(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】操船装置、及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 25/04 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
B63H25/04 D
(21)【出願番号】P 2021040258
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】原 直裕
(72)【発明者】
【氏名】福川 智哉
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-198185(JP,A)
【文献】特開2014-129047(JP,A)
【文献】米国特許第4129087(US,A)
【文献】国際公開第2019/203335(WO,A1)
【文献】特開2021-11158(JP,A)
【文献】特開2017-88111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0302774(US,A1)
【文献】百留忠洋,松本宙,中村昌彦,野田穣士朗,山内由章,黒岩良太,上田泰広,福川智哉,自律型洋上航走体(ASV)の運動,日本船舶海洋工学会講演会論文集,日本,日本船舶海洋工学会,2018年,第27号,pp.365-369,ISSN 2424-1628(online),1880-6538(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/04,
G05D 1/00,109/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの推進装置を搭載した船舶を予定航路に沿って移動させる操船装置であって、
前記船舶の現在の船首方位である実船首方位と、前記船舶の目標船首方位との方位偏差を取得し、前記方位偏差に基づいて、前記船舶を推進させる推力を示す推力指令を生成する制御部を備え、
前記制御部は、前記方位偏差が所定値以上である場合、前記船舶の速力が前記船舶の現在の速力である実速力から低減するように、前記推力指令を生成する、操船装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記方位偏差に基づいて、前記船舶を旋回させる旋回力を示す旋回指令を更に生成し、
前記制御部は、前記実速力に基づいて前記旋回力を規制する、請求項1に記載の操船装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記船舶の速力が前記実速力から低減するように、前記船舶の推力に関わるパラメータの目標値を前記方位偏差に基づいて補正し、補正後の前記目標値に基づいて前記推力指令を生成する、請求項1又は請求項2に記載の操船装置。
【請求項4】
前記目標値は、目標速力であり、
前記制御部は、
前記実速力から、前記実船首方位の速度成分である前進速力を取得し、
補正後の前記目標速力と、前記前進速力とに基づいて、前記船舶を前記実船首方位へ推進させる第1推力を取得し、
前記第1推力に基づいて前記推力指令を生成する、請求項3に記載の操船装置。
【請求項5】
前記船舶には複数の前記推進装置が搭載されており、
前記制御部は、
前記実速力から、前記実船首方位に直交する横方向の速度成分である横方向速力を更に取得し、
前記横方向速力を零にする第2推力を取得し、
前記第1推力及び前記第2推力に基づいて前記推力指令を生成する、請求項4に記載の操船装置。
【請求項6】
前記船舶の現在の角速度である実角速度に基づいて、前記第1推力を発生させる方位及び前記第2推力を発生させる方位を補正して、前記推力指令を生成する、請求項5に記載の操船装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記方位偏差に基づいて前記第2推力を補正する、請求項5又は請求項6に記載の操船装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記方位偏差に基づいて、前記第2推力を零にする、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の操船装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記実船首方位を予定船首方位に置換し、
前記予定船首方位に基づいて、前記方位偏差、前記前進速力、及び前記横方向速力を取得し、
前記推力指令によって示される推力の方位を前記予定船首方位に置換する、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の操船装置。
【請求項10】
少なくとも1つの推進装置と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の操船装置と
を備え、
前記少なくとも1つの推進装置は、少なくとも前記推力指令に基づいて動作する、船舶。
【請求項11】
複数の推進装置と、
請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の操船装置と、
少なくとも前記推力指令に基づいて前記複数の推進装置を制御する推力配分装置と
を備える、船舶。
【請求項12】
表示器を更に備え、
前記操船装置の前記制御部は、前記方位偏差に基づいて、前記船舶を前記実船首方位へ推進させている推力と、前記船舶を旋回させる旋回力との比率を示す旋回比率を取得し、
前記表示器は、前記旋回比率を示す画面を表示する、請求項10又は請求項11に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操船装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
オートパイロットシステムが搭載された船舶が知られている(例えば、特許文献1参照)。オートパイロットシステムは、船舶を予定航路に追従させるためのシステムである。予定航路は、予め設定された航路である。
【0003】
特許文献1の船舶用自動操舵装置は、演算器を備える。船舶用自動操舵装置は、ジャイロコンパスからの方位角信号と針路設定器からの方位設定信号との偏差を演算器に供給し、その演算器の出力により操舵装置を駆動する。船舶用自動操舵装置は、舵を操作することにより、船舶を予定航路に追従させる。このように、特許文献1の船舶用自動操舵装置は、舵を操作して、船舶の横方向への移動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、船舶用自動操舵装置は、船舶の前後方向の推力を制御しない。そのため、船舶の横方向への移動の制御と、前後方向への移動の制御とが独立して行われる。その結果、船舶の針路を変針させる際の旋回半径が大きくなる。したがって、例えば、針路が大きく変化する変針位置が予定航路に含まれている場合、その変針位置において船舶が予定航路からオーバーシュートする可能性がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、船舶の針路を変針させる際の旋回半径を小さくすることができる操船装置、及び船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、操船装置は、少なくとも1つの推進装置を搭載した船舶を予定航路に沿って移動させる。当該操船装置は、制御部を備える。前記制御部は、前記船舶の現在の船首方位である実船首方位と、前記船舶の目標船首方位との方位偏差を取得し、前記方位偏差に基づいて、前記船舶を推進させる推力を示す推力指令を生成する。前記制御部は、前記方位偏差が所定値以上である場合、前記船舶の速力が前記船舶の現在の速力である実速力から低減するように、前記推力指令を生成する。
【0008】
本発明において、船舶は、上記の操船装置と、少なくとも1つの推進装置とを備える。前記少なくとも1つの推進装置は、少なくとも前記推力指令に基づいて動作する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る操船装置及び船舶によれば、船舶の針路を変針させる際の旋回半径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態1に係る船舶の構成を示す図である。
【
図2】前後進プロペラ、舵、及びサイドスラスターの配置を示す図である。
【
図3】(a)は、旋回比率と前進推力の大きさとの関係を示す図である。(b)は、旋回比率と旋回力の大きさとの関係を示す図である。(c)は、旋回比率に応じた船舶の動作を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る船舶の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る船舶の構成の一部を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る経路追従制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】方位・速力制御部の構成を示すブロック図である。
【
図8】(a)は、旋回比率と目標速力の増幅率との関係を規定するグラフを示す図である。(b)は、旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(c)は、旋回比率に応じた船舶の動作を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る船舶の動作の一例を示す図である。
【
図11】旋回比率に応じた船舶の動作の他例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る経路追従制御装置の方位・速力制御部の構成を示すブロック図である。
【
図13】旋回比率と横推力の増幅率との関係を規定するグラフを示す図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係る船舶の動作の一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態3に係る船舶の構成の一部を示すブロック図である。
【
図16】実船首方位とオフセット船首方位との関係を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態3に係る船舶の動作の一例を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態3に係る経路追従制御装置の方位・速力制御部の構成を示すブロック図である。
【
図19】本発明の実施形態4に係る船舶の構成の一部を示すブロック図である。
【
図20】本発明の実施形態5に係る船舶の構成の一部を示すブロック図である。
【
図21】本発明の実施形態5に係る経路追従制御装置に含まれる方位制御部の構成を示すブロック図である。
【
図22】(a)は、電子スロットルレバーの操作量が0%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(b)は、電子スロットルレバーの操作量が0%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(c)は、電子スロットルレバーの操作量を模式的に示す図である。
【
図23】(a)は、電子スロットルレバーの操作量が50%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(b)は、電子スロットルレバーの操作量が50%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(c)は、電子スロットルレバーの操作量を模式的に示す図である。
【
図24】(a)は、電子スロットルレバーの操作量が100%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(b)は、電子スロットルレバーの操作量が100%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフを示す図である。(c)は、電子スロットルレバーの操作量を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の操船装置及び船舶に係る実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。
【0012】
[実施形態1]
以下、
図1~
図11を参照して本発明の実施形態1を説明する。まず、
図1を参照して本実施形態の船舶1を説明する。
図1は、本実施形態の船舶1の構成を示す図である。
【0013】
船舶1は、複数の推進装置(第1推進装置21a、第2推進装置21b、及び第3推進装置21c)を備える。具体的には、船舶1は、1機のサイドスラスター7を備えた2軸推進方式のシャフト船である。したがって、船舶1は、船首側への移動と、船尾側への移動とに加えて、斜航、及び、その場旋回が可能である。なお、船首側への移動、及び船尾側への移動は、旋回を含む。斜航は、船首方位を維持したまま任意の方位へ船舶1が移動することを示す。
【0014】
図1に示すように、船舶1は、船体1aと、電子スロットルレバー8と、電子ステアリング9と、ジョイスティックレバー10と、経路設定装置11と、GPS(Global Positioning System)装置12と、電子コンパス13と、第1推進装置21aと、第2推進装置21bと、第3推進装置21cと、制御装置22とを備える。電子スロットルレバー8、電子ステアリング9、ジョイスティックレバー10、経路設定装置11、GPS装置12、電子コンパス13、第1推進装置21a~第3推進装置21c、及び制御装置22は、船体1aに搭載される。
【0015】
経路設定装置11は、操船者によって操作されて、船舶1の予定航路を設定する。本実施形態において、経路設定装置11は、タッチディスプレイ11aを有する。経路設定装置11は、タッチディスプレイ11aに海図を表示する。操船者は、海図を表示中のタッチディスプレイ11aに対してタッチ操作を行うことにより、予定航路の経由点を入力することができる。経路設定装置11は、操船者がタッチディスプレイ11aにタッチした位置に基づいて、経路情報を生成する。経路情報は、船舶1の予定航路として、複数の経由点の配列を示す。経路設定装置11は経路情報を制御装置22に出力する。
【0016】
電子スロットルレバー8、電子ステアリング9、及びジョイスティックレバー10は、操船者が船舶1を操船するための操作部材である。操船者は、電子スロットルレバー8、電子ステアリング9、及びジョイスティックレバー10を操作して、船舶1を操船することができる。
【0017】
制御装置22は、オートモードと、マニュアルモードとを有する。制御装置22は、オートモードが有効状態であるとき、船舶1が予定航路に追従するように第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。制御装置22は、マニュアルモードが有効状態であるとき、操船者による電子スロットルレバー8、電子ステアリング9、及びジョイスティックレバー10の操作に応じて第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。
【0018】
なお、本実施形態では、経路設定装置11が、オートモードを開始させる指示の入力と、オートモードを停止させる指示の入力とを受け付ける。したがって、操船者は、経路設定装置11のタッチディスプレイ11aに対してタッチ操作をすることにより、オートモードの開始と停止とを指示することができる。オートモードを開始させる指示が入力されると、オートモードが有効状態となる。オートモードを停止させる指示が入力されると、オートモードは有効状態ではなくなる。オートモードが有効状態ではないとき、マニュアルモードが有効状態となる。
【0019】
続いて、
図1及び
図2を参照して本実施形態の船舶1を更に説明する。
図2は、前後進プロペラ4a、4b、舵5a、5b、及びサイドスラスター7の配置を示す図である。まず、
図1及び
図2を参照して第1推進装置21a及び第2推進装置21bを説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、第1推進装置21aは、エンジン2aと、切換クラッチ3aと、前後進プロペラ4aと、舵5aと、ECU(Electronic Control Unit)6aとを備える。同様に、第2推進装置21bは、エンジン2bと、切換クラッチ3bと、前後進プロペラ4bと、舵5bと、ECU6bとを備える。
【0021】
第1推進装置21a及び第2推進装置21bは、船舶1を推進させる推力を発生させる。具体的には、第1推進装置21aは、前後進プロペラ4aを回転させることにより、推力を発生させる。前後進プロペラ4aは、船体1aの右舷に配置される。第2推進装置21bは、前後進プロペラ4bを回転させることにより、推力を発生させる。前後進プロペラ4bは、船体1aの左舷に配置される。以下、第1推進装置21aの構成を説明する。
【0022】
エンジン2aは、前後進プロペラ4aを回転させるための動力を発生する。切換クラッチ3aの入力側には、エンジン2aの出力軸が接続される。切換クラッチ3aの出力側には、前後進プロペラ4aのプロペラシャフトが接続される。切換クラッチ3aの入力側に、エンジン2aの出力軸から動力が伝達されると、切換クラッチ3aは、エンジン2aからの動力を前後進プロペラ4aのプロペラシャフトに伝達する。この結果、前後進プロペラ4aが回転する。
【0023】
切換クラッチ3aは、制御装置22によって制御されて、前後進プロペラ4aのプロペラシャフトに伝達する動力を正回転方向と逆回転方向との間で切り換える。したがって、前後進プロペラ4aによって発生する推力の前後方向の向きは、制御装置22によって制御される。なお、前後方向は、船尾から船首へ向かう方向と、船首から船尾へ向かう方向とを含む。
【0024】
前後進プロペラ4aのプロペラシャフトは、船体1aの船底を貫通する。前後進プロペラ4aの複数枚のブレードは船外に配置される。複数枚のブレードは、プロペラシャフトを回転軸として回転する。前後進プロペラ4aが回転して、複数枚のブレードが周囲の水をかくことにより、推力が発生する。
【0025】
ECU6aには、エンジン2aを制御するための種々のコンピュータプログラムや、種々のデータが格納される。例えば、ECU6aは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を有する。ECU6aは、LSI(Large Scale Integration)を有してもよい。
【0026】
ECU6aは、制御装置22からの指令に基づいて、エンジン2aの回転速度を制御する。したがって、前後進プロペラ4aによって発生する推力の大きさは、制御装置22によって制御される。
【0027】
舵5aは、前後進プロペラ4aの後方に配置される。舵5aは、船体1aに設けられている回転軸を中心として左右方向に所定の角度範囲で回転可能である。舵5aは、前後進プロペラ4aの回転により発生した水流の方向を制御する。
【0028】
舵5aの舵角は、制御装置22によって制御される。したがって、前後進プロペラ4aによって発生する推力の左右方向の向きは、制御装置22によって制御される。例えば、船舶1は、舵5aを回転させるための油圧回路を備える。この場合、制御装置22は、油圧回路を介して、舵5aの舵角を制御する。
【0029】
以上、第1推進装置21aの構成を説明した。第2推進装置21bの構成は、第1推進装置21aと略同様であるため、その説明は割愛する。
【0030】
続いて、
図1及び
図2を参照して第3推進装置21cを説明する。
図1及び
図2に示すように、第3推進装置21cは、サイドスラスター7と、コントローラ7cとを備える。
【0031】
第3推進装置21cは、横方向(左右方向)の推力を発生させる。具体的には、サイドスラスター7が、横方向の推力を発生させる。サイドスラスター7は、船体1aの船首側であって左右方向中央に設けられる。サイドスラスター7は、プロペラ7aと、モータ7bとを有する。
【0032】
コントローラ7cは、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する。モータ7bが回転することにより、プロペラ7aが回転して、横方向の推力が発生する。
【0033】
コントローラ7cは、制御装置22からの指令に基づいて、モータ7bを制御する。したがって、プロペラ7aによって発生する推力の大きさ及び方位(推力方向)は、制御装置22によって制御される。
【0034】
続いて、
図1を参照して電子スロットルレバー8、電子ステアリング9、ジョイスティックレバー10、GPS装置12、電子コンパス13、及び制御装置22を説明する。
【0035】
電子スロットルレバー8は、右スロットルレバー及び左スロットルレバーを有する。電子スロットルレバー8は、操船者により右スロットルレバーが操作されると、前後進プロペラ4aの回転速度及び回転方向を指示する信号を生成する。電子スロットルレバー8は、操船者により左スロットルレバーが操作されると、前後進プロペラ4bの回転速度及び回転方向を指示する信号を生成する。
【0036】
具体的には、操船者が右スロットルレバーを操作すると、電子スロットルレバー8は、操船者による右スロットルレバーの操作方向及び操作量を示す信号(又は、操作位置を示す信号)を制御装置22に出力する。マニュアルモードが有効状態であるとき、制御装置22は、電子スロットルレバー8から出力された信号に基づいて、エンジン2aの回転速度、及び切換クラッチ3aの切換状態を制御する。同様に、操船者が左スロットルレバーを操作すると、電子スロットルレバー8は、操船者による左スロットルレバーの操作方向及び操作量を示す信号(又は、操作位置を示す信号)を制御装置22に出力する。マニュアルモードが有効状態であるとき、制御装置22は、電子スロットルレバー8から出力された信号に基づいて、エンジン2bの回転速度、及び切換クラッチ3bの切換状態を制御する。
【0037】
電子ステアリング9は、舵5a、5bの回転角度(舵角)を指示する信号を生成する。具体的には、操船者が電子ステアリング9を操作すると、電子ステアリング9は、操船者による電子ステアリング9の操作方向及び操作量を示す信号(又は、操作位置を示す信号)を制御装置22に出力する。マニュアルモードが有効状態であるとき、制御装置22は、電子ステアリング9から出力された信号に基づいて、舵5a、5bの舵角を制御する。
【0038】
ジョイスティックレバー10は、船舶1の船首方位を維持した状態で船舶1を任意の方向に移動させる信号を生成する。具体的には、ジョイスティックレバー10のレバーは任意の向きに傾斜可能である。操船者がジョイスティックレバー10のレバーを傾斜させると、ジョイスティックレバー10のレバーが傾斜した方向に船舶1が移動する。
【0039】
詳しくは、ジョイスティックレバー10は、レバーの傾斜方向(操船者による操作方向)及び傾斜量(操船者による操作量)を示す信号を制御装置22に出力する。マニュアルモードが有効状態であるとき、制御装置22は、ジョイスティックレバー10から出力された信号に基づいて、第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。具体的には、制御装置22は、レバーの傾斜量に応じた推力でレバーの傾斜方向に船舶1が移動するように、エンジン2a、2bの回転速度、切換クラッチ3a、3bの切換状態、舵5a、5bの舵角、ならびに、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する。
【0040】
また、ジョイスティックレバー10は、船舶1をその場旋回させる信号を生成する。具体的には、ジョイスティックレバー10のレバーは、レバー軸を中心に回転自在である。操船者がジョイスティックレバー10のレバーを回転させると、ジョイスティックレバー10のレバーが回転した方向に船舶1がその場旋回する。
【0041】
詳しくは、ジョイスティックレバー10は、レバーの回転方向(操船者による操作方向)及び回転量(操船者による操作量)を示す信号を制御装置22に出力する。マニュアルモードが有効状態であるとき、制御装置22は、ジョイスティックレバー10から出力された信号に基づいて、第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。具体的には、制御装置22は、レバーの回転量に応じた推力でレバーの回転方向に船舶1がその場旋回するように、エンジン2a、2bの回転速度、切換クラッチ3a、3bの切換状態、舵5a、5bの舵角、ならびに、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する。
【0042】
GPS装置12は、複数のGPS衛星からの信号を受信することで船舶1の位置座標を計測(算出)し、船舶1の現在位置を緯度及び経度で示す信号を制御装置22に出力する。つまり、GPS装置12は、船舶1の位置座標の絶対値を算出する。
【0043】
電子コンパス13は、方位センサの一例である。電子コンパス13は、地磁気から船舶1の船首方位を計測(算出)する。つまり、電子コンパス13は、船舶1の船首の絶対方位を算出する。電子コンパス13は、船首方位を示す信号を制御装置22に出力する。
【0044】
制御装置22は、オートモードが有効状態であるとき、GPS装置12から取得する位置情報と、電子コンパス13から取得する方位情報とに基づいて、船舶1が予定航路を追従するように第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。具体的には、制御装置22は、前進推力の大きさ、旋回力の大きさ、及び旋回方向を制御する。ここで、前進推力は、船舶1を船首方位に推進させる力を示す。旋回力は、船舶1を旋回させる力のモーメントを示す。
【0045】
なお、GPS装置12から取得する位置情報は、船舶1の現在位置を示す。具体的には、位置情報は、船舶1の現在位置を緯度及び経度で示す。電子コンパス13から取得する方位情報は、船舶1の現在の船首方位を示す。以下、船舶1の現在の船首方位を、「実船首方位」と記載する場合がある。
【0046】
制御装置22は、オートモードが有効状態であるとき、経路情報(複数の経由点の配列を示す情報)と位置情報とから目標船首方位を取得し、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて前進推力及び旋回力を制御する。更に、制御装置22は、方位偏差が所定値以上である場合、船舶1の速力が現在の速力から低下するように、前進推力を制御する。したがって、予定航路の変針位置において、方位偏差が所定値以上になると、船舶1の速力が減速する。
【0047】
本実施形態によれば、船舶1の針路を変針させる際、方位偏差が所定値以上である場合に、船舶1の速力が現在の速力から低下するように、制御装置22が前進推力を制御するため、船舶1の針路を変針させる際の旋回半径を小さくすることができる。
【0048】
なお、変針は、予定航路の変針位置における変針に限定されず、予定航路から外れた位置を航行している船舶1を予定航路に戻す際の変針も含む。例えば風や潮流のような自然現象によって船舶1の位置が予定航路から外れることがある。このような場合、制御装置22は、船舶1の針路を変針させて、船舶1を予定航路に戻す。本実施形態によれば、船舶1を予定航路に戻すために船舶1の針路を変針させる際にも、旋回半径を小さくすることができる。
【0049】
続いて、
図3(a)~
図3(c)を参照して制御装置22を更に説明する。本実施形態において、制御装置22は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差を旋回比率に変換し、旋回比率に基づいて前進推力の大きさ及び旋回力の大きさを制御する。旋回比率は、前進推力の大きさと旋回力の大きさとの割合を示す。
【0050】
図3(a)は、旋回比率と前進推力の大きさとの関係を示す図である。
図3(b)は、旋回比率と旋回力の大きさとの関係を示す図である。
図3(c)は、旋回比率に応じた船舶1の動作を示す図である。
図3(a)~
図3(c)において、横軸は旋回比率を示す。
図3(a)において、縦軸は前進推力の大きさを示す。
図3(b)において、縦軸は旋回力の大きさを示す。
【0051】
図3(a)に示すように、制御装置22は、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように、前進推力を制御する。また、
図3(b)に示すように、制御装置22は、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように、旋回力を制御する。その結果、
図3(c)に示すように、旋回比率が大きくなるほど、旋回半径が小さくなる。また、旋回比率が小さくなるほど、旋回半径が大きくなる。目標船首方位と実船首方位との方位偏差が零のときには、旋回比率は0%となる。その結果、旋回力が零となるため、船舶1は前進推力のみによって動作する。したがって、船舶1は船首方位に移動する。
【0052】
制御装置22は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差が所定値以上である場合、方位偏差が大きいほど、旋回比率が大きくなるように、方位偏差を旋回比率に変換する。したがって、方位偏差が所定値以上である場合、方位偏差が大きいほど、前進推力が小さくなり、旋回力が大きくなって、旋回半径が小さくなる。その結果、船舶1の針路を変針させる際に、船舶1がオーバーシュートし難くなる。また、本実施形態によれば、制御装置22は、旋回比率を用いて前進推力の大きさと旋回力の大きさとを制御するため、前進推力の大きさと旋回力の大きさとを制御するための演算が容易になる。
【0053】
なお、本実施形態において、船舶1は、その場旋回が可能である。したがって、旋回比率を100%にして、船舶1をその場旋回させることができる。すなわち、旋回比率が100%になると、前進推力の大きさが零となり、船舶1の速力が零となる。その結果、船舶1は旋回力のみによって動作して、その場で旋回する。本実施形態によれば、船舶1の針路を変針させる際に、前進する動作状態からその場旋回する動作状態までの間で船舶1の動作を制御することができるため、船舶1の機動性をより高めることができる。
【0054】
続いて、
図4~
図7を参照して制御装置22の構成を更に説明する。
図4は、本実施形態の船舶1の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、制御装置22は、経路追従制御装置31と、操船制御装置32と、推力配分装置33とを有する。本実施形態において、経路追従制御装置31は、操船装置の一例である。
【0055】
操船制御装置32は、マニュアルモードが有効状態であるとき、電子スロットルレバー8の右スロットルレバーが操船者により操作されると、電子スロットルレバー8から出力された信号に基づいて、エンジン2aの回転速度、及び切換クラッチ3aの切換状態を指令する信号を推力配分装置33に出力する。推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、エンジン2a及び切換クラッチ3aを制御する信号を、ECU6a及び切換クラッチ3aに出力する。
【0056】
操船制御装置32は、マニュアルモードが有効状態であるとき、電子スロットルレバー8の左スロットルレバーが操船者により操作されると、電子スロットルレバー8から出力された信号に基づいて、エンジン2bの回転速度、及び切換クラッチ3bの切換状態を指令する信号を推力配分装置33に出力する。推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、エンジン2b及び切換クラッチ3bを制御する信号を、ECU6b及び切換クラッチ3bに出力する。
【0057】
操船制御装置32は、マニュアルモードが有効状態であるとき、電子ステアリング9から出力された信号に基づいて、舵5a、5bの舵角を指令する信号を推力配分装置33に出力する。推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、舵5a、5bを駆動するアクチュエータ(例えば、油圧回路)を制御する信号を、舵5a、5bを駆動するアクチュエータに出力する。
【0058】
マニュアルモードが有効状態であるとき、ジョイスティックレバー10からレバーの傾斜方向(操作方向)及び傾斜量(操作量)を示す信号が操船制御装置32に入力されると、操船制御装置32は、レバーの傾斜量に応じた推力でレバーの傾斜方向に船舶1を移動させるための推力及び旋回力を指令する信号を推力配分装置33に出力する。より具体的には、操船制御装置32は、前後方向の推力の大きさ及び向きを示す信号と、左右方向の推力の大きさ及び向きを示す信号と、旋回力の大きさ及び旋回方向(回転方向)を示す信号とを出力する。推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、エンジン2a、2bの回転速度、切換クラッチ3a、3bの切換状態、舵5a、5bの舵角、ならびに、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する信号を、ECU6a、6b、切換クラッチ3a、3b、舵5a、5bを駆動するアクチュエータ、及びコントローラ7cに出力する。
【0059】
マニュアルモードが有効状態であるとき、ジョイスティックレバー10からレバーの回転方向(操作方向)及び回転量(操作量)を示す信号が操船制御装置32に入力されると、操船制御装置32は、レバーの回転量に応じた推力でレバーの回転方向に船舶1をその場旋回させるための旋回力を指令する信号を推力配分装置33に出力する。より具体的には、操船制御装置32は、旋回力の大きさ及び旋回方向(回転方向)を示す信号を出力する。推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、エンジン2a、2bの回転速度、切換クラッチ3a、3bの切換状態、舵5a、5bの舵角、ならびに、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する信号を、ECU6a、6b、切換クラッチ3a、3b、舵5a、5bを駆動するアクチュエータ、及びコントローラ7cに出力する。
【0060】
オートモードが有効状態であるとき、経路追従制御装置31は、経路設定装置11から取得する経路情報、GPS装置12から取得する位置情報、及び電子コンパス13から取得する方位情報に基づいて、船舶1を予定航路に追従させるための推力指令及び旋回指令を操船制御装置32に出力する。本実施形態において、推力指令は、前進推力を示す。また、旋回指令は、船舶1を旋回させる力のモーメント(旋回力及び旋回方向)を示す。
【0061】
オートモードが有効状態であるとき、操船制御装置32は、経路追従制御装置31から出力された推力指令及び旋回指令に基づいて、前後方向の推力の大きさ及び向きを示す信号と、左右方向の推力の大きさ及び向きを示す信号と、旋回力の大きさ及び旋回方向(回転方向)を示す信号(船舶1を旋回させる力のモーメントを示す信号)とを、推力配分装置33に出力する。
【0062】
推力配分装置33は、第1推進装置21a~第3推進装置21cから発生する推力の合力が、推力指令で指令された前進推力、及び旋回指令で指令されたモーメントと一致するように、第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御する。具体的には、推力配分装置33は、操船制御装置32から出力された信号に基づいて、エンジン2a、2bの回転速度、切換クラッチ3a、3bの切換状態、舵5a、5bの舵角、ならびに、モータ7bの回転速度及び回転方向を制御する信号を、ECU6a、6b、切換クラッチ3a、3b、舵5a、5bを駆動するアクチュエータ、及びコントローラ7cに出力する。
【0063】
続いて、
図5を参照して経路設定装置11及び経路追従制御装置31を更に説明する。
図5は、本実施形態の船舶1の構成の一部を示すブロック図である。まず、経路設定装置11を説明する。
【0064】
図5に示すように、本実施形態において、経路設定装置11は、経路追従制御装置31に経路情報及び目標速力情報を出力する。目標速力情報は、船舶1の目標速力を示す。
【0065】
詳しくは、本実施形態では、経路設定装置11が、目標速力の指示の入力を受け付ける。したがって、操船者は、経路設定装置11のタッチディスプレイ11aに対してタッチ操作をすることにより、目標速力を指示することができる。なお、目標速力は一定値であってもよいし、目標速力として、経由点ごとに任意の値が設定されてもよい。
【0066】
続いて、経路追従制御装置31について説明する。
図5に示すように、経路追従制御装置31は、ナビゲーション制御部41と、経路追従制御部42とを含む。本実施形態において、経路追従制御部42は、制御部の一例である。
【0067】
ナビゲーション制御部41は、位置情報及び経路情報に基づいて、船舶1を経由点へ向けて移動させるための制御指示を経路追従制御部42に出力する。具体的には、既に説明したように、経路情報は、複数の経由点の配列を示す。ナビゲーション制御部41は、位置情報から船舶1の現在位置を取得し、複数の経由点の配列に対して船舶1の現在位置を追加し、船舶1が現在位置から向かう先の経由点を目標経由点として設定する。この結果、船舶1の現在位置から目標経由点までの直線状の経路線である目標経路線が設定される。
【0068】
ナビゲーション制御部41は、制御指示として、目標経由点の位置を示す情報を経路追従制御部42に出力する。また、ナビゲーション制御部41は、制御指示として、位置情報、方位情報、及び目標速力情報を経路追従制御部42に出力する。
【0069】
なお、ナビゲーション制御部41は、位置情報に基づいて、船舶1が目標経由点に到達したか否かを判定する。例えば、ナビゲーション制御部41は、船舶1の現在位置と目標経由点との距離が一定範囲内の距離になったとき、船舶1が目標経由点に到達したと判定してもよい。ナビゲーション制御部41は、船舶1が目標経由点に到達したと判定したことに応じて、船舶1が予定航路において次に向かう経由点を目標経由点に更新する。
【0070】
経路追従制御部42は、ナビゲーション制御部41から入力される情報に基づいて、船舶1を予定航路に追従させるための推力指令及び旋回指令を操船制御装置32に出力する。
【0071】
続いて、
図6を参照して経路追従制御部42を説明する。
図6は、本実施形態の経路追従制御装置31の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、経路追従制御部42は、航路制御部51と、方位・速力制御部52とを含む。
【0072】
航路制御部51は、位置情報から船舶1の現在位置を取得し、目標経由点の位置と船舶1の現在位置とに基づいて、船舶1の目標船首方位を設定する。目標船首方位は、船舶1の現在位置から目標経由点へ向かう方向を示す。航路制御部51は、目標船首方位を示す目標方位情報を方位・速力制御部52に出力する。
【0073】
本実施形態では、ナビゲーション制御部41は、経路情報に基づいて、目標経由点の1つ手前の経由点の位置を示す情報を航路制御部51に更に出力する。航路制御部51は、目標経由点の1つ手前の経由点から目標経由点へ向かう直線状の経路線である予定経路線を取得する。そして、予定経路線と船舶1の現在位置との間の距離を示す航路偏差に応じて、目標船首方位を補正する。
【0074】
なお、航路制御部51は、船舶1の重心を中心とする円と予定経路線とが交わる交点位置を取得し、目標船首方位として、船舶1の現在位置から交点位置へ向かう方向を設定してもよい。ここで、船舶1の重心を中心とする円の半径は、予め規定されている。
【0075】
方位・速力制御部52は、目標速力情報、方位情報、位置情報、及び目標方位情報に基づいて、船舶1を予定航路に追従させるための推力指令及び旋回指令を生成する。具体的には、方位・速力制御部52は、方位情報から実船首方位を取得し、目標方位情報から目標船首方位を取得し、実船首方位と目標船首方位との方位偏差を取得する。そして、方位偏差に基づいて、推力指令及び旋回指令を生成する。
【0076】
より詳しくは、方位・速力制御部52は、位置情報から、船舶1の現在の速力である実速力を取得する。そして、方位偏差が所定値以上である場合、船舶1の速力が実速力から低減するように、方位偏差に基づいて目標速力を補正し、補正後の目標速力に基づいて推力指令を生成する。目標速力は、船舶1の推力に関わるパラメータの目標値の一例である。
【0077】
続いて、
図7を参照して方位・速力制御部52の構成を説明する。
図7は、方位・速力制御部52の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、方位・速力制御部52は、方位偏差取得部61と、実速力演算部62と、旋回力変換部63と、目標速力補正部64と、座標変換部65と、旋回力制限部66と、前進速力制御部67とを含む。
【0078】
方位偏差取得部61は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差を取得し、方位偏差に基づいて旋回比率を設定する。例えば、方位偏差取得部61は、方位偏差に対してPD制御補償を実行することにより、旋回比率を設定する。
【0079】
旋回力変換部63は、
図3(a)~
図3(c)を参照して説明したように、旋回比率から旋回力を設定する。詳しくは、制御装置22は、旋回比率変換テーブル(ルックアップテーブル)を記憶している。旋回比率変換テーブルは、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように、旋回比率と旋回力との関係を規定している。旋回力変換部63は、旋回比率変換テーブルを参照して旋回比率から旋回力を取得する。
【0080】
目標速力補正部64は、旋回比率に基づいて目標速力を補正する。具体的には、目標速力補正部64は、旋回比率が閾値th以上である場合、目標速力を低減させる。詳しくは、制御装置22は、目標速力変換テーブル(ルックアップテーブル)を記憶している。目標速力変換テーブルは、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きいほど目標速力の増幅率(ゲイン)が小さくなるように、目標速力の増幅率(ゲイン)と旋回比率との関係を規定している。ここで、目標速力の増幅率は、0以上1以下を示す。目標速力の増幅率は、目標速力の低減率の一例である。目標速力補正部64は、目標速力変換テーブルを参照して、旋回比率から目標速力の増幅率を取得する。そして、目標速力の増幅率に基づいて、目標速力を低減させる。具体的には、目標速力補正部64は、目標速力と増幅率とを積算して、目標速力を低減させる。
【0081】
実速力演算部62は、位置情報から船舶1の実速力を取得する。詳しくは、実速力演算部62は、位置情報から、経時的に変化する船舶1の現在位置を逐次取得する。そして、微分により、船舶1の実速力ベクトルを取得する。
【0082】
座標変換部65は、実速力ベクトルから、実船首方位の速度成分である前進速力を取得する。
【0083】
前進速力制御部67は、前進速力と補正後の目標速力とに基づいて、推力指令を出力する。本実施形態において、推力指令は、前進推力(船舶1を実船首方位へ推進させる推力)を示す。具体的には、前進速力制御部67は、補正後の目標速力と前進速力との速度偏差を取得し、速度偏差に対してPD制御補償を実行することにより、前進推力を設定する。
【0084】
旋回力制限部66は、実速力に基づいて旋回力を規制する。具体的には、旋回力制限部66は、実速力に応じて旋回力の上限値を設定する。旋回力制限部66は、旋回力変換部63によって設定された旋回力が上限値を超えていない場合、旋回力変換部63によって設定された旋回力を示す旋回指令を出力する。一方、旋回力変換部63によって設定された旋回力が上限値以上である場合、上限値を示す旋回指令を出力する。
【0085】
本実施形態によれば、実速力に基づいて旋回力を規制することができるため、変針時に船舶1が旋回力によって外側にローリングすることを防止できる。
【0086】
以上、
図4~
図7を参照して制御装置22の構成を説明した。なお、
図4を参照して説明した経路追従制御装置31、操船制御装置32及び推力配分装置33、ならびに、
図5~
図7を参照して説明した経路追従制御装置31を構成する各部位は、別々の処理回路で構成してもよく、1つの処理回路でまとめて構成してもよい。また、経路追従制御装置31、操船制御装置32及び推力配分装置33の各機能、ならびに、経路追従制御装置31を構成する各部位の機能を実行する処理回路は、CPUのようなプロセッサを有してもよいし、専用のハードウェアを有してもよい。
【0087】
処理回路がプロセッサを有する場合、処理回路はメモリを更に有する。メモリには、プロセッサが実行する種々のコンピュータプログラムや、種々のデータが格納される。メモリは、例えば、半導体メモリである。半導体メモリは、例えば、RAM、及びROMを含む。あるいは、半導体メモリは、RAM及びROMに替えて、又はRAM及びROMに加えて、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)の少なくとも1つを含み得る。
【0088】
処理回路が専用のハードウェアを有する場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせた回路であり得る。
【0089】
続いて、
図8(a)~
図8(c)を参照して目標速力変換テーブル及び旋回比率変換テーブルを説明する。
図8(a)は、旋回比率と目標速力の増幅率(ゲイン)との関係を規定するグラフGR1を示す図である。
図8(b)は、旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフGR2を示す図である。
図8(c)は、旋回比率に応じた船舶1の動作を示す図である。
図8(a)~
図8(c)において、横軸は旋回比率を示す。
図8(a)において、縦軸は目標速力の増幅率(ゲイン)を示す。
図8(b)において、縦軸は旋回力の大きさを示す。
【0090】
図8(a)に示すように、増幅率(ゲイン)の範囲は、0以上1以下に規定されている。グラフGR1は、旋回比率が閾値th未満の範囲において増幅率(ゲイン)が「1」となるように規定されている。また、グラフGR1は、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど増幅率が小さくなるように規定されている。詳しくは、グラフGR1は、旋回比率が100%付近の範囲で増幅率(ゲイン)が「0」となるように規定されている。換言すると、グラフGR1は、旋回比率が閾値th未満の範囲では目標速力の減少率が0%となり、旋回比率が閾値th以上の範囲では、旋回比率が大きくなるほど目標速力の減少率が大きくなり、旋回比率が100%付近の範囲では目標速力の減少率が100%となるように規定されている。
【0091】
制御装置22は、グラフGR1に対応する目標速力変換テーブルを記憶しており、目標速力補正部64は、目標速力変換テーブルを参照して、旋回比率に対応する増幅率を取得し、目標速力と増幅率とを積算して目標速力を補正する。
【0092】
図8(b)に示すように、グラフGR2は、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように規定されている。制御装置22は、グラフGR2に対応する旋回比率変換テーブルを記憶しており、旋回力変換部63は、旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から旋回力を取得する。
【0093】
目標速力補正部64が、目標速力変換テーブルに基づいて目標速力を補正し、旋回力変換部63が、旋回比率変換テーブルに基づいて旋回力を設定することにより、
図8(c)に示すように、旋回比率が大きくなるほど、旋回半径が小さくなる。また、旋回比率が小さくなるほど、旋回半径が大きくなる。
【0094】
続いて、
図9を参照して制御装置22を更に説明する。本実施形態において、制御装置22は、オートモードが有効状態であるとき、船舶1の針路を変針させる際に、経路設定装置11のタッチディスプレイ11aに報知画面Gを表示させる。
図9は、報知画面Gの一例を示す図である。本実施形態において、タッチディスプレイ11aは、表示器の一例である。
【0095】
図9に示すように、制御装置22は、オートモードが有効状態であるとき、船舶1の針路を変針させる際に、報知画面Gを生成して、タッチディスプレイ11aに報知画面Gを表示させる。報知画面Gは、旋回比率を示す。報知画面Gは、例えば、旋回比率を視覚化したオブジェクト(例えば、アイコン、又はマーク)と、前進推力の値と、旋回力の値と、旋回比率の値とを表示してもよい。
【0096】
制御装置22は、方位偏差取得部61(
図7参照)から出力される旋回比率と、旋回力制限部66(
図7参照)から出力される旋回指令と、前進速力制御部67(
図7参照)から出力される推力指令とに基づいて、報知画面Gを生成する。例えば、制御装置22は、方位偏差取得部61(
図7参照)から出力される旋回比率に基づいて、旋回比率を視覚化したオブジェクトの群から1つのオブジェクトを選択してもよい。
【0097】
本実施形態によれば、オートモードが有効状態であるとき、船舶1の針路を変針させる際に、制御装置22がタッチディスプレイ11aに報知画面Gを表示させるため、船舶1の針路の変針時に船舶1の動作状態を操船者に報知することができる。特に、本実施形態では、船舶1の針路の変針時に、方位偏差が所定値以上である場合、船舶1の速力が減速する。したがって、操船者は、報知画面Gを介して、船舶1の速力がオートモードによって減速していることを知ることができる。
【0098】
なお、制御装置22は、旋回力制限部66(
図7参照)から出力される旋回指令と、旋回比率変換テーブルとに基づいて、旋回比率を視覚化したオブジェクトの群から1つのオブジェクトを選択してもよい。これにより、旋回力制限部66によって旋回力が上限値に規制された場合に、実際の旋回比率を報知することができる。
【0099】
続いて、
図10を参照して船舶1の変針時の動作の一例を説明する。
図10は、本実施形態の船舶1の動作の一例を示す図である。詳しくは、
図10は、オートモードが有効状態であるときの船舶1の動作を示す。
【0100】
図10に示すように、オートモードが有効状態であるとき、船舶1は、変針時に、回頭することによって船首方位を変更する。詳しくは、経路追従制御装置31から出力される推力指令及び旋回指令に基づいて、推力配分装置33が第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御することにより、船舶1が回頭しながら船首方位を変更する。この結果、変針時の旋回半径が小さくなる。
【0101】
以上、
図1~
図10を参照して本発明の実施形態1を説明した。本実施形態によれば、船舶1の針路を変針させる際の旋回半径を小さくすることができる。また、本実施形態によれば、方位偏差が大きいほど、前進速力の低減率が大きくなるため、船舶1を急旋回させる際に、ブレーキ効果を得ることができる。
【0102】
なお、本実施形態において、方位・速力制御部52は、GPS装置12から取得した位置情報に基づいて実速力を計算したが、方位・速力制御部52は、IMU(慣性計測装置)の出力に基づいて実速力を取得してもよい。
【0103】
また、本実施形態において、船舶1は、電子コンパス13を備えたが、船舶1は、電子コンパス13に替えて、ジャイロコンパスを備えてもよい。
【0104】
また、本実施形態において、制御装置22は、旋回比率を旋回力に変換するルックアップテーブル(旋回比率変換テーブル)を記憶したが、制御装置22は、
図8(b)を参照して説明したグラフGR2に対応する数式を記憶してもよい。
【0105】
また、本実施形態において、制御装置22は、旋回比率と目標速力の増幅率(ゲイン)との関係を規定するルックアップテーブル(目標速力変換テーブル)を記憶したが、制御装置22は、
図8(a)を参照して説明したグラフGR1に対応する数式を記憶してもよい。
【0106】
また、本実施形態において、船舶1は、1機のサイドスラスターを備えた2軸推進方式のシャフト船であったが、船舶1は、1軸推進方式の船舶であってもよい。1軸推進方式の船舶は、シャフト船であってもよいし、1機の船外機を備える船舶であってもよいし、1機の船内外機(スタンドライブ装置)を備える船舶であってもよい。
【0107】
1軸推進方式の船舶は、その場旋回や斜航を行うことができないため、船舶1の動作状態の範囲は、
図11に示すように、
図3(c)に示す動作状態の範囲と比べて限定される。但し、1軸推進方式の船舶であっても、本実施形態によれば、船舶1の針路の変針時に前進速力を低減させて船舶1を旋回させることができるため、旋回半径を小さくすることができる。なお、船舶1が1軸推進方式の船舶ある場合、推力配分装置33は省略され得る。
【0108】
[実施形態2]
続いて、
図12~
図14を参照して本発明の実施形態2について説明する。但し、実施形態1と異なる事項を説明し、実施形態1と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態2は、オートモードが有効状態であるとき、前進推力及び旋回力に加えて、横方向(左右方向)の推力を制御する点で実施形態1と異なる。また、実施形態2において、船舶1は、1軸推進方式の船舶以外の船舶である。換言すると、船舶1は、斜航、及び、その場旋回が可能な船舶である。以下、横方向の推力を、「横推力」と記載する場合がある。
【0109】
図12は、本実施形態の経路追従制御装置31の方位・速力制御部52の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、方位・速力制御部52は、実角速度演算部71と、横速力制御部72と、方位補正部73と、横推力制限部74とを更に含む。
【0110】
実角速度演算部71は、方位情報(船舶1の実船首方位を示す情報)から船舶1の現在の角速度を取得する。詳しくは、実角速度演算部71は、経時的に変化する船舶1の実船首方位を逐次取得する。そして、微分により、船舶1の現在の角速度を取得する。以下、船舶1の現在の角速度を、「実角速度」と記載する場合がある。
【0111】
座標変換部65は、実速力ベクトルから、前進速力と、横方向速力とを取得する。横方向速力は、実速力ベクトルのうち、実船首方位に直交する方向の速度成分である。
【0112】
横速力制御部72は、横方向速力に基づいて、横方向速力を零にする横推力を設定する。具体的には、横速力制御部72は、座標変換部65から出力される横方向速力と、横方向速力の目標速力との速度偏差に対してPD制御補償を実行することにより、横推力を設定する。ここで、横方向速力の目標速力は、零を示す。
【0113】
方位補正部73は、前進速力制御部67によって設定された前進推力の方位(前進推力を発生させる方位)と、横速力制御部72によって設定された横推力の方位(横推力を発生させる方位)とを、実角速度に基づいてそれぞれ補正する。
【0114】
横推力制限部74は、旋回比率に基づいて横推力の大きさを補正する。また、横推力制限部74は、旋回比率に基づいて横推力の大きさを零にする。具体的には、横推力制限部74は、旋回比率が設定値以下になると、横推力の大きさを零にする。
【0115】
詳しくは、制御装置22は、横推力変換テーブル(ルックアップテーブル)を記憶している。横推力変換テーブルは、旋回比率が設定値を超える範囲において、旋回比率が大きいほど横推力の増幅率(ゲイン)が大きくなるように、旋回比率と横推力の増幅率(ゲイン)との関係を規定している。ここで、横推力の増幅率は、0以上1以下を示す。更に、横推力変換テーブルは、旋回比率が設定値以下の範囲において、横推力の増幅率(ゲイン)を「0」に規定している。横推力制限部74は、横推力変換テーブルを参照して、旋回比率から横推力の増幅率を取得する。そして、横推力の増幅率に基づいて、横推力を補正する。具体的には、横推力制限部74は、横推力と増幅率とを積算して、横推力を補正する。
【0116】
なお、本実施形態では、経路設定装置11が、横推力制限部74の機能の有効/無効を設定する指示の入力を受け付ける。したがって、操船者は、経路設定装置11のタッチディスプレイ11aに対してタッチ操作をすることにより、横推力制限部74の機能の有効/無効を設定することができる。横推力制限部74の機能が有効にされた場合、横推力制限部74は、横推力と増幅率とを積算して、横推力を補正する。横推力制限部74の機能が無効にされた場合、横推力制限部74は、横速力制御部72によって大きさが設定され、方位補正部73によって方位が補正された横推力を指令する。
【0117】
続いて、
図13を参照して横推力変換テーブルを説明する。
図13は、旋回比率と横推力の増幅率(ゲイン)との関係を規定するグラフGR4を示す図である。
図13において、横軸は旋回比率を示す。縦軸は横推力の増幅率(ゲイン)を示す。
【0118】
図13に示すように、増幅率(ゲイン)の範囲は、0以上1以下の範囲に規定されている。グラフGR4は、旋回比率が第1閾値th1以下の範囲において、横推力の増幅率(ゲイン)を「0」に規定している。また、旋回比率が第1閾値th1よりも大きく、第2閾値th2以下の範囲では、旋回比率が大きいほど横推力の増幅率(ゲイン)が大きくなるように規定されている。更に、旋回比率が第2閾値th2よりも大きい範囲において、横推力の増幅率(ゲイン)を「1」に規定している。
【0119】
制御装置22は、グラフGR4に対応する横推力変換テーブルを記憶しており、横推力制限部74が、横推力変換テーブルを参照して、旋回比率に対応する増幅率を取得し、横推力と増幅率とを積算して横推力を補正する。その結果、旋回比率が第1閾値th1以下の範囲では、横推力が零になる。換言すると、旋回比率が第1閾値th1以下の範囲では、横推力が無効化される。また、旋回比率が第1閾値th1よりも大きく、第2閾値th2以下の範囲では、旋回比率が大きいほど横推力が大きくなる。
【0120】
続いて、
図14を参照して船舶1の変針時の動作の一例を説明する。
図14は、本実施形態の船舶1の動作の一例を示す図である。詳しくは、
図14は、オートモードが有効状態であるときの船舶1の動作を示す。
【0121】
図14に示すように、オートモードが有効状態であるとき、船舶1の針路を変針する際に、船舶1は、前進推力F1及び旋回力F2に加えて、横推力F3を発生させる。この結果、横推力F3によって船舶1の横滑りが抑制されて、旋回半径をより小さくすることができる。
【0122】
詳しくは、変針時に、前進速力を低減させつつ、旋回力によって船舶1を回頭させる場合、旋回力によって船舶1が回頭する際に、横方向速力成分が発生して、船舶1が横滑りする可能性がある。したがって、横方向速力成分により、船舶1が予定航路(予定経路線)から離れる可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、横方向速力を零にする横推力F3を発生させるため、船舶1の横滑りを抑制することができる。
【0123】
以上、
図12~
図14を参照して本発明の実施形態2について説明した。本実施形態によれば、船舶1の横滑りを抑制して、旋回半径をより小さくすることができる。
【0124】
また、本実施形態によれば、前進推力の方位及び横推力の方位を実角速度によって補正して、信号伝達の遅れ成分に起因する船舶1の移動軌跡のずれを減少させることができる。
【0125】
詳しくは、経路追従制御装置31が推力指令及び旋回指令を出力し、推力指令及び旋回指令に基づいて推力配分装置33(
図4参照)が第1推進装置21a~第3推進装置21cを制御することによって船舶1が動作し、船舶1のその動作がGPS装置12及び電子コンパス13によって検出されるまでの間に、信号伝達の遅れ成分が発生する。その結果、経路追従制御装置31が推力指令及び旋回指令を出力し、その推力指令及び旋回指令が船舶1の動作に反映されるまでの間に、船舶1の実際の船首方位が変化するため、船舶1の移動軌跡がわずかに膨らむことがある。これに対し、本実施形態では、実角速度に基づいて、信号伝達の遅れ成分に起因する船舶1の移動軌跡のずれを前進推力の方位及び横推力の方位に反映させることができる。したがって、信号伝達の遅れ成分に起因する船舶1の移動軌跡のずれを減少させることができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、予定経路線(目標経由点の1つ手前の経由点から目標経由点へ向かう直線状の経路線)と、目標経路線(船舶1の現在位置から目標経由点までの直線状の経路線)との経路偏差を補償するためのエネルギーの効率を高めることができる。
【0127】
詳しくは、経路偏差が小さい場合、横推力は、経路偏差を補償する力として作用する。例えば、船舶1が直線状の予定経路線を追従している場合に、横推力は、経路偏差を補償する力として作用する。しかし、経路偏差を補償する場合、横推力よりも旋回力を利用するほうがエネルギー効率が高くなる。本実施形態では、経路偏差が小さい場合、旋回比率が小さくなる。そして、旋回比率が小さい場合、横推力制限部74が横推力を減少させる。したがって、横推力が減少した分、旋回力によって経路偏差が補償される。また、旋回比率が設定値(第1閾値th1)以下である場合には、横推力が零となるため、旋回力によって経路偏差が補償される。よって、本実施形態によれば、経路偏差を補償するためのエネルギーの効率を高めることができる。
【0128】
なお、本実施形態において、方位・速力制御部52は、方位情報に基づいて実角速度を計算したが、方位・速力制御部52は、ジャイロセンサ又はジャイロコンパスの出力に基づいて実角速度を取得してもよい。
【0129】
また、本実施形態において、制御装置22は、旋回比率と横推力の増幅率(ゲイン)との関係を規定するルックアップテーブル(横推力変換テーブル)を記憶したが、制御装置22は、
図13を参照して説明したグラフGR4に対応する数式を記憶してもよい。
【0130】
[実施形態3]
続いて
図15~
図18を参照して本発明の実施形態3について説明する。但し、実施形態1、2と異なる事項を説明し、実施形態1、2と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態3は、オフセット船首方位情報が経路設定装置11から経路追従制御装置31に入力される点で実施形態1、2と異なる。また、実施形態3において、船舶1は、1軸推進方式の船舶以外の船舶である。換言すると、船舶1は、斜航、及び、その場旋回が可能な船舶である。
【0131】
図15は、本実施形態の船舶1の構成の一部を示すブロック図である。
図15に示すように、本実施形態において、経路設定装置11は、経路追従制御装置31にオフセット船首方位情報を更に出力する。オフセット船首方位情報は、オフセット船首方位を示す。本実施形態において、オフセット船首方位は、予定船首方位の一例である。
【0132】
具体的には、経路設定装置11は、オフセット船首方位の設定を受け付ける。したがって、操船者は、経路設定装置11のタッチディスプレイ11aに対してタッチ操作をすることにより、オフセット船首方位を設定することができる。オフセット船首方位は、例えば、操船者が所望する船首方位である。
【0133】
詳しくは、オフセット船首方位は、予定航路上の任意の位置において設定することができる。また、オフセット船首方位は、複数の位置において設定することができる。例えば、オフセット船首方位は、予定航路上の変針位置の手前において設定することができる。
【0134】
図16は、実船首方位BD1とオフセット船首方位BD2との関係を示す図である。
図16において、船舶1は、第1経由点W1から第2経由点W2に向かう直線状の第1予定経路線R1を追従した後、第2経由点W2から第3経由点W3に向かう直線状の第2予定経路線R2を追従する。第2経由点W2は変針位置であり、第2経由点W2において船舶1の針路が変針する。
【0135】
オフセット船首方位BD2は、現在の予定経路線との方位偏差よりも、次の予定経路線との方位偏差が小さくなる船首方位である。
図16に示す例では、オフセット船首方位BD2と第1予定経路線R1(現在の予定経路線)との方位偏差は、実船首方位BD1と第1予定経路線R1(現在の予定経路線)との方位偏差よりも大きいが、オフセット船首方位BD2と第2予定経路線R2(次の予定経路線)との方位偏差は、実船首方位BD1と第2予定経路線R2(次の予定経路線)との方位偏差よりも小さい。
【0136】
続いて、
図17を参照して船舶1の変針時の動作の一例を説明する。
図17は、本実施形態の船舶1の動作の一例を示す図である。詳しくは、
図17は、オートモードが有効状態であるときの船舶1の動作を示す。
図17において、船舶1は、第1経由点W11から第2経由点W12に向かう直線状の第1予定経路線R11を追従した後、第2経由点W12から第3経由点W13に向かう直線状の第2予定経路線R12を追従する。第2経由点W12は変針位置であり、第2経由点W12において船舶1の針路が変針する。
【0137】
図17に示す例では、第2経由点W12(変針位置)の手前の位置にオフセット船首方位が設定されている。したがって、船舶1が第2経由点W12(変針位置)に到達する前に、船舶1の船首方位が次の予定経路線(第2予定経路線R12)の方位に近い方位となるように、船舶1が回頭する。この結果、船舶1の針路を第2経由点W12(変針位置)において変針させる際の旋回半径をより小さくすることができる。
【0138】
続いて、
図18を参照して方位・速力制御部52を説明する。
図18は、本実施形態の経路追従制御装置31の方位・速力制御部52の構成を示すブロック図である。
図18に示すように、方位・速力制御部52は、第1オフセット処理部81と、第2オフセット処理部82とを更に含む。
【0139】
第1オフセット処理部81は、方位偏差取得部61の前段に配置されて、実船首方位をオフセット船首方位に置換する。したがって、方位偏差取得部61は、目標船首方位とオフセット船首方位との方位偏差に基づいて旋回比率を設定する。
【0140】
座標変換部65は、実速力ベクトルから船首方向の速力成分(前進速力)及び横方向速力成分を取得する際に、オフセット船首方位の速力成分(前進速力)と、オフセット船首方位に直交する方向の速力成分(横方向速力成分)を取得する。
【0141】
第2オフセット処理部82は、前進推力の推力方向をオフセット船首方位に置換する。また、第2オフセット処理部82は、推力指令に横推力の指令が含まれる場合、横推力の推力方向を、オフセット船首方位に直交する方向に置換する。
【0142】
図18を参照して説明した方位・速力制御部52によれば、変針位置の手前において、次の予定経路線との方位偏差が小さくなるように船舶1を回頭させることができる。つまり、変針位置の手前において、次の予定経路線の方位に船首方位を合わせることができる。
【0143】
以上、
図15~
図18を参照して本発明の実施形態3について説明した。本実施形態によれば、変針位置の手前において、次の予定経路線の方位に船首方位を合わせることができる。したがって、旋回半径をより小さくすることができる。
【0144】
[実施形態4]
続いて
図19を参照して本発明の実施形態4について説明する。但し、実施形態1~3と異なる事項を説明し、実施形態1~3と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態4は、経路設定装置11が目標速力情報を生成しない点で実施形態1~3と異なる。
【0145】
図19は、本実施形態の船舶1の構成の一部を示すブロック図である。
図19に示すように、本実施形態において、経路追従制御装置31は、目標速力指示部43を更に含む。
【0146】
目標速力指示部43は、電子スロットルレバー8の操作量(又は、操作位置)に応じて目標速力を設定する。具体的には、電子スロットルレバー8は、右スロットルレバー又は左スロットルレバーが操船者によって操作されると、右スロットルレバー又は左スロットルレバーの操作量(又は、操作位置)を示す信号を制御装置22に出力する。目標速力指示部43は、オートモードが有効状態であるとき、電子スロットルレバー8から出力される信号に基づいて、目標速力を設定し、目標速力情報を経路追従制御部42に出力する。
【0147】
以上、
図19を参照して本発明の実施形態4を説明した。本実施形態によれば、操船者は、電子スロットルレバー8を操作して目標速力を設定することができる。
【0148】
[実施形態5]
続いて、
図20~
図24を参照して本発明の実施形態5について説明する。但し、実施形態1~4と異なる事項を説明し、実施形態1~4と同じ事項についての説明は割愛する。実施形態5は、目標速力情報を用いずに推力指令を生成する点で実施形態1~4と異なる。
【0149】
図20は、本実施形態の船舶1の構成の一部を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態では、電子スロットルレバー8の右スロットルレバー又は左スロットルレバーの操作量(又は、操作位置)を示す信号が経路追従制御部42に入力される。以下、電子スロットルレバー8の右スロットルレバー又は左スロットルレバーの操作量(又は、操作量)を、「電子スロットルレバー8の操作量」と記載する場合がある。
【0150】
続いて
図21を参照して、本実施形態の経路追従制御装置31に含まれる方位制御部52aについて説明する。
図21は、本実施形態の経路追従制御装置31に含まれる方位制御部52aの構成を示すブロック図である。本実施形態において、経路追従制御部42(
図6参照)は、方位・速力制御部52に替えて、方位制御部52aを含む。すなわち、本実施形態の経路追従制御装置31(操船装置)は、速度制御系を含まない。
【0151】
図21に示すように、方位制御部52aは、方位偏差取得部61と、旋回力変換部63と、旋回力制限部66aと、推力変換部91とを含む。
図20を参照して説明した電子スロットルレバー8の操作量を示す信号は、旋回力変換部63及び推力変換部91に入力される。
【0152】
推力変換部91は、電子スロットルレバー8の操作量と旋回比率とに基づいて、推力指令を生成する。詳しくは、制御装置22は、電子スロットルレバー8の複数の操作量(又は、操作位置)ごとに、第1旋回比率変換テーブル(ルックアップテーブル)を記憶している。第1旋回比率変換テーブルは、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように、旋回比率と前進推力との関係を規定している。推力変換部91は、電子スロットルレバー8の操作量に基づいて、第1旋回比率変換テーブルのうちの一つを選択する。そして、選択した第1旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から前進推力を取得する。
【0153】
本実施形態によれば、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなる。したがって、経路追従制御装置31(操船装置)に速力制御系が含まれない構成であっても、船舶1の針路を変針させる際の旋回半径を小さくすることができる。
【0154】
旋回力変換部63は、電子スロットルレバー8の操作量と旋回比率とに基づいて、旋回力を設定する。詳しくは、制御装置22は、電子スロットルレバー8の複数の操作量(又は、操作位置)ごとに、第2旋回比率変換テーブル(ルックアップテーブル)を記憶している。第2旋回比率変換テーブルは、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように、旋回比率と旋回力との関係を規定している。旋回力変換部63は、電子スロットルレバー8の操作量に基づいて、第2旋回比率変換テーブルのうちの一つを選択する。そして、選択した第2旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から旋回力を取得する。
【0155】
旋回力制限部66aは、推力変換部91が設定した前進推力に基づいて旋回力を規制する。具体的には、旋回力制限部66aは、前進推力に応じて旋回力の上限値を設定する。旋回力制限部66aは、旋回力変換部63によって設定された旋回力が上限値を超えていない場合、旋回力変換部63によって設定された旋回力を示す旋回指令を出力する。一方、旋回力変換部63によって設定された旋回力が上限値以上である場合、上限値を示す旋回指令を出力する。
【0156】
本実施形態によれば、前進推力に基づいて旋回力を規制することができるため、変針時に船舶1が旋回力によって外側にローリングすることを防止できる。
【0157】
続いて
図22~
図24を参照して、電子スロットルレバー8の操作量と、前進推力と、旋回力との関係を説明する。まず
図22を参照して、電子スロットルレバー8の操作量が0%の際の前進推力及び旋回力を説明する。
【0158】
図22(a)は、電子スロットルレバー8の操作量が0%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフGR11を示す図である。
図22(b)は、電子スロットルレバー8の操作量が0%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフGR12を示す図である。
図22(c)は、電子スロットルレバー8の操作量を模式的に示す図である。
図22(a)において、縦軸は前進推力の大きさを示す。
図22(b)において、縦軸は旋回力の大きさを示す。
図22(c)は、電子スロットルレバー8のスロットルレバー8a(右スロットルレバー又は左スロットルレバー)の操作量が0%であることを示す。
【0159】
図22(a)に示すように、グラフGR11は、0[N]に規定されている。制御装置22は、グラフGR11に対応する第1旋回比率変換テーブルを記憶しており、推力変換部91は、電子スロットルレバー8の操作量が0%である場合、グラフGR11に対応する第1旋回比率変換テーブルを参照して、前進推力を0[N]に設定する。
【0160】
図22(b)に示すように、グラフGR12は、0[Nm]に規定されている。制御装置22は、グラフGR12に対応する第2旋回比率変換テーブルを記憶しており、旋回力変換部63は、電子スロットルレバー8の操作量が0%である場合、グラフGR12に対応する第2旋回比率変換テーブルを参照して、旋回力を0[Nm]に設定する。
【0161】
続いて
図23を参照して、電子スロットルレバー8の操作量が50%の際の前進推力及び旋回力を説明する。
図23(a)は、電子スロットルレバー8の操作量が50%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフGR21を示す図である。
図23(b)は、電子スロットルレバー8の操作量が50%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフGR22を示す図である。
図23(c)は、電子スロットルレバー8の操作量を模式的に示す図である。
図23(a)において、縦軸は前進推力の大きさを示す。
図23(b)において、縦軸は旋回力の大きさを示す。
図23(c)は、電子スロットルレバー8のスロットルレバー8aの操作量が50%であることを示す。
【0162】
図23(a)に示すように、グラフGR21は、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように規定されている。詳しくは、グラフGR21は、最大前進推力の50%以下の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように規定されている。したがって、グラフGR21の最大値は、最大前進推力の50%の値を示す。つまり、電子スロットルレバー8の操作量が50%の場合、前進推力の最大値は、最大前進推力の50%の推力となる。
【0163】
制御装置22は、グラフGR21に対応する第1旋回比率変換テーブルを記憶しており、推力変換部91は、電子スロットルレバー8の操作量が50%である場合、グラフGR21に対応する第1旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から前進推力を取得する。
【0164】
図23(b)に示すように、グラフGR22は、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように規定されている。詳しくは、グラフGR22は、最大旋回力の50%以下の範囲において、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように規定されている。したがって、グラフGR22の最大値は、最大旋回力の50%の値を示す。つまり、電子スロットルレバー8の操作量が50%の場合、旋回力の最大値は、最大旋回力の50%の旋回力となる。
【0165】
制御装置22は、グラフGR22に対応する第2旋回比率変換テーブルを記憶しており、旋回力変換部63は、電子スロットルレバー8の操作量が50%である場合、グラフGR22に対応する第2旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から旋回力を取得する。
【0166】
続いて
図24を参照して、電子スロットルレバー8の操作量が100%の際の前進推力及び旋回力を説明する。
図24(a)は、電子スロットルレバー8の操作量が100%の際の旋回比率と前進推力の大きさとの関係を規定するグラフGR31を示す図である。
図24(b)は、電子スロットルレバー8の操作量が100%の際の旋回比率と旋回力の大きさとの関係を規定するグラフGR32を示す図である。
図24(c)は、電子スロットルレバー8の操作量を模式的に示す図である。
図24(a)において、縦軸は前進推力の大きさを示す。
図24(b)において、縦軸は旋回力の大きさを示す。
図24(c)は、電子スロットルレバー8のスロットルレバー8aの操作量が100%であることを示す。
【0167】
図24(a)に示すように、グラフGR31は、旋回比率が閾値th以上の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように規定されている。詳しくは、グラフGR31は、最大前進推力以下の範囲において、旋回比率が大きくなるほど前進推力が小さくなるように規定されている。したがって、グラフGR31の最大値は、最大前進推力を示す。つまり、電子スロットルレバー8の操作量が100%の場合、前進推力の最大値は、最大前進推力となる。
【0168】
制御装置22は、グラフGR31に対応する第1旋回比率変換テーブルを記憶しており、推力変換部91は、電子スロットルレバー8の操作量が100%である場合、グラフGR31に対応する第1旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から前進推力を取得する。
【0169】
図24(b)に示すように、グラフGR32は、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように規定されている。詳しくは、グラフGR32は、最大旋回力以下の範囲において、旋回比率が大きくなるほど旋回力が大きくなるように規定されている。したがって、グラフGR32の最大値は、最大旋回力を示す。つまり、電子スロットルレバー8の操作量が100%の場合、旋回力の最大値は、最大旋回力となる。
【0170】
制御装置22は、グラフGR32に対応する第2旋回比率変換テーブルを記憶しており、旋回力変換部63は、電子スロットルレバー8の操作量が100%である場合、グラフGR32に対応する第2旋回比率変換テーブルを参照して、旋回比率から旋回力を取得する。
【0171】
以上、図面(
図1~
図24)を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0172】
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0173】
例えば、ナビゲーション制御部41は、船舶1が変針位置に接近すると、目標速力を低減させてもよい。この場合、目標速力補正部64は、ナビゲーション制御部41によって変更された目標速力を補正する。
【0174】
また、
図1~
図24を参照して説明した実施形態において、報知画面Gはタッチディスプレイ11aに表示されたが、制御装置22は、船舶1に搭載された他の表示器に報知画面Gを表示させてもよい。
【0175】
また、
図1~
図24を参照して説明した実施形態では、斜航、及び、その場旋回が可能な船舶として、1機のサイドスラスターを備えた2軸推進方式のシャフト船を例示したが、斜航、及び、その場旋回が可能な船舶は、1機のサイドスラスターを備えた2軸推進方式のシャフト船に限定されない。例えば、船舶1は、2機のスタンドライブ装置(船内外機)を備える船舶、2機の船外機を備える船舶、2機のウォータージェットを備える船舶、2機のサイドスラスターを備える1軸推進方式のシャフト船、2機のポットドライブを備える船舶、2機のアジマススラスターを備える船舶、2機のZペラを備える船舶、又は、2機のフォイトシュナイダープロペラを備える船舶であってもよい。あるいは、船舶1は、推力方向が可変のスラスター(推進装置)を3機以上備えてもよいし、推力方向が固定されたスラスター(推進装置)を4機以上備えてもよい。
【0176】
また、
図1~
図24を参照して説明した実施形態において、方位・速力制御部52及び方位制御部52aは、旋回比率に基づいて前進推力と旋回力とを制御したが、方位・速力制御部52及び方位制御部52aは、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて前進推力と旋回力とを制御してもよい。例えば、方位・速力制御部52は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて旋回力を設定し、設定した旋回力に基づいて目標速力を補正してもよい。あるいは、方位・速力制御部52は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて舵角を設定し、設定した舵角に基づいて目標速力を補正してもよい。同様に、方位制御部52aは、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて旋回力を設定し、設定した旋回力に基づいて前進推力を設定してもよい。あるいは、方位制御部52aは、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて舵角を設定し、設定した舵角に基づいて前進推力を設定してもよい。
【0177】
また、
図1~
図24を参照して説明した実施形態において、横推力制限部74は、旋回比率に基づいて横推力を補正したが、横推力制限部74は目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて横推力を補正してもよい。
【0178】
また、
図1~
図19を参照して説明した実施形態において、船舶1の推力に関わるパラメータの目標値は、目標速力であったが、船舶1の推力に関わるパラメータの目標値は、目標速力に限定されない。船舶1の推力に関わるパラメータの目標値は、例えば、目標推力、目標エンジン回転数、又は目標スロットル開度値であってもよい。この場合、方位・速力制御部52は、旋回比率に基づいて、目標推力、目標エンジン回転数、又は目標スロットル開度値を補正する。あるいは、方位・速力制御部52は、目標船首方位と実船首方位との方位偏差に基づいて目標推力、目標エンジン回転数、又は目標スロットル開度値を補正してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明は、船舶のオートパイロットに有用である。
【符号の説明】
【0180】
1 :船舶
11 :経路設定装置
11a :タッチディスプレイ
21a :第1推進装置
21b :第2推進装置
21c :第3推進装置
22 :制御装置
31 :経路追従制御装置
32 :操船制御装置
33 :推力配分装置
41 :ナビゲーション制御部
42 :経路追従制御部
43 :目標速力指示部
51 :航路制御部
52 :速力制御部
61 :方位偏差取得部
62 :実速力演算部
63 :旋回力変換部
64 :目標速力補正部
65 :座標変換部
66 :旋回力制限部
67 :前進速力制御部
71 :実角速度演算部
72 :横速力制御部
73 :方位補正部
74 :横推力制限部
81 :第1オフセット処理部
82 :第2オフセット処理部