(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2020171215
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019222816
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘文
(72)【発明者】
【氏名】川村 隆二
(72)【発明者】
【氏名】奥田 悟志
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-099215(JP,A)
【文献】特開2018-154700(JP,A)
【文献】特開2015-209520(JP,A)
【文献】特開2001-288438(JP,A)
【文献】特開2018-048274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基とを分子中に有する硬化性化合物と、
粘着付与剤と、
飽和鎖状(メタ)アクリレートと、を含み、
前記粘着付与剤は、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含
み、
前記飽和鎖状(メタ)アクリレートは、炭化水素部分の炭素数が9以上12以下である、
硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記飽和鎖状(メタ)アクリレートは、イソノニルアクリレート及びイソデシルアクリレートの少なくとも一方である、
請求項
1に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、光照射などの硬化処理によって硬化する硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品内に水分が侵入した場合に、電子部品内の電子回路にショートが生じることを防ぐために、電子回路の表面を硬化性樹脂組成物で被覆した後に、該硬化性樹脂組成物に光照射(例えば、紫外線の照射)などの硬化処理を行って該硬化性樹脂組成物を硬化させることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような硬化性樹脂組成物として、特許文献1には、紫外線の照射によって重合する(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する(メタ)アクリレートオリゴマーと、分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する低分子イソシアネート化合物とを含むものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載されたような硬化性樹脂組成物の物性を調整するために(例えば、該硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化体の強度を調整するために)、該硬化性樹脂組成物中に単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有させることがある。
【0006】
しかしながら、前記硬化性樹脂組成物中に前記単官能(メタ)アクリレートを含有させた場合、硬化前の前記硬化性樹脂組成物中において、前記(メタ)アクリレートオリゴマーと前記単官能(メタ)アクリレートとが十分に混ざらずに、前記硬化性樹脂組成物の硬化体において相分離が生じることがある。このような相分離が生じた硬化体では、電気絶縁性や機械的強度などの諸物性が不十分となることがある。
【0007】
また、前記硬化性樹脂組成物中に前記単官能(メタ)アクリレートを含有させた場合、前記硬化性樹脂組成物の硬化体から発生する臭気(主として、アクリル臭)が強くなることがある。
【0008】
しかしながら、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物において、硬化体に相分離が生じることを抑制し、かつ、硬化体からの臭気の発生を抑制することについては、未だ十分な検討がなされていない。
【0009】
そこで、本発明は、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含むものの、硬化体に相分離が生じることを比較的抑制でき、かつ、硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができる硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討したところ、硬化性樹脂組成物を、分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する硬化性化合物と、特定の粘着付与剤と、飽和鎖状(メタ)アクリレートと、を含むものとすることにより、硬化体に相分離が生じることを比較的抑制でき、かつ、硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができることを見いだして、本発明を想到するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、
分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する硬化性化合物と、
粘着付与剤と、
飽和鎖状(メタ)アクリレートと、を含み、
前記粘着付与剤は、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含む。
【0012】
斯かる構成によれば、飽和鎖状(メタ)アクリレートを含むので、硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができる。
また、前記粘着付与剤が、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素を含むものであるので、前記硬化性化合物と前記飽和鎖状(メタ)アクリレートとの親和性を比較的向上させることができる。そのため、硬化体に相分離が生じることを比較的抑制することができる。
【0013】
上記硬化性樹脂組成物においては、
前記飽和鎖状(メタ)アクリレートは、炭化水素部分の炭素数が9以上12以下であることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、硬化体からの臭気の発生をより一層抑制することができ、かつ、硬化体に相分離が生じることをより一層抑制することができる。
【0015】
上記硬化性樹脂組成物においては、
前記飽和鎖状(メタ)アクリレートは、イソノニルアクリレート及びイソデシルアクリレートの少なくとも一方であることが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、硬化体からの臭気の発生をより一層抑制することができ、かつ、硬化体に相分離が生じることをより一層抑制することができる。
【0017】
上記硬化性樹脂組成物においては、
前記硬化性化合物は、分子中に、イソシアネート基をさらに含むことが好ましい。
【0018】
斯かる構成によれば、光照射による硬化に加えて、湿気によっても、前記硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単官能(メタ)アクリレートモノマーを含むものの、硬化体に相分離が生じることを比較的抑制でき、かつ、硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができる硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、分岐鎖状のポリオレフィン構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する硬化性化合物と、粘着付与剤と、飽和鎖状(メタ)アクリレートと、を含む。
本実施形態に係る樹脂組成物において、前記粘着付与剤は、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含む。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0022】
前記硬化性化合物は、分子中に、分岐鎖状のポリオレフィン構造と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であれば、特に限定されない。
【0023】
前記硬化性化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0024】
【化1】
ただし、一般式(1)において、Xは、分岐鎖状のポリオレフィン構造を示し、Y’およびY”は、それぞれ、下記一般式(A)~(D)のいずれかを示している。
各一般式(A)~(D)において、Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、下記一般式(α)で示される分子構造、または、-NCOを示す。
各一般式(A)~(D)のY’及びY”のそれぞれにおいて、2つのZ
1及び2つのZ
2は全てが下記一般式(α)で示される分子構造であってもよいし、2つのZ
1及び2つのZ
2のうちの少なくとも1つが下記一般式(α)で示される分子構造であり、それ以外は-NCOであってもよい。
要すれば、各一般式(A)~(D)において、下記一般式(α)で示される分子構造が含まれていればよい。
【0025】
【化2】
ただし、一般式(A)において、R
a1、R
a2、及び、R
a3は、それぞれ独立して、有機官能基を示し、Z
1及びZ
2は、上記した通りである。
【0026】
【化3】
ただし、一般式(B)において、R
b1、R
b2、R
b3、及び、R
cは、それぞれ独立して、有機官能基を示し、Z
1及びZ
2は、上記した通りである。
【0027】
【化4】
ただし、一般式(C)において、R
d1、R
d2、及び、R
d3は、それぞれ独立して、有機官能基を示し、Z
1及びZ
2は、上記した通りである。
【0028】
【化5】
ただし、一般式(D)において、R
e1、R
e2、及び、R
e3は、それぞれ独立して、有機官能基を示し、Z
1及びZ
2は、上記した通りである。
【0029】
【化6】
ただし、一般式(α)において、Qは、炭素数2~4の飽和炭化水素基を示し、Mは、HまたはCH
3を示している。
【0030】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物においては、前記硬化性化合物が分子中に(メタ)アクリロイル基を有するので、前記硬化性樹脂組成物に紫外線などの光を照射すると、前記硬化性化合物同士が重合反応するようになる。そして、前記硬化性樹脂組成物同士が重合反応することによって、高分子化(硬化反応)が進行して、前記硬化性樹脂組成物は硬化するようになる。
これに加えて、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物においては、前記硬化性化合物が分子中にイソシアネート基(-NCO)をさらに含んでいてもよく、この場合には、空気中の湿気(水分)によっても、前記硬化性化合物同士が重合反応するようになり、この重合反応によっても高分子化(硬化反応)が進行して、前記硬化性樹脂組成物は硬化するようになる。
すなわち、前記硬化性化合物が分子中に(メタ)アクリロイル基及びイソシアネート基の両方を含んでいる場合には、前記硬化性樹脂組成物において、高分子化(硬化反応)を、光照射に加えて湿気によっても進行させることができるので、より十分に硬化反応を進行させることができる。
【0031】
上述したように、上記一般式(1)において、Xは分岐鎖状のポリオレフィン構造である。該ポリオレフィン構造において、ポリオレフィンは飽和ポリオレフィンであることが好ましい。すなわち、Xにおけるポリオレフィンは、分岐鎖状の飽和ポリオレフィンであることが好ましい。分岐鎖状の飽和ポリオレフィンとしては、例えば、水素添加(水添)ポリブタジエンが挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)におけるポリオレフィンの分子量は、1000以上6000以下であることが好ましい。ポリオレフィンの分子量が1000以上であることにより、前記硬化性樹脂組成物が硬化体となった後に、該硬化体の力学的特性の低下をより抑制することができる。また、ポリオレフィンの分子量が6000以下であることにより、前記硬化性樹脂組成物が硬化体となった後に、該硬化体において相剥離が生じて、該硬化体が不均一になることをより抑制することができる。
なお、ポリオレフィンの分子量は、一般式(1)の硬化性化合物を合成する前に、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)によって測定した、標準ポリスチレン換算値によって求めることができる。
【0033】
一般式(1)において、Y’及びY”は、それぞれ、総炭素数が6~10の脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体構造、アダクト体構造、またはビウレット体構造を含む。
上記した一般式(A)~(D)を用いてより詳しく説明すると、一般式(A)で示される構造からZ1及びZ2を除いた部分が上記のイソシアヌレート体構造であり、一般式(B)で示される構造からZ1及びZ2を除いた部分が上記のアダクト体構造であり、一般式(C)または(D)で示される構造からZ1及びZ2を除いた部分が上記のビウレット体構造である。
【0034】
上記のイソシアヌレート体構造、アダクト体構造、またはビウレット体構造を形成する前において、前記総炭素数が6~10の脂肪族ジイソシアネートは、炭素数が4~8である直鎖状アルキレン基の両末端に、イソシアネート基をそれぞれ有するものである。
ここで、Y’及びY”は、例えば、脂肪族ジイソシアネートイソシアヌレート体構造、アダクト体構造、またはビウレット体構造で構成されているので、ベンゼン環構造、及び、飽和シクロアルキル構造(環が炭素原子のみで構成された飽和構造)のいずれも含まない。
このように、Y’及びY”がベンゼン環構造及び飽和シクロアルキル構造を有さない場合には、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物が硬化体となった後に、該硬化体は、耐熱性及び耐候性により優れたものとなる。
【0035】
総炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。
【0036】
前記イソシアヌレート体は、前記脂肪族ジイソシアネートの三量体である。該三量体における末端イソシアネート基(-NCO)を除いた構造が、上記一般式(A)からZ1及びZ2を除いた構造に相当する。
【0037】
前記アダクト体は、前記脂肪族ジイソシアネートと、炭素数3~6のトリオールとの反応物である。該反応物における末端イソシアネート基を除いた構造が、上記一般式(B)からZ1及びZ2を除いた構造に相当する。
炭素数3~6のトリオールは、炭素原子(C)、酸素原子(O)、及び、水素原子(H)のみから構成される。炭素数3~6のトリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン(CH3-CH2-C(CH2-OH)3)、グリセリン等が挙げられる。
【0038】
前記ビウレット体は、前記脂肪族ジイソシアネートと、水または三級アルコールとの反応物である。該反応物における末端ジイソシアネートよりも内側部分の構造が、一般式(C)または一般式(D)からZ1及びZ2を除いた構造に相当する。
【0039】
なお、一般式(1)において、Y’及びY”は、互いに同じ分子構造であってもよく、互いに異なる分子構造であってもよい。
また、一般式(A)~(D)において、Ra1~Ra3、Rb1~b3、Rc、Rd1~Rd3、及び、Re1~Re3は、少なくとも炭素原子を含む有機官能基である。Ra1~Ra3、Rb1~b3、Rc、Rd1~Rd3、及び、Re1~Re3は、尿素結合、ビウレット結合、または、アロファネート結合を含んでいてもよい。Ra1~Ra3、Rb1~b3、Rd1~Rd3、及び、Re1~Re3は、炭素数4~8の飽和炭化水素であることが好ましく、炭素数6の直鎖状飽和炭化水素であることがより好ましいが、ヘテロ原子(N,O,S,P等)を含んでいてもよいし、分岐鎖構造を有していてもよい。Rcは、炭素数4~8の飽和炭化水素であることが好ましく、炭素数6の分岐鎖状飽和炭化水素であることが好ましいが、ヘテロ原子(N,O,S,P等)を含んでいてもよいし、直鎖構造を有していてもよい。
【0040】
前記一般式(1)において、Z1及びZ2は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、前記一般式(1)において、Y’及びY”のそれぞれがZ1及びZ2を含むため、前記一般式(1)中には、2つのZ1が存在し、かつ、2つのZ2が存在することとなる。2つのZ1は互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。2つのZ2も互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。すなわち、2つのZ1及び2つのZ2は、それぞれ別個に独立して規定される。
【0041】
前記一般式(α)において、炭素数2~4の飽和炭化水素基を示すQは、直鎖状であることが好ましい。すなわち、Qは、炭素数2~4の直鎖状飽和炭化水素基であることが好ましい。Qにおける飽和炭化水素基の炭素数は2であることが好ましい。
【0042】
前記一般式(1)で示される硬化性化合物としては、下記式(1a)~(1f)で示される化合物が例示される。なお、下記式(1a)~(1f)で示される化合物は、いずれも、イソシアネート基(-NCO)を含んでいる。
なお、下記式(1a)~(1f)で示される化合物において、イソシアネート基は、上記式(α)で示される分子構造に置き換えられてもよい。すなわち、イソシアネート基を含まない化合物とされてもよい。
【0043】
【化7】
ただし、R
a1、R
a2、及び、R
a3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0044】
【化8】
ただし、R
a1、R
a2、及び、R
a3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0045】
【化9】
ただし、R
a1、R
a2、及び、R
a3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0046】
【化10】
ただし、R
b1、R
b2、及び、R
b3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0047】
【化11】
ただし、R
b1、R
b2、及び、R
b3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0048】
【化12】
ただし、R
b1、R
b2、及び、R
b3は、それぞれ独立して、有機官能基を有し、炭素数が4~8である直鎖状飽和炭化水素であることが好ましく、pは、20~300であり、Mは、HまたはCH
3である。
【0049】
一般式(α)で示される分子構造としては、下記式(α-1)で示されるものが好ましい。下記式(α-1)で示される分子構造を有することによって、立体障害が比較的少ないエチレン基を有することになるので、紫外線等の光の照射による重合速度を速めることができる。
なお、一般式(α)におけるQの炭素数が1であると(すなわち、メチレン基であると)、前記硬化性樹脂組成物を硬化させているときに、分解し易くなる。
【0050】
【0051】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、例えば、分岐鎖状のポリオレフィンジオール(以下、単に、A成分ともいう)と、総炭素数が6~10である脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、及び、ビウレット体から選択された少なくとも1種(以下、単に、B成分ともいう)と、ヒドロキシ飽和C1~C4アルキル(メタ)アクリレート(以下、単に、C成分ともいう)と、のウレタン化反応生成物を含む。
すなわち、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、例えば、少なくとも、A成分、B成分、及び、C成分をウレタン化反応させた硬化性化合物と、前記粘着付与剤と、前記飽和鎖状(メタ)アクリレートとを含む。
【0052】
前記硬化性化合物は、少なくとも、前記A成分、前記B成分、及び、前記C成分のウレタン化反応生成物の一部である。すなわち、前記硬化性化合物は、少なくとも、前記A成分、前記B成分、及び、前記C成分をウレタン化反応させることにより得ることができる。
【0053】
例えば、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記したウレタン化反応生成物として、少なくとも、前記一般式(1)で示される硬化性化合物を含む。
また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、前記一般式(1)で示される硬化性化合物以外に、ウレタン化反応によって生成された副生成物も含む。
さらに、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン化反応のために配合された微量のウレタン化反応触媒も含む。なお、ウレタン化反応生成物については、後述する。
【0054】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、少なくとも、前記一般式(1)で示される硬化性化合物を含むため、上記したように、紫外線などの光の照射によって硬化することができる。また、一般式(1a)~(1f)で示されるように、イソシアネート基(-NCO)を含む場合には、湿気によっても硬化することができる。
また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記ウレタン化反応によって生成された副生成物も含み、該副生成物も、イソシアネート基を含む場合には、紫外線などの光の照射に加えて、湿気によっても硬化反応が生じ得る。すなわち、前記副生成物も、イソシアネート基を含む場合には、紫外線などの光の照射によって硬化することに加えて、湿気によっても硬化することができる。
【0055】
<A成分>
A成分は、分岐鎖状のポリオレフィンジオールである。ポリオレフィンジオールは、分子末端にヒドロキシ基をそれぞれ有する。ポリオレフィンジオールにおいて、オレフィン部分は、エーテル基及びエステル基などのような極性基を含まず、飽和炭化水素のみで構成される。
【0056】
A成分としては、ポリプロピレンジオール、ポリブテンジオール(水素添加1,2-ポリブタジエンジオール)、水素添加ポリイソプレンジオールなどが挙げられる。A成分としては、硬化後の硬化物(被膜)に十分な力学的柔軟性を付与できるという観点から、ポリブテンジオール(水素添加1,2-ポリブタジエンジオール)が好ましい。
【0057】
A成分の分子量は、1000以上6000以下であることが好ましい。
【0058】
<B成分>
B成分は、ポリイソシアネートであり、総炭素数が6~10である脂肪族ジイソシアネートの、イソシアネート体、アダクト体、及び、ビウレット体から選択される少なくとも1種である。B成分は、分子中に、イソシアネート基を3個または4個有する。
【0059】
B成分としてのイソシアヌレート体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の三量体であり、分子中に、イソシアネート基を3つ有する。
【0060】
B成分としてのアダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンと、総炭素数が6~10である脂肪族イソシアネート(上記のHMDIなど)との反応物である。該アダクト体は、分子中に、イソシアネート基を3つ有する。
【0061】
B成分としては、ベンゼン環を含まないために、硬化後の耐候性を良好とすることができるという観点から、また、ウレタン化反応において希釈剤を用いた場合に、該希釈剤への溶解性を良好とすることができるという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)とトリメチロールプロパンとが反応することにより得らえるアダクト体、または、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート体(三量体)が好ましい。
【0062】
<C成分>
C成分は、(メタ)アクリル酸のC1~C4飽和アルキルエステルである。該飽和アルキルエステルは、アルキル部分のいずれかの炭素に結合したヒドロキシ基を1個有する。C成分は、ヒドロキシ飽和C2~C3アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0063】
C成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。C成分は、紫外線などの光の照射による重合性がより良好となる観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートであることがより好ましい。
【0064】
ウレタン化反応におけるA成分に対するB成分のモル比は、2.0以上2.5以下であることが好ましく、2.0以上2.2以下であることがより好ましい。
【0065】
ウレタン化反応におけるB成分に対するC成分のモル比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。
【0066】
ウレタン化反応におけるA成分に対するC成分のモル比は、1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましい。
【0067】
<ウレタン化反応触媒>
ウレタン化反応触媒としては、ジブチルスズジラウリレートまたはスタナスオクトエートなどの有機スズ触媒、アセチルアセトナート錯体触媒、などのような金属系触媒を使用することができる。
また、ウレタン化反応触媒として、3級アミン触媒を使用することもできる。
【0068】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物(硬化用樹脂組成物)は、A成分、B成分、及び、C成分の存在下におけるウレタン化反応によって生成されたウレタン化反応生成物を含む。
【0069】
前記ウレタン化反応生成物としては、例えば、上記一般式(1a)~(1f)などのような上記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0070】
さらに、前記ウレタン化反応生成物としては、例えば、反応性基としてイソシアネート基のみを有する化合物、反応性基としてヒドロキシ基のみを有する化合物などが挙げられる。
また、前記ウレタン化反応生成物としては、例えば、A成分とB成分とのウレタン化反応生成物であって、C成分が分子中に導入されていない化合物、B成分とC成分とのウレタン化反応生成物であって、A成分が分子中に導入されていない化合物などが挙げられる。
【0071】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記したように、飽和鎖状(メタ)アクリレートを含む。
飽和鎖状(メタ)アクリレートは、ウレタン化反応しない光重合性モノマーである。飽和鎖状(メタ)アクリレートとしては、炭化水素部分の炭素数が9以上12以下のものを用いることが好ましい。炭化水素部分の炭素数がこのような数値範囲にあることにより、揮発性を比較的低くすることができるので、臭気が生じることを比較的抑制することができることに加えて、相分離が生じることを比較的抑制することができる。
このような飽和鎖状(メタ)アクリレートとしては、ラウリルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレートを用いることが好ましい。これらの中でも、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレートを用いることが特に好ましい。イソノニルアクリレート及びイソデシルアクリレートは、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
このような光重合性モノマーたる飽和鎖状(メタ)アクリレートは、ウレタン化反応系における粘度を低下させるためにウレタン化反応前に希釈剤として配合されてもよく、ウレタン化反応後に配合されてもよい。飽和鎖状(メタ)アクリレートは、紫外線などの光を照射したときに、重合反応生成物を生じさせる化合物である。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、光重合性モノマーとして、飽和鎖状(メタ)アクリレートを含んでいるため、光重合性モノマーとして脂環式(メタ)アクリレートを含む硬化性樹脂組成物と比べて、硬化性樹脂組成物の硬化体からの臭気(主として、アクリル臭)の発生を抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン化反応しなかった未反応のA成分、B成分、及び、C成分を含み得る。
また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン化反応の促進のために配合されたウレタン化反応触媒を含み得る。
このように、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、種々の反応生成物及び未反応成分を含む。したがって、含有される化合物の全てについて、その分子構造を特定することは、凡そ実際的にはないといえる。すなわち、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物に含まれる全ての化合物について、その構造または特性を直接特定することは、凡そ非実際的であるといえる。ただし、ウレタン化反応させる前の化合物の分子構造が特定されており、ウレタン化反応により生成物が十分に予想できることから、反応生成物(主反応物及び副反応物)の分子構造を予想することは十分に可能である。
【0073】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン化反応後にさらに添加された、イソシアネートモノマー、光重合開始剤などを含んでいてもよい。
【0074】
光重合開始剤は、紫外線などの光が照射されることによってラジカルを発生する化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、市販品を使用することができる。
【0075】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、及び、蛍光体などを含んでいてもよい。
【0076】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記したように、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含む。
【0077】
ここで、上記したように、硬化性樹脂組成物が飽和鎖状(メタ)アクリレートを含んでいる場合には、該硬化性樹脂組成物の硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができるものの、前記飽和鎖状(メタ)アクリレートは、脂環式(メタ)アクリレートと比べて、前記硬化性化合物との親和性が低いため、硬化前の硬化性樹脂組成物中において相分離が生じ、これが原因となって、硬化性樹脂組成物の硬化体においても相分離が生じるようになる。
しかしながら、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、上記したように、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含んでいるので、前記硬化性化合物と前記飽和鎖状(メタ)アクリレートとの親和性を比較的高めることができる。
そのため、硬化前の硬化性樹脂組成物中において相分離が生じることを比較的抑制できるので、硬化性樹脂組成物の硬化体においても相分離が生じることを比較的抑制することができる。
すなわち、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、飽和鎖状(メタ)アクリレートと、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含んでいるので、硬化体に相分離が生じることを比較的抑制でき、かつ、硬化体からの臭気の発生を比較的抑制することができる。
【0078】
前記粘着付与剤は、前記粘着付与剤の総質量に対して、α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を90質量%以上含むことが好ましい。前記粘着付与剤は、その全てが上記の炭化水素樹脂であることがより好ましい。
【0079】
上記の炭化水素樹脂は、α-メチルスチレンの構造単位以外に、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、または、2,4,6-トリメチルスチレンの構造単位を分子中に有する。
上記の炭化水素樹脂は、インデンの構造単位を分子中に有してもよい。
【0080】
上記の炭化水素樹脂は、少なくとも、α-メチルスチレンと、スチレンまたはメチルスチレンの少なくとも一方と、の共重合体であることが好ましい。上記の炭化水素樹脂は、α-メチルスチレンと、スチレンまたはメチルスチレンの少なくとも一方と、インデンとの共重合多であることがより好ましい。
【0081】
上記の炭化水素樹脂は、下記式(14)または(15)で示されるような分子構造を有することが好ましい。下記式(14)は、ベンゼン環に水素が添加されていない構造を示しており、下記式(15)は、ベンゼン環に水素が添加された構造(水素添加構造)を示している。水素添加構造は、部分水素添加構造または完全水素添加構造のいずれの構造であってもよいが、完全水素添加構造であることが好ましい。
なお、下記式(14)および(15)中のR1は、メチル基である。下記式(14)および(15)において、R1はなくてもよい。下記式(14)および(15)において、R1は、ベンゼン環のいずれか複数の箇所に結合されていてもよい。
【0082】
【0083】
【0084】
上記の炭化水素樹脂の軟化点は、70℃以上150℃以下であることが好ましい。上記の炭化水素樹脂の軟化点が70℃以上150℃以下であることにより、前記硬化性樹脂組成物が硬化体となった後に、該硬化体をより優れた絶縁信頼性を有するものとすることができる。
【0085】
上記の炭化水素樹脂の軟化点は、以下の方法によって測定される。具体的には、JIS K2207-1996 軟化点試験方法(環球法)にしたがって測定される。
上記の測定は、例えば、自動軟化点試験器「asp-6」(田中科学機器製作社製)を用いて実施することができる。測定条件は以下のとおりである。
・環球式2個がけ
・グリセリン浴+撹拌モード
・マグネチックスターラ80~300rpm
【0086】
上記の炭化水素樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アルコンシリーズ(荒川化学工業社製)などが挙げられる。アルコンシリーズの中では、アルコン100(アルコンM-100及びアルコンP-100)を用いることが好ましい。
【0087】
次に、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の製造方法の一実施形態について説明する。なお、以下では、イソシアネート基を含む硬化性樹脂組成物を製造する方法を例に挙げて説明する。
【0088】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の製造方法では、例えば、分岐鎖状のポリオレフィンジオール(前記A成分)と、総炭素数が6~10である脂肪族ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、アダクト体、及び、ビウレット体から選択される少なくとも1種(前記B成分)と、ヒドロキシ飽和C1~C4アルキル(メタ)アクリレート(前記C成分)との存在下におけるウレタン化反応によって、前記ウレタン化反応の反応生成物を含む硬化性樹脂組成物を製造する。
【0089】
より具体的には、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の製造方法は、上記した、A成分、B成分、C成分、及び、ウレタン化反応触媒の存在下におけるウレタン化反応によって、前記硬化性化合物を含むウレタン化反応生成物を得る反応工程を備える。
また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の製造方法は、前記反応工程後に、光重合性モノマーとしての飽和鎖状(メタ)アクリレート、イソシアネートモノマー、上記粘着付与剤(α-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂を含む粘着付与剤)、及び、光重合開始剤をさらに添加する添加工程を備える。
【0090】
前記反応工程において使用する、A成分、B成分、C成分、及び、ウレタン化反応触媒については、上記した通りである。
【0091】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物の製造方法においては、湿気中に含まれる水分との反応を防ぐために、通常、反応容器内の空気を窒素で置換した後に、前記反応工程を実施する。
【0092】
前記反応工程においては、ウレタン化反応のために適して一般的な反応条件を採用することができる。前記反応工程においては、50~70℃の温度雰囲気下で、0.5~3時間保持することにより、ウレタン化反応を実施することが好ましい。
【0093】
前記反応工程において、A成分、B成分、及び、C成分の好ましい配合量の比(モル比)は、上記した通りである。
【0094】
前記反応工程においては、ウレタン化反応に関与しない化合物であって、光照射によって重合反応生成物を生じさせる化合物、すなわち、光重合性モノマーとしての飽和鎖状(メタ)アクリレートを共存させてもよい。
また、前記反応工程においては、ウレタン化反応に関与しない化合物である上記粘着付与剤を共存させてもよい。
さらに、前記反応工程においては、ウレタン化反応に関与しない化合物であるイソシアネートモノマーを共存させてもよい。
【0095】
ここで、前記添加工程において添加する、光重合性モノマーとしての飽和鎖状(メタ)アクリレート、イソシアネートモノマーは、低粘度であることから、前記硬化性樹脂組成物を希釈する溶媒のような役割を担う一方で、それ自身が紫外線などの光の照射や湿気などによって硬化するため、前記硬化性樹脂組成物をより十分に硬化させる役割も担う。
また、飽和分岐鎖状(メタ)アクリレート及びイソシアネートモノマーを配合すると、硬化前の前記硬化性樹脂組成物の粘性を比較的低くすることができるので、硬化前の前記硬化性樹脂組成物を塗工する工程をより円滑に行うことができる。
【0096】
前記添加工程においては、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などをさらに配合してもよい。
【0097】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、紫外線などの光の照射によって硬化された硬化体となって使用される。例えば、被覆されることとなる電子回路に、前記硬化性樹脂組成物を塗工した後に、塗工後の前記硬化性樹脂組成物に紫外線などの光を照射して、該硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化体の被覆膜を形成する。
また、硬化性樹脂組成物がイソシアネート基(-NCO)を含む場合には、さらに、数時間~数日間、空気中で放置することによって、空気中の湿気(水分)による硬化反応をさらに進行させる。
【0098】
硬化反応を進行させるために照射する光としては、紫外線を使用することができる。高原としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプなどを使用することができる。照射強度としては、10~10,000mW/cm2を採用することができる。
【0099】
また、硬化性樹脂組成物がイソシアネート基(-NCO)を含む場合には、湿気による硬化反応を進行させるために放置する空気の温度は、20~40℃であることが好ましく、該空気の湿度は、40~90%RHであることが好ましい。
【0100】
前記硬化性樹脂組成物が塗工されて被覆される対象としては、例えば、精密機器に使用される実装基板上の電子回路や端子、自動車、自転車、鉄道、航空機、及び、船舶などに搭載する実装基板上の電子回路や端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使用される実装基板上の電子回路や端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥機等の水周り機器に使用される実装基板上の電子回路や端子等が挙げられる。
【0101】
なお、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0102】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
以下のようにして、(A)~(C)(A~C成分)を混合してウレタン化反応を行い、上記一般式(1)で示される硬化性化合物を含む硬化性樹脂組成物を得た。
【0104】
[反応工程の原料]
(A)水素添加ポリブタジエンジオール(平均分子量3,1000)
製品名「NISSO-PB GI-3000」
:水素基価(KOHmg/g=30mg) 日本曹達社製
(B)総炭素数が6~10である脂肪族ジイソシアネートの誘導体
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体
製品名「DURANATE TPA-100:イソシアネート基含有率23.1%」 旭化成社製
(C)ヒドロキシ飽和C1~C4アルキル(メタ)アクリレート
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(市販品)
(その他)
・光重合性モノマー1(反応溶媒/希釈剤)
イソノニルアクリレート(市販品)またはイソボルニルアクリレート(市販品)のいずれか一方
・ウレタン化反応触媒
ジラウリン酸ジブチルスズ(市販品)
・粘着付与剤(炭化水素樹脂)
製品名「アルコン100」 荒川化学工業社製
【0105】
[添加工程の原料]
・光重合性モノマー1
イソノニルアクリレート(市販品)またはイソボルニルアクリレート(市販品)のいずれか一方
・光重合性モノマー2(多官能イソシアネート)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のイソシアヌレート誘導体
製品名「DURANATE TPA-100:イソシアネート基含有率23.1%」 旭化成社製
・粘着付与剤(炭化水素樹脂)
製品名「アルコン100」 荒川化学工業社製
・光重合開始剤
製品名「IRGACURE 907」 IGM Resins社製
・光増感剤(2,4-ジエチルチオキサントン)
製品名「KAYACURE DETX-S」 日本化薬社製
【0106】
下記表1に示す配合量で、上記の(A)、(B)、(C)、光重合性モノマー(反応溶媒/希釈剤)としてのイソノニルアクリレート、ウレタン化反応触媒、及び、粘着付与剤の存在下において、60℃の温度雰囲気下で1時間ウレタン化反応を行うことにより、反応工程を実施した。
次に、下記表1に示す配合量で、反応工程後の組成物に、上記の原料を添加して混合し、添加工程を実施した。
このようにして、硬化性樹脂組成物を得た。
【0107】
(比較例1)
反応工程の原料及び添加工程の原料として粘着付与剤を用いない以外は、実施例1と同様にして、下記表1に示した配合組成で硬化性樹脂組成物を得た。
【0108】
(比較例2)
反応工程の原料及び添加工程の原料として粘着付与剤を用いないことに加えて、光重合性モノマーとしてイソノニルアクリレートに代えてイソボルニルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記表1に示した配合組成で硬化性樹脂組成物を得た。
【0109】
【0110】
硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物について、粘度を測定するとともに、相分離の有無を目視にて観察した。
粘度は、E型(コーン・プレートタイプ)回転粘度計を用い、25℃の条件で測定した。
また、硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物の相分離の有無は、硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物の濁りの有無を確認することにより判断した。具体的には、添加工程終了後、室温(23±2℃)まで冷却されたことを確認した後に、硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物を目視にて観察した結果、濁りが認められなかったものを、相分離が生じていないとして○と評価し、濁りが認められたものを、相分離が生じているとして×と評価した。
硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物について、粘度を測定した結果、及び、相分離の有無を評価した結果を、下記表2に示す。
【0111】
また、硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物(硬化体)から生じる臭気を官能試験にて評価するととともに、硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物(硬化体)の相分離の有無について評価した。
【0112】
各例に係る硬化性樹脂組成物は、以下のようにして硬化させた。
(1)硬化後の硬化体の厚さが100μmとなるように、平面寸法130mm×180mm、厚さ0.3mmのブリキ板に各例に係る硬化性樹脂組成物を塗工する。
(2)ブリキ板に塗工した各例に係る硬化性樹脂組成物に、500WのUVランプによって積算光量が3000mJ/cm2の光強度となるように紫外線を照射する。
(3)紫外線照射後の各例に係る硬化性樹脂組成物を、40℃/90%RHに設定した恒温恒湿機内に72時間静置して、湿気(水分)による硬化処理を加える。
【0113】
硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物から生じる臭気は、硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物を100mLのサンプル瓶に50g入れ、10人のパネラーがどの程度のアクリル臭を感じるかによって評価した。パネラーが殆ど臭気を感じない(微アクリル臭のみを感じる)場合を○とし、パネラーが強烈なアクリル臭を感じる場合を×とした。
また、硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物の相分離の有無については、目視にて評価した。目視にてブリキ板が完全に透けて透明であったものを〇とし、白化または濁りが認められたものを×とした。
硬化後の各例に係る硬化性樹脂組成物について、臭気を評価した結果、及び、相分離の有無を評価した結果を、下記表2に示した。
【0114】
【0115】
なお、上記表2のポリマー比率とは、反応工程及び添加工程に用いた全成分の総質量部に対する反応工程に用いたA成分、B成分、及び、C成分の質量百分率を意味する。
【0116】
表2より、硬化前の各例に係る硬化性樹脂組成物について測定した粘度は、いずれも1000mPa・sと比較的低い値であった。
一方で、実施例1及び比較例2に係る硬化性樹脂組成物は、硬化前及び硬化後のいずれにおいても、相分離の有無の評価が○であったのに対し、比較例1に係る硬化性樹脂組成物は、硬化前及び硬化後のいずれにおいても、相分離の有無の評価が×であることが分かった。
このことから、硬化後の硬化性樹脂組成物において相分離が生じることを抑制するためには、硬化前の硬化性樹脂組成物において相分離が生じることを抑制する必要があること、すなわち、目視にて確認される濁りを抑制する必要があることが分かった。
また、硬化後の実施例1及び比較例2に係る硬化性樹脂組成物は、臭気の評価が○であったのに対し、硬化後の比較例2に係る硬化性樹脂組成物は、臭気の評価が×であることが分かった。
これらの結果から、硬化後の硬化性樹脂組成物に相分離が生じることを比較的抑制し、かつ、硬化後の硬化性樹脂組成物からの臭気の発生を比較的抑制するためには、光重合性モノマーとして飽和分岐鎖状(メタ)アクリレート(イソノニルアクリレート)を用い、粘着付与剤としてα-メチルスチレンの構造単位、または、その水素添加体の構造単位を分子中に有する炭化水素樹脂(アルコン100)を用いる必要があることが分かった。