(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】周波数移行装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20250411BHJP
【FI】
H04B10/516
(21)【出願番号】P 2024551912
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2023000029
(87)【国際公開番号】W WO2024147175
(87)【国際公開日】2024-07-11
【審査請求日】2024-08-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「低コスト・高品質なミリ波・テラヘルツ帯へのB5G対応高周波数移行技術の研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠希
(72)【発明者】
【氏名】西岡 隼也
(72)【発明者】
【氏名】赤松 孝俊
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/079710(WO,A1)
【文献】特開2013-178374(JP,A)
【文献】特開2014-106498(JP,A)
【文献】KONISHI, T. et al.,Photonic-Assisted Digital-to-Analog Conversion taking advantage of Low frequency technology,2021 International Topical Meeting on Microwave Photonics (MWP),IEEE,2021年11月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア光と異なる波長のパイロット光を前記キャリア光に波長多重させる光波長多重部と、
前記光波長多重部によるパイロット光多重後のキャリア光を周波数移行対象の信号で光強度変調し、光強度変調後のキャリア光である強度変調光を出力する光強度変調部と、
前記光強度変調部から出力された強度変調光を、前記キャリア光の波長成分と前記パイロット光の波長成分とに分波する光波長分波部と、
前記キャリア光の波長成分を時間方向に圧縮し、圧縮後のキャリア光の波長成分である時間圧縮パルス光を出力する光パルス圧縮部と、
前記パイロット光の波長成分に基づいて、前記光強度変調部
から出力される強度変調光の光強度を制御する制御部と
を備えた周波数移行装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記パイロット光の波長成分を電気信号に変換し、当該電気信号に基づいて、前記光強度変調部に与えるバイアス信号を制御することで、前記光強度変調部
から出力される強度変調光の光強度を制御することを特徴とする請求項1記載の周波数移行装置。
【請求項3】
パルス光を時間方向に伸長させることでキャリア光を生成し、前記生成したキャリア光を前記光波長多重部に出力するキャリア光生成部と、
前記キャリア光生成部により生成されるキャリア光と異なる波長のパイロット光を生成し、前記生成したパイロット光を前記光波長多重部に出力するパイロット光生成部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の周波数移行装置。
【請求項4】
前記キャリア光生成部により生成されたキャリア光の時間波形を整形し、波形整形後のキャリア光を前記光波長多重部に出力するスペクトル整形部を備えたことを特徴とする請求項3記載の周波数移行装置。
【請求項5】
前記光パルス圧縮部から出力された時間圧縮パルス光を電気信号に変換し、当該電気信号を周波数移行後の信号として出力する光電変換部を備えたことを特徴とする請求項1記載の周波数移行装置。
【請求項6】
請求項5記載の周波数移行装置と、
当該周波数移行装置の前記光電変換部から出力された電気信号をアンテナに出力する通信回路と
を備えた通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周波数移行装置及び通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周波数移行対象の信号の周波数を移行させる周波数移行装置がある。
このような周波数移行装置として、例えば、特許文献1には、光搬送波生成部と、変調器と、分散補償器と、光電気変換器とを備える装置が開示されている。
当該光搬送波生成部は、光搬送波を生成する。当該変調器は、光搬送波生成部により生成された光搬送波を第1の電気信号で変調する。第1の電気信号は、周波数移行対象の信号である。当該分散補償器は、変調器による変調後の光搬送波を時間方向に圧縮する。当該光電気変換器は、分散補償器による圧縮後の光搬送波を第2の電気信号に変換する。第2の電気信号は、第1の電気信号よりも周波数が高い周波数移行後の信号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている装置においては、例えば、変調器の周囲の温度が変化することによって、変調器に温度ドリフトが生じることがある。また、時間の経過に伴って、変調器に経時ドリフトが生じることがある。変調器に、温度ドリフト、又は、経時ドリフト等が生じることによって、第2の電気信号の信号レベルが本来の信号レベルからずれてしまうことがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、周波数移行後の信号の信号レベルが本来の信号レベルからずれてしまっても、周波数移行後の信号の信号レベルを本来の信号レベルに戻すことができる周波数移行装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る周波数移行装置は、キャリア光と異なる波長のパイロット光をキャリア光に波長多重させる光波長多重部と、光波長多重部によるパイロット光多重後のキャリア光を周波数移行対象の信号で光強度変調し、光強度変調後のキャリア光である強度変調光を出力する光強度変調部とを備えている。また、周波数移行装置は、光強度変調部から出力された強度変調光を、キャリア光の波長成分とパイロット光の波長成分とに分波する光波長分波部と、キャリア光の波長成分を時間方向に圧縮し、圧縮後のキャリア光の波長成分である時間圧縮パルス光を出力する光パルス圧縮部と、パイロット光の波長成分に基づいて、光強度変調部による光強度変調を制御する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、時間圧縮パルス光から変換される電気信号である周波数移行後の信号の信号レベルが本来の信号レベルからずれてしまっても、周波数移行後の信号の信号レベルを本来の信号レベルに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る周波数移行装置1を含む通信装置を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る周波数移行装置1を示す構成図である。
【
図3】短パルス光P
C及びキャリア光P
CARを示す説明図である。
【
図4】
図4Aは、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの時間波形を示す説明図、
図4Bは、パイロット光P
PILが波長多重されているキャリア光P
CAR+PILを示す説明図、
図4Cは、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの波長を示す説明図である。
【
図5】RF信号(1)の時間波形を示す説明図である。
【
図6】強度変調光P
IMの時間波形を示す説明図である。
【
図7】
図7Aは、キャリア光P
CARの波長成分の時間波形を示す説明図、
図7Bは、パイロット光P
PILの波長成分の時間波形を示す説明図である。
【
図8】時間圧縮パルス光P
TCの時間波形を示す説明図である。
【
図9】RF信号(2)の時間波形を示す説明図である。
【
図10】実施の形態2に係る周波数移行装置1を示す構成図である。
【
図11】
図11Aは、波形整形後のキャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの時間波形を示す説明図、
図11Bは、パイロット光P
PILが波長多重されている波形整形後のキャリア光P
CAR’+PILを示す説明図、
図11Cは、キャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの波長を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る周波数移行装置1を含む通信装置を示す構成図である。
図1に示す通信装置は、周波数移行装置1、通信回路2及びアンテナ3を備えている。
周波数移行装置1は、周波数移行対象の信号であるRF(Radio Frequency)信号(1)の周波数f
1を、他の周波数f
2に移行させて、周波数がf
2のRF信号(2)を出力する装置である。
周波数移行装置1は、周波数移行後のRF信号(2)を通信回路2に出力する。
RF信号(2)の周波数f
2としては、例えば、マイクロ波帯の周波数、ミリ波帯の周波数、又は、テラヘルツ波帯の周波数である。
図1の例では、周波数移行装置1が通信装置に実装されている。しかし、これは一例に過ぎず、周波数移行装置1が通信装置以外の装置に実装されているものであってもよい。
【0011】
通信回路2は、周波数移行装置1から出力されたRF信号(2)をアンテナ3に出力する。
なお、通信回路2は、周波数移行装置1から出力されたRF信号(2)に対する変調処理等の一般的な信号処理を実施するものであり、通信回路2からアンテナ3に出力されるRF信号(2)は、通信回路2によって変調処理等が施された信号である。RF信号(2)に対する変調処理等の一般的な信号処理は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
アンテナ3は、通信回路2から出力されたRF信号(2)に基づく電波を空間に放射する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係る周波数移行装置1を示す構成図である。
図2に示す周波数移行装置1は、キャリア光生成部11、パイロット光生成部12、光波長多重部13、光強度変調部14、光波長分波部15、光パルス圧縮部16、光電変換部17及び制御部18を備えている。
図2に示す周波数移行装置1では、キャリア光生成部11と光波長多重部13との間、パイロット光生成部12と光波長多重部13との間、光波長多重部13と光強度変調部14との間、光強度変調部14と光波長分波部15との間、光波長分波部15と光パルス圧縮部16との間、光パルス圧縮部16と光電変換部17との間、光波長分波部15と制御部18との間のそれぞれが、例えば、光ファイバによって接続されている。
【0013】
キャリア光生成部11は、短パルス光源11a及び光パルス伸長部11bを備えている。
キャリア光生成部11は、波長λC[nm]のパルス光(以下「短パルス光」という)PCを時間方向に伸長させることでキャリア光PCARを生成し、生成したキャリア光PCARを光波長多重部13に出力する。
【0014】
短パルス光源11aは、例えば、モードロックファイバレーザによって実現される。
短パルス光源11aは、波長λC[nm]の短パルス光PCを繰り返し発振し、短パルス光PCを光パルス伸長部11bに繰り返し出力する。短パルス光PCのパルス幅はW1、短パルスPCの発振周期はDである。
【0015】
光パルス伸長部11bは、例えば、分散性媒質を用いるパッシブ光部品によって実現される。
光パルス伸長部11bは、短パルス光源11aから出力された短パルス光PCを時間方向に伸長させる波長分散を行う。
光パルス伸長部11bは、波長分散後の短パルス光であるキャリア光PCARを光波長多重部13に出力する。キャリア光PCARの波長帯は、例えば、λC-αからλC+αの範囲である。
【0016】
パイロット光生成部12は、光源駆動回路12a及びパイロット光源12bを備えている。
パイロット光生成部12は、キャリア光生成部11により生成されるキャリア光PCARと異なる波長λP[nm]のパイロット光PPILを生成し、生成したパイロット光PPILを光波長多重部13に出力する。
【0017】
光源駆動回路12aは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって実現される。
光源駆動回路12aは、パイロット光源12bから連続光(以下「CW光」という)が出力されるように、パイロット光源12bを駆動させる制御回路である。
【0018】
パイロット光源12bは、例えば、半導体レーザによって実現される。
パイロット光源12bは、キャリア光PCARと異なる波長λPのパイロット光PPILとしてCW光を発振し、パイロット光PPILを光波長多重部13に出力する。
【0019】
光波長多重部13は、例えば、波長分割多重カプラ、アレイ導波路グレーティング及び光マルチプレクサを備えている。
光波長多重部13は、キャリア光生成部11からキャリア光PCARが与えられ、パイロット光生成部12からパイロット光PPILが与えられる。
光波長多重部13は、パイロット光PPILをキャリア光PCARに波長多重させて、キャリア光PCAR+PILを生成する。キャリア光PCAR+PILは、パイロット光多重後のキャリア光である。
光波長多重部13は、キャリア光PCAR+PILを光強度変調部14に出力する。
【0020】
光強度変調部14は、例えば、マッハツェンダ型変調器、電界吸収変調器、又は、音響光学変調器によって実現される。
光強度変調部14は、外部から周波数移行対象の信号であるRF信号(1)が与えられ、光波長多重部13からキャリア光PCAR+PILが与えられ、制御部18からバイアス信号Bが与えられる。
光強度変調部14は、キャリア光PCAR+PILをRF信号(1)で光強度変調する。光強度変調部14による光強度変調は、バイアス信号Bによって制御される。
光強度変調部14は、光強度変調後のキャリア光である強度変調光PIMを光波長分波部15に出力する。
【0021】
光波長分波部15は、例えば、波長分割多重カプラ、アレイ導波路グレーティング及び光デマルチプレクサを備えている。
光波長分波部15は、光強度変調部14から、強度変調光PIMが与えられる。
光波長分波部15は、強度変調光PIMを、キャリア光PCARの波長成分とパイロット光PPILの波長成分とを分波する。
光波長分波部15は、キャリア光PCARの波長成分を光パルス圧縮部16に出力し、パイロット光PPILの波長成分を制御部18に出力する。
【0022】
光パルス圧縮部16は、例えば、分散性媒質を用いるパッシブ光部品によって実現される。
光パルス圧縮部16は、光波長分波部15から、キャリア光PCARの波長成分が与えられる。
光パルス圧縮部16は、キャリア光PCARの波長成分を時間方向に圧縮する。
光パルス圧縮部16は、圧縮後のキャリア光PCARの波長成分である時間圧縮パルス光PTCを光電変換部17に出力する。
【0023】
光電変換部17は、例えば、フォトダイオードによって実現される。
光電変換部17は、光パルス圧縮部16から、時間圧縮パルス光P
TCが与えられる。
光電変換部17は、時間圧縮パルス光P
TCを電気信号に変換し、電気信号であるRF信号(2)を周波数移行後の信号として通信回路2に出力する。RF信号(2)の周波数f
2は、RF信号(1)の周波数f
1よりも高い。
図2に示す周波数移行装置1では、光電変換部17がRF信号(2)を通信回路2に出力している。しかし、これは一例に過ぎず、光電変換部17がRF信号(2)を通信回路2以外の装置に出力するものであってもよい。
【0024】
制御部8は、光電変換部18a及びバイアス制御回路18bを備えている。
制御部8は、光波長分波部15から、パイロット光PPILの波長成分が与えられる。
制御部8は、パイロット光PPILの波長成分に基づいて、光強度変調部14による光強度変調を制御する。
【0025】
光電変換部18aは、例えば、フォトダイオードによって実現される。
光電変換部18aは、光波長分波部15から、パイロット光PPILの波長成分が与えられる。
光電変換部18aは、パイロット光PPILの波長成分を電気信号Eに変換し、電気信号Eをバイアス制御回路18bに出力する。
【0026】
バイアス制御回路18bは、例えば、バイアスコントローラによって実現される。
バイアス制御回路18bは、光電変換部18aから、電気信号Eが与えられる。
バイアス制御回路18bは、電気信号Eに基づいて、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御することで、光強度変調部14による光強度変調を制御する。
【0027】
次に、
図2に示す周波数移行装置1の動作について説明する。
キャリア光生成部11の短パルス光源11aは、
図3に示すように、波長λ
Cの短パルス光P
Cを繰り返し発振する。
短パルス光源11aは、短パルス光P
Cを光パルス伸長部11bに繰り返し出力する。
【0028】
光パルス伸長部11bは、短パルス光源11aから短パルス光P
Cが与えられる毎に、
図3に示すように、短パルス光P
Cを時間方向に伸長させる波長分散を行う。
光パルス伸長部11bは、波長分散後の短パルス光であるキャリア光P
CARを光波長多重部13に出力する。
【0029】
図3は、短パルス光P
C及びキャリア光P
CARを示す説明図である。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸は、短パルス光P
C及びキャリア光P
CARにおけるそれぞれの光強度を示している。
W1は、短パルス光P
Cのパルス幅であり、Dは、短パルス光源11aによる短パルス光P
Cの発振周期である。
W2は、キャリア光P
CARのパルス幅である。
Gは、時間的に隣り合う2つのキャリア光P
CARの間隙時間である。
間隙時間Gは、光強度変調部14が、キャリア光P
CAR+PILをRF信号(1)で光強度変調できない時間である。キャリア光P
CARのパルス幅W2が広く、間隙時間Gが短いほど、光強度変調部14において、キャリア光P
CAR+PILをRF信号(1)で光強度変調できない時間が減少する。換言すれば、光強度変調部14において、キャリア光P
CAR+PILをRF信号(1)で光強度変調できる時間が増加する。
このため、光パルス伸長部11bは、時間的に隣り合う2つのキャリア光P
CARが互いに重ならない範囲で(G≧0)、短パルス光P
Cをできる限り時間方向に伸長させることが望ましい。
【0030】
パイロット光生成部12のパイロット光源12bは、
図4Cに示すように、キャリア光P
CARと異なる波長λ
Pのパイロット光P
PILとして、CW光を発振する。パイロット光P
PILの波長λ
P[nm]は、キャリア光P
CARの波長帯と重ならない波長である。
図4Cでは、パイロット光P
PILの波長λ
Pが、キャリア光P
CARの波長帯よりも長い例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、パイロット光P
PILの波長λ
Pが、キャリア光P
CARの波長帯よりも短くてもよい。
パイロット光源12bによるCW光の発振は、光源駆動回路12aによって制御される。
パイロット光源12bは、パイロット光P
PILを光波長多重部13に出力する。
【0031】
図4Aは、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの時間波形を示す説明図である。
図4Aにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの光強度を示している。
図4Bは、パイロット光P
PILが波長多重されているキャリア光P
CAR+PILを示す説明図である。
図4Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はキャリア光P
CAR+PILの光強度を示している。
図4Cは、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの波長を示す説明図である。
図4Cにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は、キャリア光P
CAR及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの光強度を示している。
【0032】
図4Aの例では、パイロット光P
PILの光強度が、キャリア光P
CARの光強度よりも大きい。しかし、これは一例に過ぎず、パイロット光P
PILの光強度が、キャリア光P
CARの光強度よりも大きいものに限るものではない。ただし、パイロット光源12bから出力されるパイロット光P
PILの光強度は、一定の光強度である。
パイロット光P
PILの波長は、
図4Cに示すように、キャリア光P
CARの波長と干渉しない波長である。
【0033】
光波長多重部13は、キャリア光生成部11から、
図4Aに示すようなキャリア光P
CARが与えられ、パイロット光生成部12から、
図4Aに示すようなパイロット光P
PILが与えられる。
光波長多重部13は、パイロット光P
PILをキャリア光P
CARに波長多重させて、
図4Bに示すようなキャリア光P
CAR+PILを生成する。
光波長多重部13は、キャリア光P
CAR+PILを光強度変調部14に出力する。
【0034】
光強度変調部14は、外部から
図5に示すようなRF信号(1)が与えられ、光波長多重部13からキャリア光P
CAR+PILが与えられ、制御部18からバイアス信号Bが与えられる。
図5は、RF信号(1)の時間波形を示す説明図である。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸はRF信号(1)の光強度を示している。
光強度変調部14は、キャリア光P
CAR+PILをRF信号(1)で光強度変調する。
光強度変調部14は、光強度変調後のキャリア光である強度変調光P
IMを光波長分波部15に出力する。
光強度変調部14による光強度変調は、バイアス信号Bによって制御される。強度変調光P
IMの光強度は、
図6に示すように、RF信号(1)の時間変化に従って変化する。
図6は、強度変調光P
IMの時間波形を示す説明図である。
図6において、横軸は時間を示し、縦軸は強度変調光P
IMの光強度を示している。
【0035】
光波長分波部15は、光強度変調部14から、強度変調光P
IMが与えられる。
光波長分波部15は、強度変調光P
IMを、キャリア光P
CARの波長成分とパイロット光P
PILの波長成分とを分波する。光波長分波部15による強度変調光P
IMの分波自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
光波長分波部15は、
図7Aに示すようなキャリア光P
CARの波長成分を光パルス圧縮部16に出力し、
図7Bに示すようなパイロット光P
PILの波長成分を制御部18に出力する。
図7Aは、キャリア光P
CARの波長成分の時間波形を示す説明図である。
図7Aにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はキャリア光P
CARの波長成分の光強度を示している。
図7Bは、パイロット光P
PILの波長成分の時間波形を示す説明図である。
図7Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はパイロット光P
PILの波長成分の光強度を示している。
【0036】
光パルス圧縮部16は、光波長分波部15から、キャリア光P
CARの波長成分が与えられる。
光パルス圧縮部16は、
図8に示すように、キャリア光P
CARの波長成分を時間方向に圧縮する。
光パルス圧縮部16は、圧縮後のキャリア光P
CARの波長成分である時間圧縮パルス光P
TCを光電変換部17に出力する。
図8は、時間圧縮パルス光P
TCの時間波形を示す説明図である。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸は時間圧縮パルス光P
TCの光強度を示している。
【0037】
光電変換部17は、光パルス圧縮部16から、時間圧縮パルス光P
TCが与えられる。
光電変換部17は、時間圧縮パルス光P
TCを電気信号に変換し、電気信号であるRF信号(2)を通信回路2に出力する。RF信号(2)は、時間方向に圧縮されたキャリア光P
CARの波長成分である時間圧縮パルス光P
TCに係るものである。このため、RF信号(2)の周波数f
2は、RF信号(1)の周波数f
1よりも高い。
図9は、RF信号(2)の時間波形を示す説明図である。
図9において、横軸は時間を示し、縦軸はRF信号(2)の光強度を示している。
【0038】
光電変換部17から通信回路2に出力されるRF信号(2)の信号レベルは、光強度変調部14が、温度ドリフト、又は、経時ドリフト等を生じることで、本来の信号レベルからずれてしまうことがある。
図2に示す周波数移行装置1は、制御部18を備えているため、信号レベルのずれを補償することができる。
【0039】
制御部8の光電変換部18aは、光波長分波部15から、パイロット光PPILの波長成分が与えられる。
光電変換部18aは、パイロット光PPILの波長成分を電気信号Eに変換し、電気信号Eをバイアス制御回路18bに出力する。
【0040】
バイアス制御回路18bは、光電変換部18aから、電気信号Eが与えられる。
バイアス制御回路18bは、電気信号Eに基づいて、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御することで、光強度変調部14による光強度変調を制御する。
具体的には、バイアス制御回路18bは、電気信号Eと閾値Thとを比較する。
閾値Thは、光強度変調部14が、温度ドリフト、又は、経時ドリフト等を生じていないときに、光電変換部18aから出力される電気信号Eの値を示すものである。光強度変調部14が、温度ドリフト等を生じていないときの電気信号Eの値は、例えば、光強度変調部14の特性によって決定される。
閾値Thは、バイアス制御回路18bの内部メモリに格納されているものであってもよいし、周波数移行装置1の外部から与えられるものであってもよい。
【0041】
バイアス制御回路18bは、電気信号Eが閾値Thよりも大きければ、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が小さくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御する。
バイアス制御回路18bは、電気信号Eが閾値Thよりも小さければ、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が大きくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御する。
バイアス制御回路18bは、電気信号Eと閾値Thとが等しければ、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを維持する。
【0042】
ここでは、電気信号Eが閾値Thよりも大きければ、バイアス制御回路18bが、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が小さくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御している。しかし、これは一例に過ぎず、電気信号Eが閾値Thよりも大きくても、電気信号Eと閾値Thとの差分が設定値以上である場合に限り、バイアス制御回路18bが、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が小さくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御してもよい。
また、ここでは、電気信号Eが閾値Thよりも小さければ、バイアス制御回路18bが、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が大きくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御している。しかし、これは一例に過ぎず、電気信号Eが閾値Thよりも小さくても、電気信号Eと閾値Thとの差分が設定値以上である場合に限り、バイアス制御回路18bが、光強度変調部14から出力される強度変調光PIMの光強度が大きくなるように、光強度変調部14に与えるバイアス信号Bを制御してもよい。
【0043】
以上の実施の形態1では、キャリア光と異なる波長のパイロット光をキャリア光に波長多重させる光波長多重部13と、光波長多重部13によるパイロット光多重後のキャリア光を周波数移行対象の信号で光強度変調し、光強度変調後のキャリア光である強度変調光を出力する光強度変調部14とを備えるように、周波数移行装置1を構成した。また、周波数移行装置1は、光強度変調部14から出力された強度変調光を、キャリア光の波長成分とパイロット光の波長成分とに分波する光波長分波部15と、キャリア光の波長成分を時間方向に圧縮し、圧縮後のキャリア光の波長成分である時間圧縮パルス光を出力する光パルス圧縮部16と、パイロット光の波長成分に基づいて、光強度変調部14による光強度変調を制御する制御部18とを備えている。したがって、周波数移行装置1は、時間圧縮パルス光から変換される電気信号である周波数移行後の信号の信号レベルが本来の信号レベルからずれてしまっても、周波数移行後の信号の信号レベルを本来の信号レベルに戻すことができる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態2では、キャリア光生成部11により生成されたキャリア光PCARの時間波形を整形するスペクトル整形部19を備える周波数移行装置1について説明する。
【0045】
図10は、実施の形態2に係る周波数移行装置1を示す構成図である。
図10において、
図2と同一符号は、同一又は相当部分を示すので詳細な説明を省略する。
図10に示す周波数移行装置1は、キャリア光生成部11、パイロット光生成部12、光波長多重部13、光強度変調部14、光波長分波部15、光パルス圧縮部16、光電変換部17、制御部18及びスペクトル整形部19を備えている。
図10に示す周波数移行装置1では、キャリア光生成部11とスペクトル整形部19との間、スペクトル整形部19と光波長多重部13との間のそれぞれが、例えば、光ファイバによって接続されている。
【0046】
スペクトル整形部19は、例えば、波長選択型スイッチによって実現される。
スペクトル整形部19は、キャリア光生成部11から、キャリア光P
CARが与えられる。
スペクトル整形部19は、キャリア光P
CARの時間波形を整形する。
スペクトル整形部19は、波形整形後のキャリア光P
CAR’を光波長多重部13に出力する。
図10に示す周波数移行装置1では、スペクトル整形部19が、光パルス伸長部11bと光波長多重部13との間に配置されている。しかし、これは一例に過ぎず、例えば、光波長多重部13が、スペクトル整形部19の機能を備えているものであってもよい。
【0047】
次に、
図10に示す周波数移行装置1の動作について説明する。ただし、スペクトル整形部19以外は、
図2に示す周波数移行装置1と同様であるため、ここでは、主に、スペクトル整形部19の動作を説明する。
【0048】
キャリア光生成部11により生成されたキャリア光P
CARの光強度は、
図4Cに示すように、波長λ
Cで最も大きく、波長λ
Cが短いほど小さくなっている。また、キャリア光P
CARの光強度は、波長λ
Cが長いほど小さくなっている。
つまり、キャリア光P
CARの光強度は、波長依存性があり、キャリア光P
CARは、歪みを生じていることがある。
【0049】
スペクトル整形部19は、キャリア光生成部11から、キャリア光P
CARが与えられる。
スペクトル整形部19は、キャリア光P
CARの歪みが解消されるように、キャリア光P
CARの時間波形を整形する。
図4Aに示すキャリア光P
CARは、歪みを生じている。
図11Aに示す波形整形後のキャリア光P
CAR’は、歪みが解消されている。
具体的には、スペクトル整形部19は、キャリア光P
CARにおける周波数スライス毎の光減衰量を調整することで、
図11Aに示すように、キャリア光P
CARの時間波形を整形する。
スペクトル整形部19は、波形整形後のキャリア光P
CAR’を光波長多重部13に出力する。
【0050】
図11Aは、波形整形後のキャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの時間波形を示す説明図である。
図11Aにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は、波形整形後のキャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの光強度を示している。
図11Bは、パイロット光P
PILが波長多重されている波形整形後のキャリア光P
CAR’+PILを示す説明図である。
図11Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はキャリア光P
CAR’+PILの光強度を示している。
図11Cは、キャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの波長を示す説明図である。
図11Cにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は、キャリア光P
CAR’及びパイロット光P
PILにおけるそれぞれの光強度を示している。
図11Cでは、パイロット光P
PILの波長λ
Pが、キャリア光P
CAR’の波長帯よりも長い例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、パイロット光P
PILの波長λ
Pが、キャリア光P
CAR’の波長帯よりも短くてもよい。
【0051】
スペクトル整形部19によって、キャリア光P
CARの時間波形が整形されることで、
図2に示す周波数移行装置1と比べて、波長λ
Cと波長λ
Pとを近づけても、パイロット光P
PILの波長と干渉しないキャリア光P
CAR’を生成することが可能になる。
図11Cに示す波長λ
Cと波長λ
Pとの差分は、
図4Cに示す波長λ
Cと波長λ
Pとの差分よりも小さい。
【0052】
光波長多重部13は、キャリア光生成部11から、
図11Aに示すような波形整形後のキャリア光P
CAR’が与えられ、パイロット光生成部12から、
図11Aに示すようなパイロット光P
PILが与えられる。
光波長多重部13は、パイロット光P
PILを波形整形後のキャリア光P
CAR’に波長多重させる。
光波長多重部13は、
図11Bに示すように、パイロット光P
PILが波長多重されている波形整形後のキャリア光P
CAR’+PILを光強度変調部14に出力する。
【0053】
光強度変調部14は、外部からRF信号(1)が与えられ、光波長多重部13からキャリア光PCAR’+PILが与えられ、制御部18からバイアス信号Bが与えられる。
光強度変調部14は、キャリア光PCAR’+PILをRF信号(1)で光強度変調する。
光強度変調部14は、光強度変調後のキャリア光である強度変調光PIMを光波長分波部15に出力する。
【0054】
以上の実施の形態2では、キャリア光生成部11により生成されたキャリア光の時間波形を整形し、波形整形後のキャリア光を光波長多重部13に出力するスペクトル整形部19を備えるように、
図10に示す周波数移行装置1を構成した。したがって、
図10に示す周波数移行装置1は、
図2に示す周波数移行装置1よりも、信号レベルのずれの補償精度を高めることができる。
【0055】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、周波数移行装置及び通信装置に適している。
【符号の説明】
【0057】
1 周波数移行装置、2 通信回路、3 アンテナ、11 キャリア光生成部、11a 短パルス光源、11b 光パルス伸長部、12 パイロット光生成部、12a 光源駆動回路、12b パイロット光源、13 光波長多重部、14 光強度変調部、15 光波長分波部、16 光パルス圧縮部、17 光電変換部、18 制御部、18a 光電変換部、18b バイアス制御回路、19 スペクトル整形部。