(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】インストルメントパネル取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20250410BHJP
B60K 35/60 20240101ALI20250410BHJP
B60K 35/70 20240101ALI20250410BHJP
【FI】
B60R7/06
B60K35/60
B60K35/70
(21)【出願番号】P 2021118061
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 好貴
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182235(JP,A)
【文献】特開2003-104130(JP,A)
【文献】特開2009-012514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0121550(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19821583(DE,A1)
【文献】特開2015-101215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/00 - 7/14
B60K 35/00 - 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブボックスを設置するための開口部を有するインストルメントパネルを車両幅方向に延びるステアリングサポートメンバに取り付けるインストルメントパネル取付構造において、
前記インストルメントパネルは、前記開口部の車両上側かつ車両幅方向両側に位置する部分から車両前方に向かって突出している凸形状部を有し、該凸形状部の前端に上側取付部が設けられているとともに、前記開口部の車両下側かつ車両幅方向両側に位置する部分に下側取付部が設けられており、
前記ステアリングサポートメンバは、前記開口部よりも車両前方に配置され車両幅方向に延びているパイプ状部材と、該パイプ状部材から車両下方に延び車両幅方向に間隔を空けて配置されている一対の保持ステーと、を有し、
前記保持ステーは、車両上下方向の中間部が上端部および下端部よりも車両後方に位置する湾曲形状に形成されており、
前記上側取付部が、
前記保持ステーの前記中間部に取り付けられており、
前記下側取付部が、前記保持ステーに取り付けられていることを特徴とするインストルメントパネル取付構造。
【請求項2】
前記下側取付部が、前記保持ステーの下端部に取り付けられて
いることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネル取付構造。
【請求項3】
前記凸形状部は、四角形状を有する前端面と、該前端面の周縁の各辺から車両後方に延びて前記開口部に接続する複数の側壁面と、を有し、該複数の側壁面によって囲まれた横断面の面積が車両後方に向かうに従って増大するとともに、互いに隣り合う前記側壁面によって形成される4つの角部のうちの2つ以上が切り欠かれている切欠き部分を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のインストルメントパネル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両室内の前部に配置されるインストルメントパネルには、グローブボックスを収納するための開口部が設けられている。この開口部は、通常、インストルメントパネルの車両室内に臨む主面のうち助手席側に設けられている。インストルメントパネルは、車両幅方向に延びるステアリングサポートメンバに取り付けられている。
【0003】
インストルメントパネルにおけるグローブボックスの周辺に位置する部分をステアリングサポートメンバに取り付けるための従来構造として、例えば、特許文献1には、ステアリングサポートビーム(以下では「ステアリングサポートメンバ」という)から乗員側に延設された左右一対のニーガードブラケットに対して、インストルメントパネルのグローブボックス上方に位置する部分の2箇所を固定するようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の取付構造については、インストルメントパネルにおけるグローブボックス用開口部の剛性が不足し、開口部の変形によってインストルメントパネルとグローブボックスの意匠面の合わせにばらつきが生じてしまい、グローブボックス周辺の外観が損なわれる可能性があった。
【0006】
また、従来の取付構造は、ステアリングサポートメンバから乗員側(車両後方)に左右一対のニーガードブラケットを延ばしてインストルメントパネルを支持する構造であり、比較的大きなニーガードブラケットが必要となる。このため、取付構造の軽量化を図ることが難しいという課題があった。
【0007】
さらに、従来の取付構造では、車両衝突時に乗員がインストルメントパネルに二次衝突した際、インストルメントパネルにかかる荷重がニーガードブラケットの変形により吸収されるようになっているものの、乗員が受ける衝撃の緩和は必ずしも十分ではなく、改善の余地があった。加えて、開口部の剛性を出すために上部の締付を増やすと、乗員の頭部がインストルメントパネルに衝突した時の衝撃値が上がるという懸念もあった。
【0008】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、インストルメントパネルのグローブボックス用開口部の剛性を高めて良好な外観を実現するとともに、衝突時の衝撃緩和性能を改善できる軽量なインストルメントパネル取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、グローブボックスを設置するための開口部を有するインストルメントパネルを車両幅方向に延びるステアリングサポートメンバに取り付けるインストルメントパネル取付構造を提供する。この取付構造における前記インストルメントパネルは、前記開口部の車両上側かつ車両幅方向両側に位置する部分から車両前方に向かって突出している凸形状部を有し、該凸形状部の前端に上側取付部が設けられているとともに、前記開口部の車両下側かつ車両幅方向両側に位置する部分に下側取付部が設けられている。前記ステアリングサポートメンバは、前記開口部よりも車両前方に配置され車両幅方向に延びているパイプ状部材と、該パイプ状部材から車両下方に延び車両幅方向に間隔を空けて配置されている一対の保持ステーと、を有し、前記保持ステーは、車両上下方向の中間部が上端部および下端部よりも車両後方に位置する湾曲形状に形成されており、前記上側取付部が、前記保持ステーの前記中間部に取り付けられており、前記下側取付部が、前記保持ステーに取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
上記のインストルメントパネル取付構造によれば、インストルメントパネルの開口部の剛性が高められるため、開口部の変形(歪み)を抑えることができ、インストルメントパネルとグローブボックスの意匠面の合わせのばらつきを防いで良好な外観を実現することができる。また、インストルメントパネル側からステアリングサポートメンバに向けて凸形状部が設けられていることで保持ステーが小型化されて取付構造の軽量化が可能になる。さらに、衝突時にインストルメントパネルにかかる荷重が凸形状部の変形により吸収されることで、衝撃緩和性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル取付構造によりステアリングサポートメンバに取り付けられたインストルメントパネルを車両後方側から見た斜視図である。
【
図2】
図1におけるグローブボックスの周辺を拡大して車両後方側から見た正面図である。
【
図3】
図1におけるグローブボックスの周辺を拡大して車両前方側から見た正面図である。
【
図6】上記実施形態においてグローブボックスを取り外した状態でインストルメントパネルの開口部周辺を拡大して車両後方側から見た正面図である。
【
図7】上記実施形態におけるインストルメントパネルの右側の凸形状部を拡大して車両後方側から見た正面図である。
【
図8】上記実施形態におけるステアリングサポートメンバのグローブボックス付近に位置する部分を車両後方側から見た斜視図である。
【
図9】上記実施形態におけるステアリングサポートメンバのグローブボックス付近に位置する部分を車両前方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル取付構造によりステアリングサポートメンバ3に取り付けられたインストルメントパネル1を車両後方側から見た斜視図である。なお、以下で説明する各図において、矢印F方向は車両前後方向の前方を示し、矢印U方向は車両上下方向の上方を示し、矢印L方向は車両幅方向(左右方向)の外方(左方)を示している。また、実施形態の説明における「左右」は、車両室R内から車両前方を見たときの左右に対応している。
【0013】
図1に示すように、本実施形態によるインストルメントパネル取付構造が適用された車両は、車両室R内の前部にインストルメントパネル1を備えている。インストルメントパネル1は、車両室R内における車両幅方向の全幅に亘って配置されており、主面部11と上面部12とを有する樹脂製の部材である。主面部11は、車両の図示しない運転席および助手席に臨むように設けられている。本実施形態では、主面部11の右側後方に運転席が配置されているとともに、主面部11の左側後方に助手席が配置されている。上面部12は、主面部11の車両上下方向の上部から車両前方に広がっている。主面部11における車両室Rの内側に面している主面11Aと、上面部12における車両室Rの内側に面している上面12Aとは、それぞれ意匠面になっている。
【0014】
インストルメントパネル1の内部(車両室Rの外側の空間)には、車両幅方向に延びるステアリングサポートメンバ3が配置されており、このステアリングサポートメンバ3にインストルメントパネル1が取り付けられている。インストルメントパネル1の主面部11における助手席側の下部には、グローブボックス5が開閉可能に設置されている。
【0015】
図2は、
図1におけるグローブボックス5の周辺を拡大して車両後方側から見た正面図であり、
図3は、上記グローブボックス5の周辺を車両前方側から見た正面図である。ただし、
図3には、インストルメントパネル1からグローブボックス5を取り外した状態が示されている。さらに、
図4は、
図2および
図3のA-A線断面図であり、
図5は、
図2および
図3のB-B線断面図である。
【0016】
図2および
図3に示すように、インストルメントパネル1の主面部11における助手席側の下部には、グローブボックス5を設置するための略矩形状の開口部13が形成されている。開口部13は、車両前後方向に開口しており、その開口縁に沿って、車両上側に位置する上辺部13Aと、車両下側に位置する下辺部13Bと、車両幅方向の両側に位置する側辺部13C,13Dと、を有している(
図3)。開口部13は、上辺部13Aが下辺部13Bよりも車両後方に配置されており、後傾している。開口部13の内側には、
図5に示すように、グローブボックス5の後述するグローブボックス本体51が収納される。
【0017】
開口部13の車両上側かつ車両幅方向両側に位置する部分には、
図3~
図5に示すように、左右一対の凸形状部14,15が形成されている。車両幅方向中央側(車両室R内から車両前方を見たときの右側)の凸形状部14は、
図3および
図4に示すように、開口部13の上辺部13Aおよび側辺部13Cにより形成される右上の隅部分から車両前方に向かって突出している。また、車両幅方向外方側(車両室R内から車両前方を見たときの左側)の凸形状部15は、
図3および
図5に示すように、開口部13の上辺部13Aおよび側辺部13Dにより形成される左上の隅部分から車両前方に向かって突出している。なお、凸形状部14,15の詳細な構造については後述する。
【0018】
凸形状部14,15それぞれの前端に位置する部分には、ステアリングサポートメンバ3への取付箇所となる上側取付部16,17が設けられている。また、開口部13の下辺部13Bおよび側辺部13Cにより形成される右下の隅部分、並びに、開口部13の下辺部13Bおよび側辺部13Dにより形成される左下の隅部分には、ステアリングサポートメンバ3への取付箇所となる左右一対の下側取付部18,19が設けられている。つまり、インストルメントパネル1は、グローブボックス5の設置用の開口部13の付近において、凸形状部14,15および上側取付部16,17と下側取付部18,19とによって、開口部13の四隅に位置する部分がステアリングサポートメンバ3にそれぞれ取り付けられている。なお、インストルメントパネル1の全体は、開口部13の付近だけでなく、図示を省略するが車両幅方向に沿った複数の箇所でステアリングサポートメンバ3に取り付けられている。また、インストルメントパネル1の主面部11の車両幅方向の両側部分が、車体側部を構成するインナパネルに取り付けられていてもよい。
【0019】
ステアリングサポートメンバ3は、
図1、
図3~
図5に示すように、1本のパイプ状部材31と、左右一対の保持ステー32,33と、を有している。パイプ状部材31は、インストルメントパネル1の開口部13よりも車両前方に配置されており、車両幅方向に延びている。パイプ状部材31の車両幅方向の両端部は、
図1および
図3に示すように、ブラケット31Aを介して、図示しない車体側部を構成するダッシュサイドパネルに固定される。ダッシュサイドパネルは、運転席および助手席の付近にある図示しないフロントピラー(Aピラー)に接続している。つまり、ステアリングサポートメンバ3のパイプ状部材31は、車両幅方向で、左右のフロントピラーの間に架設されている。
【0020】
左右一対の保持ステー32,33は、パイプ状部材31から車両下方にそれぞれ延びている。右側の保持ステー32は、車両前後方向視で、インストルメントパネル1の開口部13の右側の側辺部13Cと重なる位置に設けられている。また、左側の保持ステー33は、車両前後方向視で、インストルメントパネル1の開口部13の左側の側辺部13Dと重なる位置に設けられている。換言すると、左右一対の保持ステー32,33は、車両幅方向で、インストルメントパネル1におけるグローブボックス5の設置用の開口幅よりも広い間隔を空けて配置されている。
【0021】
本実施形態では、右側の保持ステー32の先端部(下端部)32Aに対して、インストルメントパネル1の開口部13の右側に位置する下側取付部18がネジS等で締結されるとともに、右側の保持ステー32の車両上下方向の中間部32Bに対して、インストルメントパネル1の開口部13の右側に位置する上側取付部16がネジS等で締結される(
図3および
図4)。また、左側の保持ステー33の先端部(下端部)33Aに対して、インストルメントパネル1の開口部13の左側に位置する下側取付部19がネジS等で締結されるとともに、左側の保持ステー33の車両上下方向の中間部33Bに対して、インストルメントパネル1の開口部13の左側に位置する上側取付部17がネジS等で締結される(
図3および
図5)。なお、各保持ステー32,33の詳細な構造については後述する。
【0022】
さらに、本実施形態によるステアリングサポートメンバ3は、
図3に示すように、ストライカ34を支持するステー35を有している。ストライカ34は、グローブボックス5を係止して閉じた状態にする。ステー35は、車両幅方向で、左右一対の保持ステー32,33間に配置されている。ステー35は、パイプ状部材31から車両後方に延びた後に車両下方に屈曲しており、その先端部分にストライカ34が固定されている。
【0023】
グローブボックス5は、
図1、
図2および
図5に示すように、グローブボックス本体51と、リッド52と、ロック解除ノブ53と、を有している。グローブボックス本体51は、車両上下方向の上方に開口する箱状に形成されている。グローブボックス本体51は、側方視で、車両下部から上方に広がるような略三角形状を有している。グローブボックス本体51の車両前面は、インストルメントパネル1の内側に面しており、グローブボックス5がインストルメントパネル1の開口部13内に収納されているときには、乗員からは見えない状態である。グローブボックス本体51の車両前面の下部には、図示しない2つの嵌合部が車両幅方向に間隔を空けて一体に設けられている。各嵌合部は、インストルメントパネル1の開口部13の車両下側で車両幅方向に間隔を空けて設けられている2つの軸部20(
図3)に嵌合される。グローブボックス5の開閉は、嵌合部が軸部20周りを回動することにより行われる。グローブボックス本体51の車両後面の上部には、図示しないロック部が設けられている。ロック部は、前述したストライカ34に係止することでグローブボックス5を閉じた状態でロックする。
【0024】
リッド52は、
図2および
図5に示すように、グローブボックス本体51の車両後面に設けられている。リッド52の車両室R内を臨む面は意匠面となる。リッド52の意匠面のうち、車両上部の概ね中央には、ロック解除ノブ53を取り付けるためのノブ取付部52Aが設けられている(
図2)。ノブ取付部52Aは、車両前方に凹んだ凹形状である。ロック解除ノブ53は、ノブ取付部52Aに入り込んだ状態でリッド52に取り付けられている。ロック解除ノブ53の操作により、ロック部がストライカ34に係止したロック状態が解除される。
【0025】
リッド52の意匠面とは反対側の裏面には、
図4および
図5に示すように、左右一対のクッション部52Bが設けられている。リッド52の裏面は、グローブボックス5が閉じられたロック状態において、クッション部52Bを介してインストルメントパネル1の開口部13に当接する。インストルメントパネル1の開口部13における側辺部13C,13Dには、
図4~
図6に示すように、クッション部52Bを受けるクッション受け部13Eがそれぞれ設けられている。クッション受け部13Eのそれぞれは、凸形状部14,15に隣接する位置に配置されており、クッション部52Bからの荷重に対して十分な剛性が確保されている。
【0026】
次に、インストルメントパネル1の凸形状部14,15の詳細な構造について説明する。
図6は、グローブボックス5を取り外した状態でインストルメントパネル1の開口部13周辺を拡大して車両後方側から見た正面図である。また、
図7は、インストルメントパネル1の右側の凸形状部14を拡大して車両後方側から見た正面図である。
【0027】
本実施形態における凸形状部14,15は、
図4~
図6に示すように、四角形状を有する前端面14A,15Aと、該前端面14A,15Aの周縁の各辺から車両後方に延びて開口部13に接続する4つの側壁面14B~14E,15B~15Eと、を有している。なお、前端面14A,15Aは、厳密に四角形状である必要はなく、概ね四角形状であればよい。凸形状部14,15は、4つの側壁面14B~14E,15B~15Eによって囲まれた横断面の面積が、車両後方に向かうに従って増大するように形成されている。換言すると、凸形状部14,15は、車両後方に開口した有底の四角錐台形の形状を有している。
【0028】
また、右側の凸形状部14については、
図6および
図7に示すように、互いに隣り合う側壁面14B~14Eによって形成される4つの角部のうちの2つ以上が切り欠かれている切欠き部分14F,14Gを有している。具体的に、切欠き部分14Fは、凸形状部14における上側の側壁面14Bと右側の側壁面14Dとにより形成される右上の角部を切り欠くことにより、車両前後方向に延びる隙間を形成している。切欠き部分14Gは、凸形状部14における上側の側壁面14Bと左側の側壁面14Eとにより形成される左上の角部を切り欠くことにより、車両前後方向に延びる隙間を形成している。一方、凸形状部14における下側の側壁面14Cと右側の側壁面14Dとにより形成される右下の角部、および、下側の側壁面14Cと左側の側壁面14Eとにより形成される左下の角部には、切欠き部分が形成されていない。
【0029】
凸形状部14において、切欠き部分14F,14Gが形成されている上側の2つの角部は、
図4の断面図に示すように、切欠き部分が形成されていな下側の2つの角部と比べて、車両前後方向の全長が長くなっている。このように、凸形状部14の4つの角部のうち、車両前後方向の全長が相対的に長い右上および左上の角部に切欠き部分14F,14Gを形成することによって、平常時の凸形状部14の剛性を確保しつつ、衝突時に凸形状部14が変形しやすくなるようにしている。
【0030】
続いて、ステアリングサポートメンバ3の保持ステー32,33の詳細な構造について説明する。
図8は、ステアリングサポートメンバ3のグローブボックス5付近に位置する部分(左側部分)を車両後方側から見た斜視図であり、
図9は、当該部分を車両前方側から見た斜視図である。
【0031】
本実施形態における保持ステー32,33は、
図8および
図9に示すように、金属材料からなる板材を折り曲げることにより形成されており、車両前方に開口した略U字状の横断面を有している。保持ステー32,33は、車両上下方向の中間部32B,33Bが上端部32C,33Cおよび下端部32A,33Aよりも車両後方に位置する湾曲形状に形成されている。具体的に、保持ステー32,33は、パイプ状部材31の外周面から、車両下方へ向かって車両後方に傾斜しながら延びた後に車両下側に屈曲し、車両下方に延びた後に車両前側に屈曲し、さらに、車両下方へ向かって車両前方に傾斜しながら延びた後に車両下側に屈曲し、車両下方に延びている。換言すると、保持ステー32,33は、車両側面視で(
図4および
図5)で、車両後方に凸な概ね弓形状を有している。このように、保持ステー32,33の中間部32B,33Bおよび下端部32A,33Aには、車両上下方向に略平行で平坦な後面がそれぞれ形成されており、これらの後面に対してインストルメントパネル1の上側取付部16,17および下側取付部18,19が取り付けられている。
【0032】
次に、本実施形態によるインストルメントパネル取付構造の作用について説明する。
上記のようなインストルメントパネル取付構造では、インストルメントパネル1が、開口部13の車両上側かつ車両幅方向両側に位置する部分から車両前方に向かって突出している凸形状部14,15を有し、凸形状部14,15の前端に上側取付部16,17が設けられているとともに、開口部13の車両下側かつ車両幅方向両側に位置する部分に下側取付部18,19が設けられており、上側取付部16,17および下側取付部18,19がステアリングサポートメンバ3の保持ステー32,33に取り付けられている。このようにグローブボックス5を設置するためにインストルメントパネル1に設けられている開口部13の四隅に位置する部分が、凸形状部14,15を介して若しくは直接ステアリングサポートメンバ3に取り付けられるような構造とすることにより、上述した従来の取付構造と比較して、インストルメントパネル1の開口部13の剛性が高められるため、開口部13の変形(歪み)を抑えることができる。これにより、インストルメントパネル1とグローブボックス5の意匠面の合わせのばらつきを防ぐことが可能になり、グローブボックス5の周辺の良好な外観を実現することができる。
【0033】
また、インストルメントパネル1の側からステアリングサポートメンバ3に向けて、インストルメントパネル1の一部を延長させた凸形状部14,15が設けられていることにより、上述した従来の取付構造におけるニーガードブラケットに対応する保持ステー32,33を小型化することができる。つまり、樹脂製のインストルメントパネル1の一部分をステアリングサポートメンバ3に向けて伸ばし、金属製の保持ステー32,33の小型化を図ることによって、取付構造を軽量化することが可能になる。
【0034】
さらに、車両衝突時に乗員がインストルメントパネル1に二次衝突した際には、インストルメントパネル1にかかる荷重が、先ず凸形状部14,15の変形により吸収され、凸形状部14,15で吸収し切れなかった荷重が保持ステー32,33の変形により吸収されるようになるため、衝突時の衝撃緩和性能を改善することができる。加えて、本実施形態においては、下側取付部18,19が保持ステー32,33の下端部32A,33Aに取り付けられ、上側取付部16,17が保持ステー32,33の車両上下方向の中間部32B,33Bに取り付けられている。これにより、上記のような二次衝突の際に、保持ステー32,33がパイプ状部材31を中心に回転するような変形が生じるため、インストルメントパネル1の車両前方への移動が妨げられ難くなり、衝撃を効果的に緩和することができる。つまり、衝突時におけるインストルメントパネル1の意匠面およびグローブボックス5の変形ストロークを十分に確保することができ、効果的な衝撃吸収が可能になる。
【0035】
また、本実施形態による取付構造では、インストルメントパネル1の凸形状部14,15が、四角形状を有する前端面14A,15Aと、前端面14A,15Aの周縁の各辺から車両後方に延びて開口部13に接続する複数の側壁面14B~14E,15B~15Eと、を有し、該複数の側壁面14B~14E,15B~15Eによって囲まれた横断面の面積が車両後方に向かうに従って増大するような形状(車両後方に開口した有底の四角錐台形の形状)となっている。樹脂製の凸形状部14,15を上記のような形状とすることによって、剛性を高めることができるとともに、凸形状部14,15の保持ステー32,33への組付け精度および作業性を向上させることができる。上記に加えて、凸形状部14については、互いに隣り合う側壁面14B~14Eによって形成される4つの角部のうちの2つの角部が切り欠かれている切欠き部分14F,14Gを有している。これにより、平常時の凸形状部14の剛性を確保しつつ、衝突時に凸形状部14が変形しやすくなるので、衝突時の衝撃緩和性能の更なる改善が可能になる。したがって、乗員への傷害値(衝撃値)を低減することができる。特に、凸形状部14の4つの角部のうち、車両前後方向の全長が相対的に長い右上および左上の角部に切欠き部分14F,14Gが形成されるようにすれば、衝突時に凸形状部14が一層変形しやすくなり効果的である。
【0036】
さらに、本実施形態による取付構造では、ステアリングサポートメンバ3の保持ステー32,33について、車両上下方向の中間部32B,33Bが上端部32C,33Cおよび下端部32A,33Aよりも車両後方に位置する湾曲形状に形成されており、保持ステー32,33の中間部32B,33Bにインストルメントパネル1の上側取付部16,17が取り付けられている。このような湾曲形状の保持ステー32,33とすることで、保持ステー32,33の剛性が確保されるようになる。これにより、インストルメントパネル1の開口部13の剛性が更に高められ、開口部13の変形(歪み)を効果的に抑えることができ、インストルメントパネル1とグローブボックス5の意匠面の合わせのばらつきを確実に防ぐことが可能になる。特に、本実施形態においては、車両側面視で、保持ステー32,33が複数の箇所で屈曲した車両後方に凸な概ね弓形状に形成されている。このような形状では、衝突時に、保持ステー32,33が屈曲箇所を基点にして車両前方に折れ曲がって変形するようになるため、衝撃をより効果的に緩和することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、インストルメントパネル1の上側取付部16,17が、ステアリングサポートメンバ3の保持ステー32,33の中間部32B,33Bに取り付けられる一例を説明した。しかしながら、上側取付部16,17は、保持ステー32,33の上端側部分、或いは、パイプ状部材31に取り付けられていてもよい。また、インストルメントパネル1の下側取付部18,19は、保持ステー32,33の先端部(下端部)32A,33A以外の部分に取り付けることも可能である。この場合、上側取付部16,17は、ステアリングサポートメンバ3における下側取付部18,19の取付箇所よりも車両上側に位置する部分に取り付けられる。
【0038】
また、既述の実施形態では、凸形状部14,15が車両後方に開口した有底の四角錐台形の形状を有する一例を示したが、凸形状部14,15の形状はこれに限定されない。さらに、左右一対の凸形状部14,15のうちの右側の凸形状部14に切欠き部分14F,14Gが形成される場合を説明したが、左側の凸形状部15または左右両側の凸形状部14,15に切欠き部分を設けることも勿論可能である。加えて、凸形状部における4つの角部のうちで切欠き部分が形成される場所については、車両上側の2つの角部に限定されるものではなく、2つ以上の任意の位置の角部に切欠き部分を形成可能である。
【0039】
さらに、既述の実施形態では、ステアリングサポートメンバ3の保持ステー32,33が湾曲形状を有する場合について説明したが、保持ステーの形状はこれに限定されず、例えば、保持ステーがパイプ状部材から車両下方に直線的に延びていても本発明は有効である。
【符号の説明】
【0040】
1…インストルメントパネル
11…主面部
12…上面部
13…開口部
13A…上辺部
13B…下辺部
13C,13D…側辺部
13E…クッション受け部
14,15…凸形状部
14A,15A…前端面
14B~14E,15B~15E…側壁面
14F,14G…切欠き部分
16,17…上側取付部
18,19…下側取付部
3…ステアリングサポートメンバ
31…パイプ状部材
31A…ブラケット
32,33…保持ステー
32A,33A…先端部(下端部)
32B,33B…中間部
32C,33C…上端部
34…ストライカ
35…ステー
5…グローブボックス
51…グローブボックス本体
52…リッド
52A…ノブ取付部
52B…クッション部
53…ロック解除ノブ
R…車両室
S…ネジ