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  • 特許-トンネル型枠装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】トンネル型枠装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20250411BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024176824
(22)【出願日】2024-10-09
【審査請求日】2025-01-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年8月2日,佐藤工業株式会社の社長室広報部が、発明に係るトンネル型枠装置が記載されたプレスリリース用資料を日刊建設通信新聞社、日刊建設工業新聞社、日刊工業新聞社、日経BP社、建設人社、中建日報社宛てにメール送付することによって公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年8月5日,佐藤工業株式会社が、https://www.satokogyo.co.jp/news/detail.php?id=341で公開されている佐藤工業株式会社のウェブサイトにて、発明に係るトンネル型枠装置について公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 善英
(72)【発明者】
【氏名】林 泰久
(72)【発明者】
【氏名】平野 定雄
(72)【発明者】
【氏名】井藤 宏司
(72)【発明者】
【氏名】小野 知義
(72)【発明者】
【氏名】小山 広光
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正佑
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-170497(JP,A)
【文献】実開平02-023098(JP,U)
【文献】特開2016-142088(JP,A)
【文献】特開平09-250296(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111379569(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00 - 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル長手方向へ延びる基枠と、当該基枠に支持され、トンネル内周に沿ってこれと所定間隔を保って断面略半円弧状に湾曲しつつトンネル長手方向へ延びる覆工型枠と、トンネル底面上に設置されてトンネル長手方向へ延びる基体と、当該基体の両側縁と前記覆工型枠の両側枠との間に架設された支持棒体とを備えるトンネル型枠装置。
【請求項2】
前記基体から離れた上方の空間内に、トンネル長手方向へ延びる車両通行用の桟橋を設けた請求項1に記載のトンネル型枠装置。
【請求項3】
前記基枠はトンネル長手方向へ移動可能であり、移動時には前記支持棒体の架設状態を解消するとともに、前記基枠に設けた引き上げ手段によって前記基体を上方へ引き上げるようにした請求項1に記載のトンネル型枠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル型枠装置に関し、特にコンクリート打設時の覆工型枠の変位を防止したトンネル型枠装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル型枠装置の覆工型枠は、トンネル内周に沿ってこれと所定間隔を保って略半円弧断面に湾曲しつつトンネル長手方向へ延びており、トンネル内周との間に形成された空間内へ覆工コンクリートを打設する際に大きな側圧を受けて変位し、打設されたコンクリート厚がこの部分で均一にならないという問題を生じる。
【0003】
そこで、覆工型枠を、門型枠を有する基枠によって支持する構造とした場合に、例えば特許文献1に示されるトンネル型枠装置では、門型枠の天梁の左右端から下方へ延びる側梁をコンクリート打設前に予めコンクリートの側圧を受ける方向へ大きくたわみ変形させておくことによって、コンクリート打設時の側圧を受けても両側梁がそれ以上変形しないようにし、両側梁によって支持されている覆工型枠の左右の側枠の変位を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-250598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の変位防止構造では、たわみ変形の変形量の調整が難しく、このため調整に手間取るとともに調整が不十分になりがちで、覆工型枠の左右の側枠の変位を確実に防止することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、覆工型枠の左右の側枠の変位を簡易かつ確実に防止できるトンネル型枠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、トンネル長手方向へ延びる基枠(1)と、当該基枠(1)に支持され、トンネル(T)内周に沿ってこれと所定間隔を保って断面略半円弧状に湾曲しつつトンネル長手方向へ延びる覆工型枠(2)と、トンネル底面(T1)上に設置されてトンネル長手方向へ延びる基体(3)と、当該基体(3)の両側縁と前記覆工型枠(2)の両側枠(22)との間に架設された支持棒体(35)とを備える。
【0008】
本第1発明においては、両側枠はトンネル底面上に置かれた基体を挟んで支持棒体によって支持されているから、コンクリート打設時の側圧を受けてもこれに抗して側枠は内方へ変位することなく確実に所定位置に維持される。
【0009】
本第2発明では、前記基体(3)から離れた上方の空間(S2)内に、トンネル長手方向へ延びる車両通行用の桟橋(6)を設ける。
【0010】
本第2発明によれば、コンクリート打設・養生時にも、桟橋を経て作業車両がトンネル長手方向へ通行することができる。そしてこの車両通行時に桟橋が振動しても、桟橋は基体から離れた上方の空間内に位置しているから、桟橋の振動が、基体から支持棒体を経て側枠に伝わることはなく、打設された二次覆工コンクリートに悪影響を及ぼすことはない。
【0011】
本第3発明では、前記基枠(1)はトンネル長手方向へ移動可能であり、移動時には前記支持棒体(35)の架設状態を解消するとともに、前記基枠(1)に設けた引き上げ手段(5)によって前記基体(3)を上方へ引き上げるようにする。
【0012】
本第3発明においては、コンクリート打設・養生終了後にはトンネル型枠装置を速やかに移動させることができる。
【0013】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のトンネル型枠装置によれば、覆工型枠の左右の側枠の変位を簡易かつ確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示すトンネル内に設けたトンネル型枠装装置の全体正面図である。
図2】トンネル型枠装置の要部全体側面図である。
図3】基板とその上方に位置させた桟橋の平面図である。
図4】基板の全体側面図である。
図5】トンネル内に設けた移動時のトンネル型枠装装置の全体正面図である。
図6】移動時の桟橋の全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
図1には、本発明のトンネル型枠装置Eを設置したトンネルTの横断面を示す。トンネル型枠装置Eは基枠1を備えており、基枠1は門型枠11を有している。門型枠11は、水平な天梁111と当該天梁111の左右端から下方へ延びる側梁112から構成されている。門型枠11はトンネル長手方向の複数個所に設けられており(図2)、これらは縦梁12によって連結されている。
【0018】
基枠1のトンネル幅方向両側には、トンネル長手方向の適宜位置に脚柱13(図1)が設けられて、脚柱13下端の車輪131が、トンネル底面(インバートコンクリート)にトンネル長手方向へ敷設されたレール14上に位置している。これにより、基枠1(すなわちトンネル型枠装置E)はトンネル長手方向へ移動可能である。
【0019】
図1に示すように、基枠1に支持されて覆工型枠2が設けられており、覆工型枠2は全体が、一次覆工されたトンネルTの内周に沿ってこれと所定間隔を保って断面略半円弧状に湾曲しつつトンネル長手方向へ延びている。すなわち、覆工型枠2は中央頂部の天枠21が、門型枠11の天梁111上に設けた左右一対のジャッキ部材15に昇降可能に支持されており、天枠21の両端にはそれぞれ側枠22が回動可能に連結されている。各側枠22の下端にはさらにインバート枠23がそれぞれ回動可能に連結されている。側枠22とインバート枠23は適宜位置で伸縮可能なジャッキ部材41によって基枠1と連結されている。
【0020】
このような構造により、覆工型枠2の外周に形成された断面略半円弧状の打設空間S1内に二次覆工コンクリートCが打設され(図5参照)、二次覆工コンクリートCの打設養生後は、図5に示すように天枠21が下降させられるとともに側枠22およびインバート枠23が内方へ回動させられて、覆工型枠2が二次覆工コンクリートCから離間させられる。
【0021】
図1において、門型枠1の下方に形成された内部空間S2内には、トンネル底面T1上に板状の基体(以下、基板という)3が設けられている。基板3はトンネル長手方向へほぼ覆工枠体2と同程度の長さで一定幅で延びる長方形の枠体で(図3図4)、トンネル幅方向へ延びる複数の横材31の両側端上にそれぞれトンネル長手方向へ延びる縦材32が位置している。このような基板3には長手方向複数個所の横材31の両端に連結片33(図3)が設けられて、各連結片33には、支持棒体としてのジャッキ部材35の一端が着脱可能に連結されている。ジャッキ部材35の他端は側枠22に着脱可能に連結されている(図1)。
【0022】
打設空間S1(図1)内に二次覆工コンクリートCが打設されると、天枠21に回動可能に連結された側枠22に上記コンクリ―トCからの大きな側圧が作用する。ここにおいて本実施形態では、左右の側枠22はトンネル底面T1上に置かれた基板3を挟んでジャッキ部材35によって当該基板3の両側縁にそれぞれ連結された構造となっているから、大きな側圧に抗して側枠22は内方へ変位することなく確実に所定位置に維持される。
【0023】
なお、基板3の両側の縦材32の、長手方向の複数個所(本実施形態では三か所)にはそれぞれ吊り環34が設けられて(図4)、これら吊り環34に、門型枠11の天梁111に設けた引き上げ手段としての電動ホイスト5から垂下するワイヤ下端の吊りフック51が係止されている(図1)。
【0024】
上記基板3の上方には車両通行用の桟橋6が設置されている(図1)。桟橋6は本体61(図2)と、当該本体61の長手方向両端に回動可能に連結された斜路板62とで構成されている。本体61は図3に示すように、基板3と同形でその幅がやや短い長方形状をなし、自身の脚部611(図2)によって基板3の上方にこれより離間した状態で水平に支持されている。斜路板62は使用時には図2に示すように本体61に連結された基端側からトンネル底面T1に向けて傾斜している。
【0025】
これにより、二次覆工コンクリートCの打設養生時にも、桟橋6を経て門型枠11下方の内部空間S2内(図1)を作業車両V(図2)が通過することができる。そして、この車両通過時に桟橋6が振動しても、上述のように桟橋6は基板3から離間した上方に位置しているから、桟橋6の振動が基板3や、ジャッキ部材35を介して基板3に連結された側枠22に伝わることはなく、打設された二次覆工コンクリートCに悪影響を及ぼすことが避けられる。なお、桟橋本体61の長手方向両端部にはそれぞれ端部外へ延出する架台63が設けてあり(図2)、その先端に設けたチェーンホイスト64から垂下するワイヤ下端のフック641が各斜路板62の先端に係止されている。
【0026】
二次覆工コンクリートCの打設・養生を終えて、トンネル型枠装置Eを次のコンクリート打設位置へ移動させる場合には、図5に示すように、ジャッキ部材35(図1)を取り去り、覆工型枠2全体を降下させるとともに側枠22およびインバート枠23を内方へ回動させて、天枠11および側枠22、インバート枠23を二次覆工コンクリートCの内周から離間させる。そして、電動ホイスト5によって基板3を、その上方に位置する桟橋6と共に吊り上げる。この時、桟橋6の両端の斜路板62は、図6に示すように、チェーンブロック64で吊り上げ回動させて水平姿勢としておく。
【0027】
上記実施形態では、トンネル型枠装置Eをトンネル長手方向へ走行移動可能なものとしたが、必ずしも走行移動可能である必要はない。
上記実施形態では基板の上方に桟橋を設けたが、桟橋は必ずしも必要なものではない。
また、側枠は必ずしも天枠に回動可能に連結されているものに限られず、天枠と一体化されているものであっても良い。
上記実施形態では、基枠は門型枠を有する構造としたが、基枠の構造は特に限定されない。
【符号の説明】
【0028】
1…基枠、11…門型枠、2…覆工型枠、22…側枠、3…基体、35…ジャッキ部材(支持棒体)、5…電動ホイスト(引き上げ手段)、6…桟橋、S2…内部空間、T…トンネル、T1…トンネル底面。
【要約】
【課題】覆工型枠の左右の側枠の変位を簡易かつ確実に防止できるトンネル型枠装置を提供する。
【解決手段】トンネル長手方向へ延びる基枠1と、当該基枠1に支持され、トンネルT内周に沿ってこれと所定間隔を保って断面略半円弧状に湾曲しつつトンネル長手方向へ延びる覆工型枠2と、トンネル底面T1上に設置されてトンネル長手方向へ延びる基板3と、当該基板3の両側縁と覆工型枠2の両側枠22との間に架設されたジャッキ部材35とを備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6