(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20250409BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20250409BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20250409BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q11/00
A61K8/73
A61K8/60
(21)【出願番号】P 2024116004
(22)【出願日】2024-07-19
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】大坪 桃
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一博
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-507066(JP,A)
【文献】米国特許第05695746(US,A)
【文献】特開2007-291021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤
、粘結剤
および湿潤剤を含む口腔用組成物であって、
前記研磨剤が研磨性シリカを含み、
前記粘結剤が、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムおよび増粘性シリカからなる群から選択される少なくとも一種を含み、
前記湿潤剤がソルビトールおよびグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種を含み、
以下の方法1で測定される、5mm引張試験および10mm引張試験における引張戻り力をそれぞれTF5およびTF10としたとき、前記TF10に対する前記TF5の比(TF5/TF10)が1.1以上10以下であり、
以下の方法2で測定される曳糸性が2mm以上24mm未満である、口腔用組成物。
(方法1)
機器名:レオメーター
使用治具:圧力/弾性測定用感圧軸(Φ20mm)
測定速度:60mm/min
引き上げ距離:5mmまたは10mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:前記充填容器に当該口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、前記測定速度で引き上げ、各引き上げ距離に達した時点での応力の絶対値を測定する。各引き上げ距離で3回測定した際の平均値を前記TF5または前記TF10とする。
(方法2)
機器名:レオメーター
使用治具:進入度測定用感圧軸(Φ15mm)
測定速度:1000mm/min
引き上げ距離:50mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:前記充填容器に当該口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、前記測定速度で引き上げる。引き上げ中に前記使用治具から当該口腔用組成物が離れるまでの距離を測定する。引き上げ距離まで3回測定した際の平均値を前記曳糸性とする。
【請求項2】
当該口腔用組成物中の前記粘結剤
の含有量が
、当該口腔用組成物全体に対して2質量%以上45質量%以下である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記粘結剤が有機粘結剤を含む、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
当該口腔用組成物中の前記有機粘結剤
の含有量が、
当該口腔用組成物全体に対して0.2質量%以上15質量%以下である、請求項3に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
当該口腔用組成物中の前記研磨剤
の含有量が
、当該口腔用組成物全体に対して5質量%以上30質量%以下である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
当該口腔用組成物中の前記湿潤剤
の含有量が、当該口腔用組成物全体に対して5質量%以上50質量%以下である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
歯磨組成物である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
練歯磨組成物である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
前記TF5が1gf以上100gf以下である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
前記TF10が0.5gf以上50gf以下である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の口腔用組成物がチューブ容器に充填されている、歯磨剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物の歯ブラシへの載せやすさを改善しようとする技術として、特許文献1(特開2021-91654号公報)に記載のものがある。同文献には、水溶性アルミニウム塩、水溶性銅塩及び水溶性亜鉛塩から選ばれる1種以上の水溶性多価金属塩、キサンタンガム及びカチオン性高分子化合物を含有する歯磨剤組成物について記載されている(請求項1)。同文献によれば、水溶性多価金属塩による知覚過敏抑制、口臭抑制、歯茎のひきしめ等の効果を有すると共に、成形性に優れ歯ブラシに載せ易く、かつ経時硬化が抑制され保存後も収容容器からの排出性に優れる歯磨剤組成物を提供でき、この歯磨剤組成物は、歯磨剤組成物の物性が満足に保たれ、しかも、研磨剤量が比較的少ないか、あるいは研磨剤無配合で低刺激の優しい磨き心地が確保される歯磨剤組成物に製剤化することもでき、特に知覚過敏又は口臭の抑制用、歯茎のひきしめ用として有用であるとされている(段落0011)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討により、上記特許文献1に記載のものにおいては、歯ブラシへの付着性を良好にしつつ、チューブ容器から組成物を絞り出す際のキレの良さを好ましいものとする点で依然として改善の余地があることが明らかになった。
【0005】
本発明は、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から組成物を絞り出す際のキレの良さとのバランスに優れた口腔用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の口腔用組成物が提供される。
[1] 研磨剤および粘結剤を含む口腔用組成物であって、
以下の方法1で測定される、5mm引張試験および10mm引張試験における引張戻り力をそれぞれTF5およびTF10としたとき、前記TF10に対する前記TF5の比(TF5/TF10)が1.1以上10以下であり、
以下の方法2で測定される曳糸性が2mm以上24mm未満である、口腔用組成物。
(方法1)
機器名:レオメーター
使用治具:圧力/弾性測定用感圧軸(Φ20mm)
測定速度:60mm/min
引き上げ距離:5mmまたは10mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:前記充填容器に当該口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、前記測定速度で引き上げ、各引き上げ距離に達した時点での応力の絶対値を測定する。各引き上げ距離で3回測定した際の平均値を前記TF5または前記TF10とする。
(方法2)
機器名:レオメーター
使用治具:進入度測定用感圧軸(Φ15mm)
測定速度:1000mm/min
引き上げ距離:50mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:前記充填容器に当該口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、前記測定速度で引き上げる。引き上げ中に前記使用治具から当該口腔用組成物が離れるまでの距離を測定する。引き上げ距離まで3回測定した際の平均値を前記曳糸性とする。
[2] 前記粘結剤が増粘性シリカを含む、[1]に記載の口腔用組成物。
[3] 前記粘結剤が有機粘結剤を含む、[1]または[2]に記載の口腔用組成物。
[4] 前記有機粘結剤が、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、キサンタンガム、アルギン酸およびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコールならびにカラギーナン(κ-カラギーナンを除く。)からなる群から選択される一種または二種以上である、[3]に記載の口腔用組成物。
[5] 前記研磨剤が研磨性シリカを含む、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の口腔用組成物。
[6] 湿潤剤をさらに含む、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の口腔用組成物。
[7] 歯磨組成物である、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の口腔用組成物。
[8] 練歯磨組成物である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の口腔用組成物。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載の口腔用組成物がチューブ容器に充填されている、歯磨剤。
【0007】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスに優れた口腔用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0010】
(口腔用組成物)
本実施形態において、口腔用組成物は、研磨剤および粘結剤を含む。そして、以下の方法1で測定される、5mm引張試験および10mm引張試験における引張戻り力をそれぞれTF5およびTF10としたとき、TF10に対するTF5の比(TF5/TF10)が1.1以上10以下であり、以下の方法2で測定される曳糸性が2mm以上24mm未満である。
(方法1)
機器名:レオメーター(たとえばCR-3000EX-S、サン科学社製)
使用治具:圧力/弾性測定用感圧軸(Φ20mm)
測定速度:60mm/min
引き上げ距離:5mmまたは10mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:充填容器に口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、測定速度で引き上げ、各引き上げ距離に達した時点での応力の絶対値を測定する。各引き上げ距離で3回測定した際の平均値をTF5またはTF10とする。
方法1の手順において、引き上げ中の応力の数値は負の値となるため、記録値は負の値、絶対値は正の値となる。
【0011】
(方法2)
機器名:レオメーター(たとえばCR-3000EX-S、サン科学社製)
使用治具:進入度測定用感圧軸(Φ15mm)
測定速度:1000mm/min
引き上げ距離:50mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
手順:充填容器に口腔用組成物を満杯まで充填し、機器にセッティング後、測定速度で引き上げる。引き上げ中に使用治具から口腔用組成物が離れるまでの距離を測定する。引き上げ距離まで3回測定した際の平均値を曳糸性とする。
【0012】
ここで、測定1および測定2における測定温度は具体的には室温(25℃)である。
【0013】
本発明者は、口腔用組成物の歯ブラシへの付着性と、口腔用組成物がチューブ容器に充填されている場合に口腔用組成物をチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスを向上するための設計指針として、配合成分および物性に着目して検討した。その結果、口腔用組成物の配合成分を制御しつつ、引張戻り力の比(TF5/TF10)および曳糸性を指標としてこれらを制御することにより、チューブ容器に充填された口腔用組成物をチューブ容器から絞り出す際のキレの良いものとしつつ、歯ブラシへの付着性に優れたものとし、これらのバランスを好ましいものとすることができることを新たに見出した。
すなわち、本実施形態においては、口腔用組成物が研磨剤および粘結剤を組み合わせて含むとともに、(TF5/TF10)および曳糸性がそれぞれ特定の範囲にあるため、歯ブラシへの付着性と、チューブ容器に充填された口腔用組成物をチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスに優れる。また、これにより、取り扱い容易性に優れる口腔用組成物を提供することも可能となる。たとえば、チューブ容器に充填される口腔用組成物を、歯ブラシに載せる際に口腔用組成物の歯ブラシからの落下や所望の領域以外への付着を低減することも可能となる。また、たとえば、チューブ容器に充填された口腔用組成物をチューブ容器から絞り出す際の吐出口からの垂れを好適に低減することも可能となる。また、たとえばチューブ容器に充填された歯磨剤を歯ブラシに絞り出して口腔内に適用するまでの手順における口腔用組成物の取り扱い性を向上することも可能となる。
【0014】
10mm引張試験における引張戻り力TF10に対する5mm引張試験における引張戻り力TF5の比(TF5/TF10)は、1.1以上であり、好ましくは1.15以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.25以上である。これにより、口腔用組成物の歯ブラシへの付着性を向上することができる。
また、(TF5/TF10)は、10以下であり、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下であり、また、4以下であってもよい。これにより、チューブ容器からの吐出量を制御しやすい口腔用組成物を得ることができる。
【0015】
TF5は、好ましくは1gf以上であり、より好ましくは5gf以上、さらに好ましくは10gf以上である。これにより、チューブや歯ブラシからこぼれにくい口腔用組成物を得ることができる。
また、TF5は、好ましくは100gf以下であり、より好ましくは75gf以下、さらに好ましくは50gf以下である。これにより、絞り出し時のチューブ容器からの離れが良い口腔用組成物を得ることができる。
【0016】
TF10は、(TF5/TF10)が上述の範囲となる値とすることができる。TF10は、たとえば0.5gf以上であってよく、また、たとえば50gf以下であってもよい。
【0017】
口腔用組成物の曳糸性は、2mm以上であり、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。これにより、口腔用組成物の歯ブラシへの付着性をより安定的に向上することができる。
また、口腔用組成物の上記曳糸性は、24mm未満であり、好ましくは23mm以下、より好ましくは22mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。これにより、口腔用組成物のキレの良さを向上することができる。
【0018】
次に、口腔用組成物の構成成分を説明する。
口腔用組成物は前述のとおり研磨剤および粘結剤を含む。
【0019】
(研磨剤)
研磨剤として、たとえば、含水ケイ酸(たとえばゲル法シリカ、沈降法シリカ)、無水ケイ酸、シリカゲル、アルミノシリケート等の研磨性シリカ;ゼオライト;リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤;炭酸カルシウム等の炭酸カルウム系研磨剤;および、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム等の他の無機研磨剤;ならびに、合成樹脂系研磨剤等の有機研磨剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0020】
研磨剤は、好ましくは研磨性シリカを含み、より好ましくは含水ケイ酸を含む。また、無水ケイ酸を含むことも好ましい。これにより、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスをより安定的に向上することができる。
研磨性シリカは、結晶シリカおよび非晶質シリカのいずれであってもよく、また、湿式シリカであってもよい。
【0021】
研磨性シリカの平均粒径は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上、さらにより好ましくは5μm以上である。これにより、効率的に歯の表面の汚れを除去することができる。
また、研磨性シリカの平均粒径は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。これにより、口触りが滑らかな口腔用組成物を得ることができる。
【0022】
ここで、研磨性シリカおよび後述の増粘性シリカの平均粒径は、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのd50とすることができる。
【0023】
また、研磨剤が炭酸カルシウムを実質的に含まないことも好ましい。これにより、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスをより安定的に向上することができる。
ここで、口腔用組成物が炭酸カルシウムを含まないとは、具体的には、口腔用組成物に炭酸カルシウムが意図的に配合されていないことをいい、さらに具体的には、炭酸カルシウムの含有量が口腔用組成物全体に対して0.001質量%以下であることをいう。
【0024】
口腔用組成物中の研磨剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは5質量%超、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは10質量%超、よりいっそう好ましくは11質量%以上、さらにまた好ましくは13質量%以上である。これにより、歯面の着色汚れを効率的に除去することができる。
また、口腔用組成物中の研磨剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは30質量%未満、さらに好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。これにより、使用感の滑らかさに優れる口腔用組成物を得ることができる。
【0025】
(粘結剤)
粘結剤として、たとえば、含水ケイ酸(たとえばゲル法シリカ、沈降法シリカ)、無水ケイ酸(たとえばゲル法シリカ、沈降法シリカ、乾式シリカ)等の増粘性シリカ;および、ベントナイト等のその他の無機粘結剤;ならびに、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、カラギーナン、アルギン酸およびその塩、キサンタンガム、ポリアクリル酸およびその塩、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等の有機粘結剤からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
上記塩の具体例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0026】
粘結剤は、好ましくは無機粘結剤を含み、より好ましくは増粘性シリカを含む。これにより、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスをより安定的に向上することができる。
【0027】
増粘性シリカは、結晶シリカおよび非晶質シリカのいずれであってもよく、また、乾式シリカおよび湿式シリカのいずれであってもよい。
増粘性シリカの平均粒径は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは10μm以上である。これにより、より効率的に口腔用組成物の粘度を保つことができる。
また、増粘性シリカの平均粒径は、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。これにより、口触りの滑らかな口腔用組成物を得ることができる。
【0028】
また、JIS K 5101-13-2(2004年)に記載の方法に従い、吸収される煮あまに油の量により特定される、増粘性シリカの吸油量は、たとえば0.1mL/g以上、好ましくは0.2mL/g以上であり、また、たとえば5mL/g以下、好ましくは4mL/g以下である。
【0029】
口腔用組成物中の無機粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上である。これにより、歯磨き時のクッション性に優れる口腔用組成物を得ることができる。このため、歯ブラシの歯、歯茎等への接触による刺激を低減することもできる。
また、口腔用組成物中の無機粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下である。これにより、表面の滑らかさに優れる口腔用組成物を得ることができる。
【0030】
粘結剤は、好ましくは有機粘結剤を含む。また、粘結剤が増粘性シリカを含むとき、有機粘結剤をさらに含むことが好ましい。これにより、歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスをより安定的に向上することができる。
【0031】
上述の点から、有機粘結剤は、好ましくはカルボキシメチルセルロースおよびその塩(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、キサンタンガム、アルギン酸およびその塩(たとえばアルギン酸ナトリウム)、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコールならびにカラギーナン(好ましくはκ-カラギーナンを除く。たとえばι-カラギーナン)からなる群から選択される一種または二種以上を含み;
より好ましくはカラギーナン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびキサンタンガムからなる群から選択される一種または二種以上を含み;
さらに好ましくはカラギーナン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびキサンタンガムからなる群から選択される二種以上を含み;
さらにより好ましくはアルギン酸ナトリウムまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムとキサンタンガムを含み;
よりいっそう好ましくはアルギン酸ナトリウムとキサンタンガムとを含む。
上記塩の具体例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0032】
一方、口腔内をすすぎやすくするという点では、口腔用組成物がキサンタンガムを含まないことも好ましい。口腔用組成物がキサンタンガムを含まないとは、具体的には、口腔用組成物にキサンタンガムが意図的に配合されていないことをいい、さらに具体的には、キサンタンガムの含有量が口腔用組成物全体に対して0.001質量%以下であることをいう。
【0033】
口腔用組成物中の有機粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。これにより、口腔用組成物に対して適度な粘度を付与することができる。
また、口腔用組成物中の有機粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。これにより、チューブ容器から絞り出す際のキレがより良好な口腔用組成物を得ることができる。
【0034】
口腔用組成物中の無機粘結剤の含有量に対する有機粘結剤の含有量の質量比(有機粘結剤/無機粘結剤)は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上である。これにより、口当たりが滑らかな使用感に優れる口腔用組成物を得ることができる。
また、上記質量比(有機粘結剤/無機粘結剤)は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.75以下、さらに好ましくは1.5以下、さらにより好ましくは1.25以下、よりいっそう好ましくは0.9以下である。これにより、口腔用組成物をチューブ容器から歯ブラシ等に取り出す際のキレにより優れる口腔用組成物を得ることができる。
【0035】
口腔用組成物中の粘結剤の総含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。これにより、口腔用組成物に適度な粘度を付与することができる。
また、口腔用組成物中の粘結剤の総含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば45質量%以下であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。これにより、歯磨き時に唾液とよりなじみやすい口腔用組成物を得ることができる。また、口腔用組成物の過度な増粘を抑制できる。
【0036】
また、口腔用組成物中のシリカの総含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。これにより、口腔用組成物の流動性を適度に抑えることができる。
また、口腔用組成物中のシリカの総含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば60質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27.5質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。これにより、口腔内で、たとえば歯磨き時に、唾液とよりなじみやすい口腔用組成物を得ることができる。
【0037】
(その他成分)
口腔用組成物は上述の成分以外の成分をさらに含んでもよい。かかる成分として、薬用成分、粘稠剤、界面活性剤、湿潤剤、矯味剤、防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、溶剤、可溶化剤、基剤、洗浄剤、吸着剤等が挙げられ、たとえば剤形に応じて適宜選択し得る。
【0038】
薬用成分としては、たとえば、殺菌剤、抗炎症剤、血行促進剤、歯石沈着抑制剤、ステイン除去剤、知覚過敏抑制剤、ビタミン剤および歯垢分解酵素からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの薬効成分は、医薬品等に使用しうるものであれば限定されない。
【0039】
薬用成分のうち、殺菌剤としては、たとえば、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール、クロルヘキシジン塩酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウロイルサルコシンナトリウムおよびトリクロサンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0040】
抗炎症剤としては、たとえば、トラネキサム酸、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルレチン酸ステアリル、ε-アミノカプロン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロールおよびリゾチーム塩酸塩からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0041】
血行促進剤としては、たとえば、塩化ナトリウム、トコフェロール酢酸エステル、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびニコチン酸トコフェロールからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0042】
歯石沈着抑制剤としては、たとえば、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(無水)、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸水素二ナトリウム(結晶)、リン酸三ナトリウムおよびポリリン酸ナトリウムからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0043】
ステイン除去剤としては、たとえば、マクロゴール(マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000など)、ポリリン酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0044】
知覚過敏抑制剤としては、たとえば、硝酸カリウムおよび水溶性アルミニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0045】
ビタミン剤としては、たとえば、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、ピリドキシン塩酸塩、L-アスコルビン酸2-グルコシド、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、3-O-エチルアスコルビン酸、トコフェロール、イソステアリルアスコルビルリン酸2Na、カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸等のビタミンCおよびその誘導体;ならびに、酢酸DL-α-トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸dl-α-トコフェロールおよびトコフェロールニコチン酸エステル等のビタミンEおよびその誘導体からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0046】
歯垢分解酵素としては、たとえばデキストラナーゼが挙げられる。
【0047】
粘稠剤としては、たとえば医薬品・食品・化粧品原料として市販されているものを用いることができる。粘稠剤は、たとえば、多価アルコール、さらに具体的にソルビトール(ソルビット)、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール(1,3-プロパンジオール)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解コラーゲンからなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0048】
界面活性剤としては、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩等のアニオン界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤;および
アルキルベタイン系界面活性剤(たとえばヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン)、アミンオキサイド系界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤(たとえば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)等の両性界面活性剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
界面活性剤は、発泡剤であってもよい。
【0049】
口腔用組成物中の界面活性剤の含有量は口腔用組成物全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。これにより、歯磨き時に適度に泡立つ口腔用組成物を得ることができる。
また、口腔用組成物中の界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。これにより、口腔内の油分を除去しすぎない洗浄力の口腔用組成物を得ることができる。
【0050】
口腔用組成物は湿潤剤をさらに含むことが好ましく、これにより、口腔用組成物を製造安定性により優れたものとすることができる。
湿潤剤としては、医薬品・食品・化粧品原料として市販されているものであればよく、たとえば多価アルコールが挙げられ、さらに具体的には、ソルビトール(ソルビット)、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール(1,3-プロパンジオール)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解コラーゲンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0051】
口腔内への刺激性低減の点から、湿潤剤は、好ましくはソルビトール、濃グリセリンおよびプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはソルビトールまたは濃グリセリンである。
【0052】
口腔用組成物中の湿潤剤の含有量は口腔用組成物全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。これにより、口腔内の保湿力に優れる口腔用組成物を得ることができる。
また、口腔用組成物中の湿潤剤の含有量は、口腔用組成物全体に対して好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。これにより、うがいですすぎやすい口腔用組成物を得ることができる。
【0053】
矯味剤としては、たとえば、L-グルタミン酸ナトリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、イノシトール、D-ソルビトール、D-マンニトール、アラビトール、ラフィノース、ラクチュロース、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、パラチノース、パラチニット(登録商標)、アセスルファムK、トレハロース、マルトース、マルトシルトレハロースまたはマルチトール、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ペリラルチン、p-メトキシシンナミックアルデヒドおよびソーマチンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0054】
甘味が強く少量でも味を調えられるという点から、矯味剤は、好ましくはキシリトール、サッカリンナトリウムおよびサッカリンからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはキシリトールおよびサッカリンナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0055】
防腐剤としては、たとえば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル;フェノキシエタノール等のアルコール類;ソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸およびこれらの塩;エチレンジアミン四酢酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ならびにエチルヘキシルグリセリンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
上記塩の具体例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;およびカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0056】
香料としては、たとえば、L-メントール、ペパーミント、スペアミント、フルーツ香料およびハッカ油からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0057】
着色剤としては、たとえば、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素等の天然色素;赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素;リボフラビン、および、二酸化チタンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0058】
pH調整剤としては、たとえば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピロリン酸、酒石酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の酸やアルカリ、緩衝剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0059】
溶剤としては、水;およびエタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。溶剤は液体の基剤であってもよい。
【0060】
口腔用組成物中の水の含有量は、たとえば口腔用組成物中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。また、口腔用組成物中の水の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば30~80質量%とすることができ、好ましくは32~70質量%である。
また、口腔用組成物がエタノールを含まない、すなわち、エタノールの含有量が0質量%である、または、口腔用組成物がエタノールを含みその含有量が5質量%以下であることも好ましい。これにより、口腔内への強い刺激を抑制することができる。
【0061】
可溶化剤は、水への上記添加剤や薬効成分の溶解を促進させるために添加してもよい。そのような可溶化剤の例として、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。
【0062】
上記以外の基剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0063】
洗浄剤としては、たとえばポリリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0064】
吸着剤としては、たとえばβ-シクロデキストリンが挙げられる。
【0065】
さらに、上記成分以外にも、本発明の内容を損なわない範囲で、通常、口腔用組成物の用途に適した成分も適宜配合することができる。
【0066】
(剤形等)
口腔用組成物の具体例として、練歯磨等の歯磨剤が挙げられる。
また、口腔用組成物は好ましくは歯磨組成物であり、より好ましくは練歯磨組成物である。これにより、口腔組成物の取り扱い容易性をさらに優れたものとすることができる。同様の点から、口腔用組成物は好ましくはペースト状またはゲル状である。
【0067】
また、口腔用組成物は、好ましくは歯ブラシに載せて口腔内に適用されるものである。
口腔用組成物とともに用いられる歯ブラシとしてはたとえば公知ものが挙げられる。歯ブラシの毛束の材料としてたとえば樹脂が挙げられ、さらに具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル;ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン等のポリアミド;ならびにオレフィンエラストマー、スチレンエラストマー等のエラストマー樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物とともに用いられる歯ブラシとしては、通常の市販のものを用いてよい。
【0068】
(製造方法)
本実施形態において、口腔用組成物は、たとえば研磨剤、粘結剤および適宜その他の成分を配合する工程を含む。
ここで、(TF5/TF10)および曳糸性がそれぞれ特定の範囲にある口腔用組成物を得るためには、たとえば口腔用組成物に含まれる成分および配合割合を適切に選択するとともに、口腔用組成物の製造工程を適切に選択することが重要である。
たとえば、口腔用組成物に含まれる研磨剤および粘結剤の種類および量を適切に選択、組み合わせて配合を設計することが重要であり、研磨性シリカおよび無機粘結剤を組み合わせて用いることが好ましく、研磨性シリカおよび増粘性シリカを組み合わせて用いることがより好ましい。また、口腔用組成物に有機粘結剤をさらに配合することも好ましい。また、口腔用組成物に湿潤剤をさらに配合することも好ましい。
また、口腔用組成物の製造プロセスを真空下で行うことが好ましい。また、たとえば口腔用組成物が増粘性シリカ、有機粘結剤、湿潤剤および水を含むとき、たとえば、湿潤剤、有機粘結剤および水の混合中または混合後に、増粘性シリカ、研磨剤および適宜他の成分を加えて均一になるまで攪拌混合することが好ましい。また、湿潤剤の一部および有機粘結剤を予め混合物としておき、上述の均一になった段階で混合物を加えてさらに均一になるまで攪拌することも好ましい。さらに、これらの工程を真空下でおこなうことがより好ましい。
【0069】
(歯磨剤)
本実施形態において、歯磨剤は、上述の口腔用組成物がチューブ容器に充填されているものであり、好ましくは練歯磨組成物がチューブ容器に充填されているものである。
本実施形態においては、口腔用組成物の歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さのバランスが優れているため、これをチューブ容器に充填して歯磨剤とすることにより、歯磨剤をチューブ容器から歯ブラシに絞り出して口腔内に適用する際の取り扱い性を優れたものとすることができる。
【0070】
また、練歯磨組成物等の口腔用組成物は、好ましくはチューブ容器から絞り出して用いられる。チューブ容器として、たとえば公知の容器を用いることができる。
チューブ容器の材料は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の樹脂材料;およびアルミニウム等の金属材料からなる群から選択される一種または二種以上とすることができる。たとえば、これらの材料の単層または多層容器であってもよい。
容器の最内層の材料は、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上である。たとえば、容器の最内層の材料がポリエチレンであって、アルミニウム層をさらに備えるアルミラミネートチューブ容器を用いてもよい。
【0071】
チューブ容器の吐出口の内径は、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。これにより、口腔用組成物を吐出する際に要する過度の力をより安定的に低減できる。
また、チューブ容器の吐出口の内径は、好ましくは11mm以下であり、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは9mm以下である。これにより、液だれを効率的に抑制することができる。
また、吐出口を除いたチューブ容器の長さは、50~160mm程度であってよく、チューブ容器の幅方向の外周長さは、20~120mmで程度であってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1~6、比較例1~3)
本例では、練歯磨組成物である口腔用組成物の調製および評価をおこなった。各例の配合、測定および評価結果を表1および表2に示す。表1および表2における成分量の単位は質量%であり、シリカの粒径は平均粒径である。また、表1および表2に記載の成分の詳細を以下に示す。
ソルビトール花王:70%ソルビトール液、花王社製
化粧品用濃グリセリン:濃グリセリン、阪本薬品工業社製
アルギン酸ナトリウムSHG:アルギン酸Na、舞昆のこうはら社製
NIKKOL SLS:ラウリル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製
苛性ソーダ(48%):水酸化ナトリウム水溶液、巽合成化学社製
【0075】
(口腔用組成物の調製)
ソルビトールまたはグリセリンと、精製水をビーカーに秤量し、乳化分散装置(ラボ・リューション、プライミクス社製)および撹拌部(ホモディスパー2.5型、プライミクス社製)を用いて80℃にて2500rpmで攪拌しながら、有機粘結剤を徐添した。3分間撹拌混合したのち、研磨性シリカ、増粘性シリカ(吸油量2.5mL/g)、ラウリル硫酸Na、苛性ソーダを順に加え、その都度ゴムベラで攪拌混合し、均一になるまで攪拌した。
【0076】
(引張戻り力)
前述の方法1の方法により25℃にてTF5およびTF10の測定をおこなった。
機器名:レオメーター(CR-3000EX-S、サン科学社製、検出限界:0.1gf)
使用治具:圧力/弾性測定用感圧軸(Φ20mm)
測定速度:60mm/min
引き上げ距離:5mmまたは10mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
各引き上げ距離に達した時点での応力の絶対値を各引き上げ距離で3回計測し、その平均値を算出し、TF5およびTF10とした。測定値は負の値であるが、力の大きさを比較するため、絶対値(正の値)を用いた。TF5およびTF10より、比(TF5/TF10)を得た。
【0077】
(曳糸性)
前述の方法2の方法により25℃にておこなった。
機器名:レオメーター(CR-3000EX-S、サン科学社製)
使用治具:進入度測定用感圧軸(Φ15mm)
測定速度:1000mm/min
引き上げ距離:50mm
充填容器:30mL容プラ壷(直径43mm)
引き上げ中に使用治具から練歯磨組成物が離れるまでの距離を3回計測し、その平均値を算出した。
【0078】
(評価方法)
(歯ブラシへの付着性)
各例の組成物を30mL容プラ壷(Φ43mm)に充填した。これに対してヘッドサイズ18mm、毛が飽和ポリエステル樹脂製の歯ブラシ(ライオン社製)をヘッドの高さが歯ブラシの表面と同じ高さになるまで含浸させ、およそ1秒3cmの速さで垂直方向に持ち上げたときに歯ブラシに付着した組成物の質量(g)を測定し、以下の基準で評価した。
A:付着量1.2g以上
B:付着量1.0g以上1.2g未満
C:付着量1.0g未満
【0079】
(キレの良さ)
各例の練歯磨組成物を口径19mm、サイズ40Φ×130H、低密度ポリエチレン(LDPE)製のラミネートチューブ(竹本容器社製)に充填した。キャップとして、口径6mm、サイズ39Φ×24H、ポリプロピレン製のワンタッチキャップ(T-40ΦワンタッチCAPII、竹本容器社製)を装着し、チューブから練歯磨組成物を紙タオル上に約2.5cm押出した後、チューブをおよそ1秒5cmの速さで横に引いたときの糸を引いた組成物の長さを測定し、以下の評価基準で評価した。
A:糸を引いた組成物の長さが20mm未満
B:糸を引いた組成物の長さが20mm以上28mm未満
C:糸を引いた組成物の長さが28mm以上
【0080】
【0081】
【要約】
【課題】歯ブラシへの付着性とチューブ容器から絞り出す際のキレの良さとのバランスに優れた口腔用組成物を提供する。
【解決手段】研磨剤および粘結剤を含む口腔用組成物であって、5mm引張試験および10mm引張試験における引張戻り力をそれぞれTF5およびTF10としたとき、TF10に対するTF5の比(TF5/TF10)が1.1以上10以下であり、曳糸性が2mm以上24mm未満である、口腔用組成物。
【選択図】なし