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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】電動機、ファン、及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/08 20060101AFI20250411BHJP
   H02K 1/06 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
H02K1/08
H02K1/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023508361
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012796
(87)【国際公開番号】W WO2022201481
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】下川 貴也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】土田 和慶
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諒伍
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-215479(JP,A)
【文献】特開2019-115141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/08
H02K 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10個の磁極を持つロータと、
環状のコアバックと、前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在する9個のティースとを有するステータと
を備え、
前記9個のティースは、周方向に隣接する3個のティースを一組とする3組のティース群から構成されており、
前記3組のティース群は、U相、V相、及びW相にそれぞれ対応しており、
前記3組のティース群のうちの各組の前記3個のティースは、前記3個のティースのうちの中央に位置する中央ティースと、前記中央ティースに対して前記ロータの回転方向における上流側に位置する上流側ティースと、前記中央ティースに対して前記回転方向における下流側に位置する下流側ティースとから構成されており、
前記上流側ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している上流側ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記上流側ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記上流側ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
軸方向と直交する平面において、前記上流側ティースの前記上流側先端部の内周面に沿った前記上流側ティースの前記上流側先端部の前記内周面の長さをLFRとし、前記上流側ティースの前記下流側先端部の内周面に沿った前記上流側ティースの前記下流側先端部の前記内周面の長さをLFLとしたとき、
LFL>LFR
を満たし、
前記中央ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している中央ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
前記U相に対応する前記3個のティースのうちの前記中央ティースをU相中央ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相中央ティースに隣接する前記上流側ティースをU相上流側ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相上流側ティースに隣接する前記下流側ティースをV相下流側ティースと定義し、
前記平面において、前記ロータの回転中心と前記U相中央ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ1fとし、
前記平面において、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記V相下流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ2bとしたとき、
-18(deg)≦(θ1f-θ2b)<0(deg)
を満たし、
前記ステータは、前記上流側ティースを絶縁する上流側インシュレータを有し、
前記上流側インシュレータは、
前記周方向において前記上流側ティースの前記上流側先端部に隣接する上流側絶縁部と、
前記周方向において前記上流側ティースの前記下流側先端部に隣接する下流側絶縁部と
を有し、
前記平面において、前記周方向における前記上流側インシュレータの前記上流側絶縁部の最大厚みをTFRとし、
前記平面において、前記周方向における前記上流側インシュレータの前記下流側絶縁部の最大厚みをTFLとしたとき、
TFL<TFR
を満たす電動機。
【請求項2】
前記下流側ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している下流側ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記下流側ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記下流側ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
前記平面において、前記下流側ティースの前記上流側先端部の内周面に沿った前記下流側ティースの前記上流側先端部の前記内周面の長さをLBRとし、前記下流側ティースの前記下流側先端部の内周面に沿った前記下流側ティースの前記下流側先端部の前記内周面の長さをLBLとしたとき、
LBL<LBR
を満たす請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記中央ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している中央ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
前記U相に対応する前記3個のティースのうちの前記中央ティースをU相中央ティースと定義し、
前記U相に対応する前記3個のティースのうちの前記上流側ティースをU相上流側ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相上流側ティースに隣接する前記下流側ティースをV相下流側ティースと定義し、
前記平面において、前記ロータの回転中心と前記U相中央ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ1fとし、
前記平面において、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記V相下流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ2bとしたとき、
θ1f<θ2b
を満たす請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
前記中央ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している中央ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
前記U相に対応する前記3個のティースのうちの前記中央ティースをU相中央ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相中央ティースに隣接する前記下流側ティースをU相下流側ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相下流側ティースに隣接する前記上流側ティースをW相上流側ティースと定義し、
前記平面において、前記ロータの回転中心と前記W相上流側ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記U相下流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ3fとし、
前記平面において、前記回転中心と前記U相中央ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記U相下流側ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ1bとしたとき、
θ3f>θ1b
を満たす請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項5】
-16(deg)≦(θ1f-θ2b)≦-5(deg)
を満たす請求項1に記載の電動機。
【請求項6】
前記ステータは、前記下流側ティースを絶縁する下流側インシュレータを有し、
前記下流側インシュレータは、
前記周方向において前記下流側ティースの前記上流側先端部に隣接する上流側絶縁部と、
前記周方向において前記下流側ティースの前記下流側先端部に隣接する下流側絶縁部と
を有し、
前記平面において、前記周方向における前記下流側インシュレータの前記上流側絶縁部の最大厚みをTBRとし、
前記平面において、前記周方向における前記下流側インシュレータの前記下流側絶縁部の最大厚みをTBLとしたとき、
TBL>TBR
を満たす請求項1からのいずれか1項に記載の電動機。
【請求項7】
羽根と、
前記羽根を駆動する請求項1からのいずれか1項に記載の電動機と
を備えたファン。
【請求項8】
室内機と、
前記室内機に接続される室外機と
を備え、
前記室内機、前記室外機、又は前記室内機及び前記室外機の各々は、請求項1からのいずれか1項に記載の電動機を有する
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、10個の磁極を持つロータと9個のティースを持つステータとを有する電動機が知られている。例えば、特許文献1に記載の電動機では、同相に対応する2個のティース間の幅が、互いに異なる相に対応する2個のティース間の幅よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-205387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の、10個の磁極を持つロータと9個のティースを持つステータとを有する電動機では、ロータを回転させるための有効磁束のロスが増加し、電動機の効率が低下する。
【0005】
本開示の目的は、10個の磁極を持つロータと9個のティースを持つステータとを有する電動機におけるロータを回転させるための有効磁束のロスを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電動機は、
10個の磁極を持つロータと、
環状のコアバックと、前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在する9個のティースとを有するステータと
を備え、
前記9個のティースは、周方向に隣接する3個のティースを一組とする3組のティース群から構成されており、
前記3組のティース群は、U相、V相、及びW相にそれぞれ対応しており、
前記3組のティース群のうちの各組の前記3個のティースは、前記3個のティースのうちの中央に位置する中央ティースと、前記中央ティースに対して前記ロータの回転方向における上流側に位置する上流側ティースと、前記中央ティースに対して前記回転方向における下流側に位置する下流側ティースとから構成されており、
前記上流側ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している上流側ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記上流側ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記上流側ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
軸方向と直交する平面において、前記上流側ティースの前記上流側先端部の内周面に沿った前記上流側ティースの前記上流側先端部の前記内周面の長さをLFRとし、前記上流側ティースの前記下流側先端部の内周面に沿った前記上流側ティースの前記下流側先端部の前記内周面の長さをLFLとしたとき、
LFL>LFR
を満たし、
前記中央ティースは、
前記環状のコアバックから前記ロータに向けて延在している中央ティース本体と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記上流側に向けて延在している上流側先端部と、
前記ロータに面しており、前記中央ティース本体から前記下流側に向けて延在している下流側先端部と
を有し、
前記U相に対応する前記3個のティースのうちの前記中央ティースをU相中央ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相中央ティースに隣接する前記上流側ティースをU相上流側ティースと定義し、
前記9個のティースのうちの、前記U相上流側ティースに隣接する前記下流側ティースをV相下流側ティースと定義し、
前記平面において、前記ロータの回転中心と前記U相中央ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ1fとし、
前記平面において、前記回転中心と前記U相上流側ティースの前記上流側先端部の前記上流側における端部とを通る直線と、前記回転中心と前記V相下流側ティースの前記下流側先端部の前記下流側における端部とを通る直線とが成す角度をθ2bとしたとき、
-18(deg)≦(θ1f-θ2b)<0(deg)
を満たし、
前記ステータは、前記上流側ティースを絶縁する上流側インシュレータを有し、
前記上流側インシュレータは、
前記周方向において前記上流側ティースの前記上流側先端部に隣接する上流側絶縁部と、
前記周方向において前記上流側ティースの前記下流側先端部に隣接する下流側絶縁部と
を有し、
前記平面において、前記周方向における前記上流側インシュレータの前記上流側絶縁部の最大厚みをTFRとし、
前記平面において、前記周方向における前記上流側インシュレータの前記下流側絶縁部の最大厚みをTFLとしたとき、
TFL<TFR
を満たす。
本開示の他の態様に係るファンは、
羽根と、
前記羽根を駆動する前記電動機と
を備える。
本開示の他の態様に係る空気調和機は、
室内機と、
前記室内機に接続される室外機と
を備え、
前記室内機、前記室外機、又は前記室内機及び前記室外機の各々は、前記電動機を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、10個の磁極を持つロータと9個のティースを持つステータとを有する電動機におけるロータを回転させるための有効磁束のロスを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電動機を概略的に示す部分断面図である。
図2】xy平面における電動機を概略的に示す断面図である。
図3】ロータを概略的に示す断面図である。
図4】ステータを概略的に示す断面図である。
図5】ステータを概略的に示す断面図である。
図6】各中央ティースの構造を概略的に示す平面図である。
図7】各上流側ティースの構造を概略的に示す平面図である。
図8】各下流側ティースの構造を概略的に示す平面図である。
図9】ステータを概略的に示す断面図である。
図10】ステータを概略的に示す断面図である。
図11】各中央ティースに取り付けられたインシュレータの構造を概略的に示す平面図である。
図12】各上流側ティースに取り付けられたインシュレータの構造を概略的に示す平面図である。
図13】各下流側ティースに取り付けられたインシュレータの構造を概略的に示す平面図である。
図14】θ1f-θ2b(deg)と電動機に生じる誘起電圧との関係を示すグラフである。
図15】θ1f-θ2b(deg)と電動機に生じる誘起電圧との関係を示すグラフである。
図16】実施の形態2に係るファンを概略的に示す図である。
図17】実施の形態3に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
各図に示されるxyz直交座標系において、z軸方向(z軸)は、電動機1の軸線Axと平行な方向を示し、x軸方向(x軸)は、z軸方向に直交する方向を示し、y軸方向(y軸)は、z軸方向及びx軸方向の両方に直交する方向を示す。軸線Axは、ロータ2の回転中心、すなわち、ロータ2の回転軸である。軸線Axと平行な方向は、「ロータ2の軸方向」又は単に「軸方向」とも称する。径方向は、ロータ2又はステータ3の半径方向であり、軸線Axと直交する方向である。xy平面は、軸方向と直交する平面である。矢印D10は、軸線Axを中心とする周方向を示す。ロータ2又はステータ3の周方向を、単に「周方向」とも称する。
【0010】
図1は、実施の形態1に係る電動機1を概略的に示す部分断面図である。
図2は、xy平面における電動機1を概略的に示す断面図である。D10で示される矢印のうちの矢印D11は、ロータ2の回転方向を示す。D10で示される矢印のうちの矢印D12は、ロータ2の回転方向の逆方向を示す。
【0011】
電動機1は、ロータ2と、ステータ3と、回路基板4と、モールド樹脂5と、ロータ2を回転可能に保持するベアリング7a及び7bとを有する。電動機1は、例えば、永久磁石同期電動機(ブラシレスDCモータとも称する)である。
【0012】
ベアリング7a及び7bは、ロータ2を回転可能に支持する。
【0013】
〈ロータ2〉
ロータ2は、ステータ3の内側に回転可能に配置されている。ロータ2とステータ3との間には、エアギャップが存在する。ロータ2は、軸線Axを中心として回転する。
【0014】
図3は、ロータ2を概略的に示す断面図である。
ロータ2は、メインマグネット21と、メインマグネット21の内側に配置されたシャフト23とを有する。メインマグネット21とシャフト23との間には、樹脂22が充填されていてもよい。
【0015】
メインマグネット21は、軸方向においてステータコア31よりも長い。この構成により、軸方向におけるステータコア31の両端にもロータ2からの磁束が流入しやすいという利点が得られる。
【0016】
メインマグネット21は、例えば、ボンド磁石である。ロータ2は、例えば、SPM(Surface Permanent Magnet)ロータでもよい。この場合、ロータコアの外周面に複数の永久磁石が取り付けられている。
【0017】
メインマグネット21は、周方向に配列された10個の磁極を持つ。したがって、ロータ2は、10個の磁極を持つ。
【0018】
IPM(Interior Permanent Magnet)ロータをロータ2として用いてもよい。ロータ2がIPMロータの場合、例えば、ロータコアに形成された複数の磁石挿入孔に、永久磁石が配置される。ロータ2がIPMロータの場合、ロータコアは、複数の電磁鋼板によって形成される。この場合、各電磁鋼板は、例えば、0.2mmから0.5mmの厚みを持つ。電磁鋼板は、軸方向に積層される。ただし、ロータコアは、複数の電磁鋼板の代わりに、軟磁性材料及び樹脂を混ぜて形成された樹脂鉄心でもよい。
【0019】
シャフト23は、例えば、ロータ2の中央部に形成された孔に挿入されている。
【0020】
シャフト23は、例えば、コーキング又はポリブチレンテレフタレート(PolyButyleneTerephthalate:PBT)などの樹脂22でメインマグネット21と一体化される。
【0021】
〈ステータ3〉
図4は、ステータ3を概略的に示す断面図である。
【0022】
ステータ3は、ロータ2の外側に配置されている。ステータ3は、ステータコア31と、少なくとも1つのコイル32と、少なくとも1つのインシュレータ33とを有する。
【0023】
ステータコア31は、コアバック31a(ヨークとも称する)と、コアバック31aからロータ2に向けて延在する9個のティース31bとを有する。コアバック31aは、例えば、環状のコアバックである。したがって、ステータコア31は、環状のコアである。図4に示される例では、ステータコア31は、コイル32が配置された9個のスロットを有する。
【0024】
各ティース31bは、径方向に延在している。言い換えると、各ティース31bは、コアバック31aからロータ2の回転中心に向けて延在している。
【0025】
ステータコア31は、例えば、磁性を持つ複数の鉄の薄板で構成されている。ステータコア31は、例えば、軸方向に積層された複数の電磁鋼板である。各電磁鋼板は、環状のコアである。ステータコア31の各電磁鋼板の厚さは、例えば、0.2mmから0.5mmである。
【0026】
コイル32は、3相コイルである。すなわち、コイル32は、U相、V相、及びW相の3相を持つ。各コイル32は、集中巻で各ティース31bの周囲に巻かれている。
【0027】
図4に示される例では、9個のコイル32は、9個のティース31bのうちの周方向に隣接する3個のティース31bに巻かれたコイル32が同一の相を形成するように、9個のティース31bにそれぞれ巻かれている。
【0028】
コイル32は、ステータコア31に取り付けられたインシュレータ33に巻かれている。この場合、コイル32は、インシュレータ33によって絶縁されている。コイル32は、例えば、銅又はアルミニウムを含む材料で作られている。
【0029】
インシュレータ33は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PolyButyleneTerephthalate:PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PolyPhenylene Sulfide:PPS)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)などの絶縁性の樹脂で作られている。樹脂で作られたインシュレータ33は、例えば、0.035mmから0.4mmの厚さの絶縁性フィルムである。
【0030】
例えば、インシュレータ33は、ステータコア31と一体的に成形される。ただし、ステータコア31とは別にインシュレータ33が成形されてもよい。この場合、インシュレータ33が成形された後に、インシュレータ33がステータコア31に嵌められる。
【0031】
図1に示される例では、ステータコア31、コイル32、及びインシュレータ33は、モールド樹脂5によって覆われている。ステータコア31、コイル32、及びインシュレータ33は、例えば、鉄を含む材料で作られた円筒状シェルによって固定されてもよい。この場合、例えば、ステータ3は、ロータ2と共に、焼き嵌めによって円筒状シェルで覆われる。
【0032】
図1に示されるように、回路基板4は、ステータ3に固定されている。回路基板4は、電動機1を制御するための駆動素子を有する。
【0033】
図1に示されるように、モールド樹脂5は、回路基板4をステータ3と一体化させる。モールド樹脂5は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(BMC)、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0034】
ステータコア31を具体的に説明する。
図5は、ステータ3を概略的に示す断面図である。
【0035】
9個のティース31b(図5では、後述する、3個の中央ティース311、3個の上流側ティース312、及び3個の下流側ティース313)は、周方向に隣接する3個のティース31bを一組とする3組のティース群から構成されている。3組のティース群は、例えば、第1相、第2相、及び第3相にそれぞれ対応している。コイル32が3相コイルである場合、3組のティース群は、U相、V相、及びW相にそれぞれ対応する。本実施の形態では、図5に示されるように、3組のティース群は、U相、V相、及びW相にそれぞれ対応している。
【0036】
xy平面において、3組のティース群のうちの各組の3個のティース31bのうちの中央に位置するティース31bを「中央ティース311」と称し、中央ティースに対してロータ2の回転方向D11における上流側に位置するティース31bを「上流側ティース312」と称し、中央ティースに対して回転方向D11における下流側に位置するティース31bを「下流側ティース313」と称する。すなわち、3組のティース群のうちの各組の3個のティース31bは、中央ティース311と、上流側ティース312と、下流側ティース313とから構成されている。
【0037】
3組のティース群のうちの各組において、中央ティース311、上流側ティース312、及び下流側ティース313には、同一の相を形成するコイル32が巻かれている。すなわち、コイル32に電流が流れたとき、中央ティース311に巻かれたコイル32、上流側ティース312に巻かれたコイル32、及び下流側ティース313に巻かれたコイル32は、同一の相(例えば、U相、V相、又はW相)を形成する。
【0038】
U相に対応する3個のティース31bのうちの中央ティース311を「U相中央ティース」と定義する。U相中央ティースを「U相中央ティース311」とも称する。U相に対応する3個のティース31bのうちの上流側ティース312を「U相上流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、U相中央ティース311に隣接する上流側ティース312を「U相上流側ティース」と定義する。U相上流側ティースを「U相上流側ティース312」とも称する。U相に対応する3個のティース31bのうちの下流側ティース313を「U相下流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、U相中央ティース311に隣接する下流側ティース313を「U相下流側ティース」と定義する。U相下流側ティースを「U相下流側ティース313」とも称する。
【0039】
V相に対応する3個のティース31bのうちの中央ティース311を「V相中央ティース」と定義する。V相中央ティースを「V相中央ティース311」とも称する。V相に対応する3個のティース31bのうちの上流側ティース312を「V相上流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、V相中央ティース311に隣接する上流側ティース312を「V相上流側ティース」と定義する。V相上流側ティースを「V相上流側ティース312」とも称する。V相に対応する3個のティース31bのうちの下流側ティース313を「V相下流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、V相中央ティース311に隣接する下流側ティース313を「V相下流側ティース」と定義する。V相下流側ティースを「V相下流側ティース313」とも称する。
【0040】
W相に対応する3個のティース31bのうちの中央ティース311を「W相中央ティース」と定義する。W相中央ティースを「W相中央ティース311」とも称する。W相に対応する3個のティース31bのうちの上流側ティース312を「W相上流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、W相中央ティース311に隣接する上流側ティース312を「W相上流側ティース」と定義する。W相上流側ティースを「W相上流側ティース312」とも称する。W相に対応する3個のティース31bのうちの下流側ティース313を「W相下流側ティース」と定義する。言い換えると、9個のティース31bのうちの、W相中央ティース311に隣接する下流側ティース313を「W相下流側ティース」と定義する。W相下流側ティースを「W相下流側ティース313」とも称する。
【0041】
例えば、9個のティース31bのうちの、U相上流側ティース312に隣接する下流側ティース313は、「V相下流側ティース」と定義される。9個のティース31bのうちの、U相下流側ティース313に隣接する上流側ティース312は、「W相上流側ティース」と定義される。
【0042】
〈中央ティース311〉
図6は、各中央ティース311の構造を概略的に示す平面図である。
各中央ティース311は、中央ティース本体311aと、上流側先端部311bと、下流側先端部311cとを有する。図6における2本の破線は、中央ティース本体311aの側面の延長線上に位置しており、中央ティース本体311aと上流側先端部311bとの境界、中央ティース本体311aと下流側先端部311cとの境界をそれぞれ示す。
【0043】
中央ティース本体311aは、コアバック31aからロータ2に向けて延在している。上流側先端部311bは、中央ティース本体311aからロータ2の回転方向D11における上流側に向けて延在している。上流側先端部311bは、ロータ2に面している。下流側先端部311cは、中央ティース本体311aからロータ2の回転方向D11における下流側に向けて延在している。下流側先端部311cは、ロータ2に面している。
【0044】
中央ティース311の上流側先端部311bの内周面は、ロータ2に面する上流側先端部311bの表面である。中央ティース311の下流側先端部311cの内周面は、ロータ2に面する下流側先端部311cの表面である。xy平面において、中央ティース311の上流側先端部311bの内周面に沿った中央ティース311の上流側先端部311bの内周面の長さをLCRとし、中央ティース311の下流側先端部311cの内周面に沿った中央ティース311の下流側先端部311cの内周面の長さをLCLとしたとき、長さLCLと長さLCRとの関係は、LCL=LCRを満たす。
【0045】
〈上流側ティース312〉
図7は、各上流側ティース312の構造を概略的に示す平面図である。
各上流側ティース312は、上流側ティース本体312aと、上流側先端部312bと、下流側先端部312cとを有する。図7における2本の破線は、上流側ティース本体312aの側面の延長線上に位置しており、上流側ティース本体312aと上流側先端部312bとの境界、上流側ティース本体312aと下流側先端部312cとの境界をそれぞれ示す。
【0046】
上流側ティース本体312aは、コアバック31aからロータ2に向けて延在している。上流側先端部312bは、上流側ティース本体312aからロータ2の回転方向D11における上流側に向けて延在している。上流側先端部312bは、ロータ2に面している。下流側先端部312cは、上流側ティース本体312aからロータ2の回転方向D11における下流側に向けて延在している。下流側先端部312cは、ロータ2に面している。
【0047】
上流側ティース312の上流側先端部312bの内周面は、ロータ2に面する上流側先端部312bの表面である。上流側ティース312の下流側先端部312cの内周面は、ロータ2に面する下流側先端部312cの表面である。xy平面において、上流側ティース312の上流側先端部312bの内周面に沿った上流側ティース312の上流側先端部312bの内周面の長さをLFRとし、上流側ティース312の下流側先端部312cの内周面に沿った上流側ティース312の下流側先端部312cの内周面の長さをLFLとしたとき、長さLFLと長さLFRとの関係は、LFL>LFRを満たす。
【0048】
〈下流側ティース313〉
図8は、各下流側ティース313の構造を概略的に示す平面図である。
各下流側ティース313は、下流側ティース本体313aと、上流側先端部313bと、下流側先端部313cとを有する。図8における2本の破線は、下流側ティース本体313aの側面の延長線上に位置しており、下流側ティース本体313aと上流側先端部313bとの境界、下流側ティース本体313aと下流側先端部313cとの境界をそれぞれ示す。
【0049】
下流側ティース本体313aは、コアバック31aからロータ2に向けて延在している。上流側先端部313bは、下流側ティース本体313aからロータ2の回転方向D11における上流側に向けて延在している。上流側先端部313bは、ロータ2に面している。下流側先端部313cは、下流側ティース本体313aからロータ2の回転方向D11における下流側に向けて延在している。下流側先端部313cは、ロータ2に面している。
【0050】
下流側ティース313の上流側先端部313bの内周面は、ロータ2に面する上流側先端部313bの表面である。下流側ティース313の下流側先端部313cの内周面は、ロータ2に面する下流側先端部313cの表面である。xy平面において、下流側ティース313の上流側先端部313bの内周面に沿った下流側ティース313の上流側先端部313bの内周面の長さをLBRとし、下流側ティース313の下流側先端部313cの内周面に沿った下流側ティース313の下流側先端部313cの内周面の長さをLBLとしたとき、長さLBLと長さLBRとの関係は、LBL<LBRを満たす。
【0051】
ステータ3において、3個の中央ティース本体311a、3個の上流側ティース本体312a、及び3個の下流側ティース本体313aは、周方向に等間隔で配列されている。
【0052】
図9は、ステータ3を概略的に示す断面図である。
角度θ1fは、xy平面において、直線L1と直線L2とが成す角度である。直線L1は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相中央ティース311の上流側先端部311bの、回転方向D11における上流側における端部E1とを通る直線である。直線L2は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相上流側ティース312の下流側先端部312cの、回転方向D11における下流側における端部E2とを通る直線である。角度θ1fの定義は、U相のみならず、V相及びW相の各々における中央ティース311と上流側ティース312との間の関係にも適用される。
【0053】
角度θ2bは、xy平面において、直線L3と直線L4とが成す角度である。直線L3は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相上流側ティース312の上流側先端部312bの、回転方向D11における上流側における端部E3とを通る直線である。直線L4は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、V相下流側ティース313の下流側先端部313cの、回転方向D11における下流側における端部E4とを通る直線である。
【0054】
この場合、角度θ1f及び角度θ2bの関係は、θ1f<θ2bを満たす。
【0055】
図10は、ステータ3を概略的に示す断面図である。
角度θ1bは、xy平面において、直線L5と直線L6とが成す角度である。直線L5は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相中央ティース311の下流側先端部311cの、回転方向D11における下流側における端部E5とを通る直線である。直線L6は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相下流側ティース313の上流側先端部313bの、回転方向D11における上流側における端部E6とを通る直線である。角度θ1bの定義は、U相のみならず、V相及びW相の各々における中央ティース311と下流側ティース313との間の関係にも適用される。
【0056】
角度θ3fは、xy平面において、直線L7と直線L8とが成す角度である。直線L7は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、U相下流側ティース313の下流側先端部313cの、回転方向D11における下流側における端部E7とを通る直線である。直線L8は、xy平面において、ロータ2の回転中心と、W相上流側ティース312の上流側先端部312bの、回転方向D11における上流側における端部E8とを通る直線である。
【0057】
この場合、角度θ3f及び角度θ1bの関係は、θ3f>θ1bを満たす。
【0058】
角度θ1f及び角度θ1bの関係は、θ1f=θ1bを満たす。角度θ2b及び角度θ3fの関係は、θ2b=θ3fを満たす。さらに、本実施の形態では、電動機1は、θ1f=θ1b且つθ2b=θ3fを満たす。
【0059】
角度θ2b又は角度θ3fの定義は、V相上流側ティース312とW相下流側ティース313との間の関係にも適用される。
【0060】
図11は、各中央ティース311に取り付けられたインシュレータ33の構造を概略的に示す平面図である。
中央ティース311を絶縁するインシュレータ33を「中央インシュレータ33」とも称する。中央インシュレータ33は、周方向において中央ティース311の上流側先端部311bに隣接する上流側絶縁部331aと、周方向において中央ティース311の下流側先端部311cに隣接する下流側絶縁部331bとを有する。上流側絶縁部331a及び下流側絶縁部331bは、ロータ2に面している。
【0061】
厚みTCRは、xy平面における、周方向における中央インシュレータ33の上流側絶縁部331aの最大厚みである。厚みTCLは、xy平面における、周方向における中央インシュレータ33の下流側絶縁部331bの最大厚みである。この場合、厚みTCL及び厚みTCRの関係は、TCL=TCRを満たす。
【0062】
例えば、xy平面における、中央インシュレータ33の上流側絶縁部331aの面積は、中央インシュレータ33の下流側絶縁部331bの面積と同じである。この構成により、中央ティース本体311aの両側に設けられるコイル32を配置するためのスペースを均等に設けることができ、その結果、中央ティース本体311aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0063】
図12は、各上流側ティース312に取り付けられたインシュレータ33の構造を概略的に示す平面図である。
上流側ティース312を絶縁するインシュレータ33を「上流側インシュレータ33」とも称する。上流側インシュレータ33は、周方向において上流側ティース312の上流側先端部312bに隣接する上流側絶縁部332aと、周方向において上流側ティース312の下流側先端部312cに隣接する下流側絶縁部332bとを有する。上流側絶縁部332a及び下流側絶縁部332bは、ロータ2に面している。
【0064】
厚みTFRは、xy平面における、周方向における上流側インシュレータ33の上流側絶縁部332aの最大厚みである。厚みTFLは、xy平面における、周方向における上流側インシュレータ33の下流側絶縁部332bの最大厚みである。この場合、厚みTFL及び厚みTFRの関係は、TFL<TFRを満たす。
【0065】
例えば、xy平面における、上流側インシュレータ33の上流側絶縁部332aの面積は、上流側インシュレータ33の下流側絶縁部332bの面積よりも大きい。この構成により、上流側ティース本体312aの両側に設けられるコイル32を配置するためのスペースを均等に設けることができ、その結果、上流側ティース本体312aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0066】
図13は、各下流側ティース313に取り付けられたインシュレータ33の構造を概略的に示す平面図である。
下流側ティース313を絶縁するインシュレータ33を「下流側インシュレータ33」とも称する。下流側インシュレータ33は、周方向において下流側ティース313の上流側先端部313bに隣接する上流側絶縁部333aと、周方向において下流側ティース313の下流側先端部313cに隣接する下流側絶縁部333bとを有する。上流側絶縁部333a及び下流側絶縁部333bは、ロータ2に面している。
【0067】
厚みTBRは、xy平面における、周方向における下流側インシュレータ33の上流側絶縁部333aの最大厚みである。厚みTBLは、xy平面における、周方向における下流側インシュレータ33の下流側絶縁部333bの最大厚みである。この場合、厚みTBL及び厚みTBRの関係は、TBL>TBRを満たす。
【0068】
例えば、xy平面における、下流側インシュレータ33の下流側絶縁部333bの面積は、下流側インシュレータ33の上流側絶縁部333aの面積よりも大きい。この構成により、下流側ティース本体313aの両側に設けられるコイル32を配置するためのスペースを均等に設けることができ、その結果、下流側ティース本体313aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0069】
〈電動機1の利点〉
電動機1の利点を以下に説明する。
通常、10個の磁極を持つロータと9個のティースを持つステータとを有する電動機において、各相の中央ティースに流入する磁束の位相を基準(すなわち、0deg)とすると、中央ティースに隣接する上流側ティースに流入する磁束の位相差は電気角で+20degであり、その中央ティースに隣接する下流側ティースに流入する磁束の位相差は電気角でー20degである。この場合、各相において3個のティースに流入する磁束を合成すると、隣接する2つのティース間において一部の磁束が打ち消し合うことにより、電動機1における磁束のロスが生じる。
【0070】
本実施の形態では、電動機1は、LFL>LFRを満たす。したがって、各相において、上流側ティース312に流入する磁束の位相を、中央ティース311に流入する磁束の位相に近づけることができる。言い換えると、各相において、中央ティース311に流入する磁束の位相に対する上流側ティース312に流入する磁束の位相差を小さくすることができ、電動機1における磁束のロスを低減することができる。その結果、電動機1におけるロータ2を回転させるための有効磁束のロスを小さくすることができる。
【0071】
ステータ3において、3個の中央ティース本体311a、3個の上流側ティース本体312a、及び3個の下流側ティース本体313aは、周方向に等間隔で配列されている。したがって、コイル32を配置するためのスペースを、周方向においてステータ3に均等に設けることができる。その結果、コイル32を、これらの中央ティース本体311a、上流側ティース本体312a、及び下流側ティース本体313aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0072】
電動機1が、LBL<LBRを満たすとき、各相において、下流側ティース313に流入する磁束の位相を、中央ティース311に流入する磁束の位相に近づけることができる。言い換えると、各相において、中央ティース311に流入する磁束の位相に対する下流側ティース313に流入する磁束の位相差を小さくすることができ、電動機1における磁束のロスを低減することができる。その結果、電動機1におけるロータ2を回転させるための有効磁束のロスを小さくすることができる。
【0073】
電動機1が、θ1f<θ2bを満たすとき、各相において、上流側ティース312に流入する磁束の位相を、中央ティース311に流入する磁束の位相に近づけることができる。言い換えると、各相において、中央ティース311に流入する磁束の位相に対する上流側ティース312に流入する磁束の位相差を小さくすることができ、電動機1における磁束のロスを低減することができる。その結果、電動機1におけるロータ2を回転させるための有効磁束のロスを小さくすることができる。
【0074】
電動機1が、θ3f>θ1bを満たすとき、各相において、下流側ティース313に流入する磁束の位相を、中央ティース311に流入する磁束の位相に近づけることができる。言い換えると、各相において、中央ティース311に流入する磁束の位相に対する下流側ティース313に流入する磁束の位相差を小さくすることができ、電動機1における磁束のロスを低減することができる。その結果、電動機1におけるロータ2を回転させるための有効磁束のロスを小さくすることができる。
【0075】
電動機1が、θ1f=θ1b且つθ2b=θ3fを満たすとき、xy平面における中央ティース311に関して各相のステータコア31の構造が対称である。この構成により、ロータ2の回転中における特異音を低減することができる。
【0076】
図14及び図15は、角度θ1fと角度θ2bとの差分である「θ1f-θ2b」(deg)と電動機1に生じる誘起電圧との関係を示すグラフである。
図14及び図15に示されるグラフの縦軸は、電動機に生じる誘起電圧を示す。θ1f-θ2b=0である電動機に生じる誘起電圧を基準値1とする。図14及び図15に示されるグラフの横軸は、θ1f-θ2b(deg)を示す。
図14に示されるように、電動機1が、-18(deg)≦(θ1f-θ2b)<0(deg)を満たすとき、誘起電圧が1以上である。この場合、角度θ1fと角度θ2bとが等しい通常の電動機に比べて、電動機1に生じる誘起電圧を向上させることができる。
【0077】
図15に示されるように、電動機1が、-16(deg)≦(θ1f-θ2b)≦-5(deg)を満たすとき、誘起電圧が1.025以上である。この場合、角度θ1fと角度θ2bとが等しい通常の電動機に比べて、電動機1に生じる誘起電圧をさらに向上させることができる。
【0078】
図12に示されるように、電動機1がTFL<TFRを満たすとき、LFL>LFR又はθ1f<θ2bであっても、上流側ティース本体312aに対して回転方向D11における上流側に配置されるコイル32のためのスペースを確保することができる。この構成により、上流側ティース本体312aの両側に設けられるコイル32を配置するためのスペースを均等に設けることができ、その結果、上流側ティース本体312aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0079】
図13に示されるように、電動機1がTBL>TBRを満たすとき、LBL<LBR又はθ3f>θ1bであっても、下流側ティース本体313aに対して回転方向D11における下流側に配置されるコイル32のためのスペースを確保することができる。この構成により、下流側ティース本体313aの両側に設けられるコイル32を配置するためのスペースを均等に設けることができ、その結果、下流側ティース本体313aの周囲に均等かつ多くのコイル32を巻くことができる。
【0080】
実施の形態2.
図16は、実施の形態2に係るファン60を概略的に示す図である。
ファン60は、羽根61と、電動機62とを有する。ファン60は、送風機とも称する。羽根61は、例えば、ガラス繊維を含むポリプロピレン(polypropylene:PP)で形成されている。
【0081】
電動機62は、実施の形態1に係る電動機1である。羽根61は、電動機62のシャフトに固定されている。電動機62は、羽根61を駆動する。具体的には、電動機62は、羽根61を回転させる。電動機62が駆動すると、羽根61が回転し、気流が生成される。これにより、ファン60は送風することができる。
【0082】
実施の形態2に係るファン60では、電動機62に実施の形態1で説明した電動機1が適用されるので、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。さらに、ファン60の効率を高めることができる。
【0083】
実施の形態3.
実施の形態3に係る空気調和機10(冷凍空調装置又は冷凍サイクル装置とも称する)について説明する。
図17は、実施の形態3に係る空気調和機10の構成を概略的に示す図である。
【0084】
実施の形態3に係る空気調和機10は、送風機(第1の送風機とも称する)としての室内機11と、室内機11に接続される送風機(第2の送風機とも称する)としての室外機13とを有する。
【0085】
本実施の形態では、空気調和機10は、室内機11と、冷媒配管12と、室外機13とを有する。例えば、室外機13は、冷媒配管12を通して室内機11に接続される。
【0086】
室内機11は、電動機11a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、電動機11aによって駆動されることにより、送風する送風部11bと、電動機11a及び送風部11bを覆うハウジング11cとを有する。送風部11bは、例えば、電動機11aによって駆動される羽根11dを有する。例えば、羽根11dは、電動機11aのシャフトに固定されており、気流を生成する。
【0087】
室外機13は、電動機13a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、送風部13bと、圧縮機14と、熱交換器(図示しない)と、送風部13b、圧縮機14、及び熱交換器を覆うハウジング13cとを有する。送風部13bは、電動機13aによって駆動されることにより、送風する。送風部13bは、例えば、電動機13aによって駆動される羽根13dを有する。例えば、羽根13dは、電動機13aのシャフトに固定されており、気流を生成する。圧縮機14は、電動機14a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、電動機14aによって駆動される圧縮機構14b(例えば、冷媒回路)と、電動機14a及び圧縮機構14bを覆うハウジング14cとを有する。
【0088】
空気調和機10において、室内機11及び室外機13の少なくとも1つは、実施の形態1で説明した電動機1を有する。すなわち、室内機11、室外機13、又は室内機11及び室外機13の各々は、実施の形態1で説明した電動機1を有する。具体的には、送風部の駆動源として、電動機11a及び13aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明した電動機1が適用される。すなわち、室内機11、室外機13、又は室内機11及び室外機13の各々に、実施の形態1で説明した電動機1が適用される。圧縮機14の電動機14aに、実施の形態1で説明した電動機1を適用してもよい。
【0089】
空気調和機10は、例えば、室内機11から冷たい空気を送風する冷房運転、温かい空気を送風する暖房運転等の空調を行うことができる。室内機11において、電動機11aは、送風部11bを駆動するための駆動源である。送風部11bは、調整された空気を送風することができる。
【0090】
室内機11において、電動機11aは、例えば、ねじによって室内機11のハウジング11cに固定されている。室外機13において、電動機13aは、例えば、ねじによって室外機13のハウジング13cに固定されている。
【0091】
実施の形態3に係る空気調和機10では、電動機11a及び13aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明した電動機1が適用されるので、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、空気調和機10の効率を高めることができる。
【0092】
さらに、送風機(例えば、室内機11)の駆動源として、実施の形態1に係る電動機1が用いられる場合、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、送風機の効率の低下を防ぐことができる。実施の形態1に係る電動機1と電動機1によって駆動される羽根(例えば、羽根11d又は13d)とを有する送風機は、送風する装置として単独で用いることができる。この送風機は、空気調和機10以外の機器にも適用可能である。
【0093】
さらに、圧縮機14の駆動源として、実施の形態1に係る電動機1が用いられる場合、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、圧縮機14の効率を高めることができる。
【0094】
実施の形態1で説明した電動機1は、空気調和機10以外に、換気扇、家電機器、又は工作機など、駆動源を有する機器に搭載できる。
【0095】
以上に説明した各実施の形態における特徴及び各変形例における特徴は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0096】
1,11a,13a,14a,62 電動機、 2 ロータ、 3 ステータ、 21 メインマグネット、 31 ステータコア、 31a コアバック、 31b ティース、 32 コイル、 33 インシュレータ、 311 中央ティース、 311a 中央ティース本体、 311b,312b,313b 上流側先端部、 311c,312c,313c 下流側先端部、 312 上流側ティース、 312a 上流側ティース本体、 313 下流側ティース、 313a 下流側ティース本体、 331a,332a,333a 上流側絶縁部、 331b,332b,333b 下流側絶縁部。
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