(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20250410BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20250410BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20250410BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20250410BHJP
G06F 3/04845 20220101ALI20250410BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20250410BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/12
G06T19/00 A
G06F3/04815
G06F3/04845
G06F3/0346 422
(21)【出願番号】P 2020179102
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 紀明
(72)【発明者】
【氏名】中村 治之
(72)【発明者】
【氏名】三好 舞実子
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038867(JP,A)
【文献】特開2004-185444(JP,A)
【文献】特開2008-030080(JP,A)
【文献】特開2001-084285(JP,A)
【文献】特表2020-514905(JP,A)
【文献】特開2017-215753(JP,A)
【文献】特開2005-071207(JP,A)
【文献】特開2010-257317(JP,A)
【文献】株式会社LIXIL,“パブリックトイレ空間を自動設計するクラウドサービス「A-SPEC」を10月19日より公開~数万件のパターンから、自動で多機能トイレプランを提案~”,プレスリリース,[検索日 2024.12.04],株式会社LIXIL [online],2020年10月19日,https://newsrelease.lixil.co.jp/news/pdf/2020101901.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/12
G06T 19/00
G06F 3/04815
G06F 3/04845
G06F 3/0346
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、
前記三次元モデルの変更指示を前記モデリング部に入力するための指示入力部と、
前記三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、
前記仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を備える
複数の端末装置と、
現実空間を撮像する撮像装置と、
を備え、
前記画像生成部は、前記端末装置の位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記モデリング部は、前記設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置に関する規則にしたがって判定された態様で前記三次元モデルを変更し、
変更された三次元モデルにおける前記要素の最適な配置を進化的アルゴリズムにより自動的に生成する配置候補生成部を更に備え
、
前記指示入力部は、前記現実空間のテーブルの上に設置され、
前記画像生成部は、前記現実空間の撮像画像における前記テーブルの上に前記三次元モデルを配置し、前記指示入力部が配置された位置と前記複数の端末装置のそれぞれとの相対位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記画像生成部は、前記撮像装置により撮像された前記現実空間の撮像画像に前記三次元モデルの画像を重畳する
設計支援システム。
【請求項2】
前記指示入力部は、スイッチ、ボタン、又はスライダーを備える
請求項
1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記指示入力部は、スイッチ又はボタンを備え、
前記スイッチ又はボタンは、前記設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、位置の複数の選択肢の中から設定を受け付ける
請求項
1に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記スライダーは、前記設計対象を構成する要素の数、形状、サイズ、又は位置の設定可能な数値範囲に対応付けられた可動範囲を有する
請求項
2に記載の設計支援システム。
【請求項5】
設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、
前記三次元モデルの変更指示を前記モデリング部に入力するための指示入力部から前記三次元モデルの変更指示を受け付ける指示受付部と、
前記三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、
前記仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を
それぞれ備える
複数の端末装置の位置を取得する位置取得部と、
前記端末装置に備えられた撮像装置から現実空間の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
を備え、
前記画像生成部は、前記端末装置の位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記モデリング部は、前記設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置に関する規則にしたがって判定された態様で前記三次元モデルを変更し、
変更された三次元モデルにおける前記要素の最適な配置を進化的アルゴリズムにより自動的に生成する配置候補生成部を更に備え
、
前記指示入力部は、前記現実空間のテーブルの上に設置され、
前記画像生成部は、前記現実空間の撮像画像における前記テーブルの上に前記三次元モデルを配置し、前記指示入力部が配置された位置と前記複数の端末装置のそれぞれとの相対位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記画像生成部は、前記撮像装置により撮像された前記現実空間の撮像画像に前記三次元モデルの画像を重畳する
設計支援装置。
【請求項6】
コンピュータに、
設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するステップと、
現実空間のテーブルの上に設置された、前記三次元モデルの変更指示を入力するための指示入力部から、前記三次元モデルの変更指示を受け付けるステップと、
前記仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を
それぞれ備える
複数の端末装置の位置を取得するステップと、
前記端末装置に備えられた撮像装置から現実空間の撮像画像を取得するステップと、
前記現実空間の撮像画像における前記テーブルの上に前記三次元モデルを配置し、前記指示入力部が配置された位置と前記
複数の端末装置の
それぞれとの相対位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定するステップと、
前記三次元モデルの画像を生成するステップと、
前記撮像装置により撮像された前記現実空間の撮像画像に前記三次元モデルの画像を重畳するステップと、
前記設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置に関する規則にしたがって判定された態様で前記三次元モデルを変更するステップと、
変更された三次元モデルにおける前記要素の最適な配置を進化的アルゴリズムにより自動的に生成するステップと、
を実行させる設計支援方法。
【請求項7】
コンピュータを、
設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、
前記三次元モデルの変更指示を前記モデリング部に入力するための指示入力部から前記三次元モデルの変更指示を受け付ける指示受付部と、
前記三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、
前記仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を
それぞれ備える
複数の端末装置の位置を取得する位置取得部と、
前記端末装置に備えられた撮像装置から現実空間の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
として機能させ、
前記画像生成部は、前記端末装置の位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記モデリング部は、前記設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置に関する規則にしたがって判定された態様で前記三次元モデルを変更し、
コンピュータを、変更された三次元モデルにおける前記要素の最適な配置を進化的アルゴリズムにより自動的に生成する配置候補生成部として更に機能させ
、
前記指示入力部は、前記現実空間のテーブルの上に設置され、
前記画像生成部は、前記現実空間の撮像画像における前記テーブルの上に前記三次元モデルを配置し、前記指示入力部が配置された位置と前記複数の端末装置のそれぞれとの相対位置に応じて前記三次元モデルの画像の視点位置を設定し、
前記画像生成部は、前記撮像装置により撮像された前記現実空間の撮像画像に前記三次元モデルの画像を重畳する
設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設計対象の設計を支援するための設計支援システム、設計支援装置、設計支援方法、及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
便器だけでなく、手すり、おむつ交換台、オストメイト対応トイレなど、特別な配慮を要する使用者のための様々な機器、器具、装置などの設置物が設置されたトイレが普及している。とくに、特定多数又は不特定の使用者が想定される施設などにおいては、様々な属性の使用者に対する配慮が必要とされるので、多数の設置物が設置された多機能トイレが設けられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
多機能トイレにおける便器と設置物の配置を施主などが検討するとき、便器や設置物などのカタログに掲載された配置案や、個々の施設の特徴に応じて設計された配置の候補などが参考として提示される。また、必要に応じて、実物大又は縮小されたモックアップが作成され、設置場所における動作などが検証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カタログに掲載された配置案や、個別に設計される配置の候補は、数に限りがある。また、モックアップを作成して動作を検証可能な配置の候補の数は、更に限られる。より効果的に設計対象の設計案を施主などに提案する技術が求められる。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、設計対象の設計をより適切に支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の設計支援システムは、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、三次元モデルの変更指示をモデリング部に入力するための指示入力部と、三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を備える端末装置と、を備える。画像生成部は、端末装置の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定する。
【0008】
本開示の別の態様は、設計支援装置である。この装置は、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、三次元モデルの変更指示を受け付ける指示受付部と、三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を備える端末装置の位置を取得する位置取得部と、を備える。画像生成部は、端末装置の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定する。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、設計支援方法である。この方法は、コンピュータに、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するステップと、三次元モデルの変更指示を受け付けるステップと、仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を備える端末装置の位置を取得するステップと、端末装置の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定するステップと、三次元モデルの画像を生成するステップと、を実行させる。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、設計支援プログラムである。このプログラムは、コンピュータを、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築するモデリング部と、三次元モデルの変更指示を受け付ける指示受付部と、三次元モデルの画像を生成する画像生成部と、仮想三次元空間の画像を表示する表示装置を備える端末装置の位置を取得する位置取得部と、として機能させる。画像生成部は、端末装置の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る設計支援システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2(a)(b)は、実施の形態に係る設計支援装置により設計される便器の設置場所の例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る設計支援装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4(a)(b)は、実施の形態に係る指示入力装置102の操作部の例を示す図である。
【
図5】
図5(a)(b)は、設計対象の三次元モデルを変更する際の規則の例を示す図である。
【
図6】
図6(a)(b)(c)(d)は、設計対象の三次元モデルを変更する際の規則の例を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る端末装置の構成を示す図である。
【
図8】実施例に係る設計支援装置の構成を示す図である。
【
図10】配置候補提示部により提示される表示画面の例を示す図である。
【
図11】
図11(a)(b)(c)(d)は、画像生成部65により生成された画像の例を示す図である。
【
図12】車椅子に乗車している使用者がトイレ室に入室してから退室するまでの動線を表す画像を示す図である。
【
図13】車椅子に乗車している使用者と便器又は設置物との干渉を表す画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態として、トイレ室などの設計対象の設計を支援する技術について説明する。本実施の形態の設計支援システムは、設計対象を設計する際に、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)などの技術を用いて、設計対象の三次元モデルの画像を端末装置の表示装置に表示する。設計支援システムは、端末装置の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定する。また、設計支援システムは、設計対象の変更指示を受け付けると、リアルタイムに三次元モデルに反映させる。これにより、設計者は、設計対象の仮想的なモックアップを様々な視点から確認し、設計対象に対する変更を逐次視覚的に確認しながら設計を進めることができるので、設計の利便性を向上させることができる。
【0014】
営業担当者が施主に設計対象の新築やリフォームを提案する場合など、複数の人が設計の場に参加する場合、設計支援システムは、複数の端末のそれぞれの表示装置に三次元モデルの画像を表示する。このとき、設計支援システムは、現実世界の撮像画像の所定位置、例えばテーブルの上などに三次元モデルを配置し、所定位置と端末装置との相対位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定する。これにより、複数の参加者がテーブルの上に置かれた仮想的なモックアップを囲んで議論しているような感覚で設計を進めることができるので、設計の効率を向上させることができる。また、施主は、設計対象に対する変更が反映された三次元モデルをその場で視覚的に確認しながら設計を進め、様々なバリエーションを検討してから発注することができるので、施主の納得感を高めることができる。また、売主側も、施主に対する提案の機会を増やすことができるので、成約を増やすことができる。
【0015】
図1は、実施の形態に係る設計支援システムの構成を概略的に示す。設計支援システム100は、設計支援装置101、指示入力装置102、端末装置103を備える。設計支援装置101は、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築する。端末装置103は、表示装置と撮像装置を備えており、撮像装置により撮像された現実空間の画像に三次元モデルの画像を重畳することにより生成された画像を表示装置に表示する。三次元モデルは、現実空間の撮像画像の所定位置に配置される。本図の例では、三次元モデル104は、撮像画像において、複数の参加者が囲むテーブル105の上に配置される。
【0016】
テーブル105の上に設置された複数の端末装置103のそれぞれの表示装置には、端末装置103の位置に応じて設定された視点位置から見た三次元モデル104の画像が表示される。参加者は、テーブル105の周囲を移動しながら、テーブル105上の異なる複数の位置に設置された複数の端末装置103の表示装置を見ることにより、複数の視点位置から設計対象を見て確認することができる。参加者は、端末装置103を移動させることにより視点位置を変更してもよい。
【0017】
指示入力装置102は、三次元モデルの変更指示を設計支援装置101に入力する。指示入力装置102は、ロッカスイッチ、セレクタスイッチ、スライダーなどの操作部を備える。ロッカスイッチは、2つの選択肢の間で設定を切り替えるために用いられる。セレクタスイッチは、複数の選択肢の中から設定を切り替えるために用いられる。スライダーは、所定の数値範囲の中から数値を設定するために用いられる。指示入力装置102から三次元モデルの変更指示が入力されると、設計支援装置101は、変更指示にしたがって設計対象の三次元モデルを変更する。端末装置103の表示装置は、変更された三次元モデルの画像を表示する。これにより、指示入力装置102により入力された変更が、逐次表示に反映される。本実施の形態では、主に、便器装置が設置されるトイレ室を設計対象とする例について説明する。
【0018】
図2(a)(b)は、実施の形態に係る設計支援システム100により設計されるトイレ室の例を示す。
図2(a)は、多機能トイレの例を示す。多機能トイレ10には、大便器12に加えて、手すり13、洗面器14、紙巻器15、ベビーキープ16、ユニバーサルシート17、オストメイト対応トイレ18などの設置物が設置される。大便器12は、車椅子に乗車した使用者が車椅子を方向転換する際の取り回しを良くするために、扉11から離れた壁に沿って設置されるのが好ましい。乳幼児を座らせておくためのベビーキープは、大便器12で用を足している使用者が乳幼児を注視することができるように、大便器12の前面に設置されるのが好ましい。車椅子を使用している使用者が車椅子に乗車したまま容易に方向転換することができるように、多機能トイレ10には、一般的な車椅子の回転円19以上の空間が確保されるのが好ましい。このように、多機能トイレ10に便器と設置物を配置する際には、想定される使用者の属性に応じた様々な配慮が必要となる。
【0019】
図2(b)は、多機能トイレを含むトイレ室の例を示す。トイレ室30には、大便器と手すりのみが設置された通常の個室に加えて、ベビーキープが設置された個室、おむつ交換台が設置された個室などが設けられる。通行人がトイレ室30の内部を見えにくいようにする、トイレ室30内において出入口から奥へ向かう人と奥から出入口へ向かう人とが行き来しやすいようにする、などのトイレ室30に一般的に必要とされる配慮に加えて、車椅子に乗車している人、乳幼児を連れている人、ベビーカーなどの付随物を持ち込む人、オストメイトなどが利用しやすいようにするための配慮が必要となる。
【0020】
本実施の形態の設計支援システム100によれば、本図の例のように、多種類の配置物が配置され、様々な配慮が必要となる設計対象を設計するにあたって、全体のレイアウトを逐次確認しながら各要素の数や位置などを調整することができるので、設計の効率を飛躍的に向上させることができる。
【0021】
図3は、実施の形態に係る設計支援装置101の構成を示す。設計支援装置101は、通信装置151、表示装置152、入力装置153、記憶装置180、及び制御装置160を備える。設計支援装置101は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0022】
通信装置151は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置151は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。表示装置152は、制御装置160により生成される画面を表示する。表示装置152は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置153は、設計支援装置101の使用者による指示入力を制御装置160に伝達する。入力装置153は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置152及び入力装置153は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0023】
記憶装置180は、制御装置160により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置180は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置180には、要素情報データベース181、規則保持部182、及び三次元形状データ保持部183が格納される。
【0024】
要素情報データベース181は、設計対象を構成する配置物などの要素に関する情報を格納する。要素情報データベース181は、要素の種類、名称、型番、色、寸法、重量、価格、施工条件、配置制約、設置の要否、配慮事項などの情報を格納する。設置条件は、要素を施工するために必要な空間などの条件を含む。配置制約は、要素の前後、上下、左右などに必要なクリアランスや、他の要素との位置関係などの制約を含む。配慮事項は、例えば、想定される使用者がトイレ室を使用する際に必要とされる配慮事項などを含む。
【0025】
規則保持部182は、要素の種類、数、形状、サイズ、位置などを変更する際の規則や、各要素を配置するための規則などを保持する。
【0026】
三次元形状データ保持部183は、各要素の三次元形状データを保持する。
【0027】
制御装置160は、モデリング部161、指示入力受付部162、モデル変更部163、端末位置取得部164、撮像画像取得部165、画像生成部166、及び画像表示部167を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
モデリング部161は、設計対象の三次元モデルを仮想三次元空間内に構築する。モデリング部161は、仮想三次元空間内に、設計対象を構成する要素を配置し、配置された要素の三次元形状データを三次元形状データ保持部183から読み出して、設計対象の三次元モデルを構築する。モデリング部161は、設計対象の大まかな配置プランにしたがって設計対象の三次元モデルを構築し、設計者からの指示に応じて要素を追加又は変更してもよい。
【0029】
指示入力受付部162は、指示入力装置102から三次元モデルの変更指示を受け付ける。指示入力受付部162は、指示入力装置102に設けられたロッカスイッチ、セレクタスイッチ、スライダーなどの操作部の識別情報、及び導通している接点の識別情報と、それぞれの操作部の各接点に対応して設定される要素の種類、数、形状、サイズ、位置などとの対応関係を保持する。指示入力装置102は、操作部が操作されると、有線又は無線により入力信号を設計支援装置101に送信する。指示入力受付部162は、指示入力装置102から入力信号を取得すると、操作された操作部及び導通している接点に対応する要素の種類、数、形状、サイズ、位置に対する設定の内容を判定する。
【0030】
図4(a)(b)は、実施の形態に係る指示入力装置102の操作部の例を示す。
図4(a)は、スライダーの向きを縦方向に揃えた場合の操作部の配列の例を示す。
図4(b)は、水平方向の移動又はサイズの変更を指示するためのスライダーの向きを横方向に、垂直方向の移動を指示するためのスライダーの向きを縦方向に配置した場合の操作部の配列の例を示す。
【0031】
指示入力装置102には、設計対象のトイレ室の全体の設定を入力するための操作部として、人型モデルの表示/非表示を切り替えるためのロッカスイッチと、配置プランを選択するためのセレクタスイッチと、男性用/女性用の領域の配置を切り替えるためのロッカスイッチとが設けられる。
【0032】
また、大便器に関する設定を入力するための操作部として、ドア勝手を切り替えるためのロッカスイッチと、パターン、ユニット、ブース開口、ブース奥行、個数、ドア幅、ライニング奥行、モデルを切り替えるためのセレクタスイッチとが設けられる。
【0033】
また、小便器に関する設定を入力するための操作部として、汚垂れ石奥行、便器間隔を切り替えるためのロッカスイッチと、間仕切りモデル、ライニング奥行、ユニット、を切り替えるためのセレクタスイッチと、全体間口を切り替えるためのスライダーとが設けられる。
【0034】
また、洗面器及び洗面カウンターに関する設定を入力するための操作部として、タイプを切り替えるためのロッカスイッチと、鏡モデル、間仕切りモデル、洗面器モデル、手すりモデル、洗面器間隔を切り替えるためのセレクタスイッチと、全体間口を切り替えるためのスライダーとが設けられる。
【0035】
また、掃除用流しに関する設定を入力するための操作部として、内開き/外開き、ドア勝手を切り替えるためのロッカスイッチと、ブース奥行、ブース間口、ドア幅、ライニング奥行を切り替えるためのセレクタスイッチとが設けられる。
【0036】
また、小物入れロッカーに関する設定を入力するための操作部として、X方向の個数、Y方向の個数を切り替えるためのセレクタスイッチと、水平方向の設置位置、垂直方向の設置位置を設定するためのスライダーとが設けられる。
【0037】
また、パウダーコーナーに関する設定を入力するための操作部として、モデル、鏡の個数を切り替えるためのセレクタスイッチと、全体間口を切り替えるためのスライダーとが設けられる。
【0038】
また、ハンドドライヤーに関する設定を入力するための操作部として、モデルを切り替えるためのセレクタスイッチと、水平方向の設置位置を切り替えるためのスライダーとが設けられる。
【0039】
モデル変更部163は、指示入力受付部162により受け付けられた三次元モデルの変更指示にしたがって、三次元モデルを変更する態様を判定し、判定された態様で三次元モデルを変更するようモデリング部161に指示する。モデル変更部163は、規則保持部182に保持された三次元モデルを構成する要素の種類、数、形状、サイズ、位置などを変更する際の規則にしたがって、要素の種類、数、形状、サイズ、位置などを変更する態様を判定する。
【0040】
図5(a)(b)は、設計対象の三次元モデルを変更する際の規則の例を示す。
図5(a)の例において、大便器ブースの個数を増加する変更指示が受け付けられた場合、既に配置されている大便器ブースと同形状の大便器ブースを縦方向又は横方向に隣接するように追加する。
図5(b)の例において、大便器ブースの個数を増加する変更指示が受け付けられた場合、既に配置されている2つの大便器ブースのうち小さい方の大便器ブースに隣接するように同形状の大便器ブースを追加する。
【0041】
図6(a)(b)(c)(d)は、設計対象の三次元モデルを変更する際の規則の例を示す。前後方向に伸張された大便器ブースに、最小単位の大便器ブースを直角に隣接するように追加する場合、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、通路側から大便器が見えないような配置が許容される。
図6(c)に示した配置は、通路側から大便器が見えるので許容されない。
図6(d)に示した配置は、2つの大便器ブースのドア同士が干渉するので許容されない。
【0042】
モデリング部161は、モデル変更部163により判定された態様で、設計対象の三次元モデルを構成する要素の種類、数、形状、サイズ、位置などを変更する。モデリング部161は、設計対象を構成する要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置の変更に伴って、変更された要素以外の要素の種類、数、形状、サイズ、又は位置を、規則保持部182に保持された規則にしたがって調整する。
【0043】
端末位置取得部164は、端末装置103の位置を示す情報を取得する。端末装置103が自身の位置情報を検知する機能を有している場合、端末位置取得部164は、端末装置103の位置を示す情報を端末装置103から取得する。端末装置103が自身の位置情報を検知する機能を有していない場合、端末位置取得部164は、例えば、図示しない撮像装置により撮像された端末装置103の画像を解析することにより端末装置103の位置を示す情報を取得してもよい。
【0044】
撮像画像取得部165は、端末装置103に備えられた撮像装置から撮像画像を取得する。撮像画像取得部165は、端末装置103から撮像画像を取得してもよいし、撮像装置から直接撮像画像を取得してもよい。複数の端末装置103のそれぞれが設計対象の三次元モデルの画像を表示する場合、撮像画像取得部165は、それぞれの端末装置103の撮像装置により撮像された撮像画像を取得する。
【0045】
画像生成部166は、端末位置取得部164により取得された端末装置103の位置に応じて三次元モデルの画像の視点位置を設定し、モデリング部161により構築された設計対象の三次元モデルをレンダリングする。画像生成部166は、撮像画像取得部165により取得された現実空間の撮像画像に、レンダリングされた設計対象の三次元モデルの画像を重畳することにより、表示画像を生成する。画像生成部166は、撮像画像の所定位置、例えばテーブル105の上面の中央付近に三次元モデルの画像を重畳する。複数の端末装置103のそれぞれが設計対象の三次元モデルの画像を表示する場合、画像生成部166は、それぞれの端末装置103の撮像装置により撮像された撮像画像に、それぞれの端末装置103の位置から見た三次元モデルの画像を重畳することにより、それぞれの端末装置103の表示装置に表示する表示画像を生成する。
【0046】
画像表示部167は、画像生成部166により生成された表示画像を端末装置103に送信し、端末装置103の表示装置に表示させる。画像表示部167は、HTTPなどの通信プロトコルにより表示画像を端末装置103に送信してもよい。この場合、端末装置103は、ウェブブラウザなどにより設計支援装置101にアクセスして表示画像を取得してもよい。
【0047】
図7は、実施の形態に係る端末装置103の構成を示す。端末装置103は、通信装置251、表示装置252、入力装置253、撮像装置254、記憶装置255、位置センサ256、及び制御装置260を備える。端末装置103は、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。設計支援装置101により仮想現実の画像が生成される場合、端末装置103は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)であってもよい。
【0048】
通信装置251は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置251は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。表示装置252は、制御装置260により生成される画面を表示する。表示装置252は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置253は、端末装置103の使用者による指示入力を制御装置260に伝達する。入力装置253は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置252及び入力装置253は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0049】
撮像装置254は、端末装置103の周囲の現実世界を撮像する。記憶装置255は、制御装置260により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置255は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。位置センサ256は、端末装置103の位置を検知する。位置センサ256は、GPSなど、任意の位置検知技術を利用して端末装置103の位置を検知してもよい。
【0050】
制御装置260は、位置情報送信部261、撮像画像送信部262、表示画像取得部263、及び表示制御部264を備える。これらの構成も、ハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できる。
【0051】
位置情報送信部261は、位置センサ256により検知された位置情報を設計支援装置101へ送信する。撮像画像送信部262は、撮像装置254により撮像された撮像画像を設計支援装置101へ送信する。
【0052】
表示画像取得部263は、設計支援装置101から表示画像を取得する。表示制御部264は、表示画像取得部263により取得された表示画像を表示装置252に表示する。
【0053】
本実施の形態では、端末装置103の表示装置252に表示する表示画像を設計支援装置101が生成する例について説明したが、別の例では、設計支援装置101の機能の一部を端末装置103が実行してもよい。例えば、設計支援装置101により生成される設計対象の三次元モデルのレンダリング画像を端末装置103に送信し、端末装置103が三次元モデルのレンダリング画像を撮像画像に重畳して表示してもよい。また、設計支援装置101により生成される設計対象の三次元モデルの三次元形状データを端末装置103に送信し、端末装置103が設計対象の三次元モデルのレンダリング画像を生成し、撮像画像に重畳して表示してもよい。また、複数の端末装置103のそれぞれが設計対象の三次元モデルを保持し、指示入力装置102からの変更指示にしたがって三次元モデルを変更してもよい。
【0054】
本実施の形態の設計支援システム100の別の実施例として、便器の設置場所における最適な便器及び設置物の配置の候補を自動的に生成して、便器の設置場所の設計を支援する技術について説明する。まず、便器の設置場所における最適な便器及び設置物の配置の候補を自動的に生成する技術について説明し、つづいて、その技術を本実施の形態の設計支援システム100に適用する例について説明する。
【0055】
本実施例に係る設計支援装置は、設置場所における便器と設置物の配置の選択肢の中から、想定される使用者に必要とされる配慮が行き届いた配置の候補を生成する。設置場所における便器と設置物の配置の選択肢は膨大に存在しうるので、本実施例の設計支援装置は、配慮事項によって重み付けをした評価に基づいて配置の候補の近似解を求める。このような近似解の探索に適したアルゴリズムの一つに、進化的アルゴリズムがある。本実施例の設計支援装置は、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムを使用する。評価基準は、想定される使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性を表す基準を含む。これにより、想定される使用者の利便性が高い配置の候補を優先的に保存しながら配置を進化させて、最適な配置の候補の近似解を効率良く探索することができる。
【0056】
図8は、実施例に係る設計支援装置50の構成を示す。設計支援装置50は、通信装置51、表示装置52、入力装置53、記憶装置80、及び制御装置60を備える。設計支援装置50は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0057】
通信装置51は、他の装置との間の通信を制御する。通信装置51は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。表示装置52は、制御装置60により生成される画面を表示する。表示装置52は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置53は、設計支援装置50の使用者による指示入力を制御装置60に伝達する。入力装置53は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置52及び入力装置53は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0058】
記憶装置80は、制御装置60により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置80は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置80には、設置物情報データベース81、配置規則保持部82、及び三次元形状データ保持部83が格納される。
【0059】
設置物情報データベース81は、トイレ室に設置可能な設置物に関する情報を格納する。設置物情報データベース81は、設置物の種類、名称、型番、色、寸法、重量、価格、施工条件、配置制約、想定される使用者の属性などに応じた設置の要否、配慮事項などの情報を格納する。設置条件は、設置物を施工するために必要な空間などの条件を含む。配置制約は、設置物の前後、上下、左右などに必要なクリアランスや、他の設置物との位置関係などの制約を含む。配慮事項は、想定される使用者がトイレ室を使用する際に必要とされる配慮事項を含む。
【0060】
配置規則保持部82は、トイレ室の形状及び大きさと、トイレ室に設置される設置物の種類及び数に応じて、トイレ室に便器と設置物を配置するための配置パターンを生成するための配置規則を複数保持する。配置パターンは、設置物の施工条件、配置制約、配慮事項などの配置規則にしたがって生成される。配置規則は、必ず充足する必要がある規則と、充足しなくてもよいが優先される規則を含んでもよい。複数の規則に優先順位が割り当てられ、優先順位の高い規則が充足された配置パターンが優先的に生成されてもよい。それぞれの配置パターンには、異なる整数が識別情報として割り当てられる。
【0061】
図9は、配置パターンの例を示す。設置物の種類ごとに、設置場所に便器とその設置物を配置する複数の配置パターンを生成するための規則が配置規則保持部82に保持される。まず、大便器を設置するための4種類の配置規則にしたがって4種類の配置パターンが生成され、つづいて、それぞれの設置物を設置するための配置規則にしたがって4種類の配置パターンのそれぞれに設置物が配置される。
【0062】
三次元形状データ保持部83は、トイレ室の内部の空間の三次元形状データと、トイレ室に設置可能な設置物のそれぞれの三次元形状データを保持する。設置物が開閉、伸縮、回動などの動作が可能である場合、三次元形状データ保持部83は、可動な設置物が動作したときの三次元形状データを更に保持する。設置物の三次元形状データは、生成された配置の候補における使用者の動作や可動な設置物の動作などをシミュレーションするために使用される。三次元形状データ保持部83は、設置物の配置の候補を生成する際の計算のために、設置物を包絡する直方体(バウンディングボックス)の二次元又は三次元形状データを保持してもよい。これにより、計算負荷を低減させることができる。
【0063】
制御装置60は、設置場所情報取得部61、設置物情報取得部62、配置候補生成部63、配置候補提示部64、画像生成部65、画像表示部66、配置編集部67、及びデータ出力部68を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0064】
設置場所情報取得部61は、便器が設置される設置場所に関する情報を取得する。設置場所情報取得部61は、設置場所の形状、寸法、扉の位置、形状、寸法などの情報を取得する。設置場所情報取得部61は、設置場所の2次元CADデータ又は3次元CADデータなどの設計データを取得してもよい。
【0065】
設置物情報取得部62は、設置場所に便器とともに設置される設置物に関する情報を取得する。設置物情報取得部62は、設置場所に設置される設置物の種類、数、形状、寸法、重量などの情報を取得する。
【0066】
配置候補生成部63は、設置場所情報取得部61により取得された情報及び設置物情報取得部62により取得された情報に基づいて、設置場所に設置される便器及び設置物の配置の候補を生成する。配置候補生成部63は、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を適応度とした進化的アルゴリズムにより配置の候補を生成する。
【0067】
進化的アルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミング、進化的プログラミング、進化戦略など、既知の任意のアルゴリズムが使用されてもよい。以下、遺伝的アルゴリズムにより配置の候補を生成する例について説明する。遺伝的アルゴリズムに関する既知の技術の詳細については、適宜説明を省略する。
【0068】
配置候補生成部63は、まず、所定個の個体からなる初期集団を発生させる。各個体の染色体は、配置パターンの種類、及び配置パターンにおける便器及び設置物の配置位置の移動量を含む。染色体は、車椅子の回転円の中心座標を含んでもよい。各個体の遺伝子のそれぞれは、0~nの整数で表現される。すなわち、配置位置の移動量は、単位移動量の整数倍とされ、回転円の中心座標は、単位ベクトルの整数倍とされる。これにより、計算負荷を低減することができるので、最適な配置の候補を短時間で精度良く探索することができる。
【0069】
配置候補生成部63は、配置規則保持部82に保持された配置規則に基づいて各個体の配置パターンを生成する。配置候補生成部63は、設置物情報取得部62により取得された設置物の種類に応じて、それらの設置物のそれぞれを配置するための配置パターンを生成し、生成された配置パターンを組み合わせることにより全ての設置物を配置するための配置パターンを生成する。配置候補生成部63は、配置パターンをランダムに生成してもよいし、設置場所情報取得部61により取得された設置場所の情報と、設置物情報取得部62により取得された設置物の情報に基づいて、それらに適合した配置パターンを優先的に生成してもよい。配置候補生成部63は、各個体の配置位置の移動量、回転円の中心座標、大便器、洗面器、オストメイト対応トイレ、及びハンドドライヤーが設置される壁の位置を所定の条件にしたがって、又はランダムに設定する。
【0070】
配置候補生成部63は、各個体の適合度として、便器及び設置物の配置の良否を評価するための評価基準を用いて算出された評価値を算出する。評価基準は、配慮を必要とする使用者が便器又は設置物を使用する際の利便性を表す配慮事項評価基準を含む。配慮事項評価基準は、使用者の属性に応じて複数設定されてもよい。例えば、車椅子を使用している使用者の利便性を表す配慮事項評価基準として、車椅子に乗車したまま扉から便器付近まで移動するための空間が十分に確保されているか、車椅子が方向転換するための空間が十分に確保されているか、車椅子と便器との間で移動するための空間が十分に確保されているか、車椅子と便器との間で移動する際に手が届く範囲に手すりが有るか、車椅子に乗車したまま手を洗うことが可能な洗面器が有るか、などの基準が含まれてもよい。また、乳幼児を連れている使用者の利便性を表す基準として、乳幼児を座らせておくためのベビーキープが有るか、ベビーキープが便器から手が届く範囲に有るか、おむつ交換台があるか、おむつ交換台の周囲に十分な空間が確保されているか、などの基準が含まれてもよい。また、ストーマを保有している使用者の利便性を表す基準として、オストメイト対応トイレが有るか、オストメイト対応トイレに洗浄用のシャワーが有るか、などの基準が含まれてもよい。また、ベビーカーやキャリーバッグなどの付随物を持ち込む使用者の利便性を表す基準として、付随物を置いておくための十分な空間が確保されているか、付随物を持ち込むための動線が確保されているか、などの基準が含まれてもよい。評価基準は、更に、便器及び設置物の間の干渉の有無又は程度、便器及び設置物を施工、保守、又は清掃する際の作業効率などを含んでもよい。配置候補生成部63は、複数の評価基準のそれぞれに重みを付けて評価値を算出し、各個体の適合度とする。
【0071】
配置候補生成部63は、所定の確率で現世代の個体を突然変異させ、配置パターン又は配置位置の移動量を変更する。変更する遺伝子や変更量は、所定の規則にしたがって決定されてもよいし、ランダムに決定されてもよい。配置候補生成部63は、設置場所の形状や大きさなどを変更してもよいし、設置物の種類や数などを変更してもよい。設置場所に関する情報が決まっている場合は、配置候補生成部63は、設置場所の形状や大きさなどを変更せずに、設置物の種類や数などを変更してもよい。設置物の種類や数が決まっている場合は、配置候補生成部63は、設置物の種類や数などを変更せずに、設置場所の形状や大きさなどを変更してもよい。配置候補生成部63は、現世代の個体からランダムにM個の組(親)を選択し、設定された交叉確率で2M個の子を生成してもよい。
【0072】
配置候補生成部63は、現世代の個体から適合度の低い個体を淘汰し、残った個体を次世代に保存する。配置候補生成部63は、適合度の高い現世代の個体を優先的に次世代に保存する。配置候補生成部63は、適合度の高い順に所定数の個体を次世代に保存してもよい。配置候補生成部63は、配慮事項評価基準の評価値が高い現世代の個体を優先的に次世代に保存してもよい。配置候補生成部63は、複数の配慮事項評価基準のそれぞれについて、評価値が高い順に所定数の個体を次世代に保存してもよい。配置候補生成部63は、ルーレット選択など、既知の任意の方法で次世代に保存する個体を選択してもよい。
【0073】
配置候補生成部63は、進化が収束するまで以上の手順を繰り返す。配置候補生成部63は、例えば、世代交代の回数が所定の回数を超えた場合、集団中の最大の適合度が閾値より大きくなった場合、集団全体の平均適合度が閾値より大きくなった場合、集団の適合度の増加率が閾値以下である世代が所定期間続いた場合などに、進化が収束したと判定してもよい。
【0074】
配置候補生成部63は、最終世代の個体のうち、評価値の高い順に所定数の個体を配置の候補とする。配置候補生成部63は、配慮事項評価基準の評価値が高い個体を配置の候補としてもよい。配置候補生成部63は、複数の配慮事項評価基準のそれぞれについて、評価値が高い順に所定数の個体を配置の候補としてもよい。
【0075】
配置候補生成部63は、複数の配慮事項評価基準のうち優先する基準の指定を受け付けてもよい。この場合、配置候補生成部63は、指定された配慮事項評価基準により高い重みを付けて評価値を算出してもよい。配置候補生成部63は、指定された配慮事項評価基準の評価値が高い個体を優先して次世代に保存してもよい。配置候補生成部63は、最終世代の個体のうち、指定された配慮事項評価基準の評価値が高い個体を配置の候補としてもよい。配置候補生成部63は、想定される使用者の属性に応じて優先すべき配慮事項評価基準を自動的に判定してもよい。例えば、高齢者施設などに設置されるトイレの場合、車椅子に乗車している使用者に対する配慮事項評価基準を優先してもよい。また、商業施設において乳幼児向けの玩具店の近傍に設置されるトイレの場合、ベビーカーなどの付随物を持ち込む使用者や、乳幼児を連れている使用者に対する配慮事項評価基準を優先してもよい。
【0076】
配置候補提示部64は、配置候補生成部63により生成された配置の候補を表示装置52に表示する。
図10は、配置候補提示部64により提示される表示画面の例を示す。配置候補提示部64は、配置の候補を表示装置52に表示するとともに、提示する配置の候補に対して算出された複数の配慮事項評価基準のそれぞれの評価値を提示する。これにより、トイレの設置者は、想定される使用者への配慮が行き届いたトイレを適切に選択することができる。
【0077】
画像生成部65は、配置候補生成部63により生成された配置の候補にしたがって便器及び設置物を配置した設置場所の三次元形状データを生成し、生成した三次元形状データをレンダリングすることにより設置場所の画像を生成する。画像生成部65は、設置場所の内部の空間の三次元形状データと、設置物の三次元形状データを三次元形状データ保持部83から読み出して、配置の候補の三次元形状データを生成する。画像表示部66は、画像生成部65により生成された画像を表示装置52に表示する。
【0078】
画像生成部65は、レンダリングした設置場所の画像において、視点位置及び視線方向を変更可能とする。画像生成部65は、想定される使用者の目の高さの位置に視点位置を設定して、使用者から見た設置場所の画像を生成する。画像生成部65は、例えば、成人男性、成人女性、子供、車椅子に乗車している人などの典型的な目の高さの位置に視点位置を設定する。画像生成部65は、入力装置53に入力された指示に応じて、又は自動的に、設置場所の内部で視点位置を変更して画像を生成する。これにより、使用者が実際にトイレ室を使用する際の動きをシミュレートして、配置の良否を検証することができる。
【0079】
図11(a)(b)(c)(d)は、画像生成部65により生成された画像の例を示す。
図11(a)は、成人男性の目の高さの位置に視点位置が設定されて生成された画像の例を示す。
図11(b)は、成人男性がトイレ室に入室して便器に近づいたときの画像の例を示す。
図11(c)は、車椅子に乗車した使用者の目の高さの位置に視点位置が設定されて生成された画像の例を示す。
図11(d)は、ユニバーサルシートなどの可動な設置物が動かされた場合の画像の例を示す。これにより、可動な設置物が動かされたときの状態も考慮して配置の良否を検証することができる。
【0080】
画像生成部65は、想定される使用者が設置場所に入室してから便器又は設置物を使用して退室するまでの使用者から見た動画像又は使用者の動線を表す画像を生成する。画像生成部65は、想定される使用者が扉から便器又は設置物へ移動する動線と、便器又は設置物から別の設置物へ移動する動線と、退室するために扉へ移動する動線とを生成し、生成した動線に沿って視点位置を移動させながら動画像を生成する。
【0081】
図12は、車椅子に乗車している使用者がトイレ室に入室してから退室するまでの動線を表す画像を示す。これにより、配慮を要する使用者が実際にトイレ室を使用する際の動きをシミュレートして、配置の良否を検証することができる。
【0082】
画像生成部65は、想定される使用者又は付随物と便器又は設置物との干渉の有無又は程度を表す画像を生成する。画像生成部65は、三次元形状データ保持部83に保持された便器及び設置物の三次元形状データと、想定される使用者又は付随物の三次元形状データを使用して、干渉の有無又は程度を算出する。画像生成部65は、バウンダリーボックスの三次元形状データを用いて干渉を算出してもよいし、詳細な三次元形状データを用いて干渉を算出してもよい。画像生成部65は、使用者がトイレ室を使用する際の動線に沿って使用者と付随物の三次元形状データを移動させ、便器又は設置物との干渉の有無又は程度を算出する。
【0083】
図13は、車椅子に乗車している使用者と便器又は設置物との干渉を表す画像を示す。画像生成部65は、使用者と干渉する便器又は設置物を、干渉しない便器又は設置物と異なる態様で表示する。画像生成部65は、干渉の程度に応じて異なる態様で便器又は設置物を表示してもよい。これにより、配慮を要する使用者が実際にトイレ室を使用する際の便器又は設置物との干渉を考慮して、配置の良否を検証することができる。
【0084】
配置編集部67は、画像生成部65により生成された画像上で便器又は設置物の設置位置を編集する。配置編集部67は、便器又は設置物の設置位置、種類、サイズなどの編集指示を入力装置53から受け付け、指示されたように便器又は設置物の設置位置、種類、サイズなどを変更する。これにより、配置候補生成部63により生成された配置の候補をベースとして、より配慮の行き届いた配置を容易に編集することができる。
【0085】
データ出力部68は、便器及び設置物が設置された設置場所のデータを出力する。データ出力部68は、設置された便器及び設置物の座標と三次元形状データなどに基づいて、設置場所の平面図、立面図などの図面、2次元CADデータ、3次元CADデータ、BIM(Building Information Modeling)データ、部品表などを生成して出力する。これにより、便器及び設置物を自動的に配置したトイレ室のデータを設計に活用することができるので、トイレ室の設計の効率を向上させることができる。
【0086】
つづいて、本実施例の技術を本実施の形態の設計支援システム100に適用する例について説明する。
【0087】
設計支援装置50により自動生成された配置案を設計支援システム100のモデリング部161に入力し、設計対象の三次元モデルを生成してもよい。これにより、様々な配慮がなされた配置案を叩き台として設計を進めることができるので、設計の効率を向上させることができる。
【0088】
設計支援システム100において、モデル変更部163により設計対象の三次元モデルが変更されたときに、モデリング部161は、本実施例の技術を用いて三次元モデルを自動調整してもよい。例えば、モデリング部161は、変更された三次元モデルにおける最適な配置を進化的アルゴリズムにより自動的に生成してもよい。これにより、設計対象の三次元モデルを最適な方向に調整しながら設計を進めることができる。
【0089】
設計支援システム100により設計された三次元モデルを設計支援装置50に入力し、進化的アルゴリズムにより三次元モデルを更新してもよい。これにより、設計支援システム100により設計された三次元モデルを更にブラッシュアップして、より配慮の行き届いた配置を実現することができる。
【0090】
設計支援システム100により設計された三次元モデルを設計支援装置50に入力し、使用者が実際にトイレ室を使用する際の動きをシミュレートしたり、可動な設置物が動かされたときの状態をシミュレートしたり、想定される使用者又は付随物と便器又は設置物との干渉の有無又は程度をシミュレートしたりしてもよい。これにより、設計支援システム100により設計された三次元モデルの良否を確認することができるので、必要に応じて三次元モデルを更に調整することができる。
【0091】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0092】
実施の形態の設計支援システムは、特定多数又は不特定の使用者が想定される施設などのトイレ室だけでなく、一般的な住宅のトイレや、公園や路上などに設置された公衆トイレなどを設計する場合にも適用可能である。また、実施の形態の設計支援システムは、任意の設計対象の設計を支援するために利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 多機能トイレ、11 扉、12 大便器、14 洗面器、15 紙巻器、16 ベビーキープ、17 ユニバーサルシート、18 オストメイト対応トイレ、19 回転円、30 トイレ室、50 設計支援装置、61 設置場所情報取得部、62 設置物情報取得部、63 配置候補生成部、64 配置候補提示部、65 画像生成部、66 画像表示部、67 配置編集部、68 データ出力部、81 設置物情報データベース、82 配置規則保持部、83 三次元形状データ保持部、100 設計支援システム、101 設計支援装置、102 指示入力装置、103 端末装置、104 三次元モデル、105 テーブル、161 モデリング部、162 指示入力受付部、163 モデル変更部、164 端末位置取得部、165 撮像画像取得部、166 画像生成部、167 画像表示部、181 要素情報データベース、182 規則保持部、183 三次元形状データ保持部、252 表示装置、254 撮像装置、256 位置センサ、261 位置情報送信部、262 撮像画像送信部、263 表示画像取得部、264 表示制御部。