(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】タウオパチーのモデル
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20250411BHJP
A01K 67/027 20240101ALI20250411BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250411BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20250411BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250411BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20250411BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20250411BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250411BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250411BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250411BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20250411BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250411BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20250411BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20250411BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250411BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20250411BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
C12N15/12
A01K67/027 ZNA
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
C12N5/10
A61P25/28
A61K35/76
A61K47/54
A61K31/7088
A61K38/43
A61K31/713
A61K48/00
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
(21)【出願番号】P 2021568884
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 US2020037533
(87)【国際公開番号】W WO2020252340
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-19
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マクウィルター, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボウミック, アリジット
(72)【発明者】
【氏名】プリセット, マリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】コス, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】デクロー, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】フレンドウェイ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ザンブロウィッツ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラチョッピ, クラウディア
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】Cell Reports,2018年,Vol.23, No.7,p.2211-2224
【文献】The Journal of Neuroscience,2010年,Vol.30, No.10,p.3839-3848
【文献】Scientific Reports,Vol.7, No.1,7:46359,DOI: 10.1038/srep46359
【文献】Nature Communications,2018年,Vol.9, No.1,DOI: 10.1038/s41467-018-04252-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
A01K 67/00-68
C12N 5/00-28
A61K 31/00-33/44
A61K 38/00-58
A61K 47/00-69
A61K 48/00
A61K 35/00-768
G01N 33/50
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
げっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団であって、
(a)1つ以上の細胞における微小管関連タンパク質タウコード配列と、
(b)(i)前記1つ以上の細胞において、BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現をそれぞれ低減させる前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の遺伝子改変、ならびに/または(ii)前記1つ以上の細胞において、BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を含
み、ただし、前記動物細胞の集団がヒトの生殖細胞を含まず、かつ、ヒトの胚細胞を含まない、げっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項2】
前記1つ以上の細胞が、神経細胞である、請求項1に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項3】
前記微小管関連タンパク質タウコード配列が、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列である、
請求項1または2に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項4】
(I)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、ゲノムに組み込まれている、および/または
(II)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、相補的DNA(cDNA)配列を含む、および/または
(III)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、前記げっ歯動物、前記動物組織、もしくは前記動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている、および/または
(IV)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、異種プロモーター、マウスプリオンタンパク質プロモーター、ニューロン特異的プロモーターもしくはシナプシン-1プロモーターに作動可能に連結されている、
請求項3に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項5】
前記微小管関連タンパク質タウが、タウオパチー関連変異を含み、
(I)前記タウオパチー関連変異が、P301S変異を含むか、もしくは、前記微小管関連タンパク質タウが、配列番号98に記載の配列を含む、または
(II)前記タウオパチー関連変異が、A152T/P301L/S320F三重変異を含むか、もしくは、前記微小管関連タンパク質タウコード配列が、配列番号8
3に記載の配列を含む
か、もしくは、前記微小管関連タンパク質タウが配列番号84に記載の配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項6】
前記げっ歯動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団が、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現をそれぞれ低減させる、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の前記遺伝子改変を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のげっ歯動物、動物組織、動物細胞の集団。
【請求項7】
前記げっ歯動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団が、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含み、前記1つ以上の薬剤が、
(I)BANF1もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸であって、前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである、ヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸、
(II)BANF1もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子、または前記転写抑制因子をコードする核酸であって、前記転写抑制因子が、ガイドRNAと、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質とを含む、転写抑制因子、もしくは前記転写抑制因子をコードする核酸、または
(III)BANF1もしくはANKLE2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはRNAi剤、または前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記RNAi剤をコードする核酸
を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項8】
前記ヌクレアーゼ剤が、前記Casタンパク質および前記ガイドRNAであり、前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質であり、前記Casタンパク質が、触媒的に活性なCasタンパク質である、請求項7に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項9】
(I)前記ガイドRNAが、マウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、もしくは前記ガイドRNAが、ヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、または
(II)前記ガイドRNAが、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、もしくは前記ガイドRNAが、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む、
請求項8に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項10】
(I)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105~126、169~236もしくは279~324のいずれか1つに記載の配列もしくはその改変バージョンを含む、または
(II)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321および323のいずれか1つに記載の配列もしくはその改変バージョンを含み、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含むか、または、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む、5-10-5ギャップマーである、
請求項7に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項11】
タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の前記遺伝子改変を含まないか、または、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含まないげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、前記げっ歯動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団において増加し、前記少なくとも1つの徴候または症状が、
(I)タウの過剰リン酸化もしくはタウの凝集、および/または
(II)細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少
を含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団。
【請求項12】
前記細胞が
、インビトロにあり、
(I)前記細胞が、ヒト細胞もしくはげっ歯動物細胞である、および/または
(II)前記細胞が、神経細胞を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
【請求項13】
前記げっ歯動物細胞が、マウス細胞もしくはラット細胞である、請求項12に記載の動物細胞の集団。
【請求項14】
前記神経細胞が、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロン、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンもしくは一次マウスニューロンを含む、請求項12に記載の動物細胞の集団。
【請求項15】
前記組織が
、エクスビボにあり、
(I)前記動物が、げっ歯動物である、および/または
(II)前記組織が、神経系組織である、請求項1~11のいずれか一項に記載の動物組織。
【請求項16】
前記げっ歯動物が、マウスもしくはラットである、請求項15に記載の動物組織。
【請求項17】
前記組織が、脳スライスを含む、請求項15に記載の動物組織。
【請求項18】
(I)BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の前記遺伝子改変が、1つ以上の神経細胞内にあり、かつ/またはBANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる前記1つ以上の薬剤が、1つ以上の神経細胞にある、ならびに/または
(II)前記げっ歯動物が、マウスもしくはラットである、
請求項1~11のいずれか一項に記載のげっ歯動物。
【請求項19】
前記げっ歯動物が、マウスであり、前記マウスが、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現をそれぞれ低減させる、前記BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の前記遺伝子改変をさらに含み、かつ/または前記1つ以上の細胞においてBANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる
前記1つ以上の薬剤をさらに含む、PS19トランスジェニックマウスである、
請求項18に記載のげっ歯動物。
【請求項20】
タウオパチーの治療のための治療薬候補を評価するための方法であって、
(a)請求項1~11および18~19のいずれか一項に記載のげっ歯動物、請求項1~11および15~17のいずれか一項に記載の動物組織、または請求項1~14のいずれか一項に記載の動物細胞の集団に、候補薬剤を投与することと、
(b)前記候補薬剤が、タウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有するかどうかを決定するために1つ以上のアッセイを実行することと、
(c)タウオパチーに関連する前記1つ以上の徴候または症状に対して効果を有する前記候補薬剤を治療薬候補として特定することと、を含
み、ただし、前記動物組織がエクスビボにあり、前記動物細胞の集団がインビトロにあり、前記動物細胞の集団がヒトの生殖細胞を含まず、かつ、ヒトの胚細胞を含まない方法。
【請求項21】
前記1つ以上の徴候または症状が、
(I)タウの過剰リン酸化もしくはタウの凝集、または
(II)細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少
を含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~11および18~19のいずれか一項に記載のげっ歯動物、請求項1~11および15~17のいずれか一項に記載の動物組織、または請求項1~14のいずれか一項に記載の動物細胞の集団を作製する方法であって、
(I)
(a)BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる
前記1つ以上の薬剤を、
前記微小管関連タンパク質タウコード配列を含むげっ歯動物、
エクスビボにある動物組織、または
インビトロにある動物細胞の集団に導入することと、
(b)前記げっ歯動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団をスクリーニングして、前記1つ以上の薬剤の存在を確認することと、を含む、または
(II)
(a)げっ歯動物、
エクスビボにある動物組織、または
インビトロにある動物細胞の集団に、
(i)外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、
(ii)BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる
前記1つ以上の薬剤と、を導入することと、
(b)前記げっ歯動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団をスクリーニングして、前記1つ以上の薬剤および前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列の存在を確認することと、を含
み、ただし、前記動物細胞の集団がヒトの生殖細胞を含まず、かつ、ヒトの胚細胞を含まない、
方法。
【請求項23】
(I)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、もしくは脂質ナノ粒子を介して送達される、および/または
(II)前記1つ以上の薬剤が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、もしくは脂質ナノ粒子を介して送達される、および/または
(III)前記方法が、前記げっ歯動物を作製するためのものであり、前記1つ以上の薬剤が、髄腔内注射、頭蓋内注射、または脳室内注射によって前記げっ歯動物に投与されるか、もしくは、前記1つ以上の薬剤が、脳への定位的注入によって前記げっ歯動物に投与される、
請求項2
2に記載の方法。
【請求項24】
タウオパチーモデルげっ歯動物、タウオパチーモデル動物組織、または動物細胞のタウオパチーモデル集団におけるタウ凝集を加速または悪化させるための方法であって、前記タウオパチーモデルげっ歯動物、前記タウオパチーモデル動物組織、または前記動物細胞のタウオパチーモデル集団に、BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低下させる1つ以上の薬剤を導入することを含
み、ただし、前記タウオパチーモデル動物組織がエクスビボにあり、前記動物細胞のタウオパチーモデル集団がインビトロにあり、前記動物細胞のタウオパチーモデル集団がヒトの生殖細胞を含まず、かつ、ヒトの胚細胞を含まない、方法。
【請求項25】
前記タウオパチーモデルげっ歯動物、前記タウオパチーモデル動物組織、または前記動物細胞のタウオパチーモデル集団が、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列を含む、
請求項2
4に記載の方法。
【請求項26】
(I)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、ゲノムに組み込まれている、および/または
(II)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、相補的DNA(cDNA)配列を含む、および/または
(III)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、前記げっ歯動物、前記動物組織、もしくは前記動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている、および/または
(IV)前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、異種プロモーター、マウスプリオンタンパク質プロモーター、ニューロン特異的プロモーターもしくはシナプシン-1プロモーターに作動可能に連結されている、
請求項2
5に記載の方法。
【請求項27】
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが、タウオパチー関連変異を含み、
(I)前記タウオパチー関連変異が、P301S変異を含むか、もしくは、前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが、配列番号98に記載の配列を含む、または
(II)前記タウオパチー関連変異が、A152T/P301L/S320F三重変異を含むか、もしくは、前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、配列番号8
3に記載の配列を含む
か、もしくは、前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが配列番号84に記載の配列を含む、
請求項2
5または2
6に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の薬剤が、
(I)BANF1もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸であって、前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである、ヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸、
(II)BANF1もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子、または前記転写抑制因子をコードする核酸であって、前記転写抑制因子が、ガイドRNAと、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質とを含む、転写抑制因子、または前記転写抑制因子をコードする核酸、または
(III)BANF1もしくはANKLE2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤、あるいは前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記RNAi剤をコードする核酸
を含む、請求項2
4~2
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヌクレアーゼ剤が、前記Casタンパク質および前記ガイドRNAであり、前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質であり、前記Casタンパク質が、触媒的に活性なCasタンパク質である、請求項2
8に記載の方法。
【請求項30】
(I)前記ガイドRNAが、マウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、または
(II)前記ガイドRNAが、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む、
請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
(I)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105~126、169~236もしくは279~324のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む、または
(II)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321および323のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含み、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含むか、または、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む、5-10-5ギャップマーである、
請求項2
8に記載の方法。
【請求項32】
(I)前記1つ以上の薬剤が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、もしくは脂質ナノ粒子を介して送達される、および/または
(II)前記1つ以上の薬剤が、髄腔内注入、頭蓋内注入、もしくは脳室内注入によって前記げっ歯動物に投与されるか、もしくは、前記1つ以上の薬剤が、脳への定位的注入によって前記げっ歯動物に投与される、
請求項2
4~3
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含まないげっ歯動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、前記げっ歯動物、前記動物組織、または動物細胞の集団において増加し、前記少なくとも1つの徴候または症状が、
(I)タウの過剰リン酸化もしくはタウの凝集、および/または
(II)細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化のタンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少
を含む、
請求項2
4~3
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(I)前記細胞が、ヒト細胞もしくはげっ歯動物細胞である、および/または
(II)前記細胞が、神経細胞を含む、
請求項2
4~3
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記げっ歯動物細胞が、マウス細胞もしくはラット細胞である、請求項3
4に記載の方法。
【請求項36】
前記神経細胞が、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロン、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンもしくは一次マウスニューロンを含む、請求項3
4に記載の方法。
【請求項37】
(I)前記動物が、げっ歯動物である、および/または
(II)前記組織が、神経系組織である、
請求項2
4~3
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記げっ歯動物が、マウスもしくはラットである、請求項3
7に記載の方法。
【請求項39】
前記組織が、脳スライスを含む、請求項3
7に記載の方法。
【請求項40】
前記げっ歯動物が、マウスまたはラットである、請求項2
4~3
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記げっ歯動物が、マウスであり、前記マウスが、BANF1およびANKLE2のうちの1つもしくは両方の発現を低減させる、前記1つ以上の薬剤をさらに含むPS19トランスジェニックマウスである、請求項4
0に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年6月14日に出願された米国出願第62/861,553号の利益を主張し、これはすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表への参照
ファイル548673SEQLIST.txtに記述された配列表は203キロバイトであり、2020年6月12日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
タウなどのタンパク質の異常な凝集または線維化は、多くの疾患の特徴であり、特にアルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)などの多くの神経変性疾患が含まれる。これらの疾患の多くでは、ある特定のタンパク質の不溶性凝集体への線維化は、疾患の特徴であるだけでなく、神経毒性の原因因子としても関係している。さらに、これらの疾患は、ステレオタイプのパターンに従って中枢神経系を介する凝集の病状の伝播によって特徴付けられ、このプロセスは疾患の進行と相関している。したがって、異常なタンパク質凝集のプロセス、または凝集体の細胞間増殖を変更する遺伝子および遺伝子経路の同定は、神経変性疾患の病因をよりよく理解する上で、ならびに治療的介入のための戦略を考案する上で大いに価値がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で提供されるのは、改善されたタウオパチーモデルである非ヒト動物、動物組織、および動物細胞の集団ならびにそのようなモデルを作製および使用する方法である。このような改善されたタウオパチーモデルは、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させるBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上のもしくはすべての遺伝子改変を有することができるかならびに/または1つ以上の細胞においてBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上のもしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を含むことができる。いくつかのそのような改善されたタウオパチーモデルはまた、微小管関連タンパク質タウコード配列(例えば、内因性または外因性)を含み得る。いくつかのそのような改善されたタウオパチーモデルはまた、外因性微小管関連タンパク質タウコード配列(例えば、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列)を含み得る。あるいは、いくつかのそのような改善されたタウオパチーモデルは、タウオパチー関連変異またはタウ病原性変異を含むタウタンパク質をコードするタウコード配列(内因性または外因性)を含み得る。
【0005】
一態様では、以下を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団であって、(a)1つ以上の細胞における微小管関連タンパク質タウコード配列と、(b)(i)1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、BANF1、PPP2CAおよびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変と、ならびに/または(ii)1つ以上の細胞においてBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を含む、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団を提供する。任意選択で、微小管関連タンパク質タウコード配列は、ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列である。任意選択で、微小管関連タンパク質タウコード配列は、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列である。一態様では、以下を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団であって、(a)1つ以上の細胞における外部ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、(b)(i)1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変、ならびに/または(ii)1つ以上の細胞においてBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を含む、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団を提供する。任意選択で、1つ以上の細胞は神経細胞である。
【0006】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列がゲノムに組み込まれている。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、相補的DNA(cDNA)配列を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている。
【0007】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、異種プロモーターに作動可能に連結されている。任意選択で、異種プロモーターはマウスプリオンタンパク質プロモーターである。任意選択で、異種プロモーターはニューロン特異的プロモーターである。必要に応じて、ニューロン特異的プロモーターはシナプシン-1プロモーターである。
【0008】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、微小管関連タンパク質タウは、タウオパチー関連変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、タウオパチー関連変異は、P301S変異を含む。任意選択で、微小管関連タンパク質タウは、配列番号98に示される配列を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、タウオパチー関連変異は、A152T/P301L/S320F三重変異を含む。任意選択で、微小管関連タンパク質タウコード配列は、配列番号83に示される配列を含むか、または微小管関連タンパク質タウは、配列番号84に示される配列を含む。
【0009】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウは、タウオパチー関連変異を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、タウオパチー関連変異は、P301S変異を含む。任意選択で、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウは、配列番号98に記載の配列を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、タウオパチー関連変異は、A152T/P301L/S320F三重変異を含む。任意選択で、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、配列番号83に記載の配列を含むか、または外因性ヒト微小管関連タンパク質タウは、配列番号84に記載の配列を含む。
【0010】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団は、1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくは遺伝子改変を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団は、1つ以上の細胞において、BANF1、Ppp2ca、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を含む。
【0011】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats )(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである。任意選択で、ヌクレアーゼ剤は、Casタンパク質およびガイドRNAである。任意選択で、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。任意選択で、Casタンパク質は触媒的に活性なCasタンパク質である。任意選択で、Casタンパク質は、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質であり、任意選択で、転写抑制因子ドメインは、クルッペル関連ボックス(Kruppel associated box)(KRAB)ドメインである。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAはマウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、またはガイドRNAはヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む。
【0012】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子、または転写抑制因子コードする核酸を含む。任意選択で、転写抑制因子は、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)を含み、任意選択で、転写抑制因子ドメインは、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメインである。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAはマウスBanf1を標的とし、配列番号44-46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、またはガイドRNAはヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む。
【0013】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2を標的とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする、アンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはRNAi剤を含むかまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはRNAi剤をコードする核酸を含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105~324のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268~270、272、275、276、279、281-283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。場合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む5-10-5ギャップマーである。
【0014】
いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変を含まないか、または、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を含まない非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団において増加する。任意選択で、少なくとも1つの徴候または症状は、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む。任意選択で、少なくとも1つの徴候または症状は、タウの過剰リン酸化およびタウの凝集を含む。場合により、症状の少なくとも1つの徴候は、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起(somatodendritic)コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0015】
いくつかのそのような動物細胞の集団では、細胞はインビボである。いくつかのそのような動物細胞の集団では、細胞はインビトロである。いくつかのそのような動物細胞の集団では、細胞はヒト細胞である。いくつかのそのような動物細胞の集団では、細胞はげっ歯動物細胞であり、任意選択で、げっ歯動物細胞はマウス細胞またはラット細胞である。任意選択で、細胞はマウス細胞である。いくつかのそのような動物細胞の集団では、細胞は神経細胞を含む。任意選択で、ニューロン細胞は、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロンを含む。任意選択で、ニューロン細胞は、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンを含む。任意選択で、神経細胞は一次マウスニューロンを含む。
【0016】
いくつかのそのような動物組織では、組織はインビボである。いくつかのそのような動物組織では、組織はエクスビボである。いくつかのそのような動物組織では、動物はげっ歯動物であり、任意選択で、げっ歯動物はマウスまたはラットである。任意選択で、動物はマウスである。いくつかのそのような動物組織では、組織は神経系組織である。任意選択で、組織は脳切片を含む(例えば、器官型脳切片培養)。
【0017】
いくつかのそのような非ヒト動物では、非ヒト動物はげっ歯動物であり、任意選択で、げっ歯動物はマウスまたはラットである。任意選択で、非ヒト動物はマウスである。任意選択で、マウスは、1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させるBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変をさらに含み、かつ/または1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤をさらに含む、PS19トランスジェニックマウスである。
【0018】
別の態様では、上記の非ヒト動物、動物組織、および動物細胞の集団のいずれかを使用して、タウオパチーの治療のための治療薬候補(therapeutic candidate)を評価するための方法が提供される。いくつかのそのような方法は、(a)上記の非ヒト動物、動物組織、および動物細胞の集団のいずれかに候補薬剤を投与することと、(b)候補薬剤がタウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有するかどうかを決定するために1つ以上のアッセイを実行することと、(c)タウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有する候補薬剤を治療薬候補として特定することと、を含む。いくつかのそのような方法では、1つ以上の徴候または症状は、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む。任意選択で、1つ以上の徴候または症状は、タウの過剰リン酸化およびタウの凝集を含む。いくつかのそのような方法では、1つ以上の徴候または症状は、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0019】
いくつかのそのような方法では、候補薬剤は、非ヒト動物に投与される。いくつかのそのような方法では、候補薬剤は、エクスビボで動物組織に投与される。いくつかのそのような方法では、候補薬剤は、インビトロで動物細胞の集団に投与される。
【0020】
別の態様では、上記の非ヒト動物、動物組織、および動物細胞の集団のいずれかを作製する方法が提供される。いくつかのそのような方法は、(a)BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を、微小管関連タンパク質タウコード配列を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に導入することと、(b)非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団をスクリーニングして、1つ以上の薬剤の存在を確認することと、を含む。いくつかのそのような方法は、(a)BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に導入することと、(b)非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団をスクリーニングして、1つ以上の薬剤の存在を確認することと、を含む。いくつかのそのような方法は、(a)非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に、(i)外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、(ii)BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を導入することと、(b)非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団をスクリーニングして、1つ以上の薬剤および外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列の存在を確認ことと、を含む。必要に応じて、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される。
【0021】
いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される。いくつかのそのような方法では、方法は、非ヒト動物を作製するためのものであり、1つ以上の薬剤は、髄腔内注入、頭蓋内注入、または脳室内注入によって非ヒト動物に投与される。任意選択で、方法は、非ヒト動物を作製するためのものであり、1つ以上の薬剤は、脳または脳の領域(例えば、海馬)への定位的注入によって非ヒト動物に投与される。任意選択で、この方法は、非ヒト動物を作製するためのものであり、1つ以上の薬剤は、海馬への定位的注入によって非ヒト動物に投与される。
【0022】
別の態様では、タウオパチーモデル非ヒト動物、タウオパチーモデル動物組織、またはタウオパチーモデル動物細胞の集団においてタウ凝集を加速または悪化させるための方法が提供される。いくつかのそのような方法は、タウオパチーモデルに非ヒト動物、タウオパチーモデル動物組織、または動物細胞のタウオパチーモデル集団に、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を導入することを含む。
【0023】
いくつかのそのような方法では、タウオパチーモデル非ヒト動物、タウオパチーモデル動物組織、または動物細胞のタウオパチーモデル集団は、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列を含む。いくつかのそのような方法では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列がゲノムに組み込まれている。いくつかのそのような方法では、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、相補的DNA(cDNA)配列を含む。いくつかのそのような方法では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている。
【0024】
いくつかのそのような方法では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、異種プロモーターに作動可能に連結されている。任意選択で、異種プロモーターはマウスプリオンタンパク質プロモーターである。任意選択で、異種プロモーターはニューロン特異的プロモーターである。必要に応じて、ニューロン特異的プロモーターはシナプシン-1プロモーターである。
【0025】
いくつかのそのような方法では、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウは、タウオパチー関連変異を含む。いくつかのそのような方法では、タウオパチー関連変異は、P301S変異を含む。任意選択で、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウは、配列番号98に記載の配列を含む。いくつかのそのような方法では、タウオパチー関連変異は、A152T/P301L/S320F三重変異を含む。任意選択で、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列は、配列番号83に記載の配列を含むか、または外因性ヒト微小管関連タンパク質タウは、配列番号84に記載の配列を含む。
【0026】
いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸を含む。いくつかのそのような方法では、ヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである。任意選択で、ヌクレアーゼ剤は、Casタンパク質およびガイドRNAである。任意選択で、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。任意選択で、Casタンパク質は触媒的に活性なCasタンパク質である。任意選択で、Casタンパク質は、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質であり、任意選択で、転写抑制因子ドメインは、クルッペル関連ボックス(Kruppel associated box)(KRAB)ドメインである。いくつかのそのような方法では、ガイドRNAは、マウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のいずれか1つを含む。いくつかのそのような方法では、ガイドRNAは、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のいずれか1つを含む。いくつかのそのような方法では、ガイドRNAは、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む。
【0027】
いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子またはその転写抑制因子をコードする核酸を含む。任意選択で、転写抑制因子は、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)を含み、任意選択で、転写抑制因子ドメインは、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメインである。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAはマウスBanf1を標的とし、配列番号44-46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、またはガイドRNAはヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のいずれか1つを含む。いくつかのそのような非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団では、ガイドRNAは、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のいずれか1つを含むか、またはガイドRNAは、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む。
【0028】
いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を含む。いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド、もしくはRNAi剤、またはそのアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはRNAi剤をコードする核酸を含む。場合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105~324のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268~270、272、275、276、279、281-283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。場合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む5-10-5ギャップマーである。
【0029】
いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される。いくつかのそのような方法では、1つ以上の薬剤は、髄腔内注入、頭蓋内注入、または脳室内注入によって非ヒト動物に投与され、任意選択で、1つ以上の薬剤は、脳または脳の領域(例えば、海馬)、への定位的注入によって非ヒト動物に投与され、任意選択で、1つ以上の薬剤が、海馬への定位的注入によって非ヒト動物に投与される。
【0030】
いくつかのそのような方法では、タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を含まない非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団において増加する。任意選択で、少なくとも1つの徴候または症状は、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む。任意選択で、少なくとも1つの徴候または症状は、タウの過剰リン酸化およびタウの凝集を含む。任意選択で、少なくとも1つの徴候または症状は、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
いくつかのそのような方法では、細胞はインビボである。いくつかのそのような方法では、細胞はインビトロである。いくつかのそのような方法では、細胞はヒト細胞である。いくつかのそのような方法では、細胞はげっ歯動物細胞であり、任意選択で、げっ歯動物細胞はマウス細胞またはラット細胞である。任意選択で、細胞はマウス細胞である。いくつかのそのような方法では、細胞は神経細胞を含む。任意選択で、ニューロン細胞は、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロンを含む。任意選択で、ニューロン細胞は、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンを含む。任意選択で、神経細胞は一次マウスニューロンを含む。
【0032】
いくつかのそのような方法では、組織はインビボである。いくつかのそのような方法では、組織はエクスビボである。いくつかのそのような方法では、動物組織はげっ歯動物組織であり、任意選択で、げっ歯動物はマウスまたはラットである。任意選択で、動物組織はマウス組織である。いくつかのそのような方法では、組織は神経系組織である。任意選択で、組織は脳切片を含む(例えば、器官型脳切片培養)。
【0033】
いくつかのそのような方法では、非ヒト動物はげっ歯動物であり、任意選択で、げっ歯動物はマウスまたはラットである。任意選択で、非ヒト動物はマウスである。任意選択で、マウスは、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤をさらに含むPS19トランスジェニックマウスである。
【0034】
別の態様では、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、それぞれBanf1、Ppp2ca、およびAnkle2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させるBanf1、Ppp2ca、およびAnkle2のうちの1つ以上またはすべての遺伝子改変と、を含む非ヒト動物ゲノムが提供される。
【0035】
別の態様では、提供されるのは、細胞におけるBANF1、PPP2CA、もしくはAnkle2の発現を低減または阻害する薬剤またはこの薬剤をコードする核酸であって、任意選択で、薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする、ヌクレアーゼ剤またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)である。任意選択で、薬剤は、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2を標的とする、ヌクレアーゼ剤またはアンチセンスオリゴヌクレオチドRNAi剤である。場合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105~324のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268~270、272、275、276、279、281-283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む。場合により、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む。任意選択で、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む5-10-5ギャップマーである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】(原寸に比例していない)タウアイソフォーム2N4Rの概略図を示す。タウバイオセンサー株は、完全な2N4Rではなく、導入遺伝子としてタウ4RD-YFPおよびタウ4RD-CFPのみを含む。
【
図2】タウバイオセンサー細胞株において、凝集体形成が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってどのように監視されるかについての概略図を示す。タウ
4RD-CFPタンパク質は紫色の光で励起され、青色の光を発する。タウ
4RD-YFP融合タンパク質は青色の光で励起され、黄色の光を発する。凝集がない場合、紫色の光による励起はFRETをもたらさない。タウ凝集がある場合、紫色の光による励起はFRETおよび黄色の発光をもたらす。
【
図3A】以前に単離された期待に及ばない対照Cas9-発現TCYクローンである、クローンCas9H1に対する、レンチウイルスCas9発現コンストラクトを形質導入したタウ
4RD-CFP/タウ
4RD-YFP(TCY)バイオセンサー細胞クローンにおける相対Cas9 mRNA発現を示す。
【
図3B】PERKおよびSNCAをそれぞれ標的とするsgRNAを形質導入してから3日後および7日後のCas9 TCYクローンにおけるPERK遺伝子座およびSNCA遺伝子座での切断効率を示す。
【
図4】ゲノムワイドCRISPR/Cas9 sgRNAライブラリを使用して、Cas9 TCYバイオセンサー細胞内の標的遺伝子を破壊するための戦略の概略図を示す。
【
図5】タウ
4RD-YFP細胞にタウ
4RD線維を播種した場合の、安定して増殖するタウ凝集体を含むタウ
4RD-YFP Agg[+]サブクローンの誘導を示す概略図である。タウ凝集体を含むサブクローンを示す蛍光顕微鏡画像も示される。
【
図6】コンフルエントな細胞で3日後に収集されたタウ
4RD-YFP Agg[+]サブクローンからの馴化培地が、タウ凝集活性の源を提供することができるのに対し、タウ
4RD-YFP Agg[-]サブクローンからの培地は提供しないことを示す概略図である。馴化培地は、75%の馴化培地および25%の新鮮な培地としてレシピエント細胞に適用された。それぞれの蛍光活性化細胞選別(FACS)分析画像が示される。x軸は、CFP(405nmレーザー励起)を示し、y軸は、FRET(CFP発光からの励起)を示す。右上の象限はFRET[+]であり、右下の象限はCFP[+]であり、左下の象限は二重陰性である。
【
図7】タウ凝集を促進する修飾因子遺伝子を同定するためのゲノムワイドCRISPRヌクレアーゼ(CRISPRn)スクリーニングの戦略を示す概略図である。
【
図8】ゲノムワイドCRISPRnスクリーニングを使用した次世代シーケンシング(NGS)分析のための存在量および濃縮の概念を示す概略図である。
【
図9】タウ凝集を促進する修飾因子遺伝子のゲノムワイドスクリーニングで同定された標的遺伝子1~14の二次スクリーニングの概略図を示す。
【
図10】標的遺伝子1~14を標的とするsgRNAのレンチウイルス発現コンストラクトを形質導入したCas9 TCYバイオセンサー細胞におけるタウ凝集体馴化培地によるFRET誘導を示すグラフである。二次スクリーニングにより、標的遺伝子2(BANF1)および8(PPP2CA)が、タウの播種/凝集に対する細胞の感受性を調節することが確認された。
【
図11】BANF1 gRNA1、PPP2CA gRNA5、非標的gRNA、およびgRNAなしのレンチウイルス発現コンストラクトを形質導入したCas9 TCYバイオセンサー細胞のFACS分析画像を示す。細胞は、馴化培地または新鮮な培地で培養された。x軸は、CFP(405nmレーザー励起)を示し、y軸は、FRET(CFP発光からの励起)を示す。右上の象限はFRET[+]であり、右下の象限はCFP[+]であり、左下の象限は二重陰性である。BANF1またはPPP2CAの破壊は、タウ凝集体馴化培地に応答してタウ凝集体の形成を増加させるが、新鮮な培地には応答しない。
【
図12】mRNA発現分析、タンパク質発現分析、およびFRET分析を含む、BANF1およびPPP2CAを標的とするsgRNAのレンチウイルス発現コンストラクトを形質導入したCas9 TCYバイオセンサー細胞における二次スクリーニングの概略図を示す。BANF1(g1およびg3)に対して2つのsgRNAを使用し、PPP2CA(g5)に対して1つのsgRNAを使用し、非標的対照として非標的sgRNA(g3)を使用した。
【
図13】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクトの形質導入後6日目にqRT-PCRにより評価された、Cas9 TCYバイオセンサー細胞におけるBANF1およびPPP2CAの相対的発現を示す。
【
図14】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクトによる形質導入後13日目にウエスタンブロットにより評価された、Cas9TCYバイオセンサー細胞におけるBANF1タンパク質およびPPP2CAタンパク質の発現を示す。
【
図15】レンチウイルスsgRNA発現構築物の形質導入後10日目の、Cas9 TCYバイオセンサー細胞におけるFRET[+]細胞パーセントで測定した場合のタウ凝集を示す。リポフェクタミンは使用されなかった。
【
図16】ウエスタンブロットにより評価された、ノックダウンCas9 TCY細胞クローンにおけるBANF1およびPPP2CAの発現を示す。
【
図17】ウエスタンブロットにより評価された、ノックダウンCas9 TCY細胞クローンにおけるタウの発現、ならびにウエスタンブロットにより評価された、それらのクローンの位置S262およびS356でのタウのリン酸化を示す。
【
図18】FRETにより評価された、BANF1およびPPP2CAノックダウンCas9TCY細胞クローンにおけるタウ凝集を示す。
【
図19】FRETにより評価された、BANF1、VRK1、CDK5、PPP2CA、PPP2R2A、ANKLE2、EMD、LEMD2、LEMD3/MAN1、およびTMPO/LAP2ノックダウンCas9TCY細胞クローンにおけるタウ凝集を示す。
【
図20】ANKLE2、EMD、またはVRK1を標的とするレンチウイルスsgRNA発現コンストラクトの形質導入後の、Cas9 TCYバイオセンサー細胞におけるFRET[+]細胞パーセントで測定した場合のタウ凝集を示す。
【
図21A】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクトによる形質導入後のqRT-PCRで評価された、Cas9対応マウス胚性幹細胞におけるBanf1の相対的発現を示す。
【
図21B】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクトによる形質導入後qRT-PCRで評価された、Cas9対応マウス胚性幹細胞におけるPpp2caの相対的発現を示す。
【
図22A】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクト(Cas9を含むオールインワン(AIO)コンストラクト、またはsgRNAのみ)を用いた形質導入後のqRT-PCRで評価された、F1H4マウス胚性幹細胞におけるAnkle2の相対的発現を示す。
【
図22B】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクト(Cas9を含むオールインワン(AIO)コンストラクト、またはsgRNAのみ)を用いた形質導入後のqRT-PCRで評価された、F1H4マウス胚性幹細胞におけるBanf1の相対的発現を示す。
【
図22C】レンチウイルスsgRNA発現コンストラクト(Cas9を含むオールインワン(AIO)コンストラクト、またはsgRNAのみ)を用いた形質導入後のqRT-PCRで評価された、F1H4マウス胚性幹細胞におけるPpp2caの相対的発現を示す。
【
図23】BANF1/PPP2CAインタラクトームを示す。
【
図24A】タウ-CFP/タウ-YFP(TCY)dCas-KRABクローン(BANF1もしくはANKLE2の標的ノックダウンまたは非標的)におけるANKLE2の相対的発現を示す。
【
図24B】タウ-CFP/タウ-YFP(TCY)dCas-KRABクローン(BANF1もしくはANKLE2の標的ノックダウンまたは非標的)におけるBANF1の相対的発現を示す。
【
図25】馴化培地タウ-YFP Agg[+]で3日間処理した、タウ-CFP/タウ-YFP(TCY)dCas-KRABクローン(BANF1またはANKLE2の標的ノックダウン)におけるFRET[+]細胞の割合で測定したタウ凝集を示す。
【
図26】ΔBANF1およびΔANKLE2クローンの細胞分画により、タウ-YFP Agg[+]細胞溶解物を用いた2日後に不溶性画分中のタウおよびホスホタウ(セリン356)の検出が可能になることを示している。
【
図27】RNA-seq解析による4つの比較で重要な遺伝子(1.5以上の倍数変化)の遺伝子リストサイズを示す(BANF1KD対非標的対照、BANF1KD対親、ANKLE2KD対非標的対照、およびANKLE2KD対親)。
【
図28】ΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウン細胞におけるタウ凝集の増加を救助するためのcDNA相補性を試験するための概略図を示す。
【
図29】タウ-YFPAgg[+]細胞溶解物(2μg)で 2日間処理したタウ-CFP /タウ-YFPdCas-KRABΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウン細胞のcDNA相補後のFRET[+]細胞パーセントで測定したタウ凝集を示す。No_KRAB_gRNAは、gRNAが投与されていない陰性対照試料を指す。
【
図30A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンのDAPI+核のカウントを示す。
【
図30B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体におけるMAP2強度を示している。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(ns =非有意、エラーバーは平均値の標準誤差(s.e.m)を表す)。
【
図31A】非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの細胞体におけるホスホタウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。
【
図31B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおける核周囲ホスホタウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(*** = p <0.004 ****=p<0.0001、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図32A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンのDAPI+核のカウントを示す。
【
図32B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体におけるMAP2強度を示す。
【
図32C】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体における総タウ強度を示している。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(ns=非有意、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図33A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの核のカウントを示す。
【
図33B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体におけるMAP2強度を示す。
【
図33C】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体におけるホスホタウAT8(S202、T205)強度を示す。
【
図33D】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された核周囲ドメインにおけるホスホタウAT8(S202、T205)強度を示す。
【
図33E】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体における総タウ強度を示す。
【
図34A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるDAPI+核のカウントを示す。
【
図34B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるNup98核/細胞質比を示す。
【
図34C】非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの体細胞におけるホスホタウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。
【
図34D】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおける核周囲ホスホタウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(*=p<0.05、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図35A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるRanGAP1核/細胞質比を示す。
【
図35B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおける総RanGAP1レベルを示す。
【
図35C】非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるRan核/細胞質比を示す。
【
図35D】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおける総Ranレベルを示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(**=p<0.002-ns、非有意、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図36A】タウ-cDNA 3MUTを添加した場合の、非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるDAPI+核のカウントを示す。
【
図36B】タウcDNA 3MUTを添加した場合の非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの細胞体におけるホスホタウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。
【
図36C】タウcDNA 3MUTを添加した場合の非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおける核周囲リン酸化タウS356強度(蛍光強度で測定)を示す。
【
図36D】タウ-cDNA 3MUTを添加した場合の、非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの細胞体におけるMAP2強度(蛍光強度で測定)を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(*=p<0.05、**=p<0.002-ns、非有意、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図37A】タウ-cDNA 3MUTを添加した場合の、非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンにおけるDAPI+核のカウントを示す。
【
図37B】タウcDNA 3MUTを添加した場合の、非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの細胞体における総タウ強度(蛍光強度で測定)を示す。
【
図37C】タウ-cDNA 3MUTを添加した場合の、非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔANKLE2変異皮質ニューロンの細胞体におけるMAP2強度(蛍光強度で測定)を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定が使用された(ns=非有意、エラーバーは平均値の標準誤差を表す)。
【
図38A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンにおけるDAPI+核のカウントを示す。
【
図38B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された核周囲ドメインにおけるホスホタウ(S356)強度を示す。
【
図38C】ホスホタウ(S356)強度と、ΔPPP2CA変異皮質ニューロンの細胞体における誤って折り畳まれたタウの検出の増加との相関関係を示す。
【
図38D】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞におけるホスホタウ(S356)強度を示す。
【
図38E】非標的マウス一次皮質ニューロンおよびΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの細胞におけるアグリソーム検出試薬(ADR)強度である。
【
図38F】ホスホタウ(S356)強度と、ΔBANF1変異皮質ニューロンの細胞体における誤って折り畳まれたタウの検出の増加との相関関係を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(*=p<0.05、**=p<0.02、***=p<0.004、エラーバーは平均値の標準誤差を表す、ピアソン相関(ρ)-R二乗-両側P値<0.05)。
【
図39A】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンにおけるDAPI+核のカウントを示す。
【
図39B】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された核周囲ドメインにおけるホスホタウAT8(S202、T205)強度を示す。
【
図39C】ホスホタウAT8(S202、T205)強度と、ΔPPP2CA変異皮質ニューロンの細胞体における誤って折り畳まれたタウの検出の増加との相関関係を示す。
【
図39D】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの蛍光強度によって測定された細胞体におけるホスホタウAT8(S202、T205)強度を示す。
【
図39E】非標的マウス一次皮質ニューロンとΔBANF1およびΔPPP2CA変異皮質ニューロンの細胞体におけるアグリソーム検出試薬(ADR)強度である。
【
図39F】ホスホタウAT8(S202、T205)強度と、ΔBANF1変異皮質ニューロンの細胞体における誤って折り畳まれたタウの検出の増加との相関関係を示す。両側の対応のないスチューデントのt検定を使用した(*=p<0.05、**=p<0.02、***=p<0.004、ns=非有意、エラーバーは平均値の標準誤差を表す、ピアソン相関(ρ)-R二乗-両側P値<0.05)。
【
図40】ASOがホスホロチオエート骨格を持つ5-10-5ギャップマー、各ウィングで使用される2’メトキシエチル修飾塩基(両端から5ヌクレオチド)、および未修飾のDNA塩基の10ヌクレオチドコアとして設計されたASO設計の一般的な概略図を示す。
【
図41A】ASOによるトランスフェクションの72時間後のマウスNSC34細胞でmAnkle2 ASOをスクリーニングしたqPCRの結果を示す。標的の全mRNAのノックダウンを未処理の細胞と比較した。
図41Aは、100nM ASO濃度で実施された一次スクリーニングの結果を示し(2回反復、上部の破線は75%のノックダウンを示す)、
図41Bは、50nM ASO濃度で実施された二次スクリーニングの結果を示し(2回反復、一番下の破線は75%のノックダウンを示す)、
図41Cは、5nM ASO濃度で実施された二次スクリーニングの結果を示す(2回反復、中央の破線は25%のノックダウンを示す)。
【
図42A】ASOによるトランスフェクションの72時間後にマウスNSC34細胞でmPpp2caASOをスクリーニングしたqPCRの結果を示す。標的の全mRNAのノックダウンを未処理の細胞と比較した。
図42Aは、100nM ASO濃度で実施された一次スクリーニングの結果を示し(点線は75%のノックダウンを示す)、
図42Bは、50nM ASO濃度で実施された二次スクリーニングの結果を示し(3回反復、下部の点線は75%のノックダウンを示す)、
図42Cは、5nM ASO濃度で実施された二次スクリーニングの結果を示す(3回反復、下部の点線は40%のノックダウンを示す)。
【
図43】100nMの濃度でのASOによるトランスフェクションの72時間後にマウスNSC34細胞でmBanf1ASOをスクリーニングしたqPCRの結果を示す(2反復)。標的の全mRNAのノックダウンを未処理の細胞と比較した。点線は75%のノックダウンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本明細書で互換的に使用される、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、コード化および非コード化アミノ酸ならびに化学的または生化学的に修飾または誘導体化したアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を含む。これらの用語には、修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドなどの修飾されたポリマーも含まれる。「ドメイン」という用語は、特定の機能または構造を有するタンパク質またはポリペプチドの任意の部分を指す。
【0038】
タンパク質は、「N末端」および「C末端」を有すると言われている。「N末端」という用語は、遊離アミン基(-NH2)を有するアミノ酸によって終端されたタンパク質またはポリペプチドの開始部に関する。「C末端」という用語は、遊離カルボキシル基(-COOH)によって終端されたアミノ酸鎖(タンパク質またはポリペプチド)の末端部に関する。
【0039】
本明細書で互換的に使用される、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそれらの類似体もしくは修飾バージョンを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。これらには、一本鎖、二本鎖、および多重鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、ならびにプリン塩基、ピリミジン塩基、または他の天然、化学的に修飾された、生化学的に修飾された、非天然、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。
【0040】
1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩がホスホジエステル結合を介して一方向で、その隣の3’酸素に結合する手法でオリゴヌクレオチドを作製するように、モノヌクレオチドが反応するため、核酸は、「5’末端」および「3’末端」を有すると言われている。オリゴヌクレオチドの末端は、その5’リン酸塩がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されていない場合、「5’末端」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドの末端は、その3’酸素が別のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩に連結されていない場合、「3’末端」と呼ばれる。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部に存在するとしても、5’および3’末端を有するとも言われ得る。線状または環状DNA分子のいずれかにおいて、別個のエレメントは、「上流」または「下流」の5’もしくは3’エレメントであると呼ばれる。
【0041】
「ゲノムに組み込まれた」という用語は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込まれるように、細胞に導入されている核酸を指す。細胞のゲノムへの核酸の安定した組み込みのために、任意のプロトコルを使用してよい。
【0042】
「標的化ベクター」という用語は、相同組換え、非相同末端結合媒介ライゲーション、または細胞のゲノム中の標的位置への組換えの任意の他の手段によって導入され得る組換え核酸を指す。
【0043】
「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つのエレメントを含み、かつウイルスベクター粒子へのパッケージングに十分な、またはそれを許容するエレメントを含む、組換え核酸を指す。ベクターおよび/または粒子は、DNA、RNA、または他の核酸を、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで細胞に導入する目的で利用することができる。ウイルスベクターの多くの形態が既知である。
【0044】
細胞、組織(例えば、脳切片)、タンパク質、および核酸に関して「分離された」という用語は、通常インサイチュで存在し得る他の細菌、ウイルス、細胞、または他の成分に関して比較的精製されている細胞、組織(例えば、脳切片)、タンパク質、および核酸を含み、細胞、組織(例えば、脳切片)、タンパク質、および核酸の実質的に純粋な調製物までを含み、ならびにそれらの実質的に純粋な調製物を含む。「単離された」という用語はまた、天然に存在する対応物を有さず、化学的に合成され、それにより他の細胞、組織(例えば、脳切片)、タンパク質、および核酸が実質的に混入していないか、またはそれらに天然に付随する(例えば、他の細胞タンパク質、ポリヌクレオチド、もしくは他の成分)ほとんどの他の成分(例えば、細胞成分)から分離もしくは精製されている細胞、組織、タンパク質および核酸も含む。
【0045】
「野生型」という用語は、(変異型、病変した、改変したなどとは対照的に)正常な状態または文脈に見られるような構造および/または活性を有する実体を指す。野生型遺伝子およびポリペプチドは、多くの場合、複数の異なる形態(例えば、対立遺伝子)で存在する。
【0046】
「内因性配列」という用語は、細胞または生物内で自然に発生する核酸配列を指す。例えば、細胞または生物の内因性MAPT配列は、細胞または生物のMAPT遺伝子座で自然に発生するネイティブMAPT配列を指す。
【0047】
「外因性」分子または配列には、その形態の細胞には通常存在しない分子または配列が含まれる。通常の存在には、細胞の特定の発生段階および環境条件に関する存在が含まれる。外因性分子または配列には、例えば、内因性配列のヒト化バージョンなど、細胞内の対応する内因性配列の変異バージョンが含まれ得るか、または細胞内であるが、異なる形態の内因性配列に対応する配列が含まれ得る(すなわち、染色体内ではない、または染色体内の異なる位置、または内因性MAPT遺伝子座以外のゲノム遺伝子座にランダムに挿入されたヒトタウ導入遺伝子などの異なる染色体内)。対照的に、内因性分子または配列は、その形態で、特定の細胞において、特定の発生段階で、特定の環境条件下で通常存在する分子または配列を含む。
【0048】
核酸またはタンパク質の文脈で使用される場合の「異種」という用語は、核酸またはタンパク質が、同じ分子内で一緒に自然に発生しない少なくとも2つのセグメントを含むことを示す。例えば、「異種」という用語は、核酸のセグメントまたはタンパク質のセグメントに関して使用される場合、核酸またはタンパク質が、自然界で互いに同じ関係(例えば、一緒に結合)で見出されない2つ以上のサブ配列を含むことを示す。一例として、核酸ベクターの「異種」領域は、自然界で他の分子と関連して見出されない、別の核酸分子内の、または別の核酸分子に結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸ベクターの異種領域は、自然界のコード配列に関連して見出されない配列に隣接するコード配列を含み得る。同様に、タンパク質の「異種」領域は、自然界の他のペプチド分子(例えば、融合タンパク質、またはタグ付きタンパク質)に関連して見出されない、別のペプチド分子内にあるか、またはそれに結合しているアミノ酸のセグメントである。同様に、核酸またはタンパク質は、異種標識または異種分泌または局在化配列を含み得る。
【0049】
「コドン最適化」は、アミノ酸を指定する3塩基対のコドンの組み合わせの多様性によって示されるように、コドンの縮重を利用し、一般に、天然アミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドンを、宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって、特定の宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を改変するプロセスを含む。例えば、タウタンパク質をコードする核酸は、天然に存在する核酸配列と比較すると、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯動物細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、または任意の他の宿主細胞を含む所与の原核細胞または真核細胞においてより高い使用頻度を有するコドンを置き換えるように改変することができる。コドン使用表は、例えば「コドン使用データベース」で容易に入手できる。これらの表は、様々な方法で適合させることができる。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるNakamura et al.(2000)Nucleic Acids Res.28:292を参照されたい。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズム(例えば、Gene Forgeを参照のこと)もまた利用可能である。
【0050】
「遺伝子座」という用語は、遺伝子(または重要な配列)、DNA配列、ポリペプチドコード配列、または生物のゲノムの染色体上の位置(position)の特定の位置(location)を指す。例えば、「MAPT遺伝子座」は、MAPT遺伝子の特定の位置、MAPT DNA配列、微小管関連タンパク質タウコード配列、またはそのような配列がどこに存するかに関して同定された生物のゲノムの染色体上のMAPT位置を指し得る。「MAPT遺伝子座」は、例えば、エンハンサー、プロモーター、5’および/もしくは3’非翻訳領域(UTR)、またはそれらの組み合わせを含む、MAPT遺伝子の調節エレメントを含み得る。
【0051】
「遺伝子」という用語は、自然に存在する場合、少なくとも1つのコーディング領域と少なくとも1つの非コーディング領域を含む可能性のある染色体内のDNA配列を指す。産物(例えば、非限定的に、RNA産物および/またはポリペプチド産物)をコードする染色体中のDNA配列は、非コードイントロンで中断されたコード領域および5’端と3’端の両方のコード領域に隣接して位置する配列を含み得、遺伝子が全長のmRNA(5’および3’の非翻訳配列を含む)に対応するようなる。さらに、調節配列を含む他の非コード配列(例えば、非限定的に、プロモーター、エンハンサー、および転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、配列内リボソーム進入部位、サイレンサー、絶縁配列、およびマトリックス結合領域も遺伝子に存在してもよい。これらの配列は、遺伝子のコード領域に近接(例えば、非限定的に、10kb以内)してもよく、または離れていてもよく、それらは遺伝子の転写と翻訳のレベルまたは速度に影響を及ぼす。
【0052】
「対立遺伝子」という用語は、遺伝子のバリアント形態を指す。いくつかの遺伝子は、染色体上の同じ位置、または遺伝子座に位置する様々な異なる形態を有する。二倍体生物は、各遺伝子座に2つの対立遺伝子を有する。対立遺伝子の各対は、特定の遺伝子座の遺伝子型を表す。遺伝子型は、特定の遺伝子座に2つの同一の対立遺伝子がある場合はホモ接合として、および2つの対立遺伝子が異なる場合はヘテロ接合として記載されている。
【0053】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼIIが特定のポリヌクレオチド配列のための適切な転写開始部位でRNA合成を開始することを指示することができるTATAボックスを通常含むDNAの調節領域である。プロモーターは、転写開始速度に影響を及ぼす他の領域をさらに含み得る。本明細書に開示されるプロモーター配列は、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を調節する。プロモーターは、本明細書に開示される1つ以上の細胞型(例えば、ヒト細胞、多能性細胞、1細胞期胚、分化細胞、またはそれらの組み合わせ)において活性であり得る。プロモーターは、例えば、構成的に活性なプロモーター、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば、発生的に調節されたプロモーター)、または空間的に制限されたプロモーター(例えば、シンパシン-1プロモーターのようなニューロン特異的プロモーターなどの細胞特異的または組織特異的プロモーター)であり得る。プロモーターの例は、例えば、WO2013/176772において見出すことができ、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
「作動可能な連結」または「作動可能に連結されている」とは、その両方の成分が正常に機能し、かつ成分の少なくとも1つが他の成分のうちの少なくとも1つに及ぶ機能を媒介し得る可能性を許すような、2つ以上の成分(例えば、プロモーターおよび別の配列エレメント)の並列を含む。例えば、プロモーターが、1つ以上の転写調節因子の存在または非存在に応じてコード配列の転写のレベルを制御する場合、そのプロモーターは、コード配列に作動可能に連結され得る。作動可能な連結は、そのような配列が相互に近接していること、またはトランスに作用する(例えば、調節配列が、コード配列の転写を制御するために離れて作用し得る)ことを含み得る。
【0055】
「バリアント」という用語は、集団で最も一般的な配列とは異なるヌクレオチド配列(例えば、1ヌクレオチド)、または集団で最も一般的な配列とは異なるタンパク質配列(例えば、1アミノ酸)を指す。
【0056】
「断片」という用語は、タンパク質に言及する場合、全長タンパク質よりも短いか、または少ないアミノ酸を有するタンパク質を意味する。「断片」という用語は、核酸に言及する場合、全長の核酸よりも短いか、または少ないヌクレオチドを有する核酸を意味する。断片は、例えば、N末端断片(すなわち、タンパク質のC末端の一部の除去)、C末端断片(すなわち、タンパク質のN末端の一部の除去)、または内部断片(すなわち、タンパク質のN末端とC末端のそれぞれの一部の除去)であり得る。断片は、例えば、核酸断片を指す場合、5’断片(すなわち、核酸の3’末端の一部の除去)、3’断片(すなわち、核酸の5’末端の一部の除去)、または内部断片(すなわち、核酸の5’末端と3’末端のそれぞれの一部の除去)であり得る。
【0057】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較ウィンドウで最大の一致のためにアラインさせる場合、同じである2つの配列の残基を指す。タンパク質に関して、配列同一性のパーセンテージを使用する場合、同一ではない残基位置は多くの場合に、保存的アミノ酸置換によって異なり、その保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換されており、したがって、分子の機能特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合、配列同一性パーセントを、置換の保存的性質について補正するために、上方に調整してもよい。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われている。この調整を行う手段は、周知である。典型的には、これは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコアリングして、それによって、配列同一性パーセンテージを増加させることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換が0のスコアを与えられる場合に、保存的置換は、0~1のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)で実行されるように計算される。
【0058】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列(完全にマッチする残基の数が最大)を比較することによって決定される値を含み、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための(付加また欠失を含まない)参照配列と比較した場合に、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に発生する位置の数を決定して一致した位置の数を得ること、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割ること、および結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。別段の定めがない限り(例えば、短い方の配列が、連結された非相同配列を含む)、比較ウィンドウは、比較される2つの配列のうちの短い方の完全長である。
【0059】
別段の記載がない限り、配列同一性/類似性の値は、次のパラメータ:50のGAP重量および3の長さ重量、およびnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用するヌクレオチド配列の同一性%および類似性%;8のGAP重量および2の長さ重量、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用するアミノ酸配列の同一性%および類似性%;またはその任意の同等のプログラムを使用し、GAPバージョン10を使用して得られた値を含む。「同等のプログラム」は、問題の任意の2つの配列について、GAPバージョン10によって生成された対応するアラインメントと比較した場合、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致および同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントを生成する任意の配列比較プログラムを含む。
【0060】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、配列中に通常存在するアミノ酸の、類似のサイズ、電荷、または極性の、異なるアミノ酸との置換を指す。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、またはロイシンなどの非極性(疎水性)残基の、別の非極性残基との置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、アルギニンとリシンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、またはグリシンとセリンとの間などの、1つの極性(親水性)残基の別のものとの置換が含まれる。加えて、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジンなどの塩基性残基から別のものへの置換、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのある酸性残基から別の酸性残基への置換は、保存的置換の追加の例である。非保存的置換の例には、非極性(疎水性)アミノ酸残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、もしくはメチオニンから極性(親水性)残基、例えば、システイン、グルタミン、グルタミン酸、もしくはリシンへの、および/または極性残基から非極性残基への置換が含まれる。典型的なアミノ酸の分類を以下で要約する。
【表1】
【0061】
「相同」配列(例えば、核酸配列)は、例えば、既知の参照配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるような、既知の参照配列と同一であるか、または実質的に同様である配列を含む。相同配列は、例えば、オルソログ配列およびパラロガス配列を含み得る。例えば、相同遺伝子は典型的には、種分化事象(オルソログ遺伝子)または遺伝子重複事象(パラロガス遺伝子)のいずれかを介して、共通の祖先DNA配列に由来する。「オルソログ」遺伝子には、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化した様々な種の遺伝子が含まれる。オルソログは典型的には、進化の過程で同じ機能を保持する。「パラロガス」遺伝子には、ゲノム内の重複によって関連する遺伝子が含まれる。パラログは、進化の過程で新しい機能を進化させることができる。
【0062】
「インビトロ」という用語は、人工環境、および人工環境(例えば、試験管または単離された細胞もしくは細胞株)内で生じるプロセスまたは反応を含む。「インビボ」という用語は、天然環境(例えば、細胞または生物または身体)、および天然環境内で生じるプロセスまたは反応を含む。「エクスビボ」という用語は、個体の体から取り出された細胞または組織(例えば、器官型脳切片培養などの脳切片培養)、およびそのような細胞内で起こるプロセスまたは反応を含む。
【0063】
「レポーター遺伝子」という用語は、異種プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントに作動可能に連結されたレポーター遺伝子配列を含む構築物が、プロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントの活性化に必要な因子を含む(または含むように作製され得る)細胞に導入された場合に容易かつ定量的にアッセイされる遺伝子生成物(典型的には酵素)をコードする配列を有する核酸を指す。レポーター遺伝子の例には、これらに限定されないが、ベータガラクトシダーゼ(lacZ)をコードする遺伝子、細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、ベータグルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子、および蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。「レポータータンパク質」は、レポーター遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0064】
本明細書で使用される「蛍光レポータータンパク質」という用語は、蛍光に基づいて検出可能なレポータータンパク質を意味し、蛍光は、レポータータンパク質から直接、レポータータンパク質の蛍光発生基質上の活性、または蛍光タグ付き化合物への結合に親和性のあるタンパク質のいずれかからのものであり得る。蛍光タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、およびZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、およびZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、BFP、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、およびT-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、CFP、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、およびMidoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、RFP、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、およびJred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、およびtdTomato)、およびフローサイトメトリー方法により細胞内の存在を検出することができる任意の他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。
【0065】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含み得る。例えば、タンパク質を「含む(comprises)」または「含む(includes)」組成物は、タンパク質を単独で、または他の成分との組み合わせで含み得る。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が、特許請求の範囲に記載された特定の要素、および特許請求された発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響をしない要素を包含すると解釈されることを意味する。したがって、本発明の請求項で使用される場合の「から本質的になる」という用語は、「含む」と同等であると解釈されることを意図するものではない。
【0066】
「任意選択的の」または「任意選択で」は、続いて記載された事象または状況が起こっても起こらなくてもよく、ならびに説明が、当該事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0067】
値の範囲の指定は、その範囲内の、またはその範囲を定義するすべての整数、およびその範囲内の整数によって定義されるすべての部分範囲を含む。
【0068】
文脈から別段に明確ではない限り、「約」という用語は、規定の値の測定の標準誤差(例えば、SEM)内の値を包含する。
【0069】
「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに代替物(「または」)で解釈されるときの組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0070】
「または」という用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを指し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0071】
冠詞「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が別段に明確に規定していない限り、複数形の言及を含む。例えば、「タンパク質」または「少なくとも1つのタンパク質」という用語は、それらの混合物を含む複数のタンパク質を含み得る。
【0072】
統計的に有意とは、p≦0.05を意味する。
[発明を実施するための形態]
【0073】
I.概要
タウオパチーは、脳内の異常なタウタンパク質の沈着を特徴とする不均一な神経変性状態のグループである。例えば、アルツハイマー病の人の脳では、タウは異常に過剰リン酸化されており、神経原線維変化(NFT)として現れる対のらせん状フィラメント(PHF)に線維化したように見える。したがって、NFTにおける過剰リン酸化タウの細胞内凝集は、タウオパチーの神経病理学的特徴である。
【0074】
破壊されたときにタウの凝集を促進する修飾因子遺伝子を特定するために、ゲノムワイドなスクリーニングを実施した。核膜の完全性を維持するプロセスに寄与する2つの遺伝子、BANF1とPPP2CAについて、信頼性の高いヒットが出現した。この生物学的プロセスに関与する他のタンパク質の検査から、破壊されたときにタウ凝集を増強する1つの追加遺伝子ANKLE2を特定した。
【0075】
自己統合障壁因子(Barrier-to-autointegration factor)(BANF1/BAF)はクロマチンを核膜に接続し、セリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファアイソフォーム(serine/threonine-protein phosphatase 2A catalytic subunit alpha isoform)(PPP2CA)はBANF1機能を調節する。BANF1は、小さく(10kDa)、豊富で、高度に保存されたDNA結合タンパク質である。BANF1は、有糸分裂、核集合、ウイルス感染、クロマチンと遺伝子の調節、およびDNA損傷応答を含む複数の経路に関与している。BANF1は、クロマチンを核膜に接続し、配列に依存しない方法でDNAに結合する。BANF1は、核内膜(INM)タンパク質の1つのLEM(LAP2/Emerin/MAN1)ドメインにも結合する。BANF1の局在は、細胞周期の間に変化する。
【0076】
有糸分裂の間、核膜の破壊と再構築はタンパク質のリン酸化によって制御される。有糸分裂に入る際のVRK1によるBANF1のリン酸化は、クロマチン、BANF1、およびLEMタンパク質間のリンクを切断する。BANF1は細胞全体に均一に分布している。核膜が再形成されると、アンキリンリピートおよびLEMドメイン含有タンパク質2(ankyrin repeat and LEM domain-containing protein 2)(ANKLE2)がVRK1酵素活性を阻害する。ANKLE2はPPP2CAにも結合し、BANF1を脱リン酸化する活性を促進するため、LEMタンパク質、クロマチン、核膜と再結合できる。PPP2CAは主要なタウホスファターゼである。PPP2CAはタウ-4RDに結合でき、アルツハイマー病に関連している。
【0077】
ここでは、タウオパチーのエクスビボおよびインビボ研究のためのタウ凝集の新しいモデルを明らかにする。これらの新しいモデルは、例えば、BANF1および/またはPPP2CAおよび/またはANKLE2の変異または発現の減少/阻害をタウオパチーの既存のモデルと組み合わせることができる。本明細書に開示されるのは、改善されたタウオパチーモデル(例えば、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞)、タウオパチーの治療のための治療薬候補を評価するためのそのような改善されたタウオパチーモデルを使用する方法、改善されたタウオパチーモデルを作製する方法、およびタウオパチーモデルにおけるタウ凝集を加速または悪化させる方法である。
【0078】
II.改善されたタウオパチーモデル
本明細書に開示されるのは、細胞および動物におけるタウ凝集体の形成を加速するための、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の遺伝子変化または発現の減少/阻害を含むタウオパチーモデルである。そのようなタウオパチーモデルは、例えば、微小管関連タンパク質タウコード配列および細胞内のタウ凝集体の形成を加速するためのBANF1、PPP2CA、またはANKLE2の遺伝子変化、または発現の減少/阻害を含むゲノム、細胞、組織、または動物を含み得、タウオパチーのインビトロ、エクスビボ、およびインビボモデルのより良い開発を可能にする。特定の例として、動物(例えば、非ヒト動物)、動物組織(例えば、非ヒト動物組織)、または動物細胞または動物細胞の集団(例えば、非ヒト動物細胞または複数の細胞)であって、(a)1つ以上の細胞における微小管関連タンパク質タウコード配列、および(b)(i)1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変、ならびに/または(ii)1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を含む。1つ以上の細胞は、任意のタイプの細胞型であり得る。一例では、それらは神経細胞である。
【0079】
動物、組織、または細胞の集団は、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変を含まないか、または、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を含まない動物、組織、または細胞の集団と比較して増加するタウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状を有する可能性がある。そのような徴候および症状は、本明細書の他の場所でより詳細に論じられており、例えば、タウの過剰リン酸化およびタウの凝集を含むことができる。他の徴候および症状には、例えば、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含めることができる。ホスホタウは、例えば、ホスホタウ(S356)またはホスホタウAT8(S202、T205)であり得る。
【0080】
微小管関連タンパク質タウコード配列は、1つ以上の細胞で発現されるものである。タウコード配列は、内因性または外因性であり得、そしてそれは、野生型タウタンパク質または変異(例えば、タウオパチー関連変異またはタウ病原性変異を含む)を含むタウタンパク質をコードし得る。タウコード配列は、外因性のヒト微小管関連タンパク質タウなどのヒト微小管関連タンパク質タウをコードすることができる。コード配列は、コード配列と非コード配列(例えば、エキソンとイントロン)の両方を含むことができ、または相補的DNA(cDNA)配列を含むことができる。コード配列は、任意選択で、動物、組織、または細胞での発現のためにコドン最適化することができる(例えば、ヒトまたはマウス細胞での発現のためにコドン最適化する)。
【0081】
タウコード配列は、ゲノムに組み込まれることも、染色体外にあることもある。ゲノムに組み込まれている場合、コード配列はランダムにゲノムに組み込まれるか(トランスジェニック)、または標的を絞った方法で標的ゲノム遺伝子座に組み込まれる可能性がある。コード配列は、動物、組織、または細胞の集団のすべての細胞に存在するか、またはゲノムに組み込まれ得るか、または細胞の一部(例えば、ニューロン)に存在するか、またはゲノムに組み込まれ得る。ゲノムに組み込まれた配列を含む動物は、その生殖系列にゲノムに組み込まれた配列を含むことができる。
【0082】
タウコード配列は、異種プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結することができる。プロモーターは、細胞、組織、または動物に内因性である場合もあれば、外因性である場合もある。1つの特定の例として、プロモーターは、マウスプリオンタンパク質プロモーターなどのプリオンタンパク質プロモーターであり得る。別の例として、プロモーターはニューロン特異的プロモーターであり得る。ニューロン特異的プロモーターの例はよく知られており、例えば、シンパシン-1プロモーター(例えば、ヒトシンパシン-1プロモーターまたはマウスシナプシン-1プロモーター)が含まれる。
【0083】
微小管関連タンパク質タウは、任意のタウアイソフォームであってよい。1つの特定の例において、タウコード配列は、1N4Rアイソフォームをコードする。微小管関連タンパク質タウは、野生型タウタンパク質であり得るか、またはタウオパチー関連変異またはタウ病原性変異などの変異を含むことができる。そのような変異の例はよく知られており、本明細書の他の場所でより詳細に議論されている。1つの特定の例において、タウは、P301S変異を含む(任意選択で、タウコード配列は、マウスプリオンタンパク質プロモーターに作動可能に連結されている)。別の特定の例では、タウは、A152T/P301L/S320F三重変異を含む(任意選択で、タウコード配列がシンパシン-1プロモーターに作動可能に連結されている)。3MUTタウ1N4R(A152T、P301L、S320F)のDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ配列番号83および84に記載されている。
【0084】
BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を低減させることができる薬剤の例は、ヌクレアーゼ剤(例えば、ZFN、TALEN、またはCRISPR/Cas)、転写抑制因子に融合したDNA結合タンパク質(例えば、KRABに融合した触媒的に不活性なCas(dCas-KRAB)などの転写抑制因子)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはアンチセンスRNAを含む。これらの例については、本明細書の他の場所でより詳細に論じられている。
【0085】
BANF1(BAF、BCRG1、BCRP1、およびL2BP1とも呼ばれる)は、自己統合障壁因子(ブレークポイントクラスター領域タンパク質1およびLAP2結合タンパク質1(breakpoint cluster region protein 1 and LAP2-binding protein 1)とも呼ばれる)をコードする。それは、核の集合、クロマチンの組織化、遺伝子発現、および性腺の発達において基本的な役割を果たし、クロマチンの構造を強力に圧縮し、核の集合中の膜の動員およびクロマチンの脱凝縮に関与する可能性がある。例示的なヒトの自己統合障壁因子タンパク質には、アクセッション番号NP_001137457.1およびNP_003851.1(NCBI)およびO75531(UniProt)が割り当てられている。例示的なヒトBANF1 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_001143985.1およびNM_003860.3によって指定される。例示的なヒトBANF1コード配列は、CCDS ID CCDS8125.1によって指定される。例示的なヒトBANF1遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID8815によって指定される。例示的なマウス自己統合障壁因子タンパク質には、アクセッション番号NP_001033320.1、NP_001273537.1、およびNP_035923.1(NCBI)およびO54962(UniProt)が割り当てられている。例示的なマウスBanf1 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_001038231.2、NM_001286608.1、およびNM_011793.3によって指定される。例示的なマウスBanf1コード配列は、CCDS ID CCDS29458.1によって指定される。例示的なマウスBanf1遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID23825によって指定される。例示的なラットの自己統合障壁因子タンパク質には、アクセッション番号NP_446083.1(NCBI)およびQ9R1T1(UniProt)が割り当てられている。例示的なラットBanf1 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_053631.3によって指定される。例示的なラットBanf1遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID114087によって指定される。
【0086】
PPP2CAは、セリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファアイソフォーム(PP2A-アルファ、複製タンパク質C、RP-C、プロテインホスファターゼ2、プロテインホスファターゼ2A、またはPP2Aとも呼ばれる)をコードする。PP2Aは、微小管関連タンパク質(MAP)の主要なホスファターゼである。PP2Aは、ホスホリラーゼBキナーゼカゼインキナーゼ2、マイトジェン刺激S6キナーゼ、およびMAP-2キナーゼの活性を調節することができる。例示的なヒトセリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファアイソフォームタンパク質には、アクセッション番号NP_002706.1(NCBI)およびP67775(UniProt)が割り当てられている。例示的なヒトPPP2CA mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_002715.2によって指定される。例示的なヒトPPP2CAコード配列は、CCDS ID CCDS4173.1によって指定される。例示的なヒトPPP2CA遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID5515によって指定される。例示的なマウスセリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファアイソフォームタンパク質には、アクセッション番号NP_062284.1(NCBI)およびP63330(UniProt)が割り当てられている。例示的なマウスPpp2ca mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_019411.4によって指定される。例示的なマウスPpp2caコード配列は、CCDS ID CCDS24666.1によって指定される。例示的なマウスPpp2ca遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID19052によって指定される。例示的なラットセリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファアイソフォームタンパク質には、アクセッション番号NP_058735.1(NCBI)およびP63331(UniProt)が割り当てられている。例示的なラットPpp2ca mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_017039.2によって指定される。例示的なラットPpp2ca遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID24672および103694903によって指定される。
【0087】
ANKLE2(KIAA0692、LEM4、およびD5Ertd585eとも呼ばれる)は、アンキリンリピートおよびLEMドメイン含有タンパク質2(LEMドメインを含むタンパク質4(LEM domain-containing protein 4)および肝臓再生関連タンパク質LRRG057(liver regeneration-related protein LRRG057)とも呼ばれる)をコードする。有糸分裂終了時にBAF/BANF1の脱リン酸化を促進することにより、有糸分裂核膜の再構築に関与する。これは、VRK1キナーゼを阻害し、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)によるBAF/BANF1の脱リン酸化を促進することにより、BAF/BANF1の脱リン酸化の制御を調整し、それによって核膜の構築を促進する。例示的なヒトアンキリンリピートおよびLEMドメイン含有タンパク質2タンパク質には、アクセッション番号NP_055929.1(NCBI)およびQ86XL3(UniProt)が割り当てられている。例示的なヒトANKLE2 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_015114.2によって指定される。例示的なヒトANKLE2コード配列は、CCDS ID CCDS41869.1によって指定される。例示的なヒトANKLE2遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID23141によって指定される。例示的なマウスアンキリンリピートおよびLEMドメイン含有タンパク質2タンパク質には、アクセッション番号NP_001240743.1およびNP_082198.1(NCBI)およびQ6P1H6(UniProt)が割り当てられている。例示的なマウスAnkle2 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_001253814.1およびNM_027922.2によって指定される。例示的なマウスAnkle2コード配列は、CCDS ID CCDS57372.1およびCCDS80360.1によって指定される。例示的なマウスAnkle2遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID71782によって指定される。例示的なラットアンキリンリピートおよびLEMドメイン含有タンパク質2タンパク質には、アクセッション番号NP_001041366.1(NCBI)およびQ7TP65(UniProt)が割り当てられている。例示的なラットAnkle2 mRNAは、NCBIアクセッション番号NM_001047901.1によって指定される。例示的なラットAnkle2遺伝子は、NCBI RefSeq GeneID360829によって指定される。
【0088】
タウオパチーの様々なモデルが開発されている。これらのモデルのいずれも、BANF1および/またはPPP2CAおよび/またはANKLE2の発現を変異または阻害/低減することにより、本明細書に開示されるように適合させることができる。これらには、細胞/細胞培養モデル(非神経細胞株、PC12、SY5Y、CN1.4細胞などの神経細胞株、または一次神経細胞)、組織モデル(例、器官型脳切片培養などの脳切片培養)、および全動物トランスジェニックモデル(例えば、線虫(C.elegans)、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、またはマウス)が含まれる。例えば、Hall et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:224-239、Brandt et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:331-354、およびLee et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:251-259を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的には、そのようなモデルは、野生型または変異型のヒトタウアイソフォームが様々なプロモーターの制御下で過剰発現されて神経原線維変化を引き起こすトランスジェニックモデルである。細胞ベースのモデルには、操作へのアクセス性と柔軟性が高いという利点があるが、動物モデル全体(トランスジェニックマウスモデルなど)はより完全で、人間の病気により直接的に関連している。
【0089】
動物、組織、または細胞の集団は、オスまたはメスである可能性がある。細胞の集団は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボであり得る。同様に、組織はエクスビボまたはインビボであり得る。1つの特定の例では、組織は脳切片であり得る(例えば、器官型脳切片培養などの脳切片培養)。
【0090】
細胞の集団は、任意のタイプの細胞であり得る。細胞は、モノクローナル細胞株または細胞の集団であり得る。細胞は、任意の供給源からのものであり得る。このような細胞は、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュなどのモデル生物に由来する可能性がある。そのような細胞は、魚細胞もしくは鳥細胞であり得るか、またはそのような細胞は、ヒト細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、もしくはラット細胞などの哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、サル、類人猿、ネコ、イヌ、ウマ、雄牛、シカ、バイソン、ヒツジ、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、家畜(例えば、雌牛および去勢雄牛などのウシ種、ヒツジおよびヤギなどのヒツジ種、ブタおよびイノシシなどのブタ種)が含まれる。鳥には、例えば、鶏、七面鳥、ダチョウ、ガチョウ、およびアヒルが含まれる。家畜および農業動物も含まれる。「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除外する。特定の例では、細胞は、ヒト細胞(例えば、HEK293T細胞または神経細胞)であるか、またはマウス細胞(例えば、神経細胞)である。
【0091】
細胞は、例えば、全能性細胞または多能性細胞(例えば、げっ歯動物ES細胞、マウスES細胞、またはラットES細胞などの胚性幹(ES)細胞)であり得る。全能性細胞には、任意の細胞型を生じさせることができる未分化細胞が含まれ、多能性細胞には、複数の分化細胞型に発達する能力を有する未分化細胞が含まれる。そのような多能性および/または全能性細胞は、例えば、誘導多能性幹(iPS)細胞などのES細胞またはES様細胞であり得る。ES細胞には、胚への導入時に発達中の胚の任意の組織に寄与することができる胚由来の全能性または多能性細胞が含まれる。ES細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来するものであり得、3つの脊椎動物胚葉(内胚葉、外胚葉、および中胚葉)のうちのいずれかの細胞に分化することができる。
【0092】
細胞はまた、一次体細胞、または一次体細胞ではない細胞であり得る。体細胞には、配偶子、生殖細胞、配偶子細胞、または未分化幹細胞ではない任意の細胞が含まれ得る。細胞はまた、一次細胞であり得る。一次細胞には、生物、器官、または組織から直接単離された細胞または細胞の培養物が含まれる。一次細胞には、形質転換も不死化もされていない細胞が含まれる。それらには、以前に組織培養で継代されなかったか、または以前に組織培養で継代されたが、組織培養で無限に継代することができない生物、器官、または組織から得られた任意の細胞が含まれる。そのような細胞は、従来の技術によって単離することができ、例えば、ニューロンを含む。例えば、一次細胞は、神経系組織(例えば、一次マウスニューロンなどの一次ニューロン)に由来することができる。
【0093】
そのような細胞には、通常は無限に増殖することはないが、変異または改変に起因して、正常な細胞老化を回避し、代わりに分裂を続けることができるものも含まれる。そのような変異または改変は、自然に発生し得るか、または意図的に誘導され得る。不死化細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓細胞(例えば、HEK293T細胞)、およびマウス胎児線維芽細胞(例えば、3T3細胞)が挙げられる。多くの種類の不死化細胞が周知である。不死化細胞または一次細胞には、典型的には、組換え遺伝子またはタンパク質の培養または発現に使用される細胞が含まれる。神経細胞株の例には、ラットPC12褐色細胞腫、ヒトSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞、ヒトN-Tera 2(NTERA-2またはNT2)奇形癌細胞、H4ヒト神経膠腫細胞、ヒト神経BE(2)-M17D細胞、C1.4マウス皮質ニューロン、またはHCN2Aヒト皮質ニューロンが含まれる。
【0094】
細胞はまた、神経細胞(例えば、ヒト神経細胞)などの分化細胞であり得る。このような神経細胞は、一次神経細胞(例、マウス一次神経細胞)、ヒトiPS細胞などの人工多能性幹(iPS)細胞に由来するニューロン、または胚性幹(ES)細胞に由来するニューロン(例、マウスES細胞)である可能性がある。例えば、細胞はiCELL GABAニューロンである可能性があり、これは、iPS細胞に由来するヒトニューロンの非常に純粋な集団である。それらは、有糸分裂後の神経サブタイプの混合物であり、主にGABA作動性ニューロンで構成され、典型的な生理学的特性と応答を示す。
【0095】
本明細書に記載の非ヒト動物は、本明細書の他の場所に記載されている方法によって作製することができる。「動物」という用語は、例えば、哺乳類、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、および虫類を含む、動物界の任意のメンバーを含む。動物は、例えば、ショウジョウバエ、線虫、またはゼブラフィッシュであり得る。特定の例では、非ヒト動物は非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物には、例えば、非ヒト霊長類、サル、類人猿、オランウータン、ネコ、イヌ、ウマ、雄ウシ、シカ、バイソン、ヒツジ、ウサギ、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット)、および家畜(例えば、ウシおよび去勢牛などのウシ種、ヒツジおよびヤギなどのヒツジ種、ならびにブタおよびイノシシなどのブタ種)が含まれる。鳥には、例えば、鶏、七面鳥、ダチョウ、ガチョウ、およびアヒルが含まれる。家畜および農業動物も含まれる。「非ヒト動物」という用語は、ヒトを除外する。好ましい非ヒト動物には、例えば、マウスおよびラットなどのげっ歯類が含まれる。
【0096】
非ヒト動物は、あらゆる遺伝的背景からのものであってよい。例えば、適切なマウスは、129系統、C57BL/6系統、129とC57BL/6の雑種、BALB/c系統、またはスイスウェブスター系統からのものであり得る。129系統の例には、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/Svlm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、および129T2が含まれる。例えば、Festing et al.(1999)Mammalian Genome 10:836を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。C57BL系統の例には、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/Kal_wN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、およびC57BL/Olaが含まれる。適切なマウスはまた、前述の129系統と前述のC57BL/6系統の雑種(例えば、50%129と50%C57BL/6)からのものであり得る。同様に、適切なマウスは、前述の129系統の雑種または前述のBL/6系統の雑種(例えば、129S6(129/SvEvTac)系統)からのものであり得る。
【0097】
同様に、ラットは、例えば、ACIラット系統、Dark Agouti(DA)ラット系統、Wistarラット系統、LEAラット系統、Sprague Dawley(SD)ラット系統、またはフィッシャーF344またはフィッシャーF6などのフィッシャーラット系統からのものであり得る。ラットはまた、上述の2つ以上の系統の雑種に由来する系統から得ることができる。例えば、適切なラットは、DA系統またはACI系統からのものであり得る。ACIラット系統は、白い腹と足、およびRT1av1ハプロタイプを有する黒いアグーチを持っていることを特徴としている。このような系統は、Harlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。Dark Agouti(DA)ラット系統は、アグーチコートとRT1av1ハプロタイプを有することを特徴としている。このようなラットは、Charles RiverおよびHarlan Laboratoriesを含む様々な供給源から入手できる。いくつかの適切なラットは近交系ラット系統に由来する可能性がある。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2014/0235933を参照されたい。
【0098】
1つの特定の例において、マウス系統は、PS19(タウP301S(系列PS19);PS19Tg;B6;C3-Tg(Prnp-MAPT*P301S)PS19Vle/J)系列である。この系統の遺伝的背景はC57BL/6xC3Hである。PS19トランスジェニックマウスは、マウスプリオンタンパク質(Prnp)プロモーターによって駆動される変異型ヒト微小管関連タンパク質タウMAPTを発現する。導入遺伝子は、疾患に関連するP301S変異をコードし、4つの微小管結合ドメインと1つのN末端インサート(4R/1N)を含む。Chr3:140354280-140603283(ビルドGRCm38/mm10)に導入遺伝子が挿入され、既知の遺伝子に影響を与えない249Kbの欠失が発生した。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるGoodwin et al.(2019)Genome Res.29(3):494-505を参照されたい。変異型ヒトタウの発現は、内因性マウスタンパク質の発現よりも5倍高い。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるYoshiyama et al.(2007)Neuron 53(3):337-351を参照されたい。PS19マウスは、生後8ヶ月までにニューロンの喪失と脳の萎縮を発症する。それらはまた、新皮質、扁桃体、海馬、脳幹、および脊髄において、神経原線維変化様封入体として知られる広範なタウ凝集体を発達させる。Yoshiyama et al.(2007)を参照されたい。組織学的方法による明白なタウ病理の出現の前に、これらのマウスの脳はタウ播種活性を示すことが示された。すなわち、脳ホモジネートに存在するタウ凝集体は、おそらくプリオンのようなメカニズムを介して、さらなるタウ凝集を誘発する可能性がある。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Holmes(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(41):E4376-E4385を参照されたい。
【0099】
A.タウとタウオパチー
微小管関連タンパク質タウ(神経原線維変化タンパク質(neurofibrillary tangle protein)、ペアヘリカルフィラメントタウ(paired helical filament-タウ)(PHF-タウ)、またはタウとも呼ばれる)は、微小管の集合と安定性を促進するタンパク質であり、主にニューロンで発現し、軸索コンパートメントに優先的に局在する。タウはMAPT遺伝子(MAPTL、MTBT1、TAU、またはMTAPTとも呼ばれる)によってコードされている。タウは、ニューロンの微小管を安定させ、したがって軸索伸長を促進する役割を果たす。ヒトでは、17番染色体上にある単一の遺伝子の転写産物から特異的にスプライシングされた6つのアイソフォームのセットとして表示される。各タウアイソフォームには、微小管に結合して微小管を安定化させる一連の3/4タンデムリピートユニット(アイソフォームによって異なる)が含まれている。タウの微小管結合反復領域は、様々なキナーゼによってリン酸化され、アルツハイマー病(AD)およびタウオパチーと呼ばれる関連する神経変性疾患のファミリーにおけるタウの過剰リン酸化に関連するセリン/スレオニンに富む領域に隣接している。
【0100】
本明細書に開示されるモデルおよび方法におけるタウタンパク質は、ヒト、マウス、またはラットなどの任意の動物または哺乳動物からのタウタンパク質であり得る。1つの特定の例では、タウは、ヒトタウタンパク質に由来する。例示的なヒトタウタンパク質には、UniProtアクセッション番号P10636およびGeneID4137が割り当てられている。例示的なヒトタウタンパク質には、UniProtアクセッション番号P10637およびGeneID17762が割り当てられている。例示的なヒトタウタンパク質には、UniProtアクセッション番号P19332が割り当てられている。
【0101】
タウタンパク質は、ヒトではMAPT(微小管関連タンパク質タウ)と呼ばれる単一遺伝子からの選択的スプライシングの生成物である。タウリピートドメインは、凝集に関与する配列モチーフを運ぶ(すなわち、それはタウからの凝集しやすいドメインである)。スプライシングに応じて、タウタンパク質のリピートドメインは、タンパク質の凝集しやすいコアを構成する3つまたは4つのリピート領域のいずれかを有し、これは多くの場合、リピートドメイン(RD)と呼ばれる。具体的には、タウのリピートドメインは、微小管結合領域のコアを表し、タウ凝集に関与するR2およびR3のヘキサペプチドモチーフを内包する。ヒトの脳には、352~441アミノ酸長の範囲の6つのタウアイソフォームがある。これらのアイソフォームは、アミノ末端での1つまたは2つの挿入ドメインの存在または非存在に加えて、3つのリピートドメインまたは4つのリピートドメイン(R1~R4)のいずれかの存在に従ってカルボキシル末端で変化する。タウのカルボキシル末端の半分に位置するリピートドメインは、微小管結合、ならびにタウオパチーに見られる神経原線維変化のコア構成要素である対らせん状フィラメント(PHF)へのタウの病理学的凝集に重要であると考えられている。4つのリピートドメイン(R1~R4)の例示的な配列は、それぞれ、配列番号88~91に提供される。4つのリピートドメイン(R1~R4)の例示的なコード配列は、配列番号92~95に提供される。タウ4リピートドメインの例示的な配列は、配列番号96に提供される。タウ4リピートドメインの例示的なコード配列は、配列番号97に提供される。P301S変異を有するタウ4リピートドメインの例示的な配列は、配列番号98に提供される。P301S変異を有するタウ4リピートドメインの例示的なコード配列は、配列番号99に提供される。
【0102】
タウオパチーは、脳内の異常なタウ沈着を特徴とする不均一な神経変性状態のグループである。これらには、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、および17番染色体に関連するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)が含まれる。ADおよび他のタウオパチーでは、タウタンパク質は、異常に過剰リン酸化され、神経原線維変化として現れるフィラメントの束(対らせん状フィラメント)に凝集する。
【0103】
タウオパチーに関連する(例えば、分離する)、またはタウオパチーを引き起こす、凝集促進変異(pro-aggregation mutation)などのいくつかのタウ病原性変異がある。エキソンのまたはイントロンのいずれかである可能性がある病原性タウ変異は、一般にタウアイソフォームの相対的産生を変化させ、微小管集合および/またはタウが凝集する傾向の変化をもたらす可能性がある。一例として、変異は、タウを播種に感作するが、タウがそれ自体で容易に凝集することをもたらさない凝集感作変異であり得る。例えば、変異は、疾患関連P301S変異であり得る。P301S変異とは、ヒトタウP301S変異、またはヒトタウタンパク質と最適にアラインされた場合の別のタウタンパク質の対応する変異を意味する。他の病原性タウ変異には、例えば、A152T、G272V、K280del、P301L、S320F、V337M、R406W、P301L/V337M、K280del/I227P/I308P、G272V/P301L/R406W、およびA152T/P301L/S320Fが含まれる。alzforum.org/mutations/mapt,Brandt et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:331-354、およびWolfe(2009)J.Biol.Chem.284(10):6021-6025を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。野生型タウ1N4RのDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ配列番号81および82に記載されている。3MUTタウ1N4R(A152T、P301L、S320F)のDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ配列番号83および84に記載されている。
【0104】
細胞レベルでのタウオパチーの徴候および症状のいくつかの例には、タウの過剰リン酸化(例えば、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメント内での、なぜならば一般に軸索タンパク質と考えられているが、タウは変性ニューロンの樹状コンパートメントに見られ、この再分布はアルツハイマー病の神経変性の引き金となると考えられている)、タウの凝集、核ラミナの異常な形状、および核細胞質間輸送の障害が含まれる。生物レベルでの他の徴候および症状には、神経原線維変化(例えば、新皮質、扁桃体、海馬、脳幹、または脊髄)、ニューロン喪失(例えば、海馬、扁桃体、または新皮質)、小神経膠細胞症、シナプス喪失、認知障害、または運動障害が含まれ得る。他の徴候および症状には、例えば、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含めることができる。ホスホタウは、例えば、ホスホタウ(S356)またはホスホタウAT8(S202、T205)であり得る。
【0105】
B.BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を低減させるための薬剤
BANF1、 PPP2CA、またはANKLE2の発現を減少または阻害するために、任意の適切な薬剤を使用することができる。BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を低減させることができる薬剤の例は、ヌクレアーゼ剤(例えば、ZFN、TALEN、またはCRISPR/Cas)、転写抑制因子に融合したDNA結合タンパク質(例えば、KRABドメインに融合した触媒的に不活性/死滅Cas(dCas)(dCas-KRAB)などの転写抑制因子)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはアンチセンスRNAを含む。BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を低減させることができる薬剤の他の例は、ヌクレアーゼ剤(例えば、ZFN、TALEN、またはCRISPR/Cas)、転写抑制因子に融合したDNA結合タンパク質(例えば、KRABドメインに融合した触媒的に不活性/死滅Cas(dCas)(dCas-KRAB)などの転写抑制因子)、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、またはアンチセンスRNAをコードする核酸を含む。これらの例については、以下で詳しく説明する。
【0106】
1.ヌクレアーゼ剤と転写抑制因子
ヌクレアーゼ剤は、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を減少させるために使用できる。例えば、そのようなヌクレアーゼ剤は、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2遺伝子の発現を破壊するBANF1、PPP2CA、またはANKLE2遺伝子の領域を標的にして切断するように設計することができる。特定の例として、ヌクレアーゼ剤は、開始コドンの近くのBANF1、PPP2CA、またはANKLE2の領域を切断するように設計することができる。例えば、標的配列は、開始コドンの約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、または1,000ヌクレオチド以内にあり得、ヌクレアーゼ剤による切断は、開始コドンを破壊し得る。あるいは、開始コドンおよび終止コドンの近くの領域を切断するように設計されたヌクレアーゼ剤を使用して、2つのヌクレアーゼ標的配列間のコード配列を削除することができる。転写抑制因子ドメインに融合したDNA結合タンパク質を使用して、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を低減させることもできる。例えば、転写抑制因子ドメインに融合したDNA結合タンパク質(例えば、KRAB転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCas)は、開始コドンの近くの、例えば、開始コドンから約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、または1,000ヌクレオチド以内のBANF1、PPP2CA、またはANKLE2の領域を標的とするように設計することができる)。
【0107】
ヌクレアーゼ剤による切断は、非相同末端結合(NHEJ)によって修復できる二本鎖切断を引き起こす可能性がある。NHEJには、相同テンプレートを必要とせずに、切断末端を相互に、または外因性配列に直接ライゲーションすることによる、核酸における二本鎖切断の修復が含まれる。NHEJによる非隣接配列のライゲーションは、多くの場合、二本鎖切断の部位の近くで欠失、挿入、または転座をもたらし得る。これらの挿入および欠失(インデル)は、例えば、フレームシフト変異または開始コドンの破壊を介して、標的遺伝子の発現を破壊する可能性がある。
【0108】
所望の認識部位へのニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤を、本明細書に開示される方法および組成物で使用することができる。ヌクレアーゼ剤が所望の認識部位にニックまたは二本鎖切断を誘導する限り、天然に存在するまたは天然のヌクレアーゼ剤を使用することができる。代替的に、改変または操作されたヌクレアーゼ剤を使用することができる。「操作されたヌクレアーゼ剤」は、その天然の形態から操作された(改変または誘導された)ヌクレアーゼを含み、所望の認識部位においてニックまたは二本鎖切断を特異的に認識および誘導する。したがって、操作されたヌクレアーゼ剤は、天然の天然に存在するヌクレアーゼ剤から誘導することができ、または人工的に作成または合成することができる。操作されたヌクレアーゼは、例えば、認識部位においてニックまたは二本鎖切断を誘導することができ、認識部位は、天然の(非操作または非修飾)ヌクレアーゼ剤によって認識されたであろう配列ではない。ヌクレアーゼ剤の修飾は、タンパク質切断剤中のわずか1アミノ酸または核酸切断剤中の1ヌクレオチドであってよい。認識部位または他のDNAにニックまたは二本鎖切断を生じさせることは、本明細書では、認識部位または他のDNAを「切断する(cutting)」または「切断する(cleaving)」と呼ぶことができる。
【0109】
例示された認識部位の活性バリアントおよび断片も提供される。そのような活性バリアントは、所与の標的配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を含むことができ、活性バリアントは生物学的活性を保持し、したがって配列特異的様式でヌクレアーゼ剤によって認識および切断され得る。ヌクレアーゼ剤による認識部位の二本鎖切断を測定するアッセイは、当該技術分野で知られている(例えば、TaqMan(登録商標)qPCRアッセイ、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるFrendewey et al.(2010)Methods in Enzymology 476:295-307)。
【0110】
ヌクレアーゼ剤の認識部位は、標的遺伝子座の中または近くのどこにでも配置することができる。認識部位は、遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす調節領域内(例えば、開始コドンの近く)に位置してもよい。ヌクレアーゼ剤の認識部位は、イントロン、エキソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または任意の非タンパク質コード領域に位置してもよい。あるいは、認識部位は、選択マーカーをコードするポリヌクレオチド内に配置することができる。そのような位置は、選択マーカーのコード領域内または調節領域内に位置することができ、これらは選択マーカーの発現に影響を及ぼす。したがって、ヌクレアーゼ剤の認識部位は、選択マーカーのイントロン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または選択マーカーをコードするポリヌクレオチドの任意の非タンパク質コード領域に位置してもよい。認識部位でのニックまたは二本鎖切断は、選択マーカーの活性を破壊してもよく、機能的選択マーカーの存在または非存在をアッセイする方法が知られている。
【0111】
ヌクレアーゼ剤の1つの種類は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核生物または真核生物のゲノム内の特定の標的配列で二本鎖切断を行うために使用できる配列特異的ヌクレアーゼのクラスである。TALエフェクターヌクレアーゼは、天然または操作された転写活性化因子様(TAL)エフェクター、またはその機能的部分を、例えば、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合することによって作成される。独自のモジュラーTALエフェクターDNA結合ドメインにより、特定のDNA認識特異性を備えたタンパク質の設計が可能になる。したがって、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、特定のDNA標的部位を認識するように操作することができ、したがって、所望の標的配列で二本鎖切断を行うために使用することができる。すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2010/079430、Morbitzer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107(50):21617-21622、Scholze & Boch(2010)Virulence 1:428-432、Christian et al.Genetics(2010)186:757-761、Li et al.(2010)Nucleic Acids Res.(2011)39(1):359-372、およびMiller et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143-148を参照されたい。
【0112】
適切なTALヌクレアーゼの例、および適切なTALヌクレアーゼを調製するための方法は、例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2011/0239315A1、US2011/0269234A1、US2011/0145940A1、US2003/0232410A1、US2005/0208489A1、US2005/0026157A1、US2005/0064474A1、US2006/0188987A1、およびUS2006/0063231A1に開示されている。様々な実施形態では、例えば、目的の遺伝子座または目的のゲノム遺伝子座において標的核酸配列内またはその近くを切断するTALエフェクターヌクレアーゼが操作され、ここで、標的核酸配列は、標的化ベクターによって改変される配列またはその近くにある。本明細書で提供される様々な方法および組成物での使用に適したTALヌクレアーゼには、本明細書に記載の標的化ベクターによって改変される標的核酸配列またはその近くに結合するように特別に設計されたものが含まれる。
【0113】
一部のTALENでは、TALENの各モノマーは、2つの超可変残基を介して単一の塩基対を認識する33~35のTALリピートを含む。一部のTALENでは、ヌクレアーゼ剤は、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結されたTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1のTALリピートベースのDNA結合ドメインおよび第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むことができ、第1および第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインのそれぞれは、FokIヌクレアーゼに作動可能に連結され、第1および第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインは、様々な長さ(12~20bp)のスペーサー配列によって分離された標的DNA配列の各鎖における2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、標的配列で二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを作成する。
【0114】
本明細書に開示される様々な方法および組成物で使用されるヌクレアーゼ剤は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をさらに含むことができる。一部のZFNでは、ZFNの各モノマーは3つ以上のジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含み、各ジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインは3bpのサブサイトに結合する。他のZFNでは、ZFNは、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結されたジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1のZFNおよび第2のZFNを含むことができ、第1および第2のZFNのそれぞれは、FokIヌクレアーゼサブユニットに作動可能に連結され、第1および第2のZFNは、約5~7bpのスペーサーで分離された標的DNA配列の各鎖における2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、二本鎖切断を行う活性ヌクレアーゼを生成する。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2006/0246567、US2008/0182332、US2002/0081614、US2003/0021776、WO/2002/057308A2、US2013/0123484、US2010/0291048、WO/2011/017293A2、およびGaj et al.(2013)Trends Biotechnology,31(7):397-405を参照されたい。
【0115】
ヌクレアーゼ剤(すなわち、操作されたヌクレアーゼ剤)の活性バリアントおよび断片も提供される。そのような活性バリアントは、天然のヌクレアーゼ剤に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有していてもよく、活性バリアントは、所望の認識部位で切断する能力を保持し、したがって、ニックまたは二本鎖切断誘導活性を保持する。例えば、本明細書に記載のヌクレアーゼ剤のいずれも、天然エンドヌクレアーゼ配列から改変され得、天然ヌクレアーゼ剤によって認識されなかった認識部位でニックまたは二本鎖切断を認識および誘導するように設計してもよい。したがって、いくつかの操作されたヌクレアーゼは、対応する天然のヌクレアーゼ剤認識部位とは異なる認識部位でニックまたは二本鎖切断を誘導する特異性を有する。ニックまたは二本鎖切断誘導活性のためのアッセイは知られており、一般に、認識部位を含むDNA基質上のエンドヌクレアーゼの全体的な活性および特異性を測定する。
【0116】
ヌクレアーゼ剤は、任意の知られている手段によって細胞に導入してもよい。ヌクレアーゼ剤をコードするポリペプチドは、細胞に直接導入してもよい。代替的に、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入してもよい。ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドが細胞に導入されると、ヌクレアーゼ剤は、細胞内で一過性に、条件付きで、または構成的に発現され得る。したがって、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれ得、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターに作動可能に連結され得る。目的のそのようなプロモーターは、本明細書のいずこかでさらに詳細に論じられている。代替的に、ヌクレアーゼ剤は、ヌクレアーゼ剤をコードするmRNAとして細胞に導入される。
【0117】
ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、細胞のゲノムに安定して組み込まれ、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、標的化ベクター(例えば、挿入ポリヌクレオチドを含む標的化ベクター、または挿入ポリヌクレオチドを含む標的化ベクターとは別のベクターもしくはプラスミド)にあってよい。
【0118】
ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドの導入によりヌクレアーゼ剤が細胞に提供される場合、ヌクレアーゼ剤をコードするそのようなポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチド配列と比較して、目的の細胞においてより高い使用頻度を有するコドンを置換するように改変され得る。例えば、ヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞を含む所与の原核細胞または真核細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。
【0119】
CRISPR/Casシステム。本明細書に開示される方法および組成物は、クラスター化された規則的に散在する短いパリンドロームリピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムまたはそのようなシステムの構成要素を利用して、ゲノムを改変するか、または細胞内の遺伝子の発現を変更することができる。CRISPR/Cas系には、Cas遺伝子の発現に関与する、またはその活性を指示する転写産物および他のエレメントが含まれる。CRISPR/Cas系は、例えば、タイプI、タイプII、タイプIII系、またはタイプV系(例えば、サブタイプV-AまたはサブタイプV-B)であり得る。本明細書に開示される方法および組成物は、核酸の部位特異的結合または切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによってCRISPR/Cas系を用いることができる。
【0120】
本明細書に開示される組成物および方法で使用されるCRISPR/Cas系は、非天然発生型であり得る。「非天然発生型」系には、自然発生状態から改変もしくは変異されているか、それらが本質的に自然に関連付けられている少なくとも1つの他の構成要素から少なくとも実質的に自由であるか、またはそれらが自然に関連付けられていない少なくとも1つの他の構成要素に関連付けられている、系の1つ以上の構成要素など、人間の助けの関与を示すものが含まれる。例えば、一部のCRISPR/Cas系は、天然に発生しないgRNAおよびCasタンパク質を一緒に含む非天然発生型CRISPR複合体を用いるか、天然に発生しないCasタンパク質を用いるか、または天然に発生しないgRNAを用いる。
【0121】
Casタンパク質Casタンパク質は一般に、ガイドRNAと相互作用し得る少なくとも1つのRNA認識または結合ドメインを含む。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNaseドメインまたはRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、および他のドメインを含み得る。いくつかのそのようなドメイン(例えば、DNaseドメイン)は、ネイティブのCasタンパク質に由来し得る。他のそのようなドメインを追加して、修飾されたCasタンパク質を作製することができる。ヌクレアーゼドメインは、核酸分子の共有結合の切断を含む、核酸切断に対する触媒活性を有する。切断は、平滑末端または千鳥状の末端を生成することができ、それは一本鎖または二本鎖であり得る。例えば、野生型のCas9タンパク質は、通常、平滑端切断産物を生成する。あるいは、野生型Cpf1タンパク質(例、FnCpf1)は、5ヌクレオチドの5’オーバーハングを含む切断産物をもたらすことができ、切断は、非標的化鎖のPAM配列から18番目の塩基対の後および標的化鎖の23番目の塩基後に発生する。Casタンパク質は、完全な切断活性を有し、標的ゲノム遺伝子座で二本鎖切断を作成することができるか(例えば、平滑末端を含む二本鎖切断)、またはそれは標的ゲノム遺伝子座で一本鎖切断を作成するニッカーゼであり得る。
【0122】
Casタンパク質の例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、およびCu1966、ならびにそれらの相同体または修飾バージョンが挙げられる。
【0123】
例示的なCasタンパク質は、Cas9タンパク質またはCas9タンパク質に由来するタンパク質である。Cas9タンパク質は、タイプII CRISPR/Cas系に由来するものであり、典型的には、保存されたアーキテクチャを有する4つの重要なモチーフを共有する。モチーフ1、2、および4は、RuvC様モチーフであり、モチーフ3は、HNHモチーフである。例示的なCas9タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus sp.、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、Streptosporangium roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas sp.、Crocosphaera watsonii、Cyanothece sp.、Microcystis aeruginosa、Synechococcus sp.、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter sp.、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc sp.、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira sp.、Lyngbya sp.、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria sp.、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、Acaryochloris marina、Neisseria meningitidis、またはCampylobacter jejuniに由来する。Cas9ファミリーメンバーの追加の例は、WO2014/131833に記載されており、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。S.pyogenes(SpCas9)由来のCas9(SwissProtアクセッション番号Q99ZW2が割り当てられている)は、例示的なCas9タンパク質である。S.aureus(SaCas9)由来のCas9(UniProtアクセッション番号J7RUA5が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。Campylobacter jejuni(CjCas9)由来のCas9(UniProtアクセッション番号Q0P897が割り当てられている)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim et al.(2017)Nat.Commun.8:14500を参照されたい。SaCas9は、SpCas9よりも小さく、CjCas9は、SaCas9およびSpCas9の両方よりも小さい。SpCas9の例示的なDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ、配列番号86および87に示されている。Neisseria meningitidis由来のCas9(Nme2Cas9)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、Edraki et al.(2019)Mol.Cell 73(4):714-726を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。Streptococcus thermophilus由来のCas9タンパク質(例えば、CRISPR1遺伝子座(St1Cas9)によってコードされるStreptococcus thermophilus LMD-9 Cas9またはCRISPR3遺伝子座(St3Cas9)由来のStreptococcus thermophilus Cas9)は、他の例示的なCas9タンパク質である。Francisella novicida由来のCas9(FnCas9)または代替PAMを認識するRHA Francisella novicida Cas9バリアント(E1369R/E1449H/R1556A置換)は、他の例示的なCas9タンパク質である。これらおよび他の例示的なCas9タンパク質は、例えば、Cebrian-Serrano and Davies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261で概説されており、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
Casタンパク質の別の例は、Cpf1(PrevotellaおよびFrancisella 1のCRISPR)タンパク質である。Cpf1は、Cas9の対応するドメインに相同なRuvC様ヌクレアーゼドメインを、Cas9の特徴的なアルギニンに富むクラスターの対応物とともに含む大きなタンパク質(約1300アミノ酸)である。しかしながら、Cpf1は、Cas9タンパク質に存在するHNHヌクレアーゼドメインを欠いており、HNHドメインを含む長い挿入を含むCas9とは対照的に、RuvC様ドメインは、Cpf1配列において隣接している。例えば、Zetsche et al.(2015)Cell 163(3):759-771を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例示的なCpf1タンパク質は、Francisella tularensis 1、Francisella tularensis subsp.novicida、Prevotella albensis、Lachnospiraceae bacterium MC2017 1、Butyrivibrio proteoclasticus、Peregrinibacteria bacterium GW2011_GWA2_33_10、Parcubacteria bacterium GW2011_GWC2_44_17、Smithella sp.SCADC、Acidaminococcus sp.BV3L6、Lachnospiraceae bacterium MA2020、Candidatus Methanoplasma termitum、Eubacterium eligens、Moraxella bovoculi 237、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium ND2006、Porphyromonas crevioricanis 3、Prevotella disiens、およびPorphyromonas macacaeに由来する。Francisella novicida U112由来のCpf1(FnCpf1;UniProtアクセッション番号A0Q7Q2が割り当てられている)は、例示的なCpf1タンパク質である。
【0125】
Casタンパク質は、野生型タンパク質(すなわち、本質的に発生するもの)、修飾Casタンパク質(すなわち、Casタンパク質バリアント)、または野生型もしくは修飾Casタンパク質の断片であり得る。Casタンパク質はまた、野生型または改変されたCasタンパク質の触媒活性に関して、活性なバリアントまたは断片であり得る。触媒活性に関する活性なバリアントまたは断片は、野生型または修飾されたCasタンパク質またはその一部に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含み得、活性なバリアントは、所望の切断部位で切断する能力を保持し、したがってニック誘導または二本鎖切断誘導活性を保持する。ニック誘導または二本鎖切断誘導活性のアッセイは知られており、一般に、切断部位を含むDNA基質上のCasタンパク質の全体的な活性および特異性を測定する。
【0126】
修飾Casタンパク質の一例は、修飾SpCas9-HF1タンパク質であり、これは、非特異的DNA接触を低減するように設計された改変を内包するStreptococcus pyogenes Cas9の忠実度の高いバリアント(N497A/R661A/Q695A/Q926A)である。例えば、Kleinstiver et al.(2016)Nature 529(7587):490-495を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。修飾Casタンパク質の別の例は、オフターゲット効果を低減するように設計された修飾eSpCas9バリアント(K848A/K1003A/R1060A)である。例えば、Slaymaker et al.(2016)Science 351(6268):84-88を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。他のSpCas9バリアントには、K855AおよびK810A/K1003A/R1060Aが含まれる。これらおよび他の改変されたCasタンパク質は、例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Cebrian-Serrano and Davies(2017)Mamm.Genome 28(7):247-261で概説されており、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。修飾Cas9タンパク質の別の例は、xCas9であり、これは拡大された範囲のPAM配列を認識することができるSpCas9バリアントである。例えば、Hu et al.(2018)Nature 556:57-63を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
Casタンパク質は、核酸結合親和性、核酸結合特異性、および酵素活性のうちの1つ以上を増加または減少させるように修飾され得る。Casタンパク質は、安定性など、タンパク質の他の活性または特性を変更するように改変することもできる。例えば、Casタンパク質の1つ以上のヌクレアーゼドメインを改変、欠失、または不活性化することができ、またはCasタンパク質を短縮して、タンパク質の機能に必須ではないドメインを除去するか、またはCasタンパク質の活性または特性を最適化(例えば、増強または低減)することができる。
【0128】
Casタンパク質は、DNaseドメインなどの少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cpf1タンパク質は、一般に、おそらく二量体立体配座で、標的DNAの両方の鎖を切断するRuvC様ドメインを含む。Casタンパク質はまた、DNaseドメインなどの少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cas9タンパク質は、一般に、RuvC様ヌクレアーゼドメインおよびHNH様ヌクレアーゼドメインを含む。RuvCドメインおよびHNHドメインは各々、二本鎖DNAの異なる鎖を切断して、DNAに二本鎖切断を行うことができる。例えば、Jinek et al.(2012)Science 337:816-821を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
ヌクレアーゼドメインの1つ以上またはすべてを欠失または変異させることで、それらがもはや機能しなくさせたり、ヌクレアーゼ活性が低下させたりすることができる。例えば、Cas9タンパク質でヌクレアーゼドメインの1つが欠失または変異している場合、結果として得られるCas9タンパク質はニッカーゼと呼ばれ、二本鎖標的DNA内で一本鎖切断を生成できるが、二本鎖切断は生成できない(すなわち、相補鎖または非相補鎖を切断できるが、両方を切断することはできない)。ヌクレアーゼドメインの両方が削除または変異された場合、得られたCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖(例えば、ヌクレアーゼヌルまたはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質、または触媒活性を伴わないCasタンパク質(dCas))を切断する能力が低減される。Cas9をニッカーゼに変換する変異の例は、S.pyogenes由来のCas9のRuvCドメインにおけるD10A(Cas9の10位でのアスパラギン酸塩からアラニンへ)変異である。同様に、S.pyogenes由来のCas9のHNHドメインにあるH939A(アミノ酸839位でのヒスチジンからアラニンへ)、H840A(アミノ酸840位でのヒスチジンからアラニンへ)、またはN863A(アミノ酸N863位でのアスパラギンからアラニンへ)は、Cas9をニッカーゼに変換し得る。Cas9をニッカーゼに変換する変異の他の例には、S.thermophilus由来のCas9への対応する変異が挙げられる。例えば、Sapranauskas et al.(2011)Nucleic Acids Research 39):9275-9282およびWO2013/141680を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような変異は、部位特異的変異導入、PCRを介した変異導入、または全遺伝子合成などの方法を使用して生成され得る。ニッカーゼを生成する他の変異の例は、例えば、WO2013/176772およびWO2013/142578において見出すことができ、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。Casタンパク質においてすべてのヌクレアーゼドメインが欠失または変異している(例えば、Cas9タンパク質において両方のヌクレアーゼドメインが欠失または変異している)場合、結果として生じるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力が低下する(例えば、ヌクレアーゼヌル、またはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質)。1つの特定の例は、D10A/H840A S.pyogenes Cas9二重変異体、またはS.pyogenes Cas9と最適にアラインされた場合の別の種からのCas9の対応する二重変異体である。別の具体的な例は、D10A/N863AのS. pyogenesのCas9の二重変異体、またはS. pyogenesのCas9と最適に整列した場合の別の種由来のCas9の対応する二重変異体である。
【0130】
xCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例は、SpCas9について前述したものと同じである。Staphylococcus aureusのCas9タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている。例えば、Staphylococcus aureusのCas9酵素(SaCas9)は、位置N580での置換(例えば、N580A置換)および位置D10での置換(例えば、D10A置換)を含み得、ヌクレアーゼ不活性Casタンパク質をもたらす。例えば、WO2016/106236を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。Nme2Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も知られている(例えば、D16AとH588Aの組み合わせ)。St1Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も既知である(例えば、D9A、D598A、H599A、およびN622Aの組み合わせ)。St3Cas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も既知である(例えば、D10AおよびN870Aの組み合わせ)。CjCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も既知である(例えば、D8AおよびH559Aの組み合わせ)。FnCas9およびRHA FnCas9の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も既知である(例えば、N995A)。
【0131】
Cpf1タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化変異の例も既知である。Francisella novicida U112(FnCpf1)、Acidaminococcus sp.BV3L6(AsCpf1)、Lachnospiraceae bacterium ND2006(LbCpf1)、およびMoraxella bovoculi 237(MbCpf1 Cpf1)由来のCpf1タンパク質に関して、そのような変異には、AsCpf1の908、993、もしくは1263位またはCpf1オルソログの対応する位置、あるいはLbCpf1の832、925、947、もしくは1180位またはCpf1オルソログの対応する位置での変異が含まれ得る。そのような変異は、例えば、AsCpf1の変異D908A、E993A、およびD1263AもしくはCpf1オルソログの対応する変異、またはLbCpf1のD832A、E925A、D947A、およびD1180AもしくはCpf1オルソログの対応する変異のうちの1つ以上を含み得る。例えば、US2016/0208243を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
Casタンパク質はまた、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。例えば、Casタンパク質は、切断ドメイン、エピジェネティック修飾ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合され得る。WO2014/089290を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。転写抑制因子ドメインの例には、誘導性cAMP初期抑制因子(ICER)ドメイン、Kruppel関連ボックスA(KRAB-A)(またはKruppel関連ボックス(KRAB))抑制因子ドメイン、YY1グリシンリッチ抑制因子ドメイン、Sp1様抑制因子、E(spl)抑制因子、ΙκΒ抑制因子、およびMeCP2が挙げられる。他の例には、A/B、KOX、TGF-ベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、SID4X、MBD2、MBD3、DNMT1、DNMG3A、DNMT3B、Rb、ROM2由来の転写抑制因子ドメインが挙げられる。例えば、EP3045537およびWO2011/146121を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。Casタンパク質はまた、安定性の増加または減少を提供する異種ポリペプチドに融合され得る。融合ドメインまたは異種ポリペプチドは、N末端、C末端、またはCasタンパク質の内部に位置し得る。
【0133】
一例として、Casタンパク質は、細胞内局在化を提供する1つ以上の異種ポリペプチドに融合され得る。そのような異種ポリペプチドには、例えば、核を標的とするための単節型(monopartite)SV40 NLSおよび/または双節型(bipartite)アルファ-インポーチンNLSなどの1つ以上の核局在化シグナル(NLS)、ミトコンドリアを標的とするためのミトコンドリア局在化シグナル、ER保持シグナルなどが含まれ得る。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282:5101-5105を参照されたい。そのような細胞内局在化シグナルは、N末端、C末端、またはCasタンパク質内の任意の場所に位置し得る。NLSは、一続きの塩基性アミノ酸を含むことができ、単節型配列または双節型配列であり得る。任意に、Casタンパク質は、N末端にNLS(例えば、アルファ-インポーチンNLSまたは単節型NLS)およびC末端にNLS(例えば、SV40 NLSまたは双節型NLS)を含む2つ以上のNLSを含み得る。Casタンパク質はまた、N末端に2つ以上のNLSおよび/またはC末端に2つ以上のNLSを含み得る。
【0134】
Casタンパク質はまた、細胞透過性ドメインまたはタンパク質導入ドメインに作動可能に連結され得る。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV-1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルスからのTLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep-1、VP22、単純ヘルペスウイルスからの細胞透過性ペプチド、またはポリアルギニンペプチド配列に由来し得る。例えば、WO2014/089290およびWO2013/176772を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。細胞透過性ドメインは、N末端、C末端、またはCasタンパク質内の任意の場所に位置し得る。
【0135】
Casタンパク質はまた、追跡または精製を容易にするために、蛍光タンパク質、精製タグ、またはエピトープタグなどの異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。蛍光タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、青色蛍光タンパク質(例えば、eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、T-sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRedl、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、Monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、および任意の他の好適な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、ヘマグルチニン(HA)、nus、Softag 1、Softag 3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、ヒスチジン(His)、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)、およびカルモジュリンが挙げられる。
【0136】
Casタンパク質は、標識された核酸に係留してもよい。そのような係留(すなわち、物理的結合)は、共有相互作用または非共有相互作用を介して達成することができ、係留は、直接(例えば、タンパク質またはインテイン修飾上のシステインまたはリジン残基の修飾によって達成することができる直接融合または化学的結合を介して)、またはストレプトアビジンまたはアプタマーなどの1つ以上の介在するリンカーまたはアダプター分子を介して達成することができる。例えば、すべての目的のためにそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Pierce et al.(2005)Mini Rev.Med.Chem.5(1):41-55、Duckworth et al.(2007)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.46(46):8819-8822、Schaeffer and Dixon (2009) Australian J.Chem.62(10):1328-1332、Goodman et al.(2009) Chembiochem.10(9):1551-1557、およびKhatwani et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.20(14):4532-4539を参照されたい。タンパク質-核酸コンジュゲートを合成するための非共有戦略には、ビオチン-ストレプトアビジンおよびニッケル-ヒスチジン法が含まれる。共有結合タンパク質-核酸コンジュゲートは、様々な化学物質を使用して適切に機能化された核酸とタンパク質を接続することによって合成できる。これらの化学物質のいくつかは、タンパク質表面のアミノ酸残基(例えば、リジンアミンまたはシステインチオール)へのオリゴヌクレオチドの直接結合を含むが、他のより複雑なスキームは、タンパク質の翻訳後修飾または触媒もしくは反応性タンパク質ドメインの関与を必要とする。タンパク質の核酸への共有結合の方法には、例えば、オリゴヌクレオチドのタンパク質リジンまたはシステイン残基への化学的架橋、発現されたタンパク質ライゲーション、化学酵素的方法、および光アプタマーの使用が含まれ得る。標識された核酸は、Casタンパク質のC末端、N末端、または内部領域に係留されていてもよい。一例では、標識された核酸は、Casタンパク質のC末端またはN末端に係留される。同様に、Casタンパク質は、標識された核酸の5’末端、3’末端、または内部領域に係留されていてもよい。すなわち、標識された核酸は、任意の方向および極性で係留してもよい。例えば、Casタンパク質は、標識された核酸の5’末端または3’末端に係留されていてもよい。
【0137】
Casタンパク質は、任意の形態で提供され得る。例えば、Casタンパク質は、gRNAと複合体を形成したCasタンパク質などのタンパク質の形態で提供してもよい。代替的に、Casタンパク質は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))またはDNAなどの、Casタンパク質をコードする核酸の形態で提供してもよい。任意に、Casタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞または生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のためにコドン最適化することができる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。Casタンパク質をコードする核酸が細胞に導入されると、Casタンパク質は、一時的、条件付き、または構成的に細胞内で発現され得る。
【0138】
mRNAとして提供されるCasタンパク質は、安定性および/または免疫原性の特性の改善のために修飾され得る。修飾は、mRNA内の1つ以上のヌクレオシドに対して行われ得る。mRNA核酸塩基への化学修飾の例には、シュードウリジン、1-メチル-シュードウリジン、および5-メチル-シチジンが挙げられる。例えば、N1-メチルシュードウリジンを含むキャップされポリアデニル化されたCas mRNAを使用することができる。同様に、Cas mRNAは、同義コドンを使用してウリジンを枯渇させることによって修飾され得る。
【0139】
Casタンパク質をコードする核酸は、細胞のゲノムにおいて安定して組み込まれ、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。代替的に、Casタンパク質をコードする核酸は、発現コンストラクト中のプロモーターに作動可能に連結され得る。発現コンストラクトは、遺伝子または他の目的の核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を指示することができ、そのような目的の核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸コンストラクトを含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、gRNAをコードするDNAを含むベクター内に存在してもよい。代替的に、それは、gRNAをコードするDNAを含むベクターとは別のベクターまたはプラスミドであってもよい。発現コンストラクトにおいて使用することができるプロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであってよい。任意選択で、プロモーターは、一方向のCasタンパク質と他の方向のガイドRNAの両方の発現を駆動する双方向プロモーターであってもよい。このような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、およびTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、ならびに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSEおよびTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成してもよい。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSEとTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0074535を参照されたい。双方向プロモーターを使用してCasタンパク質とガイドRNAをコードする遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0140】
ガイドRNA「ガイドRNA」または「gRNA」は、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)に結合し、かつCasタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子である。ガイドRNAは、「DNA標的化セグメント」および「タンパク質結合セグメント」の2つのセグメントを含み得る。「セグメント」は、RNA中のヌクレオチドの連続したストレッチなどの、分子のセクションまたは領域を含む。Cas9のものなど、いくつかのgRNAは、「アクチベーターRNA」(例えば、tracrRNA)および「ターゲッターRNA」(例えば、CRISPR RNAまたはcrRNA)の2つの別個のRNA分子を含み得る。他のgRNAは、単一RNA分子(単一RNAポリヌクレオチド)であり、これはまた「単一分子gRNA」、「単一ガイドRNA」、または「sgRNA」と呼ばれ得る。例えば、WO2013/176772、WO2014/065596、WO2014/089290、WO2014/093622、WO2014/099750、WO2013/142578、およびWO2014/131833を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、Cas9の場合、単一ガイドRNAは、tracrRNAに融合したcrRNAを含み得る(例えば、リンカーを介して)。例えば、Cpf1の場合、標的配列への結合を達成するためにcrRNAのみが必要とされる。「ガイドRNA」および「gRNA」という用語は、二重分子(すなわち、モジュラー)gRNAおよび単一分子gRNAの両方を含む。
【0141】
例示的な2分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」または「ターゲッターRNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子および対応するtracrRNA様(「トランス作用性CRISPR RNA」または「アクチベーターRNA」または「tracrRNA」)分子を含む。crRNAは、gRNAのDNA標的化セグメント(一本鎖)、およびgRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成するヌクレオチドのストレッチの両方を含む。DNA標的化セグメントの下流(3’)に位置するcrRNAテールの例は、GUUUUAGAGCUAUGCU(配列番号65)を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。本明細書に開示されるDNA標的化セグメント(ガイド配列)のいずれも、配列番号65の5’末端に結合して、crRNAを形成することができる。このようなDNA標的化セグメントには、例えば、配列番号44~46(マウスBanf1)、配列番号27~30(ヒトBANF1)、配列番号47~49(マウスPpp2ca)、配列番号31~32(ヒトPPP2CA)、配列番号50~52(マウスAnkle2)、および配列番号38(ヒトANKLE2)が含まれる。
【0142】
対応するtracrRNA(アクチベーターRNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の残りの半分を形成するヌクレオチドのストレッチを含む。crRNAのヌクレオチドのストレッチは、tracrRNAのヌクレオチドのストレッチと相補的であり、それをハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。したがって、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言われ得る。例示的なtracrRNA配列は、AGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU(配列番号66)、AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号100)、またはGUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(配列番号101)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。
【0143】
crRNAおよびtracrRNAの両方が必要とされる系では、crRNAおよび対応するtracrRNAは、ハイブリダイズしてgRNAを形成する。crRNAのみが必要な系では、crRNAはgRNAであってもよい。crRNAはさらに、標的DNAの相補鎖にハイブリダイズする一本鎖DNA標的セグメントを提供する。細胞内での修飾に使用される場合、所与のcrRNAまたはtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が使用される種に特異的になるように設計され得る。例えば、Mali et al.(2013)Science 339:823-826、Jinek et al.(2012)Science 337:816-821、Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:227-229、Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31:233-239、およびCong et al.(2013)Science 339:819-823を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
所与のgRNAのDNA標的化セグメント(crRNA)は、以下により詳細に記載されるように、標的DNAの相補鎖上の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。gRNAのDNA標的化セグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対合)を介して配列特異的様式で標的DNAと相互作用する。したがって、DNA標的化セグメントのヌクレオチド配列は変化してもよく、gRNAおよび標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。目的のgRNAのDNA標的化セグメントは、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように修飾され得る。天然発生型crRNAは、CRISPR/Cas系および生物によって異なるが、21~46ヌクレオチドの長さの2つのダイレクトリピート(DR)が隣接する、21~72ヌクレオチド長の標的化セグメントを含むことが多い(例えば、WO2014/131833を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。S.pyogenesの場合、DRは36ヌクレオチド長であり、標的化セグメントは30ヌクレオチド長である。3’に位置するDRは、対応するtracrRNAと相補的であり、それをハイブリダイズし、それは順にCasタンパク質と結合する。
【0145】
DNA標的化セグメントは、例えば、少なくとも約12、15、17、18、19、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さを有し得る。そのようなDNA標的セグメントは、例えば、約12~約100、約12~約80、約12~約50、約12~約40、約12~約30、約12~約25、または約12~約20ヌクレオチド長を有することができる。例えば、DNA標的化セグメントは、約15~約25ヌクレオチド(例えば、約17~約20ヌクレオチド、または約17、18、19、もしくは20ヌクレオチド)であり得る。例えば、US2016/0024523を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。S.pyogenes由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、16~20ヌクレオチド長、または17~20ヌクレオチド長である。S.aureus由来のCas9の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、21~23ヌクレオチド長である。Cpf1の場合、典型的なDNA標的化セグメントは、少なくとも16ヌクレオチド長または少なくとも18ヌクレオチド長さである。
【0146】
TracrRNAは、任意の形態(例えば、完全長tracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、および様々な長さであり得る。それらには、一次転写物または処理された形態が含まれ得る。例えば、tracrRNA(単一ガイドRNAの一部として、または2分子gRNAの一部としての別個の分子として)は、野生型tracrRNA配列(例えば、野生型tracrRNA配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはそれ以上のヌクレオチド)のすべてまたは一部を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり得る。S.pyogenes由来の野生型tracrRNA配列の例には、171ヌクレオチド、89ヌクレオチド、75ヌクレオチド、および65ヌクレオチドのバージョンが挙げられる。例えば、Deltcheva et al.(2011)Nature 471:602-607、WO2014/093661を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。単一ガイドRNA(sgRNA)内のtracrRNAの例には、sgRNAの+48、+54、+67、および+85のバージョン内に見出されるtracrRNAセグメントが挙げられ、「+n」は、野生型tracrRNAの最大+nヌクレオチドがsgRNAに含まれることを示す。US8,697,359を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であり得る。DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、約20個の連続するヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。一例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の5’末端にある14個の連続するヌクレオチドにわたって100%であり得、残りの部分にわたって0%まで低くなり得る。そのような場合、DNA標的化セグメントは、14ヌクレオチド長であるとみなされ得る。別の例として、DNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性パーセントは、標的DNAの相補鎖の5’末端にある7個の連続するヌクレオチドにわたって100%であり得、残りの部分にわたって0%まで低くなり得る。このような場合、DNA標的セグメントは7ヌクレオチド長であるとみなすことができる。一部のガイドRNAでは、DNA標的セグメント内の少なくとも17ヌクレオチドがターゲットDNAの相補鎖に相補的である。例えば、DNA標的セグメントは、20ヌクレオチド長であってもよく、標的DNAの相補鎖との1、2、または3つのミスマッチを含むことができる。一例では、ミスマッチは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に対応する相補鎖(すなわち、PAM配列の逆相補体)の領域に隣接していない(例えば、ミスマッチは、ガイドRNAのDNA標的化セグメントの5’末端にあるか、またはミスマッチは、PAM配列に対応する相補鎖の領域から、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、もしくは19塩基対離れている)。
【0148】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的であるヌクレオチドの2つのストレッチを含み得る。タンパク質結合セグメントの相補的ヌクレオチドは、ハイブリダイズして二本鎖RNA二重鎖(dsRNA)を形成する。目的のgRNAのタンパク質結合セグメントは、Casタンパク質と相互作用し、gRNAは、結合したCasタンパク質を、DNA標的化セグメントを介して標的DNA内の特定のヌクレオチド配列に配向する。
【0149】
単一ガイドRNAは、DNA標的化セグメントおよび足場配列(すなわち、ガイドRNAのタンパク質結合またはCas結合配列)を含み得る。例えば、そのようなガイドRNAは、3’足場配列に結合された5’DNA標的化セグメントを有することができる。例示的な足場配列は、以下を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる:GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU(バージョン1、配列番号67)、GUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン2、配列番号68)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン3、配列番号69)、GUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン4、配列番号70)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU(バージョン5、配列番号102)、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(バージョン6、配列番号103)、またはGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUU(バージョン7、配列番号104)。本明細書に開示されるガイドRNA標的配列のうちのいずれかを標的化するガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端の例示的なガイドRNA足場配列のうちのいずれかに融合したガイドRNAの5’末端のDNA標的化セグメントを含み得る。すなわち、本明細書に開示されるDNA標的化セグメント(ガイドRNA)のうちのいずれかは、上記の足場配列のうちのいずれか1つの5’末端に結合して、単一ガイドRNA(キメラガイドRNA)を形成することができる。このようなDNA標的化セグメントには、例えば、配列番号44~46(マウスBanf1)、配列番号27~30(ヒトBANF1)、配列番号47~49(マウスPpp2ca)、配列番号31~32(ヒトPPP2CA)、配列番号50~52(マウスAnkle2)、および配列番号38(ヒトANKLE2)が含まれる。
【0150】
ガイドRNAは、追加の望ましい特徴(例えば、修飾または調節された安定性;細胞内標的化;蛍光標識による追跡;タンパク質またはタンパク質複合体の結合部位など)を提供する修飾または配列を含み得る。そのような修飾の例には、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニレートキャップ(m7G))、3’ポリアデニル化テール(すなわち、3’ポリ(A)テール)、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質および/またはタンパク質複合体による調節された安定性および/または調節されたアクセス可能性を可能にするため)、安定性制御配列、dsRNA二重鎖(すなわち、ヘアピン)を形成する配列、RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する修飾または配列、追跡を提供する修飾または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を容易にする部分への複合体化、蛍光検出を可能にする配列など)、タンパク質(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)の結合部位を提供する修飾または配列、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。修飾の他の例には、操作されたステムループ二重構造、操作されたバルジ領域、ステムループ二重構造の操作されたヘアピン3’、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、US2015/0376586を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。バルジは、crRNA様領域と最小のtracrRNA様領域で構成される二重鎖内のヌクレオチドの対になっていない領域であり得る。バルジは、二重鎖の片側に、対になっていない5’-XXXY-3’を含むことができ、Xは、任意のプリンであり、Yは、反対側の鎖のヌクレオチドおよび二重鎖の反対側の対になっていないヌクレオチドの領域とゆらぎ対を形成し得るヌクレオチドであり得る。
【0151】
修飾されていない核酸は、分解されやすい場合がある。外因性核酸はまた、自然免疫応答を誘導し得る。修飾は、安定性を導入し、免疫原性を低減するのに役立ち得る。ガイドRNAは、例えば、以下:(1)ホスホジエステル骨格結合において、非結合リン酸酸素の一方または両方および/もしくは結合リン酸酸素の1つ以上の改変または置換、(2)リボース糖の2’ヒドロキシルの改変または置換などのリボース糖の構成要素の改変または置換、(3)リン酸部分のデホスホリンカーによる置換、(4)天然発生型核酸塩基の修飾または置換、(5)リボース-リン酸骨格の置換または修飾、(6)オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の修飾(例えば、末端リン酸基の除去、修飾、もしくは置換、または部分の複合体化)、ならびに(7)糖の修飾のうちの1つ以上を含む修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドを含み得る。他の可能なガイドRNA修飾には、ウラシルまたはポリ-ウラシルトラクトの修飾または置換が含まれる。例えば、WO2015/048577およびUS2016/0237455を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。同様の修飾を、Cas mRNAなどのCasコード核酸に行うことができる。例えば、Cas mRNAは、同義のコドンを使用してウリジンを枯渇させることによって修飾することができる。
【0152】
一例として、ガイドRNAの5’または3’末端のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含み得る(例えば、塩基は、ホスホロチオエート基である修飾リン酸基を有し得る)。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’または3’末端の2、3、または4つの末端ヌクレオチド間のホスホロチオエート結合を含み得る。別の例として、ガイドRNAの5’および/または3’末端のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾を有し得る。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’および/または3’末端(例えば、5’末端)の2、3、または4つの末端ヌクレオチドに2’-O-メチル修飾を含み得る。例えば、WO2017/173054A1およびFinn et al.(2018)Cell Rep.22:(9):2227-2235を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の可能な修飾は、本明細書の他の場所でより詳細に説明されている。特定の例では、ガイドRNAには、最初の3つの5’および3’末端RNA残基に2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合が含まれる。そのような化学修飾は、例えば、エキソヌクレアーゼからガイドRNAへのより優れた安定性および保護を提供し、それらが修飾されていないガイドRNAよりも長く細胞内に持続することを可能にする。そのような化学修飾はまた、例えば、RNAを積極的に分解し得るかまたは細胞死につながる免疫カスケードを引き起こし得る自然細胞内免疫応答から保護することもできる。
【0153】
ガイドRNAは、任意の形態で提供され得る。例えば、gRNAは、2つの分子(別個のcrRNAおよびtracrRNA)または1つの分子(sgRNA)のいずれかとしてRNAの形態で、および任意にCasタンパク質との複合体の形態で提供され得る。gRNAはまた、gRNAをコードするDNAの形態で提供され得る。gRNAをコードするDNAは、単一RNA分子(sgRNA)または別個のRNA分子(例えば、別個のcrRNAおよびtracrRNA)をコードすることができる。後者の場合、gRNAをコードするDNAは、1つのDNA分子として、またはcrRNAおよびtracrRNAをそれぞれコードする別個のDNA分子として提供され得る。
【0154】
gRNAがDNAの形態で提供される場合、gRNAは、一時的、条件付き、または構成的に細胞内で発現され得る。gRNAをコードするDNAは、細胞のゲノムにおいて安定して組み込まれ、細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結され得る。あるいは、gRNAをコードするDNAは、発現構築物中のプロモーターに作動可能に連結され得る。例えば、gRNAをコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸などの異種核酸を含むベクター内にあり得る。あるいは、それは、Casタンパク質をコードする核酸を含むベクターとは別個のベクターまたはプラスミドであり得る。そのような発現構築物において使用され得るプロモーターには、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発達的に制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが含まれる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであり得る。そのようなプロモーターはまた、例えば、双方向プロモーターであり得る。好適なプロモーターの特定の例には、ヒトU6プロモーター、ラットU6ポリメラーゼIIIプロモーター、またはマウスU6ポリメラーゼIIIプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターを挙げられる。
【0155】
あるいは、gRNAは、他の様々な方法で調製され得る。例えば、gRNAは、例えば、T7 RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写によって調製され得る(例えば、WO2014/089290およびWO2014/065596を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ガイドRNAはまた、化学的合成によって調製された合成的に生成された分子であり得る。例えば、ガイドRNAを化学的に合成して、2’-O-メチル類似体および3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を最初の3つの5’および3’末端RNA残基に含めてもよい。
【0156】
ガイドRNA(またはガイドRNAをコードする核酸)は、1つ以上のガイドRNA(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上のガイドRNA)およびガイドRNAの安定性を増加させる(例えば、所与の貯蔵条件下(例えば、-20℃、4℃、または周囲温度)で、分解生成物が、出発核酸またはタンパク質の0.5重量%を下回るままであるような、閾値を下回る期間を延長するか、またはインビボで安定性を増加させる)担体を含む組成物中にあり得る。そのような担体の非限定的な例には、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール-酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コキレート(cochleates)、および脂質微小管が挙げられる。そのような組成物は、Cas9タンパク質などのCasタンパク質、またはCasタンパク質をコードする核酸をさらに含み得る。
【0157】
ガイドRNA標的配列。ガイドRNAの標的DNAには、結合に十分な条件が存在する場合に、gRNAのDNA標的セグメントが結合するDNAに存在する核酸配列が含まれる。好適なDNA/RNA結合条件には、細胞に通常存在する生理学的条件が含まれる。他の好適なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当該技術分野で知られている(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。gRNAに相補的であり、かつそれとハイブリダイズする標的DNAの鎖は、「相補的鎖」と呼ばれることができ、「相補的鎖」に相補的である(したがって、Casタンパク質またはgRNAに相補的ではない)標的DNAの鎖は、「非相補鎖」または「テンプレート鎖」と呼ばれることができる。
【0158】
標的DNAは、ガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖上の配列と非相補鎖上の対応する配列(例えば、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する)の両方を含む。本明細書で使用される「ガイドRNA標的配列」という用語は、具体的には、特に、ガイドRNAが相補鎖上でハイブリダイズする配列に対応する(すなわち、その逆相補体)非相補鎖上の配列を指す。すなわち、ガイドRNA標的配列は、PAMに隣接する非相補鎖上の配列を指す(例えば、Cas9の場合、PAMの上流または5’)。ガイドRNA標的配列は、ガイドRNAのDNA標的化セグメントと同等であるが、ウラシルの代わりにチミンを含む。一例として、SpCas9酵素のガイドRNA標的配列は、非相補鎖上の5’-NGG-3’PAMの上流の配列を指し得る。ガイドRNAは、標的DNAの相補鎖に対して相補性を有するように設計されており、ガイドRNAのDNA標的化セグメントと標的DNAの相補鎖との間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。ガイドRNAが本明細書でガイドRNA標的配列を標的とするものとして言及される場合、それは、ガイドRNAが、非相補鎖上のガイドRNA標的配列の逆相補体である標的DNAの相補鎖配列にハイブリダイズすることを意味する。
【0159】
標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、任意のポリヌクレオチドを含むことができ、例えば、細胞の核もしくは細胞質内、またはミトコンドリアもしくは葉緑体などの細胞の細胞小器官内に位置し得る。標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、細胞に対して内因性または外因性の任意の核酸配列であり得る。ガイドRNA標的配列は、遺伝子生成物(例えば、タンパク質)をコードする配列もしくは非コード配列(例えば、調節配列)であり得るか、または両方を含み得る。
【0160】
Casタンパク質による標的DNAの部位特異的結合および切断は、(i)ガイドRNAと標的DNAの相補鎖との間の塩基対合相補性、および(ii)標的DNAの非相補鎖にある、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの両方によって決定される位置で起こり得る。PAMは、ガイドRNA標的配列に隣接し得る。任意に、ガイドRNA標的配列は、3’末端でPAMが隣接し得る(例えば、Cas9の場合)。あるいは、ガイドRNA標的配列は、5’末端でPAMが隣接し得る(例えば、Cpf1の場合)。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流または下流(例えば、ガイドRNA標的配列内)の約1~約10または約2~約5塩基対(例えば、3塩基対)であり得る。SpCas9の場合、PAM配列(すなわち、非相補鎖上)は、5’-N1GG-3’であり得、N1は、任意のDNAヌクレオチドであり、PAMは、標的DNAの非相補鎖上のガイドRNA標的配列の3’のすぐ近くである。したがって、相補鎖上のPAMに対応する(すなわち、逆相補体)配列は、5’-CCN2-3’であり、N2は、任意のDNAヌクレオチドであり、ガイドRNAのDNA標的化セグメントが標的DNAの相補鎖にハイブリダイズする配列の5’のすぐ近くである。いくつかのそのような場合、N1およびN2は、相補的であることができ、N1~N2塩基対は、任意の塩基対であり得る(例えば、N1=CおよびN2=G、N1=GおよびN2=C、N1=AおよびN2=T、またはN1=TおよびN2=A)。S.aureus由来のCas9の場合、PAMは、NNGRRTまたはNNGRRであり得、Nは、A、G、C、またはTであり得、Rは、GまたはAであり得る。C.jejuni由来のCas9の場合、PAMは、例えば、NNNNACACまたはNNNNRYACであり得、Nは、A、G、C、またはTであり得、Rは、GまたはAであり得る。いくつかの場合(例えば、FnCpf1の場合)では、PAM配列は、5’の上流にあり、配列5’-TTN-3’を有し得る。
【0161】
ガイドRNA標的配列の例は、SpCas9タンパク質によって認識されるNGGモチーフの直前の20ヌクレオチドのDNA配列である。例えば、ガイドRNA標的配列+PAMの2つの例は、GN19NGG(配列番号71)またはN20NGG(配列番号72)である。例えば、WO2014/165825を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。5’末端のグアニンは、細胞内のRNAポリメラーゼによる転写を促進することができる。ガイドRNA標的配列+PAMの他の例は、インビトロでのT7ポリメラーゼによる効率的な転写を促進するための、5’末端に2つのグアニンヌクレオチドを含み得る(例えば、GGN20NGG;配列番号73)。例えば、WO2014/065596を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。他のガイドRNA標的配列+PAMは、5’GまたはGGおよび3’GGまたはNGGを含む、配列番号71~73の4~22ヌクレオチド長を有し得る。さらに他のガイドRNA標的配列+PAMは、配列番号71~73の14~20ヌクレオチド長を有し得る。BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のガイドRNA標的配列の例には、配列番号1~4(ヒトBANF1)、配列番号5~6(ヒトPPP2CA)、配列番号12(ヒトANKLE2)、配列番号18~20(マウスBanf1)、配列番号21~23(マウスPpp2ca)、および配列番号24~26(マウスAnkle2)が含まれる。
【0162】
標的DNAにハイブリダイズしたCRISPR複合体の形成は、ガイドRNA標的配列(すなわち、標的DNAの非相補鎖上のガイドRNA標的配列およびガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖上の逆相補体)に対応する領域内または領域の近くの標的DNAの一方または両方の鎖の切断をもたらし得る。例えば、切断部位は、ガイドRNA標的配列内にあり得る(例えば、PAM配列に対して定義された位置に)。「切断部位」は、Casタンパク質が一本鎖切断または二本鎖切断を生成する標的DNAの位置を含む。切断部位は、一本鎖のみ(例えば、ニッカーゼが使用される場合)または二本鎖DNAの両方の鎖上にあり得る。切断部位は、両方の鎖上の同じ位置にあり得るか(平滑末端を生成する;例えば、Cas9)、または各鎖上の異なる部位にあり得る(千鳥状の末端を生成する(すなわち、オーバーハング);例えば、Cpf1)。千鳥状の末端は、例えば、各々が異なる鎖上の異なる切断部位で一本鎖切断を生成し、それによって二本鎖切断を生成する2つのCasタンパク質を使用することによって生成され得る。例えば、第1のニッカーゼは、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖上に一本鎖切断を作成することができ、第2のニッカーゼは、オーバーハング配列が作成されるようにdsDNAの第2の鎖上に一本鎖切断を作成することができる。いくつかの場合では、第1の鎖のニッカーゼのガイドRNA標的配列または切断部位は、第2の鎖のニッカーゼのガイドRNA標的配列または切断部位から少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、または1,000塩基対分離されている。
【0163】
2.アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、siRNA、またはshRNA
アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)を使用して、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を減少させることもできる。このようなアンチセンスRNA、siRNA、またはshRNAは、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2 mRNAの任意の領域を標的にするように設計できる。
【0164】
「アンチセンスRNA」という用語は、細胞内で転写されたメッセンジャーRNA鎖に相補的な一本鎖RNAを指す。「低分子干渉RNA(siRNA)」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する典型的な二本鎖RNA分子を指す。これらの分子は長さが異なり(一般に18~30塩基対の間)、アンチセンス鎖の標的mRNAに対して様々な程度の相補性を含む。すべてではないが、一部のsiRNAは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’または3’末端に不対オーバーハング塩基を有している。「siRNA」という用語は、2本の別々の鎖の二本鎖、ならびに二本鎖領域を含むヘアピン構造を形成することができる一本鎖を含む。二本鎖構造は、例えば、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド未満の長さであり得る。例えば、二本鎖構造は、長さが約21~23ヌクレオチド、長さが約19~25ヌクレオチド、または長さが約19~23ヌクレオチドであり得る。「ショートヘアピンRNA(shRNA)」という用語は、ヘアピン構造で自己ハイブリダイズし、処理時にRNA干渉(RNAi)経路を誘導できるRNA塩基の一本鎖を指す。これらの分子の長さは様々である(通常、約50~90ヌクレオチドの長さ、場合によっては最大250ヌクレオチドを超える長さである(例えば、microRNAに適合したshRNAの場合))。shRNA分子は細胞内で処理されてsiRNAを形成し、それが遺伝子発現をノックダウンする可能性がある。shRNAはベクターに組み込むことができる。「shRNA」という用語は、短いヘアピンRNA分子が転写される可能性のあるDNA分子も指す。
【0165】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNAi剤を使用して、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2の発現を減少させることもできる。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤は、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2 mRNAの任意の領域を標的とするように設計することができる。
【0166】
「RNAi剤」は、配列特異的方法で、メッセンジャーRNA(mRNA)などの標的RNAの翻訳の分解または阻害を促進することができる小さい二本鎖RNAまたはRNA様(例えば、化学的に修飾されたRNA)オリゴヌクレオチド分子を含む組成物である。RNAi剤のオリゴヌクレオチドは、結合したヌクレオシドのポリマーであり、それぞれを独立して修飾することも、修飾しないこともできる。RNAi剤は、RNA干渉メカニズムを介して機能する(つまり、哺乳動物細胞のRNA干渉経路機構(RNA誘導サイレンシング複合体またはRISC)との相互作用を介してRNA干渉を誘導する)。RNAi剤は、その用語が本明細書で使用されるように、主にRNA干渉メカニズムを介して作用すると考えられているが、開示されたRNAi剤は、特定の経路または作用メカニズムに拘束または限定されない。本明細書に開示されるRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、これらに限定されないが、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、およびダイサー基質が含まれる。本明細書に記載のRNAi剤のアンチセンス鎖は、標的RNAの配列(すなわち、標準的な命名法を使用して一連の文字で記載された核酸塩基またはヌクレオチドの連続または順序)に少なくとも部分的に相補的である。
【0167】
一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)とRNA干渉(RNAi)は、オリゴヌクレオチドがワトソン-クリック塩基対を介して標的RNAに結合するという基本原理を共有している。理論に縛られることを望まないが、RNAiの間に、低分子RNA二重鎖(RNAi剤)がRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合し、一方の鎖(パッセンジャー鎖)が失われ、残りの鎖(ガイド鎖)が失われるRISCと協力して相補的RNAに結合する。次に、RISCの触媒成分であるアルゴノート2(Ago2)が標的RNAを切断する。ガイド鎖は常に相補的センス鎖またはタンパク質(RISC)のいずれかに関連付けられている。対照的に、ASOは生き残り、一本鎖として機能する必要がある。ASOは標的RNAに結合し、リボソームまたはスプライシング因子などの他の因子がRNAに結合するのをブロックしたり、ヌクレアーゼなどのタンパク質を動員したりする。目的の作用メカニズムに基づいて、ASOに対して様々な改変と標的領域が選択される。ギャップマーは、DNAの中央の8~10塩基ギャップに隣接する各末端に2~5個の化学修飾ヌクレオチド(例えば、LNAまたは2’-MOE)を含むASOオリゴヌクレオチドである。標的RNAに結合した後、DNA-RNAハイブリッドはRNase Hの基質として機能する。
【0168】
ASOはDNAオリゴであり、通常15~25塩基長で、目的のRNAに対してアンチセンス方向に設計されている。ASOのターゲットRNAへのハイブリダイゼーションは、RNAのRNase H切断を仲介し、mRNAのタンパク質翻訳を妨げる可能性がある。ヌクレアーゼ耐性を高めるために、ホスホロチオエート(PS)修飾をオリゴに加えることができる。ホスホロチオエート結合はまた、血清タンパク質への結合を促進し、ASOの生物学的利用能を高め、生産的な細胞取り込みを促進する。ホスホロチオエートでは、硫黄原子がオリゴリン酸骨格の非架橋酸素に置き換わる。ASOは、DNA塩基と修飾RNA塩基の両方を含むキメラである可能性がある。キメラアンチセンスデザインにおける2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、またはアフィニティープラスロックド核酸(Affinity Plus Locked Nucleic Acid)塩基などの修飾RNAの使用がヌクレアーゼの安定性とアンチセンスオリゴの標的RNAへの親和性(Tm)の両方を増加させる。ただし、これらの修飾はRNase H切断を活性化しない(つまり、糖修飾RNA様ヌクレオチド(2’-MOEなど)で完全に構成されるASOは、相補的RNAのRNase H切断をサポートしない)。したがって、1つのアンチセンス戦略は、RNase-H活性化ドメインを保持するキメラアンチセンスオリゴに2’-O修飾RNAまたはアフィニティープラスロックド核酸塩基を組み込む「ギャップマー」設計である。標準的なギャップマーは、RNase H切断を誘導するのに十分なPS修飾DNA塩基の中央領域を保持する。これらの塩基は、標的への結合親和性を高める2’修飾のブロックが両側に隣接している。例えば、ギャップマーは、RNase H切断の誘導を可能にするデオキシヌクレオチドの中央セクションを含むことができ、中央部分は、ヌクレアーゼ分解から中央セクションを保護する2’-O-アルキル修飾リボヌクレオチドのブロックに隣接している。細胞に送達されると、ASOは核に入り、相補的な内因性RNA標的に結合する。ASOギャップマーの標的RNAへのハイブリダイゼーションは、中央領域にDNA:RNAヘテロ二本鎖を形成し、これが酵素RNase H1による切断の基質になる。
【0169】
一例では、5-10-5ギャップマーであるASOが使用され、DNAの中央10ヌクレオチドコアに隣接する5つの化学修飾ヌクレオチドの5’および3’ウィングが含まれている。特定の例では、5-10-5ギャップマーであるASOが使用され、ホスホロチオエート骨格、ウィングの2’メトキシエチル修飾塩基(両端から5ヌクレオチド)、および未修飾DNA塩基の10ヌクレオチドコアが含まれている。例えば、
図40を参照されたい。
【0170】
一例では、mBanf1を標的とするASOは、配列番号215~236のいずれか1つに示される親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。別の例では、mBanf1を標的とするASOは、配列番号215、216、220~223、225、230~232、234、および235のうちのいずれか1つに記載の親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。そのような改変は、例えば、以下のうちの1つ以上を含み得る:1つ以上のRNA塩基の1つ以上のDNA塩基への置換、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加、または例えば2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNAによる1つ以上の塩基の置換。一例では、mBanf1を標的とするASOは、配列番号105~126のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含むことができる。別の例では、mBanf1を標的とするASOは、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、および125のうちのいずれか1つに記載の配列またはそれらの改変バージョンを含むことができる。そのような修飾は、例えば、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加および/または2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNA塩基による1つ以上の塩基の置換を含み得る。別の例では、mBanf1を標的とするASOは、表13に記載されている配列および/または修飾パターンのいずれかを含むことができる。上記の配列のいずれにおいても、最初の5ヌクレオチドまたは最後の5ヌクレオチドの任意の「T」を「U」に置き換えることができる。
【0171】
一例では、mPpp2caを標的とするASOは、配列番号237~278のいずれか1つに記載の親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。別の例では、mPpp2caを標的とするASOは、配列番号240、243、246、247、260、262、263、265、268~270、272、275、および276のうちのいずれか1つに記載の親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。そのような改変は、例えば、以下のうちの1つ以上を含み得る:1つ以上のRNA塩基の1つ以上のDNA塩基への置換、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加、または例えば2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNAによる1つ以上の塩基の置換。一例では、mPpp2caを標的とするASOは、配列番号127~168のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含むことができる。別の例では、mPpp2caを標的とするASOは、配列番号130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、および166のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含むことができる。そのような修飾は、例えば、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加および/または2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNA塩基による1つ以上の塩基の置換を含み得る。別の例では、mPpp2caを標的とするASOは、表14に記載されている配列および/または修飾パターンのいずれかを含むことができる。上記の配列のいずれにおいても、最初の5ヌクレオチドまたは最後の5ヌクレオチドの任意の「T」を「U」に置き換えることができる。
【0172】
一例では、mAnkle2を標的とするASOは、配列番号279~324のうちのいずれか1つに記載の親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。別の例では、mAnkle2を標的とするASOは、配列番号279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のうちのいずれか1つに記載の親アンチセンスRNA配列の改変バージョンを含むことができる。そのような改変は、例えば、以下のうちの1つ以上を含み得る:1つ以上のRNA塩基の1つ以上のDNA塩基への置換、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加、または例えば2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNAによる1つ以上の塩基の置換。一例では、mAnkle2を標的とするASOは、配列番号169~214のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含むことができる。別の例では、mAnkle2を標的とするASOは、配列番号169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、および213のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含むことができる。そのような修飾は、例えば、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加および/または2’-O-メトキシ-エチル(2’-MOE)RNA、2’-O-メチル(2’OMe)RNA、もしくはアフィニティープラスロックド核酸塩基などの修飾されたRNA塩基による1つ以上の塩基の置換を含み得る。別の例では、mAnkle2を標的とするASOは、表15に記載されている配列および/または修飾パターンのいずれかを含むことができる。上記の配列のいずれにおいても、最初の5ヌクレオチドまたは最後の5ヌクレオチドの任意の「T」を「U」に置き換えることができる。
【0173】
III.改善されたタウオパチーモデルを作製する方法およびタウオパチーモデルにおいてタウ凝集を加速するための方法
本明細書の他の場所で詳細に開示されている改善されたタウオパチーモデルを作製する方法も提供される。そのような方法は、既存のタウオパチーモデル(例えば、外因性のヒトタウコード配列を含むトランスジェニック細胞、組織、または動物)から始めることができる。すなわち、そのような方法は、既存のタウオパチーモデル(例えば、タウオパチーモデル非ヒト動物、タウオパチーモデル動物組織、またはタウオパチーモデル動物細胞)においてタウ凝集を加速または悪化させるための方法であり得る。例えば、そのような方法は、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を、既存のタウオパチーモデル細胞(複数可)、組織、または動物(例えば、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団)に、導入することを含むことができる。本明細書の他の場所でより詳細に論じられているタウオパチーモデルのいずれかを使用することができる。
【0174】
タウオパチーの様々なモデルが開発されている。これらには、細胞/細胞培養モデル(非神経細胞株、PC12、SY5Y、CN1.4細胞などの神経細胞株、一次神経細胞)、組織モデル(例えば、器官型脳切片培養などの脳切片培養)、および全動物トランスジェニックモデル(例えば、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、またはマウス)が含まれる。例えば、Hall et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:224-239,Brandt et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:331-354、およびLee et al.(2005)Biochim.Biophys.Acta 1739:251-259を参照されたく、それらの各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的には、そのようなモデルは、野生型または変異型のヒトタウアイソフォームが様々なプロモーターの制御下で過剰発現されて神経原線維変化を引き起こすトランスジェニックモデルである。細胞ベースのモデルには、操作へのアクセス性と柔軟性が高いという利点があるが、動物モデル全体(トランスジェニックマウスモデルなど)はより完全で、人間の病気により直接的に関連している。
【0175】
1つの特定のタウオパチーモデルは、PS19(タウ P301S(系列PS19);PS19Tg;B6;C3-Tg(Prnp-MAPT*P301S)PS19Vle/J)マウス系列である。この系統の遺伝的背景はC57BL/6xC3Hである。PS19トランスジェニックマウスは、マウスプリオンタンパク質(Prnp)プロモーターによって駆動される変異型ヒト微小管関連タンパク質タウMAPTを発現する。導入遺伝子は、疾患に関連するP301S変異をコードし、4つの微小管結合ドメインと1つのN末端インサート(4R/1N)を含む。Chr3:140354280-140603283(ビルドGRCm38/mm10)に導入遺伝子が挿入され、既知の遺伝子に影響を与えない249Kbの欠失が発生した。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるGoodwin et al.(2019)Genome Res.29(3):494-505を参照されたい。変異型ヒトタウの発現は、内因性マウスタンパク質の発現よりも5倍高い。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるYoshiyama et al.(2007)Neuron 53(3):337-351を参照されたい。PS19マウスは、生後8ヶ月までにニューロンの喪失と脳の萎縮を発症する。それらはまた、新皮質、扁桃体、海馬、脳幹、および脊髄において、神経原線維変化様封入体として知られる広範なタウ凝集体を発達させる。Yoshiyama et al.(2007)を参照されたい。組織学的方法による明白なタウ病理の出現の前に、これらのマウスの脳はタウ播種活性を示すことが示された。すなわち、脳ホモジネートに存在するタウ凝集体は、おそらくプリオンのようなメカニズムを介して、さらなるタウ凝集を誘発する可能性がある。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Holmes(2014)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111(41):E4376-E4385を参照されたい。
【0176】
他のそのような方法は、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に導入するだけでなく、外因性微小管関連タンパク質タウコード配列(例えば、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列)にも導入することを含むことができる。そのようなコード配列の例は、改善されたタウオパチーモデルに関するセクションなど、本明細書の他の場所でより詳細に議論されている。そのような配列はどれでも使用できる。
【0177】
薬剤(および任意選択でタウコード配列)は、任意の既知の手段によって導入することができる。「導入すること」は、配列が、組織または動物内の細胞(複数可)または細胞(複数可)の内部にアクセスするような方法で、細胞または動物に薬剤(例えば、核酸またはタンパク質)を提示することが含まれる。本明細書で提供される方法は、薬剤を導入するための特定の方法に依存せず、核酸またはタンパク質が少なくとも1つの細胞の内部にアクセスすることのみに依存する。核酸およびタンパク質を様々な細胞型に導入するための方法は既知であり、例えば、安定したトランスフェクション法、一過性トランスフェクション法、およびウイルス媒介法が含まれる。
【0178】
非ヒト動物または細胞に導入された分子(例えば、Casタンパク質またはガイドRNAまたはRNAi剤またはASO)は、導入された分子の安定性を増加させる担体(例えば、所与の貯蔵条件下(例えば、-20℃、4℃、または周囲温度)での、分解産物が閾値未満、例えば出発核酸またはタンパク質の0.5重量%未満のままである期間を延長する、またはインビボでの安定性を増加させる)を含む組成物で提供することができる。そのような担体の非限定的な例には、ポリ(乳酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール-酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コキレート(cochleates)、および脂質微小管が挙げられる。
【0179】
細胞または非ヒト動物への分子(例えば、核酸またはタンパク質)の導入を可能にするために、様々な方法および組成物が本明細書で提供される。分子を様々な細胞型に導入するための方法は既知であり、例えば、安定したトランスフェクション法、一過性トランスフェクション法、およびウイルス媒介法が含まれる。
【0180】
トランスフェクションプロトコル、ならびに分子(例えば、核酸またはタンパク質)を細胞に導入するためのプロトコルは異なり得る。非限定的なトランスフェクション法には、リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム(Graham et al.(1973)Virology 52(2):456-67、Bacchetti et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74 (4): 1590-4、およびKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York: W. H. Freeman and Company. pp.96-97、これらのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、デンドリマー、またはDEAE-デキストランやポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用する化学ベースのトランスフェクション法が含まれる。非化学的方法には、電気穿孔法、ソノポレーション、および光トランスフェクションが含まれる。粒子ベースのトランスフェクションには、遺伝子銃の使用、またはマグネットアシストトランスフェクション(Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology 7,277-28、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。ウイルス法もトランスフェクションに使用することができる。
【0181】
細胞への分子(例えば、核酸またはタンパク質)の導入はまた、電気穿孔法、細胞質内注射、ウイルス感染、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、トランスフェクション、脂質媒介トランスフェクション、またはヌクレオフェクションによって媒介され得る。ヌクレオフェクションは、核酸基質を細胞質だけでなく核膜を介して核に送達することを可能にする改善された電気穿孔法技術である。さらに、本明細書に開示される方法でのヌクレオフェクションの使用は、典型的には、通常の電気穿孔法よりもはるかに少ない細胞を必要とする(例えば、通常の電気穿孔法による700万に対してわずか約200万)。一例では、ヌクレオフェクションは、LONZA(登録商標)NUCLEOFECTOR(商標)システムを使用して行われる。
【0182】
細胞への分子(例えば、核酸またはタンパク質)の導入は、マイクロインジェクションによっても達成され得る。mRNAのマイクロインジェクションは、好ましくは細胞質へ(例えば、mRNAを翻訳機構に直接送達するために)のものであるが、一方で、タンパク質またはタンパク質をコードするDNAのマイクロインジェクションは、好ましくは、核へのものである。あるいは、マイクロインジェクションは、核および細胞質の両方への注射によって実施することができ、針を最初に核に導入し、最初の量を注射することができ、細胞から針を取り除きながら、2番目の量を細胞質に注射することができる。マイクロインジェクションを実施する方法は周知である。例えば、Nagy et al.(Nagy A,Gertsenstein M,Vintersten K,Behringer R.,2003,Manipulating the Mouse Embryo.Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Meyer et al.(2010) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107:15022-15026およびMeyer et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109:9354-9359を参照されたく、それぞれがすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
分子(例えば、核酸またはタンパク質)を細胞に導入するための他の方法には、例えば、ベクター送達、粒子媒介送達、エクソソーム媒介送達、脂質ナノ粒子媒介送達、細胞透過性ペプチド媒介送達、または埋め込み型デバイス媒介配達が含まれ得る。インビボで細胞を修飾するために対象に核酸またはタンパク質を投与する方法は、本明細書の他の場所に開示されている。具体的な例として、分子(例えば、核酸またはタンパク質)は、ポリ(乳酸)(PLA)マイクロスフェア、ポリ(D、L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)マイクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質渦巻状物、または脂質微小管などの担体中で、細胞または非ヒト動物に導入することができる。非ヒト動物への送達のいくつかの具体的な例には、流体力学的送達、ウイルス媒介送達(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)媒介送達)、および脂質ナノ粒子媒介送達が含まれる。
【0184】
一例では、薬剤(および場合によりタウコード配列)は、レンチウイルス形質導入またはアデノ随伴ウイルス形質導入などのウイルス形質導入を介して導入することができる。
【0185】
いくつかの方法では、CRISPR/Casシステムの構成要素が非ヒト動物または細胞に導入される。ガイドRNAは、RNA(例えば、インビトロ転写されたRNA)の形態で、またはガイドRNAをコードするDNAの形態で非ヒト動物または細胞に導入することができる。DNAの形態で導入されると、ガイドRNAをコードするDNAは、非ヒト動物の細胞内で活性のあるプロモーターに作動可能に連結することができる。例えば、ガイドRNAは、AAVを介して送達され、U6プロモーターの下でインビボで発現できる。そのようなDNAは、1つ以上の発現コンストラクト中にあり得る。例えば、そのような発現コンストラクトは、単一の核酸分子の構成要素であり得る。代替的に、それらは、2つ以上の核酸分子の間で任意の組み合わせで分離することができる(すなわち、1つ以上のCRISPR RNAをコードするDNAおよび1つ以上のtracrRNAをコードするDNAは、別個の核酸分子の構成要素であり得る)。
【0186】
同様に、Casタンパク質は任意の形態で提供してもよい。例えば、Casタンパク質は、gRNAと複合体を形成したCasタンパク質などのタンパク質の形態で提供してもよい。代替的に、Casタンパク質は、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))またはDNAなどの、Casタンパク質をコードする核酸の形態で提供してもよい。任意に、Casタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞または生物におけるタンパク質への効率的な翻訳のためにコドン最適化することができる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比較して、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞においてより頻度高く使用される代替コドンへと改変することができる。Casタンパク質をコードする核酸が非ヒト動物に導入されると、Casタンパク質は、一時的、条件付き、または構成的に細胞内で発現され得る。
【0187】
Casタンパク質またはガイドRNAをコードする核酸は、発現コンストラクト中のプロモーターに作動可能に連結され得る。発現構築物は、遺伝子または他の目的の核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を指示することができ、かつそのような目的の核酸配列を標的細胞に移すことができる任意の核酸構築物を含む。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、1つ以上のgRNAをコードするDNAを含むベクター内に存在してもよい。あるいは、それは、1つ以上のgRNAをコードするDNAを含むベクターとは別のベクターまたはプラスミドであってもよい。発現コンストラクトにおいて使用することができる適切プロモーターとしては、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、ウサギ細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生が制限された前駆細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、または1細胞期胚のうちの1つ以上において活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件付きプロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであり得る。任意選択で、プロモーターは、一方向のCasタンパク質と他の方向のガイドRNAの両方の発現を駆動する双方向プロモーターであってもよい。このような双方向プロモーターは、(1)遠位配列要素(DSE)、近位配列要素(PSE)、およびTATAボックスの3つの外部制御要素を含む完全な従来の一方向Pol IIIプロモーター、ならびに(2)DSEの5’末端に逆方向に融合されたPSEおよびTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターで構成してもよい。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSEとTATAボックスに隣接しており、プロモーターは、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを追加することによって逆方向の転写が制御されるハイブリッドプロモーターを作成することにより、双方向にすることができる。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2016/0074535を参照されたい。双方向プロモーターを使用してCasタンパク質とガイドRNAをコードする遺伝子を同時に発現させることにより、コンパクトな発現カセットを生成して送達を容易にすることができる。
【0188】
ヌクレアーゼ剤の導入は、AAV媒介送達またはレンチウイルス媒介送達などのウイルス媒介送達によっても達成することができる。他の例示的なウイルス/ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、および単純ヘルペスウイルスが含まれる。ウイルスは、分裂細胞、非分裂細胞、または分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染できる。ウイルスは宿主ゲノムに組み込まれてもよく、または代替的に宿主ゲノムに組み込まれなくてもよい。このようなウイルスは、免疫力が低下するように操作することもできる。ウイルスは、複製可能であってもよく、複製欠損(例えば、ビリオン複製および/またはパッケージングの追加ラウンドに必要な1つ以上の遺伝子に欠陥がある)であってもよい。ウイルスは、一過性の発現、長期的な発現(例えば、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月)、または永続的な発現(例えば、Cas9および/またはgRNAの)を引き起こし得る。例示的なウイルス力価(例えば、AAV力価)には、約1012、約1013、約1014、約1015、および約1016ベクターゲノム/mLが含まれる。他の例示的なウイルス力価(例えば、AAV力価)には約1012、約1013、約1014、約1015、および約1016ベクターゲノム(vg)/kg体重が含まれる。
【0189】
ssDNA AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム、RepとCapで構成され、相補DNA鎖の合成を可能にする2つの末端逆位配列が隣接している。AAVトランスファープラスミドを構築する場合、導入遺伝子は2つのITRの間に配置され、RepとCapはトランスで供給される。RepとCapに加えて、AAVはアデノウイルス由来の遺伝子を含むヘルパープラスミドを必要とする場合がある。これらの遺伝子(E4、E2a、およびVA)はAAV複製を媒介する。例えば、トランスファープラスミド、Rep/Cap、およびヘルパープラスミドをアデノウイルス遺伝子E1+を含むHEK293細胞にトランスフェクトして、感染性AAV粒子を生成することができる。代替的に、Rep、Cap、およびアデノウイルスヘルパー遺伝子を組み合わせて単一のプラスミドとすることもできる。同様のパッケージングセルおよび方法は、レトロウイルスなどの他のウイルスにも使用できる。
【0190】
AAVの複数の血清型が確認されている。これらの血清型は、感染する細胞の種類(すなわち、それらの指向性)が異なり、特定の細胞型の優先的な形質導入を可能にする。CNS組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、およびAAV9が含まれる。心臓組織に対する血清型には、AAV1、AAV8、およびAAV9が含まれる。腎臓組織に対する血清型にはAAV2が含まれる。肺組織に対する血清型には、AAV4、AAV5、AAV6、およびAAV9が含まれる。膵臓組織に対する血清型にはAAV8が含まれる。光受容細胞に対する血清型には、AAV2、AAV5、およびAAV8が含まれる。網膜色素上皮組織に対する血清型には、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、およびAAV8が含まれる。骨格筋組織に対する血清型には、AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9が含まれる。肝臓組織に対する血清型には、AAV7、AAV8、およびAAV9、特にAAV8が含まれる。ニューロンにおける遺伝子送達のためのAAV血清型の選択性は、例えば、Hammond et al.(2017)PLoS One 12(12):e0188830で議論されており、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0191】
指向性は、キャプシドと異なるウイルス血清型からのゲノムの混合である偽型付けによってさらに洗練することができる。例えば、AAV2/5は、血清型5のキャプシドにパッケージされた血清型2のゲノムを含むウイルスを示す。偽型ウイルスの使用は、形質導入効率を改善するだけでなく、指向性を変えることができる。異なる血清型に由来するハイブリッドキャプシドを使用して、ウイルスの指向性を改変することもできる。例えば、AAV-DJには、8つの血清型由来のハイブリッドキャプシドが含まれており、インビボで幅広い細胞型にわたって高い感染力を示す。AAV-DJ8は、AAV-DJの特性を示すが、脳への取り込みが強化された別の例である。AAV血清型は、変異によっても改変できる。AAV2の変異改変の例には、Y444F、Y500F、Y730F、およびS662Vが含まれる。AAV3の変異改変の例には、Y705F、Y731F、およびT492Vが含まれる。AAV6の変異改変の例には、S663VおよびT492Vが含まれる。他の偽型/改変AAV変異体には、AAV2/1、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2.5、AAV8.2、およびAAV/SASTGが含まれる。
【0192】
導入遺伝子の発現を加速するために、自己相補的AAV(scAAV)バリアントを使用することができる。AAVは細胞のDNA複製機構に依存して、AAVの一本鎖DNAゲノムの相補鎖を合成するため、導入遺伝子の発現が遅れる可能性がある。この遅延に対処するために、感染時に自発的にアニーリングすることができる相補的配列を含むscAAVを使用することができ、宿主細胞のDNA合成の必要性を排除する。しかしながら、一本鎖AAV(ssAAV)ベクターも使用できる。
【0193】
パッケージング容量を増やすために、より長い導入遺伝子を、1つ目は3’スプライスドナー、2つ目は5’スプライスアクセプターである2つのAAVトランスファープラスミドに分割することができる。細胞の共感染時に、これらのウイルスはコンカテマーを形成し、一緒にスプライシングされ、完全長の導入遺伝子を発現させることができる。これにより、より長い導入遺伝子の発現が可能になるが、発現の効率は低下する。容量を増やすための同様の方法は、相同組換えを利用する。例えば、導入遺伝子は2つのトランスファープラスミドに分割できるが、共発現が相同組換えと全長導入遺伝子の発現を誘導するように、実質的な配列の重複がある。
【0194】
核酸とタンパク質の導入は、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達によっても達成できる。例えば、LNP媒介送達は、Cas mRNAとガイドRNAの組み合わせ、またはCasタンパク質とガイドRNAの組み合わせを送達するために使用することができる。このような方法による送達は、一過性のCas発現をもたらす可能性があり、生分解性脂質は、クリアランスを改善し、忍容性を改善し、免疫原性を減少させる可能性がある。脂質製剤は、生体分子を分解から保護すると同時に、細胞への取り込みを改善することができる。脂質ナノ粒子は、分子間力によって互いに物理的に結合した複数の脂質分子を含む粒子である。これらには、ミクロスフェア(単層および多層ベシクル、例えばリポソームを含む)、エマルジョン中の分散相、ミセル、または懸濁液中の内相が含まれる。そのような脂質ナノ粒子は、送達のために1つ以上の核酸またはタンパク質をカプセル化するために使用することができる。カチオン性脂質を含む製剤は、核酸などのポリアニオンを送達するのに有用である。含めることができる他の脂質は、中性脂質(すなわち、非荷電または両性イオン脂質)、陰イオン脂質、トランスフェクションを増強するヘルパー脂質、およびナノ粒子がインビボで存在できる時間を増加させるステルス脂質である。適切なカチオン性脂質、中性脂質、アニオン性脂質、ヘルパー脂質、およびステルス脂質の例は、すべての目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2016/010840A1に見出すことができる。例示的な脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質および1つ以上の他の成分を含むことができる。一例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質およびDSPCなどの中性脂質を含むことができる。別の例では、他の成分は、コレステロールなどのヘルパー脂質、DSPCなどの任意の中性脂質、およびS010、S024、S027、S031、またはS033などのステルス脂質を含むことができる。
【0195】
LNPは、以下の1つ以上またはすべてを含み得る:(i)カプセル化およびエンドソーム脱出のための脂質、(ii)安定化のための中性脂質、(iii)安定化のためのヘルパー脂質、および(iv)ステルス脂質を含む。例えば、それらの各々が、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell.22(9):2227-2235およびWO2017/173054A1を参照されたい。特定のLNPでは、カーゴはガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含むことができる。特定のLNPにおいて、カーゴは、Cas9などのCasヌクレアーゼをコードするmRNA、およびガイドRNAまたはガイドRNAをコードする核酸を含み得る。
【0196】
カプセル化およびエンドソーム脱出のための脂質は、カチオン性脂質であり得る。脂質はまた、生分解性イオン化可能脂質などの生分解性脂質であり得る。適切な脂質の一例は、3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピル(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエノアートとも呼ばれる、(9Z,12Z)-3-((4,4-ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)-2-((((3-(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)プロピルオクタデカ-9,12-ジエノアートである脂質AまたはLP01である。例えば、それらの各々が、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Finn et al.(2018)Cell.22(9):2227-2235およびWO2017/173054A1を参照されたい。適切な脂質の別の例は、((5-((ジメチルアミノ)メチル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン-8,1-ジイル)ビス(デカノアート)とも呼ばれる、((5-((ジメチルアミノ)メチル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン-8,1-ジイル)ビス(デカノアート)である脂質Bである。適切な脂質の別の例は、2-((4-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)ヘキサデカノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイル(9Z,9’Z,12Z,12’Z)-ビス(オクタデカ-9,12-ジエノアート)である脂質Cである。適切な脂質の別の例は、3-(((3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)-13-(オクタノイルオキシ)トリデシル3-オクチルウンデカノアートである脂質Dである。他の適切な脂質としては、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(Dlin-MC3-DMA(MC3)としても知られる)))が含まれる。
【0197】
本明細書に記載のLNPでの使用に適したいくつかのそのような脂質は、インビボで生分解性である。例えば、そのような脂質を含むLNPには、脂質の少なくとも75%が、8、10、12、24、もしくは48時間以内、または3、4、5、6、7、もしくは10日以内に血漿から除去されるものが含まれる。別の例として、LNPの少なくとも50%が、8、10、12、24、もしくは48時間以内、または3、4、5、6、7、もしくは10日以内に血漿から除去される。
【0198】
このような脂質は、それらが含まれる培地のpHに応じてイオン化可能であってよい。例えば、わずかに酸性の培地では、脂質はプロトン化され、したがって正電荷を帯びることができる。逆に、例えば、pHが約7.35である血液などのわずかに塩基性の媒体では、脂質はプロトン化されない可能性があり、したがって電荷を帯びない可能性がある。いくつかの実施形態では、脂質は、少なくとも約9、9.5、または10のpHでプロトン化され得る。そのような脂質が電荷を帯びる能力は、その固有のpKaに関連している。例えば、脂質は、独立して、約5.8~約6.2の範囲のpKaを有し得る。
【0199】
中性脂質は、LNPを安定化し、その加工を改善するよう機能する。適切な中性脂質の例には、様々な中性、非荷電、または双性イオン性脂質が含まれる。本開示における使用に好適な中性リン脂質の例は、5-ヘプタデシルベンゼン-1,3-ジオール(レゾルシノール)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスホコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リソホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジリノレオイルホスファチジルコリンジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルロレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リソホスファチジルエタノールアミンおよびこれらの組み合わせを含むが、これらには限定されない。例えば、中性リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、およびジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)からなる群から選択され得る。
【0200】
ヘルパー脂質には、トランスフェクションを促進する脂質が含まれる。ヘルパー脂質がトランスフェクションを強化する機序は、粒子安定性を増強することを含んでもよい。場合によっては、ヘルパー脂質が膜の融合性を高めることができる。ヘルパー脂質は、ステロイド、ステロール、およびアルキルレゾルシノールを含む。適切なヘルパー脂質の例には、コレステロール、5-ヘプタデシルレゾルシノール、およびヘミコハク酸コレステロールが含まれる。一例では、ヘルパー脂質はコレステロールまたはヘミコハク酸コレステロールであり得る。
【0201】
ステルス脂質には、ナノ粒子がインビボで存在できる時間の長さを変える脂質が含まれる。ステルス脂質は、例えば、粒子凝集を低減し、粒子サイズを制御することによって製剤化プロセスにおいて有用である。ステルス脂質は、LNPの薬物動態特性を調節し得る。適切なステルス脂質には、脂質部分に連結された親水性頭部基を有する脂質が含まれる。
【0202】
ステルス脂質の親水性頭部基は、例えば、PEG(しばしばポリ(エチレンオキシド)と呼ばれる)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリアミノ酸、およびポリN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドに基づくポリマーから選択されるポリマー部分を含んでもよい。PEGという用語は、ポリエチレングリコールまたは他のポリアルキレンエーテルポリマーを意味する。特定のLNP製剤では、PEGはPEG2000とも呼ばれるPEG-2Kであり、平均分子量は約2,000ダルトンである。例えば、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2017/173054A1を参照されたい。
【0203】
ステルス脂質の脂質部分は、例えば、独立して約C4~約C40の飽和または不飽和の炭素原子を含むアルキル鎖長を有するジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基を含むものを含むジアシルグリセロールまたはジアシルグリカミドから由来し得、ここで鎖は1つ以上の、例えばアミドまたはエステルなどの官能基を含み得る。ジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基は、1つ以上の置換アルキル基をさらに含み得る。
【0204】
一例として、ステルス脂質は、PEG-ジラウロイルグリセロール、PEG-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステアロイルグリセロール(PEG-DSPE)、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、およびPEG-ジステアロイルグリカミド、PEG-コレステロール(l-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキシアミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DSPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール、メトキシポリエチレングリコール(PEG2k-DSG)、ポリ(エチレングリコール)-2000-ジメタクリレート(PEG2k-DMA))、および1,2-ジステアリルオキシプロピル-3-アミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2k-DSA)から選択してもよい。1つの具体的な例において、ステルス脂質は、PEG2k-DMGであってよい。
【0205】
LNPは、製剤中の成分脂質の異なるそれぞれのモル比を含むことができる。CCD脂質のモル%は、例えば、約30モル%~約60モル%、約35モル%~約55モル%、約40モル%~約50モル%、約42モル%~約47モル%、または約45%であってよい。ヘルパー脂質のモル%は、例えば、約30モル%~約60モル%、約35モル%~約55モル%、約40モル%~約50モル%、約41モル%~約46モル%、または約44モル%であってよい。中性脂質のモル%は、例えば、約1モル%~約20モル%、約5モル%~約15モル%、約7モル%~約12モル%、または約9モル%であってよい。ステルス脂質のモル%は、例えば、約1モル%~約10モル%、約1モル%~約5モル%、約1モル%~約3モル%、約2モル%、または約1モル%であってよい。
【0206】
LNPは、生分解性脂質(N)の正に帯電したアミン基と、カプセル化される核酸の負に帯電したリン酸基(P)との間で異なる比を有することができる。これは、方程式N/Pで数学的に表すことができる。例えば、N/P比は、約0.5~約100、約1~約50、約1~約25、約1~約10、約1~約7、約3~約5、約4~約5、約4、約4.5、または約5であってよい。N/P比はまた、約4~約7または約4.5~約6であり得る。特定の例では、N/P比は4.5または6にすることができる。
【0207】
一部のLNPでは、カーゴはCas mRNAとgRNAを含むことができる。Cas mRNAとgRNAは、異なる比であってよい。例えば、LNP製剤は、約25:1~約1:25の範囲、約10:1~約1:10の範囲、約5:1~約1:5の範囲、または約1:1のCas mRNAとgRNAの比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:1~約1:5、または約10:1のCas mRNAとgRNA核酸の比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:10、25:1、10:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5、1:10、または1:25のCas mRNAとgRNA核酸の比を含んでもよい。代替的に、LNP製剤は、約1:1~約1:2の、Cas mRNAとgRNA核酸の比を含んでもよい。具体的な例において、Cas mRNAとgRNAとの比は、約1:1または約1:2であってよい。
【0208】
LNPを使用して脳に送達する特定の例は、Nabhan et al.(2016)Sci.Rep.6:20019に開示され、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
インビボでの投与は、例えば、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内を含む任意の適切な経路によることができる。全身投与様式には、例えば、経口および非経口経路が含まれる。非経口経路の例には、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、皮内、皮下、鼻腔内、および腹腔内経路が含まれる。具体的な例は静脈内注入である。鼻腔内注入および硝子体内注射は、他の特定の例である。局所投与様式には、例えば、髄腔内、脳室内、実質内(例えば、線条体(例えば、尾状核または被殻へ)、大脳皮質、前中心回旋、海馬(例えば、歯状回またはCA3領域)、側頭皮質、扁桃体、前頭皮質、視床、小脳、髄質、視床、視蓋、被殻、またはニグラ実質への局所的な実質内送達)、眼内、眼窩内、結膜下、硝子体内、網膜下、および強膜を介した経路が含まれる。(全身的アプローチと比較して)有意に少量の成分は、全身的に投与された場合(例えば、静脈内)と比較して、局所的に投与された場合(例えば、実質内または硝子体内)に効果を発揮し得る。局所投与様式はまた、治療有効量の成分が全身投与されるときに起こり得る潜在的に毒性の副作用の発生率を低減または排除し得る。特定の例では、動物への投与は、髄腔内注入または頭蓋内注入(例えば、海馬および他の脳領域への注入のための定位的手術、または脳室内注入)によるものである。
【0210】
投与の頻度と投与回数は、他の要因の中でもとりわけ、薬剤の半減期と投与経路に依存する可能性がある。細胞または非ヒト動物への核酸またはタンパク質の導入は、ある期間にわたって1回または複数回実施することができる。例えば、導入は、ある期間にわたって少なくとも2回、ある期間にわたって少なくとも3回、ある期間にわたって少なくとも4回、ある期間にわたって少なくとも5回、ある期間にわたって少なくとも6回、ある期間にわたって少なくとも7回、ある期間にわたって少なくとも8回、ある期間にわたって少なくとも9回、ある期間にわたって少なくとも10回、ある期間にわたって少なくとも11回、ある期間にわたって少なくとも12回、ある期間にわたって少なくとも13回、ある期間にわたって少なくとも14回、ある期間にわたって少なくとも15回、ある期間にわたって少なくとも16回、ある期間にわたって少なくとも17回、ある期間にわたって少なくとも18回、ある期間にわたって少なくとも19回、またはある期間にわたって少なくとも20回、実施することができる。
【0211】
そのような方法は、細胞、組織、または動物をスクリーニングして、1つ以上の薬剤(および任意選択でタウコード配列)の存在を確認することをさらに含むことができる。薬剤(および任意選択でタウコード配列)を含む細胞、組織、または動物のスクリーニングは、任意の既知の手段によって実施することができる。
【0212】
一例として、レポーター遺伝子を使用して、薬剤(または任意選択でタウコード配列)を有する細胞をスクリーニングすることができる。例えば、タウコード配列は、蛍光タンパク質などのレポーター遺伝子に融合したタウタンパク質をコードすることができる。例示的なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、強化青色蛍光タンパク質(eBFP)、DsRed、ZsGreen、MmGFP、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、Emerald、CyPet、Cerulean、T-Sapphire、およびアルカリホスファターゼをコードするものが含まれる。例えば、第1のレポーターおよび第2のレポーターが蛍光タンパク質(例えば、CFPおよびYFP)である場合、これらのレポーターを含む細胞は、二重陽性細胞を選択するためにフローサイトメトリーによって選択され得る。次いで、二重陽性細胞を組み合わせて、ポリクローナル統を生成するか、またはモノクローナル株は、単一の二重陽性細胞から生成され得る。
【0213】
別の例として、選択マーカーを使用して、薬剤(または任意選択でタウコード配列)を有する細胞をスクリーニングすることができる。例示的な選択マーカーには、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neor)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hygr)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(puror)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsrr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-k)が含まれる。
【0214】
次に、細胞または組織に、任意の適切な手段によってタウ凝集体を播種することができる。これは、例えば、1つ以上の薬剤(および任意選択でタウコード配列)を導入した後、培養で約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、約2週間、または約3週間後(例えば、培養で約1週間後)に行うことができる。あるいは、細胞または組織は、1つ以上の薬剤(および任意選択でタウコード配列)を導入する前にタウ凝集体を播種することができる。例えば、細胞または組織を組換え線維化タウ(例えば、組換え線維化タウリピートドメイン)で処理して、これらの細胞によって安定して発現されるタウリピートドメインタンパク質の凝集を播種することができる。タウの細胞間増殖はまた、凝集体含有細胞によって分泌されるタウ凝集活性からも生じ得る。例えば、細胞または組織は、タウリピートドメインが凝集状態で安定して存在する培養タウ凝集陽性細胞から採取された馴化培地を使用して培養することができる。馴化培地とは、培養された細胞から採取された使用済み培地を指す。それは、培養された細胞から培地に分泌される代謝物、成長因子、および細胞外マトリックスタンパク質が含まれる。一例として、馴化培地は、コンフルエントなタウ凝集陽性Agg[+]細胞上にある培地を収集することにより生成され得る。培地は、約12時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、または約10日間、コンフルエントなAgg[+]細胞上にあり得る。例えば、培地は、約1~約7、約2~約6、約3~約5、または約4日間、コンフルエントなAgg[+]細胞上にあり得る。次に、馴化培地を新鮮な培地と組み合わせて細胞または組織に適用することができる。馴化培地と新鮮な培地との比は、例えば、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10であり得る。例えば、馴化培地と新鮮な培地との比率は、約5:1~約1:1、約4:1~約2:1、または約3:1であり得る。例えば、それは、約90%の馴化培地および約10%の新鮮な培地、約85%の馴化培地および約15%の新鮮な培地、約80%の馴化培地および約20%の新鮮な培地、約75%の馴化培地および約25%の新鮮な培地、約70%の馴化培地および約30%の新鮮な培地、約65%の馴化培地および約35%の新鮮な培地、約60%の馴化培地および約40%の新鮮な培地、約55%の馴化培地および約45%の新鮮な培地、約50%の馴化培地および約50%の新鮮な培地、約45%の馴化培地および約55%の新鮮な培地、約40%の馴化培地および約60%の新鮮な培地、約35%の馴化培地および約65%の新鮮な培地、約30%の馴化培地および約70%の新鮮な培地、約25%の馴化培地および約75%の新鮮な培地、約20%の馴化培地および約80%の新鮮な培地、約15%の馴化培地および約85%の新鮮な培地、または約10%の馴化培地および約90%の新鮮な培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。一例では、それは、少なくとも約50%の馴化培地および約50%以下の新鮮な培地を含む培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。特定の例では、それは、約75%の馴化培地および約25%の新鮮な培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。
【0215】
馴化培地は共培養せずに使用できる。共培養のない馴化培地は、これまで播種剤としてこの状況で使用されたことがない。しかしながら、インビトロで生成されたタウ線維は限られた供給源であるため、馴化培地は大規模なゲノムワイドスクリーニングに特に有用である。さらに、馴化培地は、インビトロではなく細胞によって産生されるため、より生理学的に適切である。本明細書に記載されるような馴化培地の使用は、細胞をタウ凝集に感作するためのタウ播種活性のブースト(例えば、本明細書の他の場所に開示されるようにFRET誘導によって測定される場合、約0.1%)を提供する。
【0216】
次に、タウオパチーの1つ以上の兆候または症状を、任意の適切な手段で評価することができる。そのような徴候および症状の例は、本明細書の他の場所でより詳細に論じられており、例えば、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集が含まれる。他の徴候および症状には、例えば、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含めることができる。ホスホタウは、例えば、ホスホタウ(S356)またはホスホタウAT8(S202、T205)であり得る。これは、例えば、タウ播種後または1つ以上の薬剤(および任意選択でタウコード配列)を導入した後、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、またはそれ以上行うことができる。例えば、評価は、タウ播種後、または1つ以上の薬剤(および任意選択でタウコード配列)を導入した後、約2週間~約6週間または約3週間~約5週間で行うことができる。
【0217】
IV.候補タウオパチー治療薬を試験する方法
本明細書の他の場所で詳細に開示されている改善されたタウオパチーモデルを使用して、タウオパチーの治療のための治療薬候補を特定または評価するための様々な方法が提供される。そのような方法は、例えば、本明細書の他の場所に開示されるような改善されたタウオパチーモデル(例えば、本明細書の他の場所に開示される動物、組織、または細胞)に候補薬剤を投与することと、候補薬剤がタウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有するかどうかを決定するために1つ以上のアッセイを実行することと、タウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有する場合は候補薬剤を治療薬候補として特定することと、を含むことができる。
【0218】
任意の候補薬剤を試験できる。そのような候補は、例えば、siRNA、抗体、もしくはCRISPR/Cas gRNAなどの大きな分子または小分子を含み得る。候補薬剤は、任意の適切な経路による任意の手段によって、非ヒト動物または非ヒト動物細胞に投与することができる。
【0219】
タウオパチーに関連する徴候または症状を測定する任意のアッセイを使用することができる。そのような徴候および症状の例は、本明細書の他の場所に開示されている。第1の例として、徴候または症状は、タウの過剰リン酸化である可能性がある(例えば、実施例に記載されているAT8染色)。第2の例として、徴候または症状は、タウ凝集(例えば、実施例に記載されているチオフラビンS染色)であり得る。他の徴候および症状には、例えば、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/またはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含めることができる。ホスホタウは、例えば、ホスホタウ(S356)またはホスホタウAT8(S202、T205)であり得る。
【0220】
候補薬剤は、インビボで動物に投与することができ、1つ以上のアッセイを動物で実行することができる。あるいは、候補薬剤を動物にインビボで投与することができ、候補薬剤の投与後に動物から単離された細胞において1つ以上のアッセイをインビトロで実行することができる。あるいは、候補薬剤は、インビトロで細胞(例えば、ニューロン)に、またはエクスビボで組織(例えば、器官型脳切片培養物などの脳切片)に投与することができ、アッセイは、細胞でインビトロでまたは組織でエクスビボで実行することができる。
【0221】
任意選択で、細胞または組織は、候補薬剤を投与する前または後に、任意の適切な手段によってタウ凝集体を播種することができる。例えば、細胞または組織を組換え線維化タウ(例えば、組換え線維化タウリピートドメイン)で処理して、これらの細胞によって安定して発現されるタウリピートドメインタンパク質の凝集を播種することができる。タウの細胞間増殖はまた、凝集体含有細胞によって分泌されるタウ凝集活性からも生じ得る。例えば、細胞または組織は、タウリピートドメインが凝集状態で安定して存在する培養タウ凝集陽性細胞から採取された馴化培地を使用して培養することができる。馴化培地とは、培養された細胞から採取された使用済み培地を指す。それは、培養された細胞から培地に分泌される代謝物、成長因子、および細胞外マトリックスタンパク質が含まれる。一例として、馴化培地は、コンフルエントなタウ凝集陽性Agg[+]細胞上にある培地を収集することにより生成され得る。培地は、約12時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、または約10日間、コンフルエントなAgg[+]細胞上にあり得る。例えば、培地は、約1~約7、約2~約6、約3~約5、または約4日間、コンフルエントなAgg[+]細胞上にあり得る。次に、馴化培地を新鮮な培地と組み合わせて細胞または組織に適用することができる。馴化培地と新鮮な培地との比は、例えば、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10であり得る。例えば、馴化培地と新鮮な培地との比率は、約5:1~約1:1、約4:1~約2:1、または約3:1であり得る。例えば、それは、約90%の馴化培地および約10%の新鮮な培地、約85%の馴化培地および約15%の新鮮な培地、約80%の馴化培地および約20%の新鮮な培地、約75%の馴化培地および約25%の新鮮な培地、約70%の馴化培地および約30%の新鮮な培地、約65%の馴化培地および約35%の新鮮な培地、約60%の馴化培地および約40%の新鮮な培地、約55%の馴化培地および約45%の新鮮な培地、約50%の馴化培地および約50%の新鮮な培地、約45%の馴化培地および約55%の新鮮な培地、約40%の馴化培地および約60%の新鮮な培地、約35%の馴化培地および約65%の新鮮な培地、約30%の馴化培地および約70%の新鮮な培地、約25%の馴化培地および約75%の新鮮な培地、約20%の馴化培地および約80%の新鮮な培地、約15%の馴化培地および約85%の新鮮な培地、または約10%の馴化培地および約90%の新鮮な培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。一例では、それは、少なくとも約50%の馴化培地および約50%以下の新鮮な培地を含む培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。特定の例では、それは、約75%の馴化培地および約25%の新鮮な培地で、遺伝子修飾された細胞集団を培養することを含み得る。
【0222】
次に、タウオパチーの1つ以上の徴候または症状を、播種後または候補薬剤の投与後の任意の適切な時期に、任意の適切な手段によって評価することができる。これは、例えば、タウ播種後または候補薬剤の投与後、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、またはそれ以上で行うことができる。例えば、評価は、タウ播種後または候補薬剤の投与後、約2週間から約6週間、または約3週間から約5週間で行うことができる。
【0223】
上記または下記で引用されているすべての特許出願、ウェブサイト、他の刊行物、アクセッション番号などは、各項目が、参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示されたのと同じ程度に、すべての目的に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列の異なるバージョンが違う時間にアクセッション番号に関連付けられている場合、本出願の有効な出願日においてアクセッション番号に関連付けられるバージョンを意味する。有効な出願日とは、該当する場合、アクセッション番号に関する実際の出願日以前または優先出願の出願日を意味する。同様に、刊行物、ウェブサイトなどの異なるバージョンが違う時間に公開されている場合、別段の指定のない限り、本出願の有効な出願日の直近に公開されたバージョンを意味する。別段に他の指示がない限り、本発明の任意の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様を、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。本発明は、明瞭さおよび理解の目的に対し図表および例を介していくつかの詳細が記載されているが、添付の特許請求の範囲内で、ある特定の変化および改変を実施することができることが明らかになろう。
【0224】
配列の簡単な説明
添付の配列表に列記されているヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基のための標準的な文字略語、およびアミノ酸のための三文字表記を使用して示されている。ヌクレオチド配列は、配列の5’末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進み3’末端に至る標準規則に従っている。各ヌクレオチド配列の1本の鎖のみが示されているが、相補鎖は、示されている鎖を任意に参照することによって含まれると理解される。アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が提供される場合、同じアミノ酸配列をコードするそのコドン縮重バリアントもまた提供されることが理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端から始まって先へ(すなわち、各行で左から右へ)進みカルボキシ末端に至る標準規則に従っている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【実施例】
【0225】
実施例1.タウ凝集の遺伝的修飾因子を同定するためのゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニングプラットフォームの開発
タンパク質の異常な凝集または線維化は、特にアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのいくつかの神経変性疾患を含む、多くの疾患の決定的な特徴である。これらの疾患の多くでは、ある特定のタンパク質の不溶性凝集体への線維化は、疾患の特徴であるだけでなく、神経毒性の原因因子としても関係している。さらに、これらの疾患は、ステレオタイプのパターンに従って中枢神経系を介する凝集の病状の伝播によって特徴付けられ、このプロセスは疾患の進行と相関している。したがって、異常なタンパク質凝集のプロセス、または凝集体の細胞間増殖を変更する遺伝子および遺伝子経路の同定は、神経変性疾患の病因をよりよく理解する上で、ならびに治療的介入のための戦略を考案する上で大いに価値がある。
【0226】
異常なタウタンパク質凝集のプロセスを変更する遺伝子および経路を同定するために、CRISPRヌクレアーゼ(CRISPRn)sgRNAライブラリを使用してゲノムワイドスクリーニングを行い、タウ疾患関連タンパク質凝集体によって「播種される」細胞の可能性を調節する遺伝子(すなわち、破壊された場合に、タウ線維化タンパク質の供給源に曝露されたときに細胞をタウ凝集体形成により感受性にさせる遺伝子)を同定するためのプラットフォームが開発された。そのような遺伝子の同定は、神経変性疾患の状況においてタウ凝集体を形成するニューロンの感受性を支配するタウ細胞間凝集体増殖のメカニズムおよび遺伝的経路を解明し得る。
【0227】
スクリーニングは、CFPまたはYFPのいずれかに融合したP301S病原性変異を有するタウ微小管結合ドメイン(MBD)を含む、タウ4リピートドメインであるタウ_4RDを安定して発現するHEK293T細胞からなるタウバイオセンサーヒト細胞株を用いた。つまり、HEK293T細胞株は、蛍光タンパク質CFPまたは蛍光タンパク質YFPに融合した疾患関連タンパク質バリアントを安定して発現する2つの導入遺伝子:タウ
4RD-CFP/タウ
4RD-YFP(TCY)を含み、タウリピートドメイン(4RD)は、P301S病原性変異を含む。
図1を参照されたい。これらのバイオセンサー株では、タウ-CFP/タウ-YFPタンパク質の凝集により、ドナーCFPからアクセプターYFPへの蛍光エネルギーの移動の結果であるFRETシグナルが生成される。
図2を参照されたい。タウ凝集体を含むFRET陽性細胞は、フローサイトメトリーによって選別および単離され得る。ベースラインでは、刺激されていない細胞は、最小限のFRETシグナルで安定した可溶性状態でレポーターを発現する。刺激(例えば、種粒子のリポソームトランスフェクション)により、レポータータンパク質は凝集体を形成し、FRETシグナルを生成する。凝集体含有細胞はFACSによって単離され得る。安定して増殖する凝集体含有細胞株Agg[+]は、Agg[-]細胞株のクローン連続希釈によって単離され得る。
【0228】
このタウバイオセンサー細胞株には、遺伝子スクリーニングに役立つようにいくつかの修飾がなされた。まず、これらのタウバイオセンサー細胞を、レンチウイルスベクターを介してCas9発現導入遺伝子(SpCas9)を導入することによって修飾した。Cas9を発現するクローントランスジェニック細胞株をブラストサイジンで選択し、クローン連続希釈によって単離して、単一細胞由来のクローンを得た。クローンを、qRT-PCRによるCas9発現のレベル(
図3A)およびデジタルPCRによるDNA切断活性(
図3B)について評価した。相対Cas9発現レベルも表3に示される。
【表3】
【0229】
具体的には、Cas9変異効率を、2つの選択された標的遺伝子に対するgRNAをコードするレンチウイルスの形質導入の3日後および7日後にデジタルPCRによって評価した。切断効率は、低発現クローンのCas9レベルによって制限された。最大活性を達成するには、適切なレベルのCas9発現を伴うクローンが必要であった。Cas9発現がより低いいくつかの派生クローンは、標的配列を効率的に切断することはできなかったが、発現がより高いクローン(スクリーニングに使用されたものを含む)は、培養物において3日後に約80%の効率で、PERKおよびSNCA遺伝子における標的配列に変異を生成することができた。効率的な切断は、gRNA形質導入の3日後にすでに観察され、7日後にはわずかな改善しかなかった。クローン7B10-C3を、後続のライブラリスクリーニングで使用する高性能クローンとして選択した。
【0230】
次に、細胞をタウ播種活性に感作するための試薬および方法が開発された。タウの細胞間増殖は、凝集体含有細胞によって分泌されるタウ凝集活性からも生じ得る。タウ凝集の細胞増殖を研究するために、YFPに融合したP301S病原性変異を有するタウ微小管結合ドメイン(MBD)を含む、タウリピートドメインであるタウ_4RDを安定して発現するHEK293T細胞からなるタウ-YFP細胞株のサブクローンを得た。
図5を参照されたい。タウ-YFPタンパク質が凝集状態で安定して存在する細胞(Agg[+])は、これらの細胞によって安定して発現されるタウ-YFPタンパク質の凝集を播種するために、リポフェクタミン試薬と混合した組換え線維化タウでこれらのタウ-YFP細胞を処理することによって得た。次いで、「播種された」細胞を連続希釈して、単一細胞由来のクローンを得た。次いで、これらのクローンを拡大させて、タウ-YFP凝集体がすべての細胞において安定して持続し、経時的に増殖および複数回継代するクローン細胞株を同定した。これらのタウ-YFP_Agg[+]クローンの1つであるClone_18を使用して、コンフルエントなタウ-YFP_Agg[+]細胞上に4日間存在している培地を収集することにより、馴化培地を生成した。次いで、馴化培地(CM)をナイーブバイオセンサータウ-CFP/タウ-YFP細胞に3:1のCM:新鮮な培地の比率で適用し、これらのレシピエント細胞のごく一部の割合でタウ凝集が誘導され得るようにした。リポフェクタミンは使用されなかった。リポフェクタミンは、レシピエント細胞をだましてリポフェクタミンを使用してタウ凝集を強制/増加させることなく、可能な限り生理学的であるアッセイを行うために使用されなかった。フローサイトメトリーを使用して凝集の尺度としてFRETシグナルを生成する細胞の割合を評価することによって測定されるように、馴化培地は一貫して約0.1%の細胞においてFRETを誘導した。
図6を参照されたい。結論として、タウ-YFP_Agg[+]細胞は、FRETシグナルを生成することができないが、それらはタウの播種の供給源を提供することができる。
【0231】
実施例2.タウ凝集の遺伝的修飾因子を同定するためのゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニング
FRET[+]細胞における濃縮sgRNAとしてのタウ凝集の修飾因子遺伝子を明らかにするために、凝集物のないCas9発現タウ-CFP/タウ-YFPバイオセンサー細胞(Agg[-])に、各標的遺伝子にノックアウト変異を導入するためのレンチウイルス送達アプローチを使用して、2つのヒトゲノムワイドCRISPR sgRNAライブラリを用いて形質導入した。
図4を参照されたい。各CRISPR sgRNAライブラリは、機能的ノックアウトのために5’構成的エキソンを標的とし、遺伝子当たり平均約3のsgRNAをカバーする(組み合わせた2つのライブラリにおいて遺伝子当たり合計6のgRNA)。読み取りカウントの分布(つまり、ライブラリ内の各gRNAの表現)は正常であり、各ライブラリで同様であった。sgRNAは、オフターゲットゲノム配列とのミスマッチが2つ以下のsgRNAを回避することにより、オフターゲット効果を回避するように設計された。ライブラリは、1000の非標的化対照sgRNAを含む19,050のヒト遺伝子および1864のmiRNAをカバーする。ライブラリを、感染多重度(MOI)<0.3で、sgRNA当たり>300細胞のカバレッジで形質導入した。タウバイオセンサー細胞は、ピューロマイシンの選択の下で増殖し、細胞ごとに固有のsgRNAの組み込みおよび発現を含む細胞を選択した。ピューロマイシンの選択は、1μg/mLでの形質導入の24時間後に開始した。5つの独立したスクリーニング複製を一次スクリーニングで使用した。
【0232】
完全な形質導入細胞集団の試料を、形質導入後3日目および6日目の細胞継代時に収集した。6日目の継代後、細胞を馴化培地で増殖させて、播種活性に感作させた。10日目に、蛍光アシスト細胞選別(FACS)を使用して、FRET[+]細胞の亜集団を特異的に単離した。
図7を参照されたい。スクリーニングは、5回の反復実験で構成された。組み込まれたsgRNA構築物のDNA単離およびPCR増幅により、各時点でのsgRNAレパートリーの次世代シーケンシング(NGS)による特徴付けが可能になった。
【0233】
NGSデータの統計分析により、3日目および6日目の初期の時点でのsgRNAレパートリーと比較して、5回の実験の10日目のFRET[+]亜集団で濃縮されたsgRNAの同定が可能になった。NGS分析のための相対存在量および濃縮の概念は
図8に例示される。潜在的なタウ修飾因子を同定する第1の戦略は、DNAシーケンシングを使用して、DESeqアルゴリズムを使用して各試料のsgRNA読み取りカウントを生成し、10日目対3日目または10日目対6日目で(しかし、6日目対3日目ではない)より豊富なsgRNAを見つけることであった(倍率変化(fc)≧1.5および負の二項検定p<0.01)。Fc≧1.5は、(10日目のカウントの平均)/(3日目または6日目のカウントの平均)≧1.5の比率を意味する。P<0.01は、10日目および3日目または6日目のカウント<0.01の間に統計的差異がない可能性を意味する。DESeqアルゴリズムは、「配列カウントデータの差次的発現解析」に広く使用されているアルゴリズムである。例えば、Anders et al.(2010)Genome Biology 11:R106を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0234】
具体的には、各ライブラリで2つの比較10日目対3日目、および10日目対6日目を使用して、有意なsgRNAを同定した。これら4つの比較の各々について、DESeqアルゴリズムを使用し、有意であるとみなされるカットオフ閾値は、倍率変化≧1.5ならびに負の二項検定p<0.01であった。各ライブラリのこれらの比較の各々で有意なガイドが同定されると、次の2つの基準のいずれかを満たす場合、遺伝子は重要であるとみなされた:(1)1つの比較(10日目対3日目または10日目対6日目のいずれか)でその遺伝子に対応する少なくとも2つのsgRNAが有意であるとみなされた;および(2)両方の比較(10日目対3日目および10日目対6日目)で少なくとも1つのsgRNAが有意であった。このアルゴリズムを使用して、第1のライブラリから5つの遺伝子が重要であり、第2のライブラリから4つの遺伝子が有意であると同定した。表4を参照されたい。
【表4】
【0235】
しかしながら、第1の戦略では、あるレベルの読み取りカウントを必要とし、各実験グループ内の均一性はストリンジェントでありすぎる場合がある。同じsgRNAの場合、スクリーニングライブラリの初期ウイルスカウント、感染または遺伝子編集効率、および遺伝子編集後の相対増殖率など、多くの要因により、各実験グループ内の試料(3日目、6日目、または10日目の試料)間で読み取りカウントのばらつきが生成され得た。したがって、正確な読み取りカウントではなく、10日目(選択後)の各試料における遺伝子当たりのガイドの陽性発生(読み取りカウント>30)に基づいて、第2の戦略も使用した。ライブラリサイズ(x)、遺伝子当たりのガイド数(n)、および選択後の試料における陽性ガイドの総数(m)を考慮して、選択後の試料におけるガイドの数(n’)を積極的に観察するための正式な統計的p値を計算した(「数」はsgRNAタイプ(すなわち、固有のガイドRNA配列)を指し、読み取りカウントではない)(p
n’=nCn’*(x-n’)C(m-n)/xCm)。遺伝子gが変化によって存在するn’ガイド以上の確率は次のように計算された。
【数1】
選択前と比較した選択後の遺伝子の読み取りカウントの全体的な濃縮を、陽性遺伝子を同定するための追加のパラメータとして使用した:(相対存在量=[遺伝子の読み取りカウント]/[すべての遺伝子の読み取りカウント]および選択後の濃縮=[選択後の相対存在量]/[選択前の相対存在量])。
【0236】
より具体的には、第2の戦略は、CRISPR陽性選択のための新しくより感度の高い分析方法である。CRISPR陽性選択の目標は、DNAシーケンシングを使用して、sgRNAによる摂動が表現型と相関している遺伝子を同定することである。ノイズバックグラウンドを低減するために、これらの実験では通常、同じ遺伝子の複数のsgRNAと実験の複製が一緒に使用される。しかしながら、現在一般的に使用されている統計分析方法は、同じ遺伝子のsgRNA間ならびに技術的な繰り返し間である程度の均一性/一致を必要とし、良好に機能しない。これは、多くの考えられる理由(例えば、異なる感染または遺伝子編集効率、スクリーニングライブラリにおける初期ウイルスカウント、および同じ表現型を有する他のsgRNAの存在)により、これらの方法では同じ遺伝子のsgRNAおよび繰り返し間の大きな変動を処理できないためである。対照的に、大きな変動に対してロバストな方法を開発した。これは、各sgRNAの正確な読み取りカウントではなく、個々の実験における遺伝子当たりのガイドの陽性発生に基づいている。各実験におけるライブラリのサイズ、遺伝子当たりのsgRNAの数、および陽性sgRNAの総数を考慮して、実験の繰り返しにわたってsgRNAの数を積極的に観察するための正式な統計的p値を計算する。表現型の選択前後の相対sgRNA配列読み取り濃縮もパラメータとして使用される。本方法は、DESeq、MAGECKなどの最新の広く使用されている方法よりも良好に成し遂げられる。具体的には、この方法には以下の手順が含まれる。
【0237】
(1)各実験について、表現型が陽性の細胞に存在するあらゆるガイドを同定する。
【0238】
(2)遺伝子レベルで、各実験にガイドが存在するランダム確率を計算する:nCn’*(x-n’)C(m-n)/xCm(xは、表現型選択前の様々なガイドであり、mは、表現型選択後の様々なガイドであり、nは、表現型選択前の遺伝子の様々なガイドであり、n’は、表現型選択後の遺伝子の様々なガイドである)。複数の実験にわたって存在する全体的な可能性は、各実験から得られた上記の計算された可能性を乗算することによって計算される。
【0239】
(3)遺伝子レベルでのガイドの平均濃縮の計算:濃縮スコア=選択後の相対存在量/選択前の相対存在量。相対存在量=遺伝子のガイドの読み取りカウント/すべてのガイドの読み取りカウント。
【0240】
(4)存在するランダム確率よりも大幅に下回り、かつある特定の濃縮スコアを上回っている遺伝子を選択する。
【0241】
2つの異なるアプローチ(いずれかまたは両方)によってFRET[+]細胞が濃縮されていると同定された標的遺伝子のうちの14個を、読み取りカウントデータに基づく目視検査後のさらなる検証のための上位の候補として選択した。表5を参照されたい。30の個々のsgRNAを、検証のために二次スクリーニングで試験した。二次スクリーニングの概略図を
図9に示し、結果を
図10に示す。複数の試験されたsgRNAによるBANF1またはPPP2CAのいずれかの破壊は、タウ播種活性の供給源(馴化培地)に応答してタウ凝集体を形成する細胞の感受性を増加させた。FRETシグナルの誘導は、これら2つの標的のいずれかの破壊とともに、細胞内で15~20倍増加した。これらの2つの標的遺伝子の破壊は、馴化培地に応答してタウ凝集体の形成を増加させたが、新鮮な培地には応答しなかった。
図11を参照されたい。
【表5】
【0242】
次いで、BANF1およびPPP2CAを用いたさらなる実験を実施し、各遺伝子の標的化がタウ凝集を促進することをさらに検証した。
図12を参照されたい。BANF1に対する2つの異なるsgRNAが試験され、PPP2CAに対する1つのsgRNAが使用された。非標的化sgRNAを陰性対照として使用した。0日目に各ガイドRNAに対して4つの独立したレンチウイルス形質導入を行った。6日目に、馴化培地を用いたタウ播種を、リポフェクタミンありまたはなしで行い、qRT-PCRのために試料を収集した。qRT-PCRのデータを
図13に示す。BANF1を標的とする2つのsgRNAはそれぞれBANF1 mRNAの発現を低減させ、PPP2CAを標的とするgRNAはPPP2CAの発現を低減させた。10日目に、FRETシグナルの誘導を評価するためにFACS分析を行った。タウ凝集は、標的BANF1を標的とする2つのsgRNAおよび標的PPP2CAを標的とするgRNAの各々によって増加された。
図15を参照されたい。13日目に、ウエスタンブロット分析のために試料を収集した。ウエスタンブロットの結果を
図14に示す。使用した抗体を表6に示す。mRNA発現を評価するqRT-PCR実験と同様に、自己統合障壁因子(barrier-to-autointegration factor)(BANF1)タンパク質の発現はBANF1を標的とする2つのsgRNAによって低減し、セリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファ(PPP2CA)タンパク質の発現はPPP2CAを標的とするsgRNAによって低減する。
【表6】
【0243】
タウ凝集の修飾因子としてのBANF1およびPPP2CAのさらなる検証は、検証のために個々のBANF1ノックダウンクローンおよび個々のPPP2CAノックダウンクローンを単離することによって行われた。凝集体を含まないCas9発現タウ-CFP/タウ-YFPバイオセンサー細胞(Agg[-])に、BANF1のsgRNA 1、PPP2CAのsgRNA 5、または非標的化sgRNAを発現するレンチウイルスを形質導入した。次いで、連続的なクローン希釈を行い、個々のクローンを選択した。BANF1 mRNAおよびPPP2CA mRNAのレベルは、qRT-PCR(ThermoFisherから取得したTaqMan qRT-PCRアッセイ、アッセイID Hs00427805_g1およびHs00427260_m1)によって評価され、自動統合障壁因子(BANF1)タンパク質およびセリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファ(PPP2CA)タンパク質のレベルは、ウエスタンブロットによって評価された。各BANF1 sgRNAクローンはBANF1 mRNA発現(データは示さず)および自己統合障壁因子(BANF1)タンパク質発現を低減させ(
図16)、各PPP2CA sgRNAクローンはPPP2CA mRNA発現(データは示さず)およびセリン/スレオニンプロテインホスファターゼ2A触媒サブユニットアルファ(PPP2CA)タンパク質の発現を低減させた(
図16)。
【0244】
タウ発現およびタウのリン酸化もまた、ウエスタンブロットによって各クローンにおいて評価した。PPP2CAノックダウンにより、ホスホタウおよびタウレベルが増加した。
図17を参照されたい。
【0245】
次に、各クローンを馴化培地で3日間播種し、FRET分析を行い、タウ凝集を評価した。ノックダウンクローンは、BANF1とPPP2CAをタウ凝集の修飾因子として検証する。
図18を参照されたい。FRETの強化は、BANF1およびPPP2CA変異クローンにおける遺伝子編集の程度と直接相関していた。
【0246】
次いで、個々のクローンを次世代シーケンシングによってさらに特徴付けし、BANF1およびPPP2CAの遺伝子座にどのような修飾がなされたかを判定した。修飾を、以下の表7に要約する。ほとんどすべての変異クローンには、いくらかの割合の野生型対立遺伝子が含まれる。FRET(+)細胞(タウ凝集活性)の割合は、切断部位での非相同末端結合によって引き起こされる挿入/欠失の割合と相関していた(すなわち、タウ凝集は、野生型対立遺伝子の割合と逆相関し、野生型対立遺伝子の割合が低いほど、Fret(+)細胞の割合が高くなる)。
図16および表7を参照されたい。
【表7】
【0247】
BANF1とPPP2CAが、タンパク質間相互作用ネットワークに基づくソフトウェアプログラムであるStringを使用して、同じ生物学的経路または機能に関与しているかどうかを調べた。すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるSzklarczyk et al.(2015)Nucleic Acids Res.43(database issue):D447-D452を参照されたい。入力としてBANF1とPPP2CAを使用して、Reactome Pathwaysに基づいてBANF1とPPP2CAの間に「触媒作用」の関係があることを発見した。
図23を参照されたい。BANF1は、核膜の生物学において重要な役割を果たすいくつかのタンパク質とも相互作用する。これらの標的は、タウ凝集の潜在的な修飾因子として試験された。
【0248】
Cas9を発現するタウバイオセンサー細胞に、これらの目的の遺伝子を標的とするsgRNAを含むレンチウイルスベクターを形質導入した。これらのsgRNAの標的配列を表8に示す。抗生物質の選択を24時間後に開始した。培養1週間後、コンフルエントなタウ-YFP(Agg[+])において3日後に収集した馴化培地(CM)を、75%CM/25%新鮮培地として形質導入細胞に適用し、播種活性をFRET[+]セルのパーセントで評価した。特定の標的のノックダウンは、qRT-PCRによって評価された。予想通り、BANF1またはPPP2CAの破壊はタウ凝集を強化した。ANKLE2の破壊もまた、タウ凝集を促進した。
図19を参照されたい。ANKLE2は、小胞体と核内膜の両方に局在する唯一のLEMドメインタンパク質である。
【表8】
【0249】
次に、BANF1/PPP2CA相互作用ネットワークの遺伝子をさらに評価した。特に、ANKLE2、EMD、およびVRK1を評価した。BANF1/PPP2CA相互作用ネットワークの遺伝子を評価するために、ANKLE2、EMD、またはVRK1を標的とするsgRNAを、非標的クローン4-1および4-19で試験した。FRET[+]細胞の割合は、馴化培地の3日後に評価された。BANF1/PPP2CA相互作用ネットワークにおける遺伝子の破壊は、タウ凝集の修飾因子としてのANKLE2(
図20を参照)およびBANF1誘導性凝集の増強剤としてのVRK1(データは示されていない)を明らかにした。
【0250】
これにより、タウ凝集と、核膜の完全性を調節するBANF1/PPP2CA経路との間の関連がさらに支持された。これと一致して、ラミン染色は、非標的クローンと比較して、BANF1およびANKLE2ノックダウンdCas9-KRAB発現タウバイオセンサー細胞クローンにおける異常な核膜を明らかにし、同様の結果が、非標的クローンと比較して、BANF1およびANKLE2変異体Cas9発現タウバイオセンサー細胞クローンにおいて観察された(データは示さず)。BANF1は、核ラミナの2つの主要な構成要素であるラミンA/CとラミンB1と相互作用する。最近の研究では、核ラミナの異常な形態がFTDおよびADの神経変性プロセスに関連付けられている。ラミン核骨格の破壊は、タウオパチーのショウジョウバエモデルにおいてヘテロクロマチン弛緩と神経細胞死を引き起こす。ラミンの病理は、死後のAD脳で保存されている。dCas9-KRABを発現するタウバイオセンサー細胞の形質導入に続いて、BANF1およびANKLE2のノックダウンクローンを単離した。ラミン染色により、これらのBANF1およびANKLE2ノックダウンクローンに、非標的sgRNA用に形質導入および選択されたクローンと比較して異常な核膜が明らかになった(データは示さず)。核ラミナの形状の顕著な異常は、FTDニューロンで最近報告されたものと類似している。
【0251】
核膜孔複合体(NPC)の異常と、結果として生じる核細胞質輸送(NCT)の欠陥は、タウオパチーのマウスモデルの病因に寄与する。NPCの破壊と機能的な核輸送は、ヒトのニューロンに過剰リン酸化されたタウを含む細胞、ならびにマウスおよびタウオパチーの細胞モデルにも存在する可能性がある。核膜孔および核膜の欠陥は、ALS/FTDおよびハンチントン病における神経変性の一般的なメカニズムを示している可能性がある。
【0252】
GTP結合核タンパク質Ran(Ran)、Ran GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)、および染色体凝縮のレギュレーター(RCC1)の免疫染色を使用して、細胞内のNCTの破壊を調べることができる。Ranタンパク質勾配は、NPCを介した能動輸送にとって重要である。ほとんどのRanタンパク質は核内にあり、ほとんどの場合Ran-GTPが含まれている。RanGAP1はNPCの細胞質側に局在し、Ran-GTPをRan-GDPに変換する。RCC1は核に局在し、Ran-GDPをRan-GTPに変換する。
【0253】
細胞内局在を決定するために、ニューロンを、タウ、ホスホタウ、Ran、RanGAP1、RCC1、核膜孔複合タンパク質Nup98-Nup96(nuclear pore complex protein Nup98-Nup96)(Nup98)(ホスホタウと相互作用する)、および核膜孔糖タンパク質p62(nuclear pore glycoprotein p62)(Nup62)(ハイドロゲルを形成できるNPCのコア構成要素)、ならびにTAR DNA結合タンパク質43(TAR DNA-binding protein 43)(N-term)、RNA結合タンパク質FUS(FUS)、および異種核リボヌクレオタンパク質A1(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein A1)(HNRNPA1)ついて染色する。核から細胞質へのTDP-43、HNRNPA1、およびFUSの誤った局在化は、ALS/FTDに関連している。
【0254】
この検証により、タウ播種活性の外部供給源に曝露されたときにタウ播種に対する細胞の感受性を調節することができる遺伝子の同定における一次スクリーニングアプローチの価値が確認された。したがって、スクリーニングによって同定された標的は、神経変性疾患の状況でタウ病理の細胞間増殖における関連する標的であり得、さらに調査される。FRETバイオセンサー細胞株におけるタウ凝集の修飾因子のゲノムワイドなスクリーニングにより、核膜の完全性に関与する複数の標的(BANF1、PPP2CA、およびANKLE2)が特定された。BANF1およびANKLE2変異クローンは、FTDニューロンとアルツハイマー病の死後ニューロンの両方で報告されたものと同様の核ラミナ形状の顕著な異常を示した。
【0255】
実施例3.マウス細胞におけるAnkle2、Banf1、およびPpp2caの標的化
タウオパチーのマウスモデルで推定タウ修飾因子遺伝子を検証するために、マウス細胞でこれらの遺伝子の発現を修飾できるCRISPRツールを検証することが最初に必要あった。マウス遺伝子Ankle2、Banf1、およびPpp2caを標的とするsgRNA、およびどのゲノム配列とも一致しない非標的(NT)対照sgRNAをマウスES細胞で試験した。これらの遺伝子の発現は、その後、qRT-PCR(Thermo FischerのTaqManアッセイを使用し、ハウスキーピング遺伝子Droshaの発現に対して正規化)によって評価された。
【0256】
最初の実験では、以下のsgRNA含有プラスミド(GenScriptから取得)をレンチウイルス(LV)にパッケージ化し、Cas9発現がRosa26遺伝子座から駆動されるCas9対応マウスES細胞株(2600A-A3)に形質導入した。sgRNA標的配列を表9に提示する。
【表9】
【0257】
ピューロマイシン選択(1.5μg/mL)によって発現を選択した。マウスES細胞は、ポリブレン(64μg/mL)の存在下で600のMOIで個々のLVで形質導入された。細胞は、ピューロマイシン選択下でフィーダーなしで10日間増殖させた。RNAを細胞から収集し、標的遺伝子の発現をqRT-PCRによって評価した。この実験では、Banf1 g2またはBanf1 g3で細胞を標的化すると、NT対照と比較してBanf1の発現が約35%低減した。
図21Aを参照されたい。同様に、Ppp2ca g2で細胞を標的化すると、NT対照と比較してPpp2ca発現が約65%低減した。
図21Bを参照されたい。
【0258】
これらのマウス遺伝子を標的とするsgRNAをさらに評価するために、以下のプラスミド(GenScriptから取得)をLVにパッケージ化し、ハイブリッドな遺伝的背景(50%C57BL/6NTac 50%129S6/SvEvTac)の野生型マウスES細胞であるF1H4マウスES細胞に形質導入した。pLentiCRISPR-v2プラスミドコンストラクトは、Cas9コード配列と特定のsgRNAの配列の両方を単一の「オールインワン」(AIO)ベクターに含み、Cas9とsgRNAの両方の発現をピューロマイシンで選択できる。追加の陰性対照として、pLentiGuide-puroベクター(sgRNAを含むがCas9を欠く)のBanf1またはPpp2caを標的とするsgRNAも使用した。ベクターを表10に示す。
【表10】
【0259】
この実験では、マウスES細胞は、ポリブレンの存在下でMOI600のLVを再度形質導入され、ピューロマイシン選択下で10日間増殖させた。RNAを抽出し、qRT-PCR分析を実施した(ThermoFisherから入手したTaqMan qRT-PCRアッセイ、アッセイID Mm01205802_m1、Mm01231514_g1、およびMm00479816_m1)。前の実験の結果を確認すると、Ppp2ca g2は再びPpp2ca発現の特定の急激な低減を引き起こし(この場合は>80%)、このsgRNAの特定の効果を確認する。
図22Cを参照されたい。さらに劇的なことに、この実験では、いくつかのsgRNA(Ankle2 g1、Ankle2 g3、Banf1 g1、Banf1 g2、Banf1 g3、およびPpp2ca g3)の発現を選択すると、広範な細胞死とすべての細胞の喪失が引き起こされ、RNAの収集は不可能になった。
図22A~22Cを参照されたい。特に、オールインワンベクターでのNT対照sgRNAによる形質導入は細胞死を引き起こさず、このコンストラクトからのCas9の発現は細胞に対して本質的に毒性がないことを示している。さらに、pLentiGuide-puroベクター(Cas9を欠いている)でのBanf1およびPpp2caを標的とするsgRNAの発現は、同様に細胞死を引き起こさなかった。したがって、それらの標的遺伝子の特異的破壊を引き起こすこれらのsgRNAのCas9媒介活性がこれらの細胞の細胞死の原因であり、sgRNAがそれらの標的をヒットするのに有効である可能性が高いことを示していると結論付けた。BANF1およびPPP2CAがES細胞の生存率および/または多能性に不可欠であることが報告されているため、この結果は完全に驚くべきものではなかった。
【0260】
実施例4.タウオパチーのモデルの改善
タウ封入体は、AD、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ピック病、および17番染色体に関連するパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)を含むタウオパチーの病理学的特徴である。タウ封入体は、高度にリン酸化され、切断され、アセチル化された種を含む、多数の形態の凝集した翻訳後修飾タウで構成されている。次に、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞に由来するニューロン(例えば、iCELL GABAニューロン)、マウス胚性幹(ES)細胞に由来するニューロン、および一次マウスニューロン(単離されたマウス皮質ニューロン)において、エクスビボでタウ過剰リン酸化とタウ凝集を再現する新しいスクリーニングプラットフォームの開発に着手した。ヒトiPS由来ニューロンの場合、すでに有糸分裂後で、使用の準備ができているヒトiPS由来ニューロンが使用される。細胞はICELL(登録商標)GABANeuronsの確立されたプロトコルに従って解凍されプレーティングされる。
【0261】
最初に、ヒトシナプシン1プロモーターの制御下でヒトタウcDNA(1N4R)を発現するためにいくつかのコンストラクトが生成された。これらのコンストラクトは、ヒトまたはマウスのニューロンで使用するためにコドン最適化された。7つのコンストラクトが生成された:(1)pSynapsin1-GFP(配列番号74)、(2)pSynapsin1-hTAU WT(配列番号75)、(3)pSynapsin1-hTAU WT-GFP(配列番号76)、(4)pSynapsin1-GFP-hTAU WT(配列番号77)、(5)pSynapsin1-hTAU 3MUT(A152T、P301L、S320F)(配列番号78)、(6)pSynapsin1-hTAU 3MUT(A152T、P301L、S320F)-GFP(配列番号79)および、(7)pSynapsin1-GFP-hTAU 3MUT(A152T、P301L、S320F)(配列番号80)。シナプシン1遺伝子プロモーターはニューロン特異的な発現をもたらす。これらのコンストラクトは、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスにパッケージ化して送達することができる。野生型タウ1N4RのDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ配列番号81および82に記載されている。3MUTタウ1N4R(A152T、P301L、S320F)のDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ配列番号83および84に記載されている。
【0262】
TaqManアッセイは、ヒトまたはマウスのニューロンにおけるヒトタウcDNAのトランスジェニック発現を特異的に検出するように設計された。定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を実行して、特定のプライマーとプローブを使用してトランスジェニックヒトTAUを検出し、野生型(WT)および変異型(MUT)TAU cDNAのコドン最適化配列を検出した。Direct-zol RNA Miniprep plusキットを製造元のプロトコル(Zymo Research)に従って使用して、全RNAを単離した。全RNAは、Turbo DNA-freeキットを製造元のプロトコル(Invitrogen)に従って使用して、DNaseで処理し、20ng/μLに希釈した。逆転写(RT)およびPCRは、Quantitect Probe RT-PCRキット(Qiagen)を使用した一段階反応で実行された。qRT-PCR反応には、2μLのRNAと、RT-PCRマスターミックス、ROX色素、RTミックス、および遺伝子特異的プライマー-プローブミックスを含む8μLの混合物が含まれ、最終容量は10μLになった。逆転写後、PCR反応溶液を3μLのcDNAと5μLのPCR混合物、プローブ、遺伝子特異的プライマーを含む最終容量8μLに再構成した。特に断りのない限り、最終的なプライマーとプローブの濃度は、それぞれ0.5μMと0.25μMであった。qPCR qRT-PCRは、ViiA(商標)7 Real-Time PCR Detection System(ThermoFisher)で実行された。PCR反応は4連で、95℃10分および95℃3秒、60℃30秒で行い、RTステップで45℃10分、続いて95℃10分、ならびに95℃5秒、60℃30秒を45サイクルの2ステップサイクリングで、光学384ウェルプレートで行った。各分析で使用したプライマーとプローブの配列を以下の表11に示す。
【表11】
【0263】
ニューロンは、生化学的アッセイを実行するために6ウェルプレート(ウェル当たり約300,000細胞)にプレーティングされ、免疫染色とそれに続くハイコンテントイメージングおよび画像分析のために96ウェルプレート(ウェル当たり約15,000ニューロン)にプレーティングされる。ニューロンは、ヒトタウコンストラクトを単独で、または特定のプロモーター(例えば、EF1アルファプロモーター)ならびにBANF1、PPP2CA、ANKLE2、または非標的sgRNAの下で(例えば、U6プロモーターの制御下で)、Cas9導入遺伝子を発現するオールインワンウイルス(配列番号85)と組み合わせて形質導入される。Cas9のDNAおよびタンパク質配列は、それぞれ、配列番号86および87に記載されている。
【0264】
培養で約1週間後、細胞を50%馴化培地タウ-YFP(Agg[+])に曝露し、培養を維持する。96ウェルプレートの細胞を最終的に固定し、特定の抗体で免疫染色して、以下を検出する:タウの過剰リン酸化およびタウの凝集(細胞内局在(軸索、細胞体樹状突起コンパートメント)を伴うタウの過剰リン酸化を検出するAT8およびS356抗体)、核ラミナの異常な形態および核細胞質輸送の障害(ラミンA/C、ラミンB1、FUS、TDP-43、HNRPA1、NPC、およびNPT)、非標的sgRNAと比較した、BANF1、PPP2CA、またはANKLE2 sgRNAで形質導入された細胞における細胞生存(DAPI/NeuN/MAP2)。チオフラビンSは、β-アミロイド構造の染色と視覚化にも使用される。神経機能(神経突起の収縮、シナプスの喪失、異常なカルシウム恒常性、および不均衡な神経伝達物質の放出)も評価される。ハイコンテントイメージャーPhenix Opera(96ウェルフォーマット)は、細胞生存アッセイ(DAPI/NeuN/MAP2)、ホスホタウアッセイ(AT8、S356)、およびチオフラビンSアッセイに使用される。6ウェルプレートの細胞を収集して細胞分画アッセイを実行し、不溶性で誤って局在化したタウの存在を明らかにする。
【0265】
次に、マウスの脳切片培養において、エクスビボでタウの過剰リン酸化とタウの凝集を再現する新しいスクリーニングプラットフォームの開発に着手した。脳切片アッセイはよく知られている。例えば、Polleux et al.(2002)Sci.STKE 2002(136) pl9(doi: 10.1126/stke.2002.136.pl9)を参照されたく、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0266】
マウス新生児の脳スライス培養物は、オールインワンレンチウイルスもしくはアデノ随伴ウイルス(Cas9および特定のsgRNAの発現を誘導する)またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)で形質導入され、馴化培地タウ-YFP(Agg[+])に暴露され、培養で維持される。最後に、切片を固定して、上記のようにタウの過剰リン酸化とタウの凝集を明らかにする。切片はまた収集され、不溶性タウの存在を明らかにする。
【0267】
次に、インビボでタウの過剰リン酸化とタウの凝集を再現するスクリーニングプラットフォームの開発に着手した。成体PS19マウス(6~8週間)に、頭蓋内(海馬および他の脳領域への注入または脳室内注入のための定位手術)または髄腔内(脊髄内)注射により、以下を注入する:(1)Cas9 mRNAおよびsgRNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)、(2)siRNAを含むLNP、(3)レンチウイルス(LV)オールインワン(Cas9 + sgRNA)、(4)アデノ随伴ウイルス(AAV)オールインワン(Cas9+sgRNA)、または(5)アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)。PS19マウス(jax.org/strain/008169で入手可能、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)が使用される。
【0268】
sgRNA、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子Banf1、Ppp2ca、Ankle2を標的とするか、非標的制御配列で構成される。動物を屠殺し、脳の切片化および染色後、上記のようにタウの過剰リン酸化(AT8染色)およびタウの凝集を明らかにする。脳はまた収集され、不溶性で誤って局在化したタウの存在を明らかにする(チオフラビンS染色)。
【0269】
BANF1/PPP2CA/ANKLE2は有糸分裂細胞に不可欠であるため、ノックダウン戦略により、タウ凝集とのこの新しい関連性をよりよく理解できると仮定した。タウバイオセンサー細胞における転写抑制のdCas9-KRAB CRISPRiシステムを導入し、転写開始部位の直前のプロモーター領域を標的とした特定のsgRNAを形質導入した。
図24Aおよび24Bを参照されたい。馴化培地タウ-YFP(Agg[+])で処理した後、タウ凝集を誘導できるクローン段階希釈により、ΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウンクローンを単離した。
図25を参照されたい。これは、CRISPRi dCas9-KRAB ΔBANF1およびΔANKLE2を標的としたノックダウンクローンがタウ凝集を誘導できることを示した。
【0270】
次に、ΔBANF1およびΔANKLE2クローンの細胞分画を行い、タウ-YFP Agg[+]細胞溶解物を用いた2日後に不溶性画分中のタウおよびホスホタウ(セリン356)の検出を可能にし、セリン356でタウ不溶性およびリン酸化を伴うΔBANF1とΔANKLE2クローン間の関連の機能的証拠を提供した。
図26を参照されたい。
【0271】
また、ΔBANF1およびΔANKLE2クローンと2つの対照群(非標的および親)からRNAを収集した。RNA-seq分析は、ΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウンクローンと2つの対照群の有意差を特徴とした。CRISPRiノックダウンクローンのRNA-seq分析により、ΔBANF1ノックダウン試料はΔANKLE2または非標的群の試料とはより異なることが明らかになった。
図27を参照されたい。これらの群間の10個の転写の違いを検証した(データは示さず)。これらの10個の標的遺伝子は、ΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウンクローンの両方で発現が低減していた。
【0272】
次に、BANF1 cDNA(対照としてルシフェラーゼcDNAを使用)を追加することにより、cDNA相補性アプローチを採用した。cDNA相補性実験計画の概略図を
図28に示す。
【0273】
BANF1 cDNAをpLVX-EF1aプラスミドにサブクローニングし、ΔBANF1ノックダウン細胞、ΔANKLE2ノックダウン細胞、および非標的対照細胞におけるcDNAのレンチウイルス形質導入用にパッケージ化した。具体的には、ΔBANF1およびΔANKLE2ノックダウン細胞におけるタウ凝集の増加の救助についてcDNAを試験した。cDNA発現細胞をタウ-YFP Agg[+]細胞溶解物で2日間処理した。BANF1 cDNAがΔBANF1とΔANKLE2ノックダウン細胞の両方でタウ凝集を救助し、BANF1/ANKLE2とタウ凝集の間に別の機能的結びつきを提供できることを示した。
図29を参照されたい。
【0274】
次に、マウス皮質ニューロンの一次培養を使用して、有糸分裂後の細胞で、タウのリン酸化、誤った折り畳み、および不溶性に対するΔBANF1およびΔANKLE2変異の影響を研究した。皮質ニューロンは、Cas9とマウスESCでの有効性が以前に検証されたsgRNA(Banf1_g3、Ankle2_g3、またはPpp2ca_g2)の両方を発現するオールインワンレンチウイルス(AIO_LV、LV_Cas9_sgRNA)で形質導入された。マウス一次皮質ニューロンは、AIO_LVでプレーティングしてから2日後に形質導入され、蛍光免疫染色およびウエスタンブロット研究(Protein SimpleによるWESテクノロジーを使用)のために培養で14日間維持された。免疫蛍光抗体法では、C57BL/6マウス一次皮質ニューロン(市販)を0日目に96ウェルポリDリジンコーティングプレートにウェル当たり25,000ニューロンの密度でプレーティングした。2日目に、Banf1_g3もしくはAnkle2_g3もしくはPpp2ca_g2、または非標的_gRNA対照のAIO_LVを使用して、ニューロン当たり40,000ウイルスゲノムの感染多重度でニューロンに形質導入した。培地は3~4日ごとに交換した。16日目に、ニューロンを4%のパラホルムアルデヒド(PFA)の溶液で固定し、蛍光免疫染色で調べた。ウエスタンブロット研究では、400,000個のニューロンをポリDリジン6ウェルにプレーティングし、AIO-LV(ニューロン当たり25,000VG)で形質導入した。培地は3~4日ごとに交換した。培養14日後にニューロンを収集し、タンパク質研究のために調製した。
【0275】
14日後、AIO_LVで変換されたニューロンも収集して、遺伝子編集の程度(INDEL%)を決定した。遺伝子編集は、Ankle2_g3よりもBanf1_g3 sgRNAを使用した方が一貫して高いことがわかった。表12を参照されたい。
【表12】
【0276】
蛍光免疫染色研究では、タウの過剰リン酸化(細胞体樹状突起ドメイン)、核膜孔複合体の完全性(Nup98の誤局在)、核細胞質輸送障害(Ran/RanGAP1核/細胞質比の減少)などのタウオパチーに関連する異常な表現型に焦点を当てた。
【0277】
画像データ分析には、Opera Phenixハイコンテント共焦点イメージャー(Perkin Elmer)とHarmonyソフトウェア(Perkin Elmer)を組み合わせた自動化された偏りのない画像分析アプローチを使用した。各実験では、平均6つの生物学的複製が実行され、各ウェルで約70のフィールドが画像化され、生物学的複製ごとに分析され、一次抗体の標識に蛍光標識二次抗体が使用された。二次抗体は、Alexa-488nm(緑)、-568nm(オレンジ)、-647nm(遠赤色)と結合した。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を核染色に使用した。
【0278】
各フィールドでは、第一にDAPI+ニューロンの数をカウントした。第二に、細胞体樹状突起ドメインのニューロンマーカーである微小管関連タンパク質-2(Map2)の蛍光強度を使用して、細胞体樹状突起ドメインを含む細胞質をセグメント化し、健康なニューロンの数をカウントした。第三に、異なる細胞マーカー(ホスホタウS356、ホスホタウAT8(S202、T205)、総タウ、Nup98、LaminB1、Ran、RanGAP1)の蛍光強度を、細胞質、核ならびに核を取り巻く核周囲領域を含むいくつかの細胞内コンパートメントで測定した。第四に、各ウェルのすべてのフィールドのすべての細胞の平均を含む、各ウェルの平均蛍光強度(生物学的複製)を計算した。
【0279】
以下の組み合わせでバイオマーカー強度を定量化するための画像分析法を開発した:ホスホタウおよび総タウ;ホスホタウおよびLaminB1または核膜孔複合体(NPC);Nup98、RanおよびRanGAP1の核/細胞質比、およびホスホタウ強度。
【0280】
ΔBanf1およびΔAnkle2変異マウス皮質ニューロンは、非標的皮質ニューロンと同様のMap2細胞体樹状突起染色強度を示した。
図30Aおよび30Bを参照されたい。これは、Banf1とAnkle2の破壊が、14日後の有糸分裂後の皮質ニューロンのニューロンの生存に影響を与えないことを示している。
【0281】
ホスホタウ(セリン356)染色は、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1(p値<0.004)およびΔAnkle2(p値<0.001)変異皮質ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントで増加した。
図31Aを参照されたい。これは、タンパク質タウが細胞体樹状突起ドメインで高リン酸化凝集体を形成するアルツハイマー病の観察を彷彿とさせる。特に、ホスホタウ染色強度の増加は、核周囲領域で特に顕著であることがわかった。
図31Bを参照されたい。データは平均±平均の標準誤差(SEM)として表され、各実験条件の生物学的複製の数は点で示された。データは、2つの試料(つまり、ΔBanf1と非標的皮質ニューロン)を比較する際、対応のないスチューデントのt検定によって分析された。
【0282】
対照実験として、我々は、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1およびΔAnkle2変異体の細胞体樹状突起コンパートメントにおいて総タウ染色強度が増加しないことを決定した。
図32A~32Cを参照されたい。
【0283】
図33A~33Eに示すように、ホスホタウAT8(S202、T205)染色は、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1およびΔAnkle2変異ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントで増加している。
【0284】
病理学的タウは、タウを過剰発現するトランスジェニックマウスおよびヒトAD脳組織における核内輸送および核外輸送を損なう可能性がある。ホスホタウは核膜孔複合体の拡散バリア機能を破壊する。核膜孔複合体タンパク質ヌクレオポリンNup98は、いくつかのもつれを持ったニューロンの細胞体に蓄積し、インビトロでタウの凝集を促進することができる。Nup98の細胞内局在を調べたところ、非標的皮質ニューロンと比較して、それはΔBanf1およびΔAnkle2変異体の体細胞に富むことがわかった。Nup98の核/細胞質比は減少した。
図34A~34Dを参照されたい。
【0285】
さらに、RanおよびRanGAP1の核/細胞質比の減少は、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1およびΔAnkle2変異体における核膜孔複合体の能動輸送の障害の証拠を提供する。
図35A~35Dを参照されたい。
【0286】
マウス一次皮質ニューロンは、AIO_LV_NT、AIO_LV_Banf1_g3、およびAIO_LV_Ppp2ca_g2でプレーティングしてから2日後に形質導入され、蛍光ホスホタウ免疫染色(セリン356およびセリン202/スレオニン205、AT8抗体としても知られる)および誤って折り畳まれたタウ検出のために培養で14日間維持された。誤って折り畳まれたタンパク質凝集体とアグリソームを検出するための堅牢かつ定量的な方法としてENZOによるPROTEOSTAT(登録商標)アグリソーム検出キットを使用し、これはアグリソーム検出試薬(ADR)との抗体共局在研究用に最適化されている。PROTEOSTAT(登録商標)色素は誤って折り畳まれ凝集したタンパク質に通常見出される四次タンパク質構造のクロスベータスパイン(cross-beta spine)に特異的にインターカレートし、色素の回転を阻害し、強い蛍光を発する。16日目に、ニューロンを4%のパラホルムアルデヒド(PFA)の溶液で固定し、蛍光免疫染色について調べた。ΔBanf1(p値<0.026)およびΔPpp2ca(p値<0.0087)の細胞体樹状突起コンパートメントにおけるセリン356のタウのリン酸化の増加は、非標的皮質ニューロンと比較して変異皮質ニューロンで明らかになった。
図38Dを参照されたい。特に、ホスホタウ染色強度の増加は、核周囲領域として定義した核のすぐ周りの細胞質領域で特に顕著であることがわかった(ΔBanf1 p値<0.002およびΔPpp2ca p値<0.04)。
図38Bを参照されたい。同様に、ΔBanf1(p値<0.026)およびΔPpp2ca(p値<0.0087)の核周囲領域でのホスホタウ(セリン202/スレオニン205)の増加が、非標的皮質ニューロンと比較して変異皮質ニューロンで観察された。
図39Bおよび39Dを参照されたい。データは平均±平均値の標準誤差(SEM)として表され、各実験条件の生物学的複製の数は点で示された。データは、2つの試料(つまり、ΔBanf1と非標的皮質ニューロン)を比較する際、対応のないスチューデントのt検定によって分析された。セリン356(ΔBanf1の場合は、ピアソン相関(ρ)=0.85-R二乗=0.72;ΔPpp2caの場合は、ρ=0.92-R二乗=0.85)ならびにセリン202およびスレオニン205(ΔBanf1の場合はρ=0.86-R二乗=0.74;ΔPpp2caの場合はρ=0.94-R二乗=0.89)でのタウリン酸化の増加は、非標的化と比較して、変異ニューロンの細胞体における誤って折り畳まれたタウの検出の増加と相関する。
図38A~38Fおよび39A~39Fを参照されたい。相関分析は、ピアソンのパラメトリック検定を使用して行われた。<0.05のP値が有意であるとみなされた。Banf1、Ankle2、またはPpp2caの破壊により、タウのリン酸化と誤った折り畳みが増加する可能性があることを確認した。
【0287】
次に、タウcDNA 3MUTまたはP301Sで形質導入されたマウスからの脳細胞溶解物を使用して、変異皮質ニューロンにタウ播種を使用して実験を行った。ホスホタウ(セリン356)染色は、タウcDNA 3MUTを添加した場合、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1およびΔAnkle2変異体の細胞体樹状突起ドメインで増加した。
図36A~36Dを参照されたい。ただし、タウcDNA 3MUTを追加した場合、非標的皮質ニューロンと比較して、ΔBanf1およびΔAnkle2変異体の細胞体樹状突起ドメインでは総タウ染色は増加しなかった。
図37A~37Cを参照されたい。
【0288】
次に、器官型脳スライス培養を使用して、Banf1、Ankle2、およびPpp2caをタウ凝集の遺伝的修飾因子として検証する。器官型脳スライス培養物は、野生型C57BL/6マウスから調製され、Cas9_Banf1_g3、Cas9_Ankle2_g3、Cas9_Ppp2ca_g2、およびCas9_非標的_g3を含むLV-All-In-One(AIO)コンストラクトで0日目に1010VGで形質導入される。あるいは、器官型脳スライス培養物は、野生型C57BL/6マウスから調製され、0日目にAnkle2、Ppp2ca、またはBanf1を標的とするASOで形質導入される。14日目に、NGS分析(INDEL%)、ホスホタウ染色(S356およびAT8)、および誤って折り畳まれたタウのThS染色のために試料が収集される。
【0289】
次に、マウス海馬への定位的AIO-LV注入を使用して、タウ凝集の遺伝的修飾因子としてBanf1、Ankle2、およびPpp2caを検証した。合計24匹のC57BL/6野生型動物(NT、AIO Cas9_Banf1、AIO Cas9_Ankle2、およびAIO Cas9_Ppp2ca)が注入された。注入の7日後に2匹の動物(各条件ごとに)を降ろした。NGSは有意な編集を明らかにした(INDELs%約>15%として;データは表示しない)。その後、ウエスタンブロット分析(ホスホタウ、誤って折り畳まれたタウ、総タウ)およびタウバイオセンサー細胞における海馬溶解物のタウ播種アッセイのために動物を降ろす。次に、dCas9-KRABとマウス海馬のBanf1、Ankle2、またはPpp2caを標的とするgRNAの定位的AIO-LV注入を使用して、タウ凝集の遺伝的修飾因子としてBanf1、Ankle2、およびPpp2caを検証する。
【0290】
次に、マウス海馬へのASOの定位的注入を使用して、タウ凝集の遺伝的修飾因子としてBanf1、Ankle2、およびPpp2caを検証する。マウスBanf1を標的とするASOの例を表13に示す。マウスPpp2caを標的とするASOの例を表14に示す。マウスAnkle2を標的とするASOの例を表15に示す。表13~15のASOを設計するために使用される親アンチセンスRNA配列を表16に示す。
【表13-1】
【表13-2】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【表16-1】
【表16-2】
【表16-3】
【0291】
すべてのASOは、ホスホロチオエート骨格を有する5-10-5ギャップマーとして設計された。2’メトキシエチル修飾塩基が翼に使用され(両端から5ヌクレオチド)、10ヌクレオチドコアは未修飾のDNA塩基を有していた。
図40を参照されたい。一次スクリーニングは、最初に100nMのASO濃度にてNSC34細胞で実施された。すべてのASOは、リポフェクタミンRNAiMAxを使用してトランスフェクトされ、TaqMan qPCR用のRNAを回収する前に、細胞を72時間インキュベートした。標的の全mRNAのノックダウンを未処理の細胞と比較した。一次スクリーニングデータに基づいて、50nMおよび5nMの二次スクリーニングのヒットが選択された。トランスフェクションおよびTaqMan qPCR分析は、一次スクリーニングと同様の方法で実施した。mAnkle2の一次スクリーニングの結果を
図41Aに示し、mAnkle2の二次スクリーニングの結果を
図41Bおよび41Cに示す。mPpp2caの一次スクリーニングの結果を
図42Aに示し、mPpp2caの二次スクリーニングの結果を
図42Bおよび42Cに示す。mBanf1の一次スクリーニングの結果を
図43に示す。これらの結果に示されているように、Banf1、Ankle2、またはPpp2caをターゲットとするASOは、NSC34細胞で検証されており、発現の>75%低減を示す。
【0292】
結論として、Banf1、Ankle2、およびPpp2caをインビトロ(マウス皮質ニューロンの一次培養)、エクスビボ(器官型の脳スライス培養)、およびインビボ(海馬の定位的注入)のタウ凝集の修飾因子として検証するための3つのアプローチを開発した。Banf1、Ankle2、および/またはPpp2caの破壊が、タウオパチーの新しいマウスモデルの開発に使用できることを提案する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団であって、
(a)1つ以上の細胞における微小管関連タンパク質タウコード配列と、
(b)(i)前記1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての遺伝子改変、ならびに/または(ii)前記1つ以上の細胞において、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を含む、非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目2)
前記1つ以上の細胞が、神経細胞である、項目1に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目3)
前記微小管関連タンパク質タウコード配列が、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列である、項目1または2に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目4)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、ゲノムに組み込まれている、項目3に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目5)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、相補的DNA(cDNA)配列を含む、項目3または4に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目6)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている、項目3~5のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目7)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、異種プロモーターに作動可能に連結されている、項目3~6のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目8)
前記異種プロモーターが、マウスプリオンタンパク質プロモーターである、項目7に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目9)
前記異種プロモーターが、ニューロン特異的プロモーターである、項目7に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目10)
前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシン-1プロモーターである、項目9に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目11)
前記微小管関連タンパク質タウが、タウオパチー関連変異を含む、先行項目のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目12)
前記タウオパチー関連変異が、P301S変異を含む、項目11に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目13)
前記微小管関連タンパク質タウが、配列番号98に記載の配列を含む、項目11に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目14)
前記タウオパチー関連変異が、A152T/P301L/S320F三重変異を含む、項目11に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目15)
前記微小管関連タンパク質タウコード配列が、配列番号83に記載の配列を含むか、または前記微小管関連タンパク質タウが、配列番号84に記載の配列を含む、項目14に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目16)
前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団が、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての前記遺伝子改変を含む、先行項目のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、動物細胞の集団。
(項目17)
前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団が、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1、Ppp2ca、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含む、先行項目のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目18)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸を含む、先行項目のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目19)
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである、項目18に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目20)
前記ヌクレアーゼ剤が、前記Casタンパク質および前記ガイドRNAである、項目19に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目21)
前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質である、項目20に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目22)
前記Casタンパク質が、触媒的に活性なCasタンパク質である、項目20または21に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目23)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子、または前記転写抑制因子をコードする核酸を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目24)
前記転写抑制因子が、ガイドRNAと、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質とを含み、任意選択で、前記転写抑制因子ドメインが、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメインである、項目23に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目25)
前記ガイドRNAが、マウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、項目20~24のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目26)
前記ガイドRNAが、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、項目20~24のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目27)
前記ガイドRNAが、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む、項目20~24のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目28)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤を含むか、あるいは前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記RNAi剤をコードする核酸を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目29)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105~324のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む、項目28に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目30)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268~270、272、275、276、279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のうちのいずれか1つに記載の配列またはこれらの改変バージョンを含む、項目29に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目31)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む、項目29または30に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目32)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む、5-10-5ギャップマーである、項目31に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目33)
タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての前記遺伝子改変を含まないか、または、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含まない非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団において増加する、先行項目のいずれか一項に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目34)
前記少なくとも1つの徴候または症状が、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む、項目33に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目35)
前記少なくとも1つの徴候または症状が、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含む、項目33または34に記載の非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団。
(項目36)
前記細胞が、インビボにある、先行項目のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
(項目37)
前記細胞が、インビトロにある、項目1~35のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
(項目38)
前記細胞が、ヒト細胞である、先行項目のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
(項目39)
前記細胞が、げっ歯動物細胞であり、任意選択で、前記げっ歯動物細胞が、マウス細胞またはラット細胞である、項目1~37のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
(項目40)
前記細胞が、マウス細胞である、項目39に記載の動物細胞の集団。
(項目41)
前記細胞が、神経細胞を含む、先行項目のいずれか一項に記載の動物細胞の集団。
(項目42)
前記神経細胞が、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロンを含む、項目41に記載の動物細胞の集団。
(項目43)
前記神経細胞が、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンを含む、項目41に記載の動物細胞の集団。
(項目44)
前記神経細胞が、一次マウスニューロンを含む、項目41に記載の動物細胞の集団。
(項目45)
前記組織が、インビボにある、項目1~35のいずれか一項に記載の動物組織。
(項目46)
前記組織が、エクスビボにある、項目1~35のいずれか一項に記載の動物組織。
(項目47)
前記動物が、げっ歯動物であり、任意選択で、前記げっ歯動物が、マウスまたはラットである、項目1~35および45~46のいずれか一項に記載の動物組織。
(項目48)
前記動物が、前記マウスである、項目47に記載の動物組織。
(項目49)
前記組織が、神経系組織である、項目1~35および45~48のいずれか一項に記載の動物組織。
(項目50)
前記組織が、脳スライスを含む、項目49に記載の動物組織。
(項目51)
BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての前記遺伝子改変が、1つ以上の神経細胞内にあり、かつ/またはBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる前記1つ以上の薬剤が、1つ以上の神経細胞にあり、任意選択で、前記1つ以上の神経細胞が、海馬にある、項目1~35のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
(項目52)
前記非ヒト動物が、げっ歯動物であり、任意選択で、前記げっ歯動物が、マウスまたはラットである、項目1~35および51のいずれか一項に記載の非ヒト動物。
(項目53)
前記非ヒト動物が、前記マウスである、項目52に記載の非ヒト動物。
(項目54)
前記マウスが、前記1つ以上の細胞において、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現をそれぞれ低減させる、前記BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての前記遺伝子改変をさらに含み、かつ/または前記1つ以上の細胞においてBANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上もしくはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤をさらに含む、PS19トランスジェニックマウスである、項目53に記載の非ヒト動物。
(項目55)
タウオパチーの治療のための治療薬候補を評価するための方法であって、
(a)項目1~35および51~54のいずれか一項に記載の非ヒト動物、項目1~35および45~50のいずれか一項に記載の動物組織、または項目1~44のいずれか一項に記載の動物細胞の集団に、候補薬剤を投与することと、
(b)前記候補薬剤が、タウオパチーに関連する1つ以上の徴候または症状に対して効果を有するかどうかを決定するために1つ以上のアッセイを実行することと、
(c)タウオパチーに関連する前記1つ以上の徴候または症状に対して効果を有する前記候補薬剤を治療薬候補として特定することと、を含む方法。
(項目56)
前記1つ以上の徴候または症状が、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記少なくとも1つの徴候または症状が、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化タンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含む、項目55または56に記載の方法。
(項目58)
前記候補薬剤が、前記非ヒト動物に投与される、項目55~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記候補薬剤が、エクスビボで前記動物組織に投与される、項目55~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
候補薬剤が、インビトロで前記動物細胞の集団に投与される、項目55~57のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
項目1~35および51~54のいずれか一項に記載の非ヒト動物、項目1~35および45~50のいずれか一項に記載の動物組織、または項目1~44のいずれか一項に記載の動物細胞の集団を作製する方法であって、
(a)BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤を、微小管関連タンパク質タウコード配列を含む非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に導入することと、
(b)前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団をスクリーニングして、前記1つ以上の薬剤の存在を確認することと、を含む、方法。
(項目62)
項目1~35および51~54のいずれか一項に記載の非ヒト動物、項目1~35および45~50のいずれか一項に記載の動物組織、または項目1~44のいずれか一項に記載の動物細胞の集団を作製する方法であって、
(a)非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団に、
(i)外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、
(ii)BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる1つ以上の薬剤と、を導入することと、
(b)前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団をスクリーニングして、前記1つ以上の薬剤および前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列の存在を確認することと、を含む、方法。
(項目63)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記1つ以上の薬剤が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される、項目61~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記方法が、前記非ヒト動物を作製するためのものであり、前記1つ以上の薬剤が、髄腔内注射、頭蓋内注射、または脳室内注射によって前記非ヒト動物に投与され、任意選択で、前記1つ以上の薬剤が、脳への定位的注入によって前記非ヒト動物に投与される、項目61~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
タウオパチーモデル非ヒト動物、タウオパチーモデル動物組織、または動物細胞のタウオパチーモデル集団におけるタウ凝集を加速または悪化させるための方法であって、前記タウオパチーモデル非ヒト動物、前記タウオパチーモデル動物組織、または前記動物細胞のタウオパチーモデル集団に、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低下させる1つ以上の薬剤を導入することを含む、方法。
(項目67)
前記タウオパチーモデル非ヒト動物、前記タウオパチーモデル動物組織、または前記動物細胞のタウオパチーモデル集団が、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列を含む、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、ゲノムに組み込まれている、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、相補的DNA(cDNA)配列を含む、項目67または68に記載の方法。
(項目70)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、前記非ヒト動物、前記動物組織、または前記動物細胞の集団における発現のためにコドン最適化されている、項目67~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、異種プロモーターに作動可能に連結されている、項目67~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記異種プロモーターが、マウスプリオンタンパク質プロモーターである、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記異種プロモーターが、ニューロン特異的プロモーターである、項目71に記載の方法。
(項目74)
前記ニューロン特異的プロモーターが、シナプシン-1プロモーターである、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが、タウオパチー関連変異を含む、項目67~74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
前記タウオパチー関連変異が、P301S変異を含む、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが、配列番号98に記載の配列を含む、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記タウオパチー関連変異が、A152T/P301L/S320F三重変異を含む、項目75に記載の方法。
(項目79)
前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列が、配列番号83に記載の配列を含むか、または前記外因性ヒト微小管関連タンパク質タウが、配列番号84に記載の配列を含む、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするヌクレアーゼ剤、または前記ヌクレアーゼ剤をコードする核酸を含む、項目66~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
前記ヌクレアーゼ剤が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNAである、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記ヌクレアーゼ剤が、前記Casタンパク質および前記ガイドRNAである、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記Casタンパク質が、Cas9タンパク質である、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記Casタンパク質が、触媒的に活性なCasタンパク質である、項目82または83に記載の方法。
(項目85)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする転写抑制因子、または前記転写抑制因子をコードする核酸を含む、項目66~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目86)
前記転写抑制因子が、ガイドRNAと、転写抑制因子ドメインに融合された触媒的に不活性なCasタンパク質とを含み、任意選択で、前記転写抑制因子ドメインが、クルッペル関連ボックス(KRAB)ドメインである、項目85に記載の方法。
(項目87)
前記ガイドRNAが、マウスBanf1を標的とし、配列番号44~46に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトBANF1を標的とし、配列番号27~30に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、項目82~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
前記ガイドRNAが、マウスPpp2caを標的とし、配列番号47~49に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトPPP2CAを標的とし、配列番号31~32に記載の配列のうちのいずれか1つを含む、項目82~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
前記ガイドRNAが、マウスAnkle2を標的とし、配列番号50~52に記載の配列のうちのいずれか1つを含むか、または前記ガイドRNAが、ヒトANKLE2を標的とし、配列番号38に記載の配列を含む、項目82~86のいずれか一項に記載の方法。
(項目90)
前記1つ以上の薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤、あるいは前記アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは前記RNAi剤をコードする核酸を含む、項目66~79のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105~324のうちのいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268-270、272、275、276、279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のうちのいずれか1つに記載の配列またはそれらの改変バージョンを含む、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む、項目91または92に記載の方法。
(項目94)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む、5-10-5ギャップマーである、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記1つ以上の薬剤が、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、または脂質ナノ粒子を介して送達される、項目66~94のいずれか一項に記載の方法。
(項目96)
前記1つ以上の薬剤が、髄腔内注入、頭蓋内注入、または脳室内注入によって前記非ヒト動物に投与され、任意選択で、前記1つ以上の薬剤が、脳への定位的注入によって前記非ヒト動物に投与される、項目66~95のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
タウオパチーの少なくとも1つの徴候または症状が、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる前記1つ以上の薬剤を含まない非ヒト動物、動物組織、または動物細胞の集団と比較して、前記非ヒト動物、前記動物組織、または動物細胞の集団において増加する、項目66~96のいずれか一項に記載の方法。
(項目98)
前記少なくとも1つの徴候または症状が、タウの過剰リン酸化またはタウの凝集を含む、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記少なくとも1つの徴候または症状が、細胞分画後の不溶性画分におけるタウおよび/もしくはホスホタウの増加、ニューロンの細胞体樹状突起コンパートメントにおけるホスホタウの増加、ニューロンの核周囲領域におけるホスホタウの増加、ニューロンにおける核膜孔複合体タンパク質Nup98-Nup96(Nup98)の核対細胞質比の減少、ニューロンにおけるGTP結合核タンパク質Ran(Ran)の核対細胞質比の減少、またはニューロンにおけるRan GTPase活性化のタンパク質1(RanGAP1)の核対細胞質比の減少を含む、項目97または98に記載の方法。
(項目100)
前記細胞が、インビボにある、項目66~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記細胞が、インビトロにある、項目66~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記細胞が、ヒト細胞である、項目66~101のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記細胞が、げっ歯動物細胞であり、任意選択で前記げっ歯動物細胞が、マウス細胞またはラット細胞である、項目66~101のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記細胞が、マウス細胞である、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記細胞が、神経細胞を含む、項目66~104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記神経細胞が、ヒト人工多能性幹細胞に由来するニューロンを含む、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記神経細胞が、マウス胚性幹細胞に由来するニューロンを含む、項目105に記載の方法。
(項目108)
前記神経細胞が、一次マウスニューロンを含む、項目105に記載の方法。
(項目109)
前記組織が、インビボにある、項目66~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記組織が、エクスビボにある、項目66~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
前記動物組織が、げっ歯動物組織であり、任意選択で前記げっ歯動物が、マウスまたはラットである、項目66~99および109~110のいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記動物組織が、マウス組織である、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記組織が、神経系組織である、項目66~99および109~112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記組織が、脳切片を含む、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記非ヒト動物が、げっ歯動物であり、任意選択で前記げっ歯動物が、マウスまたはラットである、項目66~99のいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記非ヒト動物が、マウスである、項目115に記載の方法。
(項目117)
前記マウスが、BANF1、PPP2CA、およびANKLE2のうちの1つ以上またはすべての発現を低減させる、前記1つ以上の薬剤をさらに含むPS19トランスジェニックマウスである、項目116に記載の方法。
(項目118)
非ヒト動物ゲノムであって、外因性ヒト微小管関連タンパク質タウコード配列と、Banf1、Ppp2ca、およびAnkle2の1つ以上の発現をそれぞれ低減させる、前記Banf1、Ppp2ca、およびAnkle2の1つ以上の遺伝子改変と、を含む、非ヒト動物ゲノム。
(項目119)
細胞におけるBANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2の発現を低減させるもしくは阻害する薬剤、または前記薬剤をコードする核酸であって、任意選択で、前記薬剤が、BANF1、PPP2CA、もしくはANKLE2を標的とする、ヌクレアーゼ剤またはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi剤である、薬剤、または前記薬剤をコードする核酸。
(項目120)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105~324のいずれか1つに記載の配列またはその改変バージョンを含む、項目119に記載の薬剤。
(項目121)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号105、106、110~113、115、120~122、124、125、130、133、136、137、150、152、153、155、158~160、162、165、166、169、171~173、175、177、181~184、187、194、197、211、213、215、216、220~223、225、230~232、234、235、240、243、246、247、260、262、263、265、268-270、272、275、276、279、281~283、285、287、291~294、297、304、307、321、および323のうちのいずれか1つに記載の配列またはそれらの改変バージョンを含む、項目120に記載の薬剤。
(項目122)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、1つ以上のホスホロチオエート結合および/または1つ以上の2’-メトキシエチル修飾塩基を含む、項目120または121に記載の薬剤。
(項目123)
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ホスホロチオエート骨格、2’-メトキシエチル修飾塩基の5’ウィング、DNAの中央10ヌクレオチドコア、および2’-メトキシエチル修飾塩基の3’ウィングを含む5-10-5ギャップマーである、項目122に記載の薬剤。
【配列表】