IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMG森精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図1
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図2
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図3
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図4
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図5
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図6
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図7
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図8
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図9
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図10
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図11
  • 特許-工具交換装置および工作機械 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】工具交換装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20250411BHJP
【FI】
B23Q3/157 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024085987
(22)【出願日】2024-05-28
【審査請求日】2024-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】金岩 勝樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴也
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215838(JP,U)
【文献】特開昭59-024937(JP,A)
【文献】特開平07-308841(JP,A)
【文献】特開2002-331434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q3/155-3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸の軸方向にスライドするとともに、前記所定軸を中心に旋回することによって、工具を交換する工具交換装置であって、
具を把持可能な第1把持部と、
前記第1把持部から前記所定軸の周方向に離れた位置に設けられ、工具を把持可能な第2把持部と、
前記所定軸の軸方向に延びる第1ロックピンを含み、前記所定軸の軸方向に沿った前記第1ロックピンのスライド運動に伴って、前記第1把持部に把持された工具を保持するロック状態と、前記第1把持部に把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第1ロック機構と、
前記所定軸の軸方向に延びる第2ロックピンを含み、前記所定軸の軸方向に沿った前記第2ロックピンのスライド運動に伴って、前記第2把持部に把持された工具を保持するロック状態と、前記第2把持部に把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第2ロック機構と、
前記第1ロックピンおよび前記第2ロックピンを互いに結合し、前記第1ロック機構および前記第2ロック機構の動作時に、前記所定軸の軸方向に沿ってスライドするピン結合ユニットと、
前記所定軸の軸方向における前記ピン結合ユニットの位置を検知可能な検知部と、を備え
前記ピン結合ユニットは、
前記第1ロックピンおよび前記第2ロックピンが接続されるプレート部と、
前記プレート部に取り付けられ、前記所定軸の周方向に離れて設けられる複数のローラとを含み、さらに、
前記所定軸の軸方向において前記プレート部と対向し、前記工具交換装置の旋回時に、複数の前記ローラと接触するベース部材を備える、工具交換装置。
【請求項2】
前記所定軸の軸方向において、前記ベース部材に対して前記プレート部の反対側に配置される駆動プレートを有し、前記第1ロック機構および前記第2ロック機構の動作時に、前記ピン結合ユニットに対して前記所定軸の軸方向に沿ったスライド運動を出力するためのロック用アクチュエータをさらに備え、
前記ベース部材には、前記所定軸の軸方向に貫通する切り欠き部が設けられ、
前記駆動プレートには、前記所定軸の軸方向に突出し、前記所定軸の軸方向において前記切り欠き部と対向する凸部が設けられ、
前記第1ロック機構および前記第2ロック機構の動作時に、前記凸部および前記ローラは、前記切り欠き部を通じて互いに接触する、請求項に記載の工具交換装置。
【請求項3】
前記ピン結合ユニットは、前記プレート部から前記所定軸の半径方向外側に向けて突出するピン部材をさらに含み、
前記検知部は、前記所定軸の軸方向において前記ピン部材と対向して設けられる、請求項1または2に記載の工具交換装置。
【請求項4】
ワーク加工に用いられる工具を保持可能な工具保持部と、
前記工具保持部に保持される工具を交換する、請求項1または2に記載の工具交換装置とを備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2020-124762号公報(特許文献1)には、工具を把持可能な第1把持部を有する第1のチェンジャアームと、工具を把持可能な第2把持部を有する第2のチェンジャアームとを備える自動工具交換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-124762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、各々が工具を把持可能な第1把持部および第2把持部を備え、工具待機位置に配置された工具と、工具主軸等に保持された工具とを同時に交換することが可能な自動交換装置(ATC:Auto Tool Changer)が知られている。
【0005】
このような、いわゆるダブルアーム方式の自動工具交換装置では、工具交換時における工具の脱落を防ぐために、第1把持部および第2把持部に把持された工具のロック状態を正確に検知することが求められる。
【0006】
この発明の目的は、第1把持部および第2把持部に把持された工具のロック状態を正確に検知することが可能な自動工具交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った自動工具交換装置は、所定軸の軸方向にスライドするとともに、所定軸を中心に旋回することによって、工具を交換する工具交換部を備える。工具交換部は、所定軸の周方向に離れて設けられ、各々が工具を把持可能な第1把持部および第2把持部と、所定軸の軸方向に延びる第1ロックピンを含み、所定軸の軸方向に沿った第1ロックピンのスライド運動に伴って、第1把持部に把持された工具を保持するロック状態と、第1把持部に把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第1ロック機構と、所定軸の軸方向に延びる第2ロックピンを含み、所定軸の軸方向に沿った第2ロックピンのスライド運動に伴って、第2把持部に把持された工具を保持するロック状態と、第2把持部に把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第2ロック機構と、第1ロックピンおよび第2ロックピンを互いに結合し、第1ロック機構および第2ロック機構の動作時に、所定軸の軸方向に沿ってスライドするピン結合ユニットとを有する。自動工具交換装置は、所定軸の軸方向におけるピン結合ユニットの位置を検知可能な検知部をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、第1把持部および第2把持部に把持された工具のロック状態を正確に検知することが可能な自動工具交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態における自動工具交換装置(初期状態)を模式的に示す断面図である。
図2】この発明の実施の形態における自動工具交換装置(リリース状態)を模式的に示す断面図である。
図3】この発明の実施の形態における自動工具交換装置(ロック状態)を模式的に示す断面図である。
図4図2中の自動工具交換装置における工具交換部を示す斜視図である。
図5図4中の工具交換部の駆動機構を模式的に示す断面図である。
図6】工具交換時の自動工具交換装置を示す断面図である。
図7】工具交換時の自動工具交換装置を示す別の断面図である。
図8】工具交換時の自動工具交換装置を示すさらに別の断面図である。
図9】工具交換時の自動工具交換装置を示す正面図である。
図10】工具交換時の自動工具交換装置を示す別の正面図である。
図11】工具交換時の自動工具交換装置を示すさらに別の正面図である。
図12】自動工具交換装置による工具交換のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、この発明の実施の形態における自動工具交換装置(初期状態)を模式的に示す断面図である。図2は、この発明の実施の形態における自動工具交換装置(リリース状態)を模式的に示す断面図である。図3は、この発明の実施の形態における自動工具交換装置(ロック状態)を模式的に示す断面図である。図4は、図2中の自動工具交換装置における工具交換部を示す斜視図である。
【0012】
図1には、後出の図9に示される自動工具交換装置100が鉛直面により切断された場合の断面形状が示されている。図2および図3には、後出の図10に示される自動工具交換装置100が水平面により切断された場合の断面形状が示されている。
【0013】
図1から図4を参照して、本実施の形態における自動工具交換装置100は、工作機械に備わっている。工作機械は、マシニングセンタであってもよいし、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する複合加工機であってもよいし、ワークの付加加工(Additive Manufacturing)と、ワークの除去加工(Subtractive Manufacturing))とが可能なAM/SMハイブリッド加工機であってもよい。
【0014】
自動工具交換装置100は、工作機械における加工エリアにおいてワーク加工に用いられる工具を交換する。本実施の形態では、一例として、自動工具交換装置100が、横形マシニングセンタの工具主軸に装着される工具を交換する場合を説明する。
【0015】
自動工具交換装置100は、工具交換部21を有する。工具交換部21は、所定軸101の軸方向にスライドするとともに、所定軸101を中心に旋回することによって、工具を交換する。言い換えれば、工具交換部21は、自動工具交換装置100による工具交換時に、交換対象となる工具とともに、所定軸101の軸方向にスライドし、所定軸101を中心に旋回する部分である。
【0016】
所定軸101は、仮想上の直線であり、工具主軸の回転軸と平行な水平方向に延びている。
【0017】
工具交換部21は、第1把持部31Aと、第2把持部31Bとを有する。第1把持部31Aおよび第2把持部31Bは、同一の構造を有する。
【0018】
図4に示されるように、第1把持部31Aおよび第2把持部31Bの各把持部31は、工具を把持可能である。把持部31は、工具のシャンク部を受け入れ可能な半リング形状を有する。把持部31は、爪部31pを有する。爪部31pは、所定軸101と平行な揺動軸106を中心に揺動可能である。爪部31pは、把持部31に把持された工具のシャンク部に当接可能に設けられている。
【0019】
工具交換部21は、アーム部32をさらに有する。アーム部32は、所定軸101からその半径方向外側に向けた両側にアーム状に延びている。第1把持部31Aおよび第2把持部31Bは、それぞれ、所定軸101の半径方向におけるアーム部32の一方端部および他方端部に設けられている。第1把持部31Aおよび第2把持部31Bは、所定軸101の周方向に離れて設けられている。第1把持部31Aおよび第2把持部31Bは、所定軸101を中心に180°ずれた角度位置に設けられている。
【0020】
なお、図4に示されるように、本明細書では、自動工具交換装置100の構造を説明する便宜上、所定軸101の軸方向に沿った一方の側および他方の側を、それぞれ、「近位側」および「遠位側」という。所定軸101の軸方向でおいて近位側から遠位側に向かう方向が、工具主軸または工具ポット等からの工具の抜き出し方向に対応し、所定軸101の軸方向において遠位側から近位側に向かう方向が、工具主軸または工具ポット等に対する工具の挿入方向に対応している。把持部31を基準に、工具のシャンク部は、所定軸101の軸方向の近位側に延出し、工具の刃部は、所定軸101の軸方向の遠位側に延出する。
【0021】
工具交換部21は、第1ロック機構41Aと、第2ロック機構41Bとをさらに有する。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bは、同一の構造を有する。
【0022】
第1ロック機構41Aは、第1ロックピン42Aを有する。第2ロック機構41Bは、第2ロックピン42Bを有する。第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bの各ロックピン42は、所定軸101の軸方向に延びている。ロックピン42は、所定軸101の軸方向に延びるピン形状を有する。
【0023】
第1ロック機構41Aは、所定軸101の軸方向に沿った第1ロックピン42Aのスライド運動に伴って、第1把持部31Aに把持された工具を保持するロック状態と、第1把持部31Aに把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する。第2ロック機構41Bは、所定軸101の軸方向に沿った第2ロックピン42Bのスライド運動に伴って、第2把持部31Bに把持された工具を保持するロック状態と、第2把持部31Bに把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する。
【0024】
より具体的に説明すると、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bは、所定軸101の周方向に離れて設けられている。第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bは、所定軸101を中心に180°ずれた角度位置に設けられている。第1ロックピン42Aは、第1把持部31Aから所定軸101の半径方向内側に離れて設けられている。第2ロックピン42Bは、第2把持部31Bから所定軸101の半径方向内側に離れて設けられている。
【0025】
ロックピン42には、くさび部43が設けられている。くさび部43は、所定軸101の半径方向外側を向くロックピン42の外周面から凹む溝形状をなしている。くさび部43は、所定軸101から、くさび部43がなす溝底面までの距離が、所定軸101の軸方向に沿って変化するように、テーパ状に設けられている。所定軸101から、くさび部43がなす溝底面までの距離は、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向かうほど大きくなる。
【0026】
第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41は、バネ部材46と、ロックロッド44とをさらに有する。
【0027】
バネ部材46は、ロックピン42に設けられている。バネ部材46は、たとえば、所定軸101の軸方向に螺旋状に延びるコイルバネからなる。バネ部材46は、ロックピン42に対して、所定軸101の軸方向の弾性力を作用させている。バネ部材46は、ロックピン42に対して、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向かう方向の弾性力を作用させている。
【0028】
ロックロッド44は、把持部31(爪部31p)およびロックピン42の間に設けられている。ロックロッド44は、爪部31pおよびロックピン42の間で軸状に延びている。ロックロッド44は、図示しないガイド部材によって、ロックロッド44が延びる軸方向に沿ってスライド可能に案内されている。
【0029】
ロックロッド44の一方端部は、相対的に所定軸101の半径方向内側に配置され、ロックロッド44の他方端部は、相対的に所定軸101の半径方向外側に配置されている。ロックロッド44の一方端部は、くさび部43と当接している。ロックロッド44は、テーパ部45を有する。テーパ部45は、ロックロッド44の一方端部に設けられている。テーパ部45は、くさび部43がなす溝底面に対応するテーパ面を形成している。テーパ部45は、くさび部43がなす溝底面に面接触している。ロックロッド44の他方端部は、把持部31(爪部31p)に連結されている。
【0030】
図2に示されるように、ロックピン42が遠位側に位置する場合、ロックロッド44は、所定軸101の半径方向内側のストローク端に配置されている。爪部31pは、工具のシャンク部から離間して位置決めされている。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41は、把持部31に把持された工具を解放するリリース状態とされている。
【0031】
図3に示されるように、ロックピン42が近位側に位置する場合、ロックロッド44は、所定軸101の半径方向外側のストローク端に配置されている。爪部31pは、工具のシャンク部と当接して位置決めされている。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41は、把持部31に把持された工具を保持するロック状態とされている。
【0032】
図1から図4に示されるように、工具交換部21は、ピン結合ユニット61をさらに有する。ピン結合ユニット61は、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを互いに結合する。
【0033】
ピン結合ユニット61は、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41B(ロック機構41)の動作時に、所定軸101の軸方向にスライドする。ピン結合ユニット61は、リリース状態からロック状態へのロック機構41の動作時に、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向かう方向にスライドする。ピン結合ユニット61は、ロック状態からリリース状態へのロック機構41の動作時に、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向かう方向にスライドする。
【0034】
ピン結合ユニット61は、プレート部62と、複数のローラ63とを有する。プレート部62は、所定軸101の軸方向が厚み方向に対応する板材からなる。プレート部62は、所定軸101を中心に配置されている。プレート部62は、所定軸101を中心とするリング形状を有する。プレート部62は、所定軸101の軸方向において、アーム部32と隙間を設けて対向している。プレート部62は、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを互いに結合している。第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bは、プレート部62に接続されている。所定軸101の軸方向における近位側のロックピン42の端部が、プレート部62に接続されている。
【0035】
複数のローラ63は、プレート部62に取り付けられている。複数のローラ63は、所定軸101の周方向に離れて設けられている。複数のローラ63は、所定軸101の周方向において等間隔に設けられている。ローラ63は、所定軸101の半径方向に延びる回転軸を中心に回転可能である。ローラ63は、所定軸101の軸方向において、プレート部62から少なくとも近位側に突出するように設けられている。本実施の形態では、ピン結合ユニット61が、2つのローラ63を有する。
【0036】
ピン結合ユニット61は、第1ピン部材66Aと、第2ピン部材66Bとをさらに有する。第1ピン部材66Aおよび第2ピン部材66Bの各ピン部材66は、プレート部62に接続されている。ピン部材66は、プレート部62から、所定軸101の半径方向外側に向けて突出している。
【0037】
第1ピン部材66Aおよび第2ピン部材66Bは、所定軸101の周方向において180°ずれた角度位置に設けられている。
【0038】
自動工具交換装置100は、ベース部材51をさらに有する。ベース部材51は、所定軸101の軸方向が厚み方向に対応する板材からなる。ベース部材51は、所定軸101の軸方向において工具交換部21と対向して配置されている。ベース部材51は、所定軸101の軸方向においてプレート部62と対向して配置されている。ベース部材51は、所定軸101の軸方向において、プレート部62と、後出の駆動プレート82との間に配置されている。
【0039】
ベース部材51は、固定プレートであり、ベース部材51の位置は、固定されている。ベース部材51は、自動工具交換装置100による工具交換時に、所定軸101の軸方向にスライドせず、所定軸101を中心に旋回しない部分である。
【0040】
図1に示されるように、ベース部材51は、所定軸101を中心とする工具交換部21の旋回時、複数のローラ63と接触する。複数のローラ63は、所定軸101を中心とする工具交換部21の旋回時、ベース部材51と接触しながら回転する。
【0041】
図2から図4に示されるように、ベース部材51には、複数の切り欠き部52が設けられている。切り欠き部52は、所定軸101の軸方向において、ベース部材51を貫通する貫通孔からなる。複数の切り欠き部52は、所定軸101の周方向に離れて設けられている。複数の切り欠き部52は、それぞれ、複数のローラ63に対応して設けられている。複数の切り欠き部52は、リリース状態およびロック状態の間におけるロック機構41の動作時に、所定軸101の軸方向において複数のローラ63とそれぞれ対向している。
【0042】
自動工具交換装置100は、ロック用アクチュエータ81をさらに有する。ロック用アクチュエータ81は、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41B(ロック機構41)をリリース状態およびロック状態の間で動作させるための駆動装置である。
【0043】
ロック用アクチュエータ81は、工具交換部21に対して、所定軸101の軸方向の近位側に配置されている。ロック用アクチュエータ81は、所定軸101の軸方向において、ピン結合ユニット61(プレート部62)を挟んで、ロック機構41の反対側に設けられている。ロック用アクチュエータ81は、自動工具交換装置100による工具交換時に、所定軸101の軸方向にスライドせず、所定軸101を中心に旋回しない部分である。
【0044】
ロック用アクチュエータ81は、複数のピストンシリンダ83と、駆動プレート82とを有する。
【0045】
複数のピストンシリンダ83は、所定軸101の周方向に離れて設けられている。複数のピストンシリンダ83は、所定軸101の周方向において等間隔に設けられている。ピストンシリンダ83の動力源は、油圧である。
【0046】
駆動プレート82は、所定軸101の軸方向が厚み方向に対応する板材からなる。駆動プレート82は、所定軸101を中心とするリング形状を有する。駆動プレート82は、所定軸101の軸方向において、ベース部材51と対向している。駆動プレート82は、所定軸101の軸方向において、ベース部材51に対してプレート部62の反対側に配置されている。
【0047】
図2から図4に示されるように、駆動プレート82には、複数の凸部82sが設けられている。凸部82sは、所定軸101の軸方向に突出する凸形状を有する。凸部82sは、所定軸101の軸方向において、ベース部材51に近接する方向に突出している。複数の凸部82sは、所定軸101の周方向に離れて設けられている。複数の凸部82sは、それぞれ、複数のローラ63に対応して設けられている。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時に、凸部82sおよびローラ63は、切り欠き部52を通じて、互いに接触している。
【0048】
ピストンシリンダ83は、所定軸101の軸方向に沿って伸張駆動および短縮駆動が可能である。ピストンシリンダ83は、シリンダケース85と、ピストンロッド84とを有する。ピストンロッド84は、シリンダケース85に組み合わされている。ピストンロッド84は、所定軸101の軸方向に延びている。ピストンロッド84の端部は、駆動プレート82に接続されている。ピストンシリンダ83の伸張駆動時、シリンダケース85内の第1油圧室87に油が供給されることによって、ピストンロッド84が所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてストロークする。ピストンシリンダ83の短縮駆動時、シリンダケース85内の第2油圧室86に油が供給されることによって、ピストンロッド84が所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向けてストロークする。
【0049】
図2から図4に示されるように、リリース状態からロック状態へのロック機構41の動作時、ピストンシリンダ83を短縮駆動させる。駆動プレート82は、所定軸101の遠位側から近位側に向けてスライドする。第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bは、所定軸101の遠位側から近位側に向けたバネ部材46の弾性力によって、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向けてスライドする。第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを一体に結合するピン結合ユニット61は、複数のローラ63が駆動プレート82(複数の凸部82s)と接触することによって、所定軸101の遠位側から近位側に向けてスライドする。ロックロッド44は、くさび部43に対するテーパ部45の接触位置が所定軸101の半径方向内側から半径方向外側に移ることによって、所定軸101の半径方向外側に向けてスライドする。爪部31pは、揺動軸106を中心に揺動して、工具のシャンク部と当接する。
【0050】
ロック状態からリリース状態へのロック機構41の動作時、ピストンシリンダ83を伸張駆動させる。駆動プレート82は、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドする。ピン結合ユニット61は、駆動プレート82(複数の凸部82s)が複数のローラ63を所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けて押すことによって、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドする。ピン結合ユニット61により一体に結合された第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bは、バネ部材46の弾性力に抗しながら、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドする。ロックロッド44は、テーパ部45およびくさび部43の接触位置が所定軸101の半径方向外側から半径方向内側に移ることによって、所定軸101の半径方向内側に向けてスライドする。爪部31pは、揺動軸106を中心に、先の場合とは反対方向に揺動して、工具のシャンク部から離間する。
【0051】
なお、本発明におけるロック用アクチュエータには、上記の油圧により駆動されるピストンシリンダ83に限られず、たとえば、空圧により駆動するピストンシリンダが用いられてもよい。
【0052】
自動工具交換装置100は、検知部71をさらに有する。検知部71は、所定軸101の軸方向におけるピン結合ユニット61の位置を検知可能である。検知部71は、所定軸101の軸方向において、ピン結合ユニット61(ピン部材66)を挟んで、ロック機構41の反対側に設けられている。検知部71は、自動工具交換装置100による工具交換時に、所定軸101の軸方向にスライドせず、所定軸101を中心に旋回しない部分である。
【0053】
検知部71は、センサ72と、検知ピン73と、バネ部材75とを有する。センサ72は、近接センサからなる。
【0054】
検知ピン73は、所定軸101の軸方向に延びるピン形状を有する。検知ピン73は、センサ72による検知対象となるドグ74を有する。検知ピン73は、所定軸101の軸方向にスライド可能なように支持されている。検知部71(検知ピン73)は、所定軸101の軸方向においてピン部材66と対向して設けられている。
【0055】
バネ部材75は、検知ピン73に設けられている。バネ部材75は、検知ピン73に対して、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けて弾性力を作用させている。検知ピン73は、バネ部材75の弾性力によって、所定軸101の軸方向においてピン部材66に付勢されている。
【0056】
このような構成により、検知ピン73は、リリース状態およびロック状態の間におけるロック機構41の動作時、ピン結合ユニット61とともに所定軸101の軸方向にスライドする。図2に示されるロック機構41のリリース状態において、ドグ74は、センサ72からずれた位置に配置されている。図3に示されるロック状態において、ドグ74は、センサ72と対向する位置に配置されている。
【0057】
なお、本発明における検知部で用いられるセンサの種類は、近接センサに限られず、たとえば、光電センサであってもよい。また、マイクロスイッチまたはリミットスイッチなどの接触式のセンサが用いられてもよい。
【0058】
図5は、図4中の工具交換部の駆動機構を模式的に示す断面図である。図1から図5を参照して、自動工具交換装置100は、スライド用アクチュエータ91と、旋回用アクチュエータ95とをさらに有する。
【0059】
スライド用アクチュエータ91は、工具交換時に、工具交換部21を所定軸101の軸方向にスライドさせるための駆動装置である。スライド用アクチュエータ91は、モータ92と、スクリュー93と、ナット94とを有する。スクリュー93およびナット94は、ボールネジを構成している。
【0060】
モータ92は、モータの回転角度(位置)を制御可能なサーボモータからなる。モータ92の出力軸には、スクリュー93が接続されている。スクリュー93は、所定軸101に沿って延びている。スクリュー93は、リング形状を有するプレート部62の内側を通って、所定軸101の近位側から遠位側に向けて延びている。スクリュー93およびプレート部62の間には、隙間が設けられている。スクリュー93は、モータ92からの回転が入力されることによって、所定軸101を中心に正転方向および逆転方向の回転が可能である。ナット94は、スクリュー93に螺合されている。ナット94は、工具交換部21に接続されている。ナット94は、スクリュー93の回転に伴って、所定軸101の軸方向にスライド可能である。
【0061】
このような構成において、モータ92から出力される正転方向または逆転方向の回転がスクリュー93に伝達されることにより、スクリュー93が所定軸101を中心に回転する。スクリュー93の回転に伴って、ナット94は、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドしたり、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向けてスライドしたりする。これにより、ナット94と接続された工具交換部21は、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドしたり、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向けてスライドしたりする。
【0062】
旋回用アクチュエータ95は、工具交換時に、工具交換部21を所定軸101を中心に旋回させるための駆動装置である。旋回用アクチュエータ95は、モータ96と、第1歯車97と、第2歯車98と、複数のガイドピン99とを有する。
【0063】
モータ96は、モータの回転角度(位置)を制御可能なサーボモータからなる。モータ96の出力軸は、所定軸101と直交する方向に延びている。モータ96の出力軸には、第1歯車97が接続されている。第1歯車97は、かさ歯車からなる。第2歯車98は、所定軸101を中心とするかさ歯車からなり、第1歯車97と噛み合っている。複数のガイドピン99は、第2歯車98に接続されている。複数のガイドピン99は、所定軸101の周方向に間隔を開けて設けられている。ガイドピン99は、所定軸101の軸方向に延びている。
【0064】
図4および図5に示されるように、プレート部62には、複数のガイドピン孔64が設けられている。複数のガイドピン孔64は、所定軸101の周方向に間隔を開けて設けられている。ガイドピン孔64は、所定軸101の軸方向において、プレート部62を貫通している。複数のガイドピン孔64には、それぞれ、複数のガイドピン99が配置されている。ガイドピン99は、ガイドピン孔64を通って、所定軸101の近位側から遠位側に延びている。ガイドピン孔64を規定するプレート部62の内周壁と、ガイドピン99との間には、隙間が設けられている。
【0065】
このような構成において、モータ96からの回転が第1歯車97を介して第2歯車98に伝達されることによって、第2歯車98が所定軸101を中心に回転する。第2歯車98に接続された複数のガイドピン99は、所定軸101の周方向に移動する。所定軸101の周方向における複数のガイドピン99の運動がプレート部62に伝達されることによって、ピン結合ユニット61が所定軸101を中心に旋回する。
【0066】
一方、ガイドピン99およびプレート部62は、ガイドピン99がガイドピン孔64に配置されたまま、相対的に所定軸101の軸方向にスライド可能である。プレート部62は、複数のガイドピン99によって、所定軸101の軸方向にスライド可能に案内されている。このような構成により、スライド用アクチュエータ91におけるモータ92からの回転の出力時、所定軸101の軸方向におけるプレート部62のスライド動作が可能とされている。
【0067】
図6から図8は、工具交換時の自動工具交換装置を示す断面図である。図6から図8中には、図2および図3に対応する自動工具交換装置100の断面形状が示されている。図9から図11は、工具交換時の自動工具交換装置を示す正面図である。図9から図11中には、所定軸101の遠位側から近位側に見た自動工具交換装置100(工具交換部21)が示されている。図12は、自動工具交換装置による工具交換のステップを示すフローチャートである。
【0068】
図1図9および図12に示されるように、工具交換の初期状態において、工具交換部21は、ホームポジションに配置されている(S110)。工具交換部21は、ホームポジションにおいて、アーム部32が上下方向に延び、第2把持部31Bおよび第1把持部31Aがそれぞれ上下に配置される姿勢とされている。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41は、リリース状態とされている。
【0069】
工具交換の初期状態において、複数のローラ63は、ベース部材51と接触している。ベース部材51は、第1表面51aを有する。第1表面51aは、所定軸101と直交する平面である。第1表面51aは、所定軸101の軸方向の遠位側を向いている。複数のローラ63は、第1表面51aと接触している。
【0070】
複数の切り欠き部52には、それぞれ、複数の凸部82sが配置されている(図2に示される切り欠き部52および凸部82sの状態)。凸部82sは、第2表面82aを有する。第2表面82aは、所定軸101の軸方向における突出端に配置され、所定軸101と直交する平面である。第2表面82aは、所定軸101の軸方向の遠位側を向いている。第1表面51aおよび第2表面82aは、面一である。複数のローラ63は、それぞれ、複数の切り欠き部52(複数の凸部82s)から所定軸101の周方向に90°離れた位置に配置されている。
【0071】
工具待機位置に配置された工具ポットには、次加工で用いられる第1工具Taが保持され、加工エリアの工具交換位置に配置された工具主軸には、加工を終えた第2工具Tbが保持されている。
【0072】
図2図10および図12に示されるように、次に、旋回用アクチュエータ95の駆動(モータ96の回転)によって、工具交換部21を90°旋回させる(S120)。工具交換部21の旋回時、複数のローラ63は、ベース部材51(第1表面51a)と接触しながら回転する。工具交換部21の旋回動作が完了すると、複数のローラ63は、複数の切り欠き部52にそれぞれ配置された複数の凸部82s(第2表面82a)とそれぞれ接触する。第1把持部31Aに第1工具Taのシャンク部が配置され、第2把持部31Bに第2工具Tbのシャンク部が配置される。検知部71における検知ピン73は、所定軸101の軸方向において、第1ピン部材66Aと対向している。
【0073】
図3および図12に示されるように、次に、工具主軸による第2工具Tbのクランプを解除するととともに、ロック用アクチュエータ81の駆動(ピストンシリンダ83の短縮駆動)によって、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41をリリース状態からロック状態に動作させる(S130)。複数の凸部82sは、それぞれ、複数の切り欠き部52から退出する。複数のローラ63は、複数の凸部82sとそれぞれ接触する状態を維持しながら、複数の切り欠き部52にそれぞれ進入する。これにより、所定軸101の軸方向の遠視側から近位側に向けたピン結合ユニット61のスライド動作が許容される。検知部71における検知ピン73は、第1ピン部材66Aにより押されることによって、バネ部材75の弾性力に抗しながら、所定軸101の軸方向の遠位側から近位側に向けてスライドする。
【0074】
ドグ74がセンサ72と対向する位置に配置されることによって、検知部71は、ロック機構41のロック状態を検知する(S140)。工作機械に備わる制御部120は、検知部71においてロック機構41のロック状態が検知された場合、以下に説明を続ける工具交換のステップを進行させる。制御部120は、検知部71においてロック機構41のロック状態が検知されなかった場合、工具交換のステップの進行を停止し、作業者に対してアラートを発信する。
【0075】
図6図11および図12に示されるように、次に、スライド用アクチュエータ91の駆動(モータ92の回転)によって、工具交換部21を所定軸101の近位側から遠位側に向けてスライドさせる(S150)。複数のローラ63が駆動プレート82(複数の凸部82s)から離間する一方、バネ部材46からロックピン42に対して作用する弾性力によって、ロック機構41のロック状態が維持される。第1工具Taを工具待機位置に配置された工具ポットから抜き出し、第2工具Tbを工具主軸から抜き出す。
【0076】
次に、旋回用アクチュエータ95の駆動(モータ96の回転)によって、工具交換部21を180°旋回させる(S160)。第1工具Taは、加工エリアの工具交換位置に配置された工具主軸と対向して位置決めされ、第2工具Tbは、工具待機位置に配置された工具ポットと対向して位置決めされる。検知部71における検知ピン73は、所定軸101の軸方向において、第2ピン部材66Bと対向している。
【0077】
図7および図12に示されるように、次に、スライド用アクチュエータ91の駆動(モータ92の回転)によって、工具交換部21を所定軸101の遠位側から近位側に向けてスライドさせる(S170)。複数のローラ63は、それぞれ、複数の切り欠き部52に進入するとともに、駆動プレート82(複数の凸部82s)と接触する。第1工具Taを工具主軸に挿入し、第2工具Tbを工具待機位置に配置された工具ポットに挿入する。
【0078】
なお、本ステップにおいて、検知部71によるロック機構41のロック状態の検知は、実行されてもよいし、実行されなくてもよい。
【0079】
図8および図12に示されるように、次に、工具主軸により第1工具Taをクランプするととともに、ロック用アクチュエータ81の駆動(ピストンシリンダ83の伸張駆動)によって、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの各ロック機構41をロック状態からリリース状態に動作させる(S180)。複数のローラ63は、それぞれ、複数の切り欠き部52から退出する。複数の凸部82sは、複数のローラ63とそれぞれ接触する状態を維持しながら、複数の切り欠き部52にそれぞれ進入する。これにより、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けたピン結合ユニット61のスライド動作が許容される。第2ピン部材66Bが所定軸101の近位側から遠位側に向けてスライドする。検知部71における検知ピン73は、バネ部材75の弾性力によって、所定軸101の軸方向の近位側から遠位側に向けてスライドする。
【0080】
ドグ74がセンサ72とずれた位置に配置されることによって、検知部71は、ロック機構41のリリース状態を検知する(S190)。制御部120は、検知部71においてロック機構41のリリース状態が検知された場合、以下に説明を続ける工具交換のステップを進行させる。制御部120は、検知部71においてロック機構41のリリース状態が検知されなかった場合、工具交換のステップの進行を停止し、作業者に対してアラートを発信する。
【0081】
図1および図12に示されるように、次に、旋回用アクチュエータ95の駆動(モータ96の回転)によって、工具交換部21を90°旋回させる(S200)。工具交換部21の旋回時、複数のローラ63は、ベース部材51(第1表面51a)と接触しながら回転する。工具交換部21は、アーム部32が上下方向に延び、第2把持部31Bおよび第1把持部31Aがそれぞれ上下に配置される姿勢とされるホームポジションに戻る。以上のステップにより、自動工具交換装置100による工具交換が完了する。
【0082】
以上に説明した、この発明の実施の形態における自動工具交換装置100の構造をまとめると、本実施の形態における自動工具交換装置100は、所定軸101の軸方向にスライドするとともに、所定軸101を中心に旋回することによって、工具を交換する工具交換部21を備える。工具交換部21は、所定軸101の周方向に離れて設けられ、各々が工具を把持可能な第1把持部31Aおよび第2把持部31Bと、所定軸101の軸方向に延びる第1ロックピン42Aを含み、所定軸101の軸方向に沿った第1ロックピン42Aのスライド運動に伴って、第1把持部31Aに把持された工具を保持するロック状態と、第1把持部31Aに把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第1ロック機構41Aと、所定軸101の軸方向に延びる第2ロックピン42Bを含み、所定軸101の軸方向に沿った第2ロックピン42Bのスライド運動に伴って、第2把持部31Bに把持された工具を保持するロック状態と、第2把持部31Bに把持された工具を解放するリリース状態との間で動作する第2ロック機構41Bと、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを互いに結合し、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時に、所定軸101の軸方向に沿ってスライドするピン結合ユニット61とを有する。自動工具交換装置100は、所定軸101の軸方向におけるピン結合ユニット61の位置を検知可能な検知部71をさらに備える。
【0083】
このような構成によれば、検知部71は、ピン結合ユニット61の位置の検知を通じて、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bの位置を一括して検知することができる。これにより、第1把持部31Aおよび第2把持部31Bに把持された工具のロック状態を正確に検知することができる。また、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bの位置を別々に検知する場合と比較して、検知部71を簡易かつコンパクトに構成することができる。
【0084】
また、ピン結合ユニット61は、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bが接続されるプレート部62と、プレート部62に取り付けられ、所定軸101の周方向に離れて設けられる複数のローラ63とを含む。自動工具交換装置100は、所定軸101の軸方向においてプレート部62と対向し、工具交換部21の旋回時に、複数のローラ63と接触するベース部材51をさらに備える。
【0085】
このような構成によれば、所定軸101を中心とする工具交換部21の旋回時、複数のローラ63が、ベース部材51と接触しながら回転する。これにより、所定軸101を中心とする工具交換部21の旋回動作を円滑にできる。
【0086】
また、自動工具交換装置100は、所定軸101の軸方向において、ベース部材51に対してプレート部62の反対側に配置される駆動プレート82を有し、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時に、ピン結合ユニット61に対して所定軸101の軸方向に沿ったスライド運動を出力するためのロック用アクチュエータ81をさらに備える。ベース部材51には、所定軸101の軸方向に貫通する切り欠き部52が設けられる。駆動プレート82には、所定軸101の軸方向に突出し、所定軸101の軸方向において切り欠き部52と対向する凸部82sが設けられる。第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時に、凸部82sおよびローラ63は、切り欠き部52を通じて互いに接触する。
【0087】
このような構成によれば、ベース部材51が、所定軸101の軸方向において、プレート部62および駆動プレート82の間に設けられる構成においても、工具交換部21の旋回時には、複数のローラ63をベース部材51に接触させ、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時には、複数のローラ63をそれぞれ複数の凸部82sに接触させる構成を実現することができる。
【0088】
また、工具交換時における所定軸101の軸方向に沿った工具交換部21のスライド運動に伴って、ピン結合ユニット61は、駆動プレート82(複数の凸部82s)および複数のローラ63が接触する第1位置(図3に示される位置)と、駆動プレート82(複数の凸部82s)および複数のローラ63が離間する第2位置(図6に示される位置)との間で往復移動する。
【0089】
このような構成において、仮に駆動プレート82の位置の検知を通じて第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bの位置を検知しようとしても、駆動プレート82は、ピン結合ユニット61と一体に結合されていないため、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bの位置を検知したことにはならない。これに対して、検知部71は、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを互いに結合するピン結合ユニット61の位置を検知するため、第1把持部31Aおよび第2把持部31Bに把持された工具のロック状態を正確に検知することができる。
【0090】
また、ピン結合ユニット61は、プレート部62から所定軸101の半径方向外側に向けて突出するピン部材66(66A,66B)をさらに含む。検知部71は、所定軸101の軸方向においてピン部材66(66A,66B)と対向して設けられる。
【0091】
このような構成によれば、検知部71をベース部材51と干渉させることなく容易に設置することができる。
【0092】
本実施の形態における自動工具交換装置100は、所定軸101の軸方向にスライドするとともに、所定軸101を中心に旋回することによって、工具を交換する工具交換部21と、所定軸101の軸方向において工具交換部21と対向して配置されるベース部材51とを備える。工具交換部21は、所定軸101の周方向に離れて設けられ、工具交換部21の旋回時にベース部材51と接触しながら回転する複数のローラ63を有する。
【0093】
このような構成によれば、工具交換部21の旋回時に、複数のローラ63がベース部材51と接触しながら回転するため、工具交換部21の旋回動作を円滑にできる。
【0094】
また、自動工具交換装置100は、工具交換部21に対して所定軸101の軸方向に沿ったスライド運動を出力するためのスライド用アクチュエータ91をさらに備える。工具交換部21は、複数のローラ63が取り付けられ、所定軸101を中心とするリング形状を有するプレート部62をさらに有する。スライド用アクチュエータ91は、所定軸101に沿って延び、プレート部62の内側を挿通され、所定軸101を中心に正転方向および逆転方向の回転が可能なスクリュー93と、スクリュー93に螺合され、工具交換部21に接続されるナット94とを有する。
【0095】
このような構成によれば、所定軸101を中心とする正転方向および逆転方向のスクリュー93の回転がナット94に伝達されることによって、工具交換部21を所定軸101の軸方向に沿った一方の側および他方の側にスライドさせることができる。
【0096】
また、自動工具交換装置100は、工具交換部21に対して所定軸101の周方向に沿った回転運動を出力するための旋回用アクチュエータ95をさらに備える。工具交換部21は、複数のローラ63が取り付けられるプレート部62をさらに有する。プレート部62には、所定軸101の周方向に間隔を開けて設けられ、各々が所定軸101の軸方向に貫通する複数のガイドピン孔64が設けられる。旋回用アクチュエータ95は、各々が所定軸101の軸方向に延び、複数のガイドピン孔64にそれぞれ配置され、所定軸101の周方向に移動が可能な複数のガイドピン99を有する。
【0097】
このような構成によれば、所定軸101の周方向における複数のガイドピン99の運動がプレート部62に伝達されることによって、工具交換部21を所定軸101を中心に旋回させることができる。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
21 工具交換部、31 把持部、31A 第1把持部、31B 第2把持部、31p 爪部、32 アーム部、41 ロック機構、41A 第1ロック機構、41B 第2ロック機構、42 ロックピン、42A 第1ロックピン、42B 第2ロックピン、43 くさび部、44 ロックロッド、45 テーパ部、46,75 バネ部材、51 ベース部材、51a 第1表面、52 切り欠き部、61 ピン結合ユニット、62 プレート部、63 ローラ、64 ガイドピン孔、66 ピン部材、66A 第1ピン部材、66B 第2ピン部材、71 検知部、72 センサ、73 検知ピン、74 ドグ、81 ロック用アクチュエータ、82 駆動プレート、82a 第2表面、82s 凸部、83 ピストンシリンダ、84 ピストンロッド、85 シリンダケース、86 第2油圧室、87 第1油圧室、91 スライド用アクチュエータ、92,96 モータ、93 スクリュー、94 ナット、95 旋回用アクチュエータ、97 第1歯車、98 第2歯車、99 ガイドピン、100 自動工具交換装置、101 所定軸、106 揺動軸、120 制御部、Ta 第1工具、Tb 第2工具。
【要約】
【課題】第1把持部および第2把持部に把持された工具のロック状態を正確に検知することが可能な自動工具交換装置、を提供する。
【解決手段】自動工具交換装置は、工具交換部21を備える。工具交換部21は、第1把持部31Aおよび第2把持部31Bと、第1ロックピン42Aのスライド運動に伴ってロック状態およびリリース状態の間で動作する第1ロック機構41Aと、第2ロックピン42Bのスライド運動に伴ってロック状態およびリリース状態の間で動作する第2ロック機構41Bと、第1ロックピン42Aおよび第2ロックピン42Bを互いに結合し、第1ロック機構41Aおよび第2ロック機構41Bの動作時に、所定軸101の軸方向に沿ってスライドするピン結合ユニット61とを有する。自動工具交換装置は、所定軸101の軸方向におけるピン結合ユニット61の位置を検知可能な検知部71をさらに備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12