(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】超音波熔接システム内の複数本のプローブへの電力配給用のマルチポイントコントローラ
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20250409BHJP
B06B 1/02 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
B23K20/10
B06B1/02 A
(21)【出願番号】P 2022507611
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 US2020046517
(87)【国際公開番号】W WO2021030753
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-31
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519092897
【氏名又は名称】デューケイン アイエーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド チャールズ リロイ
(72)【発明者】
【氏名】ディトリッチ マシュー ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】クリンステイン レオ
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-47481(JP,A)
【文献】特開2007-61819(JP,A)
【文献】特開2007-181826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B06B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個の電源から複数本の超音波熔接プローブに電力を供給するシステムであって、
N個のマルチポイントユニットを備え、それらN個のマルチポイントユニットそれぞれが、
ハウジングと、
複数本の超音波熔接プローブのプローブ距離に関する距離情報を搬送するよう構成された複数個のアナログ又はディジタル入力部と、
前記M個の電源のうち1個の専用高電圧出力コネクタに高電圧ケーブルを介し接続可能な専用高電圧入力コネクタと、
すくなくとも1つのイーサネットポートと、
マイクロコントローラであり、
前記専用高電圧入力コネクタからの電力を前記複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものへと差し向け、且つ
少なくとも1ミリ秒当たり1回の速度にて前記複数本の超音波熔接プローブの前記距離情報を標本化するよう、
構成されたマイクロコントローラと、
を含み、
前記システムが、
前記M個の電源を収容するベースを備え、M及びNが共に1以上の整数であり、
前記N個のマルチポイントユニットのそれぞれがイーサネットによって相互接続されて、前記N個のマルチポイントユニットと前記M個の電源とを構成部材として有するネットワークを形成し、それにより(i)前記N個のマルチポイントユニットそれぞれを、前記ネットワーク内で前記M個の電源のうち別々のものとペアリングすることにより、前記N個のマルチポイントユニットのうち任意のものと前記M個の電源のうち任意のものとの間の干渉を回避し、(ii)前記N個のマルチポイントユニットのうち最初の1個が前記ネットワーク内で前記M個の電源のうち最初の1個とペアリングされており、
前記N個のマルチポイントユニットのうち前記最初の1個の前記マイクロコントローラが、
前記M個の電源のうち前記最初の1個が前記N個のマルチポイントユニットのうち前記最初の1個の前記専用高電圧入力コネクタに電力を供給していることを示す信号を、前記ネットワークを介し前記M個の電源のうち前記最初の1個から受信し、
前記N個のマルチポイントユニットのうち前記最初の1個の前記専用高電圧入力コネクタにおける電力レベルを検出し、
前記検出された電力レベルが閾値未満になるのに応じ、前記M個の電源のうち前記最初の1個に対するエラー信号を生成して電力供給を停止させるよう、
構成されている、
システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、前記N個のマルチポイントユニットのうち第1マルチポイントユニットが、更に、自第1マルチポイントユニットと前記M個の電源のうち最初の1個との間にペアリングを形成させるよう構成されたボタンを有するシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムであって、前記N個のマルチポイントユニットのうち第1マルチポイントユニットが更にユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを有
するシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムであって、前記M個の電源のうち前記最初の1個と前記N個のマルチポイントユニットのうち前記最初の1個との間の前記ペアリングにより両者間に論理制御チャネルを形成し、前記ネットワークの物理トポロジにおける物理的変化によって前記M個の電源のうち前記最初の1個と前記N個のマルチポイントユニットのうち前記最初の1個との間の前記論理制御チャネルが阻害されないようするシステム。
【請求項5】
請求項1のシステムであって、ペアリング動作をサポートし、制御ステータス及び情報を交換可能とするカスタム通信プロトコルに従い、前記N個のマルチポイントユニットと前記M個の電源とが通信するシステム。
【請求項6】
請求項5のシステムであって、前記N個のマルチポイントユニットのうち第1マルチポイントユニットに関し、少なくとも三通りの状態に、前記第1マルチポイントユニットが前記M個の電源の何れともペアリングされていないことを示す第1状態と、前記第1マルチポイントユニットが前記M個の電源のうち第1電源とペアリングされているがその第1電源に接続されていないことを示す第2状態と、前記第1マルチポイントユニットが前記第1電源とペアリングされ且つその第1電源に接続されていることを示す第3状態とが、含まれているシステム。
【請求項7】
請求項1のシステムであって、更に、
前記N個のマルチポイントユニットをプログラマブル論理コントローラ(PLC)と物理的にインタフェース接続するよう構成されたイーサネット(登録商標)スイッチを備えるシステム。
【請求項8】
請求項7のシステムであって、
前記N個のマルチポイントユニットそれぞれの少なくとも1個のイーサネット(登録商標)ポートが少なくとも2個のイーサネット(登録商標)ポートであり、
前記イーサネット(登録商標)スイッチが、更に、前記N個のマルチポイントユニットからのN本のイーサネット(登録商標)ケーブルを受け入れるよう構成されているシステム。
【請求項9】
請求項7のシステムであって、
前記N個のマルチポイントユニットそれぞれに備わる前記少なくとも1個のイーサネット(登録商標)ポートが少なくとも2個のイーサネット(登録商標)ポートであり、
前記イーサネット(登録商標)スイッチが、更に、前記M個の電源を前記N個のマルチポイントユニットとインタフェース接続するよう構成されており、前記イーサネット(登録商標)スイッチが前記N個のマルチポイントユニットのうち1個から1本のイーサネット(登録商標)ケーブルを受け入れることとなるよう、前記N個のマルチポイントユニットがデイジーチェイン化要領にて前記ネットワーク内に配置されているシステム。
【請求項10】
請求項1のシステムであって、前記N個のマルチポイントユニットのうち第1マルチポイントユニットに備わる前記マイクロコントローラが、更に、
前記複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものの距離情報を比較することで、閾値が侵されたことをその距離情報が示しているか否かを判別し、
前記閾値が侵されたことを踏まえてエラー信号を生成し熔接プロセスを停止させるよう、
構成されているシステム。
【請求項11】
請求項10のシステムであって、前記熔接プロセスが始まった後に前記エラー信号を生成するシステム。
【請求項12】
M個の電源のうち第1電源からの電力を、N個のマルチポートユニットのうち第1マルチポイントユニットに結合された複数本の超音波熔接プローブへと供給する方法であって、
前記第1マルチポイントユニットを前記第1電源とペアリングし、但し前記N個のマルチポイントユニットそれぞれが、前記N個のマルチポートユニットをネットワーク内の前記M個の電源に接続するための少なくとも1個のイーサネット(登録商標)ポートを有し、
前記第1マルチポイントユニットの複数個のアナログ又はディジタル入力部を介し複数本の超音波熔接プローブのプローブ距離に関する距離情報を受け取り、
前記第1マルチポイントユニットの専用高電圧入力コネクタであり、高電圧ケーブルを介し前記第1電源の専用高電圧出力コネクタに接続可能な前記専用高電圧入力コネクタを介し、前記第1電源から電力を受け取り、
前記第1マルチポイントユニットのマイクロコントローラの働きにより、前記第1電源からの前記電力を前記複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものへと差し向け、
前記マイクロコントローラの働きにより、少なくとも1ミリ秒当たり1回の速度にて、前記複数本の超音波熔接プローブのうち前記対応するものの前記距離情報を標本化し、
前記マイクロコントローラが、前記標本化された距離情報を比較することで、閾値が侵されたか否かを判別し、
前記マイクロコントローラが、前記閾値が侵されたことを踏まえて、エラー信号を生成し熔接プロセスの開始を停止させ、前記エラー信号が前記熔接プロセスが始まる前に生成される、
方法であり、
M及びNが共に1以上の整数である方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、前記第1マルチポイントユニットを前記第1電源とペアリングするのに先立ち、更に、前記第1マルチポイントユニットのボタンからのペア信号を受け取り、そのペア信号に従い前記第1マルチポイントユニットと前記第1電源との間の前記ペアリングを開始する方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、前記第1マルチポイントユニットを前記第1電源とペアリングすることが、
ワンボタンペアリングまたはコンピュータユーティリティペアリングのいずれかによって行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本願は、2019年8月15日付米国特許出願第16/541954号及び2020年6月10日付米国特許出願第16/898030号に基づく優先権を主張するものであり、ここに参照によりそれら各々の全容を本願に繰り入れるものとする。
【0002】
[技術分野]
本件開示は超音波熔接に関し、より具体的には、複数本の超音波熔接プローブに給電するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
超音波熔接は製造に際し構成部材を接合するための効率的な手段である。超音波熔接は自動車製造、医療品製造等のさなかにプラスチック部品及び布に対し用いることができる。
【0004】
超音波製造では時々1本又は複数本の熔接プローブの使用が必要になることがある。各熔接プローブを特定構成部材向けの特定熔接用にカスタマイズ及び制御することができる。熔接プローブから超音波電源へのアクセスが必須であり、マルチプローブコントローラを用いれば電源を一群の熔接プローブ間で共有することができる。電源共有により製造環境におけるコストが低減される。製造者は、熔接プローブ群向け電源を最小個数しか入手しないことで資金を節約することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造環境にて複数本の熔接プローブ間で電源を共有することで、コストを減らせるけれども、熔接プローブへの電源の接続の複雑性が増大しうる。熔接プローブを必要とする製造プロセスの複雑性も増大しうる。従って、これに代わる複数プローブ間電源共有システム及び方法が求められている。本件開示は、複数本のプローブへの電力配給に関する諸問題の解決を指向し他の必要事への対処も指向している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件開示のある実施形態では、M個の電源から複数本の超音波熔接プローブに電力を供給するシステムを提供する。本システムはN個のマルチポイントユニットを有し、それらN個のマルチポイントユニットそれぞれが、ハウジングと、複数本の超音波熔接プローブのプローブ距離に関する距離情報を搬送するよう構成された複数個のアナログ入力部と、それらM個の電源のうち1個の専用高電圧出力コネクタに高電圧ケーブルを介し接続可能な専用高電圧入力コネクタと、マイクロコントローラとを有するものである。そのマイクロコントローラを、その専用高電圧入力コネクタからの電力を複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものへと差し向け、少なくとも1ミリ秒当たり1回の速度にてそれら複数本の超音波熔接プローブの距離情報を標本化するよう、構成する。本システムは、更に、それらM個の電源を収容するベースを備える;但し、M及びNを共に1以上の整数とする。本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には察せられる通り、距離センサ用のアナログ入力部を、適切な出力部を有する距離センサ向けのディジタル(或いはある種のフィールドバス)型入力部として、実施することもできよう。
【0007】
本件開示のある実施形態では、M個の電源のうち第1電源からの電力を、N個のマルチポートユニットのうち第1マルチポイントユニットに結合された複数本の超音波熔接プローブへと供給する方法を、提供する。第1マルチポイントユニットを第1電源とペアリングする;但し、N個のマルチポイントユニットそれぞれが、N個のマルチポートユニットをネットワーク内のM個の電源に接続するためのイーサネット(登録商標;以下明細書にて注記省略)ポートを少なくとも1個有するものとする。複数本の超音波熔接プローブのプローブ距離に関する距離情報を、第1マルチポイントユニットの複数個のアナログ入力部を介し受け取る。第1電源からの電力を、第1マルチポイントユニットの専用高電圧入力コネクタを介し受け取る;但し、その専用高電圧入力コネクタを、高電圧ケーブルを介し第1電源の専用高電圧出力コネクタに接続可能なものとする。第1電源からの電力を、第1マルチポイントユニットのマイクロコントローラの働きにより、それら複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものへと差し向ける。それら複数本の超音波熔接プローブのうち対応するものの距離情報を、そのマイクロコントローラの働きにより少なくとも1ミリ秒当たり1回の速度にて標本化する。M及びNは共に1以上の整数とする。
【0008】
本件開示の上掲の及び付加的な諸態様及び諸実現形態をいわゆる当業者に明察頂けるよう、様々な実施形態及び/又は実現形態についての詳細記述を示し、それを図面を参照しつつ行い、それら図面についての簡単な記述を次の項で提示する。
【0009】
本件開示の上掲の長所及びその他の長所が、後掲の詳細記述を読み図面を参照することで明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本件開示の一実施形態に係る超音波熔接用のベースアンドカセットスタイルマシンを描出する図である。
【
図1B】
図1Aのベースアンドカセットスタイルマシンのうちカセットを描出する図である。
【
図2】従来技術における超音波熔接向け部材配置を示すベースアンドカセットスタイルマシンの模式図である。
【
図3】本件開示の一実施形態に係るイーサネット付マルチポイントコントローラユニットを示す図である。
【
図4A】本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニットの斜視図である。
【
図4B】
図4Aのマルチポイントコントローラユニットの別の斜視図である。
【
図5】本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニットを有するベースアンドカセットスタイルマシンの模式図である。
【
図6】本件開示の一実施形態に係りデイジーチェインコンフィギュレーションの態で接続されたマルチポイントコントローラユニットを有するベースアンドカセットスタイルマシンの模式図である。
【
図7A】本件開示の一実施形態に係り2個のマルチポイントコントローラユニットが1個の電源とペアリングされているベースアンドカセットスタイルマシンの模式図である。
【
図7B】本件開示の一実施形態に係り2個のマルチポイントコントローラユニットが1個の電源とペアリングされているベースアンドカセットスタイルマシンの模式図である。
【
図8】本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニットを用いる熔接プロセスを描出するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本件開示は様々な修正物及び代替的形態を許容するものであるので、具体的諸実施形態を例として図中に示し、本明細書中で詳細に説明する。とはいえ、理解頂くべきことに、本件開示ではそれら開示されている具体的形態への限定を想定していない。寧ろ、本件開示は、別項の特許請求の範囲により定義されるところに従い、本件開示の神髄及び技術的範囲内に収まる全ての修正物、均等物及び代替物をカバーすることを目している。
【0012】
超音波溶接機は、一般に「カセット」スタイルマシン、例えば
図1A記載のベースアンドカセットスタイルマシン100の態で用いることができる。本ベースアンドカセットスタイルマシン100はカセット104を跨ぐベース106を有している。ベース106上には電源102-1、102-2、102-3及び102-4が備わっている。
図1Bに、カセット104をベース106抜きで示す。図示のカセット104により、複数本の超音波熔接プローブ110及び数個のマルチプローブ(multiple probe)コントローラユニット112を保持することができる。1個のベースで複数個のカセットを保持することができるので、細部が明白に異なる物品(例.大量のプラスチック部品)のよりコスト効果的な製造が可能である。このコスト効果的製造は自動車製造、例えば自動車用ドアパネル、スポイラ、計器盤等の製造に適用することができる。
【0013】
カセットスタイルマシン(例.ベースアンドカセットスタイルマシン100)ではカセット(例.カセット104)のクイックチェンジ(速やかな換装)が可能である。カセットスタイルマシンのベース内には6~12個の超音波発生器(例.電源102)を設けることができる。また、カセットスタイルマシンのカセット内には対応する個数のマルチプローブコントローラユニットを設けることができる。また、そのカセットは、約80本の超音波プローブを有するものとすることができる。それらカセット内の超音波プローブ上には熔接制御用にアナログ距離センサを設けることができる。それらアナログ距離センサは、そのカセットスタイルマシンのベース内に所在するプログラマブル論理コントローラ(PLC)に付加されたアナログ入出力(I/O)カードに、往々にして接続される。
【0014】
それらアナログ距離センサにより生成される信号は、電子雑音に対し敏感なものとなりうる。従来システムにおいては、その電子雑音から守るために、そのPLCのアナログI/Oカードとそれらアナログ距離センサとを接続するワイヤを、注意深くルーティング及び遮蔽しなければならない。
【0015】
本ベースアンドカセットスタイルマシン100は、電源102、マルチプローブコントローラユニット112及び複数本の超音波熔接プローブ110を、別々の個所に有している。マルチプローブコントローラユニット112及び超音波熔接プローブ110は、マルチプローブコントローラユニット112に対する電源102に比べ、互いに近いところにある。本ベースアンドカセットスタイルマシン100上にはクイックチェンジコネクタがあり、それを用い電源102をマルチプローブコントローラユニット112に接続することができる。これらクイックチェンジコネクタを通じ部材間に信号を流すことができる。それらコネクタを通じ流しうる信号の例としては、各電源102からの高電圧超音波電力信号、ディスクリートな制御信号、並びに距離センサからのアナログ信号がある。
【0016】
クイックチェンジコネクタの使用に伴い、ベース106及びカセット104の両者に係りつがいとなるコネクタのカスタマイズが行われる。マシン構築者には、高電気雑音環境に相応しくワイヤ終端及び遮蔽が施された複数本のカスタムケーブルを製作することが、求められる。こうしたカスタマイズの分、製造及びトラブルシューティングのコストがかなり付加されることとなりうる。こうしたカスタマイズが施されたカセットスタイルマシンについての現場サポート及び保守は、面倒で高コストなものとなりうる。
【0017】
本件開示と従来技術との実施形態間差異を描出するため、
図2にベースアンドカセットスタイルマシン200の概要を提示し、従来技術における超音波電源202、アナログI/Oカード付PLC201及びマルチプローブコントローラユニット212の部材配置を示す。アナログI/Oカード付PLC201及び超音波電源202がベース206内に所在する一方、マルチプローブコントローラユニット212及びプローブセット(set of probes)210がカセット204内に所在している。
【0018】
アナログI/Oカード付PLC201は、各超音波電源202-1,202-2,…202-Mに、ワイヤ222-1,222-2,…222-Mのうち対応するものを介しディスクリート接続されている。ワイヤ222-1~222-Mにより、アナログI/Oカード付PLC201が超音波電源202-1~202-Mと通信することができ、その逆も行うことができる。それら超音波電源202それぞれが、高電圧超音波ケーブル214を介しプローブセット210に電力を供給する。超音波電源202は、カスタマイズドケーブル216を介しマルチプローブコントローラユニット212にも給電する。クイックチェンジコネクタ220は、マルチプローブコントローラユニット212への給電用及びそれとの通信用に、超音波電源202・マルチプローブコントローラユニット212間インタフェースを提供する。クイックチェンジコネクタ218は、プローブセット210への超音波信号の供給用に、超音波電源202・マルチプローブコントローラユニット212間インタフェースを提供する。各プローブセット210-1,210-2,…210-M内の各プローブは、アナログ距離センサ付のアクチュエータを有しており、そのアナログ距離センサから1本又は複数本のセンサケーブル208及びクイックディスコネクト219を介しアナログI/Oカード付PLC201へと距離情報を送ることができる。
【0019】
アナログI/Oカード付PLC201は、各超音波電源202-1,202-2,…202-Mと通信し、プローブセット210の距離及び/又は位置を用い超音波熔接を実行させる。アナログI/Oカード付PLC201は、ワイヤ222を介し超音波電源202に対し、プローブセット210内のある選択されたプローブをアクティブにすべきであることを通知する。それを受け、超音波電源202のうち対応するもの即ちその選択済プローブを担当するものが、対応するマルチプローブコントローラユニット212に接続されている個別カスタマイズドケーブル216上の信号を更新することで、その選択済プローブがその個別マルチプローブコントローラユニット212内の論理回路により選択されるようにする。
【0020】
その後は、その選択済プローブのアナログ距離センサを用い距離及び位置を監視することで、熔接対象部品から好適距離以内のところにその選択済プローブを配置させる。アナログI/Oカード付PLC201は、そのアナログ距離センサが捉えた距離情報に基づきその距離を監視する。
【0021】
その上で、アナログI/Oカード付PLC201が、超音波電源202のうち対応するものに信号を送ることで、その選択済プローブに超音波電力を供給する超音波出力部をターンオンさせる。その後はそのアナログI/Oカード付PLC201がそのアナログ距離センサを監視し、好適な読み値に到達したときに超音波電源202のうち対応するものに信号を送ることで、超音波出力を停止させることができる。これに代え、距離センサを必要としないウェルドバイタイムモード又はウェルドバイエネルギモードを用いてもよいし、電源202のうち対応するものにより熔接を制御しアナログI/Oカード付PLC201にて距離情報を用い良好な熔接状態の発生有無を判別してもよい。
【0022】
その上で、利用可能であれば、アナログI/Oカード付PLC201がそれら超音波電源のうち対応するものから熔接サイクルを読み取ることができる。このプロセスを、別のプローブ出力選択で以て反復することができる。アナログI/Oカード付PLC201を用いることの難点は、アナログI/Oカード付PLC201が熔接プロセスのみならず複数個のシステムに責を負っているため、アナログI/Oカード付PLC201による距離情報の監視に遅れが生じ、処理が先送りされうることである。この遅れは20ミリ秒有余になりうるものであり、その結果、部品の熔接が貧弱になり又は熔接プロセスが非常に低速になることがある。
【0023】
本件開示の幾つかの実施形態では、距離センサから距離情報を受け取るアナログ入力部を有するマルチポイント(multipoint)コントローラユニット付の、ベースアンドカセットスタイルマシンを提供する。本件開示の幾つかの実施形態では、ディスクリートな制御信号に代えイーサネットスタイル通信を行う。
【0024】
図3は、本件開示の諸実施形態に係るマルチポイントコントローラユニット312のブロック図である。マルチポイントコントローラユニット312には、自マルチポイントコントローラユニット312に接続されている超音波プローブに供給される高電圧超音波信号の供給を制御する1個又は複数個の高電圧リレー350を、組み込むことができる。マルチポイントコントローラユニット312は、超音波プローブに高電圧超音波信号を供給すべくそれら超音波プローブとインタフェース接続されるSHVポート352を有している。マルチポイントコントローラユニット312は、超音波電源から超音波信号を受け取るための専用高電圧入力コネクタ364を有している。マルチポイントコントローラユニット312は、自マルチポイントコントローラユニット312に接続されている超音波プローブからアナログ距離情報を受け取るための、マルチチャネル(multi-channel)距離入力部356を有している。
【0025】
マルチポイントコントローラユニット312には、自マルチポイントコントローラユニット312を超音波電源と速やかにペアリングさせるためのボタン360を、設けることができる。マルチポイントコントローラユニット312にはマイクロコントローラ354を組み込むことができる。そのマイクロコントローラ354により、どの高電圧リレー350をアクティブにし超音波パワーを特定プローブに供給するかを、制御することができる。そのマイクロコントローラ354により、マルチチャネル距離入力部356を介し受け取った距離情報を解釈して熔接プロセスを制御することができる。そのマイクロコントローラ354を、USBポート358を介しプログラミングし制御することができる。そのマイクロコントローラ354にて、1個又は複数個のイーサネットポート362を介し超音波電源と通信することができる。
【0026】
図4A及び
図4Bは、本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニット412の斜視図である。マルチポイントコントローラユニット412はハウジングを有しており、それには2個のイーサネットポート362、USBポート358、マルチチャネル距離入力ポート356、専用高電圧入力コネクタ364、電力入力ポート440、主電力LED442、LEDインジケータ444及びSHVポート352が備わっている。
【0027】
電力入力ポート440が、自マルチポイントコントローラユニット412内の電子回路に給電するための分離型電力ポートとされているので、
図2のマルチプローブコントローラユニット212とは対照的に、自マルチポイントコントローラユニット412の電力ポートと通信ポートとを分離させることができる。マルチプローブコントローラユニット212では、カスタマイズドケーブル216を介し電力を受け取り通信を実行している。
【0028】
主電力LED442を、自マルチポイントコントローラユニット412のステータス、特に自マルチポイントコントローラユニット412が電力入力ポート440を介し電力を受け取っているか否かを示す可視インジケータとして、提供することができる。LEDインジケータ444を、複数本のプローブのうち何れが超音波電力受領向けに選択されているのかを示す可視インジケータとして、提供することができる。
【0029】
ベースアンドカセットスタイルマシン(例.ベースアンドカセットスタイルマシン100)にて、そのマルチプローブコントローラユニットをマルチポイントコントローラユニット(例.マルチポイントコントローラユニット312)で以て置き換えることにより、幾つかの利点があるアーキテクチャ的変更を提供することができる。
図5は、本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニット512付ベースアンドカセットスタイルマシン500の模式図である。本ベースアンドカセットスタイルマシン500はベース506及びカセット504を有している。ベース506は、PLC501、1個又は複数個の超音波電源502、1本又は複数本のワイヤ522、1本又は複数本のイーサネットケーブル516、並びに1本又は複数本の高電圧超音波ケーブル514を有している。カセット504は、マルチポイントコントローラユニット512及び超音波プローブセット510を有している。
【0030】
PLC501は1本又は複数本のワイヤ522を介し1個又は複数個の超音波電源502に接続されている。それらワイヤ522-1,522-2,…522-Mは産業用バス又はディスクリートI/O接続とすることができ、それによりPLC501・各電源502-1,502-2,…502-M間で通信を行うことができる。イーサネットケーブル516-1,516-2,…516-Mにより、各超音波電源502-1,502-2,…502-Mとマルチポイントコントローラユニット512-1,512-2,…512-Mとの間で、通信を行うことができる。カセット504は1個又は複数個の超音波電力ポート518-1,518-2,…518-Mを有しており、そこにワイヤ512-1,512-2,…512-Mを受け入れることができる。カセット504は1個又は複数個のRJ-45カプラ520-1,520-2,…520-Mをも有しており、そこにイーサネットケーブル516-1,516-2,…516-Mを受け入れることができる。
【0031】
各プローブセット510-1,510-2,…510-Mは少なくとも1本のプローブを含んでいる。各プローブセット510-1,…510-Mが同数のプローブを含んでいる必要はない。例えば、プローブセット510-1が8本のプローブを有する一方、プローブセット510-2が10本のプローブを有するのでもよい。プローブセット510内の各プローブは、距離情報をもたらす距離センサを有している。その距離情報が、個別プローブセット510から個別マルチポイントコントローラユニット512へとセンサバス508上で搬送される。例えばプローブセット510-1が6本のプローブを含んでいる場合、それら6本のプローブそれぞれにて距離情報が生じ、センサバス508-1上で搬送され、マルチポイントコントローラユニット512-1のマルチチャネル距離入力ポートに至ることとなる。
【0032】
図5を
図2と比較することで幾つかのアーキテクチャ的相違が明らかとなる。
図5ではPLC501が全ディジタルであり、マルチポイントコントローラユニット512がアナログ情報を処理可能なものである。他方の
図2ではアナログI/Oカード付PLC201が全ディジタルではなく、寧ろアナログ情報処理用のカスタムアナログI/Oカードを有しており、マルチプローブコントローラ212が全ディジタルである。
図5ではマルチポイントコントローラユニット512がプローブセット510によりもたらされる距離情報を処理する一方、
図2ではアナログI/Oカード付PLC201がプローブセット210によりもたらされる距離情報を処理している。センサバス508-1,508-2,…508-Mはセンサケーブル208よりもかなり短い。そのため、マルチポイントコントローラユニット512への距離情報の供給は、I/Oカード内処理時間が長いことからしてアナログI/Oカード付PLC501からの供給よりかなり迅速に、行うことができる。更に、距離情報がアナログ信号であるため、カセットからベースへとルーティングされるケーブルが長めであると、その距離情報の信号無欠性を守るために電磁遮蔽が必要となる。マルチポイントコントローラユニット512にて距離情報を処理させることにより、配線及び電磁的条件が緩和されることとなる。また、
図2の実施形態では、アナログ距離センサ(例.アナログ距離センサ210)用の付加的なクイックディスコネクト(例.クイックディスコネクト219)が、ベース206・各カセット(例.カセット204)間にて必要とされる。
【0033】
これらのアーキテクチャ的変更故に、熔接プロセス中のPLC501の役目は、アナログI/Oカード付PLC201の役目とは異なっている。PLC501は、ワイヤ522を介し超音波電源502に対し、プローブセット510内のある選択済プローブをアクティブにすべきであることを通知する。それを受け、超音波電源502のうち対応するもの即ちその選択済プローブを担当するものが、対応するマルチポイントコントローラユニット512に接続されている個別イーサネットケーブル516上の信号を更新することで、その選択済プローブがその個別マルチポイントコントローラユニット512内の論理回路により選択されるようにする。
【0034】
その上で、PLC501が超音波電源502のうち対応するものに信号を送って熔接サイクルを開始させ、次いでその熔接サイクルが終了するまで待機する。熔接サイクルが終わった暁には、超音波電源502のうち対応するものからのデータをPLC501にて読み込むことができる。その後は、別のプローブ出力選択で以てその熔接プロセスを継続することができる。PLC501が距離情報を監視する責を負っておらず、従ってその距離情報を監視している個別マルチポイントコントローラユニット512によりその熔接プロセスを制御することができるので、PLC501に起因する遅延を招くことがない。
【0035】
本件開示の諸実施形態には幾つかの長所がある。例えば、イーサネットスタイル通信により、カスタマイズされたクイックチェンジコネクタ(例.
図2中のクイックチェンジコネクタ220及びクイックディスコネクト219)の必要性が排除される。カスタムクイックチェンジコネクタを安価な既製のRJ-45カプラ(例.
図5中のRJ-45カプラ520)で置き換えることができる。既製の遮蔽付CAT-5ケーブルを用いカスタマイズドケーブルを排することにより、配線コストを顕著に低減することができる。CAT-5ケーブル及びRJ-45カプラを用いることで、誤配線信号のリスクも低減される。これらのケーブル及びカプラを用いることで、カスタマイズドケーブルに由来する不適切ケーブル遮蔽のリスクも低減される。イーサネット通信では差分信号を用いそれを撚り線対上に通すので、本件開示の幾つかの実施形態によれば、電子雑音を発生させる高電圧信号がその付近にあっても、電源(例.
図5中の超音波電源502)・マルチポイントコントローラユニット(例.
図5中のマルチポイントコントローラユニット512)間の通信にかなり些少な影響しか及ばない。
【0036】
イーサネットハードウェアは、TCP/IP、産業オートメーションプロトコル等といった他プロトコルに対しトランスパレントな通信プロトコルと、併用することができる。イーサネット付マルチポイントコントローラユニットを、同じ物理ネットワーク上で、PLC、超音波電源その他の装置と同時に稼働させることができる。カスタムイーサネットフレームを用いプロトコルデータを送信することで、同じ物理ネットワーク上に所在する既存ネットワークプロトコルとの衝突を避けることができる。その通信プロトコルにより、
図2に提示されているディスクリート配線では利用できないエラーチェックを行うこともできる。
【0037】
イーサネットスタイル通信であるので、マルチポイントコントローラユニット(例.
図5のマルチポイントコントローラユニット512-1)の状態について、より多くのフィードバック情報を超音波電源(例.超音波電源502-1)に引き渡すことや、それとは逆方向の引き渡しを行うことが可能であり、ディスクリート接続が必要になるであろう扱いにくくて高価なケーブル(例.
図2のカスタマイズドケーブル216)が必要ない。イーサネットスタイル通信によりポートフォワーディングをサポートすることができ、それにより、外部スイッチの使用無しで複数個のマルチポイントコントローラユニットをデイジーチェイン化することができる。そうすれば、複数個のマルチポイントコントローラユニット及び電源を有するネットワークにて、1個のスイッチポートを用い複数個のコントローラユニット全てと通信することが可能となる。
【0038】
図6は、本件開示の一実施形態に係りデイジーチェインコンフィギュレーションの態で接続されたマルチポイントコントローラユニット612付のベースアンドカセットスタイルマシン600の模式図である。本ベースアンドカセットスタイルマシン600はベース606及びカセット604を有しており、そのベース606がPLC601、1個又は複数個の超音波電源602及びイーサネットスイッチ630を有している。カセット604はマルチポイントコントローラユニット612及びプローブセット610を有している。プローブセット610は、センサバス608を介しマルチポイントコントローラユニット612に距離情報をもたらす距離センサを有している。超音波電源602に発する高電圧超音波ケーブルによりプローブセット610に超音波電力が供給されているが、
図6には示されていない。
【0039】
PLC601(PLC501と類似又は同一のもの)はイーサネットスイッチ630に接続されている。超音波電源602-1,602-2,…602-Mもそのイーサネットスイッチ630に接続されている。カセット604のRJ-45カプラ620もそのイーサネットスイッチ630に接続されている。イーサネットスイッチ630は、PLC601と各超音波電源602-1,602-2,602-3,…602-Mとの間の通信を容易化する。イーサネットスイッチ630は、超音波電源602-1,602-2,602-3,…602-Mとマルチポイントコントローラユニット612-1,612-2,612-3,…612-Nとの間の通信も容易化する。
【0040】
マルチポイントコントローラユニット612-1,612-2,612-3,…612-Nはデイジーチェインコンフィギュレーションの態で配列されている。ある実施形態によれば、各マルチポイントコントローラユニット612-2,612-3,…612-Nに少なくとも2個のイーサネットポートを設けることで、デイジーチェインコンフィギュレーションの態でのそれらマルチポイントコントローラユニットの接続を容易化することができる。デイジーチェインコンフィギュレーションの態でのそれらマルチポイントコントローラユニットの接続には、1本又は複数本のイーサネットケーブル632が用いられる。デイジーチェインコンフィギュレーションであるので、マルチポイントコントローラユニット612間でカセット604のRJ-45カプラ620を共有することができる。
図6に示す通り、マシンベース内でイーサネットスイッチ(例.イーサネットスイッチ630)を用いることで、複数個の電源による複数個のマルチポイントコントローラユニット612の制御を、単一のベース・カセット間接続で以て行えることとなる。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、複数個の超音波電源及び複数個のマルチポイントコントローラユニットを、相互干渉無しで同じネットワーク上に存在させることができる。特定のマルチポイントコントローラユニットを特定の電源とペアリングさせることができる。1個の電源を、デイジーチェイン様式にて超音波信号をスイッチングする複数個のマルチポイントコントローラユニットとペアリングすることで、その電源にて利用可能なプローブ選択の総数を拡張することができる。
図7Aは、本件開示の一実施形態に係り2個のマルチポイントコントローラユニット712-3及び712-4が1個の電源702-3とペアリングされているベースアンドカセットスタイルマシン700の模式図である。
【0042】
本ベースアンドカセットスタイルマシン700は、PLC701と3個の電源702-1,702-2及び702-3とを有している。それらPLC701及び3個の電源702がイーサネットスイッチ730に接続されている。イーサネットスイッチ730はイーサネットスイッチ630に類するものであり、それら3個の電源702とPLC701との間の通信を容易化する。イーサネットスイッチ730は、それら3個の電源702それぞれと各マルチポイントコントローラユニット712-1,712-2,712-3及び712-4との間でのRJ-45カプラ720介在通信をも容易化する。個々のマルチポイントコントローラユニット712は、プローブセット710に供給される超音波電力を制御する。プローブセット710は、センサバス708を介しマルチポイントコントローラユニット712に距離情報を供給する。
図6と同様、マルチポイントコントローラユニット712がイーサネットケーブル732を用いデイジーチェイン化されている。
【0043】
プローブセット710に超音波電力を供給するため、電源702は、ワイヤ714を経てマルチポートコントローラユニット712に至る高電圧接続部を有している。電源702-1はワイヤ714-1及び電力ポート718-1を介しマルチポイントコントローラユニット712-1に接続されている。電源702-2はワイヤ714-2及び電力ポート718-2を介しマルチポイントコントローラユニット712-2に接続されている。電源702-3はワイヤ714-3及び電力ポート718-3を介しマルチポイントコントローラユニット712-3に接続されている。電源702-3は、マルチポイントコントローラユニット712-3・マルチポイントコントローラユニット712-4間デイジーチェイン化パワーコンフィギュレーションを介し、マルチポイントコントローラユニット712-4にも接続されている。このデイジーチェイン化パワーコンフィギュレーションにより、超音波電力を電源702-3からマルチポイントコントローラユニット712-3へと流し、更にそのマルチポイントコントローラユニット712-3からワイヤ734を介しマルチポイントコントローラユニット712-4へと流すことができる。
【0044】
図7Aでは、電源702-3によりプローブセット710-3及び710-4に超音波電力を供給することができる。電源702-3は、また、RJ-45カプラ720を介しマルチポイントコントローラユニット712-3,712-4双方と通信する。こうして、電源702-3を複数個のマルチポイントコントローラユニット712とペアリングすることができる。
図7Aでは一例として1対2ペアリングを示したが、1個の電源を2個超のマルチポイントコントローラユニットとペアリングすることもできる。
【0045】
図7Aと同様、
図7Bは本件開示の一実施形態に係り2個のマルチポイントコントローラユニット712-3及び712-4が1個の電源702-3とペアリングされているベースアンドカセットスタイルマシン700の模式図である。
図7Aの如くデイジーチェインコンフィギュレーションを用いるのに代え、
図7Bでは、高電圧T分岐736を用い電源702-3からの超音波電力を分岐させている。高電圧T分岐736がパワースプリッタ(電力分岐器)として働くので、電源702-3からマルチポイントコントローラユニット712-3を経てプローブセット708-3に電力を供給することができ、またマルチポイントコントローラユニット712-4を介しプローブセット708-4に電力を供給することもできる。
【0046】
本件開示の諸実施形態には幾つかの長所がある。マルチチャネルアナログ入力部がマルチポイントコントローラユニット(例.
図7Aのマルチポイントコントローラユニット712)に所在しているので、PLC向けの高コストなアナログI/Oカード無しで、距離又は位置センサを用い熔接を行うことができる。ベースアンドカセットスタイルマシンでは、通常、マルチポイントコントローラユニットを超音波プローブの近くに所在させることができるので、そのマルチポイントコントローラユニットにアナログ距離入力部を設けることで、マシン配線コスト及び電気雑誘起リスクを顕著に低減することができる。
【0047】
アナログ距離入力部をマルチポイントコントローラユニットに設けることで、アナログ距離センサからの距離情報が辿る距離が短縮される。マルチポイントコントローラユニットでの標本化速度は大抵のPLCよりもかなり高いので、こうすることで、距離情報を用いる熔接をかなり正確なものとすることができる。アナログ距離センサからの距離情報をPLCにて標本化しうる速度は、プロセッサの速度、プログラムステップの個数、I/Oの個数等により決まる走査時間により左右されうる。熔接プロセスを開始させるトリガ位置の正確性、並びに熔接終了位置又は距離の正確性は、その走査時間により直に影響される。昨今のPLCにおける走査時間は、数ミリ秒から20msに上ることが多い。
【0048】
イーサネットケーブルを用いる通信プロトコルは、マルチポイントコントローラユニットに特有なメッセージを伴うカスタムフレームを呈するよう、それらマルチポイントコントローラユニット向けにカスタム設計することができる。その通信プロトコルにより、電源をマルチポイントコントローラユニットとリモートペアリングすることで、外的影響から守られるマスタスレーブ制御関係を、そのペアリング動作中に確立される共有秘密を用い形成することができる。このペアリング動作により個別電源・個別マルチポイントコントローラユニット間論理制御チャネルが形成され、それによりディスクリートな物理I/Oがエミュレートされる。ペアリングされたマルチポイントコントローラユニット及び電源の間の物理ネットワークトポロジは、その論理接続に影響を及ぼすことなく変化させることができる。即ち、例えば超音波電源602-2及び602-3をマルチポイントコントローラユニット612-2及び612-3のうち対応するものと論理的にペアリングしておき、それらマルチポイントコントローラユニット612-2及び612-3の位置をそのデイジーチェイン接続内にて入れ替えたとする。マルチポイントコントローラユニット612-2及び612-3の物理的構成に変化が生じたわけだが、それらマルチポイントコントローラユニット612-2及び612-3では、電源602-2及び602-3のうち対応するものに対する自身のペアリング論理接続が保たれることとなろう。
【0049】
この通信プロトコルにより、単純でツールフリーな「ワンボタン」ペアリング動作、並びにより包括的でありパーソナルコンピュータ(PC)ユーティリティが用いられる動作の双方を、サポートすることができる。「ワンボタン」ペアリング動作は、判明している不備ユニットの迅速な現場換装に用いることができる。PCユーティリティによりサポートされての動作では、デバッグタスクに役立つ詳細なペアリングステータス及びシステム識別情報(例えばモデルナンバー、シリアルナンバー、ファームウェアバージョン)を提供することができる。これら「ワンボタン」ペアリングオプション及びPCユーティリティオプションの双方とも、どのようなPLC開発ツールよりも単純であるので、PLCベースのネットワークで必要とされることがあるそれよりも、保守人員の訓練レベルを低くすることが可能となる。
【0050】
ある実施形態によれば、各マルチポイントコントローラユニット(例.マルチポイントコントローラユニット612)を、その通信プロトコルに関し三状態のうち一つをとるものとすることができる。それら三状態には、ペアリングされていない状態(「UNPAIRED」状態)、ペアリング済だが未接続の状態(「UNCONNECTED」状態)、並びにペアリング済且つ接続済の状態(「CONNECTED」状態)が含まれる。リアルタイム制御及びステータス情報は、CONNECTED状態でしか交換されない。各ペアリング済マルチポイントコントローラユニットは、CONNECTED状態にしないと動作可能にならない。
【0051】
ある実施形態によれば、ペアリング済マルチポイントコントローラユニット(例.マルチポイントコントローラユニット612)により、電源とそのマルチポイントコントローラユニットとの間の高電圧超音波ケーブルの、不正配線を検出することができる。例えば、マルチポイントコントローラユニット612-2が超音波電源602-1とペアリングされているときには、そのマルチポイントコントローラユニット612-2がその超音波電源602-1と通信状態にある。熔接プロセス中に、超音波電源602-1が、自身がマルチポイントコントローラユニット612-2に超音波電力を供給していることを示しているのに、そのマルチポイントコントローラユニット612-2が自身の超音波電力入力部(例.超音波電力入力部364)にて何ら超音波電力を受け取っていない場合、そのマルチポイントコントローラユニット612-2は、信号を供給することでその超音波電源602-1からの電力配給を停止させることができる。マルチポイントコントローラユニット612-2は、電源602-1からの超音波電力出力が自マルチポイントコントローラユニット612-2へと正しく配線されていないことを、察知することができる。
【0052】
本件開示の諸実施形態に係るマルチポイントコントローラユニットをベースアンドカセットスタイルマシンにて用いることで、距離情報を用い熔接を開始及び停止させることが可能となる。幾つかの実施形態によれば、その距離情報を用い熔接の質を判別することができる。
図8は、本件開示の一実施形態に係るマルチポイントコントローラユニット(例.マルチポイントコントローラユニット612-1)を用いる熔接プロセスを描出するフロー図である。ステップ802ではマルチポイントユニットを電源とペアリングする。例えば、本件開示の諸実施形態に従い「ワンボタン」ペアリングかPCユーティリティペアリングを用い、マルチポイントコントローラユニット612-1を電源602-1とペアリングする。
【0053】
ステップ804では、そのマルチポイントコントローラユニット612-1が、プローブセット610-1内の選択済プローブから受け取った距離情報を監視する。ステップ806では、そのマルチポイントコントローラユニット612-1が、トリガ位置に到達済か否かをその距離情報を通じ判別する。トリガ位置とは、熔接中の部品上の特定個所からその選択されたプローブを隔てる距離のことである。トリガ位置に到達するまでそれらプローブ又は部品が引き続き動かされる。トリガ位置に行き当たっていなければ距離情報をステップ804にて監視する。トリガバイパワー法を用い超音波熔接を開始させることもできよう。
【0054】
トリガ位置に行き当たったならば、ステップ808にてそのマルチポイントコントローラユニット612-1が電源602-1に信号を送り、自マルチポイントコントローラユニット612-1へとその選択済プローブ向けの超音波電力を配給させる。この信号は、イーサネットスイッチ630の働きによりイーサネットを通じ送られる。
【0055】
電力が配給されているときには、プローブセット610-1内のその選択済プローブからの距離情報を監視する。部品が熔接されているときには、ステップ812にてターゲット崩壊(コラプス)距離をチェックする。ターゲット崩壊距離に達していなければステップ810にて引き続き距離情報を監視する。
【0056】
ターゲット崩壊距離に達したならば、ステップ814にて、そのマルチポイントコントローラユニット612-1が電源602-1に信号を送り、自マルチポイントコントローラユニット612-1への超音波電力の配給を停止させる。この信号は、イーサネットスイッチ630の働きによりイーサネットを通じ送られる。
【0057】
ステップ816にて、そのマルチポイントコントローラユニット612-1により、その熔接プロセスについてのデータをその電源に送ることができる。このデータには、熔接完了個所の質的ステータスを含めることができる。
【0058】
1個又は複数個の具体的実施形態及び実現形態を参照し本件開示について記述してきたが、いわゆる当業者には認識頂ける通り、本件開示の神髄及び技術的範囲から離隔することなく、それに対し多くの変更を施すことができる。それら実施形態及び実現形態並びにそれらの自明な変形物は、何れも、後掲の特許説明の範囲中で説明されているところの、本件開示の神髄及び技術的範囲内に収まるものと考えられる。