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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20250411BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20250411BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20250411BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20250411BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L23/12 F
H01L25/04 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023567380
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046236
(87)【国際公開番号】W WO2023112195
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 毅
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/039986(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138902(WO,A1)
【文献】特開2016-012659(JP,A)
【文献】特開2016-129254(JP,A)
【文献】特開2016-167527(JP,A)
【文献】特開2019-220648(JP,A)
【文献】特開2019-125678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 23/00
H01L 25/07
H01L 21/60
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子と、
上面に、前記複数の半導体素子が搭載される搭載領域と、前記搭載領域より上方に突出し前記複数の半導体素子が搭載されない非搭載領域とを有する絶縁基板と、
各前記半導体素子の上面に接合材により接合される金属リード電極と、を備え、
前記搭載領域と前記非搭載領域との高さの差は各前記半導体素子の厚み以上であり、
前記絶縁基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設けられた回路パターンと、を備え、
前記回路パターンの上面は凸部を有し、
前記凸部の端面は前記非搭載領域であり、
前記凸部以外の前記回路パターンの上面は前記搭載領域である、
半導体装置。
【請求項2】
複数の半導体素子と、
上面に、前記複数の半導体素子が搭載される搭載領域と、前記搭載領域より上方に突出し前記複数の半導体素子が搭載されない非搭載領域とを有する絶縁基板と、
各前記半導体素子の上面に接合材により接合される金属リード電極と、を備え、
前記搭載領域と前記非搭載領域との高さの差は各前記半導体素子の厚み以上であり、
前記絶縁基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設けられた回路パターンと、を備え、
前記回路パターンの上面は凹部を有し、
前記凹部の底面が前記搭載領域であり、
前記凹部以外の前記回路パターンの上面は前記非搭載領域である、
半導体装置。
【請求項3】
(a)複数の半導体素子と、上面に搭載領域と前記搭載領域より上方に突出した非搭載領域とを有する絶縁基板と、を用意し、
(b)前記絶縁基板の上面の前記搭載領域に各前記半導体素子を搭載し、
(c)各前記半導体素子の搭載後、各前記半導体素子と対応する位置に開口を有するメタルマスクを、前記絶縁基板の上面の前記非搭載領域と接触して、前記絶縁基板の上面上に配置し、
(d)前記メタルマスクの前記開口を介して各前記半導体素子の上面に接合材を供給し、
(e)前記メタルマスクを除去し、
(f)前記メタルマスクの除去後に、各前記半導体素子の上面の前記接合材に金属リード電極を接着する、
半導体装置の製造方法であって、
前記搭載領域と前記非搭載領域との高さの差は各前記半導体素子の厚み以上である、
半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設けられた回路パターンと、を備え、
前記回路パターンの上面は凸部を有し、
前記凸部の端面は前記非搭載領域であり、
前記凸部以外の前記回路パターンの上面は前記搭載領域である、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設けられた回路パターンと、を備え、
前記回路パターンの上面は凹部を有し、
前記凹部以外の前記回路パターンの上面は前記搭載領域であり、
前記凹部の底面が前記非搭載領域である、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材上に設けられた回路パターンと、
前記回路パターンの上面上に設けられた絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材の上面は前記非搭載領域であり、
前記回路パターンの上面のうち前記絶縁部材が設けられていない領域が前記搭載領域である、
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
(a)複数の半導体素子と、絶縁基板とを用意し、
(b)前記絶縁基板の上面に各前記半導体素子を搭載し、
(c)下面に第1領域と前記第1領域より下方に突出した第2領域とを有し、かつ前記第1領域に開口を有するメタルマスクを、前記第2領域が前記絶縁基板の上面と接触し、かつ前記開口が前記絶縁基板に搭載された各前記半導体素子と重なるようにして、前記絶縁基板の上面上に配置し、
(d)前記メタルマスクの前記開口を介して各前記半導体素子の上面に接合材を供給し、
(e)前記メタルマスクを除去し、
(f)前記メタルマスクの除去後に、各前記半導体素子の上面の前記接合材に金属リード電極を接着する、
半導体装置の製造方法であって、
前記第1領域と前記第2領域との高さの差は各前記半導体素子の厚み以上である、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記メタルマスクは下面に凸部を備え、
前記凸部の端面が前記第2領域であり、
前記凸部以外の前記メタルマスクの下面が前記第1領域である、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記メタルマスクは下面に凹部を備え、
前記凹部の底面が前記第1領域であり、
前記凹部以外の前記メタルマスクの下面が前記第2領域である、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属リード電極を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力半導体装置などの半導体装置において、半導体素子と外部電極との回路接続を行う方法として、金属ワイヤボンドを主電流の経路に使用せず、半導体素子を金属リード電極と直接接合する方法がある(例えば特許文献1)。この方法によれば、半導体装置の大電流化、長寿命化および高信頼性が実現する。
【0003】
半導体素子を金属リード電極と直接接合するため、半導体素子上にペーストはんだなどの接合材を供給する必要がある。その方法として、ディスペンス供給とスクリーン印刷による供給とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/039986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスペンス供給の場合、各半導体素子に対して1箇所ずつディスペンス塗布を行うため、多数の半導体素子が存在する場合には時間がかかるという問題がある。また、接合材の供給量が半導体素子ごとにばらつくと、金属リード電極に傾きが生じ、金属リード電極と半導体素子との間の接合不良が生じるという問題がある。
【0006】
一方、スクリーン印刷の場合、半導体素子上にメタルマスクが直接接触することで半導体素子の上面が傷つくという問題がある。また、メタルマスク上をスキージが通過する時に半導体素子に応力がかかってクラックが生じ、特性不良を招くという問題がある。
【0007】
本開示の技術は、上記の様な問題点を解決するためになされたもので、半導体素子に金属リード電極を接続するための接合材をスクリーン印刷によって半導体素子上に供給する際、半導体素子の上面への傷またはクラックの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の半導体装置は、複数の半導体素子と、上面に、複数の半導体素子が搭載される搭載領域と、搭載領域より上方に突出し複数の半導体素子が搭載されない非搭載領域とを有する絶縁基板と、各半導体素子の上面に接合材により接合される金属リード電極と、を備え、搭載領域と非搭載領域との高さの差は各半導体素子の厚み以上であり、絶縁基板は、絶縁基材と、絶縁基材上に設けられた回路パターンと、を備え、回路パターンの上面は凸部を有し、凸部の端面は非搭載領域であり、凸部以外の回路パターンの上面は搭載領域である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の半導体装置によれば、その製造工程でスクリーン印刷によって各半導体素子上に接合材を供給する際、メタルマスクと各半導体素子との間に隙間ができる。従って、各半導体素子の上面を傷つけることなく、スクリーン印刷によって各半導体素子の上面に接合材を安定的かつ一括供給することができる。従って、本開示の半導体装置は、安定的かつ長寿命で、生産性良く製造可能な半導体装置である。本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図8】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
図9】実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。
図10】実施の形態4に係る半導体装置の断面図である。
図11】実施の形態4に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図12】実施の形態4の変形例に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置101の断面図である。半導体装置101は、絶縁基板2、複数の半導体素子1、および金属リード電極4を備える。
【0012】
絶縁基板2は、絶縁基材2bと、絶縁基材2bの上面に形成された回路パターン2aと、絶縁基材2bの下面に形成された回路パターン2cとを備える。絶縁基材2bは、窒化アルミニウムまたは窒化ケイ素などの熱伝導性に優れたセラミック、もしくは樹脂などからなる。回路パターン2a,2cは、アルミ合金または銅などの電気伝導性および熱伝導性に優れる材質からなる。回路パターン2aの上面が絶縁基板2の上面を構成する。図示しないが、絶縁基板2の回路パターン2cは、アルミ合金または銅などの熱伝導に優れるベース板に、はんだまたは軟ろうなどの接合材により接合されてもよい。
【0013】
絶縁基板2の回路パターン2aの上面の搭載領域2a1には、複数の半導体素子1がはんだなどの接合材3bにより接合される。なお、絶縁基板2の回路パターン2aの上面のうち複数の半導体素子1が搭載されない領域を非搭載領域2a2と称する。すなわち、回路パターン2aの上面は搭載領域2a1と非搭載領域2a2とを有する。
【0014】
半導体素子1には、シリコン(Si)素材のIGBT、ダイオードまたは逆導通IGBTが用いられることが多いが、シリコンカーバイド(SiC)または窒化ガリウム(GaN)系などのSiに比べてバンドギャップの大きい素材で形成されたMOSFETまたはショットキーダイオードなどが用いられてもよい。図1において3つの半導体素子1が示されているが、回路パターン2aに搭載される半導体素子1の個数はこれに限らず、半導体装置101の用途に応じて適宜定められる。
【0015】
図示しないが、各半導体素子1の上面には、はんだなどの接合材3aと金属接合するための表面電極がNi-Auめっきなどにより形成される。表面電極が形成された各半導体素子1の上面は、はんだなどの接合材3aによって金属リード電極4と接合される。金属リード電極4は、図1において半導体素子1の上面と接合されているが、これに加えて回路パターン2aと接合されてもよい。
【0016】
回路パターン2aの非搭載領域2a2には、搭載領域2a1より上方に突出した複数の突起部2dが設けられる。突起部2dの端面は、回路パターン2aの搭載領域2a1に搭載された各半導体素子1の上面より高い。また、突起部2dの端面は、金属リード電極4との間に必要な絶縁距離を確保できる高さに設定される。図1には2つの突起部2dが示されているが、突起部2dの個数はこれに限定されない。突起部2dは、半導体素子1の外周との間に必要な絶縁距離を確保して設けられる。金属リード電極4と突起部2dとの間の絶縁距離を確保するため、金属リード電極4は突起部2dに対応する位置で上方向または横方向に曲げられてもよい。
【0017】
後に説明する半導体装置101の製造工程において、金属リード電極4は外部出力端子と電気的に接続され、また複数の半導体素子1は互いに電気的に接続される。しかし、図1において半導体装置101は簡略化されて図示されており、信号線などのワイヤ、信号端子、外部出力端子、および封止樹脂材などは図1において図示を省略されている。
【0018】
<A-2.製造工程>
図2は、半導体装置101の製造工程を示すフローチャートである。図3から図7は、半導体装置101の製造途中の状態を示す断面図である。以下、図2から図7を用いて半導体装置101の製造工程を説明する。
【0019】
まず、図3に示されるように、複数の半導体素子1を絶縁基板2に接合する(図2のステップS101)。具体的には、複数の半導体素子1を絶縁基板2の回路パターン2aの搭載領域2a1に接合材3bで接合する。一般的に接合材3bにははんだが用いられる。接合材3bは、板はんだなどのあらかじめ成形されたものでもよいし、はんだペーストまたはその他の軟ろうであってもよい。ペースト状の接合材3bは、スクリーン印刷またはディスペンス等を用いて塗布されてもよい。回路パターン2a上の接合材3bがその融点を超える温度に加熱されることで、複数の半導体素子1は回路パターン2a上に接合される。
【0020】
次に、図4に示されるように、絶縁基板2に接合された複数の半導体素子1上にメタルマスク5を配置する(図2のステップS102)。上述のとおり、突起部2dの端面は搭載領域2a1に搭載された各半導体素子1の上面より高いため、メタルマスク5は回路パターン2aの突起部2dの端面と接触し、半導体素子1の上面には接触しない。すなわち、メタルマスク5と半導体素子1の上面との間にはクリアランスが存在する。メタルマスク5は、一般的にはSUSなどの耐摩耗性に優れた剛性のある金属材質からなる。メタルマスク5の各半導体素子1に対応する領域には、各半導体素子1の上面に接合材3aを供給するための開口5aが設けられている。メタルマスク5の各半導体素子1に対応する領域とは、平面視において各半導体素子1と重なるメタルマスク5の領域である。開口5aの面積は、各半導体素子1と金属リード電極4との接合材3aに必要な面積を考慮し、接合材3aの面積以上とする。また、メタルマスク5の厚みは、半導体素子1と金属リード電極4との接合材3aに必要な体積を考慮して設計され、一般的には0.1mm以上0.2mm未満である。
【0021】
その後、メタルマスク5の開口5aにペースト状のはんだなどの接合材3aを供給する(図2のステップS103)。具体的には、図5に示されるように、メタルマスク5上に接合材3aを供給し、SUSまたはウレタンなどからなるスキージ6を用いて接合材3aを開口5aに必要な回数擦り付けることにより、開口5a内に充填する。上述のとおりメタルマスク5と半導体素子1の上面との間にはクリアランスが存在するため、半導体素子1はメタルマスク5と接触することなく、半導体素子1の上面、すなわち金属リード電極4との接合面に接合材3aが供給される。なお、接合材3aはメタルマスク5の開口5aから流動し、半導体素子1の上面とメタルマスク5との間に漏れ出る可能性がある。しかし、接合材3aの粘性またはチクソ性に応じてスキージ6による印刷速度、印刷角度および印刷圧力などの印刷条件を調整することにより、接合材3aの漏れ出る量を調整することが可能である。
【0022】
次に、図6に示されるように、メタルマスク5を絶縁基板2上から除去する(図2のステップS104)。メタルマスク5を絶縁基板2から離す際、接合材3aがその粘性によりメタルマスク5の開口5aの壁面にこびりついてしまうと、開口5aの面積よりも小さい面積しか半導体素子1の接合面に残らない。その対策として、メタルマスク5を絶縁基板2から離す速度および加速度を多段階調整することにより開口5aの壁面に働くせん断力を下げる手法、開口5aの壁面粗さを小さくする手法、および開口5aの壁面を樹脂材などでコーティングする手法が一般的に知られている。
【0023】
その後、図7に示されるように、半導体素子1上に供給された接合材3aの上に金属リード電極4を配置する(図2のステップS105)。金属リード電極4は接合材3aのチクソ性により保持される。金属リード電極4の端部は外部電極などと接合されてもよい。あるいは、金属リード電極4自身がそのまま延伸され、外部電極となってもよい。図7において、金属リード電極4は半導体素子1と接合されているが、これに加えて別の接合材により絶縁基板2の回路パターン2aと接合されてもよい。また、図7には1つの金属リード電極4が示されているが、複数の金属リード電極4がそれぞれ別の接合材によって半導体素子1または回路パターン2aと接合されてもよい。
【0024】
次に、接合材3aをリフロー炉などの加熱装置で加熱し、その融点よりも高い温度に昇温させることで溶融させる(図2のステップS106)。例えば接合材3aの融点が220度の場合、最高温度270度に達する温度のリフロー槽により5分間220℃以上で加熱する。この工程で、半導体素子1と絶縁基板2との間の接合材3bが再溶融してもよい。あるいは、接合材3aより融点の高い接合材を接合材3bに用いることにより、接合材3bの再溶融を避けてもよい。
【0025】
その後、接合材3aを冷却し凝固させることによって、半導体素子1の上面と金属リード電極4との接合が完了する。その後、ワイヤボンディングなどによる回路形成工程、樹脂封止工程、および特性検査工程を経て、図1に示された半導体装置101が完成する。
【0026】
<A-3.効果>
実施の形態1に係る半導体装置101において、絶縁基板2の上面は、複数の半導体素子1が搭載される搭載領域2a1と、搭載領域2a1より上方に突出し複数の半導体素子1が搭載されない非搭載領域2a2とを有する。搭載領域2a1と非搭載領域2a2との高さの差は各半導体素子1の厚み以上である。そして、半導体装置101は、各半導体素子1の上面に接合材3bにより接合される金属リード電極4を備える。
【0027】
以上の構成によれば、各半導体素子1の上面に接合材3aを一括供給するために用いられるメタルマスク5は、絶縁基板2の上面の搭載領域2a1に接触し、搭載領域2a1に搭載された各半導体素子1の上面には接触しない。従って、複数の半導体素子1に対してこれらを傷つけることなくスクリーン印刷により接合材3aを一括供給することが可能である。スクリーン印刷によればディスペンス塗布に比べて短時間に接合材3aを複数の半導体素子1に対して供給することができる。従って、安定的に長寿命な半導体装置101を生産性良く製造することができる。
【0028】
実施の形態1の半導体装置101の製造方法は、(a)複数の半導体素子1と、上面に搭載領域2a1と搭載領域2a1より上方に突出した非搭載領域2a2とを有する絶縁基板2と、を用意し、(b)絶縁基板2の上面の搭載領域2a1に各半導体素子1を搭載し、(c)各半導体素子1の搭載後、各半導体素子1と対応する位置に開口5aを有するメタルマスク5を、絶縁基板2の上面の非搭載領域2a2と接触して、絶縁基板2の上面上に配置し、(d)メタルマスク5の開口を介して各半導体素子1の上面に接合材3aを供給し、(e)メタルマスク5を除去し、(f)メタルマスク5の除去後、各半導体素子1の上面の接合材3aに金属リード電極4を接着する。そして、搭載領域2a1と非搭載領域2a2との高さの差は各半導体素子1の厚み以上である。以上の構成によれば、メタルマスク5が各半導体素子1の上面に接触しないため、複数の半導体素子1に対してこれらを傷つけることなくスクリーン印刷により接合材3aを一括供給することが可能である。
【0029】
<B.実施の形態2>
<B-1.構成>
図8は、実施の形態2に係る半導体装置102の断面図である。半導体装置102は、回路パターン2aの上面において突起部2dに代えて凹部2eを有する点で、実施の形態1に係る半導体装置101と異なる。半導体素子1は、凹部2eに搭載された状態でその上面が回路パターン2aの凹部2e以外の上面より低くなければならない。このことを考慮して凹部2eの深さは設計される。凹部2eの側面と半導体素子1の外周との間には、必要な絶縁距離が設けられる。上記以外の半導体装置102の構成は、半導体装置101と同様である。
【0030】
回路パターン2aの上面形状以外について、半導体装置102の製造方法は半導体装置101の製造方法と同様である。
【0031】
<B-2.効果>
すなわち、実施の形態2においては、回路パターン2aの凹部2eの底面が搭載領域2a1となり、凹部2e以外の回路パターン2aの上面が非搭載領域2a2となる。
【0032】
以上の構成によれば、各半導体素子1の上面に接合材3aを一括供給するために用いられるメタルマスク5は、回路パターン2aの凹部2e以外の上面と接触するため、半導体素子1の上面には接触しない。従って、複数の半導体素子1に対してこれらを傷つけることなくスクリーン印刷により接合材3aを一括供給することが可能である。スクリーン印刷によればディスペンス塗布に比べて短時間に接合材3aを複数の半導体素子1に対して供給することができる。従って、安定的に長寿命な半導体装置102を生産性良く製造することができる。
【0033】
また、メタルマスク5は回路パターン2aの非搭載領域2a2の上面と密着するため、回路パターン2a上に金属リード電極4との接合部を設ける場合には、メタルマスク5に開口5aを設けるだけで回路パターン2aに接合材を供給することができる。
【0034】
<C.実施の形態3>
<C-1.構成>
図9は、実施の形態3に係る半導体装置103の断面図である。半導体装置103は、回路パターン2aが複数の突起部2dを有さない代わりに、回路パターン2aの上面に設けられた複数の絶縁部材7を備える点で、実施の形態1に係る半導体装置101と異なる。各絶縁部材7の上面は、搭載領域2a1に搭載された各半導体素子1の上面より高い。すなわち、各絶縁部材7は各半導体素子1より厚い。絶縁部材7の材料は、PPS(Polyphenylenesulfide)などの必要な絶縁性能を有する樹脂でもよいし、セラミックでもよい。絶縁部材7の平面形状は枠型でもよい。各絶縁部材7は、複数の離間した部材の組み合わせからなっていてもよい。
【0035】
絶縁部材7は、部分的に金属リード電極4を下側から支持してもよい。絶縁部材7と半導体素子1との間に絶縁距離を確保する必要はない。従って、絶縁部材7は半導体素子1の位置決めに用いられてもよい。
【0036】
回路パターン2aの形状と絶縁部材7以外に関して、半導体装置103の製造方法は、半導体装置101の製造方法と同様である。
【0037】
<C-2.効果>
すなわち、実施の形態3においては、回路パターン2aの上面上に設けられた絶縁部材7の上面が非搭載領域2a2となり、回路パターン2aの上面のうち絶縁部材7が設けられていない領域が搭載領域2a1となる。
【0038】
以上の構成によれば、各半導体素子1の上面に接合材3aを一括供給するために用いられるメタルマスク5は絶縁部材7と接触し、半導体素子1の上面には接触しない。従って、複数の半導体素子1に対してこれらを傷つけることなくスクリーン印刷により接合材3aを一括供給することが可能である。スクリーン印刷によればディスペンス塗布に比べて短時間に接合材3aを複数の半導体素子1に対して供給することができる。従って、安定的に長寿命な半導体装置103を生産性良く製造することができる。
【0039】
また、絶縁部材7と半導体素子1との間に絶縁距離を確保する必要がないため、半導体装置103の小型化が可能である。なお、実施の形態1に係る半導体装置101であれば、半導体素子1を板はんだの接合材3bを用いて絶縁基板2に接合する際、半導体素子1を位置決めする治具が別途必要となる。しかし、半導体装置103では絶縁部材7を用いて半導体素子1を位置決めすることができるため、治具の省略による工程の簡略化が可能である。また、絶縁部材7の形状によっては金属リード電極4の高さ方向の位置決めに用いることもできる。
【0040】
<D.実施の形態4>
<D-1.構成>
図10は、実施の形態4に係る半導体装置104の断面図である。半導体装置104は、回路パターン2aが複数の突起部2dを有さない点で、実施の形態1に係る半導体装置101と異なる。
【0041】
<D-2.製造工程>
半導体装置104の製造工程は、複数の半導体素子1の上面に接合材3bを供給するために用いられるメタルマスク5の形状においてのみ、半導体装置101の製造工程と異なる。
【0042】
図11は、半導体装置104の製造工程において、半導体素子1上にメタルマスク5を配置した状態を示す断面図である。メタルマスク5の下面には、回路パターン2aの非搭載領域2a2と対応する位置に、凸部5bが設けられている。凸部5bは、半導体素子1と接合材3bを合わせたよりも高い。
【0043】
凸部5b以外のメタルマスクの下面は、回路パターン2aの上面および各半導体素子1の上面と接触しない第1領域である。また、凸部5bの端面は、回路パターン2aの上面と接触する第2領域である。言い換えれば、メタルマスク5の下面は、第1領域と第1領域より下方に突出した第2領域とを有する。また、メタルマスク5は第1領域に開口5aを有しており、この開口5aが各半導体素子1と重なるようにして、かつ第2領域が回路パターン2aの上面と接触するようにして、絶縁基板2の上面上に配置される。この状態を示したのが図11である。
【0044】
凸部5bは、メタルマスク5の下面の凸部5bを形成する箇所以外をハーフエッチングすることにより形成されてもよい。凸部5bの高さは、各半導体素子1の厚み以上である。言い換えれば、第1領域と第2領域との高さの差は各半導体素子1の厚み以上である。従って、メタルマスク5の凸部5bの端面が回路パターン2aの上面と接触することにより、半導体素子1の上面はメタルマスク5と接触しない。
【0045】
<D-3.変形例>
図12に示されるように、メタルマスク5の下面には、凸部5bに代えて各半導体素子1と重なる位置に凹部5cが設けられていてもよい。すなわち、凹部5cの底面が第1領域となり、凹部5c以外のメタルマスク5の下面が第2領域となる。凹部5cの深さは、各半導体素子1の厚み以上である。言い換えれば、第1領域と第2領域との高さの差は各半導体素子1の厚み以上である。従って、凹部5c以外のメタルマスク5の下面が回路パターン2aの上面と接触することにより、半導体素子1の上面は凹部5cの底面に接触しない。
【0046】
<D-4.効果>
実施の形態4の半導体装置104の製造方法は、(a)複数の半導体素子1と、絶縁基板2とを用意し、(b)絶縁基板2の上面に各半導体素子1を搭載し、(c)下面に第1領域と第1領域より下方に突出した第2領域とを有し、かつ第1領域に開口5aを有するメタルマスク5を、第2領域が絶縁基板2の上面と接触し、かつ開口5aが絶縁基板2に搭載された各半導体素子1と重なるようにして、絶縁基板2の上面上に配置し、(d)メタルマスク5の開口5aを介して各半導体素子1の上面に接合材3aを供給し、(e)メタルマスク5を除去し、(f)メタルマスク5の除去後、各半導体素子1の上面の接合材3aに金属リード電極4を接着する。ここで、第1領域と第2領域との高さの差は各半導体素子1の厚み以上である。
【0047】
従って、メタルマスク5の下面の第2領域が絶縁基板2と接触することによって、各半導体素子1の上面はメタルマスク5の下面の第1領域と接触しない。そのため、複数の半導体素子1に対してこれらを傷つけることなくスクリーン印刷により接合材3aを一括供給することが可能である。スクリーン印刷によればディスペンス塗布に比べて短時間に接合材3aを複数の半導体素子1に対して供給することができる。従って、安定的に長寿命な半導体装置104を生産性良く製造することができる。
【0048】
また、実施の形態1,2と異なり、回路パターン2aの形状に制約がないため、容易に絶縁基板2を設計することができる。
【0049】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。上記の説明は、すべての態様において、例示である。例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体素子、2 絶縁基板、2a 回路パターン、2a1 搭載領域、2a2 非搭載領域、2b 絶縁基材、2c 回路パターン、2d 突起部、2e 凹部、3a,3b 接合材、4 金属リード電極、5 メタルマスク、5a 開口、5b 凸部、5c 凹部、6 スキージ、7 絶縁部材、101-104 半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12