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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/00 20060101AFI20250411BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
B60H3/00 B
B60H3/06 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024170934
(22)【出願日】2024-09-30
【審査請求日】2024-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 崇史
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-164134(JP,A)
【文献】特開2011-068157(JP,A)
【文献】特開2023-150283(JP,A)
【文献】特開2023-047123(JP,A)
【文献】特開2011-177712(JP,A)
【文献】特開2002-327965(JP,A)
【文献】株式会社キャットテックラボ,熱通過と表面温度の計算,科学技術計算ツール,[online],2021年07月10日,[令和6年12月24日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20210710022031/https://cattech-lab.com/science-tools/heat_transfer_plate/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00ー3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分の吸着及び脱離が可能な調湿デバイスと、
前記調湿デバイスが内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能な空調ダクトであって、前記調湿デバイスの下流側において前記空気を前記車室に流入させる第1流路及び前記空気を前記車外に排出させる第2流路を有する空調ダクトと、
前記第1流路と前記第2流路との間で前記空気の流れを切替え可能なバルブと、
前記空調ダクトを流通する前記空気の流量を調整可能な通風機と、
前記調湿デバイス、前記バルブ及び前記通風機を制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、前記空気が前記第1流路に流れるように前記バルブを切替えて前記調湿デバイスに前記水分を吸着させる吸着モードの実行時に、前記車室内の窓ガラスの温度Taを前記車室内の露点温度Tbよりも高くなるように前記通風機を制御して前記空気の流量を調整
前記車室内の露点温度Tbは、以下の式(7)によって算出される、車両用空調システム。
【数1】
式中、Waは前記調湿デバイスの吸湿量[g/秒]であり、Qは前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量[m 3 /秒]であり、AHiは前記調湿デバイスに流入する前記空気の絶対湿度[g/m 3 ]であり、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]である。
【請求項2】
水分の吸着及び脱離が可能な調湿デバイスと、
前記調湿デバイスが内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能な空調ダクトであって、前記調湿デバイスの下流側において前記空気を前記車室に流入させる第1流路及び前記空気を前記車外に排出させる第2流路を有する空調ダクトと、
前記第1流路と前記第2流路との間で前記空気の流れを切替え可能なバルブと、
前記空調ダクトを流通する前記空気の流量を調整可能な通風機と、
前記調湿デバイス、前記バルブ及び前記通風機を制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、前記空気が前記第1流路に流れるように前記バルブを切替えて前記調湿デバイスに前記水分を吸着させる吸着モードの実行時に、前記車室内の窓ガラスの温度Taを前記車室内の露点温度Tbよりも高くなるように前記通風機を制御して前記空気の流量を調整し、
前記車室内の露点温度Tbは、以下の式(8)によって算出される、車両用空調システム。
【数2】
式中、Waは前記調湿デバイスの吸湿量[g/秒]であり、Qは前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量[m 3 /秒]であり、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]である。
【請求項3】
前記制御部は、前記吸着モードの実行時に前記吸着モードの時間を更に制御する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記車室内の窓ガラスの温度Taを測定するための温度計、及び前記車室内の露点温度Tbを測定するための露点計を更に備える、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(1)によって算出される、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【数3】
式中、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]であり、Toは前記車外の前記空気の温度[℃]であり、Hciは前記窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Hcoは前記窓ガラスの車外側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは前記窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【請求項6】
前記車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(2)によって算出される、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【数4】
式中、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]であり、Toは前記車外の前記空気の温度[℃]であり、Hciは前記窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは前記窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【請求項7】
前記Tcは、前記車室内に配置された温度計によって測定される、請求項に記載の車両用空調システム。
【請求項8】
前記Toは、前記車外に配置された温度計によって測定される、請求項に記載の車両用空調システム。
【請求項9】
前記Hcoは、車速が5m/秒以上の場合に以下の式(3)、車速が5m/秒未満の場合に以下の式(4)によって算出される、請求項に記載の車両用空調システム。
Hco=7.1×UA 0.78 ・・・(3)
Hco=5.57+3.94UA ・・・(4)
式中、UAは車速[m/秒]である。
【請求項10】
前記Hciは、前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速が5m/秒以上の場合に以下の式(5)、前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速が5m/秒未満の場合に以下の式(6)によって算出される、請求項に記載の車両用空調システム。
Hci=7.1×UB 0.78 ・・・(5)
Hci=5.57+3.94UB ・・・(6)
式中、UBは前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速[m/秒]である。
【請求項11】
前記Waは、予め求められた、前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量及び流入時間との関係に基づいて算出される、請求項又はに記載の車両用空調システム。
【請求項12】
前記AHiは、前記調湿デバイスの上流側の前記空調ダクト内に配置された湿度計によって測定される、請求項に記載の車両用空調システム。
【請求項13】
前記調湿デバイスは、所定温度以下で前記水分を吸着し、前記所定温度を超えると吸着された前記水分の脱離が可能な吸着剤を含有する吸着部、及び前記吸着部を加熱可能な加熱手段又は加熱構造を有する、請求項1又は2に記載の車両用空調システム。
【請求項14】
前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる前記空気の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体、
前記隔壁の表面上に設けられた、前記吸着剤を含有する吸着層、及び
前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面、又は前記ハニカム構造体の前記セルが延びる方向に平行な前記外周壁上に設けられた一対の電極
を備える、請求項13に記載の車両用空調システム。
【請求項15】
前記ハニカム構造体は、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されている、請求項14に記載の車両用空調システム。
【請求項16】
前記調湿デバイスは、前記空気の流路と、前記空気の流路に隣接する加熱媒体の流路とを備え、前記空気の流路に前記吸着部が設けられている、請求項13に記載の車両用空調システム。
【請求項17】
前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる前記空気の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体、
前記隔壁の表面上に設けられた、前記吸着剤を含有する吸着層、及び
前記ハニカム構造体の上流側に設けられたヒーター
を備える、請求項13に記載の車両用空調システム。
【請求項18】
前記吸着剤は、前記水分以外に、二酸化炭素及び/又は揮発成分の吸着及び脱離が可能である、請求項13に記載の車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの各種車両において、車室環境の向上に対する要求が高まっている。具体的な要求としては、車室内のCO2を低減して運転者の眠気を抑制すること、車室内を調湿すること、及び車室内のにおい成分やアレルギー誘因成分などの有害な揮発成分を除去することなどが例示される。このような要求に有効な対策として換気が挙げられるが、換気は、冬場のヒーターエネルギーを大きくロスする要因となり、冬場のエネルギー効率の低下を招く。特に電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)では、そのエネルギーロスにより、航続距離が大幅に減少するという問題がある。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有し、少なくとも隔壁がPTC特性を有する材料で構成されたハニカム構造体;一方の端面に設けられた第一電極及び他方の端面に設けられた第二電極で構成された一対の電極;並びに隔壁の表面上に設けられた機能材含有層を有するヒーターエレメント(調湿デバイス)と、車室とヒーターエレメントの入口端面とを連通する流入配管と、ヒーターエレメントの出口端面と車室とを連通する第一経路(第一流路)を有する流出配管とを備え、流出配管が、ヒーターエレメントの出口端面と車室とを連通する第一経路及びヒーターエレメントの出口端面と車外とを連通する第二経路(第二流路)を有し、流出配管を流通する空気の流れを第一経路と第二経路の間で切替え可能な切替えバルブが設けられた車室浄化システム(車両用空調システム)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2023/074202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用空調システムは、調湿デバイスの吸着モード(機能材含有層で水分などを吸着させる処理)の実行時に、乗車人数の増加、車外からの雨や雪の持ち込みなどの影響によって車室内の湿度が急激に上昇することがある。このような状況下で外気温が低いと、車室内の窓ガラスに曇りが発生し易くなる。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制することが可能な車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、調湿デバイスを備える車両用空調システムについて鋭意研究を行った結果、吸着モードの実行時に、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように通風機を制御して空気の流量を調整することにより、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0008】
<1> 水分の吸着及び脱離が可能な調湿デバイスと、
前記調湿デバイスが内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能な空調ダクトであって、前記調湿デバイスの下流側において前記空気を前記車室に流入させる第1流路及び前記空気を前記車外に排出させる第2流路を有する空調ダクトと、
前記第1流路と前記第2流路との間で前記空気の流れを切替え可能なバルブと、
前記空調ダクトを流通する前記空気の流量を調整可能な通風機と、
前記調湿デバイス、前記バルブ及び前記通風機を制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、前記空気が前記第1流路に流れるように前記バルブを切替えて前記調湿デバイスに前記水分を吸着させる吸着モードの実行時に、前記車室内の窓ガラスの温度Taを前記車室内の露点温度Tbよりも高くなるように前記通風機を制御して前記空気の流量を調整する、車両用空調システム。
【0009】
<2> 前記制御部は、前記吸着モードの実行時に前記吸着モードの時間を更に制御する、<1>に記載の車両用空調システム。
【0010】
<3> 前記車室内の窓ガラスの温度Taを測定するための温度計、及び前記車室内の露点温度Tbを測定するための露点計を更に備える、<1>又は<2>に記載の車両用空調システム。
【0011】
<4> 前記車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(1)によって算出される、<1>又は<2>に記載の車両用空調システム。
【数1】
式中、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]であり、Toは前記車外の前記空気の温度[℃]であり、Hciは前記窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Hcoは前記窓ガラスの車外側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは前記窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【0012】
<5> 前記車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(2)によって算出される、<1>又は<2>に記載の車両用空調システム。
【数2】
式中、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]であり、Toは前記車外の前記空気の温度[℃]であり、Hciは前記窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは前記窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【0013】
<6> 前記Tcは、前記車室内に配置された温度計によって測定される、<4>又は<5>に記載の車両用空調システム。
【0014】
<7> 前記Toは、前記車外に配置された温度計によって測定される、<4>~<6>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0015】
<8> 前記Hcoは、車速が5m/秒以上の場合に以下の式(3)、車速が5m/秒未満の場合に以下の式(4)によって算出される、<4>に記載の車両用空調システム。
Hco=7.1×UA 0.78 ・・・(3)
Hco=5.57+3.94UA ・・・(4)
式中、UAは車速[m/秒]である。
【0016】
<9> 前記Hciは、前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速が5m/秒以上の場合に以下の式(5)、前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速が5m/秒未満の場合に以下の式(6)によって算出される、<4>~<8>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
Hci=7.1×UB 0.78 ・・・(5)
Hci=5.57+3.94UB ・・・(6)
式中、UBは前記窓ガラスの車室側の前記空気の流速[m/秒]である。
【0017】
<10> 前記車室内の露点温度Tbは、以下の式(7)によって算出される、<1>、<2>及び<4>~<9>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【数3】
式中、Waは前記調湿デバイスの吸湿量[g/秒]であり、Qは前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量[m3/秒]であり、AHiは前記調湿デバイスに流入する前記空気の絶対湿度[g/m3]であり、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]である。
【0018】
<11> 前記車室内の露点温度Tbは、以下の式(8)によって算出される、<1>、<2>及び<4>~<9>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【数4】
式中、Waは前記調湿デバイスの吸湿量[g/秒]であり、Qは前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量[m3/秒]であり、Tcは前記車室内の前記空気の温度[℃]である。
【0019】
<12> 前記Waは、予め求められた、前記調湿デバイスに流入する前記空気の流量及び流入時間との関係に基づいて算出される、<10>又は<11>に記載の車両用空調システム。
【0020】
<13> 前記AHiは、前記調湿デバイスの上流側の前記空調ダクト内に配置された湿度計によって測定される、<10>に記載の車両用空調システム。
【0021】
<14> 前記調湿デバイスは、所定温度以下で前記水分を吸着し、前記所定温度を超えると吸着された前記水分の脱離が可能な吸着剤を含有する吸着部、及び前記吸着部を加熱可能な加熱手段又は加熱構造を有する、<1>~<13>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【0022】
<15> 前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる前記空気の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体、
前記隔壁の表面上に設けられた、前記吸着剤を含有する吸着層、及び
前記ハニカム構造体の前記第1端面及び前記第2端面、又は前記ハニカム構造体の前記セルが延びる方向に平行な前記外周壁上に設けられた一対の電極
を備える、<14>に記載の車両用空調システム。
【0023】
<16> 前記ハニカム構造体は、少なくとも前記隔壁がPTC特性を有する材料で構成されている、<15>に記載の車両用空調システム。
【0024】
<17> 前記調湿デバイスは、前記空気の流路と、前記空気の流路に隣接する加熱媒体の流路とを備え、前記空気の流路に前記吸着部が設けられている、<14>に記載の車両用空調システム。
【0025】
<18> 前記調湿デバイスは、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる前記空気の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体、
前記隔壁の表面上に設けられた、前記吸着剤を含有する吸着層、及び
前記ハニカム構造体の上流側に設けられたヒーター
を備える、<14>に記載の車両用空調システム。
【0026】
<19> 前記吸着剤は、前記水分以外に、二酸化炭素及び/又は揮発成分の吸着及び脱離が可能である、<14>~<18>のいずれか一つに記載の車両用空調システム。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制することが可能な車両用空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調システムの全体概略構成図である。
図2】吸着モードの実行時に、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように制御する方法の一例を示すグラフである。
図3A】本発明の実施形態に係る車両用空調システムに用いられる典型的な調湿デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。
図3B図3Aの調湿デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の車両用空調システムは、水分の吸着及び脱離が可能な調湿デバイスと;調湿デバイスが内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能な空調ダクトであって、調湿デバイスの下流側において空気を車室に流入させる第1流路及び空気を車外に排出させる第2流路を有する空調ダクトと;第1流路と第2流路との間で空気の流れを切替え可能なバルブと;空調ダクトを流通する空気の流量を調整可能な通風機と;調湿デバイス、バルブ及び通風機を制御可能な制御部とを備える。制御部は、空気が第1流路に流れるようにバルブを切替えて調湿デバイスに水分を吸着させる吸着モードの実行時に、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように通風機を制御して空気の流量を調整する。本発明の車両用空調システムは、上記のような構成とすることにより、車室内の湿度が急激に上昇しても空気の流量の調整によって調湿デバイスによる水分の吸着量を増加させることができる。このため、車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制することができる。
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
なお、本明細書において「上流側」及び「下流側」とは、車両用空調システムを流通する空気の流れを基準とする。
【0031】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、各種車両に好適に利用可能である。車両としては、特に限定されないが、自動車及び電車が挙げられる。自動車としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、CNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などを用いるガス燃料車、燃料電池自動車、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車が挙げられる。本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、特に電気自動車及び電車のような内燃機関を持たない車両に好適に利用可能である。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調システムの全体概略構成図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、調湿デバイス10、空調ダクト20、バルブ30、通風機40及び制御部50を備えている。また、車両用空調システムは、電源60を更に備えることができる。
【0033】
調湿デバイス10は、水分の吸着及び脱離が可能である。
空調ダクト20は、調湿デバイス10が内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能であり、調湿デバイス10の下流側において空気を車室に流入させる第1流路20a及び空気を車外に排出させる第2流路20bを有する。
バルブ30は、第1流路20aと第2流路20bとの間で空気の流れを切替え可能である。
通風機40は、空調ダクト20を流通する空気の流量を調整可能である。
制御部50は、調湿デバイス10、バルブ30及び通風機40を制御可能である。
【0034】
上記のような構造を有する車両用空調システムでは、車室又は車外からの空気が、空調ダクト20内を流通する際に、調湿デバイス10において水分(水蒸気)の吸着又は脱離を行うことができる。調湿デバイス10において水分を吸着する場合、調湿デバイス10を加熱しない吸着モードとする。吸着モードでは、調湿デバイス10において水分が低減又は除去された空気は、第1流路20aに流れるようにバルブ30を切替えることにより、車室に流入させることができる。他方、調湿デバイス10において水分を脱離させる場合、調湿デバイス10を加熱する再生モードとする。再生モードでは、調湿デバイス10から脱離した水分を含む空気は、第2流路20bに流れるようにバルブ30を切替えることにより、車外に排出させることができる。
吸着モード及び再生モードは繰り返し実行される。このとき、再生モード時に調湿デバイス10に吸着された水分を十分に脱離させることによって、吸着モード時に調湿デバイス10による水分の吸着量を増加させることができる。再生モード時に調湿デバイス10に吸着された水分を十分に脱離させる方法としては、調湿デバイス10に流入する空気の流量を多くすること、及び再生モードの時間を長くすることが例示される。
【0035】
制御部50は、空気が第1流路20aに流れるようにバルブ30を切替えて調湿デバイス10に水分を吸着させる吸着モードの実行時に、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように通風機40を制御して空気の流量を調整する。このように空気の流量を調整することにより、車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制できる。具体的には、車室内の露点温度Tbが車室内の窓ガラスの温度Taに近くなった場合、通風機40の回転数を増大させて空気の流量を多くする。車室内の露点温度Tbは、車室内の窓ガラスの温度Taに比べて空気の流量の変化に対する影響が大きいため、空気の流量を多くすることにより、車室内の窓ガラスの温度Taよりも車室内の露点温度Tbが大きく低下する。具体的には、空気の流量を多くすることにより、調湿デバイス10による水分の吸着量が増加し、車室に流入する空気中の水分の割合が低下するため、車室内の露点温度Tbを車室内の窓ガラスの温度Taよりも低く維持できる。
【0036】
制御部50は、吸着モードの実行時に吸着モードの時間を更に制御することができる。乗車人数や車外から持ち込まれた雨や雪の量などによっては車室内の湿度を低下させることに時間がかかることがあるため、吸着モードの時間を制御することによって、車室内の窓ガラスの温度Taが車室内の露点温度Tbよりも常に高くなるように制御できる。したがって、乗車人数や車外から持ち込まれた雨や雪の量などに応じて車室内の窓ガラスの曇りを安定して抑制することができる。
【0037】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、車室内の窓ガラスの温度Taを測定するための温度計、及び車室内の露点温度Tbを測定するための露点計を更に備えることができる。このような構成とすることにより、車室内の窓ガラスの温度Ta及び露点温度Tbを測定できる。温度計及び露点計は、制御部50に接続される。
温度計及び露点計としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。
【0038】
本発明の実施形態に係る車両用空調システムは、温度計及び露点計を配置して車室内の窓ガラスの温度Ta及び露点温度Tbを測定する代わりに、所定の式を用いて車室内の窓ガラスの温度Ta及び露点温度Tbを算出してもよい。以下、車室内の窓ガラスの温度Ta及び露点温度Tbの算出方法を説明する。
【0039】
車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(1)によって算出することができる。
【0040】
【数5】
【0041】
式(1)中、Tcは車室内の空気の温度[℃]であり、Toは車外の空気の温度[℃]であり、Hciは窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Hcoは窓ガラスの車外側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【0042】
式(1)のHcoは、WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)モード試験の高速フェーズの車速の平均を想定した固定値としてもよい。具体的には、Hcoが60.9[W/m2K]であるときを基準として車室内の窓ガラスの温度Taを算出してもよい。この場合、車室内の窓ガラスの温度Taは、以下の式(2)によって算出される。
【0043】
【数6】
【0044】
式(2)中、Tcは車室内の空気の温度[℃]であり、Toは車外の空気の温度[℃]であり、Hciは窓ガラスの車室側の熱伝達率[W/m2K]であり、Kgは窓ガラスの熱通過率[W/m2K]である。
【0045】
式(1)及び(2)において、Tcは、車室内に配置された温度計によって測定することができる。この温度計は車両の車室内に一般的に設けられているため、温度計を別途設けなくてもよい。すなわち、この一般的に設けられた温度計によって測定された車室内の空気の温度の値をTcとして用いることができる。
【0046】
式(1)及び(2)において、Toは、車外に配置された温度計によって測定することができる。この温度計は車両の車外に一般的に設けられているため、温度計を別途設けなくてもよい。すなわち、この一般的に設けられた温度計によって測定された車外の空気の温度の値をToとして用いることができる。
【0047】
式(1)において、Hcoは、車速が5m/秒以上の場合に以下の式(3)、車速が5m/秒未満の場合に以下の式(4)によって算出することができる。
Hco=7.1×UA 0.78 ・・・(3)
Hco=5.57+3.94UA ・・・(4)
式(3)及び(4)中、UAは車速[m/秒]である。車速は、車両に一般的に設けられている速度計の値を用いることができる。
【0048】
式(1)及び(2)において、Hciは、窓ガラスの車室側の空気の流速が5m/秒以上の場合に以下の式(5)、窓ガラスの車室側の空気の流速が5m/秒未満の場合に以下の式(6)によって算出することができる。
Hci=7.1×UB 0.78 ・・・(5)
Hci=5.57+3.94UB ・・・(6)
式中、UBは窓ガラスの車室側の空気の流速[m/秒]である。窓ガラスの車室側の空気の流速は、窓ガラスの車室側に吹出される空気の流量[m3/秒]を窓ガラスの車室側吹出口の断面積[m2]で除することによって算出できる。
【0049】
車室内の露点温度Tbは、以下の式(7)によって算出することができる。
【0050】
【数7】
【0051】
式(7)中、Waは調湿デバイス10の吸湿量[g/秒]であり、Qは調湿デバイス10に流入する空気の流量[m3/秒]であり、AHiは調湿デバイス10に流入する空気の絶対湿度[g/m3]であり、Tcは車室内の空気の温度[℃]である。
【0052】
式(7)のAHiは、窓ガラスの曇りが起こり易い最も厳しい条件を予め想定した固定値としてもよい。具体的には、窓ガラスの曇りは車室内が高湿度の条件下で生じ易いことから、調湿デバイス10に流入する空気の絶対湿度が10[g/m3]のときを基準として車室内の露点温度Tbを算出してもよい。この場合、車室内の露点温度Tbは、以下の式(8)によって算出される。
【0053】
【数8】
【0054】
式(8)中、Waは調湿デバイス10の吸湿量[g/秒]であり、Qは調湿デバイス10に流入する空気の流量[m3/秒]であり、Tcは車室内の空気の温度[℃]である。
【0055】
式(7)及び(8)において、Waは、調湿デバイス10の上流側及び下流側に湿度計を配置して湿度を測定し、その湿度差から算出してもよいが、予め求められた、調湿デバイス10に流入する空気の流量及び流入時間との関係に基づいて算出することが好ましい。すなわち、吸着モードの実行時における、調湿デバイス10に流入する空気の流量及び流入時間とWaとの関係を予め求めておき、当該関係に基づいて調湿デバイス10に流入する空気の流量及び流入時間からWaを算出することが好ましい。このようにしてWaを算出することにより、調湿デバイス10の上流側及び下流側に湿度計を配置しなくてもよいため、車両用空調システムの簡略化に繋がる。
【0056】
式(7)において、AHiは、調湿デバイス10の上流側の空調ダクト20内に配置された湿度計によって測定することができる。湿度計は、制御部50に接続される。
湿度計としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。
【0057】
式(7)及び(8)において、Tcは、車室内に配置された温度計によって測定することができる。この温度計は車両の車室内に一般に設けられているため、温度計を別途設けなくてもよい。すなわち、この一般的に設けられた温度計によって測定された車室内の空気の温度の値をTcとして用いることができる。
【0058】
ここで、吸着モードの実行時に、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように制御する方法の一例を示すグラフを図2に示す。
図2に示すように、調湿デバイス10に流入する空気の流量Qを一定として吸着モードを実行すると、乗車人数の増加、車外からの雨や雪の持ち込みなどの影響によって調湿デバイス10による除湿が不十分となって車室内の湿度が高くなり、車室内の露点温度Tbが車室内の窓ガラスの温度Taに近接する(時間0~P1)。そして、車室内の露点温度Tbが車室内の窓ガラスの温度Taを超えると、窓ガラスの曇りが生じ易くなってしまう。そこで、調湿デバイス10に流入する空気の流量Qを多くすることにより、調湿デバイス10の吸湿量Waを増大させる。その結果、車室内の空気の水分量が少なくなるため、車室内の露点温度Tbを低下させることができる(時間P1以降)。このとき、車室内の窓ガラスの温度Taも僅かに低下するが、その低下割合は車室内の露点温度Tbの低下割合よりも小さい。したがって、上記のように調湿デバイス10に流入する空気の流量Qを制御することにより、車室内の露点温度Tbを車室内の窓ガラスの温度Taよりも低く維持できる。
【0059】
上記のように調湿デバイス10に流入する空気の流量Qは、吸着モードの実行時に車室内の窓ガラスの温度Ta及び車室内の露点温度Tbに影響を与える。具体的には、調湿デバイス10に流入する空気の流量Qが多くなると、吸着モードの実行時に車室内の窓ガラスの温度Ta及び車室内の露点温度Tbが低下する。特に、調湿デバイス10に流入する空気の流量Qが多くなると、車室内の窓ガラスの温度Taよりも車室内の露点温度Tbが大きく低下する。したがって、調湿デバイス10に流入する空気の流量Qを制御することによって、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように制御することができる。
調湿デバイス10に流入する空気の流量Qは、使用する調湿デバイス10の種類に応じて調整すればよく特に限定されないが、0.0033[m3/秒]以上であることが好ましく、0.0050[m3/秒]以上であることがより好ましい。
【0060】
以下、車両用空調システムの各構成要素について詳細に説明する。
【0061】
(1.調湿デバイス10)
調湿デバイス10は、水分の吸着及び脱離が可能なものであれば特に限定されないが、所定温度以下で水分を吸着し、所定温度を超えると吸着された水分の脱離が可能な吸着剤を含有する吸着部、及び吸着部を加熱可能な加熱手段又は加熱構造を有することが好ましい。このような特徴を有する調湿デバイス10であれば、水分の吸着及び脱離を容易に実現できる。
また、空調ダクト20内に配置される調湿デバイス10の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の調湿デバイス10を設ける場合、空調ダクト20内を流通する空気の流れに対して並列に配置してもよいし、直列に配置してもよい。
【0062】
図3Aは、本発明の実施形態に係る車両用空調システムに用いられる典型的な調湿デバイスの流路方向に平行な断面の模式図である。図3Bは、図3Aの調湿デバイスにおけるa-a’線の断面の模式図である。
図3A及び3Bに示す調湿デバイス10は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、第1端面13aから第2端面13bまで延びる空気の流路となる複数のセル14を区画形成する隔壁15とを有するハニカム構造体11、隔壁15の表面上に設けられた、吸着剤を含有する吸着層16、並びにハニカム構造体11の第1端面13a及び第2端面13bに設けられた一対の電極17a,17bを備える。図示していないが、一対の電極17a,17bは、ハニカム構造体11のセル14が延びる方向に平行な外周壁12上に設けれられてもよい。また、一対の電極17a,17bには、端子18を接続することができる。
【0063】
(1-1.ハニカム構造体11)
ハニカム構造体11の形状は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体11の流路方向(セル14が延びる方向)に直交する断面の外形を、四角形(長方形、正方形)、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状(卵形、楕円形、長円形、角丸長方形など)などにすることができる。なお、端面(第1端面13a及び第2端面13b)は、当該断面と同一の形状である。また、断面及び端面が多角形の場合、角部を面取りしてもよい。
【0064】
セル14の形状は、特に限定されないが、ハニカム構造体11の流路方向に直交する断面において、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの多角形、円形、オーバル形状にすることができる。これらの形状は、単一であってもよいし、又は二種以上を組み合わせてもよい。また、これらの形状の中でも四角形又は六角形が好ましい。このような形状のセル14を設けることにより、空気が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。
【0065】
ハニカム構造体11は、複数のハニカムセグメントと、複数のハニカムセグメントの外周側面同士間を接合する接合層とを有するハニカム接合体であってもよい。ハニカム接合体を用いることにより、クラックの発生を抑えながら空気の流量(流速)確保に重要なセル14の総断面積を増やすことが可能となる。
なお、接合層は、接合材を用いて形成することができる。接合材としては、特に限定されないが、セラミックス原料に、水などの溶媒を加えてペースト状にしたものを用いることができる。接合材は、PTC特性を有する材料を含有してもよく、外周壁12及び隔壁15と同一の材料を含有してもよい。接合材は、ハニカムセグメント同士を接合する役割に加えて、ハニカムセグメントを接合した後の外周コート材として用いることも可能である。
【0066】
ハニカム構造体11の強度確保、空気がセル14を通過する際の圧力損失の低減、吸着剤の担持量確保、及び、セル14内を流れる空気との接触面積の確保などの観点から、隔壁15の厚さ、セル密度、及びセルピッチ(又はセル14の開口率)を好適に組み合わせることが望ましい。
本明細書においてセル密度とは、ハニカム構造体11の一方の端面(第1端面13a又は第2端面13b)の面積(外周壁12を除く隔壁15及びセル14の合計面積)でセル数を除して得られる値である。
本明細書においてセルピッチとは、以下の計算によって求められる値を指す。まず、セル数で、ハニカム構造体11の一方の端面(第1端面13a又は第2端面13b)の面積(外周壁12を除く隔壁15及びセル14の合計面積)を除して1セル当たりの面積を算出する。次いで、1セル当たりの面積の平方根を算出し、これをセルピッチとする。
本明細書においてセル14の開口率とは、ハニカム構造体11の流路方向に直交する断面において、隔壁15によって区画されるセル14の合計面積を、一方の端面(第1端面13a又は第2端面13b)の面積(外周壁12を除く隔壁15及びセル14の合計面積)で除して得られた値である。なお、セル14の開口率を算出するに当たり、一対の電極17a,17b及び吸着層16は考慮しない。
【0067】
十分な量の機能材を担持する観点で有利な実施形態においては、隔壁15の厚さが0.300mm以下、セル密度が100セル/cm2以下、且つセルピッチが1.0mm以上である。好ましい実施形態においては、隔壁15の厚さが0.200mm以下、セル密度が70セル/cm2以下、且つセルピッチが1.2mm以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁15の厚さが0.130mm以下、セル密度が65セル/cm2以下、且つセルピッチが1.3mm以上である。
【0068】
ハニカム構造体11の強度を確保すること、及び電気抵抗を低く保つ観点から、隔壁15の厚さの下限は、0.010mm以上であることが好ましく、0.020mm以上であることがより好ましく、0.030mm以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体11の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、脱離を促進する観点から、セル密度の下限は、30セル/cm2以上であることが好ましく、35セル/cm2以上であることがより好ましく、40セル/cm2以上であることが更に好ましい。
ハニカム構造体11の強度を確保すること、電気抵抗を低く保つこと、及び表面積を増やして反応、吸着、脱離を促進する観点から、セルピッチの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.8mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることが更に好ましい。
【0069】
圧力損失の低減と強度の維持とを両立する観点で有利な実施形態においては、隔壁15の厚さが0.08~0.36mm、セル密度が2.54~140セル/cm2、セル14の開口率が0.70以上である。好ましい実施形態においては、隔壁15の厚さが0.09~0.35mm、セル密度が15~100セル/cm2、セル14の開口率が0.80以上である。より好ましい実施形態においては、隔壁15の厚さが0.14~0.30mm、セル密度が20~90セル/cm2、セル14の開口率が0.85以上である。
【0070】
ハニカム構造体11の強度を確保する観点から、セル14の開口率の上限は、0.94以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0071】
外周壁12の厚さは、特に限定されないが、次の観点に基づいて決定することが好ましい。まず、ハニカム構造体11を補強するという観点から、外周壁12の厚さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上、更に好ましくは0.08mm以上である。一方、電気抵抗を大きくして初期電流を抑える観点、及び空気が流通する際の圧力損失を低減する観点から、外周壁12の厚さは、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下、更により好ましくは0.3mm以下である。
本明細書において外周壁12の厚さとは、ハニカム構造体11の流路方向に直交する断面において、外周壁12と最も外周側のセル14又は隔壁15との境界からハニカム構造体11の側面までの、当該側面の法線方向の長さを指す。
【0072】
ハニカム構造体11の流路方向の長さ及び流路方向に直交する断面積は、要求される調湿デバイス10のサイズに合わせて調整すればよく、特に限定されない。例えば、所定の機能を確保しつつコンパクトな調湿デバイス10に用いられる場合、ハニカム構造体11は、流路方向の長さを2~20mm、流路方向に直交する断面積を10cm2以上とすることができる。なお、流路方向に直交する断面積の上限は、特に限定されないが、例えば、300cm2以下である。
【0073】
ハニカム構造体11を構成する隔壁15は、通電によって発熱可能な材料で構成されており、具体的にはPTC特性を有する材料で構成されることが好ましい。必要に応じて外周壁12も隔壁15と同様にPTC特性を有する材料で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、発熱する隔壁15(及び必要に応じて外周壁12)からの伝熱によって吸着層16を直接加熱することが可能である。また、PTC特性を有する材料は、温度が上昇してキュリー点を超えると、急激に抵抗値が上昇して電気が流れ難くなるという特性を有する。そのため、隔壁15(及び必要に応じて外周壁12)が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、ハニカム構造体11の過剰な発熱が抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する吸着層16の熱劣化を抑制することも可能である。
【0074】
PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の下限は、適度な発熱を得る観点からは、0.5Ω・cm以上であることが好ましく、1Ω・cm以上であることがより好ましく、5Ω・cm以上であることが更に好ましい。PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率の上限は、低い駆動電圧で発熱させるという観点からは、30Ω・cm以下であることが好ましく、18Ω・cm以下であることがより好ましく、16Ω・cm以下であることが更に好ましい。本明細書において、PTC特性を有する材料の25℃における体積抵抗率はJIS K6271:2008に従って測定される。
【0075】
通電発熱可能であり、且つPTC特性を有するという観点から、外周壁12及び隔壁15は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とする材料から構成されていることが好ましい。また、この材料は、Baの一部が希土類元素で置換されたチタン酸バリウム(BaTiO3)系結晶粒子を主成分とする材料で構成されるセラミックスであることがより好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。BaTiO3系結晶粒子の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。その他の結晶粒子についても、この方法と同様にして測定することができる。
【0076】
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子の組成式は、(Ba1-xx)TiO3で表すことができる。組成式中、Aは一種以上の希土類元素を表し、0.0001≦x≦0.010である。
Aは、希土類元素であれば特に限定されないが、好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Y及びYbからなる群から選択される一種以上であり、より好ましくはLaである。xは、室温における電気抵抗が高くなり過ぎることを抑制する観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.0015以上である。一方、xは、焼結不足となって室温における電気抵抗が高くなりすぎることを抑制する観点から、好ましくは0.009以下である。
Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子のセラミックスにおける含有量は、主成分となる量であれば特に限定されないが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、更に好ましくは94質量%以上である。なお、BaTiO3系結晶粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、一般的に99質量%、好ましくは98質量%である。
【0077】
外周壁12及び隔壁15に用いられる材料は、環境負荷を軽減するという観点から、鉛(Pb)を実質的に含まないことが望ましい。具体的には、外周壁12及び隔壁15は、Pb含有量が、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。Pb含有量が少ないことにより、例えば、発熱中の隔壁15などに接触させることで加温された空気をヒトなどの生物に安全に当てることができる。なお、外周壁12及び隔壁15において、Pb含有量は、PbOに換算すると、好ましくは0.03質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0質量%である。鉛の含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)により求めることができる。
【0078】
外周壁12及び隔壁15を構成する材料のキュリー点は、室温(25℃)の抵抗値から2倍以上の抵抗値になったときの温度範囲にあることが好ましい。キュリー点がこのような温度範囲にあれば、調湿デバイス10が高温になったときに、これらに流れる電流が制限されるので、調湿デバイス10の過剰な発熱が効率的に抑制される。したがって、過剰な発熱に起因する吸着層16の熱劣化を抑制することができる。
外周壁12及び隔壁15を構成する材料のキュリー点の下限は、吸着層16を効率良く加熱する観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、特に好ましくは125℃以上である。また、キュリー点の上限については、車室又は車室近傍に置かれる部品としての安全性の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、特に好ましくは150℃以下である。
【0079】
外周壁12及び隔壁15を構成する材料のキュリー点は、シフターの種類及び添加量によって調整可能である。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)のキュリー点は約120℃であるが、Ba及びTiの一部をSr、Sn及びZrの一種以上で置換することにより、キュリー点を低温側にシフトさせることができる。
【0080】
本明細書において、キュリー点は以下の方法により測定される。試料を測定用の試料ホルダーに取りつけ、測定槽(例:MINI-SUBZERO MC-810P エスペック株式会社製)内に装着して、10℃から昇温したときの温度変化に対する試料の電気抵抗の変化を、直流抵抗計(例:マルチメーター3478A 日本ヒューレット・パッカード合同会社製)を用いて測定する。測定により得られた電気抵抗-温度プロットにより、抵抗値が室温(25℃)における抵抗値の2倍になるときの温度をキュリー点とする。
【0081】
(1-2.吸着層16)
吸着層16は、吸着剤を含有する層である。
吸着層16は、隔壁15(最外周のセル14の場合は、最外周のセル14を区画形成する隔壁15及び外周壁12)の表面上に設けることができる。このように吸着層16を設けることにより、吸着モード時に水分を吸着し易くなるとともに、再生モード時に吸着層16を加熱し易くなるため吸着層16から水分を脱離させ易くなる。
【0082】
吸着層16に含有される吸着剤は、水分の吸着及び脱離が可能である。また、吸着剤は、水分以外に、二酸化炭素及び/又は揮発成分の吸着及び脱離が可能であることが好ましい。このような吸着剤を用いることにより、調湿デバイス10による吸湿効果だけでなく浄化効果も得ることができる。
【0083】
吸着層16に含有される吸着剤は、水分などを-20~60℃で吸着し、60℃を超える温度で水分などを脱離させることが可能な機能を有することが好ましい。
吸着剤としては、特に限定されないが、アルミノケイ酸塩、シリカゲル、シリカ、酸化グラフェン、高分子吸着剤、ポリスチレンスルホン酸、ゼオライト、活性炭、アルミナ、低結晶性粘土、非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体、及び金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
アルミノケイ酸塩としては、AFI型、CHA型又はBEA型のゼオライト;アロフェン、イモゴライトなどの多孔質粘土鉱物を用いることが好ましい。また、アルミノケイ酸塩は、非晶質であることが好ましい。
【0085】
シリカゲルとしては、A型シリカゲルを用いることが好ましい。
高分子吸着剤としては、ポリアクリル酸系高分子鎖を有するものが好ましい。例えば、高分子吸着剤として、ポリアクリル酸ナトリウムなどを用いることができる。
金属有機構造体は、金属イオンと有機分子(有機配位子)とを含む結晶性のハイブリッド材料である。金属イオンは、親水性を有する金属イオン(例えば、アルミニウムイオン)であることが好ましい。
【0086】
なお、車室の空気中に含まれる揮発成分は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)や、VOC以外のにおい成分などである。揮発成分の具体例としては、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、N-メチルカルバミン酸-2-(1-メチルプロピル)フェニルなどが挙げられる。
【0087】
吸着層16は、触媒を更に含有することができる。触媒を含有することにより、酸化還元反応などを促進させて二酸化炭素及び/又は揮発成分を浄化することができる。このような機能を有する触媒としては、Pt、Pd、Agなどの金属触媒、CeO2、ZrO2などの酸化物触媒などが挙げられる。触媒は一種を単独使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、触媒は、上記の機能材と組み合わせて用いることができる。
【0088】
吸着層16の厚さは、セル14の大きさに応じて決定すればよく、特に限定されない。例えば、吸着層16の厚さは、空気との接触を十分確保する観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは30μm以上である。一方、隔壁15や外周壁12から吸着層16が剥離することを抑制する観点から、吸着層16の厚さは、好ましくは400μm以下、より好ましくは380μm以下、更に好ましくは350μm以下である。
【0089】
吸着層16の厚さは、以下の手順で測定する。ハニカム構造体11の流路方向に平行な任意の断面を切り出し、走査型電子顕微鏡などで50倍程度の断面画像を取得する。また、この断面は、ハニカム構造体11の流路方向に直交する断面における重心位置を通るようにする。断面画像から視認される各吸着層16について、断面積をセル14の流路方向の長さで除することで厚さを算出する。この計算を当該断面画像から視認される全ての吸着層16について行い、全体の平均値を吸着層16の厚さとする。
【0090】
調湿デバイス10内で所望の機能を発揮するという観点から、吸着層16の量は、ハニカム構造体11の容積に対して、50~500g/Lであることが好ましく、100~400g/Lであることがより好ましく、150~350g/Lであることが更により好ましい。なお、ハニカム構造体11の容積は、ハニカム構造体11の外形寸法により定まる値である。
【0091】
(1-3.一対の電極17a,17b)
一対の電極17a,17bの位置は、特に限定されないが、図3Aに示すように、ハニカム構造体11の第1端面13a及び第2端面13bに設けることができる。また、一対の電極17a,17bは、ハニカム構造体11のセル14が延びる方向に平行な外周壁12上に設けてもよい。
一対の電極17a,17bの間に電圧を印加することで、ジュール熱によりハニカム構造体11を発熱させることが可能となる。
【0092】
一対の電極17a,17bとしては、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Ni及びSiから選択される少なくとも一種を含有する金属又は合金を使用することができる。また、PTC特性を有する外周壁12及び/又は隔壁15とオーミック接触が可能なオーミック電極を使用することもできる。オーミック電極は、例えば、ベース金属としてAl、Au、Ag及びInから選択される少なくとも一種を含有し、ドーパントとしてn型半導体用のNi、Si、Zn、Ge、Sn、Se及びTeから選択される少なくとも一種を含有するオーミック電極を使用することができる。また、一対の電極17a,17bは、1層構造としてもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。一対の電極17a,17bが2層以上の積層構造を有する場合、各層の材質は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0093】
一対の電極17a,17bの厚さは、一対の電極17a,17bの形成方法に応じて適宜設定することができる。一対の電極17a,17bの形成方法としては、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法が挙げられる。また、電極ペーストを塗布した後、焼き付ける方法や、溶射によって一対の電極17a,17bを形成することもできる。さらに、金属板又は合金板を接合することによって一対の電極17a,17bとしてもよい。
【0094】
一対の電極17a,17bの厚さは、例えば、電極ペーストの焼付けでは5~30μm程度、スパッタリング及び蒸着のような乾式めっきでは100~1000nm程度、溶射では10~100μm程度、電解析出及び化学析出のような湿式めっきでは5~30μm程度とすることが好ましい。また、金属板又は合金板の接合では、それらの厚さを5~100μm程度とすることが好ましい。
【0095】
(1-4.端子18)
端子18は、一対の電極17a,17bに接続され、一対の電極17a,17bの少なくとも一部に設けられる。端子18を設けることにより、外部電源との接続が容易になる。端子18は、外部電源に接続された導線に接続される。
【0096】
端子18の材質としては、特に限定されないが、例えば、金属とすることができる。金属としては、単体金属及び合金などを採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Al及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金、リン青銅がより好ましい。
【0097】
端子18の大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、図3Aに示すように、外周壁12上の一対の電極17a,17bの全体に端子18を設けることができる。また、端子18は、外周壁12上の一対の電極17a,17bの一部に設けてもよいし、外周壁12上の一対の電極17a,17bの外縁よりも外側に延出するように設けてもよい。さらに、端子18は、隔壁15上の一対の電極17a,17bの一部に設けてもよく、一部のセル14を塞ぐように設けてもよい。
また、端子18の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~10mm、典型的には0.05~5mmである。
【0098】
端子18と一対の電極17a,17bとの接続方法は、電気的に接続されていれば特に限定されず、例えば、拡散接合、機械的な加圧機構、溶接などによって接続することができる。
【0099】
(1-5.調湿デバイス10の製造方法)
調湿デバイス10の製造方法は、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。以下、調湿デバイス10を製造する方法について例示的に説明する。
調湿デバイス10を構成するハニカム構造体11の製造方法は、成形工程及び焼成工程を含む。
成形工程では、BaCO3粉末、TiO2粉末、及び希土類の硝酸塩又は水酸化物の粉末を含むセラミックス原料を含有する坏土を成形し、相対密度が60%以上のハニカム成形体を作製する。
セラミックス原料は、所望する組成となるように各粉末を乾式混合することによって得ることができる。
坏土は、セラミックス原料に、分散媒、バインダ、可塑剤及び分散剤を添加して混練することによって得ることができる。坏土には、シフター、金属酸化物、特性改善剤、導電体粉末などの添加剤を必要に応じて含有させてもよい。
セラミックス原料以外の成分の配合量は、ハニカム成形体の相対密度が60%以上となるような量であれば特に限定されない。
【0100】
ここで、本明細書において「ハニカム成形体の相対密度」とは、セラミックス原料全体の真密度に対するハニカム成形体の密度の割合のことを意味する。具体的には、以下の式によって求めることができる。
ハニカム成形体の相対密度(%)=ハニカム成形体の密度(g/cm3)/セラミックス原料全体の真密度(g/cm3)×100
ハニカム成形体の密度は、純水を媒体とするアルキメデス法により測定することができる。また、セラミックス原料全体の真密度は、各原料の質量を合計した値(g)を、各原料の実の体積を合計した値(cm3)で除することによって求めることができる。
【0101】
分散媒としては、水、又は水とアルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0102】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの有機バインダを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよいが、アルカリ金属元素を含有していないことが好ましい。
【0103】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステルなどを例示することができる。
【0104】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどの界面活性剤を用いることができる。分散剤は、一種を単独で使用するものであっても、二種以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0105】
ハニカム成形体は、坏土を押出成形することによって作製することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度などを有する口金を用いることができる。
【0106】
押出成形によって得られるハニカム成形体の相対密度は、60%以上、好ましくは65%以上である。このような範囲にハニカム成形体の相対密度を制御することにより、ハニカム成形体を緻密化し、室温における電気抵抗を低下させることが可能となる。なお、ハニカム成形体の相対密度の上限値は、特に限定されないが、一般に80%、好ましくは75%である。
【0107】
ハニカム成形体は、焼成工程の前に乾燥させることができる。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの従来公知の乾燥方法を用いることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0108】
焼成工程は、1150~1250℃で保持した後、20~600℃/時の昇温速度で1360~1430℃の最高温度に昇温させて0.5~10時間保持することを含む。
ハニカム成形体を1360~1430℃の最高温度で0.5~10時間保持することにより、Baの一部が希土類元素で置換されたBaTiO3系結晶粒子を主成分とするハニカム構造体11を得ることができる。
また、1150~1250℃で保持することにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が除去され易くなるため、ハニカム構造体11を緻密化させることができる。
さらに、1150~1250℃から1360~1430℃の最高温度までの昇温速度を20~600℃/時とすることにより、1.0~10.0質量%のBa6Ti1740結晶粒子をハニカム構造体11に生成させることができる。
【0109】
1150~1250℃での保持時間は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10時間である。このような保持時間とすることにより、焼成過程で生成するBa2TiO4結晶粒子が安定して除去され易くなる。
【0110】
焼成工程は、昇温時に900~950℃で0.5~5時間保持することを含むことが好ましい。900~950℃で0.5~5時間保持することにより、BaCO3が効率良く分解し、所定の組成を有するハニカム構造体11が得られ易くなる。
【0111】
なお、焼成工程の前には、バインダを除去するための脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程の雰囲気は、有機成分を完全に分解するために大気雰囲気とすることが好ましい。
また、焼成工程の雰囲気も、電気特性の制御と製造コストの観点から大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成工程や脱脂工程に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉などを用いることができる。
【0112】
このようにして得られたハニカム構造体11に、一対の電極17a,17bを形成する。一対の電極17a,17bは、スパッタリング、蒸着、電解析出、化学析出のような金属析出法によって形成することができる。また、一対の電極17a,17bは、電極ペーストを塗布した後、焼き付けることによって形成することもできる。さらに、一対の電極17a,17bは、溶射によって形成することもできる。一対の電極17a,17bは単層で構成してもよいが、組成の異なる複数の電極層で構成することもできる。以下、一対の電極17a,17bの代表的な形成方法を説明する。
【0113】
まず、電極材、有機バインダ及び分散媒を含む電極スラリーを調製し、ハニカム構造体11の第1端面13a又は第2端面13bに塗布する。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。ハニカム構造体11の外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。その後、スラリーを乾燥させることによってハニカム構造体11の第1端面13a又は第2端面13bに一対の電極17a,17bを形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体11を加熱しながら行うことができる。塗布、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの一対の電極17a,17bを設けることができる。
【0114】
次に、一対の電極17a,17bの所定の位置に端子18を配置し、一対の電極17a,17bと端子18とを接続する。一対の電極17a,17bと端子18との接続方法としては、上述の方法を用いることができる。
なお、端子18の配置は、下記の吸着層16を形成した後に行ってもよい。
【0115】
次いで、ハニカム構造体11の隔壁15などの表面に吸着層16を形成する。
吸着層16の形成方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程により形成可能である。吸着剤、バインダ及び分散媒を含むスラリーにハニカム構造体11を所定時間浸漬し、ハニカム構造体11の端面及び外周の余分なスラリーをブロー及び拭き取りによって除去する。バインダは、有機バインダであっても無機バインダであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。分散媒は、水、有機溶媒(例:トルエン、キシレン、エタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テキサノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)又はこれらの混合液とすることができる。その後、スラリーを乾燥させることによって隔壁15などの表面に吸着層16を形成することができる。乾燥は、例えば120~600℃程度の温度にハニカム構造体11を加熱しながら行うことができる。浸漬、スラリー除去、及び乾燥の一連の工程は1回のみ実施してもよいが、複数回繰り返すことによって所望の厚さの吸着層16を隔壁15などの表面に設けることができる。
【0116】
(1-6.その他の調湿デバイス10)
調湿デバイス10は、空気の流路と、空気の流路に隣接する加熱媒体の流路とを備え、空気の流路に吸着部が設けられていてもよい。このような構造を有する調湿デバイス10としては、パイプに複数のフィンが設けられたプレートフィン式熱交換器やエロフィン式熱交換のフィンの表面上に吸着層16を形成したものが挙げられる。
上記のような構造を有する調湿デバイス10では、フィンの間を空気が流通し、パイプ中を加熱媒体が流通する。加熱媒体の流通によってフィンが加熱されるため、フィンの表面上に設けられた吸着層16を加熱することができる。
上記のような構造を有する調湿デバイス10は、市販のプレートフィン式熱交換器やエロフィン式熱交換器を用い、フィンの表面に吸着層16を形成することによって製造できる。吸着層16の形成方法は、上記で説明した方法を用いればよい。
【0117】
調湿デバイス10は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、第1端面13aから第2端面13bまで延びる空気の流路となる複数のセル14を区画形成する隔壁15とを有するハニカム構造体11、隔壁15の表面上に設けられた、吸着剤を含有する吸着層16、及びハニカム構造体11の上流側に設けられたヒーターを備えるものであってもよい。なお、この調湿デバイス10の構造は、図3Aにおいて一対の電極17a,17b及び端子18を除去した構造に相当する。
上記のような加熱構造を有する調湿デバイス10では、ヒーターによって加熱された空気をハニカム構造体11のセル14に流通させることによって隔壁15の表面上に設けられた吸着層16を加熱することができる。
【0118】
上記のような加熱構造を有する調湿デバイス10は、ハニカム構造体11自体が通電によって発熱することは必要とされないため、金属やセラミックスなどの各種材料から形成することができる。ただし、ハニカム構造体11が通電によって発熱可能な材料で構成されていてもよい。
また、上記のような加熱構造を有する調湿デバイス10は、上記で説明した方法や公知の方法に準じて作製できる。
【0119】
(2.空調ダクト20)
空調ダクト20は、車室又は車外からの空気が流通可能な流路である。空調ダクト20の上流側は、車室又は外気導入口に接続されている。空調ダクト20は、車室又は車外からの空気を流入させるとともに、調湿デバイス10を通過した空気を車室に流入又は車外に排出させる。したがって、空調ダクト20は、調湿デバイス10の下流側において空気を車室に流入させる第1流路20aと、空気を車外に排出させる第2流路20bとに分岐した構造を有する。
【0120】
(3.バルブ30)
バルブ30は、第1流路20aと第2流路20bとの間で空気の流れを切替え可能である。バルブ30は、空調ダクト20内の第1流路20aと第2流路20bとの分岐部に設けることができる。
バルブ30としては、電気で駆動し、空気の流路を切替える機能を有するものであれば特に限定されず、電磁弁及び電動弁などを用いることができる。例えば、バルブ30は、回転軸に支持された開閉ドアと、回転軸を回動操作するモータなどのアクチュエータを備えるバタフライバルブとすることができる。アクチュエータは制御部50によって制御可能に構成することができる。また、フラップ弁によって開閉を制御するフラップバルブや、摺動体(弁)が移動することによって開閉を制御するスライドバルブなどを用いてもよい。
【0121】
(4.通風機40)
通風機40は、車室又は車外からの空気を調湿デバイス10に流入させるためのものであり、空調ダクト20内に配置される。通風機40の位置は、特に限定されないが、例えば、図1などに示すように調湿デバイス10の上流側であってもよいし、調湿デバイス10の下流側であってもよい。
また、通風機40は、制御部50と電気的に接続されており、制御部50からの指示にしたがって、回転数を調整することによって空気の流量を制御できる。
【0122】
(5.電源60)
電源60は、調湿デバイス10(特に、一対の電極17a,17b)に電圧を印加するためのものである。電源60は、制御部50と電気的に接続されており、制御部50からの指示にしたがって、一対の電極17a,17bに対する電圧の印加状態を調整する。
電源60としては、特に限定されず、バッテリーなどを用いることができる。
【0123】
(6.制御部50)
制御部50は、調湿デバイス10及びバルブ30を制御する。また、制御部50は、通風機40も制御することができる。
制御部50は、電源60を介して調湿デバイス10及び通風機40に電気的に接続されている。制御部50は、電源60を制御することにより、調湿デバイス10の一対の電極17a,17bに対する電圧の印加状態を制御し、ハニカム構造体11の加熱状態を調整することができる。また、制御部50は、空気が第1流路20a又は第2流路20bに流通するようにバルブ30を制御することができる。さらに、制御部50は、通風機40の回転数を調整することにより、空調ダクト20内を流通する空気の流量を制御できる。
【0124】
制御部50としては、特に限定されないが、一般にECU(Engine (electronic) Control Unit)である。ECUは、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータが記憶されたROM、CPUでの演算結果などが一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポートを備える。
【0125】
制御部50は、空気が第1流路20aに流れるようにバルブ30を切替える吸着モードと、調湿デバイス10を加熱し、空気が第2流路20bに流れるようにバルブ30を切替える再生モードとを実行可能である。
吸着モードでは、車室又は車外から流通する空気中の水分の吸着が行われ、水分が低減又は除去された空気は、第1流路20aを通って車室へと返送される。また、再生モードでは、吸着層16に吸着された水分の脱離が行われ、第2流路20bを通って車外へと排出される。
【0126】
上記の制御を安定して行う観点から、調湿デバイス10は車室に近い位置に配置されることが望ましい。したがって、感電防止などの観点から、調湿デバイス10の駆動電圧が60V以下であることが好ましい。調湿デバイス10に用いられているハニカム構造体11は、室温における電気抵抗が低いため、この低い駆動電圧でのハニカム構造体11の加熱が可能である。なお、駆動電圧の下限は、特に限定されないが、10V以上であることが好ましい。駆動電圧が10V未満であると、ハニカム構造体11の加熱時の電流が大きくなるため、導線を太くする必要がある。
【実施例
【0127】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0128】
<調湿デバイスの作製>
セラミックス原料としてBaCO3粉末、TiO2粉末及びLa(NH33・6H2O粉末を準備した。これらの粉末を、焼成後に所定の組成となるように秤量して、乾式混合して混合粉末を得た。乾式混合は、30分間実施した。次いで、得られた混合粉末100質量部に対して、押出成形後に相対密度が64.8%のセラミックス成形体が得られるように、水、バインダ、可塑剤及び分散剤を合計で3~30質量部の範囲で適量ずつ添加して混練し、坏土を得た。バインダとしてはメチルセルロースを使用した。可塑剤及び分散剤としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用した。
【0129】
次に、得られた坏土を押出成形機に投入し、焼成後に以下に示されるような形状のハニカム構造体となるように所定の口金を用いて押出成形した。
流路方向に直交するハニカム構造体の断面及び端面の形状:四角形
流路方向に直交するセルの断面の形状:四角形
隔壁の厚さ:0.100mm
外周壁の厚さ:0.2mm
セル密度:80セル/cm2
セルピッチ:1.1mm
ハニカム構造体の流路の延びる方向に直交する断面積:12000mm2
ハニカム構造体の流路の延びる方向の長さ:10mm
外周壁及び隔壁を構成する材料の25℃における体積抵抗率:15Ω・cm
外周壁及び隔壁を構成する材料のキュリー点:110℃
【0130】
次に、得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、焼成炉内にて大気雰囲気下で脱脂(450℃×4時間)し、次いで大気雰囲気下で焼成することにより、ハニカム構造体を得た。焼成は、950℃で1時間保持した後、1200℃まで昇温して1200℃で1時間保持し、次いで200℃/時の昇温速度で1400℃(最高温度)に昇温し、1400℃で2時間保持することによって行った。
【0131】
次に、得られたハニカム構造体の両端面(第1端面及び第2端面)に一対の電極を形成した。まず、アルミニウム(電極材)、エチルセルロース及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(有機バインダ)を含む電極スラリーを調製し、第1端面に塗布した後、電極スラリーを乾燥させることによって第1端面の表面に電極を形成した。また、同様の電極スラリーを用い、第2端面に電極スラリーを塗布して乾燥させることにより、第2端面に電極を形成した。
【0132】
次に、一対の電極を形成したハニカム構造体を、ゼオライト(吸着剤)、有機バインダ及び水を含むスラリーに浸漬し、余分な位置(外周など)に付着したスラリーをブロー及びふき取りによって除去した後、550℃程度の温度で乾燥させることによって隔壁の表面及びセルに面する外周壁の表面に厚さ150μmの吸着層を形成した。
【0133】
上記のようにして得られた調湿デバイスを空調ダクト内に配置し、図1に示すような空調システムを構築した。
この空調システムにおいて、車室内の窓ガラスの曇りが生じやすい環境として、車室内の空気の温度が20[℃]、車外の空気の温度が0[℃]である場合を想定して、車室内の窓ガラスの曇りの発生状況を目視にて評価した。
まず、車室内の空気の温度Tcを20[℃]、車外の空気の温度Toを0[℃]、窓ガラスの車室側の熱伝達率Hciを6[W/m2K]、窓ガラスの車外側の熱伝達率Hcoを43.3[W/m2K]、窓ガラスの熱通過率Kgを200[W/m2K]として、車室内の窓ガラスの温度Taを式(1)によって算出した結果、車室内の窓ガラスの温度Taは2.9[℃]であった。
次に、調湿デバイスに流入する空気の流量Q[m3/秒]を表1に示すように変化させながら、車室内の露点温度Tbを式(7)によって算出した。このとき、調湿デバイスの吸湿量Waは、吸着モードの実行時における、調湿デバイスに流入する空気の流量及び流入時間とWaとの関係を予め求めておき、当該関係に基づいて調湿デバイスに流入する空気の流量及び流入時間からWaを算出した。なお、調湿デバイスに流入する空気の流入時間は30[秒]とした。また、調湿デバイスに流入する空気の絶対湿度AHiを7.1[g/m3]、車室内の空気の温度Tcを20[℃]とした。
上記の評価結果を表1に示す。
なお、窓ガラスの曇りの評価結果は、窓ガラスの曇りが全く発生しなかったものを◎、窓ガラスの曇りが僅かに発生したが、支障がないレベルであったものを〇、窓ガラスの曇りが多く発生したものを×と表す。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示されるように、車室内の窓ガラスの温度Taを車室内の露点温度Tbよりも高くなるように空気の流量を制御すると、窓ガラスの曇りの発生を抑制することができた。具体的には、空気の流量を0.0033[m3/秒]以上とすることにより、窓ガラスの曇りの発生を抑制でき、特に、空気の流量を0.0050[m3/秒]以上とすることにより、窓ガラスの曇りの発生を安定して抑制できた。
【0136】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制することが可能な車両用空調システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0137】
10 調湿デバイス
11 ハニカム構造体
12 外周壁
13a 第1端面
13b 第2端面
14 セル
15 隔壁
16 吸着層
17a,17b 一対の電極
18 端子
20 空調ダクト
20a 第1流路
20b 第2流路
30 バルブ
40 通風機
50 制御部
60 電源
【要約】      (修正有)
【課題】車室内の湿度が急激に上昇しても車室内の窓ガラスの曇りを抑制することが可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】水分の吸着及び脱離が可能な調湿デバイス10と、調湿デバイス10が内部に配置され、車室又は車外からの空気が流通可能な空調ダクト20であって、調湿デバイス10の下流側において空気を車室に流入させる第1流路20a及び空気を車外に排出させる第2流路20bを有する空調ダクト20と;第1流路20aと第2流路20bとの間で空気の流れを切替え可能なバルブ30と;空調ダクト20を流通する空気の流量を調整可能な通風機40と;調湿デバイス10、バルブ30及び通風機40を制御可能な制御部50とを備える車両用空調システムである。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B