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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】エフィナコナゾール含有爪外用液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20250410BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250410BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250410BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250410BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250410BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250410BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61P31/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020133509
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029910
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 結香
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/240212(WO,A1)
【文献】特表2016-532722(JP,A)
【文献】特開2006-347990(JP,A)
【文献】特表2013-515742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフィナコナゾールと、
l-メントール又は2-メルカプトベンズイミダゾールと、
オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、を含む、エフィナコナゾール含有爪外用液であって
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記前記オレイルアルコールを含むとき、前記エフィナコナゾール含有爪外用液100重量%に対して、前記オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含み、又は
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記前記ヘキシルデカノールを含むとき、前記エフィナコナゾール含有爪外用液100重量%に対して、前記ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含み、又は
前記エフィナコナゾール含有爪外用液が前記前記イソステアリルアルコールを含むとき、前記エフィナコナゾール含有爪外用液100重量%に対して、前記イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含むことを特徴とするエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項2】
前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールの組合せであることを特徴とする請求項1に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【請求項3】
無水クエン酸と、
ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピルと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエフィナコナゾール含有爪外用液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフィナコナゾール含有爪外用液に関する。
【背景技術】
【0002】
爪真菌症(爪白癬)は、Trichophyton rubrum等の皮膚糸状菌又はAspergillus、Scopulariopsis、Fusarium等の真菌によって引き起こされる爪甲、爪床、又はこの両方に生じる疾患である。エフィナコナゾール((2R,3R)-2-(2,4-Difluorophenyl)-3-(4-methylenepiperidin-1-yl)-1-(1H-1,2,4-triazol-1-yl)butan-2-ol)は、真菌細胞膜の主要構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することから、爪真菌症を治療する外用薬として用いられている(特許文献1~4)。具体的には、エフィナコナゾールは、エルゴステロールの前駆体であるラノステロールの14位メチル基の脱メチル化反応を阻害する。
【0003】
一方、エフィナコナゾールのようなトリアゾール系抗真菌化合物は、例えば変色などの保存時での不安定性を示すことが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5623913号公報
【文献】特許第5872656号公報
【文献】特表2016-532722号公報
【文献】特表2017-500374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定で爪透過性が良好なエフィナコナゾール含有爪外用液を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、エフィナコナゾールと、l-メントール又は2-メルカプトベンズイミダゾールと、を含むことを特徴とするエフィナコナゾール含有爪外用液が提供される。
【0007】
オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤をさらに含んでもよい。
【0008】
前記不揮発性溶剤がオレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールの組合せであってもよい。
【0009】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0010】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0011】
前記エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、前記イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含んでもよい。
【0012】
無水クエン酸と、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピルと、をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によると、安定で爪透過性が良好なエフィナコナゾール含有爪外用液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の製造方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を示す図である。
図3】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を示す図である。
図4】本発明の一実施例及び比較例に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液について詳細に説明する。ただし、本発明のエフィナコナゾール含有爪外用液は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、エフィナコナゾールを0.5重量%以上15重量%以下含むことができる。一実施形態において、エフィナコナゾールを10重量%含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールと、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される1つ以上の不揮発性溶剤と、l-メントール又は2-メルカプトベンズイミダゾールと、を含む。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールと、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールからなる群から選択される不揮発性溶剤を2つ又は3つ組合せて含有してもよい。
【0018】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、不揮発性溶剤として、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールを組合せて含有することが好ましい。エフィナコナゾールと、不揮発性溶剤として、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール及びイソステアリルアルコールを組合せて含有することにより、安定で良好な爪透過性を有するエフィナコナゾール含有爪外用液を提供することができる。
【0019】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、オレイルアルコールを10重量%以下の含有量で含むことが好ましい。オレイルアルコールを10重量%よりも多く含有すると、保存時のエフィナコナゾール含有爪外用液において、エフィナコナゾールの類縁物質の増加を十分に抑制できないこともあるため、好ましくない。
【0020】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、ヘキシルデカノールを20重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0021】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、イソステアリルアルコールを3重量%以下の含有量で含むことが好ましい。イソステアリルアルコールを3重量%よりも多く含有すると、保存時のエフィナコナゾール含有爪外用液において、エフィナコナゾールの類縁物質の増加を抑制できても、わずかに変色することがある。
【0022】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、爪の透過性を補助的に促進する還元剤として、硫黄原子含有化合物を用いることができる。還元剤として、たとえば、システイン誘導体(L-システイン塩酸塩等)、システアミン塩酸塩、チオグリコール酸及びその誘導体(チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)等)、1-チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸及びその誘導体(β-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、β-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)等)、チオリンゴ酸及びその誘導体(ナトリウム塩等)等のメルカプタン類、チオ硫酸ナトリウムから1つ以上を選択することができる。
【0023】
本実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液は、還元剤として、2-メルカプトベンズイミダゾールを用い、上記の還元剤を補助的に併用することもできる。なお、後述する比較例に示すように、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いた場合の爪外用液は、爪透過性が低く、液中に析出物が生じる事があるほか、エフィナコナゾールの分解が進行する。また、N-アセチルシステインを用いた場合の爪外用液、爪透過性は亢進するものの、エフィナコナゾールの分解が進行し、好ましくない。
【0024】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、l-メントールを0.01重量%以上4重量%以下の含有量で含むことが好ましく、1重量%以上2重量%以下の含有量で含むことがより好ましい。または、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、2-メルカプトベンズイミダゾールを0.001重量%以上0.65重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液において、上記の不揮発性溶剤を用いることにより、エフィナコナゾールの爪に対する透過性を向上させ、エフィナコナゾールの類縁物質の生成を抑制することができる。また、透過促進剤として、l-メントール又は還元剤を含むことにより、エフィナコナゾールの爪に対する透過性をさらに向上させることができる。
【0026】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、抗酸化剤として、無水クエン酸と、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)又は没食子酸プロピルと、をさらに含むことができる。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、無水クエン酸を0.01重量%以上2重量%以下、0.1重量%以上1重量%以下の含有量で含むことができる。エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、BHT又は没食子酸プロピルを0.01重量%以上2重量%以下、0.1重量%以上1重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0027】
特許文献3においては、BHTを含む製剤の安定性と、没食子酸プロピル(プロピル ガラート)を含む製剤の不安定性が開示されているが、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液においては、没食子酸プロピルを用いても安定である。これは、アジピン酸ジイソプロピルと乳酸アルキル(C12-C15)を不揮発性溶剤として用いる特許文献3のエフィナコナゾール含有製剤と、上述した不揮発性溶剤を含有する本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液との組成の相違に起因するものと推察される。
【0028】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、安定化剤をさらに含んでもよい。安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物、エデト酸二カリウム、エチレンジアミンコハク酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、及び、リンゴ酸を用いることができるが、エデト酸ナトリウム水和物が最も好ましい。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液を100重量%としたときに、安定化剤を0.0001重量%以上1重量%以下、0.0002重量%以上0.1重量%以下の含有量で含むことが好ましい。
【0029】
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、薬学的許容される1つ以上の溶媒を含むことができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、脂肪アルコール、及び脂肪エステルが挙げられる。例えば、エタノール、3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2,3-プロパントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、イソプロピルアルコール及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
[pH]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、エフィナコナゾールの酸解離定数(pKa)以下であることが好ましい。具体的には、エフィナコナゾールは、pKa=6.34であることから、エフィナコナゾール含有爪外用液は、pH6.34以下であることが好ましい。一般に、分子型の薬物は、イオン型の薬物より透過性が高いことが知られている。エフィナコナゾール含有爪外用液がpH6.34以下であることにより、分子型のエフィナコナゾールの割合が大きくなり、エフィナコナゾールの爪透過性が向上するため好ましい。
【0031】
[表面張力]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、25mN/m以下の表面張力を有することが好ましい。このような低い表面張力を有することにより、エフィナコナゾール含有爪外用液が爪全体、爪と指の隙間へも十分に広がることができる。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の表面張力は、毛管上昇方式の測定方法により測定するものとする。
【0032】
[粘度]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、患部へ塗布する観点から、5mPa・s以下であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の粘度は、微量差圧式粘度計により測定するものとする。
【0033】
[性状]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、目視で無色透明~微黄色透明であることが好ましく、特に無色透明であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾール含有爪外用液の性状は、製造直後と、エフィナコナゾール含有爪外用液を高密度ポリエチレン製の気密容器に入れた状態で60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後で目視により変化の有無を評価するものとする。
【0034】
[エフィナコナゾールの含有量]
一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後のエフィナコナゾールの含有量が、規定された含有量の95%以上105%以下であることが好ましい。本明細書において、エフィナコナゾールの含有量は、HPLC法により測定し、実測定値及び蒸散率から、溶媒等の蒸散量を加味して補正して算出するものとする。
【0035】
[総類縁物質量]
本明細書において、安定性の評価として、エフィナコナゾール含有爪外用液を60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後のエフィナコナゾールの総類縁物質量を、HPLC法により測定する。クロマトグラム上に得られたエフィナコナゾールのピーク面積を100とし、エフィナコナゾール由来の各類縁物質のピーク面積の比の総和から、総類縁物質(%)を算出する。このとき、実測定値及び蒸散率から、溶媒等の蒸散量を加味して補正して算出するものとする。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、60℃、相対湿度60%RHで2週間保存後のエフィナコナゾールに由来する類縁物質の総類縁物質量が0.97%未満、0.70%以下、又は0.60%以下であることが好ましい。本明細書において、総類縁物質量がこの範囲にあれば、後述する比較例1よりも安定である。
【0036】
[爪透過性]
本明細書において、エフィナコナゾールの爪透過性は、Sugiura et.al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2014,58,7,3837-3842に記載された方法に準じて測定するものとする。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、爪透過速度が0.3μg/cm2/day以上であることが好ましい。また、一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、累積透過量が例えば6日間で1.0μg/cm2以上、又は1.5μg/cm2以上であることが好ましい。
【0037】
[製造方法]
本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液は、公知の製造方法により製造することができる。図1は、本発明の一実施形態に係るエフィナコナゾール含有爪外用液の製造方法を示すフロー図である。一実施形態において、エフィナコナゾール含有爪外用液は、例えば、溶剤、湿潤剤、l-メントール又は還元剤、抗酸化剤及び安定化剤を溶解し、撹拌・混合した後に、エフィナコナゾールを添加して、撹拌・混合する。上記の溶剤を用いて定容し、エフィナコナゾール溶液を調製する。エフィナコナゾール溶液をろ過したエフィナコナゾール含有爪外用液を、容器に充填した後に装栓する。エフィナコナゾール含有爪外用液を充填した容器を包装してもよい。
【実施例
【0038】
[比較例1]
特許文献3の実施例7の記載に基づき、比較例1を製造した。具体的には、95%エタノールに、デカメチルシクロペンタシロキサン、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)、抗酸化剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、無水クエン酸を溶解し、溶液1を調製した。精製水にエデト酸ナトリウム水和物を添加して溶解し、溶液1に添加して、撹拌・混合することにより溶液2を調製した。溶液2にエフィナコナゾールを溶解し、95%エタノールを用いて定容し、比較例1のエフィナコナゾール溶液を調製した。比較例1のエフィナコナゾール溶液をろ過し、比較例1のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0039】
[比較例2]
比較例2として、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、ヘキシルデカノール及びオレイルアルコールを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例2のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0040】
[実施例1]
本発明の実施例1として、還元剤である2-メルカプトベンズイミダゾールを添加したこと以外は、比較例2の製造方法と同様に、実施例1のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0041】
[比較例3]
比較例3として、2-メルカプトベンズイミダゾールに替えて還元剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを添加したこと以外は、実施例1の製造方法と同様に、比較例3のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0042】
[比較例4]
比較例4として、不揮発性溶剤としてアジピン酸ジイソプロピル及び乳酸アルキル(C12-15)に替えて、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール及びオレイルアルコールを用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例4のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0043】
[比較例5]
比較例5として、還元剤であるN-アセチルシステインを添加したこと以外は、比較例4の製造方法と同様に、比較例5のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0044】
[実施例2]
本発明の実施例2として、l-メントールを添加したこと以外は、比較例4の製造方法と同様に、実施例2のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0045】
[比較例6]
比較例6として、抗酸化剤としてBHTと無水クエン酸に替えて、没食子酸プロピルと無水クエン酸を用いたこと以外は、比較例1の製造方法と同様に、比較例6のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0046】
[実施例3]
本発明の実施例3として、l-メントールを添加したこと以外は、比較例6の製造方法と同様に、実施例3のエフィナコナゾール含有爪外用液を調製した。
【0047】
比較例1~3及び実施例1のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表1に示す。
【表1】
【0048】
比較例4~6及び実施例2~3のエフィナコナゾール含有爪外用液の組成を表2に示す。
【表2】
【0049】
[pH測定]
保存開始前の実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、pHメータを用いて、pHを測定した。測定結果を表3に示す。実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液のpHは、エフィナコナゾールのpKaである6.34よりも低く、分子型の比率が大きく、エフィナコナゾールの爪透過性が向上すると推察された。
【0050】
[表面張力測定]
保存開始前の実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、毛管上昇方式表面張力計を用いて、表面張力を測定した。測定結果を表3に示す。実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液は、25mN/m以下の表面張力を有し、爪全体、爪と指の隙間へも十分に広がり得ることが明らかとなった。
【0051】
[粘度測定]
保存開始前の実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、微量差圧式粘度計を用いて、粘度を測定した。測定結果を表3に示す。実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液は、5mPa・s以下の粘度を有し、患部への塗布が良好に行えることが明らかとなった。
【0052】
[性状の評価]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、目視による性状の評価を行った。評価結果を表3に示す。還元剤であるピロ亜硫酸ナトリウムを含む比較例3のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、製造直後から液中に微量の析出物が認められたが、60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した後はさらに液体が微黄色となり濁りが確認された。また、還元剤であるN-アセチルシステインを含む比較例5においても、液体が微黄色となり濁りが確認された。一方、還元剤である2-メルカプトベンズイミダゾールを含む実施例1のエフィナコナゾール含有爪外用液については、無色・透明な性状を維持した。これらの結果より、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液には、還元剤であれば利用可能というわけではなく、2-メルカプトベンズイミダゾールが特異的に利用可能な還元剤であることが示された。このような知見は従来知られておらず、本発明において初めて見出された知見である。
【0053】
[含有量測定]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、HPLC法にて、エフィナコナゾールの含有量を測定した。測定結果を表3に示す。実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、保存後のエフィナコナゾールの含有量は許容範囲にあることが明らかとなった。
【0054】
[総類縁物質量測定]
60℃、相対湿度60%RHで2週間保存した実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、HPLC法にて、エフィナコナゾールに由来する類縁物質の総類縁物質量を測定した。測定結果を表3に示す。ピロ亜硫酸ナトリウムを含む比較例3のエフィナコナゾール含有爪外用液、及びN-アセチルシステインを含む比較例5のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、類縁物質の増加が認められた。一方、実施例1~3のエフィナコナゾール含有爪外用液においては、類縁物質の十分な抑制が可能であることが明らかとなった。還元剤であっても、2-メルカプトベンズイミダゾールを含む実施例1のエフィナコナゾール含有爪外用液おいては、類縁物質の十分な抑制が可能であったことから、2-メルカプトベンズイミダゾールは、本発明に係るエフィナコナゾール含有爪外用液に特異的に利用可能な還元剤であることが示された。
【0055】
【表3】
【0056】
[爪透過性の評価]
実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液について、爪透過性を評価した。具体的には、足親指の爪を注射用水に5分浸漬後、6mm角にカットし、注射用水に2時間浸漬したものを爪サンプルとして用いた。リザーバー液として、4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)を用いた。ただし、実施例3及び比較例6のエフィナコナゾール含有爪外用液については、足親指の爪を注射用水に5分浸漬後、6mm角にカットし、注射用水に2時間浸漬後に10分間乾燥させたものを爪サンプルとして用いた。なお、リザーバー液は、滅菌済みPBSでBSAを溶解し、1%アジ化ナトリウム水溶液をBSA溶液に対して1:100の割合で添加し、0.22μmフィルターでろ過し、減圧脱泡器で2時間脱気して調製した。フランツ型拡散セル(パーメギア社、6mL、ジャケット付)と、ネイルアダプター(パーメギア社、ネイルアダプター、3mm径の穴)を用いた。
【0057】
上記のように準備した爪サンプルをネイルアダプターに挟み、フランツ型拡散セル内にリザーバー液を充填した。ネイルアダプターをフランツ型拡散セルに設置した。これを32℃で撹拌しながら一晩インキュベートした。実施例1~3及び比較例1~6のエフィナコナゾール含有爪外用液をそれぞれ、爪甲に5μL添加し、1時間後にサンプリングした。翌日から1日1回、400μLずつサンプリングし、サンプリング後はリザーバー液400μLを補充した。サンプリングした液をLC-MS/MSで解析し、エフィナコナゾールの透過量を測定した。
【0058】
測定した爪透過速度及び累積透過量を表4に示す。また、エフィナコナゾール含有爪外用液の爪透過量の経時変化を図2~4に示す。
【表4】
【0059】
表4及び図2~4の結果から、実施例1~3のエフィナコナゾール含有爪外用液は、良好な爪透過性を示すことが明らかとなった。また、ピロ亜硫酸ナトリウムを含む比較例3のエフィナコナゾール含有爪外用液では、爪透過性が低いことが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4