(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】含窒素複素環化合物の塩及びその塩の固体形態、医薬組成物並びに用途
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20250409BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20250409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250409BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20250409BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250409BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P3/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P43/00 105
A61P11/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P3/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023526687
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2021108940
(87)【国際公開番号】W WO2022022570
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】202010727300.5
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521265704
【氏名又は名称】武漢人福創新薬物研発中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張学軍
(72)【発明者】
【氏名】楽洋
(72)【発明者】
【氏名】雷四軍
(72)【発明者】
【氏名】夏慶豊
(72)【発明者】
【氏名】李園
(72)【発明者】
【氏名】楊▲クィオン▼峰
(72)【発明者】
【氏名】劉民安
(72)【発明者】
【氏名】楊少侠
(72)【発明者】
【氏名】劉明
(72)【発明者】
【氏名】胡斌
(72)【発明者】
【氏名】張守波
(72)【発明者】
【氏名】丁肖華
(72)【発明者】
【氏名】劉哲
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/156459(WO,A1)
【文献】特表2016-505010(JP,A)
【文献】特表2016-512254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物の塩であって、
【化1】
前記塩は無機酸塩又は有機酸塩から選ばれる、式(I)の化合物の塩。
【請求項2】
前記式(I)の化合物と共に塩を形成する無機酸又は有機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、アスパラギン酸、マレイン酸、グルタミン酸、粘液酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、馬尿酸、乳酸、アスコルビン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ラウリン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、及びナイアシンから選ばれる1種又は複数種である、請求項1に記載の式(I)の化合物の塩。
【請求項3】
塩酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記塩酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、16.47±0.20°、及び23.94±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A。
【請求項4】
前記塩酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、16.47±0.20°、18.29±0.20°、19.89±0.20°、及び23.94±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項3に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A。
【請求項5】
前記塩酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、14.86±0.20°、16.47±0.20°、18.29±0.20°、19.89±0.20°、23.94±0.20°、及び26.92±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項3に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A。
【請求項6】
前記塩酸塩結
晶Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)塩酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に2.83%の重量損失を示す;
(2)塩酸塩結
晶AのDSC曲線は、163.5±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)塩酸塩結
晶AのDSC曲線は、170.9±10℃に吸熱ピークを有する;
(4)塩酸塩結
晶AのDVS曲線は、0%RH~80%RHの条件下で、水分吸着が3.85%未満である、
請求項3~5の何れか一項に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A。
【請求項7】
硫酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記硫酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.49±0.20°、15.88±0.20°、17.48±0.20°、及び22.40±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物の硫酸塩結
晶A。
【請求項8】
前記硫酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンにおいて、2θ角度5.49±0.20°、6.93±0.20°、11.08±0.20°、15.88±0.20°、17.48±0.20°、20.82±0.20°、及び22.40±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項7に記載の式(I)の化合物の硫酸塩結
晶A。
【請求項9】
前記硫酸塩結
晶Aは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)硫酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に3.53%の重量損失を示す;
(2)硫酸塩結
晶AのDSC曲線は、131.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)硫酸塩結
晶AのDSC曲線は、141.9±5℃に吸熱ピークを有する;
請求項7又は8に記載の式(I)の化合物の硫酸塩結
晶A。
【請求項10】
マレイン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記マレイン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、25.58±0.20°、及び27.34±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A。
【請求項11】
前記マレイン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、9.92±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、17.82±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、25.58±0.20°、及び27.34±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項10に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A。
【請求項12】
前記マレイン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、9.92±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、17.82±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、24.20±0.20°、24.53±0.20°、25.58±0.20°、25.84±0.20°、及び27.34±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項10に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A。
【請求項13】
前記マレイン酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)マレイン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に10.48%の重量損失を示す;
(2)マレイン酸塩結
晶AのDSC曲線は、103.0±5℃と132.8±5℃に2つの吸熱ピークを有する;
請求項10~12の何れか一項に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A。
【請求項14】
リン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記リン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.08±0.20°、15.93±0.20°、24.37±0.20°、及び25.19±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のリン酸塩結
晶A。
【請求項15】
前記リン酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)リン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に12.68%の重量損失を示す;
(2)リン酸塩結
晶AのDSC曲線は、89.4±3℃と94.3±3℃に2つの吸熱ピークを有する;
請求項14に記載の式(I)の化合物のリン酸塩結
晶A。
【請求項16】
酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B又は酒石酸塩結
晶Cであって、これらは以下の通りである:
Cu-Kα線を用いて得られた前記酒石酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.00±0.20°、及び15.88±0.20°に特徴的なピークを有し、
Cu-Kα線を用いて得られた前記酒石酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.24±0.20°、及び23.94±0.20°に特徴的なピークを有し、かつ
Cu-Kα線を用いて得られた前記酒石酸塩結
晶CのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.60±0.20°、16.15±0.20°、及び18.13±0.20°に特徴的なピークを有する、
請求項1に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B又は酒石酸塩結
晶C。
【請求項17】
前記酒石酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.00±0.20°、7.34±0.20°、8.59±0.20°、15.88±0.20°、19.54±0.20°、21.46±0.20°、23.43±0.20°、及び25.08±0.20°に特徴的なピークを有する;又は
前記酒石酸塩結
晶CのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.60±0.20°、7.58±0.20°、14.39±0.20°、16.15±0.20°、18.13±0.20°、22.32±0.20°、24.44±0.20°、及び26.69±0.20°に特徴的なピークを有する;
請求項16に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B又は酒石酸塩結
晶C。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B又は酒石酸塩結
晶Cであって、
前記酒石酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に14.67%の重量損失を示す;
(2)酒石酸塩結
晶AのDSC曲線は、96.8±5℃に吸熱ピークを有する;又は
前記酒石酸塩結
晶Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結
晶BのTGA曲線は、150.0±3℃に4.87%の重量損失を示す;
(2)酒石酸塩結
晶BのDSC曲線は、173.9±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)酒石酸塩結
晶BのDSC曲線は、175.3±3℃に吸熱ピークを有する;
請求項16又は17に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B又は酒石酸塩結
晶C。
【請求項19】
フマル酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記フマル酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.52±0.20°、13.29±0.20°、14.92±0.20°、及び25.23±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のフマル酸塩結
晶A。
【請求項20】
前記フマル酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.52±0.20°、13.29±0.20°、14.92±0.20°、19.02±0.20°、21.39±0.20°、25.23±0.20°、及び28.07±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項19に記載の式(I)の化合物のフマル酸塩結
晶A。
【請求項21】
前記フマル酸塩結
晶Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)フマル酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に3.86%の重量損失を示す;
(2)フマル酸塩結
晶AのDSC曲線は、208.6±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)フマル酸塩結
晶AのDSC曲線は、210.2±3℃に吸熱ピークを有する;
(4)フマル酸塩結
晶AのDVS曲線は、0%RH~85%RHの条件下で、水分吸着が0.60%未満である;
請求項19又は20に記載の式(I)の化合物のフマル酸塩結
晶A。
【請求項22】
クエン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記クエン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.96±0.20°、及び15.76±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のクエン酸塩結
晶A。
【請求項23】
前記クエン酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)クエン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に10.24%の重量損失を示す;
(2)クエン酸塩結
晶AのDSC曲線は、91.2±3℃に吸熱ピークを有する;
請求項22に記載の式(I)の化合物のクエン酸塩結
晶A。
【請求項24】
グリコール酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記グリコール酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、7.27±0.20°、14.12±0.20°、16.02±0.20°、及び24.11±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のグリコール酸塩結
晶A。
【請求項25】
前記グリコール酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)グリコール酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に7.72%の重量損失を示す;
(2)グリコール酸塩結
晶AのDSC曲線は、103.1±10℃に吸熱ピークを有する;
請求項24に記載の式(I)の化合物のグリコール酸塩結
晶A。
【請求項26】
コハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶Bであって、
Cu-Kα線を用いて得られた前記コハク酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、14.00±0.20°、15.76±0.20°、21.07±0.20°、22.00±0.20°、及び27.08±0.20°に特徴的なピークを有し、
Cu-Kα線を用いて得られた前記コハク酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、14.91±0.20°、19.17±0.20°、21.02±0.20°、及び24.88±0.20°に特徴的なピークを有する、
請求項1に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶B。
【請求項27】
請求項26に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶Bであって、
前記コハク酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、6.99±0.20°、7.35±0.20°、14.00±0.20°、15.76±0.20°、21.07±0.20°、22.00±0.20°、及び27.08±0.20°に特徴的なピークを有する;又は
前記コハク酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、13.28±0.20°、14.91±0.20°、15.20±0.20°、19.17±0.20°、21.02±0.20°、24.88±0.20°、及び28.15±0.20°に特徴的なピークを有する、
請求項26に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶B。
【請求項28】
前記コハク酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、13.28±0.20°、14.91±0.20°、15.20±0.20°、19.17±0.20°、19.77±0.20°、21.02±0.20°、21.44±0.20°、24.88±0.20°、25.22±0.20°、及び28.15±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項26に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶B。
【請求項29】
請求項26~28の何れか一項に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶Bであって、
前記コハク酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に3.74%の重量損失を示す;
(2)コハク酸塩結
晶AのDSC曲線は、73.3±5℃、102.2±5℃、136.6±5℃及び173.6±5℃に4つの吸熱ピークを有する;又は
前記コハク酸塩結
晶Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結
晶BのTGA曲線は、150.0±3℃に0.83%の重量損失を示す;
(2)コハク酸塩結
晶BのDSC曲線は、128.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)コハク酸塩結
晶BのDSC曲線は、129.9±3℃に吸熱ピークを有する;
請求項26~28の何れか一項に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A又はコハク酸塩結
晶B。
【請求項30】
アジピン酸塩結
晶Bであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記アジピン酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、及び26.15±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B。
【請求項31】
前記アジピン酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、14.28±0.20°、20.72±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、及び26.15±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項30に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B。
【請求項32】
前記アジピン酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、9.23±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、14.28±0.20°、19.35±0.20°、20.72±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、及び26.15±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項30に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B。
【請求項33】
前記アジピン酸塩結
晶Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)アジピン酸塩結
晶BのTGA曲線は、150.0±3℃に1.23%の重量損失を示す;
(2)アジピン酸塩結
晶BのDSC曲線は、112.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)アジピン酸塩結
晶BのDSC曲線は、115.6±3℃に吸熱ピークを有する;
請求項30~32の何れか一項に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B。
【請求項34】
セバシン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記セバシン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、20.16±0.20°、24.63±0.20°、及び26.73±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A。
【請求項35】
前記セバシン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、14.95±0.20°、20.16±0.20°、20.55±0.20°、22.95±0.20°、23.91±0.20°、24.63±0.20°、及び26.73±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項34に記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A。
【請求項36】
前記セバシン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、14.95±0.20°、15.26±0.20°、18.25±0.20°、20.16±0.20°、20.95±0.20°、22.95±0.20°、23.91±0.20°、24.63±0.20°、及び26.73±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項34に記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A。
【請求項37】
前記セバシン酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)セバシン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に0.45%の重量損失を示す;
(2)セバシン酸塩結
晶AのDSC曲線は、80.9±10℃と142.1±10℃に2つの吸熱ピークを有する;
請求項34~36のいずれかに記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A。
【請求項38】
p-トルエンスルホン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、14.27±0.20°、17.14±0.20°、及び25.29±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項39】
前記p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、14.27±0.20°、17.14±0.20°、20.41±0.20°、23.68±0.20°、25.29±0.20°、及び27.65±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項38に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項40】
前記p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、12.28±0.20°、14.27±0.20°、16.02±0.20°、17.14±0.20°、20.41±0.20°、22.01±0.20°、23.68±0.20°、25.29±0.20°、及び27.65±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項38に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項41】
前記p-トルエンスルホン酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に3.29%の重量損失を示す;
(2)p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのDSC曲線は、p-トルエンスルホン酸塩結
晶AのDSC曲線は、210.8±5℃に吸熱ピークを有する;
請求項38~40の何れか一項に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項42】
ベンゼンスルホン酸塩結
晶Aであって、Cu-Kα線を用いて得られた前記ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、16.90±0.20°、18.31±0.20°、20.92±0.20°、25.11±0.20°、及び26.29±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項43】
前記ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、15.67±0.20°、16.90±0.20°、17.55±0.20°、18.31±0.20°、20.34±0.20°、20.92±0.20°、25.11±0.20°、26.29±0.20°、及び29.24±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項42に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項44】
前記ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、15.67±0.20°、16.90±0.20°、17.55±0.20°、18.31±0.20°、20.34±0.20°、20.92±0.20°、23.54±0.20°、24.65±0.20°、25.11±0.20°、26.29±0.20°、及び29.24±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項42に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項45】
前記ベンゼンスルホン酸塩結
晶Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に1.87%の重量損失を示す;
(2)ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのDSC曲線は、184.7±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのDSC曲線は、187.0±3℃に吸熱ピークを有する;
(4)ベンゼンスルホン酸塩結
晶AのDVS曲線は、0%RH~85%RHの条件下で、水分吸着が1.46%未満である;
請求項42~44の何れか一項に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A。
【請求項46】
臭化水素酸塩結
晶A又は臭化水素酸塩結
晶Bであって、
Cu-Kα線を用いて得られた前記臭化水素酸塩結
晶AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、及び24.63±0.20°に特徴的なピークを有し;
Cu-Kα線を用いて得られた前記臭化水素酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.48±0.20°、15.89±0.20°、及び23.98±0.20°に特徴的なピークを有する、
請求項1に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A又は臭化水素酸塩結
晶B。
【請求項47】
前記臭化水素酸塩結
晶BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.48±0.20°、15.89±0.20°、19.40±0.20°、23.98±0.20°、26.55±0.20°、及び28.02±0.20°に特徴的なピークを有する、請求項46に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A又は臭化水素酸塩結
晶B。
【請求項48】
請求項46又は47の何れか一項に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A又は臭化水素酸塩結
晶Bであって、
前記臭化水素酸塩結
晶Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結
晶AのTGA曲線は、150.0±3℃に7.86%の重量損失を示す;
(2)臭化水素酸塩結
晶AのDSC曲線は、96.5±5℃、107.3±5℃及び141.8±5℃に3つの吸熱ピークを有する;又は
前記臭化水素酸塩結
晶Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結
晶BのTGA曲線は、150.0±3℃に4.95%の重量損失を示す;
(2)臭化水素酸塩結
晶BのDSC曲線は、81.6±5℃、128.9±5℃及び163.6±5℃に3つの吸熱ピークを有する;
請求項46又は47の何れか一項に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A又は臭化水素酸塩結
晶B。
【請求項49】
下記を含む、医薬組成物:
請求項1~2の何れか一項に記載の式(I)の化合物の塩;
請求項3~6の何れか一項に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A;
請求項7~9の何れか一項に記載の式(I)の化合物の硫酸塩結
晶A;
請求項10~13の何れか一項に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A;
請求項14若しくは15に記載の式(I)の化合物のリン酸塩結
晶A;
請求項16~18の何れか一項に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B若しくは酒石酸塩結
晶C;
請求項19~21の何れか一項に記載の式(I)の化合物のフマル酸塩結
晶A;
請求項22若しくは23に記載の式(I)の化合物のクエン酸塩結
晶A;
請求項24若しくは25に記載の式(I)の化合物のグリコール酸塩結
晶A;
請求項26~29の何れか一項に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A若しくはコハク酸塩結
晶B;
請求項30~33の何れか一項に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B;
請求項34~37の何れか一項に記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A;
請求項38~41の何れか一項に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A;
請求項42~45の何れか一項に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A;
請求項46~48の何れか一項に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A若しくは臭化水素酸塩結
晶B;又は、
それらの任意の2種類以上の混合物。
【請求項50】
オートタキシンATX関連疾患を治療及び/又は予防するための薬剤の製造における、下記の使用:
請求項1~2の何れか一項に記載の式(I)の化合物の塩;
請求項3~6の何れか一項に記載の式(I)の化合物の塩酸塩結
晶A;
請求項7~9の何れか一項に記載の式(I)の化合物の硫酸塩結
晶A;
請求項10~13の何れか一項に記載の式(I)の化合物のマレイン酸塩結
晶A;
請求項14若しくは15に記載の式(I)の化合物のリン酸塩結
晶A;
請求項16~18の何れか一項に記載の式(I)の化合物の酒石酸塩結
晶A、酒石酸塩結
晶B若しくは酒石酸塩結
晶C;
請求項19~21の何れか一項に記載の式(I)の化合物のフマル酸塩結
晶A;
請求項22若しくは23に記載の式(I)の化合物のクエン酸塩結
晶A;
請求項24若しくは25に記載の式(I)の化合物のグリコール酸塩結
晶A;
請求項26~29の何れか一項に記載の式(I)の化合物のコハク酸塩結
晶A若しくはコハク酸塩結
晶B;
請求項30~33の何れか一項に記載の式(I)の化合物のアジピン酸塩結
晶B;
請求項34~37の何れか一項に記載の式(I)の化合物のセバシン酸塩結
晶A;
請求項38~41の何れか一項に記載の式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結
晶A;
請求項42~45の何れか一項に記載の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結
晶A;
請求項46~48の何れか一項に記載の式(I)の化合物の臭化水素酸塩結
晶A若しくは臭化水素酸塩結
晶B;又は、
それらの任意の2種類以上の混合物。
【請求項51】
前記ATX関連疾患は、がん、代謝疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、繊維変性疾患、間質性肺疾患、増殖性疾患、炎症性疾患、疼痛、自己免疫疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、神経変性疾患、皮膚科障害及び/又は異常な血管新生に関連する疾患から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記ATX関連疾患は、間質性肺疾患、肺線維症、肝線維症、及び腎線維症から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項50に記載の使用。
【請求項53】
前記ATX関連疾患は、特発性肺線維症、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎、神経因性疼痛、及び炎症性疼痛を含む、請求項50に記載の使用。
【請求項54】
前記ATX関連疾患は、変形性関節症に関連する疼痛を含む、請求項50に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願人が2020年7月28日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202010727300.5、発明名称が「含窒素複素環化合物の塩及びその塩の固体形態、医薬組成物並びに用途」である先行出願の優先権を主張する。当該先行出願の全内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬化学分野に属し、具体的には含窒素複素環化合物の塩及びその塩の固体形態、医薬組成物並びに用途に関する。
【背景技術】
【0003】
オートタキシン(Autotaxin、ATX)は、ホスホジエステラーゼ(PDE)活性を持つ分泌型糖タンパク質であり、細胞外ピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ(ENPP)ファミリーのメンバーであるため、ENPP2とも呼ばれる。ATXには、リゾホスホリパーゼD(LysoPLD)活性もあり、リゾホスファチジルコリン(LPC)を、生物学的活性を有するリゾホスファチジン酸(LPA)に加水分解することができる。LPAは、多くの生物学的及び生物化学的プロセスに影響を与える細胞内脂質媒体である。研究により、病理学的条件下で、ATXを阻害することでLPAレベルを低下させるため、がん、リンパ球ホーミング、慢性炎症、神経因性疼痛、線維症、血栓症、胆汁うっ滞性掻痒症、又は、上昇したLPAレベル及び/又はATX活性化によって誘発、媒介及び/又は伝染する線維性疾患を含む満たされていない臨床的ニーズに治療上の利益を提供することが示されている。現在、ATX阻害剤は、がん、リンパ球ホーミング、慢性炎症、神経因性疼痛、線維症、血栓症、胆汁うっ滞性掻痒症、例えば特発性肺線維症(IPF)の線維性疾患を含むLPAレベルの上昇に関連する疾患の治療に有用であることが分かっている。
【0004】
出願番号が202010074393.6の中国発明特許出願には、ATX阻害活性を有する式(I)の化合物が記載されている。
【化1】
【0005】
式(I)の化合物の化学名は、(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)-1-(2-((2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)アミノ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル)エタン-1-オン。当該化合物が良好な生物学的活性を有することに基づき、改善された薬剤形成性又は他の特性を得るために、適切な塩形態及びその固体形態を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上記技術問題を改善するために、本発明は、式(I)の化合物の塩又はその塩の固体形態を提供する:
【化2】
【0007】
そのうち、上記塩は無機酸塩又は有機酸塩から選ばれ、上記固体形態は結晶形又は非晶質であってもよい。
【0008】
本発明の実施形態によれば、上記無機酸塩は、式(I)の化合物と無機酸が形成する塩である。好ましくは、上記無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸から選ばれる1種又は複数種である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、上記無機酸塩は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩など、下記式(I)の化合物の塩から選ばれる1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0010】
本発明の実施形態によれば、上記有機酸塩は、式(I)の化合物と有機酸が形成する塩である。好ましくは、上記有機酸は、アスパラギン酸、マレイン酸、グルタミン酸、粘液酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、馬尿酸、乳酸、アスコルビン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ラウリン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ナイアシンから選ばれる1種又は複数種である。
【0011】
本発明の実施形態によれば、上記有機酸塩は、アスパラギン酸塩、マレイン酸塩、グルタミン酸塩、粘液酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、ラウリン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ナイアシン塩など、下記式(I)の化合物の塩から選ばれる1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0012】
本発明の例示的な実施形態によれば、上記塩は、式(I)の化合物の塩酸塩、フマル酸塩又はベンゼンスルホン酸塩から選ばれる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記塩において、式(I)の化合物と塩を形成する酸(無機酸又は有機酸など)とのモル比は1:(0.5~2)であってもよく、例えば1:(0.5~1)である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形は、塩酸塩(1:1)、硫酸塩(1:1)、マレイン酸塩(1:1)、リン酸塩(1:1)、酒石酸塩(1:1)、フマル酸塩(1:1)、クエン酸塩(1:1)、グリコール酸塩(1:0.5)、コハク酸塩(1:(0.5~1))、アジピン酸塩(1:1)、セバシン酸塩(1:1)、p-トルエンスルホン酸塩(1:1)、ベンゼンスルホン酸塩(1:1)及び臭化水素酸塩(1:1)など、式(I)の化合物の塩から選ばれる固体形態であってもよく、例えばその結晶形又は非晶質である。そのうち、各塩の後の括弧内に示される比は、当該塩の中の相応する酸に対する式(I)の化合物のモル比である。本発明の文脈において、上記塩に言及する場合、それらは全て、括弧内に記載されたモル比を有する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形は、塩酸塩結晶形A、硫酸塩結晶形A、マレイン酸塩結晶形A、リン酸塩結晶形A、酒石酸塩結晶形A、酒石酸塩結晶形B、酒石酸塩結晶形C、フマル酸塩結晶形A、クエン酸塩結晶形A、グリコール酸塩結晶形A、コハク酸塩結晶形A、コハク酸塩結晶形B、アジピン酸塩結晶形B、セバシン酸塩結晶形A、p-トルエンスルホン酸塩結晶形A、ベンゼンスルホン酸塩結晶形A、臭化水素酸塩結晶形A又は臭化水素酸塩結晶形Bなど、式(I)の化合物の塩の結晶形から選ばれてもよく、例えば式(I)の化合物の塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A又はベンゼンスルホン酸塩結晶形Aから選ばれる。
【0016】
本発明の文脈において、特に明記しない限り、X線粉末回折(XRPD)データにおける2θ角度値の誤差範囲は±0.2°である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記塩酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、16.47±0.20°、23.94±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、上記塩酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、16.47±0.20°、18.29±0.20°、19.89±0.20°、23.94±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、上記塩酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度7.48±0.20°、13.13±0.20°、14.86±0.20°、16.47±0.20°、18.29±0.20°、19.89±0.20°、23.94±0.20°、26.92±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記塩酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表1に示されている:
【表1】
【0021】
本発明の実施形態によれば、上記塩酸塩結晶形Aは、基本的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、上記塩酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)塩酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約2.83%の重量損失を示す;
(2)塩酸塩結晶形AのDSC曲線は、163.5±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)塩酸塩結晶形AのDSC曲線は、170.9±10℃に吸熱ピークを有し、特に塩酸塩結晶形AのDSC曲線は、170.9±5℃に吸熱ピークを有する;
(4)塩酸塩結晶形AのDVS曲線は、0%RH~80%RHの条件下で、水分吸着が約10%未満であり、例えば約5%未満、特に約3.85%未満である。
【0023】
本発明の実施形態によれば、上記塩酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)塩酸塩結晶形Aは、基本的に
図20に示されるTGA曲線を有する;
(2)塩酸塩結晶形Aは、基本的に
図20に示されるDSC曲線を有する;
(3)塩酸塩結晶形Aは、基本的に
図37に示されるDVS曲線を有する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記硫酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.49±0.20°、15.88±0.20°、17.48±0.20°、22.40±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0025】
本発明の実施形態によれば、上記硫酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.49±0.20°、6.93±0.20°、11.08±0.20°、15.88±0.20°、17.48±0.20°、20.82±0.20°、22.40±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記硫酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表2に示されている:
【表2】
【0027】
本発明の実施形態によれば、上記硫酸塩結晶形Aは、基本的に
図2に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、上記硫酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)硫酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約3.53%の重量損失を示す;
(2)硫酸塩結晶形AのDSC曲線は、131.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)硫酸塩結晶形AのDSC曲線は、141.9±10℃に吸熱ピークを有し、特に硫酸塩結晶形AのDSC曲線は、141.9±5℃に吸熱ピークを有する。
【0029】
本発明の実施形態によれば、上記硫酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)硫酸塩結晶形Aは、基本的に
図21に示されるTGA曲線を有する;
(2)硫酸塩結晶形Aは、基本的に
図21に示されるDSC曲線を有する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記マレイン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、25.58±0.20°、27.34±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0031】
本発明の実施形態によれば、上記マレイン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、9.92±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、17.82±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、25.58±0.20°、27.34±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、上記マレイン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.43±0.20°、9.92±0.20°、13.86±0.20°、14.41±0.20°、15.00±0.20°、17.82±0.20°、22.07±0.20°、22.65±0.20°、24.20±0.20°、24.53±0.20°、25.58±0.20°、25.84±0.20°、27.34±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0033】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記マレイン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表3に示されている:
【表3】
【0034】
本発明の実施形態によれば、上記マレイン酸塩結晶形Aは、基本的に
図3に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0035】
本発明の実施形態によれば、上記マレイン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)マレイン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約10.48%の重量損失を示す;
(2)マレイン酸塩結晶形AのDSC曲線は、103.0±10℃と132.8±10℃に2つの吸熱ピークを有し、特にマレイン酸塩結晶形AのDSC曲線は、103.0±5℃と132.8±5℃に2つの吸熱ピークを有する。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記マレイン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)マレイン酸塩結晶形Aは、基本的に
図22に示されるTGA曲線を有する;
(2)マレイン酸塩結晶形Aは、基本的に
図22に示されるDSC曲線を有する。
【0037】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記リン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.08±0.20°、15.93±0.20°、24.37±0.20°、25.19±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0038】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記リン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表4に示されている:
【表4】
【0039】
本発明の実施形態によれば、上記リン酸塩結晶形Aは、基本的に
図4に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記リン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)リン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約12.68%の重量損失を示す;
(2)リン酸塩結晶形AのDSC曲線は、89.4±3℃と94.3±3℃に2つの吸熱ピークを有する。
【0041】
本発明の実施形態によれば、上記リン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)リン酸塩結晶形Aは、基本的に
図23に示されるTGA曲線を有する;
(2)リン酸塩結晶形Aは、基本的に
図23に示されるDSC曲線を有する。
【0042】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.00±0.20°、15.88±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0043】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.00±0.20°、7.34±0.20°、8.59±0.20°、15.88±0.20°、19.54±0.20°、21.46±0.20°、23.43±0.20°、25.08±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0044】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表5に示されている:
【表5】
【0045】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Aは、基本的に
図5に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約14.67%の重量損失を示す;
(2)酒石酸塩結晶形AのDSC曲線は、96.8±10℃に吸熱ピークを有し、特に酒石酸塩結晶形AのDSC曲線は、96.8±5℃に吸熱ピークを有する。
【0047】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結晶形Aは、基本的に
図24に示されるTGA曲線を有する;
(2)酒石酸塩結晶形Aは、基本的に
図24に示されるDSC曲線を有する。
【0048】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.24±0.20°、23.94±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表6に示されている:
【表6】
【0050】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Bは、基本的に
図6に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0051】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結晶形BのTGA曲線は、150.0±3℃に約4.87%の重量損失を示す;
(2)酒石酸塩結晶形BのDSC曲線は、173.9±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)酒石酸塩結晶形BのDSC曲線は、175.3±3℃に吸熱ピークを有する。
【0052】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)酒石酸塩結晶形Bは、基本的に
図25に示されるTGA曲線を有する;
(2)酒石酸塩結晶形Bは、基本的に
図25に示されるDSC曲線を有する。
【0053】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.60±0.20°、16.15±0.20°、18.13±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0054】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.60±0.20°、7.58±0.20°、14.39±0.20°、16.15±0.20°、18.13±0.20°、22.32±0.20°、24.44±0.20°、26.69±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0055】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記酒石酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表7に示されている:
【表7】
【0056】
本発明の実施形態によれば、上記酒石酸塩結晶形Cは、基本的に
図7に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0057】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記フマル酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.52±0.20°、13.29±0.20°、14.92±0.20°、25.23±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0058】
本発明の実施形態によれば、上記フマル酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.52±0.20°、13.29±0.20°、14.92±0.20°、19.02±0.20°、21.39±0.20°、25.23±0.20°、28.07±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0059】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記フマル酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表8に示されている:
【表8】
【0060】
本発明の実施形態によれば、上記フマル酸塩結晶形Aは、基本的に
図8に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0061】
本発明の実施形態によれば、上記フマル酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)フマル酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約3.86%の重量損失を示す;
(2)フマル酸塩結晶形AのDSC曲線は、208.6±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)フマル酸塩結晶形AのDSC曲線は、210.2±3℃に吸熱ピークを有する;
(4)フマル酸塩結晶形AのDVS曲線は、0%RH~80%RHの条件下で、水分吸着が約1%未満であり、例えば約0.8%未満、特に約0.60%未満である。
【0062】
本発明の実施形態によれば、上記フマル酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)フマル酸塩結晶形Aは、基本的に
図26に示されるTGA曲線を有する;
(2)フマル酸塩結晶形Aは、基本的に
図26に示されるDSC曲線を有する;
(3)フマル酸塩結晶形Aは、基本的に
図38に示されるDVS曲線を有する。
【0063】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記クエン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.96±0.20°、15.76±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0064】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記クエン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表9に示されている:
【表9】
【0065】
本発明の実施形態によれば、上記クエン酸塩結晶形Aは、基本的に
図9に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0066】
本発明の実施形態によれば、上記クエン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)クエン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約10.24%の重量損失を示す;
(2)クエン酸塩結晶形AのDSC曲線は、91.2±5℃に吸熱ピークを有し、特にクエン酸塩結晶形AのDSC曲線は、91.2±3℃に吸熱ピークを有する。
【0067】
本発明の実施形態によれば、上記クエン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)クエン酸塩結晶形Aは、基本的に
図27に示されるTGA曲線を有する;
(2)クエン酸塩結晶形Aは、基本的に
図27に示されるDSC曲線を有する。
【0068】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記グリコール酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、7.27±0.20°、14.12±0.20°、16.02±0.20°、24.11±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0069】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記グリコール酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表10に示されている:
【表10】
【0070】
本発明の実施形態によれば、上記グリコール酸塩結晶形Aは、基本的に
図10に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0071】
本発明の実施形態によれば、上記グリコール酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)グリコール酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約7.72%の重量損失を示す;
(2)グリコール酸塩結晶形AのDSC曲線は、103.1±15℃に吸熱ピークを有し、特にグリコール酸塩結晶形AのDSC曲線は、103.1±10℃に吸熱ピークを有する。
【0072】
本発明の実施形態によれば、上記グリコール酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)グリコール酸塩結晶形Aは、基本的に
図28に示されるTGA曲線を有する;
(2)グリコール酸塩結晶形Aは、基本的に
図28に示されるDSC曲線を有する。
【0073】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記コハク酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、14.00±0.20°、15.76±0.20°、21.07±0.20°、22.00±0.20°、27.08±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0074】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度5.26±0.20°、6.99±0.20°、7.35±0.20°、14.00±0.20°、15.76±0.20°、21.07±0.20°、22.00±0.20°、27.08±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0075】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記コハク酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表11に示されている:
【表11】
【0076】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Aは、基本的に
図11に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0077】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約3.74%の重量損失を示す;
(2)コハク酸塩結晶形AのDSC曲線は、73.3±10℃、102.2±10℃、136.6±10℃及び173.6±10℃に4つの吸熱ピークを有し、特にコハク酸塩結晶形AのDSC曲線は、73.3±5℃、102.2±5℃、136.6±5℃及び173.6±5℃に4つの吸熱ピークを有する。
【0078】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結晶形Aは、基本的に
図29に示されるTGA曲線を有する;
(2)コハク酸塩結晶形Aは、基本的に
図29に示されるDSC曲線を有する。
【0079】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記コハク酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、14.91±0.20°、19.17±0.20°、21.02±0.20°、24.88±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0080】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、13.28±0.20°、14.91±0.20°、15.20±0.20°、19.17±0.20°、21.02±0.20°、24.88±0.20°、28.15±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0081】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、12.60±0.20°、13.28±0.20°、14.91±0.20°、15.20±0.20°、19.17±0.20°、19.77±0.20°、21.02±0.20°、21.44±0.20°、24.88±0.20°、25.22±0.20°、28.15±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0082】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記コハク酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表12に示されている:
【表12】
【0083】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Bは、基本的に
図12に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0084】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結晶形BのTGA曲線は、150.0±3℃に約0.83%の重量損失を示す;
(2)コハク酸塩結晶形BのDSC曲線は、128.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)コハク酸塩結晶形BのDSC曲線は、129.9±3℃に吸熱ピークを有する。
【0085】
本発明の実施形態によれば、上記コハク酸塩結晶形Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)コハク酸塩結晶形Bは、基本的に
図30に示されるTGA曲線を有する;
(2)コハク酸塩結晶形Bは、基本的に
図30に示されるDSC曲線を有する。
【0086】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記アジピン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、26.15±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0087】
本発明の実施形態によれば、上記アジピン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、14.28±0.20°、20.72±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、26.15±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0088】
本発明の実施形態によれば、上記アジピン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.98±0.20°、9.23±0.20°、10.69±0.20°、13.88±0.20°、14.28±0.20°、19.35±0.20°、20.72±0.20°、21.41±0.20°、24.97±0.20°、26.15±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0089】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記アジピン酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表13に示されている:
【表13】
【0090】
本発明の実施形態によれば、上記アジピン酸塩結晶形Bは、基本的に
図13に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0091】
本発明の実施形態によれば、上記アジピン酸塩結晶形Bは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)アジピン酸塩結晶形BのTGA曲線は、150.0±3℃に約1.23%の重量損失を示す;
(2)アジピン酸塩結晶形BのDSC曲線は、112.8±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)アジピン酸塩結晶形BのDSC曲線は、115.6±3℃に吸熱ピークを有する。
【0092】
本発明の実施形態によれば、上記アジピン酸塩結晶形Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)アジピン酸塩結晶形Bは、基本的に
図31に示されるTGA曲線を有する;
(2)アジピン酸塩結晶形Bは、基本的に
図31に示されるDSC曲線を有する。
【0093】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記セバシン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、20.16±0.20°、24.63±0.20°、26.73±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0094】
本発明の実施形態によれば、上記セバシン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、14.95±0.20°、20.16±0.20°、20.55±0.20°、22.95±0.20°、23.91±0.20°、24.63±0.20°、26.73±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0095】
本発明の実施形態によれば、上記セバシン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度4.57±0.20°、9.27±0.20°、11.20±0.20°、14.40±0.20°、14.95±0.20°、15.26±0.20°、18.25±0.20°、20.16±0.20°、20.95±0.20°、22.95±0.20°、23.91±0.20°、24.63±0.20°、26.73±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0096】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記セバシン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表14に示されている:
【表14】
【0097】
本発明の実施形態によれば、上記セバシン酸塩結晶形Aは、基本的に
図14に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0098】
本発明の実施形態によれば、上記セバシン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)セバシン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約0.45%の重量損失を示す;
(2)セバシン酸塩結晶形AのDSC曲線は、80.9±10℃と142.1±10℃に2つの吸熱ピークを有する。
【0099】
本発明の実施形態によれば、上記セバシン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)セバシン酸塩結晶形Aは、基本的に
図32に示されるTGA曲線を有する;
(2)セバシン酸塩結晶形Aは、基本的に
図32に示されるDSC曲線を有する。
【0100】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、14.27±0.20°、17.14±0.20°、25.29±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0101】
本発明の実施形態によれば、上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、14.27±0.20°、17.14±0.20°、20.41±0.20°、23.68±0.20°、25.29±0.20°、27.65±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0102】
本発明の実施形態によれば、上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.04±0.20°、8.59±0.20°、12.28±0.20°、14.27±0.20°、16.02±0.20°、17.14±0.20°、20.41±0.20°、22.01±0.20°、23.68±0.20°、25.29±0.20°、27.65±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0103】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表15に示されている:
【表15】
【0104】
本発明の実施形態によれば、上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図15に示されるX線回折パターンを有する。
【0105】
本発明の実施形態によれば、上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約3.29%の重量損失を示す;
(2)p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのDSC曲線は、210.8±10℃に吸熱ピークを有し、特にp-トルエンスルホン酸塩結晶形AのDSC曲線は、210.8±5℃に吸熱ピークを有する。
【0106】
より具体的には、p-トルエンスルホン酸塩結晶形AのDSC曲線は、72.7±10℃、特に72.7±5℃に更に吸熱ピークを有する。
【0107】
本発明の実施形態によれば、上記p-トルエンスルホン酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)p-トルエンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図33に示されるTGA曲線を有する;
(2)p-トルエンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図33に示されるDSC曲線を有する。
【0108】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、16.90±0.20°、18.31±0.20°、20.92±0.20°、25.11±0.20°、26.29±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0109】
本発明の実施形態によれば、上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、15.67±0.20°、16.90±0.20°、17.55±0.20°、18.31±0.20°、20.34±0.20°、20.92±0.20°、25.11±0.20°、26.29±0.20°、29.24±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0110】
本発明の実施形態によれば、上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度6.16±0.20°、8.98±0.20°、14.22±0.20°、15.67±0.20°、16.90±0.20°、17.55±0.20°、18.31±0.20°、20.34±0.20°、20.92±0.20°、23.54±0.20°、24.65±0.20°、25.11±0.20°、26.29±0.20°、29.24±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0111】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表16に示されている:
【表16】
【0112】
本発明の実施形態によれば、上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図16に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0113】
本発明の実施形態によれば、上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ、3つ又は4つの特徴を有する:
(1)ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約1.87%の重量損失を示す;
(2)ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのDSC曲線は、184.7±3℃に吸熱ピークの開始点を有する;
(3)ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのDSC曲線は、187.0±3℃に吸熱ピークを有する;
(4)ベンゼンスルホン酸塩結晶形AのDVS曲線は、0%RH~80%RHの条件下で、水分吸着が約2%未満であり、例えば約1.8%未満、特に約1.46%未満である。
【0114】
本発明の実施形態によれば、上記ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、以下の1つ、2つ又は3つの特徴を有する:
(1)ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図34に示されるTGA曲線を有する;
(2)ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図34に示されるDSC曲線を有する;
(3)ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、基本的に
図39に示されるDVS曲線を有する。
【0115】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記臭化水素酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.54±0.20°、24.63±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0116】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記臭化水素酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表17に示されている:
【表17】
【0117】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Aは、基本的に
図17に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0118】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結晶形AのTGA曲線は、150.0±3℃に約7.86%の重量損失を示す;
(2)臭化水素酸塩結晶形AのDSC曲線は、96.5±5℃、107.3±5℃及び141.8±5℃に3つの吸熱ピークを有する。
【0119】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Aは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結晶形Aは、基本的に
図35に示されるTGA曲線を有する;
(2)臭化水素酸塩結晶形Aは、基本的に
図35に示されるDSC曲線を有する。
【0120】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記臭化水素酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.48±0.20°、15.89±0.20°、23.98±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0121】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ角度9.48±0.20°、15.89±0.20°、19.40±0.20°、23.98±0.20°、26.55±0.20°、28.02±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0122】
本発明の実施形態によれば、Cu-Kα線を用いて得られた上記臭化水素酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表18に示されている:
【表18】
【0123】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Bは、基本的に
図18に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0124】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結晶形BのTGA曲線は、150.0±3℃に約4.95%の重量損失を示す;
(2)臭化水素酸塩結晶形BのDSC曲線は、81.6±10℃、128.9±10℃及び163.6±10℃に3つの吸熱ピークを有し、特に臭化水素酸塩結晶形BのDSC曲線は、81.6±5℃、128.9±5℃及び163.6±5℃に3つの吸熱ピークを有する。
【0125】
本発明の実施形態によれば、上記臭化水素酸塩結晶形Bは、以下の1つ又は2つの特徴を有する:
(1)臭化水素酸塩結晶形Bは、基本的に
図36に示されるTGA曲線を有する;
(2)臭化水素酸塩結晶形Bは、基本的に
図36に示されるDSC曲線を有する。
【0126】
本発明は、式(I)の化合物と無機酸又は有機酸を接触させるステップを含む式(I)の化合物の塩の製造方法を更に提供する:
【化3】
【0127】
本発明の実施形態によれば、上記無機酸又は有機酸は、前述の定義から独立的に選ばれる。
【0128】
本発明の実施形態によれば、式(I)の化合物と無機酸又は有機酸とのモル比は1:(0.5~5)であってもよく、例えば1:(0.5~2)、例示的には1:0.5又は1:1である。
【0129】
本発明は、式(I)の化合物及び相応する無機酸又は有機酸を溶剤において室温下で撹拌し、清澄な試料を5℃~-20℃に移して撹拌し、清澄な試料を室温に移して溶剤を揮発させるステップを含む、式(I)の化合物の塩の結晶形の製造方法を更に提供する。
【0130】
本発明の実施形態によれば、上記無機酸又は有機酸は、前述の定義から独立的に選ばれる。
【0131】
本発明の実施形態によれば、式(I)の化合物と無機酸又は有機酸とのモル比は1:(0.5~5)であってもよく、例えば1:(0.5~2)、例示的には1:0.5又は1:1である。
【0132】
本発明は、例えばその結晶形又は非晶質のような固体形態の式(I)の化合物の塩を含む医薬組成物を更に提供する。
【0133】
本発明の実施形態によれば、上記医薬組成物は、担体又は賦形剤など、薬学的に許容される補助材料を更に含んでもよい。
【0134】
本発明の実施形態によれば、上記医薬組成物において、式(I)の化合物の塩は治療有効量で存在する。
【0135】
本発明は、薬物の製造における、例えばその結晶形又は非晶質のような固体形態の上記式(I)の化合物の塩の用途を更に提供する。好ましくは、上記薬物は、ATX関連疾患の治療及び/又は予防に用いられる。
【0136】
本発明は、治療有効量の例えばその結晶形又は非晶質のような固体形態の上記式(I)の化合物の塩、或いは上記医薬組成物を必要がある患者に投与することを含む、オートタキシンATX関連疾患を予防及び/又は治療する方法を更に提供する。
【0137】
本発明は、オートタキシンATX関連疾患を治療及び/又は予防するための、例えばその結晶形又は非晶質のような固体形態の式(I)の化合物の塩、或いは上記医薬組成物を更に提供する。
【0138】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、がん、代謝疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、繊維変性疾患、間質性肺疾患、増殖性疾患、炎症性疾患、疼痛、自己免疫疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、神経変性疾患、皮膚科障害及び/又は異常な血管新生に関連する疾患から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0139】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、間質性肺疾患、肺線維症、肝線維症、腎線維症から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0140】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、特発性肺線維症を含む。
【0141】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝炎を含む。
【0142】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、神経因性疼痛、炎症性疼痛を含む。
【0143】
本発明の実施形態によれば、上記ATX関連疾患は、変形性関節症に関連する疼痛を含む。
【0144】
薬物として、本発明の塩又はその固体形態は、医薬組成物の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、薬剤分野で周知の方法に従って製造することができ、局所的又は全身的治療の必要があるかどうか及び治療される区域に応じて、様々な経路を介して投与することができる。局所投与(例えば、鼻内、膣及び直腸投与を含む経皮、皮膚、目及び粘膜への投与)、肺投与(例えば、噴霧器を含む、粉末又はエアゾール剤を吸い込む又は吹き込むことによる気管内、鼻内への投与)、経口又は非経口投与することができる。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内又は筋肉内注射又は輸注、或いは例えば鞘内や脳室内などの頭蓋内投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス形態で、又は例えば連続灌流ポンプによって投与することができる。局所的に投与される医薬組成物及び製剤は、経皮貼付剤、軟膏、ローション、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、スプレー剤、液剤及び粉末剤を含むことができる。従来の薬物担体、水、粉末又は油性基質、増粘剤などは必須又は必要である場合がある。
【0145】
本発明の組成物を製造する場合、通常、活性成分(即ち、本発明の塩又はその固体形態)と賦形剤を混合し、賦形剤によりカプセル、サッシェ、紙又は他の容器形態のような担体内に希釈又は装填する。賦形剤が希釈剤として使用される場合、溶媒、担体又は活性成分の媒体として使用される固体、半固体又は液体物質であってもよい。従って、組成物は、錠剤、丸剤、粉末剤、外用塗布剤、サッシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体又は液体に溶解した溶媒)、例えば最大10%重量の活性成分を含む軟膏剤、軟質と硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液及び無菌包装粉末などの形態であってもよい。
【0146】
好適な賦形剤の幾つかの例には、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが含まれる。製剤には、滑石粉、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤と懸濁剤、安息香酸メチルや安息香酸ヒドロキシプロピルなどの防腐剤、甘味料及び矯味剤が更に含まれてもよい。本発明の組成物は、患者への投与後に活性成分を即時放出、徐放又は遅延放出する作用を提供するために、当該分野で既知の方法を用いて調製することができる。
【0147】
組成物は、単位剤形で調製することができ、1用量当たり約5~1200 mg、より一般的には約50~800 mgの活性成分を含む。「単位剤形」という用語は、物理的に分離された、ヒト患者及び他の哺乳動物に適切な単一用量単位を指し、各単位は好適な薬物賦形剤と混合された、計算により所望の治療効果をもたらすことができる所定量の活性物質を含む。
【0148】
活性化合物の有効用量の範囲は非常に大きくてもよく、通常は薬学的有効量で投与される。しかし、実際に投与される化合物の量は通常、医師が治療される病状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、患者個体の年齢、重量及び反応、患者症状の重症度を含む関連状況に応じて決定することが理解される。
【0149】
錠剤などの固体組成物を製造する場合、主な活性成分と薬物賦形剤を混合し、本発明の塩又はその固体形態の均一な混合物を含む固体の予備製剤組成物を形成する。これらの予備製剤組成物が均一であると呼ばれる場合、活性成分が通常、組成物全体に均一に分布することで、当該組成物を同等に有効な錠剤、丸剤及びカプセル剤などの単位剤形に容易に分割できることを意味する。次に、当該固体の予備製剤を、上記タイプの例えば本発明の活性成分を約0.1~1000 mg含む単位剤形に分割する。
【0150】
本発明の錠剤又は丸剤をコーティング又は複合し、持効性作用の利点を提供する剤形を得ることができる。例えば、錠剤又は丸剤には、内部用量成分及び外部用量成分が含まれ、後者は前者の被膜形態である。腸溶性層によって2つの成分を分離することができ、腸溶性層は、内部成分が十二指腸を完全に通過するか又は遅延放出されるように、胃内で崩壊を阻止するためのものである。このような腸溶性層又はコーティング剤には、複数種の高分子酸及び高分子酸とセラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースなどの物質との混合物を含む、複数種の物質を使用することができる。
【0151】
本発明の塩又はその固体形態及び組成物は、その中に組み込まれてもよく、経口又は注射投与可能な液体形態には、水溶液、適切に矯味したシロップ剤、水性又は油性懸濁液、綿実油、ゴマ油、ヤシ油又はピーナッツ油などの食用油で矯味した乳剤、エリキシル剤及び類似する薬用溶媒が含まれる。
【0152】
吸い込み又は吹き込みに使用される組成物には、薬学的に許容される水又は有機溶剤又はその混合物に溶解した溶液剤及び懸濁液、粉末剤が含まれる。液体又は固体組成物には、上記薬学的に許容される好適な賦形剤が含まれてもよい。幾つかの実施形態において、組成物は、局所的又は全身効果を実現するために、経口又は鼻呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスを使用することで霧化されてもよい。霧化溶液は、霧化装置によって直接吸い込まれてもよいか、又は霧化装置は、フェイスマスクテント又は間欠陽圧人工呼吸器に接続されてもよい。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、経口投与されてもよいか、適切な方法で製剤を送達する装置から経鼻投与されてもよい。
【0153】
患者に投与される塩又はその固体形態又は組成物の量は一定ではなく、投与される薬物、予防又は治療などの投与される目的、患者の状態、投与方式などに依存する。治療用途において、疾患及びその合併症の症状を治癒又は少なくとも部分的に抑制するのに十分な量の組成物を、疾患に罹患した患者に投与することができる。有効用量は、治療される疾患の状態及び主治臨床医の判断に依存すべきであり、この判断は、例えば、疾患の重症度、患者の年齢、体重及び一般的な状況などの要因に依存する。
【0154】
患者に投与される組成物は、上記医薬組成物の形態であってもよい。これらの組成物は、従来の滅菌技術又は濾過滅菌によって滅菌することができる。水溶液の包装をそのまま使用するか、又は凍結乾燥し、投与前に凍結乾燥製剤と無菌の水性担体を混合してもよい。化合物製剤のpHは、通常3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8である。前述の幾つかの賦形剤、担体又は安定剤を使用すると、薬学的塩が形成されることが理解できる。
【0155】
本発明の塩又はその固体形態の治療用量は、例えば、治療の具体的な用途、化合物の投与方式、患者の健康と状態、及び処方医の判断によって決定することができる。医薬組成物における本発明の化合物の比率又は濃度は一定ではなく、投与量、化学特性(例えば、疎水性)及び投与経路を含む様々な要因に依存する。例えば、約0.1~10% w/vの当該化合物を含む生理学的緩衝水溶液によって非経口投与のために本発明の化合物を提供することができる。幾つかの典型的な投与量範囲は、約1 μg/kg~約1 g/kg体重/日である。幾つかの実施形態において、用量範囲は、約0.01 mg/kg~約100 mg/kg体重/日である。用量は、疾患又は病状の種類や進行の程度、特定の患者の一般的な健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効力、賦形剤製剤及びその投与経路などの変数に依存する可能性が高い。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから導出された用量-反応曲線によって外挿することで得ることができる。
【0156】
〔用語の定義と解釈〕
特に明記しない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される基と用語の定義には、例としての定義、例示的な定義、好ましい定義、表に記載される定義、実施例における具体的な化合物の定義などが含まれており、互いに任意に組み合わせたり、結合したりすることができる。このように組み合わせた後又は結合した後の定義及び化合物の構造は、本願の明細書に記載される範囲に含まれるべきである。
【0157】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値範囲は、少なくともその中のそれぞれの具体的な整数値を列挙することに相当する。例えば、2つ以上は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上を表す。幾つかの数値範囲が「数」として定義又は理解される場合、その範囲の2つの端点、その範囲内の各整数及びその範囲内の各小数が記載されていると理解すべきである。例えば、「0~10の数」は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10の各整数が記載されているだけでなく、更に少なくとも各整数と0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9との和が記載されていると理解すべきである。
【0158】
本明細書及び特許請求の範囲に、ある数値について「約」が記載される場合は、当該数値自体、及び当該分野で許容される当該数値の前後範囲内の数値、例えば当該数値±15%範囲内の数値、当該数値±10%範囲内の数値、当該数値±5%範囲内の数値などが含まれる。例えば、約10は、10±1.5範囲内、即ち8.5~11.5範囲内の数値、10±1.0範囲内、即ち9.0~11.0範囲内の数値、及び10±0.5範囲内、即ち9.5~10.5範囲内の数値を表す。
【0159】
「患者」という用語は、哺乳動物を含む任意の動物を指し、好ましくは、マウス、ラット、他の齧歯類動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ又は霊長類動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0160】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医が組織、システム、動物、個体又はヒトにおいて探している生物学的又は医学的反応を誘発する活性化合物又は薬物の量を指し、以下の1項又は複数項を含む:(1)疾患の予防:例えば、疾患、障害又は病状に感染しやすいが、疾患の病理又は症状がまだ経験又は発症していない個体における疾患、障害又は病状の予防、(2)疾患の抑制:例えば、疾患、障害又は病状の病理又は症状が経験又は発症している個体における疾患、障害又は病状の抑制(即ち病理及び/又は症状の更なる進行の防止)、(3)疾患の緩和:例えば、疾患、障害又は病状の病理又は症状が経験又は発症している個体における疾患、障害又は病状の緩和(即ち病理及び/又は症状の逆転)。
【0161】
「薬学的に許容される」という用語は、処方成分又は活性成分が一般的な治療目標の健康に過度の悪影響を与えないことを意味する。
【0162】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」という用語は、ヒトへの使用に適しており、十分な純度及び十分に低い毒性を有していなければならない、1種又は複数種の適合性固体又は液体充填剤又はゲル物質を意味する。ここでの「適合性」は、組成物の各成分が本発明の化合物及びそれらの間と、化合物の薬効を明らかに低下させることなく、互いに混合することができることを意味する。薬理学的に許容される賦形剤又は担体部分の例には、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、酢酸セルロースなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど)、硫酸カルシウム、植物油(大豆油、ゴマ油、ピーナッツ油、オリーブ油など)、ポリオール(プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、調味料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、パイロジェンフリー水などがある。
【発明の効果】
【0163】
本発明に係る式(I)の化合物の塩及びその結晶形は、良好な溶解性、安定性及び吸湿性を有する。例えば、式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、以下の利点を有する:(1)吸湿性が弱く、DVS試験後に結晶変換が発生せず、薬剤形成性CMCを制御しやすく、製剤開発のための物質基盤を提供し、(2)粒度が均一であり、PLM下での粒度が50 μm未満であり、結晶化プロセスは、反応プロセスにおける不純物を効果的に除去し、生産効率を向上させ、生産コストを削減することができ、(3)溶解性が明らかに向上し、薬物開発に適し、臨床上の利点を発揮し、(4)固体安定性がより優れる。
【0164】
従って、本発明が提供する塩及びその結晶形は、医薬用途により適する。また、その製造方法が簡単で実行可能であり、大量生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【
図1】式(I)の化合物の塩酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図2】式(I)の化合物の硫酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図3】式(I)の化合物のマレイン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器3)である。
【
図4】式(I)の化合物のリン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図5】式(I)の化合物の酒石酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図6】式(I)の化合物の酒石酸塩結晶形BのXRPDパターン(機器2)である。
【
図7】式(I)の化合物の酒石酸塩結晶形CのXRPDパターン(機器3)である。
【
図8】式(I)の化合物のフマル酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図9】式(I)の化合物のクエン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図10】式(I)の化合物のグリコール酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図11】式(I)の化合物のコハク酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器3)である。
【
図12】式(I)の化合物のコハク酸塩結晶形BのXRPDパターン(機器1)である。
【
図13】式(I)の化合物のアジピン酸塩結晶形BのXRPDパターン(機器2)である。
【
図14】式(I)の化合物のセバシン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器1)である。
【
図15】式(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図16】式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器1)である。
【
図17】式(I)の化合物の臭化水素酸塩結晶形AのXRPDパターン(機器2)である。
【
図18】式(I)の化合物の臭化水素酸塩結晶形BのXRPDパターン(機器1)である。
【
図19】式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形Aの安定性評価試料のXRPDオーバーパターン(機器2)である。
【
図20】(I)の化合物の塩酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図21】(I)の化合物の硫酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図22】(I)の化合物のマレイン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図23】(I)の化合物のリン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図24】(I)の化合物の酒石酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図25】(I)の化合物の酒石酸塩結晶形BのTGA/DSCパターンである。
【
図26】(I)の化合物のフマル酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図27】(I)の化合物のクエン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図28】(I)の化合物のグリコール酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図29】(I)の化合物のコハク酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図30】(I)の化合物のコハク酸塩結晶形BのTGA/DSCパターンである。
【
図31】(I)の化合物のアジピン酸塩結晶形BのTGA/DSCパターンである。
【
図32】(I)の化合物のセバシン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図33】(I)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図34】(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図35】(I)の化合物の臭化水素酸塩結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図36】(I)の化合物の臭化水素酸塩結晶形BのTGA/DSCパターンである。
【
図37】(I)の化合物の塩酸塩結晶形AのDVSパターンである。
【
図38】(I)の化合物のフマル酸塩結晶形AのDVSパターンである。
【
図39】(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形AのDVSパターンである。
【
図40】(I)の化合物の遊離塩基結晶形AのXRPDパターン(機器1)である。
【
図41】(I)の化合物の遊離塩基結晶形AのTGA/DSCパターンである。
【
図42】(I)の化合物の遊離塩基結晶形AのDVSパターンである。
【
図43】本発明の試験例7による投与後の動物の体重変化曲線である。
【
図44】本発明の試験例7による投与後の肺組織及び肺胞洗浄液中のTGF-β1含有量を示す変化図である。
【実施例】
【0166】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明に係る式(I)の化合物の塩形態とその結晶形及びその製造方法並びに応用を更に詳しく説明する。下記の実施例は、本発明を例示的に説明して解釈するためのものに過ぎず、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈すべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0167】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原材料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0168】
結晶形の検出機器及び方法
1. X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンは、PANalytacal製のX線粉末回折分析装置で収集され、スキャンパラメータは下記表19-1に示されている。
【表19-1】
【0169】
2. 熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)
TGA及びDSCパターンは、それぞれTA Q5000/5500熱重量分析装置及びTA 2500示差走査熱量測定装置で収集され、下記表19-2に試験パラメータがリストされている。
【表19-2】
【0170】
3. 液態核磁気共鳴(Solution NMR):
液態核磁気共鳴スペクトルは、DMSO-d6を溶剤として、Bruker 400M核磁気共鳴装置で収集された。
【0171】
4. 高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
試験における純度試験、溶解性及び安定性試験は、アジレント1260高速液体クロマトグラフによって実行された。分析条件は下記表19-3に示されている。
【表19-3】
【0172】
5. 動的水分吸着(DVS):
動的水分吸着(DVS)曲線は、SMS(Surface Measurement Systems)のDVS Intrinsicで収集された。25℃での相対湿度は、LiCl、Mg(NO
3)
2及びKClの潮解点で補正された。DVS試験パラメータは下記表19-4に示されている。
【表19-4】
【0173】
6. 偏光顕微鏡(PLM)
偏光顕微データは、Axio Lab. A1正立顕微鏡を使用して室温下で収集された。
【0174】
7. 高速液体クロマトグラフィー/イオンクロマトグラフィー(HPLC/IC)。
試験における純度試験、動的溶解性及び安定性試験は、アジレント1260高速液体クロマトグラフによって実行され、イオンの塩形成モル比の試験は、イオンクロマトグラフィーによって実行された。分析条件は下記表19-5と表19-6に示されている:
【表19-5】
【表19-6】
【0175】
実施例1:式(I)の化合物の製造
(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)-1-(2-((2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)アミノ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル))エタン-1-オン(目標化合物I)
【化4】
【0176】
ステップ1:(R)-5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イニル-2-オール(5A)の合成
【化5】
トリメチルシリルアセチレン(51.7 g)、エチルエーテル(600 mL)を三口フラスコに加え、窒素ガスの保護下で-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(2.5 M、217 mL)を徐々に滴下し、滴下完了後、-78℃の温度を維持して1時間反応させ、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン(50%、30 mL)溶液を加え、(R)-プロピレンオキシド(30 g)を徐々に滴下し、滴下完了後、温度を維持して1時間撹拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300 mL)を加えて反応をクエンチした。室温に昇温した後、分液し、有機相を乾燥し、シリカゲルを混ぜ、シリカゲルカラムにより分離して精製し(石油エーテル:酢酸エチル(V/V)=10:1)、生成物である淡黄色液体化合物(R)-5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イニル-2-オール(5A)(34 g、収率42.1%)を得た。
【0177】
ステップ2:(R)-2-((5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(5B)の合成
【化6】
原料(R)-5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イニル-2-オール(34 g、218 mmol)を340 mLの乾燥したテトラヒドロフランに加え、0℃に冷却し、60%のNaH(10.44 g、261 mmol)を加え、30分間撹拌し、0℃で原料2-tert-ブチルブロモアセテート(46.7 g、239 mmol)を加え、室温まで自然に昇温し、16時間撹拌した。0℃でメタノール(20 mL)を反応液に加え、シリカゲルを混ぜ、濃縮し、シリカゲルカラムにより分離して精製し(石油エーテル:酢酸エチル(V/V)=10:1)、淡黄色液体化合物である(R)-2-((5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(5B)(50 g、収率85%)を得た。
【0178】
ステップ3:(R)-2-(ペンタ-4-イン-2-イルオキシ)tert-ブチルアセテート(5C)の合成
【化7】
室温下で原料(R)-2-((5-(トリメチルシリル)ペンチル-4-イン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(50 g、185 mmol)を500 mLのテトラヒドロフランに加え、フッ化テトラブチルアンモニウム(53.2 g、203 mmol)を更に加え、室温で15時間反応させた。シリカゲルを混ぜ、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムにより分離して精製し(石油エーテル:酢酸エチル(V/V)=10:1)、表題の黄色液体化合物である(R)-2-(ペンタ-4-イン-2-イルオキシ)tert-ブチルアセテート(27 g、73.7%)を得た。
【0179】
ステップ4:(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(5D)の合成
【化8】
室温下で原料(R)-2-(ペンタ-4-イン-2-イルオキシ)tert-ブチルアセテート(27 g、136 mmol)を150 mLのDMFと20 mLのメタノールに加え、窒素ガスの保護下でアジドトリメチルシラン(23.53 g、204 mmol)、ヨウ化第一銅(2.08 g、10.89 mmol)をそれぞれ加え、反応液を90℃に加熱し、15時間撹拌した。反応液を40℃に冷却し、乾燥するまで濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、シリカゲルを混ぜ、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムにより分離して精製し(石油エーテル:酢酸エチル(V/V)=1:1)、黄色油状化合物である(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(14 g、42.6%)を得た。
【0180】
ステップ5:(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)酢酸(5E)の合成
【化9】
室温下で原料(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)tert-ブチルアセテート(14 g、58 mmol)を1,4-ジオキサンの塩化水素溶液(4 mol/L、70 mL)に加え、室温で16時間撹拌し、濾過し、固体をメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、乾燥して白色固体(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)酢酸(9.2 g、86%)を得た。
【0181】
ステップ6:(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)-1-(2-((2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)アミノ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル)-エタン-1-オン(目標化合物I)の合成
【化10】
室温下で原料(R)-2-((1-(1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)酢酸(9.41 g、42.5 mmol)、N-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-2-アミン(9.2 g、28.3 mmol)を1000 mLのDMFに加え、0℃下でT3P(50%のDMF溶液)(27 g、42.5 mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(21.95 g、170 mmol)を加え、室温まで自然に昇温し、16時間撹拌し、反応液を濾過し、濾液に水(3 mL)を加えて乾燥するまで濃縮し、残留物をシリカゲルカラムにより分離して精製し(ジクロロメタン:メタノール(V/V)=10:1)、12 gの粗生成物を得て、120 mLの酢酸イソプロピルで10時間スラリー化し、濾過し、乾燥して(R)-2-((1-(-1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)プロパン-2-イル)オキシ)-1-(2-((2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)アミノ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル)-エタン-1-オン(7.8 g、HPLC純度:98.63%、ee値>99%、収率65.7%)を得た。
【0182】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.30 (d, 1H), 7.64 (b,1H), 7.57 (t, 1H), 7.22-7.20 (m, 2H), 7.16-7.12 (m, 2H), 4.65-4.59 (m, 3H), 4.52 (s, 1H), 4.42 (s, 1H), 4.25-4.17 (m, 2H), 3.87-3.81 (m, 1H), 3.27-3.21 (m, 2H), 2.90-2.85 (m, 4H), 1.19 (t, 3H)。
LC-MS, M/Z (ESI): 420.4(M+1)。
【0183】
実施例2:式(I)の化合物の塩及び結晶形の製造
約15 mgの遊離塩基である式(I)の化合物原料と等モル比の相応する無機酸又は有機酸を0.5 mLの溶剤において室温で3日撹拌した。清澄な試料を5℃に移して撹拌し、依然として固体が析出しなかった場合は、-20℃で懸濁して撹拌し、清澄な試料を室温に移して揮発させた。試料を遠心分離し、結晶形の形態で存在する式(I)の化合物の塩を得た。
【0184】
使用されている無機酸又は有機酸、溶剤及び得られた14種類の塩並びに18種類の結晶形は、下記表20に示されている。
【表20】
【0185】
実施例3:式(I)の化合物の塩の結晶形の評価
各塩形態の特徴付け結果(より高い結晶化度、より小さいTGA重量損失、より少なくて鋭いDSC吸熱ピーク)及び酸の汎用性及び安全性レベルに応じて、塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A及びベンゼンスルホン酸塩結晶形Aを次のステップの評価のために選択した。製造された各試料に対するXRPD、TGA、DSC、NMR又はHPLC/ICの特徴付けを行い、結果は下記表21-1にまとめられた。
【表21-1】
【0186】
以下、繰り返し製造された3種類の塩形態を用いて塩形態を評価し、式(I)の化合物の非塩且つ非溶媒和物結晶形A(遊離塩基結晶形Aとも呼ばれる)を比較のために選択し、評価項目には吸湿性、偏光写真(PLM)、動的溶解性及び固体安定性が含まれる。
【0187】
そのうち、Cu-Kα線を用いて得られた前記遊離塩基結晶形AのX線粉末回折パターンの2θ回折角、D値及び/又は相対強度は、下記表21-2に示されている。
【表21-2】
【0188】
前記遊離塩基結晶形Aは、基本的に
図40に示されるX線粉末回折パターンを有し、基本的に
図41に示されるTGAとDSC曲線を有し、基本的に
図42に示されるDVS曲線を有する。
【0189】
3.1 吸湿性
動的水分吸着装置(DVS)により、繰り返し製造された塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A、ベンゼンスルホン酸塩結晶形A及び遊離塩基結晶形Aに対する吸湿性を評価した。相対湿度0%(0%RH)から開始し、試験において、25℃の恒温条件下で、湿度(0%RH-95%RH-0%RH)が変化した時の試料の質量変化百分率を収集した。DVS評価結果は下記表21-3にまとめられた。結果は、塩酸塩結晶形Aが吸湿性を有し、且つDVS試験後の結晶形が変化し、他の試料がいずれもわずかに吸湿性を有し、且つDVS試験後に結晶変換が発生しないことが示されている。
【表21-3】
【0190】
3.2 偏光写真(PLM)
繰り返し製造された塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A、ベンゼンスルホン酸塩結晶形A及び遊離塩基結晶形Aに対する偏光写真(PLM)による特徴付けを行い、各試料の粒子径はいずれも50 μm未満であった。
【0191】
3.3 動的溶解性
水及び3種類の生物溶媒における、繰り返し製造された塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A、ベンゼンスルホン酸塩結晶形A及び遊離塩基結晶形Aの動的溶解性を評価した。5 mg/mLの投入濃度(20 mgの原料を4 mLの溶剤に投入した)で37℃の条件下で回転混合(25 rpm)によって、水、SGF、FaSSIF及びFeSSIF 1の4種類の溶剤系における各試料の動的溶解性(1、4及び24時間)を測定した。各時点での試料を遠心分離によって濾過(0.45 μmのPTFEフィルターヘッド)した後、濾液のHPLC濃度とpH値を測定し、遠心分離後の固体試料のXRPDを試験した。溶解性試験の結果は下記表21-4にまとめられた。結果は、各系における塩酸塩結晶形Aとベンゼンスルホン酸塩結晶形Aの溶解性が遊離塩基結晶形Aより比較的に明らかに向上したことが示されている。
【表21-4】
【0192】
3.4 固体安定性
繰り返し製造された塩酸塩結晶形A、フマル酸塩結晶形A、ベンゼンスルホン酸塩結晶形A及び遊離塩基結晶形Aをそれぞれ25℃/60%RHと40℃/75%RHの条件下で1週間置いた後、XRPDとHPLCにより試料の物理的及び化学的安定性を検出した。安定性評価結果は下記表21-5にまとめられた。結果により、塩酸塩結晶形Aは、40℃/75%RHの条件下で1週間置いた後にHPLC純度が低下し、且つXRPD結晶化度が低下し、他の各試料は、2つの条件下で1週間置いた後に純度がいずれも明らかに低下せず、結晶形も明らかに変化しなかったことが示されている。
【表21-5】
【0193】
更なる試験により、ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、下記条件下で6か月保存した後の安定性が優れており、結晶形がいずれも変化しなかったことが示されている。
【0194】
条件1:包装:ポリエチレン袋+アルミホイル袋、検査条件:40℃±2℃/75%RH±5%RH(アルミホイル袋は不透明な材質で遮光できるもの、ポリエチレン袋とアルミホイル袋は包装時にいずれも密閉するもの)
条件2:包装:ポリエチレン袋+アルミホイル袋、外包装と内包装との間に乾燥剤を充填した。検査条件:25℃±2℃/60%RH±10%RH(アルミホイル袋は不透明な材質で遮光できるもの、ポリエチレン袋とアルミホイル袋は包装時にいずれも密閉するもの)
条件3:包装:ポリエチレン袋+アルミホイル袋、外包装と内包装との間に乾燥剤を充填した。検査条件:2℃~8℃(アルミホイル袋は不透明な材質で遮光できるもの、ポリエチレン袋とアルミホイル袋は包装時にいずれも密閉するもの)
【0195】
3.5 結論
3種類の塩形態と遊離塩基結晶形Aを選択して塩形態を評価した。DVS結果は、塩酸塩結晶形Aが吸湿性を有し、且つDVS試験後の結晶形が変化し、他の試料がいずれもわずかに吸湿性を有し、且つDVS試験後に結晶変換が発生しなかったことが示されている。PLM結果は、各試料の粒子径がいずれも50 μm未満であることが示されている。動的溶解性結果は、各系における塩酸塩結晶形Aとベンゼンスルホン酸塩結晶形Aの溶解性が遊離塩基結晶形Aより比較的に明らかに向上したことが示されている。固体安定性評価により、塩酸塩結晶形Aは、40℃/75%RHの条件下で1週間置いた後のHPLC純度が低下し、且つ試料の結晶化度が低下し、他の各試料は、2つの条件下で1週間置いた後に純度がいずれも明らかに低下せず、結晶形も明らかに変化せず、また、ベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは、上記条件下で6か月置いた後も結晶形が依然として安定していることが示されている。
【0196】
実施例4:式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩の多結晶形の評価
式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形Aを開始試料とし、合計100種類の異なる条件下での多結晶形スクリーニング試験を設定した。スクリーニング方法には、貧溶剤の添加、ゆっくりとした揮発、ゆっくりとした降温、懸濁撹拌(室温と50℃)、循環昇温・降温、気体と固体の浸透、気体と液体の拡散、ポリマーの誘発と粉砕が含まれる。単離された固体のX線粉末回折(XRPD)の結果から、開始結晶形Aであるベンゼンスルホン酸塩の1つの多結晶形のみが見出された。評価の一部は塩形態のスクリーニング段階で行われたため、60℃で24時間の固体安定性のみを評価した。結果は表22-1にまとめられ、XRPD結果は
図19に示されており、化合物Aのベンゼンスルホン酸塩結晶形Aを60℃で24時間置いた後に純度が明らかに低下せず、結晶形も明らかに変化しなかったことが示されている。
【表22-1】
【0197】
以下の試験例で使用される式(I)の化合物は、上記の実施例1で製造された式(I)の化合物であり、使用される対照化合物の構造は以下の通りである:
【化11】
【0198】
当該対照化合物は、特許出願WO2014110000A1を参照して合成し、HPLC純度は99.88%であった。
【0199】
試験例1:Autotaxin(ATX)酵素活性阻害試験
Autotaxin酵素に対する化合物の阻害活性は、Autotaxin Inhibitor Screening Assay Kit(Cayman、700580)を用いて検出された。まず、測定待ちの化合物をDMSO溶剤において10 mMの原液に調製し、次にDMSOを使用して8個の濃度点に勾配希釈した後、試薬キットにより提供されたAutotaxin Assay buffer(1×)で8個の濃度点を19×の化合物作動液(DMSOの含有量は1.9%)に希釈した。Autotaxin Assay Reagent(10×)を取り出し、Autotaxin Assay Buffer(1×)で10倍希釈した。Autotaxin Substrateを取り出し、1.2 mLのAutotaxin Assay Buffer(1×)を加えて溶解し、均一に混合した後に室温で静置した。96ウェルプレートの各濃度点の位置するウェルにおいて、各ウェルに150 μLのAutotaxin Assay Buffer(1×)、10 μLの希釈した19×の化合物作動液、10 μLのAutotaxin Assay Reagent(1×)、20 μLの溶解したAutotaxin Substrateを加え、均一に混合し、37℃の恒温でシェーカーを振とうし、暗所で30 minインキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、マイクロプレートリーダーに置いてOD405を読み取り、実験結果をソフトウェアGraphPad Prismに入力し、フィッティングにより各化合物のIC
50が算出された。
【表23-1】
【0200】
実験結果により、本発明の式(I)の化合物は、ATX酵素に対する阻害活性が大変良く、ATX酵素活性を効果的に阻害することができるが示されている。
【0201】
試験例2:ヒト肝ミクロソームの安定性試験
ヒト肝ミクロソームの安定性試験は、化合物とヒト肝ミクロソームのインビトロ共同インキュベートを用いて検出された。まず、測定待ちの化合物をDMSO溶剤において10 mMの原液に調製し、続いてアセトニトリルで化合物を0.5 mMに希釈した。PBSでヒト肝ミクロソーム(Corning)をミクロソーム/緩衝液溶液に希釈し、当該溶液で0.5 mMの化合物を作動溶液に希釈し、作動溶液において、化合物の濃度は1.5 μMであり、ヒト肝ミクロソームの濃度は0.75 mg/mLであった。ディープウェルプレートを取り、各ウェルに30 μLの作動溶液を加え、次に予熱した6 mMのNADPH溶液15 μLを加えて反応を開始し、37℃でインキュベートした。0、5、15、30、45分間インキュベートした時、135 μLのアセトニトリルを相応するウェルに加えて反応を停止させた。最後の45分の時点でアセトニトリルを使用して反応を停止させた後、ディープウェルプレートを10分間(600 rpm/min)ボルテックスし、次に15分間遠心分離した。遠心分離後に上清を取り、1:1で精製水を加えた後にLC-MS/MS検出を行い、各時点での化合物のピーク面積と内部標準ピーク面積との比が得られ、5、15、30、45分の時点での化合物ピーク面積比と0分の時点でのピーク面積比とを比べて、各時点での化合物の残留百分率を計算し、Excelを使用してT
1/2を計算した。
【表23-2】
【0202】
対照化合物に比べると、本発明の式(I)の化合物は更に優れた肝臓代謝の安定性を示し、インビボでの代謝が更に遅く、露出度が更に高く、本発明の式(I)の化合物の肝ミクロソーム安定性のT1/2は対照化合物より優れ、更には対照化合物の2倍以上に達することができ、これにより、臨床投与量と投与頻度を減らし、臨床投与の毒性と副作用を減らし、臨床コンプライアンスを改善することができる。
【0203】
試験例3:全自動電気生理学的パッチクランプQPatchによるhERGに対する化合物の阻害作用の検出
全自動電気生理学的パッチクランプQPatchによってhERGに対する化合物の阻害作用を検出した。この試験で使用される細胞は、hERG cDNAをトランスフェクトし、hERGチャネルを安定的に発現するCHO細胞系(デンマークSophion Bioscience社により提供される)であり、細胞継代数はP24であった。細胞は、Ham's F12培地、10%(v/v)の不活化されたウシ胎児血清、100 μg/mLのハイグロマイシンB、100 μg/mLのGeneticinといった成分を含む培養基(全てInvitrogen社から入手)において培養した。CHO hERG細胞を上記培養液を含む培養皿で増殖させ、37℃で、5%のCO2を含むインキュベータにおいて培養した。
【0204】
細胞外液(2 mMのCaCl2、1 mMのMgCl2、4 mMのKCl、145 mMのNaCl、10 mMのGlucose、10 mMのHEPES、pHは約7.4、浸透圧は約305 mOsm)及び細胞内液(5.374 mMのCaCl2、1.75 mMのMgCl2、120 mMのKCl、10 mMのHEPES、5 mMのEGTA、4 mMのNa-ATP、pHは約7.25、浸透圧は約295 mOsm)を調製した。
【0205】
測定待ちの化合物をDMSO溶剤において10 mMの原液に調製し、DMSOで化合物を3、1、0.3、0.1 mMに希釈し、次に細胞外液で化合物を30、10、3、1、0.3及び0.1 μMに希釈し、最終濃度が0.3%である30 μMの化合物DMSOを除いて、他の濃度の化合物溶液におけるDMSOの最終濃度は全て0.1%であった。
【0206】
CHO hERG細胞を消化して再懸濁した後、全自動QPatchシステム(Sophion、デンマーク)に加え、以下の事前設定されたプログラムに従って試験を実施した。
【0207】
初期段階で破膜した全細胞構成状態に達した後、室温の環境下(約25℃)で全細胞電流を記録し、細胞が安定するまで少なくとも120秒記録し、安定した細胞を選択して試験を実施した。試験全体のプロセスにおいて、細胞を-80 mVの電圧下でクランプし、hERGカリウムチャネルを活性化するために細胞クランプ電圧を+20 mVに脱分極し、不活性化を除去し、外向きのテール電流を生成するために2.5秒後に-50 mVに更にクランプした。テール電流のピーク値は、hERG電流の大きさの数値として使用された。上記の電圧パターンは、電気生理学的試験のために15秒ごとに細胞に印加された。0.1%のジメチルスルホキシド(溶剤)を含む外液を細胞に加え、ベースラインを確立し、電流を更に3分間安定させた。化合物溶液を加えた後、当該化合物の効果が定常状態に達するか又は4分間を限度とするまで、細胞を試験環境に維持した。化合物の様々な濃度勾配を使用した試験実験において、低濃度から高濃度までクランプされた細胞に化合物を加えた。化合物試験が完了した後、電流が定常状態に戻るまで外液で細胞を洗浄した。
【0208】
試験データは、Sophionにより提供されたQpatch分析ソフトウェア、Excel及びGraphpad Prismなどによって分析された。
【表23-3】
【0209】
対照化合物に比べて、本発明の式(I)の化合物は、更に弱いhERG阻害活性を示し、ATX酵素活性に対する化合物の阻害IC50値に合わせて、式(I)の化合物の阻害は、hERGに対して更に優れた安全ウィンドウを示し、心臓の安全性に明らかな利点を有する。
【0210】
試験例4:熱力学的溶解性試験
pH7.4のリン酸塩緩衝液(PBS)、pH5.8のFeSSIF溶液(10 mMのタウロコール酸ナトリウム、2 mMのレシチン、81.65 mMの水酸化ナトリウム、125.5 mMの塩化ナトリウム、0.8 mMのオレイン酸ナトリウム、5 mMのモノオレイン酸グリセロール、55.02 mMのマレイン酸を含有する)、pH1.6のFaSSGF溶液(1 Lの溶液には80 μMのタウロコール酸ナトリウム、20 μMのレシチン、0.1 gのペプシン、34.2 mMの塩化ナトリウムを含有する)を調製した。
【0211】
化合物を正確に秤量し、調製されたpH7.4のリン酸塩緩衝液、pH5.8のFeSSIF溶液及びpH1.6のFaSSGF溶液を加え、濃度が4 mg/mLの溶液に調製し、1000 rpmの回転速度で1時間振とうした後、室温で一晩インキュベートした。インキュベート後の溶液を12000 rpmの回転速度で10分間遠心分離し、溶解されていない粒子を除去し、上清を新しい遠心分離管に移した。上清を適切に希釈した後、内部標準を含有するアセトニトリル溶液を加え、同じ基質で調製された標準曲線で定量した。
【表23-4】
【0212】
実験結果により、対照化合物の溶解性は比較的低く、胃腸管での吸収が比較的低く、経口薬の開発に役立たないことが示されている。対照化合物に比べて、本発明の式(I)の化合物は、模擬胃液、模擬腸液及び中性条件下での熱力学的溶解性が顕著に向上するため、体内の腸管吸収度が大幅に向上し、経口投与の曝露量が比較的に高く、臨床投与量を減らし、臨床コンプライアンスを改善できると予想された。
【0213】
試験例5:薬物動態試験
ラットのインビボ薬物動態試験では、180~240 gの雄SDラットを6匹使用し、一晩絶食させた。3匹のラットに10 mg/kgを強制経口投与し、投与前及び投与後の15、30分、及び1、2、4、8、24時間に採血した。別の3匹のラットに1 mg/kgを静脈内注射投与し、投与前及び投与後の5、15、30分、及び1、2、4、8、24時間に採血した。血液試料を8000回転/分で4℃で6分間遠心分離し、血漿を収集し、-20℃で保存した。内部標準を含む3~5倍量のアセトニトリル溶液を各時点の血漿に加えて混合し、1分間ボルテックスし、13000回転/分で4℃で10分間遠心分離し、上清に3倍量の水を加えて混合し、適量の混合液を取ってLC-MS/MS分析を行った。主な薬物動態パラメータは、WinNonlin 7.0ソフトウェアを使用して非コンパートメントモデルにより分析された。
【0214】
マウスのインビボ薬物動態試験では、20~25 gの雄ICRマウスを18匹使用し、一晩絶食させた。9匹のマウスに10 mg/kgを強制経口投与し、各採血時点で3匹のマウス、合計9匹のマウスを交互に採血した。別の9匹のマウスに1 mg/kgを静脈内注射投与し、各採血時点で3匹のマウス、合計9匹のマウスを交互に採血した。残りの操作はラット薬物動態試験と同じである。
【表23-5】
【表23-6】
【0215】
実験結果により、対照化合物と比べて、本発明の式(I)の化合物は更に優れた薬物動態特性が示されている。特にラット体内において、本発明の式(I)の化合物のクリアランス率(CL)が更に低く、対照化合物の約1/6であり、式(I)の化合物が体内で比較的安定することが示され、その経口投与されるCmax及びAUC0-tが対照化合物のそれぞれ6.1倍と4.2倍に達することができる。
【0216】
試験例6:ヒト血漿中のATX酵素活性に対する阻害試験
健康なボランティアから全血を採取し、ヘパリンで抗凝固処理し、採血管を3000 rpmで10分間遠心分離し、血漿を-80℃で保存し、使用に備えた。
【0217】
化合物は、従来の濃度要件に従ってDMSOで連続希釈し、次に3 μLを96ウェルプレートに加え、147 μLのPBSをそれぞれ取って3 μLの化合物を含むウェルに加え、均一に混合した後に50 μLを取って新しい96ウェルプレートに加えた。-80℃の冷蔵庫からヒト血漿を取り出し、37℃の水浴釜で急速に振とうして解凍し、50 μLの希釈化合物を含む96ウェルプレートに50 μLのヒト血漿を加えた(最終系は1%のDMSOである)。化合物を含まない群を陽性群に設定した。96ウェルプレートを振とうして均一に混合し、37℃で3時間インキュベートした。別のブランク群を設定し、ブランク群の血漿を-80℃で保存し、ブランク群の作用は内因性LPAのベースライン濃度を測定することであった。
【0218】
インキュベート終了後、ブランク群を氷上で解凍し、インキュベートプレートに移し、内部標準LPA17:0を含む過剰のアセトニトリルをインキュベートプレートに加えて血漿タンパク質を沈殿させ、ボルテックスにより遠心分離した後、上清を取って希釈し、LC-MSMS質量分析によりLPA18:2及び内部標準LPA17:0のピーク面積を検出した。
【0219】
LPA18:2と内部標準LPA17:0とのピーク面積比を計算し、下記式によってLPA18:2の生成阻害率を計算した。
【0220】
阻害率(%)=100-(様々な濃度の化合物群-ブランク群)/(陽性群-ブランク群)*100
化合物の様々な濃度の阻害率に基づき、ヒト血漿中のATX酵素活性に対する化合物の阻害IC
50値を計算した。
【表23-7】
【0221】
実験結果により、本発明の式(I)の化合物は、ヒト血漿中のATX酵素に対する阻害活性が大変良く、ATX酵素活性を効果的に阻害することができ、且つ対照化合物より明らかに優れたことが示されている。
【0222】
試験例7:ラットブレオマイシン誘発IPFモデル
180~240 gの雄BNラットを使用し、5 U/kgの用量でブレオマイシン誘発IPFモデル(特発性肺線維症モデル)を実施した。モデリング後、動物を溶媒対照群、GLPG-1690群(Galapagos社の臨床第III相化合物)、対照化合物群及び式(I)の化合物にランダムに分け、モデリング後の2日目から1日2回強制経口投与し、投与群には1回に30 mg/kg投与し、溶媒対照群にはブランク溶媒を投与し、連続的に21日投与した。
【0223】
投与期間の間、体重を3日ごとに測定した。投与21日目に、初回投与後の2 hに肺胞洗浄を行い、洗浄液中の炎症細胞をカウントし、洗浄液上清中の関連バイオマーカーを検出し、洗浄後にラットの左肺を取って固定し、Massonのトリクローム染色を線維症の病理学的スコアに使用し、残りの肺葉を凍結保存した。化合物3群の肺胞洗浄液上清及び新鮮に凍結保存した肺組織を採取し、ELISA法によりTGF-β1タンパク質含有量及び総タンパク質量を検出し、総タンパク質1 mgあたりのTGF-β1量を計算した。
【0224】
実験結果により、式(I)の化合物は、動物の体重減少について、対照化合物群より明らかに少なく、式(1)の化合物の安全性が更に優れ(結果は
図43に示されている)、式(I)の化合物の肺胞洗浄液上清及び新鮮に凍結保存した肺組織中のTGF-β1含有量は、溶媒対照群より顕著に低く、式(I)の化合物は顕著な抗線維化効果を有した(結果は
図44に示されている)ことが示されている。
【0225】
試験例8:薬物動態試験(結晶形)
マウスのインビボ薬物動態試験では、20~25 gの雄ICRマウスを9匹使用し、一晩絶食させ、10 mg/kgを強制経口投与し、各採血時点で3匹のマウス、合計9匹のマウスを、投与前及び投与後の15、30分、及び1、2、4、8、12、24時間に交互に採血した。血液試料を8000回転/分で4℃で6分間遠心分離し、血漿を収集し、-20℃で保存した。内部標準を含む3~5倍量のアセトニトリル溶液を各時点の血漿に加えて混合し、1分間ボルテックスし、13000回転/分で4℃で10分間遠心分離し、上清に3倍量の水を加えて混合し、適量の混合液を取ってLC-MS/MS分析を行った。主な薬物動態パラメータは、WinNonlin 7.0ソフトウェアを使用して非コンパートメントモデルにより分析された。
【表23-8】
【0226】
実験結果により、対照化合物と比べて、本発明の式(I)の化合物のベンゼンスルホン酸塩結晶形Aは更に優れた薬物動態特性を有することが示されている。
【0227】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で行われた何れかの修正、同等の取替え、改良なども、本発明の請求範囲内に含まれるべきである。