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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】パネル及び パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
B29C51/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021138343
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032301
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(72)【発明者】
【氏名】長島 慎吾
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202233(JP,A)
【文献】特開平11-063597(JP,A)
【文献】米国特許第04845785(US,A)
【文献】特開2008-012871(JP,A)
【文献】特開2020-179528(JP,A)
【文献】特開平05-229367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂パネル体を備えるパネルであって、
前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、
前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、
前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離し、
前記ヒンジ部の厚さは、前記第1本体部の厚さ、及び、前記第2本体部の厚さよりも小さく、
前記第1本体部及び前記第2本体部は、間隔をおいて対向している表壁と裏壁とを備え、
表皮材を備え、
前記表皮材は、前記ヒンジ部をまたいで前記第1本体部および前記第2本体部に貼り付けられ、
前記ヒンジ部の両端にわたる長さが全長L0であり、前記スリットの長さの合計がスリット合計長LSであるとしたときに、LS/L0が0.50~0.99であり、
前記スリットは、前記表皮材により覆われている、パネル。
【請求項2】
樹脂パネル体を備えるパネルであって、
前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、
前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、
前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離し、
前記ヒンジ部の厚さは、前記第1本体部の厚さ、及び、前記第2本体部の厚さよりも小さく、
前記スリットの幅は、前記ヒンジ部の幅よりも小さく、
表皮材を備え、
前記表皮材は、前記ヒンジ部をまたいで前記第1本体部および前記第2本体部に貼り付けられ、
前記ヒンジ部の両端にわたる長さが全長L0であり、前記スリットの長さの合計がスリット合計長LSであるとしたときに、LS/L0が0.50~0.99であり、
前記スリットは、前記表皮材により覆われている、パネル。
【請求項3】
樹脂パネル体を備えるパネルであって、
前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、
前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、
前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離し、
前記ヒンジ部の厚さは、前記第1本体部の厚さ、及び、前記第2本体部の厚さよりも小さく、
前記第1本体部及び前記第2本体部は、間隔をおいて対向している表壁と裏壁とを備え、
表皮材を備え、
前記表皮材は、前記ヒンジ部をまたいで前記第1本体部および前記第2本体部に貼り付けられ
前記表皮材は、前記樹脂パネル体の表側の表面全体を覆うように設けられる、パネル。
【請求項4】
樹脂パネル体を備えるパネルであって、
前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、
前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、
前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離し、
前記ヒンジ部の厚さは、前記第1本体部の厚さ、及び、前記第2本体部の厚さよりも小さく、
前記スリットの幅は、前記ヒンジ部の幅よりも小さく、
表皮材を備え、
前記表皮材は、前記ヒンジ部をまたいで前記第1本体部および前記第2本体部に貼り付けられ
前記表皮材は、前記樹脂パネル体の表側の表面全体を覆うように設けられる、パネル。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のパネルであって、
前記ヒンジ部の両端にわたる長さが全長L0であり、前記スリットの長さの合計がスリット合計長LSであるとしたときに、LS/L0が0.50~0.99である、パネル。
【請求項6】
請求項1請求項5の何れか1つに記載のパネルであって、
前記第1本体部及び第2本体部は、中空部を含む、パネル。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1つに記載のパネルであって、
前記ヒンジ片は、端部ヒンジ片を含み、
前記端部ヒンジ片は前記ヒンジ部の両端それぞれに設けられた、パネル。
【請求項8】
請求項に記載のパネルであって、
前記ヒンジ片は、中間ヒンジ片を含み、
前記中間ヒンジ片は前記端部ヒンジ片の間に設けられた、パネル。
【請求項9】
成形機を用いて、樹脂パネル体を備えるパネルの製造方法であって、
前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、
前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、
前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、
前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離し、
前記成形機は、第1及び第2金型を含み、
前記第1及び第2金型は、第1及び第2キャビティ面を有し、前記第1及び第2キャビティ面を取り囲むように第1及び第2ピンチオフ部が設けられ、
前記第2金型には、前記ヒンジ部を形成する凸条が設けられており、
押出工程と、賦形工程と、型閉じ工程と、スリット切込工程と、を備え、
前記押出工程では、前記第1及び第2金型の間に第1及び第2樹脂シートを押し出し、
前記賦形工程では、前記第1及び第2樹脂シートをそれぞれ前記第1及び第2金型の前記第1及び第2キャビティ面に沿って賦形し、
前記型閉じ工程では、前記第1及び第2金型の型閉じを行い、前記第1及び第2ピンチオフ部に沿って前記第1及び第2樹脂シートが互いに溶着されて、前記第1及び第2金型によって形成されるキャビティの内面に沿った形状の前記樹脂パネル体が得られ、前記凸条と前記第1金型との間において、前記第1及び第2樹脂シートが圧縮されて前記ヒンジ部が形成され、
前記スリット切込工程では、前記型閉じ工程の後に、前記ヒンジ部に前記スリットが設けられる、パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ部を介して折り曲げ可能なパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薄肉のヒンジ部を備える樹脂製のパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-051649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒンジ部が容易に曲がるように、ヒンジ部をより一層薄くする方法が考えられる。しかし薄いヒンジ部を安定して製造することは難しく、僅かな製造ばらつきにより食い切れ等の問題が生じうる。ヒンジ部の薄さを追求するアプローチには限界があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヒンジ部の曲がりやすさを向上させたパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、樹脂パネル体を備えるパネルであって、前記樹脂パネル体は、一体に設けられた第1本体部と第2本体部とヒンジ部とを備え、前記ヒンジ部は、ヒンジ片とスリットとを持ち、前記ヒンジ片は、前記第1本体部と前記第2本体部とを回動可能に連結し、前記スリットは、前記ヒンジ片の隣に設けられて前記第1本体部と前記第2本体部とを分離する、パネルが提供される。
【0007】
本発明では、スリットを設けることでヒンジ部の曲がりやすさを向上できる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、表皮材を備え、前記表皮材は、前記ヒンジ部をまたいで前記第1本体部および前記第2本体部に貼り付けられる。
好ましくは、前記ヒンジ部の両端にわたる長さが全長Lであり、前記スリットの長さの合計がスリット合計長Lであるとしたときに、L/Lが0.50~0.99である。
好ましくは、前記ヒンジ片は、端部ヒンジ片を含み、前記端部ヒンジ片は前記ヒンジ部の両端それぞれに設けられる。
好ましくは、前記ヒンジ片は、中間ヒンジ片を含み、前記中間ヒンジ片は前記端部ヒンジ片の間に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aはパネルを表面側(表皮材側)から視た平面図であり、図1Bはパネルの側面図である。
図2図2Aはパネルを裏面側から視た平面図であり、図2BはA-A線に沿う断面図である。
図3】パネルの裏面における図2の部分B1~B3の拡大平面図である。
図4図3のC-C線に沿う断面図である。
図5】ヒンジ部が曲がる様子の一例を示す断面図である。
図6】パネルの製造に利用可能な成形機10の構成図(金型21,31及びその近傍の部材については縦断面図)である。
図7図6の破線Dの位置で金型が閉じたときの様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.パネルの構成
図1図4を用いてパネル1の構成を説明する。図1Aおよび図1Bに示すように、パネル1は、樹脂パネル体2と表皮材8とを備える。樹脂パネル体2は、第1本体部2aと第2本体部2bとヒンジ部5とが一体に設けられたものである。図1Aは樹脂パネル体2の表面側(表側)を図示しており、樹脂パネル体2の表面全体を覆うように表皮材8が貼り付けられている。表皮材8は、ヒンジ部5をまたいで第1本体部2aおよび第2本体部2bに貼り付けられる。樹脂パネル体2の裏面は露出している。
【0012】
パネル1は全長Lと幅Wとを備える略矩形の平板パネルである。実施の形態では、一例として、第1本体部2aと第2本体部2bとヒンジ部5との全長が等しく、いずれもパネル1と同じ全長Lである。実施の形態では、一例として、第1本体部2aが幅Waを持ち、第2本体部2bが幅W(W<W)を持つ。ヒンジ部5の幅(図4のW)を含めて、W=W+W+Wである。
【0013】
図2Aに示すように、第1本体部2aと第2本体部2bとの間をヒンジ部5がのびている。実施の形態では、一例として、ヒンジ部5は、3つのヒンジ片5hと2つのスリット5sとを持つ。図2Aの例では、各々のヒンジ片5hの長さLはヒンジ部5の全長Lに対して非常に小さい。3つのヒンジ片5hは、第1本体部2aと第2本体部2bとを回動可能に連結している。スリット5sは、ヒンジ片5hの隣に設けられて第1本体部2aと第2本体部2bとを分離する。スリット5sを設けることでヒンジ部5の曲がりやすさが向上する。
【0014】
図3図2Aの部分B1~B3の拡大図である。一例として、ヒンジ片5hは一つの中間ヒンジ片5h1と二つの端部ヒンジ片5h2とを持つ。二つの端部ヒンジ片5h2は、ヒンジ部5の両端に設けられる。中間ヒンジ片5h1は、ヒンジ部5の両端よりも内側の部位に設けられる。実施形態では一例として、中間ヒンジ片5h1がちょうどヒンジ部5の中央位置(つまりヒンジ部5の端からL/2の位置)に設けられる。
【0015】
図4には図3のC-C線に沿う断面が図示されている。樹脂パネル体2は、表壁3と裏壁4を備える。表壁3と裏壁4は、間隔をおいて対向している。表壁3と裏壁4の間には中空部7が設けられている。なお表壁3と裏壁4の周囲は、周囲壁(図示せず)によって繋がれている。表壁3の表面は平坦である。ヒンジ部5は、裏壁4が表壁3に向かって凹むことで形成されている。裏壁4には、ヒンジ部5に隣接した位置に傾斜部4aが設けられており、表壁3と裏壁4の間隔は、傾斜部4aにおいて、ヒンジ部5に向かうにつれて狭くなっている。
【0016】
ヒンジ部5は幅Wを備える。スリット5sは、1本線で構成された切り込みであってもよく、あるいはヒンジ部5を切り抜いて構成された切り抜きであってもよい。スリット5sの幅(太さ)をスリット幅Wとも称するが、スリット5sが1本線の切り込みである場合のスリット幅Wは実質的にゼロとなる。一例としてスリット5sの幅Wとヒンジ部の幅Wとの比W/Wで規定すると、W/Wは、例えば0~1であり、具体的には例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、スリット幅Wは一例としてW<Whでもよいが、W=Wとなるほどにスリット幅を太くした切り抜きを設けてもよい。なおヒンジ片5hの幅は、ヒンジ部5と同じく幅Wである。なおスリット幅Wが大きい場合には、スリット5sから表皮材8の一部が露出する。
【0017】
図4に示すように、表皮材8がパネル1の表壁3側に設けられる。表皮材8は、ヒンジ部5をまたいで第1本体部2aから第2本体部2bにわたって設けられている。表皮材8は、不織布のような通気性を有するカーペット状の部材で構成されてもよい。
【0018】
第1本体部2aと第2本体部2bでの表壁3及び裏壁4の厚さは、例えば、0.5~2mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
図2Aに示すように、ヒンジ部5がのびる方向に沿ってヒンジ片5hとスリット5sとが交互に並んでいる。二つのスリット5sはそれぞれスリット長LS1、LS2を持つ。実施の形態では一例としてLS1=LS2である。また、実施の形態では一例として3つのヒンジ片5hが同じ長さLを持つ。L=3L+LS1+LS2である。なおLS1+LS2をスリット合計長Lとも称す。
【0020】
ヒンジ片5hの厚さは、例えば0.001~1.0mmであり、具体的には例えば、0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9,1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ヒンジ片5hの幅W(つまりヒンジ部5の幅W)は、例えば1~8mmであり、具体的には例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
なお、本願明細書では、ヒンジ部5の厚さ(すなわちヒンジ片5hの厚さ)は、表皮材8の厚さを含まない厚さを意味する。また、各種部材の厚さ及び幅等の値は、別段の規定がない場合には、平均値を意味する。
【0022】
ヒンジ部5の全長Lは、ヒンジ部5の両端にわたる長さである。スリット合計長Lは、スリット5sの長さの合計である。これらの比であるL/Lが大きければ大きいほど、ヒンジ部5に占めるスリット5sの割合が大きくなり、それに伴いヒンジ部5に占めるヒンジ片5hの割合(つまり複数のヒンジ片5hの長さLの合計)が縮小される。L/Lは、例えば0.50~0.99でもよく、例えば0.70~0.97でもよい。L/Lは、具体的には例えば、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89,0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
各々のヒンジ片5hの長さLは任意に定めることができる。一例としてヒンジ片5hの長さLは10mmでもよいが、これに限られず、例えば5~15mmでもよく、あるいは例えば2~100mmでもよい。長さLは、具体的には例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。一定以上の強度を確保するために長さLをある程度大きくしてもよい。
【0024】
ヒンジ部5に設けられるヒンジ片5hの個数は、3個に限定されず、2個または4個以上でもよい。ヒンジ片5hの個数は、具体的には例えば、5、6、7、8、9、または10個でもよく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。複数のヒンジ片5hは、全て均一な長さLを持っていてもよいが、互いに異なる長さでもよい。例えば一つの中間ヒンジ片5h1の長さLh1と一つの端部ヒンジ片5h2の長さLh2とで比較した場合に、Lh1<Lh2でもよく、Lh1>Lh2でもよい。各々のヒンジ片5hの長さLが前述の数値範囲内において互いに異なっていてもよい。
【0025】
ヒンジ片5hを設ける間隔は、スリット5s各々の長さで決まる。複数のスリット5sの長さが同じでもよいが、異なっていてもよい。ヒンジ片5h同士を近づけるようにスリット5sを短くすれば強度が増す。その一方でヒンジ片5h同士を遠ざけて設けるようにスリット5sを長くすればヒンジ部5の曲がりやすさが増す。
【0026】
スリット5sを設けることで曲がりやすさが向上する。スリット5sで曲がりやすさを調節できるため、ヒンジ片5hを薄くしすぎなくて済むこととなり、喰い切りの抑制やヒンジ片5hの千切れ等の抑制をしやすい利点がある。また、実施の形態では表皮材8が設けられることで、ヒンジ片5hと表皮材8との両方で、第1本体部2aと第2本体部2bとを回動可能に連結できる。表皮材8を十分に厚い素材で構築すれば高い強度を得ることができる。
【0027】
ヒンジ部5の曲がりやすさは様々に制御可能であり、必要な曲がりやすさ(柔軟性)の程度に応じて、少なくともスリット5sおよびヒンジ片5hの個数、長さ、幅および、深さ又は厚さを任意に変更可能である。図5には、ヒンジ部5の曲げ角度θが例示されている。第2本体部2bの自重で生じる曲げ角度θは、例えば45°以上でもよく、例えば60°以上でもよく、例えば70°以上でもよく、あるいは例えば85°以上でもよい。第2本体部2bの自重で生じる曲げ角度θは、具体的には例えば45°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、85°または90°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
ただし、第2本体部2bの自重で容易にヒンジ部5が曲がってもよいが、ヒンジ部5の構成はこれに限られない。第2本体部2bの自重ではヒンジ部5が全く曲がらなくともよく(つまり図5において自重によるθが実質的に0°)、或いは僅かしか曲がらない程度でもよい(例えば0°<θ≦15°あるいは0°<θ≦30°、あるいは0°<θ≦45°等)。こういった場合でも、スリット5sを設けることで、第2本体部2bに力を加えると容易にヒンジ部5が曲がるようにしてもよい。
【0029】
なお、パネル1の全長Lは、一例として500~1300mmでもよい。全長Lは、具体的には例えば500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。パネル1は、例えば自動車用のラゲッジボード、デッキボード、荷室用フロアボード等として提供されてもよい。
【0030】
図1A等に記載した第1本体部2aの幅Wと第2本体部2bの幅Wとの関係は、任意に設定できる。第2本体部2bの幅Wが大きいと、第2本体部2bの自重でヒンジ部5が曲がりやすい。そこで、W<Wの場合に、幅比率W/Wが、例えば0.20~0.80でもよく、例えば0.40~0.60でもよい。幅比率W/Wは、具体的には例えば0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、または0.95であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ただし上記の条件に限定されず、W=W(つまりW/W=1.0)でもよく、あるいはW>Wでもよい。
【0031】
以上説明した各種バリエーションのうち任意の2つ以上が互いに組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
2.パネル1の製造方法
以下、パネル1の製造方法の一例を説明する。本実施形態の方法は、準備工程とスリット切込工程と貼付工程を備える。具体的には、まず準備工程でスリット形成前の樹脂パネル体2が準備される。その樹脂パネル体2にスリット5sの形成および表皮材8の貼り付けが行われる。
【0033】
2.1 成形機の構成
まず、図6を用いて、樹脂パネル体2の製造方法の実施に利用可能な成形機10について説明する。成形機10は、一対の樹脂シート形成装置20と、金型21,31を備える。各樹脂シート形成装置20は、ホッパー12と、押出機13と、アキュームレータ17と、Tダイ18を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0034】
<ホッパー12,押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。
【0035】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
溶融樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に溶融樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて溶融樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して溶融状態の樹脂シート23,33を形成する。
【0036】
<金型21,31>
樹脂シート23,33は、開閉可能な金型21,31を開いた状態で金型21,31の間に押し出される。図6に示すように、金型21,31は、キャビティ面21a,31aを有し、キャビティ面21a,31aを取り囲むようにピンチオフ部21b,31bが設けられている。キャビティ面21a,31a内には、減圧吸引孔(図示せず)が設けられており、減圧吸引孔を通じて樹脂シート23,33を減圧吸引してキャビティ面21a,31aに沿った形状に賦形することが可能になっている。樹脂シート23,33の厚さは、例えば、0.5~2mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
金型31には、ヒンジ部5を形成する凸条35が設けられている。凸条35は、細長い突部であり、凸条35の長手方向が樹脂シート23,33の押出方向に非平行になるように構成されることが好ましく、凸条35の長手方向が樹脂シート23,33の押出方向に直交するように構成されることがさらに好ましい。この場合、ヒンジ部5の長手方向に沿った樹脂シート23,33の厚さの変化が抑制される。
【0038】
2-2.準備工程(パネル本体の製造工程)
準備工程では、スリット5s形成前の段階の樹脂パネル体2が準備される。本実施形態の準備工程は、より詳しくは、押出工程と、賦形工程と、型閉じ工程を備える。
【0039】
押出工程では、図4に示すように、金型21,31の間に樹脂シート23,33を押し出す。樹脂シート33は、樹脂シート23と金型31の間に配置される。
【0040】
次に、賦形工程で、樹脂シート23,33をそれぞれ金型21,31のキャビティ面21a,31aに沿って賦形する。この工程は、金型21,31によって樹脂シート23,33の減圧吸引を行うことによって実行することができる。
【0041】
次に、型閉じ工程で、金型21,31の型閉じを行う。金型21,31の型閉じが進むと、ピンチオフ部21b,31bに沿って樹脂シート23,33が互いに溶着されて、一対の金型21,31によって形成されるキャビティの内面に沿った形状の樹脂パネル体2が得られる。凸条35と金型21との間において、樹脂シート23,33が圧縮されてヒンジ部5が形成される(図7参照)。ピンチオフ部21b,31bの外側の部位がバリとなる。この後は、金型21,31を開いてパネル1を取り出し、バリを除去することによって、スリット5s形成前の段階の樹脂パネル体2が得られる。
【0042】
2-3.スリット切込工程
次に、樹脂パネル体2のヒンジ部5に、予め定めた個数および長さのスリット5sが設けられる。スリット5sを形成する具体的手段に限定はなく、例えばプレス、超音波カッター、またはナイフ等が用いられてもよい。
【0043】
2-4.表皮材8の貼付工程
次に、表皮材8を樹脂パネル体2に接着剤で貼り付けることで、パネル1が提供される。このような後貼りを行うので、実施の形態では表皮材8の素材に限定はない。後貼りは通気性が不要なので、使用可能な表皮材8のバリエーションが富む利点がある。例えば表皮材8は不織布でなくともよく、通気性のない例えば合成皮革等の表皮材でもよい。
【0044】
以上説明したように、実施の形態によれば、スリット5sを設けるという新規なアプローチによってヒンジ部5の曲がりやすさを向上できる。特に、実施の形態で様々に開示したバリエーションのごとくスリット5sとヒンジ片5hとを適切に設計することで、ヒンジ部5の曲がりやすさ制御と耐久性確保、並びに量産性を両立できる利点がある。すなわち、ヒンジ片5hで第1本体部2aと第2本体部2bとが連結しているので、第1本体部2aと第2本体部2bとが別部品に分かれずに済む。これにより後工程での表皮材8の後貼り作業が容易であり、またパネル1のサイズ(幅W0)の製造ばらつきも抑制される。またヒンジ片5hの長さLを調節することで、ヒンジ部5の曲がりやすさを所望の程度に制御するのが容易となる。
【0045】
3.変形例
以上説明した実施の形態には様々な変形が適用されうる。例えばパネル1から表皮材8が省略されてもよい。
【0046】
樹脂パネル体2の構造は一例であり、第1本体部2aと第2本体部2bには様々な構造を適用できる。一例として、中空部7に発泡体からなる芯材が設けられてもよい。芯材としての発泡体は、中空部7内で表壁3と裏壁4の間のスペースを確保したり、パネル1の強度や断熱性を高めたりする。芯材を設けるには、賦形工程と型閉じ工程との間にインサート工程を実施すればよい。インサート工程で、樹脂シート23,33の間に、凸条35の位置が薄くされた発泡体を配置し、型閉じ工程に進めばよい。他の例として、中空部7を有さない発泡樹脂板によって第1本体部2aと第2本体部2bとを構築してもよい。他の例として、第1本体部2aと第2本体部2bとにおける幅方向の任意の位置に所定間隔で補強リブが設けられてもよい。裏壁4の一部を表壁3に向けて窪ませて表壁3の内面に溶着した複数の補強リブを設けてもよく、これにより樹脂パネル体2の剛性および強度が向上させられてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 :パネル
2 :樹脂パネル体
2a :第1本体部
2b :第2本体部
3 :表壁
4 :裏壁
4a :傾斜部
5 :ヒンジ部
5h :ヒンジ片
5h1 :中間ヒンジ片
5h2 :端部ヒンジ片
5s :スリット
7 :中空部
8 :表皮材
10 :成形機
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
20 :樹脂シート形成装置
21 :金型
21a :キャビティ面
21b :ピンチオフ部
23 :樹脂シート
25 :連結管
27 :連結管
31 :金型
31a :キャビティ面
31b :ピンチオフ部
33 :樹脂シート
35 :凸条
:ヒンジ部の全長
:スリット合計長
S1,LS2 :スリット長
:ヒンジ片の長さ
:スリット幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7