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特許7663622広域スペクトルな抗インフルエンザワクチン免疫原及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】広域スペクトルな抗インフルエンザワクチン免疫原及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/145 20060101AFI20250409BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250409BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20250409BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20250409BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250409BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20250409BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20250409BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20250409BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20250409BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20250409BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20250409BHJP
【FI】
A61K39/145 ZNA
A61P11/00
A61P31/16
A61P37/04
A61K48/00
A61K35/74 A
A61K35/76
A61K36/064
A61K35/761
A61K35/763
C07K14/11
C12N15/44
C12N15/85 Z
C12N15/54
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023061353
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2021513962の分割
【原出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2023093541
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】517366574
【氏名又は名称】上▲海▼市公共▲衛▼生▲臨▼床中心
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】徐 建青
(72)【発明者】
【氏名】張 暁燕
(72)【発明者】
【氏名】謝 辛慈
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101716340(CN,A)
【文献】特表2014-513067(JP,A)
【文献】polymerase PB2 [Influenza A virus (A/swine/Germany/Hagstedt-IDT11951/2010(H1N1))] [online],2015年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AKJ80364.1,NCBI, GenBank: AKJ80364.1(検索日:2022.07.28)
【文献】nucleoprotein [Influenza A virus (A/Brevig Mission/1/1918(H1N1))] [online],2004年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAV48837.1,GenBank: AAV48837.1(検索日:2022.07.28)
【文献】matrix protein 2 [Influenza A virus (A/New York/391/2005(H3N2))] [online],2005年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAZ38596.1/,GenBank: AAZ38596.1(検索日:2022.07.28)
【文献】polymerase PB1 [Influenza A virus (A/Sydney/5/1997(H3N2))] [online],2009年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ACO95267.1,GenBank: ACO95267.1(検索日:2022.07.28)
【文献】polymerase PA [Influenza A virus (A/duck/Guangdong/S1328/2010(H6N2))] [online],2014年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AHJ57950.1,GenBank: AHJ57950.1(検索日:2022.07.28)
【文献】matrix protein 1 [Influenza A virus (A/Hong Kong/01/1968(H3N2))] [online],2016年,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/APO39313.1/,GenBank: APO39313.1(検索日:2022.07.28)
【文献】Journal of Clinical Immunology,2012年02月09日,Vol. 32, No. 3,pp. 595-603
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/145
A61P 11/00
A61P 31/16
A61P 37/04
A61K 48/00
A61K 35/74
A61K 35/76
A61K 36/06
A61K 35/761
A61K 35/763
C07K 14/11
C12N 15/44
C12N 15/85
C12N 15/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、抗インフルエンザワクチン免疫原。
【請求項2】
請求項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原をそれぞれ発現する複数の組換えベクターを含む組換えベクターワクチンである、抗インフルエンザワクチン。
【請求項3】
組換えベクターワクチンが、組換えタンパク質ワクチン、組換えDNAワクチン、組換えウイルスベクターワクチン、組換え細菌ベクターワクチン、組換え酵母ベクターワクチンまたは組換えウイルス様粒子ワクチンを含む、請求項に記載の抗インフルエンザワクチン。
【請求項4】
イルスベクターが、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、サイトメガロウイルスベクターを含む、請求項に記載の抗インフルエンザワクチン。
【請求項5】
抗インフルエンザウイルスワクチンの調製における、請求項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、工学的ワクチン(engineered vaccine)の研究、設計及び生産、特に、新規の免疫原、組換えベクターワクチン及びその免疫法を含む、広域スペクトルな抗インフルエンザウイルスワクチン免疫原及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
インフルエンザは、インフルエンザウイルス感染による感染力が極めて強く、感染速度が極めて速い急性気道感染症である。インフルエンザウイルスは、オルトミクソ・ウイルス科に属し、アンチセンス一本鎖RNAウイルスである。インフルエンザウイルスによる季節性インフルエンザと頻繁で予測不可能なインフルエンザの大流行は、ヒトの健康と公衆衛生を深刻に危険にさらしている。世界保健機関(World Health Organization, WHO)のレポート統計によると、世界中で毎年300万から500万のヒトがA型インフルエンザウイルスに感染しており、そのうち約25万から50万のヒトが死亡している。近年、H5N1、H1N1、H3N2、H7N9などの高病原性インフルエンザが頻繁に発生しているため、異なる亜型のインフルエンザウイルスのいずれに対しても交差保護作用を有する汎用インフルエンザワクチンを研究することは非常に重要である。
【0003】
インフルエンザを予防するための最も効果的で経済的な手段はワクチンを接種することである。現在、世界保健機関によって承認されているインフルエンザワクチンは、いずれも季節性インフルエンザワクチンであり、また、世界的に多くのインフルエンザワクチンの研究ホットスポットは、いずれも保護効果を達成するようにインフルエンザウイルスのエンベロープ血球凝集素タンパク質(haemagglutinin, HA)に対する抗体応答を誘導することに焦点を当てるものである。HAヘッド部は中和抗体の産生を誘導する際に顕著な免疫優位性を有するが、この部分は抗原連続変異(antigen drift)を起こしやすいため、HAヘッド部に対する中和抗体は強い毒株特異性を持ち、ウイルスが選択的に中和抗体を逃す方向に変異し、抗体が交差保護効果を得難い。近年、HAステム部を標的とする広域スペクトルな中和抗体がいくつか研究、発見されているが、インフルエンザウイルス群によって交差保護作用が乏しく、自然感染状態ではHAステム部の免疫原性が劣位な部位に属し、ウイルスに対する中和能力が弱いため、うまく適用することが困難である。現在、H7N9インフルエンザ患者の生体内では、インフルエンザ特異的CD8T細胞が広域スペクトルな抗インフルエンザ作用を持ち、異なる亜型のインフルエンザによって感染された細胞を死滅させることができることが研究によって確認されている。さらに、インフルエンザ感染後、インフルエンザウイルス抗原特異的CD8メモリーT細胞が気道内で最大1年間維持でき、この群の特異的CD8細胞の数がインフルエンザ感染に対する宿主の交差保護能力に関連しており、高効率で広域スペクトルな抗ウイルス性インフルエンザワクチンを設計するために理論的基礎を提供している。
【0004】
現在、WHOによって承認されているインフルエンザワクチンは、全て季節性インフルエンザワクチンであり、その中で最も広く使用されているのは、2つのA型インフルエンザウイルス(H1N1とH3N2)及び1つのB型インフルエンザウイルスを含む3価不活化ワクチンである。また、皮下に接種したワクチン、鼻腔スプレー方式で接種した弱毒生ワクチン等の使用も承認されている。しかしながら、これらのワクチンはいずれも、ワクチンの保護効果が、当年流行のインフルエンザ毒株とワクチン毒株との一致性に依存するという共通のチャレンジがある。インフルエンザウイルスは変異を続けており、WHOの監視と予測には時間がかかり、手間がかかり、正確性が乏しく、今シーズンのワクチンの供給を確保するには、少なくとも7か月または8か月前に生産を行う必要があるが、ワクチンの予測の不確実性は大幅に増加し、かつ、発生する可能性のあるパンデミックインフルエンザに対しては実質的に無効なものとなる。現在のワクチン生産は依然として主に鶏の胚に依存しており、生産サイクルが長く、工程が複雑で、時間と労力がかかり、コストが比較的高い。現在、インフルエンザワクチンの構築には多くの戦略があるが、その中でも一般的に使用されている不活化ワクチンと弱毒生ワクチンは有効性に欠け、生産工程が複雑で生産時間が長い。
【0005】
現在、DNAワクチンとウイルスベクターワクチンが広く使用されており、DNAワクチンが最も効果的なプライミングワクチン形態であることが証明されて、DNAワクチンでのプライミングとタンパク質ワクチンまたはウイルスベクターワクチンによるワクチン強化との戦略複合免疫もワクチン免疫戦略の研究ホットスポットとしている。現在、最も一般的に使用されているアデノウイルスワクチンベクターはヒト5型アデノウイルスであり、外来遺伝子を発現する能力は比較的良好ですが、ヒト由来のアデノウイルスベクターであるため、ほとんどの人体内に予め存在するアデノウイルス抗体により容易に中和され、ワクチンを無効にさせ、それによってこのワクチンベクターの適用を制限する。近年、ゴリラ由来の68型アデノウイルスワクチンベクターが発見され、人体にはこのアデノウイルスに対する抗体がほとんどなく、上記の問題をよく克服して、さらに、ゴリラ由来の68型アデノウイルスは分裂細胞と非分裂細胞に感染する可能性があり、肺細胞、肝細胞、骨細胞、血管、筋肉、脳、中枢神経細胞などを形質導入することができ、優れた遺伝子安定性と優れた外来遺伝子発現能力を持って、HEK293細胞で大量生産が可能であり、エイズ、エボラ、インフルエンザ、マラリア、C型肝炎等のワクチンの研究に広く用いられている。ポックスウイルスTiantan株ワクチンベクターは広い宿主範囲を有し、増殖力価が高く、誘導された免疫反応は非常に長く持続し、外来遺伝子を挿入する容量は非常に大きく、理論的には25~50kbに達することができ、ポックスウイルスTiantan株は体を効果的に刺激して抗体応答とT細胞免疫応答を起こすことができ、非常に安全であることが証明されており、免疫不全者に対しても使用できる。
【0006】
したがって、インフルエンザウイルス内部保存タンパク質をいかに有効に利用し、インフルエンザウイルス内部CD8 T細胞エピトープに対する免疫原を設計し、様々な異なるワクチンベクター及びそれらの免疫的組合せ戦略を通じて、免疫系をより包括的、効率的かつ持続的に刺激し、それによってより広範で有効な保護作用を提供するかは、現在の広域スペクトルなインフルエンザワクチンに直面している厳しい挑戦である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明の一側面において、配列番号1(SEQ ID No.1)及び配列番号2に示されるアミノ酸配列、またはその免疫原性フラグメント、あるいはこれらの配列の組み合わせからなる群より選択されることを含む、インフルエンザワクチン免疫原が提供される。
【0008】
本発明の特定の実施形態において、前記の免疫原が、インフルエンザウイルス内部保存タンパク質、または保存タンパク質の免疫原性フラグメントを含む。
【0009】
本発明の別の特定の実施形態において、前記のインフルエンザウイルス内部保存タンパク質が、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質(M1、M2)、核タンパク質(NP)、アルカリ性ポリメラーゼ(PB1、PB2)及び酸性ポリメラーゼ(PA)を含む。
【0010】
本発明のさらに別の特定の実施形態において、前記の免疫原が、A型インフルエンザウイルスのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18亜型、B型インフルエンザウイルスを含む、全てのインフルエンザウイルスの亜型の組換えタンパク質、またはその共有配列の組換えタンパク質、あるいはそれらの組み合わせに由来する。
【0011】
本発明の別の側面において、上記のような抗インフルエンザワクチン免疫原、またはその免疫原性フラグメント、あるいはそれらの組み合わせを使用することにより、複数の異なるベクターで発現され構築された組換えベクターワクチンである、抗インフルエンザウイルス組換えベクターワクチンが提供される。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記の組換えベクターワクチンが、組換えタンパク質ワクチン、組換えDNAワクチン、組換えウイルスベクターワクチン、組換え細菌ベクターワクチン、組換え酵母ベクターワクチンまたは組換えウイルス様粒子ワクチンなどを含み、前記のウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、サイトメガロウイルスベクター等を含む。
【0013】
本発明の別の側面において、上記のような抗インフルエンザワクチン免疫原、またはその免疫原性フラグメント、あるいはこれらの組み合わせを用いて組換えインフルエンザワクチンを構築して免疫化する免疫法であって、免疫化ごとに上記の異なる組換えベクターワクチンを用いて順次接種する工程を含み、各組換えベクターワクチンは少なくとも1回接種され、接種手順には少なくとも1回の気道内免疫及び1回の全身性免疫を含む免疫法が提供される。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、上記のワクチン免疫の過程で、1針ごとに異なるベクター由来の組換えワクチンで免疫接種した。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、上記のワクチン免疫の過程で、そのワクチンが、「プライム-ブースト-ブースター(primary-boost-re-boost)」という免疫戦略を用いて免疫接種し、各組換えワクチンは少なくとも1回接種され、接種手順には少なくとも1回の気道内ワクチン免疫及び1回の全身性免疫接種を含む。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、上記のワクチン免疫の過程で、ワクチンの全身接種の態様が、筋肉内注射、皮下接種、皮内接種を含む。ワクチンの気道接種の態様が、噴霧化、点鼻を含む。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、上記のワクチン免疫の過程で、接種手順は、組換えDNAワクチンの筋肉注射でプライミングし、組換えアデノウイルスベクターワクチンで気道免疫を強化し(boosting)、組換えポックスウイルスワクチンの筋肉注射で再強化(reboosting)する戦略としてワクチン構築と免疫接種を行うことである。
【0018】
本発明の特定の実施形態では、上記のワクチン免疫の過程で、接種手順は、組換えポックスウイルスワクチンが最終針のワクチンとして接種されることである。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、上記のワクチン免疫の過程で、2回の接種ごとの間隔は、少なくとも1週間であり、好ましくは2週間またはそれ以上である。
【0020】
本発明の前記のワクチン及び免疫化技術は、鳥インフルエンザのヒトへの伝播を予防するように鳥類動物に接種するために、ヒトに鳥インフルエンザを感染させる病原性を低減するようにヒトに接種するために、ヒトにヒトインフルエンザを感染させる病原性を減少させるようにヒトに接種するために、ヒトにインフルエンザを感染させた後に他のヒトへの伝播を予防するようにヒトに接種するために、使用することができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面において、前記のような抗インフルエンザワクチンを腫瘍内接種に使用され、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、膀胱癌、骨肉腫を含む腫瘍を治療することを含む治療方法が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の側面において、抗ウイルスワクチン、抗腫瘍ワクチンを含む他のワクチンのアジュバントとして、上記のような抗インフルエンザワクチンを用いて、他の免疫原に対する免疫応答を増強させることを含む免疫法が提供される。前記の他のワクチンとしては、抗ZIKV、抗B型肝炎、抗C型肝炎、抗結核、抗HIV、抗マラリア、抗デング熱ワクチン等も含む。前記の他のワクチンとしては、抗肺癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、膀胱癌、骨肉腫ワクチンも含む。
【0023】
本発明のさらに別の側面において、抗インフルエンザウイルスワクチンの調製における、本発明に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原または免疫原性フラグメントあるいはそれらの組み合わせの使用が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の側面において、他のワクチンのアジュバントとしての、抗インフルエンザワクチン免疫原または免疫原性フラグメントあるいはそれらの組み合わせの使用が提供される。
【0025】
本発明は、インフルエンザウイルスに対する広域スペクトルな免疫原またはその免疫原性フラグメント、あるいはそれらの組み合わせ及び免疫法を提供し、前記の免疫原配列が、配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその免疫原性フラグメントを含み、ここで、2つの配列は、それぞれ使用または同時に使用することができ、全体配列が使用されるか、またはその免疫原性フラグメントが切り詰められ、前記の免疫原性フラグメントが、本発明の配列と同じ生物学的活性を有し、本発明の免疫原配列が、ヒトMHCクラスI分子に高い親和性で結合するインフルエンザウイルス特異的CD8 T細胞エピトープを含むことを特徴とする。複数の異なるワクチンベクターを用いて組換えワクチンを構築し、免疫化ごとに異なる組換えベクターワクチンで順次接種され、各組換えワクチンは少なくとも1回接種され、接種手順には少なくとも1回の気道内ワクチン免疫及び1回の全身性免疫を含み、用いる組換えベクターワクチンと接種態様との組み合わせにより、気道内及び全身系のT細胞免疫応答を高レベルで得ることができ、これによりワクチン接種者は、異なる亜型インフルエンザに対する免疫を得ることができる。
【0026】
本発明の前記の免疫原が、インフルエンザウイルス内部保存マトリックスタンパク質(M1、M2)、核タンパク質(NP)、アルカリ性ポリメラーゼ(PB1、PB2)及び酸性ポリメラーゼ(PA)またはその免疫原性フラグメントを含む組換えタンパク質である。本発明の免疫原配列が、配列番号1及び配列番号2と名付けられた2つの配列である。
【0027】
本発明の前記の免疫原が、組換えタンパク質ワクチン、組換えDNAワクチン、組換えウイルスベクターワクチン、組換え細菌ベクターワクチン、組換え酵母ベクターワクチンまたは組換えウイルス様粒子ワクチンなどを含むがこれらに限定されない、異なるワクチンベクターで組換えベクターワクチンを構築するために使用することができる。
【0028】
本発明の前記の組換えベクターワクチンの免疫法は、全身性免疫と気道局所免疫とを組み合わせた「プライム-ブースト-ブースター」の態様を用いて、免疫接種ごとに異なるベクターワクチンを順次使用する。異なるベクターワクチンの特徴に基づき、本発明は、全身性免疫応答を確立するように組換えDNAワクチンの筋肉注射でプライミングし、続いて68型アデノウイルスワクチンで気道免疫を強化させ、最後に組換えポックスウイルスワクチンの筋肉注射で全身性免疫応答を構築し再強化させる戦略によってワクチンの構築と免疫接種を行うことが好ましい。本発明は、組換えポックスウイルスベクターを第三針として再強化することが好ましく、気道局所及び全身系において広域スペクトルなインフルエンザ特異的免疫応答を有効に構築することができ、ワクチンの広域スペクトル性の強化に寄与する。2回のワクチン接種時間の間隔は、少なくとも1週間であり、2週間またはそれ以上でもよい。
【0029】
本発明の前記の全身性免疫接種態様には、筋肉内、皮下、及び皮内注射などが含まれるが、これらに限定されず、気道局所免疫接種態様には、噴霧化及び点鼻などが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明における前記の免疫原は、鳥類及び哺乳動物におけるインフルエンザウイルス感染を予防または治療するためのワクチン及び薬物の研究、設計、及び生産に使用することができる。さらに、本発明における免疫法の特徴は、気道局所において抗原特異的CD8+ T細胞応答を高レベルで誘導することができるので、気道での病原体感染の予防、気道での病原体の病原力の低減、及び気道腫瘍の予防治療の全ての使用が期待されている。
【0031】
本発明の利点は、前記の免疫原が高度に保存され、ヒトMHCクラスI分子に高い親和性で結合するインフルエンザCD8 T細胞エピトープを含み、広域スペクトル、高レベルのインフルエンザ特異的T細胞免疫応答を誘導でき、インフルエンザウイルスが抗原連続変異(antigen drift)や抗原不連続変異(antigen transformation)により宿主から既存の免疫応答を逃げることに有効に対応でき、異なる亜型のインフルエンザウイルスに対して一定の交差保護作用を有することである。
【0032】
本発明の利点は、前記の免疫法が、異なる亜型のインフルエンザウイルスに対するワクチンの保護効果を高めるように、様々な異なるベクターで順次接種をして、異なる接種態様を用いて気道局所及び全身系の広域スペクトルなT細胞免疫応答を効率的に活性化することである。
【0033】
本発明の利点は、前記の免疫原及び免疫法が任意の気道病原体ワクチンの免疫接種に使用できるとともに、前記の免疫原は、ウイルスベクターで組換えワクチンを調製され、抗肺癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、膀胱癌、骨肉腫などを含むが、これらに限定されない腫瘍を治療するために腫瘍内接種に用いることができることである。
本発明のさらなる態様を、以下に記載する:
[項1]
免疫原が、配列番号1及び配列番号2に示されるアミノ酸配列、またはその免疫原性フラグメント、あるいはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項2]
免疫原が、インフルエンザウイルス内部保存タンパク質、または保存タンパク質の免疫原性フラグメントを含む、項1に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項3]
インフルエンザウイルス内部保存タンパク質が、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質(M1、M2)、核タンパク質(NP)、アルカリ性ポリメラーゼ(PB1、PB2)及び酸性ポリメラーゼ(PA)を含む、項1に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項4]
免疫原が、A型インフルエンザウイルスのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18亜型、B型インフルエンザウイルスを含む、全てのインフルエンザウイルスの亜型の組換えタンパク質、またはその共有配列の組換えタンパク質、あるいはそれらの組み合わせに由来する、項1から3のいずれか一項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項5]
項1から4のいずれか一項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原を使用することにより、複数の異なるベクターで発現され構築された組換えベクターワクチンである、抗インフルエンザワクチン。
[項6]
組換えベクターワクチンが、組換えタンパク質ワクチン、組換えDNAワクチン、組換えウイルスベクターワクチン、組換え細菌ベクターワクチン、組換え酵母ベクターワクチンまたは組換えウイルス様粒子ワクチンを含む、項5に記載の抗インフルエンザワクチン。
[項7]
前記のウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、サイトメガロウイルスベクターを含む、項5に記載の抗インフルエンザワクチン。
[項8]
抗インフルエンザウイルスワクチンの調製における、項1から4のいずれか一項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原の使用。
[項9]
項1から4のいずれか一項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原を用いて組換えインフルエンザワクチンを構築して免疫化する免疫法であって、免疫化ごとに項5に記載の異なる組換えベクターワクチンを用いて順次接種する工程を含み、各組換えベクターワクチンは少なくとも1回接種され、接種手順には少なくとも1回の気道内免疫及び1回の全身性免疫を含む、免疫法。
[項10]
ワクチン免疫の過程で、1針ごとに異なるベクター由来の組換えワクチンで免疫接種した、項9に記載の方法。
[項11]
そのワクチンが、プライム-ブースト-ブースターという免疫戦略を用いて免疫接種され、各組換えワクチンは少なくとも1回接種され、接種手順には少なくとも1回の気道内ワクチン免疫及び1回の全身性免疫接種を含む、項9に記載の方法。
[項12]
ワクチンの全身接種の態様が、筋肉注射、皮下接種、皮内接種を含む、項9に記載の方法。
[項13]
ワクチンの気道接種の態様が、噴霧化、点鼻を含む、項9に記載の方法。
[項14]
接種手順は、組換えDNAワクチンの筋肉注射でプライミングし、組換えアデノウイルスベクターワクチンで気道免疫を強化し、組換えポックスウイルスワクチンの筋肉注射で再強化する戦略としてワクチン構築と免疫接種を行うことである、項9に記載の方法。
[項15]
接種手順は、組換えポックスウイルスワクチンが最終針のワクチンとして接種されることである、項9に記載の方法。
[項16]
2回の接種ごとの間隔は、少なくとも1週間であり、好ましくは2週間またはそれ以上である、項9から13のいずれか一項に記載の方法。
[項17]
腫瘍を治療するための組換えワクチンの調製における項5に記載の抗インフルエンザワクチンの使用。
[項18]
ワクチン及び免疫化技術は、鳥インフルエンザのヒトへの伝播を予防するように鳥類動物に接種するために使用することができることを特徴とする、項9から17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
ワクチン及び免疫化技術は、ヒトに鳥インフルエンザを感染させる病原性を低減するようにヒトに接種するために使用することができることを特徴とする、項9から17のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
ワクチン及び免疫化技術は、ヒトにヒトインフルエンザを感染させる病原性を減少させるようにヒトに接種するために使用することができることを特徴とする、項9から17のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
ワクチン及び免疫化技術は、ヒトにインフルエンザを感染させた後に他のヒトへの伝播を予防するようにヒトに接種するために使用することができることを特徴とする、項9から17のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
腫瘍内接種に使用され、腫瘍を治療する、項5に記載の抗インフルエンザワクチン。
[項23]
腫瘍が、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、膀胱癌、骨肉腫を含む、項22に記載の抗インフルエンザワクチン。
[項24]
免疫原配列が、他のワクチンのアジュバントとして使用され、他の免疫原に対する免疫応答を増強させる、項1から4のいずれか一項に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項25]
他のワクチンが、抗ウイルスワクチン、抗腫瘍ワクチンを含む、項24に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項26]
他のワクチンが、抗ZIKV、抗B型肝炎、抗C型肝炎、抗結核、抗HIV、抗マラリア、抗デング熱ワクチンを含む、項24または25に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
[項27]
他のワクチンが、抗肺癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、乳癌、食道癌、膀胱癌、骨肉腫ワクチンを含む、項24または25に記載の抗インフルエンザワクチン免疫原。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、ウエスタンブロット実験による免疫原発現の検出を示す。(A)は、ウエスタンブロット実験が、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68、及びポックスウイルスベクターTTVが全て本発明の前記免疫原配列番号1を効果的に発現できることを確認することを示す。インフルエンザマトリックスタンパク質1抗体をインキュベーションした後、本発明の前記免疫原配列番号1の配列を含まない空ベクターpSV1.0、AdC68、TTVは、全て特異的なバンドを示さず、本発明の前記免疫原配列番号1を含んでいたpSV1.0-配列番号1、AdC68-配列番号1、TTV-配列番号1/2は、タンパク質サイズが約130kDである有意なバンドが見られ、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68、及びポックスウイルスベクターTTVは、全て本発明の前記免疫原配列番号1を効果的に発現することを証明する。また、β-アクチン抗体をインキュベーションした後、タンパク質サイズが約42kDである有意なバンドが見られ、さらに実験の各工程が正確で、実験結果が信頼できることを証明する。(B)は、ウエスタンブロット実験が、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68、及びポックスウイルスベクターTTVが全て本発明の前記免疫原配列番号2を効果的に発現できることを確認することを示す。インフルエンザマトリックスタンパク質2抗体をインキュベーションした後、本発明の前記免疫原配列番号2の配列を含まない空ベクターpSV1.0、AdC68、TTVは、全て特異的なバンドを示さず、本発明の前記免疫原配列番号2を含んでいたpSV1.0-配列番号2、AdC68-配列番号2、TTV-配列番号1/2は、タンパク質サイズが約130kDである有意なバンドが見られ、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68、及びポックスウイルスベクターTTVは、全て本発明の前記免疫原配列番号2を効果的に発現することを証明する。また、β-アクチン抗体をインキュベーションした後、タンパク質サイズが約42kDである有意なバンドが見られ、さらに実験の各工程が正確で、実験結果が信頼できることを証明する。
図2図2は、免疫原に基づくインフルエンザ特異的T細胞免疫応答の検出を示す。(A)は、酵素結合免疫スポット実験によるマウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的T細胞免疫応答レベルの検出を示す。その結果、対照群のマウスがスポット形成細胞を見ておらず、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を示さなく、アデノウイルス群のマウスがNP-2とPB2-1の2つのエピトープに対してより多くのスポット形成細胞を持ち、高いT細胞免疫応答を有することを示し、ポックスウイルス群のマウスがNP-2、NP-3、PB1-1、PB1-3、PA-3などのエピトープに対してスポット形成細胞を持ち、より高いT細胞免疫応答を有することを示す。(B)は、細胞内因子インターフェロンγ、腫瘍壊死因子αの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答のレベルを検出することを示す。その結果、対照群にインターフェロンγ、腫瘍壊死因子αを発現するT細胞がなく、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子αを発現するT細胞がアデノウイルス群とポックスウイルス群の両方で見られたため、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を有することを示す。(C)は、細胞内因子CD107aの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答レベルを検出することを示す。その結果、対照群にCD107aを発現するT細胞がなく、アデノウイルス群にCD107aを発現するT細胞が見られたため、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を有することを示す。
図3図3は、免疫原に基づくH1N1及びH7N9インフルエンザの暴露に対する保護効果の評価を示す。(A)、(B)は、マウスの体重曲線を示し、H1N1とH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、対照群のマウスの体重は減少し続け、アデノウイルス群とポックスウイルス群のマウスの体重は先に下降した後に上昇した。(C)、(D)は、マウスの生存曲線を示し、H1N1インフルエンザウイルスを暴露後、対照群の全てのマウスが死亡し、アデノウイルス群とポックスウイルス群のマウスは全て14日まで生存した。(E)、(F)は、暴露後5日目のマウスの肺におけるウイルス負荷の検出を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、アデノウイルス群とポックスウイルス群のマウスの肺におけるウイルス負荷は対照群よりも低かった。
図4図4は、異なる免疫法によって誘導されたインフルエンザ特異的T細胞免疫応答の検出を示す。(A)は、酵素結合免疫スポット実験によるマウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的T細胞免疫応答レベルの検出を示す。その結果、対照群1のマウスはスポット形成細胞を示さず、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を示さず、対照群2、3及び実験群1、2は、各モノペプチドについてスポット形成細胞が全て見られ、高レベルのT細胞免疫応答を有することを示す。(B)は、酵素結合免疫スポット実験によるマウスの肺洗浄液におけるインフルエンザ特異的免疫応答レベルの検出を示す。NP-2およびPB2-1の2つのペプチドの刺激下では、対照群1、2、及び3でスポット形成細胞は全て見られず、インフルエンザ特異的免疫応答を肺で確立できなく、実験群1及び2で形成細胞が多く見られ、高レベルのインフルエンザ特異的T細胞免疫応答を示す。(C)は、細胞内因子インターフェロンγ、腫瘍壊死因子αの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答のレベルを検出することを示す。その結果、対照群1にインターフェロンγ、腫瘍壊死因子αを発現するT細胞がなく、対照群2、3及び実験群1、2に全てインターフェロンγ、腫瘍壊死因子αを発現するT細胞が見られたため、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を有することを示す。(D)は、細胞内因子CD107aの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答レベルを検出することを示し、その結果、CD107aを発現するT細胞が対照群3及び実験群2で見られたため、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を有することを示す。
図5図5は、異なる方法で免疫した後のH1N1及びH7N9インフルエンザウイルスに対するマウスの暴露保護効果を示す。(A)及び(B)は、マウスの体重曲線を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスに感染された後、実験群1及び2のマウスの体重は先に下降した後に上昇し、対照群1、2、3よりも優れている。(C)及び(D)は、マウスの生存曲線を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、実験群1及び2のマウスは全てH1N1及びH7N9インフルエンザウイルスに感染された後14日まで生存し、対照群1、2、3はいずれも14日目までにマウスが死亡した。(E)及び(F)は、暴露後5日目のマウスの肺におけるウイルス負荷の検出を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザが暴露後、実験群1及び2のマウスのウイルス負荷は、対照群1、2、3よりもわずかに低かった。
図6図6は、点鼻ワクチン接種による免疫増強実験群のマウスのインフルエンザウイルス暴露後の保護効果の評価を示す。(A)及び(B)は、マウスの体重曲線を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、実験群1+FTY720、実験群2+FTY720においてマウスの体重先に下降した後に上昇し、対照群+FTY720よりも優れる。(C)及び(D)は、マウスの生存曲線を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、実験群1+FTY720、実験群2+FTY720において一部のマウスは14日まで生存し、対照群+FTY720よりも優れる。(E)及び(F)は、暴露後5日目のマウスの肺におけるウイルス負荷の検出を示し、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスを暴露後、実験群1+FTY720、実験群2+FTY720のマウスのウイルス負荷は、対照群+FTY720よりも低かった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を次の実施例により具体的に説明する。
【0036】
発明を実施するための形態
本発明の他の側面は、以下で詳細に説明する。本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、以下に開示される実施形態の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むと明らかとなるであろう。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【実施例
【0038】
実施例1:抗インフルエンザワクチン免疫原の設計と調製
GenBankデータベースは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information,NCBI)によって確立された遺伝子配列データベースであり、このデータベースを検索することにより、約40,000株のインフルエンザウイルスの遺伝子配列が得られた。
【0039】
上記約40,000株のインフルエンザウイルスの内部のM1、M2、NP、PB1、PB2、PAタンパク質のアミノ酸配列を計算・解析したところ、アミノ酸配列の各サイトにおける最も頻度の高いアミノ酸をそのサイトにおける共有アミノ酸とし、このタンパク質のアミノ酸共有配列が各サイトの共有アミノ酸からなり、それによりM1、M2、NP、PB1、PB2、PAタンパク質の共有アミノ酸配列が得られた。
【0040】
オンラインCD8 T細胞エピトープ予測ソフトウェアを使用して、上記で得られたPB1、PB2及びPAのアミノ酸共有配列を解析した。使用されるオンラインソフトウェアはhttp://tools.immuneepitope.org/main/tcell/とhttp://www.syfpeithi.de/であり、2つのソフトウェアプログラムによって予測された共通のCD8 T細胞エピトープを保持し、これらのCD8 T細胞エピトープを結合させて、PB1、PB2及びPAのアミノ酸エピトープ配列を形成した。
【0041】
上記で得られたアミノ酸配列により、ワクチン配列を設計した。エピトープを結合させることによって得られたPA、PB1アミノ酸エピトープ配列をM1タンパク質共有アミノ酸配列と合して、配列番号1と名付けられたワクチンアミノ酸配列を得た。エピトープを結合させることによって得られたPB2アミノ酸エピトープ配列をNP、M2タンパク質共有アミノ酸配列と合して、配列番号2と名付けられた別のワクチンアミノ酸配列を得た。
【0042】
上記配列番号1及び配列番号2について、アミノ酸配列の核酸配列への翻訳を行い、http:// www.jcat.de /オンラインソフトウェアによる核酸配列真核コドンの最適化を行い、配列番号1及び配列番号2の核酸配列を得て、この配列は、蘇州金唯智バイオテクノロジー株式会社(Suzhou GENEWIZ Biotechnology Co., Ltd)により合成された。合成された配列は、蘇州金唯智バイオテクノロジー株式会社により配列決定され、本明細書に記載の配列番号1及び配列番号2であることが確認された。
【0043】
実施例2:抗インフルエンザワクチン免疫原に基づくワクチンの構築
本発明の前記免疫原は、組換えDNAベクターワクチン、組換えアデノウイルスベクターワクチン及び組換えポックスウイルスベクターワクチンを構築するために使用される。
本発明の前記免疫原配列番号1及び配列番号2を、pSV1.0ベクター(上海公衆衛生臨床センターにより保存)に挿入して、それぞれpSV1.0-配列番号1及びpSV1.0-配列番号2と名付けられた組換えDNAベクターワクチンを構築した。
【0044】
その免疫原をAdC68アデノウイルスベクター(中国科学院・上海パスツール研究所から購入)に挿入し、293a細胞(中国科学院・上海生命科学研究院細胞資源センターから購入)にトランスフェクトして、それぞれAdC68-配列番号1及びAdC68-配列番号2と名付けられた組換えアデノウイルスベクターワクチンを構築した。
【0045】
切断ペプチドp2aを使用して、免疫原配列番号1と配列番号2を結合させ、pSC65ベクター(上海公衆衛生臨床センターより保存)に挿入し、TK143細胞(中国科学院・上海生命科学研究院細胞資源センターから購入)にトランスフェクトし、TTV-配列番号1/2と名付けられた組換えポックスウイルスベクターワクチンを構築した。
【0046】
抗インフルエンザワクチン免疫原の発現をウエスタンブロット実験により検出した具体的な工程は以下の通りである。
(1)実験サンプルの調製
pSV1.0-配列番号1及びpSV1.0-配列番号2をそれぞれ293T細胞(中国科学院・上海生命科学研究院細胞資源センターから購入)にトランスフェクトし、48時間後に293T細胞を回収し、75μLの細胞溶解液で細胞を再懸濁し、25μLのタンパク質ローディングバッファーを加え、100℃で10分間水浴してサンプルを調製した。
AdC68-配列番号1及びAdC-配列番号2をそれぞれ293A細胞に感染させ、24時間後に293A細胞を回収し、75μLの細胞溶解液で細胞を再懸濁し、25μLのタンパク質ローディングバッファーを加え、100℃で10分間水浴してサンプルを調製した。
【0047】
TTV-配列番号1/2をTK143細胞に感染させ、48時間後にTK143細胞を回収し、75μLの細胞溶解液で細胞を再懸濁し、25μLのタンパク質ローディングバッファーを加え、100℃で10分間水浴してサンプルを調製した。
【0048】
(2)ウエスタンブロット実験には8%ポリアクリルアミド分離ゲルが調合され、室温で30分間静置した後、10%ポリアクリルアミド濃縮ゲルを加え、直ちに櫛を軽く挿入し、30分間静置してゲル化した後に電気泳動槽に仕込み、電気泳動緩衝液を注ぎ入れ、ゆっくりと櫛を抜いて、上記で調製したサンプルを順次加えた。電気泳動装置を接続し、70ポルトで0.5時間電気泳動をした後、電圧を90ポルトに調整し、1.5時間電気泳動を続け後に終了した。ポリフッ化ビニリデン膜をメタノールにおいて30秒間活性化させた後、スポンジ、ろ紙、及びポリフッ化ビニリデン膜を膜転写液に浸し、順番に取り付けた。装置と氷袋を膜転写槽に入れ、予冷した膜転写緩衝液を満たし、定電流200ミリアンペアで2.5時間膜転写をした。膜転写終了後、ポリフッ化ビニリデン膜を取り出し、5%脱脂粉乳で1時間ブロックした。それぞれ、インフルエンザマトリックスタンパク質1抗体(アブカム(上海)トレーディング株式会社から購入)を1:1000で加え、インフルエンザマトリックスタンパク質2抗体(サンタクルーズバイオテクノロジー(上海)株式会社から購入)を1:250で加え、シェーカーで室温にて2時間インキュベーションした後、Tween-20を含むリン酸緩衝液で5分間ずつ3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したヤギ抗マウスIgG抗体を1:5000で加え、シェーカーで室温にて1時間インキュベーションした後、Tween-20を含むリン酸緩衝液で5分間ずつ5回洗浄した。発色液を調合し、ポリフッ化ビニリデン膜上を覆い、発光検出を行った。
【0049】
ウエスタンブロット実験による免疫原発現の検出結果を図1に示した。DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68及びポックスウイルスベクターTTVは、いずれも本発明の前記免疫原配列番号1を効果的に発現することができた。インフルエンザマトリックスタンパク質1抗体をインキュベーションした後、本発明の前記免疫原配列番号1配列を含まない空ベクターpSV1.0、AdC68、TTVは、全て特異的なバンドを示さず、本発明の前記免疫原配列番号1を含んでいたpSV1.0-配列番号1、AdC68-配列番号1、TTV-配列番号1/2は、タンパク質サイズが130kD程度である有意なバンドが見られ、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68及びポックスウイルスベクターTTVは、全て本発明の前記免疫原配列番号1を効果的に発現することができることを証明した。インフルエンザマトリックスタンパク質2抗体をインキュベーションした後、本発明の前記免疫原配列番号2配列を含まない空ベクターpSV1.0、AdC68、及びTTVは、全て特異的なバンドを示さず、本発明の前記免疫原配列番号2を含んでいたpSV1.0-配列番号2、AdC68-配列番号2、TTV-配列番号1/2は、タンパク質サイズが約130kDである有意なバンドが見られ、DNAベクターpSV1.0、アデノウイルスベクターAdC68、及びポックスウイルスベクターTTVは、全て本発明の免疫原配列番号2を効果的に発現することを証明した。また、β-アクチン抗体をインキュベーションした後、タンパク質サイズが約42kDである有意なバンドが見られ、さらに実験の各工程が正確で、実験結果が信頼できることを証明した。
【0050】
実施例3:抗インフルエンザワクチン免疫原に基づくワクチン免疫原性の検出
実施例2に記載されるように、本発明の前記免疫原は、DNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチン、及びポックスウイルスベクターワクチンを構築するために使用された。その組換えインフルエンザワクチンを使用してマウスを免疫させ、免疫が終了してから4週間後に、この組換えインフルエンザワクチンの免疫原性を評価した。
【0051】
6週齢のC57BL/6マウスは、対照群、アデノウイルス群、及びポックスウイルス群と名付けられた3つの群に無作為に分けられた。具体的な免疫手順を表1に示し、免疫態様は筋肉内注射であり、pSV1.0の接種用量は100μgであり、AdC68の接種用量は1011ウイルス粒子であり、pSV1.0- 配列番号1及びpSV1.0- 配列番号2の接種用量はそれぞれ50μgであり、AdC68- 配列番号1及びAdC68 配列番号2の接種用量は5x1010ウイルス粒子であり、TTV-配列番号1/2の接種用量は10プラーク形成単位であり、ワクチンは2週間毎に接種された。
【0052】
【表1】

【0053】
組換えインフルエンザワクチンの免疫原性アッセイは、それぞれ酵素結合免疫スポットアッセイ(Enzyme-linked Immunospot Assay,ELISpot)及び細胞内因子染色(Intracellular staining of cytokines,ICS)法を用いて、マウスの脾臓細胞を検出した。
【0054】
配列番号1及び配列番号2に対するエピトープ予測、ならびに報告された一般的に使用されているインフルエンザT細胞エピトープに基づいて、16個のエピトープモノペプチドを、マウスT細胞免疫反応を刺激するために選択し、それぞれM1-1、M1-2、M1-3、M2、NP-1、NP-2、NP-3、PB1-1、PB1-2、PB1-3、PB2-1、PB2-2、PB2-3、PA-1、PA-2、PA-3と名付けた。
【0055】
(1)酵素結合免疫スポットアッセイの実験工程は次のとおりである。
1日前にマウスインターフェロンγを5μg/mLの最終濃度に希釈し、1ウェルあたり100μLをアッセイプレートに加え、4℃で一晩コーティングした。翌日、コーティング液を捨て、各ウェルに200μLの完全培地を加えて1回洗浄し、次に200μLの完全培地を加え、室温で2時間ブロックした。ブロック終了後、マウスの脾臓細胞の濃度を、1mLあたり4×106細胞に調整し、各ウェルに50μLの脾臓細胞を加え、次に50μLの10μg/mLのモノペプチドを加え、インキュベーターで20時間程度培養した。インキュベーション終了後、各ウェルに200μLの蒸留水を加え2回洗い流し、次に200μLのTween-20含有リン酸緩衝液を加えて3回洗浄した。抗マウスインターフェロンγのビオチンを2μg/μLの最終濃度に希釈し、各ウェルに100μLを加え、室温で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、200μLのTween-20含有リン酸緩衝液を各ウェルに加え3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ蛍光基質を1:100で希釈し、各ウェルに100μLを加え、室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、200μLのTween-20含有リン酸緩衝液を各ウェルに加え4回洗浄し、200μLのリン酸緩衝液を加えて2回洗浄した。発色溶液を調合し、各ウェルに100μLを加え、暗所で室温にて15分間程度反応し、はっきりとした赤点が現れたら、プレートを水道水で5分間軽く洗い流して発色反応を終了させ、室温で乾燥させた後、酵素結合免疫スポットプレートリーダーに入れて読み取り、陽性スポット数をカウントした。
【0056】
(2)細胞内因子染色の実験工程は次のとおりである。
マウスの脾臓細胞を1mLあたり2×10細胞に希釈し、各ウェルに150μLの細胞と150μLのペプチドライブラリーを加え、次に各ウェルに1μLのCD107a抗体を加えた。1時間インキュベーションした後、各ウェルに0.3μLのタンパク質輸送阻害剤を加え、インキュベーターに入れて6時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、細胞をフローチューブに回収し、800rpmで3分間遠心分離し、800μLの染色バッファーを各チューブに加えて洗浄し、800rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた。CD3、CD8、細胞活性/細胞毒性染色抗体混合液を調合し、各チューブに40μLの抗体混合液を加え、暗所で室温にて20分間染色した。染色終了後、800μLの染色バッファーを各チューブに加え2回洗浄し、800rpmで3分間遠心分離し、洗浄液を捨て、各チューブに150μLの固定液を加え、暗所で室温にて20分間固定した。各チューブに800μLの染色バッファーを加えて洗浄し、1200rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた。インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α染色抗体混合液を調合し、各チューブに40μLの抗体混合液を加え、暗所で室温にて20分間染色した。各チューブに800μLの染色バッファーを加えて洗浄し、1200 rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた後、細胞を250μLの染色バッファーで再懸濁し、フローサイトメータで検出し、統計結果を解析した。
【0057】
ワクチン免疫原性の検出結果を図2に示した。
酵素結合免疫スポット実験の結果、対照群のマウスではスポット形成細胞がなく、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答がないことを示した。アデノウイルス群のマウスでは、NP-2及びPB2-1の両方のエピトープに対するより多くのスポット形成細胞を有し、高レベルのT細胞免疫応答を有した。ポックスウイルス群のマウスでは、NP-2、NP-3、PB1-1、PB1-3、PA-3などのエピトープに対するスポット形成細胞を有し、より高いT細胞免疫応答を有した。
【0058】
細胞内因子インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、CD107aの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答レベルを検出した。その結果、対照群にはインターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、CD107aを発現するT細胞が見られなく、アデノウイルス群及びポックスウイルス群の両方でインターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、CD107aを発現するT細胞が見られたので、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を示した。
【0059】
この実験は、抗インフルエンザワクチン免疫原配列番号1及び配列番号2を異なるワクチンベクターで発現させることにより、有意なT細胞免疫応答を誘導できることが実証された。
【0060】
実施例4:抗インフルエンザ免疫原に基づく暴露保護効果の評価
実施例2に記載されるように、本発明の前記免疫原は、DNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチン、及びポックスウイルスベクターワクチンを構築するために使用された。実施例3に記載のように、この組換えインフルエンザワクチンを使用してマウスを免疫させ、免疫が終了してから4週間後に、この組換えインフルエンザワクチンの暴露保護効果を評価した。
【0061】
H1N1及びH7N9インフルエンザ暴露モデルを使用して、免疫原の保護効果を評価した。H1N1インフルエンザ暴露実験はバイオセーフティーレベル2の実験室で実施され、H7N9インフルエンザ暴露実験はバイオセーフティーレベル3の実験室で実施された。
【0062】
各マウスに50μLの10%抱水クロラールを腹腔内注射して麻酔をかけ、暴露のために各マウスに50μLのインフルエンザウイルスを点鼻し、H1N1インフルエンザウイルスの暴露用量はマウス1匹あたり500ウイルスの半数組織感染量(500 TCID50)であり、H7N9インフルエンザウイルスの暴露用量はマウス1匹あたり100ウイルスの半数組織感染量であった。暴露後5日目に、各群の5匹のマウスを犠牲にし、肺を採取しウイルス負荷を測定した。
【0063】
暴露保護実験の結果を図3に示した。
【0064】
対照群のマウスは、致死量のH1N1インフルエンザウイルスで暴露後に体重減少を続け、12日目に全て死亡した。アデノウイルス群のマウスは、体重が9日目に再度上昇し始め、全て14日間まで生存した。ポックスウイルス群のマウスは、体重減少が有意に遅く、体重が9日目に再度上昇し始め、全てのマウスは14日間まで生存した。
【0065】
非致死量のH7N9インフルエンザウイルスで暴露後、対照群のマウスは体重が約20%低下し、9日目に再度上昇した。アデノウイルス群とポックスウイルス群のマウスは体重が10%未満減少し、体重が7日目に急速に再度上昇した。
【0066】
この実験は、異なるワクチンベクターで抗インフルエンザワクチン免疫原配列番号1及び配列番号2を発現したことによって、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスに対する交差保護効果がともに生じ、すなわち、本発明の前記免疫原は、異なる亜型のインフルエンザウイルスに対する広域スペクトルな保護作用を有することを実証した。
【0067】
実施例5:異なる免疫法に基づくインフルエンザワクチン免疫原性の検出
実施例2に記載されるように、本発明の前記免疫原は、DNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチン、及びポックスウイルスベクターワクチンを構築するために使用された。本発明の前記免疫法を用いてマウスを免疫させ、免疫が終了してから4週間後に、実施例3に記載の方法に従って免疫原性の検出を実施した。
【0068】
6週齢のC57BL/6マウスを無作為に5つの群に分け、それぞれ対照群1、対照群2、対照群3、実験群1、及び実験群2と名付け、ここで、実験群1及び実験群2が本発明の前記免疫接種法を採用した。具体的な免疫手順を表2に示し、pSV1.0の接種用量は100μgであり、AdC68の接種用量は1011ウイルス粒子であり、pSV1.0-配列番号1及びpSV1.0-配列番号2の接種用量はそれぞれ50μgであり、AdC68-配列番号1及びAdC68-配列番号2の接種用量はそれぞれ5x1010ウイルス粒子であり、TTV及びTTV-配列番号1/2の接種用量は107プラーク形成単位であり、ワクチンは2週間毎に接種された。
【0069】
【表2】

【0070】
ワクチン免疫原性の検出結果を図4に示した。
酵素結合免疫スポット実験の結果、マウスの脾臓細胞のうち、対照群1のマウスではスポット形成細胞が見られず、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答が示されないことを示した。対照群2、3及び実験群1、2では、各モノペプチドに対するスポット形成細胞が見られ、高レベルのT細胞免疫応答を有することを示した。マウスの肺洗浄液において、対照群1、2及び3ではいずれもスポット形成細胞が見られず、肺にインフルエンザ特異的な免疫応答を確立できなく、実験群1及び2ではスポット形成細胞が多く見られ、すなわち、本発明の前記ワクチン接種方法を用いた実験群1及び2は非常に高いレベルのインフルエンザ特異的T細胞免疫応答を示した。
【0071】
細胞内因子インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、CD107aの染色により、マウスの脾臓細胞におけるインフルエンザ特異的免疫応答レベルを検出し、その結果、対照群1ではインターフェロンγ、及び腫瘍壊死因子αを発現するT細胞が見られなく、対照群2、3及び実験1、2群のいずれでもインターフェロンγ、腫瘍壊死因子αを発現するT細胞が見られたので、インフルエンザ特異的T細胞免疫応答を有することを示した。
【0072】
この実験は、異なる組換えベクターワクチンで順次免疫したことにより、気道免疫が全身性免疫と組み合わされ、本発明の前記ワクチン免疫法を用いた実験群1及び2は、全身性及び肺局所の両方で高レベルのインフルエンザ特異的免疫応答を有効に確立でき、対照群よりも優れることを実証した。
【0073】
実施例6:異なる免疫法に基づくインフルエンザワクチンの暴露保護効果の評価
実施例5に記載の方法によれば、本発明の前記免疫法を使用してマウスを免疫させ、マウスが最終針のワクチンで免疫されてから4週間後に、H1N1及びH7N9インフルエンザ暴露モデルを用いて免疫原の保護効果を評価した。H1N1インフルエンザ暴露実験はバイオセーフティーレベル2の実験室で実施され、H7N9インフルエンザ暴露実験はバイオセーフティーレベル3の実験室で実施された。
【0074】
各マウスに50μLの10%抱水クロラールを腹腔内注射して麻酔をかけ、暴露のために各マウスに50μLのインフルエンザウイルスを点鼻し、H1N1インフルエンザウイルスの暴露用量はマウス1匹あたり500ウイルスの半数組織感染量であり、H7N9インフルエンザウイルスの暴露用量はマウス1匹あたり500ウイルスの半数組織感染量であった。暴露後5日目に、各群の5匹のマウスを犠牲にし、肺を採取しウイルス負荷を測定した。
【0075】
暴露保護実験の結果を図5に示した。
【0076】
H1N1インフルエンザウイルスで暴露後に、対照群1のマウスは、13日目に全て死亡し、対照群2及び3は部分的な保護効果を示し、マウスの80%と60%がそれぞれ14日目まで生存した。本発明の前記ワクチン免疫法を用いた実験群1と実験群2のマウスは、体重が10日目に再度上昇し、全て14日間まで生存し、このうち、実験群2のウイルス負荷は顕著に降下し、優れた保護効果を示した。
【0077】
H7N9インフルエンザウイルスで暴露後、本発明の前記ワクチン免疫法を用いた実験群1及び実験群2のマウスは、体重が10日目に急速に再度上昇し、全てのマウスは14日目まで生存し、優れた保護効果を示した。他の群のマウスは顕著な保護作用を示さなかった。
【0078】
この実験は、異なる組換えベクターワクチンで順次免疫したことにより、気道免疫が全身性免疫と組み合わされ、本発明の前記ワクチン免疫法を用いた実験群1及び実験群2は、H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスに対する交差保護効果に優れ、その保護効果は筋肉注射のみによる接種経路を用いた対照群2及び対照群3よりも優れ、且つ組換えポックスウイルスベクターワクチンを最終針ワクチンとして免疫させた場合にワクチンの保護効果が最も優れることを実証した。
【0079】
実施例7:点鼻による免疫増強実験群のマウスのインフルエンザウイルス暴露後の保護効果の評価
実施例5に記載の方法によれば、本発明の前記免疫法を使用してマウスを免疫させ、マウスが最終針のワクチンで免疫されてから4週間後に、H1N1及びH7N9インフルエンザ暴露モデルを用いて免疫原の保護効果を評価し、具体的なインフルエンザ暴露法は実施例6に記載のどおりである。マウスは、ウイルス暴露の全過程で、末梢循環リンパ球数を効率的に減少させ、点鼻接種によって確立された肺にコロニー形成した組織インサイチュ記憶T細胞を保持する免疫抑制剤であるFTY720を2μg/mLで含有する飲用水を連続的に飲用し、致死量のH1N1及びH7N9インフルエンザウイルスで暴露した過程で持続的に使用され、点鼻接種態様が増強効果を有するかどうかを評価した。
【0080】
実験結果を図6に示した。
【0081】
H1N1及びH7N9インフルエンザウイルスで暴露後、実験群1+FTY720及び実験群2+FTY720はいずれも部分的な保護作用を示し、マウスは体重が11日目に再度上昇し始め、14日目まで生存し、ウイルス負荷を下方制御して、保護効果が対照群1+ FTY720よりも優れていた。
【0082】
この実験は、ワクチンの気道接種態様が、H1N1インフルエンザ及びH7N9インフルエンザに対するワクチン免疫法の保護作用を効果的に増強することができることを実証した。
本発明は、上述の実施形態に制限されず、添付の特許請求の範囲に開示された本発明の範囲及び精神から逸脱しない場合には、様々の修正、添加及び置換が可能であることを、当業者は理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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