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特許7663835衛星姿勢推定システム、衛星姿勢推定方法および衛星姿勢推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】衛星姿勢推定システム、衛星姿勢推定方法および衛星姿勢推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20250410BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
G06T7/70 Z
G01B11/26 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021062514
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022157958
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 千賀
(72)【発明者】
【氏名】先崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】小高 勝也
(72)【発明者】
【氏名】森 広宣
(72)【発明者】
【氏名】室園 響子
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0197724(US,A1)
【文献】特開平06-185984(JP,A)
【文献】特開2020-173626(JP,A)
【文献】水野 実 他,国際宇宙ステーション“Alpha”JEM曝露部の熱構造モデル試験,石川島播磨技報,石川島播磨重工業株式会社,1998年03月24日,第36巻 第1号
【文献】Anthea COMELLINI et al.,Vision-based navigation for autonomous space rendezvous with non-cooperative targets,2020 11th International Conference on Information, Intelligence, Systems and Applications (IISA),IEEE,2020年07月15日,URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/9284383,DOI: 10.1109/IISA50023.2020.9284383
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G01B 11/00 - 11/30
IEEE Xlore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定する特定部と、
対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された前記最大画素および前記最小画素に前記対象衛星の3次元構造上の座標対応付ける対応付け部と、
前記最大画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび前記最小画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトルを算出する算出部と、
前記第1の法線ベクトルの方向を前記赤外線画像が撮像される前の前記対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、前記第2の法線ベクトルの方向の逆方向を前記太陽の方向と推定する太陽方向推定部とを備える
ことを特徴とする衛星姿勢推定システム。
【請求項2】
赤外線センサによる対象衛星の撮像に関する情報から計算された赤外線画像が撮像された時点の前記対象衛星に対する太陽の方向と推定された太陽の方向との差分を計算する差分計算部を備える
請求項1記載の衛星姿勢推定システム。
【請求項3】
計算された差分と赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報とを用いて前記赤外線画像が撮像される前の前記対象衛星の姿勢を示す情報を推定する姿勢推定部を備える
請求項2に記載の衛星姿勢推定システム。
【請求項4】
赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報は、前記赤外線画像と同時に光学センサで撮像された前記対象衛星の光学画像から求められる情報である
請求項記載の衛星姿勢推定システム。
【請求項5】
前記姿勢推定部は、赤外線画像における輝度の最大値を用いて推定された姿勢を示す情報が撮像された時点からどの程度過去の情報であるか推定する
請求項または請求項4に記載の衛星姿勢推定システム。
【請求項6】
姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定し、
対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された前記最大画素および前記最小画素に前記対象衛星の3次元構造上の座標対応付け、
前記最大画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび前記最小画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトル算出し、
前記第1の法線ベクトルの方向を前記赤外線画像が撮像される前の前記対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、前記第2の法線ベクトルの方向の逆方向を前記太陽の方向と推定する
ことを特徴とする衛星姿勢推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定する特定処理、
対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された前記最大画素および前記最小画素に前記対象衛星の3次元構造上の座標対応付ける対応付け処理、
前記最大画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび前記最小画素に対応付けられた座標を含む前記3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトル算出する算出処理、および
前記第1の法線ベクトルの方向を前記赤外線画像が撮像される前の前記対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、前記第2の法線ベクトルの方向の逆方向を前記太陽の方向と推定する推定処理
を実行させるための衛星姿勢推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星姿勢推定システム、衛星姿勢推定方法および衛星姿勢推定プログラムに関し、特に対象衛星の温度の情報を基に光学カメラ等で撮像された時よりも前の対象衛星の太陽に対する姿勢を推定できる衛星姿勢推定システム、衛星姿勢推定方法および衛星姿勢推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間において、自衛星から他の衛星の状態を把握するためには、他の衛星に関する情報が、可能な限り多く取得されることが求められる。なお、本明細書において、「衛星」は、「人工衛星」を意味する。
【0003】
把握される衛星の状態は、例えば、故障して監視制御が不可能になった衛星の状態である。また、スペースデブリ等が把握されることもある。
【0004】
また、自国の衛星を他の脅威衛星から守るために、脅威衛星を監視する衛星の開発が求められている。特に、監視対象とする脅威衛星の姿勢情報は、脅威衛星が監視している対象や脅威衛星の目的を推察する指標になる可能性がある。すなわち、監視対象の衛星の姿勢情報を取得することは、監視作業における重要な任務である。以下、姿勢情報の取得対象の衛星を「対象衛星」ともいう。
【0005】
例えば、物体の姿勢を推定する手法が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、入力画像中の対象物体の姿勢推定を行う場合に、特定の姿勢クラス近傍における姿勢に関する認識精度の低下を抑制するための技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)画像に基づいて艦船等の目標を識別する目標識別装置が記載されている。特許文献2には、3Dモデルが用いられたシミュレーション画像から物体の姿勢を取得する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6188345号公報
【文献】特許第3697433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
宇宙空間に存在する衛星を光学カメラで撮像し、特許文献1に記載されているような手法を用いれば、衛星の姿勢を推定できると考えられる。しかし、光学カメラで直接撮像される前の衛星の姿勢を推定する手法は、特許文献1に記載されていない。
【0009】
光学カメラで撮像された対象衛星の光学画像から取得される対象衛星の姿勢情報には、光学画像が撮像された時刻の情報のみが含まれる。よって、上記の手法のみが使用される場合、光学画像の撮像以前の対象衛星の姿勢情報が取得されず、監視に使用される情報が制限される。また、光学画像の撮像以前の対象衛星の姿勢情報を取得する手法は、特許文献2にも記載されていない。
【0010】
そこで、本発明は、人工衛星が撮像された画像から人工衛星の撮像以前の姿勢を推定できる衛星姿勢推定システム、衛星姿勢推定方法および衛星姿勢推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による衛星姿勢推定システムは、姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定する特定部と、対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された最大画素および最小画素に対象衛星の3次元構造上の座標対応付ける対応付け部と、最大画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび最小画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトルを算出する算出部と、第1の法線ベクトルの方向を赤外線画像が撮像される前の対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、第2の法線ベクトルの方向の逆方向を太陽の方向と推定する太陽方向推定部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明による衛星姿勢推定方法は、姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定し、対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された最大画素および最小画素に対象衛星の3次元構造上の座標対応付け、最大画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび最小画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトル算出し、第1の法線ベクトルの方向を赤外線画像が撮像される前の対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、第2の法線ベクトルの方向の逆方向を太陽の方向と推定することを特徴とする。
【0013】
本発明による衛星姿勢推定プログラムは、コンピュータに、姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素と特定する特定処理、対象衛星の3Dモデルを用いて、特定された最大画素および最小画素に対象衛星の3次元構造上の座標対応付ける対応付け処理、最大画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第1の法線ベクトルおよび最小画素に対応付けられた座標を含む3Dモデルにおける面に対する第2の法線ベクトル算出する算出処理、および第1の法線ベクトルの方向を赤外線画像が撮像される前の対象衛星に対する太陽の方向推定するか、または、第2の法線ベクトルの方向の逆方向を太陽の方向と推定する推定処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人工衛星が撮像された画像から人工衛星の撮像以前の姿勢を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】対象衛星の撮像以前の姿勢と撮像時点の姿勢の例を示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態の衛星姿勢推定システムの構成例を示すブロック図である。
図3】赤外線画像撮像部100により撮像された赤外線画像の例を示す説明図である。
図4】光学画像撮像部400により撮像された光学画像の例を示す説明図である。
図5】対象衛星における輝度のピーク値に対応する位置と法線方向とを示す説明図である。
図6】太陽と対象衛星と自衛星との位置関係と、赤外線画像の例を示す説明図である。
図7】太陽と対象衛星と自衛星との位置関係と、赤外線画像の他の例を示す説明図である。
図8】第1の実施形態の衛星姿勢推定システム1000による衛星姿勢推定処理の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態の衛星姿勢推定システムの構成例を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態の衛星姿勢推定システム1001による衛星姿勢推定処理の動作を示すフローチャートである。
図11】本発明による赤外線画像処理システムのハードウェア構成例を示す説明図である。
図12】本発明による衛星姿勢推定システムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本願発明の概要を具体的に説明する。図1は、対象衛星の撮像以前の姿勢と撮像時点の姿勢の例を示す説明図である。図1に示す例では、対象衛星は、自衛星から撮像されている。
【0017】
図1に示すように、対象衛星の撮像以前の位置および姿勢と撮像時点の位置および姿勢とが異なる場合、各時点における対象衛星に対する太陽方向が異なる。なお、本願発明において対象衛星の姿勢は、オイラー角や四元数等のパラメータで表現される。
【0018】
例えば、対象衛星の筐体は、撮像される前に太陽の熱エネルギーによって温められている。すなわち、撮像時点では対象衛星の筐体において太陽に相対していた面が最も熱いと考えられる。なお、図1に示す対象衛星の色は、筐体の温度を表しており、温度が低下するにつれて徐々に薄くなっている。なお、図1に示す各表記は、他の図においても同様の意味を表す。
【0019】
対象衛星が撮像された赤外線画像が解析されれば、赤外線画像において最も輝度が大きい画素が特定される。上記の理由により、特定された画素は、太陽方向と相関があると考えられる。よって、特定された画素に対応する対象衛星の位置が特定されれば太陽方向が推定されると考えられる。
【0020】
以上のように、本願発明に係る衛星姿勢推定システムは、熱赤外センサ等の物体の温度の情報を取得できる計測機を用いて対象衛星を撮像し、輝度情報を取得することによって撮像時点より前の対象衛星の太陽に対する向き、すなわち対象衛星の姿勢を推定することを特徴とする。以下、衛星姿勢推定システムの構成および動作を具体的に説明する。
【0021】
実施形態1.
[構成の説明]
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。図2は、本発明の第1の実施形態の衛星姿勢推定システムの構成例を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、衛星姿勢推定システム1000は、赤外線画像処理システム200と、光学画像処理システム500と、撮像時刻・位置情報処理システム600とを含む。
【0023】
また、図2に示すように、赤外線画像処理システム200には、赤外線画像撮像部100が通信可能に接続されている。赤外線画像撮像部100は、赤外線カメラ等の、温度の情報を取得できるセンサ装置で構成される。
【0024】
また、図2に示すように、赤外線画像処理システム200は、赤外線画像入力部201と、ピーク値座標算出部202と、光学・赤外位置合わせ部203と、ピーク値3D座標算出部204と、法線方向取得部205と、太陽方向推定部206と、太陽方向比較部207と、衛星過去姿勢推定部208と、姿勢出力部209とを有する。
【0025】
また、図2に示すように、光学・赤外位置合わせ部203およびピーク値3D座標算出部204には、赤外線画像処理システム200の外部システムである光学画像処理システム500が通信可能に接続されている。光学画像処理システム500は、光学画像入力部501と、姿勢取得部502と、2D・3Dマッチング部503とを有する。
【0026】
また、図2に示すように、光学画像処理システム500には、光学画像撮像部400が通信可能に接続されている。光学画像撮像部400は、赤外線画像撮像部100とほぼ同じ位置から対象衛星を撮像する。
【0027】
また、図2に示すように、赤外線画像入力部201および太陽方向比較部207には、赤外線画像処理システム200の外部システムである撮像時刻・位置情報処理システム600が通信可能に接続されている。撮像時刻・位置情報処理システム600は、太陽位置算出部601を有する。
【0028】
また、図2に示すように、赤外線画像処理システム200には、ディスプレイ等の表示部300が通信可能に接続されている。
【0029】
また、図2に示すように、光学画像処理システム500には、システムと独立した衛星姿勢データベース700が通信可能に接続されている。衛星姿勢データベース700には、対象衛星の学習画像が格納されている。
【0030】
本実施形態の学習画像には、撮像されている対象衛星の姿勢情報と関連付けられていることが求められる。よって、学習画像として、姿勢情報が既知である対象物体の実写画像や、3次元モデルのデータが用いられて生成されたCG(Computer Graphics)画像等が用いられる。本実施形態の衛星姿勢データベース700に格納されている学習画像には、姿勢パラメータが関連付けられている。
【0031】
また、図2に示すように、赤外線画像処理システム200および光学画像処理システム500には、衛星3Dモデルデータベース800が通信可能に接続されている。衛星3Dモデルデータベース800には、対象衛星の3Dモデルを基に、1つの視点から3Dモデルの向きを変化させることによって生成されたシミュレーション画像が格納されている。
【0032】
また、本実施形態のシミュレーション画像には、撮像されている対象衛星の3次元構造上の座標が関連付けられている。なお、3次元構造上の座標は、3Dモデルに対して固定されている座標を表す。例えば一辺の長さがa(aは正の実数)の立方体において、立方体の重心座標を原点とすると、立方体の頂点の3次元構造上の座標は、(1/2a, 1/2a, 1/2a)等で表される。
【0033】
衛星姿勢データベース700および衛星3Dモデルデータベース800は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現される。
【0034】
以下、本実施形態の衛星姿勢推定システム1000の各構成要素による具体的な処理を説明する。最初に、赤外線画像撮像部100が、赤外線カメラ等のセンサ装置を用いて、対象衛星の赤外線画像データを記録する。次いで、赤外線画像撮像部100は、記録された対象衛星の赤外線画像データを赤外線画像処理システム200に入力する。
【0035】
次いで、赤外線画像入力部201に赤外線画像撮像部100から赤外線画像データが入力される。赤外線画像入力部201は、ピーク値座標算出部202に赤外線画像データが示す赤外線画像、太陽位置算出部601に赤外線画像データが示す撮像時刻情報をそれぞれ入力する。
【0036】
ピーク値座標算出部202は、入力された赤外線画像において、輝度が最大である画素(ピクセル)の座標と、輝度が最小である画素の座標をそれぞれ算出する。
【0037】
すなわち、ピーク値座標算出部202は、姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素とをそれぞれ特定する。
【0038】
太陽位置算出部601は、赤外線画像入力部201から入力された撮像時刻情報を基に、所定の固定座標系における対象衛星の位置(Xt, Yt, Zt)、および太陽の位置(Xs, Ys, Zs)をそれぞれ算出する。
【0039】
次いで、太陽位置算出部601は、対象衛星を始点とする太陽方向の単位ベクトルVecnow=(Xs-Xt, Ys-Yt, Zs-Zt)を算出する。算出されたVecnowが示す太陽方向は、図1に示す撮像時点の太陽方向に対応する。太陽位置算出部601は、算出された撮像時点の太陽方向の単位ベクトルVecnowを示す情報を、太陽方向比較部207に入力する。
【0040】
赤外線画像撮像部100が対象衛星の赤外線画像データを記録するタイミングで、光学画像撮像部400も対象衛星の光学画像データを記録する。光学画像撮像部400は、記録された光学画像データを光学画像入力部501に入力する。次いで、光学画像入力部501は、記録された光学画像データを光学・赤外位置合わせ部203と、姿勢取得部502と、2D・3Dマッチング部503とに入力する。
【0041】
姿勢取得部502は、入力された光学画像データを基に、衛星姿勢データベース700を参照する。次いで、姿勢取得部502は、光学画像データが示す光学画像と、衛星姿勢データベース700に格納されている学習画像とをそれぞれ照合し、光学画像と最も類似する学習画像を探索する。
【0042】
次いで、姿勢取得部502は、探索された学習画像に関連付けられている姿勢パラメータを、光学画像の姿勢情報に決定する。姿勢取得部502は、決定された姿勢情報を衛星過去姿勢推定部208と姿勢出力部209に入力する。
【0043】
2D・3Dマッチング部503は、光学画像入力部501から入力された対象衛星の光学画像データを受け取る。2D・3Dマッチング部503は、光学画像入力部501から入力された光学画像データが示す対象衛星の光学画像を基に、対象衛星の3次元構造と、2次元の光学画像とを対応付ける。
【0044】
本実施形態の2D・3Dマッチング部503は、受け取った光学画像を基に、対象衛星の3次元構造を、3Dモデルを用いたシミュレーション方法を利用して取得する。なお、対象衛星の3Dモデルは、既知であると仮定する。
【0045】
具体的には、2D・3Dマッチング部503は、受け取った光学画像と、衛星3Dモデルデータベース800に格納されているシミュレーション画像とをそれぞれ照合し、光学画像と最も類似するシミュレーション画像を探索する。
【0046】
次いで、2D・3Dマッチング部503は、探索されたシミュレーション画像に関連付けられている3次元構造上の座標と、光学画像とを対応付ける。なお、2D・3Dマッチング部503は、特許文献2に記載されている手法や、他の一般的な物体姿勢取得手法を用いて、光学画像と対象衛星の3次元構造上の座標の情報とを対応付けてもよい。
【0047】
2D・3Dマッチング部503は、光学画像と対応付けられた3次元構造上の座標の情報を、ピーク値3D座標算出部204に入力する。
【0048】
光学・赤外位置合わせ部203は、ピーク値座標算出部202から入力される赤外線画像において輝度が最大である画素の座標と輝度が最小である画素の座標、および光学画像入力部501から入力される光学画像データを基に位置合わせを行う。
【0049】
以下、図3に示す赤外線画像、図4に示す光学画像を用いて説明する。図3は、赤外線画像撮像部100により撮像された赤外線画像の例を示す説明図である。また、図4は、光学画像撮像部400により撮像された光学画像の例を示す説明図である。
【0050】
図3に示す赤外線画像は、I×J(I,Jはそれぞれ正の整数)の解像度で出力されている。図3に示す赤外線画像において、輝度のピーク値を有するピクセル(図3~4において斜線が付された矩形)の、ピクセルにおける中心座標を(i, j)、対応する輝度ピーク値をI(i, j)とする。
【0051】
すなわち、上記の中心座標(i, j)が、ピーク値座標算出部202から入力される赤外線画像において輝度が最大である画素の座標、または輝度が最小である画素の座標である。なお、輝度のピーク値は、輝度の最大値と輝度の最小値を含む。
【0052】
また、図4に示す光学画像は、M×N(M,Nはそれぞれ正の整数)の解像度で出力されている。図4に示すように、座標(i, j)に対応する光学画像のピクセルが複数存在する場合、光学・赤外位置合わせ部203は、各ピクセルの中心座標を(m, n), (m+1, n), (m+2, n),・・・,(m+k, n+k’),・・・,(m, n+1)とする(k, k’はそれぞれ任意の整数)。
【0053】
次いで、光学・赤外位置合わせ部203は、各ピクセルの中心座標のうち、最も座標が(i, j)に近接している光学画像における座標を(m’, n’)とする。光学・赤外位置合わせ部203は、座標(m’, n’)における光学画像の輝度を、I(i, j)とみなす。すなわち、光学・赤外位置合わせ部203は、座標(m’, n’)における光学画像の輝度を、最大輝度データまたは最小輝度データとする。
【0054】
上記の処理により、光学・赤外位置合わせ部203は、赤外線画像における輝度のピーク値を有するピクセルを、光学画像の座標と対応付けることができる。光学・赤外位置合わせ部203は、光学画像の座標で表される、最大輝度データと最小輝度データとを含む輝度のピーク値の情報を、ピーク値3D座標算出部204に入力する。
【0055】
ピーク値3D座標算出部204には、光学・赤外位置合わせ部203から光学画像の座標と対応付けられた輝度のピーク値の情報、2D・3Dマッチング部503から光学画像と対応付けられた対象衛星の3次元構造上の座標の情報がそれぞれ入力される。
【0056】
入力された2つの情報を用いて、ピーク値3D座標算出部204は、対象衛星の3次元構造上の座標と、最大輝度データまたは最小輝度データとを1対1に対応させる。すなわち、ピーク値3D座標算出部204は、ピーク値座標算出部202により特定された最大画素および最小画素に対象衛星の3次元構造上の座標をそれぞれ対応付ける。
【0057】
ピーク値3D座標算出部204は、1対1に対応させられた3次元構造上の座標と輝度のピーク値の情報とを、法線方向取得部205に入力する。
【0058】
法線方向取得部205は、ピーク値3D座標算出部204から入力された輝度のピーク値に対応する3次元構造上の座標(Xp, Yp, Zp)と、対象衛星の3Dモデルとを基に、3次元構造に対する法線ベクトルを算出する。法線方向取得部205は、対象衛星の3Dモデルにおいて、座標(Xp, Yp, Zp)を含む法線ベクトルnを求める。
【0059】
図5は、対象衛星における輝度のピーク値に対応する位置と法線方向とを示す説明図である。図5に示すように、太陽光が直接照射する位置が、撮像されると輝度が最大となる位置になる。また、太陽と反対側の位置が、撮像されると輝度が最小となる位置になる。
【0060】
また、図5に示すように、輝度が最小となる位置を含む面に対して垂直な方向が、算出される法線ベクトルが示す法線方向の一例である。また、図5に示す破線は、自衛星から観測される面を表す。なお、図5に示す各表記は、図6~7においても同様の意味を表す。
【0061】
すなわち、法線方向取得部205は、ピーク値3D座標算出部204により画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルを、各画素に対応付けられた座標に渡ってそれぞれ算出する。法線方向取得部205は、算出された法線ベクトルn、および1対1に対応させられた3次元構造上の座標と輝度のピーク値の情報を、太陽方向推定部206に入力する。
【0062】
太陽方向推定部206は、入力された輝度のピーク値の情報が示す輝度のピーク値を、最大値と最小値に分類する。ピーク値が最大値の場合、太陽方向推定部206は、対象衛星が法線方向取得部205で求められた法線方向から、太陽から照射されていたと推定する。すなわち、太陽方向推定部206は、太陽方向を法線ベクトルの方向とみなす。
【0063】
ピーク値が最小値の場合、太陽方向推定部206は、対象衛星が法線方向取得部205で求められた法線方向の反対側から、太陽から照射されていたと推定する。すなわち、太陽方向推定部206は、太陽方向を法線ベクトルの逆ベクトルの方向とみなす。
【0064】
図6は、太陽と対象衛星と自衛星との位置関係と、赤外線画像の例を示す説明図である。太陽と対象衛星と自衛星との位置関係が図6の上部に示すような関係である場合、図6の下部に示すような赤外線画像が撮像される。
【0065】
図6に示す赤外線画像は、自衛星が対象衛星を撮像した赤外線画像である。また、図6に示す赤外線画像における円は、輝度が大きいピクセルである。図6に示す例では、内側の円ほど、輝度が大きいピクセルに対応している。
【0066】
また、図6に示す赤外線画像Aは、撮像されると輝度が最大となる対象衛星の位置が一部撮像されていない赤外線画像である。また、図6に示す赤外線画像Bは、撮像されると輝度が最大となる対象衛星の位置が全て撮像されている赤外線画像である。
【0067】
対象衛星の3次元構造上の座標の中に撮像されると輝度が最大となる座標が存在している場合、過去の任意の時刻において、その座標が示す対象衛星の位置が太陽を向いていたことが推定される。その座標が示す対象衛星の位置が太陽を向いていた場合、図6に示す赤外線画像が撮像される。よって、図6に示す赤外線画像が撮像された場合、太陽方向推定部206は、輝度の最大値を用いて過去の太陽方向を推定する。
【0068】
図7は、太陽と対象衛星と自衛星との位置関係と、赤外線画像の他の例を示す説明図である。太陽と対象衛星と自衛星との位置関係が図7の上部に示すような関係である場合、図7の下部に示すような赤外線画像が撮像される。
【0069】
図7に示す赤外線画像は、自衛星が対象衛星を撮像した赤外線画像である。また、図7に示す赤外線画像における黒色の領域は、輝度が最大のピクセルである。図7に示す赤外線画像C~Eにおいて、輝度が最大のピクセルが線状に複数存在する。
【0070】
図7に示す赤外線画像C~Eは、撮像されると輝度が最大となる対象衛星の位置が、対象衛星の形状に沿って帯状に存在することを表している。撮像されると輝度が最大となる対象衛星の位置が対象衛星の形状に沿って帯状に存在する場合、太陽は自衛星から見て対象衛星の裏側に位置すると考えられる。
【0071】
すなわち、図7に示す例において、図6に示す赤外線画像における輝度が最大のピクセルに対応する対象衛星の位置は、赤外線画像で撮像されない。上記の場合、赤外線画像において輝度が最小のピクセルに対応する対象衛星の位置が太陽から最も遠い位置であると推定できるため、太陽方向推定部206は、輝度の最小値を用いて過去の太陽方向を推定する。
【0072】
すなわち、太陽方向推定部206は、法線方向取得部205により算出された法線ベクトルを用いて赤外線画像が撮像される前の対象衛星に対する太陽の方向を推定する。
【0073】
具体的には、太陽方向推定部206は、赤外線画像に応じて最大画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルと最小画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルのいずれを用いるか選択する。
【0074】
また、太陽方向推定部206は、最大画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルが示す方向を太陽の方向と推定する。また、太陽方向推定部206は、最小画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルの逆ベクトルが示す方向を太陽の方向と推定する。
【0075】
太陽方向比較部207には、太陽位置算出部601から得られた、所定の固定座標系(X, Y, Z)における撮像時点の太陽方向の単位ベクトルVecnow=(x, y, z)と、太陽方向推定部206から得られた過去の太陽方向の単位ベクトルVecold=(u, v, w)とが入力される。
【0076】
Vecnowが所定の固定座標系のXZ平面に対してなす角をθ、YZ平面に対してなす角をφとすると、Vecnowは、以下の式で表される。
【0077】
【数1】
【0078】
また、Vecoldが所定の固定座標系のXZ平面に対してなす角をθ’、YZ平面に対してなす角をφ’とすると、Vecoldは、以下の式で表される。
【0079】
【数2】
【0080】
太陽方向比較部207は、VecnowとVecoldの角度差である(θ-θ’,φ-φ’)を算出する。太陽の位置が過去の時点と撮像時点とで変化しないとすると、算出された2つの太陽方向の単位ベクトルの角度差が、対象衛星の姿勢の変化量になる。
【0081】
すなわち、太陽方向比較部207は、赤外線センサによる対象衛星の撮像に関する情報から計算された赤外線画像が撮像された時点の対象衛星に対する太陽の方向と、推定された太陽の方向との差分を計算する。太陽方向比較部207は、2つの太陽方向の単位ベクトルの角度差を、衛星過去姿勢推定部208に入力する。
【0082】
衛星過去姿勢推定部208は、太陽方向比較部207から入力される2つの太陽方向の単位ベクトルの角度差(θ-θ’,φ-φ’)、および姿勢取得部502から入力される撮像時点の姿勢情報から、過去の対象衛星の姿勢情報を推定する。
【0083】
すなわち、衛星過去姿勢推定部208は、太陽方向比較部207により計算された差分と赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報とを用いて、赤外線画像が撮像される前の対象衛星の姿勢を示す情報を推定する。なお、本実施形態における赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報は、赤外線画像と同時に光学センサで撮像された対象衛星の光学画像から求められる情報である。
【0084】
また、対象衛星の素材等が既知であり、時間に対する温度勾配が計算可能である場合、衛星過去姿勢推定部208は、撮像時点の輝度と撮像以前の輝度から、推定された過去の対象衛星の姿勢情報がどの程度過去の姿勢情報であるかを計算してもよい。
【0085】
例えば、表面が素材Aで覆われている対象衛星が時刻tに撮像された場合を考える。素材Aに関して、温度変化の時定数kA、および太陽照射時における衛星表面温度の最高値に対応した赤外線画像の輝度値Isunは既知であるとする。
【0086】
時刻tに撮像された対象衛星の赤外線画像における最大輝度をImax、太陽に照射されていた時刻をt0とそれぞれすると、kA=ΔI/Δtであるので、以下の式が成立する。
【0087】
(Isun-Imax)/(t-t0)=kA ・・・式(1)
【0088】
なお、ΔIは輝度の差分、Δtは時刻の差分をそれぞれ表す。また、Isunは、太陽と対象衛星との距離に依存する値である。また、Isunは、撮像の時期毎に変動する値である。衛星過去姿勢推定部208は、事前にデータベースにまとめられたIsunの値を用いてもよい。式(1)により、衛星過去姿勢推定部208は、太陽に照射された時刻t0を算出できる。
【0089】
すなわち、衛星過去姿勢推定部208は、赤外線画像における輝度の最大値を用いて推定された姿勢を示す情報が撮像された時点からどの程度過去の情報であるか推定する。
【0090】
衛星過去姿勢推定部208は、推定された過去の対象衛星の姿勢情報を、姿勢出力部209に入力する。姿勢出力部209には、対象衛星の撮像時点の姿勢情報も姿勢取得部502から入力される。
【0091】
姿勢出力部209は、入力された2つの姿勢情報を表示部300に出力する。利用者は、表示部300が表示する2つの姿勢情報を確認できる。
【0092】
例えば、過去の対象衛星の姿勢情報から撮像時点の姿勢情報にかけて急な変更が生じている場合、利用者は、対象衛星が攻撃や緊急撮像を行っている可能性があると判断できる。その理由は、発生した急な変更が、通常の運用と異なる何らかの目的に沿った変更と考えられるためである。すなわち、利用者は、各時点の姿勢情報を取得することによって、対象衛星の監視対象や運用目的を推測できる。
【0093】
[動作の説明]
以下、本実施形態の衛星姿勢推定システム1000の動作を図8を参照して説明する。図8は、第1の実施形態の衛星姿勢推定システム1000による衛星姿勢推定処理の動作を示すフローチャートである。
【0094】
最初に、赤外線画像入力部201に赤外線画像撮像部100から赤外線画像データが入力される(ステップS101)。赤外線画像入力部201は、ピーク値座標算出部202に赤外線画像データが示す赤外線画像、太陽位置算出部601に赤外線画像データが示す撮像時刻情報をそれぞれ入力する。
【0095】
次いで、ピーク値座標算出部202は、入力された赤外線画像において、輝度が最大である画素の座標と、輝度が最小である画素の座標をそれぞれ算出する(ステップS102)。
【0096】
また、太陽位置算出部601は、赤外線画像入力部201から入力された撮像時刻情報を基に、所定の固定座標系における対象衛星の位置および太陽の位置をそれぞれ算出する。次いで、太陽位置算出部601は、撮像時点の太陽方向の単位ベクトルを算出する(ステップS103)。太陽位置算出部601は、算出された太陽方向の単位ベクトルを太陽方向比較部207に入力する。
【0097】
また、赤外線画像処理システム200での処理と並列に、光学画像入力部501に光学画像撮像部400から光学画像データが入力される(ステップS104)。次いで、光学画像入力部501は、入力された光学画像データを光学・赤外位置合わせ部203と、姿勢取得部502と、2D・3Dマッチング部503とに入力する。
【0098】
次いで、姿勢取得部502は、光学画像と最も類似する学習画像を衛星姿勢データベース700から探索する。次いで、姿勢取得部502は、探索された学習画像に関連付けられている姿勢パラメータを、撮像時点の姿勢情報に決定する(ステップS105)。姿勢取得部502は、決定された姿勢情報を衛星過去姿勢推定部208と姿勢出力部209に入力する。
【0099】
次いで、2D・3Dマッチング部503は、光学画像と、衛星3Dモデルデータベース800に格納されているシミュレーション画像とをそれぞれ照合し、光学画像と最も類似するシミュレーション画像を探索する。
【0100】
次いで、2D・3Dマッチング部503は、探索されたシミュレーション画像に関連付けられている3次元構造上の座標と、光学画像とを対応付ける(ステップS106)。2D・3Dマッチング部503は、光学画像と対応付けられた3次元構造上の座標の情報を、ピーク値3D座標算出部204に入力する。
【0101】
次いで、光学・赤外位置合わせ部203は、赤外線画像と光学画像との位置合わせを行う(ステップS107)。具体的には、光学・赤外位置合わせ部203は、赤外線画像における輝度のピーク値を有するピクセルを、光学画像の座標と対応付ける。光学・赤外位置合わせ部203は、光学画像の座標で表される、最大輝度データと最小輝度データとを含む輝度のピーク値の情報を、ピーク値3D座標算出部204に入力する。
【0102】
次いで、ピーク値3D座標算出部204は、対象衛星の3次元構造上の座標と、最大輝度データまたは最小輝度データとを対応付ける(ステップS108)。ピーク値3D座標算出部204は、対応付けられた3次元構造上の座標と輝度のピーク値の情報を、法線方向取得部205に入力する。
【0103】
次いで、法線方向取得部205は、ピーク値3D座標算出部204から入力された輝度のピーク値に対応する3次元構造上の座標と対象衛星の3Dモデルとを基に、3次元構造に対する法線ベクトルを算出する(ステップS109)。法線方向取得部205は、算出された法線ベクトル、および対応付けられた3次元構造上の座標と輝度のピーク値の情報を、太陽方向推定部206に入力する。
【0104】
次いで、太陽方向推定部206は、法線方向取得部205で求められた法線ベクトルを基に、撮像以前の太陽方向の単位ベクトルを算出する(ステップS110)。太陽方向推定部206は、撮像以前の太陽方向の単位ベクトルを太陽方向比較部207に入力する。
【0105】
次いで、太陽方向比較部207は、撮像時点の太陽方向の単位ベクトルと、撮像以前の太陽方向の単位ベクトルとの角度差を算出する(ステップS111)。太陽方向比較部207は、算出された2つの太陽方向の単位ベクトルの角度差を、衛星過去姿勢推定部208に入力する。
【0106】
次いで、衛星過去姿勢推定部208は、太陽方向比較部207から入力される2つの太陽方向の単位ベクトルの角度差および撮像時点の姿勢情報から、撮像以前の対象衛星の姿勢情報を推定する(ステップS112)。衛星過去姿勢推定部208は、推定された撮像以前の対象衛星の姿勢情報を、姿勢出力部209に入力する。
【0107】
次いで、姿勢出力部209は、入力された2つの姿勢情報を表示部300に出力する(ステップS113)。出力した後、衛星姿勢推定システム1000は、衛星姿勢推定処理を終了する。
【0108】
[効果の説明]
本実施形態の衛星姿勢推定システム1000のピーク値座標算出部202は、取得された赤外線画像から得られる輝度を基に、輝度が最大であるピクセルの座標、および輝度が最小であるピクセルの座標をそれぞれ算出する。
【0109】
次いで、太陽方向推定部206は、光学画像処理システム500から入力された対象衛星の3次元構造上の座標を用いて、撮像以前の太陽方向を算出する。また、太陽方向比較部207および衛星過去姿勢推定部208は、撮像時点の太陽方向と算出された太陽方向とを比較することによって、対象衛星の撮像以前の姿勢情報を推定する。以上の処理により、衛星姿勢推定システム1000は、人工衛星が撮像された画像から人工衛星の撮像以前の姿勢を推定できる。
【0110】
本実施形態の衛星姿勢推定システム1000は、赤外線カメラを光学カメラと併用することによって、対象衛星の撮像以前のより正確な姿勢情報を取得できる。その理由は、赤外線画像は分解能が低いため、赤外線画像単体が使用された場合、推定される対象衛星の姿勢に誤差が生じやすくなるからである。
【0111】
赤外線画像と光学画像とが併用されることによって、光学画像から対象衛星の姿勢が推定され、赤外線画像から対象衛星の表面のうち最も高温な面が推定される。最も高温な面の法線方向に太陽が位置していたことが推定されるため、衛星姿勢推定システム1000は、撮像以前の対象衛星の姿勢を推定できる。
【0112】
実施形態2.
[構成の説明]
次に、本発明の第2の実施形態を図面を参照して説明する。図9は、本発明の第2の実施形態の衛星姿勢推定システムの構成例を示すブロック図である。なお、第1の実施形態と同じ符号が付された構成要素が有する機能は、第1の実施形態における機能と同様である。
【0113】
図9に示すように、衛星姿勢推定システム1001は、赤外線画像処理システム210と、撮像時刻・位置情報処理システム600とを含む。第1の実施形態と異なり、本実施形態の衛星姿勢推定システム1001は、光学画像処理システム500を含まない。
【0114】
図9に示すように、赤外線画像処理システム210は、赤外線画像入力部201と、ピーク値座標算出部202と、ピーク値3D座標算出部204と、法線方向取得部205と、太陽方向推定部206と、太陽方向比較部207と、衛星過去姿勢推定部208と、姿勢出力部209と、姿勢取得部502と、2D・3Dマッチング部503とを有する。
【0115】
また、図9に示すように、赤外線画像処理システム210には、赤外線画像撮像部100が通信可能に接続されている。また、図9に示すように、赤外線画像入力部201および太陽方向比較部207には、赤外線画像処理システム210の外部システムである撮像時刻・位置情報処理システム600が通信可能に接続されている。また、図9に示すように、赤外線画像処理システム210には、衛星姿勢データベース700と衛星3Dモデルデータベース800が通信可能に接続されている。
【0116】
すなわち、第1の実施形態と異なり、本実施形態の赤外線画像処理システム210は、姿勢取得部502および2D・3Dマッチング部503を有し、光学・赤外位置合わせ部203を有していない。
【0117】
第1の実施形態の衛星姿勢推定システム1000は、光学画像処理システム500および赤外線画像処理システム200を用いて対象衛星の過去の姿勢を推定した。本実施形態の衛星姿勢推定システム1001は、第1の実施形態における光学画像を用いて行われた撮像時点の姿勢情報の取得、および2D・3Dマッチングを、赤外線画像のみを用いて行う。
【0118】
[動作の説明]
以下、本実施形態の衛星姿勢推定システム1001の動作を図10を参照して説明する。図10は、第2の実施形態の衛星姿勢推定システム1001による衛星姿勢推定処理の動作を示すフローチャートである。
【0119】
ステップS201~S203の各処理は、図8に示すステップS101~S103の各処理とそれぞれ同様である。
【0120】
次いで、姿勢取得部502は、赤外線画像と最も類似する学習画像を衛星姿勢データベース700から探索する。次いで、姿勢取得部502は、探索された学習画像に関連付けられている姿勢パラメータを、撮像時点の姿勢情報に決定する(ステップS204)。姿勢取得部502は、決定された姿勢情報を衛星過去姿勢推定部208と姿勢出力部209に入力する。
【0121】
次いで、2D・3Dマッチング部503は、赤外線画像と、衛星3Dモデルデータベース800に格納されているシミュレーション画像とをそれぞれ照合し、赤外線画像と最も類似するシミュレーション画像を探索する。
【0122】
次いで、2D・3Dマッチング部503は、探索されたシミュレーション画像に関連付けられている3次元構造上の座標と、赤外線画像とを対応付ける(ステップS205)。2D・3Dマッチング部503は、赤外線画像と対応付けられた3次元構造上の座標の情報を、ピーク値3D座標算出部204に入力する。
【0123】
ステップS206~S211の各処理は、図8に示すステップS108~S113の各処理とそれぞれ同様である。
【0124】
[効果の説明]
本実施形態の衛星姿勢推定システム1001の赤外線画像処理システム210は、第1の実施形態と異なり、対象衛星が撮像された赤外線画像のみを用いて対象衛星の過去の姿勢を推定する。よって、衛星姿勢推定システム1001は、第1の実施形態よりも速く対象衛星の過去の姿勢を推定できる。また、衛星姿勢推定システム1001は、光学画像の処理に掛かるコストを削減できる。
【0125】
各実施形態の衛星姿勢推定システム1000~1001は、例えば、物体検出、人工衛星、または姿勢検知の分野での利用が考えられる。
【0126】
また、各実施形態の衛星姿勢推定システム1000~1001は、例えば自衛星システム、および自衛星からデータを受信し受信データを管理する地上システムで使用されることが想定される。なお、衛星姿勢推定システム1000~1001は、自衛星において使用されてもよい。
【0127】
以下、各実施形態の赤外線画像処理システム200~210のハードウェア構成の具体例を説明する。図11は、本発明による赤外線画像処理システムのハードウェア構成例を示す説明図である。
【0128】
図11に示す赤外線画像処理システムは、CPU(Central Processing Unit)11と、主記憶部12と、通信部13と、補助記憶部14とを備える。また、ユーザが操作するための入力部15や、ユーザに処理結果または処理内容の経過を提示するための出力部16を備える。
【0129】
赤外線画像処理システムは、図11に示すCPU11が各構成要素が有する機能を提供するプログラムを実行することによって、ソフトウェアにより実現される。
【0130】
すなわち、CPU11が補助記憶部14に格納されているプログラムを、主記憶部12にロードして実行し、赤外線画像処理システムの動作を制御することによって、各機能がソフトウェアにより実現される。
【0131】
なお、図11に示す赤外線画像処理システムは、CPU11の代わりにDSP(Digital Signal Processor)を備えてもよい。または、図11に示す赤外線画像処理システムは、CPU11とDSPとを併せて備えてもよい。
【0132】
主記憶部12は、データの作業領域やデータの一時退避領域として用いられる。主記憶部12は、例えばRAMである。
【0133】
通信部13は、有線のネットワークまたは無線のネットワーク(情報通信ネットワーク)を介して、周辺機器との間でデータを入力および出力する機能を有する。
【0134】
補助記憶部14は、一時的でない有形の記憶媒体である。一時的でない有形の記憶媒体として、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、半導体メモリが挙げられる。
【0135】
入力部15は、データや処理命令を入力する機能を有する。入力部15は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスである。
【0136】
出力部16は、データを出力する機能を有する。出力部16は、例えば液晶ディスプレイ装置等の表示装置、またはプリンタ等の印刷装置である。
【0137】
また、図11に示すように、赤外線画像処理システムにおいて、各構成要素は、システムバス17に接続されている。
【0138】
第1の実施形態の赤外線画像処理システム200において、補助記憶部14は、赤外線画像入力部201、ピーク値座標算出部202、光学・赤外位置合わせ部203、ピーク値3D座標算出部204、法線方向取得部205、太陽方向推定部206、太陽方向比較部207、衛星過去姿勢推定部208、および姿勢出力部209を実現するためのプログラムを記憶している。
【0139】
なお、赤外線画像処理システム200は、例えば内部に図2に示すような機能を実現するLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア部品が含まれる回路が実装されてもよい。
【0140】
また、第2の実施形態の赤外線画像処理システム210において、補助記憶部14は、赤外線画像入力部201、ピーク値座標算出部202、ピーク値3D座標算出部204、法線方向取得部205、太陽方向推定部206、太陽方向比較部207、衛星過去姿勢推定部208、姿勢出力部209、姿勢取得部502、および2D・3Dマッチング部503を実現するためのプログラムを記憶している。
【0141】
なお、赤外線画像処理システム210は、例えば内部に図9に示すような機能を実現するLSI等のハードウェア部品が含まれる回路が実装されてもよい。
【0142】
また、赤外線画像処理システム200~210は、CPU等の素子を用いるコンピュータ機能を含まないハードウェアにより実現されてもよい。例えば、各構成要素の一部または全部は、汎用の回路(circuitry)または専用の回路、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現されてもよい。これらは、単一のチップ(例えば、上記のLSI)によって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0143】
また、赤外線画像処理システム200~210の各構成要素の一部または全部は、演算部と記憶部とを備えた1つまたは複数の情報処理装置で構成されていてもよい。
【0144】
各構成要素の一部または全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0145】
次に、本発明の概要を説明する。図12は、本発明による衛星姿勢推定システムの概要を示すブロック図である。本発明による衛星姿勢推定システム20は、姿勢が推定される対象の人工衛星である対象衛星が赤外線センサで撮像された画像である赤外線画像において輝度が最大の画素である最大画素と輝度が最小の画素である最小画素とをそれぞれ特定する特定部21(例えば、ピーク値座標算出部202)と、特定された最大画素および最小画素に対象衛星の3次元構造上の座標をそれぞれ対応付ける対応付け部22(例えば、ピーク値3D座標算出部204)と、画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルを、各画素に対応付けられた座標に渡ってそれぞれ算出する算出部23(例えば、法線方向取得部205)と、算出された法線ベクトルを用いて赤外線画像が撮像される前の対象衛星に対する太陽の方向を推定する太陽方向推定部24(例えば、太陽方向推定部206)とを備える。
【0146】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、人工衛星が撮像された画像から人工衛星の撮像以前の姿勢を推定できる。
【0147】
また、太陽方向推定部24は、赤外線画像に応じて最大画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルと最小画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルのいずれを用いるか選択してもよい。
【0148】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、赤外線画像の表示内容を基に人工衛星の撮像以前の姿勢を推定できる。
【0149】
また、太陽方向推定部24は、最大画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルが示す方向を太陽の方向と推定してもよい。
【0150】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、撮像されると輝度が最大となる対象衛星の位置が撮像されている赤外線画像を基に太陽の方向を推定できる。
【0151】
また、太陽方向推定部24は、最小画素に対応付けられた座標を含む面に対する法線ベクトルの逆ベクトルが示す方向を太陽の方向と推定してもよい。
【0152】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、輝度が最大の画素が線状に複数存在する赤外線画像を基に太陽の方向を推定できる。
【0153】
また、衛星姿勢推定システム20は、赤外線センサによる対象衛星の撮像に関する情報から計算された赤外線画像が撮像された時点の対象衛星に対する太陽の方向と推定された太陽の方向との差分を計算する差分計算部(例えば、太陽方向比較部207)を備えてもよい。
【0154】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、対象衛星に対する太陽の方向の変化の度合いを把握できる。
【0155】
また、衛星姿勢推定システム20は、計算された差分と赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報とを用いて赤外線画像が撮像される前の対象衛星の姿勢を示す情報を推定する姿勢推定部(例えば、衛星過去姿勢推定部208)を備えてもよい。
【0156】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、対象衛星の撮像以前の姿勢を推定できる。
【0157】
また、赤外線画像が撮像された時点の対象衛星の姿勢を示す情報は、赤外線画像と同時に光学センサで撮像された対象衛星の光学画像から求められる情報でもよい。
【0158】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、対象衛星の撮像以前の姿勢をより正確に推定できる。
【0159】
また、姿勢推定部は、赤外線画像における輝度の最大値を用いて推定された姿勢を示す情報が撮像された時点からどの程度過去の情報であるか推定してもよい。
【0160】
そのような構成により、衛星姿勢推定システムは、推定された対象衛星の撮像以前の姿勢がどの程度過去の姿勢であるか推定できる。
【符号の説明】
【0161】
11 CPU
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
15 入力部
16 出力部
17 システムバス
20、1000、1001 衛星姿勢推定システム
21 特定部
22 対応付け部
23 算出部
24、206 太陽方向推定部
100 赤外線画像撮像部
200、210 赤外線画像処理システム
201 赤外線画像入力部
202 ピーク値座標算出部
203 光学・赤外位置合わせ部
204 ピーク値3D座標算出部
205 法線方向取得部
207 太陽方向比較部
208 衛星過去姿勢推定部
209 姿勢出力部
300 表示部
400 光学画像撮像部
500 光学画像処理システム
501 光学画像入力部
502 姿勢取得部
503 2D・3Dマッチング部
600 撮像時刻・位置情報処理システム
601 太陽位置算出部
700 衛星姿勢データベース
800 衛星3Dモデルデータベース
図1
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