IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーク製作所の特許一覧

<>
  • 特許-エキシマランプを備えたオゾン発生器 図1
  • 特許-エキシマランプを備えたオゾン発生器 図2
  • 特許-エキシマランプを備えたオゾン発生器 図3
  • 特許-エキシマランプを備えたオゾン発生器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-09
(45)【発行日】2025-04-17
(54)【発明の名称】エキシマランプを備えたオゾン発生器
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/10 20060101AFI20250410BHJP
【FI】
C01B13/10 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021151767
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023043982
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-07-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和3年1月16日掲載、https://www.roomiair.com ,株式会社オーク製作所、小林剛、芹澤和泉が発明した、ガラスカバーに放電ランプを収納して底部に操作部を設けたオゾン発生器を公開した。(2)令和3年1月16日放送、BSテレビ東京 羽田土曜会、株式会社BSテレビ東京、上記オゾン発生器を公開した。(3)令和3年7月7日販売、販売場所:有限会社カミノ、 公開者:株式会社オーク製作所、上記オゾン発生器を販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-198175(JP,A)
【文献】特開2003-092072(JP,A)
【文献】特開2020-097428(JP,A)
【文献】特開平11-047635(JP,A)
【文献】実開平05-088548(JP,U)
【文献】特開2019-043786(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160820(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00-13/10
H01J 65/00
F21L 19/00
F21V 33/00
F24F 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、
前記エキシマランプを収容し、両端に開口部を設けた管状のランプカバーであって、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが下流端の開口部から流出する管状のランプカバーと
前記ランプカバーを、前記ランプカバーの上流端側から支持する基部とを備え、
前記ランプカバーの開口部の径の大きさが、前記エキシマランプと向かい合う対向部分の径の大きさよりも小さく、
前記ランプカバーの下流端の厚さが、前記対向部分の厚さと比べて大きいことを特徴とするオゾン発生器。
【請求項2】
前記ランプカバーが、少なくとも前記対向部分から前記下流端に向けて先細くなり、
前記ランプカバーの厚さが、前記対向部分から前記下流端に向けて増していくことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生器。
【請求項3】
前記ランプカバーが、前記エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を透過し、
前記ランプカバーの少なくとも一部を照らす照明光源をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のオゾン発生器。
【請求項4】
前記照明光源が、前記ランプカバーの上流端と向かい合うように、環状に構成されていることを特徴とする請求項3に記載のオゾン発生器。
【請求項5】
前記ランプカバーの上流端と前記照明光源の照射面との間に、照明光を拡散させる光学素子が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載のオゾン発生器。
【請求項6】
エキシマランプと、
前記エキシマランプを収容し、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが流出する開口部を下流端に設けた管状のランプカバーとを備え、
前記ランプカバーの開口部の径の大きさが、前記エキシマランプと向かい合う対向部分の径の大きさよりも小さく、
前記ランプカバーの下流端の厚さが、前記対向部分の厚さと比べて大きく、
前記ランプカバーを支持する基部をさらに備え、
前記基部の一部が、機器に対して相対的に周方向に回す操作が可能な周方向操作部によって構成され、
前記周方向操作部に対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われることを特徴とするオゾン発生器。
【請求項7】
前記ランプカバーが、前記周方向操作部とともに周方向に回るように、前記周方向操作部と嵌合していることを特徴とする請求項6に記載のオゾン発生器。
【請求項8】
径方向操作部をさらに備え、
前記径方向操作部に対する径方向に押す操作に応じて、前記周方向操作部の機器動作とは異なる予め定められた機器動作が行われることを特徴とする請求項6または7に記載のオゾン発生器。
【請求項9】
エキシマランプと、
前記エキシマランプを収容し、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが流出する開口部を下流端に設けた管状のランプカバーとを備え、
前記ランプカバーの開口部の径の大きさが、前記エキシマランプと向かい合う対向部分の径の大きさよりも小さく、
前記ランプカバーの下流端の厚さが、前記対向部分の厚さと比べて大きく、
前記ランプカバーを支持する基部をさらに備え、
前記ランプカバーが、前記基部に対して周方向に回す操作が可能であり、
前記ランプカバーに対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われることを特徴とするオゾン発生器。
【請求項10】
前記基部が、電池およびランプ電源部を収容することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載のオゾン発生器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプを用いたオゾン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生器として、低濃度によるオゾン発生可能であって、持ち運びおよび設置が自在なタイプ(以下、携帯型という)の小型オゾン発生器が知られている(非特許文献1参照)。そこでは、ガラスカバーにエキシマランプを収容し、エキシマランプの紫外線照射によって発生したオゾンを放出し、除菌、消臭などを行う。その一方で、エキシマランプの放電状態をガラスカバー越しに視認することができ、アンティークな照明器具を想起させる演出性の高いデザインを提供している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社MONOCO HP「RoomiAir(登録商標) 」商品紹介サイト[令和3年9月17日検索]、インターネット<URL:https://monoco.jp/brand/ozone/55379>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯型のオゾン発生器では、ユーザが任意の場所へ自由に持ち運べる利便性を備えているが、ユーザによる取り扱い方によっては、ガラスカバーなどに対して傷やクラックなどが生じる可能性があり、また、操作時などにおいて転倒の恐れもある。
【0005】
したがって、携帯型のオゾン発生器において、優れた利便性を維持しながら、ユーザによる取り扱い方に対して安定した信頼性のある構造を備えることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるオゾン発生器は、エキシマランプと、前記エキシマランプを収容し、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが流出する開口部を端(ここでは、下流端という)に設けた管状のランプカバーとを備える。そして、前記ランプカバーの開口部の径の大きさが、前記エキシマランプと向かい合う対向部分の径の大きさよりも小さく、前記ランプカバーの下流端の厚さが、前記対向部分の厚さと比べて大きい。
【0007】
例えば、ランプカバーが、少なくとも前記対向部分から前記下流端に向けて先細くなり、前記ランプカバーの厚さが、前記対向部分から前記下流端に向けて増していくように、構成されている。
【0008】
また、ランプカバーは、前記エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光(可視光を含む)を透過するように構成することができる。例えば、オゾン発生器は、前記ランプカバーの少なくとも一部を照らす照明光源を備えることができる。
【0009】
照明光源は、前記ランプカバーの下流端とは反対側にある端部(ここでは、上流端という)と向かい合うように、環状に構成することができる。ここでの「向かい合う」は、厳密な対向配置だけでなく、上流端を経由してランプカバー下流端へ照明光が伝達するような配置を表す。ランプカバーの上流端と前記照明光源の照射面との間に、照明光を拡散させる光学素子を設けることが可能である。
【0010】
オゾン発生器は、ランプカバーを支持する基部を備え、電池およびランプ電源部を収容可能である。そして、基部の一部は、機器に対して相対的に周方向に回す操作が可能な周方向操作部によって構成することが可能である。周方向操作部に対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われる。例えば、ランプカバーは、前記周方向操作部とともに周方向に回るように、前記周方向操作部と嵌合している。
【0011】
あるいは、ランプカバーが、前記基部に対して周方向に回す操作が可能であり、前記ランプカバーに対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われるように構成することも可能である。
【0012】
さらにオゾン発生器は、押下するなどランプカバー径方向に沿って操作される径方向操作部を備えることが可能である。径方向操作部に対する径方向に押す操作に応じて、前記周方向操作部の機器動作とは異なる予め定められた機器動作が行われる。
【0013】
なお、周方向操作部に関する構成を特徴とするオゾン発生器を提供することも可能である。すなわち、エキシマランプと、前記エキシマランプを収容し、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが流出する開口部を下流端に設けた管状のランプカバーと、前記ランプカバーを支持する基部とを備え、前記基部の一部が、機器に対して相対的に周方向に回す操作が可能な周方向操作部によって構成され、前記周方向操作部に対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われるオゾン発生器を提供することができる。あるいは、エキシマランプと、前記エキシマランプを収容し、前記エキシマランプの紫外線照射によって発生するオゾンを含むガスが流出する開口部を下流端に設けた管状のランプカバーと、前記ランプカバーを支持する基部とを備え、ランプカバーが、前記基部に対して周方向に回す操作が可能であり、前記ランプカバーに対する周方向に回す操作に応じて、予め定められた機器動作が行われるオゾン発生器を提供することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、携帯型のオゾン発生器において、優れた利便性を維持しながら、ユーザによる取り扱い方に対して安定した信頼性のある構造を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
図2】オゾン発生器の概略的ブロック図である。
図3】第2の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
図4】第3の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態であるエキシマランプを備えたオゾン発生器について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
【0018】
オゾン発生器100は、エキシマランプ10を備え、バッテリ駆動による携帯型のオゾン発生装置であり、ここでは低濃度のオゾン発生器として構成されている。オゾン発生器100は、周方向操作部30および電源収容部40から構成される基部100Aにランプカバー20を載せた構造であって、基部100Aは、ランプカバー20を支持する。
【0019】
ランプカバー20は、ここでは円錐台形状でエキシマランプ10を収容する外套管として構成され、また、周方向操作部30、電源収容部40は、それぞれ環状、有底筒状に構成され、中心軸Cに対して対称的な形状になっている。電源収容部40は、リチウムイオン電池などのバッテリ60を収容するとともに、吸気ファン45を底部に設けている。また、電源収容部40は、ランプ電源回路75を備え、中心軸C付近に開口部66Aを設けた電源カバー66が、ランプ電源回路75を覆うように配置されている。
【0020】
ランプカバー20、周方向操作部30、電源収容部40は、流路管として機能するように構成されている。吸気ファン45によって酸素を含む原料ガス(ここでは空気)は、基部100A内に流入し、電源カバー66内部および外部を通ってエキシマランプ10を収容するランプカバー20の内部空間を通り、下流端(以下、上端という)20Sに形成された開口部20Aから流出する。
【0021】
ここで、吸気ファン45によって基部100A内に流入した原料ガスは、主に電源カバー66の開口部66Aから一方向に沿って吹出て、その周囲で一方向に沿って流れる流体を誘引する。ここで、「一方向に沿って吹出る」とは、流体の速度や流量を限定することではなく、運動エネルギーを与えられた流体が開口部66Aから流れ出て、エキシマランプに向けて供給すればよい。また、「一方向に沿って流れる」とは、厳密に一方向に平行であることではなく、概ね一方向に向く流れであればよい。吹出流と、誘引された流体の流れ(ここでは、随伴流という)とによって、一方向に向けた速度分布が一様でない流れ(非一様流)が形成されるが、エキシマランプは非一様流の領域に配置することができる。
【0022】
エキシマランプ10は、ランプカバー20に対して同軸的に配置され、ランプカバー20のランプ軸Cが中心ラインに沿うように、支持部材(図示せず)によって支持されている。放電容器10A内には、その一部が露出した内側電極(図示せず)が配置され、放電容器10Aの外表面には、外側電極(図示せず)が配設されている。
【0023】
電源収容部40の外表面には、エキシマランプ10を点灯/消灯させるために操作される径方向操作部35が設けられている。ユーザによって径方向操作部35が操作(径方向に沿って接触および押下)されると、基部100Aに設けられたランプ電源回路75からエキシマランプ10の内側電極と外側電極との間に対して高周波高電圧が印加される。
【0024】
これにより、放電容器10A内に誘電体バリア放電が生じ、ここでは真空紫外線の波長域、すなわち波長200nm以下の紫外線(ピーク波長172nm)がエキシマ光として放射される。これによって、エキシマランプ10周囲を流れる原料ガスに含まれる酸素からオゾンが発生し、オゾンを含むガスが、ランプカバー20の開口部20Aから放出される。
【0025】
ここでは、点灯(点弧)直後の不安定な放電状態(過渡状態の放電)から、安定した放電状態(定常状態の放電)へ移行する前にエキシマランプ10を消灯(消弧)させ、その直後に再び点灯させる。このように点灯および消灯を繰り返す(以下、周期的点灯という)ことにより、過渡状態の放電を継続的に発生させ、演出性を高めている。なお、定常状態の放電による点灯を行ってもよい。
【0026】
また、誘電体バリア放電では、所定周波数によって電圧が印加されると、収斂した細線状のマイクロプラズマ放電が生じた部分で放電が継続し、細線状のマイクロプラズマ放電が生じてない部分では放電がその後も生じないという、いわゆる記憶効果がある。ここでは、いわゆる記憶効果をリセットする(放電が生じる前の状態に戻す)ように、記憶効果が生じる定常状態の放電を発生させる前に消灯し、過渡状態の放電を繰り返すリセット点灯動作を行う。
【0027】
周期的点灯は、エキシマランプ10を高周波高電圧の印加によって点灯させるときの印加電圧の周波数f1よりも低い周波数f2に基づいて行われる。例えば、印加電圧の周波数f1が1kHz~500kHzの範囲で定められる場合、周波数f2は、1~60Hzの範囲に定められる。特に、20Hz~40Hzの範囲に定めればよい。
【0028】
周期的点灯によるエキシマランプ10の点灯を行うと、マイクロプラズマ放電が放電容器10Aにおいて管壁に偏った放電が形成され、放電容器10A全体において密に一様な放電が生じない。そのため、放電容器10A内のランプ軸Cに沿った放電空間領域を大きくしても、オゾン生成量が大幅に増えることはなく、低濃度オゾン(低量のオゾン)を安定して発生させることができる。
【0029】
また、エキシマランプ10の周期的点灯を行うことにより、誘電体バリア放電において生じるマイクロプラズマ放電(放電柱)は、点滅(リセット)ごとに異なる位置で生じる。これは、再点灯させる瞬間に電気抵抗(温度)が低い空間領域にマイクロプラズマ放電が生じることに起因する。
【0030】
比較的温度の低い空間領域に移り変わりながら過渡状態の放電が継続的に生じることにより、定常状態の放電のように、同じ領域に紫外線照射やオゾン生成し続けることがない。そのため、放電容器10A内で一様に生じる放電によって放電容器10A全体に温度上昇が生じることがなく、紫外線強度の高い放電容器10Aの表面付近における温度上昇が抑えられることにより、オゾンによる熱分解が抑制される。したがって、持続的に低濃度オゾンを安定して発生させることが可能となり、バッテリ容量に対してオゾン生成時間を長くすることができる。
【0031】
さらに、照明や露光においては異常な放電状態であるとみなされるスネーキングやチラツキを意図的に発生させたように、内部電極の先端部から収斂した細線状のマイクロプラズマ放電が伸び、放電容器10A内面に沿って不規則で複雑な周期的変化が恒常的に生じる状態となる。このような放電状態にしたことにより、放電容器10Aの同じ領域に対して紫外線を照射し続けることがなく、視覚的に演出性のある過渡状態の放電が繰り返されることになり、室内に設置してもインテリアデザインなどに馴染むことができる。
【0032】
過渡状態の放電を継続した場合、オゾン発生量は、定常状態の放電によるオゾン発生量の半分以下となる。それに対し、定常状態の放電による点灯を行って、エキシマランプ10付近を流れる空気に対してオゾン生成に十分な紫外線強度を有する紫外線を照射するためには、エキシマランプ10の放電容器10Aの外表面とランプカバー20の内表面20Bとの離間距離をできるだけ短くするのがよい。
【0033】
しかしながら、吸気ファン45によって流量を多くすることによりオゾン生成の効率を高めようとしても、エキシマランプ10のランプカバー20内に占める空間(領域)の割合が大きくなり過ぎると、空気がエキシマランプ10付近を通過するときに流れ難くなり、圧力損失となってしまう。
【0034】
そこで、ランプカバー20の内表面20Bにおいて、エキシマランプ10の放電容器10Aとの距離間隔、すなわち、エキシマランプ10の放電容器10Aと対向位置にある部分(以下、対向部分という)20Nの距離間隔は、紫外線強度が放電容器10A表面から50%まで減衰する距離(紫外線減衰距離)よりも十分長く、対向部分20Nの下端側から上端側に向けて距離間隔が小さくなるように、定められている。
【0035】
ランプカバー20は、ここでは全体的に透明なガラス製容器によって構成され、エキシマランプ10から紫外線とともに放射される可視光を透過する一方、紫外線の少なくとも一部を透過しない透明な材料で構成されている。例えば、放電容器10Aを構成する合成石英ガラスよりも紫外線の透過率が低いガラスなどによって、構成することが可能である。これによって、ユーザは放電状態を視認することができる。円錐台形状のランプカバー20は、上流端(以下、下端という)20K側の嵌合部20Mにおいて周方向操作部30と嵌合し、その上端20Sに向けてテーパー状に先細くなっている。
【0036】
一方、ランプカバー20は、嵌合部20Mの上面20Tから上端20Sに向けてその厚みが増していくように構成されている。したがって、ランプカバー20の上端20Sの厚さT1が、最も大きく、ランプカバー20のエキシマランプ10との対向部分20Nの厚さT2よりも大きい。すなわち、ランプカバー20は、エキシマランプ10によるオゾン生成領域よりも、開口部20Aの方が厚みのある構成となっている。
【0037】
このようなランプカバー20の構成により、ユーザの持ち運び、設置のときの衝撃などに対して耐久性をもつことができる。ランプカバー20の開口部20Aのサイズが基部100Aと比べて小さくしているため、ユーザが何からの理由でランプカバー20の上端20Sに対し、他のものなどを置くような行為を抑制して、開口部20Aからのオゾンを含むガスの放出やユーザによる視認ができなくなることを防止することができる。
【0038】
ランプカバー20は、上端20Sに近いほど厚みがあるため、外部から衝撃を受けても破損しにくい。例えば、ユーザがオゾン発生器100の底面100Bを掴んで持ち運ぶとき、誤ってランプカバー20の上端20S付近が他のものと接触あるいは当たっても、破損やクラック発生を防ぐことができる。
【0039】
また、オゾン発生器100を台上や卓上に設置するときに誤って転倒させた場合でも、ランプカバー20の破損やクラック発生を抑えることができる。さらに、ランプカバー20は、重量のある基部100Aを保持するだけの耐力(構造的な強度)を十分備えており、ユーザがランプカバー20の上端20S付近を把持して持ち上げることができる。
【0040】
その一方で、ユーザがオゾン発生器100を取り扱う過程で衝撃を与えることなどによって、ランプカバー20にクラックなどが発生する場合も起こりえる。ユーザがそのクラック発生に気付かないまま使用し続けた場合、ランプカバー20の破損などの事態が生じる恐れがある。そのため、ユーザがクラック発生などを認識できるように、エキシマランプ10から視認される可視光とは別の照明光を、ランプカバー20下方から照明可能な構成を採用している。
【0041】
周方向操作部30は、その内部に環状の照明光源50を備え、電源収容部40側から支持することにより周方向操作部30の内周面に沿って近接するように固定配置されている。照明光源50は、ここでは可視光を放射するLEDを環状に並べた光源として構成され、照明光源50の放射面50Mが、ランプカバー20の嵌合部20Mの下端20Kと対向している。また、照明光源50の放射面50M上には、照明光源50から放射される照明光を拡散させる環状の拡散板52が配置されている。
【0042】
照明光源50から放射された光は、拡散板52を通じてランプカバー20の嵌合部20Mの下端20Kおよび電源カバー66の側面66Sに向けて放射される。そしてランプカバー20の嵌合部20Mの下端20Kに照射された光の一部は、ランプカバー20の管壁内(管壁の境界面)での反射を繰り返す、いわゆるファイバー効果によってランプカバー20の上端20S側に向けて伝わることによって、ランプカバー20の嵌合部20Mの上面20T付近、ランプカバー20の内面20Bの一部、さらには上端20S付近から放出される。これらの光が放電容器10A内に照射される結果、低温状態や暗黒状態や長時間の休止状態後においても、確実に安定点灯状態に至り、エキシマランプの点灯始動性を高めることができる。
【0043】
照明光源50による照明光は、ここでは、エキシマランプ10から紫外線とともに放射される可視光の波長(例えば、400nm~500nm、500nm~650nmの波長域をもつ青色および緑色~赤色の波長域の光によって赤紫色系の光。また、545nm付近の波長をもつ緑色の光。)とは異なる波長(例えば、波長400nm~800nmの範囲)の光であり、ランプカバー20に生じたクラックや傷などによってファイバー効果により伝わった光の一部が反射し、輝点が生じたとき、ユーザがエキシマランプから放射される光と混同視せずに発見しやすい光であればよい。これによって、ランプカバー20の破損を事前に防ぐことができる。
【0044】
特に、環状の照明光源50をランプカバー20の下端となる嵌合部20Mの近くに配置し、点光源として放射するLEDに対向して拡散板52を設けることにより、照明光がランプカバー20の嵌合部20Mの下端20Kを周方向全体に渡って一様に照らすことを可能にする。さらに、ランプカバー20の管壁内での反射を繰り返すことにより、ユーザは、ランプカバー20が一様に照明されているように視認することができる。そのため、ランプカバー20にクラックや傷などが生じていなければ、ランプカバー20の管壁内をファイバー効果により伝わる光に対し、ユーザが輝点を視認することはない。なお、演出性を考慮し、暖色系の照明光を放射するLEDで照明光源50を構成することも可能である。
【0045】
なお、環状の周方向全体に渡って一様に放射する照明光源を用いることも可能である。環状の照明光源50を配置する代わりに、1つまたは複数の所定間隔をあけて並ぶ光源にすることも可能であり、また、光学素子などを利用して、ランプカバー20の内表面20Bを広範囲に照明するようにしてもよい。
【0046】
周方向操作部30は、電源収容部40に対し、軸受(以下、ベアリングという)37を介して摺動可能に支持されている。例えば、周方向操作部30の内周面に周方向に沿った溝を設け、その溝の周方向に均等な位置で、複数のベアリングの外周面を溝に嵌め入れて当接させた構成とすることにより、中空軸のような構成として摺動可能に支持することができる。ユーザが周方向操作部30に対して周方向に回す操作(回転操作、捻る操作、捩じる操作を含む)を行うと、周方向操作部30は、電源収容部40に対して相対的に周方向に回る。
【0047】
周方向操作部30は、ベアリング37の部分により電源収容部40に対して相対的に周方向に回るため、電源収容部40との間には空間的に外部と接続する隙間が形成されている。そのため、ランプカバー20の開口部20Aにおける障害物などの設置などにより、ランプカバー20の開口部20Aから流出する原料ガスの流量が減少した場合、電源収容部40内の原料ガスは、その隙間から流出する。すなわち、周方向操作部30と電源収容部40との隙間が副次的に流出口として機能する。
【0048】
そのため、例えばランプカバー20の開口部20Aが塞がれるなど通常とは異なる(異常な)状態になっても、生成したオゾンが高濃度と成ったり、逆方向へ流れたりすることを防いで、吸気ファン45が吸気した原料ガスを安全に装置外部へ流出させることができる。
【0049】
ランプカバー20の嵌合部20Mと周方向操作部30の間には弾性のOリング31が介在し、ランプカバー20の嵌合部20Mは、Oリング31を押し広げるように周方向操作部30に押し付けて嵌合する。そのため、ランプカバー20は、周方向操作部30とともに一体となって周方向に回る。
【0050】
本実施形態では、照明光源50の点灯/消灯および照明光源の光量調整が、周方向操作部30に対する周方向に回す操作によって行われる。周方向操作部30が基準となる位置から周方向に回すと、機器動作ON状態となる。また、周方向操作部30の基準位置から周方向への操作量に応じて、照明光源50の光量が増加していく。
【0051】
基部100Aには、周方向操作部30の周方向へ移動(回転)および移動量(回転角)を検出する動作検出部70が設けられている。動作検出部70は、ランプ電源回路75と向かい合う位置に配置され、ここでは可変抵抗器を備えるとともに、歯車71が設けられている。歯車71は、周方向操作部30の内側側面に形成された環状歯車72と係合する。周方向操作部30の周方向に回す動きに合わせて環状歯車72が動いて、歯車71を回転させることにより、動作検出部70の抵抗値が変化する。
【0052】
周方向操作部30をランプカバー20と電源収容部40との間に設けた構成にすることにより、周方向操作部30の周方向に回す(回転)操作に対してランプカバー20が摺動せずに連動する。そのため、オゾン発生器100は、周方向に回す操作(回転操作)の間、安定した姿勢を維持することができる。また、基部100A内に設けられたバッテリ60、ランプ電源回路75などが、重心バランスを考慮した配置になっていることにより、オゾン発生器100は、転倒しにくく、また、周方向操作部30の周方向に回す操作による回転する力に対して安定した状態を維持することができる。
【0053】
すなわち、周方向操作部30および電源収容部40内に配置されたランプ電源回路75と動作検出部70は、中心軸Cに対して略対称的な位置に配置されている。また、吸気ファン45と給電端子65に関しても、中心軸Cに対して略対称的な位置に配置されている。さらにバッテリ60は、オゾン発生器100の底部で、中心軸C付近に配置されている。
【0054】
これら比較的重量のある構成要素を、オゾン発生器100の鉛直方向に沿って下方側に配置して重心位置を低くするとともに、対称配置させている。そのため、周方向操作部30へ周方向に回す操作の力が加えられても、オゾン発生器100は安定した状態を維持することができる。
【0055】
さらに、径方向操作部35が、周方向操作部30より下方に位置する電源収容部40に設けられている。そのため、ユーザが径方向操作部35を押す(接触および押下)操作したときにかかる力に対しても、オゾン発生器100は安定した姿勢を保つことができる。
【0056】
図2は、オゾン発生器100の概略的ブロック図である。
【0057】
制御部110は、エキシマランプ10の点灯制御を含め、オゾン発生器100の動作全体を制御する。ランプON/OFF回路120は、ランプ電源回路75と接続し、エキシマランプ10の周期的な点灯と消灯の繰り返しを実行可能なように、ランプ電源回路75の動作を制御する。制御部110など各回路へ電源供給するバッテリ60は、給電端子(ここではUSB端子)65を通じて充電可能である。
【0058】
ユーザの周方向に回す操作によって周方向操作部30が所定の基準位置から周方向に沿って移動すると、その動きに合わせて環状歯車72が動いて、歯車71を回転させることにより、動作検出部70の抵抗値の変化として、制御部110が移動を検出し、これによってオゾン発生器100が電源ON状態になる。点灯回路55は、LEDによって構成される照明光源50に対し、電流駆動する。点灯回路55は、動作検出部70によって検出される移動量(回転角)に応じて予め定められた電流値で照明光源50を駆動する。
【0059】
一方、径方向操作部35が操作されると、吸気ファン45が動作するとともに、制御部110からの制御信号に基づき、エキシマランプ10が点灯する。再び径方向操作部35が操作されると、エキシマランプ10が点灯終了し、吸気ファン45の動作が停止する。
【0060】
本実施形態では、ランプ電源回路75、動作検出部70を覆うように電源カバー66を設ける構成になっているが、より重心位置を低くするため、ランプ電源回路75、動作検出部70をオゾン発生器100の底面100B近くに配置して電源カバー66を設けないようにすることも可能である。
【0061】
また、Oリング31を用いずに、ランプカバー20の下端外周面と周方向操作部30の内周面との間で摺動させないように接触させ、ランプカバー20を周方向操作部30に嵌合させることも可能である。さらに、ベアリング37以外の構造によって、周方向操作部30を電源収容部40に対して相対的に周方向に回してもよい。
【0062】
本実施形態では、周方向操作部30に対する周方向に回す操作によって、機器動作ONおよび照明光源50の点灯動作などの予め定められた機器動作を実行するが、エキシマランプ10の周期的点灯など、異なる動作処理を周方向に回す操作に応じて実行するようにしてもよい。また、径方向操作部35に対する径方向に押す操作によって、エキシマランプ10の周期的点灯などの予め定められた機器動作を実行するが、機器動作ONおよび照明光源50の点灯動作など、異なる動作処理を径方向に押す操作に応じて実行するようにしてもよい。
【0063】
次に、図3を用いて、第2の実施形態であるオゾン発生器について説明する。図3は、第2の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
【0064】
オゾン発生器100’は、管状のランプカバー20’を基部100’Aに載せた構造であり、基部100’Aは、有底筒状の電源収容部40’から構成され、周方向操作部は設けられていない。基部100’Aの底部には、吸気ファン45’が中心軸Cに対して同軸的に配置される。環状の照明光源50は、電源収容部40’の内周面に沿って設置されている。ユーザは、操作部35’に対する入力操作によって、機器電源ON、照明光源50の点灯、エキシマランプ10の点灯を実行させることができる。なお、ランプ電源回路、電池などは図示を省略している。
【0065】
図3に示すように、ランプカバー20’は、下端からエキシマランプ10との対向部分20’Nまで略同一径であり、エキシマランプ10の下端位置を超えて対向部分の途中から上端部20’Sに向けて絞り込むように細径となる瓶型の曲面形状で構成されている。ランプカバー20’は、上端20’Sで最も厚みがあり、エキシマランプ10との対向部分20’Nから上端20’Sに向けて徐々に厚みが増していく。ランプカバー20’の上端20’Sの厚さT1は、対向部分の厚さT2よりも大きい。
【0066】
そのため、第1の実施形態と同様、ランプカバー20’に対して衝撃などが加わってもクラックや傷が生じるのを抑えることができる。また、エキシマランプ10との対向部分20’Nにおいて、エキシマランプ10からランプカバー20の内面20’Bまでの距離が十分確保され、ランプ軸方向に沿って内径が細くなっているため、紫外線の影響を確実に抑えることができる。その一方で、照明光源50の点灯により、クラックなどが発生したときにその発見が容易となる。
【0067】
次に、図4を用いて、第3の実施形態であるオゾン発生器について説明する。図4は、第3の実施形態であるオゾン発生器の概略的断面図である。
【0068】
オゾン発生器100”は、ベアリング37を介して管状のランプカバー20”を基部100”Aと一体にした構造であり、ランプカバー20”は、基部100”Aに対して周方向に沿って回す(捻り、捩じり)操作が可能である。ランプカバー20”は、開口部66”Aを中心付近に設けた電源カバー66”を下端側に設けている。
【0069】
第1の実施形態と同様、吸気ファン45、バッテリ60、ランプ電源回路75、動作検出部70が設けられている。また、ランプカバー20”の上端20S”の厚みT1は、エキシマランプ10の対向部分20”Nの厚さT2よりも大きい。なお、動作検出部70については、その構成の図示を一部省略している。
【0070】
第3の実施形態では、ランプカバー20”が周方向操作部を兼ねている。そのため、オゾン発生器100”をよりコンパクト化することができる。また、重心位置がより低くなるため、周方向に回す操作時の安定性が増す。
【0071】
第1~第3の実施形態では、ランプカバーがガラス製で構成されているが、他の可視光に関して透過性、透光性のある素材によって成形してもよい。素材などの影響により、ランプカバーの耐久性などが確保され、また、傷やクラック発生が抑制されるのであれば、ランプカバーの厚みに関し、上端側の厚みを増すことなく、例えば厚みを一定にしてもよい。また、上端側を先細にせず、径一定のランプカバーにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 エキシマランプ
20 ランプカバー
30 周方向操作部
40 電源収容部
50 照明光源
100 オゾン発生器
100A 基部
図1
図2
図3
図4