(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】慢性炎症性疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20250414BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250414BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20250414BHJP
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A61P 25/16 20060101ALI20250414BHJP
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A61P 27/02 20060101ALI20250414BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
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A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
(21)【出願番号】P 2023041468
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2020535648の分割
【原出願日】2019-01-11
【審査請求日】2023-04-07
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517227806
【氏名又は名称】メティメディ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】(Foil-dong, Indeokwon IT Valley)D-701, 40, Imi-ro, Uiwang-si, Gyeonggi-do 16006, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャン チョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン クン-ヨン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0115538(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103948915(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0214892(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0147296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190347(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102309456(CN,A)
【文献】米国特許第03279997(US,A)
【文献】米国特許第03842169(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0082027(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101134037(CN,A)
【文献】特表2017-528431(JP,A)
【文献】Journal of Biological Chemistry,1914年,Vol. 19, No. 1,pp. 119-126
【文献】Sports Nutrition and Therapy,2016年,Vol. 1, No. 3, 1000117,pp. 1-5
【文献】JAMA (The Journal of the American MEdical Association),1926年,Vol. 87, No. 23,pp. 1902-1904
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/19
A23L 33/10
A23L 33/16
A61K 9/32
A61K 33/06
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/32
A61K 47/34
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A61K 47/38
A61K 47/42
A61K 47/44
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 9/10
A61P 25/00
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムと、薬学的に許容されるポリマーおよび脂質とを含む、その必要のある対象における多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、関節リウマチ、歯髄炎、歯周炎、炎症性腸疾患(IBD)、脊髄損傷、および線維症からなる群より選択される1種または複数の疾患を処置するための薬学的組成物。
【請求項2】
ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸-乳酸(PLGA)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるポリマーである、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記脂質が、モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、パーム油、ピーナッツ油、カカオ油、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される脂質である、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される多糖
、ゼラチン及び/又はコラーゲンをさらに含む、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記多糖が、セルロース誘導体、ペクチン、ヒアルロン酸、デンプン、グアーガム、キトサン
、アルギン酸塩、アルギン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される多糖である、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
乳酸カルシウムが、薬学的に許容される腸溶性コーティングでコーティングされている、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項8】
腸溶性コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
乳酸カルシウム対腸溶性コーティングの重量比が、10:0.5~1:1.5である、請求項7記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
慢性炎症性疾患(CID)は、遷延性かつ持続性の前炎症状態として定義される慢性炎症を特徴とした病理学状態として裏付けられる(1)。CIDは、呼吸器疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺臓炎、および肺線維症)(2)、眼疾患(例えば、角膜炎および加齢黄斑変性)(3)、自己免疫疾患(4)、腎症(5)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、および多発性硬化症)(6)、心血管疾患(例えば、アテローム硬化症、動脈硬化、および心筋炎)(7)、代謝障害(例えば、糖尿病および肥満)(8)、筋骨格系疾患(例えば、関節リウマチおよび骨粗鬆症)(9、10)、歯周病(例えば、歯髄炎および歯周炎)(11)、消化器疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患、胃腸炎、および慢性炎症性腸疾患)(12)、および皮膚障害(例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎)(13、14)などの多くの一般的なCIDおよび稀なCIDを含む。
【0002】
疫学的研究によって、CIDは、世界で一番多い死亡原因であり、この30年間にわたって増え続けていることが示された。2030年までに、米国で1億7100万人がCIDに罹患すると推定されている(15)。アスピリン、抗ヒスタミン剤、COX-2阻害剤、コルチコステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAlD)など、炎症を処置する様々なタイプの抗炎症薬がある。しかしながら、そのような既存薬の長期投与には、副作用および有効性が一時的であることが原因で制約がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の簡単な概要
慢性炎症性疾患を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。
【0004】
アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム硬化症、および/または脳卒中を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。
【0005】
また、多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または関節リウマチを処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。いくつかの態様では、該方法は、NAFLDを処置するためのものであり、NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0006】
また、歯髄炎および/または歯周炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。
【0007】
さらに、炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。いくつかの態様では、IBDは、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0008】
さらに、脊髄損傷、脳出血、心筋梗塞、角膜炎、および/または糖尿病網膜症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。
【0009】
喘息、肺線維症、肥満、胃腸炎、慢性炎症性腸疾患、および/またはアトピー性皮膚炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。また、慢性閉塞性肺疾患、肺臓炎、角膜炎、アテローム硬化症、動脈硬化、心筋炎、糖尿病、関節リウマチ、歯髄炎、歯周炎、および/または乾癬を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、本明細書に開示される。また、アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患、敗血症、および/または骨粗鬆症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、本明細書に開示される。
【0010】
いくつかの態様では、乳酸カルシウムは、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む薬学的組成物で投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物は、液剤、散剤、エアロゾル剤、注射剤、輸液、パッチ剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、デポー剤、または坐剤へと製剤化される。
【0011】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムと、薬学的に許容される多糖、ポリマー、脂質、またはそれらの組み合わせとを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、乳酸カルシウムおよび多糖を含む。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対多糖の重量比は、1:<0.2~1:5である。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対多糖の重量比は、1:<0.2である。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対多糖の重量比は、1:0.2~1:5である。
【0012】
いくつかの態様では、薬学的組成物はさらに、ポリマーおよび/または脂質を含む。いくつかの態様では、薬学的組成物はさらに、ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50であるポリマーおよび脂質を含む。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比は、少なくとも1:5である。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比は、1:5~1:30である。
【0013】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、乳酸カルシウムとポリマーおよび/または脂質とを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50であるポリマーおよび脂質を含む。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比は、少なくとも1:5である。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比は、1:5~1:30である。
【0014】
いくつかの態様では、組成物は、短時間作用型である。いくつかの態様では、組成物は、長時間作用型である。いくつかの態様では、組成物は、注射用組成物である。
【0015】
いくつかの態様では、多糖は、セルロース誘導体、ペクチン、ヒアルロン酸、デンプン、グアーガム、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、アルギン酸、またはそれらの組み合わせである。
【0016】
いくつかの態様では、ポリマーは、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸-乳酸(PLGA)、またはそれらの組み合わせである。
【0017】
いくつかの態様では、脂質は、モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、パーム油、ピーナッツ油、カカオ油、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはそれらの組み合わせである。
【0018】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、6時間後に活性作用物質の少なくとも約40%が放出される。
【0019】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、12時間後に活性作用物質の少なくとも約60%が放出される。
【0020】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の少なくとも約80%が放出される。
【0021】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の少なくとも約90%が放出される。
【0022】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の約40%未満が放出される。
【0023】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の約60%未満が放出される。
【0024】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、72時間後に活性作用物質の約80%未満が放出される。
【0025】
いくつかの態様では、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に薬学的組成物を配置したところ、144時間後に活性作用物質の約90%未満が放出される。
【0026】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、滅菌のガラスまたはポリオレフィン容器中に含有される。
【0027】
いくつかの態様では、乳酸カルシウムは、薬学的に許容される腸溶性コーティングでコーティングされている。いくつかの態様では、腸溶性コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、乳酸カルシウム対腸溶性コーティングの重量比は、10:0.5~1:1.5である。いくつかの態様では、37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1 HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、30分後に活性作用物質の約20%未満が放出される。いくつかの態様では、37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、60分後に活性作用物質の30%未満が放出される。いくつかの態様では、37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の50%未満が放出される。いくつかの態様では、37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の10%未満が放出される。
【0028】
いくつかの態様では、乳酸カルシウムは、乳酸カルシウムを含む食品組成物または栄養組成物で提供される。いくつかの態様では、食品組成物または栄養組成物は、注射用栄養補給剤である。
[本発明1001]
アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム硬化症、および/または脳卒中を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
[本発明1002]
多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または関節リウマチを処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
[本発明1003]
NAFLDを処置するためのものであり、NAFLDが、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
歯髄炎および/または歯周炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
[本発明1005]
炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
[本発明1006]
IBDが、クローン病または潰瘍性大腸炎である、本発明1005の方法。
[本発明1007]
脊髄損傷、脳出血、心筋梗塞、角膜炎、および/または糖尿病網膜症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
[本発明1008]
乳酸カルシウムが、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む薬学的組成物で投与される、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
薬学的組成物が、液剤、散剤、エアロゾル剤、注射剤、輸液、パッチ剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、デポー剤、または坐剤へと製剤化される、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
薬学的組成物が、活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムと、薬学的に許容される多糖、ポリマー、脂質、またはそれらの組み合わせとを含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1011]
薬学的組成物が、乳酸カルシウムおよび多糖を含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:<0.2~1:5である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:<0.2である、本発明1011の方法。
[本発明1014]
乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:0.2~1:5である、本発明1011の方法。
[本発明1015]
ポリマーおよび/または脂質をさらに含む、本発明1010~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50であるポリマーおよび脂質をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、少なくとも1:5である、本発明1015~1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、1:5~1:30である、本発明1017の方法。
[本発明1019]
乳酸カルシウムとポリマーおよび/または脂質とを含む、本発明1010の方法。
[本発明1020]
ポリマーおよび脂質を含み、ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50である、本発明1019の方法。
[本発明1021]
乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、少なくとも1:5である、本発明1019~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、1:5~1:30である、本発明1019~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
組成物が、短時間作用型である、本発明1010~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
組成物が、長時間作用型である、本発明1010~1022のいずれかの方法。
[本発明1025]
組成物が、注射用組成物である、本発明1010~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
セルロース誘導体、ペクチン、ヒアルロン酸、デンプン、グアーガム、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、アルギン酸、またはそれらの組み合わせである多糖を含む、本発明1010~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸-乳酸(PLGA)、またはそれらの組み合わせであるポリマーを含む、本発明1010~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、パーム油、ピーナッツ油、カカオ油、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはそれらの組み合わせである脂質を含む、本発明1010~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、6時間後に活性作用物質の少なくとも約40%が放出される、本発明1010~1023および1025~1029のいずれかの方法。
[本発明1030]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、12時間後に活性作用物質の少なくとも約60%が放出される、本発明1010~1023および1025~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の少なくとも約80%が放出される、本発明1010~1023および1025~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の少なくとも約90%が放出される、本発明1010~1023および1025~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の約40%未満が放出される、本発明1010~1012、1014~1022、および1024~1028のいずれかの方法。
[本発明1034]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の約60%未満が放出される、本発明1010~1012、1014~1022、1024~1028、および1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、72時間後に活性作用物質の約80%未満が放出される、本発明1010~1012、1014~1022、1024~1028、および1033~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、144時間後に活性作用物質の約90%未満が放出される、本発明1010~1012、1014~1022、1024~1028、および1033~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
組成物が、滅菌のガラスまたはポリオレフィン容器中に含有される、本発明1010~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
乳酸カルシウムが、薬学的に許容される腸溶性コーティングでコーティングされている、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1039]
腸溶性コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1038の方法。
[本発明1040]
乳酸カルシウム対腸溶性コーティングの重量比が、10:0.5~1:1.5である、本発明1038~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1 HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、30分後に活性作用物質の約20%未満が放出される、本発明1038~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、60分後に活性作用物質の30%未満が放出される、本発明1038~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の50%未満が放出される、本発明1038~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の10%未満が放出される、本発明1038~1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
乳酸カルシウムが、乳酸カルシウムを含む食品組成物または栄養組成物で提供される、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1046]
組成物が、注射用栄養補給剤である、本発明1045の方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ヒト白血病単核球インビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のTHP-1細胞(ヒト白血病単核球)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示した。
【
図2】マクロファージに分化したヒト白血病単核球のインビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のPMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)で分化したTHP-1細胞(M0マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示した。
【
図3】ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のインターフェロンガンマ(IFN-γ)およびリボ多糖(LPS)で分化したTHP-1細胞(M1マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示した。
【
図4】ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のインターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-10(IL-10)で分化したTHP-1細胞(M2マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示した。
【
図5】肝線維化インビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のLX-2細胞(ヒト肝星細胞)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)が減少したことを示した。
【
図6】ヒト内皮細胞インビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のヒト臍帯静脈内皮細胞において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子(乳酸デヒドロゲナーゼA)が減少したことを示した。
【
図7】ヒト線維芽細胞インビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のCCD-18Co細胞(ヒト結腸線維芽細胞)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼBが増加したことを示した。
【
図8】脳CIDインビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のSK-N-SH細胞(脳上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が減少したことを示した。
【
図9】肝臓CIDインビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のHepG2細胞(肝上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が変化したことを示した。
【
図10】ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のHepG2細胞(肝上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(TLR-4)が減少したことを示した。
【
図11】眼CIDインビトロ実験。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が減少したことを示した。
【
図12】免疫細胞化学結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)が減少したことを示した。
【
図13】免疫細胞化学結果は、酸素正常条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼAが減少したことを示した。
【
図14】免疫細胞化学結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(核内因子カッパB)が減少したことを示した。
【
図15】免疫細胞化学結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(トル様受容体4)が減少したことを示した。
【
図16】免疫細胞化学結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼBが増加したことを示した。
【
図17】免疫細胞化学結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置によりドルーゼンマーカー(アポリポタンパク質E)が減少したことを示した。
【
図18】ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示した。
【
図19】写真は、ARPE-19細胞(網膜色素上皮)において2.5mMの乳酸カルシウム処置による毒性がないことを示す。乳酸カルシウムは、傷害を受けた上皮細胞の代謝変化においてのみ重要な役割を果たす。
【
図20】肝臓CID(NASH)インビボ実験。血液化学結果は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置により血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が顕著に減少したことを示した。**P<0.001、対メチオニン-コリン欠乏(MCD)。結果は、平均±SDである。
【
図21】免疫組織化学結果は、肝臓において2mg/kgの乳酸カルシウム処置により脂肪変性が防止されたことを示す。
【
図22】免疫組織化学結果は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において脂肪滴が存在しない一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群ではこれらが見られることを示す。
【
図23】免疫組織化学結果は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において免疫細胞浸潤が減少する一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群では免疫細胞浸潤が増加することを示す。
【
図24】免疫組織化学結果は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において線維化が存在しない一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群ではそれが存在することを示す。
【
図25】ウェスタンブロット結果は、網膜色素上皮の組織において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κB)が減少したことを示した。
【
図26】免疫組織化学結果は、2.5mMの乳酸カルシウムでの処置により正常対照上皮と同様の形態学で網膜色素上皮が再生したことを示した。
【
図27】レーザー誘起加齢黄斑変性(AMD)によるフラットマウント上の脈絡膜の内層の病変についての蛍光画像。
【
図28】レーザー誘起加齢黄斑変性(AMD)によるフラットマウント上の脈絡膜の内層の病変および新血管形成についての蛍光画像。
【
図29】アルツハイマー病および脳卒中を確立するための実験スキーム。
【
図30】リポ多糖(LPS)による脳損傷についての代表的画像。対側:正常領域。同側:LPS注射。
【
図31】損傷を受けた脳組織の再生および脳損傷時に動員されたミクログリア浸潤の低下。
【
図32】パーキンソン病を確立するための実験スキーム。
【
図33】乳酸カルシウムでの処置によるドーパミン作動性ニューロンの再生。
【
図34】多発性硬化症を確立するための実験スキーム。
【
図35】乳酸カルシウムでの処置による脊髄脱髄の再生およびミクログリア浸潤の低下。
【
図36】大動脈組織の代表的な組織学的プロファイル。左側および中央の組織は、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色である。右側の組織は、オイルレッドO染色である。
【
図37】歯周組織についてのマッソントリクローム染色。
【
図38】上歯肉についてのマッソントリクローム染色。
【
図39】脚および膝関節組織についてのマッソントリクローム染色。
【
図40】クローン病を誘導するための実験スキーム。
【
図41】クローン病のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色についての代表的画像。
【
図43】大腸炎のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色についての代表的画像。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
最近、多くの研究によって、CIDが加齢に関係していることが示され、そして、慢性炎症が加齢による免疫老化疾患と関連していることが示唆された(1~29)。慢性炎症は、実質細胞と間質細胞(免疫細胞、内皮細胞、および線維芽細胞など)との間の複雑な相互作用を介して起こると解明された。中でも、単核球および活性化マクロファージなどの骨髄を起源とする細胞が、CIDにおける主要なエフェクター細胞として特定された。細菌のリポ多糖、IFN-ガンマ、および損傷を受けた細胞によって活性化されると、マクロファージは、多くの炎症性サイトカインを産生し、核内因子カッパB(NF-κB)による転写制御を通じて内因性および外因性の炎症物質をクリアランスした。マクロファージはまた、より特殊化したマクロファージサブタイプへとさらに極性化された。しかしながら、マクロファージの精巧に制御された分化および骨髄細胞の活性化は、慢性炎症においては異常調節された。局部組織の低酸素化は、低酸素誘導因子(HIF)の誘導を通じて、実質細胞および間質細胞などの細胞の代謝変化を引き起こした。HIF、特にHIF-1は、マクロファージの異常な活性化の一因であり、慢性炎症応答への主要な原因物質である。
【0031】
大部分のCIDは、炎症を特徴とする。傷害を受けた組織は、血液流動および酸素運搬に抵抗性を示すようになり、結果として、低酸素環境となる。前炎症性メディエーターおよび低酸素状態は、HIF-1の誘導を通じて血管新生反応を誘発することができる。加えて、呼吸器疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺臓炎、および肺線維症)、眼疾患(例えば、角膜炎および加齢黄斑変性)、自己免疫疾患、腎症、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、および多発性硬化症)、心血管疾患(例えば、アテローム硬化症、動脈硬化、および心筋炎)、代謝障害(例えば、糖尿病および肥満)、筋骨格系疾患(例えば、関節リウマチおよび骨粗鬆症)、歯周病(例えば、歯髄炎および歯周炎)、消化器疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患、胃腸炎、および慢性炎症性腸疾患)、および皮膚障害(例えば、乾癬およびアトピー性皮膚炎)を含めた大部分のCIDに、局所炎症反応が存在する。炎症の間、血管透過性が増加し、単核球、マクロファージ、血小板、マスト細胞および他の白血球がケモカインの誘引下で動員される。それゆえ、HIF-1、NF-κBならびに乳酸デヒドロゲナーゼ(LAD)AおよびBを標的とすることによる、マクロファージの活性化および細胞外マトリックス分解の調節を標的とした治療的アプローチが本明細書に開示される。
【0032】
処置の方法
慢性炎症性疾患を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。
【0033】
アルツハイマー病、パーキンソン病、アテローム硬化症、および/または脳卒中を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。
【0034】
また、多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または関節リウマチを処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。いくつかの態様では、該方法は、NAFLDを処置するためのものであり、NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0035】
また、歯髄炎および/または歯周炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。
【0036】
さらに、炎症性腸疾患(IBD)を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。いくつかの態様では、IBDは、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0037】
さらに、脊髄損傷、脳出血、心筋梗塞、角膜炎、および/または糖尿病網膜症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、開示される。
【0038】
喘息、肺線維症、肥満、胃腸炎、慢性炎症性腸疾患、および/またはアトピー性皮膚炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法が、本明細書に開示される。また、慢性閉塞性肺疾患、肺臓炎、角膜炎、アテローム硬化症、動脈硬化、心筋炎、糖尿病、関節リウマチ、歯髄炎、歯周炎、および/または乾癬を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、本明細書に開示される。また、アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患、および/または敗血症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、本明細書に開示される。
【0039】
また、骨粗鬆症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む方法も、本明細書に開示される。
【0040】
用語「対象」または「患者」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例は、哺乳動物クラスのいずれかのメンバー:ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの家庭内動物;ラット、マウスおよびモルモットなどの齧歯動物を含めた実験動物などを含むが、それらに限定されない。非哺乳動物の例は、鳥類、魚類などを含むが、それらに限定されない。本明細書に提供される方法および組成物のいくつかの態様では、哺乳動物は、ヒトまたは非ヒトである。
【0041】
本明細書において使用される場合、薬学的組成物の投与によって本明細書に開示される1つまたは複数の疾患を「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「処置(treatment)」は、永続的か一時的か、持続的か暫定的かを問わず、組成物の投与に起因し得るかまたはそれに関連し得る、本明細書に開示される1つまたは複数の疾患の重症度の低下、発症の遅延、進行の減速、または継続期間の短縮のいずれかを指す。
【0042】
用語「同時投与」および同様の語は、本明細書において使用される場合、選択された2つまたはそれ以上の活性作用物質の一人の患者への投与を包含することを意味し、活性作用物質が同じもしくは異なる投与経路によってまたは同時もしくは異なる時間に投与される処置計画を含むことを意図する。
【0043】
本開示の薬学的組成物は、治療有効量で投与することができ、そして、本明細書において使用される場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、任意の医学的治療または予防に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で疾患を治療または予防するのに十分な量を指す。有効投与量レベルは、疾患の重症度、薬物または活性作用物質の活性、患者の年齢、体重、健康および性別、薬物への感受性、投与時間、投与経路;ならびに本開示の組成物の排出速度、処置の継続時間、本開示の組成物と同時にまたは組み合わせて使用される薬物、ならびに医学分野において公知の他の要因に応じて決定することができる。本開示の薬学的組成物を、単独で投与しても、他の公知の薬物または本明細書に開示される1つまたは複数の疾患の処置に対して公知である成分と組み合わせて投与してもよい。上記要因のすべてを考慮した上で、副作用を引き起こすことなく最大限の効果を示すことができる最少量で、組成物を投与することが重要である。
【0044】
本開示の薬学的組成物を、乳酸カルシウムの1日当たりの投与量が、例えば、約10mg/kg~約1,000mg/kg、約10mg/kg~約500mg/kg、約10mg/kg~約250mg/kg、約10mg/kg~約200mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、約1mg/kg~約100mg/kg、約1mg/kg~約75mg/kg、約1mg/kg~約50mg/kg、約1mg/kg~約25mg/kg、または約1mg/kg~約10mg/kgになるように投与することができる。組成物の投与頻度は、1日1回、2回、3回、4回などの分割用量であることができるが、それらに特に限定されない。
【0045】
本明細書に記載の化合物を含有する組成物を、予防的処置および/または治療的処置のために投与することができる。治療的適用では、組成物は、すでに疾患または病態を患っている患者に、疾患または病態の症状を治癒するかまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。この使用に有効な量は、疾患または病態の重症度および経過、治療歴、患者の健康状態、体重および薬物への応答、ならびに主治医の判断に依存する。日常的な実験(限定されないが用量漸増臨床試験を含む)によってそのような治療有効量を決定することは、十分に当業者の技能の範囲内であると考えられる。
【0046】
予防的適用では、本明細書に記載の活性作用物質を含有する組成物は、本明細書に開示される1つまたは複数の疾患の影響を受けやすいかまたはそうでなければそのリスクのある患者に投与される。そのような量は、「予防有効量または用量」であると定義される。この使用において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する。日常的な実験(例えば、用量漸増臨床試験)によってそのような予防有効量を決定することは、十分に当業者の技能の範囲内であると考えられる。患者に使用されるとき、この使用のための有効量は、疾患、障害または病態の重症度および経過、治療歴、患者の健康状態および薬物への応答、ならびに主治医の判断に依存する。
【0047】
患者の病態が改善しない場合には、患者の疾患または病態の症状を改善するかまたはそうでなければ制御もしくは制限するために、医師の裁量によって、本明細書に記載の活性作用物質の投与を、慢性的に、すなわち、長期間(患者の人生の期間全体を含む)にわたり、実施することができる。
【0048】
そのような量に相当する所与の作用物質の量は、特定の化合物、疾患状態およびその重症度、処置を必要とする対象または宿主の固有性(例えば、年齢、体重、性など)などの要因に応じて変動するが、それとは関係なく、例えば投与されている具体的な作用物質、投与経路、処置されている病態、および処置されている対象または宿主を含めたその事例を取り巻く特定の状況に従って、当技術分野において公知の様式で、これを日常的に決定することができる。
【0049】
薬学的組成物
用語「乳酸カルシウム」は、C6H10O6Ca・5H2Oによって表される、例えば水和物として存在することができる、乳酸金属塩の一種を指し、ここで、カルシウムイオンは乳酸に結合している。乳酸カルシウムは、室温で白色の粉末または顆粒、120℃の加熱条件で無水物の形態であることができ、5%(w/v)の溶解度を有する。
【0050】
乳酸カルシウムを、本明細書に開示されている1つまたは複数の疾患を処置するための薬学的組成物へと製剤化することができる。
【0051】
様々な態様において、本発明は、本明細書に開示されている1つまたは複数の疾患を処置するための活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムと、薬学的に許容される多糖、ポリマー、脂質またはそれらの組み合わせとを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、乳酸カルシウムおよび多糖を含む。
【0052】
いくつかの態様において、本発明は、活性作用物質が胃の酸性環境から保護され、かつ、活性作用物質が経口投与されたときに大腸に到達する前に小腸で吸収されるような、乳酸カルシウムの腸溶性コーティングを提供する。
【0053】
本発明はまた、乳酸カルシウムを含む短時間作用型および長時間作用型薬学的組成物を提供する。いくつかの態様において、長時間作用型組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラックならびにメタクリル酸およびそのエステルのポリマーなどの少なくとも1種の腸溶性コーティング材料でコーティングされた乳酸カルシウムを含む。
【0054】
本発明の薬学的組成物を、経口投与用の薬学的調製物へと製剤化することができる。調製物の例は、粉剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤またはシロップ剤、錠剤およびカプセル剤を含むが、それらに限定されない。
【0055】
インビトロで溶液またはナノ粒子の形態で留まることができ、かつ、体内に注射されたときにゲルを形成して、乳酸カルシウムの持続放出を可能にする、ヒドロゲル、具体的にはメチルセルロース、ポロキサマー、ペクチン、およびアルギン酸ヒドロゲルの製剤もまた本願により提供される。ヒドロゲルの欠点である比較的短い薬物放出時間は、薬物とヒドロゲルとの間の相互作用を増加させることによるかまたはヒドロゲル中の薬物の拡散を遅延させることによって改善された。
【0056】
乳酸カルシウムと多糖との重量比は、例えば、1:<0.2~1:5、1:0.01~1:5、1:0.05~1:5、または1:0.1~1:5であることができる。乳酸カルシウムと多糖との重量比は、1:<0.2であることができる。乳酸カルシウムと多糖との重量比は、1:0.2~1:5であることができる。
【0057】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、ポリマーまたは脂質をさらに含む。乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質との重量比は、少なくとも1:5であることができる。乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質との重量比は、1:5~1:30、例えば、1:5~1:30、1:5~1:20、1:5~1:10、1:10~1:30、1:10~1:20、または1:20~1:30であることができる。
【0058】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、ポリマーおよび脂質をさらに含む。乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質との重量比は、少なくとも1:5であることができる。乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質との重量比は、1:5~1:30、例えば、1:5~1:30、1:5~1:20、1:5~1:10、1:10~1:30、1:10~1:20、または1:20~1:30であることができる。
【0059】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質とを含む。乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質との重量比は、少なくとも1:5であることができる。乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質との重量比は、1:5~1:30であることができる。乳酸カルシウムとポリマーまたは脂質との重量比は、1:5~1:30、例えば、1:5~1:30、1:5~1:20、1:5~1:10、1:10~1:30、1:10~1:20、または1:20~1:30であることができる。
【0060】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質とを含む。乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質との重量比は、少なくとも1:5であることができる。乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質との重量比は、1:5~1:30であることができる。乳酸カルシウムとポリマーおよび脂質との重量比は、1:5~1:30、例えば、1:5~1:30、1:5~1:20、1:5~1:10、1:10~1:30、1:10~1:20、または1:20~1:30であることができる。
【0061】
いくつかの態様において、ポリマーと脂質との重量比は、1:0.1~1:50、1:0.1~1:20、1:0.1~1:10、1:0.1~1:5、1:0.1~1:2、1:0.1~1:1、1:0.1~0.5、または1:0.1~1:0.2であることができる。
【0062】
組成物中での使用に適した多糖類は、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC))、ペクチン、ヒアルロン酸、デンプン、グアーガム、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、アルギン酸、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0063】
組成物中での使用に適したポリマー類は、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸・乳酸(PLGA)、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0064】
組成物中での使用に適した脂質類は、モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、大豆油、ヒマシ油、コーン油、パーム油、落花生油、カカオ脂、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0065】
本発明は、本明細書に開示されている1つまたは複数の疾患を処置するための活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムを含む薬学的組成物であって、乳酸カルシウムが薬学的に許容される腸溶性コーティングでコーティングされている、薬学的組成物をさらに対象とする。いくつかの態様において、腸溶性コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様において、乳酸カルシウムと腸溶性コーティングとの重量比は、10:0.5~10:15、10:0.5~1:1、10:0.5~10:5、10:0.5~10:3、10:0.5~10:2、10:0.5~10:1、10:0.5~1:0.8である。
【0066】
「薬学的に許容される」とは、本明細書において使用される場合、化合物の生物学的活性または特性を無効にすることなく、かつ、比較的非毒性である、担体または希釈剤などの材料を指すものであり、すなわち、該材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなしにまたはその材料が含有される組成物の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなしに、個体に投与することができる。
【0067】
薬学的組成物は、本明細書において使用される場合、乳酸カルシウムと、限定されないが担体、安定剤、希釈剤、崩壊剤、懸濁化剤、増粘剤、結合剤、抗菌剤、抗菌防腐剤、酸化防止剤、および/または緩衝剤などの薬学的に許容される他の化学成分との混合物を指す。薬学的組成物は、対象への乳酸カルシウムの投与を容易にする。
【0068】
用語「担体」は、本明細書において使用される場合、細胞または組織への化合物の取り込みを容易にする、比較的非毒性の化合物または作用物質を指す。用語「希釈剤」は、送達に先立ち関心対象の化合物を希釈するために使用される化合物を指す。また、希釈剤は、より安定な環境を提供することができるので、これらを使用して化合物を安定化させることもできる。薬学的に許容される添加物は、当技術分野において周知の希釈剤、結合剤、可溶化剤、溶解度増強剤、細孔形成剤、浸透物質、ガス形成剤、滑剤および流動化剤を含むが、それらに限定されない。
【0069】
希釈剤は、乳糖、フルクトース、デキストロース、スクロース、マルトース、微晶質セルロース、デンプン、リン酸水素カルシウム、マンニトールまたはそれらの混合物を含むことができるが、それらに限定されない。それらの希釈剤は、微晶質セルロース、乳糖、マンニトール、リン酸カルシウムなどを含む。
【0070】
結合剤の例は、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチル-セルロースナトリウムおよびそれらを含むことができる。
【0071】
可溶化剤は、界面活性剤、シクロデキストリンおよびその誘導体、親油性物質またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。
【0072】
界面活性剤は、水溶性または水分散性の非イオン性、無極性非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性またはイオン性の表面活性剤またはそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。
【0073】
崩壊剤の例は、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウムを含み、滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよびそれらを含む。
【0074】
本発明の薬学的組成物は、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、フェニル-酢酸水銀、ソルビン酸カリウム、およびソルビン酸などの抗菌剤をさらに含むことができる。抗真菌剤は、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、および安息香酸ナトリウムなどの化合物を含む。
【0075】
通常は水相に侵入するが場合によっては組成物の油相で増殖することもできる潜在的に有害な微生物の増殖から本発明の薬学的組成物を保護するために、本発明の薬学的組成物に抗菌防腐剤を加えることができる。したがって、水溶解性と脂質溶解性の両方を有する防腐剤が望ましい。好適な抗菌防腐剤は、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、プロピオン酸塩、フェノキシエタノール、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ヒダントイン誘導体、第四級アンモニウム化合物および陽イオン性ポリマー類、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、ならびにエチレンジアミン四酢酸三ナトリウム(EDTA)を含む。
【0076】
組成物それ自体にまたはその使用環境中に存在する酸化剤による損傷または分解から薬学的組成物の成分の全てを保護するために、酸化防止剤、例えば、アノキソマー、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピルオクチルおよびドデシル、メタ重亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ならびにトコフェロール類を加えることができる。
【0077】
緩衝剤を使用して、外部の作用物質の作用および組成物の成分の平衡のシフトに対して、一旦確立された薬学的組成物の所望のpHを保持することができる。
【0078】
当技術分野において公知の技術、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)(参照によってその全体が本明細書に組み入れられる)に従って、本明細書に記載の薬学的組成物を調製することができる。
【0079】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、短時間作用型である。用語「短時間作用型」は、本明細書に記載のインビトロ溶解試験で試験したときに、48時間以内に、例えば、送達時(すなわち、0時間)から、約1時間~約48時間まで、約3時間~約24時間まで、約6時間~約24時間まで、または約12時間~約24時間まで、活性作用物質の実質的に全てを放出する組成物を指す。
【0080】
例えば、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した、37℃でpH 6.8を有する200ml水性溶媒中300rpmでの溶出試験法(例えば、Labfine Co., Mumbai, India提供)を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置すると、6時間後に活性作用物質の少なくとも約40%が放出され、12時間後に活性作用物質の少なくとも約60%が放出され、24時間後に活性作用物質の少なくとも約80%が放出され、かつ/または、48時間後に活性作用物質の少なくとも約90%が放出される。いくつかの態様において、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した、37℃でpH 6.8を有する200ml水性溶媒中300rpmでの溶出試験法(例えば、Labfine Co., Mumbai, India提供)を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置すると、6時間後に活性作用物質の少なくとも約40%~約60%が放出され、12時間後に活性作用物質の少なくとも約60%~約80%が放出され、24時間後に活性作用物質の少なくとも約80%~約90%が放出され、かつ/または、48時間後に活性作用物質の少なくとも約90%~約100%が放出される。
【0081】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、長時間作用型である。用語「長時間作用型」は、初期投与後、例えば、送達時(すなわち、0時間)から、約48時間~約192時間まで、約72時間~約192時間まで、約96時間~約192時間まで、約120時間~約192時間まで、または約144時間~約192時間まで、活性作用物質をゆっくり放出する組成物を意味することを意図する。
【0082】
いくつかの態様において、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した、37℃でpH 6.8を有する200ml水性溶媒中300rpmでの溶出試験法(例えば、Labfine Co., Mumbai, India提供)を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置すると、24時間後に活性作用物質の約40%未満が放出され、48時間後に活性作用物質の約60%未満が放出され、72時間後に活性作用物質の約80%未満が放出され、144時間後に活性作用物質の約90%未満が放出される。いくつかの態様において、45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した、37℃でpH 6.8を有する200ml溶媒中300rpmでの溶出試験法(例えば、Labfine Co., Mumbai, India提供)を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置すると、24時間後に活性作用物質の約20%~約50%が放出され、24時間後に活性作用物質の約20%~約40%が放出され、48時間後に活性作用物質の約40%~約70%が放出され、48時間後に活性作用物質の約40%~約60%が放出され、72時間後に活性作用物質の約40%~約80%が放出され、72時間後に活性作用物質の約50%~約80%が放出され、144時間後に活性作用物質の約60%~約90%が放出され、または144時間後に活性作用物質の約70%~約90%が放出される。
【0083】
いくつかの態様において、37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置すると、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、30分後に活性作用物質の約20%未満が放出され、60分後に活性作用物質の30%未満が放出され、120分後に活性作用物質の50%未満が放出され、かつ/または、120分後に活性作用物質の10%未満が放出される。
【0084】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、注射可能剤形である。非経口注射のために、適切な製剤は、好ましくは生理学的に適合可能な担体を有する、水性または非水性液剤を含むことができる。
【0085】
非経口投与用の薬学的製剤は、水溶性形態の活性化合物の水性液剤を含む。加えて、適切な油性注射懸濁剤として、活性作用物質の懸濁剤を調製することもできる。好適な脂質類または親油性担体は、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。脂質は、モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、大豆油、ヒマシ油、コーン油、パーム油、落花生油、カカオ脂、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0086】
ヒドロゲルが医学に応用されて以来、医学、薬学、および化粧品業界を含めた多くの分野で多数のヒドロゲルが開発および研究されてきた。ヒドロゲルは、一般に生体適合性であるが、薬物の送達を制限する様々な問題を有しており、こうした問題を解決するために様々な努力が成されている。ヒドロゲルは、親水性ポリマー類の網目構造から構成される三次元構造体である。その成分の90%超は、水から構成されている。ヒドロゲルは、高い含水率、多孔質構造、比較的軟質な特性、および生体適合性など生体組織と似ていることから、生体医学の分野において積極的に研究されてきた。ヒドロゲルは、主鎖として使用されるポリマーの種類または採用される架橋法に応じて様々な特性を示すことができる。ポリアクリル酸系列ポリマーのポリマーまたはポリビニルアルコールなどの合成化合物が使用されたとき、生体適合性は低いが、その化学修飾は容易であり、よって工学応用が非常に容易である。その一方で、天然化合物、とりわけペクチン、アルギン酸、コラーゲン、フィブリンおよびヒアルロン酸が主鎖として使用されたとき、化学修飾は困難である。それにもかかわらず、臨床応用に適することおよび移植時に免疫炎症反応などの副作用がほとんどないことから、生物由来の成分であるこれらの材料を使用する利点がある。
【0087】
使用するポリマーの種類のみならずヒドロゲルの特性にも影響を及ぼすのが架橋法である。同じポリマーが主鎖として使用されたとしても、架橋法が異なれば完全に異なる特徴を有するヒドロゲルを得ることができる。ヒドロゲルを架橋する方法は、物理的方法と化学的方法とに大別することができる。物理的架橋法は、イオン相互作用、疎水性相互作用、水素結合、および構造上のもつれによる可逆的架橋を含む。これらの架橋法は、別個の化学添加物または複雑なプロセスを必要とすることなく、三次元網目構造の形成を容易に引き起こすことができる。その一方で、化学的架橋法は、典型的には、不可逆的でありかつ物理的架橋法と比較して安定な網目構造をもたらす、共有結合を形成する。優れた生体適合性および様々な物理化学的特性を有するヒドロゲルが薬物送達および組織工学などの生体医学の分野において広く研究されている。ほとんどのヒドロゲルは、それらの高い含水率に起因して他の薬物送達系よりも短い薬物放出時間を示し、より長い薬物放出時間を有する系を開発する必要がある。
【0088】
いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、経口剤形である。経口投与のために、活性作用物質と当技術分野において周知の薬学的に許容される担体または賦形剤とを組み合わせることによって、本明細書に記載の化合物を容易に製剤化することができる。そのような担体によって、処置されるべき患者による経口摂取のため、錠剤、粉剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤などとして、本明細書に記載の活性作用物質を製剤化することが可能になる。
【0089】
1つまたは複数の固体担体と本明細書に記載の化合物とを混合し、得られた混合物を任意で粉砕し、所望により好適な補助剤を加えた後に、顆粒の混合物を加工することによって、錠剤または糖衣錠コアを得ることで、経口使用のための薬学的調製物を得ることができる。好適な賦形剤は、増量剤、例えば、乳糖、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;セルロース調製物:例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど;またはその他のもの:ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)またはリン酸カルシウムなどを含むが、それらに限定されない。所望により、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えることができる。
【0090】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。このために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは、任意で、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有することができる。識別のためまたは活性化合物用量の様々な組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに染料または顔料を加えることができる。
【0091】
活性作用物質を薬学的に使用できる調製物へ加工するのを容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の薬学的に許容される担体を使用して、薬学的組成物を従来の様式で製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。周知の技術のいずれかを、当技術分野において適する通りかつ理解されている通り使用することができる。本明細書に記載の薬学的組成物は、従来の様式で、例えば、ほんの一例として、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入または圧縮プロセスを介して製造することができる。
【0092】
水性懸濁剤はまた、懸濁化剤として1つまたは複数のポリマー類を含有することができる。ポリマーは、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸・乳酸(PLGA)、またはそれらの組み合わせであることができる。他の有用なポリマー類は、セルロース系ポリマー類、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー類、および架橋カルボキシル含有ポリマー類などの水不溶性ポリマー類を含む。有用な組成物はまた、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウム、およびデキストランから選択される粘膜付着性ポリマーを含むことができる。
【0093】
いくつかの態様において、乳酸カルシウムと、活性作用物質の放出を制御するための薬学的に許容される腸溶性コーティングとを含む、薬学的剤形が提供される。いくつかの態様において、コーティングは、フィルムであり、別の態様においては、膜である。腸溶性コーティング、例えば、フィルムまたは膜は、胃の後まで放出を遅延させるために、かつ、活性作用物質を胃液から保護するために役立つことができる。腸溶性コーティングは、任意で、他の賦形剤、例えば可塑剤などを含む、1つまたは複数の好ましくは重合性の物質(例えば、メタクリレートなど;多糖類など、以下に詳細に記載する通り)または2つもしくはそれ以上のそのような物質の組み合わせを含むことができる。いくつかの態様において、腸溶性コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。本発明のいくつかの態様において、組成物は、ヒドロゲル形成ポリマーと、活性作用物質の放出において所望の遅延(または他の変化)を達成することが可能なさらなるポリマー類を含む。
【0094】
経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体は、乳糖およびコーンスターチを含む。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤も加えられる。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤は、乳糖および乾燥コーンスターチを含む。
【0095】
滅菌注射可能調製物はまた、脂質類などの非毒性の非経口的に許容される担体中の滅菌注射可能懸濁剤であることもできる。
【0096】
薬学的組成物中に含まれる乳酸カルシウムの量は、最終組成物の総重量に基づいて1wt%~50wt%、1wt%~40wt%、1wt%~35wt%、1wt%~30wt%、1wt%~20wt%、1wt%~15wt%、または1wt%~10wt%であることができるが、それらに限定されない。薬学的組成物の単回用量に含まれる乳酸カルシウムの濃度は、2.5mM~100mM、2.5mM~50mM、2.5mM~25mM、5mM~100mM、5mM~50mM、5mM~25mM、10mM~100mM、10mM~50mM、または10mM~25mMであることができるが、それらに限定されない。
【0097】
限定されないが乾式造粒、直接圧縮、湿式造粒、押出球状化、溶融造粒または圧縮コーティングなどの従来の技術によって、固体の経口薬学的組成物を調製することができる。コーティングは、以下に記載の通り適用することができ、厚さおよび密度に関して変動可能である。コーティングの量は、本発明の乾燥組成物(例えば、乳酸カルシウムを含有するビーズまたはコア)に加えられる(それによって得られる)追加重量によって規定される。重量増加は、0.1%~50%、1%~20%、1%~15%、3%~10%、5%~12%、または8%~12%の範囲であることができる。
【0098】
コーティングプロセスは、任意の好適な手段、例えば、ポリマーコートの溶液(特に上記の通り)を組成物に適用するコーティング機器の使用などによって行うことができる。コーティング用のポリマー類は、製造業者によって直接使用のための既製溶液で提供されているか、製造業者の説明書に従って使用前に構成できるかのいずれかである。
【0099】
単位投与量およびキット
用語「単位剤形」は、各単位が所定量の活性成分を好適な薬学的賦形剤と組み合わせて含有する単回投与量として適した物理的に分離した単位であって、1つまたは複数が投薬計画を通して使用されて所望の治療効果をもたらす、例えば、本明細書に開示されている1つまたは複数の疾患を処置する単位を指す。
【0100】
本明細書に記載の薬学的組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形であることができる。単位剤形では、製剤は、1つまたは複数の活性作用物質を適量含有する単位用量に分割される。単位投与量は、製剤を個別の量で含有する包装形態であることができる。非限定例は、包装された錠剤またはカプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の粉剤である。水性懸濁組成物を、単一用量の再密閉不可能な容器に包装することができる。あるいは、複数用量の再密閉可能な容器を使用することもでき、その場合、組成物中に防腐剤を含めることが典型である。ほんの一例として、非経口注射用の製剤は、単位剤形(アンプルを含むがこれに限定されない)でまたは複数用量容器で提示することができる。
【0101】
乳酸カルシウムに適した1日投与量は、約1mg/kg~約1000mg/kg、約10mg/kg~約750mg/kg、約10mg/kg~約500mg/kg、または約100mg/kg~500mg/kg(体重)であることができる。大型哺乳動物(ヒトを含むがこれに限定されない)において示される1日投与量は、約5mg~約100,000mgの範囲であるが、分割用量(1日最大4回を含むがこれに限定されない)でまたは長時間作用形態で都合よく投与される。投与に好適な単位剤形は、約10mg~約1000mg、約100mg~約1000mg、約500mg~約750mg、約25mg~約250mg、約50mg~約100mg、約10mg~約200mg、または約10mg~約250mgの活性作用物質を含む。本開示の組成物の投与頻度は、1日1回、2回、3回、4回などの分割用量であることができるが、それらに特に限定されない。任意の個別の事例における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定することができる。
【0102】
前述の範囲は、個々の処置計画に関する変数の数が大きいため、単なる示唆にすぎず、これらの推奨値からの大幅な逸脱は、珍しいことではない。そのような投与量は、限定されないが、使用される化合物の活性、処置されるべき疾患または病態、投与様式、個々の対象の要件、処置されている疾患または病態の重症度、および実践者の判断といった多数の変数に応じて変更することができる。
【0103】
そのような治療計画の毒性および治療効果は、限定されないがLD50(母集団の50%に致死的な用量)およびED50(母集団の50%において治療的に有効な用量)の決定を含む、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学手順によって決定できる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50とED50との間の比率として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを、ヒトに使用するための投与量の範囲を定める際に使用することができる。活性作用物質の投与量は、毒性が最小限であるED50を含む循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動可能である。
【0104】
本発明によれば、薬学的組成物は、滅菌注射可能調製物、例えば滅菌注射可能な水性または油性懸濁液の形態であることができる。本発明の薬学的組成物は、限定されないがカプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または液剤を含む、経口的に許容される任意の剤形で、経口投与することができる。
【0105】
本発明はまた、本明細書に開示の薬学的組成物を含む滅菌のガラスまたはポリオレフィン容器を対象とする。いくつかの態様において、容器は、非DEHP(ビス(2-エチルヘキシル) フタレート (ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、DEHP;ジオクチルフタレート、DOP)または非PVP(ポリビニルピロリドン)である。
【0106】
キットは、ボックス、個々のボトル、バッグまたはアンプルなどの好適な容器を含む。懸濁組成物は、単一用量の再密閉不可能な容器または複数用量の再密閉可能な容器内に包装することができる。
【0107】
2017年12月21日に公開されたUS2017/0360727A1、およびPCT/IB2017/054091(国際出願日:2017年7月7日)が、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。また、2018年1月12日に出願された米国特許出願番号62/616,923も、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0108】
実施例1
加齢黄斑疾患用の細胞培養
ヒト網膜色素上皮細胞株ARPE-19は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(Manassas, VA, USA)から購入した。ARPE-19細胞を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Welgenc, Daegu, South Korea)を含有するRPMI 1640中で維持した。
【0109】
実施例2
アルツハイマー病用の細胞培養
ヒト脳細胞株SK-N-SHは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。SK-N-SH細胞を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)を含有するRPMI 1640中で維持した。
【0110】
実施例3
線維芽細胞用の細胞培養
ヒト結腸線維芽細胞細胞株CCD-18-Coは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。CCD-18Co細胞を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)を含有するDMEM中で維持した。
【0111】
実施例4
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)用の細胞培養
ヒト肝細胞がん細胞株HepG2は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。HepG2細胞を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)を含有するRPMI 1640中で維持した。
【0112】
実施例5
血管疾患用の細胞培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞株HUVECは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。HUVEC細胞を、内皮細胞増殖培地2サプリメントミックスを含む内皮細胞増殖培地2(PromoCell, Heidelberg, Germany)中で維持した。
【0113】
実施例6
マクロファージ培養
ヒト肝星細胞株LX-2は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。LX-2細胞を、2%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)を含有するDMEM中で維持した。
【0114】
ヒト単核球細胞株THP-1は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。THP-1細胞を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD, USA)、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)、および0.55uMの2-メルカプトエタノールを含有するRPMI 1640中で維持した。一方が5% CO2を含有する37℃の加湿雰囲気であり、他方が酸素1%、5%および94%で維持された低酸素培養条件である、両方の条件で細胞を培養した。
【0115】
実施例7
試薬
乳酸カルシウム(CaLa)およびリポ多糖(LPS)は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入し、2-メルカプトエタノールは、Gibco(Grand Island, NY, USA)から購入した。ホルボール 12-ミリステート13-アセテート(PMA)は、Enzo Lifesciences(Enzo Diagnostic, NY, USA)から購入した。ヒトインターフェロン-ガンマ、ヒトインターロイキン-4(IL-4)およびヒトインターロイキン-10(IL-10)は、BPS Bioscience(San Diego, CA, USA)から購入した。パラホルムアルデヒド(PFA)溶液(4%)は、Biosesang(Biosesang Inc., Gyeonggi, Korea)から購入した。
【0116】
実施例8
細胞生存アッセイ
ARPE-19細胞において生細胞ムービー分析装置JuLI(商標)Br(NanoEnTek Inc., Seoul, Korea)を使用してCaLaの毒性を確認した。6ウェル培養プレートに培地中2.5×105細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を2.5mMのCaLaで12時間および24時間処理した。CaLa処理時間中、細胞を24時間継続的にモニタリングした(30、31)。
【0117】
実施例9
マクロファージ分化
ヒト単核球細胞株THP-1は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(Manassas, VA, USA)から購入した。THP-1細胞を、10%ウシ胎児血清(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, UT, USA)、100IU/mlペニシリン(Welgene, Daegu, South Korea)、100μg/mlストレプトマイシン(Welgene, Daegu, South Korea)、および0.55μMの2-メルカプトエタノール(Gibco, Grand Island, NY, USA)を補充したRPMI 1640培地(Hyclone Laboratories, Inc., Logan, UT, USA)中で維持した。THP-1細胞を、5% C02の加湿雰囲気中37℃で維持した。THP-1単核球は、RPMI 1640培地中で100μg/mlのホルボール 12-ミリステート13-アセテート(PMA)(Enzo Diagnostic, NY, USA)と12時間インキュベーションすることによってマクロファージに分化する。マクロファージは、RPMI 1640培地中で20ng/mlのIFN-γ(BPS Biosciencc, San Diego, CA, USA)および100μg/m1のLPS(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)と24時間インキュベーションすることによってMlマクロファージに極性化した。マクロファージM2極性化は、RPMI 1640培地中で20ng/mlのIL-4(BPS Bioscience, San Diego, CA, USA)および20ng/mlのIL-10(BPS Bioscience, San Diego, CA, USA)と24時間インキュベーションすることによって得られた(32)。
【0118】
実施例10
細胞生存についての光学的観察
ARPE-19細胞において生細胞ムービー分析装置JuLI(商標)Br(NanoEnTek Inc., Seoul, Korea)を使用してCaLaの毒性を確認した。6ウェル培養プレートに培地中2.5×105細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を2.5mMのCaLaで12時間および24時間処理した。CaLa処理時間中、細胞を24時間継続的にモニタリングした。
【0119】
実施例11
ウェスタンブロット分析
全細胞溶解液を調製するために、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche, Basel, Switzerland)およびホスファターゼインヒビター(NA3VO4 1mM、NaF 100mM)含有の溶解緩衝液(1% NP-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1% Triton X-100、50mM Tris-HCl(pH 7.4)、10%グリセロール)で細胞を溶解した。次いで、ビシンコニン酸(BCA)アッセイキット(Thermo Scientific, Waltham, MA)を使用してタンパク質濃度を測定した。全細胞溶解液または核溶解液をポリフッ化ビニリデンメンブレン(Merck Millipore, Billerica, MA, USA)に転写した。5%脱脂乳(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)中で1時間ブロッキングした後、メンブレンを、5% BSAおよび0.1%アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich)が加えられた100mM Tris-HCI(pH 7.5)、1.5M NaCl、および0.5% Tween-20(Sigma-Aldrichから入手)を含有するTBST中で希釈した一次抗体と4℃で一晩インキュベーションした。具体的な一次抗体は、HIF-1α(1:1000)、HIF-2α(1:1000)、LDH-A(1:1000)、LDH-B(1:1000)、TLR-4(1:1000)、NF-κB(1:1000)、VEGF(1:1000)、α-チューブリン(1:1000)、アクチン(1:1000)、およびGAPDH(1:5000)に対するものである。翌日、メンブレンをTBSTで洗浄し、抗ウサギ二次抗体(1:10000)と2時間インキュベーションした。ウェスタンブロット検出試薬(Abclone, Seoul, Korea)を使用してイムノブロットを発色させ、製造業者のプロトコルに従ってX線フィルム(Agfa, Leverkusen, Germany)に露光した。
【0120】
実施例12
免疫細胞化学
ARPE-19細胞およびSK-N-SH細胞を、4% PFAによってバイオコートカバースリップ(BD bioscience, San Jose, CA, USA)上に20分間固定し、次いで、一次抗体と15時間インキュベーションした。一次抗体は、以下の通りであった:HIF-1α(1:300, BD Biosciences, San Jose, CA, USA);LDH-A(1:300, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA USA);LDH-B(1:300, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA USA);NF-κB(1:300, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA USA);TLR-4(1:300, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA USA);apoE(1:200, Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA USA)。PBS洗浄後、細胞を抗マウス二次ビオチン化抗体(1:2000, Vector Laboratorie, Burlingame, CA USA)とインキュベーションし、フルオレセインにコンジュゲートされたストレプトアビジン(Vector Laboratorie, Burlingame, CA USA)で可視化した。DAPI(Vector Laboratories, Burlingame, CA USA)含有のVECTASHIELD(登録商標)Hard Set(商標)封入剤でカバースリップを顕微鏡スライド上に封入した。共焦点レーザー走査型顕微鏡検査(LSCM, Nikon A1+, Tokyo, Japan)により60×油浸レンズ下で共焦点蛍光画像を取得した。
【0121】
実施例13
NASH用の動物モデル
実験はすべて、嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって確立された施設内ガイドライン(IACUC-2017-0008)の下で実施された。雌の5週齢のC57BL/6マウスをKOATEC(Pyeongtaek, South Korea)から購入し、メチオニン-コリン飼料(MCD)を4週間与えた。マウスの体重がそれぞれ15gになったら、マウスを無作為に解剖して非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を特定した。4週間にわたってマウスに乳酸カルシウム(2mg/kg)を1日2回(B.I.D)皮下注射した。
【0122】
実施例14
加齢黄斑変性用の動物モデル
実験はすべて、嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって確立された施設内ガイドライン(IACUC-2017-0008)の下で実施された。6週齢の雌のC57BL/6マウス(20~25g)は、Orient(Charles River Korea, Seoul, Korea)から購入した。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22℃~25℃の12時間の明/暗サイクル(08:00に点灯)で維持した。マウスを誘導チャンバー上に個別に載せ、2%イソフルラン(HANA PHARM CO., Seoul, Korea)で麻酔を誘導した。レーザー光凝固(SDL405-700, SD Laser, China)によってマウスのそれぞれの眼に病変を誘導した。レーザーパルスは、青色レーザー(波長、405nm;SD Laser)由来ものであった。レーザーパラメーターは、スポットサイズ100μm、パワー700mwおよび露光時間1秒であった。合計15匹のマウスを3群に無作為化した:(i)レーザー誘導を受けない群(n=3);(ii)レーザーにより火傷を受けてビヒクル緩衝液が注射された群(n=5);および(iii)CaLa、2mg/kg/日(B.I.D)を受けた群(n=7)。CaLa処置は、レーザー光凝固後の日から開始し、14日間皮下処置した(33、34)。
【0123】
実施例15
NASHモデルについての組織学的解析
マウスの肝組織(n=5)を切開し、4%パラホルムアルデヒドPBS溶液中に4℃で15時間固定した。固定した肝組織をパラフィン包埋し、10μmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)およびエオジン(H&E)染色に使用した(35)。H&Eで染色したパラフィン切片(10μm厚)を、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0124】
実施例16
加齢黄斑変性についての組織学的解析
2mg/kgのCaLaを皮下投与した2週間後に、網膜病変の病理組織学的検査を実施した。摘出した眼球を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて4℃で24時間固定し、前眼部を除去することによって得られた眼をリン酸緩衝食塩水中で3回洗浄した。固定したフラットマウントを等級系列エタノール中で脱水し、パラフィン包埋した。パラフィン切片(10μm厚)をヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)およびエオジン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)(H&E)で染色し、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetelar, Germany)を使用して撮像した。共焦点顕微鏡検査(Carl Zeiss, Oberkochcn, Germany)によってフラットマウント上の脈絡膜病変および新血管形成を観察した。
【0125】
実施例17
マッソントリクローム染色
マウスの肝組織(n=5)を切開し、4%パラホルムアルデヒドPBS溶液中に4℃で15時間固定した。固定した組織をパラフィン包埋し、5mmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ブアン液中56℃で1時間再固定し、水道水で5~10分間すすいで黄色を除き、ビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン液で5分間、次いで、リンモリブデン酸-リンタングステン酸溶液(1:1比)中で30分間、そして、アニリンブルー液で15分間染色した。蒸留水中および1%酢酸溶液中で2~5分間簡単にすすいだ。95%エチルアルコール、無水エチルアルコール中で脱水し、キシレン中で清浄化した。封入剤で封入した。Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0126】
実施例18
結果
図1は、ヒト白血病単核球のインビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件のTHP-1細胞(ヒト白血病単核球)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示す。
【0127】
図2は、マクロファージに分化したヒト白血病単核球のインビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のPMA(ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート)で分化したTHP-1細胞(M0マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示す。
【0128】
図3は、酸素正常条件および低酸素条件下のインターフェロンガンマ(IFN-γ)およびリポ多糖(LPS)で分化したTHP-1細胞(M1マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示すウェスタンブロット結果を提供する。
【0129】
図4は、酸素正常条件および低酸素条件下のインターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-10(IL-10)で分化したTHP-1細胞(M2マクロファージ)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示すウェスタンブロット結果を提供する。
【0130】
図5は、肝線維化インビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のLX-2細胞(ヒト肝星細胞)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)が減少したことを示す。
【0131】
図6は、ヒト内皮細胞インビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のヒト臍帯静脈内皮細胞において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子(乳酸デヒドロゲナーゼA)が減少したことを示す。
【0132】
図7は、ヒト線維芽細胞インビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のCCD-18Co細胞(ヒト結腸線維芽細胞)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼBが増加したことを示す。
【0133】
図8は、脳CIDインビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のSK-N-SH細胞(脳上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が減少したことを示す。
【0134】
図9は、肝臓CIDインビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、低酸素条件下のHepG2細胞(肝上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が変化したことを示す。
【0135】
図10は、低酸素条件下のHepG2細胞(肝上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処理によって炎症性因子(TLR-4)が減少したことを示すウェスタンブロット結果を提供する。
【0136】
図11は、眼CIDインビトロ実験である。ウェスタンブロット結果は、酸素正常条件および低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素媒介因子が減少したことを示す。
【0137】
図12は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)が減少したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0138】
図13は、酸素正常条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼAが減少したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0139】
図14は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(核内因子カッパB)が減少したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0140】
図15は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(トル様受容体4)が減少したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0141】
図16は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により乳酸デヒドロゲナーゼBが増加したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0142】
図17は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置によりドルーゼンマーカー(アポリポタンパク質E)が減少したことを示す免疫細胞化学結果を提供する。
【0143】
図18は、低酸素条件下のARPE-19細胞(網膜色素上皮)において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示すウェスタンブロット結果を提供する。
【0144】
図19は、ARPE-19細胞(網膜色素上皮)において2.5mMの乳酸カルシウム処置による毒性がないことを示す。乳酸カルシウムは、傷害を受けた上皮細胞の代謝変化においてのみ重要な役割を果たす。
【0145】
図25は、網膜色素上皮の組織において、2.5mMの乳酸カルシウム処置により炎症性因子(NF-κb)が減少したことを示すウェスタンブロット結果を提供する。
【0146】
実施例19
消化器疾患(NFALD、NASH)の標的化
材料および方法
肝疾患用の動物モデル。実験はすべて、嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって確立された施設内ガイドライン(IACUC-2017-0008)の下で実施された。雌の5週齢のC57BL/6マウスをKOATEC(Pyeongtaek, South Korea)から購入し、メチオニン-コリン(MCD)飼料を4週間与えた。4週間にわたってマウスに乳酸カルシウム(2mg/kg)を1日2回(B.I.D)皮下注射した。組織学的解析。マウスの肝組織(n=5)を切開し、4%パラホルムアルデヒドPBS溶液中に4℃で15時間固定した。固定した肝組織をパラフィン包埋し、10μmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)およびエオジン(H&E)染色に使用した。H&Eで染色したパラフィン切片(10μm厚)を、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0147】
マッソントリクローム染色。マウスの肝組織(n=5)を切開し、4%パラホルムアルデヒドPBS溶液中に4℃で15時間固定した。固定した組織をパラフィン包埋し、5mmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ブアン液中56℃で1時間再固定し、水道水で5~10分間すすいで黄色を除き、ビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン液で5分間、次いで、リンモリブデン酸-リンタングステン酸溶液(1:1比)中で30分間、そして、アニリンブルー液で15分間染色した。蒸留水中および1%酢酸溶液中で2~5分間簡単にすすいだ。95%エチルアルコール、無水エチルアルコール中で脱水し、キシレン中で清浄化した。封入剤で封入した。Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0148】
図20は、肝臓CID(NASH)インビボ実験である。NASHを誘導するために、マウスに、多価不飽和脂肪含有のメチオニン-コリン欠乏(MCD)飼料を8週間与えた。血液化学結果は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置により血清ASTおよびALTが顕著に減少したことを示す。**P<0.001、対メチオニン-コリン欠乏(MCD)。結果は、平均±SDである。
【0149】
図21は、乳酸カルシウム処置群では脂肪滴(肝組織中の白色孔)が観察されなかった一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群では脂肪滴がよく観察されたことを示す免疫組織化学結果を提供する。2mg/kgの乳酸カルシウム処置により脂肪変性が防止された。結果は、乳酸カルシウム処置により脂肪変性が防止されたことを示す。
【0150】
図22は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において脂肪滴(肝組織中の白色孔)が存在しない一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群ではこれらが見られることを示す免疫組織化学結果を提供する。
【0151】
図23は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において免疫細胞浸潤が減少する一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群では免疫細胞浸潤が増加することを示す免疫組織化学結果を提供する。
【0152】
図24は、2mg/kgの乳酸カルシウム処置群では、対照群と同様に、肝臓において線維化(コラーゲン蓄積部位;白色矢印)が存在しない一方で、メチオニン-コリン欠乏(MCD)群ではそれが存在することを示す免疫組織化学結果を提供する。
【0153】
実施例20
眼疾患(加齢黄斑変性(AMD)、角膜炎、および糖尿病網膜症)の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって確立された施設内ガイドライン(IACUC-2017-0008)の下で実施された。6週齢のC57BLマウスは、Orient(Charles River Korea, Seoul, Korea)から購入した。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクル(08:00に点灯)で維持した。
【0154】
乳酸カルシウムの調製。乳酸カルシウムは、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入し、毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。
【0155】
眼疾患用の動物モデル。マウスを誘導チャンバー上に個別に載せ、2%イソフルラン(HANA PHARM CO., Seoul, Korea)で麻酔を誘導した。レーザー光凝固(SDL405-700, SD Laser, China)によって、マウスの両眼にレーザー誘起したブルッフ膜断裂を誘導した。レーザーパルスは、緑色レーザー(波長、532nm;Visulas, 532;SD Laser)由来ものであった。レーザーパラメーターは、スポットサイズ100μm、パワー700mwおよび露光時間1秒であった。
【0156】
脈絡膜フラットマウントの調製。レーザー傷害の21日後に、各群のマウスに麻酔をかけ、25mgフルオレセインイソチオシアネート-デキストラン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を含有するPBS 1.0mLを左室に灌流した。目を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中で1時間固定した。眼を片側切断し、レンズ、硝子体および網膜を全部除去した後に、網膜色素上皮-脈絡膜-強膜アイカップを作製した。網膜色素上皮-脈絡膜-強膜アイカップを、端部から赤道部へ4つまたは5つの放射状切開を作ることによって平坦にし、アクアマウント中にフラットマウントした。
【0157】
組織学的解析。固定したフラットマウントを等級系列エタノール中で脱水し、パラフィン包埋した。パラフィン切片(10μm厚)をヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)およびエオジン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)(H&E)で染色し、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。共焦点顕微鏡検査(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)によって、フラットマウント上の脈絡膜病変および新血管形成を観察した。
【0158】
結果
図26は、脈絡膜フラットマウントの内層の病変のH&E染色についての代表的画像を提供する。AMD誘導後に網膜色素上皮の異常な形態学が観察された(中央の画像)。2.5mMの乳酸カルシウムでの処置(右の画像)により、正常対照上皮(左の画像)と同様に網膜色素上皮の形態学が再生された。
【0159】
図27は、レーザー誘起AMDによるフラットマウント上の脈絡膜の内層の病変についての蛍光画像を提供する。AMD誘導後に脈絡膜病変が観察された(中央の画像)。脈絡膜病変は、乳酸カルシウムによる処置後に回復した(右の画像)。
【0160】
図28は、レーザー誘起AMDによるフラットマウント上の脈絡膜の内層の病変および新血管形成についての蛍光画像を提供する。AMD誘導後に脈絡膜病変および新血管形成が観察された(中央の画像)。乳酸カルシウムによる処置後に、正常対照(左の画像)と同じく、脈絡膜病変および新血管形成が回復した(右の画像)。
【0161】
実施例21
アルツハイマー病および脳卒中の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(LCDI-2018-0073)に従って行った。8週齢の雄のSprague-Dawley(SD)ラットをSamtako Co.(Osan, Gyeonggi-do, Republic of Korea)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0162】
リポ多糖(LPS)および乳酸カルシウムの調製。LPS粉末1mgを食塩水1mlに溶解する。LPSをすぐに使用するつもりならチューブを氷上で保持する。長期保存のために、スクリューキャップバイアルが好ましい。アリコートを-20℃で保存した。乳酸カルシウムは、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。
【0163】
LPSの頭蓋内注射。ガス麻酔下(2%イソフルラン、Spartanburg, SC, USA)で楽に呼吸ができるようにした麻酔器に連結された小さなアクリルケージに動物を入れた。動物の十分な麻酔が達成された後、後頚部が露出するように頚部上面を上方に伸ばして動物を手術台上に配置した(ガス麻酔を維持しながら)。動物の頭部の毛を電気バリカンで剃り、皮膚にヨウ素を塗った。LPSは、使用するまで氷上で保持した。外科器具はすべて、70%エタノールで消毒した。ハミルトンシリンジの筒の内空を蒸留水および70%エタノールで清浄化した。ハミルトンシリンジをシリンジホルダーに入れた。脳定位固定装置内の動物を横向姿勢にした。外科用メスで頭部の皮膚上に正中切開(約1cm)を作製した。ハミルトンシリンジの針をブレグマ上に取り付けた。マニピュレーター上の3座標(AP:-3.6、LM:2.0およびDV:-3.8)を読み取り(mm単位)、それらを記録した;これを開始点に使用した。徐々に、注入点のDV座標を定め;脳に針先を注入点まで挿入する。LPS溶液(2μl)を0.5μl/分の一定流量で放出した。注入後、針を極めてゆっくり引き抜いた。創傷部を縫合によって閉じ、次いで、消毒薬を塗った。ラットをさらなる特定のためにマーキングした。
【0164】
免疫組織化学。クリオスタット上で脳組織を5μmに切片化し、組織学的検査用に染色した。顕微鏡画像を200Xの倍率で取得した。免疫組織化学について、0.05M PBS中の1% BSAおよび10% NGSで切片を室温で1時間ブロッキングし、次いで、ウサギ抗Iba-1(1:1000, Bioss, MA, USA)と4℃で二晩反応させた。ABC染色系を使用して、切片中のミクログリア(Iba-1)を可視化した(Vector Laboratories, CA, USA)。
【0165】
結果
図29は、アルツハイマー病および脳卒中を確立するための実験スキームを提供する。OMT-110は、乳酸カルシウムである。
図30は、LPSによる脳損傷を示す代表的画像を提供する。対側:正常領域。同側:LPS注射。
【0166】
図31は、損傷を受けた脳組織の再生および脳損傷時に動員されたミクログリア浸潤の低下を示す。結果は、アルツハイマー病および脳卒中を悪化させる炎症反応が大きく低減されることを示す。
【0167】
実施例22
パーキンソン病の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(LCDI-2018-0073)に従って行った。8週齢の雄のSprague-Dawley(SD)ラットをSamtako Co.(Osan, Gyeonggi-do, Republic of Korea)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0168】
デシプラミン、6-OHDA、および乳酸カルシウムの調製。デシプラミン(12.5mg/kg;ノルアドレナリン輸送体遮断薬;Sigma Aldrich, St. Louis, USA)を腹腔内注射用に食塩水に溶解した。6-OHDA(20μg/ラット、Sigma Aldrich, St. Louis, USA)を頭蓋内注射用に食塩水に溶解した。2mg/kgの乳酸カルシウム(Sigma Aldrich, St. Louis, USA)を毎日の皮下注射(21日間)用に食塩水に溶解した。
【0169】
デシプラミンおよび6-OHDAの注射。6-OHDA注射の30分前に、動物の腹腔にデシプラミンを注射した(腹腔内注射)。デシプラミン注射の30分後、ガス麻酔下(2%イソフルラン、Spartanburg, SC, USA)で楽に呼吸ができるようにした麻酔器に連結された小さなアクリルケージに動物を入れた。動物の十分な麻酔が達成された後、後頚部が露出するように頚部上面を上方に伸ばして動物を手術台上に配置した(ガス麻酔を維持しながら)。動物の頭部の毛を電気バリカンで剃り、皮膚にヨウ素を塗った。外科器具はすべて、70%エタノールで消毒した。ハミルトンシリンジの筒の内空を蒸留水および70%エタノールで清浄化した。ハミルトンシリンジをシリンジホルダーに入れた。脳定位固定装置内の動物を横向姿勢にした。外科用メスで頭部の皮膚上に正中切開(約1cm)を作製した。ハミルトンシリンジの針をブレグマ上に取り付けた。マニピュレーター上の3座標(AP:-5.6、LM:2.0およびDV:-7.6)を読み取り(mm単位)、開始点として使用した。注入点のDV座標を徐々に定め;脳に針先を注入点まで挿入する。6-OHDA溶液(20μg/4μl)を1μl/分の一定流量で放出した。注入後、針を極めてゆっくり引き抜いた。創傷部を縫合によって閉じ、次いで、消毒薬を塗った。ラットをさらなる特定のためにマーキングした。
【0170】
免疫組織化学。クリオスタット上で脳組織を5μmに切片化し、組織学的検査用に染色した。顕微鏡画像を200Xの倍率で取得した。免疫組織化学について、0.05M PBS中の1% BSAおよび10% NGSで切片を室温で1時間ブロッキングし、次いで、ウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼ(1:500, Chemicon, Tokyo, Japan)と4℃で二晩反応させた。ABC染色系を使用して、切片中のドーパミン作動性ニューロンを可視化した(Vector Laboratories, CA, USA)。
【0171】
結果
図32は、パーキンソン病を確立するための実験スキームを提供する。OMT-110は、乳酸カルシウムである。
【0172】
図33は、乳酸カルシウムでの処置によるドーパミン作動性ニューロンの再生を示す。パーキンソン病は、脳の特定領域(黒質)中のドーパミン作動性ニューロンを崩壊させることによってドーパミン産生に影響を及ぼす神経変性障害である。
【0173】
実施例23
多発性硬化症および脊髄損傷の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(LCDI-2018-0073)に従って行った。8週齢の雄のSprague-Dawley(SD)ラットをSamtako Co.(Osan, Gyeonggi-do, Republic of Korea)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0174】
リポ多糖(LPS)および乳酸カルシウムの調製。LPS粉末1mgを食塩水1mlに溶解する。LPSをすぐに使用するつもりならチューブを氷上で保持する。長期保存のために、スクリューキャップバイアルを使用することが好ましい。アリコートを超低温冷凍庫(-20℃)で保存した。乳酸カルシウムは、Sigma Aldrich(St. Louis, USA)から購入した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解する。
【0175】
LPSの髄腔内注射。ガス麻酔下(2%イソフルラン、Spartanburg, SC, USA)で楽に呼吸ができるようにした、麻酔器に連結された小さなアクリルケージに動物を入れた。動物の十分な麻酔が達成された後、動物を手術台上に配置した(ガス麻酔を維持しながら)。LPSの髄腔内注射のために、ラットの椎弓切除部位を露出させた。左脊柱を覆う硬膜中に1mm間隔で2点小さな穴を作製した。体積1μlのLPS溶液を滅菌ハミルトンシリンジ内に慎重に吸引し、LPS溶液を脊髄にゆっくり注入した。注射部位からの逆流を防ぐためにシリンジを所定の位置でさらに2分間維持した。次いで、注射部位を止血鉗子によって閉じた。
【0176】
免疫組織化学。クリオスタット上で脊髄組織を5μmに切片化し、組織学的検査用に染色した。顕微鏡画像を200Xの倍率で取得した。免疫組織化学について、0.05M PBS中の1% BSAおよび10% NGSで切片を室温で1時間ブロッキングし、次いで、ウサギ抗lba-1(1:1000, Bioss, MA, USA)と4℃で二晩反応させた。ABC染色系を使用して、切片中のミクログリア(Iba-l)を可視化した(Vector Laboratories, CA, USA)。
【0177】
結果
図34は、多発性硬化症を確立するための実験スキームを提供する。OMT-110は、乳酸カルシウムである。
【0178】
図35は、乳酸カルシウムでの処置による脊髄脱髄の再生およびミクログリア浸潤の低下を示す。中枢神経系の脱髄および免疫浸潤は、多発性硬化症および脊髄損傷を含めた多数の障害において炎症と関連して生じる。
【0179】
実施例24
血管疾患(アテローム硬化症、脳出血、および心筋梗塞)の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および京畿バイオセンターの施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(2017-11-0008, South Korea)に従って行った。5週齢の雄のBALB/c ApoEshiマウスをJapan SLC Inc.(Shizuoka, Japan)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0180】
乳酸カルシウムの調製。乳酸カルシウムは、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。
【0181】
血管疾患用の動物モデル。血管疾患の自発誘導にBALB/c ApoEshi種が使用される。この調査では、高脂肪(40%)飼料を4週間与えて、強いアテローム硬化を誘導した。
【0182】
組織学的解析。胸部大動脈を切断し、大動脈の半分を10%中性緩衝液ホルマリン固定液中で固定した。次いで、組織学的解析を実施した。H&EおよびオイルレッドO染色で組織学的解析を実施した。大動脈壁厚、アテローム斑面積、泡沫細胞数、および脂質化領域を分析した。
【0183】
統計分析。統計分析をSPSS statisticsを使用して実施し、その結果をスチューデントのt検定を使用して分析した。マン・ホイットニー法を使用して組織学的解析を実施した。P<0.05を統計学的に有意と見なした。
【0184】
結果
(表1)組織学的解析のための定量分析。疾患誘導後に、動脈硬化のすべての臨床指標が有意に増加した。しかしながら、その指標は、乳酸カルシウムでの処置後に有意に減少した。
*:G2とG1との間で有意差がある、P<0.05; ++:G2とG3との間で有意差がある、P<0.01; +:G2とG3との間で有意差がある、P<0.05。
データを平均±S.E.Mとして表した。結果をマン・ホイットニー法によって統計分析した。
G1:正常対照(食塩水);G2:ビヒクル対照(食塩水);G3:乳酸カルシウム;G2~G3:高コレステロール飼料供給ApoE欠損マウス(アテローム硬化症)
【0185】
アテローム硬化症に対する直接標的化の証拠
(表2)臨床血液化学
データを平均±S.E.Mとして表した。スチューデントのt検定法によって統計分析した。
**:G2とG1との間で有意差がある、P<0.01
*:G2とG1との間で有意差がある、P<0.05
G1:正常対照(食塩水、n=3)
G2:ビヒクル対照(食塩水、n=8)
G3:試験物品(乳酸カルシウム五水和物、n=8)
G2~G3:高コレステロール飼料供給ApoE欠損マウス
【0186】
コレステロール(TCHO)、LDLコレステロール(LDL)、トリグリセリド(TG)、およびHDL-コレステロール(HDL)などの病原因子は、乳酸カルシウムによって制御されなかった。カルシウムと乳酸との組み合わせた形態は、単一成分として疾患部位に直接作用する(
図36を参照のこと)。
【0187】
図36は、大動脈組織の代表的な組織学的プロファイルを提供する。写真の左側および中央の組織は、H&E染色である。写真の右側の組織は、アテローム硬化症病変を区別するためのオイルレッド染色である。アテローム硬化症病変は、乳酸カルシウムでの処置により減少した。
【0188】
実施例25
歯周病(歯髄炎および歯周炎)の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(LCDI-2018-0073)に従って行った。8週齢の雄のSprague-Dawley(SD)ラットをSamtako Co.(Osan, Gyeonggi-do, Republic of Korea)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0189】
リポ多糖(LPS)および乳酸カルシウムの調製。LPS粉末1mgを食塩水100μlに溶解する。LPSをすぐに使用するつもりならチューブを氷上で保持する。長期保存のために、スクリューキャップバイアルを使用することが好ましい。アリコートを超低温冷凍庫(-20℃)内で保存した。乳酸カルシウムは、Sigma Aldrich(St.Louis, MO, USA)から購入した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。
【0190】
歯周病用の動物モデル。無菌食塩水中のLPS(1mg/100μl)の歯肉内注射によって歯周病を誘導した。微細皮下針を、右の第一下顎臼歯の近心側面に挿入し、注入が第一臼歯と第二臼歯との間の歯間乳頭で行われるように先端を遠心に動かした。注入をゆっくり行って、注入後10秒間所定の位置に針を保持し、LPSが針跡を通って失われないようにした。
【0191】
組織学的解析。ラットの歯を含めた歯肉を切開し、4%パラホルムアルデヒド中に4℃で2日間固定した。固定した組織をパラフィン包埋し、10μmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ブアン液中で1時間再固定し、水道水で5~10分間すすいで黄色を除き、ビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン液で5分間、次いで、リンモリブデン酸-リンタングステン酸溶液(1:1比)中で30分間、そして、アニリンブルー液で15分間染色した。蒸留水中および1%酢酸溶液中で5分間簡単にすすいだ。95%エチルアルコール、無水エチルアルコール中で脱水し、キシレン中で清浄化した。封入剤で封入した。染色した組織を、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0192】
結果
図37は、歯周組織についてのマッソントリクローム染色を示す。LPS処置は、歯周病を誘導し、これが、歯根の周囲の靱帯および歯肉の喪失を引き起こす(中央の画像)。乳酸カルシウムでの処置後(右の画像)は、正常対照(左の画像)と同じく靱帯および歯肉が再生した。
【0193】
図38は、上歯肉についてのマッソントリクローム染色を示す。LPSで処置した歯周組織の周囲の上歯肉は、重度炎症による異常な形態学を示す(中央の画像)。乳酸カルシウムでの処置後(右の画像)は、正常対照(左の画像)と同じく上歯肉の形態学が再生した。
【0194】
実施例26
筋骨格系疾患(関節リウマチ)の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および京畿バイオセンターの施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(2017-11-0003, South Korea)に従って行った。6週齢の雄のDBA1/JマウスをJapan SLC Inc.(Shizuoka, Japan)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0195】
作用物質の調製。関節リウマチの一次誘導のために、2mg/mLのII型コラーゲンを同体積の完全フロイントアジュバント(CFA)と混合した。関節リウマチの二次誘導のために、2mg/mLのII型コラーゲンを同体積の不完全フロイントアジュバント(IFA)と混合した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。
【0196】
関節リウマチ用の動物モデル
一次誘導:混合溶液(II型コラーゲン+CFA)0.1mLを、マウスの尾の基部から1.5cmの領域に皮下注射した。投与部位および深さは、すべてのマウスで同じであった。
【0197】
二次誘導:一次誘導の21日後に、混合溶液(II型コラーゲン+IFA)0.1mLを、マウスの尾の基部から1.5cmの領域に皮下注射した。投与部位および深さは、すべてのマウスで同じであった。
【0198】
組織学的解析。マウスの脚および膝関節を切開し、固定し(4%パラホルムアルデヒド)、4℃で2日間脱灰した。組織をパラフィン包埋し、15μmに切片化した。スライドを55℃で2時間インキュベーションし、その後、キシレン中で脱パラフィンし、等級系列エタノール中で再水和し、ビーブリッヒスカーレット-酸性フクシン液で5分間、次いで、リンモリブデン酸-リンタングステン酸溶液(1:1比)中で30分間、そして、アニリンブルー液で15分間染色した。蒸留水中および1%酢酸溶液中で5分間簡単にすすいだ。95%エチルアルコール、無水エチルアルコール中で脱水し、キシレン中で清浄化した。封入剤で封入した。染色した組織を、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0199】
結果
図39は、脚および膝関節組織についてのマッソントリクローム染色を示す。関節リウマチによる炎症性水腫が足指および膝関節に観察された(中央の画像)。CaLaでの処置の21日後、炎症性水腫は、足指および膝関節において明らかに減少し(下の画像)、正常対照(上の画像)と同じ形態学的回復を示した。
【0200】
実施例27
消化器疾患(炎症性腸疾患:クローン病および大腸炎)の標的化
材料および方法
動物。実験はすべて、韓国法下の動物管理ガイドライン(11737、2013年4月5日改定)および嘉泉大学校の施設内動物管理使用委員会によって規定されたガイドライン(LCDI-2018-0073)に従って行った。6週齢の雄のSprague-Dawley(SD)ラットをSamtako Co.(Osan, Gyeonggi-do, Republic of Korea)から入手し、特定病原体除去(SPF)条件下で繁殖させた。動物はすべて、餌および水が自由に摂取できる22~25℃の12時間の明/暗サイクルで維持した。
【0201】
活性作用物質および動物モデル。クローン病および大腸炎を誘導するために、インドメタシンをSigma Chemical(St. Louis, Missouri, USA)から購入し、食塩水に溶解した。毎日の皮下注射(21日間)用に2mg/kgの乳酸カルシウムを食塩水に溶解した。炎症性腸疾患の2つのモデルを使用した。毎日24時間間隔で、インドメタシン(7mg/kg)の経口投与によってクローン病を誘導し、そして、インドメタシン(7mg/kg)の皮下注射によって大腸炎を誘導した(
図40および42)。
【0202】
組織学的解析。固定したフラットマウントを等級系列エタノール中で脱水し、パラフィン包埋した。パラフィン切片(5μm厚)をヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)およびエオジン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)(H&E)で染色し、Leica DM 1000 LED顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を使用して撮像した。
【0203】
結果
図40は、クローン病を誘導するための実験スキームを提供する。
【0204】
図41は、クローン病のH&E染色についての代表的画像を提供する。クローン病の誘導後に腸内の貫壁性炎症および線状潰瘍形成が観察された(中央の画像)。CaLaでの処置の4週間後、貫壁性炎症および線状潰瘍形成は、腸組織において明らかに減少し(下の画像)、正常対照(上の画像)と同じ形態学的回復を示した。
【0205】
図42は、大腸炎を誘導するための実験スキームを提供する。
【0206】
図43は、大腸炎のH&E染色についての代表的画像を提供する。大腸炎の誘導後に腸内の表在性潰瘍、ポリープ、および炎症が観察された(中央の画像)。CaLaでの処置の4週間後、表在性潰瘍、ポリープ、および炎症は、腸組織において明らかに減少し(下の画像)、正常対照(上の画像)と同じ形態学的回復を示した。
【0207】
本明細書に開示される追加の態様のいくつかは、以下を含むがそれらに限定されない:
A. 喘息、肺線維症、肥満、胃腸炎、慢性炎症性腸疾患、および/またはアトピー性皮膚炎を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
B. 慢性閉塞性肺疾患、肺臓炎、角膜炎、アテローム硬化症、動脈硬化、心筋炎、糖尿病、関節リウマチ、歯髄炎、歯周炎、および/または乾癬を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
C. アルツハイマー病、脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症、加齢黄斑変性、非アルコール性脂肪性肝疾患、敗血症、および/または骨粗鬆症を処置する方法であって、その必要のある対象に治療有効量の乳酸カルシウムを投与する段階を含む、方法。
D. 乳酸カルシウムが、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む薬学的組成物で投与される、態様A~Cのいずれか一つの方法。
E. 薬学的組成物が、液剤、散剤、エアロゾル剤、注射剤、輸液、パッチ剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、デポー剤、または坐剤へと製剤化される、態様A~Dのいずれか一つの方法。
F. 薬学的組成物が、活性作用物質としての治療有効量の乳酸カルシウムと、薬学的に許容される多糖、ポリマー、脂質、またはそれらの組み合わせとを含む、態様A~Dのいずれか一つの方法。
G. 薬学的組成物が、乳酸カルシウムおよび多糖を含む、態様Fの方法。
H. 乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:<0.2~1:5である、態様Gの方法。
I. 乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:<0.2である、態様Gの方法。
J. 乳酸カルシウム対多糖の重量比が、1:0.2~1:5である、態様Gの方法。
K. ポリマーおよび/または脂質をさらに含む、態様F~Jのいずれか一つの方法。
L. ポリマーおよび脂質をさらに含み、ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50である、態様Kの方法。
M. 乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、少なくとも1:5である、態様K~Lのいずれか一つの方法。
N. 乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、1:5~1:30である、態様Mの方法。
O. 乳酸カルシウムとポリマーおよび/または脂質とを含む、態様Fの方法。
P. ポリマー対脂質の重量比が1:0.1~1:50であるポリマーおよび脂質を含む、態様Oの方法。
Q. 乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、少なくとも1:5である、態様O~Pのいずれか一つの方法。
R. 乳酸カルシウム対ポリマーおよび/または脂質の重量比が、1:5~1:30である、態様O~Qのいずれか一つの方法。
S. 組成物が、短時間作用型である、態様O~Rのいずれか一つの方法。
T. 組成物が、長時間作用型である、態様O~Rのいずれか一つの方法。
U. 組成物が、注射用組成物である、態様F~Tのいずれか一つの方法。
V. セルロース誘導体、ペクチン、ヒアルロン酸、デンプン、グアーガム、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸塩、アルギン酸、またはそれらの組み合わせである多糖を含む、態様F~Uのいずれか一つの方法。
W. ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコール酸-乳酸(PLGA)、またはそれらの組み合わせであるポリマーを含む、態様F~Vのいずれか一つの方法。
X. モノもしくはトリ脂肪酸グリセリンエステルまたはポリエチレングリコール、植物油のポリエチレングリコールエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、ゴマ油、ダイズ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、パーム油、ピーナッツ油、カカオ油、綿実油、ヒマワリ種子油、サフラワー油、アーモンド油、オリーブ油、硬化油、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはそれらの組み合わせである脂質を含む、態様F~Wのいずれか一つの方法。
Y. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、6時間後に活性作用物質の少なくとも約40%が放出される、態様F~SおよびU~Xのいずれか一つの方法。
Z. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、12時間後に活性作用物質の少なくとも約60%が放出される、態様F~SおよびU~Yのいずれか一つの方法。
AA. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の少なくとも約80%が放出される、態様F~SおよびU~Zのいずれか一つの方法。
BB. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の少なくとも約90%が放出される、態様F~SおよびU~AAのいずれか一つの方法。
CC. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、24時間後に活性作用物質の約40%未満が放出される、態様F~H、J~R、およびT~Xのいずれか一つの方法。
DD. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、48時間後に活性作用物質の約60%未満が放出される、態様F~H、J~R、およびT~CCのいずれか一つの方法。
EE. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、72時間後に活性作用物質の約80%未満が放出される、態様F~H、J~R、およびCC~DDのいずれか一つ載の方法。
FF. 45μmの孔径を有するナイロンフィルターを使用した37℃でpH 6.8を有する200mlの水性媒体中300rpmでの溶出試験法を含むインビトロ溶解試験に組成物を配置したところ、144時間後に活性作用物質の約90%未満が放出される、態様F~H、J~R、およびCC~EEのいずれか一つの方法。
GG. 組成物が、滅菌のガラスまたはポリオレフィン容器中に含有される、態様F~FFのいずれか一つの方法。
HH. 乳酸カルシウムが、薬学的に許容される腸溶性コーティングでコーティングされている、態様A~Dのいずれか一つの方法。
II. 腸溶性コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セラック、メタクリル酸およびそのエステルのポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、態様HHの方法。
JJ. 乳酸カルシウム対腸溶性コーティングの重量比が、10:0.5~1:1.5である、態様HH~IIのいずれか一つの方法。
KK. 37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1 HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、30分後に活性作用物質の約20%未満が放出される、態様HH~JJのいずれか一つの方法。
LL. 37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、60分後に活性作用物質の30%未満が放出される、態様HH~KKのいずれか一つの方法。
MM. 37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の50%未満が放出される、態様HH~LLのいずれか一つの方法。
NN. 37℃でパドル速度50rpmでのUSP Paddle法を含むインビトロ溶解試験において、組成物を0.1N HCl中に120分間置き、続いて、リン酸緩衝液でpH 6.8に調整したとき、120分後に活性作用物質の10%未満が放出される、態様HH~MMのいずれか一つの方法。
OO. 乳酸カルシウムが、乳酸カルシウムを含む食品組成物または栄養組成物で提供される、態様A~Bのいずれか一つの方法。
PP. 組成物が、注射用栄養補給剤である、態様OOの方法。
【0208】
2018年1月12日に出願された米国特許出願番号62/616,923の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0209】
前述の特定の態様の説明は、本発明の一般的性質を十分に明らかにするであろうが、他者が、当技術分野における技能の範囲内の知識を適用することによって、本発明の一般概念から逸脱することなく、そのような特定の態様を様々な適用のために容易に変更および/または適合させることができる。それゆえ、そのような適合および変更は、本明細書に提示される教示および指針に基づいて、開示した態様の等価物の意味および範囲内にあるものと意図される。本明細書の用語または表現が教示および指針に照らして当業者によって解釈されるように、本明細書における表現または用語は、説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではないことが理解されるべきである。
【0210】
本発明の幅および範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0211】
本明細書に記載の様々な局面、態様、および選択肢のすべてを、ありとあらゆる変形で組み合わせることができる。
【0212】
【0213】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許または特許出願が参照により組み入れられると具体的かつ個別に示されたかのように同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。