導体装置に適用可能である。ここでは、一例として本願が半導体記憶装置に適用された場合について説明する。
【0012】
〈半導体記憶装置の構成〉
半導記憶装置の構成について説明する。
【0013】
図1は、半導体記憶装置の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、半導体記憶装置1は、メモリアレイ2、複数のアンプブロック3、アドレスデコーダ4、ワード線ドライバ5、およびタイミングコントローラ6を備えている。
【0014】
メモリアレイ2は、多数のメモリセルMC11~MCnmが2次元マトリクス状に配置されたメモリセル群である。1列に配置された複数のメモリセルに対して、1つのビット線対が接続されている。また、1行に配置された複数のメモリセルに対して、1つのワード線が接続されている。データを読み出すメモリセルは、そのメモリセルのビット線対が選択され、そのメモリセルのワード線が選択されることにより特定される。メモリアレイ2は、複数のメモリブロックに分けて管理される。メモリブロックは、一定数列に配置されている複数のメモリセルの集まりである。
【0015】
アンプブロック3は、複数あり、1つのアンプブロック3が1つのメモリブロックを担当する。各アンプブロック3は、それぞれ、カラムデコーダ7、センスアンプ8、および参照信号生成器9を有している。
【0016】
アドレスデコーダ4は、カラムデコーダ7およびワード線ドライバ5と接続されており、データの読出しを行う目的のメモリセルを選択するために、カラムデコーダ7とワード線ドライバ5とを制御する。
【0017】
カラムデコーダ7は、複数のビット線と接続されている。カラムデコーダ7は、アドレスデコーダ4からの制御を受けて、複数のビット線の中から目的のメモリセルに接続されたビット線を選択する。
【0018】
ワード線ドライバ5は、複数のワード線と接続されている。ワード線ドライバ5は、アドレスデコーダ4からの制御を受けて、複数のワード線の中から目的のメモリセルに接続されたワード線を選択する。ワード線ドライバ5は、目的のメモリセルからデータを読み出す際に、選択されているワード線をアクティブにし、カラムデコーダ7により選択された、目的のメモリセルのビット線を、センスアンプ8のデータ入力経路DIN1に接続する。
【0019】
参照信号生成器9は、参照信号線REFを有しており、参照信号線REFに参照電圧Vrefを出力している。参照電圧Vrefは、目的のメモリセルに記憶されているデータを読み出す際に、目的のメモリセルのビット線BLから読み取られた電流信号と比較する参照用電流信号を生成するために用いられる。参照信号線REFは、センスアンプ8のデータ入力経路DIN2に接続される。
【0020】
タイミングコントローラ6は、センスアンプ8と接続されている。タイミングコントローラ6は、センスアンプ8を動作させるための信号群MSrをセンスアンプ8に出力する。タイミングコントローラ6は、信号群MSrを構成する各信号を、「H(ハイ)」レベル、「L(ロー)」レベル、あるいは、「H」と「L」との間のレベルに相当する電圧で出力し、これらの出力の切替えタイミングを制御する。
【0021】
センスアンプ8は、差動増幅回路(図1では図示なし)を内蔵している。センスアンプ8は、カラムデコーダ(カラムセレクタともいう)7と接続されており、また参照信号生成器9と接続されている。カラムデコーダ7によって選択された目的のメモリセルに接続されているビット線BLが、差動増幅回路のデータ入力経路DIN1と接続される。また、参照信号生成器9の参照信号線REFが、差動増幅回路のデータ入力経路DIN2と接続される。センスアンプ8は、タイミングコントローラ6とも接続されている。センスアンプ8は、タイミングコントローラ6からセンスアンプ8を動作させるために必要な信号群MSrについて、その信号をどのタイミングでどのレベルにするかの制御を受ける。
【0022】
(基準技術)
基準技術によるセンスアンプについて説明する。この基準技術によるセンスアンプは、後述する各実施形態の構成に対する基準(ベース)ないし比較例となるセンスアンプである。
【0023】
〈基準技術によるセンスアンプの構成〉
図2は、基準技術によるセンスアンプの構成を示す図である。図2に示すセンスアンプ8Aは、CMOSカレントミラー形差動センスアンプである。また、センスアンプ8Aは、オフセット電圧を補償する電圧が保持される容量素子、すなわちキャパシタが入力段に設けられたセンスアンプの一例である。なお、オフセット電圧は、センスアンプの入力段に接続されたペアトランジスタの特性の違いに起因して生じる電圧である。本実施形態において、オフセット電圧は、ペアトランジスタの一方が「オン」するのに必要なゲートのしきい値電圧と、同ペアトランジスタの他方が「オン」するのに必要なゲートのしきい値電圧との差分の電圧をいう。
【0024】
図2に示すように、センスアンプ8Aは、PMOSトランジスタ11~16、NMOSトランジスタ17~18、キャパシタ19,20、スイッチ21~22、差動アンプ23を含む。センスアンプ8Aには、電源VDD1が接続される。図2では、特徴的な電流の流れを破線の矢印で示している。
【0025】
なお、本明細書中においては、電源VDDn(n=整数)は、電圧がVDDnである電源を示し、電源VCCn(n=整数)は、電圧がVCCnである電源を示す。また、各実施形態において、電圧VDDn=電圧VDDとし、電圧VCCn=電圧VCCとする。電源VSSは、電源電圧が電源VDDnより低く、例えばセンスアンプの接地電圧である。
【0026】
PMOSトランジスタ11,13、およびNMOSトランジスタ17は、電源VDD1の経路と電源VSSの経路との間に、直列に接続されている。また、PMOSトランジスタ12,14、およびNMOSトランジスタ18は、電源VDD1の経路と電源VSSの経路との間に、直列に接続されている。電源VSSの電源電圧は、一般的に電源VDD1の電源電圧より低く、例えば、センスアンプ8Aの接地電圧である。
【0027】
なお、PMOSトランジスタ11,12は、センスアンプ8AのPチャネル側のペアトランジスタを形成し、NMOSトランジスタ17,18は、センスアンプ8AのNチャネル側のペアトランジスタを形成する。
【0028】
PMOSトランジスタ13のゲートとPMOSトランジスタ14のゲートとは、ともに信号SAENを受ける。信号SAENが「H」レベルである場合、PMOSトランジスタ13,14は「オフ」になり、PMOSトランジスタ13,14より動作電圧的に上方(以下、単に「上方」ということがある)の回路とPMOSトランジスタ13,14より動作電圧的に下方(以下、単に「下方」ということがある)の回路とが切り離される。すなわち、これらの回路による差動増幅器としての動作は停止する。逆に、信号SAENが「L」レベルである場合、PMOSトランジスタ13,14は「オン」になり、PMOSトランジスタ13,14より上方の回路とPMOSトランジスタ13,14より下方の回路とが接続される。すなわち、これらの回路は差動増幅器として機能する。
【0029】
NMOSトランジスタ17のゲートとNMOSトランジスタ18のゲートとは共通のノードにて接続されている。ここでは、この接続点をノードNG0とする。NMOSトランジスタ17のゲートとソースとは接続されている。これにより、NMOSトランジスタ17,18は、カレントミラーの構成を形成する。
【0030】
PMOSトランジスタ11,12のソース同士は共通のノードにて接続されている。この接続点をノードCOMとする。ノードCOMには、テール電流源TCSを介して、電源VDD1の経路が接続されている。テール電流源TCSは、流せる電流量に制限があり、最大の電流はテール電流Ibiasである。
【0031】
キャパシタ19は、ビット線BLが接続されているデータ入力経路DIN1と、PMOSトランジスタ11のゲートとの間に接続されている。PMOSトランジスタ15は、電源VDD2(本願における「第5の電源」の一例)の経路と、ビット線BLに接続されるデータ入力経路DIN1との間に接続され、そのゲートは信号OCENを受ける。キャパシタ20は、参照信号線REFが接続されているデータ入力経路DIN2と、PMOSトランジスタ12のゲートとの間に接続されている。PMOSトランジスタ16は、電源VDD2の経路と、参照信号線REFに接続されるデータ入力経路DIN2との間に接続され、そのゲートは信号OCENを受ける。
【0032】
ノードOT1は、PMOSトランジスタ13とNMOSトランジスタ17とを接続するノードである。ノードOT2は、PMOSトランジスタ14とNMOSトランジスタ18とを接続するノードである。
【0033】
スイッチ21は、PMOSトランジスタ11のゲートに接続されているノードPG1とノードOT1との間に接続され、そのイネーブル端子は、信号OSENを受ける。スイッチ22は、PMOSトランジスタ12のゲートに接続されているノードPG2とノードOT2との間に接続され、そのイネーブル端子は、信号OSENを受ける。スイッチ21、22は、そのイネーブル端子が受ける信号OSENが「L」レベルの場合に「オン」すなわち導通する。
【0034】
差動アンプ23の一方の入力端子は、PMOSトランジスタ13とNMOSトランジスタ17との間のノードOT1に接続されている。差動アンプ23の他方の入力端子は、PMOSトランジスタ14とNMOSトランジスタ18との間のノードOT2に接続されている。差動アンプ23のイネーブル端子は、信号SAE2を受ける。差動アンプ23は、そのイネーブル端子が受ける信号SAE2が「H」レベルの場合に出力端子OUTに出力信号を出力する。
【0035】
PMOSトランジスタ15は、電源VDD2の経路とデータ入力経路DIN1との間に接続され、そのゲートは信号OCENを受ける。同様に、PMOSトランジスタ16は、電源VDD2の経路とデータ入力経路DIN2との間に接続され、そのゲートは信号OCENを受ける。信号OCENが「L」レベルになると、PMOSトランジスタ15,16が「オン」し、データ入力経路DIN1,DIN2が、電源VDD2の電位にプリチャージされ、初期化される。
【0036】
〈基準技術によるセンスアンプの動作〉
基準技術によるセンスアンプ8Aの動作について説明する。
【0037】
図3は、基準技術によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。タイミングチャートは、センスアンプが受ける主な信号のレベルの時間変化と、センスアンプにおける主な端子、ノード、もしくは経路の電位の時間変化とを表している。
【0038】
基準技術によるセンスアンプ8Aの動作は、オフセットキャンセル動作と、プリチャージ動作と、センス動作とに分けることができる。センス動作には、ディスチャージ動作の一部または全部が含まれる。センスアンプ8Aの動作期間は、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCと、センス動作期間Phase-SAと、に分けることができる。ただし、オフセットキャンセル動作とプリチャージ動作とは、一部または全部が並行して行われる。そのため、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCとは、一部または全部が重複する。また、センスアンプ8Aの状態は、スタンバイ状態と、オフセットキャンセル動作状態と、プリチャージ動作状態と、センス動作状態とに分けることができる。
【0039】
オフセットキャンセル動作は、センスアンプ8Aのセンス動作時にセンスアンプ8Aのオフセット電圧がキャンセルされるように、事前に準備をする動作である。具体的には、センスアンプ8Aのオフセット電圧をデータ入力経路DIN1,DIN2の入力電圧に換算した電圧が、電圧差としてキャパシタ19,20に蓄積されるように、キャパシタ19,20を充電する動作である。プリチャージ動作とは、センス動作を行う前の準備動作であり、データ入力経路DIN1,DIN2が所定の電圧になるように、データ入力経路DIN1,DIN2に接続されるビット線BL,参照信号線REFに電荷を充電する動作である。また、センス動作とは、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された微弱な信号を互いに比較してその差異を増幅し、アナログ回路で読出し可能なデータ値として出力する動作である。
【0040】
まず、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCにおけるオフセット動作について説明する。
【0041】
図3に示すように、時刻t1は、センスアンプ8Aがオフセット動作に入る前のスタンバイ状態にある時刻である。時刻t1において、信号SAEN,信号OCENは、それぞれ「H」レベルにある。また、信号SAE2は「L」レベルにある。
【0042】
時刻t1において、信号SAENは「H」レベルであるから、PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「H」レベルであり、PMOSトランジスタ13,14は「オフ」である。これにより、PMOSトランジスタ13,14より下方の回路が上方の回路から切り離され、不要な電流消費を削減することができる。また、信号OCENは「H」レベルであるから、スイッチ21,22は「オフ」である。したがって、ノードPG1,PG2は、フローティングの状態である。また、PMOSトランジスタ15,16は「オフ」であり、データ入力経路DIN1,DIN2を電源VDD1にプリチャージする動作はまだ行われない。
【0043】
時刻t2において、信号SAEN,信号OCENは、それぞれ「H」レベルから「L」レベルに切り替わり、信号SAE2は「L」レベルを維持する。センスアンプ8Aは、この時刻t2のタイミングで、オフセットキャンセル動作およびプリチャージ動作に入る。
【0044】
時刻t2において、信号SAENは「L」レベルであるから、PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「L」レベルになり、PMOSトランジスタ13,14は「オン」になる。これにより、PMOSトランジスタ13,14より上方の回路と下方の回路とが接続される。
【0045】
電源VDD1の経路から、PMOSトランジスタ11,12の共通のソース源であるノードCOMへの電流の供給は可能な状態にある。また、信号OCENは「L」レベルであるから、スイッチ21,22は「オン」となる。すなわち、ノードCOMから、PMOSトランジスタ11、PMOSトランジスタ13、ノードOT1、スイッチ21、ノードPG1を経由してキャパシタ19に電流が流れ、キャパシタ19への充電が開始される。また、ノードCOMから、PMOSトランジスタ12、PMOSトランジスタ14、ノードOT2、スイッチ22、ノードPG2を経由してキャパシタ20に電流が流れ、キャパシタ20への充電が開始される。すなわち、オフセットキャンセル動作が開始される。
【0046】
NMOSトランジスタ17,18は、カレントミラー構成を形成する。NMOSトランジスタ17,18は、データ入力経路DIN1,DIN2の入力信号対が差動増幅された出力信号対が、ノードOT1,OT2に現れるようにするための負荷素子対として機能する。
【0047】
これにより、キャパシタ19,20は、センスアンプ8Aのオフセット電圧をデータ入力経路DIN1,DIN2への入力電圧に換算した電圧Vosが、キャパシタ19の端子間電圧とキャパシタ20の端子間電圧との差圧として現れるように充電される。その際、ノードCOMへの電流供給のパスは、電源VDD1からのパスだけである。電源VDD1からのテール電流源TCSが供給できる電流量は、一般的に小さく、本実施形態では、最大でテール電流Ibias×100%に制限される。これに伴い、キャパシタ19,20への充電電流も制限され、オフセットキャンセル動作に要するオフセットキャンセル時間tOCは比較的長くなる傾向にある。
【0048】
また、時刻t2において、信号OCENは「L」レベルであるから、PMOSトランジスタ15,16は「オン」となり、電源VDD2から、データ入力経路DIN1,DIN2(外部入力端子対であるビット線BL,参照信号線REF)へのプリチャージ動作が開始される。データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、時刻t2から徐々に上昇し、データ入力経路DIN1,DIN2へのプリチャージに要するプリチャージ時間tPC経過後である時刻t3において、電源VDD2の電源電圧VDDに到達する。
【0049】
したがって、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCにおいて、オフセットキャンセル動作だけでなく、並行して、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージ動作も行われる。
【0050】
時刻t4は、オフセットキャンセル動作が完了する時刻である。なお、時刻t4は、例えば、キャパシタ19,20の容量、ノードCOMから供給される電流量、導通経路の抵抗成分などにより、おおまかに見積もることができる。
【0051】
次に、センス動作期間Phase-SAにおけるセンス動作ついて説明する。時刻t5は、時刻t4から所定の微小時間が経過した後の時間として設定される。時刻t5において、信号OCENは「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号SAENは「L」レベルを維持する。これにより、センスアンプ8Aは、オフセットキャンセル動作からセンス動作に切り替わる。
【0052】
時刻t5において、信号OCENが「H」レベルになることで、PMOSトランジスタ15,16が「オフ」になる。これにより、電源VDD2からのパス、すなわちデータ入力経路DIN1,DIN2へのプリチャージに用いられるパスが遮断される。また、時刻t5において、信号OCENは「H」レベルであるから、スイッチ21,22も「オフ」になる。これにより、電源VDD1からキャパシタ19,20に充電される経路が遮断される。
【0053】
センス動作が始まると、データ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージされた電荷は、読み出しデータに応じて徐々にディスチャージされ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、それとともに低下していく。また、ノードPG1,PG2の電位もキャパシタ19,20とのカップリングの影響により低下する。
【0054】
時刻t6は、時刻t5から、差動アンプ23の出力端子OUTに正確な信号が出力されるのに必要と考えられるディスチャージ時間tDCが経過した時刻に設定される。時刻t6において、信号SAE2は「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号OCENは「H」レベルを維持する。これにより、差動アンプ23は活性化される。その結果、差動アンプ23は、データ入力経路DIN1,DIN2の電位差を差動増幅して得られた電圧を出力端子OUTに出力する。すなわち、差動アンプ23の出力端子OUTには、選択されたアドレスのメモリセルのデータに対応する電位が現れる。
【0055】
時刻t7は、時刻t6から、出力端子OUTの出力の確定に必要とされる所定の微小時間が経過した時刻として設定される。時刻t7において、信号SAENは「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号SAE2は「H」レベルから「L」レベルに切り替わる。これにより、PMOSトランジスタ13,14のゲート電位は「H」レベルになり、PMOSトランジスタ13,14は「オフ」となる。また、差動アンプ23のイネーブル端子の電位は「L」レベルになり、差動アンプ23は不活性化される。このとき、差動アンプ23の出力端子OUTには、正確な信号が出力された状態になり、出力端子OUTの信号の読出し、すなわち、選択されたメモリセルのデータの読出しが可能になる。センスアンプ8Aは、時刻t7以降、再びスタンバイ状態となり、次のデータの読出し動作に備える。
【0056】
時刻t8は、時刻t7から一定時間経過後の時刻である。時刻t8において、データ入力経路DIN1,DIN2、ノードPG1,PG2はリセットされている。
【0057】
このようなセンスアンプ8Aによれば、キャパシタ19,20には、センスアンプ8Aのオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧Vosが差圧として現れるように、電源VDD1からのテール電流源TCSによりテール電流Ibiasで充電される。その後、キャパシタ19,20によりセンスアンプ8Aのオフセット電圧がキャンセルされた状態において、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された、ビット線BLの信号と参照信号線REFの信号との差動増幅がなされ、センス動作が実現される。
【0058】
また、センスアンプのオフセット電圧を補償するために、充電電圧が連続的に可変であるキャパシタ19,20が設けられているので、オフセットキャンセルの精度は高い。また、上記センス動作により、ビット線BLの信号と参照信号線REFの信号との差動増幅信号がノードOT1,OT2に現れ、ノードOT1,OT2の信号は、差動アンプ23でさらに差動増幅され出力される。そのため、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された信号の比較分解能は高い。
【0059】
しかしながら、電源VDD1から供給される電流量は、一般的に動作電流の問題や増幅感度の観点から大きくすることが難しく、テール電流Ibiasの電流量は制限される。そのため、キャパシタ19,20が充電されるまでの時間であるオフセットキャンセル時間tOCは、比較的長くなる傾向があり、データの読出しに時間を要することになる。
【0060】
(実施形態1)
実施形態1によるセンスアンプについて説明する。実施形態1によるセンスアンプは、基準技術によるセンスアンプの改良例である。上述したように、基準技術では、オフセットキャンセルの精度が高く、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された信号の比較分解能が高いなどの利点がある。一方で、基準技術の構成では、電源VDD1の経路から供給される電流量は、一般的に大きくすることができず、テール電流Ibiasの電流量は制限される。そのため、キャパシタ19,20が充電されるまでの時間であるオフセットキャンセル時間tOCは、比較的長くなる傾向があり、データの読出しに時間を要することになる。そこで、本発明者らは、かかる事情に鑑みて以下に説明するセンスアンプの構成を創作した。実施形態1によるセンスアンプは、キャパシタへの充電能力を向上させ、オフセットキャンセル時間tOCがプリチャージ時間tPC以下になるようオフセットキャンセル時間tOCを短縮化し、センスアンプの全体的な動作時間の短縮化を実現できるように構成されている。
【0061】
〈実施形態1によるセンスアンプの構成〉
図4は、実施形態1によるセンスアンプの構成を示す図である。実施形態1によるセンスアンプは、本願における次の「差動増幅器」の一例である。
【0062】
当該差動増幅器は、供給可能な電流が第1の電流(Ibias)である第1の電源(VDD1)に接続された電流源(CS)と、上記電流源に接続され、入力端子対(PG1,PG2)に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対(PMOSトランジスタ11,12)と、電源電圧が上記第1の電源とは異なる第2の電源(VSS)に接続され、上記出力信号対を出力端子対(OT1,OT2)に出力するための負荷素子対(NMOSトランジスタ17,18)と、外部入力端子対(DIN1,DIN2)と上記入力端子対との間に挿入される容量素子対(キャパシタ19,20)と、上記出力端子対と上記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、上記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧(Vos)を上記容量素子対に生じさせるように上記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対(スイッチ21,22)と、上記オフセットキャンセル動作を行う際に、上記電流源から供給可能な電流を上記第1の電流よりも大きい第2の電流(VDD1の供給可能電流+VDD3の供給可能電流)となるように制御する電流制御回路(PMOSトランジスタ38)と、を備える差動増幅器である。
【0063】
また、当該差動増幅器は、上記外部入力端子対に第5の電源(VDD2)を接続させ、上記外部入力端子対を上記第5の電源の電位にプリチャージするプリチャージ回路(PMOSトランジスタ15,16)を備え、上記プリチャージ回路によりプリチャージ動作が行われている(PMOSトランジスタ15,16がオン)期間に、上記オフセットキャンセル動作を行わせ(PMOSトランジスタ38、スイッチ21,22、NMOSトランジスタ36をオン)、次に、上記オフセットキャンセル動作を停止(PMOSトランジスタ38、スイッチ21,22、PMOSトランジスタ15,16、NMOSトランジスタ36をオフ)させ、上記オフセットキャンセル動作の停止以降に、上記プリチャージ動作を停止させて(PMOSトランジスタ15,16をオフ)、上記外部入力端子対のディスチャージ動作を開始させ、上記出力信号対に基づく出力の読出し動作の開始を可能にする、差動増幅器である。
【0064】
図4に示すセンスアンプ8Bは、基準技術によるセンスアンプ8Aと比較して、キャパシタ19,20が充電されるまでの時間であるオフセットキャンセル時間tOCが短縮化されるように構成されたセンスアンプである。センスアンプ8Bは、センスアンプ8Aと比較して、NMOSトランジスタ31~36と、PMOSトランジスタ38,39と、電源VDD3(本願における「第3の電源」の一例)と、インバータ(反転論理回路)25とをさらに含んでいる。なお、図4では、センスアンプ8Bの構成図上に、特徴的な電流の流れを破線の矢印で示している。
【0065】
NMOSトランジスタ31は、ノードPG1と電源VSSの経路との間に接続され、そのゲートは信号SAENを受ける。NMOSトランジスタ32は、ノードPG2と電源VSSの経路との間に接続され、そのゲートは信号SAENを受ける。信号SAENが「H」レベルである場合には、NMOSトランジスタ31,32(本願における「初期化回路」の一例)は「オン」すなわち導通し、ノードPG1,PG2の電位は、電源VSS(本願における「第2の電源」の一例)の電位のレベルになり、初期化される。なお、電源VSSの電源電圧は、一般的に、電源VDD1の電源電圧より低く、例えば、センスアンプ8Bの接地電圧である。
【0066】
PMOSトランジスタ37は、電源VDD1(本願における「第1の電源」の一例)の経路と電流源CS(本願における「電流源」の一例)となるノードCOMとの間に接続され、そのゲートは信号BIASを受ける。信号BIASが「L」レベルである場合には、PMOSトランジスタ37は「オン」すなわち導通し、電源VDD1がノードCOMと接続された状態となる。PMOSトランジスタ38は、電源VDD1とは異なる電源VDD3とノードCOMとの間に接続され、そのゲートは信号OCENを受ける。信号OCENが「L」レベルである場合には、PMOSトランジスタ38は「オン」すなわち導通し、電源VDD3がノードCOMと接続される。つまり、信号BIASが「L」レベルであり、信号OCENが「L」レベルである場合には、ノードCOMへの電流供給のパスは、電源VDD1からのパスだけでなく、電源VDD3からのパスも加わる。
【0067】
なお、本実施形態では、電源VDD1の経路からの電流は、信号BIASを「H」レベルと「L」レベルとの間の電位に設定することで、最大でテール電流Ibias×100%に制限される。一方、電源VDD3は、電源VDD1よりも大きな電流を流すことができる。電源VDD3は、例えば、電源VDD1と同じ電源電圧であり、さらにテール電流Ibias×300%以上の電流を流すことができる。
【0068】
PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路(本願における「電流が流れる素子対」の一例)とが、電源VDD1の経路と電源VSSの経路との間に、直列に接続されている。PMOSトランジスタ39のゲートは、信号BIASを受ける。NMOSトランジスタ33,34のゲートは、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路との接続点であるノードAB1に接続されている。
【0069】
信号BIASが「H」レベルから「H」と「L」との間のレベルに切り替わった場合、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とが「オン」になる。これにより、電源VDD1から、PMOSトランジスタ39とNMOSトランジスタ33,34の並列回路とに電流が流れ始め、ノードAB1は、飽和したテール電流Ibiasが流れるような一定の電位を維持することになる。
【0070】
信号BIASが「H」と「L」との間のレベルから「H」レベルに切り替わった場合、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とが「オフ」になる。これにより、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とに流れる電流は減少し、最終的にはゼロとなる。
【0071】
NMOSトランジスタ17のゲートとNMOSトランジスタ18のゲートとの接続点はノードNG0である。NMOSトランジスタ35は、ノードOT1とノードNG0との間に接続され、そのゲートは信号SAE1を受ける。NMOSトランジスタ36は、ノードNG0とノードAB1との間に接続され、そのゲートは、信号SAE1がインバータ25によって反転された信号を受ける。信号SAE1が「H」レベルになると、NMOSトランジスタ35は「オン」になり、NMOSトランジスタ36は「オフ」になるので、ノードNG0とノードOT1とが接続される。これにより、NチャネルのペアトランジスタであるNMOSトランジスタ17,18は、カレントミラー回路を形成する。
【0072】
一方、信号SAE1が「L」レベルになると、NMOSトランジスタ35は「オフ」になり、NMOSトランジスタ36は「オン」になるので、ノードNG0とノードAB1とが接続される。これにより、NMOSトランジスタ17,18は、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とともにカレントミラー回路を構成する。
【0073】
このように、NMOSトランジスタ35,36、およびインバータ25は、負荷素子対であるNMOSトランジスタ17,18のゲートの接続先を必要に応じて切り換えことにより、NMOSトランジスタ17,18のカレントミラー回路の構成を切り換える負荷制御回路(本願における「負荷制御回路」の一例)を構成する。
【0074】
〈実施形態1によるセンスアンプの動作〉
実施形態1によるセンスアンプ8Bの動作について説明する。
図5は、実施形態1によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。
【0075】
実施形態1によるセンスアンプ8Bの動作は、オフセットキャンセル動作と、プリチャージ動作と、センス動作とに分けることができる。センス動作には、ディスチャージ動作の一部または全部が含まれる。センスアンプ8Bの動作期間は、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCと、センス動作期間Phase-SAと、に分けることができる。ただし、オフセットキャンセル動作とプリチャージ動作とは、一部または全部が並行して行われる。そのため、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCとは、一部または全部が重複する。
【0076】
また、センスアンプ8Bの状態は、スタンバイ状態と、オフセットキャンセル動作状態と、プリチャージ動作状態と、センス動作状態とに分けることができる。また、センスアンプ8Bの状態は、スタンバイ状態、オフセットキャンセル動作状態(プリチャージ動作状態)、センス動作状態、スタンバイ状態の順に切り替わる。これらの状態の切替えは、タイミングコントローラ(本願における「状態制御回路」の一例)6から出力される各信号の「H」「L」の切替えタイミングにより制御される。
【0077】
オフセットキャンセル動作は、センスアンプ8Bのセンス動作時にセンスアンプ8Bのオフセット電圧がキャンセルされるように、事前に準備をする動作である。具体的には、センスアンプ8Bのオフセット電圧をデータ入力経路DIN1,DIN2の入力電圧に換算した電圧が、電圧差としてキャパシタ19,20に蓄積されるように、キャパシタ19,20を充電する動作である。プリチャージ動作とは、センス動作を行う前の準備動作であり、データ入力経路DIN1,DIN2が所定の電圧になるように、これら経路に電荷を充電する動作である。また、センス動作とは、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された微弱な信号を互いに比較してその差異を増幅し、アナログ回路で読出し可能なデータ値として出力する動作である。
【0078】
まず、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCにおけるオフセットキャンセル動作について説明する。
【0079】
図5に示すように、時刻t1は、オフセットキャンセル動作に入る前のスタンバイ状態の時間である。時刻t1において、信号SAEN,信号OCENは、それぞれ「H」レベルにあり、信号SAE1,信号SAE2は、それぞれ「L」レベルにある。なお、信号BIASは、データ読出しを繰り返す期間中において、「H」と「L」との間のレベルを維持する。
【0080】
時刻t1において、信号SAENは「H」レベルであるから、PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「H」レベルであり、PMOSトランジスタ13,14は「オフ」である。PMOSトランジスタ13,14が「オフ」であり導通しない場合、PMOSトランジスタ13,14より下方の回路が切り離され、不要な電流消費を削減することができる。また、信号SAENは「H」レベルであるから、NMOSトランジスタ31,32のゲートの電位は「H」レベルであり、NMOSトランジスタ31,32は「オン」である。また、信号OCENは「H」レベルであるから、スイッチ21,22は「オフ」である。したがって、ノードPG1,PG2の電位は、電源VSSの電位のレベルであり、初期化された状態にある。また、信号OCENは「H」レベルであるから、PMOSトランジスタ15,16は「オフ」であり、データ入力経路DIN1,DIN2を電源VDD2の電源電圧VDDにプリチャージする動作は行われない。
【0081】
ここでノードPG1,PG2の電位は、電源VSSの電位のレベルに初期化されている。そのため、PMOSトランジスタ11,12は「オン」しており、このあとのオフセットキャンセル動作に移行した際、PMOSトランジスタ11,12を介した電流の流れを妨げない効果がある。
【0082】
時刻t2において、信号SAE1,信号SAE2は、それぞれ「L」レベルを維持するが、信号SAEN,信号OCENは、それぞれ「H」レベルから「L」レベルに切り替わる。これにより、センスアンプ8Bは、オフセットキャンセル動作およびプリチャージ動作に入る。
【0083】
図6は、オフセットキャンセル動作を説明するための図である。なお、図6では、センスアンプ8Bの構成図上に、特徴的な電流の流れを破線の矢印で示している。時刻t2において信号SAENは「L」レベルであるから、NMOSトランジスタ31,32のゲートの電位は「L」レベルになり、NMOSトランジスタ31,32は「オフ」になる。PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「L」レベルになり、PMOSトランジスタ13,14は「オン」になる。信号SAE1は「L」レベルであるから、NMOSトランジスタ35は、そのゲートの電位が「L」レベルであり、「オフ」となる。一方、NMOSトランジスタ36は、そのゲートの電位が「H」レベルであり、「オン」となる。つまり、ノードNG0は、ノードAB1と接続された状態になる。
【0084】
また、信号BIASは「H」と「L」との間のレベルであるから、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とは「オン」となる。電源VDD1から電流が流れ始めて、時刻tAの時点で、ノードAB1すなわちノードNG0は、飽和した電流Ibiasが流れるような一定の電位を維持することになる。
【0085】
さらに、信号OCENは「L」レベルであるから、スイッチ21,22は「オン」となる。すなわち、PMOSトランジスタ11,12の共通のソース源であるノードCOMからPMOSトランジスタ11、スイッチ21を経由してノードPG1に電流が流れ、キャパシタ19が充電される。また、ノードCOMからPMOSトランジスタ12、スイッチ22を経由してノードPG2に電流が流れ、キャパシタ20が充電される。
【0086】
上記の如くキャパシタ19,20が充電されると、キャパシタ19,20は、センスアンプ8Bのオフセット電圧を入力電圧に換算した電圧Vosが、キャパシタ19の端子間電圧とキャパシタ20の端子間電圧との差圧として現れるように充電される。その際、ノードCOMへの電流供給のパスは、電源VDD1からPMOSトランジスタ37を通るパスだけでなく、電源VDD3からPMOSトランジスタ38を通るパスも加わる。よって、キャパシタ19,20への充電電流は大きくなり、より高速に充電が行われ、オフセットキャンセルに要するオフセットキャンセル時間tOCの短縮化が可能になる。
【0087】
またこの際、ノードPG1,PG2の電位は、電源VSSの電位のレベルに初期化されている。そのため、このあとのオフセットキャンセル動作に移行した際、PMOSトランジスタ11,12を介した電流の流れを妨げない効果がある。つまり、この動作は、オフセットキャンセル時間tOCのさらなる短縮化に貢献する。
【0088】
また、NMOSトランジスタ17,18は、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とともにカレントミラー回路を構成する。この構成は、オフセットキャンセル動作期間の後のセンス動作期間におけるNMOSトランジスタ17,18の動作点を合わせる働きがある。また、NMOSトランジスタ17,18に流れる電流の総和は、電源VDD1からのテール電流Ibiasと同等(例えば、Ibiasの50%~150%)になるように設定する。
【0089】
このような設定とすることにより、時刻t3のオフセットキャンセル動作完了状態時にPMOSトランジスタ11,12に流れる電流と、センス動作状態時にPMOSトランジスタ11,12に流れる電流とを同等に制御することができる。オフセットキャンセル動作完了状態時にPMOSトランジスタ11,12に流れる電流と、センス動作状態時にPMOSトランジスタ11,12に流れる電流とを同等に制御することにより、オフセットキャンセルを高精度に行うことが可能になる。
【0090】
なお、このカレントミラーにおけるミラー比は、NMOSトランジスタ17,18に、テール電流Ibiasの50%の電流がそれぞれ流れるように設定される。本実施形態では、NMOSトランジスタ17,18に、テール電流Ibiasの50%の電流がそれぞれ流れるように、これらペアトランジスタのトランジスタサイズがそれぞれ設定される。
【0091】
図7は、プリチャージ動作を説明するための図である。なお、図7では、センスアンプ8Bの構成図上に、特徴的な電流の流れを破線の矢印で示している。
【0092】
PMOSトランジスタ15,16は、「オン」となり、電源VDD1からデータ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージが行われ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、時刻t2から徐々に上昇し、プリチャージ時間tPC経過後である時刻t3に、電源VDD2の電源電圧VDDに到達する。
【0093】
したがって、オフセットキャンセル動作期間において、オフセットキャンセル動作だけでなく、並行して、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージ動作と、センス動作期間でのNMOSトランジスタ17,18の動作点を合わせる動作も行われる。また、オフセットキャンセル動作によるキャパシタ19,20に流れる電流は、キャパシタ19,20を介して、データ入力経路DIN1,DIN2にも流れる。そのため、オフセットキャンセル動作は、プリチャージ動作をサポートすることになり、プリチャージに要するプリチャージ時間tPCはさらに短縮化される。このように、センスアンプ8Bによれば、非常に効率的な動作が行われる。
【0094】
次に、センス動作期間Phase-SAにおけるセンス動作について説明する。図5に示すように、時刻t4において、信号OCEN,信号SAE1は、それぞれ「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号SAEN,信号SAE2は、それぞれ「L」レベルを維持し、信号BIASは「H」と「L」との間のレベルを維持する。これら信号のレベルにより、センスアンプ8Bは、オフセットキャンセル動作からセンス動作に切り替わる。
【0095】
なお、時刻t4のタイミングは、時刻t2から、データ入力経路DIN1(ビット線BL),DIN2(参照信号線REF)へのプリチャージが完了するのに要するプリチャージ時間tPCが経過した時刻に設定される。また、オフセットキャンセルに要する時間、すなわちキャパシタ19,20の充電が完了するまでに要するオフセットキャンセル時間tOCは、PMOSトランジスタ38を介したパスによる電流量を調整することにより、プリチャージに要するプリチャージ時間tPC以下に小さくすること(tOC≦tPC)が可能である。そのため、オフセットキャンセル動作を開始してからセンス動作に入るまでの時間は、プリチャージ時間tPCが支配的となる。
【0096】
図8は、センス動作を説明するための図である。なお、図8では、センスアンプ8Bの構成図上に、活性化されている素子にはマル印(○)を、不活性化されている素子にはバツ印(×)を付加し、特徴的な電流の流れを破線の矢印で示している。
【0097】
時刻t4(時刻t5)において、信号OCENが「H」レベルになることで、図8に示すように、PMOSトランジスタ15,16が「オフ」になり、電源VDD2からデータ入力経路DIN1,DIN2へのパスが遮断される。また、PMOSトランジスタ38が「オフ」になり、電源VDD3から電流供給源であるノードCOMへのパスが遮断される。これにより、電流源CSとなるノードCOMへの電流供給は、電源VDD1からPMOSトランジスタ37を通るテール電流源TCSによるテール電流Ibiasのみとなる。また、スイッチ21,22も「オフ」になる。このような接続構成により、電源VDD3からキャパシタ19,20に電荷が充電される経路が遮断される。
【0098】
また、信号SAE1が「H」レベルになることで、NMOSトランジスタ35が「オン」になり、NMOSトランジスタ36が「オフ」になるので、Nチャネル側のペアトランジスタであるNMOSトランジスタ17,18は、ノードOT1をゲート電位とするカレントミラー構成を形成する。上記の接続構成により、センスアンプ8Bは、差動型センスアンプであるセンスアンプ8Aと同等の回路構成となる。このような接続構成により、既にオフセットキャンセル動作期間Phase-OCでの電圧Vosが付加されている状態でのセンス動作が可能になる。つまり、センスアンプ8Bでは、オフセットキャンセル効果を確保しつつ、高精度なセンス動作が可能になる。
【0099】
センス動作が始まると、データ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージされた電荷は、読み出しデータに応じて徐々にディスチャージされ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、それとともに低下していく。また、ノードPG1,PG2の電位もキャパシタ19,20とのカップリング影響により低下する。
【0100】
図5に示すように、時刻t6は、時刻t4からデータ入力経路DIN1,DIN2のディスチャージ時間tDCの経過後の時間である。時刻t6では、信号SAE2が「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号SAEN,信号BIASは「L」レベルを維持し、信号OCEN,信号SAE1は「H」レベルを維持する。このような信号のレベルにより、差動アンプ23のイネーブル端子は「L」レベルになり、差動アンプ23は活性化される。その結果、差動アンプ23は、データ入力経路DIN1,DIN2の電位差を差動増幅して得られた電圧を出力端子OUTに出力する。すなわち、差動アンプ23の出力端子OUTには、選択されたアドレスのメモリのデータに対応する電位が現れる。
【0101】
時刻t7は、時刻t6から、差動アンプ23の出力が安定するまでに必要と考えられる時間が経過した時刻に設定される。時刻t7では、信号SAEN,信号BIASは「L」レベルから「H」レベルに切り替わり、信号OCENは「H」レベルを維持し、信号SAE1,信号SAE2は、「H」レベルから「L」レベルに切り替わる。これにより、センス動作は終了する。差動アンプ23の出力端子OUTには、選択されたアドレスのメモリセルのデータに対応する電位が確定して現れている。その後は、差動アンプ23の出力端子OUTに接続されたデバイスにおいて、データ読出しが行われる。センスアンプ8Aは、時刻t7以降、再びスタンバイ状態となり、次のデータの読出し動作に備える。
【0102】
時刻t8は、時刻t7から一定時間経過後の時刻である。時刻t8において、データ入力経路DIN1,DIN2、ノードPG1,PG2はリセットされている。
【0103】
このようなセンスアンプ8Bによれば、キャパシタ19,20には、センスアンプ8Aのオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧Vosが差圧として現れるように、電流供給源であるノードCOMから電流が流れて充電される。このとき、ノードCOMには、電源VDD1からのパスだけでなく、電源VDD3からのパスからも電流が供給される。すなわち、ノードCOMからキャパシタ19,20へ供給可能な電流量が、電源VDD1の供給可能なテール電流Ibiasより大きくすることができる。このような供給電流の増加により、キャパシタ19,20をより高速に充電することができ、オフセットキャンセル時間tOCを大幅に短縮することが可能になる。なお、電源VDD3の供給可能な電流量は、電源VDD1の供給可能な電流より大きい方が好ましい。
【0104】
データ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージされた電荷は、読み出しデータに応じて徐々にディスチャージされ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、それとともに低下していく。また、ノードPG1,PG2の電位もキャパシタ19,20とのカップリングの影響により低下する。
【0105】
また、センスアンプのオフセット電圧を補償するために、充電電圧が連続的に可変であるキャパシタ19,20が設けられているので、オフセットキャンセルの精度は高い。また、上記センス動作により、ビット線BLの信号と参照信号線REFの信号との差動増幅信号がノードOT1,OT2に現れ、ノードOT1,OT2の信号は、差動アンプ23でさらに差動増幅され出力される。そのため、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された信号の比較分解能は高い。
【0106】
このように、実施形態1によるセンスアンプ8Bは、オフセットキャンセル機構により、センスアンプのオフセット電圧による影響を抑制しつつ、オフセットキャンセル時間tOCの短縮化、さらにはプリチャージ時間tPCの短縮化が可能になり、データ読出しの高速化を図ることができる。
【0107】
(実施形態2)
実施形態2によるセンスアンプについて説明する。実施形態2によるセンスアンプは、実施形態1によるセンスアンプの改良例である。実施形態2によるセンスアンプは、オフセットキャンセル時間tOCがプリチャージ時間tPCより長くなる場合に好適な構成を有している。具体的には、実施形態2によるセンスアンプは、オフセットキャンセル動作完了前に、プリチャージ動作を停止させてディスチャージ動作を開始させ、センスアンプの全体的な動作時間の短縮化を実現できるように構成されている。
【0108】
〈実施形態2によるセンスアンプの構成〉
図9は、実施形態2によるセンスアンプの構成を示す図である。実施形態2によるセンスアンプは、本願における次の「差動増幅器」の一例である。
【0109】
当該差動増幅器は、供給可能な電流が第1の電流(Ibias)である第1の電源(VDD1)に接続された電流源(CS)と、上記電流源に接続され、入力端子対(PG1,PG2)に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対(PMOSトランジスタ11,12)と、電源電圧が上記第1の電源とは異なる第2の電源(VSS)に接続され、上記出力信号対を出力端子対(OT1,OT2)に出力するための負荷素子対(NMOSトランジスタ17,18)と、外部入力端子対(DIN1,DIN2)と上記入力端子対との間に挿入される容量素子対(キャパシタ19,20)と、上記出力端子対と上記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、上記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧(Vos)を上記容量素子対に生じさせるように上記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うスイッチング素子対(スイッチ21,22)と、上記オフセットキャンセル動作を行う際に、上記電流源から供給可能な電流を上記第1の電流よりも大きい第2の電流(VDD1の供給可能電流+VDD3の供給可能電流)となるように制御する電流制御回路(PMOSトランジスタ38)と、を備える差動増幅器である。
【0110】
また、当該差動増幅器は、上記外部入力端子対に第5の電源(VDD2)を接続させ、上記外部入力端子対を上記第5の電源の電位にプリチャージするプリチャージ回路(PMOSトランジスタ15,16,41~44)を備え、上記プリチャージ回路によりプリチャージ動作が行われている(PMOSトランジスタ15,16,43,44がオン、PMOSトランジスタ41,42がオフ)期間に、上記オフセットキャンセル動作を行わせ(PMOSトランジスタ38、スイッチ21,22、NMOSトランジスタ36をオン、NMOSトランジスタ35をオフ)、上記オフセットキャンセル動作の期間中に、上記プリチャージ動作を停止(PMOSトランジスタ43,44をオフ)させて上記外部入力端子対のディスチャージ動作を開始させ、上記ディスチャージ動作の開始後に、上記オフセットキャンセル動作を停止(PMOSトランジスタ38、スイッチ21,22、PMOSトランジスタ15,16、NMOSトランジスタ36をオフ、PMOSトランジスタ41,42、NMOSトランジスタ35をオン)させ、上記出力信号対に基づく出力の読出し動作の開始を可能にする、差動増幅器である。
【0111】
また、上記プリチャージ回路は、上記容量素子対と上記外部入力端子対との間に接続された第2のスイッチング素子対(PMOSトランジスタ41,42)と、上記容量素子対と上記第2のスイッチング素子対との接続点対と上記第5の電源との間に接続された第3のスイッチング素子対(PMOSトランジスタ15,16)と、上記第2のスイッチング素子対と上記外部入力端子対との接続点対と第6の電源との間に接続された第4のスイッチング素子対(PMOSトランジスタ43,44)と、を備え、上記第2のスイッチング素子対が不活性化され、上記第3および第4のスイッチング素子対が活性化された状態から、上記第4のスイッチング素子対が不活性化された状態に移行させることにより、上記プリチャージ動作を停止させ、前記ディスチャージ動作を開始させる。
【0112】
図9に示すセンスアンプ8Cは、実施形態1によるセンスアンプ8Bと比較して、オフセットキャンセル動作の一部を、ディスチャージ動作と並行して行えるように構成されたセンスアンプである。このような構成により、PMOSトランジスタ37を通るパスからの電流Ibiasが大きくできず、オフセットキャンセルがプリチャージより遅く完了することが想定される場合であっても、センスアンプの動作時間全体の短縮化が図れる。センスアンプ8Cは、センスアンプ8Bと比較して、PMOSトランジスタ41~44と、電源VDD4(本願における「第6の電源」の一例)とをさらに含んでいる。
【0113】
PMOSトランジスタ41は、データ入力経路DIN1とキャパシタ19との間に接続されており、そのゲートは信号OCENの反転信号OCEを受ける。PMOSトランジスタ42は、データ入力経路DIN2とキャパシタ20との間に接続されており、そのゲートは信号OCENの反転信号OCEを受ける。ノードN1は、PMOSトランジスタ15とキャパシタ19との接続点である。ノードN2は、PMOSトランジスタ16とキャパシタ20との接続点である。PMOSトランジスタ43は、電源VDD4とノードDIN1との間に接続されており、そのゲートは信号PCENを受ける。PMOSトランジスタ44は、電源VDDとノードDIN2との間に接続されており、そのゲートは信号PCENを受ける。
【0114】
信号OCENと信号PCENとがともに「L」レベルである場合、キャパシタ19,20への充電動作であるオフセットキャンセル動作と、ビット線BL側経路および参照信号線REF側経路のプリチャージ動作とが並行して行われる。
【0115】
プリチャージが完了すると考えられるタイミングで、信号OCENは「L」レベルを維持したまま、信号PCENを「H」レベルへ切り替える。すると、PMOSトランジスタ43,44が「オフ」になり、プリチャージ動作は停止し、ビット線BL側経路および参照信号線REF側経路のディスチャージ動作が開始される。その後、オフセットキャンセルも完了したと考えられるタイミングで、信号OCENを「H」レベルに切り替える。これにより、PMOSトランジスタ15,16も「オフ」し、オフセットキャンセル動作も停止する。
【0116】
〈実施形態2によるセンスアンプの動作〉
実施形態2によるセンスアンプ8Cの動作について説明する。
【0117】
図10は、実施形態2によるセンスアンプにおけるタイミングチャートである。実施形態2によるセンスアンプ8Cの動作は、オフセットキャンセル動作と、プリチャージ動作と、センス動作とに分けることができる。センス動作には、ディスチャージ動作の一部または全部が含まれる。センスアンプ8Cの動作期間は、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCと、センス動作期間Phase-SAと、に分けることができる。ただし、オフセットキャンセル動作とプリチャージ動作とは、一部または全部が並行して行われる。そのため、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCと、プリチャージ動作期間Phase-PCとは、一部または全部が重複する。また、センスアンプ8Cの状態は、スタンバイ状態と、オフセットキャンセル動作状態と、プリチャージ動作状態と、センス動作状態とに分けることができる。
【0118】
オフセットキャンセル動作は、センスアンプ8Cのセンス動作時にセンスアンプ8Cのオフセット電圧がキャンセルされるように、事前に準備をする動作である。具体的には、センスアンプ8Cのオフセット電圧をデータ入力経路DIN1,DIN2の入力電圧に換算した電圧が、電圧差としてキャパシタ19,20に蓄積されるように、キャパシタ19,20を充電する動作である。プリチャージ動作とは、センス動作を行う前の準備動作であり、データ入力経路DIN1,DIN2が所定の電圧になるように、これら経路に電荷を充電する動作である。また、センス動作とは、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された微弱な信号を互いに比較してその差異を増幅し、アナログ回路で読出し可能なデータ値として出力する動作である。
【0119】
まず、オフセットキャンセル動作期間Phase-OCにおけるオフセットキャンセル動作について説明する。
【0120】
図10に示すように、時刻t1において、信号SAEN,信号OCEN,信号PCENは、それぞれ「H」レベルにあり、信号SAE1,信号SAE2は、それぞれ「L」レベルにある。なお、信号BIASは、データ読出しを繰り返す期間中において、「H」と「L」との間のレベルを維持する。
【0121】
時刻t1において、信号SAENは「H」レベルであるから、PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「H」レベルであり、PMOSトランジスタ13,14は「オフ」である。これにより、PMOSトランジスタ13,14より下方の回路が切り離され、不要な電流消費を削減することができる。
【0122】
また、信号SAENは「H」レベルであるから、NMOSトランジスタ31,32のゲートの電位は「H」レベルであり、NMOSトランジスタ31,32は「オン」である。また、信号OCENは「H」レベルであるから、スイッチ21,22は「オフ」である。したがって、ノードPG1,PG2の電位は、電源VSSの電位のレベルであり、初期化された状態にある。
【0123】
また、信号OCEN、信号PCENは「H」レベルであるから、PMOSトランジスタ15,16、43,44は「オフ」であり、データ入力経路DIN1,DIN2を電源VDD2,VDD4からプリチャージする動作は行われない。
【0124】
時刻t2において、信号SAE1,信号SAE2は、それぞれ「L」レベルを維持するが、信号SAEN,信号OCEN,信号PCENは、それぞれ「H」レベルから「L」レベルに切り替わる。これにより、センスアンプ8Cは、オフセットキャンセル動作およびプリチャージ動作に入る。
【0125】
時刻t2において、信号SAENは「L」レベルであるから、NMOSトランジスタ31,32のゲートの電位は「L」レベルになり、NMOSトランジスタ31,32は「オフ」になる。PMOSトランジスタ13,14のゲートの電位は「L」レベルになり、PMOSトランジスタ13,14は「オン」になる。信号SAE1は「L」レベルであるから、NMOSトランジスタ35は、そのゲートの電位が「L」レベルであり、「オフ」となる。一方、NMOSトランジスタ36は、そのゲートの電位が「H」レベルであり、「オン」となる。つまり、ノードNG0は、ノードAB1と接続された状態になる。
【0126】
また、信号BIASは「H」と「L」との間のレベルであるから、PMOSトランジスタ39と、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とは「オン」となり、電源VDD1の経路から電流が流れ始めて徐々に増大し、最終的に飽和したテール電流Ibiasが流れる。それとともに、ノードAB1すなわちノードNG0は、電源VDD1の電位から徐々に低下し、時刻tAの時点で、ある一定の電位となり、その後その電位を維持する。
【0127】
さらに、信号OCEN,信号PCENは、それぞれ「L」レベルであるから、スイッチ21,22は「オン」となる。すなわち、PMOSトランジスタ11,12の共通のソース源であるノードCOMからPMOSトランジスタ11、スイッチ21を経由してノードPG1に電流が流れ、キャパシタ19が充電される。また、ノードCOMからPMOSトランジスタ12、スイッチ22を経由してノードPG2に電流が流れ、キャパシタ20が充電される。
【0128】
これにより、キャパシタ19,20は、センスアンプ8Cのオフセット電圧を入力電圧に換算した電圧Vosが、キャパシタ19の端子間電圧とキャパシタ20の端子間電圧との差圧として現れるように充電される。その際、電流源CSとなるノードCOMへの電流供給のパスは、電源VDD1からPMOSトランジスタ37を通るパスだけでなく、電源VDD3からPMOSトランジスタ38を通るパスも加わる。よって、キャパシタ19,20への充電電流は大きくなり、より高速に充電が行われ、オフセットキャンセルに要するオフセットキャンセル時間tOCの短縮化が可能になる。
【0129】
また、NMOSトランジスタ17,18は、NMOSトランジスタ33,34の並列回路とともにカレントミラー回路を構成成する。これは、オフセットキャンセル動作期間の後のセンス動作期間におけるNMOSトランジスタ17,18の動作点を合わせる働きがある。
【0130】
また、NMOSトランジスタ17,18に流れる電流の総和は、電源VDD1からのテール電流源TCSによるテール電流Ibiasと同程度、例えば、Ibiasの50%~150%になるように設定する。NMOSトランジスタ17,18に流れる電流の総和は、より好適には、テール電流Ibias×100%に設定される場合である。これにより、PMOSトランジスタ11,12に流れる電流を、オフセットキャンセル動作状態時とセンス動作状態時とで同程度に制御することができ、オフセットキャンセルを高精度に行うことが可能になる。
【0131】
なお、このカレントミラーにおけるミラー比は、NMOSトランジスタ17,18に、テール電流Ibiasの50%の電流がそれぞれ流れるように設定されるとよい。本実施形態では、NMOSトランジスタ17,18に、テール電流Ibiasの50%の電流がそれぞれ流れるように、これらペアトランジスタのトランジスタサイズがそれぞれ設定される。
【0132】
信号OCEN,信号PCENは「L」レベルであるから、PMOSトランジスタ15,16,43,44は「オン」となり、PMOSトランジスタ41,42は「オフ」となる。これにより、電源VDD2,VDD4からデータ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージが行われ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、時刻t2から徐々に上昇し、プリチャージ時間tPC経過後の時刻t3に電源電圧VDDに到達する。
【0133】
また、オフセットキャンセル動作期間において、オフセットキャンセル動作だけでなく、並行して、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージ動作と、センス動作期間でのNMOSトランジスタ17,18の動作点を合わせる動作も行われる。
【0134】
ところで、本実施形態では、オフセットキャンセル動作に用いる電源VDD1,VDD3からの供給可能な電流が充分に大きくできない場合を想定している。この場合、オフセットキャンセル動作が完了するまでに要する時間の短縮化に制限が掛かる。そのため、図10に示すように、プリチャージ動作が完了する時刻t4よりも、オフセットキャンセル動作(キャパシタ19,20の充電)が完了する時刻t3の方が遅くなることが想定される。
【0135】
そこで、プリチャージ動作が完了すると考えられる時刻t4において、信号PCENを「L」から「H」レベルに切り替える。信号PCENが「H」レベルになると、PMOSトランジスタ43,44が「オフ」となる。すなわち、キャパシタ19,20からデータ入力経路DIN1,DIN2への経路が遮断された状態で、データ入力経路DIN1,DIN2へのプリチャージ動作が停止する。
【0136】
しかしながら、信号OCENは「L」レベルのままなので、キャパシタ19,20の入力端子であるノードN1,N2の電位は、電源VDD2の電源電圧VDDに維持される。また、PMOSトランジスタ38も「オン」している。これにより、電源VDD1,VDD3からキャパシタ19,20に充電電流が流れ、オフセットキャンセル動作は継続される。一方、データ入力経路DIN1,DIN2については、プリチャージ動作が停止してからディスチャージ動作が開始される。つまり、プリチャージ動作の期間を短縮化するとともに、オフセットキャンセル動作が完了する前にディスチャージ動作を開始させる。すなわち、オフセットキャンセル動作の完了を待たず、ディスチャージ動作をオフセットキャンセル動作と並行して行う。
【0137】
このような動作により、電源VDD1または電源VDD3からの供給可能な電流が充分に取れず、オフセットキャンセル動作に要する時間の十分な短縮化が難しい場合であっても、センスアンプ8Cの全体的な動作時間の短縮化が可能になる。
【0138】
時刻t5は、時刻t3から一定時間経過後の時刻として設定される。時刻t5において、信号OCENは「H」レベルになり、PMOSトランジスタ15,16が「オフ」になり、PMOSトランジスタ41,42は「オン」になり、スイッチ21,22は「オフ」になる。また、時刻t5において、信号SAE1は「L」から「H」レベルになり、NMOSトランジスタ35は「オン」になり、NMOSトランジスタ36は「オフ」になる。これにより、負荷素子対であるNMOSトランジスタ17,18は、ゲートが互いに接続されて、カレントミラー回路を構成する。また、NMOSトランジスタ17,18のゲートは、ノードAB1から切り離される。この接続状態が形成されると、センスアンプ8Cの動作状態はセンス動作状態となり、センス動作を開始する。
【0139】
なお、これ以降のセンス動作期間Phase-SAにおけるセンス動作ついては、センスアンプ8Bと同様であるため、説明を省略する。
【0140】
このようなセンスアンプ8Cによれば、キャパシタ19,20には、センスアンプ8Cのオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧Vosが差圧として現れるように、電流供給源であるノードCOMから電流が流れて充電される。このとき、ノードCOMには、電源VDD1からのパスだけでなく、電源VDD3からのパスからも電流が供給される。すなわち、ノードCOMからキャパシタ19,20へ供給可能な電流量が、電源VDD1の供給可能な電流より大きくすることができる。
【0141】
これにより、キャパシタ19,20をより高速に充電することができ、オフセットキャンセル時間tOCを大幅に短縮することが可能になる。なお、電源VDD3の供給可能な電流量は、電源VDD1の供給可能な電流より大きい方が好ましい。
【0142】
また、データ入力経路DIN1,DIN2にプリチャージされた電荷は、読み出しデータに応じて徐々にディスチャージされ、データ入力経路DIN1,DIN2の電位は、それとともに低下していく。ノードPG1,PG2の電位もキャパシタ19,20とのカップリングの影響により低下する。
【0143】
また、センスアンプのオフセット電圧を補償するために、充電電圧が連続的に可変であるキャパシタ19,20が設けられているので、オフセットキャンセルの精度は高い。また、上記センス動作により、ビット線BLの信号と参照信号線REFの信号との差動増幅信号がノードOT1,OT2に現れ、ノードOT1,OT2の信号は、差動アンプ23でさらに差動増幅され出力される。そのため、データ入力経路DIN1,DIN2に入力された信号の比較分解能は高い。
【0144】
また、オフセットキャンセル時間tOCがプリチャージ時間tPCより長くなる場合であっても、オフセットキャンセル動作を待つことなくディスチャージ動作を開始させることができ、センスアンプ8Cの全体的な動作時間の短縮化を実現できる。
【0145】
このように、実施形態2によるセンスアンプ8Cは、オフセットキャンセル機構により、センスアンプのオフセット電圧による影響を抑制しつつ、オフセットキャンセル時間tOCの短縮化、さらにはプリチャージ時間tPCの短縮化が可能になり、データ読出しの高速化を図ることができる。
【0146】
(実施形態3)
実施形態3によるセンスアンプについて説明する。実施形態3によるセンスアンプは、上記の2実施形態のセンスアンプと比較してさらに改良された例である。
【0147】
〈実施形態3によるセンスアンプの構成および動作〉
図11は、実施形態3によるセンスアンプの構成を示す図である。なお、図11は、一例として、実施形態1に実施形態3の改良技術を適用した例である。
【0148】
図11に示すように、キャパシタ19,20は、データ入力経路DIN1-ノードPG1間、データ入力経路DIN2-ノードPG2間でのデカップリングとしても機能する。そのため、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージに用いる電源と、センス動作を行う回路の電源とで、異なる電圧を用いることが可能になる。
【0149】
そこで、図11に示すように、実施形態3によるセンスアンプ8Dは、上記の各基準技術~実施形態2によるセンスアンプ8A~8Cと比較して、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージに用いる電源を、電源電圧がVDD2より高い電源VCC1(本願における「第4の電源」の一例)に変更した構成を有する。例えば、電源VDD2の電源電圧は1[V]であり、電源VCC1の電源電圧は、1.5[V]である。
【0150】
上記構成のセンスアンプ8Dによれば、プリチャージに用いる電源を、より高い電圧の電源とすることで、データ入力経路DIN1,DIN2をプリチャージする際の電流を増大させることができ、プリチャージ時間tPCをさらに短縮できる。
【0151】
〈ディスチャージ時間とセンスアンプの入力電圧差との関係〉
図12は、ディスチャージ時間とセンスアンプ入力電圧差との関係を示す図である。図12では、横軸はデータ入力経路DIN1,DIN2のディスチャージ時間tDCを示しており、縦軸はセンスアンプの入力電圧差を示している。
【0152】
また次式(1)は、データ入力経路DIN1,DIN2のディスチャージ時間tDCを算出する計算式である。
【0153】
tDC=(C/ΔI0)×(ΔV0+Vos) …(1)
ΔV0:センス動作に必要な最小入力差分電圧(Vos=0Vの場合)
Vos:センスアンプ固有のオフセット電圧(入力電圧に換算した電圧)
C:ビット線などのディスチャージの際の寄生容量
ΔI0:メモリセル電流Icellと参照電流Irefとの差電流
【0154】
図12および上記式から理解されるように、電圧Vosが電圧Vos(a)である場合には、センス動作に必要なセンスアンプの入力電圧差(データ入力経路DIN1,DIN2の電圧差)は、ΔV0+ΔVos(a)となる。そして、センスアンプの入力電圧差が、ΔV0+ΔVos(a)になるために必要なディスチャージ時間tDC(a)は、(C/ΔI0)×(ΔV0+Vos(a))となる。一方、電圧Vosが、電圧Vos(a)より小さい電圧Vos(b)である場合には、センス動作に必要なセンスアンプの入力電圧差(データ入力経路DIN1,DIN2の電圧差)は、ΔV0+ΔVos(b)となる。そして、センスアンプの入力電圧差が、ΔV0+ΔVos(b)になるために必要なディスチャージ時間tDC(b)は、(C/ΔI0)×(ΔV0+Vos(b))となる。
【0155】
上記より、電圧Vosが小さいほど、センス動作に必要となるディスチャージ時間tDCは短くできる。すなわち、オフセットキャンセルの精度が向上し、オフセット改善量が大きくなると、メモリセル電流Icellによるディスチャージ時間tDCが短縮化され、ディスチャージ時間tDCの改善量が大きくなることが分かる。
【0156】
〈各実施形態によるセンスアンプの動作時間短縮化の効果〉
実施形態1,2のセンスアンプ8B,8Cは、オフセットキャンセル機構を有しているだけでなく、オフセットキャンセルのためにキャパシタ19,20に供給可能な電流量を増大させる機構を有している。そのため、センスアンプ8B,8Cは、ディスチャージ時間tDCの短縮化が可能になることに加え、センスアンプ8Aと比較して、オフセットキャンセル時間tOCの短縮化が可能になる。
【0157】
また、実施形態1,2のセンスアンプ8B,8Cでは、プリチャージ動作とオフセットキャンセル動作とが並行して行われ、かつ、オフセットキャンセル動作におけるキャパシタへの充電に、より大きな電流が供給される。そのため、センスアンプ8B,8Cでは、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージのために供給される電流のパスは、PMOSトランジスタ15,16を通るパスだけでなく、キャパシタ19,20を介したパスも加えられ、プリチャージ時間tPCの更なる短縮化が可能になる。
【0158】
また、実施形態3のセンスアンプ8Dでは、データ入力経路DIN1,DIN2のプリチャージに用いる電源を、電源電圧が電圧VDDより大きい電圧VCCである電源VCC1とする構成を有している。そのため、センスアンプ8Dでは、プリチャージ動作において流れる電流量をさらに増大させることができ、プリチャージ時間tPCのさらなる短縮化が可能になる。
【0159】
〈基準技術および各実施形態によるセンスアンプの全体的な動作時間〉
図13は、センスアンプの動作時間を示す図である。図13に示す棒グラフは、横軸にセンスアンプの動作に掛かる動作時間を示しており、縦軸にセンスアンプの種類を示している。センスアンプの動作時間は、プリチャージ時間tPC、オフセットキャンセル時間tOC、ディスチャージ時間tDCを含んでおり、並行して行うことができる動作に対応する時間を表すブロック(枠)は、縦に並列に記載されている。
【0160】
図13において、上から1段目のグラフは、オフセットキャンセル機能がないセンスアンプの場合に対応している。上から2番目のグラフは、基準技術によるオフセットキャンセル機構付きのセンスアンプ8Aの場合に対応している。上から3段目のグラフは、実施形態1によるセンスアンプの場合に対応している。また、上から4段目のグラフは、実施形態2によるセンスアンプの場合に対応している。
【0161】
オフセットキャンセル機構がないセンスアンプの場合、オフセット電圧の影響を抑制することができず、上述したようにディスチャージ時間tDCは比較的長くなる。
【0162】
次に、基準技術によるセンスアンプ8Aの場合、オフセットキャンセル機構を有するため、オフセット電圧の影響を抑制することができ、ディスチャージ時間tDCは短縮化される。一方、キャパシタ19,20に充電する電流が、電源VDD1からのテール電流Ibiasに制限されるため、オフセットキャンセル時間tOCが、プリチャージ時間tPCより相対的に長くなる。そのため、センスアンプの全体的な動作時間は、さらなる短縮化の余地がある。
【0163】
次いで、実施形態1によるセンスアンプ8Bの場合、オフセットキャンセル機構を有するため、センスアンプ8Aと同様に、ディスチャージ時間tDCは短縮化される。また、キャパシタ19,20に充電する電流が、電源VDD1からのテール電流Ibiasだけでなく、電源VDD3からの電流も加わるため、オフセットキャンセル時間tOCが短縮化され、プリチャージ時間tPCと同等またはそれより短くなる。そのため、センスアンプの全体的な動作時間は、大幅に短縮されている。
【0164】
次いで、実施形態2によるセンスアンプ8Cの場合、オフセットキャンセル機構を有するため、センスアンプ8Aと同様に、ディスチャージ時間tDCは短縮化される。一方、キャパシタ19,20に充電する電流が、十分確保できない場合、プリチャージの電流をより大きくし、プリチャージ時間tPCを短縮化する。それとともに、ディスチャージ動作をオフセット動作完了前に開始させ、一部並行して実行することで、オフセットキャンセル時間tOCが長くなる分をカバーする。これにより、センスアンプの全体的な動作時間は、センスアンプ8Bの場合とほぼ同等とすることが可能になる。
【0165】
(実施形態4)
上記各センスアンプを備えた半導体装置もまた、本願の一実施形態である。具体的には、例えば、複数のメモリセル(メモリアレイ2のメモリセルMCnm)と、複数の上記メモリセルの中から1つを選択する選択回路(アドレスデコーダ4)と、参照信号を生成して参照信号線(REF)に出力する参照信号生成器9と、上記差動増幅器(センスアンプ8A~8D)のいずれか一つとを備え、上記差動増幅器の上記外部入力端子対(DIN1,DIN2)の一方の端子に、上記選択回路により選択された上記メモリセルのビット線(BL)が接続され、上記外部入力端子対の他方の端子に、上記参照信号線(REF)が接続される、半導体装置である。
(実施形態5)
センスアンプのオフセットキャンセル方法もまた、本願の一実施形態である。具体的には、例えば、センスアンプ(差動増幅器)の入力端子対のオフセット電圧をキャンセルするオフセットキャンセル方法であって、上記センスアンプ(差動増幅器)は、供給可能な電流が第1の電流である第1の電源に接続された電流源と、上記電流源に接続され、入力端子対に入力された信号を増幅して出力信号対を出力する能動素子対と、電源電圧が上記第1の電源とは異なる第2の電源に接続され、上記出力信号対を出力端子対に出力するための負荷素子対と、外部入力端子対と上記入力端子対との間に挿入される容量素子対と、を備え、上記出力端子対と上記入力端子対との間で対応する端子同士を短絡させることにより、上記入力端子対のオフセット電圧が入力電圧に換算された電圧を上記容量素子対に生じさせるように上記容量素子対を充電するオフセットキャンセル動作を行うステップと、上記オフセットキャンセル動作を行う際に、上記電流源の供給可能な電流を第1の電流よりも大きい第2の電流となるように制御するステップと、を備える、オフセットキャンセル方法である。
【0166】
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。これらは全て本発明の範疇に属するものである。さらに文中や図中に含まれる数値等もあくまで一例であり、異なるものを用いても本発明の効果を損なうものではない。
【符号の説明】
【0167】
1…半導体記憶装置(半導体装置)
2…メモリアレイ(複数のメモリセル)
3…アンプブロック
4…アドレスデコーダ(選択回路)
5…ワード線ドライバ
6…タイミングコントローラ
7…カラムデコーダ
8,8A,8B,8C,8D…センスアンプ(差動増幅器)
9…参照信号生成器
11~16,37~39,41~44…PMOSトランジスタ
17,18,31~36…NMOSトランジスタ
19,20…キャパシタ
21,22…スイッチ
23…差動アンプ
25…インバータ
PG1,PG2…入力端子対
DIN1,DIN2…データ入力経路
VDD1…電源(第1の電源)
VDD2…電源(第5の電源)
VDD3…電源(第3の電源)
VDD4…電源(第6の電源)
VCC1…電源(第4の電源)
VSS…電源(第2の電源)
BL…ビット線
REF…参照信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13