(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20250409BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20250409BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B9/00 A
B32B15/08 101Z
H05K9/00 Q
(21)【出願番号】P 2023542634
(86)(22)【出願日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2023010577
(87)【国際公開番号】W WO2023182204
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2023-07-12
【審判番号】
【審判請求日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2022045662
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】香月 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 志朗
【合議体】
【審判長】伊藤 隆夫
【審判官】篠塚 隆
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168258号公報(JP,A)
【文献】特開2021-144869号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B9/00
B32B15/08
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層に配置された保護層と、
前記保護層の内側に積層されたシールド層とを備え、
前記保護層の表面抵抗率は、1.0×10
5~2.2×10
10Ω/□であり、
前記保護層は、バインダー樹脂と、平均粒子径が0.1~15μmである炭素粒子を含
み、
保護層側のシールド層の表面に黒色顔料と粘着剤成分から構成される黒色粘着剤層が形成されていないことを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記保護層中の前記炭素粒子の含有量は、5~30重量%である請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記電磁波シールドフィルムは、前記保護層と、絶縁層と、前記シールド層として機能する金属層と、導電性接着剤層とが順に積層されてなる請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記電磁波シールドフィルムは、前記保護層と、絶縁層と、前記シールド層として機能する導電性接着剤層とが順に積層されてなる請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばフレキシブルプリント配線板(FPC)などのプリント配線板に電磁波シールドフィルムを貼り付けて、外部からの電磁波をシールドすることが行われている。
【0003】
電磁波シールドフィルムは、通常、導電性接着剤層と、金属薄膜等からなるシールド層と、絶縁層とが順に積層された構成を有する。この電磁波シールドフィルムをプリント配線板に重ね合わせた状態で加熱プレスすることにより、電磁波シールドフィルムは接着剤層によってプリント配線板に接着されて、シールドプリント配線板が作製される。この接着後、はんだリフローによってプリント配線板に部品が実装される。また、プリント配線板は、ベースフィルム上のプリントパターンが絶縁フィルムで被覆された構成となっている。
【0004】
このような、電磁波シールドフィルムとして、特許文献1には、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層に隣接するシールド層と、前記シールド層の前記絶縁樹脂層とは反対側に設けられた導電性接着剤層と、を備えた電磁波シールドフィルムであって、前記シールド層は、複数の厚さ1μm以下の金属層と、前記複数の金属層の間に介在する非金属層と、を備える、電磁波シールドフィルムが開示されている。
また、特許文献2には、導電層、および絶縁層を備え、前記絶縁層が熱硬化性樹脂、硬化剤、および黒色系着色剤を含み、前記黒色系着色剤は、平均一次粒子径が20~100nmであることを特徴とする電磁波シールドシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-136437号公報
【文献】特開2016-143751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電磁波シールドフィルムを製造する場合、ロール搬送により電磁波シールドフィルムを搬送するが、絶縁層とロールとが接触する際に、絶縁層に静電気が発生する。絶縁層に静電気が発生した場合、絶縁層をアースに接続しても電気は流れにくく、静電気が蓄積してしまう。
電磁波シールドフィルムは、その後、カッティングを受けたり、積層されて保管される。
絶縁層に静電気が蓄積していると、カッティングの際にうまく切断できないという問題や、保管後に個別に取り出し使用しようとする際に、他の電磁波シールドフィルムとくっついてしまい剥がしにくくなるという問題(つまり、ブロッキング問題)が生じる。
【0007】
特許文献2に記載の電磁波シールドシートでは、絶縁層に導電性を有する黒色系着色剤が含まれているものの、絶縁層に静電気が発生した場合、絶縁層をアースに接続しても電気は流れにくく、静電気が蓄積してしまう。そのため、特許文献2に記載の電磁波シールドシートでもブロッキングの問題が生じる。また、黒色系着色剤の平均粒子径が20~100nmと小さいため、絶縁層の表面の凹凸が小さくなり、絶縁層に光沢が生じてしまい、絶縁層の表面に傷等が生じた場合、目立つという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明は、製造時や搬送時に蓄積した静電気を消散しやすい電磁波シールドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁波シールドフィルムは、最外層に配置された保護層と、上記保護層の内側に積層されたシールド層とを備え、上記保護層の表面抵抗率は、1.0×105~2.0×1012Ω/□であり、上記保護層は、バインダー樹脂と、平均粒子径が0.1~15μmである炭素粒子を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、最外層に配置された保護層の表面抵抗率が、1.0×105~2.0×1012Ω/□である。
保護層の表面抵抗率が上記範囲であると、保護層は静電気拡散性を有するので、保護層に静電気が蓄積したとしても、アースと接続することにより保護層に蓄積した静電気を速やかに消散することができる。
その結果、電磁波シールドフィルム全体としても静電気が蓄積しにくくなる。
上記表面抵抗率が1.0×105Ω/□未満である場合、静電気を一瞬で消散できるものの、静電気が消散する際に、火花を伴いやすくなる。
上記表面抵抗率が2.0×1012Ω/□を超えると、保護層をアースに接続したとしても、電流が流れにくくなる。そのため、静電気が消散しにくくなる。
【0011】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層は、バインダー樹脂と、平均粒子径が0.1~15μmである炭素粒子を含む。
保護層が上記範囲の平均粒子径の炭素粒子を含むと、保護層の表面に炭素粒子が適度に露出し、保護層の表面抵抗率を1.0×105~2.0×1012Ω/□にすることができる。また、保護層の表面に凹凸が形成されるので、保護層の低光沢度を実現することができる。そのため、保護層に傷等が生じても、傷等が目立ちにくい。
炭素粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、炭素粒子が保護層の中に埋まってしまい、保護層の表面に露出しにくくなる。そのため、保護層をアースに接続したとしても、電流が流れにくく、静電気が消散しにくくなる。
炭素粒子の平均粒子径が15μmを超えると、保護層の表面の凹凸が大きくなりすぎる。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記保護層中の前記炭素粒子の含有量は、5~30重量%であることが好ましい。
炭素粒子の含有量が上記範囲であると、保護層の表面抵抗率を、1.0×105~2.0×1012Ω/□とすることができる。また、保護層を好適に黒色にすることができ隠蔽性が向上する。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムは、上記保護層と、絶縁層と、上記シールド層として機能する金属層と、導電性接着剤層とが順に積層されてなっていてもよい。
本発明の電磁波シールドフィルムは、上記保護層と、絶縁層と、上記シールド層として機能する導電性接着剤層とが順に積層されてなっていてもよい。
これらの構成の電磁波シールドフィルムは、充分な電磁波シールド性能を有する。
また、最外層に保護層が形成されているので、蓄積した静電気を速やかに消散させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムによれば、製造時や搬送時に蓄積した静電気を消散しやすい電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのロール搬送の一例を模式的に示す工程図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0017】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムについて図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0018】
図1に示す電磁波シールドフィルム10は、保護層20と、絶縁層30と、金属層40と、導電性接着剤層50とが順に積層されてなる。
電磁波シールドフィルム10において金属層40はシールド層として機能する。そして、電磁波シールドフィルム10において、保護層20は最外層に配置されており、金属層40はその内側に配置されている。
【0019】
また、電磁波シールドフィルム10において、保護層20の表面抵抗率は、1.0×105~2.0×1012Ω/□である。なお、保護層20の表面抵抗率は、1.0×106~1.0×1011Ω/□であることが好ましく、1.0×107~1.0×109Ω/□であることがより好ましい。
保護層20の表面抵抗率が上記範囲であると、保護層20は静電気拡散性を有するので、保護層20に静電気が蓄積したとしても、アースと接続することにより保護層20に蓄積した静電気を消散させることができる。
その結果、電磁波シールドフィルム10全体としても静電気が蓄積しにくくなる。
上記表面抵抗率が1.0×105Ω/□未満である場合、静電気を一瞬で消散できるものの、静電気が消散する際に、火花を伴いやすくなる。
上記表面抵抗率が2.0×1012Ω/□を超えると、保護層をアースに接続したとしても、電流が流れにくくなる。そのため、静電気が消散しにくくなる。
【0020】
また、電磁波シールドフィルム10では、保護層20は、バインダー樹脂と、平均粒子径が0.1~15μmである炭素粒子を含む。なお、炭素粒子の平均粒子径は、1~10μmであることが好ましい。
保護層20が上記範囲の平均粒子径の炭素粒子を含むと、保護層20の表面に炭素粒子が適度に露出し、保護層20の表面抵抗率を1.0×105~2.0×1012Ω/□にすることができる。また、保護層20の表面に凹凸が形成されるので、保護層20の低光沢度を実現することができる。そのため、保護層20に傷等が生じても、傷等が目立ちにくい。
炭素粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、炭素粒子が保護層の中に埋まってしまい、保護層の表面に露出しにくくなる。そのため、保護層をアースに接続したとしても、電流が流れにくく、静電気が消散しにくくなる。
炭素粒子の平均粒子径が15μmを超えると、保護層の表面の凹凸が大きくなりすぎる。
なお、炭素粒子は二次粒子を形成していてもよく、その大きさは、1~15μmであることが好ましい。
【0021】
なお、本明細書において、炭素粒子の平均粒子径は、保護層20の表面(縦×横=250μm×350μm)を、デジタルマイクロスコープ(VHX-5000、(株)キーエンス製)を使用し、撮影倍率1000倍で撮影し、当該撮影した画像において無作為に5個の一次粒子である炭素粒子を選択し、それらの炭素粒子の長径を測定した値の平均値を意味する。
【0022】
また、電磁波シールドフィルム10では、保護層20中の炭素粒子の含有量は、5~30重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
炭素粒子の含有量が上記範囲であると、保護層20の表面抵抗率を、1.0×105~2.0×1012Ω/□とすることができる。
保護層中の炭素材料の含有量が5重量%未満であると、保護層の表面抵抗率が良好な範囲になりにくい。
保護層中の炭素材料の含有量が30重量%を超えると、保護層の表面の凹凸が大きくなり、保護層の耐傷性が低下しやすくなる。
【0023】
炭素粒子の種類としては、保護層20の表面抵抗率を調整することができれば特に限定されないが、例えば、アモルファスカーボンやグラファイト等であってもよい。
【0024】
なお、電磁波シールドフィルム10では、保護層20は、炭素粒子以外の炭素材料を含んでいてもよい。炭素材料により保護層20の表面抵抗率を調整することができる。
炭素粒子以外の炭素材料の形状としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0025】
保護層20に含まれるバインダー樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等から構成されていることが好ましい。
【0026】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0029】
保護層20に含まれるバインダー樹脂は、1種単独の材料であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
保護層20には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0031】
保護層20の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、0.1~15μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。
【0032】
保護層20は、黒色であることが好ましい。保護層20が黒色であると、隠蔽性が向上し、意匠性が向上する。
保護層20は、L*a*b*表色系において、L*値が10~30であることが好ましく、a*値が0.1~10であることが好ましく、b*値が-5~5であることが好ましい。
【0033】
保護層20のJIS K 5600-5-4に準拠した引っかき硬度は、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
保護層20の引っかき硬度がH以上であると、耐傷性が向上し、保護層20が剥がれ落ちにくくなる。そのため、良好な外観を維持することができる。
【0034】
保護層20の表面粗さRaは、5.0μm以下であることが好ましく、3.0~0.1μmであることがより好ましい。
保護層20の表面粗さRaが5.0μm以下であると、保護層の耐傷性が良好になる。
【0035】
保護層20のBYK-Gardnerマイクロータリーグロスで測定した85°光沢度は、30~80であることが好ましく、40~60であることがより好ましい。
保護層20の85°光沢度が上記範囲であると、保護層20の表面粗さRaが小さくなり、保護層の耐傷性が良好になる。
【0036】
電磁波シールドフィルム10において、絶縁層30の材料は特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等から構成されていることが好ましい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0038】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物等が挙げられる。
【0039】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0040】
絶縁層30は、1種単独の材料からなっていてもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0041】
絶縁層30には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0042】
絶縁層30の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、0.1~15μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。
【0043】
本明細書において、「絶縁層」とは、表面抵抗率が2.0×1012Ω/□を超える樹脂層のことを意味する。
【0044】
電磁波シールドフィルム10において、金属層40は、金属箔、金属めっき層、金属蒸着層等であってもよい。
また、金属層40の材料は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛、又はこれらの合金等からなることが好ましい。金属層40がこれらの金属からなると、金属層40のシールド性が向上する。
これらの中では、高周波帯の電磁波のシールド性能に優れる観点から、銅層、銀層が好ましく、経済性の観点から、銅層であることが好ましい。
【0045】
金属層40の厚さは、0.1~10μmであることが好ましく、1~6μmであることがより好ましい。
金属層40の厚さが、0.1μm未満であると、シールド性が低下しやすくなる。
なお、金属層40の厚さは10μmを超えてもシールド性はほぼ向上しないため、10μm以下とすることで、シールド性を最大限に発揮しつつ、コストを抑えることができ、また本発明の電磁波シールドフィルムを備える電子機器を小さく設計することができる。
【0046】
電磁波シールドフィルム10において、導電性接着剤層50は、等方導電性を有していてもよく、異方導電性を有していてもよい。
上記の通り導電性接着剤層50は、プリント配線板に配置されることになる。このような場合において、等方導電性及び異方導電性のいずれかを有する導電性接着剤層50を、プリント配線板のグランド配線と接触させると、導電性接着剤層50を介し、プリント配線板のグランド配線と、電磁波シールドフィルム10の金属層40とを電気的に接続することができる。これにより、電磁波シールドフィルム10が好適に電磁波をシールドすることができる。
【0047】
導電性接着剤層50が、異方導電性を有する場合、等方導電性を有する場合に比べて、プリント配線板の信号回路で伝送される高周波信号の伝送特性が向上する。
【0048】
導電性接着剤層50は、導電性フィラーと接着性樹脂とを含む。
【0049】
導電性接着剤層50の導電性フィラーは、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0050】
導電性フィラーの形状は、特に限定されないが、球状、フレーク状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。これらの中では、フレーク状であることが好ましい。
導電性フィラーがフレーク状導電性フィラーであると、電磁波シールドフィルム10を曲げた際、導電性フィラーも曲がり、導電性フィラー同士の接触が維持されやすくなる。その結果、導電性接着剤層の導電性が低下しにくくなる。
【0051】
導電性フィラーの平均長径は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましく、5~13.0μmであることがより好ましい。
導電性フィラーの平均長径が0.5μm以上であると、導電性接着剤層の導電性が良好となる。
導電性フィラーの平均長径が15.0μm以下であると、導電性接着剤層を薄くすることができる。
なお、本明細書において導電性フィラーの平均長径とは以下の方法で測定された値を意味する。
導電性接着剤層を切断した断面の走査電子顕微鏡法(SEM)画像を取得する。導電性フィラーの平均長径とは、そのSEM画像における任意の5個の導電性フィラーの長径の平均値のことを意味する。
【0052】
導電性接着剤層50に含まれる導電性フィラーの重量割合は、10~80重量%であることが好ましい。
導電性接着剤層50が異方導電性を有する場合、導電性接着剤層50に含まれる導電性フィラーの重量割合は、10~40重量%であることが好ましく、15~35重量%であることがより好ましい。
【0053】
導電性接着剤層50の厚さは、特に限定されず、必要に応じ適宜設定することができるが、0.5~30.0μmであることが好ましい。
導電性接着剤層の厚さが0.5μm未満であると、良好な導電性が得られにくくなる。
導電性接着剤層の厚さが30.0μmを超えると、電磁波シールドフィルム全体が厚くなり扱いにくくなる。
【0054】
導電性接着剤層50に含まれる接着性樹脂の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
導電性接着剤層50の接着性樹脂の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0055】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムの静電気が速やかに消散する原理を図面を用いて説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのロール搬送の一例を模式的に示す工程図である。
【0056】
図2に示すように電磁波シールドフィルム10を、ロール装置60を用いてロール搬送する際、ロール装置60と電磁波シールドフィルム10が接触すると、摩擦により、電磁波シールドフィルム10に静電気が生じる。
図2に示すように、ロール装置60をアースと接続することにより、電磁波シールドフィルム10の最外層に配置された保護層からアースに電流が流れ、静電気を速やかに消散させることができる。
【0057】
なお、電磁波シールドフィルムに保護層が形成されておらず、最外層に絶縁層が配置されている場合、絶縁層は電流が流れにくく、ロール装置をアースと接続したとしても、絶縁層に蓄積した静電気はアースに流れにくい。そのため、静電気が蓄積したままの状態となりやすい。
【0058】
図2では、ロール装置60をアースに接続していたが、本発明の電磁波シールドフィルムから静電気を消散できるのであれば、アースに接続する位置は特に限定されない。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムについて図面を用いて説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0060】
図3に示す電磁波シールドフィルム110は、保護層120と、絶縁層130と、導電性接着剤層150とが順に積層されてなる。
電磁波シールドフィルム110において導電性接着剤層150はシールド層として機能する。そして、電磁波シールドフィルム110において、保護層120は最外層に配置されており、導電性接着剤層150はその内側に配置されている。
【0061】
電磁波シールドフィルム110において、保護層120及び絶縁層130の好ましい構成は、上記電磁波シールドフィルム10の保護層20及び絶縁層30の好ましい構成と同じである。
【0062】
電磁波シールドフィルム110において、導電性接着剤層150は、等方導電性を有し、シールド層として機能する。この構成及び機能以外は、導電性接着剤層150の好ましい構成は、上記電磁波シールドフィルム10の導電性接着剤層50と同じ構成である。
【0063】
電磁波シールドフィルム110には、電磁波シールドフィルム10と同様に蓄積した静電気を速やかに消散させることができる。
【0064】
(その他の実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムでは、保護層とシールド層(金属層又は導電性接着剤層)との間に絶縁層が形成されていた。
しかし、本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層とシールド層とが直接接触していてもよい。
【実施例】
【0065】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
まず、離型処理をしたポリエチレンテレフタレートからなる支持体フィルムを準備した。
【0067】
次に、バインダー樹脂としてポリエステルメラミンを80重量部と、炭素材料として黒鉛粒子(平均粒子径:5μm)を20重量部とを混合し、保護層用組成物を作製した。
なお、黒鉛粒子の平均粒子径は、保護層用組成物を作製後、前述の炭素粒子の平均粒子径の測定方法に基づいて測定した結果を示している。
その後、当該保護層用組成物を、厚さ5μmとなるように支持体フィルムに塗布し、保護層とした。
【0068】
次に、保護層の上にエポキシ樹脂からなる接着性樹脂を厚さが5μmとなるように塗布し、絶縁層を形成した。
【0069】
次に、絶縁層の上に、厚さ1μmの銅箔を配置し金属層とした。
【0070】
次に、接着性樹脂であるエポキシ樹脂を35重量%と、導電性フィラーである銅粉を65重量%混合し、導電性接着剤を準備した。
その後、金属層の上に、当該導電性接着剤を厚さ5μmとなるように、コーティングを行い、導電性接着剤層を形成した。コーティング方法としては、リップコート方式を用いた。
【0071】
以上の工程を経て、実施例1に係る電磁波シールドフィルムを製造した。
【0072】
(実施例2)~(実施例5)
保護層に含まれる黒鉛粒子の含有量を、表1に示すようにした以外は、実施例1と同様に、実施例2~実施例5に係る電磁波シールドフィルムを製造した。
【0073】
(比較例1)
保護層を形成しない以外、実施例1と同様に比較例1に係る電磁波シールドフィルムを製造した。
【0074】
【0075】
(表面抵抗率測定)
各実施例に係る電磁波シールドフィルムの保護層及び比較例1に係る電磁波シールドフィルムの絶縁層の表面抵抗率を、ADCMT 8340A Ultra High Resistance Meterを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(スチールウール付着試験)
各実施例及び比較例に係る電磁波シールドフィルムを、縦×横=250mm×250mmに裁断し試験片を作製した。
当該試験片の保護層(比較例1に係る試験片では、絶縁層)に、保護層が目視できなくなる程度にスチールウール粉を載せ、その後、当該試験片を逆さまにして、スチールウール粉を落とした。
スチールウール粉を落とした後の試験片の保護層について、静電気によりスチールウール粉が付着しているかどうかを目視で観察して評価した。結果を表1に示す。
なお、評価基準は以下の通りである。
〇:スチールウール粉の付着面積が、保護層(絶縁層)の全面に対して、30%未満であった。
△:スチールウール粉の付着面積が、保護層(絶縁層)の全面に対して、30%以上、50%未満であった。
×:スチールウール粉の付着面積が、保護層(絶縁層)の全面に対して、50%以上であった。
【0077】
(引っかき硬度測定)
各実施例に係る電磁波シールドフィルムの保護層及び比較例1に係る電磁波シールドフィルムの絶縁層の引っかき硬度を、JIS K 5600-5-4に準拠し、荷重:750±10g、鉛筆角度:45°、引っかき速度:0.5~1.0mm/s、使用鉛筆:三菱鉛筆株式会社製 Uniの条件で測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(表面粗さ測定)
各実施例に係る電磁波シールドフィルムの保護層及び比較例1に係る電磁波シールドフィルムの絶縁層の表面粗さRaを、レーザーテック株式会社 PTELICS H1200を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(85°光沢度測定)
各実施例に係る電磁波シールドフィルムの保護層及び比較例1に係る電磁波シールドフィルムの絶縁層の85°光沢度を、BYK-Gardnerマイクロータリーグロスを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(隠蔽性試験)
各実施例及び比較例に係る電磁波シールドフィルムの隠蔽性について目視で評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:保護層(比較例1は絶縁層)側から目視した際に、金属層が確認できなかった。
△:保護層(比較例1は絶縁層)側から目視した際に、わずかに金属層が確認できた。
×:保護層(比較例1は絶縁層)側から目視した際に、金属層が確認できた。
【0081】
表1に示すように各実施例に係る電磁波シールドフィルムでは、保護層の表面抵抗率は、1.0×105~2.0×1012Ω/□であることが確認できた。また、スチールウール粉付着試験の結果から、各実施例に係る電磁波シールドフィルムでは、静電気が消散しやすいことが判明した。
【符号の説明】
【0082】
10、110 電磁波シールドフィルム
20、120 保護層
30、130 絶縁層
40 金属層
50、150 導電性接着剤層
60 ロール装置