(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20250410BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2022538586
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015004
(87)【国際公開番号】W WO2022018911
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020124489
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】奥田 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 志穂
(72)【発明者】
【氏名】井筒 浩
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 啓輔
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/055820(WO,A1)
【文献】特開2003-203078(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080767(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/096207(WO,A1)
【文献】田中博,“第5節 ビッグデータ創薬・DRの基本原理〈薬剤-疾患-標的の3層ネットワークを繋げるリンクの探索〉”,AI創薬・ビッグデータ創薬,株式会社薬事日報社,2017年06月19日,pp.148~160,ISBN: 978-4-8408-1401-0
【文献】有田正規,“パスウェイマップの探索”,シミュレーション,日本,(株)日鉄技術情報センター,2001年06月15日,第20巻, 第2号,pp.16~20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内反応に関与する物質間における関係性を示すパスウェイ情報と、前記関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を含む薬剤情報とを記憶する記憶部と、
前記パスウェイ情報及び前記薬剤情報に基づき、前記薬剤に関する情報を、前記関係性を示すパスウェイマップに重ねて表示させる表示制御部と、
を有
し、
前記パスウェイマップには、前記生体内反応に関与する物質の各々を示す第1ノードと、ノード間に前記関係性が存在することを示す第1エッジとが含まれており、
前記表示制御部は、前記薬剤を示す第2ノードと、前記生体内反応に関与する物質と前記薬剤との間に前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示す第2エッジとを、前記第2エッジが前記第1ノードを指し示すように前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記生体内反応に関与する物質のうち、前記関係性に関与して薬効を発現する薬剤に対応づけられる1以上の物質を示すノードを強調表示する前記パスウェイマップを表示させる、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記1以上の物質を示すノードに加えて、前記1以上の物質との間に前記関係性を有する他の1以上の物質を示すノードを強調表示する前記パスウェイマップを表示させる、
請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記パスウェイマップに表示される前記生体内反応に関与する物質のうち、ユーザにより指定される特定の物質について、該特定の物質に対して前記関係性に関与して薬効を発現する1以上の薬剤が前記薬剤情報に存在する場合、前記1以上の薬剤を示す1以上のノードと、前記1以上の薬剤が前記特定の物質に対して前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、前記特定の物質を示すノードを強調表示する前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
請求項
1~
3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記1以上の薬剤が前記関係性に関与して薬効を発現する対象である物質の中に、前記特定の物質に含まれない他の物質が存在する場合、前記他の物質と前記1以上の薬剤との間に前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジを、前記特定の物質を示すノード及び前記他の物質を示すノードを強調表示する前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
請求項
4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記生体内反応に関与する物質のうち変異が生じた物質を示す変異情報を記憶し、
前記表示制御部は、前記変異情報に基づき、前記パスウェイマップに含まれる前記生体内反応に関与する物質の各々を示すノードのうち、変異が生じた物質に対応するノードを強調表示する、
請求項
1~
5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記パスウェイマップに表示される前記生体内反応に関与する物質のうち、前記変異が生じた物質について、該物質に対して前記関係性に関与して薬効を発現する1以上の薬剤が前記薬剤情報に存在する場合、前記1以上の薬剤を示す1以上のノードと、前記1以上の薬剤がユーザにより指定される特定の物質に対して前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、前記変異が生じた物質を示すノードを強調表示する前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
請求項
6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記薬剤情報は、所定単位の物質群に対応づけられた薬剤に関する情報を含み、
前記表示制御部は、前記パスウェイマップに前記所定単位の物質群が含まれる場合、前記所定単位の物質群に対して薬効を発現する薬剤を示すノードと、前記所定単位の物質群と前記薬剤との間に薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
請求項
1~
7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記生体内反応に関与する物質は、タンパク質又は遺伝子である、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記薬剤は、前記生体内反応に関与する物質及び当該物質の物質間相互作用の少なくとも1つに対して関与し、当該物質は、癌細胞において正常細胞に比べて優位に発現している物質又は機能が亢進している物質である、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が行う情報処理方法であって、
生体内反応に関与する物質間における関係性を示すパスウェイ情報と、前記関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を含む薬剤情報とを記憶部に記憶させるステップと、
前記パスウェイ情報及び前記薬剤情報に基づき、前記薬剤に関する情報を、前記関係性を示すパスウェイマップに重ねて表示させるステップと、
を含み
、
前記パスウェイマップには、前記生体内反応に関与する物質の各々を示す第1ノードと、ノード間に前記関係性が存在することを示す第1エッジとが含まれており、
前記表示させるステップは、前記薬剤を示す第2ノードと、前記生体内反応に関与する物質と前記薬剤との間に前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示す第2エッジとを、前記第2エッジが前記第1ノードを指し示すように前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
生体内反応に関与する物質間における関係性を示すパスウェイ情報と、前記関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を含む薬剤情報とを記憶部に記憶させるステップと、
前記パスウェイ情報及び前記薬剤情報に基づき、前記薬剤に関する情報を、前記関係性を示すパスウェイマップに重ねて表示させるステップと、
を実行させ、
前記パスウェイマップには、前記生体内反応に関与する物質の各々を示す第1ノードと、ノード間に前記関係性が存在することを示す第1エッジとが含まれており、
前記表示させるステップは、前記薬剤を示す第2ノードと、前記生体内反応に関与する物質と前記薬剤との間に前記関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示す第2エッジとを、前記第2エッジが前記第1ノードを指し示すように前記パスウェイマップに重ねて表示させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内で行われるシグナル伝達等、生体内反応に関与する物質間における関係性を図示したパスウェイマップ(Pathway map)が知られている。例えば特許文献1には、パスウェイマップの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、遺伝子異常が癌を引き起こすことが知られており、癌患者に対して遺伝子異常の有無を調べる、癌遺伝子パネル検査が行われている。医師は、遺伝子異常が見つかった場合、当該遺伝子異常が存在するために、癌細胞において過剰に及び/又は特異的に発現する物質と作用する薬剤を投与することで、癌細胞の働きを抑えるといった対処を行っている。そのため、患者の検査結果に対して投与すべき薬剤を容易に把握可能な仕組みの提供が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、生体内反応に関与する物質間における関係性に関与して薬効を発現する薬剤、又は、薬効を発現しなくなる薬剤を容易に把握可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、生体内反応に関与する物質間における関係性を示すパスウェイ情報と、前記関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を含む薬剤情報とを記憶する記憶部と、前記パスウェイ情報及び前記薬剤情報に基づき、前記薬剤に関する情報を、前記関係性を示すパスウェイマップに重ねて表示させる表示制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体内反応に関与する物質間における関係性に関与して薬効を発現する薬剤、又は、薬効を発現しなくなる薬剤を容易に把握可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】医療に関する情報管理を行う管理システムの一例を示す図である。
【
図2】サーバのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】サーバの機能ブロック構成例を示す図である。
【
図4】サーバが行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】細胞周期に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図6】細胞周期に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図7】RTK/RASに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図8】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図9】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図10】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図11】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図12】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図13】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図14】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図15】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図16】RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図17】PI3Kに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図18】PI3Kに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図19】DNA損傷修復に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図20】DNA損傷修復に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図21】癌代謝物に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図22】癌代謝物に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図23】癌代謝物に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図24】免疫チェックポイントに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図25】免疫チェックポイントに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図26】ホルモンシグナル伝達経路に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図27】ホルモンシグナル伝達経路に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【
図28】B細胞シグナルに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
【
図29】B細胞シグナルに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、医療に関する情報管理を行う管理システム1の一例を示す図である。管理システム1は、管理システム1が管理する各種の情報を記憶するサーバ10と、サーバ10に記憶されている各種の情報の表示や、サーバ10に記憶させる情報の入力等を行う端末20とを含む。管理システム1は複数の端末20を含んでいてもよい。サーバ10及び端末20を情報処理装置と称してもよい。サーバ10及び端末20は、無線又は有線の通信ネットワークNを介してお互いに通信することができる。
【0011】
サーバ10は、各種のパスウェイマップを端末20に表示させるため必要な情報を記憶する。また、サーバ10は、パスウェイマップに重ねて表示させる薬剤に関する情報を記憶する。サーバ10は、1又は複数の物理的なサーバ等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0012】
端末20は、端末20が備える画面に、パスウェイマップ等を表示する。端末20は、ユーザ(例えば医師や医療従事者等)が操作する端末であり、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット端末等、通信機能を備えた端末であればあらゆる端末を用いることができる。
【0013】
端末20に表示するパスウェイマップは、生体内の反応に関与する物質間の関係性を示すものであれば、どのようなパスウェイマップであってもよい。生体内の反応に関与する物質とは、例えば、生体内のシグナル伝達に関与する物質や、生体内の代謝経路に関与する物質、遺伝子の発現を調節する物質等が挙げられ、具体的には、シグナル伝達や代謝経路に関与するタンパク質又は遺伝子、ホルモン、増殖因子、転写調節等である。また、生体内の反応に関与する物質間の関係性とは、具体的には、タンパク質又は遺伝子の間にシグナル伝達経路や代謝経路、遺伝子発現調節経路等が存在することである。
【0014】
パスウェイマップの例としては、例えば、細胞周期(Cell cycle)に関するパスウェイマップ、RTK(Receptor Tyrosine Kinase)/RASに関するパスウェイマップ、PI3K(Phosphoinositide 3-Kinase)に関するパスウェイマップ、DNA損傷修復(DNA damage repair)に関するパスウェイマップ、癌代謝物(oncometabolite)に関するパスウェイマップ、免疫チェックポイント(Immune checkpoint)に関するパスウェイマップ、ホルモンシグナル(Hormone signaling)に関するパスウェイマップ、Bセルシグナル(B cell signaling)に関するパスウェイマップ等が挙げられる。なお、パスウェイマップは、単にパスウェイとも呼ばれる。
【0015】
端末20は、パスウェイマップを画面に表示する共に、生体内反応に関与する物質間の関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を、パスウェイマップに重ねて表示する。生体内反応に関与する物質間の関係性に関与して薬効を発現する薬剤とは、具体的には、生体内反応に関与する物質のうち、癌細胞において正常細胞に比べて優位に発現している物質又は機能が亢進している物質に対して薬効を発現する薬剤である。また、生体内反応に関与する物質間の関係性に関与して薬効を発現する薬剤は、生体内反応に関与する物質、好ましくは、癌細胞において正常細胞に比べて優位に発現している物質又は機能が亢進している物質が関与する物質間相互作用の少なくとも1つに対して薬効を発現する薬剤である。薬効を発現するとは、具体的には、発現している物質に対して所定の阻害効果(発現数を抑える効果、物質のリン酸化を抑える効果、シグナルを伝達する物質がその受容体に結合することを抑える効果等)を発揮することである。
【0016】
パスウェイマップに薬剤の情報を重ねて表示することで、ユーザは、生体内反応に関与する物質間における関係性に関与して薬効を発現する薬剤を容易に把握することが可能になる。また、パスウェイマップに描画される物質のうち、薬剤が薬効を発現する物質間よりも下流に存在する物質が活性化変異等を発現した場合、当該薬剤は、結果的に阻害効果を発揮できないことになる。従って、パスウェイマップに薬剤の情報を重ねて表示することで、ユーザは、薬効を発現しなくなる薬剤を容易に把握することが可能になる。
【0017】
また、本実施形態では、活性化変異等に関する情報をパスウェイマップに表示してもよい。表示の仕方は適宜選択し得る。活性化変異に関する情報がパスウェイマップに表示されることにより、生体内反応に関与する物質間における関係性に関与して薬効を発現する薬剤を容易に把握することが可能になり、また、本来であれば生体内反応に関与する物質間における関係性に関与して薬効を発現する薬剤であるものが、薬効を発現しなくなる薬剤として認識することが容易になる。なお、活性化変異等に関する情報をパスウェイマップに重ねて表示しなくても、当該情報を有していれば、薬効を発現する、又は、しなくなる薬剤を把握することは可能である。また、活性化変異等に関する情報は、生体内反応に関与する物質のうち変異が生じた物質を示す変異情報として表示すること(例えば、変異が生じた物質を示すノードを強調表示すること等)もできる。
【0018】
<ハードウェア構成>
図2は、サーバ10のハードウェア構成例を示す図である。サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。
【0019】
<機能ブロック構成>
図3は、サーバ10の機能ブロック構成例を示す図である。サーバ10は、記憶部100と、入力部101と、表示制御部102とを含む。記憶部100は、サーバ10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、入力部101と、表示制御部102とは、サーバ10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0020】
記憶部100は、生体内反応に関与する物質間における関係性を示すパスウェイ情報と、生体内反応に関与する物質間の関係性に関与して薬効を発現する薬剤に関する情報を含む薬剤情報とを記憶する。ここで、パスウェイマップは、生体内反応に関与する物質の各々を示すノード(以下、「ノード(物質)」と言う。)と、物質間に(ノード間に)、生体内反応に関与する関係性が存在することを示すエッジ(以下、「エッジ(物質)」と言う。)とを並べた図である。このようなパスウェイマップを描画可能とするため、パスウェイ情報には、ノード(物質)に関する情報と、ノード間のエッジ(物質)に関する情報とが対応づけられている。また、本実施形態では、パスウェイマップ上に、薬剤を示すノード(以下、「ノード(薬剤)」と言う。)と、生体内反応に関与する物質と薬剤との間に、生体内反応に関与する物質間の関係性に関与して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジ(以下、「エッジ(薬剤)」と言う。)とを、パスウェイマップ上に重ねて表示する。そのため、薬剤情報には、ノード(薬剤)に関する情報と、エッジ(薬剤)に関する情報とが対応づけられている。また、薬剤情報には、薬剤に関する情報が、所定単位の物質群に対応づけられた薬剤に関する情報を含むこととしてもよい。所定単位の物質群の例については後述する。
【0021】
また、記憶部100は、生体内反応に関与する物質のうち変異が生じた物質を示す変異情報を記憶するようにしてもよい。変異が生じた物質とは、具体的には、遺伝子変異が生じた遺伝子又は当該遺伝子に対応するタンパク質である。
【0022】
入力部101は、ユーザから、端末20の画面を介して各種の入力を受け付ける。
【0023】
表示制御部102は、本実施形態に係る各種の画面を端末20に表示させる処理を行う。また、表示制御部102は、パスウェイ情報及び薬剤情報に基づいて、パスウェイマップを生成し、生成したパスウェイマップに薬剤に関する情報を重ねた画面を端末20に表示させる処理を行う。
【0024】
また、表示制御部102は、パスウェイマップに所定単位の物質群が含まれる場合、当該所定単位の物質群に対して薬効を発現する薬剤を示すノード(薬剤)と、所定単位の物質群と前記薬剤との間に薬効を発現する効果が存在することを示すエッジ(薬剤)とを、パスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。
【0025】
例えば、表示制御部102は、Webサーバ機能を備えており、端末20が備えるWebブラウザからのアクセスを受けた場合に、Webブラウザにパスウェイマップ等を表示させるための情報を送信するようにしてもよい。若しくは、表示制御部102は、端末20にインストールされた、パスウェイマップを表示するためのアプリケーションからのアクセスを受けた場合に、当該アプリケーションに、パスウェイマップ等を表示させるための情報を送信するようにしてもよい。
【0026】
本実施形態では、サーバ10が備える記憶部100と、入力部101と、表示制御部102とを、端末20に実装することも可能である。つまり、本実施形態には、サーバ10が行う処理を端末20で実行する形態も含まれる。
【0027】
<処理手順>
続いて、サーバ10が行う処理手順について説明する。以下の説明では、生体内反応に関与する物質は、タンパク質であるものとして説明する。
【0028】
図4は、サーバ10が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、入力部101は、ユーザから、端末20の画面に表示させるパスウェイマップの選択を受け付ける(S10)。続いて、表示制御部102は、ユーザが選択したパスウェイマップを表示するために、パスウェイ情報からノード(物質)及びエッジ(物質)に関する情報を取得してパスウェイマップを生成し、端末20が備えるディスプレイに表示させる(S11)。例えば、ユーザが、細胞周期に関するパスウェイマップを選択すると、表示制御部102は、パスウェイ情報から、細胞周期に関するパスウェイマップに含まれるノード(物質)及びエッジ(物質)に関する情報をパスウェイ情報から取得し、細胞周期に関するパスウェイマップを生成して端末20に表示させる。続いて、入力部101は、ユーザから、パスウェイマップ上に、ノード(薬剤)とエッジ(薬剤)とを重ねて表示するか否かの選択を受け付ける(S12)。以下の説明では、パスウェイマップ上に、ノード(薬剤)とエッジ(薬剤)とを重ねて表示することを、「パスウェイマップに薬剤レイヤを重ねて表示する」と称する。
【0029】
パスウェイマップ上に薬剤レイヤを重ねて表示するとの指示を受けない場合(S12-No)、表示制御部102は、処理を終了する。パスウェイマップ上に薬剤レイヤを重ねて表示するとの指示を受けた場合(S12-Yes)、表示制御部102は、薬剤情報からノード(薬剤)及びエッジ(薬剤)に関する情報を取得し、パスウェイマップに薬剤レイヤを重ねて端末20に表示させる。
【0030】
<表示例>
続いて、パスウェイマップ及び薬剤レイヤの表示例について、図を用いて具体的に説明する。以下の図では、説明に必要なノード(物質)、エッジ(物質)、ノード(薬剤)及びエッジ(薬剤)のみに符号を付して説明する。
【0031】
図5は、細胞周期に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。タンパク質の名称が記載された四角形GNは、ノード(物質)に対応する。2以上のノード(物質)の間を接続するT字状の記号GE1、直線GE2及び矢印GE3は、エッジ(物質)に対応する。
【0032】
図5の左側は、CCNA1、CCNA2又はCCNE1とCDK2との複合体や、CCND1、CCND2又はCCND3とCDK4又はCDK6との複合体によりRB1タンパク質がリン酸化されると、E2Fタンパク質がRB1タンパク質から解離し、その結果、細胞周期がG1期からS期への移行が生じるというシグナル伝達経路を示している。ここで、CCNA1、CCNA2又はCCNE1とCDK2との複合体、及び、CCND1、CCND2又はCCND3とCDK4又はCDK6との複合体は、前述した「所定単位の物質群」に該当する。パスウェイ情報には、複数の物質が所定単位の物質群を構成するメンバーであることを示す情報(例えば、CCNA1、CCNA2又はCCNE1とCDK2とは所定単位の物質群であることを示す情報)が含まれており、表示制御部102は、パスウェイ情報に当該情報が含まれている場合、パスウェイマップに、所定単位の物質群であることを示す情報G1(点線による囲み、又は、括弧等)を描画する。以下の説明では、所定単位の物質群を、便宜上、「ノード群(物質)」と称する。
【0033】
図6は、細胞周期に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。薬剤の名称が記載された四角形は、ノード(薬剤)に対応する。ノード(薬剤)と、ノード(物質)又はノード群(物質)との間を接続するT字状の記号、直線又は矢印は、エッジ(薬剤)に対応する。
図6の例では、ノード(薬剤)であるパルボシクリブ(Palbociclib)DN101-1及びアベマシクリブ(Abemaciclib)DN101-2と、CCND1、CCND2、CCND3、CDK4及びCDK6により構成される所定の物質群との間にエッジ(薬剤)DL102が接続されている。これは、パルボシクリブDN101-1及びアベマシクリブDN101-2は、CCND1、CCND2、CCND3、CDK4及びCDK6により構成される所定の物質群に対して薬効を発現することを示している。なお、アベマシクリブ及びパルボシクリブは、サイクリン依存性キナーゼであるCDK4及びCDK6の選択的阻害剤として知られる薬剤である。
【0034】
薬剤情報には、ノード群(物質)を示す情報(例えば、CCNA1、CCNA2、CCNE1及びCDK2は所定単位の物質群であることを示す情報)と、パルボシクリブ及びアベマシクリブとが対応づけられており、表示制御部102は、薬剤情報を参照することで、パルボシクリブDN101-1及びアベマシクリブDND101-2と、CCND1、CCND2、CCND3、CDK4及びCDK6により構成される所定の物質群との間にエッジ(薬剤)を描画する。
【0035】
(RTK/RASに関するパスウェイマップ)
図7は、RTK/RASに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図7の例では、同一の括弧G2-1~G2-5で括られた複数のノード(物質)は、それぞれ、ノード群(物質)に対応する。例えば、KRAS、HRAS及びNRASは、RASに属するノード群(物質)であり、ARSF、BRAF及びRAF1は、RAFに属するノード群(物質)であり、MAP2K1及びMAP2K2は、MEKに属するノード群(物質)である。
【0036】
図8は、RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
図8の例では、ノード(物質)であるBRAF110と、ノード(薬剤)であるエンコラフェニブ(encorafenib)111-1、ベムラフェニブ(Vemurafenib)111-2及びダブラフェニブ(Dabrafenib)111-3との間に、エッジ(薬剤)112が描画されている。また、ノード群(物質)120と、ノード(薬剤)であるトラメチニブ(Trametinib)121-1及びビニメチニブ(Binimetinib)121-2との間に、エッジ(薬剤)122が描画されている。トラメチニブ及びビニメチニブは、MAP2K(MEK)の選択的阻害剤として知られる薬剤である。
【0037】
ここで、表示制御部102は、パスウェイマップに含まれるノード(物質)又はノード群(物質)のうち、当該ノード(薬剤)に対応づけられる1以上のノード(物質)又はノード群(物質)を強調表示するパスウェイマップを表示させるようにしてもよい。つまり、表示制御部102は、パスウェイマップにおいて、ノード(薬剤)が効果を発現するノード(物質)又はノード群(物質)を強調表示するようにしてもよい。例えば、エンコラフェニブ(encorafenib)111-1等に対応づけられるBRAF110と、トラメチニブ(Trametinib)121-1等に対応づけられるノード群(物質)120とをハイライトし、その他のノード(物質)及びノード群(物質)についてはグレーアウトするようにしてもよい。
【0038】
また、表示制御部102は、1以上のノード(物質)又はノード群(物質)に加えて、シグナル伝達経路上、当該1以上のノード(物質)又はノード群(物質)との間に関係性を有する他の1以上のノード(物質)又はノード群(物質)を、強調表示するパスウェイマップを表示させるようにしてもよい。言い換えると、表示制御部102は、薬効を発現する薬剤が存在する物質と、シグナル伝達経路において当該物質の前後に存在する1以上の物質とを強調して表示させるようにしてもよい。
【0039】
例えば、BRAF110及びノード群(物質)120に加えて、BRAF110とエッジ(物質)で接続されているノード群(物質)G2-3と、ノード群(物質)G2-3とエッジ(物質)で接続されているSOS1と、ノード群(物質)120とエッジ(物質)で接続されているMAPK1と、MAPK1とエッジ(物質)で接続されているRAC1とをハイライトし、その他のノード(物質)及びノード群(物質)についてはグレーアウト表示するようにしてもよい。これにより、ユーザは、パスウェイマップを参照することで、薬剤が薬効を発現する物質のみならず、シグナル伝達経路上、その物質と関係性の高い物質についても容易に把握することが可能になる。
【0040】
図9は、RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。表示制御部102は、ユーザにより指定された特定の物質に対して薬効を発現する薬剤が存在する場合、特定の物質をパスウェイマップ上で強調表示するとともに、当該薬剤をパスウェイマップに重ねて表示するようにしてもよい。
【0041】
具体的には、表示制御部102は、パスウェイマップに表示される物質のうち、ユーザにより指定された特定の物質について、該特定の物質に対して薬効を発現する1以上の薬剤が薬剤情報に存在する場合、当該1以上の薬剤を示す1以上のノードと、当該1以上の薬剤が、ユーザにより指定された特定の物質に対して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、特定の物質を強調表示するパスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。これにより、ユーザは、パスウェイマップを参照することで、指定した物質に対して薬効を発現する薬剤が存在することを、容易に把握することが可能になる。
【0042】
図9は、ユーザがEGFR130を指定した場合の表示例を示しており、EGFR130がハイライトされ、その他のノード(物質)及びノード群(物質)についてはグレーアウトされている。また、EGFR130に対して薬効を発現する複数の薬剤を示す、ゲフィチニブ(Gefitinib)131-1、エルロチニブ(Erlotinib)131-2、アファチニブ(Afatinib)131-3、オシメルチニブ(Osimertinib)131-4、パニツムマブ(Panitumumab)131-5、セツキシマブ(Cetuximab)131-6及びダコミチニブ(dacomitinib)131-7が表示されている。
【0043】
仮に、EGFR130に対して薬効を発現するパニツムマブ(Panitumumab)131-5等の抗体薬を使用している状態で、KRASに変異が生じた場合、パニツムマブ(Panitumumab)131-5等の抗体薬は、例えば癌を抑制するという効果を発現することができなくなる。このように、ユーザは、パスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた画像を参照することで、下流の物質で変異が生じることで薬効を発現しなくなる薬剤を容易に把握することが可能になる。
【0044】
図10は、RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。ユーザにより指定された特定の物質に対して薬効を発現する薬剤が、当該特定の物質以外の他の物質に対しても薬効を発現する場合、表示制御部102は、当該特定の物質に加えて、当該他の物質についてもパスウェイマップ上で強調表示するようにしてもよい。
【0045】
具体的には、表示制御部102は、ユーザにより指定された特定の物質に対して薬効を発現する1以上の薬剤に関して、当該薬剤が薬効を発現する対象である物質の中に特定の物質以外の他の物質が存在する場合、当該他の物質と1以上の薬剤との間に薬効を発現する効果が存在することを示すエッジを、特定の物質と当該他の物質とを強調表示するパスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。これにより、ユーザは、パスウェイマップを参照することで、ユーザが指定した物質のみならず、当該物質に対して薬効を発現する薬剤が更に薬効を発現する他の物質の存在についても、容易に把握することが可能になる。
【0046】
図10の例は、ユーザがALK140-1を指定した場合の表示例を示している。ALK140-1に対して薬効を発現する薬剤として、セリチニブ(Ceritinib)141-1、アレクチニブ(Alectinib)141-2及びクリゾチニブ(Crizotinib)141-3が存在し、これらの薬剤のうち、クリゾチニブ(Crizotinib)141-3は、ALK140-1以外に、MET140-2、ROS1(140-3)及びRET140-4に対して薬効を発現するものとする。従って、表示制御部102は、ユーザが指定したALK140-1に加えて、MET140-2、ROS1(140-3)及びRET140-4を強調表示するとともに、これらの物質に対して薬効を発現するセリチニブ(Ceritinib)141-1、アレクチニブ(Alectinib)141-2及びクリゾチニブ(Crizotinib)141-3と、エッジ(薬剤)142-1~142-5をパスウェイマップに重ねて表示する。クリゾチニブは、ALK、ROS1、METの阻害剤として知られる薬剤である。
【0047】
図11は、RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。表示制御部102は、ユーザにより指定された特定の薬剤が薬効を発現する1以上の物質について、特定の薬剤を示すノード(薬剤)と、当該1以上の物質と特定の薬剤との間に薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、当該1以上の物質を強調表示するパスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。これにより、ユーザは、指定した薬剤が薬効を発揮する1以上の物質を、パスウェイマップを参照することで容易に認識することが可能になる。
【0048】
図11は、RET150-1、VEGFR150-2及びEGFR150-3に薬効を発現するバンデタニブ(Vandetanib)151をユーザが指定した場合の表示例を示している。
図11の例では、RET150-1、VEGFR150-2及びEGFR150-3を強調表示するとともに、これらの物質に対して薬効を発現するバンデタニブ151と、エッジ(薬剤)152-1~152-3をパスウェイマップに重ねて表示する。
【0049】
図12~16は、RTK/RASに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
図12~
図16について具体的な説明は省略する。
【0050】
<他の表示例>
続いて、細胞周期に関するパスウェイマップ及びRTK/RASに関するパスウェイマップ以外のパスウェイマップに関する表示例を示す。以下、各図についての具体的な説明は省略する。
【0051】
(PI3Kに関するパスウェイマップ)
図17は、PI3Kに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図18は、PI3Kに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0052】
(DNA損傷修復に関するパスウェイマップ)
図19は、DNA損傷修復に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図20は、DNA損傷修復に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0053】
(癌代謝物に関するパスウェイマップ)
図21は、癌代謝物に関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図22及び
図23は、癌代謝物に関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0054】
(免疫チェックポイントに関するパスウェイマップ)
図24は、免疫チェックポイントに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図25は、免疫チェックポイントに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0055】
(ホルモンシグナルに関するパスウェイマップ)
図26は、ホルモンシグナルに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図27は、ホルモンシグナルに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0056】
(Bセルシグナルに関するパスウェイマップ)
図28は、Bセルシグナルに関するパスウェイマップの表示例を示す図である。
図29は、Bセルシグナルに関するパスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を示す図である。
【0057】
以上、パスウェイマップに薬剤レイヤを重ねた場合の表示例を説明したが、表示制御部102は、パスウェイマップ上に、変異が生じた物質が存在する場合、当該物質を示すノードを強調表示するようにしてもよい。具体的には、表示制御部102は、変異情報に基づき、パスウェイマップに含まれる生体内反応に関与する物質の各々を示すノードのうち、変異が生じた物質に対応するノードを強調表示するようにしてもよい。
【0058】
例えば
図5において、RB1に遺伝子変異が生じていると仮定する。この場合、表示制御部102は、RB1を、他のノードと区別可能な態様(例えば赤色等他のノードとは異なる色で表示する等)で強調表示するようにしてもよい。これにより、ユーザは、パスウェイマップ上にて、遺伝子変異が生じた物質を容易に把握することが可能になる。
【0059】
また、表示制御部102は、変異が生じた物質に対して薬効を発現する薬剤が存在する場合、変異が生じた物質をパスウェイマップ上で強調表示するとともに、当該薬剤をパスウェイマップに重ねて表示するようにしてもよい。
【0060】
具体的には、表示制御部102は、パスウェイマップに表示される物質のうち、変異が生じた物質について、該特定の物質に対して薬効を発現する1以上の薬剤が薬剤情報に存在する場合、当該1以上の薬剤を示す1以上のノードと、当該1以上の薬剤が、変異が生じた物質に対して薬効を発現する効果が存在することを示すエッジとを、変異が生じた物質を強調表示するパスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。
【0061】
例えば、
図9において、EGFR130は、遺伝子異常が生じた遺伝子であると仮定する。この場合、表示制御部102は、EGFR130を、他のノードと区別可能な態様(例えば赤色等)で強調表示するとともに、EGFR130に対して薬効を発現する複数の薬剤を示す、ゲフィチニブ(Gefitinib)131-1、エルロチニブ(Erlotinib)131-2、アファチニブ(Afatinib)131-3、オシメルチニブ(Osimertinib)131-4、パニツムマブ(Panitumumab)131-5、セツキシマブ(Cetuximab)131-6、ダコミチニブ(dacomitinib)131-7及びエッジ(薬剤)132-1~132-2を表示するようにしてもよい。これにより、ユーザは、パスウェイマップ上にて、遺伝子変異が生じた物質に対してどの薬剤が薬効を発現するのかを容易に把握することが可能になる。
【0062】
また、他の例として、変異が生じた物質に対して薬効を発現する薬剤が、当該変異が生じた物質以外の他の物質に対しても薬効を発現する場合、表示制御部102は、当該変異が生じた物質に加えて、当該他の物質についてもパスウェイマップ上で強調表示するようにしてもよい。
【0063】
具体的には、表示制御部102は、変異が生じた物質に対して薬効を発現する1以上の薬剤に関して、当該薬剤が薬効を発現する対象である物質の中に、変異が生じた物質以外の他の物質が存在する場合、当該他の物質と1以上の薬剤との間に薬効を発現する効果が存在することを示すエッジを、変異が生じた物質と当該他の物質とを強調表示するパスウェイマップに重ねて表示させるようにしてもよい。
【0064】
例えば、
図10において、ALK140-1は、遺伝子異常が生じた遺伝子であると仮定する。この場合、表示制御部102は、遺伝子異常が生じたALK140-1を、他のノード(MET140-2、ROS1(140-3)、RET140-4及びグレーアウトされたノード)と区別可能な態様(例えば赤色等)で強調表示するとともに、ALK140-1に対して薬効を発現するセリチニブ(Ceritinib)141-1、アレクチニブ(Alectinib)141-2、クリゾチニブ(Crizotinib)141-3及びエッジ(薬剤)142-1~142-4をパスウェイマップに重ねて表示するようにしてもよい。
【0065】
<補足事項>
以上説明した本実施形態において、ノ-ド(物質)に用いる物質名は、HUGO(Human Genome Organization) Gene Nomenclature Committee で規定されている名称を用いるようにしてもよい。これにより、名称の混同、不統一の問題を避けることが可能になる。
【0066】
記憶部100のパスウエイ情報は、ヒトのあらゆる癌種で変異を起こしている主要な遺伝子を網羅できる複数のパスウエイ情報を含んでいてもよい。例えば、TCGA Pan Cancer Atlas に掲載されている10種のパスウェイ、日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会合同で出されている「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(第1.0版)」に示されている139遺伝子を網羅できるパスウェイ、国立研究開発法人日本医療研究開発機構から出されている「がん遺伝子パネル検査二次的所見患者開示推奨度別リスト(Ver.2.0)」に示されている遺伝子を網羅できるパスウェイ等、これらのパスウェイ情報全てを含んでいてもよい。
【0067】
表示制御部102は、薬剤レイヤとして、例えば、日本国内で承認済の治療薬のみを表示させたり、臨床治験が行われている治療薬のみを表示させたり、また、これら両方を表示させることができるように、薬剤レイヤを選択できる機能を有していてもよい。
【0068】
<まとめ>
本実施形態では、パスウェイマップに薬剤の情報を重ねて端末20に表示するようにした。これにより、生体内反応に関与する物質に対して薬効を発現する薬剤、又は薬効を発現しない薬剤を容易に把握可能とする技術を提供することが可能になる。また、ユーザは、複数の物質間のシグナル伝達経路や代謝経路に加えて、薬剤が薬効を発現する対象となる物質及びシグナル伝達又は代謝が阻害される経路を容易に把握することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態では、薬剤がどの物質に対して薬効を発現するのかを示すノード及びエッジをパスウェイマップに重ねて表示するようにした。これにより、ユーザは、パスウェイマップを参照することで、どの薬剤がどの物質に対して薬効を発現するのかを具体的に把握することが可能になる。
【0070】
また、本実施形態では、パスウェイマップにおいて、薬効を発現する薬剤が存在する物質を強調して表示するようにした。これにより、ユーザは、パスウェイマップを参照することで、薬効を発現する薬剤が存在する物質と、薬効を発現する薬剤が存在しない物質とを容易に判別することが可能になる。
【0071】
また、本実施形態では、パスウェイマップにおいて、所定単位の物質群に対して薬効を発現する薬剤を示すノードと、所定単位の物質群に対して薬効を発現することを示すエッジとを表示するようにした。これにより、ユーザは、グループを構成する物質群に対して薬効を発現する薬剤が存在することを容易に把握することが可能になる。
【0072】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…管理システム、10…サーバ、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…端末、100…記憶部、101…入力部、102…表示制御部