(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】空気調和機および圧力解放弁
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20250411BHJP
F04B 49/22 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
F04B39/00 C
F04B49/22
(21)【出願番号】P 2021068810
(22)【出願日】2021-04-15
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】津村 渉子
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070930(JP,A)
【文献】特開昭60-081600(JP,A)
【文献】米国特許第05729991(US,A)
【文献】特開平08-128600(JP,A)
【文献】特公昭44-024660(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00、39/12、49/22
F16K 17/14
F17C 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器と、冷媒減圧装置と、室内熱交換器と、を冷媒配管により接続した冷媒回路からなる冷凍サイクルと、
前記冷媒回路に設けられ、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口して、前記圧縮機の内部の圧縮ガスを外部に開放する、圧力解放弁と
を備え、
前記圧縮ガスが前記外部に開放されるときの前記圧縮ガスの流れる方向を第1方向としたとき、
前記圧力解放弁は、
前記第1方向において上流側に配置され、前記圧縮機の内部の空間に接触し、前記圧縮機の通常動作時に前記圧縮機の内部の圧力(P)の変動を受ける、隔壁弁と、
前記第1方向において前記隔壁弁の下流側に配置され、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する高圧解放弁と
を有し、
前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは前記第1方向に沿って直列に配置され
、静的な耐圧強度または圧力変動による疲労強度が互いに異なる、
空気調和機。
【請求項2】
前記隔壁弁は、
前記第1方向において前記高圧解放弁の上流側に配置され、前記圧縮機の内部の圧力(P)が前記圧縮機の設計圧力(Pcomp)以下の通常動作時に前記圧縮機の内部の圧力(P)の変動を受け、
前記高圧解放弁は、
前記圧縮機の前記設計圧力(Pcomp)に基づいて法的に規定される前記圧縮機の保証圧力(Pmax)より大きく、且つ、前記圧縮機が破損する破損圧力(P’max)より小さい値に設定された前記開口圧力(Pp)で開口する、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
圧縮機と、室外熱交換器と、冷媒減圧装置と、室内熱交換器と、を冷媒配管により接続した冷媒回路からなる冷凍サイクルと、
前記冷媒回路に設けられ、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口して、前記圧縮機の内部の圧縮ガスを外部に開放する、圧力解放弁と
を備え、
前記圧縮ガスが前記外部に開放されるときの前記圧縮ガスの流れる方向を第1方向としたとき、
前記圧力解放弁は、
前記第1方向において上流側に配置され、前記圧縮機の内部の空間に接触し、前記圧縮機の通常動作時に前記圧縮機の内部の圧力(P)の変動を受ける、隔壁弁と、
前記第1方向において前記隔壁弁の下流側に配置され、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する高圧解放弁と
を有し、
前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは前記第1方向に沿って直列に配置され、
前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは静的な耐圧強度と圧力変動による疲労強度とが互いに異なる
、
空気調和機。
【請求項4】
前記高圧解放弁は、前記隔壁弁よりも、前記静的な耐圧強度が高く、
前記隔壁弁は、前記高圧解放弁よりも、前記疲労強度が高い、
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記高圧解放弁は、前記第1方向の下流側の一端が閉塞し、前記第1方向の上流側の一端が開口した弁であり、閉塞された前記下流側の一端を構成する閉塞面が平面形状を有し、
前記隔壁弁は、前記第1方向の下流側の一端が閉塞し、前記第1方向の上流側の一端が開口した弁であり、閉塞された前記下流側の一端を構成する閉塞面が曲面形状を有している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記高圧解放弁の前記閉塞面に切欠部が設けられている、
請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記高圧解放弁の前記閉塞面に、前記閉塞面のひずみを計測するひずみ計測部が設けられている、
請求項5または6に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記隔壁弁は、前記隔壁弁を支持する円筒形状の隔壁弁用パイプの内部に配置され、
前記隔壁弁は、前記隔壁弁用パイプの内壁と接合されており、
前記高圧解放弁は、前記高圧解放弁を支持する円筒形状の高圧解放弁用パイプの内部に配置され、
前記高圧解放弁は、前記高圧解放弁用パイプの内壁と接合され、
前記第1方向に沿って前記高圧解放弁用パイプと前記隔壁弁用パイプとは軸方向が一致するように前記第1方向に沿って直列に配置され、互いに接合されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記隔壁弁用パイプと前記高圧解放弁用パイプとを接合する際の接合面に、軸方向および径方向の位置決めを行うための位置決め部が設けられ、
前記位置決め部は、
前記隔壁弁用パイプ側の接合面および前記高圧解放弁用パイプ側の接合面のいずれか一方に設けられたオス部と、
前記隔壁弁用パイプ側の接合面および前記高圧解放弁用パイプ側の接合面の他方に設けられ、前記オス部の相補形状を有するメス部と
から構成されている、
請求項8に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記高圧解放弁用パイプの上流側の端部に、前記隔壁弁用パイプの下流側の端部の少なくとも一部分が挿入されて接合されている、
請求項8に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記高圧解放弁用パイプと前記隔壁弁用パイプとによって構成された流路部において、前記高圧解放弁と前記隔壁弁との間に形成された空間は密閉されている、
請求項8~10のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項12】
前記高圧解放弁と前記隔壁弁との間に形成された前記空間には、前記空気調和機が設置された周囲の環境の気圧よりも高い圧力のガスが封入されている、
請求項11に記載の空気調和機。
【請求項13】
圧力容器に設けられ、前記圧力容器の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口して、前記圧力容器の内部の圧縮ガスを外部に開放する、圧力解放弁であって、
前記圧縮ガスが前記外部に開放されるときの前記圧縮ガスの流れる方向を第1方向としたとき、
前記圧力解放弁は、
前記第1方向において上流側に配置され、前記圧力容器の内部の空間に接触し、前記圧力容器の内部の圧力(P)の変動を受ける、隔壁弁と、
前記第1方向において前記隔壁弁の下流側に配置され、前記圧力容器の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する高圧解放弁と
を有し、
前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは前記第1方向に沿って直列に配置され
、静的な耐圧強度または圧力変動による疲労強度が互いに異なる、
圧力解放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機の筐体などの圧力容器の破損を防止する圧力解放弁および圧力解放弁を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内機と室外機とに分離されたセパレート型の空気調和機が開発されている。セパレート型の空気調和機においては、空気調和機の移設または廃棄の際に、冷媒回路内の冷媒をすべて室外機に回収するポンプダウンと呼ばれる強制冷房運転を行なうことが知られている。
【0003】
ポンプダウンを行うときに、何らかの理由で、冷媒回路内に大量の空気が混入すると、圧縮機内で当該空気の圧縮が起こり、高温高圧の空気と冷凍機油とが混合される。その結果、圧縮機内の圧力が急激に上昇し、圧縮機の筐体が破損する可能性がある。
【0004】
上記の破損を回避するために、圧縮機に圧力逃がし弁を設置することが考えられる。
【0005】
例えば特許文献1に記載の圧力逃がし弁は、各種圧力容器に取り付けられ、圧力容器内の圧力が設定値以上になったときに、圧力容器内の圧力を外部に逃がすものである。
【0006】
特許文献1に記載の圧力逃がし弁には、頭部に開口部を有する外筒と、外筒内に嵌入された内筒と、外周縁がパッキンで挟持されて、外筒と内筒との両筒の開口部を閉塞する破裂板とが、設けられている。当該圧力逃がし弁では、圧力容器内の圧力が設定値以上になったときに、破裂板が破裂することで、圧力逃がし弁が開口して、圧力容器内の圧力を外部に逃がす。これにより、圧縮容器内の圧力が下がり、圧力容器の破損が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1においては、圧力逃がし弁を空気調和機に適用することは開示されていない。
【0009】
冷凍サイクルを構成する冷媒回路部品には、熱交換器、四方向切換弁、圧縮機などがある。冷凍サイクルを構成する冷媒回路部品の耐圧強度は、安全性を担保するため、破損による被害が大きい順に高くなるように設計されている。冷媒回路部品のうち、破損による被害が最も大きいのは圧縮機であるため、圧縮機の耐圧強度が最も高く設計されている。
【0010】
しかしながら、このように圧縮機の耐圧強度を高く設計していても、場合によっては、圧縮機の筐体が破損する可能性がある。当該場合の例としては、例えば、上述したポンプダウンを行っているときに、冷媒回路内に大量の空気が混入した場合などが挙げられる。その場合、圧縮機内部の昇圧の速度が速いため、圧縮機から他の冷媒回路部品へ高圧ガスが伝搬する速度が追いつかず、圧縮機の耐圧強度が圧縮機内部の圧力に耐えきれなくなって、圧縮機の筐体を破損する可能性がある。なお、このように、冷媒回路内に大量の空気が混入した結果、圧縮機内で、高温高圧の空気と冷凍機油との混合気が圧縮熱により爆発することを「ディーゼル爆発」と呼ぶ。ディーゼル爆発が発生すると、圧縮機が破損する可能性がある。
【0011】
そこで、上述したように、圧縮機に圧力逃がし弁を設けておくことが考えられるが、上記の特許文献1に記載の圧力逃がし弁を設けた場合には、以下のような課題がある。
【0012】
圧縮機は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する装置であるため、圧縮機が通常動作を行っている際には、常に、圧縮機の内部において圧力変動が発生している。そのため、圧縮機に対して特許文献1に記載の圧力逃がし弁を設けた場合、圧力逃がし弁の破裂板に、圧縮機の内部の圧力変動が常にかかることになる。そのため、当該圧力変動によって破裂板が疲労破壊され、意図された設定値よりも低いレベルで、すなわち、通常動作時の圧力変動程度のレベルで、圧力逃がし弁が開口してしまう可能性があるという課題があった。
【0013】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、圧縮機の筐体などの圧力容器内の通常時の圧力変動に起因する疲労破壊を防止し、圧力容器の内部の圧力が予め設定された設定値に達したときに開口する圧力解放弁および圧力解放弁を備えた空気調和機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示に係る空気調和機は、圧縮機と、室外熱交換器と、冷媒減圧装置と、室内熱交換器と、を冷媒配管により接続した冷媒回路からなる冷凍サイクルと、前記冷媒回路に設けられ、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口して、前記圧縮機の内部の圧縮ガスを外部に開放する、圧力解放弁とを備え、前記圧縮ガスが前記外部に開放されるときの前記圧縮ガスの流れる方向を第1方向としたとき、前記圧力解放弁は、前記第1方向において上流側に配置され、前記圧縮機の内部の空間に接触し、前記圧縮機の通常動作時に前記圧縮機の内部の圧力(P)の変動を受ける、隔壁弁と、前記第1方向において前記隔壁弁の下流側に配置され、前記圧縮機の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する高圧解放弁とを有し、前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは前記第1方向に沿って直列に配置され、静的な耐圧強度または圧力変動による疲労強度が互いに異なるものである。
【0015】
本開示に係る圧力解放弁は、圧力容器に設けられ、前記圧力容器の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口して、前記圧力容器の内部の圧縮ガスを外部に開放する、圧力解放弁であって、前記圧縮ガスが前記外部に開放されるときの前記圧縮ガスの流れる方向を第1方向としたとき、前記圧力解放弁は、前記第1方向において上流側に配置され、前記圧力容器の内部の空間に接触し、前記圧力容器の内部の圧力(P)の変動を受ける、隔壁弁と、前記第1方向において前記隔壁弁の下流側に配置され、前記圧力容器の内部の圧力(P)が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する高圧解放弁とを有し、前記高圧解放弁と前記隔壁弁とは前記第1方向に沿って直列に配置され、静的な耐圧強度または圧力変動による疲労強度が互いに異なるものである。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る圧力解放弁および空気調和機によれば、圧力解放弁が、圧縮機の筐体などの圧力容器内の通常時の圧力変動に起因する疲労破壊を防止し、圧力容器の内部の圧力が予め設定された設定値に達したときに開口することができる。これにより、圧力容器の内部の圧力が予め設定された設定値になるまで上昇した場合にのみ、圧力解放弁を開口して、外部に対して圧力容器内の圧縮ガスを開放する開放流路を確保できるとともに、通常時には、本来の機能および性能に影響を与えることなく圧力容器が通常動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る空気調和機1の構成を示す冷媒回路図である。
【
図2】実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の機能を説明する説明図である。
【
図3】実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧縮機2および圧力解放弁20を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る圧力解放弁20の変形例を示す断面図である。
【
図7】圧力解放弁20の疲労強度特性を示す説明図である。
【
図8】圧縮機2の内部の圧力(P)の変動を示す説明図である。
【
図9】実施の形態1に係る圧力解放弁20の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図11】実施の形態3に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図12】実施の形態4に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図13】実施の形態5に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図14】実施の形態6に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す斜視図である。
【
図15】実施の形態6に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【
図16】実施の形態7に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る空気調和機および圧力解放弁の実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態およびその変形例に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0019】
実施の形態1.
[空気調和機1の構成]
図1は、実施の形態1に係る空気調和機1の構成を示す冷媒回路図である。空気調和機1は、
図1に示すように、室外機1aと室内機1bとで構成されたセパレート型の空気調和機である。空気調和機1は、圧縮機2、マフラー3、四方向切換弁4、室外熱交換器5、冷媒減圧装置6、液側閉鎖弁7、室内熱交換器8、および、ガス側閉鎖弁9を、冷媒配管10により接続した冷媒回路からなる、冷凍サイクルを有している。また、室外機1aの室外熱交換器5には室外送風機11を設置し、室内機1bの室内熱交換器8には室内送風機12を設置している。なお、冷媒回路には、マフラー3、四方向切換弁4、液側閉鎖弁7、および、ガス側閉鎖弁9は必ずしも設けなくてもよく、必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0020】
室外機1aの筐体(図示省略)内には、圧縮機2、マフラー3、四方向切換弁4、室外熱交換器5、冷媒減圧装置6、液側閉鎖弁7、ガス側閉鎖弁9、室外送風機11、および、制御部13が収納されている。また、室内機1bの筐体(図示省略)内には、室内熱交換器8、室内送風機12、および、制御部14が収納されている。室内機1bは、空調対象の室内空間に設置される。一方、室外機1aは、室内空間の外部に設置される。以下、空気調和機1の
図1に示した各部品について簡単に説明する。
【0021】
圧縮機2は、冷媒配管10の中を流れる冷媒を吸入する。圧縮機2は、吸入した冷媒を圧縮して、冷媒配管10に吐出する。圧縮機2は、例えば、インバータ圧縮機である。圧縮機2がインバータ圧縮機の場合、インバータ回路などの駆動回路により、運転周波数を任意に変化させ、圧縮機2の単位時間あたりの冷媒を送り出す容量を変化させてもよい。その場合、駆動回路の動作は制御部13によって制御される。圧縮機2から吐出された冷媒は、室外熱交換器5または室内熱交換器8に流入される。具体的には、空気調和機1が冷房運転を行っているときには、圧縮機2から吐出された冷媒は室外熱交換器5に流入される。一方、空気調和機1が暖房運転を行っているときには、圧縮機2から吐出された冷媒は室内熱交換器8に流入される。
【0022】
圧縮機2は、圧力容器から構成された筐体22(
図3参照)を有している。実施の形態1では、圧縮機2の筐体22の上面23に圧力解放弁20(
図3参照)が設けられている。圧力解放弁20は、圧縮機2の内部の圧力が予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口を開始して、圧縮機2の内部の高圧ガスを外部に開放するための弁である。なお、圧力解放弁20の設置位置は、圧縮機2に限定されず、室外機1a内の他の場所でもよい。圧力解放弁20の構成については後述する。なお、本開示において、圧縮機2の内部の高圧ガスは、圧縮ガスと呼ばれることがある。
【0023】
室外熱交換器5および室内熱交換器8は、内部を流れる冷媒と、空気との間で、熱交換を行う。室外熱交換器5および室内熱交換器8は、例えば、フィンアンドチューブ型熱交換器である。
【0024】
室外熱交換器5は、内部を流れる冷媒と、室外送風機11によって送風される室外の空気との間で熱交換を行う。室外熱交換器5は、冷房運転時に凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。室外熱交換器5は、暖房運転時に蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させて気化させる。
【0025】
室内熱交換器8は、内部を流れる冷媒と、室内送風機12によって送風される室内空間の空気との間で熱交換を行う。室内熱交換器8は、冷房運転時に蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させて液化させる。室内熱交換器8は、暖房運転時に凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。
【0026】
室外送風機11は、ファン用モータ11aと翼部11bとを有している。同様に、室内送風機12は、ファン用モータ12aと翼部12bとを有している。室外送風機11および室内送風機12は、それぞれ、室外熱交換器5および室内熱交換器8に対して、空気を送風する。室外送風機11の回転速度は制御部13により制御され、室内送風機12の回転速度は制御部14により制御される。
【0027】
四方向切換弁4は、室内機1b側を冷房する冷房運転の場合と暖房する暖房運転の場合とで状態が切り替わるように構成されている。四方向切換弁4は、冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り替える流路切替装置である。空気調和機1が冷房運転を行っている場合は、四方向切換弁4は、圧縮機2の吐出口と室外熱交換器5とを接続するとともに、圧縮機2の吸入口と室内熱交換器8とを接続する。一方、空気調和機1が暖房運転を行っている場合は、四方向切換弁4は、圧縮機2の吐出口と室内熱交換器8とを接続するとともに、圧縮機2の吸入口と室外熱交換器5とを接続する。四方向切換弁4の切り替え動作は、制御部13の制御により行われる。
【0028】
冷媒減圧装置6は、冷媒を減圧して膨張させる。冷媒減圧装置6は、例えば、電子膨張弁で構成されている。冷媒減圧装置6が電子膨張弁で構成されている場合には、制御部13からの指令に基づいて開度調整が行われる。冷媒減圧装置6は、室外熱交換器5と室内熱交換器8との間に設けられている。
【0029】
マフラー3は、圧縮機2の吐出側に配置される。マフラー3は、
図1の例では、圧縮機2と四方向切換弁4との間に設置されている。マフラー3は、圧縮機2の吐出脈動を抑える働きをする。マフラー3は、内部にマフラー空間が形成されており、圧縮機2の吐出口から吐出された高温高圧の冷媒ガスの吐出脈動により発生する騒音を低減させている。圧縮機2が低速運転を行っているときに吐出脈動が大きくなるため、マフラー3は、圧縮機2の低速運転時に特に有効である。
【0030】
液側閉鎖弁7は、冷媒減圧装置6と室内熱交換器8との間に設置される。液側閉鎖弁7は、ポンプダウン実行時には、全閉状態である。液側閉鎖弁7の開閉動作は、ポンプダウンを行う作業員によって手動で行われてもよいが、制御部13を介して制御部13からの指令に基づいて行われてもよい。
【0031】
ガス側閉鎖弁9は、室内熱交換器8と圧縮機2の間に設置される。ガス側閉鎖弁9は、ポンプダウン実行時には、全開状態である。ガス側閉鎖弁9の開閉動作は、ポンプダウンを行う作業員によって手動で行われてもよいが、制御部13を介して、制御部13からの指令に基づいて行われてもよい。
【0032】
制御部13および制御部14は、例えば、プロセッサとメモリとから構成される。その場合、制御部13および制御部14の各機能は、プロセッサが、予め格納されているプログラムをメモリから読み出して実行することで実現される。
【0033】
[圧力解放弁20の機能]
圧力解放弁20の構成について説明する前に、
図2および
図3を用いて、実施の形態1に係る圧力解放弁20の機能について説明する。
図2は、実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の機能を説明する説明図である。
図3は、実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧縮機2および圧力解放弁20を模式的に示す断面図である。
【0034】
図2において、横軸は時間、縦軸は圧縮機2の内部の圧力Pを示す。
図2において、実線30は、圧縮機2の内部の圧力Pの変化を示すグラフである。但し、
図2において、破線31は、圧縮機2に圧力解放弁20が設けられていない場合の圧力Pの変化を示し、破線32は、圧縮機2に圧力解放弁20が設けられている場合の圧力Pの変化を示す。
図2の実線30で示すように、圧縮機2の内部の圧力Pの変化は、圧力解放弁20の有無にかかわらず、途中までは基本的に同じである。その後、圧力解放弁20の働きにより、圧縮機2の内部の圧力Pの変化は異なる。以下に詳細に説明する。
【0035】
まず、
図3の例に示すように、圧力解放弁20は、例えば、圧縮機2の筐体22の上面23に設けられている。
図3の例では、圧力解放弁20は、圧力解放弁20の延伸方向が上方に向かうように配置されている。圧力解放弁20は、圧縮機2の内部の圧力Pが、
図2に示す開口圧力Ppに達したときに、開口を開始するように設計されている。
【0036】
なお、圧力解放弁20の圧縮機2への設置位置および延伸方向は、
図3の場合に限定されない。すなわち、圧力解放弁20は、圧縮機2の側面24に設置されてもよく、その場合の圧力解放弁20の延伸方向は、上下左右のいずれかに向かう方向に配置されていてもよい。あるいは、圧力解放弁20は、圧縮機2の底面25に設置されてもよく、その場合の圧力解放弁20の延伸方向は、上下左右のいずれかに向かう方向に配置されていてもよい。あるいは、圧力解放弁20は、圧縮機2の吐出口に設けられた吐出管21に配置されていてもよい。また、圧力解放弁20は、高圧ガスを冷媒配管10の外部へ開放できればよいため、圧縮機2に限らず、室外機1a内の冷媒回路の任意の箇所に設置してもよい。このように、圧力解放弁20の圧縮機2への設置位置および延伸方向は、適宜、自由に設定できるので、冷媒配管10内から高圧ガスを外部へ開放する方向を自由に設定することができる。
【0037】
図2を用いて、圧力解放弁20の機能について詳細に説明する。
【0038】
図2において、Pcompは、圧縮機2の設計圧力である。設計圧力(Pcomp)とは、圧縮機2の強度の設計計算において基準にとるべき圧力値のことである。設計圧力(Pcomp)は、圧縮機2の通常動作中に出現し得る圧力の最大値以上の値に設定される。設計圧力(Pcomp)は、圧縮機2の通常動作中に出現し得る圧力Pの最大値に対して、1以上の係数(例えば、1.1)を乗算して求める。あるいは、設計圧力(Pcomp)は、圧縮機2の通常動作中に出現し得る圧力Pの最大値に対して、或る値(例えば、0.1Mpa)を加算して求める。
【0039】
図2において、Pmaxは、圧縮機2の保証圧力である。保証圧力(Pmax)は、圧縮機2の設計圧力(Pcomp)に基づいて法的に規定された値である。保証圧力(Pmax)は、法律に基づいて、圧縮機2の設計圧力(Pcomp)より大きい値に設定される。
【0040】
図2において、P’maxは、圧縮機2の破損圧力である。破損圧力(P’max)は、保証圧力(Pmax)に対し高圧側に公差を持った値となる。すなわち、破損圧力(P’max)は、保証圧力(Pmax)より大きい値である。圧縮機2の内部の圧力が破損圧力(P’max)を超えたときに、圧縮機2の筐体22は破損する可能性がある。なお、破損圧力(P’max)は、圧縮機2の耐久実験などにより求められる。
【0041】
図1を用いて説明したように、空気調和機1は圧縮機2を有している。圧縮機2は、設計圧力(Pcomp)に基づいて法的に規定される保証圧力(Pmax)を担保するように設計されている。従って、圧縮機2の破損圧力(P’max)は、保証圧力(Pmax)より大きい値になっている。
【0042】
上述したように、空気調和機1の移設または廃棄の際には、冷媒配管10内の冷媒を室外機1aに回収するポンプダウンが実行される。ポンプダウンの実行時には、室内機1bの冷媒を、室外機1aに回収するため、
図1に示す液側閉鎖弁7を全閉にし、ガス側閉鎖弁9を全開にして、強制冷房運転を行なう。このとき、例えば、既に室外機1aと室内機1bとが切り離された状態で、ガス側閉鎖弁9を全開にしたまま強制冷房運転を行うと、冷媒配管10内に大量の空気が混入する。その結果、圧縮機2内で空気圧縮が起こり、
図2の実線30で示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)が急上昇する。このとき、
図2の破線31で示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)がさらに上昇して、圧縮機2の破損圧力(P’max)を超えると、圧縮機2が破損する可能性がある。
【0043】
そのため、実施の形態1では、圧縮機2の破損を防止するために、室外機1aが、高圧ガスを冷媒回路の外部へ開放する圧力解放弁20を備えている。
図2に示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)が、圧縮機2の保証圧力(Pmax)を超えて上昇し、開口圧力(Pp)に達したときに、圧力解放弁20は開口を開始する。その結果、圧縮機2の内部の高圧ガスが圧力解放弁20から外部に開放されるので、
図2の破線32で示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)が低下する。圧力解放弁20の開口速度は、圧縮機2の内部の圧力(P)が圧縮機2の破損圧力(P’max)に到達するまでの圧力上昇速度より速い。そのため、圧力(P)が破損圧力(P’max)に到達する前に、冷媒配管10の外部に向けた高圧ガスの開放流路を確保することが可能である。これにより、圧縮機2の破損を防止することが可能となる。
【0044】
[圧力解放弁20の構成]
次に、
図4および
図5を用いて、実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す斜視図である。
図4においては、説明のため、一部の構成を透過させ破線で示している。
図5は、実施の形態1に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。
【0045】
図4および
図5に示すように、圧力解放弁20は、円筒形状を有し、一端が開放され、他端が高圧解放弁204により覆われて閉塞している。圧力解放弁20が開口した場合、高圧ガスは、
図4の矢印Aで示す方向に流れて、外部に放出される。以下では、矢印Aで示す方向は、高圧ガスの流れる方向、または、第1方向と呼ばれる。
図4および
図5の例では、
図3に示すように、圧力解放弁20が圧縮機2の上面23に配置している場合を示しているため、第1方向が、紙面の下から上に向かう方向になっている。しかしながら、圧力解放弁20の設置位置によっては、圧力解放弁20の延伸方向は、下から上に向かう方向とは限らない。しかしながら、以下では、説明を簡略化するため、圧力解放弁20の開放された一端を「下端」と呼び、圧力解放弁20の閉塞された他端を「上端」と呼ぶこととする。圧力解放弁20は、ステンレス、銅、または、銅合金などの金属材料で構成される。
【0046】
圧力解放弁20は、
図4に示すように、流路部20aと弁体部20bとから構成されている。流路部20aは、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とから構成される。また、弁体部20bは、隔壁弁202と高圧解放弁204とから構成されている。隔壁弁202は隔壁弁用パイプ201内に配置され、高圧解放弁204は高圧解放弁用パイプ203内に配置されている。隔壁弁202は、圧縮機2の内部と連通しており、圧縮機2の内部の圧力変動を受ける。一方、高圧解放弁204は、隔壁弁202によって保護され、圧縮機2の内部の圧力変動の影響を殆ど受けない。高圧解放弁204は、圧縮機2の内部の圧力(P)が開口圧力(Pp)に達したときに、開口を開始する。以下、圧力解放弁20の構成について詳細に説明する。
【0047】
[圧力解放弁20の流路部20aの構成]
はじめに、圧力解放弁20の流路部20aについて説明する。
図5に示すように、流路部20aを構成する隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とは、軸方向に沿って、直列に接続されている。隔壁弁用パイプ201の中心軸と高圧解放弁用パイプ203の中心軸とは揃っており、流路部20aは1つの円筒形状となっている。隔壁弁用パイプ201が下段に配置され、高圧解放弁用パイプ203が上段に配置されている。隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とは一体になるように構成されている。隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とは、炉中ろう付けなどで接合されている。隔壁弁用パイプ201の外径R1の大きさと、高圧解放弁用パイプ203の外径R2の大きさとは、同じである。流路部20aの内壁は、2つの段が形成された段付き構造となっている。そのため、流路部20aの板厚は、軸方向に沿って、上から順に、3種の板厚T1、T2、T3になっている。3種の板厚T1、T2、T3の大小関係は、T1<T2<T3を満たす。そのため、流路部20aにおいて、隔壁弁用パイプ201の下端部201aの内径r1が、高圧解放弁用パイプ203の上端部の内径r2より小さくなっている。さらに詳細に説明する。
【0048】
隔壁弁用パイプ201は、円筒形状を有し、内壁が軸方向に沿って段付き構造となっている。隔壁弁用パイプ201の内壁には1つの段が形成されている。隔壁弁用パイプ201の下端部201aは開放され、圧縮機2の内部に連通している。隔壁弁用パイプ201の下端部201a側の第1部分201bは、板厚T3の円筒形状になっている。隔壁弁用パイプ201の上端部201cは開放され、高圧解放弁用パイプ203の内部空間に連通している。隔壁弁用パイプ201の上端部201c側の第2部分201dは、板厚T2の円筒形状になっている。隔壁弁用パイプ201の第1部分201bと第2部分201dとの境界部分には、段差部201eが設けられている。段差部201eは、隔壁弁用パイプ201の軸方向の中央部に配置されていてもよく、あるいは、中央部より上端部201c側または下端部201a側にシフトした位置に配置されていてもよい。但し、段差部201eには、
図5に示すように、隔壁弁202が配置される。そのため、隔壁弁202の全体が隔壁弁用パイプ201内に収納されるように、隔壁弁202の軸方向の長さ(高さサイズ)に基づいて、段差部201eの設置位置を適宜設定すればよい。隔壁弁202は、段差部201eの第2部分201d側に嵌合されている。そのため、隔壁弁202の下端は段差部201eに当接され、隔壁弁202が段差部201eより下方に脱落することが防止されている。また、段差部201eは、隔壁弁202の設置位置を示す位置決め部材としても機能する。隔壁弁202と隔壁弁用パイプ201とは炉中ろう付けなどで接合される。
【0049】
高圧解放弁用パイプ203は、円筒形状を有し、内壁が軸方向に沿って段付き構造となっている。高圧解放弁用パイプ203の内壁には1つの段が形成されている。高圧解放弁用パイプ203の下端部203aは開放され、隔壁弁用パイプ201の第2部分201dの内部空間に連通している。高圧解放弁用パイプ203の下端部203a側の第1部分203bは、板厚T2の円筒形状になっている。高圧解放弁用パイプ203の上端部203cは開放され、圧力解放弁20の開口部となっている。高圧解放弁用パイプ203の上端部203c側の第2部分203dは、板厚T1の円筒形状になっている。高圧解放弁用パイプ203の第1部分203bと第2部分203dとの境界部分には、段差部203eが設けられている。段差部203eは、高圧解放弁用パイプ203の軸方向の中央部に配置していてもよく、あるいは、中央部より上端部203c側または下端部203a側にシフトした位置に配置されていてもよい。但し、段差部203eには、
図5に示すように、高圧解放弁204が配置される。そのため、高圧解放弁204の全体が高圧解放弁用パイプ203内に収納されるように、高圧解放弁204の軸方向の長さ(高さ)に基づいて、段差部203eの設置位置を適宜設定すればよい。高圧解放弁204は、段差部203eの第2部分203d側に嵌合されている。そのため、高圧解放弁204の下端は段差部203eに当接され、高圧解放弁204が段差部203eより下方に脱落することが防止されている。また、段差部203eは、高圧解放弁204の設置位置を示す位置決め部材としても機能する。また、高圧解放弁204と高圧解放弁用パイプ203とは炉中ろう付けなどで接合される。高圧解放弁204は、
図5に示すように、圧力解放弁20の開口を覆って閉塞させている。
【0050】
[圧力解放弁20の弁体部20bの構成]
次に、圧力解放弁20の弁体部20bについて説明する。弁体部20bは、隔壁弁202と高圧解放弁204とから構成されている。隔壁弁202は、第1方向において、高圧解放弁204の上流側に配置され、圧縮機2の内部の空間に接触している。隔壁弁202は、圧縮機2の通常動作時に、圧縮機2の内部の圧力(P)の変動を受ける。高圧解放弁204は、第1方向において、隔壁弁202の下流側に配置され、圧縮機2の内部の圧力(P)が、予め設定された開口圧力(Pp)に達したときに開口する。
【0051】
隔壁弁202と高圧解放弁204とは、静的な耐圧強度と疲労強度とがそれぞれ異なる構成である。高圧解放弁204の静的な耐圧強度は、隔壁弁202の静的な耐圧強度より高い。一方、隔壁弁202の疲労強度は、高圧解放弁204の疲労強度より高い。実施の形態1では、
図5に示すように、静的な耐圧強度が高い高圧解放弁204を圧縮機2の外部側に配置し、疲労強度が高い隔壁弁202を圧縮機2の内部側に配置している。高圧解放弁204と隔壁弁202とは第1方向に沿って直列に配置されている。
【0052】
隔壁弁202の疲労強度は、高圧解放弁204の疲労強度より高い。隔壁弁202は、応力を集中させないために、少なくとも上面202aが曲面形状を有し、キャップ型またはドーム型に形成されている。これにより、隔壁弁202の疲労強度が高くなっている。一方、高圧解放弁204の板厚D1は、隔壁弁202の板厚D2より厚くなっている。これにより、高圧解放弁204と隔壁弁202とが同一材料で構成されている場合、高圧解放弁204の静的な耐圧強度が、隔壁弁202の静的な耐圧強度より高くなる。隔壁弁202と高圧解放弁204とは、ステンレス、銅、または、銅合金などの金属材料で構成される。このように、実施の形態1では、隔壁弁202と高圧解放弁204との形状および板厚を変えることで、静的な耐圧強度と疲労強度とがそれぞれ異なるように構成している。
【0053】
隔壁弁202は、圧縮機2の内部の圧力変動を常に受けている。しかしながら、隔壁弁202の疲労強度は強いため、圧縮機2の内部の圧力変動により疲労破壊されるまでの耐久時間が長い。従って、隔壁弁202は、特許文献1に記載の圧力逃がし弁のように、通常動作範囲の圧力程度の低いレベルで開口してしまうことはない。また、高圧解放弁204は、隔壁弁202よりも外側に位置している。そのため、高圧解放弁204は、隔壁弁202に保護され、圧縮機2の内部の圧力変動の影響を殆ど受けない。その結果、高圧解放弁204が、圧縮機2の内部の圧力変動により疲労破壊されることを抑制することができる。
【0054】
圧力解放弁20では、
図5に示すように、第1方向において、上流側に、隔壁弁用パイプ201および隔壁弁202が配置されている。また、第1方向において、下流側に、高圧解放弁用パイプ203および高圧解放弁204が配置されている。
【0055】
隔壁弁202は、キャップ型またはドーム型に形成されていると説明したが、さらに詳細に言えば、隔壁弁202は、有底筒状に形成されている。隔壁弁202は、上端が閉塞された閉塞面となっており、下端が開放されている。但し、隔壁弁202の閉塞面である上面202aは、平面形状ではなく、曲面形状を有している。隔壁弁202は、圧縮機2の内側から圧縮機2の外側に向かう方向に突出した曲面形状の薄板で形成される。隔壁弁202の当該曲面形状は、例えば、半球形状である。その場合、隔壁弁202の曲面形状は、隔壁弁用パイプ201の第2部分201dと内径および曲率半径が等しいまたは略等しい。隔壁弁202の曲面形状について具体的に説明すると、隔壁弁202の下端部202cは、平面視で円形形状である。下端部202cの当該円形形状の外径は、第2部分201dの内径r3と等しいまたは略等しい。また、隔壁弁202全体の曲面形状は、直径r3の半球形状であるため、その曲率半径は、第2部分201dの内壁面の曲率半径と等しいまたは略等しくなる。なお、隔壁弁202の当該曲面形状は、この場合に限定されない。
図6は、実施の形態1に係る圧力解放弁20の変形例を示す断面図である。
図6に示すように、外径の大きさが、第2部分201dの内径r3と同じで、第2部分201dより曲率半径が大きい形状であってもよい。この場合、隔壁弁202の当該曲面形状は、
図6に示すように、半球形状よりもなだらかな曲面形状となる。また、隔壁弁202の当該曲面形状は、半球形状よりも、軸方向の長さが短い(すなわち、高さh1が低い)。隔壁弁202は、このように、上面202aが曲面形状で、側面部202bが円筒形状の、有底筒状に形成されていてもよいが、隔壁弁202は、側面部202bが円筒形状でなくてもよい。すなわち、隔壁弁202は、下端部202cが開放され、側面部202bと上面202aとが共に曲面形状から構成された、半球形状などの球面形状に形成されていてもよい。その場合、球面形状の曲率は、一定でなくてもよく、途中で緩やかに変化してもよい。具体的には、例えば、側面部202bの曲率半径と上面202aの曲率半径とが互いに異なっていてもよい。なお、以下では、隔壁弁202が、少なくとも上面が曲面形状の有底筒状のものと、下端が開放された球面形状のものとを、まとめて、キャップ型、または、ドーム型と呼ぶこととする。
【0056】
隔壁弁202は、このように、下端が開放され、少なくとも上面202aが曲面形状を有する、キャップ型またはドーム型に形成され、隔壁弁202の下端部202cは、周方向の全長に亘って、隔壁弁用パイプ201の段差部201eの内壁面と炉中ろう付けなどによって接合される。なお、隔壁弁202の外周部には、
図5に示すように、鍔部などが何も設けられていない。水平方向外側に突出した鍔部を設けた場合、鍔部に応力が集中するため、隔壁弁202は、あえて、鍔部を設けない構成としている。
【0057】
隔壁弁202は、曲面形状を有しているため、応力集中が小さく、応力集中係数で決定される疲労強度の減少率が小さい。
【0058】
図7は、圧力解放弁20の疲労強度特性を示す説明図である。
図7において、横軸は、圧縮機2の圧力変動の繰返し回数を示し、縦軸が応力振幅を示す。また、
図7において、黒丸印40は、隔壁弁202が設けられていない場合の圧力解放弁に生じる応力振幅を示し、黒三角印41は、隔壁弁202に生じる応力振幅を示し、黒星印42は、高圧解放弁204に生じる応力振幅を示す。また、
図7において、第1閾値Th1は、製品仕様上必要な繰返し回数の閾値を示す。また、
図7において、ハッチング部分は、弁が疲労破壊する領域である。
【0059】
図7の黒丸印40で示すように、隔壁弁202が設けられていない場合の圧力解放弁では、繰返し回数がN1回の時点で、圧力解放弁が疲労破壊する。繰返し回数N1は、第1閾値Th1よりも小さい値である。従って、隔壁弁202が設けられていない場合の圧力解放弁は、製品仕様上、十分な疲労強度および疲労寿命を有していない。
【0060】
一方、
図7の黒三角印41で示すように、隔壁弁202は、繰返し回数がN2回の時点で疲労破壊する。繰返し回数N2は、第1閾値Th1よりも大きい値である。また、
図7の黒星印42で示すように、繰返し回数がN2回の時点で、高圧解放弁204は、隔壁弁202によって圧縮機2の圧力変動からの影響を受けていないため、応力振幅が殆ど発ししていない。従って、隔壁弁202および高圧解放弁204が設けられている圧力解放弁20は、製品仕様上、十分な疲労強度および疲労寿命を有していることがわかる。このように、
図7に示すように、圧力解放弁20に曲面形状の隔壁弁202を設けることで、製品仕様上、十分な疲労強度および疲労寿命を有することができる。
【0061】
なお、隔壁弁202の設計圧力(Pmax-s)は、
図8に示すように、法的に規定される保証圧力(Pmax)以上で、且つ、高圧解放弁204の開口圧力(Pp)未満である。
図8の詳細については後述する。
【0062】
高圧解放弁204は、有底筒状に形成されている。高圧解放弁204は、上端が閉塞された閉塞面となっており、下端が開放されている。但し、高圧解放弁204は、
図5に示すように、閉塞面である上面204aは、平面形状に形成されている。高圧解放弁204の側面部204dは、
図4に示すように、円筒形状である。従って、高圧解放弁204は、
図5に示すように、側面視で、コの字型の断面形状を有している。なお、高圧解放弁204は、隔壁弁202と同じ材料の金属の薄板から構成されている。また、高圧解放弁204の下端部204cの外周部には、
図5に示すように、鍔部などが何も設けられていない。水平方向外側に突出した鍔部を設けた場合、鍔部に応力が集中するため、高圧解放弁204は、あえて、鍔部を設けない構成としている。
【0063】
高圧解放弁204の板厚D1は、隔壁弁202の板厚D2より厚い。すなわち、D1>D2の関係を満たす。また、高圧解放弁204の板厚D1は、流路部20aの板厚T1、T2、T3のいずれよりも薄い。すなわち、D1<T1<T2<T3の関係を満たす。
【0064】
図8は、圧縮機2の内部の圧力(P)の変動を示す説明図である。
図8は、
図2のグラフをさらに詳細に示している。
図8において、横軸は時間、縦軸は圧力(P)を示す。
図8において、破線31は、圧縮機2に圧力解放弁20が設けられていない場合の圧力(P)の変化を示し、破線32は、圧縮機2に圧力解放弁20が設けられている場合の圧力(P)の変化を示す。また、実線33は、圧縮機2が通常動作を行っているときの圧縮機2の内部の圧力変動を示す。
【0065】
実施の形態1では、圧縮機2が通常動作を行っている場合は、
図8の実線33で示すように、圧縮機2の内容の圧力(P)が、比較的小さい幅で変動している。当該圧力の変動は、隔壁弁202によって受け止められ、高圧解放弁204は圧力変動の影響を殆ど受けない。
【0066】
ポンプダウンの実行などにより、冷媒配管10に空気が大量に入った場合には、圧縮機2の内部で、当該空気が圧縮される。その場合には、
図8の実線30で示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)が上昇する。そして、圧縮機2の内部の圧力(P)が、圧縮機2の保証圧力(Pmax)を超えて、隔壁弁202の設計圧力(Pmax-s)に達したときに、隔壁弁202が開口する。すなわち、隔壁弁202が破損する。さらに、圧縮機2の内部の圧力(P)が上昇して、圧力解放弁20の開口圧力(Pp)に達したときに、高圧解放弁204が開口を開始する。すなわち、高圧解放弁204が破損し始める。このとき、高圧解放弁204の開口速度は、圧縮機2の内部の圧力(P)が圧縮機2の破損圧力(P’max)に到達するまでの圧力上昇速度より速い。そのため、圧力(P)が破損圧力(P’max)に到達する前に、高圧解放弁204が開口されて、圧縮機2の筐体22の内部と外部とが連通する。これにより、高圧ガスが高圧解放弁204から外部に向けて放出される。その結果、
図8の破線32で示すように、圧縮機2の内部の圧力(P)が急激に低下する。そのため、圧縮機2の破損を防止することができる。
【0067】
なお、圧力解放弁20の流路部20aの板厚T1、T2、T3は、弁体部20bの板厚D1、D2よりも厚くなっている。そのため、流路部20aの静的な耐圧強度は、弁体部20bの静的な耐圧強度より高い。従って、圧力解放弁20が開口して、圧力解放弁20に向かって大量の冷媒ガスが流れて、流路部20a内の冷媒ガスの圧力が上昇しても、流路部20aの形状を保持することができる。これにより、流路部20aでの圧力損失の上昇を回避することができる。
【0068】
[圧力解放弁20の製造方法]
次に、圧力解放弁20の製造方法について説明する。
図9は、実施の形態1に係る圧力解放弁20の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
隔壁弁用パイプ201の内壁が段付き構造となっているため、隔壁弁用パイプ201の上端部201cの内径r3は、下端部201aの内径r1より大きい。そのため、ステップS1では、内径(開口径)の大きい上端部201cから、隔壁弁202を隔壁弁用パイプ201内に挿入していく。隔壁弁202の下端部202cが段差部201eの段差に当接した時点で、段差部201eにより、それより先の挿入が阻止される。
【0070】
また、高圧解放弁用パイプ203の上端部203cの内径r2は、下端部203aの内径r3より大きい。そのため、ステップS2で、内径(開口径)の大きい上端部203cから、高圧解放弁204を高圧解放弁用パイプ203内に挿入していく。高圧解放弁204の下端部204cが段差部203eの段差に当接した時点で、段差部203eによりそれより先の挿入が阻止される。なお、ステップS1とS2とを実行する順序は逆でもよい。
【0071】
次に、ステップS3で、隔壁弁202が挿入された隔壁弁用パイプ201と、高圧解放弁204が挿入された高圧解放弁用パイプ203とが、炉中ろう付けなどで接合される。このとき、流路部20aに設けた段差部201eおよび203eによって、隔壁弁202および高圧解放弁204のそれぞれの相対位置が保持された状態で、ろう付けが行われる。これにより、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とが接合される。また、それと同時に、隔壁弁用パイプ201と隔壁弁202とが接合され、高圧解放弁用パイプ203と高圧解放弁204とが接合される。なお、隔壁弁用パイプ201と隔壁弁202とが接合される際に、隔壁弁202の下端部202cと段差部201eの段差の上面とが接合される。あるいは、それと同時に、隔壁弁202の側面部202bの少なくとも一部分と段差部201eの内壁とが接合されてもよい。同様に、高圧解放弁用パイプ203と高圧解放弁204とが接合される際に、高圧解放弁204の下端部204cと段差部203eの段差の上面とが接合される。あるいは、それと同時に、高圧解放弁204の側面部204dの少なくとも一部分と段差部203eの内壁とが接合されてもよい。
【0072】
以上の工程により、圧力解放弁20は製造される。
【0073】
以上のように、実施の形態1においては、室外機1aが、ポンプダウン実行時のディーゼル爆発の発生などに備えて、圧力解放弁20を備えている。また、圧力解放弁20は、疲労強度の高い隔壁弁202と、静的な耐圧強度の高い高圧解放弁204とを備えている。冷媒配管10内に大量の空気が混入し、圧縮機2内で空気圧縮が起こり、圧縮機2内の圧力(P)が急激に上昇し、保証圧力(Pmax)を超えた場合にのみ、高圧解放弁204が開口する。これにより、冷媒配管10の外部に向かって高圧ガスを開放する開放流路を確保することができ、圧縮機2の破損を防止することができる。また、圧縮機2の通常動作時には、疲労強度の高い隔壁弁202が、圧縮機2の内部の圧力変動を受けて、高圧解放弁204を保護しているため、高圧解放弁204が疲労破壊することを防止することができる。従って、通常動作時には、圧縮機2本来の機能および性能に影響なく、圧縮機2が良好な動作をすることができる。
【0074】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態2と実施の形態1との違いは、実施の形態2では、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203との接合面に凸部203fおよび凸部201fからなる位置決め部が設けられている点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0075】
図10に示すように、圧力解放弁20の流路部20aを構成する隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とはろう付けなどで接合される。その際、あらかじめ、流路部20aを構成する隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203との位置決めを行うために、接合面の一部分に、凸部203fおよび凸部201fが設けられている。
【0076】
図10の例では、接合面の1つである隔壁弁用パイプ201の上端部201cの一部分に、凸部201fが設けられている。凸部201fは、
図10に示すように、流路部20aの内壁寄りに配置されている。凸部201fは、上端部201cの周方向の全長に対して設けられていてもよいが、径方向の位置決めができればよいため、上端部201cの周方向の1箇所にのみ設けられていてもよい。あるいは、凸部201fは、上端部201cの周方向の対向する2箇所に設けられていてもよい。
【0077】
また、
図10の例では、接合面の他の1つである高圧解放弁用パイプ203の下端部203aの一部分に、凸部203fが設けられている。凸部203fは、
図10に示すように、流路部20aの外壁寄りに配置されている。凸部203fは、下端部203aの周方向の全長に対して設けられていてもよいが、位置決めができればよいため、下端部203aの周方向の1箇所または2箇所に設けられていてもよい。ただし、いずれの場合においても、凸部203fは、凸部201fに対応する位置に配置される。凸部203fが下端部203aの外壁寄りに配置されていることにより、下端部203aの内壁寄りの部分203aaは、凸部203fに対して第1方向に向かって凹んだ凹部(メス部)になっている。当該凹部(メス部)は、凸部201f(オス部)の相補形状を有している。
【0078】
隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とを接合する際には、
図10に示すように、外側に配置された凸部203fの径方向内側に、凸部201fを嵌合させる。すなわち、凹部になっている下端部203aの内壁寄りの部分203aa(メス部)に、凸部201f(オス部)を嵌合させる。このように、凸部203fおよび凸部201fの一方がオス部として機能し、他方が、オス部を受け入れるメス部として機能する。この場合、下端部203aの内壁寄りの部分203aaがメス部として機能し、凸部201fがオス部として機能している。このように、オス部とメス部とが合わさることで、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203との間で、軸方向の位置決め、および、径方向の位置決めを行うことができる。これにより、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203との間で、軸方向の位置ずれ、および、径方向の位置ずれを防止することができる。
【0079】
なお、
図10では、凸部203fおよび凸部201fの両方が設けられている場合を示したが、凸部203fおよび凸部201fの一方のみが設けられていてもよい。すなわち、凸部は、上端部201cおよび下端部203aの一方のみに設けられていてもよい。その場合、上端部201cおよび下端部203aの他方には、凸部が挿入される相補形状の凹部または挿入孔が配置される。この場合、凸部がオス部となり、凹部または挿入孔がメス部となる。
【0080】
以上のように、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0081】
また、実施の形態2では、流路部20aを構成する隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とを接合する際の接合面に、軸方向および径方向の位置決めを行うための位置決め部が設けられている。位置決め部は、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203とを接合する際の接合面の一方に設けられたオス部と、当該接合面の他方に設けられ、オス部の相補形状を有するメス部とから構成されている。これにより、隔壁弁用パイプ201と高圧解放弁用パイプ203との間で、軸方向の位置決め、および、径方向の位置決めを、容易に行うことができる。このように、位置決めが容易になるため、高圧解放弁204と隔壁弁202との組み立て作業が容易になる。これにより、高圧解放弁204と隔壁弁202とを個々に製造し保管することができる。また、圧力解放弁20を取り付ける圧縮機2の圧力の特性に応じて、高圧解放弁204と隔壁弁202との強度特性を適宜選択して、圧力解放弁20を精度よく容易に製造することができる。
【0082】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態3と実施の形態1との違いは、実施の形態3では、高圧解放弁用パイプ203の内径を広げる加工を施し、高圧解放弁用パイプ203の上流側の端部に、隔壁弁用パイプ201の下流側の端部の少なくとも一部分が挿入されて接合されている点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0083】
実施の形態3では、
図11に示すように、高圧解放弁用パイプ203の第1部分203bの下端部203a側の一部分203gに対して、内径を広げる加工が施されている。これにより、当該一部分203gの内径r4は、隔壁弁用パイプ201の外径R1と同等の大きさになっている。一方、当該一部分203gの外径R3は、当然のことながら、隔壁弁用パイプ201の外径R1よりも大きい。また、当該一部分203gの板厚は、高圧解放弁用パイプ203の第1部分203bの板厚T2と同じである。
【0084】
そのため、当該一部分203g内に、矢印Bの方向に、隔壁弁用パイプ201の第2部分201dの少なくとも一部分を挿入する。また、挿入後に、高圧解放弁用パイプ203と隔壁弁用パイプ201とは、炉中ろう付けなどによって接合される。
【0085】
以上のように、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0086】
また、実施の形態3では、高圧解放弁用パイプ203の内径を広げる加工を施し、隔壁弁用パイプ201の一部分を、高圧解放弁用パイプ203に挿入して接合している。これにより、高圧解放弁204と隔壁弁202とを個々に製造し保管することができる。また、圧力解放弁20を取り付ける圧縮機2の圧力の特性に応じて、高圧解放弁204と隔壁弁202との強度特性を適宜選択して、圧力解放弁20を精度よく製造することができる。
【0087】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態4と実施の形態1との違いは、実施の形態4では、高圧解放弁204と隔壁弁202との形状を同じにして、高圧解放弁204と隔壁弁202とに用いる材料を異ならせた点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0088】
上記の実施の形態1~3においては、高圧解放弁204と隔壁弁202との静的な耐圧強度および疲労強度の違いは、高圧解放弁204と隔壁弁202との形状の違いにより実現させる例を示している。実施の形態4では、高圧解放弁204と隔壁弁202とに用いる材料を変えることで、高圧解放弁204の静的な耐圧強度を高くし、隔壁弁202の疲労強度を高くしている。
【0089】
一般に、アルミニウム合金の方が、銅または銅合金よりも、疲労強度が高いため、隔壁弁202を例えばアルミニウム合金で構成する。また、銅の方が、アルミニウムよりも、静的な耐圧強度が高いため、高圧解放弁204を銅で構成する。このように、実施の形態4では、隔壁弁202を疲労強度の高い金属で構成し、高圧解放弁204を静的な耐圧強度の高い金属で構成している。
【0090】
なお、隔壁弁202の板厚D2と高圧解放弁204との板厚D1とが等しい場合には、隔壁弁202の方が高圧解放弁204よりも引張強さが低い材料を用いてもよい。
【0091】
また、実施の形態4では、高圧解放弁204と隔壁弁202との形状を同じにした例について説明したが、その場合に限らず、高圧解放弁204および隔壁弁202の形状を、それぞれ、実施の形態1~3と同じにしてもよい。その場合においても、高圧解放弁204と隔壁弁202とに用いる材料を異ならせることで、さらに、隔壁弁202の疲労強度が高くなり、高圧解放弁204の静的な耐圧強度が高くなる。
【0092】
以上のように、実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに、疲労強度の高い隔壁弁202と静的な耐圧強度の高い高圧解放弁204とから構成された圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0093】
また、実施の形態4では、高圧解放弁204と隔壁弁202とに用いる材料を異なるものにしているため、高圧解放弁204と隔壁弁202との強度特性を適宜選択して、圧力解放弁20を精度よく製造することができる。これにより、高圧解放弁204と隔壁弁202およびそれらを取りつける部分との加工精度を高めることなく、少ない製造コストで容易に、圧力解放弁20を製造することができる。
【0094】
実施の形態5.
図13は、実施の形態5に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態5と実施の形態1との違いは、実施の形態5では、高圧解放弁204と隔壁弁202との間の空間20cを密閉構造にして、空間20cに、空気調和機1が設置された周囲の環境の気圧よりも高い圧力のガスを封入させた点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0095】
図13に示すように、実施の形態5では、流路部20aにおいて、高圧解放弁204と隔壁弁202との間の空間20cを密閉構造としている。また、圧力解放弁20を製造する際に、予め設定された圧力で、空間20c内にガス205を封入させている。従って、ガス205の圧力は、空気調和機1が設置された周囲の環境の気圧よりも高い圧力になっている。ガス205は、例えば、不活性ガスである。これにより、圧力解放弁20の隔壁弁202の平均応力を下げ、隔壁弁202の疲労強度を高めることができる。
【0096】
なお、ガス205として使用する不活性ガスは、圧力解放弁20と接触しても腐食などの化学反応を起こさない材質で構成されたガスである。
【0097】
以上のように、実施の形態5においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0098】
また、実施の形態5では、流路部20aにおいて、高圧解放弁204と隔壁弁202との間の空間20cを密閉構造にして、ガス205を封入させている。これにより、圧力解放弁20の隔壁弁202の平均応力を下げ、隔壁弁202の疲労強度を高めることができる。
【0099】
実施の形態6.
図14は、実施の形態6に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す斜視図である。
図14においては、説明のため、一部の構成を透過させ破線で示している。
図15は、実施の形態6に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態6と実施の形態1との違いは、実施の形態6では、高圧解放弁204の上面204aに切欠部204bを設けた点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0100】
図14および
図15に示すように、実施の形態6においては、高圧解放弁204の上面204aに、切欠部204bが設けられている。切欠部204bは、高圧解放弁204の上面204aの中央部分に形成されている。切欠部204bの幅は、例えば、0.1mm程度にする。また、切欠部204bの深さは、例えば、高圧解放弁204の上面204aの板厚D1に対して1/10程度の深さにする。
【0101】
また、切欠部204bの形状は、
図14に示すように、平面視で、X字形状である。すなわち、直線状の切欠きが2本形成され、それらが互いに交差している。2本の直線状の切欠きは、直交していてもよく、あるいは、或る角度で交差していてもよい。
【0102】
高圧解放弁204の上面204a全体において、切欠部204bの部分は、高圧解放弁204の上面204aの他の部分に比べて、板厚が薄いので、静的な耐圧強度が弱くなる。そのため、高圧解放弁204の開口時(すなわち、破断時)には、切欠部204bの部分から高圧解放弁204が破断する。このように、高圧解放弁204に切欠部204bを設けることで、高圧解放弁204の開口時(すなわち、破断時)の強度と開口形状とを制御することができる。そのため、高圧解放弁204の開口までに時間がかかって圧縮機2が破断することを防止することができる。また、高圧解放弁204の開口は、切欠部204bから開始されるので、高圧ガスの開放に必要な開口形状および開口面積を確実に確保することができる。
【0103】
なお、高圧解放弁204に切欠部204bを設ける代わりに、絞り加工時に高圧解放弁204の上面204aに板厚分布を構成する。具体的には、高圧解放弁204の上面204aに板厚D1を均等にせずに、上面204aの一部分の板厚を他の部分より薄くする。板厚が薄い部分は、高圧解放弁204の上面204aの他の部分に比べて静的な耐圧強度が弱くなる。このように、上面204aの一部分の板厚が他の部分より薄くなるように板厚分布を構成し、当該板厚分布により切欠部204bと同様の効果を実現してもよい。
【0104】
以上のように、実施の形態6においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0105】
また、実施の形態6では、高圧解放弁204の上面204aに切欠部204bを設けることで、高圧解放弁204の上面204aの板厚を部分的に薄くしている。そのため、高圧解放弁204の開口時(すなわち、破断時)には、切欠部204bの部分から高圧解放弁204が破断する。このように、高圧解放弁204に切欠部204bを設けることで、高圧解放弁204の開口時の強度と開口形状とを制御することができるので、高圧ガスの開放流路を確実に確保することができる。
【0106】
実施の形態7.
図16は、実施の形態7に係る空気調和機1に設けられた圧力解放弁20の構成を示す断面図である。実施の形態7と実施の形態1との違いは、実施の形態7では、高圧解放弁204に、高圧解放弁204の上面204aのひずみを計測するひずみ計測部206を設けた点である。他の構成については、実施の形態1と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0107】
隔壁弁202は、金属疲労などの原因で、高圧解放弁204よりも先に破壊される。圧縮機2が運転を継続できる状態で、隔壁弁202が破壊された場合には、高圧解放弁204の変形量にかかる圧力が上昇するため、高圧解放弁204のひずみが増加する。そのため、実施の形態7では、高圧解放弁204の上面204aのひずみを計測するために、
図16に示すように、高圧解放弁204にひずみ計測部206を設けている。ひずみ計測部206は、高圧解放弁204の上面204aに設置されることが望ましい。また、ひずみ計測部206は、例えば、ひずみゲージなどから構成される。ひずみ計測部206は、空気調和機1を設置する際に、高圧解放弁204の上面204aに設置し、常に、高圧解放弁204のひずみを計測する。計測結果は、時系列データとして、制御部13のメモリに記憶される。制御部13は、ひずみ計測部206の計測結果に基づいて、計測された高圧解放弁204のひずみが、予め設定された閾値Th2を超えた場合に、隔壁弁202が破壊されていると判定する。あるいは、制御部13は、時系列データに基づいて、或る一定期間における、高圧解放弁204のひずみの増加率を演算して、増加率が予め設定された閾値Th3を超えた場合に、隔壁弁202が破壊されていると判定する。
【0108】
このように、高圧解放弁204のひずみを計測することで、圧力解放弁20内に設置した隔壁弁202の破壊の有無を判別することができる。隔壁弁202が破壊された場合、圧縮機2の筐体22の強度も劣化していることが推測される。そこで、制御部13は、空気調和機1の累積運転時間が予め設定された閾値Th4を超え、且つ、隔壁弁202が破壊されていると判定した場合に、ユーザに対して、圧縮機2の交換を促すメッセージを提示する。また、制御部13は、空気調和機1の累積運転時間が予め設定された閾値Th4を超え、且つ、隔壁弁202が破壊されていると判定した場合に、空気調和機1の運転を停止させてもよい。なお、制御部13は、メッセージの提示と空気調和機1の運転の停止との両方を行ってもよく、あるいは、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0109】
このように、隔壁弁202の破壊の有無から、圧縮機2の筐体22の寿命を予測することができる。そのため、実施の形態7では、ひずみ計測部206を設けて、計測結果に基づいて、隔壁弁202の破壊の有無を判別する。そして、隔壁弁202が破壊され、且つ、空気調和機1の累積運転時間が閾値Th4を上回った場合に、圧縮機2の寿命が近いことをユーザに知らせることができる。これにより、圧縮機2が破壊する前に、圧縮機2または空気調和機1の交換をユーザに促すことができる。
【0110】
なお、実施の形態7において、実施の形態6で示した切欠部204bを高圧解放弁204の上面204aに設ける場合には、切欠部204bの部分を避けて、ひずみ計測部206を設置する。その場合には、ひずみ計測部206を高圧解放弁204の上面204aの中央部分に設けた場合に比べて、ひずみの計測結果にずれが生じる可能性がある。そのため、実験等により当該ずれを予め求めておき、制御部13が、当該ずれに基づいて、ひずみの計測結果を補償すればよい。
【0111】
以上のように、実施の形態7においても、実施の形態1と同様に、空気調和機1の室外機1aに圧力解放弁20が設けられているため、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0112】
また、実施の形態7では、高圧解放弁204にひずみ計測部206を設けている。制御部13は、ひずみ計測部206の計測結果に基づいて、隔壁弁202の破壊の有無を判別することができる。また、制御部13は、隔壁弁202の破壊の有無から、圧縮機2の筐体22の寿命を予測することができる。これにより、圧縮機2が破壊する前に、圧縮機2または空気調和機1の交換をユーザに促すことができる。
【符号の説明】
【0113】
1 空気調和機、1a 室外機、1b 室内機、2 圧縮機、3 マフラー、4 四方向切換弁、5 室外熱交換器、6 冷媒減圧装置、7 液側閉鎖弁、8 室内熱交換器、9 ガス側閉鎖弁、10 冷媒配管、11 室外送風機、11a ファン用モータ、11b 翼部、12 室内送風機、12a ファン用モータ、12b 翼部、13 制御部、14 制御部、20 圧力解放弁、20a 流路部、20b 弁体部、20c 空間、21 吐出管、22 筐体、23 上面、24 側面、25 底面、30 実線、31 破線、32 破線、33 実線、40 黒丸印、41 黒三角印、42 黒星印、201 隔壁弁用パイプ、201a 下端部、201b 第1部分、201c 上端部、201d 第2部分、201e 段差部、201f 凸部、202 隔壁弁、202a 上面、202b 側面部、202c 下端部、203 高圧解放弁用パイプ、203a 下端部、203aa 部分、203b 第1部分、203c 上端部、203d 第2部分、203e 段差部、203f 凸部、203g 一部分、204 高圧解放弁、204a 上面、204b 切欠部、204c 下端部、204d 側面部、205 ガス、206 ひずみ計測部。