(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】水性インキ及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/023 20140101AFI20250411BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20250411BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20250411BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20250411BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20250411BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
C09D11/023
C09D11/037
B65D65/42 C
B41M1/04
B41M1/30 D
B41M1/10
(21)【出願番号】P 2024084026
(22)【出願日】2024-05-23
【審査請求日】2024-12-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大川 峻平
(72)【発明者】
【氏名】清水 智章
(72)【発明者】
【氏名】大坪 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友香
(72)【発明者】
【氏名】小代 康敬
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531606(JP,A)
【文献】特許第7177963(JP,B2)
【文献】特許第7243932(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0207833(US,A1)
【文献】国際公開第2021/148559(WO,A1)
【文献】特表2005-518459(JP,A)
【文献】特開2013-100533(JP,A)
【文献】特表2000-501935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、硬化剤と、水性溶剤を含有し、前記バインダー樹脂は、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとアルカリ可溶型水溶性樹脂を含有
し、
前記アルカリ可溶型水溶性樹脂が、アクリル系樹脂又はスチレンアクリル系樹脂であり、
前記アルカリ可溶型水溶性樹脂の酸価は、40mgKOH/g~250mgKOHであり、
前記アルカリ可溶型水溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、10℃~140℃である
水性インキ。
【請求項2】
前記硬化剤がアジリジン系硬化剤である請求項1に記載の水性インキ。
【請求項3】
前記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン及びアルカリ可溶型水溶性樹脂の少なくともいずれか一方が、スチレンアクリル系樹脂を含有する請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項4】
前記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとアルカリ可溶型水溶性樹脂の不揮発分の質量比が、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン/アルカリ可溶型水溶性樹脂=10/90~90/10である請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項5】
バインダー樹脂における上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン及びアルカリ可溶型水溶性樹脂の割合は、70質量%以上である請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項6】
前記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンの酸価が0mgKOH/g~100mgKOH/gである請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項7】
更に顔料を含有する、請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項8】
前記顔料は酸化チタンであり、水性インキ中に30質量%以上含有する請求項7に記載の水性インキ。
【請求項9】
フレキソ印刷又はグラビア印刷に用いられる請求項1又は2に記載の水性インキ。
【請求項10】
基材と、前記基材上に設けられた印刷層を備え、前記印刷層が、請求項1又は2に記載の水性インキの印刷層である積層体。
【請求項11】
前記印刷層の上にニス層を有する、請求項10に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インキ及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟包装フィルムの被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で、グラビアインキ、フレキソインキが広く用いられている。
【0003】
具体的に、例えば商品の包装には、装飾や表面保護のために、これらのグラビアインキ、フレキソインキを、基材となるプラスチックフィルムの表側(包装対象の商品と接触しない側)に印刷し、裏側(包装対象の商品と接触する側)には印刷しないといった簡単な構成(表刷り印刷方式といわれる)の印刷物が利用されている。
【0004】
また、ペットボトル用の胴巻きラベルやシュリンクラベルの場合には、一般的には、外面側にフィルムの傷つき防止機能を付与するためのトップコートニスが印刷され、内面側に装飾用の印刷層及びペットボトルへのブロッキング防止等を付与するためのニス層が設けられる。上述した表刷り印刷のインキ及びトップコートニスは、外部に直接曝されたり、他の部材と直接接触したりすることから、商品の取り扱い時等における強靭な皮膜物性が要求される。
また、装飾用の印刷層は、軟包装フィルム包材における印刷デザインの優劣は、内容物の良し悪しを連想させるまでに影響が大であることから、美粧性を意識した高度なデザインに対応可能な高い画像再現性が要求される。
【0005】
近年、VOCによる大気汚染の悪化、地球温暖化など全地球規模の拡大を背景としたサステナビリティの観点を根底に、労働安全衛生、更に引火爆発性も加え、脱石油資源への転換する動きに応じ、インキ中の有機溶剤を水に置き換えたいわゆる水性インキの普及が期待されつつある。このような状況下、表刷り印刷のインキ及びトップコートニスにも適用可能な水性インキの検討が、種々進められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、インキからなる皮膜に対しては、基材との密着性に加え、各種の皮膜物性(皮膜同士の耐ブロッキング性、耐アルコール性、耐水摩擦性等)が求められる。そのため、水性インキにおいてこれらの要求を全て満たす改良が求められている。
また、装飾用の印刷層は顔料を含有することから、各種の被膜物性に加えて優れた印刷適正を備えることが困難である。例えば、透明なフィルムに対して白の印刷層を設ける場合、従来より白インキを2回印刷することにより十分な白濃度を有する白色印刷層としていた。しかし、その方法では、2回印刷することから手間が増える上に、白インキで印刷ユニットを2つ使用しなければならず、特色の追加が困難であり再現可能な色域が制限されてしまう。1回の印刷で白濃度を確保できるようにするためには、インキ中の白色顔料の濃度を高める必要があるが、顔料の濃度を高めると各種被膜物性が劣りやすくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れた皮膜を得ることができる水性インキを提供することを課題とする。
また、本発明は、密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れたインキ層を皮膜として備える積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、バインダー樹脂と、硬化剤と、水性溶剤とを含有し、バインダー樹脂は、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンと、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有する水性インキに関する。
【0010】
また本発明は、基材と、前記基材上に設けられた印刷層を備え、印刷層が、バインダー樹脂と、硬化剤と、水性溶剤とを含有し、バインダー樹脂は、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンと、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有する水性インキの印刷層である積層体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れた皮膜を得ることができる水性インキを提供することができる。
また、本発明によれば、密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れた皮膜を得ることができる水性インキ層を皮膜として備える積層体を提供することができる。
本発明の水性インキは、インキ中の顔料濃度が高い水性インキにおいても、密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れた皮膜を得られる。そのため、本発明の水性インキ、及び本発明の水性インキ層を被膜として備える積層体は、1回の印刷で優れた美粧性を有するインキ層を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
(水性インキ)
本発明の水性インキは、バインダー樹脂と、硬化剤と、水性溶剤とを含有し、バインダー樹脂は、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンと、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有することを特徴とする。
なお本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0014】
<バインダー樹脂>
本発明の水性インキは、バインダー樹脂として、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとアルカリ可溶型水溶性樹脂を含有する。
【0015】
(自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン)
本発明で使用する自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンは、公知で入手可能な自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンを使用することができる。自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0016】
自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンが含有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限はなく、(メタ)アクリレートの単独重合または共重合、及び(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させたコポリマーがあげられる。また水分散性や水溶性を付与する目的から酸価を有するコポリマーであることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を有する樹脂として、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステルーアクリル樹脂、ウレタンーアクリル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合-アクリル樹脂、シリコーンーアクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシーアクリル樹脂等が挙げられる。
また、換言すると、(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマーとし、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物とともに、(共)重合して得られる樹脂をいう。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2-アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレートは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0018】
重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルスチレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン等のビニルモノマーが挙げられる。重合性不飽和基含有化合物は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
また、カルボキシル基及びカルボキシル基が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基からなる群より選ばれる1種以上の酸性基を導入することを目的として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、酸価を有するコポリマーを得ることができる。
酸性基を導入する場合は、後述で詳細に述べるが酸価が所望の範囲となるようにモノマー量を適宜調整することが好ましい。
【0020】
自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンは、自己架橋性成分を含有する。自己架橋性成分は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物等があげられ、中でも、ヒドラジン化合物が好ましく、ヒドラジン化合物としてアジピン酸ジヒドラジドが挙げられる。
自己架橋性成分の含有量は、アクリル系エマルジョン溶液100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンの保存安定性を向上させるために好ましく、0.3質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、自己架橋性成分と反応する官能基を含有する。そのため、自己架橋性成分と反応する重合性不飽和モノマーを含有させて生成する必要がある。このような重合性不飽和モノマーとしては、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、ビニルアルキルケトン類、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリル酸、アルカナール(メタ)アクリレート類等のカルボニル基を含有するラジカル重合性不飽和モノマー、カルボキシル基を含有するラジカル重合性不飽和モノマー、水酸基を含有するラジカル重合性不飽和モノマー等があげられ、中でも、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレートが好ましい。
自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンは、例えば、カルボニルおよびアミン官能基の両方を含有し得ることから、これらが互いに反応し得る自己反応性の機能を有する。
【0021】
自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンは、コアシェル型を形成するエマルジョンであってもよく好ましい。上記コアシェル型エマルジョンは、第1の重合体が第2の重合体によって水性媒体中に分散された状態を指し、通常、第2の重合体が樹脂粒子の最外部に存在することでシェル部を形成し、第1の重合体の一部または全部がコア部を形成したものであることが多い。シェル部を形成するポリマーは親水性であり、一方、コア部を形成するポリマーは疎水性である。親水性のシェル部は分散を維持し、一方、疎水性のコア部は架橋のための反応部位を提供することから、コア部を形成するポリマーが自己架橋性成分と反応する官能基を含有することが好ましい。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、重合開始剤の存在下、50℃~180℃、より好ましくは80℃~150℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより、製造することができる。重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、共重合体である場合の(メタ)アクリル系樹脂は、その重合様式の観点から、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等であってもよい。上記塊状重合法や溶液重合法で得る場合は、酸性基を導入した(メタ)アクリル系樹脂を重合後アルカリ等の中和剤で中和し、溶媒を水性媒体に置換し水性エマルジョンとすることができる。
【0023】
自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、-30℃~60℃であることが好ましく、-10℃~50℃の範囲であることがより好ましい。
【0024】
なお本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、いわゆる計算ガラス転移温度を指し、下記の方法で算出された値を指す。
(式1) 1/Tg(K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・・(Wn/Tn)
(式2) Tg(℃)=Tg(K)-273
式1中のW1、W2、・・・Wnは、重合体の製造に使用したモノマーの合計質量に対する各モノマーの質量%を表し、T1、T2、・・・Tnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。なお、T1、T2、・・Tnの値は、Polymer Handbook(Fourth Edition, J. Brandrup, E.H. Immergut, E.A. Grulke編)に記載された値を用いる。また、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が上記Polymer Handbookに記載されていないもののガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSCQ-100」(TA Instrument社製)を用い、JIS K7121に準拠した方法で測定した。具体的には、真空吸引して完全に溶剤を除去した重合体を、20℃/分の昇温速度で-100℃~+200℃の範囲で熱量変化を測定し、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点を、ガラス転移温度とした。
【0025】
上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンの酸価(「AV」とも称される。)は、0mgKOH/g~100mgKOH/gであることが好ましい。この範囲となることで、本発明の効果を最大限に発揮することができ好ましい。上記(メタ)アクリル系樹脂(A)の酸価は、15mgKOH/g以上がより好ましく、また、60mgKOH/g以下がより好ましく、40mgKOH/g以下が更に好ましい。
なお本発明において、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0026】
本発明においては、上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル系樹脂(即ち、実質的に(メタ)アクリル酸エステルモノマーのみを重合して得られる樹脂)又はスチレンアクリル系樹脂(即ち、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合して得られる樹脂)であることが基材との密着性及び被膜の強度を向上させる観点から好ましく、スチレンアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0027】
(アルカリ可溶型水溶性樹脂)
本発明で使用するアルカリ可溶型水溶性樹脂は、特に限定されず公知に入手可能なアルカリ可溶型水溶性樹脂を使用することができる。中でも、上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとの相溶性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を使用することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、上記水性(メタ)アクリルエマルジョンと同様の樹脂を使用することができる。
アルカリ可溶型水溶性樹脂は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
本発明の水性インキは、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有することにより、インキの経時安定性を向上でき、顔料を多く添加したインキの顔料分散性も向上できる。更に印刷後の、合成洗剤を用いた印刷機のインキ洗浄性にも優れる。
【0028】
また本発明においては、アルカリ可溶型水溶性樹脂が、アクリル系樹脂(即ち、実質的に(メタ)アクリル酸エステルモノマーのみを重合して得られる樹脂)又はスチレンアクリル系樹脂(即ち、スチレンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合して得られる樹脂)であることが好ましく、スチレンアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0029】
また本発明においてはアルカリ可溶型水溶性樹脂である(メタ)アクリル系樹脂は、自己架橋性成分と反応させたものであってもよい。即ち、(メタ)アクリル系樹脂は、自己架橋型であってもよい。自己架橋性成分としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
ただし、インキの経時安定性、インキの洗浄性、顔料分散性を向上させる観点からは、アルカリ可溶型水溶性樹脂は自己架橋型ではない樹脂であることが好ましい。
【0030】
上記アルカリ可溶型水溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、10℃~140℃の範囲となることで、基材密着性および耐ブロッキング性、耐水摩耗性を向上させる観点で好ましい。
中でもガラス転移温度(Tg)は20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、50℃以上が一層好ましく、また、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、100℃以下が一層好ましい。
【0031】
また、上記アルカリ可溶型水溶性樹脂の酸価は、40mgKOH/g~250mgKOHであることが好ましい。この範囲となることで、顔料分散性、インキ洗浄性、耐水摩耗性を向上させる観点で好ましい。中でも酸価は、60mgKOH/g以上がより好ましく、100mgKOH/g以上が更に好ましく、150mgKOH/g以上が一層好ましく、また、250mgKOH/g以下がより好ましく、230mgKOH/g以下が更に好ましい。
【0032】
(質量比)
本発明においては、上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとアルカリ可溶型水溶性樹脂の不揮発分の質量比が、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン/アルカリ可溶型水溶性樹脂=10/90~90/10であることが好ましい。この範囲とすることで、顔料分散性、インキ洗浄性、耐水摩耗性などを最大限に発揮することができる。質量比は中でも、20/80~85/15の範囲であることがなお好ましく、30/70~80/20の範囲であることが最も好ましい。
【0033】
本発明において、バインダー樹脂は、上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンとアルカリ可溶型水溶性樹脂以外の樹脂を含んでもよい。但し、本発明の効果をより効果的に向上させる観点から、バインダー樹脂における上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン及びアルカリ可溶型水溶性樹脂の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、また、100質量%である(即ち、バインダー樹脂が、上記自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン及びアルカリ可溶型水溶性樹脂のみからなる)ことも好ましい。
【0034】
<硬化剤>
本発明の水性インキは、硬化剤を含有する。本発明の水性インキは、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンを含有することから、基材への密着性に優れ、且つ皮膜強度に優れているが、硬化剤を含有することにより本発明の効果を更に向上できる。
硬化剤としては公知のものを用いることができ、バインダー樹脂中のカルボキシ基と反応しうる架橋剤を用いることが好ましい。なかでも、水性インキに配合しうる、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、チタンキレート等のキレート系硬化剤及びイソシアネート系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤が好ましく、アジリジン系硬化剤がより好ましい。
インキ中の硬化剤(固形分)の含有量は、インキ全量を基準として、0.05~10質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(アジリジン系硬化剤)
アジリジン系硬化剤は、アジリジン基を有する化合物であり、より具体的には、例えば、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、及びN,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。アジリジン系硬化剤は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
また、アジリジン系硬化剤としては、市販品を用いることができる。アジリジン系硬化剤の市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製の「PZ-33」、株式会社日本触媒製の「DZ-22E」、Stahl社製の「XL-706」、明成化学工業株式会社製の「SU-125F」等が挙げられる。
【0037】
本発明の水性インキにおいては、上記バインダー樹脂の不揮発分100質量部に対する上記アジリジン系硬化剤の不揮発分の量が、1.0質量部以上35.0質量部以下であることが好ましい。上記バインダー樹脂の不揮発分100質量部に対する上記アジリジン系硬化剤の不揮発分の量は、2.0質量部以上であることが好ましく、3.0質量部以上であることがより好ましく、また、30.0質量部以下であることが好ましく、25.0質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
なお、バインダー樹脂及びアジリジン系硬化剤は、水性インキの調製に用いる際には、溶剤中に分散した状態のものも多い。そのため、上述した不揮発分の質量比の算出のために、バインダー樹脂及びアジリジン系硬化剤それぞれのNV値(Nonvolatile content)を把握しておくことが肝要である。
なお、「不揮発分」(Non-Volatile、NV)は、一般的には「固形分」と称されることもある。
【0039】
(水性溶剤)
本実施形態で用いる水性溶剤としては、水単独、又は水と混和する有機溶剤が挙げられる。上記有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピ ルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル類;等が挙げられる。水性溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0040】
(顔料)
本発明の水性インキは、上述したものに加えて、各種顔料を含有することができる。顔料としては、材料の観点からは無機顔料、有機顔料が挙げられ、また、着色の観点からは黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、茶色顔料等が挙げられる。これら顔料を含有する場合の水性インキは、いわゆる白黒印刷又はカラー印刷用のインキとして用いることができる。
白インキとして用いる場合、白色顔料としては、従来公知の白色の顔料を用いることができる。白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐アルコール性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
前記顔料の平均粒子径は、1~300nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50~150nm程度のものである。
前記顔料は、水性インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ組成物の総重量に対して1~60重量%、インキ組成物中の固形分重量比では10~90重量%の割合で含まれることが好ましい。中でも、本発明の水性インキは、水性インキ中に顔料をインキ組成物の総重量に対して20質量%以上含有する組成においても、顔料分散性に優れ、且つ、当該インキを用いて得られる皮膜は密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れている。本発明の水性インキは、水性インキ中に顔料を30質量%以上含有してもよいし、40質量%以上含有してもよく、50質量%含有してもよい。このような顔料を高濃度含有するインキにおいても優れた効果を得られる。
また、顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0041】
(界面活性剤)
本発明の水性インキは、上述したものに加えて、界面活性剤を更に含有することができる。上記界面活性剤としては、アセチレン系界面活性剤、アルコールアルコキシレート系界面活性剤が好ましい。これら界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0042】
アセチレン系界面活性剤として、具体的には、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール等が挙げられる。これらアセチレン系界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0043】
また、アセチレン系界面活性剤の市販品としては、アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤の市販品、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤の市販品が挙げられる。
アルキレンオキサイド非変性アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、サーフィノール61、82、104(いずれも、エアープロダクツ社製)等が挙げられる。
アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、サーフィノール420、440、465、485、TG、2502、ダイノール604、607(いずれも、エアープロダクツ社製);サーフィノールSE、MD-20、オルフィンE1004、E1010、PD-004、EXP4300、PD-501、PD-502、SPC(いずれも、日信化学工業株式会社製);アセチレノールEH、E40、E60、E81、E100、E200(いずれも、川研ファインケミカル株式会社製);等が挙げられる。
中でも、アセチレン系界面活性剤としては、アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
【0044】
上記アルコールアルコキシレート系界面活性剤として、具体的には、アルコールエトキシレート、アルコールポリエトキシレート等が挙げられる。また、アルコールアルコキシレート系界面活性剤の市販品としては、「BYK-DYNWET800」(BYK社製)が挙げられる。これらアルコールアルコキシレート系界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0045】
界面活性剤としては、上述したもののほか、更に必要に応じ、アクリルポリマー系界面活性剤(例えば、共栄社化学株式会社製「ポリフローWS-314」)、変性シリコーン系界面活性剤(例えば、共栄社化学株式会社製「ポリフローKL-401」)を用いてもよい。
【0046】
本発明の水性インキが界面活性剤を含有する場合、水性インキ全量に占める界面活性剤の合計の割合は、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。上記割合が0.1質量%以上であれば、基材の濡れ性を高めて、基材との密着性を保持する効果を得ることができる。また、上記割合が3.0質量%以下であれば、耐摩耗性、耐水摩耗性、及び耐スクラッチ性を良好に保持することができる。同様の観点から、上記割合は、1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
(ワックス)
本発明の水性インキは、上述したものに加えて、ワックスを更に含有することができる。上記ワックスとしては、炭化水素系ワックスが好ましい。上記ワックスとして、具体的には、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、エチレン-プロピレン共重合体ワックス、4フッ化エチレン樹脂ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。これらワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いてもよい。
中でも、ワックスとしては、ポリエチレンワックスが好ましい。
【0048】
本発明の水性インキがワックスを含有する場合、水性インキ全量に占めるワックスの合計の割合は、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。上記割合が0.5質量%以上であれば、耐水摩耗性を保持する効果を得ることができる。また、上記割合が5.0質量%以下であれば、基材との密着性、耐水摩耗性、及び耐ブロッキング性を良好に保持することができる。
【0049】
(その他の成分)
本発明の水性インキは、上述したもののほか、必要に応じて、上記バインダー樹脂以外の汎用の樹脂、体質顔料、滑剤(オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等)、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤(シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤等)、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などのその他の成分を適量含有することができる。
【0050】
(水性インキの製造方法)
本発明の水性インキの製造方法は、特に限定されないが、例えば、水性溶剤及び消泡剤等を添加した混合物を分散させた後、バインダー樹脂、水性溶剤、アジリジン系硬化剤、及び必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加え、撹拌混合することにより、水性インキを得ることができる。上記の分散及び撹拌混合に際しては、フレキソ印刷又はグラビア印刷用のインキの製造に一般的に使用されているビーズミル、アイガーミル、サンドミル、ガンマミル、アトライター等の分散機を用いることができる。
【0051】
また、本発明の水性インキは、後述の通り、フレキソ印刷又はグラビア印刷に用いられることが好ましい。
【0052】
本発明の水性インキをフレキソ印刷又はグラビア印刷に用いる場合、即ち、本発明の水性インキをフレキソインキ又はグラビアインキとして使用する場合、その粘度は、離合社製ザーンカップ#4使用、25℃にて、7~25秒であればよく、より好ましくは10~20秒である。また、当該インキの25℃における表面張力は、25~50mN/mが好ましい。インキの表面張力が低いほど、フィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回ると、インキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり易い傾向にある。そしてこれは、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因と成りやすい。一方、表面張力が50mN/mを上回ると、フィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下し、ハジキの原因と成り易い。同様の観点から、当該インキの25℃における表面張力は、33mN/m以上がより好ましく、また、43mN/m以下がより好ましい。
【0053】
(積層体)
本発明の積層体は、基材と、上記基材上に設けられたインキ層とを備え、上記インキ層が、上述した水性インキの印刷層であることを特徴とする。即ち、本発明の積層体は、上述した水性インキを基材上に印刷することで得られる。
【0054】
基材としては、例えば、熱可塑性樹脂フィルム、紙、合成紙、鋼板、アルミ箔、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード等が挙げられる。これらの中でも、基材としては、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム等が好ましい。また、基材としては、上述したものの複数種の組み合わせであってもよく、例えば、紙と熱可塑性樹脂フィルムとが積層された積層基材、熱可塑性樹脂フィルムとアルミ箔とが積層された積層基材等であってもよい。複数種の組み合わせの場合、その積層方法は特に限定されず、汎用の1液型接着剤、2液型接着剤等を使用して接着させてもよいし、複数の熱可塑性樹脂フィルムであれば押出成形によって貼り合せた積層基材であってもよい。
【0055】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアリレート樹脂;またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられ、また、これらが複数積層された積層フィルムも挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好ましい。
【0056】
これらの熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、その製法も特に限定されない。また、基材としての熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また、熱可塑性樹脂フィルムの印刷対象の面には、コロナ放電処理がされていることが好ましい。この場合、密着性をより向上させることができる。更に、熱可塑性樹脂フィルムの印刷対象の面には、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、酸素ガスバリア層等のガスバリアコート層が積層されていてもよい。
【0057】
本発明の効果を最大限に発揮するために、シュリンクラベルの構成材料となる基材を使用することが好ましく、熱処理によって収縮する熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。なかでも、機械的強度及び化学的強度が高く、良好な印刷適性を有する熱収縮性の熱可塑性樹脂フィルム(熱収縮フィルムと称する)を用いることが好ましい。このような熱収縮フィルムとしては、延伸ポリエステル系フィルム、収縮性ポリ塩化ビニルフィルム、収縮性ポリスチレンフィルム、収縮性ポリエチレンテレフタレートフィルム、収縮性ポリプロピレンフィルム等を挙げることができる。印刷面となる面は、無処理であってもよいし、プラズマ処理、コロナ処理、放射線処理、及びシランカップリング処理等の表面処理が施されていてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。さらに、熱可塑性樹脂フィルムには、アルミ蒸着や透明蒸着が施されていてもよい。
【0058】
本実施形態においては、水性インキを基材上に印刷し、印刷層を設けることで印刷物を得る。この点に関し、通常は、グラビア印刷又はフレキソ印刷の印刷方式を用いてインキを基材に塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥させて定着することで印刷層が得られる。乾燥温度は、通常40~60℃程度である。
【0059】
上述した水性インキの印刷層の厚みは、特に限定されず、印刷層形成時のインキ乾燥性やランニングコスト等の様々な事情を踏まえて、適宜決定することができる。
【0060】
上述した水性インキの印刷層は、フレキソ印刷又はグラビア印刷の印刷方式を用いて形成することが好ましい。フレキソ印刷及びグラビア印刷は、いずれも輪転印刷の一種であり、5特性が良好に保持された印刷層を形成することができる。また、フレキソ印刷及びグラビア印刷は、高速印刷適性、印刷再現性等の面から好ましい。
【0061】
フレキソ印刷は、凸版印刷の一種であり、主にゴム版を印刷版(凸版)として用い、当該刷版にインキを供給する部分にアニロックスロールと呼ばれる細かいメッシュの彫刻ロールを使用する。アニロックスロールは、チャンバ型ドクタからインキを受け取って、刷版上にインキ付けを行う役割を担っており、アニロックスロールを介することでインキを刷版に均一に転移できる利点がある。
【0062】
具体的には、隔壁及び隔壁で囲まれた開口部を多数有するアニロックスロールの表面にインキを塗布し、アニロックスロールの表面にドクタを押し付けて、アニロックスロールの隔壁天面に存在するインクを掻き落とし、開口部である凹部にインクを充填する。続いて、アニロックスロールにフレキソ版を押し付けて、アニロックスロールの凹部に存在するインクを印刷版の凸部(パターン部)に転移させ、次に版を基材に接触させて版のパターン部に存在するインクを基材に転移させて、印刷物を得る。
【0063】
また、輪転印刷方式を組み合わせてもよい。例えば、基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いて輪転印刷する場合、巻取り熱可塑性樹脂フィルムの表面に、水性インキを用いて輪転印刷を行う。印刷後は、ラミネート、スリット(幅部分の不要部をカット)、製袋(切り取ってヒートシールして袋にする)等の工程を行うことができる。水性インキを巻き取り熱可塑性樹脂フィルムへ輪転印刷することにより、高速印刷が可能であり、生産性に優れる。
【0064】
なお、輪転印刷としては、上述の通りグラビア印刷及びフレキソ印刷が挙げられ、どちらの方式も採用可能である。但し、本発明の水性インキの印刷には、フレキソ印刷方式を用いることが好ましい。そこで、以下では、フレキソ印刷について詳細に説明する。
なお、本明細書において輪転印刷とは、グラビア印刷及びフレキソ印刷を意味するものであり、その他の印刷方式であるインキジェット印刷及びシルクスクリーン印刷方式は、含まれない。
【0065】
フレキソ印刷では、水性インキを溜める容器から当該水性インキを直接、又はインキ供給用ポンプ等を介して、表面に凹凸形状を有するアニロックスローラに供給し、このアニロックスローラに供給された水性インキが、版面の凸部との接触により版面に転移し、更に版面と熱可塑性樹脂フィルムとの接触により最終的に熱可塑性樹脂フィルムに転移して、絵柄及び/又は文字が形成される。
【0066】
水性インキを使用する場合、インキ乾燥性が溶剤型のフレキソ印刷インキよりも若干劣ることから、インキの膜厚は、できるだけ薄いことが好ましい。この観点から、アロニックスローラに供給されるインキ量は、できるだけ少ないことが好ましい。一方で、膜厚が薄くなると印字濃度が薄くなる傾向にあるので、使用する水性インキにおける顔料の濃度を適宜コントロールすることが好ましい。具体的には、水性インキにおける顔料の濃度は、溶剤型のフレキソ印刷インキの濃度よりも、1~5重量%増量した濃度であると、適正な印字濃度が得られる。
【0067】
巻取り熱可塑性樹脂フィルムとは、規定の幅に揃えられたロール状の熱可塑性樹脂フィルムのことであり、1枚1枚が予め切り離されている枚葉紙とは異なる、輪転印刷用のフィルムである。フィルムの幅は、使用する輪転印刷機の版幅、及びグラビア版の画像(絵柄)部分の幅を基準として、適宜選択される。なお、複数の色の輪転印刷インキを用いて色を重ねる場合、それらの印刷の順番は、特に限定されない。
【0068】
表刷り印刷を行うときは、必要に応じて先に白インキを印刷し、その後色インキを印刷するのが一般的である。色インキが複数の場合、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの順に印刷することができるが、特に制限されるものではない。
表刷り印刷の構成の場合は、輪転印刷物の印刷面に、本発明の水性インキをオーバーコートとして塗布する。
【0069】
基材の色が白色系の場合、即ち、例えば紙基材や、白色系顔料を練り込んだ熱可塑性樹脂フィルムの場合、必要に応じて色インキのみでの印刷も可能である。
【0070】
また、裏刷り印刷を行うときは、巻取り熱可塑性樹脂フィルムに、先に色インキを印刷し、次に白インキを印刷するのが一般的である。色インキが複数色の場合、例えばブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの順に印刷することができるが、特に制限されるものではない。なお、大型印刷機では更に、上記基本色に加えて特色等を用いることができる。即ち、大型印刷機には、5~10色に対応する複数の印刷ユニットがあり、1印刷ユニットには1色のインキが備えられ、5~10色の重ね印刷を一度に行うことができる。裏刷り印刷で得た印刷物は、そのままで使用することもあるし、得られた輪転印刷物の印刷面にアンカーコート剤及び接着剤等を塗布し、必要に応じて乾燥後に、フィルム等と貼り合せてラミネート体とすることもできる。
【0071】
そして、本発明の積層体における上記インキ層(印刷層)は、外部との接触にも耐え得る強靭な皮膜物性を有し、耐ブロッキング性や耐水摩擦性に優れるので、最表面に位置する層として用いることができる。その場合、本発明の積層体においては、基材とインキ層との間に、中間インキ層を更に備えてもよい。かかる中間インキ層は、任意のインキの印刷層とすることができ、1層のみであってもよく、2層以上であってもよい。また、中間インキ層は、所望される意匠に基づいて、顔料等の色材を適宜含有する色インキ層であってもよい。本発明の積層体における上記インキ層(印刷層)は、顔料を含有する組成においても顔料分散性に優れ、密着性、耐ブロッキング性、皮膜特性に優れていることから、色インキ層として用いることも好ましい。特に、顔料を高濃度含有する白インキ層として用いることにより、1回の印刷で優れた美粧性を有するインキ層を得られる。中間インキ層の製造方法も特に限定されず、例えば、上述した本発明の水性インキの印刷層と同様のやり方で製造することができる。
【0072】
本発明の積層体は、プラスチックフィルムをはじめとする基材の種類を選ばずに優れた密着性を有し、また、実施例に記載の物性に追加して、塗膜強度、特に耐摩擦性や耐スクラッチ性にも優れるので、印刷層が最表層となる形態に適している。そのため、表刷り印刷物や、裏刷り印刷物において、流通時に最表層となる面に本発明の水性インキの印刷層を備える印刷物が、本発明の効果を最大限に発揮でき好ましい。
本発明の積層体は、飲料や食品用ボトルに適用するプラスチックラベル(シュリンクラベルや胴巻きラベルが該当する)や、集積包装体、外装用包装体等、様々な用途に展開可能である。特に、本発明の積層体は、上述した様々な用途において、熱収縮フィルムとして好適に用いられる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
【0074】
〔自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン 樹脂A〕
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備える反応容器に、酢酸n-プロピル60.0質量部を仕込んだ。窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方で、メチルメタクリレート57.0質量部、n-ブチルメタクリレート10.0質量部、n-ブチルアクリレート13.0質量部、メタクリル酸20.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を、酢酸n-プロピル40.0質量部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応を行った。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を8.0質量部加えて中和した。更に、イオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分55%のアクリル樹脂の水溶液を得た。上記樹脂は、酸価が130mgKOH/g、Tgが83℃であった。
その後、撹拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備える反応容器に、上記のアクリル樹脂の水溶液32.1質量部を仕込み、イオン交換水160.0質量部を加えた。窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度75℃まで昇温した。続いて、滴下ロートを用い、メチルメタクリレート33.0質量部、n-ブチルメタクリレート31.0質量部、n-ブチルアクリレート32.0質量部、ジアセトンアクリルアミド4.0質量部、30%過硫酸アンモニウム3.5質量部を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応を行った。その後、得られたアクリル系エマルジョン溶液に、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を3質量部添加することにより、固形分40%の自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(樹脂A)を得た。樹脂Aは、酸価が20mgKOH/g、Tgが33℃であった。
【0075】
〔アクリル樹脂エマルジョン 樹脂EM〕
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備える反応容器に、酢酸n-プロピル60.0質量部を仕込んだ。窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度90℃まで昇温した。一方で、メチルメタクリレート10.0質量部、スチレン59.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5.0質量部、アクリル酸26.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を、酢酸n-プロピル40.0質量部に溶解し、滴下ロートを用いて4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応を行った。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液に30%アンモニア水を8.0質量部加えて中和した。更に、イオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分55%のアクリル樹脂の水溶液を得た。上記樹脂は、酸価が202mgKOH/g、Tgが94℃であった。
その後、撹拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備える反応容器に、上記のアクリル樹脂の水溶液182.8質量部を仕込み、イオン交換水220.0質量部を加えた。窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度75℃まで昇温した。続いて、滴下ロートを用い、メチルメタクリレート10.0質量部、スチレン41.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート49.0質量部、30%過硫酸アンモニウム3.5質量部を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に6時間反応を行い、固形分40%のアクリル樹脂エマルジョン(樹脂EM)を得た。樹脂EMは、酸価が101mgKOH/g、Tgが52℃であった。
【0076】
〔アルカリ可溶型水溶性樹脂 樹脂a〕
撹拌器、温度計、滴下ロート、還流管を備える反応容器に、メチルトリグリコール80.0質量部を仕込んだ。窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度90℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートを用いて、一方からはスチレン46.0部、メチルメタクリレート5.0部、n-ブチルメタクリレート20.0部、メタクリル酸29.0部を4時間かけて滴下した。もう一方からは、メチルイソブチルケトン10.0部にアゾビスイソブチロニトリル5.0部を溶解させ、4.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間反応を行った。反応終了後に冷却を行い、得られたアクリル樹脂溶液55部に30%アンモニア水を10.0質量部加えて中和した。更に、イオン交換水を加えて加熱しながら溶剤置換を行い、固形分30%のアクリル可溶型水溶性樹脂を得た。樹脂aは、酸価が189mgKOH/g、Tgが94℃であった。
【0077】
〔アルカリ可溶型水溶性樹脂 樹脂b〕
アルカリ可溶型水溶性樹脂(樹脂b)の作製については、上述したアルカリ可溶型水溶性樹脂(樹脂a)の作製において、酸価が215mgKOH/g、Tgが110℃、固形分30%となるようにそれぞれ条件を適宜変更して、作製した。
【0078】
〔アルカリ可溶型水溶性樹脂 樹脂c〕
アルカリ可溶型水溶性樹脂(樹脂c)の作製については、上述したアルカリ可溶型水溶性樹脂(樹脂a)の作製において、酸価が241mgKOH/g、Tgが104℃、固形分30%となるようにそれぞれ条件を適宜変更して、作製した。
【0079】
〔水性インキ及び積層体の作製〕
各例において、表に示す配合処方で水性インキを常法に従って作製した。
一方、基材として、コロナ処理ポリスチレン熱収縮フィルム(タキロンシーアイ株式会社製 ボンセットBS55S 厚さ50μm)を準備し、印刷装置として、Flexoproof100テスト印刷機(Testing Machines,Inc.社製、アニロックス200線/inch)を準備した。そして、このテスト印刷機のアニロックスロール及び樹脂版により、各例の水性インキの縦240mm×横80mmのベタ絵柄を、印刷速度100m/分で印刷した。次いで、得られた印刷物について25℃にて24時間エージングを行い、印刷インキ積層体を得た。
【0080】
得られた積層体について、下記の評価を行った。
【0081】
(顔料分散性)
作製翌日のインキを液温25℃に調整し粘度をザーンカップ#4で測定し評価を行った。
5:20秒以内
4:20秒-30秒以内
3:30秒-40秒以内
2:40-50秒以内
1:50秒以上
【0082】
(基材密着性)
積層体のインキ層の形成面にセロハンテープを貼り付けた。次いで、上記セロハンテープを急速に剥がし、そのときの基材からのインキ層(皮膜)の剥離の度合を目視観察し、下記基準に従って評価した。なお、4.5の評価結果は、複数回の評価のうち、4と5の評価結果が同等レベルに混在した場合である。実用レベルは、4以上である。
5:インキ層の剥離無し
4:インキ層の剥離面積が印刷面積の0%超10%未満
3:インキ層の剥離面積が印刷面積の10%以上30%未満
2:インキ層の剥離面積が印刷面積の30%以上75%未満
1:インキ層の剥離面積が印刷面積の75%以上
【0083】
(耐ブロッキング性)
積層体の印刷面と印刷面を合わせて、5kg/cm2の荷重下に40℃、湿度80%で1日間静置した。次いで、手で剥がし、そのときの剥離抵抗の有無とインキ層(皮膜)の転移の度合とを目視観察し、下記の基準に従って評価した。
5:インキ層の転移無し、剥離抵抗無し
4:インキ層の転移無し、しかし剥離抵抗有り
3:インキ層の転移量が印刷面積の10%未満で、剥離抵抗有り
2:インキ層の転移量が印刷面積の10%以上50%未満で、剥離抵抗有り
1:インキ層の転移量が印刷面積の50%以上で、剥離抵抗有り
【0084】
(耐アルコール性)
印刷面に評価溶液としてエタノールを50μm滴下し、室温で24時間乾燥させたのち、塗膜を常温水で洗浄し塗膜の剥がれや白化度合を評価した。
5:外観変化なし
4:わずかに白化有り
3:白化有り
2:わずかにインキ脱離あり
1:インキ脱離あり
【0085】
(耐水摩擦性)
積層体のインキ層の形成面に、水に浸漬したカナキンを当て、学振型摩擦堅牢度試験機にて荷重200g×100回摩擦した。このときのインキ層(皮膜)の剥離の度合を目視観察し、下記の基準に従って評価した。
5:インキ層の剥離無し
4:インキ層の剥離面積が印刷面積の0%超10%未満
3:インキ層の剥離面積が印刷面積の10%以上50%未満
2:インキ層の剥離面積が印刷面積の50%以上70%未満
1:インキ層の剥離面積が印刷面積の70%以上
【0086】
(白濃度)
透過濃度計を用いて印刷物の白濃度を評価した。
5:0.2以上
4:0.16以上
3:0.12以上
2:0.1以上
1:0.1以下
【0087】
(インキ洗浄性)
インキを塗工して30分経過した塗膜に合成洗剤を塗布し、布で拭った際の塗膜の剥離面積を評価した。
5:剥離面積100%
4:剥離面積50-100%未満
3:剥離面積10-50%未満
2:剥離面積1-10%未満
1:剥離なし
【0088】
結果を表1~3に示す。なお表中「配合」の数字は、溶媒以外固形分の質量%を表す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
表中における、樹脂以外の各成分の詳細は以下のとおりである。
溶媒:イオン交換水
界面活性剤:アルキレンオキサイド変性アセチレングリコール系界面活性剤(サーフィノール420、日信化学工業(株)社製)
着色顔料:酸化チタン テイカ株式会社性「TITANIX JR-701」
ワックス:ポリエチレンワックス(ケミパール W-400 三井化学株式会社製)
消泡剤:シリコンエマルジョン(Evonik社製 TEGO Foamex1488)
シリコーン系添加剤:シリコンエマルジョン(Evonik社製 TEGO Glide490)
アジリジン化合物:アジリジン系硬化剤(株式会社日本触媒製社製「PZ-33」、NV値:100質量%)
エポキシ:エポキシ系硬化剤(ナガセケムテックス社製 EX-614B)
イソシアネート:イソシアネート系硬化剤(三井化学社製 タケネートWD-726)
カルボジイミド:カルボジイミド系硬化剤(日清紡株式会社製 カルボジライト E-02)
チタンキレート:チタンキレート系硬化剤(マツモトファインケミカル株式会社製 TC-300)
【0093】
各表より、本発明に従う実施例においては、基材密着性、耐ブロッキング性、耐アルコール性、耐水摩擦性の全てにおいて良好な評価結果となっており、基材との密着性に加え、各種の耐久性に優れていることが分かる。
また、顔料を高濃度含有するインキにおいても、優れた顔料分散性を示すとともに、基材との密着性に加え、各種の耐久性に優れている。
【要約】
【課題】 密着性、皮膜同士の耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐アルコール性に優れた皮膜を得ることができる水性インキ、それを用いた積層体を提供する。
【解決手段】
バインダー樹脂と、硬化剤と、水性溶剤とを含有し、前記バインダー樹脂は、自己架橋型(メタ)アクリル樹脂エマルジョンと、アルカリ可溶型水溶性樹脂を含有する水性インキ、及び基材と、前記基材上に設けられた印刷層を備え、印刷層が前記水性インキの印刷層である積層体。
【選択図】 なし