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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/166 20210101AFI20250409BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20250409BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20250409BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20250409BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20250409BHJP
【FI】
H01M50/166
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/131
H01M50/152
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021565409
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043706
(87)【国際公開番号】W WO2021124813
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019228369
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 孝博
(72)【発明者】
【氏名】山下 修一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和博
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-144054(JP,A)
【文献】特開2006-185926(JP,A)
【文献】特開2007-66835(JP,A)
【文献】特開2016-72102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極がセパレータを介して巻回された電極体と、前記電極体上に配置された絶縁板と、電解質と、前記電極体および前記電解質を収容する有底円筒状の外装缶と、前記外装缶の開口端部にかしめ固定された封口体と、を有
前記外装缶において、前記電極体を収容する胴体部の外径は、20mm以上21mm以下であって、
前記封口体を収容する前記開口端部の外径は、前記胴体部の外径の91%~95%である
円筒形電池の製造方法であって、
前記電極体を前記外装缶に挿入する電極体挿入工程と、
前記電極体挿入工程の後に、前記開口端部の外径を縮径する縮径工程と、
前記縮径工程の後に、前記外装缶に前記絶縁板を挿入する絶縁板挿入工程と、を備える、
円筒形電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形電池が知られている。例えば特許文献1には、一端側が開口した有底円筒形状の外装缶と、外装缶を密閉する封口体とを有する円筒形電池が開示されている。近年、円筒形電池の用途がパソコンから電気自動車等に向けて拡大されたため、円筒形電池の高容量化が求められており、電池サイズの大型化が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-200826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池サイズの大型化に伴い、外装缶の径を大きくする場合、封口体の径を大きくする必要がある。封口体の径を大きくする場合には、封口体を外装缶にかしめる際のかしめ力、ならびに封口体の外部衝撃に対する耐久強度も大きくする必要があり、ひいては封口体の厚みを大きくする必要がある。しかし、封口体の厚みを大きくする場合には、封口体の重量増加となり円筒形電池の重量増加につながる。
【0005】
本開示の目的は、高容量化しつつも重量の増加を抑制することができる円筒形電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である円筒形電池は、正極および負極がセパレータを介して巻回された電極体と、電解質と、電極体および電解質を収容する有底円筒状の外装缶と、外装缶の開口端部にかしめ固定された封口体と、を有する円筒形電池であって、外装缶において、電極体を収容する外装缶の胴体の外径は、20mm以上であって、封口体を収容する開口端部の外径は、胴体部の外径よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、高容量化しつつも重量の増加を抑制することができる円筒形電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である円筒形電池の断面図である。
図2】実施形態の一例である外装缶および封口体の断面図である。
図3】実施形態の一例である円筒形電池を製造する製造工程の流れを示すフロー図である。
図4】実施形態の一例である円筒形電池を製造する製造工程の一部を説明する模式図である。
図5】実施形態の一例である円筒形電池の効果を説明する、(A)実施形態の一例である円筒形電池の断面図、(B)比較例の円筒形電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本開示の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料および個数は、説明のための例示であって、円筒形電池の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0010】
図1を用いて、実施形態の一例である円筒形電池10について説明する。図1は、円筒形電池10の断面図である。
【0011】
図1に示すように、円筒形電池10は、電極体14と、電解質(図示せず)と、電極体14および電解質を収容する外装缶20とを備える。電極体14は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを備え、正極11と負極12がセパレータ13を介して渦巻き状に巻回された巻回構造を有する。外装缶20は、上端側が開口した有底円筒形状を有し、外装缶20の開口は封口体30によって塞がれている。
【0012】
正極11は、正極集電体と、当該集電体の少なくとも一方の面に形成された正極合材層とを備える。正極集電体には、アルミニウム、アルミニウム合金等、正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、アセチレンブラック等の導電材、およびポリフッ化ビニリデン等の結着材を含み、正極集電体の両面に形成されることが好ましい。正極活物質には、例えばリチウム含有遷移金属複合酸化物が用いられる。正極11は、正極集電体上に正極活物質、導電材、および結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して正極合材層を正極集電体の両面に形成することにより製造できる。
【0013】
負極12は、負極集電体と、当該集電体の少なくとも一方の面に形成された負極合材層とを備える。負極集電体には、銅、銅合金等の負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、およびスチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の結着材を含み、負極集電体の両面に形成されることが好ましい。負極活物質には、例えば黒鉛、シリコン含有化合物等が用いられる。負極12は、負極集電体上に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧延して負極合材層を集電体の両面に形成することにより製造できる。
【0014】
電解質には、例えば非水電解質が用いられる。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。電解質の種類は特に限定されず、水系電解質であってもよい。
【0015】
円筒形電池10は、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19を備える。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード15が絶縁板18の貫通孔を通って封口体30側に延び、負極12に取り付けられた負極リード16が絶縁板19の外側を通って外装缶20の底部側に延びている。正極リード15は封口体30の底板である内部端子板31の下面に溶接等で接続され、内部端子板31と電気的に接続された封口体30の天板であるキャップ35が正極外部端子となる。負極リード16は外装缶20の底部内面に溶接等で接続され、外装缶20の底部が負極外部端子となる。
【0016】
外装缶20は、有底円筒形状の金属製容器である。外装缶20と封口体30との間にはガスケット39が設けられ、電池内部の密閉性が確保される。詳細は後述するが、外装缶20の開口端部20Bの外径は、外装缶20の電極体14を収容する胴体部20Aの外径よりも小さく形成される。外装缶20の開口端部20Bの近傍には、側面部の一部が内側に張り出した、封口体30を支持する溝入部20Cが形成されている。溝入部20Cは、外装缶20の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体30を支持する。溝入部20Cに支持された封口体30は、封口体30に対してかしめられた外装缶20の開口端部により、外装缶20に固定される。
【0017】
封口体30は、電極体14側から順に、内部端子板31、下弁体32、絶縁部材33、上弁体34、およびキャップ35が積層された構造を有する。封口体30を構成する各部材は、例えば円盤状又はリング状を呈し、絶縁部材33を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体32と上弁体34は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材33が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体32が上弁体34をキャップ35側に押し上げるように変形して破断し、下弁体32と上弁体34の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体34が破断し、キャップ35の通気孔35Aからガスが排出される。
【0018】
図2を用いて、外装缶20および封口体30について、さらに詳細に説明する。図2は、円筒形電池10の断面図である。なお、図2では、円筒形電池10の内部の電極体14等の図示は省略している。
【0019】
外装缶20は、上述したように電極体14(図1参照)および電解質を収容すると共に上端側が開口された有底円筒状の金属製容器である。外装缶20では、上述したように開口端部20Bの外径(図中のφB)が胴体部20Aの外径(図中のφA)よりも小さく形成されている。
【0020】
胴体部20Aは、外装缶20のうち底部と溝入部20Cの下面の間に挟まれた部分であって、電極体14を収容する部分である。胴体部20Aは、円筒状に形成される。本実施形態の胴体部20Aの外径は、20mm以上35mm以下であることが好ましい。さらには、20mm以上21mm以下であることが好ましい。
【0021】
開口端部20Bは、外装缶20の開口端と溝入部20Cの上面に挟まれた部分であって、封口体30を収容する部分である。開口端部20Bは、円筒状に形成される。
【0022】
本実施形態の開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の2%以上小さいことが好ましい。さらには、開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の10%以下小さいことが好ましい。換言すれば、開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の90%~98%の大きさであることが好ましい。
【0023】
さらには、本実施形態の開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の5%以上小さいことが好ましい。さらには、開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の9%以下小さいことが好ましい。換言すれば、開口端部20Bの外径は、胴体部20Aの外径の91%~95%の大きさであることが好ましい。
【0024】
封口体30は、外装缶20の開口端部20Bにかしめ固定される。外装缶20と封口体30との間にはガスケット39が設けられ、外装缶20の内部の密閉性が確保される。本実施形態の封口体30は、外装缶20の開口端部20Bの外径に対応する径の封口体が使用される。
【0025】
図3および図4を用いて、円筒形電池10の製造工程について説明する。なお、以下では適宜図1を参照してもよい。図3は、製造工程の流れを示すフロー図である。図4は、製造工程の一部を示す模式図である。図4では、円筒形電池10の内部の電極体14等の図示は省略している。
【0026】
図3に示すように、ステップS11において、正極11と負極12とをセパレータ13を介して渦巻状に巻回し、電極体14を作製する。ステップS12において、絶縁板19とともに電極体14を鋼板の絞り加工により作製した有底円筒状の外装缶20に挿入する。ステップS13において、外装缶20の底面部の内面と負極リード16とを溶接する。
【0027】
図4(A)に示すように、ステップS14において、内径がφ21mm~φ18.2mmで10°のテーパー形状を有する縮径金型51を用いて、外装缶20の開口端部20B(開口された上端側から10mm)をφ20mmからφ18.2mmまで縮径加工する。テーパー形状を有する縮径金型51を用いることで、加工後に縮径金型51を外装缶20から容易に分離することができる。胴体部20Aと溝入部20Cの間に外装缶20の外径が溝入部20Cに向かって減少するテーパー形状の縮径部が形成されるように縮径加工を行ってもよい。ステップS14をステップS12より後に行うことで、開口端部20Bの内径よりも大きな外径を有する電極体14を外装缶20に挿入することができる。
【0028】
ステップS15において、外装缶20に絶縁板18を挿入する。図4(B)に示すように、ステップS16において、縮径加工された開口端部20Bに溝加工し、溝入部20Cを形成する。ステップS17において、溝入部20Cの内面に封止材を塗布する。
【0029】
ステップS18において、溝入部20Cにガスケット39を挿入する。ステップS19において、封口体30の内部端子板31と正極リード15とを溶接する。封口体30及びガスケット39外径は、縮径加工された開口端部20Bの外径に応じて決定される。ステップS20において、外装缶20に電解質を注入する。ステップS21において、封口体30を外装缶20の開口端部20Bに挿入する。
【0030】
図4(C)に示すように、ステップS22において、かしめ金型(図示なし)によって封口体30のかしめ固定が行われる。かしめ金型は、例えばプレス装置によって上下動する上型と、溝入部20Cにおいて上型を受ける下型とを有する。下型には2つに分割された割型が用いられ、開口端部20Bをプレス加工する際に割型の一部が溝入部20Cに挿入され、上型からの圧力を受ける。ステップS23において、円筒形電池10をプレスして円筒形電池10の高さを調整する。
【0031】
図5(A)および図5(B)を用いて、円筒形電池10の効果について説明する。図5(A)は、実施形態の一例である円筒形電池10の断面図である。図5(B)は、比較例の円筒形電池の断面図である。なお、図5(A)および図5(B)では、円筒形電池10の内部の電極体14等の図示は省略している。
【0032】
本実施形態の円筒形電池10によれば、比較例の円筒形電池に比べて、電極体14を収容する胴体部20Aの外径が大きくなっている。これにより、円筒形電池10の外装缶20は、より多くの活物質が充填された外径の大きな電極体14を収容することができるため、円筒形電池10の高容量化を実現することができる。
【0033】
従来の円筒形電池は、比較例のように胴体部と開口端部が同じ外径を有していた。そのため、電池のサイズアップによる高容量化を図る場合、胴体部の外径とともに開口端部の外径も大きくしていた。ところが、開口端部に合わせて封口体の外径も大きくすると、封口体を外装缶にかしめる際のかしめ力や外部衝撃に対する封口体の耐久強度が不足するため、封口体の厚みも大きくする必要があった。
【0034】
封口体の厚みを大きくする場合には、封口体を構成する例えば内部端子板、下弁体、絶上弁体またはキャップについても厚みを大きくする必要があり製造コストが嵩む、封口体の重量増加となり円筒形電池の重量増加につながる、封口体の増加した厚み分の電池容量が低下する等の課題が生じる。
【0035】
そこで、本実施形態の円筒形電池10を適用すれば、胴体部20Aの外径に比べて小さな開口端部20Bの外径に対応する径の封口体30を使用することができるため、封口体の厚み増加に伴う円筒形電池の重量増加や容量低下を抑制することができる。このようにして、高容量化しつつも重量の増加を抑制することができる円筒形電池を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態の円筒形電池10には次のような効果が発揮される。例えば、円筒形電池の外装缶の外径をφ18.2mmからφ20mmに変更する場合であっても、共通の封口体およびガスケットを使用することができる。電極体14の上側に配置された絶縁板18も共通のものを使用してもよい。図3に示すステップS22において共通のかしめ金型を使用することもできる。そのため、製造工程において外装缶の外径の変更に伴う製造装置の切り替えの簡略化が可能となるため、製造コストを低減することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
10 円筒形電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 正極リード、16 負極リード、18 絶縁板、19 絶縁板、20 外装缶、20A 胴体部、20B 開口端部、20C 溝入部、30 封口体、31 内部端子板、32 下弁体、33 絶縁部材、34 上弁体、35 キャップ、35A 通気孔、39 ガスケット、51 縮径金型
図1
図2
図3
図4
図5