(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20250411BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20250411BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20250411BHJP
【FI】
F04D29/44 U
F04D29/28 J
F04D29/44 Y
F04D29/66 N
F04D29/66 M
(21)【出願番号】P 2024515214
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2022017612
(87)【国際公開番号】W WO2023199406
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】秋場 勇児
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】門井 千景
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 一樹
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044133(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072558(WO,A1)
【文献】特開2006-090297(JP,A)
【文献】実開昭64-011399(JP,U)
【文献】国際公開第2021/144942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/28
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
吸込口と、吹出口と、前記吸込口に向かう気流を案内するベルマウスと、空気流の下流側へ向かうにしたがって径方向における幅が拡大するスクロール部と、前記吹出口の開口面積を拡大するように前記スクロール部と前記吹出口を繋ぐ舌部と、前記スクロール部と前記吹出口との間の流路を構成するディフューズ部とを有するスクロールケーシングと、
前記モータのシャフトに固定され回転する円盤状の主板と、前記主板の外周部に環状に設置される複数のブレードとを有し、前記スクロールケーシング内に設置されて、前記吸込口から前記吹出口へ向かう気流を前記スクロールケーシング内に形成する羽根車とを備え、
前記ベルマウスには、前記羽根車の回転方向において前記舌部よりも下流側に、前記羽根車から流出して前記羽根車に再流入する二次流れを遮蔽する遮蔽部が設けられており、
前記遮蔽部は、
前記羽根車の軸方向に凹の溝状であるとともに前記ベルマウスを前記羽根車の径方向に貫いており、前記ベルマウスのうちディフューズ部には設けてられていないことを特徴とする遠心送風機。
【請求項2】
前記羽根車は、前記主板の裏面から突出する
円筒形状の突出部を有し、
前記突出部の最大
径は、前記羽根車の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記主板には、複数の通風穴が形成されており、複数の前記通風穴は、前記羽根車の回転軸の周方向に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の遠心送風機。
【請求項4】
前記通風穴の外周側端部を繋ぐ円の外径は、前記突出部の最大
径よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の遠心送風機。
【請求項5】
前記突出部は、前記羽根車の回転軸に対して回転対称の形状であることを特徴とする請求項2に記載の遠心送風機。
【請求項6】
前記突出部の最大
径は、前記モータの外径よりも大きいことを特徴とする請求項
2に記載の遠心送風機。
【請求項7】
前記突出部は、少なくとも一部が前記羽根車の外径よりも内径側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の遠心送風機。
【請求項8】
モータと、
吸込口と、吹出口と、前記吸込口に向かう気流を案内するベルマウスと、空気流の下流側へ向かうにしたがって径方向における幅が拡大するスクロール部と、前記吹出口の開口面積を拡大するように前記スクロール部と前記吹出口を繋ぐ舌部と、前記スクロール部と前記吹出口との間の流路を構成するディフューズ部とを有するスクロールケーシングと、
前記モータのシャフトに固定され回転する円盤状の主板と、前記主板の外周部に環状に設置される複数のブレードとを有し、前記スクロールケーシング内に設置されて、前記吸込口から前記吹出口へ向かう気流を前記スクロールケーシング内に形成する羽根車とを備え、
前記ベルマウスには、前記羽根車の回転方向において前記舌部よりも下流側に、前記羽根車から流出して前記羽根車に再流入する二次流れを遮蔽する遮蔽部が設けられており、
前記羽根車は、前記主板の裏面から突出
し、前記羽根車の回転軸上に中心軸を持つ楕円筒形状の突出部を有し、
前記突出部の最大
径は、前記羽根車の外径よりも小さく、
前記突出部は、少なくとも一部が前記羽根車の外径よりも内径側に設けられて
いることを特徴とする遠心送風機。
【請求項9】
前記主板は、径方向において外周部から前記突出部までの領域が平らな面であることを特徴とする請求項2から
8のいずれか1項に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気流を発生させる羽根車を備えた遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心送風機は、羽根車を収容するスクロールケーシングを有する。スクロールケーシングは、空気の吸込口と空気の吹出口とを有し、羽根車の回転によって発生する空気流の流路を構成する。羽根車の回転によってスクロールケーシングの内部で発生した騒音は、吸込口又は吹出口からスクロールケーシングの外へ放出される。遠心送風機の内部での空気流の流速は、羽根車から流出した直後が最も速い。さらに、羽根車とスクロールケーシングの壁面との距離は回転方向が進むに従い大きくなるため、気流の変動が生じやすい。
【0003】
羽根車から流出する気流は、主流と二次流れとに大別される。二次流れとは、主流に対して直角な方向に流れる気流である。二次流れは、二次損失を引き起こし、送風性能を悪化させることが知られている。
【0004】
また、遠心送風機は、羽根車の回転によって、翼面流れが周期的な圧力変動を受けることで騒音を発生させる。加えて、上述した気流の変動等による影響を受け、羽根車の翼の周りの流れが周期的に変化することでも、同様の騒音が発生する。こうした騒音は離散周波数騒音と呼ばれ、遠心送風機の音響特性を悪化させる。
【0005】
特許文献1には、ベルマウスにスクロールケーシング内の流れを整流するための整流ブロックを設置する技術が示されている。これにより、送風機の送風性能の向上を図っている。また、特許文献2には、羽根車の主板の裏面に、円筒壁を形成し、円筒壁の外径を羽根車のブレードの外径と同一とすることが示されている。これにより、羽根車が回転することにより形成される二次流れが主板の裏面に流れ込むことを防ぎ、二次損失を緩和し、送風性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6246434号公報
【文献】特開2008-169826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遠心送風機において、羽根車から吹き出された流れの一部は二次流れとなり、スクロールケーシングへ再流入したり循環流れを生じたりする。特許文献1には、このような二次流れを低減するためにベルマウスに遮蔽部を設けるといった技術が提示されているものの、特許文献1に記載の技術を用いると、遮蔽部を設けることでベルマウス側から羽根車の主板側に向かう流れが強まり、羽根車の主板の裏面側の流れが乱れやすく、騒音の悪化を招く課題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示される遠心送風機は羽根車が回転することにより形成される二次流れが主板の裏面に流れ込むことを防ぎ、二次流れによる損失を緩和する効果を期待できるものの、上述したベルマウス側から羽根車の主板側に向かう流れに対応できておらず、羽根車の主板の裏面側の圧力変動が高まることで、騒音悪化を招く問題がある。
【0009】
また、遠心送風機の羽根車の翼周りから発生する離散周波数騒音は、羽根車とスクロールケーシングとの距離が近い部分において、羽根車とスクロールケーシングとが互いに干渉して生じやすくなる。このため、上述したベルマウス側から羽根車の主板側に向かう流れが強まり、羽根車の主板の裏面側の圧力変動が高まると、遠心送風機の離散周波数騒音の上昇を招く恐れがある。
【0010】
また、特に羽根車の主板の裏側は、漏れ流れを抑えるために羽根車とスクロールケーシングとの距離が近い。したがって、羽根車の主板の裏側は、離散周波数騒音が伝播しやすく、遠心送風機の音響特性悪化を招いている。
【0011】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、二次流れと羽根車との干渉によって生じる圧力変動を抑制し、かつ羽根車の翼周りから発生する離散周波数騒音を低減した遠心送風機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る遠心送風機は、モータと、吸込口と、吹出口と、吸込口に向かう気流を案内するベルマウスと、空気流の下流側へ向かうにしたがって径方向における幅が拡大するスクロール部と、吹出口の開口面積を拡大するようにスクロール部と吹出口を繋ぐ舌部と、スクロール部と吹出口との間の流路を構成するディフューズ部とを有するスクロールケーシングと、モータのシャフトに固定され回転する円盤状の主板と、主板の外周部に環状に設置される複数のブレードとを有し、スクロールケーシング内に設置されて、吸込口から吹出口へ向かう気流をスクロールケーシング内に形成する羽根車とを備える。ベルマウスには、羽根車の回転方向において舌部よりも下流側に、羽根車から流出して羽根車に再流入する二次流れを遮蔽する遮蔽部が設けられている。羽根車は、主板の裏面から突出する筒形状の突出部を有する。突出部の最大幅は、羽根車の外径よりも小さい。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る遠心送風機は、二次流れと羽根車との干渉によって生じる圧力変動を抑制し、かつ羽根車の翼周りから発生する離散周波数騒音を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】実施の形態1の第1の比較例に係る遠心送風機の断面図
【
図5】実施の形態1に係る遠心送風機及び第1の比較例に係る遠心送風機の風量-比騒音特性の実機試験の結果を示す図
【
図6】実施の形態1に係る遠心送風機のベルマウスに設けた遮蔽部の遮蔽部終端部の位置を示す図
【
図7】実施の形態1に係る遠心送風機のベルマウスに設けた遮蔽部の位置と静圧上昇量及び騒音との関係を示す図
【
図8】実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の断面図
【
図9】実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の流速分布を示す図
【
図10】実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の圧力変動の実効値の分布を示す図
【
図11】実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機のスクロール部の底面における圧力変動レベルの分布を示す図
【
図12】実施の形態1に係る遠心送風機の流速分布を示す図
【
図13】実施の形態1に係る遠心送風機の圧力変動の実効値の分布を示す図
【
図14】実施の形態1の遠心送風機のスクロール部の底面における圧力変動レベルの分布を示す図
【
図15】実施の形態1に係る遠心送風機と第2の比較例に係る遠心送風機と、第3の比較例に係る遠心送風機との風量-比騒音特性の実機試験の結果を示す図
【
図17】実施の形態3に係る遠心送風機の羽根車の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、実施の形態に係る遠心送風機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る遠心送風機の斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る遠心送風機の断面図である。
図3は、実施の形態1に係る遠心送風機の上面図である。
図2は、
図1及び
図3におけるII-II線に沿った断面を示している。また、
図3は、ベルマウス8aの図示を省略して羽根車4全体を示している。実施の形態1に係る遠心送風機1は、モータ3と、モータ3によって回転駆動される羽根車4と、羽根車4を収容するスクロールケーシング11とを有する。遠心送風機1は、羽根車4を回転させることによって空気流を発生させる。
【0017】
スクロールケーシング11は、空気の吸込口8と空気の吹出口10とを有する。スクロールケーシング11は、羽根車4の回転によって発生する空気流の流路を形成する。羽根車4を回転させることによって、スクロールケーシング11の外の空気は、吸込口8を通ってスクロールケーシング11の内部へ吸い込まれる。羽根車4を回転させることによって、スクロールケーシング11の内部の空気は、吹出口10を通ってスクロールケーシング11の外へ吹き出される。
図1に示すように、スクロールケーシング11の外には、スクロールケーシング11の外から吸込口8へ向かう空気流Y1と、吹出口10からスクロールケーシング11の外へ向かう空気流Y2とが発生する。
図2に示すように、スクロールケーシング11の内部には、吸込口8から羽根車4を通り、羽根車4とスクロールケーシング11との間へ流れる空気流である主流Y3が発生する。すなわち、羽根車4が回転することにより、スクロールケーシング11の内部には、吸込口8から吹出口10へ向かう空気流が発生する。
【0018】
スクロールケーシング11は、スクロール部6とディフューズ部7と舌部9とを有する。スクロール部6は、空気流の下流側へ向かうにしたがって径方向における幅が拡大している螺旋状の流路を構成する部分である。螺旋状の流路は、例えば、アルキメデス螺旋状である。すなわち、羽根車4の回転軸2からスクロール部6までの距離は、
図3に示すように、羽根車4の回転方向に進むにしたがって大きくなる。ディフューズ部7は、スクロール部6よりも下流側の部分であって、スクロール部6と吹出口10との間の流路を構成する部分である。ディフューズ部7は、羽根車4から流出した気流の動圧を効率よく静圧に変換しつつ、気流を吹出口10まで導く。舌部9は、吹出口10の開口面積を拡大するようにスクロール部6と吹出口10を繋ぐ部分である。舌部9は、スクロールケーシング11の内部を旋回する空気流を吹出口10へ導く。
【0019】
スクロールケーシング11は、第1壁11aと、第2壁11bと、第3壁11cとを有する。第1壁11aと第2壁11bとは、スクロールケーシング11の軸方向に互いに向き合う。第3壁11cは、第1壁11aと第2壁11bとを繋ぐ。吸込口8は、第1壁11aに形成されている。第1壁11aには、第2壁11bから離れるにしたがって径が拡大されるベルマウス8aが形成されている。スクロールケーシング11の材料は、例えば樹脂である。ベルマウス8aは、空気を吸い込む吸込口8を囲むように設けられている。
【0020】
羽根車4は、多翼羽根車である。羽根車4は、モータ3のシャフト3aに固定されている。羽根車4は、シャフト3aを中心に回転する。羽根車4は、円盤状の主板4aと、主板4aの表側面の外周部に環状に設置された複数のブレード4bと、モータ3のシャフト3aに固定されたボス部4cとを備える。実施の形態1に係る遠心送風機1では、羽根車4のブレード4bの枚数は43枚である。また、羽根車4は、ブレード4bの上流側の外径縁に翼補強部材であるリブ4dを備える。羽根車4の主板4aの裏面には、気流を整流するための突出部5が設けられている。
【0021】
羽根車4は、主板4aの途中から突出部5が分岐する形状になっている。突出部5は、主板4aの裏面で生じる漏れ流れの防止及び低騒音化の観点から、羽根車4の回転軸2に対して回転対称又は軸対称の形状であることが好ましい。
図2では、突出部5は、軸対称である円筒形状を呈している。突出部5の円筒壁で囲まれた空間には、モータ3の一部分が収容されている。モータ3の一部分を突出部5の円筒壁で囲まれた空間に収容することにより、モータ3と羽根車4の背面との距離を極力小さくし、遠心送風機1の全体の小型化を図れる。
【0022】
また、羽根車4の主板4aは、回転軸2の径方向において主板4aの外周部から突出部5が設けられた部分までの領域は平らな面とされている。主板4aの外周部から突出部5が設けられた部分までの領域を平らな面とする理由は、羽根車4から流出する気流の急激な転向を抑制し、極力少ない損失で吹出口10まで主流Y3を到達させるためである。この効果に関しては、後述する。
【0023】
また、
図3に示すように、羽根車4の主板4aには、複数の通風穴4eが設けられている。通風穴4eは、モータ3の温度上昇を抑制する目的で設けられている。言い換えると、通風穴4eは、モータ3の空冷効果を促進するために設けられている。なお、主板4aに通風穴4eが設けられていなくてもよい。また、通風穴4eの数は、
図3に示す六つである必要はなく、特定の数に限定されない。
【0024】
羽根車4とスクロールケーシング11との位置関係及び形状、通風穴4eの有無、並びに通風穴4eの形状は、
図1から
図3に示したものに限定されるものではない。各部品の位置関係及び各部品の形状は、設計時に適宜決定すれば良い。
【0025】
遠心送風機1は、羽根車4の回転軸2の軸方向に沿って吸込口8からスクロールケーシング11に吸い込んだ空気を、羽根車4の回転軸2の径方向に吹き出す構造となっていることから、空気流には慣性力が作用する。このため、羽根車4内を通ってスクロールケーシング11内に吹き出される気流は、スクロールケーシング11の第2壁11bに近づく程速度が速くなる速度分布を形成する。そして、スクロールケーシング11内に吹き出された空気流の一部は、第3壁11cに沿うように羽根車4の主板4aからブレード4bの先端方向又はブレード4bの先端から主板4a方向へと巻き上がる二次流れY4を形成する。
【0026】
ベルマウス8aは、羽根車4からの吹き出し流れが、吹出口10へ流れずスクロールケーシング11に再流入することを抑制するように、羽根車4の回転軸2の軸回りの一部分において曲面が部分的に抜けた構造となっている。羽根車4からの吹出流れの一部である二次流れY4を遮断するように、ベルマウス8aの曲面が部分的に抜けた構造となっているため、二次流れY4と羽根車4から吹き出される気流との衝突又は干渉を抑制することができ、遠心送風機1の送風性能の向上及び騒音抑制が実現される。以下、ベルマウス8aの曲面が部分的に抜けた箇所を、遮蔽部8bという。
【0027】
ベルマウス8aは、遮蔽部8bを除くと、羽根車4の回転軸2に対して回転対称の形状であり、羽根車4の回転軸2に垂直な断面の形状は、遮蔽部8bの部分で途切れた円弧形状である。ベルマウス8aは、
図2に示す羽根車4の回転軸2を通る断面では、回転軸2の軸方向に沿って空気を吸い込む方向に向かって連続的に小さくなる形状、すなわち空気流の風上から風下に向かって開口部の円形状の直径が連続的に小さくなる形状である。
【0028】
ベルマウス8aの曲面は、上流側ではスクロールケーシング11の外側に向かって開いている。また、ベルマウス8aの曲面は、下流側では軸方向に沿っている。このため、ベルマウス8aの曲面は、空気の吸込口8側が凸となる形状である。ベルマウス8aは、吸込口8に面している方の曲面が表面8fであり、吸込口8に面していない方の曲面が背面8rである。
【0029】
スクロールケーシング11とベルマウス8aとは一体であり、板金加工によって一枚の金属板を加工することで形成される。したがって、ベルマウス8aの曲面とスクロールケーシング11の第1壁11aとの間には、ベルマウス裏側空間82が形成されている。
【0030】
遮蔽部8bは、ベルマウス裏側空間82を周方向に分断する。遮蔽部8bは、羽根車4の回転軸2に平行かつ回転軸2を挟んで対向する二つの平面上に形成された二つの遮蔽部側面部81aと、回転軸2と交差する平面上にあって二つの遮蔽部側面部81aの下流側の端部を結ぶ遮蔽部底面部81bとを有する。
【0031】
遮蔽部側面部81aの上流側の上端部は、ベルマウス8aと接続される。遮蔽部側面部81aの外周端部は、スクロールケーシング11と接続される。遮蔽部側面部81aの下流側の下端部は、遮蔽部底面部81bと接続される。遮蔽部底面部81bの外周端部は、スクロールケーシング11と接続される。
【0032】
すなわち、遮蔽部8bは、回転軸2の周方向においては、ベルマウス8a、遮蔽部側面部81a、遮蔽部底面部81b、遮蔽部側面部81a、ベルマウス8aと分岐なく連続的に接続される。このような構成とすることで、1枚の金属板からベルマウス8aと遮蔽部8bとを一体成型することができる。
【0033】
また、遮蔽部8bを設けることにより、ベルマウス裏側空間82が周方向に分断されるため、二次流れY4がベルマウス裏側空間82を周方向に流れることを抑制することができる。
【0034】
図4は、実施の形態1の第1の比較例に係る遠心送風機の断面図である。
図4に示す第1の比較例に係る遠心送風機1のベルマウス8aは、抜けた部分が無く羽根車4の回転軸2の軸回りの全周にわたって曲面が連続する構造となっている。また、第1の比較例に係る遠心送風機1は、ベルマウス裏側空間82が部分的に埋まってはおらず、ベルマウス裏側空間82が羽根車4の回転軸2の周方向において分断されずに繋がっている。
図4において、ベルマウス8a以外の構成要件の構造及び形状に関しては、実施の形態1と同一とした。
【0035】
図4に示すように、第1の比較例に係る遠心送風機1は、ベルマウス8aが羽根車4の回転軸2の軸回りの全周に亘って存在する構造であるため、二次流れY4と、羽根車4から吹き出される気流とが衝突又は干渉することで、送風性能の低下及び騒音増大の原因となる。
【0036】
図5は、実施の形態1に係る遠心送風機及び第1の比較例に係る遠心送風機の風量-比騒音特性の実機試験の結果を示す図である。
図5において横軸は風量を表し、縦軸は比騒音を表している。
図5において、黒ひし形は第1の比較例に係る遠心送風機1を表すプロットであり、白丸は実施の形態1に係る遠心送風機1を表すプロットである。
【0037】
図5に示すように、遠心送風機1の動作風量帯域である騒音値が、第1の比較例に係る遠心送風機1では12.5dBであるのに対して、実施の形態1に係る遠心送風機1では11.7dBであり、0.8dBの低騒音化を確認することができる。実施の形態1に係る遠心送風機1と第1の比較例に係る遠心送風機1との相違点は、ベルマウス8aに遮蔽部8bが設けられているか否かであるため、二次流れY4と羽根車4から吹き出される気流との衝突又は干渉を遮蔽部8bが効果的に抑制できたことによって低騒音化が実現されたと判断することができる。
【0038】
このように、実施の形態1に係る遠心送風機1は、羽根車4からの吹出流れの一部である二次流れY4を遮断するように、ベルマウス8aの曲面が部分的に抜けた構造としている。このため、二次流れY4と羽根車4から吹き出される気流との、衝突又は干渉を効果的に抑制することができ、遠心送風機1の送風性能の向上及び騒音抑制を実現することができる。
【0039】
なお、ベルマウス8aの構造は、実施の形態1に係る遠心送風機1のように、曲面の一部が部分的に抜けた構造に限らず、羽根車4に再流入する羽根車4からの吹出流れの二次流れY4を遮断するように、ベルマウス裏側空間82が部分的に埋まっていたり、ベルマウス8aの背面8rに、ベルマウス裏側空間82に突出する突起を部分的に設けるなどの構造により代替しても良い。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る遠心送風機のベルマウスに設けた遮蔽部の遮蔽部終端部の位置を示す図である。
図7は、実施の形態1に係る遠心送風機のベルマウスに設けた遮蔽部の位置と静圧上昇量及び騒音との関係を示す図である。なお、遮蔽部終端部8cは、遮蔽部8bの下流側の端部である。
図7には、実施の形態1に係る遠心送風機1の二次流れY4に対して、遮蔽部8bによる遮断効果を実機試験により検証した結果を示している。
図7の横軸は、遮蔽部終端部8cの位置を表す。
図7の縦軸は、実施の形態1に係る遠心送風機1の静圧上昇量及び騒音の大きさを表す。
図7の横軸に示される角度αは、羽根車4の回転軸2と舌部9の先端とを結ぶ線分を含む基準線Pの位置を起点に、回転軸2を中心として矢印Rで示す羽根車4の回転方向を正方向として、遮蔽部終端部8cの位置までの回転角度を示している。
【0041】
図7に示すように、基準線Pから遮蔽部終端部8cまでの角度αが60°から150°の測定結果においては、角度αが大きいほど、騒音が増加し、かつ静圧上昇量が減少する傾向にある。角度αが140°程度までは、静圧上昇量が正値となっているため、実施の形態1に係る遠心送風機1は、角度αが140°以下の位置に遮蔽部終端部8cが配置された場合に静圧上昇の効果を得ることができる。また、騒音の悪化を考慮して角度αが60°から120°の範囲内に遮蔽部終端部8cが設定された場合であっても、おおよそ4%以上の静圧上昇量が得られる。また、角度αが100°以下である場合には、静圧が上昇し、かつ騒音の悪化が抑えられている。特に、角度αが70°前後の場合、例えば角度αが60°から90°の範囲の場合は、角度αがこの範囲外の場合と比べて、静圧上昇量が大きく、かつ騒音増加もわずかである。角度αを大きくすると、流路の断面積が減少することによる影響が大きくなり、遮蔽部8bを設けることで得られる上記の効果が相殺される。したがって、遮蔽部8bの取り付け範囲において、遮蔽部終端部8cは、基準線Pから遮蔽部終端部8cまでの回転角度である角度αが、120°以下に設定されることが好ましく、さらには角度αが100°以下に設定されることが好ましい。
【0042】
また、
図3には、複数の通風穴4eの外径側端部を結ぶ円4fと、羽根車4の複数のブレード4bの外径側端部を結ぶ円4gと、羽根車4の複数のブレード4bの内径側端部を結ぶ円4hとを各々一点鎖線で図示している。
図2及び
図3に示すように、羽根車4の内径をD1、羽根車4の外径をD2、モータ3の外径をDc、突出部5の外径をDaと定義する。実施の形態1に係る遠心送風機1においては、突出部5が円筒状であるため、突出部5の外径は、突出部5の最大幅である。羽根車4の複数のブレード4bの内径側端部を結ぶ円4hの直径を、羽根車4の内径D1と定義する。羽根車4の複数のブレード4bの外径側端部を結ぶ円4gの直径を羽根車4の外径D2と定義する。また、
図2及び
図3に示すように、羽根車4の回転軸2を中心軸とした複数の通風穴4eの外周側端部を結ぶ円4fの直径を、通風穴4eの外径Dbと定義する。
【0043】
実施の形態1に係る遠心送風機1では、突出部5の取り付け位置を規定する基準となる突出部5の外径Daは、D2>Da>Dcを満たしている。例えば、実施の形態1に係る遠心送風機1では、Da=0.9×D2としている。外径Daが上記条件を満たすようにする理由は、二つある。一つ目の理由は、後述するように、突出部5とスクロールケーシング11との距離を確保し、互いの干渉を抑制できる効果を高めるためである。二次流れY4は、気流に慣性力が作用するという構造的な原因により、ベルマウス8a側よりも、第2壁11b側への流量が多くなるため、ベルマウス8aの曲面が部分的に抜けた実施の形態1に係る遠心送風機1においても、突出部5とスクロールケーシング11との距離を確保することで、突出部5と二次流れY4との干渉抑制効果はさらに高くなる。
【0044】
二つ目の理由は、後述するように、離散周波数騒音の伝播を効果的に抑制するためである。離散周波数騒音は、羽根車4の吸込流れが周期的に変化したり、羽根車4が大きな乱れを吸い込んでブレード4bの周りの流れが周期的に変化することで発生する。例えば、遠心送風機1の羽根車4のブレード4b周りから発生する離散周波数騒音は、羽根車4とスクロールケーシング11との距離が小さい部分において、二次流れと羽根車4とが互いに干渉して生じやすくなる。このため、ベルマウス8a側から羽根車4の主板4a側に向かう流れが強まると、羽根車4の主板4aの背面側の圧力変動が高まることによって、遠心送風機1の離散周波数騒音の上昇を招く恐れがある。このような発生要因から、離散周波数騒音は、羽根車4の背面から、スクロールケーシング11の背面へ伝播することで、より大きな騒音となることが多い。このため、特にブレード4bの背面付近に突出部5を設けることにより、離散周波数騒音を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、突出部5の外径Daは、通風穴4eの外径Dbよりも大きいことが望ましい。したがって、D2>Da>Dbの条件を満たすように突出部5を設置することにより、突出部5へ二次流れY4が衝突することにより発生する騒音を抑制できることに加え、離散周波数騒音の発生も抑制できる。
【0046】
また、
図2に示すように、羽根車4の回転軸2に沿った方向における突出部5とスクロールケーシング11とのギャップHbについては、二次流れY4の漏れ防止の観点からは、極力小さいほうが望ましい。しかし、ギャップHbが小さすぎると羽根車4の回転中に突出部5とスクロールケーシング11とが衝突してしまう恐れがある。このため、二次流れY4の漏れ防止と衝突回避との兼ね合いが必要であり、実際には3mmから7mm程度のギャップHbを設けることが適切である。
【0047】
図8は、実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の断面図である。第2の比較例に係る遠心送風機1は、主板4aの背面における羽根車4の外径D2と同じ位置に突出部20が設けられている。突出部20は、実施の形態1に係る遠心送風機1の突出部5と同様に、円筒状である。したがって、第2の比較例に係る遠心送風機1では、突出部20の外径Daは、羽根車4の外径D2と同じになっている。突出部20以外の構成要件の構造、形状に関しては、実施の形態1に係る遠心送風機1と同一である。
【0048】
第3の比較例に係る遠心送風機1は、主板4aの背面における羽根車4の外径D2の80%となるように突出部20が設けられている。突出部20以外の構成要件の構造及び形状に関しては、実施の形態1に係る遠心送風機1と同一とした。したがって、第3の比較例に係る遠心送風機1では、突出部20の外径Da=0.8×(羽根車4の外径D2)となる。なお、突出部20の外径が異なる点を除き、第3の比較例に係る遠心送風機1は、第2の比較例に係る遠心送風機1と同一であることから、図示を省略する。
【0049】
図9は、実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の流速分布を示す図である。
図9は、第2の比較例に係る遠心送風機1について、
図3のII-II線に相当する位置の断面での流速分布を示している。
図9は、流速が速いほど濃くなるモノトーン画像で流速分布を示している。
【0050】
図9において流速が速い領域は、羽根車4から流出する主流Y3が通過する領域である。主流Y3に対して、垂直方向に流れる二次流れY4が形成されている。第2の比較例に係る遠心送風機1のように突出部20の外径Daを羽根車4の外径D2と同一にすると、突出部20と二次流れY4との距離が必然的に近くなってしまい、突出部20と二次流れY4は干渉しやすくなってしまう。
【0051】
図10は、実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機の圧力変動の実効値の分布を示す図である。
図10は、圧力の変動が大きいほど濃くなるモノトーン画像で圧力変動の実効値の分布を示している。
【0052】
図10に示すように、羽根車4に設けた突出部20の面上の圧力変動は概ね30Pa以上である。圧力変動が生じる原因は、
図9で示したように、二次流れY4が突出部20に干渉し、突出部20の周辺の気流が乱れることであると考えられる。
【0053】
図11は、実施の形態1の第2の比較例に係る遠心送風機のスクロール部の底面における圧力変動レベルの分布を示す図である。ここで、圧力変動レベルとは、圧力の二乗平均平方根(Root Mean Square, RMS)によって表される圧力の時間変動平均である。
図11に示すように、スクロール部6の底面における舌部9付近の圧力変動レベルは、104から112である。舌部9付近の圧力変動レベルが大きくなる要因は、二次流れY4による圧力変動に加え、舌部9付近から生じる循環流れによる変動も加わるためと考えられる。舌部9付近では、吹出口10に向かう主流Y3だけでなく、一部、流れの上流に戻ろうとする循環流も絶えず発生する。このため舌部9付近では、循環流と二次流れY4とが入り混じり、特に、離散周波数騒音が発生しやすい。
【0054】
図12は、実施の形態1に係る遠心送風機の流速分布を示す図である。
図12は、実施の形態1に係る遠心送風機1について、
図3のII-II線の位置の断面での流速分布を示している。
図12は、流速が速いほど濃くなるモノトーン画像で流速分布を示している。
図13は、実施の形態1に係る遠心送風機の圧力変動の実効値の分布を示す図である。
図13は、圧力の変動が大きいほど濃くなるモノトーン画像で圧力変動の実効値の分布を示している。実施の形態1に係る遠心送風機1では、突出部5の外径Daは羽根車4の外径D2と同一ではなく、突出部5の円筒壁全体が羽根車4の外径D2よりも内径側に設けられている。
【0055】
図12に示すように、実施の形態1に係る遠心送風機1においても、第2の比較例に係る遠心送風機1と同様に二次流れY4が発生する。しかし、実施の形態1に係る遠心送風機1では、突出部5が羽根車4の外周側端部よりも内径側に設けられているため、二次流れY4と突出部5との距離を確保できており、二次流れY4と突出部5との干渉が抑制される。なお、二次流れY4がどの程度の領域まで顕著になっているのか調査した結果、羽根車4の内径D1と外径D2との間で最も顕著になっていた。したがって、羽根車4の内径D1よりも内側に突出部5を設置することにより、突出部5への二次流れY4の衝突を抑制し、二次流れY4による騒音の発生を抑制することができる。
【0056】
さらに、羽根車4の主板4aにおいて複数のブレード4bを配設した主板4aの外周部から突出部5を設けた部分までを平らな面としているため、主流Y3が羽根車4の主板4aに対して、ほとんど平行に流出していることがわかる。主流Y3が主板4aに対してほとんど平行に流出することによって、急激な気流の転向が生じることなく、少ない損失で吹出口10に到達することができる。さらに、二次流れY4と主流Y3とを効果的に切り離す効果もあり、主流Y3と二次流れY4との干渉も効果的に抑制できる。
【0057】
図13に示すように、実施の形態1に係る遠心送風機1では、第2の比較例に係る遠心送風機1と比較すると、突出部5の圧力変動の大きさが15Paから30Pa程度減少していることがわかる。この理由は、
図12に示すように、二次流れY4と突出部5との干渉を効果的に抑制したためと考えられる。
【0058】
騒音と圧力変動とには密接な関係があり、圧力変動値が大きい箇所は騒音発生源になっている。このため、突出部5の円筒壁の壁面上での圧力変動が減少することは低騒音化に繋がることは言うまでもない。すなわち、
図12に示したように、突出部5を羽根車4の内径側に設置することは、低騒音化を達成するために効果的である。
【0059】
図14は、実施の形態1の遠心送風機のスクロール部の底面における圧力変動レベルの分布を示す図である。
図14に示すように、実施の形態1に係る遠心送風機1は、第2の比較例に係る遠心送風機1と比較すると、特に、舌部9付近における圧力変動レベルの高い領域が小さくなっている。この理由は前述の通り、突出部5の外径Daを、羽根車4の内径D1と外径D2との間とすることで、二次流れY4と、舌部9付近から生じる循環流と、突出部5との相互干渉を効果的に抑制したことに加え、羽根車4の背面に突出部5を設けることで、スクロール部6の底面との距離を稼ぎ、離散周波数騒音の伝播も抑制したためと考えられる。
【0060】
図15は、実施の形態1に係る遠心送風機と第2の比較例に係る遠心送風機と、第3の比較例に係る遠心送風機との風量―比騒音特性の実機試験の結果を示す図である。横軸は風量を、縦軸は比騒音を示している。
図15において、黒ひし形は第2の比較例に係る遠心送風機1のプロットを示し、黒三角は第3の比較例に係る遠心送風機1のプロットを示し、白丸は実施の形態1に係る遠心送風機1のプロットを示している。
【0061】
図15に示すように、最小比騒音の騒音値は、第2の比較例に係る遠心送風機1では13.1dB、第3の比較例に係る遠心送風機1では13.0dBであるのに対して、実施の形態1に係る遠心送風機1では12.8dBであり、0.2dB以上の低騒音化を確認できる。このような低騒音化を確認できた理由は、突出部5が羽根車4の内径側に設けられたことで、突出部5と二次流れY4との干渉を抑制でき、かつ、羽根車4の背面から発生する離散周波数騒音を効果的に抑制できたためと考えられる。
【0062】
このように、実施の形態1に係る遠心送風機1は、羽根車4の複数のブレード4bよりも径方向の内側にオフセットして突出部5の全周を設置しているため、突出部5と二次流れY4との干渉を抑制でき、突出部5の面上の圧力変動を効果的に低減できる。また、この影響により、羽根車4の回転に伴って生じる離散周波数騒音を抑制し、低騒音化を実現することができる。
【0063】
また、多翼羽根車は、ブレード枚数を減らすと翼間一つ当たりの運動量が増加し、流れの変動成分が大きくなることで、羽根車背面における離散周波数騒音が発生しやすくなる懸念がある。実施の形態1に係る遠心送風機1は、離散周波数騒音の発生を抑制する効果が期待できることから、主板4aの背面における羽根車4の外径と同じ位置に突出部20が設けられた第2の比較例に係る遠心送風機1の羽根車4と比べて、ブレード枚数を10%以上減らすことが期待でき、材料コストの抑制及び羽根車4の加工コストの抑制を実現することができる。
【0064】
実施の形態2.
図16は、実施の形態2に係る遠心送風機の断面図である。なお、
図16ではスクロールケーシング11の図示は省略している。実施の形態2では、実施の形態1の突出部5を突出部30に置換している。実施の形態2に係る遠心送風機1は、突出部30以外は実施の形態1に係る遠心送風機1と同様の構成であるため、重複する説明は省略する。突出部30は、主板4aから枝分かれしておらず、主板4aが断面V字状に屈曲されることで形成されている。実施の形態2に係る遠心送風機1の羽根車4は、樹脂成型によって形成することができる。実施の形態1に係る遠心送風機1とは異なり、突出部30は主板4aから枝分かれしていないため、樹脂成型による生産性が高い。
【0065】
実施の形態1に係る遠心送風機1と同様に、羽根車4の外径をD2、羽根車4の内径をD1、モータ3の外径をDc、通風穴4eの外径をDbと定義したとき、突出部30の取り付け位置は、D2>Da>Dcと、D1≧Da>Dbを満たす範囲内とする。
【0066】
実施の形態2に係る遠心送風機1は、突出部30を断面V字状にしているため、羽根車4を樹脂成型で量産することが可能となる。また、上述の通り、D1≧Da>Dbの条件を満たすように突出部5を設けているため、実施の形態1に係る遠心送風機1と同様の効果に加え、突出部5に使用する材料コストの抑制が可能となる。
【0067】
実施の形態3.
図17は、実施の形態3に係る遠心送風機の羽根車の斜視図である。実施の形態3では、実施の形態1の突出部5を突出部40に置換している。実施の形態3の突出部40以外の構成は、実施の形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0068】
突出部40は、回転対称の形状であり、例えば楕円筒形状である。楕円筒形状の突出部40は、羽根車4の回転軸2上に中心軸を持つ。突出部40は、楕円筒の長径が羽根車4の外径D2以下であり、楕円筒の短径が通風穴4eの外径Db以上である。楕円筒の長径及び楕円筒の短径は、例えば、突出部40の外径をもって測定する。このように、羽根車4の外径D2から通風穴4eの外径Dbまでの範囲に、楕円筒形状の突出部40全体が設置される。なお、実施の形態3に係る遠心送風機1においては、突出部40が楕円筒形状であるため、楕円筒の長径が突出部40の最大幅である。
【0069】
実施の形態3に係る遠心送風機1において、羽根車4に通風穴4eが設けられていなくてもよい。羽根車4に通風穴4eを設けない場合、突出部40は、全周に亘って羽根車4の外径よりも径方向の外側の領域にはみ出すことなく設置され、かつ突出部40の全周のうちの少なくとも一部は、羽根車4の外径よりも径方向の内側に設けられている。
図17では、突出部40の長径部が羽根車4の外径部に設置され、長径部以外が羽根車4の外径もより径方向の内側に設けられている。
【0070】
実施の形態3に係る遠心送風機1は、突出部40を円筒形状ではなく楕円筒形状としている。楕円筒形状の突出部40は、中心軸から壁面までの距離が場所によって異なるため、突出部40の内部に存在する音波と同一周波数の逆方向に伝播する音波が重なりにくくなる。このため、実施の形態3に係る遠心送風機1は、定在波が生じにくくなり、共鳴音を効果的に抑制できる。
【0071】
定在波を生じさせにくくするためには、楕円筒形状の突出部40は、長径と短径との差が大きいほうが好ましい。例えば、長径と短径との差が、羽根車4の外径D2と通風穴4eの外径Dbとの差の半分以上であることが好ましい。すなわち、突出部40の長径をDxとし、短径をDnとすると、(Dx-Dn)>(D2-Db)/2であることが好ましい。
【0072】
このように実施の形態3に係る遠心送風機1は、突出部40を楕円筒形状としているため、定在波が生じにくくなり、共鳴音を効果的に抑制でき、より低騒音化を図ることができる。なお、突出部40は、全周に亘って羽根車4の外径から径方向の外側の領域にはみ出すことなく設置され、かつ突出部40の全周のうちの少なくとも一部が、羽根車4の外径よりも径方向の内側に設けられる条件を満たせば、楕円に限らず任意の形状としてもよい。
【0073】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 遠心送風機、2 回転軸、3 モータ、3a シャフト、4 羽根車、4a 主板、4b ブレード、4c ボス部、4d リブ、4e 通風穴、4f,4g,4h 円、5,20,30,40 突出部、6 スクロール部、7 ディフューズ部、8 吸込口、8a ベルマウス、8b 遮蔽部、8c 遮蔽部終端部、8f 表面、8r 背面、9 舌部、10 吹出口、11 スクロールケーシング、11a 第1壁、11b 第2壁、11c 第3壁、81a 遮蔽部側面部、81b 遮蔽部底面部、82 ベルマウス裏側空間、Y1,Y2 空気流、Y3 主流、Y4 二次流れ。