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特許7663675フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 544
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023508888
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009172
(87)【国際公開番号】W WO2022202193
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021052260
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】神垣 耕世
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153998(JP,A)
【文献】特開2015-159226(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082929(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続する縁部絶縁領域を有する誘電体フィルムが複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、
前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように向きが互いに反転した、第1状態の誘電体フィルムと第2状態の誘電体フィルムとが積層されたフィルム積層体と、
前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに位置し、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、を含み、
前記第1金属電極に電気的に接続される前記金属層は、前記一面の前記第1の方向の第2の縁部に有する、前記第2の方向に延びる共通金属層と、
前記第1の方向に延びて前記共通金属層と電気的に接続される複数の帯状金属層と、
前記共通金属層と前記帯状金属層とを接続する接続金属層と、を有し、
前記接続金属層は、前記共通金属層と直接連なり、前記共通金属層から前記第1の方向に延出されている第1接続配線と、
前記第1接続配線と直接連なり、前記第1接続配線から前記第2の方向に延出されている第2接続配線と、
前記第2接続配線と直接連なり、前記第2接続配線から前記第1の方向に延出されて前記帯状金属層と直接連なる第3接続配線と、を備え、
前記第2接続配線の前記第3接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、
前記第1状態の誘電体フィルムの接続金属層と前記第2状態の誘電体フィルムの接続金属層とが、前記一面の中心を対称点とする点対称に配設され
前記第2接続配線の前記第1接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記帯状金属層の前記第1側辺と反対の第2側辺よりも内側に位置する、
フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第2接続配線は、蛇行形状を有する、請求項記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備え、
前記フィルムコンデンサが、請求項1または2記載のフィルムコンデンサを含む、連結型コンデンサ。
【請求項4】
スイッチング素子により構成されたブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備え、
前記容量部が、請求項1~のいずれか1つに記載のフィルムコンデンサを含む、インバータ。
【請求項5】
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、
前記インバータが、請求項に記載のインバータである、電動車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5984097号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続する縁部絶縁領域を有する誘電体フィルムが複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように向きが互いに反転した、第1状態の誘電体フィルムと第2状態の誘電体フィルムとが積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに位置し、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、を含む。前記第1金属電極に電気的に接続される前記金属層は、前記一面の前記第1の方向の第2の縁部に有する、前記第2の方向に延びる共通金属層と、前記第1の方向に延びて前記共通金属層と電気的に接続される複数の帯状金属層と、前記共通金属層と前記帯状金属層とを接続する接続金属層と、を有し、前記接続金属層は、前記共通金属層と直接連なり、前記共通金属層から前記第1の方向に延出されている第1接続配線と、前記第1接続配線と直接連なり、前記第1接続配線から前記第2の方向に延出されている第2接続配線と、前記第2接続配線と直接連なり、前記第2接続配線から前記第1の方向に延出されて前記帯状金属層と直接連なる第3接続配線と、を備える。前記第2接続配線の前記第3接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第1状態の誘電体フィルムの接続金属層と前記第2状態の誘電体フィルムの接続金属層とが、前記一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。
【0005】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に第1金属層が配設され、前記第1金属層が、前記一面の第1の方向の第1の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続して位置している第1共通金属層と前記一面の第1の方向の第2の縁部に、前記第2の方向に沿って連続して位置している第2共通金属層とを有する第1誘電体フィルムと、一面に第2金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部それぞれに、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続する縁部絶縁領域を有している第2誘電体フィルムと、が積層された直方体状のフィルム積層体であって、平面視で前記第1金属層の一部と前記第2金属層の一部とが重なるように積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに位置し、前記第1金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、を含む。前記第1金属層は、前記第1の方向に延びて前記第1共通金属層と電気的に接続される複数の第1帯状金属層と、前記第1の方向に延びて前記第2共通金属層と電気的に接続される複数の第2帯状金属層と、前記第1共通金属層と前記第1帯状金属層とを接続する第1接続金属層と、前記第2共通金属層と前記第2帯状金属層とを接続する第2接続金属層と、を有する。前記第2金属層は、前記縁部絶縁領域によって前記第1金属電極および前記第2金属電極と電気的に絶縁された面状金属層である。前記第1接続金属層は、前記第1共通金属層と直接連なり、前記第1共通金属層から前記第1の方向に延出されている第1接続配線と、前記第1接続配線と直接連なり、前記第1接続配線から前記第2の方向に延出されている第2接続配線と、前記第2接続配線と直接連なり、前記第2接続配線から前記第1の方向に延出されて前記第1帯状金属層と直接連なる第3接続配線と、を備える。前記第2接続金属層は、前記第2共通金属層と直接連なり、前記第2共通金属層から前記第1の方向に延出されている第4接続配線と、前記第4接続配線と直接連なり、前記第4接続配線から前記第2の方向に延出されている第5接続配線と、前記第5接続配線と直接連なり、前記第5接続配線から前記第1の方向に延出されて前記第2帯状金属層と直接連なる第6接続配線と、を備える。前記第2接続配線の前記第3接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記第1帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第5接続配線の前記第6接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記第2帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第1接続金属層と前記第2接続金属層とが、前記第1誘電体フィルムの前記一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。
【0006】
本開示の連結型コンデンサは、上記のフィルムコンデンサを含む複数のフィルムコンデンサが、バスバーにより複数個接続されている。
【0007】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続され、上記のフィルムコンデンサを含む容量部とを備える。
【0008】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記のインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図1B】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
図1C】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、フィルムコンデンサを上方から見た平面図である。
図2】誘電体フィルムの接続金属層近傍の拡大平面図である。
図3】第1状態の誘電体フィルムと第2状態のフィルムの積層状態を示す分解拡大斜視図である。
図4】誘電体フィルムの積層状態(切断前)を示す分解斜視図である。
図5】切断後のフィルム積層体の構成を示す外観斜視図である。
図6】金属電極の溶射後の構成を示す外観斜視図である。
図7A】第2実施形態における誘電体フィルムの接続金属層近傍の拡大平面図である。
図7B】第2実施形態における誘電体フィルムの接続金属層近傍の拡大平面図である。
図8】第3実施形態における誘電体フィルムの接続金属層近傍の拡大平面図である。
図9】第4実施形態における誘電体フィルムの接続金属層近傍の拡大平面図である。
図10A】第5実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図10B】第5実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図10C】第5実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
図11】第1接続金属層および第2接続金属層近傍の拡大平面図である。
図12A】第6実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図12B】第6実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図12C】第6実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
図13】フィルムコンデンサの変形例を示す外観斜視図である。
図14】連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。
図15】インバータの構成を説明するための概略構成図である。
図16】電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0011】
本開示の基礎となる構成のフィルムコンデンサは、たとえばポリプロピレン樹脂を含む誘電体フィルムの表面に電極となる金属膜を蒸着した金属化フィルムを、巻回あるいは一方向に複数枚積み重ねて積層して構成されている。
【0012】
このうち、積層型のフィルムコンデンサは、金属化フィルムを積層した積層体を、所要の大きさに切断したときに、金属膜も切断するため、その切断面において、金属膜が露出する。フィルムコンデンサの使用時に、露出した金属膜に電圧が印加されると、切断面において放電が生じてしまう。
【0013】
特許文献1には、フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムにおいて、絶縁マージンと呼ばれる、金属膜を有していない溝状または一定幅の帯状のフィルム表面の露出部(間隙ストリップ)の一部に、各絶縁マージンが伸びる平行方向に対して斜行する屈曲部位を有することにより、金属化フィルムを積層した積層体の切断面において、露出した金属膜を絶縁する構成が提案されている。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の積層型フィルムコンデンサは、切断面における放電は低減されるかもしれないが、フィルム積層体における切断面近傍の静電容量の損失が大きいという問題があった。
【0015】
本開示の目的は、端面における放電を低減するとともに、静電容量の損失が少ない、積層型のフィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌を提供することである。
【0016】
以下、本開示の第1実施形態のフィルムコンデンサについて、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のフィルムコンデンサ10は、図1Aに示すような、ベースフィルムの一面に、金属層3を有する誘電体フィルム1または誘電体フィルム2を、複数枚交互に積層して構成される。
【0017】
本実施形態では、金属層3は、いわゆる櫛歯形状の金属層であって、複数の帯状金属層3aと、複数の接続金属層3bと、1つの共通金属層3cと、を含み、帯状金属層3aは、それぞれ接続金属層3bを介して共通金属層3cに電気的に接続されている。
【0018】
各帯状金属層3aは、積層後、コンデンサの内部電極となるものである。誘電体フィルム1,2は、積層されたときの向きが反転しているだけで、同じ構成であるが、積層後の向きが分かるよう、図1A図1Cに示すように、各帯状金属層3aに、端から順に1A~1Lまたは2A~2Lの符号を付している。互いに向きが反転している誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、それぞれ第1状態の誘電体フィルムと第2状態の誘電体フィルムである。
【0019】
また、各図において、互いに平行に位置する各帯状金属層3aが延びる方向を、第1の方向と呼ぶとともに、平行な各帯状金属層3aの並び方向を第2の方向と呼ぶ。フィルムの積層方向は、第1の方向および第2の方向に直交する、第3の方向(図示z方向)である。なお、第1の方向をx方向、第2の方向をy方向、第3の方向をz方向とそれぞれ呼ぶ場合がある。積層後のフィルム積層体4の詳細は後述する。
【0020】
誘電体フィルム1,2の表面の各帯状金属層3aは、ベースフィルムに対する金属蒸着により構成される。各帯状金属層3aは、第1の方向に沿って直線状に延びている。y方向に隣接する帯状金属層3aの間には、フィルム面(以下、絶縁マージンS)が露出しており、これにより、各帯状金属層3aは、それぞれ電気的に絶縁された状態となっている。そして、各絶縁マージンSは、第1の方向(x方向)の第1の端部側で、第2の方向(y方向)に連続する縁部絶縁領域Tに繋がっている。各絶縁マージンSの間隔(ピッチP)は、各帯状金属層3aのy方向の幅P1と各絶縁マージンSのy方向の幅P2とを合わせた値(P=P1+P2)となっている。
【0021】
共通金属層3cは、誘電体フィルム1,2の縁部絶縁領域Tと反対側、すなわち第1の方向の第2の縁部において、第2の方向に延びている。各帯状金属層3aは、絶縁マージンSによって、それぞれ電気的に絶縁されているが、1つの共通金属層3cに接続することで、金属層3全体としては、電気的に接続されている。
【0022】
接続金属層3bは、帯状金属層3aと共通金属層3cとを接続し、帯状金属層3aごとのヒューズとして機能するものである。例えば、ベースフィルムが絶縁破壊されるなどして帯状金属層3aが他の帯状金属層3aと短絡し、規定以上の電流が流れたような場合に、接続金属層3bが焼き切れることで断線させて、フィルムコンデンサ10全体の機能が停止しないようにしている。
【0023】
図2の接続金属層近傍の拡大平面図に示すように、接続金属層3bは、第1接続配線3b1と、第2接続配線3b2と、第3接続配線3b3と、を備える。第1接続配線3b1は、共通金属層3cと直接連なり、共通金属層3cから第1の方向に延出されている。第2接続配線3b2は、第1接続配線3b1と直接連なり、第1接続配線3b1から第2の方向に延出されている。第3接続配線3b3は、第2接続配線3b2と直接連なり、第2接続配線3b2から第1の方向に延出されて帯状金属層3aと直接連なっている。本実施形態では、第1接続配線3b1と、第2接続配線3b2と、第3接続配線3b3とは、いずれも直線形状を有している。ここで、「第1の方向に延出され」とは、延出方向の第1の方向成分が、第2の方向成分よりも大きい場合をいう。同様に、「第2の方向に延出され」とは、延出方向の第2の方向成分が、第1の方向成分よりも大きい場合をいう。このような構成の接続金属層3bは、帯状金属層3aに比べて電気抵抗値が高く、ヒューズとしての機能を有している。
【0024】
本実施形態の接続金属層3bは、第1接続配線3b1と第3接続配線3b3とが、第1の方向に平行に延出されており、第2接続配線3b2が、第2の方向に平行に延出されている。第2接続配線3b2の第3接続配線3b3に連なる端部が、第2の方向において帯状金属層3aの第1側辺3a1よりも外側に位置している。第3接続配線3b3は、例えば、第2接続配線3b2から第1の方向に延出され、帯状金属層3aの第1側辺3a1に直接連なっている。また、第2接続配線3b2の第1接続配線3b1に連なる端部は、第2の方向において帯状金属層3aの第2側辺3a2と同じか、第2側辺3a2よりも内側に位置していてもよい。本実施形態では、第2接続配線3b2の一方の端部が第1側辺3a1よりも外側に位置し、第2接続配線3b2の他方の端部が、第2側辺3a2と同じ位置にあり、第2接続配線3b2は、第2の方向の長さLが、帯状金属層3aの幅Wより大きい。第2の方向の長さLは、第2接続配線3b2の第2の方向への投影長さである。
【0025】
図3の分解斜視図に示すように、第1状態にある誘電体フィルム1の接続金属層3bと、第1状態と向きが反転した第2状態にある誘電体フィルム2の接続金属層3bとは、ベースフィルムの一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。すなわち、フィルム積層体4をz方向に見たとき、誘電体フィルム1の接続金属層3bを、対象点を回転中心として180°回転すると、誘電体フィルム2の接続金属層3bと同じ形状となる。
【0026】
フィルムコンデンサ10の製造時に、フィルム積層体4は、例えば、長尺の積層体を切断して得られる。切断線は、第1の方向(x方向)に平行となるが、帯状金属層3aの幅方向において、常に同じ位置になるとは限らない。切断された帯状金属層3aは、フィルムコンデンサ10の第2の方向(y方向)の端面において露出するので、帯状金属層3aが、切断後にも共通金属層3cと導通された状態であれば、使用時に帯状金属層3aに電圧が印加されて端面で放電してしまう。本実施形態のような接続金属層3bによって、帯状金属層3aと共通金属層3cとが接続されている場合、切断線がいずれの位置であっても、誘電体フィルム1の第2接続配線3b2か誘電体フィルム2の第2接続配線3b2の少なくともいずれかが、切断線と交差するので、いずれかまたは両方の第2接続配線3b2が切断され、帯状金属層3aと共通金属層3cとが電気的に絶縁される。これにより、フィルムコンデンサ10の端面における放電を低減することができる。さらに、共通金属層3cから電気的に絶縁される帯状金属層3aが、切断された帯状金属層3aのみであるので、静電容量の損失が少ないフィルムコンデンサ10とすることができる。
【0027】
誘電体フィルム1,2のベースフィルムの構成材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー等の有機樹脂材料があげられる。
【0028】
誘電体フィルム1,2の積層は、図1Bに示すように、誘電体フィルム1とそれに図示上下方向に隣接する誘電体フィルム2の、x方向の向きを交互に180°反転させながら、すなわち、誘電体フィルム1,2は、各誘電体フィルム1,2の一方の端部の縁部絶縁領域Tの位置が、x方向において交互に逆になるように積み重ねられ、フィルム積層体4とされる。同様に、各誘電体フィルム1,2の他方の端部の共通金属層3cの位置が、x方向において交互に逆になるように積み重ねられている。
【0029】
フィルム積層体4のx方向の両端面には、金属溶射により金属電極(以下、メタリコン)が位置している。なお、x方向の両端部に位置するメタリコンの一方をメタリコン5A(第1金属電極)、他方をメタリコン5B(第2金属電極)と呼ぶが、これらは配設位置が異なるだけであり、構成に差異はない。例えば、メタリコン5Aは、誘電体フィルム1の共通金属層3cと電気的に接続しており、共通金属層3cを介して各帯状金属層3aとも電気的に接続している。また、縁部絶縁領域Tによって誘電体フィルム1の金属層3とメタリコン5Bとは、電気的に絶縁されている。一方、メタリコン5Bは、誘電体フィルム2の共通金属層3cと電気的に接続しており、共通金属層3cを介して各帯状金属層3aとも電気的に接続している。また、縁部絶縁領域Tによって誘電体フィルム2の金属層3とメタリコン5Aとは、電気的に絶縁されている。
【0030】
図4図6は、フィルムコンデンサを製造する過程について、模式的に説明した図である。図4図6においても、図1A図1Cと同様、平行に位置する各帯状金属層3aの延びる方向を第1の方向(図示x方向)、共通金属層3cが延びる方向(x方向に直交するy方向)を第2の方向、第1の方向および第2の方向に直交する、フィルムの積層方向を第3の方向(z方向)としている。
【0031】
積層型のフィルムコンデンサ10の作製においては、まず、図4に示すように、フィルムの表面に、x方向に沿って連続する複数の帯状金属層3aとy方向に延びる共通金属層3cとを有する誘電体フィルム1および誘電体フィルム2を、複数枚、x方向の向きを交互に逆にしながら、すなわち、縁部絶縁領域Tの平面視位置が1枚おきに重なるよう、x方向の向きを1枚ごとに180°反転させながら積み重ねる。
【0032】
なお、先にも述べたように、本実施形態では、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、x方向の向きを反転させただけであり、構成は同じであるが、これに限らず、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2の構成が異なっていてもよい。例えば、誘電体フィルム1および誘電体フィルム2を、縁部絶縁領域Tの平面視位置が1枚おきに重なるように積層した状態で、誘電体フィルム1が、帯状金属層3aの+y側の側辺に第3接続配線3b3が接続される構成であり、誘電体フィルム2が、帯状金属層3aの+y側の側辺に第3接続配線3b3が接続される構成であってもよい。すなわち、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、接続金属層3bが、x方向を基準に線対称となる点で異なっており、その他の構成は同じであってよい。また、積層する方法としては、長尺の誘電体フィルム1,2を重ねて、円筒または断面多角状の筒に巻き付ける等、従来公知の方法により行うことができる。図4における仮想線(二点鎖線)は、筒等に巻回後の切断線を示す。
【0033】
図5は、所定長さに切断後のフィルム積層体4を、切断面(y方向端面)方向から見た図である。この図5に示すように、上下に隣接する誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、x方向に位置を若干ずらせた状態(オフセットした状態)で積層されているため、フィルム積層体4のx方向の両端面には、共通金属層3cが露出している。図5に示すように、フィルム積層体4の切断面に露出した帯状金属層3aは、第2接続配線3b2が切断されたことで、共通金属層3cと接続しておらず、共通金属層3cから電気的に絶縁されている。
【0034】
なお、実施形態のフィルム積層体4の上面には、金属層3を有していないベースフィルム等、フィルム積層体4の保護層となる絶縁層12が積層されていてもよい。絶縁層12は省略してもよい。
【0035】
つぎに、図6に示すように、先に述べた共通金属層3cが露出する、フィルム積層体4のx方向の両端面に、それぞれ、金属溶射により第1金属電極および第2金属電極(メタリコン5A,5B)を構成する。これにより、誘電体フィルム1,2上の各帯状金属層3aは、メタリコン5A,5Bのいずれかに、共通金属層3cを介して電気的に接続され、フィルムコンデンサ10の内部電極として機能するようになる。
【0036】
以下では、他の実施形態のフィルムコンデンサについて説明する。他の実施形態は、接続金属層3bの構成が、前述の第1実施形態と異なるだけであり、他の構成は共通している。図7Aおよび図7Bは、第2実施形態の接続金属層3bを示す。図7Aおよび図7Bに示すように、第2実施形態では、第2接続配線3b2の第3接続配線3b3に連なる端部が、第2の方向において帯状金属層3aの第1側辺3a1よりも外側に位置している。
【0037】
第1実施形態の接続金属層3bは、帯状金属層3aに比べて電気抵抗値が高く、ヒューズとしての機能を有している。接続金属層3bが長くなるほど、帯状金属層3aの短絡時に接続金属層3bが断線するためのエネルギーが高くなり、より大きな電流が流れなければ断線しなくなる。本実施形態では、第1接続配線3b1の電気抵抗値が局所的に高くなるので、帯状金属層3aの短絡時に、第1接続配線3b1で断線しやすく、接続金属層3bのヒューズ機能が向上する。また、本実施形態では、第2接続配線3b2の幅が、第3接続配線3b3の幅よりも大きく、第3接続配線3b3で断線しやすくなり、接続金属層3bのヒューズ機能が向上する。図7Aに示す例では、第2接続配線3b2の幅が一定である。図7Bに示す例では、第2接続配線3b2の幅が、両端部分より中央部分が大きい。すなわち、第1接続配線3b1に連なる部分と第3接続配線3b3に連なる部分とは、それぞれ第1接続配線3b1および第3接続配線3b3の幅と同じ幅であり、中央部分において、幅が大きくなっている。
【0038】
第2実施形態の第2接続配線3b2は、第1実施形態の第2接続配線3b2より配線幅が大きくなっている。これにより、第2実施形態のフィルムコンデンサ10は、第1実施形態に比べて等価直列抵抗(ESR)を低くすることができる。ESRを低くすることで、フィルムコンデンサ10のリップル電流の許容値を高くすることができる。
【0039】
図8は、第3実施形態の接続金属層3bを示す。図8に示すように、第3実施形態では、第2接続配線3b2が、蛇行形状(ミアンダ形状)を有している。第1実施形態では、第2接続配線3b2が、直線形状であるのに対し、第3実施形態では、蛇行形状である。第3実施形態の接続金属層3bは、第2接続配線3b2を蛇行形状とすることで、第2接続配線3b2の配線長を確保している。誘電体フィルム1,2において、絶縁破壊が生じ、帯状金属層3aに過剰な電流が流れた場合でも、第2接続配線3b2において断線しにくくなり、接続金属層3bのヒューズとしての作動を適度に抑えることができる。これにより、ヒューズが過剰に作動して、帯状金属層3aが共通金属層3cから絶縁されてしまい、フィルムコンデンサ10の静電容量が早期に低下することを抑制することができる。
【0040】
上記の各実施形態では、フィルム積層体4が、誘電体フィルム1,2を、x方向の向きを交互に反転させながら積層したものであり、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、同じ構成であって、向きが異なるというものである。これに限らず、例えば、誘電体フィルム2に代えて、ベースフィルムの一面の、縁部絶縁領域T以外の領域全体に金属層を有する、いわゆるベタパターンの全面金属層を有する誘電体フィルムを用いてもよい。メタリコン5A(第1金属電極)は、誘電体フィルム1の共通金属層3cに電気的に接続される。また、メタリコン5B(第2金属電極)は、誘電体フィルムの全面金属層に電気的に接続される。
【0041】
図9は、第4実施形態の接続金属層3bを示す。図9に示すように、第4実施形態では、第1~第3実施形態とは異なり、第2接続配線3b2の第1接続配線3b1に連なる端部が、第2の方向において帯状金属層3aの第2側辺3a2よりも外側に位置している。第1状態にある誘電体フィルム1の接続金属層3bと、第1状態と向きが反転した第2状態にある誘電体フィルム2の接続金属層3bとが、ベースフィルムの一面の中心を対称点とする点対称に配設されている点は、本実施形態も第1~第3実施形態と同じである。
【0042】
本開示の第5実施形態のフィルムコンデンサについて説明する。図10A図10Cは、第5実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図である。図10A図10Bは誘電体フィルムの平面図、図10Cはフィルムの積層状態を示す断面模式図である。本実施形態のフィルムコンデンサ11は、フィルム積層体4の両端面にメタリコン5Aおよびメタリコン5Bを有している。フィルム積層体4は、図10Aに示すような、ベースフィルムの一面に、第1金属層3を有する誘電体フィルム(第1誘電体フィルム)1と、図10Bに示すような、ベースフィルムの一面に、第2金属層8を有する誘電体フィルム(第2誘電体フィルム)2とを、交互に積層して構成される。本実施形態では、前述の第1~第4実施形態と異なり、誘電体フィルム1の第1金属層3と、誘電体フィルム2の第2金属層8とが異なる構成を有している。
【0043】
誘電体フィルム1の第1金属層3は、第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcと、第1共通金属層3Acに接続される複数の第1帯状金属層3Aaおよび複数の第1接続金属層3Abと、第2共通金属層3Bcに接続される複数の第2帯状金属層3Baおよび複数の第2接続金属層3Bbと、を含む。第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcは、誘電体フィルム1の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部において、それぞれ第2の方向に延びている。第1共通金属層3Acはメタリコン5Aと電気的に接続し、第2共通金属層3Bcはメタリコン5Bと電気的に接続する。本実施形態では、メタリコン5A側の第1帯状金属層3Aaと、メタリコン5B側の第2帯状金属層3Baとの間は、フィルム面が露出しており、電気的に絶縁された状態となっている。この露出したフィルム面は、誘電体フィルム1の第1の方向の中央部において、第2の方向に沿って連続する中央部絶縁領域Tcとなっている。
【0044】
第1接続金属層3Abは、第1共通金属層3Acと直接連なり、第1共通金属層3Acから第1の方向に延出されている第1接続配線3Ab1と、第1接続配線3Ab1と直接連なり、第1接続配線3Ab1から第2の方向に延出されている第2接続配線3Ab2と、第2接続配線3Ab2と直接連なり、第2接続配線3Ab2から第1の方向に延出されて第1帯状金属層3Aaと直接連なる第3接続配線3Ab3と、を備える。このような構成の第1接続金属層3Abは、第1帯状金属層3Aaに比べて電気抵抗値が高く、ヒューズとしての機能を有している。第1接続金属層3Abは、第2接続配線3Ab2の第3接続配線3Ab3に連なる端部が、第2の方向において第1帯状金属層3Aaの第1側辺3a1よりも外側に位置する。
【0045】
第2接続金属層3Bbは、第2共通金属層3Bcと直接連なり、第2共通金属層3Bcから第1の方向に延出されている第4接続配線3Bb1と、第4接続配線3Bb1と直接連なり、第4接続配線3Bb1から第2の方向に延出されている第5接続配線3Bb2と、第5接続配線3Bb2と直接連なり、第5接続配線3Bb2から第1の方向に延出されて第2帯状金属層3Baと直接連なる第6接続配線3Bb3と、を備える。このような構成の第2接続金属層3Bbは、第2帯状金属層3Baに比べて電気抵抗値が高く、ヒューズとしての機能を有している。第2接続金属層3Bbは、第5接続配線3Bb2の第6接続配線3Bb3に連なる端部が、第2の方向において第2帯状金属層3Baの第1側辺3a1よりも外側に位置する。
【0046】
図11は、誘電体フィルム1の第1接続金属層および第2接続金属層近傍の拡大平面図である。この拡大平面図に示すように、誘電体フィルム1において、第1接続金属層3Abと第2接続金属層3Bbとが、ベースフィルムの一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。すなわち、誘電体フィルム1を平面視したとき、誘電体フィルム1の第1接続金属層3Abを、対象点を回転中心として180°回転すると、第2接続金属層3Bbと同じ形状となる。
【0047】
誘電体フィルム2の第2金属層8は、いわゆるベタパターンの1つの面状金属層である。誘電体フィルム2の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部には、第2の方向に連続する縁部絶縁領域Tを有しており、この縁部絶縁領域Tによって第2金属層8は、メタリコン5Aおよびメタリコン5Bと電気的に絶縁された状態となっている。
【0048】
フィルム積層体4は、平面視で、第1金属層3の第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baと第2金属層8とが重なるように積層されている。このようなフィルム積層体4を備える本実施形態のフィルムコンデンサ11は、第1金属層3および第2金属層8によって、積層型のフィルムコンデンサが直列接続したシリーズコンデンサとすることができる。フィルムコンデンサ11は、メタリコン5A側の第1共通金属層3Ac、第1帯状金属層3Aaおよび第1接続金属層3Abと第2金属層8とによる積層型コンデンサと、メタリコン5B側の第2共通金属層3Bc、第2帯状金属層3Baおよび第2接続金属層3Bbと第2金属層8とによる積層型コンデンサと、が第2金属層8によって直列接続される。本実施形態のフィルムコンデンサ11は、シリーズコンデンサとすることで、高耐圧化を実現できる。
【0049】
本実施形態では、例えば、平面視で複数の第1帯状金属層3Aaおよび複数の第2帯状金属層3Baが1つの第2金属層8と重なっており、第2金属層8は、第1接続金属層3Ab第1共通金属層3Ac第2接続金属層3Bb、および第2共通金属層3Bcと重なっていない。また、第2金属層8は、複数の面状金属層を含んでいてもよく、各面状金属層が、それぞれ平面視で第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baと重なっていればよい。
【0050】
本実施形態のフィルムコンデンサ11では、フィルム積層体4に切断される切断線が、いずれの位置であっても、誘電体フィルム1の第2接続配線3Ab2か第5接続配線3Bb2の少なくともいずれかが、切断線と交差するので、第2接続配線3Ab2および第5接続配線3Bb2のいずれかまたは両方が切断され、第1帯状金属層3Aaと第1共通金属層3Acとの間、および第2帯状金属層3Baと第2共通金属層3Bcとの間の少なくともいずれかにおいて電気的に絶縁される。これにより、フィルムコンデンサ11の端面における放電を低減することができる。さらに、第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcから電気的に絶縁される第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baが、切断された帯状金属層のみであるので、静電容量の損失が少ないフィルムコンデンサ11とすることができる。
【0051】
本開示の第6実施形態のフィルムコンデンサについて説明する。図12A図12Cは、第6実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図である。図12A図12Bは誘電体フィルムの平面図、図12Cはフィルムの積層状態を示す断面模式図である。第6実施形態は、誘電体フィルム1の第1金属層3の構成および誘電体フィルム2の第2金属層8の構成が第5実施形態と異なっており、その他の構成は共通している。第5実施形態では、誘電体フィルム1において、第1接続金属層3Abと第2接続金属層3Bbとが、点対象であるのに対し、本実施形態の第1金属層3は、誘電体フィルム1において、第1接続金属層3Abと第2接続金属層3Bbとが、中央部絶縁領域Tcを挟んで線対称の形状である点が異なっている。さらに、誘電体フィルム2の第2金属層8は、複数の帯状金属層8aと、帯状金属層8a同士を誘電体フィルム2の中央部分で接続する中央接続層8bと、を備える。誘電体フィルム2の複数の帯状金属層8aは、それぞれ誘電体フィルム1の第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baと、平面視で重なるように配設されている。例えば、1つの第1帯状金属層3Aaに付き1つの帯状金属層8aが配設され、1つの第2帯状金属層3Baに付き1つの帯状金属層8aが配設されていればよい。中央接続層8bは、例えば、第1帯状金属層3Aaに対応する帯状金属層8aと第2帯状金属層3Baに対応する帯状金属層8aとを接続するものであって、2つの帯状金属層8aの側辺同士を接続する。中央接続層8bは、帯状金属層8aに比べて電気抵抗値が高く、ヒューズとしての機能を有している。本実施形態のフィルムコンデンサ11は、上記のような第1金属層3および第2金属層8によってシリーズコンデンサとすることで、高耐圧化を実現できる。
【0052】
本実施形態のフィルムコンデンサ11では、フィルム積層体4に切断される切断線によって誘電体フィルム1の第2接続配線3Ab2および第5接続配線3Bb2が切断される。ここで、第1接続金属層3Abと第2接続金属層3Bbとが、中央部絶縁領域Tcを挟んで線対称の形状であるために、例えば、第3接続配線3Ab3および第6接続配線3Bb3が同じ側に位置しており、切断線が第3接続配線3Ab3および第6接続配線3Bb3を通るような場合には、第1帯状金属層3Aaと第1共通金属層3Acとの間、および第2帯状金属層3Baと第2共通金属層3Bcとの間で電気的に絶縁されないおそれがある。このような場合でも、第2金属層8は、中央接続層8bで接続されている帯状金属層8a同士が切断によって絶縁されるので、フィルムコンデンサ11の端面における放電を低減することができる。さらに、第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcから電気的に絶縁される第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baが、切断された帯状金属層のみであるので、静電容量の損失が少ないフィルムコンデンサ11とすることができる。
【0053】
第5,6実施形態の第1接続金属層3Abおよび第2接続金属層3Bbは、いずれも前述の第2~4実施形態の接続金属層3bと同じ構成であってもよい。
【0054】
図13は、フィルムコンデンサの変形例を示す外観斜視図である。フィルムコンデンサAは、絶縁性および耐環境性の点から、フィルムコンデンサ10を外装部材7で被覆したものである。メタリコン5A,5Bは、外部接続用のリード線6を有している。図13においては、外装部材7の一部を取り除いた状態を示しており、外装部材7の取り除かれた部分を破線で示している。
【0055】
図14は、連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。図14においては構成を分かりやすくするために、ケースおよびモールド用の樹脂を省略して記載している。連結型コンデンサBは、複数個のフィルムコンデンサAが一対のバスバー21、23により並列接続された構成となっている。バスバー21、23は、端子部21a、23aと、引出端子部21b、23bと、により構成されている。端子部21a、23aは外部接続用であり、引出端子部21b、23bは、フィルムコンデンサAの外部電極5A、5Bにそれぞれ接続される。
【0056】
図15は、インバータの構成を説明するための概略構成図である。図15には、整流後の直流から交流を作り出すインバータCの例を示している。本実施形態のインバータCは、図15に示すように、ブリッジ回路31と、容量部33を備えている。ブリッジ回路31は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子と、ダイオードにより構成される。容量部33は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化する。インバータCは、容量部33として、上記のフィルムコンデンサ10,Aまたは連結型コンデンサBを含んでよい。
【0057】
なお、このインバータCの入力は、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される場合と、直流電源に接続される場合がある。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータ(モータM)に接続される。
【0058】
図16は、電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。図16には、電動車輌Dとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0059】
図16における電動車輌Dは、駆動用のモータ41、エンジン43、トランスミッション45、インバータ47、電源(電池)49、前輪51aおよび後輪51bを備えている。
【0060】
この電動車輌Dは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくはその両方を備えている。駆動源の出力は、トランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される。電源49は、インバータ47に接続され、インバータ47はモータ41に接続されている。
【0061】
また、図16に示した電動車輌Dは、車輌ECU53およびエンジンECU57を備えている。車輌ECU53は電動車輌D全体の統括的な制御を行う。エンジンECU57は、エンジン43の回転数を制御し電動車輌Dを駆動する。電動車輌Dは、さらに運転者等に操作されるイグニッションキー55、図示しないアクセルペダル、及びブレーキ等の運転装置を備えている。車輌ECUには、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。この車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Dを駆動する。本実施形態のフィルムコンデンサA,10または連結型コンデンサBを容量部33として適用したインバータCを、図16に示すような電動車輌Dに搭載することができる。
【0062】
なお、本実施形態のインバータCは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)や電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【0063】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0064】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続する縁部絶縁領域を有する誘電体フィルムが複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように向きが互いに反転した、第1状態の誘電体フィルムと第2状態の誘電体フィルムとが積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに位置し、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、を含み、前記第1金属電極に電気的に接続される前記金属層は、前記一面の前記第1の方向の第2の縁部に有する、前記第2の方向に延びる共通金属層と、前記第1の方向に延びて前記共通金属層と電気的に接続される複数の帯状金属層と、前記共通金属層と前記帯状金属層とを接続する接続金属層と、を有し、前記接続金属層は、前記共通金属層と直接連なり、前記共通金属層から前記第1の方向に延出されている第1接続配線と、前記第1接続配線と直接連なり、前記第1接続配線から前記第2の方向に延出されている第2接続配線と、前記第2接続配線と直接連なり、前記第2接続配線から前記第1の方向に延出されて前記帯状金属層と直接連なる第3接続配線と、を備え、前記第2接続配線の前記第3接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第1状態の誘電体フィルムの接続金属層と前記第2状態の誘電体フィルムの接続金属層とが、前記一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。
【0065】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に第1金属層が配設され、前記第1金属層が、前記一面の第1の方向の第1の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続して位置している第1共通金属層と前記一面の第1の方向の第2の縁部に、前記第2の方向に沿って連続して位置している第2共通金属層とを有する第1誘電体フィルムと、一面に第2金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部それぞれに、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って連続する縁部絶縁領域を有している第2誘電体フィルムと、が積層された直方体状のフィルム積層体であって、平面視で前記第1金属層の一部と前記第2金属層の一部とが重なるように積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに位置し、前記第1金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、を含み、前記第1金属層は、前記第1の方向に延びて前記第1共通金属層と電気的に接続される複数の第1帯状金属層と、前記第1の方向に延びて前記第2共通金属層と電気的に接続される複数の第2帯状金属層と、前記第1共通金属層と前記第1帯状金属層とを接続する第1接続金属層と、前記第2共通金属層と前記第2帯状金属層とを接続する第2接続金属層と、を有し、前記第2金属層は、前記縁部絶縁領域によって前記第1金属電極および前記第2金属電極と電気的に絶縁された面状金属層であり、前記第1接続金属層は、前記第1共通金属層と直接連なり、前記第1共通金属層から前記第1の方向に延出されている第1接続配線と、前記第1接続配線と直接連なり、前記第1接続配線から前記第2の方向に延出されている第2接続配線と、前記第2接続配線と直接連なり、前記第2接続配線から前記第1の方向に延出されて前記第1帯状金属層と直接連なる第3接続配線と、を備え、前記第2接続金属層は、前記第2共通金属層と直接連なり、前記第2共通金属層から前記第1の方向に延出されている第4接続配線と、前記第4接続配線と直接連なり、前記第4接続配線から前記第2の方向に延出されている第5接続配線と、前記第5接続配線と直接連なり、前記第5接続配線から前記第1の方向に延出されて前記第2帯状金属層と直接連なる第6接続配線と、を備え、前記第2接続配線の前記第3接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記第1帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第5接続配線の前記第6接続配線に連なる端部が、前記第2の方向において前記第2帯状金属層の第1側辺よりも外側に位置し、前記第1接続金属層と前記第2接続金属層とが、前記第1誘電体フィルムの前記一面の中心を対称点とする点対称に配設されている。
【0066】
本開示の連結型コンデンサは、上記のフィルムコンデンサを含む複数のフィルムコンデンサが、バスバーにより複数個接続されている。
【0067】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続され、上記のフィルムコンデンサを含む容量部とを備える。
【0068】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記のインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備える。
【0069】
本開示によれば、所定の方向にフィルム積層体を切断しても、切断部分における放電を低減するとともに、静電容量の損失が少ない、積層型のフィルムコンデンサとすることができる。
【0070】
本開示によれば、静電容量の損失が少ないフィルムコンデンサを用いた連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌とすることができる。
【0071】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1 誘電体フィルム(第1誘電体フィルム)
2 誘電体フィルム(第2誘電体フィルム)
3 金属層(第1金属層)
3Aa 第1帯状金属層
3Ab 第1接続金属層
3Ab1 第1接続配線
3Ab2 第2接続配線
3Ab3 第3接続配線
3Ac 第1共通金属層
3Ba 第2帯状金属層
3Bb 第2接続金属層
3Bb1 第4接続配線
3Bb2 第5接続配線
3Bb3 第6接続配線
3Bc 第2共通金属層
3a 帯状金属層
3b 接続金属層
3b1 第1接続配線
3b2 第2接続配線
3b3 第3接続配線
3c 共通金属層
4 フィルム積層体
5A メタリコン(第1金属電極)
5B メタリコン(第2金属電極)
6 リード線
7 外装部材
8 第2金属層
8a 帯状金属層
8b 中央接続層
10,11 フィルムコンデンサ
12 絶縁層
21 バスバー
21a 端子部
21b 引出端子部
31 ブリッジ回路
33 容量部
35 昇圧回路
3a1 第1側辺
3a2 第2側辺
41 モータ
43 エンジン
45 トランスミッション
47 インバータ
49 電源
51a 前輪
51b 後輪
53 車輌ECU
55 イグニッションキー
57 エンジンECU
A フィルムコンデンサ
B 連結型コンデンサ
C インバータ
D 電動車輌
E 電動車輌
M モータ
S 絶縁マージン
T 縁部絶縁領域
Tc 中央部絶縁領域
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16