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特許7663705液体冶金製品の化学組成を決定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】液体冶金製品の化学組成を決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/31 20060101AFI20250409BHJP
   G01N 25/02 20060101ALN20250409BHJP
【FI】
G01N21/31
G01N25/02 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023555254
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2021051976
(87)【国際公開番号】W WO2022189830
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピコン,アルトサイ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス・ヒラ,アイトル
(72)【発明者】
【氏名】ビセンテ・ロホ,アシエル
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146950(JP,A)
【文献】特開平01-229943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17-21/61
G01N 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射を放出する液体冶金製品(2)の化学組成を決定するためのデバイスであって、
所定の波長範囲Δλにおいて冶金製品(2)によって放出された電磁放射を取得するように構成された収集プローブ(3)、
収集プローブ(3)に接続され、取得された電磁放射のスペクトル信号を生成するように構成された分光手段(8)、
MCMC法を用いて、前記生成されたスペクトル信号から、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を計算し、前記計算された観測された放射輝度Lobs(λ,Test)から、所定の波長範囲Δλにおける冶金製品(2)の温度Testおよび分光放射率εest(λ,Test)を推定するように構成された処理手段
を少なくとも備え、
前記処理手段は、所定の波長範囲ΔλにおけるX個の試料i(iは1からXまで変化する)の基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)、およびZ個の基準温度Tref,n(nは1からZまで変化する)のデータベースであって、各基準放射輝度について、
所定の波長範囲Δλにおける基準温度Tref,nに関連する基準分光放射率εref,i(λ,Tref,n)、および
前記試料iの化学組成
を含む、データベースを含み、
処理手段は、推定された分光放射率εest(λ,Test)および推定された温度Testを、前記データベースに含まれる所定の波長範囲Δλおよび推定された温度Testにおける基準温度Tref,nおよび基準分光放射率εref,i(λ,Tref,n)と比較して、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)を決定するように、
および、決定された最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)から液体冶金製品(2)の化学組成を決定するように構成される、デバイス。
【請求項2】
分光手段(8)が、複数の分光計(9、10、11)を備え、各分光計が収集プローブ(3)に接続され、所定の波長範囲Δλの決定された一部分においてスペクトル信号の一部を生成するように構成される、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
分光手段(8)が、所定の波長範囲Δλに対応する200から12000ナノメートルの間のスペクトル範囲でスペクトル信号を生成するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
処理手段がまた、前記処理手段によって計算され、考慮される分光計(9、10、11)に関連付けられた少なくとも較正定数を用いて、スペクトル信号の各部分を補正するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(1)を用いて、電磁放射を放出する液体冶金製品(2)の化学組成を決定するための方法であって、
.所定の波長範囲Δλにおいて冶金製品(2)によって放出される電磁放射を取得するステップ(E1)と、
ii.冶金製品(2)によって放出される前記電磁放射のスペクトル成分を分離し測定することにより、スペクトル信号を生成するステップ(E2)と、
iii.前記スペクトル信号から、冶金製品(2)の観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を生成するステップ(E3)と、
.前記観測された放射輝度Lobs(λ,Test)から、冶金製品(2)の前記所定の波長範囲における、温度Testおよび分光放射率εest(λ,Test)を推定するステップ(E4)と、
.前記推定された分光放射率εest(λ,Test)および温度Testを、データベースからの、各基準放射輝度Lref,i(λ,Tref)の基準分光放射率εref,i(λ,Tref)および基準Tref温度と比較するステップ(E5)と、
i.観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)を決定するステップ(E6)と、
ii.放出冶金製品(2)の化学組成を決定するステップ(E7)と
を含む、方法。
【請求項6】
ステップiv(E4)において、大気の減衰係数も観測された放射輝度から推定され、前記観測された放射輝度が前記減衰係数と相関される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップiii(E3)が、
スペクトル信号を理想的な黒体放射輝度LBB(λ,T)に変換するサブステップ、
この理想的な放射輝度LBB(λ,T)を、処理手段によって計算され、分光手段(8)に関連付けられた少なくとも較正定数を用いて補正するサブステップであって、前記較正定数が、波長範囲において知られている放射温度および知られている放射率の較正ランプを用いて計算される、サブステップ
にしたがって実施される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ステップiv(E4)が:
ベクトルを決定するサブステップであって、ベクトルの座標が、波長範囲における、少なくとも放射温度および放射率を表す、ランダムに選択された変数である、サブステップ、
選択された変数に基づいて、期待される放射輝度Lexp(λ,T)を計算するサブステップ、
観測された放射輝度と期待される放射輝度とを比較することにより確率論的推論モデルを適合させて、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)に向かっての、期待される放射輝度Lexp(λ,T)の収束まで、選択された変数をランダムに変更することにより期待される分散をランダムに変更するサブステップ、
当該の適合された確率論的推論モデルを使用することによって、液体冶金製品(2)の波長範囲Δλにおける放射温度Testと分光放射率εest(λ,Test)とを推定するサブステップ
にしたがって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ベクトルの座標のうちの1つが大気の減衰係数を含み、前記減衰係数もまた、当該の適合された確率論的推論モデルを使用することによって推定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップiv(E4)が、三角形の伝達関数を用いて波長範囲から決定される波長の縮小されたセットを用いて実施される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ステップv(E5)からステップvii(E7)が、処理手段によって実現された多層パーセプトロンによって実行される、請求項5から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金の分野であり、より詳細には液体冶金製品の分野である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、より詳細には、そのような冶金製品によって放出される電磁放射を使用して液体冶金製品の化学組成を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
冶金において知られている問題は、冶金製品が非常に高い温度、典型的には1000℃を超える温度にさらされ、そのためそれらの溶融により液体状であるときに、冶金製品の特性を適切に評価することである。
【0004】
公開WO2016/181185号から、設備を使用して、固体スラグ部分の化学組成を得ることができるセンサが知られており、その設備は、スラグ部分を明るくするように適合された光源と、スラグ部分からの反射光を収集するように適合された光学系と、収集された光からデータセットを得るように適合された処理手段とを備え、前記データセットは複数の点から収集された反射光の強度を表す値を含む行列を定義する。このようにして、反射光の強度とその波長に基づいてスラグ部分の化学組成を推定する回帰アルゴリズムが実施される。
【0005】
しかしながら、公開WO2016/181185号のシステムおよび方法は、知られていない冶金製品に適用することはできない。さらに、反射光のみが設備によって収集されるので、スラグ部分は光源によって励起されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/181185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、電磁放射を放出する任意の液体冶金製品の化学組成を決定するためのシステムおよび方法を提供することによって、先行技術の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、電磁放射を放出する液体冶金製品の化学組成を決定するためのデバイスに関するものであり、デバイスは少なくとも:
- 所定の波長範囲Δλにおいて冶金製品によって放出された電磁放射を取得するように構成された収集プローブ、
- 収集プローブに接続され、取得された電磁放射のスペクトル信号を生成するように構成された分光手段、
- 前記生成されたスペクトル信号から、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を計算し、前記計算された観測された放射輝度から、所定の波長範囲Δλにおける冶金製品の温度Testおよび分光放射率εest(λ,Test)を推定するように構成された処理手段、
を含み、前記処理手段は、所定の波長範囲ΔλにおけるX個の試料i(iは1からXまで変化する)の基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)、およびZ個の基準温度Tref,n(nは1からZまで変化する)のデータベースであって、各基準放射輝度について:
・所定の波長範囲Δλにおける基準温度Tref,nに関連する基準分光放射率εref,i(λ,Tref,n)、および
・前記試料iの化学組成、
を含む、データベースを含み、
推定された分光放射率εest(λ,Test)および推定された温度Testを、前記データベースに含まれる所定の波長範囲Δλおよび推定された温度Testにおける基準温度Tref,nおよび基準分光放射率εref,i(λ,Tref,n)と比較して、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)を決定し、決定された最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)から液体冶金製品(2)の化学組成を決定するように構成される。
【0009】
デバイスはまた、個々にまたはあらゆる可能な技術の組合せにしたがって考慮される以下の任意選択の特徴を含むことができる:
- 分光手段が、複数の分光計を備え、各分光計が収集プローブに接続され、所定の波長範囲Δλの決定された一部分においてスペクトル信号の一部を生成するように構成される。
- 分光手段が、所定の波長範囲Δλに対応する200から12000ナノメートルの間のスペクトル範囲でスペクトル信号を生成するように構成される。
- 処理手段がまた、前記処理手段によって計算され、考慮される分光計に関連付けられた少なくとも較正定数を用いて、スペクトル信号の各部分を補正するように構成される。
【0010】
本発明はまた、本発明によるデバイスを用いて、電磁放射を放出する液体冶金製品の化学組成を決定するための方法を提供し、前記方法は以下のステップ:
i.所定の波長範囲Δλにおいて冶金製品(2)によって放出される電磁放射を取得するステップ(E1)と;
ii.冶金製品(2)によって放出される前記電磁放射のスペクトル成分を分離し測定することにより、スペクトル信号を生成するステップ(E2)と;
iii.前記スペクトル信号から、冶金製品(2)の観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を生成するステップ(E3)と;
iv.前記観測された放射輝度Lobs(λ,Test)から、冶金製品(2)の前記所定の波長範囲における、温度Testおよび分光放射率εest(λ,Test)を推定するステップ(E4)と;
v.前記推定された分光放射率εest(λ,Test)および温度Testを、データベースからの、各基準放射輝度Lref,i(λ,Tref)の基準分光放射率εref,i(λ,Tref)および基準Tref温度と比較するステップ(E5)と;
vi.観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)を決定するステップ(E6)と、
vii.放出冶金製品(2)の化学組成を決定するステップ(E7)と
を含む。
【0011】
本方法はまた、個別に、またはあらゆる可能な技術の組合せにしたがって考慮される以下の任意選択の特徴を含むことができる:
- ステップivにおいて、大気の減衰係数も観測された放射輝度から推定され、前記観測された放射輝度が前記減衰係数と相関される。
- ステップiiiが:
・スペクトル信号を理想的な黒体放射輝度LBB(λ,T)に変換するサブステップ;
・この理想的な放射輝度LBB(λ,T)を、処理手段によって計算され、分光手段に関連付けられた少なくとも較正定数を用いて補正するサブステップであって、前記較正定数が、波長範囲において知られている放射温度および知られている放射率の較正ランプを用いて計算される、サブステップ
にしたがって実施される。- ステップivが:
・ベクトルを決定するサブステップであって、ベクトルの座標が、波長範囲における、少なくとも放射温度および放射率を表す、ランダムに選択された変数である、サブステップ;
・選択された変数に基づいて、期待される放射輝度Lexp(λ,T)を計算するサブステップ;
・観測された放射輝度と期待される放射輝度とを比較することにより確率論的推論(inference probabilistic)モデルを適合させて、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)に向かっての、期待される放射輝度Lexp(λ,T)の収束まで、選択された変数をランダムに変更することにより期待される分散をランダムに変更するサブステップ;
・当該の適合された確率論的推論モデルを使用することによって、液体冶金製品の波長範囲における、放射温度Testと放射率εest(λ,Test)とを推定するサブステップ
にしたがって実施される。
- ベクトルの座標のうちの1つが大気の減衰係数を含み、前記減衰係数もまた、当該の適合された確率論的推論モデルを使用することによって推定される。
- ステップivが、三角形の伝達関数を用いて波長範囲から決定される波長の縮小されたセットを用いて実施される。
- ステップvからステップviiが、処理手段によって実現された多層パーセプトロンによって実行される。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照する、例示としてであって決して限定するものではない、以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のシステムの概略図である。
図2図2は、決定された波長範囲から考えられた波長のセットを決定するための三角形関数の適用を示すグラフである。
図3図3は、本発明の方法の連続するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、図上では、同じ参照符号は、同じ要素を、それらが特徴となっている図およびこれらの要素の形式に関係なく、指定することに留意されたい。同様に、ある図上で要素が具体的に参照されていない場合、それらの参照は、別の図を参照することによって容易に見つけることができる。
【0015】
また、図が主に本発明の対象の一実施形態を表しているが、本発明の定義に対応する他の実施形態が存在する可能性があることに留意されたい。
【0016】
本発明の分光システム1および方法は、液体冶金製品2、例えばスラグまたは液体鋼の化学組成の推定に用途を見出す。
【0017】
液体鋼のような液体金属などの高温の元素は、それぞれの放射温度および化学組成に相関した電磁放射を放出する。これらの放射は、典型的には紫外線波長から遠赤外線波長までの大きな放射スペクトルで放出され、液体冶金製品の赤色から白色の外観を誘起する放射温度に直接関連する赤外線および可視波長を含む。
【0018】
物理パラメータは、前記電磁放射の測定可能な特徴から抽出することができる。それらの物理パラメータは以下を含む:
・T、温度と命名され、電磁放射を放出する液体冶金製品2の温度である;
・ε(λ,T)、分光放射率または単に放射率と命名され、完全黒体と比較しての、所与の温度Tおよび所与の波長λで表面要素によって放出される電磁放射の放射束である。したがって、放射率の値は0から1の間に含まれる。
・L(λ,T)、分光放射輝度と命名され、単位立体角あたり、単位投影面積あたり、および単位波長あたりの、与えられた表面によって放出される放射束である。以下では、「放射輝度」という用語を使用する。
【0019】
液体冶金製品2によって放出される電磁放射を取得する一方で、これから説明する本発明の分光システム1は、少なくとも上述の物理パラメータを推定し、次に、これらの推定された物理パラメータを使用して、考慮される液体冶金製品2の化学組成を決定するために提供される。
【0020】
図1に描かれているように、本発明の分光システム1は、広スペクトル範囲の少なくとも1つの収集プローブ3を備え、これは収集プローブが、少なくとも0.1マイクロメートルから15000マイクロメートルまでの波長に対して完全に動作可能であることを意味する。この収集プローブ3は、高温の冶金製品2によって放出される放射を収集するために設けられた収集ヘッド4、平行光線19を生成するコリメータ(図示せず)、集光されたビーム6をプローブ3の出力7を通して放射するように構成された集光手段5を備える。前記出力7は、光伝送手段、例えばファイババンドル12を形成する1セットの光ファイバに接続され、バンドル12の光ファイバ13-17を通して、集光されたビーム6を伝送するように設けられている。
【0021】
システム1はまた、集光されたビーム6のスペクトル成分を分離し測定し、冶金製品によって放出される電磁放射のスペクトル信号を生成するように設けられた分光手段8を備える。生成されたスペクトル信号の精度は、分光手段8の解像力に依存する。言い換えれば、分光手段8は集光されたビーム6をM個の成分mに分離し、各成分mは特定の波長λに関連するパラメータ、例えば強度である。解像力が高いほど、Mは大きくなる。通常、Mは3000以上である。
【0022】
図1によれば、分光手段8は、集光されたビーム6を分析し、決定された波長範囲で特定のスペクトル信号を生成するようにそれぞれ構成された3つの分光計9、10、11を含む。各分光計9-11は、ファイババンドル12を介して収集プローブ3に光学的に接続されている。
【0023】
分光手段の第1の分光計9は、0.2から1.1μmまでの波長範囲を有する。言い換えれば、第1の分光計9は、紫外線および可視光線に対応する0.2μmから1.1μmの波長範囲の放出された放射からスペクトル信号を生成するように構成される。
【0024】
分光手段の第2の分光計10は、0.9から2.6μmの間に含まれる波長範囲を有する。言い換えれば、第2の分光計10は、近赤外放射に対応する0.9μmから2.6μmの間の波長範囲の放出された放射からスペクトル信号を生成するように構成される。
【0025】
分光手段8の第3の分光計11は、2.5μmから12μmの間に含まれる波長範囲を有する。言い換えれば、第3の分光計11は、中赤外放射に対応する2.5μmから12μmの間の波長範囲の放出された放射からスペクトル信号を生成するように構成される。
【0026】
有利には、分光システム1は、ファイババンドル12を介して収集プローブ3に接続されたレーザ装置18も備える。このレーザ装置18は、典型的には、可視光、例えば532ナノメートルの緑色光を放出するクラスBレーザであり、取得面を指し示すために設けられている。このレーザ装置18により、取得部位を選択することができる。
【0027】
上述したように、収集プローブ3、3つの分光計9-11、およびレーザ装置18はすべて、レーザ装置18および3つの分光計9-11にそれぞれ接続された4つの入力と、収集プローブ3に接続された1つの出力とを備えるファイババンドル12で接続されている。
【0028】
より正確には、レーザ装置18は1本の低水酸基イオンシリカ光ファイバ17を介してプローブ3に接続され、第1の分光計9は別の1本の低水酸基イオンシリカ光ファイバ13を介してプローブに接続され、第2の分光計10は2本の低水酸基イオンシリカ光ファイバ14を介してプローブ3に接続され、第3の分光計11は2本の多結晶赤外光ファイバ15を介してプローブ3に接続されている。
【0029】
もちろん、上述の7本の光ファイバはすべて、収集プローブ3の出力に接続されている16。
【0030】
最後に、分光システム1は、スペクトル信号から冶金製品2の観測された放射輝度を生成するように構成された処理手段を備える。第1のアルゴリズムにより、処理手段は、確率論的推論モデルを使用して、観測された放射輝度から期待される放射輝度を決定し、次いで冶金製品2の温度および放射率を推定するように構成される。
【0031】
さらに、第2のアルゴリズムにより、処理手段は、二酸化ケイ素(in-silicon dioxide)SiO、酸化アルミニウムAl、酸化鉄(II)FeO、酸化鉄(III)Fe、酸化カルシウムCaO、および酸化マグネシウムMgOの含有量などの放出冶金製品2の化学組成を、知られている回帰アルゴリズム、有利には前記処理手段により実現される多層パーセプトロンを用いて推定するように構成される。
【0032】
後述するように、この第2のアルゴリズムを実施するために、処理手段は、基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)のデータベースを備え、各基準放射輝度Lref,i(λ、Tref,n)は、定義された基準温度Tref,nおよび波長λにおける知られている分光放射率εref,i(λ,Tref,n)(さらに基準放射率と呼ばれる)の試料iに関連付けられている。したがって、各基準放射率値εref,i(λ,Tref,n)は、データベース内の基準温度値Tref,nおよび波長値λに関連する。iは1からXまで変化し、Xは例えば少なくとも30に等しく、Xが高いほど、より多くの異なる化学組成がデータベースに含まれる。nは1からZまで変化し、Zは例えば少なくとも5に等しい。
【0033】
さらに、データベース内の各試料iの化学組成は知られており、波長範囲Δλにおいて考慮される基準放射率εref,i(λ,Tref,n)および基準温度Tref,nの両方に関連付けられている。液体冶金製品2の化学組成を決定するために、処理手段は:
・推定された放射率εest(λ,Test)および推定された温度Testを、Tref,n=Trefについて、データベースからの、各基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)の基準放射率εref,i(λ,Tref,n)および基準温度Tref,nと比較し、
・観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Test)を決定し、
・放出冶金製品2の化学組成を決定する、
ように構成される。
【0034】
本発明によれば、温度Testおよび放射率εest(λ,Test)を推定し、電磁放射を放出する液体冶金製品2の化学組成を決定するための方法が、次に説明される。
【0035】
第1のステップでは、収集プローブ3が、ユーザによって選択された取得部位に向けられる。この取得部位を正確に選択するために、レーザ18に電源が投入され、レーザ18が取得部位を指し示すまで収集プローブ3が移動される。
【0036】
第2のステップE1において、収集プローブ3は、取得部位において液体冶金製品2によって放出された電磁放射を取得し、この取得された放射を集光されたビーム6の中に集中させ、この集光されたビーム6は、プローブ3の出力7からファイババンドル12を介して分光手段8の3つの分光計9-11に伝播する。そして、各分光計9-11は、その特定の波長範囲のスペクトル信号を生成する。次に、分光システム1の処理手段は、0.2μmから12μmまでの決定された波長範囲において、結合されたスペクトル信号を生成するE2。
【0037】
第3のステップE3において、処理手段は、結合されたスペクトル信号から冶金製品2の観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を生成する。この観測された放射輝度Lobs(λ,Test)は、以下に説明するサブステップにしたがって生成される。
【0038】
第1のサブステップにおいて、処理手段は、黒体炉上の分光システムによって測定された多項式較正関数を通じて、結合されたスペクトル信号を理想的な黒体放射輝度LBB(λ,Test)に変換し、前記多項式関数は以下の式にしたがう。
【数1】
ここで、hはプランク定数、cは光速、kはボルツマン定数である。
【0039】
第2のサブステップでは、この理想放射輝度LBB(λ,Test)を分光手段8に直接関連する定数Kで補正する。分光手段8の分光計9-11が同じエリアを測定しないので、また、分光手段8の器具類(収集プローブ3、ファイババンドル12、コリメータ5)が測定に不正確さを引き起こすので、補正定数Kを各分光計Sに適用しなければならない。この定数Kは、したがって、座標がそれぞれ第1の分光計9、第2の分光計10、および第3の分光計11の定数K、K、およびKであるベクトルである。
【0040】
これらの定数KからKの初期値は、波長範囲において、知られている放射率および知られている放射温度を有する較正ランプ上で分光システム1を使用して決定される。
【0041】
計算された定数Kを用いて処理手段によって補正された理想の放射輝度LBB(λ,Test)は、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)である。
【0042】
第4のステップE4において、処理手段は、第1のアルゴリズムを実施して、液体冶金製品2の波長範囲λにおける温度Testおよび放射率εest(λ,Test)を推定する。
【0043】
上述のように、放射輝度は、冶金製品2の波長範囲における放射率および放射温度を含むいくつかの物理パラメータの関数であることが知られている。したがって、第1のアルゴリズムは、これらの知られていないパラメータが観測された放射輝度Lobs(λ,Test)に適合できるように、これらの知られていないパラメータを抽出することを目的とする放射伝達モデルを実装する。
【0044】
次に、処理手段は、例えばメトロポリスヘイスティングランダムウォーク(Metropolis-Hasting random walk)とも命名されるメトロポリスヘイスティングアルゴリズムを用いたマルコフ連鎖モンテカルロ法(Markov Chain MonteCarlo approach)すなわちMCMC法にしたがって、期待される放射輝度Lexp(λ,Test)を計算する。期待される放射輝度は、以下の式で表される:
【数2】
ここで、
【数3】
は、水蒸気と二酸化炭素による大気の減衰係数である。xは、考慮されるガスの濃度に関係し、γは考慮されるガスの知られている減衰係数に関係し、dは、放射要素と分光計9-11との間の距離である。さらに、fは、反射減衰、光ファイバ減衰、および分光計9-11の非線形感度をモデル化した伝達関数である。この伝達関数fは、分光システム1によって較正された黒体炉を用いて計算される。
【0045】
MCMC法は、ベイズ推論モデルを実装し、計算された期待される放射輝度を観測された放射輝度と比較することで、放射温度、波長λの範囲における放射率、および水蒸気と二酸化炭素の濃度である知られていないパラメータを推定することを可能にする。さらに、較正された補正係数KからKは、メトロポリスヘイスティングアルゴリズムによって細かく調整される。
【0046】
ベイズ推論モデルは、以下の式を用いて、シーク知られていないパラメータ(seek unknown parameter)の値に対する確率分布を構築する:
【数4】
ここで、xは、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)を表し、θは座標が知られていないパラメータであるベクトルである:
【数5】
【0047】
事後確率分布として知られるP(θ│x)は、Lobs(λ,Test)が与えられた場合の各シーク知られていないパラメータ値の確率である。これは、知られていないパラメータを推定するために処理手段が計算する必要がある確率である。
【0048】
尤度として知られるP(x│θ)は、パラメータセットが与えられた場合の観測された放射輝度Lobs(λ,Test)の分布の仕方である。この確率の計算については後で説明する。
【0049】
事前分布として知られるP(θ)は、処理手段にメトロポリスヘイスティングアルゴリズムを計算させるために使用される事前知識である。言い換えれば、後で説明するように、計算の最初にパラメータθのセットがランダムに選択される。
【0050】
P(x)は、パラメータが放射伝達モデルによって生成されたというエビデンスである。この量は多くの場合計算することができない。しかしながら、P(θ│x)は、尤度P(x│θ)と事前分布P(θ)を定義するだけで、MCMC法、特にメトロポリスヘイスティングアルゴリズムを用いて推定することができる。
【0051】
次に、本発明の方法の第4ステップE4の詳細な実施について説明する。
【0052】
上述したように、放射率は波長に依存し、各波長は放射率に関連付けられることを意味する。分光手段8の解像力は、各々が固有の波長λに関連するM個の離散化されたスペクトル値を生成することを可能にするので、M個の放射率値が、本発明の方法を実施する処理手段によって決定され得る。
【0053】
しかしながら、Mが3000以上であるため、処理手段は、計算パワーの制限ゆえに、M個の波長に基づいてM個の放射率値を推定することができない。この問題を解決するために、処理手段によって、例えば以下の式にしたがうメンバーシップ三角形関数を使用して、N個の波長の縮小されたセットの選定が最初に達成されなければならない:
【数6】
ここで、λCmは中心波長であり、Dは連続する2つの波長間の距離である。
【0054】
処理手段は、M個の波長を三角形関数に関連付け、Nセットの波長を計算する。NはMよりはるかに小さく、Nの値は通常4から10程度である。Nセットはファジィ論理を用いて計算されるので、前記セットは通常ファジィ集合と命名される。
【0055】
さらに、波長λにおける特定の放射率εは、処理手段によって、波長の考慮されるファジィ集合の中心でそれぞれ定義されるファジィ放射率値εの重み付けされた値として、以下の式にしたがって計算される:
【数7】
【0056】
例えば、N=8である図2に描かれているように、放射率ε=ε(λ)は、ファジィ放射率ε=ε(λ)の33%とファジィ放射率ε=ε(λ)の67%との組合せである。その結果、放射率のN個の値のみが処理手段によって直接計算され、これはm=1からNまでの各放射率εを意味する。波長範囲内の他の放射率値は、1つまたは複数のファジィ放射率から計算される。したがってλは、このような三角形関数、または波長のセットを縮小することを可能にする任意の他の類似の関数を使用するとき、波長または波長範囲を公平に表すことができる。
【0057】
波長の縮小されたセットが選定されると、メトロポリスヘイスティングアルゴリズムを使用する処理手段は、座標が、処理手段によってランダムに選択された知られていないパラメータであるベクトルθを、ランダムに生成する。次に、処理手段は、一様分布関数および正規分布関数を使用して、ランダムに選択されたパラメータから事前分布P(θ)を計算する。
【0058】
一様分布関数は、以下の式
【数8】
にしたがって放射温度Tに適用され、ここでTmin=400℃、およびTmax=1500℃である。
【0059】
一様分布関数は、以下の式
【数9】
にしたがって分光放射率ε(λ)に適用され、ここでεmin=0、およびεmax=1である。
【0060】
【数10】
を中心とする正規分布関数は、以下の式
【数11】
にしたがって各補正係数Kに適用され、ここで、
【数12】
は較正ランプを用いて計算されたs番目の分光計9-11の初期較正定数であり、σ=0.001、σは分布の分散である。
【0061】
【数13】
および
【数14】
をそれぞれ中心とする正規分布関数は、
【数15】
および
【数16】
にも適用される:
【数17】
ここで
【数18】
、σ=50であり、および
【数19】
ここで、
【数20】
、σ=500である。
【0062】
上記の各分布の計算結果を用いて、処理手段は事前分布P(θ)を決定する。
【0063】
さらに、ベクトルθの座標がランダムに決定されると、処理手段は、θの知られていないパラメータ値を用いて、上述した式により期待される分散Lexp(θ)の第1の値を計算する。
【0064】
このようにして、処理手段は、Lexp(θ)を中心とする正規分布関数
【数21】
を使用して尤度P(Lobs│θ)を計算し、σは、ハーフコーシー分布σ~HalfCauchy(β)であり、その式は:
【数22】
であり、βは固定パラメータであり、その値は10において選ばれる。
【0065】
処理手段は、θを中心とする正規分布
【数23】
にしたがうベクトルθをランダムに生成する。このようにして、知られていないパラメータの新しいセットがランダムに選択され、処理手段は、Lexp(θ)、尤度P(Lobs│θ)、および事前分布P(θ)を計算する。
【0066】
数rが、次いで以下の式にしたがって計算される:
【数24】
【0067】
乱数r’も標準一様分布
【数25】
を用いて計算される。
【0068】
処理手段は、rとr’とを比較し、r>r’であれば、ベクトルθを保持し、θを中心とする正規分布
【数26】
にしたがってベクトルθを計算する。r<r’の場合、ベクトルθは棄却され、r<r’である限り、正規分布
【数27】
にしたがって新しいベクトルθ’がランダムに計算される。
【0069】
【数28】
を用いて、y=ymaxになるまで、このアプローチにしたがってステップバイステップでベクトルθが計算される。例えば、ymax=2000である。ymaxが大きいほど、推定はより正確であるが、計算はより長くなる。
【0070】
処理手段によって実施されるメトロポリスヘイスティングランダムウォークは、期待される分散Lexp(λ,T)を、最終ベクトル
【数29】
の座標であるパラメータの推定されたセットを用いる観測された放射輝度Lobs(λ,Test)に向かって収束させる。
【0071】
観測された放射輝度Lobs(λ,Test)が与えられると、MCMC法は、液体冶金製品2の放射温度Testおよび分光放射率εest(λ,Test)の値を推定する。さらに、分光計9、10、11の内部補正パラメータKからK、および大気中の水蒸気
【数30】
および二酸化炭素
【数31】
の濃度が共に推定される。
【0072】
処理手段は、第2のアルゴリズムを実行して、本発明の方法の第5のステップE5、第6のステップE6、および第7のステップE7を実施する。第5のステップE5において、処理手段は、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)から推定された放射率εest(λ,Test)および温度Testを、Tref,n=Trefについて、データベースからの、各基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)の基準放射率εref,i(λ,Tref,n)および基準放射温度Trefと比較する。第5のステップE5で得られた比較結果を用いて、処理手段は、第6のステップE6で、観測された放射輝度Lobs(λ,Test)と最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)を決定する。最後に、処理手段は、最良適合する基準放射輝度Lbf(λ,Tref)に関連する化学組成を放出冶金製品2に帰する。このようにして、処理手段は、放出冶金製品2の化学組成を決定する。
【0073】
有利には、この第2のアルゴリズムは、知られている回帰アルゴリズムであり、優先的には、数Jの個数の相互接続されたニューラル層を備える人工ニューラルネットワークである多層パーセプトロンであり、前記人工ニューラルネットワークは、処理手段によって実現される。
【0074】
ニューラルネットワークの層の各デジタルニューロンは、先行する層のニューロンの出力からデータを受け取るために提供される複数の入力と、次の層のニューロンに出力データを送信するために提供される出力とを備える。より正確には、入力データは、典型的には、シナプス重みでそれぞれ重み付けされたすべての入力データを合計する組合せ関数などの演算子を使用して、出力データを生成し、デジタルニューロンによって処理される。さらに、各ニューロンは、入力データの加重和が閾値関数によって定義された閾値を超えた場合に、出力データを生成するように提供される閾値関数である非線形伝達関数を含むことができる。典型的には、前記閾値関数はシグモイド関数であり、その式は
【数32】
である。
【0075】
ニューラル層のニューロンjの各入力は、特定のシナプス重みの影響を受ける。入力のシナプス重みは、多層パーセプトロンがプログラムされるときに、まずランダムに選択される。後述するように、これらのシナプス重みはニューラルネットワークの訓練段階中に調節される。
【0076】
人工ニューラルネットワークは、ニューラルネットワークの入力を通じて、つまり第1の層のニューロンの入力を通じて、入れられたデータの回帰分析を行うデータを予測および分類するために提供される。入れられたデータは、j個の座標のベクトルXであり、第1のニューラル層およびすべての中間ニューラル層によって連続的に処理される。
【0077】
出力データは、ニューラルネットワークの出力で得られるデータを意味し、入れられたデータを表すベクトルXに関連するj個の座標のベクトルYである。
【0078】
ベクトルXはj個の座標を備え、ニューラルネットワークの第1の層およびすべての中間ニューラル層もまた、それぞれj個の入力を有するj個のニューロンを含み、各入力は特定のシナプス重みの影響を受ける。最後の層は、出力ベクトルYがj個の座標を備えるので、j個のニューロンを備える。
【0079】
ニューラルネットワークによって実施されるデータ回帰を要約すると、層jの各ニューロンによって受け取られる入力データは、層j-1のすべてのニューロンの出力によって生成される出力データである。言い換えれば、ニューラルネットワークの各層jは、入力ベクトルXから層jのニューロンの伝達関数で処理された出力ベクトルYを生成する。Xの座標は、層j-1の出力ベクトルYJ-1と同じ座標であり、層j+1の入力ベクトルXj+1の座標は、層jの出力ベクトルYと同じ座標である。
【0080】
ニューラルネットワークの出力において、出力ベクトルYは、ニューラルネットワークの出力層による入力ベクトルX=YJ-1の処理から生じる。このように、データ回帰は、ニューラルネットワークの連続する層におけるデータ伝搬を介して実施される。
【0081】
本発明の方法の第5のステップE5から第7のステップE7に関して、入力ベクトルXの座標は、N個のファジィ集合の各中心波長λに対する推定された放射温度Test、および推定された放射率εest,m(λ,Test)の異なる値である。この入力ベクトルXは、ニューラルネットワークの層によって連続的に処理されて、座標が冶金製品2の異なる化学化合物の割合である出力ベクトルYを生成する。言い換えれば、第5から第7ステップの処理手段は、推定された分光放射率εest(λ,Test)および推定された温度Testから冶金製品2の化学組成を決定する。しかしながら、このような処理は、重みが正しく調節されている場合にのみ可能である。
【0082】
本方法の重要な問題は、前記シナプス重みを細かく調節して、良好なデータ分類および/または予測を得ることである。
【0083】
基準放射輝度Lref,i(λ,Tref,n)のデータベースは、異なる放射温度Tref,nにおいて、知られている化学組成を有する試料iのコレクションを測定することによって事前に構築される。各試料について、観測された放射輝度が測定され、この観測された放射輝度に対して上述の第1のアルゴリズムが適用されて、波長λに応じたいくつかの基準放射率値εref,i,k(λ,Tref)が得られる。
【0084】
このようにして、処理手段は、試料のデータベースを構築し、各試料は、異なる基準放射温度における基準放射率値に関連する入力ベクトルX’と、X’と相関し、知られている化学組成に関連する出力ベクトルY’とを備える。言い換えれば、特定の放射温度における放射率値は、冶金製品2の化学組成に直接関連する。
【0085】
ニューラルネットワークを訓練するために、逆伝搬関数が実装される。知られている出力ベクトルY’と相関した入力ベクトルX’がニューラルネットワークに入力される。X’はニューラルネットワークによって処理され、計算された出力ベクトルYが得られる。そして、YがY’と知られている損失関数を用いて比較されて、誤差値が決定される。次に、処理手段は、この誤差値を所定の閾値と比較する。
【0086】
誤差値が閾値よりも大きい場合、この誤差値または優先的には誤差勾配は、各ニューロン入力の重みをわずかに適合させるために、ニューラルネットワーク内で逆伝搬される。そして、X’から新しい出力ベクトルYが計算され、出力ベクトルYは再び損失関数を用いてY’Jと比較され、新しい誤差値が計算される。誤差値またはその勾配が閾値より大きい限り、逆伝搬のステップが繰り返される。誤差値が閾値より小さくなると、ニューラルネットワークは訓練されている。
【0087】
本発明の分光システム1および方法により:
・液体冶金製品2によって直接放出される電磁放射を取得すること;
・分光システム1の処理手段によって実現された放射伝達モデルによって、放出された放射から、システム1の所定の波長範囲λにおける分光放射率εest(λ,Test)および冶金製品2の温度Testを推定すること、および、
・処理手段によって実現された回帰モデルによって、冶金製品2の化学組成を推定すること
が可能となる。
図1
図2
図3