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特許7665318感光性樹脂組成物、それを用いて製造された色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含むディスプレイ装置
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  • 特許-感光性樹脂組成物、それを用いて製造された色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含むディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、それを用いて製造された色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20250414BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250414BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20250414BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/20
G03F7/004 505
G03F7/027
G09F9/30 349Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020191840
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2021081724
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149949
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141387
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲スル▼ ▲ギ▼
(72)【発明者】
【氏名】金 勳 植
(72)【発明者】
【氏名】安 基 燻
(72)【発明者】
【氏名】李 在 乙
(72)【発明者】
【氏名】尹 ▲ヒュン▼ ▲ジン▼
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160473(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190294(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147626(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/086610(WO,A1)
【文献】特開2011-099918(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0085768(KR,A)
【文献】特開2014-006273(JP,A)
【文献】特開2015-028619(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G09F 9/30
G03F 7/004
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤と、(B)アルカリ可溶性樹脂と、(C)重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種または2種以上の第1顔料を含み、
前記(A)着色剤は、前記隔壁形成用感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、2.7重量%以上20重量%以下の第1顔料を含み、
前記隔壁形成用感光性樹脂組成物は、黒色着色剤を含まず、
前記隔壁形成用感光性樹脂組成物から製造される厚さ7μm~15μmの硬化膜の、450nm以上470nm以下の波長での最大透過率が5%未満であり、640nm以上680nm以下の波長での平均透過率が25%超過であり、
前記隔壁形成用感光性樹脂組成物が、青色光源を用いる色変換画素の隔壁形成用である、隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)着色剤が、第2顔料として白色顔料をさらに含む、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1顔料および前記第2顔料は1:0.5~1:2の重量比で含まれる、請求項2に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記白色顔料は、酸化チタン(TiO)を含む、請求項2に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸化チタン(TiO)は、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、および有機物からなる群から選択される1種以上で表面処理したものである、請求項4に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸化チタン(TiO)は、最外側の表面を有機物で表面処理したものである、請求項5に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記表面処理された酸化チタン(TiO)に含まれる酸化チタン(TiO)コアの含量は、表面処理された酸化チタン(TiO)の総重量に対して、85~95重量%である、請求項5に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)は、ジケトピロール系、アントラキノン系、ペリレン系、およびアゾ系から選択される1種以上である、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)は、アントラキノン系、イソインドリノン系、およびアゾ系から選択される1種以上である、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記C.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)は、キノフタロン系、イソインドリノン系、およびジケトピロール系から選択される1種以上である、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記C.I.赤色顔料は、C.I.赤色顔料179、254、264、および269からなる群から選択される1種以上であり、
前記C.I.黄色顔料は、C.I.黄色顔料138、139、150、および185からなる群から選択される1種以上であり、
前記C.I.オレンジ顔料は、C.I.オレンジ顔料64および71からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記隔壁形成用感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、
前記(A)着色剤0.5~30重量%;
前記(B)アルカリ可溶性樹脂20~70重量%;
前記(C)重合性化合物5~50重量%;
前記(D)光重合開始剤0.01~10重量%;および
前記隔壁形成用感光性樹脂組成物の総重量に対して、(E)溶剤60~90重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の隔壁形成用感光性樹脂組成物から製造された色変換画素用隔壁構造物。
【請求項14】
請求項13に記載の隔壁構造物を含む色変換パネルを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁形成用感光性樹脂組成物、それを用いて製造された色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、青色光源を用いる色変換パネルを含むディスプレイ装置は、光源として用いる青色に対して遮光特性を示し、各色変換画素の混色を防止するために、各色変換画素の間に隔壁を形成している。この際、色変換画素の変換効率のため、各色変換画素の間の隔壁は、約7μm~15μmの膜厚で形成される。
【0003】
従来に用いられているブラックマトリックス(Black Matrix)用の感光性樹脂組成物は、従来のように、製造される膜厚が1μm~1.5μmである場合、パターンの形成に問題がない。しかし、色変換画素の隔壁は、製造される膜厚が7μm~15μmで形成されなければならない。従来に用いられているブラックマトリックスを用いて厚膜の隔壁を形成する場合、露光工程における紫外線の透過率の低下により、順テーパの硬化膜を形成しにくく、逆テーパが生じるだけでなく、現像工程における現像時間によるパターンの線幅変化が大きく発生し、同一の面積において、色変換画素の隔壁は線幅が大きいと色変換画素のサイズが減少するため、色変換性能が低くなるという問題がある。
【0004】
また、色変換画素の隔壁を製造する際にブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を用いると、コーティング工程後の露光工程でマスクパターンを整列する際に、下部の位置決めキー(Align key)を認識しにくく、正確な位置にパターンを形成することが困難であるという問題がある。よって、色変換画素の隔壁を形成するための物質として、従来に用いられているブラックマトリックス用感光性樹脂組成物は限界がある。
【0005】
また、色変換画素の隔壁を製造した後、後続工程で熱工程を経ることになるが、隔壁の信頼性が低いと、隔壁を製造してから経る熱工程で隔壁の内部でガスが発生し、色変換画素の寿命が短縮されるという問題がある。
【0006】
一方、従来技術では、カラーフィルタを製造するために、有機顔料を用いた着色パターンを製造している。この場合、それぞれの所望の色相を実現するために、赤色を所望するパターンにはC.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)乃至C.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)を、緑色を所望するパターンにはC.I.緑色顔料(C.I.Pigment Green)乃至C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)をともに用いる。
【0007】
通常、カラーフィルタ塗膜の厚さは2μm~3μmで製造されるため、上述のような、厚さが7μm~15μmで製造される色変換画素の隔壁の製造技術とは異なる。
【0008】
また、光学的な点からも、カラーフィルタは、色座標上に特定の色相を実現することを目的とし、輝度および明暗比などの特性が重要であるのに対し、色変換画素の隔壁は、色変換パネルを含むディスプレイ、および青色光源の組み合わせにより製造されるディスプレイ装置技術である点から異なる。
【0009】
韓国特許公開第10-2007-0094460号は、熱に対する形状安定性に優れた隔壁形成用感光性樹脂組成物を提供することを目的としているが、上述のような問題は克服できていないことが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許公開第10-2007-0094460号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の従来技術の問題を改善するためのものであって、膜厚が7μm~15μmの硬化膜を製造する際に、逆テーパの形成が防止され、順テーパが容易に形成されるとともに、青色系の光を効率的に遮断し、色変換画素の色変換特性を向上させることができる隔壁形成用感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、現像工程における現像時間によるパターンの線幅変化が少ない感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、隔壁の製造後、熱工程におけるガスの発生が抑制され、高信頼性の隔壁を製造することができる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、上記の感光性樹脂組成物を用いて製造された色変換画素用隔壁構造物、および上記の隔壁構造物を含む色変換パネルを含むディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(A)着色剤と、(B)アルカリ可溶性樹脂と、(C)重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、前記(A)着色剤が、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種または2種以上を含む、隔壁形成用感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物から製造された色変換画素用隔壁構造物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記色変換画素用隔壁構造物を含む色変換パネルを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の隔壁形成用感光性樹脂組成物は、隔壁の形成後における厚膜において、逆テーパの形成が防止され、順テーパが容易に形成されるとともに、現像工程における現像時間の変化によるパターンの線幅変化が少なく、青色系の光を効率的に遮断する効果を提供する。
【0019】
また、前記感光性樹脂組成物は、着色剤として、赤色顔料、黄色顔料、およびオレンジ顔料からなる群から選択される1種以上を含み、これにより、本発明では、現像工程における現像時間によるパターンの線幅変化が少ない構造物を形成することができる。
【0020】
また、前記感光性樹脂組成物は、着色剤として白色顔料をさらに含み、隔壁構造物に赤色系および/または緑色系の光に対する反射特性を付与することで、画素間の混色を最小化しながらも、隔壁の方向に向かう光の反射特性を付与して光効率を向上させることができる。
【0021】
さらに、前記感光性樹脂組成物から製造された隔壁構造物は、隔壁の製造後における追加の熱工程により隔壁で発生するガスの量が減少されるため、色変換画素の性能を維持することができる。
【0022】
また、前記感光性樹脂組成物から製造された隔壁構造物は、青色光源を用いる色変換パネルを含むディスプレイ装置において、優れた特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例2および比較例1に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化膜の透過スペクトルを示した図である。
図2】本発明の実施例1、2、14、および比較例4に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化膜の断面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真と、形成可能な最小マスクサイズを光学顕微鏡により撮影した写真である。
図3】本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化膜のテーパ角度を測定する基準に関する図である。
図4】本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化膜の透過スペクトルである。
図5】本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化膜の反射スペクトルである。
図6】本発明に係る色変換画素用隔壁構造物を含む色変換パネルの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、(A)着色剤と、(B)アルカリ可溶性樹脂と、(C)重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、(E)溶剤と、を含む隔壁形成用感光性樹脂組成物であって、前記(A)着色剤が、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種または2種以上を含む、隔壁形成用感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物から製造された色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【0025】
前記感光性樹脂組成物から製造される硬化膜は、硬化膜の厚さが7μm~15μmである際に、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が5%未満であり、640nm以上680nm以下の波長で平均透過率が25%超過であってもよく、好ましくは、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が4%未満であり、640nm以上680nm以下の波長で平均透過率が30%超過であってもよく、より好ましくは、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が3%未満であり、640nm以上680nm以下の波長で平均透過率が35%超過であってもよく、もっとも好ましくは、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が5%未満であり、640nm以上680nm以下の波長で平均透過率が40%超過であってもよい。
【0026】
前記硬化膜が上述の特定の波長範囲での特定の透過率条件を満たす場合、後面で光源として用いる青色系の光を効率的に遮断することができるため、前記硬化膜を隔壁構造物として含む、青色光源を用いるディスプレイ装置において、優れた遮光特性を示し、微細パターンの形成に有利であって、現像工程におけるパターンの線幅変化が少ない隔壁構造物を提供することができる。
【0027】
また、前記感光性樹脂組成物から製造される硬化膜は、前記感光性樹脂組成物に、着色剤として白色顔料をさらに含み、隔壁構造物に赤色系および/または緑色系の光に対する反射特性を付与することで、画素間の混色を最小化しながらも、隔壁の方向に向かう光の反射特性を付与して光効率を向上させることができる。
【0028】
具体的に、硬化膜の厚さが7μm~15μmである際に、550nm以上570nm以下の波長乃至640nm以上680nm以下の波長で反射率が20%以上であり、より好ましくは、450nm以上470nm以下の波長で反射率が10%以下であり、640nm以上680nm以下の波長で反射率が20%以上であってもよく、もっとも好ましくは、450nm以上470nm以下の波長での反射率が、640nm以上680nm以下の波長での反射率の50%以下であってもよい。
【0029】
前記硬化膜が、上述の特定の波長範囲での特定の反射率条件を満たす場合、色変換素子から発生する光のうち隔壁の方向に向かう光を反射させることで、輝度を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記着色剤として、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種以上を含み、隔壁構造物を形成した際に、光源の光を効率的に遮断することができる。
【0031】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、着色剤として白色顔料をさらに含み、隔壁構造物の、赤色系および/または緑色系の光に対する反射特性を極大化し、光効率を向上させることができる。
【0032】
色変換パネルを含むディスプレイ装置は、色変換画素に量子ドットを用い、この量子ドットで、青色(エネルギーが高い)光により緑色(エネルギーが低い)乃至赤色(エネルギーが低い)の光エネルギーに変換されて映像が実現されることになるが、この際用いられる隔壁構造物が、光源として用いられる青色光源の画素間への干渉を遮断し、各画素で発生した青色、緑色、赤色画素の混色を防止するという点から、非常に重要な技術的な目的を有する。よって、白色光源を用いて特定波長の光を透過して色を実現するカラーフィルタとは技術的に異なる。
【0033】
また、従来技術に係る隔壁構造物は黒色で形成されることが一般的であるが、通常用いられている1μm~2μmの膜厚ではなく7μm~15μmの膜厚では、膜厚が厚すぎるため、露光工程において紫外線透過率が低下するので、深部まで光硬化を誘導することができなくなる。塗膜の深部で光硬化がなされないと、現像工程において、パターンの線幅が現像時間によって変わる問題が起こるか、場合によっては、パターンの下端部が全て現像され、パターンが流失されてしまうという問題が起こる。そのため、露光工程で光硬化に問題が発生すると、順テーパの硬化膜を形成しにくく、逆テーパが生じる問題がある。よって、従来のブラックマトリックス(Black Matrix)用の感光性樹脂組成物のような黒色感光性樹脂組成物は、隔壁構造物を形成するための物質として用いられるには限界がある。
【0034】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、赤色系の隔壁構造物を形成し、後の厚膜で、硬化膜の形成時における逆テーパの形成が防止されることができるため、順テーパの形成が容易であるという利点がある。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
<隔壁形成用感光性樹脂組成物>
本発明に係る隔壁形成用感光性樹脂組成物は、(A)着色剤と、(B)アルカリ可溶性樹脂と、(C)重合性化合物と、(D)光重合開始剤と、を含み、(E)溶剤をさらに含んでもよい。
【0036】
本発明の前記感光性樹脂組成物から形成された前記隔壁のテーパ角度は、90°未満であることを特徴とする。
【0037】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、青色光源を用いる色変換画素の隔壁形成用であることを特徴とする。
【0038】
(A)着色剤
前記(A)着色剤は、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、白色顔料をさらに含むことがより好ましく、必要に応じて、染料をさらに含んでもよい。
【0039】
一実施形態として、前記着色剤は、第1顔料として、C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)、C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)、およびC.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、これにより、本発明に係る感光性樹脂組成物から製造される色変換画素用隔壁構造物は、赤色系で形成されることができる。赤色系の色変換画素用隔壁構造物は、青色系の光を吸収し、赤色系の光を透過するため、青色光源を用いるディスプレイ装置で優れた遮光特性を示し、かつ、発光特性を向上させることができる。
【0040】
好ましくは、前記C.I.赤色顔料(C.I.Pigment Red)は、ジケトピロール系、アントラキノン系、ペリレン系、およびアゾ系から選択される1種以上であり、前記C.I.黄色顔料(C.I.Pigment Yellow)は、アントラキノン系、イソインドリノン系、アゾ系から選択される1種以上であり、前記C.I.オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange)は、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジケトピロール系から選択される1種以上であってもよい。
【0041】
より好ましくは、前記C.I.赤色顔料は、C.I.赤色顔料9、97、81、105、122、123、144、149、150、155、166、168、171、175、176、177、179、180、185、192、202、208、209、214、215、216、220、222、224、242、254、255、264、269、270、および272からなる群から選択される1種以上であり、前記C.I.黄色顔料は、C.I.黄色顔料11、13、20、24、31、53、83、86、93、94、95、99、108、109、110、117、125、128、129、138、139、147、148、150、151、154、155、166、167、173、180、185、および199からなる群から選択される1種以上であり、前記C.I.オレンジ顔料は、C.I.オレンジ顔料13、15、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、および71からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0042】
もっとも好ましくは、前記C.I.赤色顔料は、C.I.赤色顔料179、254、264、および269からなる群から選択される1種以上であり、前記C.I.黄色顔料は、C.I.黄色顔料138、139、150、および185からなる群から選択される1種以上であり、前記C.I.オレンジ顔料は、C.I.オレンジ顔料64および71からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0043】
前記着色剤の含量は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、0.5~30重量%、好ましくは2.7~30重量%であってもよい。前記着色剤が上記の範囲内で含まれる場合、青色系の光に対する遮光特性が向上し、ディスプレイ装置の発光特性が向上することができる。
【0044】
また、前記着色剤中の第1顔料は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、2.7~20重量%で含まれることが好ましい。具体的に、前記第1顔料の含量が上記の範囲未満である場合には、前記感光性樹脂組成物から製造される硬化膜の厚さが7μm~15μmである際に、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が5%を超え、青色光源を用いるディスプレイ装置の遮光特性および発光特性が低下する恐れがあり、前記第1顔料の含量が上記の範囲を超える場合には、逆テーパが生じるという問題があって、隔壁を形成するための物質として用いられるには限界がある。
【0045】
また、前記着色剤は、C.I.赤色顔料、C.I.黄色顔料、およびC.I.オレンジ顔料からなる群から選択される1種以上の第1顔料の他に、第2顔料として、白色顔料をさらに含むことが好ましく、例えば、前記白色顔料には酸化チタン(TiO)が含まれてもよい。
【0046】
また、前記着色剤は、第1顔料と第2顔料(白色顔料)が1:0.5~1:2の重量比で含まれることが好ましい。前記重量比の範囲を満たす場合、特定の波長範囲における特定の吸収率および反射率の条件を満たすように調節することができる。
【0047】
前記白色顔料は、隔壁構造物の反射特性のためのものであって、具体的には、隔壁構造物の赤色系波長に対する反射率を向上させ、色変換素子から発生する光のうち隔壁の方向に向かう特定の波長範囲の光を反射させることで、輝度を向上させることができる。具体的に、前記白色顔料が添加される場合、450nm以上470nm以下の波長では反射率が20%以下、より好ましくは10%以下であることができる。640nm以上680nm以下の波長では反射率が20%以上であり、もっとも好ましくは、450nm以上470nm以下の波長での反射率が、640nm以上680nm以下の波長での反射率の50%以下であることができる。
【0048】
前記白色顔料の平均粒度は150nm~300nmであることが好ましく、平均粒度が150nm未満である場合には、可視光線領域である380nm~780nmの領域で反射特性が弱化する問題があり、平均粒度が300nmを超える場合には、分散性および貯蔵安定性に劣る問題が発生する。
【0049】
前記白色顔料としては、上述の条件を満たす場合、この分野において公知の白色顔料(C.I.Pigment White)を用いてよい。一または複数の実施形態において、C.I.白色顔料4、5、6、6:1、7、18、18:1、19、20、22、25、26、27、28、32などが使用可能であり、反射効率と白色度の点から、C.I.白色顔料6または22が好ましく、C.I.白色顔料6がより好ましい。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
C.I.白色顔料6に含まれる酸化チタン(TiO)は、安価であり、屈折率が高くて反射率に優れるため、効果的な白色着色剤として使用可能であり、白色度の点から、ルチル構造を有することが好ましい。
【0051】
前記白色顔料である酸化チタン(TiO)は、必要に応じて、レジン処理、酸性基または塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、または不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理、イオン交換法などによるイオン性不純物除去処理などが施されたものであってもよい。
【0052】
前記酸化チタン(TiO)は、その表面を、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、および有機物からなる群から選択される1種以上で表面処理したものが使用可能であり、好ましくは、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、および酸化ジルコニウム(ZrO)で順に表面処理したものが使用でき、より好ましくは、前記表面処理した酸化チタン(TiO)の最外側表面を有機物で表面処理したものが使用できる。前記有機物としては、低い極性の単一分子層で酸化チタン(TiO)をコーティングして表面処理することで、酸化チタン(TiO)の分散時に必要なエネルギーを低め、酸化チタン(TiO)が圧着され凝集されることを防止するためのものであれば特に制限されず、一または複数の実施形態において、ステアリン酸(stearic acid)、トリメチルプロパン(TMP)、ペンタエリスリトールなどが使用できる。
【0053】
上記のように酸化チタン(TiO)を表面処理することで、酸化チタン(TiO)の光触媒活動性を低め、且つ反射輝度特性を向上させることができ、特に、前記表面処理の好ましい実施形態によると、耐熱性および耐薬品性などの信頼性を向上させる点から利点がある。前記表面処理は、キャプシュレーションによる処理であってもよい。
【0054】
前記表面処理された酸化チタン(TiO)に含まれる酸化チタン(TiO)コアの含量は、表面処理された酸化チタン(TiO)の総重量に対して、85~95重量%であることが好ましい。上記の範囲内で酸化チタン(TiO)コアの表面を処理した場合、白色度に優れるとともに、反射輝度に優れる特性を示す。
【0055】
前記酸化チタン(TiO)の市販品としては、デュポン(dupont)社の「R-101」、「R-102」、「R-103」、「R-104」、「R-105」、「R-350」、「R-706」、「R-794」、「R-796」、「TS-6200」、「R-900」、「R-902」、「R-902+」、「R-906」、「R-931」、「R-960」、「R-6200」、ハンツマン(Huntman)社の「R-FC5」、「TR81」、「TR88」、およびアイエスケー(ISK)社の「CR-57」などが使用できる。
【0056】
また、本発明は、黒色着色剤を含まなくても、青色系の光を効率的に遮断する効果を有することができるという点に特徴がある。よって、本発明の前記着色剤は、黒色着色剤を含まないことが好ましいが、必要に応じて、着色剤の総重量に対して最大20重量%まで含んでもよい。前記着色剤が前記黒色着色剤を過量で含む場合には、深部における不十分な硬化により逆テーパが生じ得、反射率の低下により、ディスプレイの発光効率が低下する問題があるため好ましくない。具体的に、前記黒色着色剤は、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラック、およびペリレンブラックなどの黒色の有/無機顔料と染料を含んでもよく、複数の着色剤を含んで、黒色を呈することができる組み合わせも含む概念で理解され得る。
【0057】
前記顔料としては、顔料の粒径が均一に分散された顔料分散液を用いることが好ましい。顔料の粒径を均一に分散させるための方法の例としては、顔料分散剤を含有させて分散処理する方法などが挙げられ、前記方法により、顔料が溶液中に均一に分散された状態の顔料分散液を得ることができる。
【0058】
前記顔料分散剤は、顔料の脱凝集および安定性の維持のために添加されるものであって、当該分野において通常用いられるものが制限されずに使用可能である。前記顔料分散剤の具体的な例としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、ポリエステル系、ポリアミン系などの界面活性剤などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
また、前記顔料分散剤は、ブチルメタクリレート(BMA)またはN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含むアクリレート系分散剤を含むことが好ましく、前記アクリレート系分散剤以外に、他の樹脂タイプの顔料分散剤を用いてもよい。前記樹脂タイプの顔料分散剤は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、前記アクリレート系分散剤と併用して用いてもよい。
【0060】
本発明において、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量とは、感光性樹脂組成物の溶剤を除いた残りの成分の総重量を意味する。
【0061】
(B)アルカリ可溶性樹脂
前記アルカリ可溶性樹脂は、光や熱の作用による反応性およびアルカリ溶解性を有し、前記着色剤をはじめとする固形分の分散媒として作用し、かつ結着樹脂の機能を果たすものであれば、この分野において公知の樹脂を特に制限されずに選択して用いることができる。
【0062】
具体的に、前記アルカリ可溶性樹脂は、不飽和カルボキシル基含有単量体、およびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体であることが好ましい。
【0063】
前記不飽和カルボキシル基含有単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの、分子中に1つ以上のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0064】
前記不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0065】
前記不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。
【0066】
前記不飽和多価カルボン酸は、酸無水物であってもよく、具体的には、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などが挙げられる。また、前記不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2-メタクリロイルオキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)などが挙げられる。前記不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシ重合体のモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0067】
前記不飽和カルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
前記不飽和カルボキシル基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、p-クロロスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、p-ビニルベンジルメチルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、インデンなどの芳香族ビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、i-プロピルアクリレート、i-プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルアクリレート、i-ブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタジエチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル類;2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-アミノプロピルアクリレート、2-アミノプロピルメタクリレート、2-ジメチルアミノプロピルアクリレート、2-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、3-アミノプロピルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレート、3-ジメチルアミノプロピルアクリレート、3-ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和エーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、α-クロロアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチルメタクリルアミドなどの不飽和アミド類;マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド類;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの脂肪族共役ジエン類;およびポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ-n-ブチルアクリレート、ポリ-n-ブチルメタクリレート、ポリシロキサンの重合体分子鎖の末端にモノアクリロイル基またはモノメタクリロイル基を有する巨大単量体類などが挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
前記アルカリ可溶性樹脂の含量は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、20~70重量%、好ましくは30~60重量%で含まれてもよい。前記アルカリ可溶性樹脂が上記の範囲内で含まれる場合、現像液に対する溶解性が十分であって硬化膜の形成が容易であり、現像時における露光部の画素部分の膜減少が防止され、非画素部分の抜け性が良好になるため好ましい。
【0070】
(C)重合性化合物
前記重合性化合物は、光および熱により重合することができる化合物であって、光および熱により重合できるものであれば、この分野において公知の重合性化合物を特に制限されずに選択して使用可能であり、具体的には、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが使用できる。
【0071】
前記単官能単量体、前記2官能単量体、前記多官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、前記多官能単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化(ethoxylated)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化(propoxylated)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを使用できる。
【0072】
前記重合性化合物の含量は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して5~50重量%、好ましくは10~40重量%で含まれてもよい。前記重合性化合物が上記の範囲内で含まれる場合、画素部の強度や平滑性の点から好ましい。
【0073】
(D)光重合開始剤
前記光重合開始剤は、この分野において公知の光重合開始剤を特に制限されずに選択して使用できる。例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、チオキサントン系、オキシム系、ベンゾイン系、ビイミダゾール系化合物などを用いてもよい。
【0074】
例えば、前記オキシム系化合物としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用でき、市販品としては、Ciba社のOXE-01、OXE-02が代表的である。
【0075】
前記光重合開始剤は、単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
前記光重合開始剤の含量は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%で含まれてもよい。前記光重合開始剤が上記の範囲内で含まれる場合、光重合反応の速度が適正であって、全工程時間の増加が防止され、過反応による最終硬化膜の物性の低下が防止されるため好ましい。
【0076】
本発明に系る感光性樹脂組成物は、前記光重合開始剤に加えて、光重合開始補助剤をさらに含んでもよい。前記光重合開始剤とともに光重合開始補助剤を用いる場合、感光性樹脂組成物がさらに高感度となり、生産性が向上するため好ましい。
【0077】
前記光重合開始補助剤としては、前記光重合開始剤により重合が開始された重合性化合物の重合を促進させるために用いられる化合物であって、アミンおよびカルボン酸化合物からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく用いられることができる。
【0078】
前記光重合開始補助剤は、前記光重合開始剤1モルに対して、通常、0モル超過~10モル以下、好ましくは0.01モル~5モルで含まれてもよい。前記光重合開始補助剤が上記の範囲内で含まれる場合、光重合の効率を向上させ、生産性の向上効果を期待することができる。
【0079】
(E)溶剤
前記溶剤としては、特に制限されず、感光性樹脂組成物の分野において公知の各種有機溶剤を使用可能である。
【0080】
前記溶剤は、塗布性および乾燥性の点から、沸点が100℃~200℃の有機溶剤を用いることが好ましく、より好ましくは、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、3-エトキシプロピオン酸エチルや3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類を用いてもよく、より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどを使用できる。前記溶剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0081】
前記溶剤の含量は、感光性樹脂組成物の総重量に対して、60~90重量%、好ましくは70~85重量%で含まれてもよい。前記溶剤が上記の含量範囲内で含まれる場合、ロールコータ、スピンコータ、スリットアンドスピンコータ、スリットコータ(ダイコータということがある)、インクジェットなどの塗布装置で塗布した際に、塗布性が良好になる効果を提供するため好ましい。
【0082】
添加剤
本発明に系る感光性樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤の種類は、使用者の必要に応じて決定され得るため、本発明で特に限定するものではないが、例えば、充填剤、他の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤などが挙げられる。
【0083】
前記酸化防止剤は、例えば、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上を含んでもよく、この場合、工程中に高温で発生し得る色変現像や、ディスプレイの製作後に光源により引き起こされ得る黄変の発生を抑制することができる。前記酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物、および硫黄系化合物からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、これらは、フェノール系-リン系化合物、フェノール系-硫黄系化合物、リン系-硫黄系化合物、またはフェノール系-リン系-硫黄系化合物の組み合わせで用いられてもよい。
【0084】
前記酸化防止剤の含量は、感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%で含まれてもよい。前記酸化防止剤が上記の範囲内で含まれる場合、発光強度の低下問題を解決する点から好ましく、硬化物を形成するための工程中にポストベークを行う際に、熱による老化を防止し、色相を保存する効果を期待することができる利点がある。
【0085】
前記添加剤のうち、含量が例示されていない添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、当業者が適宜追加して使用可能である。例えば、前記添加剤は、感光性樹脂組成物の総重量に対して0.05~10重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%で用いられてもよいが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物は、当業界において公知された通常の方法により製造されることができ、本発明で特に限定するものではないが、一例として、下記のような方法により製造されることができる。
【0087】
着色剤を予め溶剤と混合し、着色剤の平均粒径が200nm以下位になるまでビーズミルなどを用いて分散させる。この際、必要に応じて、顔料分散剤が使用されてもよく、また、アルカリ可溶性樹脂の一部または全部が配合されることもある。得られた分散液に、アルカリ可溶性樹脂の残り、重合性化合物、および光重合開始剤、必要に応じて追加の添加剤を添加した後、必要に応じて、追加の溶剤を所定の濃度になるようにさらに添加することで、目的とする感光性樹脂組成物を得る。
【0088】
色変換画素用隔壁構造物およびディスプレイ装置
本発明は、感光性樹脂組成物から製造される色変換画素用隔壁構造物、およびそれを含む色変換パネルを含むディスプレイ装置を提供する。
【0089】
図6は、本発明に系る色変換画素用隔壁構造物を含む色変換パネルの構造を示した図であって、以下では、本願に係る色変換画素用隔壁構造物、色変換パネル、およびディスプレイ装置を図6を参照して説明する。
【0090】
色変換画素用隔壁構造物を含む色変換パネルは、基材10上に、RGB画素領域と、各画素領域の間に隔壁構造物が配置されたものであり、前記RGB画素領域には青色光源20がそれぞれ配置されており、青色光を赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)に変換する色変換基材31、33、35が前記青色光源20上にそれぞれ配置されている。
【0091】
色変換パネルを含むディスプレイ装置は、それぞれの画素が駆動して色相を形成するため、それぞれの画素と画素を区別することができる色変換画素用隔壁構造物40を形成すべきである。
【0092】
色変換画素は量子ドットを含み、この量子ドットが青色(エネルギーが高い)光を吸収し、緑色(エネルギーが低い)乃至赤色(エネルギーが低い)光に変換されて色相が実現されることになる。この際、色変換画素の間に形成された隔壁構造物は、光源として用いられた青色光源を遮断し、各色変換画素で実現される青色、緑色、赤色の混色を防止する役割をする。かかる隔壁構造物を形成するための硬化膜は、膜厚が7μm~15μm、パターンの線幅が10μm~50μmで形成されることができる。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成した色変換画素用隔壁構造物40を含む、色変換パネルを含むディスプレイ装置は、画素間の混色が防止され、微細パターンの形成に有利であり、現像工程における変化による隔壁の線幅変化が少ない隔壁が製造可能である。隔壁の線幅が狭い場合、色変換画素が十分な空間を確保することができ、高品質のイメージを実現することができる利点がある。また、隔壁の製造後に、種々の熱工程によりガスが発生し得るが、これも色変換画素の性能に大きい影響を与える。
【0094】
ディスプレイ装置としては、液晶ディスプレイ装置、有機発光ダイオード、フレキシブルディスプレイなどが挙げられるが、これに限定されるものではなく、この分野において公知の適用可能なディスプレイ装置を何れも例示することができる。
【0095】
色変換画素用隔壁構造物40は、上述の本発明の感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、光硬化および現像して硬化膜を形成することで製造することができる。
【0096】
先ず、感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、加熱乾燥して溶媒などの揮発成分を除去することで、平滑な塗膜を得る。
【0097】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、フレキシブルコート法、ロールコート法、スリットアンドスピンコート法、またはスリットコート法などにより行われてもよい。塗布後に加熱乾燥(プリベーク)、または減圧乾燥後に加熱することで、溶媒などの揮発成分を揮発させる。ここで、加熱温度は、通常、70~150℃、好ましくは80~130℃である。加熱乾燥後の塗膜の厚さは、通常、7~15μm程度である。このようにして得られた塗膜に、目的とするパターンを形成するためのマスクを介して紫外線を照射する。この際、露光部の全体に均一に平行光線が照射され、且つ、マスクと基板の正確な位置合わせが行われるように、マスクアライナやステッパなどの装置を用いることが好ましい。紫外線を照射すると、紫外線が照射された部位で、光重合開始剤によりラジカルが形成され、重合性化合物と反応して光硬化が行われる。
【0098】
前記紫外線としては、g線(波長:436nm)、h線、i線(波長:365nm)などを用いてもよい。紫外線の照射量は、必要に応じて適宜選択されてよく、本発明ではこれを限定しない。光硬化済みの塗膜を現像液に接触させ、非露光部を溶解させて現像すると、目的とするパターンの形状が得られる。
【0099】
このように得られたパターンの形状を後硬化させる工程により、パターンを硬くすることができ、加熱温度は、通常、150~250℃、好ましくは180~230℃である。加熱時間は、通常、5~30分、好ましくは15~20分である。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、下記に開示される本発明の実施例は例示にすぎず、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に示されており、且つ特許請求の範囲の記録と均等な意味および範囲内での全ての変更を含有している。また、以下の実施例、比較例において、含有量を示す「%」および「部」は、別に言及しない限り質量基準である。
【0101】
合成例1:アルカリ可溶性樹脂(B-1)の合成
攪拌機、温度計還流冷却管、滴下ロート、および窒素導入管を備えたフラスコを準備し、一方、N-ベンジルマレイミド15重量部、アクリル酸30重量部、シクロヘキシルメタクリレート50重量部、メチルメタクリレート5重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAともいう)40重量部を投入してから攪拌混合してモノマー滴下ロートを準備し、n-ドデカンジオール6重量部、PGMEA24重量部を入れて攪拌混合し、連鎖移動剤滴下ロートを準備した。
【0102】
その後、フラスコにPGMEA395重量部を仕込み、フラスコ内の雰囲気として空気を窒素で置換した後、攪拌しながら、フラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマーおよび連鎖移動剤の滴下を滴下ロートから開始した。滴下は、90℃を維持しながらそれぞれ2時間進行し、1時間後に110℃に昇温して3時間維持してから、ガス導入管を導入させ、酸素/窒素=5/95(v/v)の混合ガスのバブリングを開始した。
【0103】
次いで、グリシジルメタクリレート20重量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4重量部、トリエチルアミン0.8重量部をフラスコ中に投入し、110℃で6時間反応し続けた後、室温まで冷却しながら、重量平均分子量3,800、固形分基準酸価が83mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂(B-1)を得た。
【0104】
合成例2:アルカリ可溶性樹脂(B-2)の合成
攪拌機、温度計還流冷却管、滴下ロート、および窒素導入管を備えたフラスコを準備し、一方、N-ベンジルマレイミド10重量部、アクリル酸70重量部、ビニルトルエン20重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAともいう)40重量部を投入してから攪拌混合してモノマー滴下ロートを準備し、n-ドデカンジオール6重量部、PGMEA24重量部を入れて攪拌混合し、連鎖移動剤滴下ロートを準備した。
【0105】
その後、フラスコにPGMEA395重量部を仕込み、フラスコ内の雰囲気として空気を窒素で置換した後、攪拌しながら、フラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマーおよび連鎖移動剤の滴下を滴下ロートから開始した。滴下は、90℃を維持しながらそれぞれ2時間進行し、1時間後に110℃に昇温して3時間維持してから、ガス導入管を導入させ、酸素/窒素=5/95(v/v)の混合ガスのバブリングを開始した。
【0106】
次いで、グリシジルメタクリレート50重量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4重量部、トリエチルアミン0.8重量部をフラスコ中に投入し、110℃で6時間反応し続けた後、室温まで冷却しながら、重量平均分子量8,000、固形分基準酸価が135mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂(B-2)を得た。
【0107】
合成例3:アルカリ可溶性樹脂(B-3)の合成
攪拌機、温度計還流冷却管、滴下ロート、および窒素導入管を備えたフラスコを準備し、一方、アクリル酸40重量部、シクロヘキシルメタクリレート40重量部、ビニルトルエン10重量部、メチルメタクリレート10重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAともいう)40重量部を投入してから攪拌混合してモノマー滴下ロートを準備し、n-ドデカンジオール6重量部、PGMEA24重量部を入れて攪拌混合し、連鎖移動剤滴下ロートを準備した。
【0108】
その後、フラスコにPGMEA395重量部を仕込み、フラスコ内の雰囲気として空気を窒素で置換した後、攪拌しながら、フラスコの温度を90℃まで昇温した。次いで、モノマーおよび連鎖移動剤の滴下を滴下ロートから開始した。滴下は、90℃を維持しながらそれぞれ2時間進行し、1時間後に110℃に昇温して3時間維持してから、ガス導入管を導入させ、酸素/窒素=5/95(v/v)の混合ガスのバブリングを開始した。
【0109】
次いで、グリシジルメタクリレート30重量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4重量部、トリエチルアミン0.8重量部をフラスコ中に投入し、110℃で6時間反応し続けた後、室温まで冷却しながら、重量平均分子量6,900、固形分基準酸価が90mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂(B-3)を得た。
【0110】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)はGPC法により測定し、HLC-8120GPC(東ソー株式会社製)装置を使用した。
【0111】
測定条件としては、TSK-GELG4000HXLとTSK-GELG2000HXLカラムを直列連結して使用し、カラムの温度は40℃にした。テトラヒドロフランを移動相溶媒として使用し、1.0mL/分の流速で流して測定した。測定試料の濃度は0.6重量%であり、注入量は50℃であり、RI検出機により分析した。校正用標準物質としては、TSK STANDARD POLYSTYRENE F-40、F-4、F-1、A-2500、A-500(東ソー株式会社製)を使用し、上記の条件で得られたアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を測定した。
【0112】
実施例および比較例に係る感光性樹脂組成物の製造
下記表1を参照し、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、添加剤として分散剤、酸化防止剤、および溶剤を含む製造例1~3に係る樹脂組成物を製造した。
【0113】
【表1】
【0114】
(C)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Kayarad DPHA、日本化学製)
(D)光重合開始剤:Irgacure OXE02(Basf社製)
顔料分散剤:DISPERBYK-110(BYK社製)
酸化防止剤:Summilizer GP(住友化学製)
(E)溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
下記表2を参照し、前記製造例1~製造例3に係る樹脂組成物に着色剤を混合した、実施例および比較例に係る感光性樹脂組成物を製造した。
【0115】
【表2】
【0116】
実験例
(1)隔壁基板の製造
前記実施例および比較例により製造された感光性樹脂組成物を用いて隔壁基板を製造した。すなわち、前記それぞれの感光性樹脂組成物をスピンコーティング法によりガラス基板上に塗布した後、加熱板上に置き、100℃の温度で3分間維持して溶剤を除去することで塗膜を形成した。
【0117】
次いで、前記塗膜上に、横×縦(30mm×30mm)の正四角形の透過パターンと、1~100μmのラインパターンとを有する試験フォトマスクを載せ、試験フォトマスクとの間隔を100μmとして紫外線を照射した。
【0118】
この際、紫外線の光源として、ウシオ電機株式会社製の超高圧水銀ランプ(商品名USH-250D)を用し、大気雰囲気下で100mJ/cmの露光量(365nm基準)で光照射し、特別な光学フィルタは使用しなかった。
【0119】
上記で紫外線が照射された塗膜を、pH10.5のKOH水溶液の現像溶液に所定時間浸して現像した。現像は、80秒と160秒の二つで進行した。この塗膜が形成されたガラス基板を蒸留水を用いて洗浄した後、窒素ガスを吹き入れて乾燥し、230℃の加熱オーブンにて20分間加熱することで、隔壁パターンの硬化膜を製造した。上記で製造された隔壁パターンの硬化膜の塗膜厚さは10μmであった。
【0120】
(2)線幅変化の測定
上記(1)の隔壁の製造で80秒の現像時間で進行した基板と160秒の現像時間で進行した基板を、光学顕微鏡(ECLIPSE LV100POL、ニコン社)を用いて50μmのラインマスクパターンの線幅を測定した。80秒進行した基板のパターン線幅と160秒進行した基板のパターン線幅の変化を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0121】
(3)透過率および反射率の判断
前記実施例および比較例により製造された感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの、横×縦(30×30mm)の正四角形のパターンを用い、紫外線-可視光分光分析機(UV-Vis spectrophotometer)にて透過率および反射率を測定した。
【0122】
透過率は、測定された結果において、450nm以上470nm以下の波長で最大透過率が5%未満である場合には○、5%以上である場合にはXとし、640nm以上680nm以下の波長で平均透過率が25%超過である場合には○、25%以上である場合にはXとして、下記表3に示した。
【0123】
また、反射率は、測定された結果において、450nm以上470nm以下の波長で反射率が20%以下である場合には○、20%超過である場合にはXとし、640nm以上680nm以下の波長で反射率が20%以上である場合には○、20%未満である場合にはXとして、下記表3に示した。
【0124】
また、実施例2および比較例1に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの硬化膜の透過スペクトルを図1に示し、実施例4、11、16~18に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの硬化膜の透過および反射スペクトルをそれぞれ図4および図5に示した。
【0125】
(4)テーパ角度
前記実施例および比較例により製造された感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの硬化膜において、100μmのラインパターンを切断し、断面を観察した。走査型電子顕微鏡(SEM、SU-8200、日立社製)を用いて断面におけるテーパ角度を測定し、測定結果を下記表3に示した。
【0126】
また、実施例1、2、14、および比較例4の走査型電子顕微鏡による撮影写真を図2に示した。
【0127】
図3を参照すると、テーパ角度を測定して順テーパと逆テーパを判断する基準を確認することができる。
【0128】
(5)形成可能な最小マスクサイズ
前記実施例および比較例により製造された感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンは、1~100μmのラインマスクを用いてパターンを形成し、隔壁パターンが形成可能なマスクの最小サイズを測定して下記表3に示した。
【0129】
また、実施例1、2、14、および比較例4に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの微細パターンの評価結果を図2に示した。図2において、実施例1の微細パターンの評価結果は「20」と判断し、実施例2の評価結果は「15」と判断した。
【0130】
マスクのサイズが小さいほど、より微細なパターンが形成可能であるが、パターンの抜けが生じやすく、微細パターンを形成しにくいという問題がある。よって、パターンの抜けが生じることなく、微細パターンが形成可能なマスクの最小サイズを測定することで、微細パターンの形成を評価した。
【0131】
(6)アウトガスの評価
前記実施例および比較例に係る感光性樹脂組成物から製造された隔壁パターンの硬化膜を、横×縦(30×30mm)の正四角形のパターン(現像時間80秒)とし、Py-GC/FIDにより230℃で30分間熱分解して捕集された化合物を分析し、下記表3に、アウトガス測定値で示した。
【0132】
アウトガス測定値は、実施例1の値を100%基準として百分率で表示し、その値が低いほど、高温でのアウトガスの発生が少ない意味であって優れる。
【0133】
(7)輝度の評価
前記実施例および比較例により製造されたそれぞれの感光性樹脂組成物を用いてガラス基板上にパターンを製造し、青色LED光源(横100個、縦100個のLED(総1万個))を含む光源の上部に位置して輝度を測定した。青色LED光源は、50mWの消費電力で発光し、発光面積は横10cm、縦10cmのサイズである。
【0134】
色変換素子から放出される輝度は、instrument system社のCAS 140CT装備を用いて測定された値(輝度、cd/mm)を記入した。
【0135】
この際、比較例4の黒色隔壁パターンを有する基板で測定された輝度は3.8luxであり、それぞれの結果値を下記の基準で評価した。その結果を下記表4に記載した。
【0136】
<評価基準>
◎:30%以上増加
○○:20%以上30%未満増加
○:10%以上20%未満増加
△:1%以上10%未満増加
X:0%超過1%未満増加
XX:減少
【0137】
【表3】
【0138】
本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの硬化膜は、450nm以上470nm以下の波長での最大透過率が15%未満であり、640nm以上680nm以下の波長での平均透過率が25%超過であって、青色系の光を効果的に遮断するとともに、赤色系の光に対しては高い透過率を有することを確認することができる。
【0139】
よって、本発明に系る感光性樹脂組成物を用いて、光源として青色系の光源を用いるディスプレイ装置に含まれる色変換画素用隔壁構造物を製造する場合、光の損失を防止し、色変換性能を向上させることができる。
【0140】
特に、白色顔料をさらに含む実施例16~18により製造された隔壁パターンの硬化膜は、50nm以上470nm以下の波長で反射率が20%以下であり、且つ640nm以上680nm以下の波長での反射率が20%以上であって、赤色系の光に対する反射率が向上し、輝度も著しく向上していることを確認することができた。
【0141】
これに対し、比較例3~8は、450nm以上470nm以下の波長および640nm以上680nm以下の波長での透過率を満たしていないか、逆テーパ(テーパ角度が90°以上)が形成され、形成可能なマスクのサイズが大きいため、安定したパターンを形成することが困難であり、色変換画素の面積が減少して色変換性能が低かった。また、隔壁で発生するアウトガスが多くて、色変換画素の性能を悪化させた。
【0142】
また、比較例7および8を参照すると、第1顔料として青色顔料または黒色顔料が用いられる場合、白色顔料が追加されても反射特性は向上しなかった。
【0143】
実施例2、5、および6で、着色剤としてC.I.赤色顔料179を2.50重量%使用し、樹脂組成物、すなわち、アルカリ可溶性樹脂の種類による特性を確認した。アルカリ可溶性樹脂(B-2)を含有する製造例1を使用した場合には、微細なマスクサイズのパターンが形成可能であり、隔壁の製造後における追加の熱工程により隔壁で発生するアウトガスが少ない。これにより、広い面積の色変換画素が製作可能であり、製作される色変換画素の寿命維持に有利である。
【0144】
また、本発明の実施例に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁の形成可能な最小マスクサイズが20μm以下であり、線幅変化の測定結果が4.0μm未満であることを確認することができる。
【0145】
よって、本発明に系る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁は、微細なマスクサイズのパターンが形成可能であり、現像工程の変化に対しても安定した色変換画素のサイズを維持することができる。
【0146】
これに対し、比較例1~8は、形成可能な最小マスクサイズが20μmを超え、線幅変化の測定結果が4.0μm以上であって、微細なマスクサイズのパターンを形成することが困難であり、現像工程の変化によって色変換画素のサイズが不安定であるため、色変換性能が均一ではないという問題がある。
【0147】
実施例1~4並びに比較例1および2で、着色剤としてC.I.赤色顔料179、および樹脂組成物として製造例2を使用し、着色剤の含量による特性を確認した。第1顔料の含量が低すぎる比較例1は、450nm~470nmの波長範囲での最大透過率が目的のレベルに達しておらず、第1顔料の含量が高すぎる比較例2は、テーパが、逆テーパ状の高いテーパ角度を有する結果を示した。よって、着色剤のうち第1顔料の含量は、組成物中の固形分の総重量に対して2.7~20重量%であることが好ましいことが分かる。
【0148】
また、図1を参照すると、実施例2および比較例1に係る感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁パターンの硬化膜の透過スペクトルを確認することができ、実施例2は、上述の透過率値を満たしているが、比較例1は、上述の透過率値を満たしていないことを確認することができる。
【符号の説明】
【0149】
10 基材
20 青色光源
31、33、35 色変換基材
40 隔壁構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6