(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】血流を評価する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023169935
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020545355の分割
【原出願日】2019-03-20
【審査請求日】2023-10-18
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520325027
【氏名又は名称】ピーユーセンサー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】イーケー,アンナ-クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】リンドグレーン,マルガレータ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフリッドソン,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ペルソン,トヴァ
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8133177(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228050(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0287603(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0014774(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0070139(KR,A)
【文献】H. Akbari et al.,”Designing and Constructing Blood Flow Monitoring System to Predict Pressure Ulcers on Heel”,Journal of Biomedical Physics Engineering,2014年06月08日,Vol. 4、No. 2,pp. 61-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚及び皮下組織の評価されるエリアにおける血流を評価するシステムの作動方法であって、前記患者の重量は、前記患者が配置される支持体に対して掛けられ、
患者の皮膚及び皮下組織の前記評価されるエリアを少なくとも部分的に囲み、且つ前記評価されるエリアにおける前記支持体から患者の体への圧力を実質的になくすように、前記支持体から前記患者に対する方向に膨張可能な膨張可能要素が、前記患者の皮膚及び皮下組織の前記評価されるエリアに
、少なくとも2つの異なる圧力を受けさせる、ステップと、
前記膨張可能要素が前記評価されるエリアに前記少なくとも2つの異なる圧力を受けさせている間、少なくとも1つの血流センサが、前記評価されるエリアに関連する血流データをフォトプレチスモグラフィによって取得するステップ(S8)と、
計算システムが、前記少なくとも2つの異なる圧力について取得された前記血流データの評価に基づいて、前記患者の褥瘡のリスクを評価するステップ(S9)と、を含む作動方法。
【請求項2】
前記膨張可能要素が、前記少なくとも2つの異なる圧力のうち第1の圧力に対応する第1の膨張状態と、前記少なくとも2つの異なる圧力のうち第2の圧力に対応する第2の膨張状態との間
の状態に膨張するステップ(S5)を更に含む、請求項1に記載の
作動方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なる圧力のうち前記第1の圧力は、実質的になく、且つ/又は、
前記少なくとも2つの異なる圧力のうち前記第2の圧力は、前記評価されるエリアに対して掛けられる前記患者の体の前記重量によって生じる、請求項2に記載の
作動方法。
【請求項4】
少なくとも1つの圧力センサが、圧力データを取得するステップ(S6)と、
前記計算システムが、前記取得された圧力データに基づいて前記それぞれの圧力を識別するステップ(S7)とを更に含み、前記褥瘡のリスクを評価するステップ(S9)は、前記識別された少なくとも2つの異なる圧力について取得された血流データに基づいて行われる、請求項1~3の何れか一項に記載の
作動方法。
【請求項5】
前記血流データは、
前記皮膚及び皮下組織をLEDからの光で照明すること、
フォトダイオードに反射された光の量を測定することによって取得される(S8)、請求項1~4の何れか一項に記載の
作動方法。
【請求項6】
前記膨張可能要素は、センサ板の形態のセンサ要素と一体のユニットを形成する、請求項1~5の何れか一項に記載の
作動方法。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項に記載の
作動方法を実行するソフトウェア。
【請求項8】
患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価するシステム(300)であって、
フォトプレチスモグラフィによって血流データを取得する少なくとも1つの血流センサを有するセンサ板(314)と、
制御可能な膨張状態を有する膨張可能要素(310)であって、前記センサ板(314)を少なくとも部分的に囲むフレームを形成するように構成され、
前記膨張可能要素の構成は、前記評価されるエリアが、前記患者が配置される支持体に対して掛けられる前記患者の重量と、前記評価されるエリアにおける前記支持体から前記患者の体への圧力を実質的になくすための、前記支持体から前記患者に対する方向における前記膨張可能要素の膨張とによって取得される少なくとも2つの異なる圧力を受けることを保証する、膨張可能要素(310)と、
前記血流データのデータ処理を実行するように構成された計算システム(305)とを含み、
前記少なくとも1つの血流センサは、前記評価されるエリアに前記少なくとも2つの異なる圧力を受けさせている間、前記血流データを取得するように構成され、
前記計算システム(305)は、前記少なくとも2つの異なる圧力についての前記血流データの評価に基づいて、前記患者の褥瘡のリスクを評価するように構成される、システム(300)。
【請求項9】
前記センサ板(314)に接続されたデータ取得システム(DAS)(306)を更に含み、前記データ取得システムは、データを調整し、且つ前記血流データを変換するように構成され、前記計算システムは、前記データ取得システムに接続される、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサ板は、可撓性であり、且つ前記皮膚の曲率に従うように構成される、請求項
8又は
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ板は、前記患者に取り付けるための接着剤を提供される、請求項
8~
10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサ板(314)は、少なくとも2つの異なる波長の複数のLEDダイオードと、少なくとも1つの光検出器とを更に含む、請求項
8~
11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光検出器は、複数のLEDからデータを受信し、且つ各LEDからの前記データを個々に測定するように構成される、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
圧力データを取得する少なくとも1つの圧力センサ(315)を更に含み、前記計算システム(305)は、前記取得された圧力データに基づいて前記それぞれの圧力を識別し、且つ前記識別された少なくとも2つの異なる圧力について取得された血流データに基づいて、患者の前記褥瘡のリスクを評価するように構成される、請求項
8~
13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記膨張可能要素は、前記センサ板と一体のユニットを形成する、請求項
8~
14の何れか一項に記載の
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、褥瘡が発生するリスクを評価する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
褥瘡とは、皮膚への長期にわたる圧力から生じる皮膚及び皮下組織への損傷である。褥瘡は、踵、足首、腰及び仙骨等の体の骨ばったエリアを覆う皮膚に生じることが大半である。
【0003】
褥瘡が発生するリスクが最も高い人々は、位置を変える能力が限られた医療状況にある人々又は時間の大半をベッド若しくは椅子で過ごす人々である。寝たきりの個人は、多くの場合、痛みを伴う褥瘡を発生させる。更に、褥瘡は、医療システムに高いコストを生じさせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本開示は、褥瘡が発生するリスクを評価する改善された方法に関する。
【0005】
これは、患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価する方法によって達成された。本方法は、評価されるエリアに少なくとも2つの異なる圧力状態を受けさせるステップであって、異なる圧力状態は、患者が配置される支持体に対して掛けられる患者の重量と、評価されるエリアを少なくとも部分的に囲み、且つ評価されるエリアを少なくとも部分的に囲むエリアにおける支持体から患者の体への圧力を実質的になくすように、支持体から患者に対する方向に膨張可能な膨張可能要素とによって取得される、ステップを含む。本方法は、評価されるエリアに少なくとも2つの異なる圧力状態を受けさせている間、評価されるエリアに関連する血流データを取得するステップ(S8)であって、血流データは、フォトプレチスモグラフィによって取得される、ステップ(S8)と、少なくとも2つの異なる圧力状態について取得された血流データの評価に基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するステップ(S9)とを更に含む。
【0006】
本方法は、使用が容易であり、患者の不快適さを低下させる。患者は、全測定中、同じ位置に横たわり得る。
【0007】
異なる実施形態では、第1の圧力状態では、評価されるエリアにおいて圧力が実質的に提供されない。それにより、基礎血流の測定が得られ、圧力下で測定される任意の血流を基礎血流に関連付けることができる。
【0008】
異なる実施形態では、第2の圧力状態では、体重は、評価されるエリアに対して掛けられる。したがって、患者が時間の大半をベッド又は椅子で過ごす場合、日常の状況を少なくとも多少なりとも反映した測定値が提供される。
【0009】
患者の日常状況を反映した血流を基礎血流と比較することにより、高い確実性でリスク評価が提供される。
【0010】
第1及び第2の圧力状態は、上記の順序で取得され、評価されるエリアへの前の負荷によって基礎血流の測定値が妨げられるリスクを低減し得る。
【0011】
異なる実施形態では、本方法は、少なくとも第1の圧力状態に対応する第1の膨張状態と、第2の圧力状態に対応する第2の膨張状態との間で膨張可能要素を制御するステップを含む。
【0012】
この自動化により、本方法を使用する人員の教育等の要件を下げることができる。
【0013】
異なる実施形態では、本方法は、圧力データを取得するステップ、取得された圧力データに基づいてそれぞれの圧力状態を識別するステップ(S7)を含む。次に、褥瘡のリスクを評価するステップは、識別された少なくとも2つの異なる圧力状態について取得された血流データに基づいて行われる。
【0014】
実際には、血流データは、皮膚及び皮下組織をLEDからの光で照明することと、フォトダイオードに反射された光の量を測定することとによって取得され得る。
【0015】
本方法は、制御可能な膨張状態を有する膨張可能要素を提供するステップと、フォトプレチスモグラフィを使用して血流データを取得するセンサ要素を提供するステップと、患者の重量が、膨張可能要素の膨張状態に応じて、評価されるエリアに圧力を提供するように、患者に関連して膨張可能要素を位置決めするステップと、センサ要素を使用して、評価されるエリアに関連する血流データを取得するステップと、膨張可能要素の少なくとも2つの異なる膨張状態について取得された血流データの評価に基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するステップとを更に含み得る。
【0016】
センサ要素が膨張可能要素と統合されない場合、本方法は、評価されるエリアの皮膚にセンサ要素を取り付けるステップを更に含む。
【0017】
本開示は、先行クレームの何れかに記載される方法を実行するソフトウェアに更に関する。
【0018】
本開示は、患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価するシステムに更に関する。本システムは、フォトプレチスモグラフィによって取得される少なくとも1つの血流センサを有するセンサ板と、制御可能な膨張状態を有する膨張可能要素(310)とを含む。膨張可能要素は、センサ板を少なくとも部分的に囲むフレームを形成するように構成される。膨張可能要素の構成は、評価されるエリアが、患者が配置される支持体に対して掛けられる患者の重量と、評価されるエリアを少なくとも部分的に囲むエリアにおける支持体から患者の体への圧力を実質的になくすための、支持体から患者に対する方向における膨張可能要素の膨張とによって取得される少なくとも2つの異なる圧力状態を受けることを保証する。本システムは、前記血流データのデータ処理を実行するように構成された計算システムを更に含む。少なくとも1つの血流センサは、評価されるエリアに少なくとも2つの異なる圧力状態を受けさせている間、血流データを取得するように構成される。計算システムは、少なくとも2つの異なる圧力状態についての血流データの評価に基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するように構成される。
【0019】
本システムは、センサ板に接続されたデータ取得システムDASを更に含み得、前記データ取得システムは、データを調整し、且つ前記血流データを変換するように構成され、計算システムは、データ取得システムに接続される。
【0020】
センサ板は、可撓性であり、且つ皮膚の曲率に従うように構成され得る。
【0021】
センサ板は、患者に取り付けるための接着剤を提供され得る。
【0022】
センサ板は、少なくとも2つの異なる波長の複数のLEDダイオードと、少なくとも1つの光検出器とを更に含み得る。
【0023】
少なくとも1つの光検出器は、複数のLEDからデータを受信し、且つ各LEDからのデータを個々に測定するように構成され得る。
【0024】
本システムは、圧力データを取得する少なくとも1つの圧力センサを更に含み得る。計算システムは、取得された圧力データに基づいてそれぞれの圧力状態を識別し、且つ識別された少なくとも2つの異なる圧力状態について取得された血流データに基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するように構成される。
【0025】
本開示は、患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価する制御要素に更に関する。本制御要素は、少なくとも1つのセンサから、フォトプレチスモグラフィによって取得される血流データを受信するように構成されたインターフェースを含む。血流センサデータは、患者が配置される支持体に対して掛けられる患者の重量と、評価されるエリアを少なくとも部分的に囲むエリアにおける支持体から患者の体への圧力を少なくとも実質的になくすための、支持体から患者に対する方向における膨張可能要素の膨張とによって取得される少なくとも2つの異なる圧力状態を受ける評価されるエリアから取得される。本制御要素は、前記血流データのデータ処理を実行して、少なくとも2つの異なる圧力状態についての血流データの評価に基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するように構成されたプロセッサを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
【
図1】血流を評価する方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】例えば、
図1による血流を評価する方法における、血流データを取得するステップを示すフローチャートである。
【
図3】圧力下の組織を評価するシステムの一例を示す概略図である。
【
図5a】組織を評価する際に使用される膨張可能要素の一例の上からの図を示す。
【
図5b】膨張状態の
図5aの膨張可能要素の側面図を示す。
【
図5c】非膨張状態の
図5aの膨張可能要素の側面図を示す。
【
図6】
図1に関連して開示したような血流を評価する方法の適用の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
図1及び
図6は、患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価する方法の一例を開示する。方法は、血流データに基づいて患者の褥瘡発生リスクを評価する。
【0028】
褥瘡とは、皮膚への長期にわたる圧力から生じる皮膚及び皮下組織への損傷である。褥瘡は、踵、足首、腰及び仙骨等の体の骨ばったエリアを覆う皮膚に生じることが大半である。
【0029】
皮膚エリアにおける血流を評価して、褥瘡発生リスクを評価する例示的な方法は、使用が容易であり、患者の不快適さを低下させる。
【0030】
方法は、評価される皮膚エリアが少なくとも2つの異なる圧力状態を受けるという概念に基づき、異なる圧力状態は、患者が配置される支持体に対して掛けられる患者の重量及び膨張可能要素によって取得される。膨張可能要素は、評価されるエリアを少なくとも部分的に囲む。膨張可能要素は、支持体の平面から患者に向かう方向において膨張可能であり、評価される皮膚エリアを少なくとも部分的に囲むエリアにおける支持体から患者の体への圧力を少なくとも実質的になくす。膨張可能要素の膨張状態は、患者の評価される皮膚エリアに付与される体圧を制御する。
【0031】
評価される皮膚エリアに付与される少なくとも2つの異なる圧力状態は、評価される皮膚エリアが実質的に圧力を受けない第1の圧力状態を含み得る。この第1の圧力状態では、評価される皮膚エリアは、患者が配置された支持体から膨張要素によって持ち上げられる。評価される皮膚エリアは、一例では、単に支持体から患者の体の評価される皮膚エリアへの圧力を実質的になくすのに十分に支持体から持ち上げられる。支持体の上方への評価される皮膚エリアの持ち上げが必要な程度を超える場合、膨張可能要素により、評価される皮膚エリア周囲の皮膚及び皮下組織の部分に必要を超える高圧を提供することが必要になる。これは、評価されるエリア内の血流が、評価されるエリアの周囲の皮膚及び皮下組織の部分が受けた圧力によって影響を受けるリスクに繋がる恐れがある。膨張可能要素は、評価される皮膚エリアにおける血流に可能な限り影響を与えないように設計されることが一般に望ましい。
【0032】
評価されるエリアに付与される少なくとも2つの異なる圧力状態は、体重が、評価されるエリアに圧力を提供する第2の圧力状態を含み得る。特徴として、この状態での膨張可能要素の厚さは、可能な限り薄い。
【0033】
評価されるエリアが少なくとも2つの異なる圧力状態を受けている間、評価されるエリアに関連する血流データが取得される。血流データは、フォトプレチスモグラフィによって取得される。血流データは、フォトプレチスモグラフィのみによって取得され得る。
【0034】
患者の褥瘡のリスクは、少なくとも2つの異なる圧力状態について取得された血流データの評価に基づいて評価される。
【0035】
したがって、方法によれば、少なくとも2つの異なる圧力が、評価される皮膚エリアに付与されている間、血流データが取得され、圧力は、患者の重量を使用することによって得られる。一例では、血流データが取得される圧力の1つは、患者の重量に対応する。血流デーが取得される別の圧力は、患者の体重からの圧力が実質的にないことに対応し得る。
【0036】
センサ板は、評価される皮膚エリアに配置される。センサ板の設計について、
図4に関連してより詳細に考察する。
【0037】
図示の例では、患者の皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価する方法は、血流データを取得するセンサ要素を提供するステップS1を含む。上述したように、センサ板は、フォトプレチスモグラフィに基づいて血流データを取得するように構成された血流センサ要素を含み得る。
【0038】
方法は、制御可能な膨張状態を有する膨張可能要素を提供するステップS2を更に含む。膨張可能要素は、センサ板のリムを形成し得る。したがって、センサ要素は、膨張可能要素によって部分的又は全体的に囲まれることが意図される。膨張可能要素は、センサ板に固定され、センサ板と一体のユニットを形成し得るか、又はセンサ板と物理的に別個のユニットであり得る。
【0039】
方法は、患者の重量が、膨張可能要素の膨張に応じて、評価されるエリアに圧力を提供するように、患者に関連して膨張可能要素を位置決めするステップS4を更に含む。
図6(上の図)では、膨張可能要素が患者の背中に位置決めされることが示されている。膨張可能要素は、一例では、患者の仙骨に位置決めされる。
【0040】
更に、センサ板は、膨張可能要素によって少なくとも部分的に囲まれて配置されてS3、患者の皮膚に当接する。このステップは、例えば、接着剤により、センサ板を皮膚に取り付けることを含み得る。取り付けは、例えば、両面テープによって提供され得る。測定を妨げないように、接着剤は、好ましくは、センサ板の血流センサ要素によって発せられる光線及び血流センサ要素に反射される光線を実質的に透過する。
【0041】
方法は、膨張可能要素の膨張を制御するステップS5を更に含む。特徴として、膨張可能要素は、異なる膨張状態に制御される。例えば、第1の膨張状態では、評価されるエリアに圧力が実質的に付与されない。第2の膨張状態は、評価されるエリアに体重が圧力を提供する非膨張又は収縮状態であり得る。
【0042】
図6の下の図では、患者は、仰向けに横たわっている。左下の図では、膨張可能要素が膨張している。患者の体重は、膨張可能要素に対して圧力を及ぼすが、皮膚にセンサ板が提供される評価されるエリアに圧力を及ぼさない。したがって、膨張した膨張可能要素は、膨張要素によって少なくとも部分的に囲まれたセンサ要素を患者の体重から保護する。したがって、皮膚にセンサ板が提供される評価されるエリアに圧力が実質的に付与されない。
【0043】
右下の図では、膨張可能要素は、膨張しておらず、患者の体重は、皮膚にセンサ板が提供される評価される皮膚エリアにおいて支持体に圧力を及ぼしている。
【0044】
方法は、少なくとも2つの異なる圧力状態で評価される皮膚エリアに関連する血流データを取得するステップS8を更に含む。血流データの取得は、膨張可能要素が各状態にあると判断された場合に提供され得る。それに従って、各膨張状態に達したと判断された場合、その膨張状態についての血流データの取得を開始し得る。血流データの取得は、予め設定された時間量中に実行され得る。代替的に、処置全体中に血流データを連続して取得し得る。
【0045】
上述したように、血流データは、フォトプレチスモグラフィ(PPG)によって取得される。詳細には、PPGは、臓器の光学的に取得される容積測定である。PPGは、皮膚及び皮下組織を照明し、光吸収度の変化を測定することによって取得され得る。
【0046】
各心臓周期の収縮期において、心臓は、血液を組織に送り込む。この圧力パルスは、皮膚に達するときまでに幾らか弱まるが、皮下組織中の動脈及び小動脈を膨張させるのに十分である。圧力パルスによって生じる容積変化は、皮膚及び皮下組織を発光ダイオード(LED)からの光で照明し、次にフォトダイオードに反射された光の量を測定することによって検出される。各収縮期サイクルは、ピークとして現れる。したがって、本開示では、上述したように、患者の重量によって生じる異なる外圧を皮膚が受けている間、これらの圧力パルスが比較される。
【0047】
方法は、評価される皮膚エリアに付与された体圧に関連する圧力データを取得するステップS6を更に含み得る。圧力データは、評価される皮膚エリアに付与される体圧を測定することによって提供され得る。圧力は、例えば、少なくとも1つの圧力センサによって測定され得る。少なくとも1つの圧力センサは、血流センサ要素も含むセンサ板に形成され得る。
【0048】
各圧力状態は、取得された圧力データに基づいて識別され得る。
【0049】
次に、各圧力状態の識別を使用して、血流データの取得を開始し得る。代替的に、次に各圧力状態の識別を使用して、分析する血流データを選択し得る。この例によれば、予め設定された圧力間隔に対応する血流データを分析のために選択し得る。
【0050】
方法は、膨張可能要素の少なくとも2つの異なる膨張状態について取得された血流データに基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するステップS9を更に含む。異なる膨張状態での血流を分析する。評価される皮膚エリアにおいて支持体に体重が押し当てられた状態の圧力中の血流が、圧力がない間の血流よりも多い場合、褥瘡のリスクが低い。他方、評価される皮膚エリアにおいて支持体に体重が押し当てられた状態の圧力中の血流が、圧力がない間の血流よりも少ない場合、褥瘡のリスクが高い。
【0051】
一般に、血流が、患者の重量によって付与された体圧の増大に伴って増える場合、褥瘡のリスクが低い。他方、血流が、患者の重量によって付与された体圧の増大に伴って下がる場合、褥瘡のリスクが高い。したがって、患者の褥瘡のリスクの評価は、患者の重量により、評価される皮膚エリアに付与される体圧の増大に伴って血流が上がるか又は下がるかを特定することを伴う。好ましくは、血流の増加又は低下は、基礎血流、すなわち負荷がない状態で測定された血流に関連する。
【0052】
上述したように、評価は、例えば、評価される皮膚エリアに圧力が提供されない第1の圧力状態及び体重が、評価されるエリアに掛けられる第2の圧力状態等、離散した所定の圧力状態において取得した取得血流データに基づいて行われ得るか、又は連続取得された血流データに基づいて行われ得る。最初の事例では、取得された圧力データは、離散した所定の圧力状態の識別S7に使用され得る。したがって、この識別は、血流測定の開始に使用され得る。後者の事例では、取得された圧力データは、対応する連続取得された血流データに連続して関連付けられ得る。取得された圧力データは、次に、褥瘡のリスクを評価する血流データの間隔を選択するために使用され得る。
【0053】
図2は、評価される皮膚エリアに関連する血流データを取得するステップS8の詳細の例を開示する。血流データは、
図1に関連して考察したように、フォトプレチスモグラフィによって取得される。血流データの取得は、LEDからの光で皮膚を照明することS81と、フォトダイオードに反射された光の量を測定することS82とを含み得る。LED及びフォトダイオードは、血流センサ要素を形成する。血流センサ要素は、センサ板に配置され得る。LEDは、1つの波長を有する光を発し得る。代替的に、LEDは、少なくとも2つの異なる波長を有する光を発し得る。後者の例によれば、第1の波長を発する第1の組のLED及び第2の波長を発する第2の組のLEDが皮膚を照明し得る。反射された光の量を測定する1つ又は複数のフォトダイオードは、それぞれ複数のLEDを起点とする光を測定し得る。個々の各LEDからの寄与が各フォトダイオードからのデータにおいて識別されるS83ように、各フォトダイオードからのデータを取得し得る。
【0054】
方法は、個々の各LEDに関連するデータを評価するステップS84を更に含み得る。この評価に基づいて、任意のLED又はフォトダイオードが故障している場合を識別し得る。評価は、血流データを、例えば上限及び/又は下限によって定義される予期される血流データと比較することによって実行され得る。
【0055】
検出された故障LED及び/又はフォトダイオードを報告し得るS85。
【0056】
評価は、LED及び/又はフォトダイオードが正確に位置決めされていないかどうか、例えば皮膚に当接していないかどうかを識別するように実行することもできる。
【0057】
検出された正確に位置決めされていないLED及び/又はフォトダイオードを報告し得るS85。
【0058】
方法は、褥瘡のリスク評価での使用に適したLEDデータを識別するステップS86を更に含み得る。識別は、他のLEDから取得された血流データからずれた血流データを生じさせるLEDを識別することを含み得る。ずれたデータを生じさせるLEDは、例えば、照明された皮膚部分との接触を欠いている可能性がある。ずれたデータを生じさせるLEDは、次に、褥瘡のリスクの評価での使用から削除され得る。
【0059】
図3は、皮膚及び皮下組織のエリアにおける血流を評価する一例のシステム300を開示する。システム300は、センサ板302を含む測定システム314を含む。センサ板は、血流データを取得するように構成された少なくとも1つの血流センサ要素を提供される。血流センサ要素は、光を発するLEDと、発せられた光並びに皮膚及び皮下組織における反射から戻った光を受け取るフォトダイオードとによって形成され得る。これについて、
図2及び
図1に関連しても考察した。
【0060】
更に、システム300は、少なくとも1つの圧力センサ315を更に含み得る。圧力センサ315は、図示の例では、センサ板302に搭載されている。その場合、圧力センサは、センサ板に及ぼされた圧力を検知するように構成され得る。代替的に、圧力センサ315は、センサ板及び/又は血流センサ要素から物理的に分離された別個の構成要素である。
【0061】
制御可能な膨張状態を有する膨張要素310は、センサ板302を少なくとも部分的に区切るフレームを形成する。
【0062】
膨張要素は、多くの方法で設計され得る。膨張要素は、例えば、空気等の気体又は液体によって膨張可能であり得る。膨張可能要素は、機械的解決策によって膨張可能であり得る。膨張要素は、磁気的解決策によって膨張可能であり得る。膨張可能要素は、化学的解決策によって膨張可能であり得る。膨張可能要素は、膨張可能性を有するインテリジェント織物を含み得る。
【0063】
膨張可能要素は、何度も繰り返し膨張及び退避し得る。代替的に、膨張可能要素は、使い捨てである。使い捨て膨張可能要素は、特徴として、1回のみ膨張可能/退避可能である。例えば、膨張可能要素は、解放された場合、膨張可能要素を膨張させるように構成された化合物を含むアンプルを含み得る。
【0064】
図示の例では、膨張可能要素は、膨張式要素である。膨張式要素は、膨張式チャンバを含み、空気又は別の気体等の量は、制御可能である。したがって、図示の例では、システムは、圧力調整器312及び弁313を介して膨張式要素と連通するコンプレッサ311を含む。
【0065】
異なる例では、膨張式要素は、膨張式チャンバを含み、膨張式チャンバ内の空気の量は、制御可能な膨張を提供するように制御される。膨張式要素は、膨張式チャンバ内の空気量を制御することにより、少なくとも第1の膨張状態及び第2の膨張状態に制御され得る。
【0066】
評価される皮膚エリアにおける患者の体重によって付与された体圧の測定への代替又は追加として、少なくとも1つの圧力センサは、膨張要素の内部圧力及び/又は圧力線316(開示せず)にわたって付与された圧力を検知するように構成され得る。これらの圧力は、評価される皮膚エリアにおいて患者の体重によって付与された体圧を特定するために使用され得る。
【0067】
計算システム305は、血流データのデータ処理を実行するように構成される。計算システム305は、膨張性チャンバの少なくとも2つの異なる膨張状態からの処理された前記血流データに基づいて、患者の褥瘡のリスクを評価するように構成される。この例について、
図1及び
図2に関連して考察した。詳細には、体のパルスの強度は、少なくとも2つの異なる膨張状態で血流データによって測定される。一例では、膨張状態は、圧力が実質的に付与されない第1の状態及び全体重が、評価される皮膚エリアにおいて支持体に掛けられる第2の状態を含む。測定された圧力は、各状態に達したとの識別に使用され得る。
【0068】
計算システムは、膨張状態を制御するように構成され得る。代替的に、膨張状態は、手動で制御される。図示の例では、膨張状態は、圧力調整器の制御によって制御され、圧力調整器は、手動で制御可能及び/又は計算システム305によって制御可能である。
【0069】
システム300は、図示の例では、センサ板314及び計算システム305に接続されたデータ取得システムDAS 306を更に含む。データ取得システムは、データ調整及び前記血流データの変換を行うように構成される。
【0070】
システム300は、計算システム305が使用される測定データを記憶するメモリ304を含み得る。メモリ304は、行われた評価を記憶するように更に構成され得る。
【0071】
システム300は、ユーザインターフェース303を更に含む。ユーザインターフェースは、褥瘡のリスクの評価に関連する情報を表示するように構成され得る。例えば、評価の結果は、ユーザインターフェースによって提示され得る。結果は、イエス又はノーであり得、すなわち褥瘡が生じるリスクがあるかどうかである。代替的に、リスクは、パーセントとして提示され得る。
【0072】
ユーザインターフェースは、評価の性能に関連する情報を提示するように更に構成され得る。例えば、個々のLED又はフォトダイオードに欠陥があると判断される場合、これは、ユーザインターフェースによって提示され得る。光検出器によって取得されたデータの評価により、センサ板の異なる部分での測定から得られた結果が異なることが明らかになる場合、警告を提示し得る。例えば、これは、センサ板の少なくとも幾つかの部分が皮膚に当接していないことを示し得る。次に、警告は、測定を再び行うべきであることを示し得る。
【0073】
図4にセンサ板の一例を示す。センサ板は、可撓性であり得、且つ皮膚の曲率に従うように構成され得る。センサ板は、皮膚に優しい材料で作られ得る。センサ板は、例えば、ゴム又はゴムベースの材料で作られ得る。
【0074】
図示の例では、センサ板は、体の曲率に従うことができるように、複数の共線に沿って折り畳み可能である。しかしながら、センサ板が体の曲率に従うことができるようにするセンサ板の多くの他の設計も考慮し得る。測定を行っている間、センサ板が皮膚に当たっていることを保証することができる場合、測定は、改善され得る。
【0075】
センサ板は、皮膚に面することが意図されるその片面において、患者の皮膚に取り付けるための接着剤を提供され得る。
【0076】
センサ板は、少なくとも2つの異なる波長で光を発するように構成された複数のLEDを含む血流センサ要素を含む。一例では、LEDは、赤色光及び緑色光を発するように構成され得る。血液センサ要素は、フォトダイオード等の少なくとも1つの光検出器を更に含む。図示の例では、血流センサ要素は、LEDから発せられた光並びに皮膚及び皮下組織から反射された光を受け取るように構成された複数のフォトダイオードを更に含む。図示の例では、血流センサ要素は、少なくとも2つの異なる波長であり得る光を発する複数のLEDを含む。更に、図示の例では、血流センサ要素は、6つのフォトダイオードを含む。
【0077】
少なくとも1つの光検出器は、それぞれ複数のLEDからデータを受信し、且つ各LEDからのデータを個々に測定するように構成され得る。
【0078】
センサ板は、評価される皮膚エリアにおける患者の体重によって生じた圧力を測定するように構成された少なくとも1つの圧力センサ(図示せず)を更に含み得る。
【0079】
図5a~
図5cは、制御可能な膨張状態を有する、本開示による膨張要素の一例を示す。膨張要素は、少なくとも2つの異なる膨張状態を有する。
【0080】
図3に関連して考察したように、膨張要素は、多くの異なる方法で設計され得る。膨張要素は、例えば、空気等の気体又は液体によって膨張可能であり得る。膨張可能要素は、機械的解決策によって膨張可能であり得る。膨張要素は、磁性解決策によって膨張可能であり得る。膨張可能要素は、化学的に膨張可能であり得る。膨張可能要素は、膨張可能性を有するインテリジェント織物を含み得る。
【0081】
膨張可能要素は、何度も繰り返し膨張及び退避し得る。代替的に、膨張可能要素は、使い捨てである。使い捨て膨張可能要素は、特徴として、1回のみ膨張可能/退避可能である。例えば、使い捨て膨張可能要素は、解放された場合、膨張可能要素を膨張させるように構成された化合物を含むアンプルを含み得る。
【0082】
膨張可能要素は、センサ板を少なくとも部分的に囲むように設計されたフレームを形成する。
【0083】
膨張要素は、センサ板と一体形成され得るか、又はセンサ板と物理的に別個であり得る。
【0084】
膨張要素は、患者が静止することが意図される支持体と一体形成され得るか、又は支持体から物理的に分離され得る。支持体は、ベッドであり得る。
【0085】
図5aにおける上から見た図では、膨張可能要素は、センサ板を少なくとも部分的に囲むように設計されたフレームを形成することが開示される。したがって、膨張式要素は、エリアを囲むリムを含む。
【0086】
図5bの側面図では、膨張可能要素は、膨張した場合、センサ板が膨張可能要素によって少なくとも部分的に囲まれるエリアに配置されたとき、センサ板(図では破線)の上に延びるように設計されることが開示される。それにより、リムは、膨張可能要素に押し当てられた人体からの圧力から中央の中空エリアを保護する。
【0087】
図5cの側面図では、膨張可能要素は、膨張していない場合、可能な限り薄くなるように設計されることが開示される。この状態での膨張可能要素は、基本的に、膨張可能要素が配置された支持体と位置合わせされることが望ましいことがある。更に、膨張可能要素の上面は、この状態では、膨張可能要素によって少なくとも部分的に囲まれるエリアに配置された場合のセンサ板(図では破線)の表面と同じ平面にあり得る。それにより、膨張可能要素は、膨張可能要素によって少なくとも部分的に囲まれたエリアを人体の重みから実質的に保護しない。