(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】腸のニューロパチーを治療するためのグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20250414BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250414BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20250414BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20250414BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20250414BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20250414BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20250414BHJP
C12N 15/16 20060101ALN20250414BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P1/00 ZNA
A61P1/04
A61P1/10
A61P1/08
A61P25/02
C07K14/475
C12N15/16
(21)【出願番号】P 2022538283
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 CA2020051746
(87)【国際公開番号】W WO2021119827
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-04
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522244632
【氏名又は名称】トランスフェルト・プラス・ソシエテ・アン・コマンディテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフ・ソレ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ピロン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】Neurogastroenterology and Motility,2019年08月,31(Supplement 4),p.128, Abstract 251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸のニューロパチーを患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための、組換えグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、前記組成物が、前記対象の遠位結腸への投与のためのものであ
り、投与される前記組換えGDNFポリペプチドの用量が、kg当り約10mg~約15mgである、薬学的組成物。
【請求項2】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項3】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項4】
前記GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、請求項3に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項5】
前記組換えGDNFポリペプチ
ドが、
0.5mg/ml~2mg/mlの濃度である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液またはゲル化剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項7】
前記薬学的組成物が、浣腸を通じた直腸投与のためのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物が、遠位結腸壁への注射による投与のためのものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物が、1日1回~最高1日4回の投与のためのものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物が、少なくとも2日連続の投与のためのものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物が、前記対象における前記無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の前に使用するためのものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項12】
前記薬学的組成物が、前記対象における前記無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の後に使用するためのものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項13】
前記無神経節域または神経節細胞僅少域の前記外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、請求項11または12に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項14】
前記腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項15】
前記腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項16】
前記対象が、短域HSCRを患っている、請求項15に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項17】
前記HSCRが、散発性HSCRである、請求項15または16に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項18】
前記HSCRが、RET受容体の発現または活性の低減に関連する、請求項15~17のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項19】
前記HSCRが、RET遺伝子の変異に関連する、請求項18に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項20】
前記腸の神経新生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項21】
前記腸の神経新生が、腸のニューロンおよび腸のグリア細胞の産生を含む、請求項20に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項22】
前記腸のニューロンおよび/またはグリア細胞の産生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア前駆体の増殖を含む、請求項20または21に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項23】
前記薬学的組成物が、(a)前記無神経節域または神経節細胞僅少域の上流に位置する一酸化窒素作動性およびコリン作動性ニューロンサブタイプの不均衡を補正する、(b)前記対象における遠位結腸の運動性を回復させる、ならびに/または(c)前記対象の遠位結腸におけるリンパ球および/もしくは骨髄免疫細胞の割合を回復させる、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項24】
前記ヒト対象が、5歳未満である、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項25】
前記ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、請求項24に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項26】
前記薬学的組成物が、直腸および/またはS字結腸への投与のためのものである、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項27】
前記薬学的組成物が、直腸S字領域への投与のためのものである、請求項26に記載の使用のための薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月19日出願の米国仮出願第62/950,781号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、ヒルシュスプルング病(HSCR)および腸管神経節細胞僅少症などの腸のニューロパチーの治療に関する。
【背景技術】
【0003】
腸の神経系(ENS)は、胃腸管全体に沿って延在し、感覚刺激に応答して腸の運動性、血流、および上皮活動を制御する(1)。ニューロンおよびグリアを含有する相互接続された腸の神経節は、出生前の発達の間に腸管を通って移動する神経堤由来前駆体から発達する。ENS前駆体による遠位結腸の不完全なコロニー形成は、5000人の新生児の1人に影響を及ぼす状態であるヒルシュスプルング病(HSCR)を引き起こす(2、3)。HSCRでは、ニューロンの神経節のない遠位結腸(すなわち、無神経節結腸)は緊張収縮したままであり、収縮を伝播せず、機能性腸管閉塞を引き起こす。HSCRの症状としては、便および空気の滞留を伴う難治性便秘、腹部膨満、成長不全、時折の嘔吐、腸の炎症(腸炎)、ならびに敗血症および早期死亡を引き起こす血液中への細菌の移行のリスクが挙げられる(2)。
【0004】
HSCRは、臨床的に、短域型(S-HSCR)および長域型(L-HSCR)に細分される(4)。症例のうちの>80%で発生するS-HSCRは、直腸およびS字結腸にENSが存在しないことを意味する。L-HSCRは、遠位腸のより長い領域が無神経節であることを意味する。HSCRの病因は、未だに完全には理解されておらず、多くの遺伝子が、HSCRリスクに影響を与える(2)。さらに、遺伝子的にリスクのあるバリアントは、非遺伝的要因と組み合わさって、ENS前駆体による完全な腸内コロニー形成を阻害し得る(5)。正常なENS発達には多くのタンパク質が一緒に機能する必要があるので、この非メンデル遺伝が発生する。
【0005】
1948年以降、HSCRを有するほとんどの小児は、遠位無神経節腸の外科的除去によって命を救われている(16、17)。しかしながら、この手順は、理想とはかけ離れている。手術後の合併症は一般的であり、また長期間続く場合もあり、生存率(例えば、腸炎)および/または生活の質(例えば、便失禁または閉塞症状)に影響を与える(18~20)。1つの有望なアプローチは、ENSを再構築し、手術の必要性を低減する「再生医療」であろう。このアイデアは、多くのグループが細胞移植に基づくHSCR療法を開発するきっかけとなった(21)。しかしながら、多くの有望な結果にもかかわらず、いくつかの困難が依然として存在する(22)。幹細胞の最適な供給源、移植前の理想的な増幅および/または分化戦略、細胞送達の方法、ならびに移植後の細胞機能および最終結果は、未だ十分に定義されていない。加えて、非自律的な細胞移植は、免疫抑制を必要とし得る。
【0006】
腸管神経節細胞僅少症としても知られる神経節細胞僅少症は、腸管壁の神経の数の低減を引き起こす障害である。腸管神経節細胞僅少症は、HSCRによく似ている場合があり、両方の状態を有する患者は、慢性便秘、腸管閉塞、および腸炎(腸管の炎症)を提示し得る。また、神経節細胞僅少症の患者は、フェカローマ(結腸内での便の硬化)、腸管の出血または穿孔、および結腸の膨張から生じる呼吸障害を含む、重度の合併症を患っている場合がある。神経節細胞僅少症の正確な原因は、多くの場合、分かっていない。場合によっては、出生の時点で存在する要因(先天的)に起因するが、他の場合は、後天的な状態であると考えられる。単独の神経節細胞僅少症の管理は、概して、影響を受けている腸域を除去するための手術を含む。
【0007】
したがって、HSCRおよび腸管神経節細胞僅少症などの腸のニューロパチーの代替治療、遠位結腸における神経新生を誘発し、とりわけ、HSCRおよび腸管神経節細胞僅少症患者における遠位結腸の運動性を回復させることを目的とした治療に対する必要性が明らかに存在する。
【0008】
本記載は、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、ヒルシュスプルング病などの腸のニューロパチーの1つ以上の病理学的特徴を治療するためのGDNFの使用に関する。
【0010】
態様および実施形態では、本開示は、以下の条項1~90に関する:
1.腸のニューロパチーを患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための方法であって、方法が、有効用量の組換えグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を、対象の遠位結腸に投与することを含む、方法。
2.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項1に記載の方法。
3.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項2に記載の方法。
4.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項3に記載の方法。
5.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、条項4に記載の方法。
6.ヒト対象に投与される組換えGDNFポリペプチドの有効用量が、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、条項1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液またはゲル化剤を含む、条項1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.薬学的組成物が、浣腸を通じて直腸投与される、条項1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.薬学的組成物が、遠位結腸壁への注射によって投与される、条項1~7のいずれか1つに記載の方法。
10.薬学的組成物が、1日1回~最高1日4回投与される、条項1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.薬学的組成物が、少なくとも2日連続して投与される、条項1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.方法が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の前に実施される、条項1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.方法が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の後に実施される、条項1~11のいずれか1つに記載の方法。
14.無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、条項12または13に記載の方法。
15.腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、条項1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、条項1~14のいずれか1つに記載の方法。
17.対象が、短域HSCRを患っている、条項16に記載の方法。
18.HSCRが、散発性HSCRである、条項16または17に記載の方法。
19.HSCRが、RET受容体の発現または活性の低減に関連する、条項16~18のいずれか1つに記載の方法。
20.HSCRが、RET遺伝子の変異に関連する、条項19に記載の方法。
21.腸の神経新生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生を含む、条項1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.神経新生が、腸のニューロンおよび腸のグリア細胞の産生を含む、条項21に記載の方法。
23.腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア前駆体の増殖を含む、条項21または22に記載の方法。
24.方法が、無神経節域または神経節細胞僅少域の上流に位置する一酸化窒素作動性およびコリン作動性ニューロンサブタイプの不均衡を補正する、条項1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.方法が、対象における遠位結腸の運動性を回復させる、条項1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.方法が、対象の遠位結腸におけるリンパ球および/または骨髄免疫細胞の割合を回復させる、条項1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.ヒト対象が、5歳未満または1歳未満である、条項1~26のいずれか1つに記載の方法。
28.ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、条項27に記載の方法。
29.薬学的組成物が、直腸および/またはS字結腸に投与される、条項1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.薬学的組成物が、直腸S字領域に投与されるか、または直腸S字領域への投与のためのものである、条項29に記載の方法。
31.腸のニューロパチーを患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための、組換えグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物であって、組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、薬学的組成物。
32.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項31に記載の使用のための薬学的組成物。
33.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項32に記載の使用のための薬学的組成物。
34.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項33に記載の使用のための薬学的組成物。
35.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、条項34に記載の使用のための薬学的組成物。
36.使用される組換えGDNFポリペプチドの用量が、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、条項31~35のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
37.薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液またはゲル化剤である、条項31~36のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
38.薬学的組成物が、浣腸を通じた直腸投与のためのものである、条項31~37のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
39.薬学的組成物が、遠位結腸壁への注射による投与のためのものである、条項31~38のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
40.薬学的組成物が、1日1回~最高1日4回の投与のためのものである、条項31~39のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
41.薬学的組成物が、少なくとも2日連続の投与のためのものである、条項31~40のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
42.薬学的組成物が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の前に使用するためのものである、条項31~41のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
43.薬学的組成物が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の後に使用するためのものである、条項31~41のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
44.無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、条項42または43に記載の使用のための薬学的組成物。
45.腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、条項31~44のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
46.腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、条項31~44のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
47.対象が、短域HSCRを患っている、条項46に記載の使用のための薬学的組成物。
48.HSCRが、散発性HSCRである、条項46または47に記載の使用のための薬学的組成物。
49.HSCRが、RET受容体の発現または活性の低減に関連する、条項46~48のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
50.HSCRが、RET遺伝子の変異に関連する、条項49に記載の使用のための薬学的組成物。
51.腸の神経新生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生を含む、条項31~50のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
52.腸の神経新生が、腸のニューロンおよび腸のグリア細胞の産生を含む、条項51に記載の使用のための薬学的組成物。
53.腸のニューロンおよび/またはグリア細胞の産生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア前駆体の増殖を含む、条項51または52に記載の使用のための薬学的組成物。
54.薬学的組成物が、無神経節域または神経節細胞僅少域の上流に位置する一酸化窒素作動性およびコリン作動性ニューロンサブタイプの不均衡を補正する、条項31~53のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
55.薬学的組成物が、対象における遠位結腸の運動性を回復させる、条項31~54のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
56.薬学的組成物が、対象の遠位結腸におけるリンパ球および/または骨髄免疫細胞の割合を回復させる、条項31~55のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
57.ヒト対象が、5歳未満または1歳未満である、条項31~56のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
58.ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、条項57に記載の使用のための薬学的組成物。
59.薬学的組成物が、直腸および/またはS字結腸への投与のためのものである、条項31~58のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
60.薬学的組成物が、直腸S字領域への投与のためのものである、条項59に記載の使用のための薬学的組成物。
61.腸のニューロパチーを患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための医薬品を製造するための、組換えグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物の使用であって、医薬品が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、薬学的組成物の使用。
62.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項61に記載の使用。
63.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項62に記載の使用。
64.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、条項63に記載の使用。
65.GDNFポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸78~211を含む、条項64に記載の使用。
66.使用される組換えGDNFポリペプチドの用量が、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当する、条項61~65のいずれか1つに記載の使用。
67.薬学的に許容される担体が、生理食塩水溶液またはゲル化剤である、条項61~66のいずれか1つに記載の使用。
68.薬学的組成物が、浣腸を通じた直腸投与のためのものである、条項61~67のいずれか1つに記載の使用。
69.薬学的組成物が、遠位結腸壁への注射による投与のためのものである、条項61~67のいずれか1つに記載の使用。
70.薬学的組成物が、1日1回~最高1日4回の投与のためのものである、条項61~69のいずれか1つに記載の使用。
71.薬学的組成物が、少なくとも2日連続の投与のためのものである、条項61~70のいずれか1つに記載の使用。
72.薬学的組成物が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の前に使用される、条項61~71のいずれか1つに記載の使用。
73.薬学的組成物が、対象における無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去の後に使用される、条項61~72のいずれか1つに記載の使用。
74.無神経節域または神経節細胞僅少域の外科的除去が、プルスルー手術を通じたものである、条項72または73に記載の使用。
75.腸のニューロパチーが、腸管神経節細胞僅少症である、条項61~74のいずれか1つに記載の使用。
76.腸のニューロパチーが、ヒルシュスプルング病(HSCR)である、条項61~75のいずれか1つに記載の使用。
77.対象が、短域HSCRを患っている、条項76に記載の使用。
78.HSCRが、散発性HSCRである、条項76または77に記載の使用。
79.HSCRが、RET受容体の発現または活性の低減に関連する、条項76~78のいずれか1つに記載の使用。
80.HSCRが、RET遺伝子の変異に関連する、条項79に記載の使用。
81.腸の神経新生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生を含む、条項61~80のいずれか1つに記載の使用。
82.腸の神経新生が、腸のニューロンおよび腸のグリア細胞の産生を含む、条項81に記載の使用。
83.腸のニューロンおよび/またはグリア細胞の産生が、腸のニューロンおよび/または腸のグリア前駆体の増殖を含む、条項81または82に記載の使用。
84.方法が、無神経節域または神経節細胞僅少域の上流に位置する一酸化窒素作動性およびコリン作動性ニューロンサブタイプの不均衡を補正する、条項61~83のいずれか1つに記載の使用。
85.医薬品が、対象における遠位結腸の運動性を回復させる、条項61~84のいずれか1つに記載の使用。
86.医薬品が、対象の遠位結腸におけるリンパ球および/または骨髄免疫細胞の割合を回復させる、条項61~85のいずれか1つに記載の使用。
87.ヒト対象が、5歳未満または1歳未満である、条項61~86のいずれか1つに記載の使用。
88.ヒト対象が、生後6ヶ月未満である、条項87に記載の使用。
89.医薬品が、直腸および/またはS字結腸への投与のためのものである、条項61~88のいずれか1つに記載の使用。
90.医薬品が、直腸S字領域への投与のためのものである、条項89に記載の使用。
【0011】
本発明の他の目的、利点、および特徴は、添付の図面を参照してのみ例として与えられる、以下の特定の実施形態の非限定的な記載の閲読の際に、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面において、
【
図1】
図1A~Hは、Hol
Tg/TgマウスにおけるGDNF療法パラメータの設定を示す。(
図1A~B)P4(
図1A)およびP8(
図1B)のHol
Tg/Tg仔の結腸における10μlのメチレンブルー浣腸の分布。(
図1C)P4~P8間に1日1回10μlの浣腸を受けたHol
Tg/Tg仔の生存率に対するGDNF濃度の影響。示される量は、各日に投与されたGDNFの総量に相当する。(
図1D)治療時間枠(P4~P8対P8~P12)、持続時間(1d、5d、または10d;P4で開始)、および頻度(1日1または2回、5日間)が、GDNF浣腸で治療されたHol
Tg/Tg仔の生存率に与える影響(単回の浣腸当たりに投与したGDNFの量は、10μl中10μgで一定に維持した)。(
図1E)P4~P8間に1日1回、示された神経栄養分子(ノギン、エンドセリン-3、またはセロトニン受容体アゴニストRS67506;すべて1μg/μlの最終濃度で)を含有する10μlの浣腸を投与したHol
Tg/Tg仔の生存率。(
図1F)P4~P8間に毎日GDNF浣腸(10μl中10μg)を受けたHol
Tg/Tg仔の生存率に対する食物の一貫性(通常の餌対ゲル食)の影響。(
図1G)P4~P8間に1日1回、GDNF浣腸(10μl中10μg)を受けたHol
Tg/Tg仔の生存率に対する、アスコルビン酸(Vit.C;100μM最終濃度)、セロトニン(5-HT;1μg/μl最終濃度)、およびエンドセリン-3(ET3;1μg/μl最終濃度)の同時投与の影響。(
図1H)P4~P8間に毎日GDNF浣腸(10μl中10μg)を受けたP20Hol
Tg/Tgマウスの結腸におけるニューロン密度(表面積の%で表される)および関連する健康状態。
【
図2】
図2A~Eは、HSCRマウスモデルにおいて、GDNF浣腸が無神経節巨大結腸症を救済することを示す。(
図2A~C)、Hol
Tg/Tg(
図2A)、Ednrb
S-l/s-l(
図2B)、およびTashT
Tg/Tg(
図2C)マウスへのGDNF浣腸のP4~P8間の毎日の投与は、巨大結腸症状(すなわち、結腸における遠位閉塞および糞物質の蓄積、成長の遅れ、倦怠感、ならびに猫背)および生存率(Mantel-Cox統計検定、Hol
Tg/TgおよびEdnrb
S-l/s-lの場合におけるGDNF治療群と非治療群との比較、またはTashT
Tg/Tgの場合におけるGDNF治療群とPBS治療群との比較)の両方に正の影響を与える。(
図2D)P20マウスからの結腸筋肉ストリップのホールマウント免疫蛍光染色は、5日間のGDNF治療が、Hol
Tg/Tgマウスの他の無神経節領域において、HuC/D
+ニューロンおよびSox10
+グリアを含有する腸筋層間神経節を誘発することを示す。破線の輪郭は、外因性神経線維が占める領域を示す。各代表的な画像の下は、結腸の長さに沿った各結腸部分領域(円柱によって表される)の平均ニューロン密度の概略図である。ニューロン密度を、単一の共焦点スライスにおける、腸壁内の腸筋層間神経叢のレベルでのHuC/D
+細胞が占める面積のパーセンテージとして表す(n=群当たり6マウス;部分領域当たり3つの視野)。各遠位結腸部分領域のニューロン密度もまた、数値として示す。(
図2E)5日間のGDNF治療中にEdUの腹腔内注射を受けたP20マウスからの遠位結腸筋板の免疫蛍光分析は、誘発された腸筋層間ニューロン(矢じり)およびグリア(矢印)のサブセットが、治療期間中に分裂前駆体から生成されたことを示す。破線の輪郭は、単一の神経節が占める領域を示す。(
図2F)遠位結腸における腸筋層間ニューロンおよびグリアのEdU組み込みの定量化。結果を、mm
2当たりのEdU
+細胞の数として表す(n=3匹のWTおよび3匹のGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス;動物当たり2~7つの視野;***P<0.001;****P<0.0001;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。示されるすべての画像は、腸筋層間神経叢のレベルでのzスタックプロジェクションを表す。スケールバー、100μm(
図2D)および50μm(
図2E)。
【
図3】
図3は、P20でのWT、未治療のHol
Tg/Tg、またはGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸における、腸筋層間神経叢および粘膜下神経叢の概要を示す。腸筋層間(上部パネル)および粘膜下(下部パネル)神経叢におけるTuJ1
+ニューロン構造の免疫蛍光分析。矢印は、ニューロン本体を含有するGDNFによって誘発された神経節を指す。挿入図は、破線枠内のGDNFによって誘発された神経節の拡大図である。GDNFで治療されたマウスは、P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けた。すべての画像は、3匹のマウスから得た観察を表すzスタックプロジェクションを示す。スケールバー、100μm(大パネル)および50μm(挿入図)。
【
図4】
図4A~Cは、P4~P8間にGDNFで治療されたかまたはされなかったP20Hol
Tg/TgおよびTashT
Tg/Tgマウスの結腸における、腸筋層間神経節サイズおよびニューロン密度の分析を示す。(
図4A)Hol
Tg/Tgマウスにおける腸筋層間神経節サイズの分析。(
図4B)TashT
Tg/Tgマウスにおけるニューロン密度の分析。各結腸部分領域(円柱によって表される)についての平均ニューロン密度を、結腸の長さに沿って示す。ニューロン密度を、単一焦点面における、腸壁内の腸筋層間神経叢のレベルでのHuC/D
+細胞が占める面積のパーセンテージとして表す(n=群当たり6マウス;部分領域当たり3つの視野)。各遠位結腸部分領域のニューロン密度もまた、数値として示す。(
図5C)TashT
Tg/Tgマウスにおける腸筋層間神経節サイズの分析。
【
図5】
図5A~Cは、P4~P8間にEdUを投与したP20WTおよびGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスからの結腸における、腸筋層間および粘膜下神経節のEdU組み込みの分析を示す。(
図5A)遠位結腸における粘膜下ニューロン(矢じり)およびグリア(矢印)のzスタックプロジェクションでのEdU組み込みの例。破線の輪郭は、単一の神経節が占める領域を示す。スケールバー、50μm。(
図5B)中央および遠位結腸における粘膜下の、ニューロン(HuC/D+)およびグリア(SOX10
+)のEdU組み込みの定量分析。結果を、mm
2当たりのEdU
+細胞の数として表す(n=3匹のWTおよび3匹のGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス;動物当たり2~7つの視野;*P<0.05;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。(
図5C)遠位結腸における腸筋層間(左パネル)および粘膜下(右パネル)の、ニューロン(HuC/D
+)およびグリア(SOX10
+)のEdU組み込みの定量分析。結果を、神経節当たりのEdU
+細胞のパーセンテージで表す(n=3匹のWTおよび3匹のGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス;動物当たり2~7つの視野;***P<0.001;****P<0.0001;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。GDNFで治療されたマウスは、P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けた。
【
図6】
図6A~Kは、P20Hol
Tg/TgマウスにおけるGDNFによって誘発されたENSの表現型および機能的特徴付けを示す。(
図6A~B)Hol
Tg/Tgマウスの遠位結腸からのGDNFによって誘発された腸筋層間神経節の免疫蛍光に基づく定量分析は、WT様ニューロン(HuC/D
+)対グリア(Sox10
+)比(
図6A)、ならびに一酸化窒素作動性(nNOS
+HuC/D
+)およびコリン作動性(ChAT
+HuC/D
+)ニューロンの割合(
図6B)を示す(n=群当たり6匹のマウス;動物当たり3つの視野)。(
図6C)GDNFによって誘発された腸筋層間神経節の分析は、一酸化窒素作動性およびコリン作動性ニューロンの存在を示すだけでなく、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、物質P(SubP)、カルレチニン(CalR)、または血管活性腸管ペプチド(VIP)のいずれかを発現する他のニューロンサブタイプの存在も示す。すべての画像は、サブタイプマーカー当たり3匹のマウスから得た観察を表す単一焦点面であり、矢印は、示されるニューロンサブタイプの例を指す。スケールバー、20μm。(
図6D)インビボビーズ潜時試験は、GDNFで治療された一部のHol
Tg/Tgマウスにおける結腸の運動性の部分的な回復を示す(n=群当たり8~9匹のマウス、*P<0.05;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。統計的有意性に影響を与えることなく分析を簡略化するために、直腸挿入後にガラスビーズを排出するまでの時間を30分の上限に制限したことに留意されたい。(
図6E)フォーストランスデューサを備えた臓器浴での縦走平滑筋の収縮-弛緩の電界刺激パターンおよび薬物変調パターンのエクスビボ分析。収縮強度(g/秒で表される)は、電界刺激後に得た曲線下面積(AUC)値のベースラインからの差から計算する。Hol
Tg/Tg+GDNF群の平均ΔAUC値を、収縮性応答に応じて2つのサブグループに分割する。GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスからの結腸筋肉ストリップのうちの約半分(7つのうちの4つ)は、(それぞれL-NAMEおよびアトロピンを使用した)一酸化窒素作動性およびコリン作動性シグナル伝達の一連の阻害に対するWT様応答パターンを示した一方で、残りの半分(7つのうちの3つ)は、未治療のHol
Tg/Tgマウスからの筋肉ストリップと同様の低い応答性のままであった(n=6匹のWTおよびHol
Tg/Tg、n=7匹のHol
Tg/Tg+GDNF;**P<0.01;****P<0.0001;事後Tukey検定を用いた二元配置分散分析)。(
図6F)UssingチャンバでのFITC標識4kDaデキストラン(FD4)に対する遠位結腸粘膜透過性のエクスビボ測定は、Hol
Tg/Tg結腸における透過性の増加を示し、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの3分の2(6匹のうちの4匹)が回復に向かっていることを示す(n=群当たり6匹のマウス;*P<0.05;**P<0.01;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。(
図6G~I)遠位結腸の横断面のH&E染色は、GDNF治療が、平滑筋の厚さの増加(
図6Gの括弧、および
図6Hの定量化を参照されたい)、および粘膜下における好中球の数の増加(
図6Gのアスタリスク、および
図6Iの定量化を参照されたい)の両方を救済することを示す(n=群当たり6匹のマウス;スケールバー、150μm;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。(
図6J~K)マイクロバイオームプロファイリングは、GDNF治療が、未治療のHol
Tg/Tgマウス(n=群当たり5匹のマウス)で通常観察される微生物叢の不均衡を少なくとも部分的に救済することを示す。バーヒストグラム(
図6J)は、属レベルでの16S rRNA遺伝子配列の平均的な相対存在量を示す(*P<0.05;事後Tukey検定を用いた一元配置分散分析)。95%の信頼区間楕円でのベータ多様性比較(
図6K)は、試料間の操作的分類単位の相対存在量のBray-Curtis非類似度の非計量的多次元尺度構成法(NMDS)に基づく(P<0.001;PERMANOVA)。
【
図7】
図7A~Bは、P20でのWT、未治療のHol
Tg/Tg、またはGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの近位および中央結腸における、一酸化窒素作動性およびコリン作動性腸筋層間ニューロンの割合を示す。(
図7A)一酸化窒素作動性(左パネル)およびコリン作動性(右パネル)ニューロンの割合の定性分析。スケールバー、50μm。(
図7B)一酸化窒素作動性(左パネル)およびコリン作動性(右パネル)ニューロンの割合の定量分析(n=3匹のWTおよび3匹のGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス;動物当たり3つの視野;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。GDNFで治療されたマウスは、P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けた。
【
図8】
図8A~Bは、P20でのWT、未治療のHol
Tg/Tg、またはGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸における、運動性のインビボおよびエクスビボ分析を裏付ける情報を示す。(
図8A)P20での遠位結腸におけるニューロン密度と、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスにおけるビーズ排出時間との間の相関(
図6Dを裏付ける)。(
図8B)フォーストランスデューサを備えた臓器浴での縦走平滑筋の収縮-弛緩の電界刺激パターンおよび薬物変調パターンの例(
図6Eを裏付ける)。応答性の組織では、電界刺激(EFS)は、結腸筋肉の収縮を引き起こし、収縮は、一酸化窒素作動性シグナル伝達のL-NAMEによって媒介される阻害によってわずかに増加され得、コリン作動性シグナル伝達のアトロピンによって媒介される阻害によって堅牢に打ち消され得る。GDNFで治療されたマウスは、P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けた。
【
図9】
図9A~Bは、P20でのWT、未治療のHol
Tg/Tg、またはGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸における、平滑筋の厚さの分析を示す。(
図9A)異なる結腸域の代表的なH&E染色断面、平滑筋の厚さは赤い括弧によって示される。スケールバー、150μm。(
図9B)各結腸域の平均的な筋肉の厚さ(n=群当たり6匹のマウス;**P<0.01;***P<0.001;事後Tukey検定を用いた一元配置分散分析)。GDNFで治療されたマウスは、P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けた。
【
図10】
図10A~Iは、外因性シュワン細胞前駆体(SCP)が、無神経節結腸におけるGDNFによって誘発されたニューロンおよびグリアの供給源であることを示す。(
図10A)P8でのWT、Hol
Tg/Tg、およびGDNFで治療されたHol
Tg/TgマウスからのGI管の異なる部分領域における、GDNF分布のウエスタンブロット分析。内因性GDNF(eGDNF)は、通常、すべてのマウスにおいて回腸に限定される一方で、組換えGDNF(rGDNF)は、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸に独占的に検出される。GDNFで治療されたHol
Tg/Tgでは、eGDNFは、結腸のすべての部分領域で発現する。示される抗GDNFブロットは、群当たり3匹のマウスから得た観察を表す。(
図10B~C)P4~P8間のHol
Tg/Tgマウスの浣腸治療に使用したGDNF(
HisGDNF)の6xHisタグ付きバージョンの分布の時間経過分析。2日間隔での遠位結腸の抗Hisおよび抗RET二重染色は、治療中に
HisGDNFおよびRETの両方が粘膜下に蓄積することを示す(
図10B)。両方とも、P8で、外因性神経線維の近くで誘発された腸筋層間ニューロンで検出される(
図10C)。すべての画像は、3匹のマウスから得た観察を表すzスタックプロジェクションを示す。スケールバー、20μm。(
図10D)Hol
Tg/Tgからの無神経節結腸組織の10時間の長いタイムラプス記録からの代表的な画像;SCP様細胞が外因性神経繊維上で分裂(矢印)および移行(矢じり)していることを示すG4-RFPマウス。P4遠位結腸から外植片を調製し、GDNFを用いて72時間予め培養した後、GDNFの継続的な存在下で、共焦点顕微鏡で生体撮像した。画像は、3つの外植片から得た観察を表す50μm厚のzスタックプロジェクションである。スケールバー、100μm。(
図10E~F)抗SOX10および抗Ki67二重標識は、96時間のGDNFへの曝露が、P4Hol
Tg/Tgマウスから調製した遠位結腸の外植片において、SCP増殖率を顕著に増加させることを示す。
図10Eの画像は、3つの外植片から得た観察を表す単一焦点面である。スケールバー、50μm。
図10Fの各値は、外植片当たり最低3つの視野から計算したKi67
+SCPの平均パーセンテージ(すなわち、(Ki67
+SOX10
+/SOX10
+)×100)に相当する(**P<0.01;両側スチューデントt検定)。(
図10G~H)P4~P8間に腹腔内注射を介してGDNF浣腸およびEdUを投与されたP20Hol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+マウスの遠位結腸における、腸筋層間神経節の免疫蛍光分析。誘発されたニューロンの、以下の4つのカテゴリーが検出される:1)SCP由来(Dhh+系統)およびEdU陽性(塗りつぶした灰色の矢じり)、2)SCP由来およびEdU陰性(空の灰色の矢じり)、3)起源不明およびEdU陽性(塗りつぶした白色の矢じり)、4)起源不明およびEdU陰性(空の白色の矢じり)。
図10Gの画像は、3匹のマウスから得た観察を表す単一焦点面である。スケールバー、50μm。
図10Hにプロットした神経節当たりの誘発されたニューロンの4つのカテゴリーの相対的な割合は、マウス当たり最低3つの視野から計算した平均に相当する。破線の輪郭は、外因性神経繊維(
図10E)、または外因性神経繊維および隣接する単一の神経節(
図10CおよびG)のいずれかが占める領域を示す。
図10I:Hol
Tg/Tgマウスの無神経節遠位結腸のシュワン細胞は、ニューロン細胞接着分子(NCAM)を発現するが、RETを発現しない。P20での未治療のHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸からの外因性神経線維(破線で描写される)における、NCAMおよびRET発現の免疫蛍光分析。RETではなくNCAMは、SOX10
+シュワン細胞および推定される腸のグリア/ENS前駆体(矢印)で発現する。DAPI、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール。示される画像は、3匹のマウスから得た観察を表す単一焦点面である。スケールバー、50μm。
【
図11】
図11は、P20でのGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの複数の組織における、GDNF分布の分析を示す。P4~P8から1日1回、10μLの浣腸中10μgのGDNFを受けたP20Hol
Tg/Tgマウスの異なる組織において、内因性GDNF(eGDNF)および組換えGDNF(rGDNF)のαチューブリンが正常化されたレベルである、ウェスタンボルト分析。示されるブロットは、3匹のマウスから得た観察を表す。
【
図12】
図12は、
HisGDNFで治療されたP4~P8Hol
Tg/Tgマウスの結腸平滑筋における、
HisGDNF分布およびRET発現の時間経過分析を示す。
HisGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの遠位結腸筋板における、
HisGDNF分布およびRET発現の免疫蛍光分析。白い矢じりは、
HisGDNFにも陽性に染色されるRET
+ニューロンを指す。すべての画像は、3匹のマウスから得た観察を表す単一焦点面を示す。スケールバー、20μm。
【
図13】
図13A~Dは、P20でのDhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+、およびHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+マウスの腸筋層間および粘膜下神経節における、SCP由来神経新生の分析を示す。(
図13A)Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(対照)およびHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(Hol
Tg/Tg)マウスの近位結腸における、腸筋層間ニューロン(HuC/D
+)およびYFP発現の分析。黄色い矢じりは、SCP由来ニューロンを指す。(
図13B)Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(対照)およびHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(Hol
Tg/Tg)マウスの近位および中央結腸における、腸筋層間ニューロン(HuC/D
+)およびYFP発現の定量分析(n=3匹の対照および3匹のHol
Tg/Tgマウス;動物当たり3つの視野;*P<0.05;事後シダック検定を用いた一元配置分散分析)。(
図13C)P4~P8間にGDNFで治療されたHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(Hol
Tg/Tg)マウスの遠位結腸における、粘膜下ニューロン(HuC/D
+)およびYFP発現の分析。SCP(灰色の矢じり)または不明(白色のじり)起源のいずれかのニューロンが検出される。(
図13D)P4~P8間にGDNFで治療されたHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+(Hol
Tg/Tg)マウスの遠位結腸における、RET発現腸筋層間ニューロン(HuC/D
+)およびYFP発現の分析。RETは、SCP(RET+、塗りつぶした灰色の矢じり;RET-、空の灰色の矢じり)または非SCP(白色の矢じり)起源に関係なく、ニューロンのサブセットで発現する。示されるすべての画像は、3匹のマウスから得た観察を表すzスタックプロジェクションである。スケールバー、50μm。破線の輪郭は、単一の神経節が占める領域を示す。
【
図14】
図14A~Hは、Hol
Tg/TgマウスおよびヒトHSCR患者からの無神経節結腸の外植片に対するGDNF療法のエクスビボ前臨床試験を示す。(
図14A~C)P4Hol
Tg/Tgマウスの遠位結腸から調製し、GDNFおよびEdU(+GDNF)またはEdU単独(対照)の存在下で96時間培養した外植片の免疫蛍光に基づく分析。新しいHuC/D
+ニューロンは、これらのエクスビボ培養条件下でGDNFによって誘発され得るが、外植片当たりのニューロンの総数は変動的であり(
図14A)、これらのニューロンは、存在する場合、非常に小さな神経節のみを形成し(
図14B)、それらは、EdU組み込みを示す可能性がSCPよりも低かった(
図14Bの矢じりおよび
図14Cの定量化を参照されたい)(n=条件当たり7つの外植片;P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;両側マンホイットニーU検定)。(
図14D~G)ヒトHSCR患者から切除した無神経節結腸の試料から調製し、GDNFおよびEdU(+GDNF)またはEdU単独(対照)の存在下で96時間培養した外植片の免疫蛍光に基づく分析。これらの条件下で培養されたすべてのヒト外植片では、GDNF治療は、SOX10
+SCPにEdUの堅牢な組み込みをもたらすが、HuC/D
+ニューロンにはもたらされない(
図14D~E)。有意な数のHuC/D
+ニューロンはすべて、手術時(
図14G)に生後3ヶ月未満の患者に由来する外植片のサブセットにおいてGDNFによって誘発され得る(
図14F)(n=条件当たり12個の外植片;*P<0.05;両側マンホイットニーU検定)。(
図14H)合計7日間、GDNFの存在下で延長された培養によって、手術時に生後≧3ヶ月の患者からのヒト外植片において、EdUを組み込んだいくつかのニューロン(矢じり)を含む、ニューロンが検出された。示されるすべての画像は、腸筋層間神経叢のレベルでのzスタックプロジェクションを表す。スケールバー、50μm(
図14BおよびH)、および100μm(
図14DおよびF)。破線の輪郭は、外因性神経線維が占める領域を示す。
【
図15】
図15A~Bは、P4Hol
Tg/Tgマウスから調製し、GDNFの存在下または不在下で96時間培養した遠位結腸外植片における、神経新生およびSCP増殖の分析を示す。GDNFおよびEdU(+GDNF)またはEdU単独(対照)の存在下で培養したHol
Tg/Tgマウスからの遠位結腸の外植片において、HuC/D
+ニューロン(
図15A)、およびEdU
+SOX10
+が増殖しているSCP(
図15Bの矢印)の代表的な画像。示される画像は、7匹のマウスから得た観察を表す単一焦点面である。スケールバー、50μm。破線の輪郭は、外因性神経線維が占める領域を示す。
【
図16】
図16は、HSCR患者から調製し、GDNFの存在下で96時間培養したS字結腸外植片における、GDNFによって誘発されたニューロンのマーカー分析を示す。ヒトGDNFによって誘発されたニューロンが、外因性神経と密接に関連し、βIII-チューブリン(TuJ1)、RET、PGP9.5、およびPHOX2Bを発現することを示す免疫蛍光分析(
図14Fを裏付ける)。矢じりは、PGP9.5
+ニューロンの丸い/卵形の核を指す。示される画像は、3つのヒト試料から得た観察を表す単一焦点面である。スケールバー、100μm(上部パネル)、50μm(中央パネル)、および25μm(下部パネル)。
【
図17】
図17Aは、ヒトGDNFアイソフォーム1のアミノ酸配列(UniProtKB受託番号P39905、配列番号1)を示し、シグナルペプチドに対応する配列(残基1~19)は下線が引かれ、プロペプチドに対応する配列(残基20~75)はイタリック体で、成熟ポリペプチドに対応する配列(残基78~211)は太字で示す。
図17B~Cは、ヒトGDNFアイソフォーム1をコードするcDNAのヌクレオチド配列(RefSeq受託番号NM_000514.4、配列番号2)を示し、シグナルペプチドをコードする配列(ヌクレオチド562~618)は下線が引かれ、プロペプチドをコードする配列(ヌクレオチド619~786)はイタリック体で、成熟ポリペプチドをコードする配列(ヌクレオチド793~1194)は太字で示す。
【0013】
発明の開示
技術を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」および「an」および「the」という用語、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書において別段示されないか、または文脈に明らか矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるものである。
【0014】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、および「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「限定されないが含む」を意味する)として解釈されるものである。
【0015】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において別段示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0016】
本明細書に提供される任意のおよびすべての実施例、または例示的な言語(「例えば」、「など」)の使用は、単に特許請求される技術の実施形態をより良好に例示することを意図しており、別段特許請求されない限り、範囲の限定を提起するものではない。
【0017】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を特許請求される技術の実施形態の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、値が、値を決定するために用いられるデバイスもしくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、または列挙された値に近い値、例えば、列挙された値(または値の範囲)の10%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0019】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段示されない限り、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。範囲内の値のすべてのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0020】
開示の特徴または態様が、マーカッシュ群または代替物の一覧の観点から説明される場合、当業者は、開示がまた、それによってマーカッシュ群または代替物の一覧の任意の個々の構成要素または構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するであろう。
【0021】
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学における)と同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0022】
別段示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology、A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning、A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、およびF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988,現在に至るまでのすべての改訂版を含む)、Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、およびJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在に至るまでのすべての改訂版を含む)などの情報源における文献全体を通じて記載および説明されている。
【0023】
本明細書に記載の研究において、本発明者らは、HSCRマウスモデルにおいて、直腸浣腸を介した遠位結腸における組換えGDNFの適切な投薬量の投与が、新しく機能する腸のニューロンおよびグリアの永続的な形成、ならびに結腸の運動性の回復を無神経節結腸に誘発することができることを示す。遺伝子系統追跡は、外因性神経線維に位置するSCPが、これらの新しく新生された腸のニューロンおよびグリアの1つの供給源であることを示す。GDNFは、ヒトHSCR患者からの無神経節結腸の培養された外植片において、神経新生を刺激し得ることがさらに示されている。したがって、RETに非依存的であるがGFRα1に依存的な様式で、とりわけ、その代替的な受容体ニューロン細胞接着分子(NCAM)を通じて、シュワン細胞の移動および増殖を刺激する能力を理由として、GDNFは、無神経節部におけるENS前駆体の生後の再活性化のための一次候補と思われた。これらの結果は、結腸(例えば、遠位結腸)に投与される組換えGDNFの投与が、腸のニューロパチー(例えば、HSCRなどのENS欠損)の治療、すなわち、ヒト患者における腸のニューロパチーの病理学的特徴のうちの1つ以上の改善のために使用することができる証拠を提供する。
【0024】
したがって、第1の態様では、本開示は、腸のニューロパチー(例えば、ヒルシュスプルング病(HSCR)または腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域における腸の神経新生を誘発するための方法であって、方法が、有効用量のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を、対象の遠位結腸に投与することを含む、方法を提供する。
【0025】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸の運動性および/または上皮バリアを回復させるための方法であって、方法が、有効用量のGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を、対象の遠位結腸に投与することを含む、方法を提供する。
【0026】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域において腸の神経新生を誘発するための、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物の使用であって、組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、使用を提供する。
【0027】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸の運動性を回復させるための、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物の使用であって、組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、使用を提供する。
【0028】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域において腸の神経新生を誘発するための医薬品を製造するための、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物の使用であって、医薬品が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、使用を提供する。
【0029】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸の運動性を回復させるための医薬品を製造するための、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物の使用であって、医薬品が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、使用を提供する。
【0030】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象の遠位結腸の無神経節域または神経節細胞僅少域において腸の神経新生を誘発するための薬学的組成物であって、組成物が、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含み、薬学的組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、薬学的組成物を提供する。
【0031】
本開示はまた、腸のニューロパチー(例えば、HSCRまたは腸管神経節細胞僅少症)を患っているヒト対象における遠位結腸の運動性を回復させるための薬学的組成物であって、組成物が、ヒトGDNFポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含み、薬学的組成物が、対象の遠位結腸への投与のためのものである、薬学的組成物を提供する。
【0032】
本明細書で使用される「遠位結腸」という用語は、結腸の最後の3つの部分、すなわち、下行結腸、S字結腸、および直腸を指す。一実施形態では、薬学的組成物は、直腸および/またはS字結腸に投与されるか、または直腸および/またはS字結腸への投与のためのものである。一実施形態では、薬学的組成物は、S字結腸の最後の部分および直腸の始まりを含む直腸S字領域に投与されるか、または直腸S字領域への投与のためのものである。当業者は、薬学的組成物が、遠位結腸に直接投与され得るか、または遠位結腸から離れた部位であるが、薬学的組成物(およびより具体的には、ヒトGDNFポリペプチド)の遠位結腸への送達を提供する好適な手段を使用して投与され得ることを理解するであろう。例えば、薬学的組成物は、遠位結腸の条件(例えば、pH、酵素環境、細菌環境など)下で特異的に分解されるコーティングを含み得、したがって、薬学的組成物は、胃-腸管系の別の領域に投与され得るが、薬学的組成物が結腸、より具体的には遠位結腸に達した場合にのみ、ヒトGDNFポリペプチドは放出されるであろう。結腸特異的薬物送達のためのアプローチは、当該技術分野で周知であり(例えば、Philip et al.,Oman Med J.2010 Apr;25(2):79-87、Lee et al.,Pharmaceutics.2020 Jan;12(1):68を参照されたい)、pH依存性の系(例えば、pH依存性ポリマーを使用する)、受容体によって媒介される系、磁気駆動系、遅延または時間依存性の系、微生物が引き起こす薬物送達系(例えば、グルコロニダーゼ(glucoronidase)、キシロシダーゼ、アラビノシダーゼ、ガラクトシダーゼなどの結腸微生物叢によって産生される酵素によって分解され得る糖に基づくポリマーを含む)、圧力制御結腸送達カプセル(結腸で遭遇するより高い圧力によって誘発される薬物放出)、浸透圧制御薬物送達、ならびにこれらのアプローチの任意の組み合わせ(例えば、pH依存性および微生物が引き起こす薬物送達を組み合わせたアプローチを使用する、結腸標的送達系(CODESTM))が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「腸のニューロパチー」という用語は、ENSの異常発達、例えば、ニューロンの数の異常(神経節細胞僅少症、無神経節症)、および/またはニューロンの分化異常を含む、ENSにおける異常に関連する疾患を指す。腸のニューロパチーの例としては、HSCRおよび腸管神経節細胞僅少症などの腸の神経節細胞異常が挙げられる。一実施形態では、腸のニューロパチーは、HSCRである。別の実施形態では、腸のニューロパチーは、腸管神経節細胞僅少症である。
【0034】
本明細書で使用される「腸の神経新生を誘発する」という表現は、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物での治療前と比較した、腸のニューロンおよび/または腸のグリア細胞の産生の増加を指す。腸の神経系は、腸の一次求心性ニューロン(enteric primary afferent neuron)(EPAN)、興奮性輪走筋運動ニューロン、阻害性輪走筋運動ニューロン、縦走筋運動ニューロン、上行性介在ニューロン、下行性介在ニューロン、分泌運動および血管運動ニューロン、ならびに腸管遠心性(intestinofugal)ニューロンを含む様々なタイプのニューロン、ならびにニューロンに構造的支持を提供し、ニューロンの維持、生存、および機能に寄与する腸のグリア細胞(EGC)を含む(Costa et al.,Gut 2000;(Suppl IV)47:iv15-iv19、De Giorgio et al.,American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology,Vol.303,No.8:G887-G893,2012)。
【0035】
これらの細胞タイプのうちの1つ以上の産生は、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用によって誘発され得る。一実施形態では、EGC、好ましくはSox10発現EGCの産生は、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用によって誘発される。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用は、患者の結腸(例えば、遠位結腸)における腸のニューロン/グリア細胞比を回復させる。さらなる実施形態では、患者の結腸(例えば、遠位結腸)における腸のニューロン/グリア細胞比は、少なくとも0.5、例えば、0.5~1.5である。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用は、患者の結腸(例えば、遠位結腸)における一酸化窒素作動性(nNOS+)およびコリン作動性(ChAT+)ニューロンの割合を回復させる。
【0036】
別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用は、結腸(例えば、遠位結腸)における炎症細胞または免疫細胞(例えば、好中球)の浸潤を低減する。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドを含む組成物の投与/使用は、結腸(例えば、遠位結腸)における免疫細胞の割合を(部分的にまたは完全に)回復させる。
【0037】
本明細書で使用される「ヒトGDNFポリペプチド」という用語は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質、または天然成熟ヒトGDNFタンパク質の生物学的活性、例えば、GDNF受容体(特に、「トランスフェクション中に再配列した」(RET)プロトがん遺伝子および/またはニューロン細胞接着分子(NCAM)受容体)に結合し、GDNF受容体(例えば、RETおよび/もしくはNCAM)を発現する細胞においてシグナルを引き起こす能力を保持する、機能的バリアントもしくはその断片を指す。天然ヒトGDNFタンパク質のアミノ酸配列(アイソフォーム1、カノニカル配列)は、
図17A(配列番号1)に示され、成熟タンパク質(残基78~211)に対応する配列は太字で強調表示されている。GDNF前駆体タンパク質は、ホモ二量体として存在する成熟分泌型へと処理される。各GDNFモノマーは、鎖間ジスルフィド架橋に使用されるCys-101、およびシステイン-ノット構成として知られる分子間環形成に関与する他のものを含む、7つの保存的システイン残基を含有する。
【0038】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、組換えヒトGDNFポリペプチドである。タンパク質またはポリペプチドに言及する場合、「組換え」という用語は、天然源(例えば、生物学的試料)から単離されていない、例えば、分子生物学的技法の手段によって作製される組換え核酸構築物から発現する、タンパク質またはポリペプチド分子を指す。したがって、核酸構築物を「組換え」と称することは、核酸分子が遺伝子工学を使用して、すなわちヒト介入によって操作されていることを示す。組換え核酸構築物は、例えば、形質転換(例えば、形質導入またはトランスフェクション)によって宿主細胞に導入され得る。
【0039】
天然成熟ヒトGDNFタンパク質の機能的バリアントまたは断片は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加を含み得、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものよりも低いか、同等であるか、または高い生物学的活性を有し得る。一実施形態では、機能的バリアントまたは断片は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものと同等である(例えば、90%~110%)か、またはより高い(例えば、110%超)の活性を有する。一実施形態では、バリアントは、1つ以上の保存的置換を含む。保存的アミノ酸置換は、当該技術分野において既知であり、ある特定の物理的および/または化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸と交換される、アミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性アミノ酸に置換された酸性アミノ酸(例えば、Asp-Gluまたはその逆)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、別の塩基性アミノ酸に置換された塩基性アミノ酸(Lys、Argなど)、極性側鎖を有する別のアミノ酸に置換された極性側鎖を有するアミノ酸(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)であり得る。別の実施形態では、バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する、天然GDNFタンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、天然成熟ヒトGDNFタンパク質のものと比較して、バリアントの活性を向上する。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、RET受容体に結合する能力を有する。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、NCAM受容体に結合する能力を有する。
【0040】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、成熟ヒト天然GDNFタンパク質からの少なくとも10、15、または20個のアミノ酸(例えば、連続アミノ酸)を含む。一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、配列番号1の残基153~167に対応し、NCAM受容体へのヒトGDNFの推定される結合ドメインである、配列ETTYDKILKNLSRNR(グリアフィン(gliafin)、配列番号3)を含む(Nielsen et al.,J Neurosci.2009 Sep 9;29(36):11360-11376を参照されたい)。他の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、成熟ヒト天然GDNFタンパク質からの少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100個のアミノ酸(例えば、連続アミノ酸)を含む。
【0041】
一実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図178Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも50%、60%、または70%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ヒトGDNFポリペプチドは、
図17Aに示される配列(配列番号1)の残基78~211を含むか、またはそれらからなる。「同一性」は、2つのポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、整列させた配列における各位置を比較することによって決定することができる。同一性パーセントを決定する方法は、当該技術分野において既知であり、アミノ酸配列を整列させ、EMBOSS Needle、ClustalW、SIM、DIALIGNなどを含む同一性のパーセントを決定するためのいくつかのツールおよびプログラムが利用可能である。本明細書で使用される場合、特定の対象配列またはその特定の部分に関する同一性の所与のパーセンテージは、Smith Watermanアルゴリズム(Smith&Waterman,J.Mol.Biol.147:195-7(1981))によって、類似性測定値としてBLOSUM置換マトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-9(1992))を使用して生成される最大パーセンテージ配列同一性を達成するために必要であれば、配列を整列させ、ギャップを導入した後、対象配列(またはその特定の部分)におけるアミノ酸と同一の候補誘発体配列におけるアミノ酸のパーセンテージとして定義され得る。「同一性値%」は、一致する同一のアミノ酸の数を、同一性パーセントが報告される配列長によって除算することによって決定される。
【0042】
ヒトGDNFポリペプチドの共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。例えば、ヒトGDNFポリペプチドの天然グリコシル化パターンは、修飾され得(Beck et al.,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501,2008、Walsh,Drug Discov.Today 15:773-780,2010)、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、または同第4,179,337号に記載の様式で、ヒトGDNFポリペプチドを、多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つに連結し得る。ヒトGDNFポリペプチドは、プロテアーゼ耐性、血漿タンパク質結合、血漿半減期の増加、組織もしくは細胞内への透過などの、ポリペプチドに追加の生物学的特性を付与する1つ以上の修飾を含み得る。そのような修飾としては、例えば、脂肪酸(例えばC6-C18)などのポリペプチドへの分子/部分の共有結合、アルブミンなどのタンパク質の結合(例えば、米国特許第7,268,113号を参照されたい)、糖/多糖(グリコシル化)、ビオチン化またはPEG化(例えば、米国特許第7,256,258号および同第6,528,485号を参照されたい)が挙げられる。ヒトGDNFポリペプチドはまた、例えば、ヒトGDNFポリペプチドをオリゴマー化ドメインまたはオリゴマー化され得る分子(例えば、ストレプトアビジン上の4つの結合部位に結合し得るビオチン)に融合することによって、その多量体化またはオリゴマー化(例えば、四量体化)を誘発するための部分にコンジュゲートされ得る。ヒトGDNFポリペプチドはまた、例えば、遠位結腸からの細胞上に存在するマーカーに結合する抗体、抗体断片、またはリガンドを使用して、GDNFポリペプチドを遠位結腸または遠位結腸の特定の細胞(例えば、シュワン細胞および/またはその前駆体)に標的化するであろう部分にコンジュゲートされ得る。
【0043】
ヒトGDNFポリペプチドはまた、1つ以上の治療剤または活性剤(例えば、薬物、または融合ポリペプチドを形成するための別のポリペプチド)にコンジュゲートされ得る。Hunter et al.(1962)Nature,144:945、David et al.(1974)Biochemistry,13:1014、Pain et al.(1981)J.Immunol.Meth.,40:219、Nygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)、およびHermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoによって記載されているそれらの方法を含む、ヒトGDNFポリペプチドを別の部分(例えば、活性剤)にコンジュゲートするための当該技術分野で既知の任意の方法が用いられ得る。
【0044】
一実施形態では、ヒト対象に投与されるか、またはヒト対象に投与するための組換えGDNFポリペプチドの有効用量は、仔マウスにおける約5μg~約20μgの用量に相当し、これは、本明細書に記載の研究において有効であることが示される範囲である。組換えGDNF溶液を含む10μlの浣腸を、仔マウスに投与した。10μlは、仔の遠位結腸および直腸を満たすのに必要な体積に相当すると推定される。したがって、マウス(仔)における5μgのGDNFの投与は、0.5μg/μlのGDNF溶液を10μl投与することによって達成され、マウス(仔)における20μgのGDNFの投与は、2.0μg/μlのGDNF溶液を10μl投与することによって達成される。ヒト乳児の遠位結腸および直腸を満たすために必要な体積は、以下の式を使用して推定することができる:10ml×乳児の体重(kg)。したがって、マウスにおける5μgのGDNFの用量は、ヒト乳児におけるkg当たり約5mgに相当し、マウスにおける20μgのGDNFの用量は、ヒト乳児におけるkg当たり約20mgに相当する。したがって、一実施形態では、ヒト対象に投与されるか、またはヒト対象に投与するための組換えGDNFポリペプチドの有効用量は、kg当たり約5mg~約20mg、好ましくはkg当たり約10mg~約15mgである。一実施形態では、組換えGDNFポリペプチドは、0.5mg/ml~2mg/mlの組成物(溶液またはゲル)を通じて投与されるか、またはそのような投与のためのものである。
【0045】
直腸/遠位結腸投与のための製剤は、坐剤として提示されてもよく、坐剤は、対象組成物を、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、またはサリチル酸塩を含む1つ以上の好適な非刺激性担体と混合することによって調製され得、非刺激性担体は、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、適切な体腔内で融解し、GDNFを含む組成物を放出するであろう。より近年では、液体坐薬が開発されている。液体坐剤は、典型的には、ポロキサマー、Carbopol(登録商標)(架橋ポリアクリル酸ポリマー)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロースなどの感熱性および/または粘膜付着性ポリマーを含有する。
【0046】
直腸/遠位結腸投与のための製剤はまた、直腸および遠位結腸に注入される浣腸、液体薬物溶液、懸濁液、または乳剤として提示され得る。GDNFポリペプチドが希釈される液体は、例えば、水または生理食塩水溶液であり得る。
【0047】
直腸/遠位結腸投与のための製剤はまた、直腸泡沫またはゲルの形態であり得る。直腸ゲルは、粘性の一貫性を作り出すためにポリマーネットワーク内に捕捉された溶媒を含有する半固体製剤である。ゲルの粘度は、共溶媒(例えば、グリセリンおよびプロピレングリコール)および電解質の添加によって変更することができる。泡沫は、全体を通じて分布する、発泡剤を含有する親水性液体連続相および気体分散相を含む。直腸投与に続いて、それらは、粘膜表面上で泡沫状態から液体または半固体状態に移行する。発泡剤は、典型的には、泡沫の生成および安定化に重要な両親媒性物質である。分子は、水相に可溶性である親水性構成成分と、ミセルを形成して水相との接触を最小限に抑える疎水性構成成分とを含有する。
【0048】
直腸/遠位結腸への投与は、医薬品または液体の直腸投与または遠位結腸壁への注入のために設計された現在利用可能な内視鏡または専用カテーテルを使用して実施され得、繰り返し使用するために直腸内に安全に配置され、快適に保持され得る。
【0049】
GDNFポリペプチドを含む組成物は、任意の好適な投薬レジメンに従って、例えば、1日4回、1日2回、1日1回、週2回、週1回など投与され得る。治療は、所望の効果を達成するために、任意の好適な期間、例えば、1週間、2週間、3週間以上の間実施され得る。
【0050】
一実施形態では、上述の治療は、1つを超える活性剤/治療剤(すなわち組み合わせ)の使用/投与を含み、そのうちの1つは、GDNFポリペプチドを含む上述の薬学的組成物である。治療剤の組み合わせおよび/または組成物は、任意の従来の剤形で投与され得るか、または(例えば、連続的に、異なる時間に同時に)同時投与され得る。本開示の文脈における同時投与は、改善された臨床転帰を達成するように調整された治療の過程における、1つを超える療法の使用を指す。本明細書に記載のGDNFポリペプチドを含む薬学的組成物は、他の療法または薬物、例えば、鎮痛剤または抗炎症剤と組み合わせて使用され得る。本明細書に記載のGDNFポリペプチドを含む薬学的組成物はまた、神経栄養分子などの、ENS前駆体増殖を刺激する薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0051】
一実施形態では、GDNFポリペプチドを含む組成物での上述の治療は、手術(例えば、Swenson、Soave、またはDuhamelタイプのプルスルー手術)と組み合わせて実施され得る。特にHSCRを有する新生児の場合、臨床医は、多くの場合、手術前に毎日の浣腸治療の試験を試みることを推奨する。組換えGDNFを浣腸に添加することによって、HSCRを有する小児が手術前の浣腸療法に良好に応答する可能性が増加し得る。したがって、一実施形態では、GDNFポリペプチドを含む組成物での上述の治療は、プルスルー手術前に実施される。生理食塩水浣腸はまた、一般的に、プルスルー手術後のHSCRを有する小児に使用される。HSCR患者の手術後の問題は、遠位腸、いわゆる「通過部」に残留する神経節細胞僅少症に少なくとも部分的に起因すると考えられる。したがって、組換えGDNFを浣腸に添加することは、手術後に残留する遠位腸における神経節細胞僅少症を補正するのに有用であり得る。したがって、別の実施形態では、GDNFポリペプチドを含む組成物での上述の治療は、プルスルー手術後に実施される。
【0052】
一実施形態では、GDNFポリペプチドを含む組成物での上述の治療は、HSCRの治療のために検討されているENS幹細胞に基づく療法と組み合わせて実施される。GDNFは、生着を促進するためのこれらの療法の有用な補佐役となり得る。
【0053】
HSCRは、臨床的に、短域型(S-HSCR)および長域型(L-HSCR)に細分される。症例のうちの>80%で発生するS-HSCRは、直腸およびS字結腸にENSが存在しないことを意味する。L-HSCRは、遠位腸のより長い領域が無神経節であることを意味する。本明細書に記載の方法/使用は、S-HSCRまたはL-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。一実施形態では、本明細書に記載の方法/使用は、S-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。一実施形態では、本明細書に記載の方法/使用は、L-HSCRを患っているヒト患者の治療のためのものである。
【0054】
HSCR患者は、成人患者または小児患者であり得る。一実施形態では、HSCR患者は、小児患者、好ましくは、5、4、3、または2歳未満の患者、より好ましくは、1歳未満または生後6ヶ月未満の患者である。別の実施形態では、患者は、男性である。
【0055】
HSCRは、RET、EDNRB、SOX10、PHOX2B、およびZFHX1Bの変異、ならびにダウン症候群または21トリソミー(コラーゲンVI関連HSCR)に関連する。また、5対1ほどの高さの男女比で、有意な性差が存在する。一実施形態では、HSCRは、コラーゲンVI関連HSCRである。別の実施形態では、HSCRは、EDNRB変異関連HSCRである。一実施形態では、HSCRは、男性に偏在するHSCRである。一実施形態では、HSCRは、RET変異関連HSCR、例えば、遠位結腸からの細胞におけるRET発現および/または活性を低減する変異に関連するHSCRである。変異は、RETまたはRETシグナル伝達に関与するタンパク質における変異であり得る。一実施形態では、変異は、RETタンパク質における変異である。染色体10q11.2上のRET遺伝子の変異は、HSCRの家族性症例のうちの50%および散発性症例のうちの15~20%を占めることが示されており、そのほとんど(約75%)は、L-HSCRに関連していた。
【0056】
別の実施形態では、HSCRは、RET変異関連HSCRではない。
【0057】
発明を実行するためのモード
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに詳細に例示される。
【0058】
実施例1:材料および方法
マウス。ホルスタイン(Tg[Sox3-GFP,Tyr]HolNpln)、TashT(Tg[SRY-YFP,Tyr]TashTNpln)、およびG4-RFP(Gata4p[5kb]-RFP)株は、以前記載したとおり(すべてFVB/N遺伝バックグラウンドで維持)(39、40、54)であった一方で、Piebald-lethal(Ednrbs-l;JAXストック#000308;C3H/HeJ-C57BL/6混合バックグラウンド)およびDhh-Cre(Tg[Dhh-cre]1Mejr;JAXストック#012929;FVB/Nバックグラウンド)は、The Jackson Laboratoryから得た。使用した他のマウス株は、R26[Floxed Stop]YFP(Gt[ROSA]26Sortm1(EYFP)Cos;F.Costantini(Columbia University、USA)によって提供され、FVB/Nバックグラウンドで維持)(80)であった。
【0059】
すべての浣腸治療について、変異仔マウスを、色素沈着に基づく遺伝子型決定を介して、P3で同定した。別段指定されない限り(
図1を参照されたい)、PBS中に希釈した組換えヒト成熟GDNF(Peprotechカタログ#450-10)の1μg/μl溶液からなる10μlの浣腸をP4~P8の間、毎日投与した。いくつかの実験に使用した臨床グレードGDNF(Medgenesis Therapeutix Inc.、Canada)および以前記載した6XHisタグ付きバージョン(53)は、同様の効率を有した。他の試験した分子(10μlの浣腸中1μg/μl溶液)は、セロトニン受容体(5-HT4R)アゴニストRS67506(R&D Systems、カタログ#0990)、ノギン(Sigma、カタログ#SRP4675)、エンドセリン-3(Sigma、カタログ#E9137)、セロトニン(Sigma、カタログ#H9523)、およびL-アスコルビン酸(Sigma、カタログ#A4403)を含んでいた。マイクロピペットに取り付けた24ゲージの強制飼養ニードル(Fine Science Tools、Canada)を使用して、浣腸を投与した。強制飼養ニードルの頭部を、(Vaseline(商標)で予め潤滑させた)肛門のすぐ向こうの直腸に導入し、数秒かけて浣腸を注入した。次いで、仔を母親の元へ戻し、組織分析のためにP20で犠牲にしたか、または生存率を追跡するために毎日チェックした。
【0060】
EdU組み込みアッセイのために、仔マウスに、10mMのEdU溶液(ThermoFisher Scientific、カタログ#C10337)の10μlの腹腔内注射を5日間(P4~P8)、GDNF浣腸治療中に1日1回与えた。
【0061】
組織処理。標識されるすべての腸組織を、腸間膜に沿って縦方向に切断し、PBSで洗浄し、Sylgardでコーティングしたペトリ皿上にピン留めし、4%のPFAで一晩、4℃で固定し、最後に顕微解剖して、(粘膜下のニューロンの神経節を含有する)粘膜下層/粘膜層から(腸筋層間のニューロンの神経節を含有する)縦走筋/輪走筋を分離した。生体組織のエクスビボ分析を伴う実験のために、縦走筋/輪走筋および粘膜下層/粘膜層を、同様に顕微解剖したが、固定しなかった。代わりに、この手順を、氷冷した酸素処理したKreb溶液(0.187g/LのNaH2PO4-2H2O、6.84g/LのNaCl、0.35g/LのKCl、2.10g/LのNaHCO3、1.98g/Lのグルコース、0.368g/LのCaCl2-2H2O、0.244g/LのMgCl2-6H2O)中で実施した。組織学的分析のために、PFAで固定した腸組織を上記のように調製したが、さらなる顕微解剖を行わず、次いで固定した完全な厚さの腸域をパラフィンに埋め込み、10μmで横断方向に切断した。
【0062】
組織標識化および撮像。免疫蛍光染色のために、顕微解剖した組織全体を、遮断溶液(PBS中10%のFBSおよび1%のTriton(商標)X-100)中で2時間透過させ、その後、いずれもすべてのステップ間で組織を洗浄するためにも使用した遮断溶液中に希釈した、特定の一次抗体(4℃で一晩)および関連する二次抗体(室温で2時間)とともに順次インキュベートした。すべての抗体および希釈倍率を表1に列挙する。Invitrogen Click-iT EdU撮像キット(ThermoFisher Scientific、カタログ#C10337)を製造業者の指示に従って使用して、EdUを検出した。組織学的分析のために、完全な厚さの腸組織の断面を、以前に記載したように、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した(83)。
【表1】
【0063】
H&Eで染色した切片を除いて、すべての免疫蛍光画像は、共焦点顕微鏡(Nikon A1RまたはZeiss710のいずれか)に20倍または60倍の対物レンズのいずれかを用いて取得したが、H&Eで染色した切片は、Leica DM2000顕微鏡(Leica Microsystems Canada)に取り付けたInfinity-2カメラ(Lumenera Corporation)を使用して10倍の対物レンズを用いて撮像した。細胞計数については「マルチポイント」機能、表面積の計算については「多角形選択」機能を使用して、画像分析をImageJで実施した。
【0064】
結腸の運動性のインビボおよびエクスビボ分析。P20マウスにおける遠位結腸の運動性のインビボ分析は、ビーズ潜時試験を使用して実施した。マウスに、2%のイソフルランで麻酔をかけ、2mmのガラスビーズ(Sigma、カタログ#1.04014)を、プローブを用いて肛門から0.5cmの距離にわたって遠位結腸に挿入した。次いで、各マウスを、食物および水を与えずにマウスのケージ内に単離し、ガラスビーズを排出するのに必要な時間を監視し、これを遠位結腸通過についての代理物とした。ビーズを排出する最大時間を30分とした。
【0065】
結腸の運動性のエクスビボ分析のために、P20マウスの最遠位結腸(肛門から1cm)からの生体筋肉のストリップを上記のように調製し、酸素処理したKreb溶液を充填したSchuler臓器浴(Harvard apparatus)に縦方向で付着させた。最初に、60分間2gの張力の負荷を事前にかけて筋肉ストリップを延伸させ、次いで、BIOPAC student Lab 4.0.2ソフトウェア(BIOPAC Systems Inc.)を備えたコンピュータに取り付けたミオグラフ(Narco Biosystems Inc.、モデルF-60)を用いて、縦走筋の収縮/弛緩を連続的に記録した。電極に接続した電圧刺激装置(BIOPAC Systems Inc.、モデルBSL MP36/35)を用いて、筋肉を直接活性化することなく腸のニューロンを活性化するパラメータ(12V、20Hz、10秒の連続持続時間、および300μsの刺激パルス持続時間)を使用して、電界刺激(EFS)を適用した。この手順を3回繰り返し、刺激の間に10分間のウォッシュアウト期間を設けた。EFSによって誘発された収縮性応答の一酸化窒素作動性およびコリン作動性構成成分を特徴評価するために、N-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME;Sigma、カタログ#N5751)およびアトロピン(Sigma、カタログ#A01132)を、それぞれ0.5μMおよび1μMの最終濃度でKrebs溶液に添加した。各EFSによって誘発された応答中の曲線下面積(AUC)を測定し、データをΔAUC(刺激後に20秒間測定したAUCと刺激前に20秒間測定したAUCとの間の差に相当する)で表した。
【0066】
傍細胞透過性のエクスビボ分析。P20マウスの最遠位結腸(肛門から1cm)からの生体粘膜域を上記のように調製し、0.5cm2の露出表面積でUssingチャンバ(Warner Instruments、Model U-9926)に取り付けた。各チャンバは、5mlのDMEM/F12培地(Wisent、カタログ#319-085-CL)を含有し、これを37℃で維持し、連続的に酸素処理した(95%のO2/5%のCO2)。30分間の平衡期間の後、200μlの上部培地を、200μlのフルオレセインイソチオシアネートコンジュゲートデキストラン4kDaの1mg/ml溶液(FD4;Sigma、カタログ#60842-46-8)に置き換えた。次いで、管腔表面からの傍細胞輸送を反映する、150μlの側底アリコートの蛍光強度を、蛍光計(TECAN、Model Infinite M1000)を使用して3時間の期間にわたって30分ごとに測定した。蛍光強度は、標準曲線と比較することによって、最終的にFD4の量に変換し、3時間の期間の平均値を使用して、傍細胞透過性を計算し、これを、分当たりの粘膜表面積当たりのngでのFD4(ng/cm2/分)で表した。
【0067】
マイクロバイオーム分析。便単離、マイクロバイオーム配列決定、およびデータ分析を、以前記載したように実施した(38)。簡単に述べると、P20でマウスを犠牲にし、それらの糞を結腸から直接収集した(マウス当たり3個の糞)。次いで、細菌DNAを、QIAamp(登録商標)Fast DNA Stool Mini Kit(QIAGEN、カタログ#51604)を使用して抽出し、16S rRNA遺伝子のV5-V6領域を、以前記載したバーコード化プライマーの集合体でPCR増幅させた(84)。Illumina MiSeqシーケンサーを用いて生成した未修正の配列を対合させ、MOTHURパイプライン(85)を使用して処理し、その後BIOMパッケージ(86)を使用して、相対的な分類群の存在量およびベータ多様性のグラフを生成するために、R(87)にバイオムファイルを転写した。
【0068】
ウエスタンブロット分析。P8またはP20マウスからの臓器を計量し、100mgの組織ごとに1mLを使用して、RIPA緩衝液(25mMのTris-HCL[pH7.6]、150mMの塩化ナトリウム、1%のNonidet-P-40、1%のデオキシコール酸ナトリウム、0,1%のドデシル硫酸ナトリウム、1倍のRoche Completeプロテアーゼ阻害剤を含有)に溶解させた。次いで、試料を氷上で超音波処理し、4℃、14,000rpmで15分間遠心分離し、ウエスタンブロット分析のために上清を保存した。等体積の試料を、18%のドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)中での電気泳動によって分離し、Immun-blot(登録商標)PVDF膜(Bio-Rad、カタログ(1620177)に移した。その後、膜を遮断溶液(TBS中5%の脱脂乳および0.1%のTween(登録商標)20)中でインキュベートし、続いて、すべて遮断溶液中に希釈した、マウス抗GDNF(Santa Cruz Biotechnology、カタログ#sc-13147、1:500希釈倍率)またはウサギ抗αチューブリン(Abcam、カタログ#ab176560、1:70,000希釈倍率)一次抗体のいずれか、次いで関連するホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした。各インキュベーションを室温で60分間行い、各回に遮断溶液で3回洗浄することによって散在させた。最終的に、Immobilonウエスタン化学発光HRP基質(Millipore Sigma、カタログ#WBKLS0050)およびFusion FX撮像システム(Vilber)を使用して、タンパク質を可視化した。
【0069】
エクスビボタイムラプス撮像およびマウス無神経節結腸組織の培養。タイムラプス撮像のために、P4HolTg/Tg;G4-RFP二重トランスジェニック仔からの遠位結腸の最後の1cmからの生体筋肉のストリップを上記のように調製し、Sylgardでコーティングした35mmのibidi μ皿(ibidi、カタログ(81156)にピン留めした。筋肉ストリップを、標準培養条件(37℃、5%のCO2)下の5μg/mlのGDNFを含むかまたは含まない、10%のFBSおよび100IU/mlの抗生物質-抗真菌剤を補充した、DMEM/F12培地(Wisent、カタログ#319-085-CL)中に懸濁させて培養した。培養の72時間後、各ペトリ皿を、同じ培養条件下で10時間、顕微鏡インキュベーションチャンバ(Okolab)に配置し、以前記載したようにNikon A1R共焦点ユニットで20倍の対物レンズを使用して、10分ごとにRFPで標識した外因性神経およびSCPの画像スタック(250μm厚)を取得した(39)。
【0070】
神経新生のエクスビボでの誘発のために、P4HolTg/Tg仔からの遠位結腸の最後の1cmからの生体筋肉のストリップを上記のように調製し、培養し、顕著な例外は、0.5μMのEdUの存在下で、より長期間培養を行ったことである。96時間の培養の後、組織をPFAで固定し、免疫蛍光およびEdU標識化のために処理した。
【0071】
ヒト無神経節結腸組織の培養。S字結腸のヒト試料は、組織病理学的分析によって確認して、無神経節部のSwensonタイプの外科的切除を受けた12人のHSCR患者から得た。9人の患者(7人の男児および2人の女児、手術時に生後28~1638日)を、Centre Hospitalier Universitaire Sainte-Justine(Montreal,Canada)で採用し、3人の患者(2人の男児および1人の女児、手術時に生後300~1177日)を、Children’s Hospital of Philadelphiaで採用した。手術の後、氷冷したKrebs溶液またはBelzer UW Cold Storage Solution(Bridge to Life Ltd.)に完全な厚さの結腸組織を配置し、直ちに関連する研究室に搬送した。次いで、生体筋肉のストリップを、上記のように調製し、0.5cm×0.5cmのより小さな切片に切断した。これらの小片のうちの少なくとも1つを、直ちに固定し、免疫蛍光を介した無神経節症の検証のために一旦保持し、他のものは、マウス組織における神経新生を誘発するために、上記のように96時間培養した。2人の患者(手術時に生後86~1638日)からの試料を、同じ条件下で7日間さらに培養した。培養期間の終わりに、すべての組織をPFAで固定し、免疫蛍光およびEdU標識化のために処理した。
【0072】
P20結腸における免疫細胞集団のプロファイリング。ホルスタインマウスを、浣腸によってGDNFで治療(10μgのGDNF(1μg/μlを10μl)を、P4~P8の間5日連続の毎日の投与)したか、またはしなかった。P20に、GDNFで治療されたホルスタインおよび対照(未治療ホルスタインおよびWT)マウスの結腸を顕微解剖し、冷たいRPMI培地中で洗浄して便を除去し、小片に切断し、機械的に分離し、濾過した(40μm)。次いで、分離した細胞を遠心分離によって回収し、2%のFBSを含む1mlの氷冷RPMIに再懸濁させ、血球計で計数した。すべての実験群および対照群について、1×106の分離した細胞を、リンパ球または骨髄系細胞集団のいずれかに特異的な14個の蛍光標識した抗体のカクテルとともに、氷上で1時間インキュベートした。その後、LSR Fortessaサイトメータ(BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(FlowJo LLC)を使用して定量プロファイリングを実施した。
【0073】
統計。最低3つの生物学的複製で、すべての実験を実施した。関連する場合、独立した複製の正確な数(n)およびP値を計算するために使用した統計検定は、図および/または凡例に含まれる。P値は、Rソフトウェア(The R Foundation for Statistical Computing、Vienna,Austria)で分析したマイクロバイオームデータを除いて、GraphPad Prism6を使用して決定した。
【0074】
実施例2:短域HSCRの3つのマウスモデルにおいて、GDNF浣腸は、無神経節症を救済する
短域HSCRの3つのマウスモデルを使用して、若いマウスにおけるGDNF浣腸が、腸のニューロン数を向上し、遠位無神経節の腸における機能を回復させることができるかどうかをまず試験した。選択した株は、Holstein(Hol
Tg/Tg;Trisomy21[コラーゲンVI]関連HSCRのモデル)(39)、TashT(TashT
Tg/Tg;男性に偏在するHSCRのモデル)(40)、およびPiebald-lethal(Ednrb
s-l//s-l;EDNRB変異関連HSCRのモデル)(41)であった。まず、結腸全体を満たすために必要な浣腸体積、GDNFホモ二量体の濃度(30kDa)、治療時間枠、ならびに療法の持続時間および頻度を、Hol
Tg/Tg仔で決定した(
図1A~D)。100μgのGDNFの投与によって、生理食塩水対照と比較して生存率が低減することが観察され(
図1C)、そのような用量が毒性であるか、または疾患を悪化させることが示唆された。1μgまたは25μgのGDNF投与は、生存率に有意な影響を有さず、10または15μgが、生存率の改善に最適であることが示された。注目すべきことに、選択した治療(すなわち、PBS中10μgのGDNFを10μlの浣腸として、生後日数[P]4~P8の間に5日連続の毎日の投与)は、対照Hol
Tg/Tgマウスの最大生存年齢であるP28で、約半数のHol
Tg/Tgマウスにおいて、巨大結腸症による死亡を防止した(
図2A)。P28まで生存したほとんどの動物は、GDNF治療後に成人年齢に達し、評価したマウスは、繁殖することができた(2つの試験した繁殖対は、繁殖力があった)。P56(成人参照年齢)を超えて生存することが可能であった数匹のオスは、最終的には、P68、P97、P101、およびP180で巨大結腸症によって死亡し、メスは、P63で巨大結腸症によって、またはP138およびP250で難産によってのいずれかで最終的に死亡した。重要なことに、同じGDNF浣腸治療はまた、Ednrb
s-l//s-lマウス(
図2B)のうちの60%超、およびすべてのオスTashT
Tg/Tg仔(
図2C)の早期死亡を防止した。GDNFで治療された9匹のオスTashT
Tg/Tgマウスは、1年以上にわたって飼育され、腫瘍または他の有害作用の兆候がなく健康に見えた。生理食塩水浣腸は、HSCRを有する小児における腸炎を低減するので、Hol
Tg/Tg、Ednrb
s-l/s-l、およびTashT
Tg/Tgマウスの個別の群を、浣腸を介してPBSで治療したが、PBS単独は生存率を向上しなかった(
図2A~C)。PBS中の、ノギンホモ二量体(46kDa)、エンドセリン-3モノマー(26kDa)、またはセロトニン受容体(5-HT4R)アゴニストRS67506(454.41g/mol)(10μlのPBS中各々10μg)を使用したHol
Tg/Tgマウスの浣腸治療も、平均寿命を増加させることができなかった(
図1E)。集約すると、GDNF浣腸は、ホルスタイン、TashT、またはPiebald-lethal変異に起因するHSCR様の遠位腸の無神経節症を有するマウスに有益であり得ることを、これらのデータは示唆している。
【0075】
明らかにGDNF応答性である変異マウス株において、GDNF浣腸に応答する変動性が観察された(
図2A~C)。標準的な餌をゲル食に置き換える(
図1F)こと、またはGDNFを、ビタミンC(44)、セロトニン(45)、もしくはエンドセリン-3(46)などのENS前駆体増殖を刺激することが示されている他の分子と組み合わせることのいずれかによって、GDNFで治療されたHol
Tg/Tg動物の全体的な生存率を増加させる試みは、成功しなかった(
図1G)。ゲル食は、対照Hol
Tg/Tgマウスの平均寿命を平均5日間延長したが、GDNF浣腸群における生存率をさらに増加させなかった(
図1F)。GDNF浣腸応答性は、GDNF治療を行わなかったHSCRマウスモデルにおいて平均寿命をも低減する腸の損傷または炎症にある程度依存する可能性がある(47)。
【0076】
GDNF浣腸がHSCRマウスモデルの生存率をどのように向上するのかを決定するために、遠位結腸無神経節症における生後の腸の神経新生によって生存率の向上が引き起こされたという仮説を試験した。Hol
Tg/Tgマウスは、概して、浣腸治療を行わずともP20の段階に達するので、P20動物を分析した(
図2A)。HuC/D
+腸筋層間のニューロンは、WT遠位結腸に豊富であり、Hol
Tg/Tg結腸の最後の1cmには存在しなかった(
図2D)。SOX10
+腸のグリアもまた、WT腸筋層間神経節内に豊富であった。対照的に、Hol
Tg/Tg遠位結腸では、主に、SOX10
+SCPが存在する厚い外因性神経線維(
図2D)内でSOX10
+細胞が見出された(29)。注目すべきことに、GDNFで治療されたHol
Tg/Tg動物からの遠位結腸は、輪走平滑筋と縦走平滑筋との間の神経節に組織化された多数のHuC/D
+ニューロンおよびSOX10
+グリアを有した(
図2D)。これらの腸筋層間神経節は、主に、SOX10
+細胞を有する外因性神経線維に隣接していた。GDNFによって誘発されたニューロンの神経節が、腸筋層間および粘膜下神経叢の両方で相互接続したネットワークを形成していることが、Tuj1標識化によってさらに明らかになった(
図3)。Hol
Tg/TgおよびオスTashT
Tg/Tgマウスの結腸全体における腸筋層間ニューロン密度の定量化は、GDNF効果が遠位結腸(すなわち、最終3cm)において最も顕著であり、近位結腸において効果が軽微であることを示した(
図2Dおよび5A~C)。GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスの中央結腸におけるニューロン密度の増加(
図2D)は、大神経節(すなわち、>50ニューロン)のより高い割合によって証明されるように、主に既存の腸筋層間神経節の拡大に起因していた(
図4A)。未治療のHol
Tg/Tgマウスには通常腸のニューロンがまったく無い場所である最遠位結腸において、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスは、WTマウスのものの40%である平均ニューロン密度を有した(5.2±2.2%対13.1±3.6%)(
図2D)。さらに、すべてのGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスは、分離時に遠位結腸にニューロンを有していたが、一部のマウスは、遠位結腸に非常に低いニューロン密度(2.3%以下)を有し、これらのマウスは、多くの場合巨大結腸症を有していた(
図1H)。注目すべきことに、GDNFで治療されたTashT
Tg/Tgオスでは、最遠位結腸におけるニューロン密度は、WTレベルの36%(4.7±3.8%対13.1±3.6%のニューロン密度)から108%(14.2±4.3%対13.1±3.6%のニューロン密度)に増加し(
図4B~C)、いくつかのモデルでは、GDNF浣腸によって正常な腸のニューロン数を完全に回復させることが可能であることを示唆している。
【0077】
重要なことに、P4~P8の5日間の治療中にGDNFがニューロンおよびグリア前駆体の増殖を誘発したことが、EdU標識化によって確認された。GDNF治療期間中に毎日EdU注射を受けたマウスからのP20Hol
Tg/Tg結腸の免疫蛍光染色によって、腸筋層間および粘膜下神経節の両方において、多くのEdU
+HuC/D
+(推定ニューロン)およびEdU
+SOX10
+(推定グリアまたはニューロン/グリア前駆体)が明らかになった(
図2E~Fおよび5A~C)。EdU
+細胞のパーセンテージは、神経節から神経節までかなり変動した(
図5C)。EdU
+ニューロンによるわずかのみの神経節が完全に存在し、そのような神経節は、常に非常に小さかった(すなわち、3つのニューロンで構成されていた)。集約すると、これらの結果は、GDNF浣腸が、遠位結腸における前駆体の増殖を誘発し、ニューロンおよびグリアマーカーを発現している新しい神経節に分裂細胞の一部がクラスター化することを示唆している。
【0078】
実施例3:GDNFによって誘発されたENSは、WTと形態学的および機能的に同様である
Hol
Tg/Tgモデルに焦点を当て、次に、遠位結腸におけるGDNFによって誘発されたENSが、P20でWTにどの程度類似するかを決定した。GDNFによって誘発された腸筋層間神経節(内の平均ニューロン対グリア比0.77±0.09ニューロン/グリア)は、WT(0.96±0.06ニューロン/グリア、P=0.16)と統計的に同様であった(
図6A)。ChAT
+(コリンアセチルトランスフェラーゼ)およびnNOS
+(ニューロン一酸化窒素合成酵素)ニューロンを含む、主要な腸筋層間ニューロンサブタイプの相対的な割合もまた、WTと非常に同様であった(
図6B~C)。さらに、TH
+(チロシンヒドロキシラーゼ)ドーパミン作動性ニューロン、CalR
+(カルレチニン)興奮性運動ニューロン、VIP
+(血管活性腸管ペプチド)阻害性運動ニューロン、およびSubP
+(物質P)興奮性運動ニューロンを含む、多くの他のニューロンのサブタイプが検出された(
図6C)。興味深いことに、Hol
Tg/Tgマウスの近位および中央結腸(
図7A~B)において、GDNF治療はまた、HSCRマウスモデルおよびヒト患者の両方において無神経節域の上流で観察される一酸化窒素作動性(増加)およびコリン作動性(減少)ニューロンサブタイプの不均衡を補正した(38、48~51)。
【0079】
P20のGDNFによって誘発された腸筋層間神経節の機能を評価するために、ビーズ潜時試験を使用して、インビボで結腸の運動性を分析した。対照Hol
Tg/Tgマウスは、30分間の観察期間中、直腸に挿入されたガラスビーズを排出しなかったが、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgのサブセットは、WTマウス(2~8分の範囲)よりも少し遅い10~21分でビーズを排出した(
図6D)。これらのGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスにおけるニューロン密度の分析によって、遠位結腸におけるビーズを排出するまでの時間とニューロン密度との間の堅牢な逆相関が明らかになった(
図8A)。また、臓器浴のフォーストランスデューサに取り付けたP20動物からの遠位結腸外筋板のストリップを使用して、エクスビボで結腸の運動性を評価した。このシステムは、電界刺激によって誘発されるWT結腸筋肉の収縮を、L-NAME(ニトロ-L-アルギニンメチルエステル)による一酸化窒素合成酵素の阻害によってわずかに増加させ、次いで、アトロピン(ムスカリン受容体アンタゴニスト)によるコリン作動性シグナル伝達の阻害によって堅牢に打ち消すことを可能にする。インビボデータと同様に、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスからの結腸筋肉のストリップは、2つの異なる応答パターンのうちの1つを示した。GDNFで治療された一部のHol
Tg/Tg結腸応答は、WT(4/7マウス)と同様であったが、他は、未治療のHol
Tg/Tg(3/7マウス)と同様の応答であった(
図6Eおよび8B)。2つの異なる群が存在するように思われるので、GDNF応答性およびGDNF非応答性Hol
Tg/Tgマウスについて、収縮性応答の平均曲線下面積(ΔAUC)を個別にグラフ化した(
図6E)。P20のGDNFによって誘発された粘膜下神経節の機能を間接的に試験するために、小さな蛍光標識したデキストラン分子(FD4)に対する上皮透過性をUssingチャンバで分析した。再び、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウスからの結腸組織は、粘膜片が、WT組織のようにFD4に対して不透過性であるか、またはGDNFで治療されていないマウスからの対照Hol
Tg/Tg組織のようにFD4に対して透過性であるかのいずれかの、2つの異なる応答タイプを示した(
図6F)。
【0080】
ENS分析を補完するために、他のHSCRに関連する腸の変則性を評価した。Hol
Tg/Tgマウス結腸は、WTマウスよりも太い平滑筋およびより多くの好中球を有したが、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス結腸は、WTと同様であった(
図6G~Iおよび9A~B)。同様に、便マイクロバイオームプロファイリングは、P20Hol
Tg/Tgマウス結腸では腸内毒素症を示したが、Hol
Tg/Tgマウス結腸のいくつかの細菌属(例えば、Desulfovibrio、Escherichia、Helicobater、Mucispirillum、Oscillospira、Parabacteroides、およびSutterella)の平均存在量は、GDNF治療後にはWTと見分けがつかなかった(
図6J)。顕著な例外は、Bacteroidesの存在量であり、これは、Hol
Tg/Tgマウスにおいて低く、GDNF治療後に低いままであった。したがって、ベータ多様性分析は、微生物群集構造が、WT、Hol
Tg/Tg、およびGDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス間で異なることを示唆している(
図6K)。
【0081】
実施例4:外因性神経内のSCPは、無神経節結腸におけるGDNFの標的である
GDNFが腸の神経新生をどのように誘発するかを明らかにするために、腸内のGDNF分布を、まずウエスタンブロットを介して、SDS-PAGEゲル中の組換え(15kDa)と内因性(20kDa、グリコシル化)GDNFタンパク質との間のサイズ差を利用して評価した。Hol
Tg/Tgマウスの遠位結腸における上皮透過性の増加(
図6F)と一致して、組換えGDNFタンパク質は、P8にGDNFで治療されたHol
Tg/Tg遠位結腸において検出されたが、近位結腸では検出されなかった(
図10A)。驚くべきことに、内因性GDNFは通常、回腸でのみ検出されるが、組換えGDNF浣腸は、結腸全体を通じて内因性GDNFの堅牢な増加を引き起こした(
図10A)。GDNFの短い半減期(34~92時間)(52)と一致して、組換えGDNFは、P20では結腸および他のいずれの組織においてももはや検出されず、投与されたGDNFが治療期間中に主に作用しているという考えを裏付けている(
図11)。可能性のあるGDNFの自己調節ループについて試験し、治療中の組換えGDNFの正確な位置を評価するために、Hol
Tg/TgマウスのGDNF治療を繰り返したが、今回はGDNF(
HisGDNF)の6×Hisタグ付きバージョン(53)であった。P4、P6、およびP8におけるGDNF治療の2時間後の遠位結腸の時間経過分析によって、Hol
Tg/Tgマウスの結腸粘膜下(
図10B)、平滑筋、および腸のニューロンのサブセット(
図10Cおよび12)において組換えGDNFが経時的に蓄積されたことが明らかになった。興味深いことに、主なGDNF受容体であるRETのレベルも増加し(
図10Bおよび12)、GDNF-RET自己調節ループが、GDNFで治療された結腸で活性化され、(例えば、RETレベルおよび/または活性を低減する変異を有する患者において)初期のRETレベルが低かったとしてもRETシグナル伝達を向上し得るという仮説を裏付けている。注目すべきことに、
HisGDNFおよびRETの両方が、GDNFで治療されたHol
Tg/Tgマウス(
図10C)およびEdnrb
s-l/s-lマウスの外因性神経の近くで誘発されたニューロンにおいて検出された。
【0082】
次に、神経に関連するシュワン細胞が、GDNFを標的とするENS前駆体であり得るかどうかを評価した。この仮説を試験するために、まず、P4Hol
Tg/Tg;G4-RFP二重トランスジェニック仔からの遠位結腸外筋板の生きた外植片を使用して、GDNFに対する外因性神経線維中のシュワン細胞の応答を評価した。これらのマウスにおいて、SCPを含む神経堤誘発体を、RFP蛍光によってマークする(54)。GDNF(5μg/ml)の存在下または不在下での72時間の培養後の外植片のタイムラプス撮像は、GDNFが、外因性神経に沿ったSCPの移動および増殖の両方を刺激することを示唆した(
図10D)。これらのSCPの増殖に対するGDNFの影響を、96時間のエクスビボ培養の後、免疫蛍光を介して確認した。外因性神経内のKi67
+SOX10
+二重陽性細胞は、GDNFへの曝露時に3倍になった(GDNFなし5.5±0.4%対GDNFあり15.2±2.1%)(
図10E、F)。RETを発現するGDNFによって誘発されたニューロンのうちのいくつかは、シュワン細胞に由来するが、シュワン細胞におけるGDNFシグナル伝達は代わりにNCAMによって媒介されるので、RETは、これらの前駆体を無神経節の腸で活性化するのに必要ではない可能性がある(35)。これに合わせて、
図10Iで報告されたデータは、無神経節マウス結腸における外因性神経のシュワン細胞におけるNCAMの発現を示すが、RETの発現は示さない。これらの結果は、GDNF療法が、RETレベルおよび/または活性が低減している患者、例えば、RETまたはRETシグナル伝達経路に変異を有する患者においてさえ使用することができることを示唆している。
【0083】
SCPが、GDNFによって誘発されたニューロンおよびグリアの供給源であることをさらに示すために、シュワン系統に特異的なCreドライバ-導入遺伝子Dhh-CreおよびRosa26Creレポーター対立遺伝子R26
[Floxed Stop]YFPをホルスタイン[FVB/N]変異体バックグラウンドで用いた、インビボ遺伝子細胞系統追跡を使用した。興味深いことに、未治療のDhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+およびHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+動物は、近位および中央結腸におけるYFP
+SCPに由来するニューロンおよびグリアが予想数よりも低かった。生後1ヶ月の混合C57BL/6-129Sv遺伝子バックグラウンドにおいて、SCPは、結腸のニューロンのうちの20%に寄与することが以前に報告されていた(29)が、P20の純粋なFVB/N遺伝子バックグラウンドにおいて、腸筋層間ニューロンのうちの5~7%にのみ寄与することが見出され、この寄与は、ホモ接合型ホルスタイン変異の存在下では、10~11%まで増加した(
図13A、B)。注目すべきことに、SCPに由来する(YFP
+)細胞は、GDNFで治療されたHol
Tg/Tg;Dhh-Cre
Tg/+;R26
YFP/+動物における遠位結腸のニューロンのうちの34%を構成していた(
図10G、H)。細胞起源(YFP蛍光)および/またはEdU組み込みに基づいて、P4~P8のGDNF治療中のEdUの毎日の投与によって誘発された腸筋層間ニューロンの4つのサブグループを同定した(
図10G、H、および14C)。この研究は、Dhh
+SCPが腸筋層間(
図10G、H)および粘膜下(
図13C)神経叢の両方におけるGDNFによって誘発されたニューロンおよびグリアの供給源であることを確認したが、誘発されたニューロンの大部分(66%)が、非SCP起源(即ち、非Dhh発現細胞型)を示唆するYFP陰性であることも明らかにしている。さらに、誘発されたニューロンの大部分(62%)は、細胞起源にかかわらず、EdUを組み込まず(
図10G、H)、神経新生が、前駆細胞の増殖を必要とする代わりに、トランス分化(すなわち、別のタイプの特殊細胞への分裂後細胞の直接分化)から生じ得る可能性を提起している。
【0084】
実施例5:GDNFは、ヒト無神経節結腸においてエクスビボで新しいニューロンを誘発し得る
GDNFがヒト組織において新しい腸のニューロンを誘発することができるかどうかを試験するために、エクスビボモデルが必要であった。96時間のエクスビボでのGDNF治療は、すべてのHol
Tg/Tg遠位結腸無神経節組織においてニューロンを誘発したが、神経新生は、インビボよりもはるかに低い効率であったことが発見された。これらの1cm長の外植片には、3~67個のみのニューロンが見られた(
図14Aおよび15A)。さらに、誘発されたニューロンは、神経節にクラスター化することはほとんどなく、そのような神経節は、常に非常に小さかった(
図14B)。SCPへの広範なEdU組み込み(
図14Cおよび15)とは顕著に対照的に、誘発されたニューロンへのEdU組み込みも最小であった(外植片培養物中20%未満のHuC/D
+細胞)(
図14B、C)。GDNFを用いずに培養したP4Hol
Tg/Tgマウスからの対照無神経節組織は、ニューロンがまったく無いままであり(
図14A、C、および15)、GDNFが、無神経節遠位結腸においてエクスビボで神経新生を誘発することができるが、インビボでのGDNF浣腸で発生したものよりも低い効率であったという考えを裏付けている。
【0085】
最後に、GDNFが、無神経節遠位腸を切除するためにSwensonプルスルー手術を受けた小児からの無神経節ヒト結腸筋肉における神経新生を誘発することができるかどうかを試験した。コホートは、12人の小児からなった。疫学的特徴は、HSCRの典型的なもの(すなわち、ほとんどが散発性、男性に偏在し、短域)であった(表2)。Soave手術を受けた患者は、このアプローチでは最遠位結腸から外筋板が切除されないので、登録しなかった。各対象について、手術日に切除した完全な厚さの無神経節結腸を収集し、直ちに顕微解剖して粘膜層および粘膜下層を除去した。残った外筋板を小片に切断し、GDNFとともにまたは伴わずに培養した。96時間のGDNFへの曝露によって、EdUを培地に添加した9/9のヒト組織において、EdU
+SCPの割合が顕著に増加した(
図14D、E)。最も重要なことに、HuC/D、βIII-チューブリン(Tuj1)、RET、PGP9.5、およびPHOX2Bを発現する新しいニューロンも、3つのHSCR外植片で検出された(
図14F、G、および16)。これらの3つの外植片は、我々のコホートの最年少(生後28~44日)の小児からのものであった(
図14Gおよび表2)。これらの小児のうち2人は、不明な遺伝的原因を有する散発性HSCRを有した。3番目の小児は、MEN2A症候群に関連するRET変異を有した(表2)。もう少し大きい小児について、より長期のGDNF治療が有益であり得るかどうかを試験した。非常に興味深いことに、もう少し大きい小児からの遠位結腸を7日間培養すること(n=2;手術時に生後86日および1638日)によって、外因性神経線維に関連してEdUを組み込んだニューロンが同定された(
図14H)。集約すると、このデータは、マウスから得た観察をヒトに拡張することができるという説得力のある証拠を提供する。
【表2】
【0086】
実施例6:ホルスタインマウスの結腸における免疫細胞集団に対するGDNFの効果
多色フローサイトメトリー分析は、未治療のHol
Tg/Tgマウスの結腸で観察された免疫細胞の異常な割合が、GDNF治療時に、概してWT免疫細胞の割合にまで正常化されることを示している。マーカーの大部分について、密度プロットは、完全な救済(B細胞、CD73
+T細胞、CD44
+CD62L
+T細胞、RORy
+T細胞、CX3CR1
+MHC-II
+マクロファージ)、または少なくとも部分的な救済(CD4
+T細胞、CD39
+T細胞、CD25
+T細胞、Ly-6C
+CD64
+単球、F4-80
+MHC-II
+マクロファージ、CD11b
+CD103
-マクロファージ)のいずれかを示す。結果を、表3に要約する。
【表3】
【0087】
本発明は、本明細書に上記の特定の実施形態によって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される主題発明の趣旨および性質から逸脱することなく、変更され得る。特許請求の範囲では、「含む」という単語は、「限定されないが、含む」という語句と実質的に等価である、オープンエンド用語として使用される。「a」、「an」、および「the」という単数形は、別段文脈が明らかに指示しない限り、対応する複数の対象物を含む。
【0088】
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