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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20250410BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20250410BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021006509
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2021113315
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020007006
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】平田 稔朗
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】炭井 佑一
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 克典
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-031553(JP,A)
【文献】特開2009-079203(JP,A)
【文献】特開2012-140605(JP,A)
【文献】特開2013-224431(JP,A)
【文献】特開2011-153169(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記(メタ)アクリル共重合体は、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を60重量%以上含み、
前記(メタ)アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基としてカルボキシル基を有するモノマーに由来する構成単位と、ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを含み、前記カルボキシル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が5重量%以下であり、
前記(メタ)アクリル共重合体は、窒素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含まず、
前記粘着剤層のゲル分率が70%以上、99%以下である
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
アルコキシ基含有(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【化1】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素原子数が2以上4以下のアルキレン基を、Rは炭素原子数が1以上10以下のアルキル基又はアリール基を、nは1以上10以下の整数を表す。
【請求項3】
アルコキシ基含有(メタ)アクリレートは、2-メトキシエチルアクリレートであることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートは、メチルメタクリレートであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
(メタ)アクリル共重合体は、Fedors法によって計算されたSP値が10.2以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
電子機器の部品を固定するために用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器において部品を固定する際、粘着テープが広く用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために粘着テープが用いられている。このような電子機器部品の固定に用いられる粘着テープは高い粘着性に加え、使用される部位の環境に応じて、耐熱性や熱伝導性、耐衝撃性といった機能が要求されている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-052050号公報
【文献】特開2015-021067号公報
【文献】特開2015-120876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の小型化や軽量化、低コスト化によって携帯電話やスマートフォン、ウェアラブル端末といった常に身に着けたり、手元に置いたりするタイプの電子機器が広く普及している。これらの電子機器では、近年小型化や大画面化が進んでいる。それにともない表示画面の黄変が顕著となるという問題があった。
本発明は、上記現状に鑑み、耐黄変性に優れる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する粘着テープであって、前記(メタ)アクリル共重合体は、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を60重量%以上含むことを粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、粘着テープを用いて電子機器を製造したときに黄変が生じる原因を検討した。その結果、カバーパネルとタッチセンサーパネルを貼り合わせる粘着テープが、皮脂によって膨潤し、幅や厚みが増加することにより、内部の液晶が圧迫され歪むことで黄変が発生していることを見出した。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する粘着テープにおいて、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を一定以上含む(メタ)アクリル共重合体を用いることにより、黄変を防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の粘着テープは、(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する。
上記(メタ)アクリル共重合体は、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む。アルコキシ基含有(メタ)アクリレートは、SP値が比較的高い一方で、ガラス転移温度が比較的低いという性質を有する。アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層は、皮脂によって膨潤しにくいことに加え、たとえ膨潤しても液晶に負荷を与えない応力緩和性を示し、優れた耐黄変性を発揮することができる。また、上記粘着剤層は、凹凸に対する優れた追従性を発揮することができる。
【0008】
上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートは、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素原子数が2以上4以下のアルキレン基を、Rは炭素原子数が1以上10以下のアルキル基又はアリール基を、nは1以上10以下の整数を表す。
【0011】
上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートは、具体的には例えば、2-メトキシエチルアクリレート(MOEA)、エチルカルビトールアクリレート(CBA)、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTG)等が挙げられる。なかでも、特に高い耐黄変性が得られることから、2-メトキシエチルアクリレート(MOEA)が好適である。
【0012】
上記(メタ)アクリル共重合体中の上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の下限は60重量%である。上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を60重量%以上含む(メタ)アクリル共重合体を用いることにより、本発明の粘着テープは高い耐黄変性を発揮することができる。上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は70重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましい。上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、97重量%であることが好ましく、85重量%であることがより好ましい。
【0013】
上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。
上記アルコキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤層は、皮脂によって膨潤しにくいことに加え、たとえ膨潤しても液晶に負荷を与えない応力緩和性を示し、優れた耐黄変性を発揮することができる。しかしながら、このように応力緩和性に優れる粘着剤層は柔軟性が高いことから、カバーパネルとタッチセンサーパネルを貼り合わせたときに残存する気体により、発泡し易くなる恐れがある。ガラス転移温度が60℃以上の(メタ)アクリレートを併用することにより、常温(23℃)及び高温(140℃)における粘着剤層の貯蔵弾性率を比較的高くすることができ、発泡を抑制することができる。
なお、ここで「カルボキシル基を含まない」としたのは、カルボキシル基を含む(メタ)アクリレートに由来する構成単位を多く含む(メタ)アクリル共重合体を用いると、得られる粘着剤層が皮脂に膨潤し易くなり、耐黄変性が低下する恐れがあるためである。
【0014】
上記ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートは、具体的には例えば、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)等が挙げられる。なかでも、特に耐発泡性に優れた粘着剤層が得られることから、メチルメタクリレート(MMA)が好適である。
なお、上記ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートは、窒素を含有しないことが好ましい。窒素を含有しないことで、皮脂による膨潤や耐黄変性の低下を抑制することができる。
【0015】
上記(メタ)アクリル共重合体中の上記ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は15重量%である。上記ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートに由来する構成単位をこの範囲内で含む粘着剤層は、優れた耐黄変性と耐発泡性を発揮することができる。上記ガラス転移温度が60℃以上、かつ、カルボキシル基を含まない(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0016】
上記(メタ)アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有すると、架橋剤を併用したときに(メタ)アクリル共重合体鎖間が架橋される。その際、架橋度を調節することでゲル分率を調節することができる。
【0017】
上記架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調整が容易であることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましい。
なお、アミノ基、アミド基、ニトリル基等も架橋性官能基であるが、これらの架橋性官能基を有するモノマーを用いると、粘着剤層が皮脂に膨潤し易くなり、耐黄変性が低下する恐れがあることから、本発明では用いないことが好ましい。
【0018】
上記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリル共重合体中における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が0.01重量%、好ましい上限が5重量%である。
特に上記架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、上記カルボキシル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は5重量%以下であることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が5重量%を超えると、粘着剤層が皮脂に膨潤し易くなり、耐黄変性が低下することがある。
【0020】
上記(メタ)アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート等の他のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有してもよい。また、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含有してもよい。
ただし、鎖長の長い(具体的には炭素数6以上)の(メタ)アクリレートを用いると、得られる(メタ)アクリル共重合体のSPが低くなる傾向があり、粘着剤層が皮脂に膨潤し易くなる恐れがある。従って、後述するように(メタ)アクリル共重合体のSP値が10.2以上となる範囲で、他のアルキル(メタ)アクリレートの種類や配合量を選択することが好ましい。
【0021】
上記(メタ)アクリル共重合体は、窒素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含まないことが好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体が窒素含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むと、粘着剤層が皮脂に膨潤し易くなり、耐黄変性が低下する恐れがある。
【0022】
上記(メタ)アクリル共重合体は、Fedors法によって計算されたSP値が10.2以上であることが好ましい。上記SP値が10.2以上であることにより、皮脂に対して膨潤しにくくなり、優れた耐黄変性を発揮することができる。上記SP値は、10.25以上であることがより好ましく、10.3以上であることが更に好ましい。上記SP値の上限は特に限定されないが、合成が困難なことから、10.6程度が上限である。
なお、SP値は溶解性パラメータ(Solubility Parameter)と呼ばれ、溶解のしやすさを表すことのできる指標である。本明細書においてSP値の算出にはFedors法(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14(2),147-154(1974))が用いられる。また、(メタ)アクリル共重合体のSP値は、共重合体中のそれぞれの繰り返し単位単独でのSP値をもとに、その配合比(モル比)を用いて算出できる。
上記(メタ)アクリル共重合体のSP値は、(メタ)アクリル共重合体の重合に用いるモノマーの選択及び当該モノマーの配合比によって調整することができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量が25万以上であることが好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量が25万以上であることによって、得られる粘着テープをより粘着力に優れるものとすることができ、かつ、よりいっそう皮脂への耐性に優れ、耐黄変性に優れる粘着テープを得ることができる。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は30万、更に好ましい下限は40万、特に好ましい下限は50万である。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は200万、より好ましい上限は180万である。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
【0024】
上記(メタ)アクリル共重合体を調製する方法は特に限定されず、上記構成単位の由来となる(メタ)アクリルモノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させる方法等が挙げられる。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。中でも、合成が簡便であることから溶液重合が好ましい。
【0025】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記粘着剤層は、架橋剤を含有することが好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合には、架橋剤によって架橋構造を構築することができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。
なお、本発明の粘着テープを光学用透明粘着テープとして用いる場合には、耐候性の観点から、芳香族環を含まない架橋剤を用いることが好ましい。
【0028】
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0029】
上記粘着剤層は、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤を含有することにより、被着体に対する密着性を向上させることができるため、粘着テープの皮脂やアルカリ性洗浄剤に対する耐性を更に高めることができる。
【0030】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0031】
上記シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部以上であることによって皮脂及びアルカリ性洗浄剤に対する耐性を更に高めることができる。含有量が5重量部以下であることによって再剥離の際の糊残りを抑えることが出来る。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0032】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0033】
上記粘着剤層は、ゲル分率が70%以上、99%以下であることが好ましい。上記ゲル分率がこの範囲内であることにより、皮脂に対する耐性を更に高め、より優れた耐黄変性を発揮することができる。上記ゲル分率のより好ましい下限は72%、更に好ましい下限は75%である。上記ゲル分率のより好ましい上限は90%、更に好ましい上限は80%である。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式のように酢酸エチルに浸漬する前の粘着剤層の重量に対する、酢酸エチルに浸漬し乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0034】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は500μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であることによって、得られる粘着テープをより粘着性に優れたものとすることができる。上記粘着剤層の厚みが500μm以下であることによって、得られる粘着テープをより加工性に優れるものとすることができる。
【0035】
上記粘着剤層は、特に限定されないが、例えば、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層が挙げられる。即ち、上記粘着剤層として、例えば、溶剤型粘着剤層、ホットメルト型粘着剤層、水分散型粘着剤層、活性エネルギー線硬化型粘着剤層が挙げられる。ここで、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことを意味する。また、水分散型粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことを意味する。
上記粘着剤層は、粘着特性を好適に実現する観点から、非活性エネルギー線硬化型粘着剤層であることが好ましい。なかでも、溶剤型粘着剤層であることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0037】
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム等が挙げられる。また、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、ポリウレタン発泡体シート等が挙げられる。これらの基材のなかでも、PETフィルムが好ましい。また、耐衝撃性の観点からはポリオレフィン発泡体シートが好ましい。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0038】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は以下のような方法が挙げられる。
まず、(メタ)アクリル共重合体、必要に応じて架橋剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製する。得られたアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
【0039】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得てもよい。
【0040】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、耐黄変性に優れているため、人の手が頻繁に触れる電子機器の部品を固定するために、特に好適に用いることができる。具体的には、液晶表示素子や有機EL素子等の表示デバイスに使用される、カバーパネル、タッチパネル、タッチセンサー等の表示デバイスを構成する部材同士の固定に好適に用いることができる。
【0041】
本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、正方形や長方形等であってもよいが、表示デバイスを構成する部材同士の固定に用いる場合には、額縁状が好ましい。本発明の粘着テープは、人の手が頻繁に触れる部位であっても高い粘着力を維持できるため、額縁状の粘着テープの幅が狭くても好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、耐黄変性に優れる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。更に、2-メトキシエチルアクリレート(MOEA)62.9重量部、メチルメタクリレート(MMA)14.5重量部、アクリル酸(Aac)0.3重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.9重量部及びエチルアクリレート(EA)19.4重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、(メタ)アクリル共重合体含有溶液を得た。
Fedors法によって計算された(メタ)アクリル共重合体のSP値は、10.27である。
また、得られた(メタ)アクリル共重合体について、カラムとしてはGPC LF-804(昭和電工社製)を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)により重量平均分子量を求めたところ、48万であった。
【0045】
(2)粘着テープの製造
得られた(メタ)アクリル共重合体含有溶液に、イソシアネート系架橋剤としてコロネートL-45(東ソー社製)を(メタ)アクリル共重合体に対して固形分比で0.72重量部となるように加えた。得られた溶液を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムに、乾燥後の粘着剤層の厚みが15μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。この粘着剤層を、基材となる厚み50μmのコロナ処理したPETフィルムに転着させ、40℃で48時間養生し、粘着テープを得た。
【0046】
(3)粘着剤層のゲル分率の測定
得られた粘着テープを20mm×40mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0047】
(実施例2~11、比較例1~3)
使用するモノマーの種類と配合量、及び架橋剤量を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
なお、表中、CBAはエチルカルビトールアクリレートを、PHEAはフェノキシアクリレートを表す。MAはメチルアクリレートを、nOAはn-オクチルアクリレート、DMAAはジメチルアクリルアミドを、IBOAはイソボルニルアクリレートを、CHMAはシクロヘキシルメタクリレートを、MTGはメトキシトリエチレングリコールアクリレートを表す。
【0048】
(評価)
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
【0049】
(1)耐黄変性試験
4辺に幅2mm、高さ15μmの黒色印刷層が設けられた、50mm×100mm、厚み100μmのPETフィルムを準備した。得られた粘着テープを50mm×100mmの長方形状に裁断し、一方の面を準備したPETフィルムに貼り合わせ、もう一方の面を89mm×156mmの液晶パネル(Innolux社製)に貼り合わせ、試験片を作成した。試験片の端部に皮脂液を10mL滴下し、室温で静置し、画面端部の黄変の有無を目視にて確認した。5日以上画面端部が黄色くならなかったものを「○」、5日未満で画面端部が黄色くなったものを「×」と評価した。
【0050】
(2)耐発泡性試験
得られた粘着テープを50mm×125mmの長方形状に裁断し、一方の面をPETフィルム(50mm×125mm、厚み50μm)に貼り合わせ、もう一方の面をアクリル板(50mm×125mm、厚み2mm)に貼り合わせ、試験片を作製した。試験片を40℃/0.3MPaの環境で30分静置し、試験片の発泡の有無を目視にて確認した。試験片の端部に発泡が認められなかったものを「◎」、直径0.3mm未満の発泡のみが認められたものを「○」、直径0.3mm以上の発泡が認められたものを「×」と評価した。
【0051】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、耐黄変性に優れる粘着テープを提供することができる。