(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】結合部材
(51)【国際特許分類】
F16B 5/06 20060101AFI20250410BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
F16B5/06 D
F16B21/06 A
(21)【出願番号】P 2023517004
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017211
(87)【国際公開番号】W WO2022230176
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】511003235
【氏名又は名称】有限会社オービタルエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000134464
【氏名又は名称】株式会社トスカバノック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】梅村 悠
(72)【発明者】
【氏名】宮北 健
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅規
(72)【発明者】
【氏名】酒井 茂憲
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3005526(JP,U)
【文献】特開2007-255610(JP,A)
【文献】特開2019-015385(JP,A)
【文献】米国特許第01412970(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057391(US,A1)
【文献】国際公開第2011/049096(WO,A1)
【文献】特開2017-075663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/06
B60K 5/12
F16B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続される結合部材であって、
第一基部と、第二基部と、一対の第三基部とを備え、
前記結合部材の上下方向の前記第一基部側に設けられ、前記上下方向と平行な軸線を有する軸部と、前記軸部の一端に設けられた拡径部とを有する第一部と、
前記結合部材の上下方向の前記第二基部側に設けられた第二部と、を備え、
前記拡径部の直径が前記軸部の直径よりも大きく、
前記軸部が前記軸部の径方向の内側へ向けてへこむ凹部を有し、
前記第二部が、前記軸部の径方向に延在しかつ、少なくとも前記前記軸部の径方向において弾性変形可能であり、
前記第二部が、前記凹部と対応する凸部を有しかつ、前記凹部に対して前記凸部が係合することで前記
結合部材同士を接続可能であり、
前記上下方向において、前記第一基部と前記第二基部とは互いに離間し、
前記第三基部の一方の端部は前記第一基部に接続され、前記第三基部の他方の端部は前記第二基部に接続され、前記第一基部と前記第二基部との間の距離よりも前記第三基部の長さが長く、かつ前記第三基部はらせん形状である、
ことを特徴とする結合部材。
【請求項2】
前記軸部が第一曲面部を有し、
前記第二部が、前記第一曲面部と対応しかつ前記凸部に隣接する第二曲面部を備える、
ことを特徴とする請求項
1に記載の結合部材。
【請求項3】
前記拡径部の前記軸部と接続される側の面とは反対側の面が前記軸部の前記径方向の外側へ向けて傾斜している
ことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の結合部材。
【請求項4】
前記凹部に対して前記凸部が係合された状態で、前記軸部の軸線と直交する面において、前記第一部に対して前記第二部が相対的に回転しないように保持される
ことを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載の結合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合構造およびこの嵌合構造を備える結合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
基幹ロケットなどの極低温流体を貯蔵する推進薬タンクには軽量性が求められるため、推進薬タンクを包囲する断熱材として発泡断熱材が使われている。しかし、発泡断熱材は断熱性能が低く、液体水素などの極低温推進薬の蒸発率を抑制する事ができないという問題がある。一方、蒸発率を抑えた地上の極低温貯槽は、真空二重容器の中に多層のMLI(Multilayer Insulation)を設けた構造である。
【0003】
従来のMLIでは、複数の断熱フィルムを層状に重ねる事で輻射による熱の伝わりを弱めかつ、不織布やメッシュで断熱フィルム同士の接触部を減らし熱伝導による熱の伝わりを少なくすることによって、断熱性能を担保している。例えば、特許文献1の技術では、断熱フィルムの間隔を保つために、厚目の断熱フィルムを採用して構造を保っている。また、特許文献2には、不織布やメッシュの代わりにスペーサーを設置する事で熱伝導を小さくしたMLIが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開2017/0073090号明細書
【文献】米国特許第8234835号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているような不織布やメッシュを利用したMLIでは、部材同士の接触により断熱性能が低下するという問題がある。一方、特許文献2に開示されているようなスペーサーを介したMLIでは、スペーサーと断熱フィルムとを接着剤により固定しているため、熱結合が強くなり断熱性能が下がり、更にはアウトガスの発生などの宇宙環境での利用上の問題が生じる。
【0006】
また、一般的な結合部材として、部材同士の嵌合がスムーズに実施でき、組み立てが容易であることや、組み立て後に外れにくい強固な結合であることが求められている。
【0007】
本願発明は上記の事情に鑑み、軽量かつ容易に嵌め合わせることが可能な嵌合構造、ならびにこの嵌合構造を備える結合部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様に係る嵌合構造は、
軸部と、前記軸部の一端に設けられた拡径部とを有する第一部と、
前記軸部の径方向の外側から前記第一部を挟み込む第二部と、を備え、
前記拡径部の直径が前記軸部の直径よりも大きく、
前記軸部が前記軸部の径方向の内側へ向けてへこむ凹部を有し、
前記第二部が、前記軸部の径方向に延在しかつ、少なくとも前記軸部の径方向において弾性変形可能であり、
前記第二部が、前記凹部と対応する凸部を有しかつ、前記凹部に前記凸部が係合する
ことを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の嵌合構造では、
前記軸部が第一曲面部を有し、
前記第二部が、前記第一曲面部と対応しかつ前記凸部に隣接する第二曲面部を備えていてもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の嵌合構造では、
前記拡径部の前記軸部と接続される側の面とは反対側の面が前記軸部の前記径方向の外側へ向けて傾斜していてもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の嵌合構造では、
前記凹部に対して前記凸部が係合された状態で、前記軸部の軸線と直交する面において、前記第一部に対して前記第二部が相対的に回転しないように保持されてもよい。
【0009】
(5)本発明の一態様に係る結合部材は、
互いに接続される結合部材であって、
前記結合部材の上下方向の一方の端部側に設けられ、前記上下方向と平行な軸線を有する軸部と、前記軸部の一端に設けられた拡径部とを有する第一部と、
前記結合部材の上下方向の他方の端部側に設けられた第二部と、を備え、
前記拡径部の直径が前記軸部の直径よりも大きく、
前記軸部が前記軸部の径方向の内側へ向けてへこむ凹部を有し、
前記第二部が、前記軸部の径方向に延在しかつ、少なくとも前記前記軸部の径方向において弾性変形可能であり、
前記第二部が、前記凹部と対応する凸部を有しかつ、前記凹部に対して前記凸部が係合することで前記部材同士を接続可能である
ことを特徴とする。
(6)上記(5)に記載の結合部材では、
前記軸部が第一曲面部を有し、
前記第二部が、前記第一曲面部と対応しかつ前記凸部に隣接する第二曲面部を備えていてもよい。
(7)上記(5)又は(6)に記載の結合部材では、
前記拡径部の前記軸部と接続される側の面とは反対側の面が前記軸部の前記径方向の外側へ向けて傾斜していてもよい。
(8)上記(5)から(7)のいずれか1項に記載の結合部材では、
前記凹部に対して前記凸部が係合された状態で、前記軸部の軸線と直交する面において、前記第一部に対して前記第二部が相対的に回転しないように保持されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量かつ容易に嵌め合わせることが可能な嵌合構造、ならびにこの嵌合構造を備える結合部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る結合部材を結合部材の第一基部側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る結合部材を結合部材の第二基部側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る結合部材を結合部材の上下方向と直交する方向(Y軸方向)に見た概略的な側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る結合部材を、結合部材の上下方向に平行な方向(Z軸方向)において、第一基部側から見た概略的な上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る結合部材の軸部の軸線と直交する平面における、軸部の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る結合部材の凹部の変形例を説明するための図であって、軸部の軸線と直交する平面における、軸部の断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る結合部材の凹部の変形例を説明するための図であって、軸部の軸線と直交する平面における、軸部の断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る結合部材の凹部の変形例を説明するための図であって、軸部の軸線と直交する平面における、軸部の断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る結合部材を、結合部材の上下方向に平行な方向(Z軸方向)において、第二基部側から見た概略的な下面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る結合部材の凸部の変形例を説明するための図であって、結合部材の上下方向に平行な方向(Z軸方向)において、第二基部側から見た概略的な下面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る結合部材の凸部の変形例を説明するための図であって、結合部材の上下方向に平行な方向(Z軸方向)において、第二基部側から見た概略的な下面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る結合部材の凸部の変形例を説明するための図であって、結合部材の上下方向に平行な方向(Z軸方向)において、第二基部側から見た概略的な下面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る結合部材の接続状態を説明するための図であって、一方の結合部材の第一部と他方の結合部材の第二部を向かい合わせた状態を示す概略的な断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る結合部材の接続状態を説明するための図であって、一方の結合部材の第一部が他方の結合部材の第二部に当接した状態を示す概略的な断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る結合部材の接続状態を説明するための図であって、一方の結合部材の第一部と他方の結合部材の第二部とが嵌合した状態を示す概略的な断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る結合部材を利用した断熱構造体を説明するための図であって、断熱構造体を構成する断熱フィルムの面に平行な方向で断熱構造体を見た概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態に開示される構成のみに制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。また、以下の実施形態における数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。
【0013】
[結合部材]
以下、本発明に係る嵌合構造について、
図1に示す結合部材1を例に挙げて説明する。
図1の結合部材1は、第一基部10、第二基部20、および第三基部30を備える。結合部材1の上下方向において、第一基部10と第二基部20とは互いに離間し、第一基部10と第二基部20とを第三基部30が接続する。以下、結合部材1の上下方向は、Z軸と平行な方向とし、Z軸の正方向を上方向、Z軸の負方向を下方向と称する。Z軸はX軸およびY軸と直交し、X軸とY軸は互いに直交する。
【0014】
図1に示すように、結合部材1は、第一基部10側において、軸部110と、軸部110の上下方向の一端(端部111)に設けられた拡径部120とを有する第一部100を備える。
図2に、結合部材1を結合部材1の第二基部20側から見た斜視図を示す。
図2に示すように、結合部材1は、第二基部20側において、軸部110の径方向に延在する第二部200を備える。すなわち、結合部材1の上下方向の一方の端部である第一基部10側に第一部100が設けられ、結合部材1の上下方向の他方の端部である第二基部20側第二部200が設けられている。第一基部10は、結合部材1の上下方向において第一上面11と第一下面12を有する。第二基部20は、結合部材1の上下方向において第二上面21と第二下面22を有する。第二基部20の第二上面21には、突起部23が設けられていてもよい。
【0015】
(第一部)
第一部100は、軸部110と、軸部110の上下方向の一端(端部111)に設けられた拡径部120とを有する。軸部110は端部111において拡径部120と接続され、端部111とは反対側の端部112において第一基部10の第一上面11と接続される。
図1の例では、結合部材1の上下方向と軸部110の軸線cとは平行である。軸部110の軸線cは、軸部110の中心を通りかつ軸部110が延在する方向と平行な線である。
【0016】
図3は、
図1の結合部材1を結合部材1の上下方向と直交する方向(Y軸方向)に見た概略的な側面図である。
図4は、結合部材1の上下方向に平行な方向(Z軸方向の負方向)において、
図1の結合部材1を第一基部10側から見た概略的な上面図である。
【0017】
図3に示すように、拡径部120は、面121と面122とを有し、面122側において軸部110の端部111に接続される。拡径部120の軸線cに沿った高さは特に限定されないが、嵌合作業時の破損や変形の抑制、あるいは嵌合状態を良好に維持するという観点から、0.3mm以上であることがより好ましい。
【0018】
拡径部120の直径R2は、軸部110の直径R1よりも大きい。ここで、軸部110の直径R1および拡径部120の直径R2とは、
図4に示すように、軸部110の軸線cと直交する平面において、各部を断面視した場合の、各部の外形の直径とする。なお、この断面視における軸部110又は拡径部120の外形の一部に凹部、凸部、切り欠きが形成されている場合には、これらの部位がないものとした仮想的な円を想定し、その直径を軸部110の直径R1又は拡径部120の直径R2とする。また、この断面視における軸部110又は拡径部120の外形が円ではなく、多角形で構成される場合、この多角形の外形を結ぶ最も長い線分の長さを直径R1又は直径R2とする。軸部110の直径R1は、特に限定されないが、小さくした際の加工法や強度を鑑み、0.5mm以上が好ましい。拡径部120の直径R2は、特に限定されないが、第二部200と係合して脱落しない機能を補償するという理由から、直径R1より0.4mm以上大きいことが好ましい。
【0019】
図3に示すように、拡径部120の軸部110と接続される側の面122とは反対側の面121が軸部110の径方向の外側へ向けて傾斜していることが好ましい。このような構成とすることで、第一部100と第二部200とを嵌合させる際に、第二部200が面121に導かれ、第二部200が適切に弾性変形し、第一部100と第二部200との嵌合が容易となる。また、面121が軸部110の径方向の外側へ向けて傾斜していることで、拡径部120の強度を確保することができる。
【0020】
図5は、軸線cと直交する平面における、軸部110の断面図である。
図5は、
図3のA-A線を通る平面(X軸およびY軸と平行な平面)における断面図でもある。
図5に示すように、軸部110は、軸部110の径方向の内側へ向けてへこむ凹部113(113a、113b)を有している。凹部113は、軸部110の軸線cと直交する任意の平面において略同一の形状を有してもよい。換言すれば、凹部113は、軸線cに沿った方向に延在する、所定の幅および深さを有する溝部である。
【0021】
凹部113の形状は、特に限定されないが、例えば、
図5に示すように、面113Aと面113Bから構成されてもよい。面113Aと面113Bとは互いに隣接し、軸線cに沿った方向に延在する。軸部110の周方向(軸部110の軸線cの周方向)における第一部100と第二部200との相対的な回転を確実に抑制するために、軸線cと直交する平面において、面113Aと面113Bとがなす角度が90°以下であることがより好ましい。なお、面113Aと面113Bが平面又は曲面を介して接続されていてもよい。また、凹部113は、軸線cに沿った方向に延在する3以上の複数の平面又は曲面から構成されてもよい。上記の角度は、設計時のCADデータ上で特定できる。
【0022】
凹部113を除く軸部110の表面は、曲面であることが好ましい。
図5に例示するように、軸線cと直交する平面において、凹部113を除く軸部110の外形が円弧をなすようにしてもよい。
図5の例では、軸部110の断面視において、軸部110の外形は、2つの凹部113(113a、113b)と2つの第一曲面部114(114a、114b)から構成される。
【0023】
軸線cと直交する平面における、凹部113の端部(凹部113と第一曲面部114との境界)同士を結ぶ線分w(図示せず)の長さを凹部113の幅としたとき、凹部113の幅wは0.3mm以上であることがより好ましい。また、軸線cと直交する平面において、この線分wと直交する方向における、線分wと凹部113の外形との距離のうちで最も長い距離を凹部113の深さdとした場合、凹部113の深さdは0.3mm以上であることがより好ましい。
【0024】
凹部113は、軸部110の軸線cに沿った方向において、軸部110の全長にわたり設けられていてもよく、軸部110の一部に設けられていてもよい。
【0025】
図6に、凹部113の変形例を示す。凹部113は、
図6に示すように、軸線cと直交する平面において、曲線を描くような断面形状を有していてもよい。この場合、凹部113は、軸部110の径方向の内側へ向けてへこむ曲面115を有する。凹部113を曲面とした場合、軸部110の周方向における第一部100と第二部200との相対的な回転を抑制しつつも、一定の力を加えることでこの方向へ回転可能とすることができる。
【0026】
凹部113は、
図5に示すように、2つあってもよいが、凹部113の数は1つでもよい。凹部113の数が少ないことで、結合部材1が軽量化されるという利点がある。
【0027】
凹部113は、3つ、4つ又は5つ以上あってもよい。
図7に、凹部113が3つ設けられている例を示す。
図7の例では、凹部113(113c、113d、113e)は、軸部110の周方向において120°毎に設けられ、凹部113の間に第一曲面部114(114c、114d、114e)が設けられている。
【0028】
また、
図8に、凹部113が4つ設けられている例を示す。
図8の例では、凹部113(113f、113g、113h、113i)は、軸部110の周方向において90°毎に設けられ、凹部113の間に第一曲面部114(114f、114g、114h、114i)が設けられている。
【0029】
なお、軸部110の軸線cに沿った高さは、特に限定されないが、第二部200と係合して脱落しない機能を補償するという理由から、0.3mm以上が好ましい。
【0030】
(第二部)
図9は、結合部材1の上下方向に平行な方向(Z軸の正方向)において、結合部材1を第二基部20側から見た概略的な下面図である。第二基部20側には、
図9に示すような、第二部200を備える。
図9の例では、2つの第二部200(200a、200b)が存在する。
【0031】
図9に示すように、第二部200は、軸部110の径方向に延在する。第二部200は、凹部113と対応する凸部210(210a、210b)を有している。軸部110の周方向における第一部100と第二部200との相対的な回転を確実に抑制するという観点からは、軸部110の軸線cと直交する平面における凸部210の外形は、凹部113の外形と対応していることが好ましい。例えば、
図9に例示する第二部200では、凸部210は、面210Aと面210Bから構成されている。面210Aと面210Bとは互いに隣接している。軸線cと直交する平面において、面210Aと面210Bとがなす角度は90°以下であることがより好ましい。また、第二部200は、第二基部20の第二下面22側に接続面201を有する。接続面201は、結合部材1同士が接続された際に、第一基部10の第一上面11と対向する。
【0032】
一方、軸部110の軸線cと直交する平面における凸部210の外形は、凹部113の外形と全く同じ形状である必要はなく、軸部110の周方向における第一部100と第二部200との相対的な回転を抑制できる範囲で、凹部113の外形と対応していればよい。
【0033】
図9に示すように、第二部200においては、軸部110の第一曲面部114と対応しかつ凸部210に隣接する第二曲面部220(220a、220b)を備えていてもよい。第二曲面部220は、第二部200が延在する方向に沿って湾曲して延在する。第二曲面部220は、第一曲面部114に対応する面形状を有していることが好ましい。第一部100と第二部200とを嵌合させる際に、第二曲面部220が拡径部120によって導かれ、第一部100と第二部200との相対位置を合わせる作業が容易となる。また、第二曲面部220を備えることにより、第一部100と第二部200とを嵌合させた後の、軸線cに沿った方向の結合部材1同士の接続をより強固なものとすることができる。
【0034】
軸部110の軸線cと直交する平面において、第二曲面部220の形状は円弧であってもよい。この場合、この円弧を円周の一部とする仮想的な円raの直径R3が、軸部110の直径R1と同じであることが好ましい。これにより、結合部材1同士を接続した際に、がたつきを抑制することができる。また、円raの直径R3は、拡径部120の直径R2よりも小さいことが好ましい。これにより、第一部100と第二部200とを嵌合させた後の、軸線cに沿った方向の結合部材1同士の接続をより強固なものとすることができる。
【0035】
図9の例では、第二部200aは腕部230(230a、230b)を有し、腕部230によって凸部210aおよび第二曲面部220aが第二基部20に接続され、第二部200bは腕部230(230c、230d)を有し、腕部230によって凸部210bおよび第二曲面部220bが第二基部20に接続されている。ここで、軸部110の軸線cと直交する平面において凸部210aと210bに内接する仮想的な円rbを想定した場合、円rbの直径R4は、円raの直径R3よりも小さい。
【0036】
第二部200は、少なくとも軸部110の径方向において弾性変形可能である。ここで、第一部100と第二部200とを嵌合させる際には、第二部200(200a、200b)が弾性変形することで、円rbの直径R4が拡張する。このような動作によって、円rbの直径R4が拡径部120の直径R2よりも大きくなり、第二部200に対して第一部100を嵌合させることができる。これにより、結合部材1同士を接続する際の感触を柔らかくすることができ、嵌合後には結合部材1同士の接続を確保できる。
【0037】
図10は、凸部210の変形例を説明するための図であって、結合部材1の上下方向に平行な方向(Z軸の正方向)において、結合部材1を第二基部20側から見た概略的な下面図である。
図10の凸部210は、軸線cと直交する平面において、
図6に例示するような凹部113と対応する、曲線を描くような断面形状を有している。
【0038】
凸部210は、
図9に示すように、2つあってもよいが、凸部210の数は1つでもよい。凸部210の数が少ないことで、例えば結合部材1を断熱構造体に利用した場合に、結合部材1を伝わる熱の経路の断面積を小さくすることができる。
【0039】
なお、第二部200は、結合部材1の材料の強度や弾性を勘案した上で、3つ、4つ又は5つ以上設けてもよい。これにより、結合部材1同士の接続の安定性が増す。
【0040】
図11は、3つの第二部200(200c、200d、200e)が設けられている例を示している。
図11の例では、凸部210が3つ設けられ、凸部210(210c、210d、210e)が、凸部210に内接する仮想的な円rbの周方向において120°毎に設けられている。
図11に示す第二部200は、
図7に例示する3つの凹部113(113c、113d、113e)が設けられた第一部100と対応する。
【0041】
図12は、4つの第二部200(200f、200g、200h、200i)が設けられている例を示している。
図12の例では、凸部210が4つ設けられ、凸部210(210f、210g、210h、210i)が、凸部210に内接する仮想的な円rbの周方向において90°毎に設けられている。
図12に示す第二部200は、
図8に例示する4つの凹部113(113f、113g、113h、113i)が設けられた第一部100と対応する。
【0042】
図11又は
図12に示す第二部200は、長手方向におけるその一端が第二基部20に接続されているが、凸部210が設けられている他端が自由端となっているため、押圧力を受けた際に、少なくとも軸部110の径方向に弾性変形可能である。これにより、結合部材1同士を接続する際の感触を柔らかくすることができ、嵌合後には結合部材1同士の接続を確保できる。
【0043】
なお、本実施形態に係る結合部材1は、後述するような樹脂材料からなることが好ましい。結合部材1が樹脂材料からなることで、第二部200に適度な弾性変形能を与えることができ、特殊な工具を用いることなく結合部材1同士を接続でき、結合部材1同士を接続した後の第一部100と第二部200との嵌合状態を良好に維持できる。
【0044】
第二部200の結合部材1の上下方向に沿った高さは、特に限定されないが、第二部200と係合して脱落しない機能を補償するという理由から、0.6mm以上が好ましい。第二部200は、結合部材1の上下方向において構造を有さないため薄く形成することができ、結合部材1を軽量化することができる。なお、上述した各部材の高さ、幅、深さなどは、マイクロメーターなどの測定器具を用いて測定する。
【0045】
なお、
図1の例では、第三基部30の一方の端部は、第一基部10に接続され、第三基部30の他方の端部は、第二基部20に接続される。結合部材1では、第一基部10と第二基部20との間の距離よりも第三基部30の長さが長くともよい。
図1の例では、第三基部30は対になっており、らせん形状である。このような形状とすることで、結合部材1としての安定性が担保されかつ、上下方向に結合部材1が滑らかに弾性変形可能となる。また、結合部材1は、第三基部30が弾性変形することで、結合部材1の上下方向において、弾性変形可能であってもよい。
【0046】
結合部材1の上下方向における高さhは、MLIにおける断熱フィルム層の間隔を保つ構造体として機能し、結合部材1同士が良好に接続する機能を補償するという観点から、1.2mm以上であることが好ましい。また、結合部材1の上下方向と直交する平面における外径Rは、上下方向に結合部材1を接続した際に上下方向への荷重による座屈を防止するという観点から、5mm以上であることが好ましい。ここで、結合部材の高さは、第一基部10の第一上面11から第二基部20の第二下面22までの結合部材1の上下方向に沿った距離である。結合部材1の外径は、第三基部30の外形とする。
【0047】
結合部材1は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)等の樹脂材料からなることが好ましい。例えば、結合部材1は、これらの樹脂材料の原料を射出成形することで製造される。結合部材1の構成は、これに限定されるものでなく、他の適切な任意の材料から構成されてもよい。ポリエーテルエーテルケトンは、宇宙輸送機用の断熱材として要求される、高耐熱性、低温脆化耐性、真空中のアウトガス量少量性および紫外線耐性の観点から、結合部材1として最も好ましい材質である。
【0048】
上記実施形態に係る結合部材1は、構造がシンプルであるため、軽量である。また、結合部材1同士の接続が強固である。
【0049】
[結合部材の接続]
次に、上述した結合部材1同士を互いに接続する形態を説明する。2つの結合部材1を接続する場合には、一方の結合部材1の第一部100と他方の結合部材1の第二部200とを互いに嵌合させる。
図13~
図15に、2つの結合部材を接続する際の、結合部材の概略的な断面図を示す。
図13~
図15には、結合部材1001の軸部1110の軸線c
1と結合部材2001の軸部(図示せず)の軸線c
2が一致し、これらの軸線を通る平面における結合部材1001および結合部材2001の断面を示している。
図13~
図15には、軸線c
1および軸線c
2近傍の部位を示しており、結合部材1001および結合部材2001の部位のうちで図示を省略しているものもある。
図13~
図15は、
図4のB-B線および
図9のC-C線を通る平面(X軸およびZ軸と平行な平面)における断面図と対応する。
【0050】
結合部材1001と結合部材2001を接続する際には、まず、
図13に示すように、結合部材1001と結合部材2001をそれぞれの上下方向(Z軸方向)に配置し、結合部材1001の第一部1100と結合部材2001の第二部2200とを向かい合わせる。
【0051】
次いで、上下方向に沿って、結合部材1001と結合部材2001が近接する方向へ結合部材1001と結合部材2001を相対移動させ、
図14に示すように、結合部材1001の第一部1100の拡径部1120の面1121と結合部材2001の第二部2200とを当接させる。
【0052】
結合部材2001の第二部2200は弾性変形可能であるため、結合部材1001と結合部材2001が近接する方向へさらに結合部材1001と結合部材2001を相対移動させることで、結合部材2001の第二部2200が結合部材1001の拡径部1120の形状に合わせて変形する。具体的には、結合部材2001の第二部2200は少なくとも軸部1110の径方向の外側に向けて変形する。
【0053】
図13~
図15における実際の操作は、一方の結合部材に対して他方の結合部材を押込む層さであるが、このとき、結合部材2001の第二部2200は結合部材1001の第一部1100の拡径部1120から逃げる方向に広がるだけでなく、拡径部1120の円周に接しながら面1121の傾斜形状に沿って傾斜するため、結合部材同士の接続に要する押込み力が軽減される。
【0054】
また、
図13~
図15の例では、結合部材1001の軸線c
1と結合部材2001の軸線c
2を一致させた状態で接続する例を示している。しかし、結合部材2001の第二部2200が、拡径部1120の円周に接しながら面1121の傾斜形状に沿って傾斜することで、結合部材の軸線同士が一致した位置関係になくとも、嵌合穴に対する嵌合凸の挿入軸方向の位置ずれが抑制され、2つの結合部材を容易に接続可能となる。
【0055】
図14に示す状態から、結合部材1001と結合部材2001が近接する方向へさらに結合部材1001と結合部材2001を相対移動させることで
図15に示す状態となる。この状態では、結合部材2001の第二部2200が、結合部材1001の軸部1110の径方向の外側から結合部材1001の軸部1110を挟み込む状態となる。また、結合部材1001の拡径部1120の面1122の一部と結合部材2001の第二部2200の接続面の一部とが向き合う状態となる。例えば、この状態を半嵌合状態と称する。
【0056】
このような半嵌合状態の時点で、結合部材1001の凹部1113と結合部材2001の凸部2210とが係合していれば、この状態を嵌合状態とすることができる。
【0057】
一方、半嵌合状態の時点で、結合部材1001の凹部1113と結合部材2001の凸部2210とが係合していない場合には、結合部材1001の軸線c1(結合部材2001の軸線c2)の周方向において結合部材1001と結合部材2001とを相対的に回転させ、結合部材1001の凹部1113と結合部材2001の凸部2210を係合させる。
【0058】
以上のような操作によって、結合部材1001の第一部1100と結合部材2001の第二部2200とが嵌合し、結合部材1001と結合部材2001が接続された状態では、結合部材1001の軸線c1(結合部材2001の軸線c2)の周方向における結合部材1001と結合部材2001との相対的な位置が固定される。また、この状態では、結合部材1001の軸線c1(結合部材2001の軸線c2)の周方向における結合部材1001と結合部材2001との相対的な回転が抑制された状態となる。
【0059】
一般的に凸部と穴部とからなる嵌合構造において、回転止め機構が設けられている場合には、嵌合作業時に回転が抑制されるために相互の部品の向きを備えた状態でないと嵌合に向けた挿入動作が行えない。しかし、本発明に係る嵌合構造を採用した嵌合作業では、任意の部品の向きで第一部(凸部)を第二部(穴部)に挿入することが可能であり、挿入後に部品を相対的に回転させて第一部の軸部に設けられた凹部に第二部の凸部が係合することで、回転止めが作用する状態となる。
【0060】
なお、接続された結合部材1に力が加わっても、容易には結合部材1同士の接続が解除されない。例えば、接続された状態の結合部材1を上下方向に引っ張る、もしくは2つの結合部材1の隙間にマイナスドライバーのような薄いものを差込んでこじるといった単純な動作で接続を解除することは容易ではない。しかし、適切な治具などを用いて、軸部110の径方向の外側へ向けて第二部200を広げつつ第一部100の軸部110から第二部200を離脱させる解除操作をすることにより、嵌合構造を構成する第一部100や第二部200、あるいは結合部材1自体を破壊することなく分解し、結合部材1を再度接続することも可能である。
【0061】
また、本発明の一実施形態は、断熱フィルムと、断熱フィルムを支持する複数の結合部材とを備える断熱構造体であって、結合部材として上記実施形態に係る結合部材を用いた断熱構造体である。この断熱構造体において、結合部材の上下方向と断熱フィルムの面とは交差する。
【0062】
図16は、本実施形態に係る断熱構造体300を、本実施形態に係る断熱構造体300を構成する断熱フィルム301(301a、301b)の面に平行な方向で見た概略的な断面図である。
図16に示すように、結合部材302と結合部材303、結合部材304と結合部材305、ならびに結合部材306と結合部材307は、互いに接続され、その上下方向が断熱フィルム301の面と交差する方向に沿って配される。
図16の例では、断熱構造体300は、結合部材302~307を介して、基体310の表面311上に設けられている。
【0063】
結合部材302~307は、
図16に示すように、断熱フィルム301が積層される方向に連結される。連結される2つの結合部材の間には、一又は複数の断熱フィルム301が挟まれてもよい。断熱フィルム301は、輻射による熱の伝達を抑制可能な、低輻射率フィルムである。断熱フィルム301としては、特に限定されないが、ポリイミドやポリエステル等の樹脂フィルムに、アルミニウム、金、ゲルマニウム、導電性酸化インジウムスズ(ITO)等の金属を蒸着したものである。
図16の状態では、最上部の結合部材302、304、306の上部には、それぞれ第一部312、314、316が露出している。
【0064】
なお、上述した実施形態では、結合部材を例に挙げて本発明に係る嵌合構造を説明したが、本発明に係る嵌合構造は、この例に限定されない。例えば、上述した実施形態では、嵌合構造の第一部と第二部が単一の部品に設けられているが、嵌合構造の第一部と第二部とがそれぞれ別個の部品に設けられていてもよい。また、嵌合構造の第一部と第二部が単一の部品に設けられている場合にも、例えば、第一部と第二部が同一平面上に存在していてもよい。上述した実施形態の結合部材では、第一部の軸部の軸線と第二部の接続面とが略直交する例を示しているが、この軸線と接続面は、直交する以外にも、間に角度を有していてもよく、互いに平行な位置関係にあってもよい。また、一つの部品に複数の第一部、あるいは複数の第二部が設けられていてもよい。
【0065】
本発明に係る結合部材を断熱構造体に採用する場合、断熱構造体の質量を軽減できる。
【0066】
本発明に係る嵌合構造又は結合部材は、万引き・盗難防止センサーやブザーなどのセキュリティ対策部材を固定するための嵌合構造又は結合部材として利用してもよい。また、本発明に係る嵌合構造又は結合部材は、通い箱や現金輸送袋などの封緘リング、封緘バンドなどの封緘具、解体・改良を防止する機器・玩具の接着剤やネジを使用しない組立に利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、軽量かつ容易に嵌め合わせることが可能な嵌合構造、ならびにこの嵌合構造を備える結合部材を提供できるため、その工業的価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0068】
1 結合部材
10 第一基部
20 第二基部
30 第三基部
100 第一部
110 軸部
113 凹部
120 拡径部
200 第二部
210 凸部