(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】電流共振型DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
(21)【出願番号】P 2021214197
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103105(WO,A1)
【文献】特開2014-011940(JP,A)
【文献】特開2017-229140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を含むブリッジ回路で構成された1次側回路と、複数のスイッチング素子を含むブースト回路および整流回路で構成された2次側回路と、共振コイルおよび共振コンデンサを含む電流共振回路と、前記1次側回路および前記2次側回路の間に設けられたトランスと、前記1次側回路を構成するスイッチング素子および前記2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部とを備えた電流共振型DC/DCコンバータであって、
前記1次側回路および前記2次側回路に流れる電流が予め定められた許容電流値を超えず、かつ前記2次側回路から出力される電力が最大となるように予め決定しておいた前記1次側回路を構成するスイッチング素子の駆動周波数の下限値および前記ブースト回路のブースト率を、前記1次側回路に入力される直流電圧毎に下限駆動周波数および最適ブースト率として記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記ブースト回路のブースト動作によって前記1次側回路に入力された直流電圧を昇圧して前記2次側回路から出力させるときに、前記ブースト率が当該直流電圧に対応した前記最適ブースト率に近づいた状態にし、かつ前記駆動周波数が当該直流電圧に対応した前記下限駆動周波数を下回らないように前記1次側回路を構成するスイッチング素子および前記2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御する
ことを特徴とする電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記1次側回路に入力された直流電圧の前記ブースト動作による昇圧を開始させるとき、前記駆動周波数を予め定められた上限駆動周波数に維持したまま前記ブースト率をゼロから当該直流電圧に対応した前記最適ブースト率まで増加させていった後に、前記駆動周波数を当該直流電圧に対応した前記下限駆動周波数に向かって低下させていく
ことを特徴とする請求項1に記載の電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記1次側回路に入力された直流電圧の前記ブースト動作による昇圧を終了させるとき、前記ブースト率を前記最適ブースト率に維持したまま前記駆動周波数を前記上限駆動周波数まで増加させていった後に、前記ブースト率をゼロまで低下させていく
ことを特徴とする請求項2に記載の電流共振型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記ブースト率が前記1次側回路に入力された直流電圧に対応する最適ブースト率に近づいた状態で前記駆動周波数を変化させて、前記2次側回路から出力される電力が所望の出力電力になるように前記1次側回路を構成するスイッチング素子および前記2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電流共振型DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブースト機能を備えた電流共振型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV,Electric Vehicle)およびプラグインハイブリッド車(PHEV,Plug-in Hybrid Vehicle)等の電動車の駆動用車載バッテリから直流電力を取り出すV2H(Vehicle to Home)と呼ばれる装置は、通常、車載バッテリが出力する直流電圧(以下、「入力電圧」ともいう)を昇圧する双方向DC/DCコンバータと、昇圧後の直流電圧を交流電圧に変換する双方向DC/ACインバータとを備えている。このうち、双方向DC/DCコンバータとしては、小型化および高効率化に適したCLLC方式の電流共振型DC/DCコンバータが注目されている。
【0003】
CHAdeMO規格に準拠したV2H装置は、150V~450Vの広範囲の入力電圧に対応する必要がある。しかしながら、CLLC方式の電流共振型DC/DCコンバータは、双方向の動作において所定の電圧を出力しなければならないためトランスの変圧比の自由度が低く、LLC方式の電流共振型DC/DCコンバータ単体と昇降圧チョッパーとを組み合わせた電源に比べて昇圧可能な範囲が狭い。このため、CLLC方式の電流共振型DC/DCコンバータは、入力電圧が比較的低いときに、双方向DC/ACインバータが必要とする直流電力を出力できない場合があった。すなわち、CLLC方式の電流共振型DC/DCコンバータは、広範囲の入力電圧に対応できなかった。
【0004】
この問題を解決する方法の1つとして、従来、LLC方式の電流共振型DC/DCコンバータの2次側回路にブースト機能をもたせることが検討されている。例えば、非特許文献1には、LLC方式の電流共振型DC/DCコンバータの2次側整流回路に2つのスイッチング素子SS2,SS3を設け、両方のスイッチング素子がオンする遅延時間TD(=T0-T1,T3-T4)を作り出すことにより、ブースト(より強力な昇圧)を実現することが記載されている。なお、非特許文献1に記載された電流共振型DC/DCコンバータでは、ブースト率TD-N(=一駆動周期TSにおける遅延時間TDの割合)と1次側回路の駆動周波数Fとをパラメータとした関数によって昇圧率Mが表される(特に、Fig.2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yungtaek Jang, et al., “Implementation of 3.3-kW GaN-Based DC-DC Converter for EV On-Board Charger with Series-Resonant Converter that Employs Combination of Variable-Frequency and Delay-Time Control”, Proc. of APEC2016, pp.1292-1299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この従来のLLC方式の電流共振型DC/DCコンバータでは、所望の昇圧率Mを得るために、ブースト率TD-Nと駆動周波数Fの組み合わせを無限に存在する組み合わせの中からどのように選択すればよいのかが定まっていない。このため、この電流共振型DC/DCコンバータでは、ブースト率を高くし過ぎたり駆動周波数Fを低くし過ぎたりした結果、1次側回路および2次側回路に流れる共振電流(ピーク電流)が予め定められた許容電流値を超えてしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、入力電圧が比較的低いときでもピーク電流を許容電流値以下に抑制しながら必要とされる大きな直流電力を出力することが可能な、広範囲の入力電圧に対応した電流共振型DC/DCコンバータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電流共振型DC/DCコンバータは、複数のスイッチング素子を含むブリッジ回路で構成された1次側回路と、複数のスイッチング素子を含むブースト回路および整流回路で構成された2次側回路と、共振コイルおよび共振コンデンサを含む電流共振回路と、1次側回路および2次側回路の間に設けられたトランスと、1次側回路を構成するスイッチング素子および2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部とを備えたものであって、1次側回路および2次側回路に流れる電流が予め定められた許容電流値を超えず、かつ2次側回路から出力される電力が最大となるように予め決定しておいた1次側回路を構成するスイッチング素子の駆動周波数の下限値およびブースト回路のブースト率を、1次側回路に入力される直流電圧毎に下限駆動周波数および最適ブースト率として記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、ブースト回路のブースト動作によって1次側回路に入力された直流電圧を昇圧して2次側回路から出力させるときに、ブースト率が当該直流電圧に対応した最適ブースト率に近づいた状態にし、かつ駆動周波数が当該直流電圧に対応した下限駆動周波数を下回らないように上記1次側回路を構成するスイッチング素子および2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御するよう構成されている。
【0009】
この構成では、1次側回路および2次側回路に流れる電流(ピーク電流)が予め定められた許容電流値を超えず、かつ2次側回路から出力される電力が最大となるような駆動周波数の下限値(下限駆動周波数)およびブースト率(最適ブースト率)を1次側回路に入力される直流電圧毎にシミュレーションや実機評価等により予め決定しておき、これにしたがって制御部が1次側回路および2次側回路を制御するようになっている。このため、この構成によれば、入力電圧が低い場合であってもピーク電流を許容電流値以下に抑制しながら必要とされる大きな直流電力を2次側回路から出力することが可能となる。
【0010】
上記DC/DCコンバータの制御部は、必要とされる直流電力を2次側回路から確実に出力するために、1次側回路に入力された直流電圧のブースト動作による昇圧を、駆動周波数を予め定められた上限駆動周波数に維持したままブースト率をゼロから当該直流電圧に対応した最適ブースト率まで増加させていった後に、駆動周波数を当該直流電圧に対応した下限駆動周波数に向かって低下させていくよう構成されていることが好ましい。
【0011】
上記DC/DCコンバータの制御部は、1次側回路に入力された直流電圧のブースト動作による昇圧を終了させるとき、ブースト率を最適ブースト率に維持したまま駆動周波数を上限駆動周波数まで増加させていった後に、ブースト率をゼロまで低下させていくよう構成されていてもよい。
【0012】
また、上記DC/DCコンバータの制御部は、ブースト率が1次側回路に入力された直流電圧に対応する最適ブースト率に近づいた状態で駆動周波数を変化させて、2次側回路から出力される電力が所望の出力電力になるように1次側回路を構成するスイッチング素子および2次側回路を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御するよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力電圧が比較的低いときでもピーク電流を許容電流値以下に抑制しながら必要とされる大きな直流電力を出力することが可能な、広範囲の入力電圧に対応した電流共振型DC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図2】実施例に係るDC/DCコンバータの使用態様を示すブロック図である。
【
図3】実施例に係るDC/DCコンバータを構成するスイッチング素子の制御タイミングを示す図であって、(A)はブーストを行わない場合の制御タイミングの一例、(B)はブーストを行う場合の制御タイミングの一例を示す図である。
【
図4】実施例に係るDC/DCコンバータの電流経路を示す図であって、(A)は
図3(B)の期間1-1における電流経路、(B)は期間1-2における電流経路、(C)は期間1-3における電流経路を示す図である。
【
図5】実施例に係るDC/DCコンバータの電流経路を示す図であって、(A)は
図3(B)の期間2-1における電流経路、(B)は期間2-2における電流経路、(C)は期間2-3における電流経路を示す図である。
【
図6】実施例に係るDC/DCコンバータにおける、駆動周波数、出力電圧およびブースト率の関係を示す図である。
【
図7】実施例に係るDC/DCコンバータの制御部が実行する起動処理を示すフロー図である。
【
図8】実施例に係るDC/DCコンバータの制御部が起動処理の後に実行する通常処理および終了処理を示すフロー図である。
【
図9】実施例に係るDC/DCコンバータの制御部が実行する起動処理の概要を示す模式図である。
【
図10】本発明の第1変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図11】本発明の第2変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【
図12】本発明の第3変形例に係るDC/DCコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る電流共振型DC/DCコンバータの実施例について説明する。
【0016】
[実施例]
図1に、本発明の実施例に係る電流共振型DC/DCコンバータ10Aを示す。DC/DCコンバータ10Aは、双方向に動作するCLLC方式のDC/DCコンバータであり、
図2に示すように、双方向DC/ACインバータ120とともにV2H装置110を構成している。V2H装置110は、主に、電動車の駆動用車載バッテリ100の直流電力を所定の交流電力に変換して負荷130に出力する放電動作と、商用電力系統140の交流電力を所定の直流電力に変換して車載バッテリ100に出力する充電動作とを行うことができる。
【0017】
放電動作において、DC/DCコンバータ10Aは、車載バッテリ100が出力する直流電圧、すなわち1次側入出力端T1,T1’に現れる電圧V1を昇圧するとともに、昇圧後の直流電圧、すなわち電圧V2を2次側入出力端T2,T2’から出力する。一方、充電動作において、DC/DCコンバータ10Aは、双方向DC/ACインバータ120が出力する直流電圧、すなわち2次側入出力端T2,T2’に現れる電圧V2を降圧するとともに、降圧後の直流電圧、すなわち電圧V1を1次側入出力端T1,T1’から出力する。
【0018】
DC/DCコンバータ10Aは、複数のスイッチング素子を含むブリッジ回路で構成された1次側回路11と、複数のスイッチング素子を含むブースト回路および整流回路で構成された2次側回路12と、共振コイルL1,L2および共振コンデンサC9,C10を含む電流共振回路と、1次側回路11および2次側回路12の間に設けられたトランスTRと、1次側回路11を構成するスイッチング素子および2次側回路12を構成するスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部13とを備えている。
【0019】
1次側回路11は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、第3スイッチング素子Q3と、第4スイッチング素子Q4とを含んでいる。第1スイッチング素子Q1は第1レグの上アームを構成し、第2スイッチング素子Q2は第1レグの下アームを構成する。第3スイッチング素子Q3は第2レグの上アームを構成し、第4スイッチング素子Q4は第2レグの下アームを構成する。第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の接続点は、共振コンデンサC9および共振コイルL1を介してトランスTRの1次巻線の一端に接続され、第3スイッチング素子Q3および第4スイッチング素子Q4の接続点は、1次巻線の他端に接続されている。
【0020】
共振コイルL1は、トランスTRの漏れインダクタンスであってもよいし、これとは別のコイルであってもよい。また、共振コイルL1は、上記漏れインダクタンスと別のコイルとを合成したものであってもよい。
【0021】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4は、制御部13の制御下でオン/オフ(スイッチング)する。第1~第4スイッチング素子Q1~Q4としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、シリコン製のパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、シリコンカーバイド製のパワーMOSFET等のパワー半導体素子を用いることができる。
【0022】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれには、第1~第4ダイオードD1~D4が逆並列接続されている。第1~第4ダイオードD1~D4は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれに寄生する(内蔵された)寄生ダイオードであってもよいし、外付けのダイオードであってもよい。
【0023】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれには、さらに、第1~第4コンデンサC1~C4が並列接続されている。第1~第4コンデンサC1~C4は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のそれぞれに寄生する(内蔵された)寄生容量であってもよいし、外付けのコンデンサであってもよい。
【0024】
上アームを構成する第1スイッチング素子Q1および第3スイッチング素子Q3は、高電位側の1次側入出力端T1に接続されている。また、下アームを構成する第2スイッチング素子Q2および第4スイッチング素子Q4は、低電位側の1次側入出力端T1’に接続されている。
【0025】
2次側回路12は、第5スイッチング素子Q5と、第6スイッチング素子Q6と、第7スイッチング素子Q7と、第8スイッチング素子Q8とを含んでいる。第5スイッチング素子Q5は第3レグの上アームを構成し、第6スイッチング素子Q6は第3レグの下アームを構成する。第7スイッチング素子Q7は第4レグの上アームを構成し、第8スイッチング素子Q8は第4レグの下アームを構成する。第5スイッチング素子Q5および第6スイッチング素子Q6の接続点は、共振コンデンサC10および共振コイルL2を介してトランスTRの2次巻線の一端に接続され、第7スイッチング素子Q7および第8スイッチング素子Q8の接続点は、2次巻線の他端に接続されている。
【0026】
第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のうち、本発明の「ブースト回路」を構成する第6スイッチング素子Q6および第8スイッチング素子Q8は、制御部13の制御下でオン/オフ(スイッチング)する。一方、第5スイッチング素子Q5および第7スイッチング素子Q7は、制御部13の制御下でオフ状態をとり続ける。第5~第8スイッチング素子Q5~Q8としては、IGBT、シリコン製のパワーMOSFET、シリコンカーバイド製のパワーMOSFET等のパワー半導体素子を用いることができる。
【0027】
第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のそれぞれには、第5~第8ダイオードD5~D8が逆並列接続されている。第5~第8ダイオードD5~D8は、第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のそれぞれに寄生する(内蔵された)寄生ダイオードであってもよいし、外付けのダイオードであってもよい。第5~第8ダイオードD5~D8は、放電動作時に本発明の「整流回路」を構成する。
【0028】
第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のそれぞれには、さらに、第5~第8コンデンサC5~C8が並列接続されている。第5~第8コンデンサC5~C8は、第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のそれぞれに寄生する(内蔵された)寄生容量であってもよいし、外付けのコンデンサであってもよい。
【0029】
制御部13は、マイコンやFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の制御用ICによって構成されている。制御部13は、上位制御器からの指令およびフィードバック情報に基づき、1次側回路11を構成する第1~第4スイッチング素子Q1~Q4および2次側回路12を構成する第5~第8スイッチング素子Q5~Q8を制御する。なお、上位制御器から制御部13が受け取る指令には、起動指令、停止指令および出力電力指令値等が含まれている。また、放電動作時に制御部13が受け取るフィードバック情報には、入力電圧V1の電圧値、出力電圧V2の電圧値、および2次側入出力端T2から流れ出る電流(出力電流)の電流値等が含まれている。フィードバック情報には、1次側入出力端T1に流れ込む電流(入力電流)の電流値が含まれていてもよい。
【0030】
制御部13は、
図3(A)に示すように、第1レグを構成する第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を逆位相でオン/オフさせる。このとき、制御部13は、第2スイッチング素子Q2のオフ時間が第1スイッチング素子Q1のオン時間よりも若干長くなるように両者を制御することにより、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2の両方がオフ状態をとる期間、すなわちデッドタイムを設けることができる。第2レグを構成する第3スイッチング素子Q3および第4スイッチング素子Q4についても同様である。
【0031】
また、制御部13は、入力電圧V1が比較的高いときは、
図3(A)に示すように、第5スイッチング素子Q5および第7スイッチング素子Q7だけでなく第6スイッチング素子Q6および第8スイッチング素子Q8もオフ状態に維持してブースト回路を停止させることで、第5~第8ダイオードD5~D8にダイオードブリッジ整流を行わせる。このとき、制御部13は、駆動周期TS(=1/駆動周波数)を変更することによって出力電力を指令値に追従させることができる。
【0032】
一方、制御部13は、入力電圧V1が比較的低いときは、
図3(B)に示すように、第1スイッチング素子Q1および第4スイッチング素子Q4のターンオン、並びに第2スイッチング素子Q2および第3スイッチング素子Q3のターンオンに合わせて、期間TB(以下、「ブースト期間」という)だけ第6スイッチング素子Q6および第8スイッチング素子Q8をオン状態とすることで、ブースト回路を作動させる。このとき、制御部13は、ブースト期間TBおよび駆動周期TSのうちの少なくとも1つを変更することによって出力電力を指令値に追従させることができる。ただし、ブースト期間TBには急峻に立ち上がる大きな電流が流れるので、ブースト期間TBの頻繁な変更は予期せぬ事態を生じさせるおそれがある。このため、出力電力の追従は、主として駆動周期TS(駆動周波数)の変更によって行うことが望ましい。
【0033】
後述するように、制御部13がブースト回路を作動させると、2次側回路12がトランスTRを介して短絡されて大きな共振電流が生じる。これによる大きなエネルギーを共振コイルL2に蓄積し、適当なタイミングで解放すれば、大きな出力電流を得ることができる。
【0034】
ブースト回路が作動する場合、一駆動周期TSは6つの期間1-1,1-2,1-3,2-1,2-2,2-3で構成されることとなる。
【0035】
期間1-1は、ブースト期間である。この期間では、オン状態とされた第6スイッチング素子Q6および第8ダイオードD8によってトランスTRの2次巻線が短絡されることにより、
図4(A)に示すように、「1次側入出力端T1→第1スイッチング素子Q1(オン状態)→共振コンデンサC9→共振コイルL1→トランスTRの1次巻線→第4スイッチング素子Q4(オン状態)→1次側入出力端T1’」の経路、および「トランスTRの2次巻線→共振コイルL2→共振コンデンサC10→第6スイッチング素子Q6(オン状態)→第8ダイオードD8」の循環経路で大きな共振電流が流れ、共振コイルL1,L2に大きなエネルギーが蓄積される。
【0036】
期間1-2は、伝達期間である。この期間では、第6スイッチング素子Q6がオフ状態とされたことにより共振コイルL2に蓄積されていたエネルギーが解放され、
図4(B)に示すように、「2次側入出力端T2’→第8ダイオードD8→トランスTRの2次巻線→共振コイルL2→共振コンデンサC10→第5ダイオードD5→2次側入出力端T2」の経路で電流が流れ、出力電圧V2が昇圧される。昇圧の程度は、期間1-1(ブースト期間TB)の長さに依存する。
【0037】
期間1-3は、回生期間である。この期間では、第1スイッチング素子Q1および第4スイッチング素子Q4がオフ状態とされたことにより共振コイルL1に蓄積されていたエネルギーが解放され、
図4(C)に示すように、「1次側入出力端T1’→第2ダイオードD2→共振コンデンサC9→共振コイルL1→トランスTRの1次巻線→第3ダイオードD3→1次側入出力端T1」の経路で電流が流れ、車載バッテリ100にエネルギーが回生される。この1次側回路11における電流、および期間1-2から流れ続けている2次側回路12における電流は、徐々に減少していく。
【0038】
期間2-1では、期間1-1とは逆方向の共振電流により、共振コイルL1,L2に大きなエネルギーが蓄積される(
図5(A)参照)。
【0039】
期間2-2では、期間1-2と異なる経路で共振コイルL2に蓄積されていたエネルギーが解放され、出力電圧V2が昇圧される(
図5(B)参照)。
【0040】
期間2-3では、期間1-3と異なる経路で共振コイルL1に蓄積されていたエネルギーが解放され、車載バッテリ100に回生される(
図5(C)参照)。
【0041】
図1に示すように、DC/DCコンバータ10Aは、記憶部14をさらに備えている。記憶部14は、例えば、不揮発性のメモリ等によって構成されている。記憶部14は、制御部13が1次側回路11および2次側回路12を制御する際に必要とされる情報を記憶している。
【0042】
続いて、記憶部14に記憶された情報の意義を理解するために必要な、本実施例に係るDC/DCコンバータ10Aの特性について説明する。
【0043】
まず、入力電圧V1=263V、一定の抵抗負荷の条件下で放電動作を行ったときに、駆動周波数およびブースト率(=ブースト期間TB/駆動周期TS)と出力電圧V2との間にどのような関係があるのかをシミュレーションした結果を
図6に示す。ブースト率は、0%(ブーストなし)、10%、20%、25%および30%とした。
【0044】
この結果が示すように、DC/DCコンバータ10Aは、ブースト率を高くすればするほど、(1)出力電圧V2のピークが高くなり、(2)出力電圧V2がピークを迎える駆動周波数が高くなり、かつ(3)出力電圧V2が駆動周波数に対して敏感になる、という特性を有している。また、1次側回路11および2次側回路12に流れる電流(共振電流)のピークも、出力電圧V2に似た傾向を示す。このため、DC/DCコンバータ10Aでは、入力電圧V1が低いためにブースト率を比較的高く設定せざるを得ない場合に、ピーク電流を予め定められた許容電流値以下に抑えるために駆動周波数を厳密に制御する必要がある。特に、出力電力を指令値に追従させるために駆動周波数を比較的高い周波数から低下させていく場合は、駆動周波数をどこまで低下させることが可能なのかを正確に知っておく必要がある。なお、許容電流値は、回路構成部品(例えば、スイッチング素子に使用するパワー半導体素子)がどの程度の電流を流すことができるのかに基づいて定めた値である。回路構成部品に許容電流値を超える電流が流れると、熱破壊等の問題が生じる。
【0045】
次に、入力電圧V1=150V、出力電圧V2=450V、許容電流値=35.5A、共振回路の共振周波数=110kHzの条件下で放電動作を行ったときに、駆動周波数をどこまで低下させることが可能なのかと、そのときの出力電力とをシミュレーションした結果を表1に示す。ブースト率は、20%、25%、30%、35%、40%とした。
【表1】
【0046】
この結果が示すように、DC/DCコンバータ10Aは、ブースト率を高くすればするほど駆動周波数の下限値が上昇(例えば、ブースト率を20%から40%に変更すると、駆動周波数の下限値が130kHzから211kHzに上昇)するという特性、およびブースト率によって動作周波数を下限値としたときの出力電力が異なる(例えば、ブースト率を30%に設定したときに、出力電力が最も高い2.69kWとなる)という特性を有している。なお、表1は、前述した通り、入力電圧V1=150Vの条件下でのシミュレーション結果であり、入力電圧V1の条件が異なれば、表1とは異なる結果になる。
【0047】
このような特性を踏まえ、本実施例に係るDC/DCコンバータ10Aでは、記憶部14に、1次側回路11および2次側回路12に流れる電流(ピーク電流)が予め定められた許容電流値(例えば、35.5A)を超えず、かつ2次側回路12から出力される電力(出力電力)が最大となるように予め決定しておいた駆動周波数の下限値およびブースト率を、1次側回路11に入力される直流電圧(入力電圧V1)毎に、下限駆動周波数および最適ブースト率として記憶しておく(表2参照)。
【表2】
例えば、入力電圧V1=150Vに対応する最適ブースト率および下限駆動周波数については、表1にしたがい、30%および189kHzを記憶しておく。***で示した他の入力電圧V1に対応する最適ブースト率および下限駆動周波数は、入力電圧V1の条件を変えて行ったシミュレーションの結果から導き出すことができる。
【0048】
続いて、
図7~
図9を参照しながら、記憶部14に記憶された入力電圧V1毎の最適ブースト率および下限駆動周波数に基づく、制御部13が放電動作時に実行する処理について説明する。
【0049】
ステップS1において、制御部13は、上位制御器から放電動作開始の指令(起動指令)とともに出力電力指令値を受け取る。
【0050】
ステップS2において、制御部13は、入力電圧V1を測定する。本実施例では、電圧センサが出力した入力電圧V1に関する電気信号をフィードバック情報として受け取ることによって「測定」が行われる。
【0051】
ステップS3において、制御部13は、測定した入力電圧V1に対応した最適ブースト率および下限駆動周波数を記憶部14から読み取る。例えば、入力電圧V1が150Vの場合は、最適ブースト率30%および下限駆動周波数189kHzを読み取る(表2参照)。
【0052】
ステップS4において、制御部13は、予め定められた上限駆動周波数fm(例えば、共振周波数の2倍である220kHz)で1次側回路11を構成する第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオン/オフを開始させる。また、制御部13は、ブースト率0%で2次側回路12を構成する第5~第8スイッチング素子Q5~Q8のオン/オフを開始させる。ただし、ブースト率が0%である間、制御部13は、第5~第8スイッチング素子Q5~Q8をオンさせることはない(
図3(A)参照)。
【0053】
ステップS5において、制御部13は、測定した入力電圧V1と予め定められたブースト開始電圧とを比較する。入力電圧V1がブースト開始電圧よりも高い場合は、ブーストを行う必要はないと判断し、ステップS10に進む。一方、それ以外の場合は、ブーストを行うためにステップS6に進む。
【0054】
ステップS6において、制御部13は、ブースト率を所定量(例えば、1%)だけ増加させる。この結果、2次側回路12を構成する第5~第8スイッチング素子Q5~Q8が増加後のブースト率でオン/オフするようになる。より詳しくは、第5スイッチング素子Q5および第7スイッチング素子Q7がオフ状態を維持したまま、第6スイッチング素子Q6および第8スイッチング素子Q8が増加後のブースト率でオン/オフするようになる。ブースト率が増加すると、出力電力も増加する。
【0055】
ステップS7において、制御部13は、出力電力を測定する。本実施例では、電圧センサが出力した出力電圧V2に関する電気信号、および2次側入出力端T2から流れ出る電流を検出する電流センサが出力した出力電流に関する電気信号をフィードバック情報として受け取ること、および受け取った電気信号同士を演算することによって「測定」が行われる。
【0056】
ステップS8において、制御部13は、ステップS7において測定した出力電力とステップS1において受け取った出力電力指令値とを比較する。両者が一致する場合は、動作点(ブースト率および駆動周波数)の変更をさらに行う必要はないので、[A]に進む。これにより、DC/DCコンバータ10Aの起動処理は終了する。一方、両者が一致しない場合、すなわち、出力電力が出力電力指令値に達していない場合は、動作点の変更を続けるためにステップS9に進む。
【0057】
ステップS9において、制御部13は、現在のブースト率とステップS3において読み取った最適ブースト率とを比較する。両者が一致する場合は、さらにブースト率を増加するのは不適当なので、ステップS10に進む。一方、両者が一致しない場合、すなわち、現在のブースト率が最適ブースト率に達していない場合は、ブースト率の増加により出力電力を出力電力指令値に近づける余地があるため、ステップS6に戻る。
【0058】
制御部13は、出力電力が出力電力指令値に一致するかブースト率が最適ブースト率に一致するまで、ステップS6~S9を繰り返し実行する。
【0059】
ステップS10において、制御部13は、駆動周波数を所定量(例えば、1kHz)だけ低下させる。この結果、1次側回路11を構成する第1~第4スイッチング素子Q1~Q4および2次側回路12を構成する第5~第8スイッチング素子Q5~Q8は、低下後の駆動周波数でオン/オフするようになる。駆動周波数が低下すると、出力電力は増加する。
【0060】
ステップS11において、制御部13は、ステップS7と同様の手法により出力電力を測定する。
【0061】
ステップS12において、制御部13は、ステップS11において測定した出力電力とステップS1において受け取った出力電力指令値とを比較する。両者が一致する場合は、動作点の変更をさらに行う必要はないので、[A]に進む。これにより、DC/DCコンバータ10Aの起動処理は終了する。一方、両者が一致しない場合、すなわち、出力電力が出力電力指令値に達していない場合は、動作点(駆動周波数)の変更を続けるためにステップS10に戻る。
【0062】
制御部13は、出力電力が出力電力指令値に一致するまで、ステップS10~S12を繰り返し実行する。なお、上位制御器が正常に機能しており、かつ記憶部14に記憶された情報に誤りがなければ、出力電力が出力電力指令値に一致する前に駆動周波数が下限駆動周波数を下回ることはないが、ピーク電流が許容電流値を超えることによる素子破壊を確実に防ぐために、制御部13は、ステップS10を実行した後に駆動周波数が下限駆動周波数を下回っていないかどうかを判定することが好ましい。この判定を行わない場合は、ステップS3における下限駆動周波数の読み取りを省略することができる。
【0063】
このように、制御部13は、駆動周波数を上限駆動周波数fmに維持したままブースト率を0%から直流電圧V1に対応した最適ブースト率まで増加させていった後に、駆動周波数を直流電圧V1に対応した下限駆動周波数に向かって低下させていく(
図9中の太実線矢印「実施例」、および曲線C3参照)。これにより、DC/DCコンバータ10Aは、ピーク電流が許容電流値を超えるのを確実に防ぎながら、上位制御器から指令された通りの出力電力を確実に出力することができる。なお、駆動周波数とブースト率とを同時並行的に変化させると、ブースト率が最適ブースト率まで増加する前に駆動周波数が下限駆動周波数まで低下してしまい、それ以上駆動周波数を低下させることができないために指令された通りの出力電力を出力できない場合がある(
図9中の破線矢印「比較例」参照)。
【0064】
図6から理解されるように、出力電圧V2は、ある程度増加したブースト率に対して非常に敏感である。出力電流および出力電力にも同じような傾向がある。このため、指令値に対する出力電力の追従(特に、終盤の微調整)は、ブースト率によってではなく駆動周波数の変更によって行うことが好ましい。ブースト率を最適ブースト率まで増加させ、ブースト率を最適ブースト率に維持した状態で駆動周波数を下限駆動周波数に向かって低下させるのは、このような理由による。
【0065】
起動処理の後に実行されるステップS13において、制御部13は、上位制御器から停止指令を受け取ったか否かを判定する。停止指令を受け取った場合は、終了処理(ステップS14~S18)に進む。一方、停止指令を受け取っていない場合は、通常処理(ステップS19~S26)に進む。
【0066】
ステップS14,S15において、制御部13は、上限駆動周波数fmになるまで駆動周波数を所定量(例えば、1kHz)ずつ増加させていく。
【0067】
ステップS16,S17において、制御部13は、0%になるまでブースト率を所定量(例えば、1%)ずつ低下させていく。
【0068】
駆動周波数が上限駆動周波数fmになり、かつブースト率が0%になった後に実行されるステップS18において、制御部13は、1次側回路11を構成する第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオン/オフを終了させる。なお、2次側回路12を構成する第5~第8スイッチング素子Q5~Q8(第5スイッチング素子Q5および第7スイッチング素子Q7はオフ状態を維持しているので、第6スイッチング素子Q6および第8スイッチング素子Q8)のオン/オフは、ブースト率が0%になった時点で終了しているといえる。
【0069】
この終了処理により、DC/DCコンバータ10Aは、安全に放電動作を終了することができる。
【0070】
ステップS19において、制御部13は、上位制御器から出力電力指令値を受け取る。制御部13は、出力電力指令値に変更があるまで、ステップS19の実行を保留してもよい。言い換えると、制御部13は、出力電力指令値に変更があった場合に限り、通常処理を実行してもよい。
【0071】
ステップS20において、制御部13は、ステップS2と同様の手法により入力電圧V1を測定する。
【0072】
ステップS21において、制御部13は、測定した入力電圧V1に対応した最適ブースト率および下限駆動周波数を記憶部14から読み取る。
【0073】
ステップS22において、制御部13は、現在のブースト率とステップS21において読み取った最適ブースト率とを比較する。両者が一致しない場合は、ステップS23に進んでブースト率を増加または低下させた後にステップS24に進む。一方、両者が一致する場合は、ステップS23を経由せずにステップS24に進む。
【0074】
ステップS23において、制御部13は、最適ブースト率に近づくようにブースト率を所定量(例えば、1%)だけ増加または低下させる。
【0075】
ステップS24において、制御部13は、ステップS7,S11と同様の手法により出力電力を測定する。
【0076】
ステップS25において、制御部13は、ステップS24において測定した出力電力とステップS19において受け取った出力電力指令値とを比較する。両者が一致する場合は、動作点の変更をさらに行う必要はないので、[A]に進む。一方、両者が一致しない場合は、動作点(駆動周波数)の変更を続ける必要があるため、ステップS26に進む。
【0077】
ステップS26において、制御部13は、出力電力が出力電力指令値に近づくように駆動周波数を所定量(例えば、1kHz)だけ増加または低下させる。より詳しくは、制御部13は、出力電力が出力電力指令値よりも大きい場合は駆動周波数を増加させ、出力電力が出力電力指令値よりも小さい場合は駆動周波数を低下させる。
【0078】
上位制御器から停止指令を受け取らない限り、制御部13は、通常処理(ステップS19~S26)を繰り返し実行する。これにより、DC/DCコンバータ10Aは、ピーク電流が許容電流値を超えるのを防ぎながら、上位制御器から指令された最新の指令値にしたがって出力電力を出力し続けることができる。
【0079】
なお、ピーク電流が許容電流値を超えることによる素子破壊をより確実に防ぐために、制御部13は、ステップS26を実行した後に駆動周波数が下限駆動周波数を下回っていないかどうかを判定することが好ましい。この判定を行わない場合は、ステップS21における下限駆動周波数の読み取りを省略することができる。
【0080】
[変形例]
以上、本発明に係る電流共振型DC/DCコンバータの実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。以下、本発明の代表的な変形例について説明する。
【0081】
・
図10に、本発明の第1変形例に係る電流共振型DC/DCコンバータ10Bを示す。本変形例に係るDC/DCコンバータ10Bは、2次側の共振コイルL2および共振コンデンサC10が省略されている点で実施例に係るDC/DCコンバータ10Aと相違している。双方向の動作が不要な場合は、本変形例の構成を採用することで部品点数を削減することができる。
【0082】
・
図11に、本発明の第2変形例に係る電流共振型DC/DCコンバータ10Cを示す。本変形例に係るDC/DCコンバータ10Cは、共振コイルL2および共振コンデンサC10が省略されている点と、第5スイッチング素子Q5、第7スイッチング素子Q7、第5コンデンサC5および第7コンデンサC7が省略された2次側回路15を備えている点とにおいて実施例に係るDC/DCコンバータ10Aと相違している。実施例において、第3レグの上アーム(Q5,D5,C5)および第4レグの上アーム(Q7,D7,C7)は、「整流回路」の一部としてしか利用されていなかった。このため、双方向の動作が不要で、かつ2次側における整流をダイオードブリッジ整流とする場合は、本変形例の構成を採用し、スイッチング素子Q5,Q7およびコンデンサC5,C7を省略しても動作に支障はない。
【0083】
・
図12に、本発明の第3変形例に係る電流共振型DC/DCコンバータ10Dを示す。本変形例に係るDC/DCコンバータ10Dは、共振コイルL2および共振コンデンサC10が省略されている点と、2次側回路15の代わりに2次側回路16を備えている点とにおいて実施例に係るDC/DCコンバータ10Aと相違している。2次側回路16は、第5~第8ダイオードD5~D8と、第5ダイオードD5および第6ダイオードD6の接続点(トランスTRの2次巻線の一端)と第7ダイオードD7および第8ダイオードD8の接続点(トランスTRの2次巻線の他端)との間に直列に接続された「ブースト回路」としての第9スイッチング素子Q9および第10スイッチング素子Q10と、第9スイッチング素子Q9に並列接続された第9ダイオードD9と、第10スイッチング素子Q10に並列接続された第10ダイオードD10とを備えている。制御部13は、第9スイッチング素子Q9を第6スイッチング素子Q6のごとくオン/オフさせるとともに、第10スイッチング素子Q10を第8スイッチング素子Q8のごとくオン/オフさせることにより、2次側回路16をブースト動作させることができる。本変形例の構成は、双方向の動作が不要な場合に採用することができる。なお、本変形例では、第5~第10ダイオードD5~D10が「整流回路」を構成する。
【0084】
・実施例および第1~第3変形例では共振コンデンサC9および共振コイルL1をトランスTRの1次巻線の一端側にまとめて配置したが、共振コンデンサC9および共振コイルL1は、1次巻線の一端側と他端側に分かれて配置されていてもよいし、1次巻線の他端側にまとめて配置されていてもよい。また、実施例では共振コンデンサC10および共振コイルL2をトランスTRの2次巻線の一端側にまとめて配置したが、共振コンデンサC10および共振コイルL2は、2次巻線の一端側と他端側に分かれて配置されていてもよいし、2次巻線の他端側にまとめて配置されていてもよい。
【0085】
・実施例および第1変形例の制御部13は、ブースト動作を行わないときに、第5~第8スイッチング素子Q5~Q8をオン/オフさせて同期整流を行わせてもよい。この場合は、第5~第8スイッチング素子Q5~Q8および第5~第8ダイオード素子D5~D8が本発明の「整流回路」を構成する。
【0086】
・実施例(および第1~第3変形例)の制御部13は、起動処理において、ブースト率をゼロから入力電圧V1に対応した最適ブースト率まで増加させた後に駆動周波数を入力電圧V1に対応した下限駆動周波数に向かって低下させ始めるが、順序はこれに限定されない。例えば、制御部13は、ブースト率を増加させ始めた後に(ブースト率が最適ブースト率に到達する前に)駆動周波数を低下させ始めてもよい。また、制御部13は、ブースト率を増加させ始めるとともに駆動周波数を低下させ始め、その後、駆動周波数が下限駆動周波数に到達する前にブースト率を最適ブースト率に到達させてもよい。
【0087】
・実施例(および第1~第3変形例)の制御部13は、終了処理において、駆動周波数を上限駆動周波数fmまで増加させた後にブースト率を0%に向かって低下させ始めるが、順序はこれに限定されない。例えば、制御部13は、駆動周波数の増加とブースト率の低下を同時に始めさせてもよいし、ブースト率を先に低下させてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10A、10B,10C,10D 電流共振型DC/DCコンバータ
11 1次側回路
12 2次側回路(実施例,第1変形例)
13 制御部
14 記憶部
15 2次側回路(第2変形例)
16 2次側回路(第3変形例)
100 車載バッテリ
110 V2H装置
120 双方向DC/ACインバータ
130 負荷