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特許7665113受信装置、受信方法、制御回路および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-10
(45)【発行日】2025-04-18
(54)【発明の名称】受信装置、受信方法、制御回路および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20250411BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20250411BHJP
   H04B 1/713 20110101ALI20250411BHJP
【FI】
H04L27/26 410
H04L27/00 A
H04B1/713
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024569211
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2023011929
(87)【国際公開番号】W WO2024201598
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2024-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】▲蒲▼原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 章範
(72)【発明者】
【氏名】天野 匡平
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8451(JP,A)
【文献】特表2020-500467(JP,A)
【文献】特表2012-528344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0268979(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0044555(US,A1)
【文献】特開2005-065070(JP,A)
【文献】特開2010-19803(JP,A)
【文献】特表2007-538423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
H04B 1/713
G01S 5/00-5/14
G01S 19/00-19/55
G01S 11/00-11/16
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信アンテナと、
複数の前記周波数サブバンドのそれぞれの中で前記既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定する周波数応答推定部と、
前記周波数サブバンド内の複数の前記キャリア周波数の間での前記周波数応答の推定値の位相変化量を計算する位相変化量計算部と、
計算された前記位相変化量に基づいて、異なる前記周波数サブバンド間の位相変化量を補間する補間処理部と、
補間後の前記位相変化量に基づいて前記周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るチャネル結合部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記チャネル結合部は、補間後の前記位相変化量に基づき複数の前記周波数応答の位相を位相コヒーレントに結合し、結合した前記周波数応答の位相と振幅とを周波数毎に乗算することで、1つの前記周波数サブバンドよりも広帯域な前記結合後の周波数応答を得ることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記結合後の周波数応答に基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部と、
前記インパルス応答に基づいて前記無線信号の送信元である送信装置までの距離を推定する距離推定処理部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
複数の前記受信アンテナと、
前記周波数応答推定部、前記位相変化量計算部、前記補間処理部および前記チャネル結合部を含み、共通する結合始点周波数を起点に、複数の前記受信アンテナのそれぞれに対応する複数の前記結合後の周波数応答を得る周波数応答結合部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項5】
前記周波数応答結合部は、複数の前記受信アンテナのそれぞれに対応する複数の信号処理系統を有し、
複数の前記信号処理系統のそれぞれは、前記周波数応答推定部、前記位相変化量計算部、前記補間処理部および前記チャネル結合部を含み、共通する結合始点周波数を起点に前記結合後の周波数応答を得ることを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記周波数応答結合部は、前記周波数応答推定部、前記位相変化量計算部、前記補間処理部および前記チャネル結合部を含む1つの信号処理系統を有し、
複数の前記受信アンテナが受信する複数の受信信号のうち前記周波数応答結合部に出力する受信信号を時分割で切り替えるアンテナ切替部、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項7】
複数の前記結合後の周波数応答のそれぞれに基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部と、
複数の前記インパルス応答に基づいて前記無線信号の到来方向を推定する到来方向推定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項8】
複数の前記インパルス応答に基づいて前記無線信号の送信元である送信装置までの距離を推定する距離推定処理部と、
前記距離の推定結果と、前記到来方向の推定結果とに基づいて、前記送信装置の位置を推定する位置推定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
受信装置が実行する受信方法であって、
複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信するステップと、
複数の前記周波数サブバンドのそれぞれの中で前記既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、
前記周波数サブバンド内の複数の前記キャリア周波数の間での前記周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、
計算された前記位相変化量に基づいて、異なる前記周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、
補間後の前記位相変化量に基づいて複数の前記周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、
を含むことを特徴とする受信方法。
【請求項10】
複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信装置を制御する制御回路であって、
複数の前記周波数サブバンドのそれぞれの中で前記既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、
前記周波数サブバンド内の複数の前記キャリア周波数の間での前記周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、
計算された前記位相変化量に基づいて、異なる前記周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、
補間後の前記位相変化量に基づいて複数の前記周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、
を前記受信装置に実行させることを特徴とする制御回路。
【請求項11】
複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信装置を制御するプログラムを記憶した記憶媒体であって、該プログラムは、
複数の前記周波数サブバンドのそれぞれの中で前記既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、
前記周波数サブバンド内の複数の前記キャリア周波数の間での前記周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、
計算された前記位相変化量に基づいて、異なる前記周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、
補間後の前記位相変化量に基づいて複数の前記周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、
を前記受信装置に実行させることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信を行う受信装置、受信方法、制御回路および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)機器の普及に伴い、汎用無線機を用いた屋内環境における位置推定技術の需要が高まっている。屋内環境の測位精度は、一般的にマルチパスに起因する遅延波の影響により劣化する。このような測位精度の劣化を抑制するための対応策の1つとして、複数の異なる周波数サブバンドの周波数応答を結合することで、広帯域な周波数応答を取得し、より高い遅延時間分解能を有するインパルス応答に基づき位置推定することが検討されている。しかしながら、取得され得る周波数サブバンドの周波数応答は、位相同期ループによる同期毎に異なる位相オフセットを含む。このため、周波数応答の推定値を単に結合するだけでは位相コヒーレントな周波数応答を得ることができない。なお、位相コヒーレントに周波数応答を結合することで得られた広帯域な周波数応答は、移動局の位置推定だけでなく、送信局アンテナと受信局アンテナとの間の高分解能な遅延プロファイルを取得するためにも使用され得る。
【0003】
位相コヒーレントな周波数応答を得るために、例えば特許文献1では、周波数サブバンドが重複するリソース配置の無線通信システムに対して、重複部分のキャリア周波数の周波数応答の推定値の位相をそれぞれ比較することで、位相オフセットを解消し、周波数応答を結合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6959333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、周波数サブバンドが重複していることを前提としており、重複部分のキャリア周波数の周波数応答の推定値を用いるため、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)のように、周波数ホッピング方式で切り替わる周波数サブバンドの帯域幅が重複なく並ぶ場合には適用できないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、周波数サブバンドの帯域幅が重複なく並ぶ場合において、位相コヒーレントに周波数応答を結合することで1つの周波数サブバンドよりも広帯域な周波数応答を得ることが可能な受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる受信装置は、複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信アンテナと、複数の周波数サブバンドのそれぞれの中で既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定する周波数応答推定部と、周波数サブバンド内の複数のキャリア周波数の間での周波数応答の推定値の位相変化量を計算する位相変化量計算部と、計算された位相変化量に基づいて、異なる周波数サブバンド間の位相変化量を補間する補間処理部と、補間後の位相変化量に基づいて周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るチャネル結合部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる受信装置は、周波数サブバンドの帯域幅が重複なく並ぶ場合において、位相コヒーレントに周波数応答を結合することで1つの周波数サブバンドよりも広帯域な周波数応答を得ることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる通信システムで用いられる周波数サブバンドの配置例を示す図
図2】実施の形態1にかかる受信装置の機能構成例を示す図
図3】実施の形態1にかかる受信装置の動作を説明するためのフローチャート
図4】実施の形態2にかかる受信装置の機能構成例を示す図
図5】実施の形態3にかかる受信装置の機能構成例を示す図
図6】実施の形態4にかかる受信装置の機能構成例を示す図
図7】実施の形態5にかかる受信装置の機能構成例を示す図
図8】実施の形態1~5にかかる受信装置の機能を実現するための専用のハードウェアを示す図
図9】実施の形態1~5にかかる受信装置の機能を実現するための制御回路の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる受信装置、受信方法、制御回路および記憶媒体を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる通信システムで用いられる周波数サブバンドの配置例を示す図である。各周波数サブバンドは、2つ以上のキャリア周波数で構成される。ここで、周波数サブバンド#iのj番目のキャリア周波数をfi,j、fi,jの周波数応答をH(fi,j)とする。なお、周波数サブバンド#iのキャリア周波数はNi本であり、j={1,2,・・・,Ni}である。図1には、各周波数サブバンドが重複なくかつ隙間なく並ぶ配置例を示しているが、これに限らず、周波数サブバンド間に隙間がある配置であってもよい。
【0012】
図2は、実施の形態1にかかる受信装置100の機能構成例を示す図である。受信装置100は、無線パラメータ設定部1と、受信アンテナ2と、周波数応答結合部3とを有する。周波数応答結合部3は、周波数応答推定部31と、位相変化量計算部32と、周波数順序整列部33と、補間処理部34と、チャネル結合部35とを有する。
【0013】
無線パラメータ設定部1は、各周波数サブバンドの伝送路の周波数応答を推定するために必要なパラメータを保持する。例えば、無線パラメータ設定部1が保持するパラメータは、周波数ホッピングパターンなどの各周波数サブバンドの時間軸上のリソース割当情報、各周波数サブバンド内の伝送路の周波数応答推定用の無線リソース配置、リソース数、伝送路の周波数応答推定用の既知系列などである。
【0014】
受信アンテナ2は、図示しない送信装置から無線信号を受信し、受信した無線信号である受信信号を周波数応答結合部3の周波数応答推定部31に出力する。
【0015】
周波数応答推定部31は、受信アンテナ2が出力する受信信号を、無線パラメータ設定部1に保持されたパラメータに従って、既知系列で逆変調することで伝送路の周波数応答の推定値を計算する。周波数応答推定部31は、計算した周波数応答の推定値を位相変化量計算部32に出力する。例えば、ある時刻tの周波数サブバンドiのj番目のキャリア周波数の周波数領域の既知信号をS(fi,j,t)、受信信号をR(fi,j,t)とすると、周波数応答の推定値は以下の数式(1)で表される。なお、以下の文章中において、記号の上にハット記号「^」が付されたものの代わりに、記号の後にハット記号「^」を付する場合がある。例えば、周波数応答の推定値「H^(fi,j,t)」は、数式(1)の左辺と同じものを意味する。
【0016】
【数1】
【0017】
なお、周波数応答推定部31は、各キャリア周波数の伝送路推定用のリソース数Np(i,j)に応じて、同一の位相オフセットを含む各キャリア周波数の周波数応答の推定値を、キャリア周波数単位で平均してもよい。例えば、周波数応答推定部31は、平均後の周波数応答の推定値H^ave(fi,j)を、以下の数式(2)を用いて計算することができる。
【0018】
【数2】
【0019】
また、周波数応答推定部31は、各キャリア周波数の周波数応答の推定値に対して、受信装置100のRF(Radio Frequency)回路(不図示)の周波数応答を補償してもよい。この場合、予め測定したRF回路の周波数応答の複素共役を各キャリア周波数単位で乗算することが考えられる。
【0020】
位相変化量計算部32は、周波数応答推定部31が出力する周波数応答の推定値に対して、同一の位相オフセットを含み隣接するキャリア周波数間で周波数応答の推定値の位相変化量を計算し、計算した位相変化量および周波数応答推定部31から受け取った周波数応答の推定値を周波数順序整列部33へ出力する。なお、位相変化量計算部32は、位相変化量を、一方の複素数値と、他方の周波数応答の推定値の複素共役との乗算で計算し、複素数のまま出力してもよいし、位相角を計算して出力してもよい。例えば、隣接する周波数応答の推定値H^ave(fi,j)およびH^ave(fi,j+1)に対して、位相変化量は、以下の数式(3)で表される。
【0021】
【数3】
【0022】
ただし、「Arg{・}」は、複素数の位相角を意味する。「H*」は、「H」の共役複素数を意味する。同様に、以下「*」が付された記号は、その記号が示すものの共役複素数を意味するものとする。また、位相変化量θ(fi,j+0.5)は、位相オフセットの影響を受けないため、異なる周波数ホッピングで同様に計算した同一周波数の位相変化量について平均してもよい。
【0023】
周波数順序整列部33は、無線パラメータ設定部1に保持された各周波数サブバンドの時間領域のリソース配置の情報に従って、位相変化量計算部32が出力した位相変化量および周波数応答の推定値を周波数の順に整列し、補間処理部34へ出力する。なお、周波数サブバンドの周波数応答が得られない場合には、そのサブバンドに対応する周波数応答の推定値および位相変化量を値なしを意味するNull値として整列し、出力する。
【0024】
補間処理部34は、周波数順序整列部33が出力した、全ての周波数サブバンドまたは一部の隣接する周波数サブバンドの位相変化量に対して、周波数サブバンド間の位相変化量を補間し、補間後の位相変化量をチャネル結合部35へ出力する。また、Null値の周波数がある場合は、補間処理部34は、その周波数の位相変化量も合わせて補間する。補間手法に制約はなく、例えば、補間処理部34は、線形補間、スプライン補間、ラグランジュ多項式補間などを用いることができる。
【0025】
隣り合う周波数サブバンド間に隙間がある場合、補間処理部34は、周波数サブバンド内のキャリア数、キャリア周波数間隔などに基づいて、周波数軸上の補間点を決定することができる。例えば、周波数サブバンド内のキャリア周波数が等間隔である場合には、補間処理部34は、周波数サブバンド間の周波数軸上の補間点を、キャリア周波数の間隔で設定することができる。隣り合う周波数サブバンド間に隙間がある場合、補間点の周波数応答の振幅値が得られないため、補間処理部34は、全ての周波数サブバンドまたは一部の隣り合う周波数サブバンドの周波数応答の推定値を用いて、補間する。この場合、補間処理部34は、周波数応答の振幅値のみに基づいて補間してもよいし、周波数応答の複素数値で補間した後に振幅値を計算してもよい。
【0026】
チャネル結合部35は、補間処理部34が出力する補間後の位相変化量に対して、任意のキャリア周波数を始点として、各キャリア周波数までの位相変化量の累積和を計算することで、位相コヒーレントに周波数応答の位相を結合する。例えば、結合後の帯域内のm番目の周波数fmと、m+1番目の周波数fm+1との間の補間処理部34が出力する位相変化量θ^(fm+0.5)、始点の周波数をfm0とすると、周波数fm0±nの周波数応答の位相φ(fm0±n)は、以下の数式(4)を用いて計算することができる。
【0027】
【数4】
【0028】
ただし、複合同順であり、nは正の整数である。そして、チャネル結合部35は、結合後の位相と周波数応答の振幅とを各周波数で乗算することで、位相コヒーレントな周波数応答を得ることができる。例えば、m番目の周波数fmの振幅をA(fm)とすると、チャネル結合部35は、結合後の周波数応答Hcomb(fm)は、以下の数式(5)を用いて計算することができる。
【0029】
【数5】
【0030】
図3は、実施の形態1にかかる受信装置100の動作を説明するためのフローチャートである。受信装置100の周波数応答推定部31は、1つの周波数サブバンドの受信信号に対して、既知系列に基づいて、各キャリア周波数の伝送路の周波数応答の推定値を計算する伝送路推定処理を行う(ステップS101)。
【0031】
位相変化量計算部32は、対象の周波数サブバンド内の隣接するキャリア周波数間の位相変化量を計算する(ステップS102)。
【0032】
周波数順序整列部33は、対象の周波数サブバンドについて、処理結果である位相変化量および周波数応答の推定値を周波数の順序に整列する(ステップS103)。具体的には、周波数順序整列部33は、例えば、対象の周波数サブバンドに対応した配列またはメモリなどに処理結果を配置することにより、または周波数順序を示す記号と処理結果とを関連づけることにより、処理結果を周波数の順序に整列する。
【0033】
周波数順序整列部33は、結合対象の周波数サブバンドの処理結果の収集が完了したか否かを判断する(ステップS104)。処理結果の収集が完了していない場合(ステップS104:No)、ステップS101から処理が繰り返される。ステップS101からステップS103の処理は、結合対象の周波数サブバンドの処理結果である位相変化量および周波数応答の推定値の収集が完了するまで繰り返される。
【0034】
結合対象の周波数サブバンドの処理結果の収集が完了した場合(ステップS104:Yes)、続いて補間処理部34は、収集した周波数サブバンドの処理結果に基づいて、周波数サブバンド間の補間処理を行う(ステップS105)。
【0035】
チャネル結合部35は、補間処理結果および周波数応答の推定値に基づいて、周波数応答を位相コヒーレントに結合するチャネル結合処理を行う(ステップS106)。
【0036】
以上説明したように、実施の形態1にかかる受信装置100は、複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信アンテナ2と、複数の周波数サブバンドのそれぞれの中で既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定する周波数応答推定部31と、周波数サブバンド内の複数のキャリア周波数の間での周波数応答の推定値の位相変化量を計算する位相変化量計算部32と、計算された位相変化量に基づいて、異なる周波数サブバンド間の位相変化量を補間する補間処理部34と、補間後の位相変化量に基づいて周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るチャネル結合部35と、を備えることを特徴とする。上記の構成により、周波数サブバンド内の位相変化量に基づいて、周波数サブバンド間の位相変化量が補間され、補間後の位相変化量に基づいて、周波数応答が結合され、結合後の周波数応答が得られる。このため、1つの周波数サブバンドよりも広帯域で、且つ、位相コヒーレントな周波数応答が得られる。このような周波数応答が得られることで、動作帯域幅が限られたベースバンドモデムまたは測定器を用いて、動作帯域幅以上の帯域幅の周波数応答を得ることが可能になる。その結果、例えば、高い遅延時間分解能を有するインパルス応答や遅延プロファイルを低コストで取得することが可能になる。なお、全ての周波数サブバンドの伝送路推定に要する時間に対して、伝送路変動が小さい場合や、変化しない場合、本開示の構成が好適である。
【0037】
チャネル結合部35は、具体的には、補間後の位相変化量に基づき複数の周波数応答の位相を位相コヒーレントに結合し、結合した周波数応答の位相と振幅とを周波数毎に乗算することで、1つの周波数サブバンドよりも広帯域な結合後の周波数応答を得ることができる。
【0038】
なお、実施の形態1によれば、受信装置100が実行する受信方法を提供することもできる。この受信方法は、複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信するステップと、複数の周波数サブバンドのそれぞれの中で既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、周波数サブバンド内の複数のキャリア周波数の間での周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、計算された位相変化量に基づいて、異なる周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、補間後の位相変化量に基づいて複数の周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、を含む。
【0039】
また、実施の形態1によれば、受信装置100を制御する制御回路を提供することもできる。この制御回路は、複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信装置100を制御する制御回路であって、複数の周波数サブバンドのそれぞれの中で既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、周波数サブバンド内の複数のキャリア周波数の間での周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、計算された位相変化量に基づいて、異なる周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、補間後の位相変化量に基づいて複数の周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、を受信装置100に実行させる。
【0040】
また、実施の形態1によれば、受信装置100を制御するプログラムを記憶した記憶媒体を提供することもできる。この記憶媒体は、複数の異なる周波数サブバンドで送信された既知系列を含む無線信号を受信する受信装置100を制御するプログラムを記憶した記憶媒体であって、該プログラムは、複数の周波数サブバンドのそれぞれの中で既知系列を受信したキャリア周波数の周波数応答を推定するステップと、周波数サブバンド内の複数のキャリア周波数の間での周波数応答の推定値の位相変化量を計算するステップと、計算された位相変化量に基づいて、異なる周波数サブバンド間の位相変化量を補間するステップと、補間後の位相変化量に基づいて複数の周波数応答を位相コヒーレントに結合して結合後の周波数応答を得るステップと、を受信装置100に実行させる。
【0041】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2にかかる受信装置100Aの機能構成例を示す図である。受信装置100Aは、無線パラメータ設定部1と、受信アンテナ2と、周波数応答結合部3と、位置推定処理部4とを有する。つまり、受信装置100Aは、実施の形態1にかかる受信装置100の構成に加えて、位置推定処理部4を有する。なお、以下では実施の形態1と同様の部分については詳細な説明を省略し、実施の形態1と異なる部分について主に説明する。位置推定処理部4は、インパルス応答計算部41と、距離推定処理部42とを有する。
【0042】
インパルス応答計算部41は、周波数応答結合部3が出力する結合後の周波数応答に基づいて、逆フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)によりインパルス応答を得る。インパルス応答計算部41は、計算したインパルス応答を距離推定処理部42へ出力する。なお、インパルス応答計算部41は、複数の周波数応答の平均値を用いてインパルス応答を計算してもよい。
【0043】
距離推定処理部42は、インパルス応答計算部41が出力するインパルス応答に基づいて無線信号の送信元である送信装置(不図示)までの距離を推定する。具体的には、距離推定処理部42は、インパルス応答の立ち上がり部分を検出し、立ち上がりまでの遅延時間を直接波の伝搬遅延時間τ0として、送信装置までの距離dを以下の数式(6)を用いて計算する。ただし、c0は高速である。
【0044】
【数6】
【0045】
また、複数台の受信装置100Aを用いて、各受信装置100Aで得た距離を収集して、複数の受信装置100Aから送信装置までの距離と、各受信装置100Aの位置情報とに基づいて、送信装置の位置を推定してもよい。この場合、送信装置の位置を推定する処理は、複数台の受信装置100Aのうちの1つで実行されてもよいし、受信装置100Aとは異なるサーバなどで実行されてもよい。
【0046】
以上説明したように、実施の形態2にかかる受信装置100Aは、実施の形態1にかかる受信装置100と同様の効果を奏することができる。さらに、受信装置100Aは、結合後の周波数応答に基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部41と、インパルス応答に基づいて無線信号の送信元である送信装置までの距離を推定する距離推定処理部42と、をさらに備える。ここで、受信装置100Aは、上述の通り、1つの周波数サブバンドよりも広帯域な結合後の周波数応答に基づいて得られたインパルス応答に基づいて、送信装置までの距離を推定している。インパルス応答の遅延時間分解能は、周波数応答の帯域幅の逆数で定まるため、結合後の周波数応答を用いた受信装置100Aでは、1つの周波数サブバンドを用いた距離推定と比較して、インパルス応答の遅延時間分解能が向上し、より精度高くインパルス応答の立ち上がり時間を取得することができるため、距離推定精度を向上させることが可能である。このような距離を用いて送信装置の位置を推定した場合、位置推定精度も向上させることができる。
【0047】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3にかかる受信装置100Bの機能構成例を示す図である。受信装置100Bは、無線パラメータ設定部1と、複数の受信アンテナ2-1,2-2と、周波数応答結合部3Bと、位置推定処理部4Bと、結合始点周波数設定部5とを有する。なお、同様の機能を有する複数の構成要素のそれぞれを、共通の符号の後にハイフンに続けて異なる数字を付することによって区別する。
【0048】
受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれは、受信装置100の受信アンテナ2と同様の機能を有する。周波数応答結合部3Bは、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の結合後の周波数応答を得る。具体的には、周波数応答結合部3Bは、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の系統である第1系統30-1および第2系統30-2を有する。第1系統30-1は、受信アンテナ2-1に対応する信号処理系統であり、周波数応答推定部31-1と、位相変化量計算部32-1と、周波数順序整列部33-1と、補間処理部34-1と、チャネル結合部35-1とを有する。第2系統30-2は、受信アンテナ2-2に対応する信号処理系統であり、周波数応答推定部31-2と、位相変化量計算部32-2と、周波数順序整列部33-2と、補間処理部34-2と、チャネル結合部35-2とを有する。
【0049】
周波数応答結合部3Bが有する複数の信号処理系統である第1系統30-1および第2系統30-2のそれぞれは、実施の形態1にかかる周波数応答結合部3と同様の機能を有する。第1系統30-1および第2系統30-2は、それぞれ対応する受信アンテナ2-1,2-2が出力する受信信号を処理して、結合後の周波数応答を得る。このとき第1系統30-1および第2系統30-2のそれぞれは、結合始点周波数設定部5が設定する共通する結合始点周波数を起点として、周波数応答の推定値を位相コヒーレントに結合する。第1系統30-1および第2系統30-2のそれぞれは、取得した結合後の周波数応答を位置推定処理部4Bに出力する。
【0050】
位置推定処理部4Bは、インパルス応答計算部41-1,41-2と、到来方向推定部43とを有する。インパルス応答計算部41-1,41-2のそれぞれは、実施の形態2にかかるインパルス応答計算部41と同様の機能を有する。インパルス応答計算部41-1,41-2は、受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応して設けられる。インパルス応答計算部41-1は、周波数応答結合部3Bの第1系統30-1が受信アンテナ2-1からの受信信号に基づいて生成した結合後の周波数応答に基づいて、インパルス応答を得る。インパルス応答計算部41-2は、周波数応答結合部3Bの第2系統30-2が受信アンテナ2-2からの受信信号に基づいて生成した結合後の周波数応答に基づいて、インパルス応答を得る。インパルス応答計算部41-1,41-2のそれぞれは、取得したインパルス応答を到来方向推定部43に出力する。
【0051】
到来方向推定部43は、インパルス応答計算部41-1,41-2のそれぞれが出力する受信アンテナ2-1,2-2に対応する複数のインパルス応答に対して、各インパルス応答の先行波の位相差に基づいて、受信アンテナ2-1,2-2が受信した無線信号の到来方向を推定する。無線信号の到来方向は、受信装置100Bから見た、無線信号を送信した送信装置の存在する方向ともいえる。到来方向推定部43は、各インパルス応答で振幅または電力値が最大のものを先行波として選択することができる。先行波に対する受信アンテナ2-1,2-2間の位相差ψ2-1は、受信アンテナ2-1に対応するインパルス応答の先行波成分をh1、受信アンテナ2-2に対応するインパルス応答の先行波成分をh2とすると、以下の数式(7)を用いて計算することができる。
【0052】
【数7】
【0053】
また、到来方向推定部43は、先行波に対する受信アンテナ2-1,2-2間の位相差ψ2-1と、受信アンテナ2-1,2-2間の間隔d2-1と、結合後の全帯域幅の中心周波数の波長λcと、以下に示す数式(8)とを用いて、受信アンテナ2-1,2-2が受信した無線信号の到来方向の推定値φ2-1を推定することができる。
【0054】
【数8】
【0055】
なお、受信装置100Bの周波数応答が到来方向推定値に与える影響を低減するために、到来方向推定部43は、予め測定して得られる到来方向補償値で、到来方向推定値を補償してもよい。または、チャネル結合部35-1において、予め測定して得られる受信装置100Bの周波数応答を、チャネル結合後の周波数応答に対してキャリア周波数毎に除算することで、周波数応答を補償してもよい。
【0056】
また、図5では、2つの受信アンテナ2-1,2-2を有する受信装置100Bについて例示したが、受信アンテナ2の数は3本以上であってもよい。
【0057】
また、複数台の受信装置100Bを用いて、各受信装置100Bで得た到来方向を収集して、複数の受信装置100Bのそれぞれからみた到来方向と、各受信装置100Bの位置情報とに基づいて、送信装置の位置を推定してもよい。この場合、送信装置の位置を推定する処理は、複数台の受信装置100Bのうちの1つで実行されてもよいし、受信装置100Bとは異なるサーバなどで実行されてもよい。
【0058】
結合始点周波数設定部5は、周波数応答結合部3Bが周波数応答を結合する際に起点として使用する結合始点周波数を設定する。結合始点周波数設定部5は、周波数応答結合部3Bが複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の結合後の周波数応答を生成する際に、共通の結合始点周波数を用いるように、結合始点周波数を設定する。図5の例では、結合始点周波数設定部5は、チャネル結合部35-1,35-2のそれぞれに共通の結合始点周波数を設定する。結合後の周波数応答の位相は、結合始点周波数に依存する位相オフセットが残留する。このため、各受信アンテナ2-1,2-2に対して共通の結合始点周波数を用いることで、受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する結合後の周波数応答の位相に残留する位相オフセットが同一となる。その結果、到来方向推定部43において受信アンテナ2-1,2-2間のインパルス応答全体の位相オフセットが同一となるため、到来方向に対応する受信アンテナ2-1,2-2間の位相差を正確に得ることが可能になる。
【0059】
以上説明したように、実施の形態3にかかる受信装置100Bは、実施の形態1にかかる受信装置100と同様の効果を奏することができる。さらに、受信装置100Bは、複数の受信アンテナ2-1,2-2と、周波数応答推定部31、位相変化量計算部32、補間処理部34およびチャネル結合部35を含み、共通する結合始点周波数を起点に、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の結合後の周波数応答を得る周波数応答結合部3Bと、をさらに備える。
【0060】
より具体的には、周波数応答結合部3Bは、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の信号処理系統である第1系統30-1および第2系統30-2を有し、第1系統30-1および第2系統30-2のそれぞれは、周波数応答推定部31-1,31-2、位相変化量計算部32-1,32-2、補間処理部34-1,34-2およびチャネル結合部35-1,35-2を含み、共通する結合始点周波数を起点に結合後の周波数応答を得る。
【0061】
また、受信装置100Bは、複数の結合後の周波数応答のそれぞれに基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部41-1,41-2と、複数のインパルス応答に基づいて無線信号の到来方向を推定する到来方向推定部43と、をさらに備える。ここで、受信装置100Bは、上述の通り、1つの周波数サブバンドよりも広帯域な結合後の周波数応答に基づいて得られたインパルス応答に基づいて、無線信号の到来方向を推定している。インパルス応答の遅延時間分解能は、周波数応答の帯域幅の逆数で定まるため、結合後の周波数応答を用いた受信装置100Bでは、1つの周波数サブバンドを用いた到来方向の推定と比較して、インパルス応答の遅延時間分解能が向上し、先行波と遅延波とをより精度よく分離した状態で先行波の到来方向を推定することができるため、到来方向の推定精度を向上させることができる。このような到来方向を用いて送信装置の位置を推定した場合、位置推定精度も向上させることができる。
【0062】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4にかかる受信装置100Cの機能構成例を示す図である。受信装置100Cは、無線パラメータ設定部1と、受信アンテナ2-1,2-2と、周波数応答結合部3Cと、位置推定処理部4Cと、結合始点周波数設定部5Cと、アンテナ切替部6とを有する。
【0063】
受信装置100Cは、図5に示す受信装置100Bと同様に、2つの受信アンテナ2-1,2-2を有する。受信装置100Bでは、周波数応答結合部3Bが2系統の信号処理系統を備えていたが、受信装置100Cでは、1系統の信号処理系統で2つの受信アンテナ2-1,2-2が受信する受信信号を処理するために、アンテナ切替部6を有する。
【0064】
アンテナ切替部6は、複数の受信アンテナ2-1,2-2が受信する複数の受信信号のうち周波数応答結合部3Cに出力する受信信号を時分割で切り替える。図6では受信アンテナ2が2つの場合を例示しているが、3つ以上の受信アンテナ2を有する場合も同様である。アンテナ切替部6は、2つの受信アンテナ2-1,2-2の出力する受信信号のうち、時間に応じてどちらか一方の受信信号を周波数応答結合部3Cに出力する。
【0065】
周波数応答結合部3Cの基本的な動作は、周波数応答結合部3と同様であるが、2つの受信アンテナ2-1,2-2の受信信号が時分割で入力されることになるため、同一の信号処理系統で2つの受信アンテナ2-1,2-2の周波数応答の結合処理を実行することになる。周波数応答結合部3Cは、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する結合後の周波数応答を時分割で位置推定処理部4Cに出力することになる。
【0066】
結合始点周波数設定部5Cは、結合始点周波数設定部5と同様に、周波数応答結合部3Cが複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の結合後の周波数応答を生成する際に、共通の結合始点周波数を用いるように、結合始点周波数を設定する。周波数応答結合部3Cが有する信号処理系統は1つであるため、結合始点周波数設定部5Cは1つのチャネル結合部35に対して結合始点周波数を出力する点が結合始点周波数設定部5と異なる。チャネル結合部35では、受信アンテナ2-1に対応する周波数応答と、受信アンテナ2-2に対応する周波数応答とを時分割で結合することになるが、処理対象の受信アンテナ2が変わっても共通の結合始点周波数を使用する。
【0067】
位置推定処理部4Cは、インパルス応答計算部41と、到来方向推定部43とを有する。インパルス応答計算部41は、図5に示すインパルス応答計算部41-1,41-2と同様の機能を有する。位置推定処理部4Cには、受信アンテナ2-1に対応する結合後の周波数応答と、受信アンテナ2-2に対応する結合後の周波数応答とが時分割で入力されることになる。このため、インパルス応答計算部41は、受信アンテナ2-1に対応するインパルス応答と、受信アンテナ2-2に対応するインパルス応答とを時分割で計算し、計算したインパルス応答を到来方向推定部43に出力することになる。到来方向推定部43は、図5の位置推定処理部4Bが有する到来方向推定部43と同様の機能を有する。
【0068】
以上説明したように、実施の形態4にかかる受信装置100Cは、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、受信装置100Cは、複数の受信アンテナ2-1,2-2と、周波数応答推定部31、位相変化量計算部32、補間処理部34およびチャネル結合部35を含み、共通する結合始点周波数を起点に、複数の受信アンテナ2-1,2-2のそれぞれに対応する複数の結合後の周波数応答を得る周波数応答結合部3Cと、をさらに備える。より具体的には、周波数応答結合部3Cは、周波数応答推定部31、位相変化量計算部32、補間処理部34およびチャネル結合部35を含む1つの信号処理系統を有し、複数の受信アンテナ2-1,2-2が受信する複数の受信信号のうち周波数応答結合部3Cに出力する受信信号を時分割で切り替えるアンテナ切替部6をさらに備える。また、受信装置100Cは、複数の結合後の周波数応答のそれぞれに基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部41と、複数のインパルス応答に基づいて無線信号の到来方向を推定する到来方向推定部43と、をさらに備える。このような構成でも、実施の形態3と同様の効果を奏することができる。また、実施の形態3の構成と比較して、回路規模を削減することが可能である。
【0069】
なお、実施の形態4では、2つの受信アンテナ2を備える受信装置100Cについて説明したが、3つ以上の受信アンテナ2を備える場合であっても同様である。例えば、アンテナ切替部6が、3つの受信アンテナ2-1~2-3(不図示)のうちの1つの受信信号を時分割で周波数応答結合部3Cに出力するようにすればよい。なお、3つ以上の受信アンテナを備える場合、周波数応答結合部3Cが複数の信号処理系統を備え、受信装置100Cは、信号処理系統の数と同数のアンテナ切替部を備えるようにしてもよい。例えば、受信装置100Cが4つの受信アンテナ2-1~2-4(不図示)を備え、周波数応答結合部3Cが2つの信号処理系統である第1系統30-1および第2系統30-2を備えるものとする。この場合、受信装置100Cは、受信アンテナ2-1,2-2のうちの一方の受信信号を第1系統30-1に出力するアンテナ切替部6-1(不図示)と、受信アンテナ2-3,2-4のうちの一方の受信信号を第2系統30-2に出力するアンテナ切替部6-2(不図示)とを備えていてもよい。この場合、位置推定処理部4Cは、第1系統30-1および第2系統30-2のそれぞれに対応するインパルス応答計算部41-1,41-2を備えることができる。
【0070】
実施の形態5.
図7は、実施の形態5にかかる受信装置100Dの機能構成例を示す図である。受信装置100Dは、無線パラメータ設定部1と、複数の受信アンテナ2-1,2-2と、周波数応答結合部3Bと、位置推定処理部4Dと、結合始点周波数設定部5とを有する。つまり、受信装置100Dの構成は、位置推定処理部4D以外は、図5に示す実施の形態3にかかる受信装置100Bと同様であるため、以下、実施の形態3と異なる部分について説明する。
【0071】
位置推定処理部4Dは、インパルス応答計算部41-1,41-2と、距離推定処理部42と、到来方向推定部43と、位置推定部44とを有する。インパルス応答計算部41-1,41-2と、到来方向推定部43とは、実施の形態3と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。距離推定処理部42は、実施の形態2と同様である。
【0072】
位置推定部44は、距離推定処理部42が出力する送信装置までの推定距離と、到来方向推定部43が出力する無線信号の推定到来方向とに基づいて、受信装置100Dの位置を基準に送信装置の相対位置を推定する。例えば、位置推定部44は、推定到来方向φest、推定距離dest、受信装置100Dの位置を原点とした場合の相対的な送信装置の位置(xtx,ytx)を、以下の数式(9)および数式(10)を用いて計算することができる。
【0073】
【数9】
【0074】
【数10】
【0075】
なお、受信装置100Dの絶対位置が分かっている場合には、位置推定部44は、受信装置100Dの絶対位置と、推定した相対位置とを用いて、送信装置の絶対位置を計算してもよい。
【0076】
以上説明したように、実施の形態5によれば、実施の形態1~4と同様の効果を奏することができる。また、実施の形態5によれば、受信装置100Dは、複数の結合後の周波数応答のそれぞれに基づいて逆フーリエ変換によりインパルス応答を得るインパルス応答計算部41-1,41-2と、複数のインパルス応答に基づいて無線信号の到来方向を推定する到来方向推定部43と、複数のインパルス応答に基づいて無線信号の送信元である送信装置までの距離を推定する距離推定処理部42と、距離の推定結果と、到来方向の推定結果とに基づいて、送信装置の位置を推定する位置推定部44と、をさらに備える。受信装置100Dは、1つの周波数サブバンドよりも広帯域な結合後の周波数応答に基づいて得られたインパルス応答に基づいて、送信装置までの距離および無線信号の到来方向を推定している。このため、上述の実施の形態2と同様に距離の推定精度を向上させることができる。また、上述の実施の形態3,4と同様に到来方向の推定精度を向上させることができる。このような精度の高い距離および到来方向の推定結果に基づいて送信装置の位置を推定するため、受信装置100Dによれば、1つの周波数サブバンドに基づく場合と比較して、位置推定精度を向上させることができる。
【0077】
続いて、実施の形態1~5にかかる受信装置100,100A,100B,100C,100Dのハードウェア構成について説明する。受信装置100,100A,100B,100C,100Dの各機能部は、処理回路により実現される。これらの処理回路は、専用のハードウェアにより実現されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いた制御回路であってもよい。
【0078】
上記の処理回路が、専用のハードウェアにより実現される場合、これらは、図8に示す処理回路90により実現される。図8は、実施の形態1~5にかかる受信装置100,100A,100B,100C,100Dの機能を実現するための専用のハードウェアを示す図である。処理回路90は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。
【0079】
上記の処理回路が、CPUを用いた制御回路で実現される場合、この制御回路は例えば図9に示す構成の制御回路91である。図9は、実施の形態1~5にかかる受信装置100,100A,100B,100C,100Dの機能を実現するための制御回路91の構成を示す図である。図9に示すように、制御回路91は、CPU92と、メモリ93とを備える。CPU92は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などとも呼ばれる。メモリ93は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)などである。
【0080】
上記の処理回路が制御回路91により実現される場合、CPU92がメモリ93に記憶された、各構成部の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、メモリ93は、CPU92が実行する各処理における一時メモリとしても使用される。CPU92が実行するプログラムは、記憶媒体に記憶した状態で提供されてもよいし、インターネットのような通信路を介して提供されてもよい。なお、上記の機能部のうちの一部を専用のハードウェアで実現し、残りの一部をプログラムを用いて実現してもよい。
【0081】
また、上記で示した機能部の切り分けは一例である。複数の機能部が1つの処理回路で実現されてもよいし、1つの機能部として示した機能を複数の処理回路に分けて実現してもよい。
【0082】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。例えば、実施の形態5では、実施の形態3の受信装置100Bの位置推定処理部4Bの構成に、距離推定処理部42と位置推定部44とを加えた構成について説明したが、実施の形態4の受信装置100Cの位置推定処理部4Cの構成に、距離推定処理部42と位置推定部44とを加えてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 無線パラメータ設定部、2,2-1~2-4 受信アンテナ、3,3B,3C 周波数応答結合部、4,4B,4C,4D 位置推定処理部、5,5C 結合始点周波数設定部、6,6-1,6-2 アンテナ切替部、30-1 第1系統、30-2 第2系統、31,31-1,31-2 周波数応答推定部、32,32-1,32-2 位相変化量計算部、33,33-1,33-2 周波数順序整列部、34,34-1,34-2 補間処理部、35,35-1,35-2 チャネル結合部、41,41-1,41-2 インパルス応答計算部、42 距離推定処理部、43 到来方向推定部、44 位置推定部、90 処理回路、91 制御回路、92 CPU、93 メモリ、100,100A,100B,100C,100D 受信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9