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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】非接触式眼圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021086245
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022046411
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2020152206
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】清家 正行
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187024(JP,A)
【文献】特開平03-094727(JP,A)
【文献】特開2015-029881(JP,A)
【文献】特開2013-048693(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132665(WO,A1)
【文献】特開2019-165991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜に対して流体を吹き付けるノズルと、
前記被検眼を含む被検者の顔への前記ノズルの接近を検出する1又は複数の非接触式センサと、
を備え、
前記非接触式センサが静電容量型センサであり、
前記ノズルの中心軸に平行な方向を作動距離方向とし、前記作動距離方向及び上下方向の双方に垂直な方向を左右方向とし、前記中心軸に直交し且つ前記左右方向に平行な直線を平行線とした場合に、前記静電容量型センサの電極が、前記ノズルの先端側から見た場合において、前記ノズルを囲む環状領域の中で前記平行線よりも下方側の領域に形成されている非接触式眼圧計。
【請求項2】
前記非接触式センサが前記ノズルの周囲の少なくとも一部に設けられている請求項1に記載の非接触式眼圧計。
【請求項3】
前記非接触式センサが、前記ノズルの前方側に指向性を有し、且つ前記ノズルを前記左右方向側から見た場合に前記中心軸の下方側よりも上方側の指向性が弱くなる請求項1又は2に記載の非接触式眼圧計。
【請求項4】
前記ノズルが設けられた窓ガラスと、
前記窓ガラスを保持するガラス保持部と、
を備え、
前記非接触式センサが、前記窓ガラスの少なくとも一部を囲む形状で前記ガラス保持部に設けられている請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項5】
前記ノズルが前記顔に接近するのに応じて前記非接触式センサの検出値が高くなり、
前記ノズルが設けられた測定ヘッドと、
前記被検眼に対して前記測定ヘッドを相対移動させる駆動機構と、
前記駆動機構による前記測定ヘッドの相対移動が行われている間、前記非接触式センサから前記検出値を繰り返し取得する検出値取得部と、
前記検出値取得部が新たに取得した前記検出値が予め定めた閾値よりも大きくなった場合に、前記駆動機構を制御して、前記測定ヘッドの相対移動を停止或いは前記測定ヘッドを前記被検眼から退避させる駆動制御部と、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項6】
前記ノズルが前記顔に接近するのに応じて前記非接触式センサの検出値が高くなり、
前記ノズルが設けられた測定ヘッドと、
前記被検眼に対して前記測定ヘッドを相対移動させる駆動機構と、
前記非接触式センサから前記検出値の初期値を取得する初期値取得部と、
前記初期値取得部による前記初期値の取得後で且つ前記駆動機構による前記測定ヘッドの相対移動が行われている間、前記非接触式センサから前記検出値を繰り返し取得する検出値取得部と、
前記検出値取得部が前記検出値を取得するごとに、前記検出値と前記初期値取得部が取得した前記初期値との差分を演算し、前記差分が予め定めた差分閾値よりも大きくなった場合に、前記駆動機構を制御して、前記測定ヘッドの相対移動を停止或いは前記測定ヘッドを前記被検眼から退避させる駆動制御部と、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項7】
外部からの遠隔操作を受け付ける遠隔操作受付部と、
前記遠隔操作受付部で受け付けた前記遠隔操作に従って非接触式眼圧計の動作を制御する動作制御部と、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で被検眼の眼圧値を測定する非接触式眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の角膜に向けてノズルから空気(流体)を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出することにより、角膜に接触することなく被検眼の眼圧値を測定する非接触式眼圧計が知られている(特許文献1参照)。この非接触式眼圧計は、ノズルから角膜への空気の吹き付けに合せて角膜に指標光を照射すると共に角膜にて反射された指標光の反射光の光量を検出し、角膜の変形状態が扁平状態(圧平状態)になった場合の反射光の光量と空気の圧力とに基づき被検眼の眼圧値を演算する。
【0003】
このような非接触式眼圧計において被検眼の眼圧値を精度良く測定するためには、非接触式眼圧計に対する被検者の顔(頭部)の位置が適正である必要がある。そこで、特許文献2及び特許文献3には、被検者の顔を支持する顎受け部及び額当て部に接触式センサを備え、この接触式センサの検出結果に基づき非接触式眼圧計に対する被検者の顔の位置が適正であるか否かを判定する眼科装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-47036号公報
【文献】特開2019-165991号公報
【文献】特開2017-217121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非接触式眼圧計により被検眼の眼圧値の測定を開始する前に、被検眼に対する非接触式眼圧計の測定ヘッド(ノズル)のアライメントを行う必要があるが、この際にノズルと被検眼及び被検者の顔との接触を防止する必要がある。このため、被検眼等に対するノズルの接近を検出する必要があるが、上記各特許文献に記載の非接触式眼圧計では被検眼に対するノズルの接近を検出できない。特に近年では検者が離れた場所から非接触式眼圧計を遠隔操作する場合もあり(上記特許文献2参照)、被検眼及び顔に対するノズルの接近を確実に検出することが要望されている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検眼及び顔に対するノズルの接近を検出可能な非接触式眼圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するための非接触式眼圧計は、被検眼の角膜に対して流体を吹き付けるノズルと、被検眼を含む被検者の顔へのノズルの接近を検出する1又は複数の非接触式センサと、を備える。
【0008】
この非接触式眼圧計によれば、被検者の顔(被検眼)へのノズルの接近を非接触で検出することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、非接触式センサがノズルの周囲の少なくとも一部に設けられている。これにより、被検者の顔へのノズルの接近を非接触で検出することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、非接触式センサが、ノズルの先端側から見た場合にノズルを囲む環状に形成されており、ノズルの前方側に指向性を有する。これにより、ノズルの前方側への非接触式センサの指向性を高め、ノズルの前方側に位置する被検眼に対する非接触式センサの検出感度を高めることができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、ノズルの中心軸に平行な方向を作動距離方向とし、作動距離方向及び上下方向の双方に垂直な方向を左右方向とした場合において、非接触式センサが、ノズルの前方側に指向性を有し、且つノズルを左右方向側から見た場合に中心軸の下方側よりも上方側の指向性が弱くなる。これにより、ノズルが被検眼又は被検者の顔に接触するおそれがないのにも関わらず、ノズルに対して被検眼等が近接したとの誤認の発生が防止される。
【0012】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、中心軸に直交し且つ左右方向に平行な直線を平行線とした場合に、非接触式センサが、ノズルの先端側から見た場合において、ノズルを囲む環状領域の中で平行線よりも下方側の領域に形成されている。これにより、非接触式センサの上述の上方側の指向性が弱くなる。
【0013】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、ノズルが設けられた窓ガラスと、窓ガラスを保持するガラス保持部と、を備え、非接触式センサが、窓ガラスの少なくとも一部を囲む形状でガラス保持部に設けられている。
【0014】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、ノズルが顔に接近するのに応じて非接触式センサの検出値が高くなり、ノズルが設けられた測定ヘッドと、被検眼に対して測定ヘッドを相対移動させる駆動機構と、駆動機構による測定ヘッドの相対移動が行われている間、非接触式センサから検出値を繰り返し取得する検出値取得部と、検出値取得部が新たに取得した検出値が予め定めた閾値よりも大きくなった場合に、駆動機構を制御して、測定ヘッドの相対移動を停止或いは測定ヘッドを被検眼から退避させる駆動制御部と、を備える。これにより、被検者の顔及び被検眼に対するノズルの接触を防止することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、ノズルが顔に接近するのに応じて非接触式センサの検出値が高くなり、ノズルが設けられた測定ヘッドと、被検眼に対して測定ヘッドを相対移動させる駆動機構と、非接触式センサから検出値の初期値を取得する初期値取得部と、初期値取得部による初期値の取得後で且つ駆動機構による測定ヘッドの相対移動が行われている間、非接触式センサから検出値を繰り返し取得する検出値取得部と、検出値取得部が検出値を取得するごとに、検出値と初期値取得部が取得した初期値との差分を演算し、差分が予め定めた差分閾値よりも大きくなった場合に、駆動機構を制御して、測定ヘッドの相対移動を停止或いは測定ヘッドを被検眼から退避させる駆動制御部と、を備える。これにより、周囲環境の影響を受けることなく、被検眼等に対してノズルが近接しているか否かを正確に判定することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、非接触式センサが、静電容量型センサである。これにより、ノズルの前方側に位置する被検眼を検出することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、外部からの遠隔操作を受け付ける遠隔操作受付部と、遠隔操作受付部で受け付けた遠隔操作に従って非接触式眼圧計の動作を制御する動作制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、被検眼及び顔に対するノズルの接近を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の眼科装置の斜視図である。
図2】測定ヘッドの拡大図である。
図3】非接触式眼圧計のノズル、窓ガラス、及びガラス保持部を被検者側から見た正面図である。
図4】被検眼(顔)に対するノズルの接近パターンの一例を説明するための説明図である。
図5】被検眼(顔)に対するノズルの接近パターンごとの静電容量型センサによる静電容量の検出値の変化を示したグラフである。
図6】第1実施形態の眼科装置の制御装置の機能ブロック図である。
図7】第1実施形態の眼科装置の非接触式眼圧計による被検眼の眼圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第1実施形態の静電容量型センサの課題を説明するための説明図である。
図9】第1実施形態の静電容量型センサの課題を説明するための説明図である。
図10】第2実施形態の眼科装置のノズル及び静電容量型センサ(電極)の斜視図である。
図11】第2実施形態の眼科装置のノズル及び静電容量型センサ(電極)の正面図である。
図12】第2実施形態の静電容量型センサの指向性を説明するための説明図である。
図13】互いに異なる周囲環境(温湿度)下での顔距離と、静電容量型センサで検出される検出値(pF)と、の対応関係を示したグラフである。
図14】第3実施形態の眼科装置の非接触式眼圧計による被検眼の眼圧測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の眼科装置10の斜視図である。図1に示すように、眼科装置10は、被検眼の眼圧値、眼屈折力、及び角膜曲率等の各種眼特性を1台で測定(検査)可能な複合機(複合検査装置)である。また、本実施形態の眼科装置10は、検者による直接的な操作入力の他に遠隔操作により各種眼特性の測定が可能である。
【0021】
眼科装置10は、ベース11と、顔支持部12と、駆動機構13と、測定ヘッド14(装置本体ともいう)と、表示部15と、制御装置16(図6参照)と、を備えている。
【0022】
ベース11上には、被検者側から検者側に向かって顔支持部12と駆動機構13とが設けられている。
【0023】
顔支持部12は、被検者の顎を受ける顎受け部12aと、被検者の額が当接する額当て部12bとを備え、眼科装置10による被検眼の眼圧値、眼屈折力、及び角膜曲率等の眼特性の測定時に被検者の顔を支持する。
【0024】
駆動機構13は、モータ等の不図示のアクチュエータにより構成されており、ベース11に対して測定ヘッド14を3軸方向(左右、上下、前後の各方向:XYZ方向)に移動させる。これにより、被検眼に対して測定ヘッド14を3軸方向に相対移動させることができる。そして、後述の制御装置16(図6参照)の制御の下、駆動機構13を駆動することで、被検眼に対する測定ヘッド14の3軸方向のアライメント調整が可能になる。
【0025】
図2は、測定ヘッド14の拡大図である。図2及び既述の図1に示すように、測定ヘッド14には、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bを含む複数種類の眼科用の各種測定装置が設けられている。
【0026】
非接触式眼圧計14Aは、被検眼の角膜に向けてノズル20から空気(流体)を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出することにより、非接触で被検眼の眼圧値を測定する。
【0027】
非接触式眼圧計14Aは、ノズル20と、ノズル20が設けられた窓ガラス22と、窓ガラス22を保持する凸状のガラス保持部24と、を備える。そして、非接触式眼圧計14Aは、ノズル20の内部又は窓ガラス22を通して、被検眼に向けてアライメント指標光及び固視標光等を出射すると共に、被検眼にて反射されたアライメント指標光及び固視標光等の反射光を受光する。
【0028】
非接触式眼圧計14Aは、ガラス保持部24に後述の静電容量型センサ26の電極26a(図3参照)が形成されている点を除けば、その詳細構成については公知技術(例えば上記特許文献1参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0029】
オートレフケラトメータ14Bは、各種の光学系25を用いて被検眼の眼屈折力及び角膜曲率等を測定する。なお、オートレフケラトメータ14Bの具体的な構成についても公知技術(例えば特開2016-7774号公報参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0030】
表示部15は、測定ヘッド14の検者に対向する背面側に取り付けられている。この表示部15は、例えばタッチパネル式モニタが用いられる。表示部15は、後述の制御装置16(図6参照)の制御の下、被検眼の前眼部の観察像を表示する。また、表示部15は、被検眼の眼圧値等の測定結果を表示する。さらに表示部15は、各種操作を行うための操作メニュー画面と、測定ヘッド14の3軸方向の位置調整(手動アライメント)を行うための位置調整画面と、を表示する。
【0031】
図3は、非接触式眼圧計14Aのノズル20、窓ガラス22、及びガラス保持部24を被検者側から見た正面図である。図3に示すように、非接触式眼圧計14Aには、本発明の非接触式センサに相当する静電容量型センサ26が設けられている。この静電容量型センサ26は、被検眼に対する非接触式眼圧計14Aのアライメント(相対移動)が行われている間、被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を検出する。この静電容量型センサ26は、例えば自己容量方式のタイプが用いられ、電極26aと検出回路26bとにより構成される。
【0032】
電極26aは、窓ガラス22を囲むように形成されており、ガラス保持部24に設けられている。すなわち電極26aは、ノズル20の先端側から見た場合にノズル20を囲む環状に形成されている。電極26aは被検者の顔(被検眼)との間で疑似コンデンサを形成する。
【0033】
検出回路26bは、例えば測定ヘッド14の内部(外部でも可)に設けられており、配線26cを介して電極26aに接続されている。この検出回路26bは、上述の疑似コンデンサにより発生する静電容量を検出して、その検出値を後述の制御装置16(図6参照)へ出力する。電極26aと被検者の顔との間の距離が短くなるのに応じて疑似コンデンサの静電容量が増加し、逆に電極26aと被検者の顔との間の距離が長くなるのに応じて疑似コンデンサの静電容量が減少する。このため、検出回路26bによる静電容量の検出値に基づき電極26a(ノズル20)と被検者の顔(被検眼)との間の距離を検出することができる。その結果、被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を静電容量型センサ26により検出することができる。
【0034】
図4は、被検眼(顔)に対するノズル20の接近パターンの一例を説明するための説明図である。図4に示すように、第1パターンは、符号Cに示すように、被検眼がノズル20の正面に位置する状態から、ノズル20がZ方向前方側(測定ヘッド14から被検者に向かう方向)に移動して被検眼に接近するパターンである。
【0035】
第2パターンでは、符号Lに示すように、被検眼がノズル20の正面の位置から左側にずれている状態から、ノズル20がZ方向前方側に移動して被検眼に接近するパターンである。第3パターンでは、符号Rに示すように、被検眼がノズル20の正面の位置から右側にずれている状態から、ノズル20がZ方向前方側に移動して被検眼に接近するパターンである。
【0036】
第4パターンでは、符号Uに示すように、被検眼がノズル20の正面の位置から上側にずれている状態から、ノズル20がZ方向前方側に移動して被検眼に接近するパターンである。第5パターンでは、符号Dに示すように、被検眼がノズル20の正面の位置から下側にずれている状態から、ノズル20がZ方向前方側に移動して被検眼に接近するパターンである。
【0037】
図5は、被検眼(顔)に対するノズル20の接近パターンごとの静電容量型センサ26による静電容量の検出値の変化を示したグラフである。図5中の横軸は、ノズル20(電極26a)と被検眼(顔)とのZ方向距離を示す。なお、眼圧測定時のノズル20と被検眼との間の適正なZ方向距離は約11mmである。また、図5中の縦軸は、静電容量型センサ26により検出された静電容量の検出値を示す。
【0038】
図5に示すように、本実施形態の静電容量型センサ26は、ノズル20(電極26a)が被検眼(顔)に接近するのに応じて検出値が増加する。そして、本実施形態の静電容量型センサ26は、全ての接近パターンにおいて、Z方向距離が5mm以下になった場合、すなわちノズル20が顔のまつ毛に接触する距離以下になった場合に、静電容量の検出値が大きくなる特性(ゲイン)を有している。これにより、静電容量型センサ26は、被検眼がノズル20の正面の位置から上下左右にずれた位置にあっても被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を検出可能である。このように静電容量型センサ26を、ノズル20を囲む環状に形成することで、静電容量型センサ26がノズル20の前方側に指向性を有する。その結果、ノズル20の前方側への静電容量型センサ26の指向性を高め、ノズル20の前方側に位置する被検眼に対する静電容量型センサ26の検出感度を高めることができる。
【0039】
なお、本実施形態では静電容量型センサ26として自己容量方式のタイプを例に挙げて説明したが、例えば相互容量方式の静電容量型センサ26を用いてもよい。この場合には、電極26aが送信電極と受信電極とから構成される。また、検出回路26bは、送信電極と受信電極との間に生じる電界の変化に応じた静電容量の変化を検出する。この場合においても被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を検出可能である。
【0040】
図6は、第1実施形態の眼科装置10の制御装置16の機能ブロック図である。図6に示すように、制御装置16は、例えばベース11又は測定ヘッド14の内部に設けられており、眼科装置10の動作(眼圧値測定、眼屈折力測定、及び角膜曲率測定等)を統括制御する。制御装置16には、既述の駆動機構13、測定ヘッド14(非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14B)、表示部15の他に、記憶部30、操作部32、通信インタフェース34、及び遠隔操作受付部36が接続されている。
【0041】
記憶部30には、眼科装置10の制御プログラム、非接触式眼圧計14Aによる眼圧値の測定結果、及びオートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力等の測定結果などが記憶される。
【0042】
操作部32は、眼科装置10の電源のオンオフ操作、眼圧測定と眼屈折力及び角膜曲率測定との選択操作、眼圧値の測定開始操作、眼屈折力等の測定開始操作、及び眼科装置10の設定操作などを受け付ける。なお、測定開始操作としては、被検者(患者)に付されたバーコードの読み取り操作、及び患者情報の入力操作などが例として挙げられる。
【0043】
通信インタフェース34は、各種ネットワークを介して、眼科装置10の遠隔操作を行う外部の遠隔操作装置38(コンピュータ等)に接続されている。通信インタフェース34は、遠隔操作装置38から入力された遠隔操作情報を後述の遠隔操作受付部36へ出力する。また、通信インタフェース34は、制御装置16から入力された非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bにより撮影された前眼部像、非接触式眼圧計14Aによる眼圧値の測定結果、及びオートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力等の測定結果を遠隔操作装置38へ出力する。
【0044】
遠隔操作受付部36は、遠隔操作装置38から通信インタフェース34を介して入力された遠隔操作を受け付けて制御装置16に入力する。これにより、制御装置16が、遠隔操作受付部36から入力された遠隔操作に基づき、眼科装置10の動作を制御する。この場合には、制御装置16は本発明の動作制御部として機能する。
【0045】
制御装置16は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置16の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0046】
制御装置16は、記憶部30内の制御プログラムを読み出して実行することにより、非接触式眼圧計14Aによる被検眼の眼圧測定を制御する眼圧計制御部16Aと、オートレフケラトメータ14Bによる被検眼の眼屈折力等の測定を制御するオートレフケラトメータ制御部16Bとして機能する。なお、オートレフケラトメータ制御部16Bの機能、すなわちオートレフケラトメータ14Bによる眼屈折力等の測定については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0047】
眼圧計制御部16Aは、観察制御部40、固視制御部42、アライメント制御部44、検出値取得部46、駆動制御部48、吹付制御部50、測定制御部52、及び眼圧値演算部54として機能する。
【0048】
観察制御部40は、非接触式眼圧計14Aの測定開始操作に応じて、非接触式眼圧計14Aの観察光学系(特許文献1参照)を制御して被検眼の前眼部を撮影し、この前眼部の観察像(動画像)を表示部15又は通信インタフェース34を介して遠隔操作装置38に逐次出力する。これにより、表示部15又は遠隔操作装置38において観察像が動画表示される。
【0049】
固視制御部42は、非接触式眼圧計14Aの測定開始操作に応じて、非接触式眼圧計14Aの固視標投影光学系(特許文献1参照)を制御して被検眼に対して固視標光を投影する。これにより、被検者の視線を固定することができる。なお、被検眼に対する固視標光の投影タイミングは、ノズル20から角膜に空気が吹き付けられる前であれば特に限定はされない。
【0050】
アライメント制御部44は、非接触式眼圧計14Aの測定開始操作に応じて、非接触式眼圧計14Aのアライメント指標投影光学系及びアライメント検出光学系(特許文献1参照)を制御して、被検眼に対するXYアライメント指標光及びZアライメント指標光の照射と、各アライメント指標光の反射光の撮像(受光)とを実行する。次いで、アライメント制御部44は、各アライメント指標光の撮像信号(受光信号)に基づき、被検眼と非接触式眼圧計14Aとの3軸方向の位置関係を演算するアライメント検出を行う。なお、測定ヘッド14にステレオカメラ(図示は省略)を設け、このステレオカメラにより撮影された被検眼の一対の前眼部像に基づきアライメント検出を行ってもよい(例えば特開2013-248376号公報)。
【0051】
そして、アライメント制御部44は、このアライメント検出の結果に基づき、駆動機構13を駆動して、被検眼に対する非接触式眼圧計14Aのオートアライメントを実行する。
【0052】
検出値取得部46は、静電容量型センサ26の検出回路26bから静電容量の検出値を取得するインタフェースとして機能する。検出値取得部46は、被検眼に対する非接触式眼圧計14Aのオートアライメント(相対移動)が行われている間、検出回路26bから静電容量の検出値を繰り返し取得する。検出値は、既述の図5に示したようにノズル20から被検者の顔(被検眼)までの距離である顔距離(以下、顔距離と略す)を示す指標であり、この顔距離が短くなるほど増加する。
【0053】
駆動制御部48は、検出値取得部46が検出回路26bから新たな静電容量の検出値を取得するごとに、この検出値が予め定めた閾値よりも大きくなるか否かを判定する。この閾値は、例えば、顔距離が5mmになる場合の静電容量の検出値、すなわち、顔のまつ毛にノズル20が接触する顔距離に対応した静電容量の検出値に基づき定められる。そして、駆動制御部48は、静電容量の検出値が上述の閾値よりも大きくなる場合には、駆動機構13を駆動してオートアライメントを停止させる、或いは測定ヘッド14(ノズル20)を被検眼から遠ざかるように退避させる。
【0054】
なお、駆動制御部48が、検出回路26bの検出値に基づきオートアライメントを停止等させるか否かを判定する代わりに、検出回路26bの検出値から顔距離を検出してこの顔距離が予め定めた距離閾値(例えば5mm)未満になるか否かに基づきオートアライメントを停止等させるか否かを判定してもよい。
【0055】
吹付制御部50は、被検眼に対する非接触式眼圧計14Aのオートアライメントが完了した場合、すなわち非接触式眼圧計14Aが被検眼の眼圧値の測定可能範囲内(測定可能位置)まで移動した場合に、非接触式眼圧計14Aの吹付機構(特許文献1参照)を駆動して、ノズル20から被検眼の角膜に空気を吹き付ける。
【0056】
測定制御部52は、ノズル20から被検眼の角膜に空気が吹き付けられる間、非接触式眼圧計14AのXYアライメント指標投影光学系(特許文献1参照)から角膜に視標光を照射すると共に、圧平検出光学系(特許文献1参照)により角膜にて反射された視標光の反射光を検出する。
【0057】
眼圧値演算部54は、上述の圧平検出光学系(特許文献1参照)により検出された反射光の光量に基づき、被検眼の眼圧値を演算する。なお、眼圧値の具体的な演算方法は公知技術(特許文献1参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0058】
[眼科装置の作用]
図7は、上記構成の第1実施形態の眼科装置10の非接触式眼圧計14Aによる被検眼の眼圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、検者が操作部32に対して被検眼の眼圧値の測定開始操作を入力、或いは遠隔操作装置38からの測定開始操作を遠隔操作受付部36が受け付けると、眼圧計制御部16Aが被検眼の眼圧測定を開始する(ステップS1)。これにより、観察制御部40の制御の下で被検眼の前眼部の撮影と、表示部15又は遠隔操作装置38での観察像の表示とが実行される。また、固視制御部42の制御の下、被検眼に対して固視標光が投影される。
【0059】
さらに、アライメント制御部44の制御の下、被検眼に対する各アライメント指標光の照射と、各アライメント指標光の反射光の撮像(受光)と、が実行された後、各アライメント指標光の撮像信号(受光信号)に基づき、被検眼と非接触式眼圧計14Aとの3軸方向のアライメント検出が実行される。なお、既述の通り、ステレオカメラ(図示は省略)を用いてアライメント検出を行ってもよい。次いで、アライメント制御部44は、このアライメント検出の結果に基づき、駆動機構13を駆動して、被検眼に対する非接触式眼圧計14Aのオートアライメントを開始する(ステップS2)。
【0060】
オートアライメントが開始されると、検出値取得部46が、静電容量型センサ26の検出回路26bから静電容量の検出値を取得する(ステップS3)。次いで、駆動制御部48が、検出値取得部46が検出した静電容量の検出値が上述の閾値よりも大きくなるか否かを判定し、閾値以下である場合には待機状態となる(ステップS4でNO)。これにより、被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を非接触で検出することができる。
【0061】
以下、オートアライメントが実行されている間、検出値取得部46による静電容量の検出値の取得と、駆動制御部48による判定と、が繰り返し実行される(ステップS5でNO)。
【0062】
そして、駆動制御部48は、オートアライメントの実行中に検出値取得部46が検出した静電容量の検出値が上述の閾値よりも大きくなった場合(ステップS4でYES)、駆動機構13を駆動してオートアライメントを停止させる、或いは測定ヘッド14(ノズル20)を被検眼から退避させる(ステップS6)。なお、この場合に眼科装置10(遠隔操作装置38でも可)の表示部15或いは不図示のスピーカに対して警告情報の出力を行ってもよい。
【0063】
一方、静電容量の検出値が閾値以下のままでオートアライメントが完了すると(ステップS5でYES)、被検眼の眼圧測定が実行される(ステップS7)。これにより、吹付制御部50の制御の下、ノズル20から被検眼の角膜に空気が吹き付けられる。また同時に、測定制御部52の制御の下、角膜に対する視標光の照射と、角膜にて反射された視標光の反射光の検出とが実行された後、眼圧値演算部54により被検眼の眼圧値が演算される。この眼圧値は、記憶部30に記憶されると共に、表示部15又は遠隔操作装置38において表示される。
【0064】
以上のように第1実施形態では、オートアライメントの実行中に被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を静電容量型センサ26により非接触で検出することができる。これにより、被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接触を防止することができる。また仮にノズル20が被検眼に接触した場合であっても、被検眼に与える障害が最小限に抑えられる。さらに、検者が離れた場所から眼科装置10の遠隔操作を行う場合であっても、被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接触を確実に防止することができる。
【0065】
また、第1実施形態では静電容量型センサ26を用いることで、ノズル20の前方側に位置する被検眼の検出感度を高めることができる。
【0066】
さらに、第1実施形態では、電極26aがノズル20を囲む環状に形成されているので、ノズル20の前方側への静電容量型センサ26の指向性を高め、ノズル20の前方側に位置する被検眼に対する静電容量型センサ26の検出感度を高めることができる。
【0067】
[第2実施形態]
図8及び図9は、第1実施形態の静電容量型センサ26の課題を説明するための説明図である。上記第1実施形態では、ノズル20を囲むように静電容量型センサ26の電極26aを環状に形成することで、ノズル20の前方側への静電容量型センサ26の指向性を高めて、ノズル20の前方側のあらゆる方向からの被検眼E又は被検者の顔(以下、被検眼E等と略す)の接近を検出可能にしている。
【0068】
この際に図8の符号8Aに示すように、一般的には被検眼Eに対してノズル20を所定距離まで近づけたとしても、ノズル20の周囲の電極26a(図8では図示を省略)と被検者の額との間の距離LAが十分に確保される。このため、静電容量型センサ26の検出値が上述の閾値よりも大きくなること、すなわちノズル20に対して被検眼E等が近接したとの誤認が発生する可能性は低い。
【0069】
一方、図8の符号8Bに示すように、額が張り出している(顔の彫りが深い)等の被検者の顔の形状によっては、被検眼Eに対してノズル20を所定距離まで近づけた場合に距離LAが短くなることで、静電容量型センサ26の検出値が上述の閾値よりも大きくなるおそれがある。この場合には、既述の顔距離が十分に確保されており、且つノズル20が被検眼E等に接触するおそれがないのにも関わらず、ノズル20に対して被検眼E等が近接したとの誤認が発生してしまう。
【0070】
また、図9に示すように、検者が被検者の瞼を開く開瞼作業を行っている場合には、ノズル20の周囲の電極26a(図9では図示を省略)と検者の指との間の距離LBが短くなるため、静電容量型センサ26の検出値が上述の閾値よりも大きくなるおそれがある。この場合にも、ノズル20が被検眼E等に接触するおそれがないのにも関わらず、ノズル20に対して被検眼E等が近接したとの誤認が発生してしまう。
【0071】
そこで、第2実施形態の眼科装置10では、静電容量型センサ26の電極26aの形状を調整することで、ノズル20が被検眼E等に接触するおそれがないのにも関わらず、ノズル20に対して被検眼E等が近接したとの誤認が発生することを防止する。なお、第2実施形態の眼科装置10は、電極26aの形状が異なる点を除けば上記第1実施形態と基本的に同じ構成であるので、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0072】
図10は、第2実施形態の眼科装置10のノズル20及び静電容量型センサ26(電極26a)の斜視図である。図11は、第2実施形態の眼科装置10のノズル20及び静電容量型センサ26(電極26a)の正面図である。なお、図中の符号AXは眼科装置10の作動距離方向に平行なノズル20の中心軸を示し、符号ULは上下方向を示し、符号LRは中心軸AX及び上下方向ULの双方に垂直な方向(被検者の眼幅方向)である左右方向である。また、図中の符号HLは、中心軸AXに直交し且つ左右方向LRに平行な直線である平行線である。
【0073】
図10及び図11に示すように、第2実施形態の電極26aは、ノズル20の先端側から見た場合において、ノズル20を囲む環状領域(第1実施形態の電極26aの形成領域)の中で平行線HLよりも下方側の領域に形成、すなわち略半環状に形成されている。ここでいう「平行線HLよりも下方側の領域に形成」には、図10及び図11に示したような平行線HLよりも下方側の全領域に形成する場合と、平行線HLよりも下方側の領域の一部に形成する場合と、の両方が含まれる。
【0074】
図12は、第2実施形態の静電容量型センサ26の指向性を説明するための説明図である。なお、図中の符号RDは、静電容量型センサ26の検出範囲を示す。また、図12に示した検出範囲RDはその一例を示したものであり、その範囲は適宜変更可能である。
【0075】
図12に示すように、電極26aを略半環状に形成することで、ノズル20を左右方向LRの任意の一方向側から見た場合に、静電容量型センサ26の検出範囲RDが中心軸AXの上方側では第1実施形態よりも制限される。これにより、第2実施形態の静電容量型センサ26は、第1実施形態と同様にノズル20の前方側に指向性を有するが、ノズル20を左右方向LRの任意の一方向側から見た場合に中心軸AXの下方側よりも上方側の指向性が弱くなる。
【0076】
このように中心軸AXの上方側に対する静電容量型センサ26の指向性を弱めることで、被検眼Eに対してノズル20を所定距離まで近づけた場合に、既述の距離LA(図8参照)或いは距離LB(図9参照)が十分に確保される。その結果、ノズル20が被検眼E等に接触するおそれがないのにも関わらず、ノズル20に対して被検眼E等が近接したとの誤認の発生が防止される。
【0077】
[第3実施形態]
図13は、互いに異なる周囲環境(温湿度)下での既述の顔距離(mm)と、静電容量型センサ26で検出される検出値(pF)と、の対応関係(以下、単に対応関係と略す)を示したグラフである。ここでは符号XIIIAに示す低湿度環境下(湿度40%)と、符号XIIIBに示す高湿度環境下(湿度90%)とにおいて、複数の温度条件ごとに対応関係を測定してグラフ化している。なお、温度0°は氷点であるので正確な湿度設定を行うことはできないが、湿度40%の場合には空中の水分量が少ないので、低湿度環境下のみで温度0°での対応関係を測定してグラフ化している。また、図13中の検出対象物は被検眼E等を示す。
【0078】
図13に示すように、対応関係は周囲環境(温湿度)に応じて異なる。このため、上記第1実施形態のように、静電容量型センサ26の検出値が閾値(固定値)よりも大きくなるか否かに基づき被検眼E等にノズル20が近接しているか否かの判定が実行された場合には、被検眼E等に対してノズル20が近接していないのに近接しているとの誤判定がなされるおそれがある。また逆に、被検眼E等に対してノズル20が近接しているのに近接していないとの誤判定がなされるおそれがある。
【0079】
そこで、第3実施形態では、周囲環境に関係なく、被検眼E等に対してノズル20が近接しているか否かの判定を可能にする。具体的には第3実施形態では、オートアライメント開始前に静電容量型センサ26の検出値の初期値を予め取得し、この初期値とオートアライメント中に静電容量型センサ26が新たに検出した検出値との差分が予め定めた差分閾値よりも大きくなるか否かに基づき、被検眼E等に対してノズル20が近接しているか否かを判定する。
【0080】
なお、第3実施形態の眼科装置10は、制御装置16(図6参照)の検出値取得部46及び駆動制御部48の機能が一部異なる点を除けば、上記各実施形態と基本的に同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0081】
第3実施形態の検出値取得部46は、オートアライメント開始前の所定タイミングで本発明の初期値取得部として機能し、被検眼E等に対してノズル20が接近していない状態において、静電容量型センサ26からの検出値を初期値として取得する。この所定タイミングは、眼科装置10の電源ON時、測定開始操作時、或いは被検者の切替時などが例として挙げられる。なお、検出値取得部46は、オートアライメント中には上記第1実施形態と同様に静電容量型センサ26から検出値を繰り返し取得する。
【0082】
第3実施形態の駆動制御部48は、オートアライメント中に検出値取得部46が静電容量型センサ26から新たな検出値を取得するごとに、新たな検出値と検出値取得部46が先に取得した初期値との差分を演算し、この差分が予め定めた差分閾値よりも大きくなるか否かを判定する。この差分閾値は、第1実施形態の検出値の閾値と同様に、例えば顔距離が5mmになる場合の差分、すなわち、ノズル20がまつ毛に接触するような顔距離に対応した差分に基づき定められる。そして、駆動制御部48は、演算した差分が上述の差分閾値よりも大きくなる場合には、駆動機構13を駆動してオートアライメントを停止させる、或いは測定ヘッド14(ノズル20)を被検眼Eから遠ざかるように退避させる。
【0083】
なお、駆動制御部48が、演算した差分から顔距離を検出して、この顔距離が予め定めた距離閾値(例えば5mm)未満になるか否かに基づきオートアライメントを停止等させるか否かを判定してもよい。
【0084】
図14は、第3実施形態の眼科装置10の非接触式眼圧計14Aによる被検眼Eの眼圧測定処理の流れを示すフローチャートである。図14に示すように、第1実施形態(図7参照)と同様に測定開始操作がなされると(ステップS1)、検出値取得部46が、静電容量型センサ26から検出値の初期値を取得する(ステップS1A)。なお、この初期値の取得タイミングは、オートアライメント開始前、すなわち被検眼E等に対してノズル20が離れた位置にあるタイミングであれば特に限定はされない。
【0085】
そして、上記第1実施形態で説明したように、アライメント制御部44の制御の下でアライメント検出が実行された後、被検眼Eに対する非接触式眼圧計14Aのオートアライメントが開始される(ステップS2)。
【0086】
オートアライメントが開始されると、検出値取得部46が、静電容量型センサ26から検出値を取得する(ステップS3)。次いで、駆動制御部48が、検出値取得部46により新たに取得された検出値と、検出値取得部46により先に取得された初期値との差分を演算し(ステップS3A)、この差分が差分閾値よりも大きくなるか否かを判定する(ステップS4A)。そして、駆動制御部48は、差分が差分閾値以下である場合には待機状態となる(ステップS4AでNO)。
【0087】
以下、オートアライメントが完了するまでの間において差分が差分閾値よりも大きくならない限りは、検出値取得部46による検出値の取得と、駆動制御部48による差分演算及び判定と、が繰り返し実行される(ステップS4AでNO、ステップS5でNO)。
【0088】
一方、駆動制御部48は、差分が差分閾値よりも大きくなる場合には(ステップS4AでYES)、第1実施形態と同様に駆動機構13を駆動してオートアライメントを停止させる、或いは測定ヘッド14を被検眼Eから退避させる(ステップS6)。なお、第1実施形態と同様に警告情報の報知(表示、音声出力)を実行してもよい。
【0089】
オートアライメントが完了すると(ステップS5でYES)、第1実施形態と同様に被検眼Eの眼圧測定が実行される(ステップS7)。
【0090】
以上のように第3実施形態では、静電容量型センサ26の初期値を予め取得し、この初期値と静電容量型センサ26が新たに取得した検出値との差分が差分閾値よりも大きくなるか否かを判定することで、周囲環境の影響を受けることなく、被検眼E等に対してノズル20が近接しているか否かを正確に判定可能である。
【0091】
[その他]
上記各実施形態では、ノズル20から被検眼の角膜に向けて空気を吹き付けているが、空気以外の各種流体を吹き付けてもよい。
【0092】
上記各実施形態では、オートアライメントの実行中に被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を静電容量型センサ26により非接触で検出しているが、手動アライメントの実行中においても同様の検出を静電容量型センサ26により行ってもよい。また、上記実施形態では、駆動機構13により測定ヘッド14を3軸方向に移動させることによりアライメントを実施しているが、例えば電動型の顔支持部12を駆動して被検者の顔を3軸方向に移動させることでアライメントを実施してもよい。
【0093】
上記各実施形態では、静電容量型センサ26の電極26aがノズル20を囲む環状或いは半環状に形成されているが、ノズル20を中心とする軸周り方向に沿って複数に分割されていてもよい。また、電極26aがノズル20の上下左右の少なくとも一方向側に設けられていてもよい。すなわち、電極26aがノズル20の周囲の少なくとも一部に設けられていてもよい。さらに、電極26aがガラス保持部24内に埋設されていてもよい。さらにまた、ノズル20に対する被検者の顔(被検眼)の接近を検出可能であれば、電極26aの位置及び形状は適宜変更可能である。
【0094】
上記各実施形態では、ノズル20の周囲に1個の静電容量型センサ26を設けているが、ノズル20の周囲に複数の静電容量型センサ26を設けてもよい。この場合、駆動制御部48は、静電容量型センサ26ごとに検出された顔距離のいずれかが上述の閾値未満になった場合に、オートアライメントの停止等を行う。
【0095】
上記各実施形態では、静電容量型センサ26を用いて被検者の顔及び被検眼に対するノズル20の接近を検出しているが、例えば超音波センサ及び赤外線近接センサ等の公知の各種非接触式センサ(近接センサ)を用いてもよい。
【0096】
上記各実施形態では、非接触式眼圧計14A及びオートレフケラトメータ14Bの複合機である眼科装置10を例に挙げて説明を行ったが、非接触式眼圧計14Aの単体にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 眼科装置
11 ベース
12 顔支持部
12a 顎受け部
12b 額当て部
13 駆動機構
14 測定ヘッド
14A 非接触式眼圧計
14B オートレフケラトメータ
15 表示部
16 制御装置
16A 眼圧計制御部
16B オートレフケラトメータ制御部
20 ノズル
22 窓ガラス
24 ガラス保持部
25 光学系
26 静電容量型センサ
26a 電極
26b 検出回路
26c 配線
30 記憶部
32 操作部
34 通信インタフェース
36 遠隔操作受付部
38 遠隔操作装置
40 観察制御部
42 固視制御部
44 アライメント制御部
46 検出値取得部
48 駆動制御部
50 吹付制御部
52 測定制御部
54 眼圧値演算部
AX 中心軸
E 被検眼
HL 平行線
LA,LB 距離
LR 左右方向
RD 検出範囲
UL 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14