(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】細胞透過性ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20250409BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20250409BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250409BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250409BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20250409BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20250409BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250409BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250409BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20250409BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20250409BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250409BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
C12N15/113 Z
A61K45/00
A61K47/65
A61P21/04
A61P21/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K38/12
A61K38/02
A61K31/7088
A61K31/7105
(21)【出願番号】P 2021506986
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 GB2019052247
(87)【国際公開番号】W WO2020030927
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516245900
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD UNIVERSITY INNOVATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ラケル マンサノ
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン ゴドフリー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム マクローリー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ラズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ゲート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレー アルズマノフ
(72)【発明者】
【氏名】リズ オドノヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ガレス ヘイゼル
(72)【発明者】
【氏名】アシュリング ホーランド
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル ヴァレラ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/030569(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/022504(WO,A2)
【文献】特表2011-523557(JP,A)
【文献】特表2013-531988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
[カチオン性ドメイン]-[疎水性ドメイン]-[カチオン性ドメイン]
[ここで、カチオン性ドメインは、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)(ここで、Bはβ-アラニンであり、[Hyp]はヒドロキシプロリンである)から選ばれるアミノ酸配列からなり;及び疎水性ドメインは、YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW,WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、WWPW(配列番号26)から選ばれるアミノ酸配列からなる]で表される、細胞透過性ペプチド。
【請求項2】
細胞透過性ペプチドがN末端でN-アセチル化されている、請求項1に記載の細胞透過性ペプチド。
【請求項3】
配列:RBRRBRRFQILYRBRBR(配列番号27)、RBRRBRFQILYRRBRBR(配列番号29)、RBRBRFQILYRBRRBRR(配列番号30)、RBRRBRRYQFLIRBRBR(配列番号31)、RBRRBRRILFQYRBRBR(配列番号32)、RBRRBRFQILYRBRBR(配列番号33)、RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBFQILYRBRBR(配列番号36)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)、RBRRBRRFQILYHBHBR(配列番号38)
、RBRRBRRYQFLIRBHBH(配列番号40)、RBRRBRRILFQYRBHBH(配列番号41)、RBRHBHRFQILYRBRBR(配列番号42)、RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)
、RBRRBRWWWBRBR(配列番号104)、及びRBRRBRWWPWWBRBR(配列番号105)の1つからなる、請求項1又は2に記載の細胞透過性ペプチド。
【請求項4】
配列RBRRBRRFQILYRBRBR(配列番号27)からなる請求項1~3のいずれかに記載の細胞透過性ペプチド。
【請求項5】
RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)からなる請求項1~3のいずれかに記載の細胞透過性ペプチド。
【請求項6】
RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)からなる請求項1~3のいずれかに記載の細胞透過性ペプチド。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合されている請求項1~6のいずれかに記載の細胞透過性のペプチドを含んでなる、コンジュゲート。
【請求項8】
さらにリンカーを含み、前記リンカーが細胞透過性ペプチドをアンチセンスオリゴヌクレオチドに連結する、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
リンカーがG、BC、XC、C、GGC、BBC、BXC、XBC、X、XX、B、BB、BX及びXBから選択される、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
医薬としての使用のための請求項7~9のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項11】
筋神経系又は筋骨格系の疾患、筋神経系又は筋骨格系の遺伝疾患、筋神経系又は筋骨格系の遺伝性遺伝疾患、又は筋神経系又は筋骨格系の遺伝性X連鎖遺伝疾患の治療における医薬としての使用のための請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療における医薬としての使用のための請求10又は11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ジストロフィン遺伝子におけるエクソンスキッピングを誘導するための配列からなるものである、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ジストロフィン遺伝子の単一エクソンのエクソンスキッピングを誘導するための配列からなるものである、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
エクソンがジストロフィン遺伝子のエクソン45、51、又は53である、請求項13又は14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合された細胞透過性ペプチドを含んでなるコンジュゲートであって、前記細胞透過性ペプチドが、配列:RBRRBRRFQILYRBRBR(配列番号27)、RBRRBRRYQFLIRBRBR(配列番号31)、RBRRBRRILFQYRBRBR(配列番号32)、RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)、RBRRBRRFQILYHBHBR(配列番号38)、RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)の1つからなり、前記コンジュゲートは、筋神経系又は筋骨格系の疾患、筋神経系又は筋骨格系の遺伝疾患、筋神経系又は筋骨格系の遺伝性遺伝疾患、又は筋神経系又は筋骨格系の遺伝性X連鎖遺伝疾患の治療における使用のためのものである、コンジュゲート。
【請求項17】
さらにリンカーを含み、前記リンカーが細胞透過性ペプチドをアンチセンスオリゴヌクレオチドに連結する、請求項16に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
疾患がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である、請求項16又は17に記載のコンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、特に細胞透過性ペプチド、およびそのような細胞透過性ペプチドと治療用分子とのコンジュゲートに関する。本発明は、さらに、処置方法における、または医薬としての、とりわけ遺伝障害、特に筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置における、そのようなペプチドまたはコンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸薬は、ヒトにおける医療を変容させる可能性を秘めたゲノム薬である。研究からは、そのような治療薬が神経筋疾患を含む広範囲の疾患領域にわたり適用され得ることが示唆されている。プレmRNAスプライシングをモジュレートするアンチセンスオリゴヌクレオチドベースの方法が神経筋疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に適用されるようになり、この単一遺伝子障害はプレシジョン・メディシンの最先端に置かれている。
【0003】
しかし、これらの有望なアンチセンス治療薬の治療上の開発は、不十分な細胞透過度と不十分な分布特性が原因で妨げられてきた。この課題は、DMDでは、筋組織基質が大量であることと、その分散特性とによりさらに重要視されている。
【0004】
DMDは、3500人に1人の新生男児が罹患している。この重篤なX連鎖劣性疾患は、ジストロフィンタンパク質をコードするDMD遺伝子内の変異によってもたらされる。この障害は、呼吸不全と心臓の合併症の出現を伴った進行性の筋肉変性および萎縮を特徴としており、最終的には早死につながる。DMDの根底にある変異の大部分は、オープンリーディングフレーム内の早期トランケーションを誘発するゲノムのアウトオブフレーム欠失であり、これがジストロフィンタンパク質を欠乏させる。
【0005】
エクソンスキッピング療法は、スプライススイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(SSO)を利用してDMD転写物の特定領域を標的とし、個々のエクソンの排除を誘導し、異常リーディングフレームを回復させ、内部的に欠失されているが部分的には機能するジストロフィンタンパク質の生成をもたらす。DMDに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドエクソンスキッピング療法の可能性は疑う余地がないにもかかわらず、このアプローチの適用の成功は、現在のところ、骨格筋のターゲッティングが比較的非効率であること、ならびに、心臓などの他の罹患組織への一本鎖オリゴヌクレオチドの標的化が不十分であることによって制限されている。
【0006】
2016年9月に、食品医薬品局(FDA)は、エクソン51のスプライシングをモジュレートするための一本鎖オリゴヌクレオチドである「eteplirsen」を早期承認した。これは、米国においてスプライシングをモジュレートする最初に承認されたオリゴヌクレオチドの先駆けとなったが、ジストロフィンの回復レベルは、正常なジストロフィンレベルのわずか約1%であり、期待外れであった。対立遺伝子障害のベッカー型筋ジストロフィーとの比較と、mdxマウスにおける実験からは、運動による損傷から筋肉を保護するためには、少なくとも約15%の野性型の均一な筋線維鞘ジストロフィン発現が必要であることが示唆されている。
【0007】
したがって、DMDなどの深刻な遺伝疾患に対してより有効な治療法を提供するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドの送達を改良することが早急に強く求められている。
【0008】
送達ビヒクルとしてウイルスを使用することが示唆されているが、しかしながら、それらの使用は、ウイルスコートタンパク質の免疫毒性と発がん性作用により制限されている。代替として、様々な非ウイルス送達ベクターが開発されており、そのうちペプチドは、それらのサイズが小さく、大きなバイオカーゴの経毛細管性送達の標的特異性および能力から最も有望であることが明らかとなっている。いくつかのペプチドは、単独で、またはバイオカーゴ担持状態で細胞に透過するそれらの能力が報告されている。
【0009】
数年にわたり、細胞透過性ペプチド(CPP)がSSO(特に電荷中性ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)およびペプチド核酸(PNA))にコンジュゲートされてきており、そのようなオリゴヌクレオチド類似体の細胞送達が、細胞膜を通過し細胞核内のプレmRNA標的部位に到達するようそれらを効果的に運ぶことにより強化されてきた。ある特定のアルギニンリッチCPP(P-PMOまたはペプチド-PMOとしても公知である)にコンジュゲートされているPMO治療薬は、DMDのmdxマウスモデルにおいて、全身投与後に骨格筋でのジストロフィン生成を増強できることが示されている。
【0010】
特に、PNA/PMO内部移行ペプチド(Pip)が既に開発されており、これは中央の短い疎水性配列によって分けられた2つのアルギニンリッチ配列から構成されているアルギニンリッチCPPである。これらの「Pip」ペプチドは、最初にPNAカーゴに結合させることによって、高レベルのエクソンスキッピングを維持しながら血清の安定性を改良するように設計された。これらのペプチドのさらなる誘導体がPMOのコンジュゲートとして設計されたが、これらの誘導体は、マウスへの全身投与後に、全身に及ぶ骨格筋ジストロフィン産生をもたらし、また重要なことには、これには心臓も含まれることが明らかにされた。しかしこれらのペプチドが有効であるにもかかわらず、これらの治療への適用は、それらに関連する毒性によって妨げられてきた。
【0011】
R6Glyなどの単一アルギニンリッチドメインを有する代替の細胞透過性ペプチドも生産されている。これらのCPPは、毒性が低いペプチドコンジュゲートの生成に使用されてきたが、これらのコンジュゲートはPipペプチドと比較して低い有効性を示した。
【0012】
したがって、現在利用可能なCPPは、DMDなどの疾患のヒト処置における使用に適していることは未だ示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
細胞透過性ペプチド技術の分野における課題は、有効性と毒性を切り離すことであった。本発明者らは、今回、少なくともこの問題に対処する、本発明に記載の特定の構造を有するいくつかの改良型CPPを同定し、合成し、試験した。
【0014】
これらのペプチドを、カーゴ治療分子を使用し、in vitroおよびin vivoで試験した場合、骨格筋において良好なレベルの有効性を維持する。さらに、これらのペプチドは、既に利用可能なCPPと比較して、同じコンジュゲートで使用した場合、有効性の改善が実証された。同時に、これらのペプチドは、全身注射後にin vivoで有効に作用し、臨床徴候が軽減し、生化学的マーカーの測定を通じて観察した場合に毒性が低下する。重要なことには、本ペプチドは、以前のCPPと比較した場合、マウスへの同様の全身注射後に、毒性が驚くほど減少することが実証された。したがって、本発明のペプチドは、既に利用可能なペプチドよりも、ヒトに対する治療薬として使用するための適合性の改善を提示し、ヒト対象における安全で有効な処置のための治療用コンジュゲートで使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、
少なくとも4アミノ酸残基をそれぞれ含む2つ以上のカチオン性ドメインと、
少なくとも3アミノ酸残基をそれぞれ含む1つまたは複数の疎水性ドメイン
を含む、40アミノ酸残基以下の全長を有するペプチドであって、
人工アミノ酸残基を含まないペプチドが提供される。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、治療用分子に共有結合されている第1の態様のペプチドを含むコンジュゲートが提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、イメージング分子に共有結合されている第1の態様のペプチドを含むコンジュゲートが提供される。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、第2の態様のコンジュゲートを含む医薬組成物が提供される。
【0019】
本発明の第5の態様によれば、医薬としての使用のための、第2の態様に記載のコンジュゲートが提供される。
【0020】
第5の態様の一実施形態では、医薬としての使用のための、第4の態様に記載の医薬組成物が提供される。
【0021】
本発明の第6の態様によれば、第2の態様のコンジュゲートを対象に治療有効量で投与することを含む、対象の疾患を処置する方法が提供される。
【0022】
第6の態様の一実施形態では、第4の態様に記載の医薬組成物を対象に治療有効量で投与することを含む、対象の疾患を処置する方法が提供される。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様のペプチドまたは第2の態様のコンジュゲートまたは第3の態様のコンジュゲートをコードする単離された核酸が提供される。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、第7の態様の核酸配列を含む発現ベクターが提供される。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、第8の態様の発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】H2K-mdx細胞においてネステッドRT-PCRのデンシトメトリー分析により測定された、アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートしたDPEP1系の一部のペプチドの0.25μM、0.5μMおよび1μMでの、in vitroでの第23番エクソンスキッピングの有効性を示す(エラーバー:標準偏差、n≧3)。
【
図2】H2K-mdx細胞においてネステッドRT-PCRのデンシトメトリー分析により測定された、アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートしたDPEP3系の一部のペプチドの0.25μM、0.5μMおよび1μMでの、in vitroでの第23番エクソンスキッピングの有効性を示す(エラーバー:標準偏差、n≧3)。
【
図3】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートしたDPEP1系の一部のペプチドについての、mdxマウスへの単一10mg/kg静脈内用量の後に(A)前脛骨筋、(B)横隔膜および(C)心筋におけるウェスタンブロットおよびqRT-PCRにより測定されたin vivoでの有効性を示す(エラーバー:標準偏差、n=3)。
【
図4】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートしたDPEP3系の一部のペプチドについての、mdxマウスへの単一10mg/kg静脈内用量の後に(A)前脛骨筋、(B)横隔膜および(C)心筋におけるウェスタンブロットおよびqRT-PCRにより測定されたin vivoでの有効性を示す(エラーバー:標準偏差、n=3)。
【
図5】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの30mg/kgの単一用量を投与した2日および7日後にC57BL/6マウスの尿中で測定された、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水との比較での、相対KIM-1レベルを示す(エラーバー:標準偏差、n=6)。
【
図6】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの30mg/kgの単一用量を投与した2日および7日後にC57BL/6マウスの尿中で測定された、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水との比較での、相対NGALレベルを示す(エラーバー:標準偏差、n=6)。
【
図7】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの30mg/kgの単一用量を投与した7日後にC57BL/6マウスにおいて測定された血清中BUNレベルを、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水と比較して示す(エラーバー:標準偏差、n=6)。
【
図8】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの30mg/kgの単一用量を投与した7日後にC57BL/6マウスにおいて測定された血清中クレアチニンレベルを、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水と比較して示す(エラーバー:標準偏差、n=6)。
【
図9】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの30mg/kgの単一用量を投与した7日後にC57BL/6マウスにおいて測定された(A)アラニントランスフェラーゼ、(B)アルカリホスファターゼおよび(C)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ血清レベルを、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水と比較して示す(エラーバー:標準偏差、n=6)。
【
図10】アンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした様々なDPEPペプチドの単一30mg/kg静脈内投与後にC57BL/6マウスの(A)前脛骨筋、(B)横隔膜および(C)心臓においてqRT-PCRにより評定された第23番エクソンスキッピングのin vivoでの有効性を、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体、および食塩水と比較して示す。
【
図11】8~10週齢C57BL6マウス(n=4~6)への2.5から50mg/kgの間の異なる量のペプチド-PMOの単一用量投与後2日目および7日目の尿KIM-1レベルについての、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体との比較での評定。KIM-1レベルは、ELISAにより判定され、尿中クレアチニンレベルに対して正規化された。データは、食塩水を注射したマウスの対照KIM-1レベル(n=10)に対する変化倍数として提示されている。
【
図12】8~10週齢C57BL6マウス(n=3~6)への2.5から50mg/kgの間の漸増量の単一用量投与後のペプチド-PMOのin vivoでのエクソンスキッピングの有効性についての、同じアンチセンス療法用PMOにコンジュゲートした現在利用可能なペプチド担体と比較での、用量応答比較研究。第23番エクソンエクスクルージョンのqPCR分析は、投与後7日目に(A)前脛骨筋、(B)横隔膜および(C)心臓において評定された。
【
図13】様々な濃度の、DMPK遺伝子に2600のリピートを有するDM1患者に由来するDM1患者筋芽細胞(n=1~3)における、in vitroでMbnl1転写物のスプライシング欠陥を修正する異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートを示す。
【
図14】様々な濃度の、DMPK遺伝子に2600のリピートを有するDM1患者に由来するDM1患者筋芽細胞における、in vitroでDMD転写物のスプライシング欠陥を修正する異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートを示す(エラーバー:平均±SEM、n=1~3)。
【
図15】異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートについての注射後2日目および7日目にメスC57BL6マウスの尿で評定された相対KIM-1レベルであって、標準曲線内に当てはまるように希釈された試料を用いてELISAにより測定されたレベルを示す。値は、尿中タンパク質濃度を説明するために尿中クレアチニンレベルに対して正規化された。KIM-1レベルは、以前のPip系のペプチド担体により誘導された増加倍数と比較して食塩水対照注射と同様であった(エラーバー:平均±SEM、n=4~10)。
【
図16】異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートについての注射後2日目および7日目にメスC57BL6マウスの尿で測定された相対NGALレベルであって、標準曲線内に当てはまるように希釈された試料を用いてELISAにより測定されたレベルを示す。値は、尿中タンパク質濃度を説明するために尿中クレアチニンレベルに対して正規化された。NGALレベルは、以前のPip系のペプチド担体により誘導された増加倍数と比較して食塩水対照注射と同様であった(エラーバー:平均±SEM、n=4~10)。
【
図17】異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートについての注射後7日目にメスC57BL6マウスの血清において食塩水と比較して評定されたBUNレベルを示す。BUNレベルは、以前のPip系のペプチド担体により誘導された増加倍数と比較して食塩水対照注射と同様であった(エラーバー:平均±SEM、n=4~10)。
【
図18】異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートについての注射後7日目にメスC57BL6マウスの血清において食塩水と比較して評定されたクレアチニンレベルを示す。クレアチニンレベルは、以前のPip系のペプチド担体により誘導された増加倍数と比較して食塩水対照注射と同様であった(エラーバー:平均±SEM、n=4~10)。
【
図19】異なるDPEP1/3-[CAG]
7PMOコンジュゲートのボーラスIV(尾静脈)注射による投与を受けたメスC57BL6マウスからの血清において注射後7日目の採取時に食塩水と比較して評定された(A)アラニントランスフェラーゼ(ALT)、(B)アルカリホスファターゼ(ALP)および(C)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベルを示す。ALP、ALT、ASTレベルは、以前のPip系のペプチド担体により誘導された増加倍数と比較して食塩水対照注射と同様であった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明者らは、治療用分子を細胞に送達するための細胞透過性ペプチドとしての使用に適する一連のペプチドを生成した。
【0028】
驚いたことに、本発明者らは、現在利用可能な細胞透過性ペプチドと比較して、筋肉への細胞透過性が増強された、いかなる人工アミノ酸も含まない、規定された長さの少なくとも2つのカチオン性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインを有するペプチド群を見出した。この効果は、アンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬とのコンジュゲートとして細胞に送達された場合、またはin vivoで投与された場合に観察される。
【0029】
疾患DMDの状況下において、適切な治療用分子に連結された本発明のペプチドによる細胞透過性の増強は、転写物内の特定のエクソン排除によって示すことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを適切な配列へ方向付けると、エクソンの強制的なスキッピング、オープンリーディングフレームの修正、および内部的に欠失されているが部分的には機能するジストロフィンのアイソフォームの回復がもたらされる。
【0030】
本発明のペプチドは、ジストロフィン遺伝子を標的とするように設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬とのコンジュゲートとして使用される場合に、高レベルのエクソン排除とジストロフィンタンパク質回復を有することが本明細書で示されている。
【0031】
特に、本発明のペプチドを含むコンジュゲートは、同じアンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬にコンジュゲートされた現在利用可能なペプチドと比較した場合、細胞透過の有意な増加を示す。これは、本発明において、様々な異なる筋肉群におけるジストロフィン遺伝子内のエクソンスキッピングの増加によって実証されている。
【0032】
in vivoでは、本明細書に記載した結果は、本発明のペプチドコンジュゲートを使用する場合のエクソンスキッピングおよび機能的ジストロフィン発現のレベルが、既に利用可能な細胞透過性ペプチドにコンジュゲートされた同じアンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬の使用から得られているレベルの2倍近くであることを示す。
【0033】
これは、そのようなペプチド担体が筋肉細胞に透過する有効性での有意な改善であり、神経筋疾患で効果がある。
【0034】
理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、人工アミノ酸、例えば、典型的には細胞透過性ペプチドで使用される6-アミノヘキサン酸残基の除去と、例えば天然に存在するベータアラニン残基による置き換えが、全体的な毒性の低下とペプチドの細胞透過性の増加に有益な効果を有すると考える。
【0035】
しかし、人工アミノ酸残基を含まないこのようなペプチド構造が、オリゴヌクレオチドなどの治療用分子カーゴを筋肉内に輸送するという、既に報告されている細胞透過性ペプチドの送達特性を向上させることは全く予期されていなかった。ペプチドの有効性は、ペプチドが細胞内に入るのに要する時間の長さの間、血清安定性であるその能力に大きく依存する。人工アミノ酸を含まずに形成されるペプチドは、in vivoで不安定であり、プロテアーゼ分解を受けやすく、十分な量を筋肉細胞および組織に透過させて治療効果を高めることができないと予想されていた。この予想に反して、本発明者らは、特許請求の範囲に記載した特定の構造を有するペプチドが、細胞に入り、良好で改善された効果を維持するのに十分な安定性があり、しかも、人工アミノ酸を欠いているために毒性プロファイルが低減されているという利点を有することを見出した。
【0036】
そのような輸送が増強され、本明細書で実証されたような、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの治療用分子がエクソンスキッピングと機能的ジストロフィンタンパク質産生を様々な異なる筋肉において順調に向上させる結果となるようなことは予期されなかった。
【0037】
さらに、そのようなコンジュゲートによるヒトの処置が実現できる程度までin vivoで治療用カーゴを輸送する場合、そのようなペプチド構造が細胞透過性ペプチドの毒性を有意に低減することは予期されなかった。in vivoでは、本明細書に記載した結果は、生化学的マーカーによって決定した場合に腎毒性の減少を示す。
【0038】
誤解を避けるため、また本開示が解釈される方向を明確にするために、本発明に従って使用されるある特定の用語をここでさらに定義する。
【0039】
本発明は、そのような組合せが明白に許容されないか、明らかに回避される場合を除き、記載した態様および特徴の任意の組合せを含む。
【0040】
本明細書で使用したセクションの見出しは、単なる構成の目的のためであり、記載した主題を限定するものと解釈されるものではない。
【0041】
「X」への言及は、全体を通して、人工の合成的に生成されたアミノ酸であるアミノヘキサン酸の任意の形態を示す。
【0042】
「B」への言及は、全体を通して、天然であるが遺伝的にコードされていないアミノ酸のベータアラニンを示す。
【0043】
「Ac」への言及は、全体を通して、関連ペプチドのアセチル化を示す。
【0044】
「Hyp」への言及は、全体を通して、天然であるが遺伝的にコードされていないアミノ酸のヒドロキシプロリンを示す。
【0045】
他の大文字への言及は、全体を通して、関連する遺伝的にコードされたアミノ酸残基を、認められているアルファベットのアミノ酸コードに従って示す。
【0046】
人工アミノ酸
本発明は、人工アミノ酸残基が存在しない特定の構造を有する短い細胞透過性ペプチドに関する。
【0047】
本明細書での「人工」アミノ酸または残基への言及は、自然界に存在しないあらゆるアミノ酸を意味し、また、合成アミノ酸、修飾アミノ酸(例えば糖で修飾したもの)、非天然アミノ酸、人為的アミノ酸、スペーサー、および非ペプチド結合スペーサーを含む。
【0048】
合成アミノ酸は、人間によって化学的に合成されるものであり得る。
【0049】
誤解を避けるために、アミノヘキサン酸(X)は、本発明の文脈における人工アミノ酸である。誤解を避けるために、ベータアラニン(B)およびヒドロキシプロリン(Hyp)は自然界に存在しており、したがって、本発明の文脈においては人工アミノ酸ではなく、天然アミノ酸である。
【0050】
人工アミノ酸は、例えば、6-アミノヘキサン酸(X)、テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(TIC)、1-(アミノ)シクロヘキサンカルボン酸(Cy)、および3-アゼチジン-カルボン酸(Az)、11-アミノウンデカン酸を含み得る。
【0051】
適切には、ペプチドは、アミノヘキサン酸残基を含まない。適切には、ペプチドは、アミノヘキサン酸残基のいかなる形態も含まない。適切には、ペプチドは、6-アミノヘキサン酸残基を含まない。
【0052】
適切には、ペプチドは天然アミノ酸残基のみを含み、したがって、天然アミノ酸残基からなる。
【0053】
適切には、細胞透過性ペプチドで典型的に使用される人工アミノ酸、例えば6-アミノヘキサン酸は、天然アミノ酸に置き換えられる。適切には、細胞透過性ペプチドで典型的に使用される人工アミノ酸、例えば6-アミノヘキサン酸は、ベータアラニン、セリン、プロリン、アルギニンおよびヒスチジンまたはヒドロキシプロリンから選択されるアミノ酸に置き換えられる。
【0054】
一実施形態では、アミノヘキサン酸は、ベータアラニンに置き換えられる。適切には、6-アミノヘキサン酸は、ベータアラニンに置き換えられる。
【0055】
一実施形態では、アミノヘキサン酸は、ヒスチジンに置き換えられる。適切には、6-アミノヘキサン酸は、ヒスチジンに置き換えられる。
【0056】
一実施形態では、アミノヘキサン酸は、ヒドロキシプロリンに置き換えられる。適切には、6-アミノヘキサン酸は、ヒドロキシプロリンに置き換えられる。
【0057】
適切には、細胞透過性ペプチドで典型的に使用される人工アミノ酸、例えば6-アミノヘキサン酸は、ベータアラニン、セリン、プロリン、アルギニンおよびヒスチジンまたはヒドロキシプロリンのいずれかの組合せ、適切にはベータアラニン、ヒスチジン、およびヒドロキシプロリンのいずれかの組合せに置き換えることができる。
【0058】
一実施形態では、
少なくとも4アミノ酸残基をそれぞれ含む2つ以上のカチオン性ドメインと、
少なくとも3アミノ酸残基をそれぞれ含む1つまたは複数の疎水性ドメイン
を含む、40アミノ酸残基以下の全長を有するペプチドであって、
少なくとも1つのカチオン性ドメインがヒスチジン残基を含むペプチドが提供される。
【0059】
適切には、少なくとも1つのカチオン性ドメインはヒスチジンリッチである。
【0060】
適切には、ヒスチジンリッチによって意味されるものは、カチオン性ドメインに関連して本明細書で定義されている。
【0061】
カチオン性ドメイン
本発明は、ある特定の長さを有する少なくとも2つのカチオン性ドメインが存在する特定の構造を有する短い細胞透過性ペプチドに関する。
【0062】
「カチオン性」への言及は、本明細書では、生理学的pHで全体的に正電荷を有するアミノ酸またはアミノ酸のドメインを示す。
【0063】
適切には、ペプチドは、最大4つのカチオン性ドメイン、最大3つのカチオン性ドメインを含む。
【0064】
適切には、ペプチドは、2つのカチオン性ドメインを含む。
【0065】
上記で定義したように、ペプチドは、少なくとも4アミノ酸残基の長さをそれぞれ有する2つ以上のカチオン性ドメインを含む。
【0066】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、4アミノ酸残基から12アミノ酸残基の間の長さ、適切には4アミノ酸残基から7アミノ酸残基の間の長さを有する。
【0067】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、4、5、6、または7アミノ酸残基の長さを有する。
【0068】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは同様の長さであり、適切には、それぞれのカチオン性ドメインは同じ長さである。
【0069】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインはカチオン性アミノ酸を含み、極性アミノ酸および/または非極性アミノ酸も含み得る。
【0070】
非極性アミノ酸は、アラニン、ベータアラニン、プロリン、グリシン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンから選択することができる。適切には、非極性アミノ酸は電荷を有していない。
【0071】
極性アミノ酸は、セリン、アスパラギン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、アルギニン、スレオニン、チロシン、グルタミンから選択することができる。適切には、選択された極性アミノ酸は、負電荷を有していない。
【0072】
カチオン性アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、リシンから選択することができる。適切には、カチオン性アミノ酸は、生理学的pHで正電荷を有する。
【0073】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アニオン性アミノ酸残基または負電荷アミノ酸残基を含まない。
【0074】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、ベータアラニン、ヒドロキシプロリンおよび/またはセリン残基を含む。
【0075】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、ベータアラニン、ヒドロキシプロリンおよび/またはセリン残基からなる。
【0076】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%のカチオン性アミノ酸を含む。
【0077】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、大多数のカチオン性アミノ酸を含む。適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のカチオン性アミノ酸を含む。
【0078】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、少なくとも10.0、少なくとも10.5、少なくとも11.0、少なくとも11.5、少なくとも12.0の等電点(pI)を含む。
【0079】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも10.0の等電点(pI)を含む。
【0080】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、10.0から13.0の間の等電点(pI)を含む。
【0081】
一実施形態では、それぞれのカチオン性ドメインは、10.4から12.5の間の等電点(pI)を含む。
【0082】
適切には、カチオン性ドメインの等電点は、当技術分野において利用可能な任意の適切な手段によって、適切には、IPC(www.isoelectric.org)のLukasz Kozlowski、Biol Direct. 2016;11:55.DOI:10.1186/s13062-016-0159-9によって開発されたwebベースのアルゴリズムを使用することによって生理学的pHで算出される。
【0083】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも1つのカチオン性アミノ酸、適切には1カチオン性アミノ酸から5カチオン性アミノ酸の間のカチオン性アミノ酸を含む。適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも2つのカチオン性アミノ酸、適切には2カチオン性アミノ酸から5カチオン性アミノ酸の間のカチオン性アミノ酸を含む。
【0084】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アルギニンリッチおよび/またはヒスチジンリッチである。適切には、カチオン性ドメインは、ヒスチジンおよびアルギニンの両方を含み得る。
【0085】
「アルギニンリッチ」または「ヒスチジンリッチ」とは、カチオン性ドメインの少なくとも40%が前記残基で形成されていることを意味する。
【0086】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、大多数のアルギニン残基および/またはヒスチジン残基を含む。
【0087】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のアルギニン残基および/またはヒスチジン残基を含む。
【0088】
適切には、カチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のアルギニン残基を含み得る。
【0089】
適切には、カチオン性ドメインは、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%のヒスチジン残基を含み得る。
【0090】
適切には、カチオン性ドメインは、合計で1ヒスチジン残基から5ヒスチジン残基の間のヒスチジン残基と、1アルギニン残基から5アルギニン残基の間のアルギニン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、1アルギニン残基から5アルギニン残基の間のアルギニン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、1ヒスチジン残基から5ヒスチジン残基の間のヒスチジン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、合計で2ヒスチジン残基から5ヒスチジン残基の間のヒスチジン残基と、3アルギニン残基から5アルギニン残基の間のアルギニン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、3アルギニン残基から5アルギニン残基の間のアルギニン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、2ヒスチジン残基から5ヒスチジン残基の間のヒスチジン残基を含み得る。
【0091】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、1つまたは複数のベータアラニン残基を含む。適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、合計で2ベータアラニン残基から5ベータアラニン残基の間のベータアラニン残基、適切には合計で2ベータアラニン残基または3ベータアラニン残基を含み得る。
【0092】
適切には、カチオン性ドメインは、1つまたは複数のヒドロキシプロリン残基またはセリン残基を含み得る。
【0093】
適切には、カチオン性ドメインは、1ヒドロキシプロリン残基から2ヒドロキシプロリン残基の間のヒドロキシプロリン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、1セリン残基から2セリン残基の間のセリン残基を含み得る。
【0094】
適切には、所定のカチオン性ドメイン内の全てのカチオン性アミノ酸はヒスチジンであり得るか、あるいは、適切には、所定のカチオン性ドメイン内の全てのカチオン性アミノ酸はアルギニンであり得る。
【0095】
適切には、ペプチドは、少なくとも1つのヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含み得る。適切には、ペプチドは、少なくとも1つのアルギニンリッチカチオン性ドメインを含み得る。
【0096】
適切には、ペプチドは、少なくとも1つのアルギニンリッチカチオン性ドメインと、少なくとも1つのヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含み得る。
【0097】
一実施形態では、ペプチドは、2つのアルギニンリッチカチオン性ドメインを含む。
【0098】
一実施形態では、ペプチドは、2つのヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含む。
【0099】
一実施形態では、ペプチドは、2つのアルギニンおよびヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含む。
【0100】
一実施形態では、ペプチドは、1つのアルギニンリッチカチオン性ドメインと1つのヒスチジンリッチカチオン性ドメインを含む。
【0101】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、3つ以下の連続するアルギニン残基、適切には2つ以下の連続するアルギニン残基を含む。
【0102】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、連続するヒスチジン残基を含まない。
【0103】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、および/またはベータアラニン残基を含む。適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、大多数のアルギニン、ヒスチジン、および/またはベータアラニン残基を含む。適切には、それぞれのカチオン性ドメイン内のアミノ酸残基の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%は、アルギニン、ヒスチジン、および/またはベータアラニン残基である。適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、アルギニン、ヒスチジン、および/またはベータアラニン残基からなる。
【0104】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニン残基およびベータアラニン残基を含む第1のカチオン性ドメインと、アルギニン残基およびベータアラニン残基を含む第2のカチオン性ドメインを含む。
【0105】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニン残基およびベータアラニン残基を含む第1のカチオン性ドメインと、ヒスチジン残基、ベータアラニン残基、および必要に応じてアルギニン残基を含む第2のカチオン性ドメインを含む。
【0106】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニン残基およびベータアラニン残基を含む第1のカチオン性ドメインと、ヒスチジン残基およびベータアラニン残基を含む第2のカチオン性ドメインを含む。
【0107】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニン残基およびベータアラニン残基からなる第1のカチオン性ドメインと、アルギニン残基およびベータアラニン残基からなる第2のカチオン性ドメインを含む。
【0108】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニン残基およびベータアラニン残基からなる第1のカチオン性ドメインと、アルギニン残基、ヒスチジン残基およびベータアラニン残基からなる第2のカチオン性ドメインを含む。
【0109】
適切には、ペプチドは、少なくとも2つのカチオン性ドメインを含み、適切にはこれらのカチオン性ドメインはペプチドのアームを形成する。適切には、カチオン性ドメインは、ペプチドのN末端およびC末端に位置している。適切には、したがって、カチオン性ドメインは、カチオン性アームドメインとして公知であり得る。
【0110】
一実施形態では、ペプチドは、2つのカチオン性ドメインを含み、1つはペプチドのN末端に位置しており、もう1つはペプチドのC末端に位置している。適切には、ペプチドのいずれかの末端に位置している。適切には、末端修飾、リンカーおよび/または治療用分子などの他の基を除き、さらなるアミノ酸またはドメインは、ペプチドのN末端およびC末端に存在しない。誤解を避けるために、そのような他の基は、本明細書で記載され、特許請求されている「ペプチド」に加えて存在し得る。適切には、したがって、それぞれのカチオン性ドメインは、ペプチドの末端を形成する。適切には、これは、本明細書で記載されているさらなるリンカー基の存在を排除するものではない。
【0111】
適切には、ペプチドは、最大4つのカチオン性ドメインを含み得る。適切には、ペプチドは、2つのカチオン性ドメインを含む。
【0112】
一実施形態では、ペプチドは、両方ともアルギニンリッチである2つのカチオン性ドメインを含む。
【0113】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニンリッチである1つのカチオン性ドメインを含む。
【0114】
一実施形態では、ペプチドは、両方がアルギニンリッチおよびヒスチジンリッチである2つのカチオン性ドメインを含む。
【0115】
一実施形態では、ペプチドは、アルギニンリッチである1つのカチオン性ドメインと、ヒスチジンリッチである1つのカチオン性ドメインを含む。
【0116】
適切には、カチオン性ドメインは、以下のR、H、B、RR、HH、BB、RH、HR、RB、BR、HB、BH、RBR、RBB、BRR、BBR、BRB、RBH、RHB、HRB、BRH、HRR、RRH、HRH、HBB、BBH、RHR、BHB、HBHから選択されるアミノ酸単位、またはその任意の組合せを含む。
【0117】
適切には、カチオン性ドメインはまた、セリン残基、プロリン残基および/またはヒドロキシプロリン残基を含み得る。適切には、カチオン性ドメインは、以下のRP、PR、RPR、RRP、PRR、PRP、Hyp;R[Hyp]R、RR[Hyp]、[Hyp]RR、[Hyp]R[Hyp]、[Hyp][Hyp]R、R[Hyp][Hyp]、SB、BSから選択されるアミノ酸単位、またはその任意の組合せ、または上記で列挙したアミノ酸単位との任意の組合せをさらに含み得る。
【0118】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、以下の配列:RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)のいずれかまたはその任意の組合せを含む。
【0119】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、以下の配列:RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B、R[Hyp]H[Hyp]HB、R[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)のいずれかまたはその任意の組合せからなる。
【0120】
適切には、それぞれのカチオン性ドメインは、以下の配列:RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)のうちの1つからなる。
【0121】
適切には、ペプチドのそれぞれのカチオン性ドメインは、同一であってもよく、または異なっていてもよい。適切には、ペプチドのそれぞれのカチオン性ドメインは異なる。
【0122】
疎水性ドメイン
本発明は、ある特定の長さを有する少なくとも1つの疎水性ドメインが存在する特定の構造を有する短い細胞透過性ペプチドに関する。
【0123】
「疎水性」への言及は、本明細書では、水をはじく能力を有するか、または水と混じり合わないアミノ酸またはアミノ酸のドメインを示す。
【0124】
適切には、ペプチドは、最大3つの疎水性ドメイン、最大2つの疎水性ドメインを含む。
【0125】
適切には、ペプチドは、1つの疎水性ドメインを含む。
【0126】
上記で定義したように、ペプチドは、少なくとも3アミノ酸残基の長さをそれぞれ有する1つまたは複数の疎水性ドメインを含む。
【0127】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、3アミノ酸から6アミノ酸の間の長さを有する。適切には、それぞれの疎水性ドメインは、5アミノ酸の長さを有する。
【0128】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、非極性アミノ酸残基、極性アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基を含み得る。
【0129】
疎水性アミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびトリプトファンから選択することができる。
【0130】
非極性アミノ酸残基は、プロリン、グリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンから選択することができる。
【0131】
極性アミノ酸残基は、セリン、アスパラギン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、アルギニン、スレオニン、チロシン、グルタミンから選択することができる。
【0132】
適切には、疎水性ドメインは、親水性アミノ酸残基を含まない。
【0133】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、大多数の疎水性アミノ酸残基を含む。適切には、それぞれの疎水性ドメインは、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、100%の疎水性アミノ酸を含む。適切には、それぞれの疎水性ドメインは、疎水性アミノ酸残基からなる。
【0134】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.8、少なくとも1.0、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3の疎水性を含む。
【0135】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、少なくとも0.3、少なくとも0.35、少なくとも0.4、少なくとも0.45の疎水性を含む。
【0136】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、少なくとも1.2、少なくとも1.25、少なくとも1.3、少なくとも1.35の疎水性を含む。
【0137】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、0.4から1.4の間の疎水性を含む。
【0138】
一実施形態では、それぞれの疎水性ドメインは、0.45から0.48の間の疎水性を含む。
【0139】
一実施形態では、それぞれの疎水性ドメインは、1.27から1.39の間の疎水性を含む。
【0140】
適切には、疎水性は、WhiteおよびWimley:W.C. Wimley and S.H. White、「Experimentally determined hydrophobicity scale for proteins at membrane interfaces」 Nature Struct Biol 3:842(1996)によって測定されるものである。
【0141】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、少なくとも3疎水性アミノ酸残基、少なくとも4疎水性アミノ酸残基を含む。
【0142】
適切には、それぞれの疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、およびグルタミン残基を含む。適切には、それぞれの疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、プロリン、および/またはグルタミン残基からなる。
【0143】
一実施形態では、それぞれの疎水性ドメインは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、チロシンおよび/またはグルタミン残基からなる。
【0144】
一実施形態では、それぞれの疎水性ドメインは、トリプトファンおよび/またはプロリン残基からなる。
【0145】
適切には、ペプチドは、1つの疎水性ドメインを含む。適切には、上記疎水性ドメインまたはそれぞれの疎水性ドメインは、ペプチドの中央に位置する。適切には、したがって、疎水性ドメインは、コア疎水性ドメインとして公知であり得る。適切には、上記疎水性コアドメインまたはそれぞれの疎水性コアドメインは、両側がアームドメインによって挟まれている。適切には、アームドメインは、1つまたは複数のカチオン性ドメインと、1つまたは複数のさらなる疎水性ドメインを含み得る。適切には、それぞれのアームドメインは、カチオン性ドメインを含む。
【0146】
一実施形態では、ペプチドは、疎水性コアドメインを挟んでいる2つのアームドメインを含み、それぞれのアームドメインはカチオン性ドメインを含む。
【0147】
一実施形態では、ペプチドは、疎水性コアドメインを挟んでいる2つのカチオン性アームドメインからなる。
【0148】
適切には、上記疎水性ドメインまたはそれぞれの疎水性ドメインは、以下の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW、WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、WWPW(配列番号26)のうちの1つまたはそれらの任意の組合せを含む。
【0149】
適切には、上記疎水性ドメインまたはそれぞれの疎水性ドメインは、以下の配列:YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW、WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、WWPW(配列番号26)のうちの1つまたはそれらの任意の組合せからなる。
【0150】
適切には、上記疎水性ドメインまたはそれぞれの疎水性ドメインは、以下の配列FQILY(配列番号21)、YQFLI(配列番号20)、ILFQY(配列番号22)のうちの1つからなる。
【0151】
適切には、上記疎水性ドメインまたはそれぞれの疎水性ドメインは、FQILY(配列番号21)からなる。
【0152】
適切には、ペプチド内のそれぞれの疎水性ドメインは、同じ配列または異なる配列を有し得る。
【0153】
ペプチド
本発明は、病状の処置における治療用カーゴ分子の輸送で使用するための短い細胞透過性ペプチドに関する。
【0154】
ペプチドは、連続する単一分子である配列を有し、したがって、ペプチドのドメインは連続している。適切には、ペプチドは、N末端からC末端の間に直線的に配置されたいくつかのドメインを含む。適切には、ドメインは、上記で記載したカチオン性ドメインおよび疎水性ドメインから選択される。適切には、ペプチドは、カチオン性ドメインおよび疎水性ドメインからなり、ドメインは上記で定義した通りである。
【0155】
それぞれのドメインは、上記の関連セクションで記載した共通の配列特性を有するが、それぞれのドメインの正確な配列は変形形態および修飾が可能である。したがって、それぞれのドメインに対して様々な配列が可能である。それぞれの可能なドメイン配列の組合せは、様々なペプチド構造をもたらし、それらのそれぞれが本発明の一部を形成する。ペプチド構造の特徴は以下に記載されている。
【0156】
適切には、疎水性ドメインは、任意の2つのカチオン性ドメインを分ける。適切には、それぞれの疎水性ドメインは、その両側でカチオン性ドメインにより挟まれる。
【0157】
適切には、カチオン性ドメインは、別のカチオン性ドメインと連続していない。
【0158】
一実施形態では、ペプチドは、以下の配置で2つのカチオン性ドメインにより挟まれている1つの疎水性ドメインを含む:
[カチオン性ドメイン]-[疎水性ドメイン]-[カチオン性ドメイン]。
【0159】
したがって、適切には、疎水性ドメインはコアドメインとして公知であり得、それぞれのカチオン性ドメインはアームドメインとして公知であり得る。適切には、疎水性アームドメインは、カチオン性コアドメインをその両側から挟む。
【0160】
一実施形態では、ペプチドは、2つのカチオン性ドメインおよび1つの疎水性ドメインからなる。
【0161】
一実施形態では、ペプチドは、2つのカチオン性アームドメインに挟まれた1つの疎水性コアドメインからなる。
【0162】
一実施形態では、ペプチドは、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRR(配列番号3)、RBRRBR(配列番号4)、RRBRBR(配列番号5)、RBRRB(配列番号6)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)、RBRHBHR(配列番号10)、RBRBBHR(配列番号11)、RBRRBH(配列番号12)、HBRRBR(配列番号13)、HBHBH(配列番号14)、BHBH(配列番号15)、BRBSB(配列番号16)、BRB[Hyp]B(配列番号17)、R[Hyp]H[Hyp]HB(配列番号18)、およびR[Hyp]RR[Hyp]R(配列番号19)から選択される配列をそれぞれ含む2つのカチオン性アームドメインに挟まれた、YQFLI(配列番号20)、FQILY(配列番号21)、ILFQY(配列番号22)、FQIY(配列番号23)、WWW、WWPWW(配列番号24)、WPWW(配列番号25)、およびWWPW(配列番号26)から選択される配列を含む1つの疎水性コアドメインからなる。
【0163】
一実施形態では、ペプチドは、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)、HBHBR(配列番号9)から選択される配列を含む2つのカチオン性アームドメインに挟まれた、FQILY(配列番号21)、YQFLI(配列番号20)、およびILFQY(配列番号22)から選択される配列を含む1つの疎水性コアドメインからなる。
【0164】
一実施形態では、ペプチドは、RBRRBRR(配列番号1)、RBRBR(配列番号2)、RBRRBR(配列番号4)、BRBR(配列番号7)、RBHBH(配列番号8)から選択される配列を含む2つのカチオンのアームドメインに挟まれた、配列:FQILY(配列番号21)を含む1つの疎水性コアドメインからなる。
【0165】
いずれかのそのような実施形態では、さらなる基、例えば、リンカー、末端修飾および/または治療用分子が存在し得る。
【0166】
適切には、ペプチドは、N末端が修飾されている。
【0167】
適切には、ペプチドは、N-アセチル化、N-メチル化、N-トリフルオロアセチル化、N-トリフルオロメチルスルホニル化、またはN-メチルスルホニル化されている。適切には、ペプチドは、N-アセチル化されている。
【0168】
必要に応じて、ペプチドのN末端は修飾されていなくてもよい。
【0169】
一実施形態では、ペプチドは、N-アセチル化されている。
【0170】
適切には、ペプチドは、C末端が修飾されている。
【0171】
適切には、ペプチドは、カルボキシ基、チオ酸基、アミノオキシ基、ヒドラジノ基、チオエステル基、アジド基、歪みアルキン、歪みアルケン、アルデヒド基、チオール基またはハロアセチル基から選択されるC末端修飾を含む。
【0172】
有利なことには、C末端修飾は、ペプチドを治療用分子に連結させるための手段を提供する。
【0173】
したがって、C末端修飾はリンカーを含むことができ、その逆も同様である。適切には、C末端修飾はリンカーからなっていてもよく、その逆も同様である。適切なリンカーは、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0174】
適切には、ペプチドは、C末端カルボキシル基を含む。
【0175】
適切には、C末端カルボキシル基は、グリシンまたはベータアラニン残基によって提供される。
【0176】
一実施形態では、C末端カルボキシル基は、ベータアラニン残基によって提供される。
【0177】
適切には、C末端のベータアラニン残基は、リンカーである。
【0178】
適切には、したがって、それぞれのカチオン性ドメインは、N末端修飾またはC末端修飾をさらに含み得る。適切には、C末端のカチオン性ドメインは、C末端修飾を含む。適切には、N末端のカチオン性ドメインは、N末端修飾を含む。適切には、C末端のカチオン性ドメインはリンカー基を含み、適切には、C末端のカチオン性ドメインはC末端ベータアラニンを含む。適切には、N末端のカチオン性ドメインは、N-アセチル化されている。
【0179】
本発明のペプチドは、40アミノ酸残基以下の全長を有するものと定義される。ペプチドは、したがって、オリゴペプチドと見なすことができる。
【0180】
適切には、ペプチドは、3アミノ酸残基から30アミノ酸残基の間、適切には、5アミノ酸残基から25アミノ酸残基の間、10アミノ酸残基から25アミノ酸残基の間、13アミノ酸残基から23アミノ酸残基の間、15アミノ酸残基から20アミノ酸残基の間の全長を有する。
【0181】
適切には、ペプチドは、少なくとも12アミノ酸残基、少なくとも13アミノ酸残基、少なくとも14アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも16アミノ酸残基、少なくとも17アミノ酸残基の全長を有する。
【0182】
適切には、ペプチドは、細胞に透過することが可能である。ペプチドは、したがって、細胞透過性ペプチドと見なすことができる。
【0183】
適切には、ペプチドは、治療用分子に付着させるためのものである。適切には、ペプチドは、治療用分子を標的細胞に輸送するためのものである。適切には、ペプチドは、治療用分子を標的細胞に送達するためのものである。ペプチドは、したがって、担体ペプチドと見なすことができる。
【0184】
適切には、ペプチドは、細胞および組織に、適切には細胞の核に透過することが可能である。適切には、筋肉組織に透過することが可能である。
【0185】
適切には、ペプチドは、以下の配列のいずれかから選択することができる:
RBRRBRRFQILYRBRBR(配列番号27)
RBRRBRRFQILYRBRR(配列番号28)
RBRRBRFQILYRRBRBR(配列番号29)
RBRBRFQILYRBRRBRR(配列番号30)
RBRRBRRYQFLIRBRBR(配列番号31)
RBRRBRRILFQYRBRBR(配列番号32)
RBRRBRFQILYRBRBR(配列番号33)
RBRRBFQILYRBRRBR(配列番号34)
RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)
RBRRBFQILYRBRBR(配列番号36)
RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)
RBRRBRRFQILYHBHBR(配列番号38)
RBRRBRRFQILYHBRBH(配列番号39)
RBRRBRRYQFLIRBHBH(配列番号40)
RBRRBRRILFQYRBHBH(配列番号41)
RBRHBHRFQILYRBRBR(配列番号42)
RBRBBHRFQILYRBHBH(配列番号43)
RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)
RBRRBRFQILYHBHBH(配列番号45)
RBRRBHFQILYRBHBH(配列番号46)
HBRRBRFQILYRBHBH(配列番号47)
RBRRBFQILYRBHBH(配列番号48)
RBRRBRFQILYBHBH(配列番号49)
RBRRBRYQFLIHBHBH(配列番号50)
RBRRBRILFQYHBHBH(配列番号51)
RBRRBRRFQILYHBHBH(配列番号52)
【0186】
適切には、ペプチドは、以下のさらなる配列のいずれかから選択することができる:
RBRRBRFQILYBRBS(配列番号53)
RBRRBRFQILYBRB[Hyp](配列番号54)
RBRRBRFQILYBR[Hyp]R(配列番号55)
RRBRRBRFQILYBRBR(配列番号56)
BRRBRRFQILYBRBR(配列番号57)
RBRRBRWWWBRBR(配列番号58)
RBRRBRWWPWWBRBR(配列番号59)
RBRRBRWPWWBRBR(配列番号60)
RBRRBRWWPWBRBR(配列番号61)
RBRRBRRWWWRBRBR(配列番号62)
RBRRBRRWWPWWRBRBR(配列番号63)
RBRRBRRWPWWRBRBR(配列番号64)
RBRRBRRWWPWRBRBR(配列番号65)
RBRRBRRFQILYBRBR(配列番号66)
RBRRBRRFQILYRBR(配列番号67)
BRBRBWWPWWRBRRBR(配列番号68)
RBRRBRRFQILYBHBH(配列番号69)
RBRRBRRFQIYRBHBH(配列番号70)
RBRRBRFQILYBRBH(配列番号71)
RBRRBRFQILYR[Hyp]H[Hyp]H(配列番号72)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYRBHBH(配列番号73)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYR[Hyp]H[Hyp]H(配列番号74)
RBRRBRWWWRBHBH(配列番号75)
RBRRBRWWPRBHBH(配列番号76)
RBRRBRPWWRBHBH(配列番号77)
RBRRBRWWPWWRBHBH(配列番号78)
RBRRBRWWPWRBHBH(配列番号79)
RBRRBRWPWWRBHBH(配列番号80)
RBRRBRRWWWRBHBH(配列番号81)
RBRRBRRWWPWWRBHBH(配列番号82)
RBRRBRRWPWWRBHBH(配列番号83)
RBRRBRRWWPWRBHBH(配列番号84)
RRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号85)
BRRBRRFQILYRBHBH(配列番号86)
RRBRRBRFQILYBHBH(配列番号87)
BRRBRRFQILYBHBH(配列番号88)
RBRRBHRFQILYRBHBH(配列番号89)
RBRRBRFQILY[Hyp]R[Hyp]R(配列番号101)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILYBRBR(配列番号102)
R[Hyp]RR[Hyp]RFQILY[Hyp]R[Hyp]R(配列番号103)
RBRRBRWWWBRBR(配列番号104)
RBRRBRWWPWWBRBR(配列番号105)
【0187】
適切には、ペプチドは、以下の配列のうちの1つからなる:
RBRRBRRFQILYRBRBR(配列番号27)
RBRRBRRYQFLIRBRBR(配列番号31)
RBRRBRRILFQYRBRBR(配列番号32)
RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)
RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)
RBRRBRRFQILYHBHBR(配列番号38)
RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)
【0188】
一実施形態では、ペプチドは、以下の配列からなる:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)。
【0189】
一実施形態では、ペプチドは、以下の配列からなる:RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)。
【0190】
一実施形態では、ペプチドは、以下の配列からなる:RBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)。
【0191】
コンジュゲート
本発明のペプチドは、コンジュゲートを提供するため、治療用分子に共有結合され得る。
【0192】
治療用分子は、疾患を処置するための任意の分子であり得る。治療用分子は、核酸、ペプチド核酸、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えばPNA、PMO)、mRNAおよびgRNA(例えばCRISPR/Cas9技術の使用において)、短鎖干渉RNA、マイクロRNA、antagomiRNA、ペプチド、環状ペプチド、タンパク質、医薬品、薬物、またはナノ粒子から選択することができる。
【0193】
一実施形態では、治療用分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0194】
適切には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)から構成される。
【0195】
あるいは、オリゴヌクレオチドは、修飾されたPMO、または任意の他の電荷中性オリゴヌクレオチド、例えばペプチド核酸(PNA)、化学的に修飾されたPNA、例えばガンマPNA(Bahal、Nat.Comm.、2016)、オリゴヌクレオチドホスホルアミデート(この場合、リン酸の非架橋酸素はアミンもしくはアルキルアミンで置換されている、例えばWO2016028187A1に記載されているようなもの)または任意の他の部分的または完全に電荷中和されたオリゴヌクレオチドであり得る。
【0196】
治療用アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、利用可能な任意のものから選択することができ、例えば、DMDにおけるエクソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、https://research-repository.uwa.edu.au/en/publications/antisense-oligonucleotide-induced-exon-skipping-across-the-human-に開示されており、または、SMAを処置するためのISSN1もしくはIN7配列に相補的な治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Zhou、HGT、2013;およびHammondら、2016;およびOsmanら、HMG、2014に開示されている。
【0197】
適切には、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、DMDの処置において使用するためのエクソンスキッピングを誘導するためのものである。
【0198】
適切には、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、DMDの処置において使用するためのジストロフィン遺伝子内のエクソンスキッピングを誘導するためのものである。適切には、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、1つまたは複数のエクソンのエクソンスキッピングを誘導することができる。
【0199】
一実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、DMDの処置において使用するためのジストロフィン遺伝子の単一エクソンのエクソンスキッピングを誘導するためのものである。適切には、単一エクソンはDMDに関係する任意のエクソンから選択され、これは、ジストロフィン遺伝子内の任意のエクソン、例えばエクソン45、51、または53であり得る。任意の配列のPMOオリゴヌクレオチドは、購入することができる(例えば、Gene Tools Inc、米国から)。
【0200】
一実施形態では、コンジュゲートの治療用分子は、遺伝子標的のプレmRNAに相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0201】
適切には、遺伝子標的のプレmRNAに相補的なオリゴヌクレオチドは、プレmRNAを変化させ、変化されたmRNAをもたらし、それによって変化された配列のタンパク質がもたらされる、立体的ブロッキング事象を生じさせる。適切には、遺伝子標的はジストロフィン遺伝子である。適切には、立体的ブロッキング事象は、エクソンインクルージョンまたはエクソンスキッピングであり得る。一実施形態では、立体的ブロッキング事象は、エクソンスキッピング、適切にはジストロフィン遺伝子の単一エクソンのエクソンスキッピングである。
【0202】
必要に応じて、ペプチドへの結合前に、治療用分子(例えばPMOまたはPNA)の一端または両端にリシン残基を加え、水溶性を改善することができる。
【0203】
適切には、治療用分子は、5,000Da未満、適切には3,000Da未満、適切には1,000Da未満の分子量を有する。
【0204】
適切には、ペプチドは、C末端で治療用分子に共有結合されている。
【0205】
適切には、ペプチドは、所望により、リンカーを介して治療用分子に共有結合されている。リンカーは、ペプチド配列を治療用分子から隔てるためのスペーサーとして機能することができる。
【0206】
リンカーは、任意の適切な配列から選択することができる。
【0207】
適切には、リンカーは、ペプチドと治療用分子との間に存在する。適切には、リンカーは、ペプチドおよび治療用分子とは別の群である。したがって、リンカーは、人工アミノ酸を含み得る。
【0208】
一実施形態では、コンジュゲートは、リンカーを介して治療用分子に共有結合されているペプチドを含む。一実施形態では、コンジュゲートは、以下の構造を含む:
[ペプチド]-[リンカー]-[治療用分子]。
【0209】
一実施形態では、コンジュゲートは、以下の構造からなる:
[ペプチド]-[リンカー]-[治療用分子]。
【0210】
適切には、本明細書で列挙されているペプチドのいずれかを本発明に記載のコンジュゲートで使用することができる。一実施形態では、コンジュゲートは、以下の配列のうちの1つから選択されるペプチドを含む:RBRRBRFQILYBRBR(配列番号35)、RBRRBRRFQILYRBHBH(配列番号37)およびRBRRBRFQILYRBHBH(配列番号44)。
【0211】
適切には、いずれの場合においても、ペプチドは、上記で記載したN末端修飾をさらに含み得る。
【0212】
適切なリンカーには、例えば、ジスルフィド、チオエーテルまたはチオール-マレイミド結合を形成することができるC末端システイン残基、ペプチド上の塩基性アミノ酸とオキシム、クリック反応もしくはモルホリノ結合形成を形成するためのC末端アルデヒド、またはアミノ基に共有的にコンジュゲートしてカルボキサミド結合を形成するペプチド上のカルボン酸部分が含まれる。
【0213】
適切には、リンカーは、1アミノ酸から5アミノ酸の間の長さである。適切には、リンカーは、当技術分野で公知の任意のリンカーを含み得る。
【0214】
適切には、リンカーは、以下の配列:G、BC、XC、C、GGC、BBC、BXC、XBC、X、XX、B、BB、BXおよびXBのいずれかから選択される。適切には、ここで、Xは、6-アミノヘキサン酸である。
【0215】
適切には、リンカーは、ポリマー、例えばPEGなどであり得る。
【0216】
一実施形態では、リンカーはベータアラニンである。
【0217】
一実施形態では、ペプチドは、カルボキサミド結合を介して治療用分子にコンジュゲートされている。
【0218】
コンジュゲートのリンカーは、ペプチドが結合される治療用分子の一部を形成し得る。あるいは、治療用分子の結合は、ペプチドのC末端に直接結合され得る。適切には、そのような実施形態では、リンカーは必要ではない。
【0219】
あるいは、ペプチドは、治療用分子に化学的にコンジュゲートされ得る。化学結合は、例えば、ジスルフィド、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、トリアゾール、アミド、カルボキサミド、尿素、チオ尿素、セミカルバジド、カルバジド、ヒドラジン、オキシム、ホスフェート、ホスホルアミデート、チオホスフェート、ボラノホスフェート、イミノホスフェート、またはチオール-マレイミドの結合を介し得る。
【0220】
必要に応じて、システインを治療用分子のN末端に付加してペプチドへのジスルフィド結合の形成させることができるか、またはN末端をブロモアセチル化させてペプチドへのチオエーテルコンジュゲーションを行うことができる。
【0221】
本発明のペプチドは、コンジュゲートを提供するために、同様に、イメージング分子に共有結合させることができる。
【0222】
適切には、イメージング分子は、コンジュゲートの可視化を可能にする任意の分子であり得る。適切には、イメージング分子は、コンジュゲートの位置を示すことができる。適切には、in vitroまたはin vivoでのコンジュゲートの位置である。適切には、コンジュゲートを対象に投与することと、対象をイメージングしてコンジュゲートの位置を確認することとを含む、イメージング分子を含むコンジュゲートの位置をモニターする方法が提供される。
【0223】
イメージング分子の例には、検出分子、コントラスト分子、または増強分子が含まれる。適切なイメージング分子は、放射性核種;フルオロフォア;ナノ粒子(例えばナノシェル);ナノケージ;発色剤(例えば酵素)、放射性同位元素、色素、放射線不透性物質、蛍光性化合物、およびその組合せから選択され得る。
【0224】
適切には、イメージング分子は、イメージング技術を使用して可視化することができ、これらは細胞イメージング技術または医療用イメージング技術であってもよい。適切な細胞イメージング技術には、例えば、画像サイトメトリー、蛍光顕微鏡法、位相差顕微鏡法、SEM、TEMが含まれる。適切な医療用イメージング技術には、例えば、X線、透視検査、MRI、シンチグラフィー、SPECT、PET、CT、CAT、FNRIが含まれる。
【0225】
ある場合には、イメージング分子は、診断用分子と見なされ得る。適切には、診断用分子は、コンジュゲートを使用して疾患の診断を可能にする。適切には、疾患の診断は、イメージング分子を使用して、コンジュゲートの位置を決定することにより達成することができる。適切には、イメージング分子を含むコンジュゲートの有効量を対象に投与することと、コンジュゲートの位置をモニターすることとを含む、疾患の診断方法が提供される。
【0226】
適切には、イメージング分子を含むコンジュゲートの結合などのさらなる詳細は、治療用分子を含むコンジュゲートに関して上記で説明したものと同じである。
【0227】
適切には、本発明のペプチドは、コンジュゲートを提供するために、治療用分子およびイメージング分子に共有結合され得る。
【0228】
適切には、コンジュゲートは、細胞および組織に、適切には細胞の核に透過することが可能である。適切には筋組織に透過することが可能である。
【0229】
医薬組成物
本発明のコンジュゲートは、医薬組成物に製剤化することができる。
【0230】
適切には、医薬組成物は、本発明のコンジュゲートを含む。
【0231】
適切には、医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体をさらに含み得る。
【0232】
適切な薬学的に許容される希釈剤、アジュバントおよび担体は、当技術分野において周知である。
【0233】
本明細書で使用される場合、句「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、また他の問題もしくは合併症がなく、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触において使用するのに適したリガンド、材料、製剤、および/または剤形を意味する。
【0234】
句「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用される場合、体内のある臓器または部分から体内の別の臓器または部分へコンジュゲートの運搬または輸送に関与する、薬学的に許容される材料、製剤またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などを意味する。それぞれの細胞透過性ペプチドは、組成物の他の成分、例えばペプチドと治療用分子と適合性があるという意味において「許容され」なければならず、また個体にとって有害でない。復元および投与され得る凍結乾燥組成物もまた、本組成物の範囲内である。
【0235】
薬学的に許容される担体は、例えば、賦形剤、ビヒクル、希釈剤、およびその組合せであり得る。例えば、組成物が経口的に投与される場合、それらは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、もしくはシロップ剤として製剤化することができ、または非経口投与の場合、それらは注射剤、点滴注入剤、もしくは坐剤として製剤化することができる。これらの組成物は、従来の手段によって調製することができ、必要に応じて、活性化合物(すなわちコンジュゲート)を任意の従来の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、コーティング剤、またはその組合せと混合することができる。
【0236】
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載されている疾患、障害、および状態を医療上の使用の下で緩和、媒介、予防、および処置するために、追加の公知の治療剤、薬物、化合物のプロドラッグへの修飾などをさらに含むことができると理解されたい。
【0237】
適切には、医薬組成物は、医薬として使用するためのものである。適切には、コンジュゲートについて本明細書に記載されているのと同じ方法で医薬として使用するためのものである。コンジュゲートを使用する医療処置に関して本明細書に記載されている全ての特徴は、本医薬組成物に適用される。
【0238】
したがって、本発明のさらなる態様では、医薬として使用するための第4の態様に記載の医薬組成物が提供される。さらなる態様では、第4の態様に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与することを含む、疾患状態について対象を処置する方法が提供される。
【0239】
医療上の使用
本発明のペプチドを含むコンジュゲートは、疾患を処置するための医薬として使用することができる。
【0240】
医薬は、上記で定義した医薬組成物の剤形であり得る。
【0241】
疾患状態の処置を必要とする患者または対象を処置する方法であって、治療有効量のコンジュゲートを患者または対象に投与するステップを含む方法も提供される。
【0242】
適切には、医療処置は、細胞への、適切には細胞の核への治療用分子の送達を必要とする。
【0243】
処置しようとする疾患には、治療用分子による細胞および/または核膜の透過の改善が治療効果の改善をもたらし得る任意の疾患が含まれ得る。
【0244】
適切には、コンジュゲートは、筋神経系の疾患の処置で使用するためのものである。
【0245】
本発明のペプチドを含むコンジュゲートは、筋神経系の遺伝疾患の処置に適している。本発明のペプチドを含むコンジュゲートは、遺伝性筋神経疾患の処置に適している。適切な実施形態では、筋神経系の遺伝疾患の処置で使用するための第2の態様に記載のコンジュゲートが提供される。適切には、コンジュゲートは、遺伝性遺伝疾患の処置で使用するためのものである。適切には、コンジュゲートは、筋神経系の遺伝性遺伝疾患の処置で使用するためのものである。適切には、コンジュゲートは、遺伝性遺伝筋神経疾患の処置で使用するためのものである。適切には、コンジュゲートは、筋神経系の遺伝性X連鎖遺伝疾患の処置で使用するためのものである。適切には、コンジュゲートは、遺伝性X連鎖筋神経疾患の処置で使用するためのものである。
【0246】
適切には、コンジュゲートは、スプライシング欠損によって引き起こされる疾患の処置で使用するためのものである。そのような実施形態では、治療用分子は、スプライシング欠陥を予防もしくは修正することが可能であり、および/または正しくスプライシングされたmRNA分子の産生を増加させることが可能なオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0247】
適切には、コンジュゲートは、以下の疾患:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ブッチャー筋ジストロフィー(BMD)、メンケス病、ベータサラセミア、認知症、パーキンソン病、脊髄筋萎縮症(SMA)、筋緊張性ジストロフィー(DM)、ハンチントン舞踏病、ハッチンソン・ギルフォード早老症候群、毛細血管拡張性運動失調、またはがんのうちのいずれかの処置で使用するためのものである。
【0248】
一実施形態では、コンジュゲートは、DMDの処置において使用するためのものである。
【0249】
一実施形態では、DMDの処置において使用するための第2の態様に記載のコンジュゲートが提供される。適切には、そのような実施形態では、コンジュゲートの治療用分子は、ジストロフィンタンパク質の発現を増加させるように作動可能である。適切には、そのような実施形態では、コンジュゲートの治療用分子は、機能性ジストロフィンタンパク質の発現を増加させるように作動可能である。
【0250】
適切には、コンジュゲートは、ジストロフィン発現を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%増加させる。適切には、コンジュゲートは、ジストロフィンの発現を最大50%増加させる。
【0251】
適切には、コンジュゲートは、ジストロフィンタンパク質の発現を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%回復させる。適切には、コンジュゲートは、ジストロフィンタンパク質の発現を最大50%回復させる。
【0252】
適切には、コンジュゲートは、ジストロフィンタンパク質の機能を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%回復させる。適切には、コンジュゲートは、ジストロフィンタンパク質の機能を最大50%回復させる。
【0253】
適切には、コンジュゲートの治療用分子は、ジストロフィン転写中に1つまたは複数のエクソンのスキッピングを引き起こすことによってそうするように作動可能である。
【0254】
適切には、コンジュゲートの治療用分子は、ジストロフィン遺伝子の1つまたは複数のエクソンの10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%のスキッピングを引き起こす。適切には、コンジュゲートの治療用分子は、ジストロフィン遺伝子の1つまたは複数のエクソンの最大50%のスキッピングを引き起こす。
【0255】
適切には、処置しようとする患者または対象は、任意の動物またはヒトであり得る。適切には、患者または対象は、非ヒト哺乳動物であり得る。適切には、患者または対象は、男性または女性であり得る。一実施形態では、対象は男性である。
【0256】
適切には、処置しようとする患者または対象は、任意の年齢であり得る。適切には、処置しようとする患者または対象は、0から40歳、適切には0から30歳、適切には0から25歳、適切には0から20歳の間の年齢である。
【0257】
適切には、コンジュゲートは、例えば、髄内、髄腔内、脳室内、硝子体内、経腸、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、口腔内、鼻腔内の経路によって対象者に全身投与される。
【0258】
一実施形態では、コンジュゲートは、対象に静脈内投与するためのものである。
【0259】
一実施形態では、コンジュゲートは、対象に注射により静脈内投与するためのものである。
【0260】
適切には、コンジュゲートは、「治療有効量」で対象に投与するためのものであり、それによって、その量が個体に利益性を示すのに十分であることが意味される。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置しようとする疾患の性質および重症度に依存する。用量についての決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内である。技術およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000、pub. Lippincott, Williams & Wilkinsで確認することができる。
【0261】
例示的な用量は、0.01mg/kgと50mg/kgの間、0.05mg/kgと40mg/kgの間、0.1mg/kgと30mg/kgの間、0.5mg/kgと18mg/kgの間、1mg/kgと16mg/kgの間、2mg/kgと15mg/kgの間、5mg/kgと10mg/kgの間、10mg/kgと20mg/kgの間、12mg/kgと18mg/kgの間、13mg/kgと17mg/kgの間であり得る。
【0262】
有利なことには、本発明のコンジュゲートの用量は、治療用分子単独からのいずれかの効果を見るために必要とされる用量よりも低いオーダーまたは程度である。
【0263】
適切には、本発明のコンジュゲートを投与した後、毒性の1つまたは複数のマーカーは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較して有意に減少する。
【0264】
毒性の適切なマーカーは、腎毒性のマーカーであり得る。
【0265】
毒性の適切なマーカーとしては、KIM-1、NGAL、BUN、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、アラニントランスフェラーゼ、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが挙げられる。
【0266】
適切には、KIM-1、NGAL、およびBUNのうちの少なくとも1つのレベルは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較した場合、本発明のコンジュゲートを投与した後に減少する。
【0267】
適切には、KIM-1、NGAL、およびBUNのそれぞれのレベルは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較した場合、本発明のコンジュゲートを投与した後に減少する。
【0268】
適切には、前記のマーカーまたはそれぞれのマーカーのレベルは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較した場合、有意に減少する。
【0269】
適切には、前記のマーカーまたはそれぞれのマーカーのレベルは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較した場合、本発明のコンジュゲートを投与した後、最大5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%減少する。
【0270】
有利なことには、ペプチドと、それによって得られるコンジュゲートの毒性は、以前の細胞透過性ペプチドおよびコンジュゲートと比較して有意に減少する。特に、KIM-1およびNGAL-1は毒性のマーカーであり、これらは、現在利用可能なペプチド担体を使用する以前のコンジュゲートと比較して最大120倍有意に減少する。
【0271】
核酸および宿主
本発明のペプチドは、任意の標準のタンパク質合成方法、例えば、化学合成、半化学合成によって、または発現系の使用を介して、生成することができる。
【0272】
したがって、本発明はまた、ペプチドをコードするDNAを含むかまたはそれからなるヌクレオチド配列、発現系、例えば、発現および発現の制御に必要な配列と一緒に前記配列を含むベクター、ならびに前記発現系によって形質転換された宿主細胞および宿主生物に関する。
【0273】
したがって、本発明に記載のペプチドをコードする核酸もまた提供される。
【0274】
適切には、核酸は、単離または精製された形態で提供することができる。
【0275】
本発明に記載のペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターもまた提供される。
【0276】
適切には、ベクターはプラスミドである。
【0277】
適切には、ベクターは、制御配列、例えば、本発明に記載のペプチドをコードする核酸に作動可能に連結したプロモーターを含む。適切には、発現ベクターは、適切な細胞、例えば哺乳動物、細菌または真菌の細胞にトランスフェクトされた場合にペプチドを発現することが可能である。
【0278】
本発明の発現ベクターを含む宿主細胞もまた提供される。
【0279】
発現ベクターは、本発明の核酸が挿入され得る宿主細胞に応じて選択することができる。宿主細胞のそのような形質転換は、従来の技術、例えばSambrookら[Sambrook, J.、Russell, D. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、USA]で教示されているものを含む。適切なベクターの選択は、本技術分野の当業者の技術範囲内である。適切なベクターには、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、およびウイルスが含まれる。
【0280】
生成されたペプチドは、任意の適切な方法、例えば沈殿またはクロマトグラフィー分離、例えばアフィニティークロマトグラフィーによって、宿主細胞から単離および精製することができる。
【0281】
適切なベクター、宿主および組換え技術は、当技術分野において周知である。
【0282】
本明細書において、用語「作動可能に連結した」とは、選択されたヌクレオチド配列および制御ヌクレオチド配列が、ヌクレオチドコード配列の発現を制御配列の調節下に置くように共有結合されている状況を含むことができ、そのため、制御配列は、選択されたヌクレオチド配列の一部または全部を形成するヌクレオチドコード配列の転写を達成することが可能である。適切な場合には、次いで、得られた転写物は所望のペプチドに翻訳さる得る。
【0283】
本発明のある特定の実施形態は、次に、以下の図および表に関して説明されることになる。
【0284】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という語、ならびにこれらの語尾変化形は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」という意味であり、他の部分、添加剤、成分、整数またはステップを除外するように意図されていない(および除外しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数性ばかりでなく複数性も企図していると理解されたい。
【0285】
本発明の特定の態様、実施形態または例とともに記載される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または化学基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または例に、それらと矛盾しない限り、適用可能であると理解されたい。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)で開示される特徴の全て、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0286】
本発明は、いずれの上記実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)で開示される特徴の任意の新規の1つもしくは任意の新規の組合せにまで、またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規の1つもしくは任意の新規の組合せにまで及ぶ。読者の注意は、本願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書より前に出願される、および本明細書とともに公開される、全ての論文および文献に向けられ、そのような論文および文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0287】
1.材料および方法
1.1 P-PMO合成および調製
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護L-アミノ酸、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBOP)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、およびFmoc-β-Ala-OHがプレローディングされているWang樹脂(0.19または0.46mmol・g-1)は、Merck(Hohenbrunn、Germany)から入手した。HPLCグレードのアセトニトリル、メタノールおよび合成グレードのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、Fisher Scientific(Loughborough、UK)から購入した。ペプチド合成グレードのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジエチルエーテルは、VWR(Leicestershire、UK)から入手した。ピペリジンおよびトリフルオロ酢酸(TFA)は、Alfa Aesar(Heysham、England)から入手した。PMOは、Gene Tools Inc.(Philomath、USA)から購入した。ニワトリ胚抽出物およびウマ血清は、Sera Laboratories International Ltd(West Sussex、UK)から入手した。インターフェロンは、Roche Applied Science(Penzberg、Germany)から入手した。全ての他の試薬は、別段の記述がない限り、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から入手した。MALDI-TOF質量分析は、Voyager DE Pro BioSpectrometryワークステーションを使用して行った。水中50%アセトニトリル中の10mg・mL-1のα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸またはシナピン酸の保存液を鋳型として使用した。エラーバーは、±0.1%である。
【0288】
1.2 H2k mdx細胞におけるスクリーニングのためのP-PMOペプチドの合成
a)ペプチド変異体のライブラリーの調製
ペプチドは、Fmoc-β-Ala-OHがプレローディングされているWang樹脂(0.19もしくは0.46mmol・g
-1、Merck Millipore)を使用して、標準的なFmoc化学を適用し、製造業者の推奨手順に従うことにより、Intavis Parallel Peptide Synthesizerを使用して10μmolスケールで調製するか、またはCEM Liberty Blue(商標)Peptide Synthesizer(Buckingham、UK)を使用して100μmolスケールで調製した。Intavis Parallel Peptide Synthesizerを使用して合成する場合、PyBOP/NMMカップリング混合物での二重カップリングステップを使用し、続いて、それぞれのステップ後に無水酢酸のキャッピングを行った。CEM Liberty Blue Peptide Synthesizerを使用する場合、二重カップリングによって行ったアルギニンを除いて、全てのアミノ酸に対して一本鎖カップリングを実行した。カップリングは、それぞれ2回カップリングしたアルギニン残基を除いて、1回、75℃で5分間、60ワットのマイクロ波出力で行った。それぞれの脱保護反応は、75℃で2回、1回は30秒間、次いで3分間、35ワットのマイクロ波出力で行った。合成が完了したら、樹脂をDMF(3×50mL)で洗浄し、固相結合ペプチドのN末端をDIPEAの存在下、室温で、無水酢酸でアセチル化した。N末端のアセチル化後、ペプチド樹脂をDMF(3×20mL)およびDCM(3×20mL)で洗浄した。トリフルオロ酢酸(TFA):H
2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95%:2.5%:2.5%:3~10mL)からなる切断カクテルでの3時間、室温での処理により、ペプチドを固体支持体から切断した。ペプチド放出後、過剰なTFAを窒素でのスパージングにより除去した。粗ペプチドを冷ジエチルエーテル(合成規模に依存して15~40mL)の添加および3200rpmで5分間の遠心分離により沈殿させた。粗ペプチドペレットを、3回、冷ジエチルエーテル(3×15mL)で洗浄し、445-LC Scale-upモジュールと440-LCフラクションコレクターとを取り付けたVarian 940-LC HPLC Systemを使用してRP-HPLCにより精製した。0.1%TFA/H
2O中のCH
3CNの線形勾配を使用して15mL・分
-1の流速でRP-C18カラム(10×250mm、Phenomenex Jupiter)を用いて半分取HPLCによりペプチドを精製した。検出は、220nmおよび260nmで行った。所望のペプチドを含有する画分を併せ、凍結乾燥させて、ペプチドを白色固体として得た。
【表1】
表1:N末端アセチル化およびC末端ベータ-アラニンリンカーを有する、実施例で試験するために合成したペプチド。Pip9b2およびR6Glyは、比較ペプチドである。R6Glyは、C末端グリシンをリンカーとして使用する。
【0289】
b)PMO-ペプチドコンジュゲートのライブラリーの合成
マウスジストロフィン第23番エクソンの25-mer PMOアンチセンス配列(GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT(配列番号90))を使用した。ペプチドをそのC末端カルボキシル基によってPMOの3’末端にコンジュゲートした。これは、ペプチドに対して2.3当量のDIPEA、およびDMSOに溶解したPMOに対して2.5倍過剰のペプチドの存在下、NMP中の2.3および2当量のPyBOPおよびHOAtをそれぞれ使用して達成した。少数の例では、ペプチドのC末端カルボキシル基の活性化のために2.3当量のHBTUをPyBOPの代わりに使用した。一般に、N-メチルピロリドン(NMP、80μL)中のペプチド(2500nmol)の溶液に、PyBOP(NMP中0.3Mの19.2μL)、(16.7μLの0.3M NMP)中のHOAt、DIPEA(1.0μL)、およびPMO(DMSO中10mMの100μL)を添加した。混合物を2.5時間、40℃で放置し、H
2O(300μL)中の0.1%TFAの添加により反応を停止させた。この溶液を、改造Gilson HPLCシステムを使用してイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。20%CH3CNを含有するリン酸ナトリウム緩衝剤(25mM、pH7.0)中の塩化ナトリウム(0~1M)の線形勾配を使用して4mL・分-1の流速でイオン交換カラム(Resource S 4mL、GE Healthcare)を用いてPMO-ペプチドコンジュゲートを精製した。所望のペプチドを含有する画分を併せ、凍結乾燥させて、ペプチド-PMO誘導体を白色固体として得た。ペプチド-PMOコンジュゲートからの過剰な塩の除去は、イオン交換後に回収した画分を、Amicon(登録商標)ultra-15 3K遠心式フィルターデバイスを使用して濾過することにより行った。コンジュゲートを凍結乾燥させ、MALDI-TOFにより分析した。使用前に、コンジュゲートを滅菌水に溶解し、0.22μm酢酸セルロース膜に通して濾過した。ペプチド-PMOの濃度は、0.1N HCl溶液中のコンジュゲートの265nmでのモル吸収により判定した。(収率については表2を参照されたい)。
【表2】
表2.細胞培養分析のためのP-PMOコンジュゲートの収率(収率は、凍結乾燥させた精製ppmoの乾燥重量に基づく。P-PMOの純度は、220nmおよび260nmで順相HPLCにより確認して95%より高い。(a)P-PMOは、PyBOPの代わりにHBTU活性化を使用して合成した)。
【0290】
1.3 細胞培養
マウスH2k mdx筋芽細胞を、ゼラチン(0.01%)被覆フラスコ内で20%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS Gold、PAA laboratories)と、2%ニワトリ胚抽出物(Seralab)と、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-ネオマイシン抗生物質混合物(PSN、Gibco)と、3pg/μLのγ-インターフェロン(Roche)とを補充したダルベッコ変性イーグル培地(DMEM PPA laboratories)において10%CO2下、33℃で培養した。細胞をゼラチン(0.01%)被覆24ウェルプレートに2×105細胞/mLの密度で播種し、2日間、33℃、10%CO2で放置した。筋管への分化後、5%ウマ血清(Sigma)と1%PSNとを補充したDMEMにおいて37℃で、5%CO2下、2日間細胞をさらに増殖させた。
【0291】
1.4 細胞トランスフェクション
無血清Opti-MEM中で作製した、上記の通り調製したペプチド-PMOコンジュゲートとともに、細胞をインキュベートし、350μLをそれぞれのウェルに二重反復で添加し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、トランスフェクション培地を、5%ウマ血清と1%PSNとを補充したDMEMで置換し、細胞をさらに20時間、37℃でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、0.5mLのTRI RNA(Sigma)単離試薬をそれぞれのウェルに添加した。細胞を-80℃で1時間、凍結させた。
【0292】
1.5 RNA抽出およびネステッドRT-PCR分析
全細胞RNAを、TRI試薬を使用して抽出し、エタノールでの追加のさらなる沈殿を行った。精製されたRNAを、Nanodrop(登録商標)ND-1000(Thermo Scientific)を使用して定量した。OneStep RT-PCR Kit(Roche、Indianapolis、USA)を使用するRT-PCRの鋳型として、RNA(400ng)を使用した。プライマー配列については、表4を参照されたい。最初の逆転写のサイクル条件は、30分間50℃および7分間94℃を1サイクル、その後、20秒間94℃、40秒間55℃および80秒間68℃を30サイクルであった。1マイクロリットルのRT-PCR産物を第2のPCRステップの鋳型として使用した。0.5UのSuperTAQを使用して、94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で1分間での25サイクルで、増幅を行った。1.5%アガロースゲルを使用して電気泳動により産物を分離した。アガロースゲルの画像をMolecular Imager ChemiDoc(商標)XRS+イメージングシステム(BioRad、UK)で撮影し、Image Lab(V4.1)を使用して画像を解析した。Microsoft Excelを使用してエクソンスキッピングアッセイデータを解析してプロットし、少なくとも3回の独立した実験からの第23番エクソンスキッピングのパーセンテージとして表した。
【0293】
1.6 H2k mdxマウスにおける試験のためのPMO-ペプチドコンジュゲートの合成
a)ペプチド変異体の合成
CEM Liberty Blue(商標)マイクロ波Peptide Synthesizer(Buckingham、UK)およびFmoc化学を製造業者の推奨手順に従って使用して、ペプチドを100μmol規模で合成した。使用した側鎖保護基は、トリフルオロ酢酸処理に対して不安定であり、DIPEAの存在下、PyBOP(5倍過剰)を使用して活性化させた5倍過剰のFmoc保護アミノ酸(0.25mmol)を使用してペプチドを合成した。ピペリジン(DMF中20% v/v)を使用して、N-Fmoc保護基を除去した。カップリングは、それぞれ2回カップリングしたアルギニン残基を除いて、1回、75℃で5分間、60ワットのマイクロ波出力で行った。それぞれの脱保護反応は、75℃で2回、1回は30秒間、次いで1回は3分間、35ワットのマイクロ波出力で行った。合成が完了したら、樹脂をDMF(3×50mL)で洗浄し、固相結合ペプチドのN末端をDIPEAの存在下、室温で、無水酢酸でアセチル化した。N末端のアセチル化後、ペプチド樹脂をDMF(3×20mL)およびDCM(3×20mL)で洗浄した。トリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95%:2.5%:2.5%、10mL)からなる切断カクテルでの3時間、室温での処理により、ペプチドを固体支持体から切断した。過剰なTFAを窒素でのスパージングにより除去した。切断されたペプチドを氷冷ジエチルエーテルの添加によって沈殿させ、3000rpmで5分間、遠心分離した。粗ペプチドペレットを、3回、冷ジエチルエーテル(3×40mL)で洗浄し、445-LC Scale-upモジュールと440-LCフラクションコレクターとを取り付けたVarian 940-LC HPLC Systemを使用してRP-HPLCにより精製した。0.1%TFA/H2O中のCH3CNの線形勾配を使用して15mL・分-1の流速でRP-C18カラム(10×250mm、Phenomenex Jupiter)を用いて半分取HPLCによりペプチドを精製した。検出は、220nmおよび260nmで行った。
【0294】
b)PMO-ペプチドコンジュゲートの合成
マウスジストロフィン第23番エクソンの25-mer PMOアンチセンス配列(GGCCAAACCTCGGCTTACCTGAAAT(配列番号90))を使用した。ペプチドをそのC末端カルボキシル基によってPMOの3’末端にコンジュゲートした。これは、ペプチドに対して2.3当量のDIPEA、およびDMSOに溶解したPMOに対して2.5倍過剰のペプチドの存在下、NMP中の2.3および2倍当量のPyBOPおよびHOAtをそれぞれ使用して達成した。少数の例では、ペプチドのC末端カルボキシル基の活性化のためにHBTU(2.3当量)をPyBOPの代わりに使用した。一般に、N-メチルピロリドン(NMP、100μL)中のペプチド(10μmol)の溶液に、PyBOP(NMP中0.3Mの76.6μL)、(66.7μLの0.3M NMP)中のHOAt、DIPEA(4.0μL)、およびPMO(DMSO中10mMの400μL)を添加した。混合物を2時間、40℃で放置し、0.1%TFA(1mL)の添加により反応を停止させた。20%CH3CNを含有するリン酸ナトリウム緩衝剤(25mM、pH7.0)中の塩化ナトリウム(0~1M)の線形勾配を使用して6mL・分-1の流速でカチオン交換クロマトグラフィーカラム(Resource S 6mL column、GE Healthcare)を用いて反応物を精製した。ペプチド-PMOコンジュゲートからの過剰な塩の除去は、イオン交換後に回収した画分を、Amicon(登録商標)ultra-15 3K遠心式フィルターデバイスを使用して濾過することにより行った。コンジュゲートを凍結乾燥させ、MALDI-TOFにより分析した。使用前に、コンジュゲートを滅菌水に溶解し、0.22μm酢酸セルロース膜に通して濾過した。ペプチド-PMOの濃度は、0.1N HCl溶液中のコンジュゲートの265nmでのモル吸収により判定した。全収率(表3)は、PMOに基づいて25~36%であった。
【表3】
表3.in vivoでの分析のためにより大きい規模で合成したP-PMOコンジュゲートの収率(収率は、凍結乾燥させた精製ppmoの乾燥重量に基づく。PPMOの純度は、220nmおよび260nmで順相HPLCにより確認して95%より高い。(a)PPMOは、PyBOPの代わりにHBTU活性化を使用して合成した)。
【0295】
1.7 P-PMOによるジストロフィン修復のin vivoでの評定
実験は、University of OxfordのBiomedical Sciences UnitにおいてHome Office Project Licence authorisationのもとで施設内倫理審査に従って行った。マウスを最小疾患施設で飼育し、環境を12時間の昼夜サイクルで温度制御した。動物は、市販の齧歯動物用固形飼料および水を自由に摂取した。
【0296】
実験は、メス10~12週齢mdxマウスで行った。mdxマウスを拘束した後、10mg/kgのP-PMOの単回尾静脈注射を行った。注射の1週間後、マウスを屠殺し、TA、心臓および横隔膜筋を除去し、ドライアイス冷却イソペンタンで急速凍結させ、-80℃で保管した。
【0297】
1.8 ウェスタンブロット分析
単回投与後のジストロフィン修復期間を評定するために、筋肉の3分の1(TAおよび横隔膜について)または7μm厚の横断凍結切片(心臓について)を300μlの緩衝剤(50mM Tris pH8、150mM NaCl、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、10%SDSおよびプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤)に溶解した後、10分間、13000rpmで遠心分離した(Heraeus、#3325B)。上清を回収し、100℃で3分間、加熱した。BCA法によりタンパク質を定量し、40μgタンパク質/試料をNuPage 3~8%Tris酢酸塩ゲルで以前に記載された(19)ように分離した。タンパク質を、孔径0.45μmのPVDF膜に1時間、30Vで、その後、1時間100Vで転写し、モノクローナル抗ジストロフィン(1:200、NCL-DYS1、Novocastra)および抗ビンキュリン(ローディング対照、1:100000、hVIN-1、Sigma)抗体で以前に記載された(37)ようにプローブした。二次抗体IRDye 800CWヤギ抗マウスを1:20000の希釈で使用した(LiCOR)。
【0298】
P-PMO処置mdxマウスにおけるジストロフィン修復レベルを、100%と見なしたC57BL/10野生型対照マウスのレベルに対する相対レベルとして表した。このために、P-PMO処置mdx試料と並行して5系列のC57BL/10タンパク質希釈物を含めることにより、標準曲線を作成した。希釈系列は、次の通りであった:レーンごとにローディングした総タンパク質40μgのそれぞれ75%、40%、15%、5%または0%は、C57BL/10タンパク質溶解物からのものであり、残部は、未処置mdxタンパク質溶解物からのものであった。これらの標準物質を分取し、処置mdx試料と並行してそれぞれのウェスタンブロットに使用した。全ての標準物質および処置試料について、ジストロフィン強度の定量をFluorescence Odysseyイメージングシステムにより行い、全ての試料におけるビンキュリン蛍光強度に対する比を算出することにより正規化した。標準正規化値をそれらの既知のジストロフィン濃度に対してプロットして最もよく当てはまる数式を得、この式を使用して、P-PMO処置mdxマウスのそれぞれの試料の正規化値を補間した。
【0299】
1.9 in vivoでのDmd第23エクソンスキッピングのRT-qPCR分析
ペプチド-PMOで処理した骨格筋および心臓組織を用いて、マウスDmd転写物からの第23番エクソンのエクスクルージョンの定量を行った。手短に述べると、均質化された組織からTrizolに基づく抽出法を使用してRNAを抽出し、ランダムプライマーを使用してcDNAを合成した。プライマー/プローブは、Integrated DNA Technologiesによって合成され、非スキップ産物を表す第23~24番エクソンにわたる領域を増幅するように設計された(mDMD23-24、表4を参照されたい)または第22番エクソンと第24番エクソンの境界にわたるプローブを使用して第23番エクソンを欠いている転写物を特異的に増幅するように設計された(mDMD22-24)。既知の転写物量を使用して作成した標準曲線に対してそれぞれの転写物レベルを較正し、[スキップ]/[スキップ+非スキップ]によりスキッピングパーセンテージを導出した。
【表4】
表4:ネステッドRT-PCR法または定量的RT-PCR法による第23番エクソンスキッピングの定量のためのプライマーおよびプローブ配列
【0300】
1.10 ペプチド-PMOの毒物学的評定
8~10週齢のメスC57BL/6マウスに0.9%食塩水中のペプチド-PMOの単一用量30mg/kgを尾静脈へのボーラス静脈内注射により投与した。投与後2日目および7日目に、代謝ケージ(Tecniplast、UK)に20時間収容した後、冷却条件下で尿を非侵襲的に採取した。7日目の剖検時に頸静脈から血清を採取し、前脛骨筋、横隔膜および心臓組織も採取した。
【0301】
尾静脈への静脈内注射による0.9%食塩水中のペプチド-PMOの2.5mg/kgから50mg/kgまでにわたる異なる単一投薬量で同じ手順を踏んだ。
【0302】
標準曲線に当てはまるように尿を適切に希釈した後、ELISAによりKIM-1(腎損傷分子-1)およびNGAL(好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン)の尿中レベルを定量した(KIM-1 R&Dカタログ番号MKM100、NGAL R&Dカタログ番号MLCN20)。MRC Harwell Institute、Mary Lyon Centre、Oxfordshire、UKで定量した尿中クレアチニンレベルに対して値を正規化した。血清血中尿素窒素レベルは、MRC Harwell Institute、Mary Lyon Centre、Oxfordshire、UKで定量した。
【0303】
全てのレベルをAU680 Clinical Chemistry Analyser、Beckman Coulterで定量した。
【0304】
エクソンスキッピングの有効性の定量を第23番エクウソンスキップおよび非スキップ転写物の定量的RT-PCRにより判定し、スキップ転写物の全(スキップおよび非スキップ)転写物(配列については表4を参照されたい)に対するパーセンテージとして表した。
【0305】
2.結果
ここで提供する結果は、細胞内でのエクソンスキッピング活性においてここで生成したペプチド-PMOコンジュゲートの明らかな用量応答効果を実証する(
図1、2および12)。これらの図は、DPEP1およびDPEP3系の全て、すなわち本発明のペプチドが、治療上の使用の考慮に足る細胞内への十分な細胞透過有効性を有することも強調する。
【0306】
ここで提供する結果は、疾患の適切なマウスモデルにおけるin vivoでのペプチド-PMOコンジュゲートの活性をさらに強調する(
図3~4)。全体的に見て、これらの結果は、このようなコンジュゲートの活性が、前脛骨筋で最大であり、次に横隔膜、その次に心臓であることを示唆している。これらの図は、本発明のDPEPペプチドコンジュゲートが、in vivoで良好なエクソンスキッピング活性を有すること、およびin vivoでジストロフィンタンパク質発現の増加をもたらすことを実証する。さらに、本発明のDPEPコンジュゲートは、同じコンジュゲートを使用したとき、両方の点で、「PIP」ペプチドおよびR6Glyなどの以前の細胞透過性ペプチドと比べて勝るとも劣らない。
【0307】
DPEPペプチドコンジュゲート化合物の投与後のKIM-1およびNGAL(これらは腎毒性の指標である)のレベルが、以前の細胞透過性ペプチドとのコンジュゲートより有意に低いことも、ここで実証される。DPEP 1.9および3.8コンジュゲートは、そのようなマーカーの最低レベルを示した(
図5、6および11)。血清血中尿素窒素レベル(腎機能障害のもう1つのマーカー)も、Pip9b2とのコンジュゲートについてのみ上昇し、本発明のDPEPペプチドとのコンジュゲートについては上昇しなかった(
図7)。第2の主要な発見は、投与の7日後、KIM-1およびNGALレベルが全てのDPEPペプチドコンジュゲートについてほぼ食塩水レベルに低下することであり、これは、腎臓関連毒性の何らかの逆転および改善もあることを示唆している。このような効果は、以前の細胞透過性ペプチドを使用するコンジュゲートでは見られなかった。毒性のこの逆転効果は、本発明のDEDPペプチドでは50mg/kgの高用量で与えたときでさえ見られる(
図11)。以前の細胞透過性ペプチドは、7日後には毒性の減少を示さず、全体を通して毒性マーカーがはるかに高いままであった。
【0308】
エクソンスキッピング活性が、DPEPペプチドコンジュゲートの全てについて30および50mg/kgのより高用量でTAおよび横隔膜において高いままであり(
図10および12)、これは、腎障害マーカーのレベル低下で裏付けられ、毒性マーカーが何倍も低いのでこれらの化合物のより広い治療指数を示唆する。DPEPペプチドコンジュゲートの全てが、コンジュゲート中の公知R6Glyコンパレーターより高い活性を有し、その上、同様の毒性マーカーレベルを少なくとも維持すること、およびコンジュゲート中の公知PIPペプチドコンパレーターと同様の活性を有し、その上、はるかに低い毒性マーカーレベルを有することも、注目に値する。一部の場合には、本発明のDPEPペプチドコンジュゲートは、公知R6Glyコンジュゲートと比較して活性の増加ばかりでなく、毒性マーカーの低減も示す。
【0309】
したがって、本発明のDPEP1および3ペプチドは、ヒトにおける神経筋障害の処置のための治療用コンジュゲートの有効性を改善し、毒性を低下させるために有望な細胞透過性ペプチドを提供する。
【0310】
3.さらなる実施例
P-PMO合成および調製
9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護L-アミノ酸、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBOP)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、およびFmoc-β-Ala-OHがプレローディングされているWang樹脂(0.19または0.46mmol・g-1)は、Merck(Hohenbrunn、Germany)から入手した。1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)は、Sigma-Aldrichから入手した。HPLCグレードのアセトニトリル、メタノールおよび合成グレードのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、Fisher Scientific(Loughborough、UK)から購入した。ペプチド合成グレードのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジエチルエーテルは、VWR(Leicestershire、UK)から入手した。ピペリジンおよびトリフルオロ酢酸(TFA)は、Alfa Aesar(Heysham、England)から入手した。PMOは、Gene Tools Inc.(Philomath、USA)から購入した。全ての他の試薬は、別段の記述がない限り、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)から入手した。MALDI-TOF質量分析は、Voyager DE Pro BioSpectrometryワークステーションを使用して行った。水中50%アセトニトリル中の10mg・mL-1のα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸またはシナピン酸の保存液を鋳型として使用した。エラーバーは、±0.1%である。
【0311】
細胞におけるスクリーニングのためのP-PMOペプチドの合成
a)ペプチド変異体のライブラリーの調製
ペプチドは、Fmoc-β-Ala-OHがプレローディングされているWang樹脂(0.19もしくは0.46mmol・g-1、Merck Millipore)を使用して、標準的なFmoc化学を適用し、製造業者の推奨手順に従うことにより、Intavis Parallel Peptide Synthesizerを使用して10μmolスケールで調製するか、またはCEM Liberty Blue(商標)Peptide Synthesizer(Buckingham、UK)を使用して100μmolスケールで調製した。Intavis Parallel Peptide Synthesizerを使用して合成する場合、PyBOP/NMMカップリング混合物での二重カップリングステップを使用し、続いて、それぞれのステップ後に無水酢酸のキャッピングを行った。CEM Liberty Blue Peptide Synthesizerを使用する場合、二重カップリングによって行ったアルギニンを除いて、全てのアミノ酸に対して一本鎖カップリングを実行した。カップリングは、それぞれ2回カップリングしたアルギニン残基を除いて、1回、75℃で5分間、60ワットのマイクロ波出力で行った。それぞれの脱保護反応は、75℃で2回、1回は30秒間、次いで3分間、35ワットのマイクロ波出力で行った。合成が完了したら、樹脂をDMF(3×50mL)で洗浄し、固相結合ペプチドのN末端をDIPEAの存在下、室温で、無水酢酸でアセチル化した。N末端のアセチル化後、ペプチド樹脂をDMF(3×20mL)およびDCM(3×20mL)で洗浄した。トリフルオロ酢酸(TFA):H2O:トリイソプロピルシラン(TIPS)(95%:2.5%:2.5%:3~10mL)からなる切断カクテルでの3時間、室温での処理により、ペプチドを固体支持体から切断した。ペプチド放出後、過剰なTFAを窒素でのスパージングにより除去した。粗ペプチドを冷ジエチルエーテル(合成規模に依存して15~40mL)の添加および3200rpmで5分間の遠心分離により沈殿させた。粗ペプチドペレットを、3回、冷ジエチルエーテル(3×15mL)で洗浄し、445-LC Scale-upモジュールと440-LCフラクションコレクターとを取り付けたVarian 940-LC HPLC Systemを使用してRP-HPLCにより精製した。0.1%TFA/H2O中のCH3CNの線形勾配を使用して15mL・分
-1の流速でRP-C18カラム(10×250mm、Phenomenex Jupiter)を用いて半分取HPLCによりペプチドを精製した。検出は、220nmおよび260nmで行った。所望のペプチドを含有する画分を併せ、凍結乾燥させて、ペプチドを白色固体として得た(収率について表5を参照されたい)。
【表5】
表5:N末端アセチル化(Ac)、C末端β-アラニンリンカー(B)を有する、実施例で試験するために合成したペプチド。S
*は、グルコシル化セリン残基である。DPEP5.7、Pip9b2、およびPip6aは、比較ペプチドである。
【0312】
b)ペプチド-PMOコンジュゲートのライブラリーの合成
別名[CAG]7として公知のトリプレットリピート配列(CAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG(配列番号107))の21-mer PMOアンチセンス配列を使用した。ペプチドをそのC末端カルボキシル基によってPMOの3’末端にコンジュゲートした。これは、2.5当量のDIPEA、およびDMSOに溶解したPMOに対して2.5倍過剰のペプチドの存在下、NMP中の2.5および2当量のPyBOPおよびHOAtをそれぞれ使用して達成した。一般に、N-メチルピロリドン(NMP、80μL)中のペプチド(2500nmol)の溶液に、PyBOP(NMP中0.3Mの19.2μL)、(16.7μLの0.3M NMP)中のHOAt、DIPEA(1.0mL)、およびPMO(DMSO中10mMの180μL)を添加した。混合物を2.5時間、40℃で放置し、H2O(300μL)中の0.1%TFAの添加により反応を停止させた。この溶液を、改造Gilson HPLCシステムを使用してイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。20%CH3CNを含有するリン酸ナトリウム緩衝剤(25mM、pH7.0)の線形勾配を使用してイオン交換カラム(Resource S 4mL、GE Healthcare)を用いてPMO-ペプチドコンジュゲートを精製した。塩化ナトリウム溶液(1M)を使用してコンジュゲートをカラムから4mL・分
-1または6mL・分
-1のどちらかの流速で溶出した。所望の化合物を含有する画分を併せ、直ちに脱塩した。ペプチド-PMOコンジュゲートからの過剰な塩の除去は、イオン交換後に回収した画分を、Amicon(登録商標)ultra-15 3K遠心式フィルターデバイスを使用して濾過することにより行った。コンジュゲートを凍結乾燥させ、MALDI-TOFにより分析した。使用前に、コンジュゲートを滅菌水に溶解し、0.22μm酢酸セルロース膜に通して濾過した。ペプチド-PMOの濃度は、0.1N HCl溶液中のコンジュゲートの265nmでのモル吸収により判定した。(収率については表6を参照されたい)。
【表6】
表6.細胞培養分析およびin vivoでの実験のためのP-PMOコンジュゲートの収率(収率は、凍結乾燥させた精製P-PMOの乾燥重量に基づく。P-PMOの純度は、220nmおよび260nmで順相HPLCにより確認して95%より高い。
【0313】
ペプチド-PMOコンジュゲート合成。
前記の通りにペプチドを合成し、PMOにコンジュゲートした。CUG/CTG伸長リピート(5’-CAGCAGCAGCAGCAGCAGCAG-3’(配列番号107))を標的とするPMO配列は、Gene Tools LLCから購入した。これを本明細書の他の箇所では[CAG]7 PMOと呼ぶ。
【0314】
細胞培養およびペプチド-PMO処理
健常個体または2600のCTGリピートを有するDM1患者からの不死化筋芽細胞を、20%FBS(Life technologies)と、50μg/mlのゲンタマイシン(Life technologies)と、25μg/mlのフェチュインと、0.5ng/mlのbFGFと、5ng/mlのEGFと、0.2μg/mlのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)とを補充した、M199:DMEMの混合物(1:4比、Life technologies)からなる増殖培地で培養した。コンフルエントな細胞培養物を、筋芽細胞用の5μg/mlのインスリン(Sigma-Aldrich)を補充したDMEM培地に切替えることにより、筋分化を誘導した。処理のために、WTまたはDM1細胞を4日間、分化させた。次いで、培地を、1、2、5、10、20または40μM濃度のペプチド-PMOコンジュゲートを含有する新鮮分化培地と交換した。処理の48時間後に分析のために細胞を回収した。ヒト肝細胞への40uMのまたはヒト筋芽細胞への1、2、5、10、20もしくは40μM濃度のペプチド-PMOのトランスフェクションの2日後に、ヒト肝細胞およびヒト筋芽細胞における細胞生存率を、蛍光ベースアッセイ(Promega)を使用して定量した。
【0315】
RNA単離、RT-PCRおよびqPCR分析。
マウス組織の場合:RNA抽出前に、FastprepシステムおよびLysing Matrix Dチューブ(MP biomedicals)を使用してTriReagent(Sigma-Aldrich)で筋肉を破壊した。ヒト細胞の場合:RNA抽出前に、細胞をプロテインキナーゼK緩衝剤(500mM NaCl、10mM Tris-HCl、pH7.2、1.5mM MgCl2、10mM EDTA、2%SDSおよび0.5mg/mlのプロテインキナーゼK)に45分間、55℃で溶解した。TriReagentを製造業者のプロトコールに従って使用して全RNAを単離した。合計20μLのM-MLV第1鎖合成系(Life Technologies)を製造業者の使用説明書に従って使用して、1マイクログラムのRNAを逆転写した。その後、1マイクロリットルのcDNA調製物を半定量的PCR分析において標準プロトコール(ReddyMix、Thermo Scientific)に従って使用した。それぞれの遺伝子について線形増幅範囲内で25~35サイクルのPCR増幅を行った。PCR産物を1.5~2%アガロースゲルで分離し、臭化エチジウム染色し、ImageJソフトウェアで定量した。エクソンインクルージョン率を、アイソフォームシグナルの全強度に対するインクルージョンのパーセンテージとして定量した。プライマーを次の表7に示す。
【表7】
表7:PCR用のプライマー
【0316】
毒物学
上のセクション1.10で説明したように毒物学評定を行った。
【0317】
結果
処置したDM1患者由来の筋肉細胞(筋芽細胞)は、DPEP1または3ペプチド-[CAG]
7PMOコンジュゲートが特異的に突然変異型CUGexp-DMPK転写物を標的として、スプライシング欠陥および筋ジストロフィーの原因となる、核RNA病巣によるMBNL1スプライシング因子の有害な隔離およびその結果としてのMBNL1機能低下を抑止することを示した。DPEP1/3ペプチド-[CAG]
7PMOコンジュゲートは、細胞を透過し、高い有効性でスプライシング正常化を誘導する(
図13)。いわゆる「DPEP1およびDPEP3」ペプチドのこれらの新規生成は、CAG7リピートアンチセンスオリゴヌクレオチドPMOとコンジュゲートしたときin vitroでスプライシング欠陥を修正する高い有効性を示した。これは、DM1の処置のための治療に使用できる可能性があることを示す。
【0318】
さらに、DPEP1/3を用いて形成したコンジュゲートの予備的な毒物学的評価は、ALP、ALT、AST、KIM-1、BUN、NGALおよびクレアチニンレベルが、Pip系からの現在利用可能なペプチド担体により典型的に誘導される増加倍数とは対照的に、食塩水対照注射と同様であったことを示す。この予備的データにより、本発明者らは、DPEPペプチドと[CAG]
7PMOから形成したコンジュゲートが、Pip6aなどの以前のペプチドを用いて形成されたコンジュゲートと同様に活性であるが、毒性が低いため、より広い治療域を有することを明らかにした(
図15~19)。
【配列表】