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特許7665339既存の相互作用を最小化する改変結合分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】既存の相互作用を最小化する改変結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20250414BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250414BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250414BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20250414BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250414BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250414BHJP
【FI】
C07K16/24
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/06
A61P11/02
A61P27/02
A61P1/04
G01N33/543 515A
G01N33/543 515D
G01N33/53 U
C12N15/13 ZNA
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020572773
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019041203
(87)【国際公開番号】W WO2020014358
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】62/695,988
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 栄二
(72)【発明者】
【氏名】ジアンヌ サムナー
(72)【発明者】
【氏名】チーホア チェン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル パートリッジ
(72)【発明者】
【氏名】アルバート トッリ
(72)【発明者】
【氏名】マノジュ ラジャドヒャクシャ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0092975(US,A1)
【文献】特表2012-507294(JP,A)
【文献】特表2017-535547(JP,A)
【文献】特表2017-532570(JP,A)
【文献】Journal of Immunology Research,2016年,Article ID 5069678
【文献】Journal of Immunology Research,2016年,Article ID 2618575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/24
G01N 33/543
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH) 相補性決定領域(CDR)CDR1領域、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH CDR2領域、及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVH CDR3領域;
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL) CDR1領域、LGSのアミノ酸配列を含むVL CDR2領域、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むVL CDR3領域;並びに、
配列番号8で表されるC末端重鎖配列:
を含む抗ヒトインターロイキン4アルファ(hIL4Rα)モノクローナル抗体。
【請求項2】
抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1に記載の抗hIL4Rαモノクローナル抗体。
【請求項3】
(a)第1の成分が操作可能に結合する固相、及び、
(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、請求項1又は2に記載の第1のモノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの捕捉試薬、及び、
(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、請求項1又は2に記載の第2のモノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの検出試薬、
を含む、抗薬物抗体(ADA)アッセイに使用するためのキットであって、
前記第1の成分及び前記第2の成分は、互いに対して選択的に結合する、前記キット。
【請求項4】
前記第1の成分が、ストレプトアビジンを含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記第2の成分が、ビオチンを含む、請求項3又は4に記載のキット。
【請求項6】
(a)第1の成分が操作可能に結合する固相;
(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、請求項1又は2に記載の前記モノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの捕捉試薬;及び
(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、デュピルマブを含む、少なくとも1つの検出試薬;
を含む、抗薬物抗体(ADA)アッセイに使用するためのキットであって、
前記第1の成分及び前記第2の成分が、互いに対して選択的に結合する、前記キット。
【請求項7】
前記第1の成分は、ストレプトアビジンを含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記第2の成分は、ビオチンを含む、請求項6又は7に記載のキット。
【請求項9】
前記少なくとも1つの捕捉試薬は、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合するものではない抗体を結合しない、請求項6から8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記少なくとも1つの捕捉試薬及び前記少なくとも1つの検出試薬は、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合する抗体に結合する、請求項6から8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
請求項3~10のいずれか1項に記載のキットで対象におけるモノクローナル抗体療法の免疫原性のレベルを決定する方法であって、当該方法は、
(a)生体試料中の少なくとも1つの抗体が前記キットの前記少なくとも1つの捕捉試薬及び前記少なくとも1つの検出試薬に結合できるのに好適な条件下で、対象からの生体試料を前記キットの前記少なくとも1つの捕捉試薬と及び前記少なくとも1つの検出試薬と接触させることであって、該対象は、この接触させるステップの前に前記モノクローナル抗体療法を施与されていたものである、当該接触させることと、
(b)前記少なくとも1つの検出試薬からのシグナルを検出することと、
(c)(b)からの前記シグナルが閾値を超える場合に、前記対象の免疫原性のレベルを高と特定すること、又は
(d)(b)からの前記シグナルが前記閾値を下回る場合に、前記対象の免疫原性のレベルを低と特定することとを含む、方法。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体療法は、
配列番号9のCDR1アミノ酸配列、配列番号10のCDR2アミノ酸配列、および配列番号11のCDR3アミノ酸配列を含むV
配列番号12のCDR1アミノ酸配列、LGSのCDR2アミノ酸配列、および配列番号14のCDR3アミノ酸配列を含むV、ならびに、
配列番号8のC末端重鎖配列、
を含む抗hIL4Rα抗体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体療法は、デュピルマブを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記閾値が、所定の値である、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記閾値が、安全閾値である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象、前記モノクローナル抗体療法の治療有効用量が投与されていたものである、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
免疫原性のレベルは、ベースラインレベルである、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
免疫原性のレベルは、後続レベル(subsequent level)である、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象は、臨床試験の参加者である、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、治療中の患者である、請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療は開始したところであり、かつ、免疫原性のレベルはベースラインレベルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は進行中であり、かつ、免疫原性のレベルは後続レベルである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記治療は終了するところであり、かつ、免疫原性のレベルは最終レベルである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、健常な個体である、請求項11から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象は、炎症性疾患もしくは炎症性障害、自己免疫性疾患もしくは自己免疫性障害、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、免疫性疾患もしくは免疫性障害、又は良性増殖性疾患もしくは良性増殖性障害である、請求項11から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、鼻ポリープ又はこれらの組み合わせである、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年7月10日出願の米国仮出願第62/695,988号の優先権及び利益を主張し、その内容は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
配列表
本願は、EFS-Web経由でASCII形式で提出した配列表を含有し、その全体を参照によりここに援用する。2019年7月8日作成の当該ASCIIコピーは、名称を“REGE-004_SeqList.txt”とし、サイズは32,813バイトである。
【0003】
本開示は、既存の結合相互作用を最小化するために、結合分子を改変することに向けられたものであり、薬物非特異的な結合相互作用により引き起こされる試料基質中のバックグラウンド反応性を最小化する又は緩和するように操作された結合分子を含む。
【背景技術】
【0004】
生物学的療法は、対象の免疫系の成分を除去、補充、又は置換して疾患を治療するための有益な手段である。外来性の生物由来物質は、治療している対象から免疫応答を誘発する可能性を有する。当該免疫応答は、生物学的治療の施与が契機となることがある。しかしながら、対象は、生物学的治療の導入の前にシグナルを生成して、それによって抗薬物抗体(ADA)アッセイで試験したときに高いバックグラウンドレベル又はノイズレベルを生じるような、対象の血清タンパク質の成分を有することがある。
【0005】
生物学的治療の開発および調査中に採用する標準アッセイは、抗薬物抗体(ADA)アッセイである。このアッセイを用いて、対象の免疫系は施与された生物学的治療に対して抗体を産生したかどうかが検出される。有効なアッセイとするために、シグナル対ノイズ比は、有意義なデータが観察され解析され得るようでなければならない。ある対象では、治療下で発生する真のADAの検出は、バックグラウンドシグナルが原因で不明確になり、また有効なADAアッセイが希薄化するというように、何らかの生物学的治療の施与がなくとも、高いバックグラウンド(ノイズ)が既に存在している。
【0006】
本発明の組成物及び方法では、一部のADAアッセイで観察される一部のヒトの血清又は血漿の試料中に存在する薬物非特異的な既存のバックグラウンド反応性を低減又は除去することへの道を提供する。この薬物非特異的な結合は、有効である治療の能力に干渉するかもしれず、もしくはしないかもしれず、又は循環中に残されたままかもしれず、もしくは残されていないかもしれないということも理解されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、結合分子であって、該結合分子の投与前又は投与後のいずれにおける対象の試料中の薬物非特異的な既存のバックグラウンド反応性を緩和するように操作された当該結合分子に向けられる。本発明は、既存の結合相互作用を最小化するために、結合分子を改変することに向けられたものであり、薬物非特異的な結合相互作用により引き起こされる試料基質中のバックグラウンド反応性を最小化する又は緩和するように操作された結合分子を含む。
【0008】
本開示は、1又は複数の特定の標的に対して特異的である結合分子をさらに提供する。一態様においては、本開示は、IL4Rα(インターロイキン4アルファ)又はIL13R(インターロイキン13)に対して特異的である結合分子に向けられる。別の態様においては、本開示は、IgG4抗体又はその断片に向けられる結合分子を提供する。本明細書で理解される結合分子は、特定の標的と特異的に相互作用する分子である。こうした結合分子の例としては、抗体(モノクローナル抗体を含む)及びその断片、操作された抗体、融合タンパク質、ならびに当業者に周知の他の同様の抗原結合分子が挙げられるが、これに限定されない。一態様においては、標的はIL4Rαである。本発明の別の態様においては、C末端重鎖配列LSPG(配列番号21)又はその抗原結合部分を含む非天然の結合分子を開示するが、当該分子は、薬物非特異的な結合相互作用によって引き起こされる、試料基質中のバックグラウンド反応性を最小化する又は緩和するように操作されている。
【0009】
本開示は、C末端重鎖配列、配列番号21又はその抗原結合部分を含む非天然の結合分子であって、既存の血清タンパク質との相互作用を緩和し、それによってADA解析中の高いバックグラウンドシグナルを低減する、当該結合分子を提供する。
【0010】
本発明のある実施形態においては、結合分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるCHドメイン配列又はその抗原結合部分を含む。ある実施形態においては、結合分子は、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるCHドメイン配列又はその抗原結合部分を含む。ある実施形態においては、結合分子は、配列番号7のアミノ酸配列を含むCHドメインを含む。
【0011】
本発明のある実施形態においては、結合分子は、切断型CHドメイン(REGN-E)を含むものであって、当該配列は配列番号22である。
【0012】
本開示の非天然の結合分子のある実施形態においては、結合分子は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、ならびに配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるC3ドメインを含む。
【0013】
本発明のある実施形態においては、結合分子は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むC3ドメインを含む。
【0014】
本開示は、非天然の結合分子を提供するものであって、当該結合分子は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、ならびに配列番号5、又は配列番号6、又は配列番号7、又は配列番号21、又は配列番号22のアミノ酸配列を含むC3ドメインを含む。
【0015】
本発明のある実施形態では、結合分子は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0016】
本発明のある実施形態においては、結合分子は、配列番号1のアミノ酸配列を含むIgG4 C1領域を含む。
【0017】
本発明のある実施形態においては、結合分子は、配列番号2のアミノ酸配列を含むIgG4 C2領域を含む。
【0018】
本開示の非天然の結合分子のある実施形態においては、結合分子は、ヒンジ領域を含む。ある実施形態においては、ヒンジ領域は、APEFLG(配列番号17)の配列を含む。
【0019】
本開示の非天然の結合分子のある実施形態においては、結合分子は、配列番号8のアミノ酸配列を含むIgG4定常領域を含む。
【0020】
本開示は、(a)第1の成分が操作可能に結合する固相(solid support)と、(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、モノクローナル抗体等である第1の非天然の結合分子を含み、モノクローナル抗体等である当該第1の非天然の結合分子が、V CDR1領域をコードする配列、V CDR2領域をコードする配列、V CDR3領域をコードする配列、V CDR1領域をコードする配列、V CDR2領域をコードする配列、V CDR3領域をコードする配列、及び重鎖定常領域をコードする配列を含み、また該重鎖定常領域は配列番号21の配列を含むものである、少なくとも1つの捕捉試薬と、(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、モノクローナル抗体等である第2の非天然の結合分子を含むものであり、当該検出試薬をコードする配列は、(b)の第1の非天然の結合分子の、V CDR1領域をコードする配列、V CDR2領域をコードする配列、V CDR3領域をコードする配列、V CDR1領域をコードする配列、V CDR2領域をコードする配列、V CDR3領域をコードする配列を含む、少なくとも1つの検出試薬と、を含むアッセイを提供するものであり、また第1の成分および第2の成分は、互いに対して選択的に結合するものである。
【0021】
開示のアッセイのある実施形態においては、第1の非天然の結合分子は、重鎖可変領域をコードする配列及び軽鎖可変領域をコードする配列を含み、また第2の非天然の結合分子は、重鎖可変領域をコードする配列及び第1の非天然の結合分子の軽鎖可変領域をコードする配列を含む。
【0022】
開示のアッセイのある実施形態においては、第1の非天然の結合分子は、配列番号7を含む重鎖定常領域をコードする配列を含む。
【0023】
開示のアッセイのある実施形態においては、第1の非天然の結合分子は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域を含む。
【0024】
開示のアッセイのある実施形態においては、第1の非天然の結合分子は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0025】
本発明の一実施形態においては、例えばデュピルマブなどのIgG4抗体のC3ドメインを、IgG1 C3ドメインに変えている。さらなる実施形態においては、デュピルマブのようなIgG4抗体のC3ドメインは、切断されている。一態様においては、当該切断は、セリン444において生じる。
【0026】
開示のアッセイのある実施形態においては、検出試薬は、デュピルマブを含む。ある実施形態においては、第2の非天然の結合分子は、デュピルマブを含む。
【0027】
開示のアッセイのある実施形態においては、第1の成分は、ストレプトアビジンを含む。ある実施形態においては、第2の成分は、ビオチンを含む。
【0028】
本開示は、(a)第1の成分が操作可能に結合する固相と、(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、本開示の非天然の結合分子又は本開示の組成物を含む、少なくとも1つの捕捉試薬と、(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、デュピルマブを含む少なくとも1つの検出試薬とを含む、アッセイを提供するものであって、第1の成分及び第2の成分は、互いに対して選択的に結合するものである。ある実施形態においては、第1の成分は、ストレプトアビジンを含む。ある実施形態においては、第2の成分は、ビオチンを含む。ある実施形態においては、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合するものではない結合分子は、少なくとも1つの捕捉試薬を結合しない。ある実施形態においては、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合する結合分子は、少なくとも1つの捕捉試薬及び少なくとも1つの検出試薬に結合する。
【0029】
本開示は、対象における生物学的療法の免疫原性のレベルを決定する方法を提供するものであり、当該方法は、(a)生体試料中の少なくとも1つの結合分子が少なくとも1つの捕捉試薬と及び少なくとも1つの検出試薬に結合できるのに好適な条件下で、対象からの生体試料を本開示のアッセイと接触させることであって、該対象は、この接触させるステップの前に結合分子療法を施与されていたものである、当該接触させることと、(b)少なくとも1つの検出試薬からのシグナルを検出することと、(c)(b)からのシグナルが閾値を超える場合に、対象の免疫原性のレベルを高と特定すること、又は(d)(b)からのシグナルが閾値を下回る場合に、対象の免疫原性のレベルを低と特定することと、を含む。
【0030】
本発明のある実施形態は、生物学的療法の免疫原性のレベルを決定する方法に向けられるものであって、当該生物学的療法は、本明細書に記載の結合分子を含む。一態様においては、生物学的療法は、デュピルマブを含む。
【0031】
本発明の特定の実施形態においては、生物学的療法の免疫原性のレベルを決定する方法を開示するものであって、閾値は、所定の値である。ある態様においては、閾値は、安全閾値である。
【0032】
本発明のある実施形態においては、生物学的療法の分量は、治療有効量であって、治療有効量は、例えば本発明の結合分子である治療薬の、対象に投与されたときに意図した目的を達成するのに十分な量となる量である。
【0033】
本発明の一部の実施形態においては、免疫原性のレベルは、ベースラインレベルである。ある態様においては、免疫原性のレベルは、後続レベル又は治療後レベルである。
【0034】
本発明の他の実施形態においては、対象は、臨床試験の参加者である。一態様においては、対象は、治療中の患者である。別の態様においては、治療は開始したところであり、かつ、免疫原性のレベルはベースラインレベルである。さらに別の態様においては、治療は進行中であり、かつ、免疫原性のレベルは後続レベル(subsequent level)である。さらにまた別の態様においては、治療は終了するところであり、かつ、免疫原性のレベルは最終レベルである。別の態様においては、対象は、健常な個体である。
【0035】
本発明のさらに他の実施形態においては、対象は、炎症性疾患もしくは炎症性障害、自己免疫性疾患もしくは自己免疫性障害、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、免疫性疾患もしくは免疫性障害、又は良性増殖性疾患もしくは良性増殖性障害である。一態様においては、対象は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、鼻ポリープ、ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、水疱性類天疱瘡、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、HFE(手足湿疹(Hand and foot eczema))、結節性痒疹、又は任意の2型炎症反応、又はこの組み合わせである。対象は、任意の病状又は医学的状態であり得る。
【0036】
本開示は、配列番号7及び配列番号13からなる群から選択される配列を含むC末端重鎖配列又はその抗原結合部分を含む非天然のモノクローナル抗体を提供する。C末端重鎖配列は、C3ドメイン配列であり得る。C末端重鎖配列は、配列番号7を含み得る。C末端重鎖配列は、配列番号13を含み得る。C末端重鎖配列は、配列番号8を含むCドメイン配列を含み得る。C末端重鎖配列は、配列番号22を含むCドメイン配列を含み得る。
【0037】
配列番号7及び配列番号13からなる群から選択される配列からなるC3ドメイン又はその抗原結合部分を含む非天然のモノクローナル抗体である。
【0038】
配列番号8及び配列番号22からなる群から選択される配列からなるC末端重鎖配列又はその抗原結合部分を含む非天然のモノクローナル抗体である。
【0039】
非天然のモノクローナル抗体であって、当該抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、ならびに配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるC3ドメイン、又はその抗原結合部分を含む。
【0040】
先述の抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域、配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域をさらに含み得る。
【0041】
本開示は、非天然のモノクローナル抗体を提供するものであって、当該抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;配列番号10のアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号11のアミノ酸配列を含むV CDR3領域;配列番号12のアミノ酸配列を含むV CDR1領域;LGSのアミノ酸配列を含むV CDR2領域;配列番号14のアミノ酸配列を含むV CDR3領域、ならびに配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むC3ドメイン、又はその抗原結合部分を含む。
【0042】
先述の抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み得、又はその抗原結合部分を含み得る。先述の抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むIgG4 C1領域を含み得る。先述の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むIgG4 C2領域を含み得る。IgG4 C2領域は、ヒンジ領域を含み得る。ヒンジ領域は、APEFLG(配列番号17)の配列を含み得る。
【0043】
本開示の抗体は、免疫原性の解析中の高いバックグラウンドシグナルを緩和することが可能である。
【0044】
本開示は、(a)第1の成分が操作可能に結合する固相と、(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、本開示の第1の非天然のモノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの捕捉試薬と、(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、本開示の第2の非天然のモノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの検出試薬とを含む、アッセイを提供するものであって、第1の成分及び第2の成分は、互いに対して選択的に結合するものである。
【0045】
検出試薬は、デュピルマブを含み得る。第2の非天然のモノクローナル抗体は、デュピルマブを含み得る。第1の成分は、ストレプトアビジンを含み得る。第2の成分は、ビオチンを含み得る。
【0046】
本開示は、(a)第1の成分が操作可能に結合する固相と、(b)第2の成分が操作可能に結合する少なくとも1つの捕捉試薬であって、本開示の非天然のモノクローナル抗体を含む、少なくとも1つの捕捉試薬と、(c)検出可能な標識が操作可能に結合する少なくとも1つの検出試薬であって、デュピルマブを含む、少なくとも1つの検出試薬とを含む、アッセイを提供するものであって、第1の成分及び第2の成分は、互いに対して選択的に結合するものである。第1の成分は、ストレプトアビジンを含み得る。
【0047】
第2の成分は、ビオチンを含み得る。
【0048】
一部の態様においては、少なくとも1つの捕捉試薬は、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合するものではない抗体を結合しない。一部の態様においては、少なくとも1つの捕捉試薬及び少なくとも1つの検出試薬は、デュピルマブの可変領域の配列に対して特異的に結合する抗体に結合する。
【0049】
本開示は、対象におけるモノクローナル抗体療法の免疫原性のレベルを決定する方法を提供するものであり、当該方法は、(a)生体試料中の少なくとも1つの抗体が少なくとも1つの捕捉試薬と及び少なくとも1つの検出試薬に結合できるのに好適な条件下で、対象からの生体試料を本開示のいずれかのアッセイと接触させることであって、該対象は、この接触させるステップの前にモノクローナル抗体療法を施与されていたものである、当該接触させることと、(b)少なくとも1つの検出試薬からのシグナルを検出することと、(c)(b)からのシグナルが閾値を超える場合に、対象の免疫原性のレベルを高と特定すること、又は(d)(b)からのシグナルが閾値を下回る場合に、対象の免疫原性のレベルを低と特定することと、を含む。
【0050】
モノクローナル抗体療法は、本開示の抗体を含み得る。
【0051】
モノクローナル抗体療法は、デュピルマブを含み得る。閾値は、所定の値であり得る。閾値は、安全閾値であり得る。モノクローナル抗体療法の分量は、治療有効量であり得る。免疫原性のレベルは、ベースラインレベルであり得る。免疫原性のレベルは、後続レベルであり得る。
【0052】
対象は、臨床試験の参加者であり得る。対象は、治療中の患者であり得る。治療は開始したところであり得、かつ、免疫原性のレベルはベースラインレベルであり得る。治療は進行中であり得、かつ、免疫原性のレベルは後続レベルであり得る。治療は終了するところであり得、かつ、免疫原性のレベルは最終レベルであり得る。対象は、健常な個体であり得る。対象は、炎症性疾患もしくは炎症性障害、自己免疫性疾患もしくは自己免疫性障害、アレルギー性疾患もしくはアレルギー性障害、免疫性疾患もしくは免疫性障害、又は良性増殖性疾患もしくは良性増殖性障害であり得る。対象は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、鼻ポリープ又はこの組み合わせであり得る。
【0053】
上記態様のいずれかを、その他の態様と組み合わせることが可能である。
【0054】
別段で規定しない限り、本明細書で用いる全ての技術的および科学的な語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書において、単数形はまた、別段で文脈で明示していない限り複数形を含むものであり、例えば、「a」、「an」及び「the」の語は、単数形又は複数形として理解するものであり、そして「又は(or)」の語は、包括的であるものとして理解する。例えば、「(ある)要素」(an element)は、1又は複数の要素を意味する。本明細書全体を通して、「含むこと(comprising)」の文言、又は「含む(comprise)」もしくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示した要素、整数もしくはステップ、又は要素、整数もしくはステップの群の包含を意図しているものであるが、その他の要素、整数もしくはステップ又は要素、整数もしくはステップの群の除外は意図していないことが理解されるであろう。約(about)については、明示した値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%の範囲内として理解できる。別段に文脈から明らかでない限り、本明細書で提供する全ての数値は、「約」の語で修飾される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、抗薬物抗体(ADA)アッセイにおいて競合抗体コンストラクトを用いた、ベースラインの患者試料中の既存の反応性の特異性を特徴づけるプロットである。y軸は、増分を25とした0~100の阻害率である。X軸は、このブリッジングアッセイで用いた特異的な競合抗体コンストラクトであり、左から右に向かって、デュピルマブ、REGN-A、野生型IgG4(wt IgG4)、野生型IgG1(wt IgG1)、野生型IgG2(wt IgG2)、野生型IgG3(wt IgG3)、REGN-B及びREGN-Cを列記している。6種の患者試料(S1~S6)を、順に、円形、四角形、三角形、アスタリスク、ダイヤ、及び逆三角形で表す。このグラフで言及する抗体試薬は、ADA確認アッセイフォーマットにおける競合阻害剤として200μg/mLで用いた。このアッセイにおいて高阻害率であることは、当該競合者が、これら試料中の既存のシグナルを阻害することができたことを示しており、当該競合分子は、既存の反応性が結合する領域を含有しているということを示唆する。低い方の阻害率であることは、競合分子は、既存の反応性が結合できる領域を含有していないことを示す。
図2図2は、3つの重要なコンストラクト、及びデュピルマブと比較した際のそれらの構造上の相違を図示した図である。REGN-B、REGN-C及びREGN-Eは、デュピルマブの分子類似体である。3つのコンストラクトは全て、抗IL4Rに対してデュピルマブと同じ特異性及び類似の親和性を有し、またデュピルマブに存在する同じCPPCヒンジ領域の変異配列を所有する、IgG4kコンストラクトである。
図3図3は、野生型のIgG4、IgG1及びIgG2のサブタイプのアミノ酸配列ならびにC3ドメインの比較を図示した図である。445位のロイシンは、矢印で示すとおり、C3ドメイン配列のC末端から3番目である。
図4図4は、薬物特異的なブリッジング(パネルA、ADAアッセイ#1)、現在のADAアッセイにおける既存の反応性に起因する非薬物特異的なブリッジング(パネルB)、及び捕捉試薬としてREGN-Cを使用したことに起因する非薬物特異的なブリッジングなし(パネルC、ADAアッセイ番号2)を表す図を示す一実施形態である。プレート上のストレプトアビジンを、灰色の十字で示し、ビオチン部分を小さい黒四角形で示し、またルテニウム標識を星で示している。パネルA及びBで、ビオチン化REGN-D(デュピルマブ)捕捉試薬(黒い二又構造)が示されているが、パネルCでは、ビオチン化REGN-Cが示されている(黒白格子模様の二又構造)。パネルB及びCでは、既存の反応性が、小さめの破線輪郭の二又構造で表されている。
図5A図5Aは、図4のパネルAで図示される、捕捉試薬としてビオチン化REGN-Dを用いた元来のADAアッセイ(アッセイ#1)による、患者ベースライン試料のサブセットからのアッセイシグナルを示すプロットである。y軸は、対数目盛での0~100のシグナル/ノイズ比である。x軸は、個々の患者試料を、シグナル/ノイズ比の順で並べた。カットポイントを、破線で示す。
図5B図5Bは、図4のパネルCで図示される、捕捉試薬としてビオチン化REGN-Cを用いた改変したADAアッセイ(アッセイ#2)による、同一の患者ベースライン試料のアッセイシグナルを示すプロットである。y軸は、対数目盛での0~100のシグナル/ノイズ比である。x軸は、個々の患者の試料を、図5Aで示したのと同じ順で示す。カットポイントを、破線で示す。
図6図6Aは、捕捉試薬及び検出試薬としてインタクトなデュプリウマブ(dupliumab)を用いた、図4で示したものと類似する、薬物特異的なブリッジングの抗薬物抗体(ADA)アッセイによる、患者ベースライン試料のサブセットからのアッセイシグナルを示すプロットである。 図6Bは、捕捉試薬及び検出試薬としてREGN-B(図2、IgG4のC3全体をIgG1 C3ドメインに変えたヒトIgG4 mAb)を用いた改変したブリッジングADAアッセイによる、図6Aで試験した患者ベースライン試料の同じサブセットからのアッセイシグナルを示すプロットである。 図6Cは、捕捉試薬及び検出試薬としてREGN-E(図2、C3ドメインがセリン444の後の終止コドンで切断されているヒトIgG4 mAb)を用いた改変したブリッジングADAアッセイによる、図6Aで試験した患者ベースライン試料の同じサブセットからのアッセイシグナルを示すプロットである。
図7図7は、抗薬物抗体(ADA)アッセイにおいて競合抗体コンストラクトを用いた、ベースラインの患者試料中の既存の反応性の特異性を特徴づける一連のプロットである。y軸は、増分を25とした0~100の阻害率である。X軸は、ブリッジングアッセイで用いられた特異的な競合抗体コンストラクトであり、左から右に向かって、上のプロットではデュピルマブ、REGN-F及びREGN-F(L445P)であり、又は下のプロットではデュピルマブ、REGN-G及びREGN-G(L445P)である。6種の患者試料(S1~S6)を、順に、円形、四角形、三角形、アスタリスク、ダイヤ、及び逆三角形で表す。このグラフで言及する抗体試薬は、ADA確認アッセイフォーマットにおける競合阻害剤として200μg/mLで用いた。このアッセイにおいて高阻害率であることは、当該競合者が、これら試料中の既存のシグナルを阻害することができたことを示しており、当該競合分子は、既存の反応性が結合する領域を含有しているということを示唆する。低い方の阻害率であることは、競合分子は、既存の反応性が結合できる領域を含有していないことを示す。
図8図8は、捕捉試薬及び検出試薬の両方として用いたREGN-Fを伴うか(上図)、又は捕捉試薬として用いたREGN-F(L445P)を検出試薬としてのREGN-Fと組み合わせた、図4に示すものと類似の薬物特異的ブリッジングの抗薬物抗体(ADA)アッセイによる、患者ベースライン試料のサブセットからのアッセイシグナルを示す一連のプロットである。
図9図9は、捕捉試薬及び検出試薬の両方として用いたREGN-Gを伴うか(上図)、又は捕捉試薬として用いたREGN-Gを検出試薬としてのREGN-G(L445P)と組み合わせた、図4に示すものと類似の薬物特異的ブリッジングの抗薬物抗体(ADA)アッセイによる、患者ベースライン試料のサブセットからのアッセイシグナルを示す一連のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
この開示は、本明細書に記載の組成物及び方法のみならず記載の実験条件に限定されないものであって変動し得ることを認識されたい。また、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなるため、本明細書で用いる文言は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであり、限定を意図していないものであるということを理解されたい。
【0057】
別段で規定しない限り、本明細書で用いる全ての技術的および科学的な語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。しかしながら本明細書に記載するのと類似又は均等である任意の組成物、方法及び材料を、本発明の実施又は試験において用いることができる。言及する刊行物の全ては、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「ヒトIL4R」(hIL-4R)の語は、インターロイキン-4(IL-4)、IL-4Rα(配列番号18)を特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を指すことを意図する。「ヒトインターロイキン-13」(hIL-13)の語は、IL-13受容体を特異的に結合するサイトカインを指し、また「hIL-13/hIL-13R1複合体」は、hIL-13R1複合体に結合するhIL-13により形成された複合体を指し、当該複合体は、hIL-4受容体を結合し、生物活性を惹起する。
【0059】
本明細書で用いる場合、「結合分子(binding molecule)」の語は、特定の標的と特異的に相互作用及び結合する分子を指すことを意図する。標的は、生物学的分子又は小(化学的)分子を含むことが可能である。標的分子は、抗原又は抗原部分を画成し得る。結合分子の例としては、抗体(モノクローナル抗体、二重特異性抗体、及び抗体断片を含む)、融合タンパク質、及び当業者に公知の他の抗原結合分子が挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
本明細書で用いる場合、「抗体」の語は、結合分子の一例であり、また免疫グロブリンとも呼ばれ、典型的には、ジスルフィド結合で相互に結合した、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はV)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインC1、C2及びC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR又はV)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。V及びV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へと、さらに下位に分割でき、より保存的であるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域を組み込んでいる。V及びVはそれぞれ、3つのCDR及び4つのFRから構成され、以下の順序で、アミノ末端からカルボキシ末端へと配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のサブクラスの抗体を含み得る。抗体はまた、異なるサブクラスからの領域の組み合わせを含み得る。IgG4抗体は、デュピルマブ及びセミプリマブを含み得るが、これに限定されない。
【0061】
「結合分子」の他の例としては、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体及び五重特異性抗体を含むが、これに限定されない。一部の態様においては、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、及び五重特異性抗体は、抗体のFc部分を含み得る。一部の態様においては、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、五重特異性抗体は、IgG4骨格を含み得る。「結合分子」の別の例としては、抗体-薬物複合体(ADC)が挙げられる。一部の態様においては、ADCはIgG4骨格を含み得る。「結合分子」の別の例としては、二重特異性T細胞結合体(BiTE)が挙げられる。一部の態様においては、BiTEはIgG4骨格を含み得る。「結合分子」の別の例としては、TRAP融合タンパク質が挙げられる。一部の態様においては、TRAP融合タンパク質は、IgG4骨格を有する。「結合分子」の別の例は、フィノマー(fynomer)が挙げられる。
【0062】
本明細書で用いる場合、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」もしくは「抗体断片」)の語は、抗原(例えば、hIL-4Rα)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長の抗体の断片により実行可能であることがわかっている。抗体の「抗原結合部分」の語に包含される結合断片の例としては、(i)V、V、C1及びC1ドメインを含む一価の断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって結合された2つのF(ab’)断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片;(iii)V及びC1ドメインを含むFc断片;(iv)抗体の1つのアームのV及びVドメインを含むFv断片、(v)Vドメインを含む、dAb断片(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、ならびに(vi)CDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインV及びVは、異なる遺伝子によってコードされるが、それらは、単一の接触鎖(contiguous chain)であってそこでV及びV領域が対になって一価の分子(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照)を形成するものである単一の接触鎖としてそれらを作らせることができるような合成リンカーによって、組換え法を用いて、連結され得る。こうした単一鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」の語に包含することを意図する。例えば二重特異性抗体等である他の形態の単一鎖抗体もまた、包含される(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444-6448を参照)。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「中和」又は「遮断」抗体は、そのhIL-4Rαへの結合がhIL-4及び/又はhIL-13の生物活性の阻害を結果的にもたらすものである抗体を指すことを意図する。このhIL-4及び/又はIL-13の生物活性の阻害は、例えばhIL-4により及び/又はIL-13により誘発される細胞内活性ならびにhIL-4RαへのhIL-4結合(以下の実施例を参照)等である、この技術分野で公知のhIL-4及び/又はhIL-13の生物活性の1又は複数の兆候を測定することによって評価することが可能である。
【0064】
「CDR」又は相補性決定領域は、より保存的な、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域内に分散した超可変的な領域である。開示の抗hIL-4Rα抗体又は断片の様々な実施形態においては、FRは、ヒト生殖系列配列と一致し得るか、又は、天然もしくは人工的に改変してもよい。
【0065】
「エピトープ」の語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基である。1つの抗原が、1以上のエピトープを有してもよい。エピトープは、立体構造であるか又は直線状であるかのいずれかであり得る。立体構造のエピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並列するアミノ酸によって産生する。直線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接し合うアミノ酸残基によって産生されたものである。ある状況においては、エピトープは、抗原上に、糖類、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含み得る。
【0066】
「免疫原性」の語は、抗原又は免疫原の、ヒト又は動物の体内で免疫応答を誘発する能力を指す。タンパク質治療は、薬物の薬物動態及び効能に干渉する可能性がある有害な免疫反応を惹起する能力を有する。この免疫応答は、抗薬物抗体(ADA)の産生の形態を取り得る。
【0067】
核酸又はその断片に対して言及する場合、「実質同一性」又は「実質的に同一」の語は、別の核酸(又はその相補鎖)と、適切なヌクレオチドの挿入又は欠失を含めて、最適に配列したときに、以下に述べる例えばFASTA、BLAST又はGap等の任意の周知の配列同一性アルゴリズムによって測定されるとおり、ヌクレオチド塩基の、少なくとも約95%で、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%又は99%で、ヌクレオチド配列同一性がある、ということを示す。
【0068】
ポリペプチドに用いる場合、「実質類似性」又は「実質的に類似」の語は、2つのペプチド配列が、例えばGAP又はBESTFITのプログラムによって、デフォルトのギャップ重量を用いて、最適に配列されたときに、少なくとも95%配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。典型的には、同一でない残基位置同士は、保存的アミノ酸置換が異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)をもつ側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されている置換である。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の官能性を実質的に変化させないこととなる。2以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合には、配列同一性の百分率又は類似性の度合いを上方調節して、置換の保存的性質を補正してもよい。この調節を行う手段は、当業者にとって周知である。例えばPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331が参照され、これは参照により本明細書に援用する。類似する化学的性質をもつ側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、(1)脂肪族の側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;(2)脂肪性-水酸基の側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、ならびに(7)システイン及びメチオニンである硫黄含有側鎖、が挙げられる。ある実施形態においては、保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換は、参照により本明細書に援用する、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示の、PAM250対数尤度表内のプラスの値を有するあらゆる変更である。「中程度に保存的」な置換は、PAM250対数尤度表内のマイナスでない値を有するあらゆる変更である。
【0069】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼び、典型的には、配列解析ソフトウェアを用いて測定する。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含めた、種々の置換、欠失及び他の修飾に割り当てられる類似性の測定により、類似配列同士をマッチングする。例えばGCGソフトウェアは、デフォルトパラメータと共に使用されて異なる種の生物からの相同ポリペプチド等の密接に関連するポリペプチド間もしくは野生型タンパク質及びその変異体間での配列相同性又は配列同一性を決定することが可能である、Gap及びBestfit等のプログラムを含有する。例えばGCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列はまた、デフォルトの又は推奨されるパラメータを用いて、GCGバージョン6.1におけるプログラムである、FASTAを用いて比較可能である。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、問い合わせ配列及び探索配列間で最も重複する領域のアラインメントと配列同一性の百分率とを提供する(上記Pearson(2000))。開示の配列を様々な生物からの多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の、別のアルゴリズムとしては、デフォルトパラメータを用いた、特にBLASTP又はTBLASTNである、コンピュータプログラムBLASTがある。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402が参照され、これらそれぞれは、参照により本明細書に援用する。
【0070】
ヒト抗体を産生する方法としては、例えば米国特許第6,596,541号、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21)、米国特許第5,545,807号、第6,787,637号に記載された方法が挙げられる。
【0071】
当技術分野で公知の任意の方法によれば、げっ歯類が免疫され得る(例えば、Harlow and Lane(1988) Antibodies:A Laboratory Manual 1988 Cold Spring Harbor Laboratory;Malik and Lillehoj(1994)Antibody Techniques,Academic Press,CAを参照)。本開示の抗体は、典型的には、VELOCIMMUNE(登録商標)技術(米国特許第6,596,541号)を用いて調製する。内因性免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域が対応するヒト可変領域で置換されている遺伝子導入マウスに、関心の抗原を接種して、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(例えば、B細胞)を回収する。このリンパ細胞を、骨髄腫細胞株と融合して、不死のハイブリドーマ細胞株を調製し得、またこうしたハイブリドーマ細胞株を、スクリーニング及び選択して、関心の抗原に特異的である抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、重鎖及び軽鎖の所望のアイソタイプの定常領域に結合してもよい。こうした抗体タンパク質は、CHO細胞等の細胞内で産生できる。あるいは、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNAは、抗原特異的リンパ細胞から直接単離してもよい。
【0072】
抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、ヒトの重鎖及び軽鎖の定常領域をコードするDNAに操作可能に結合してもよい。そしてこのDNAは、完全ヒト抗体を発現することが可能である細胞において発現できる。ある実施形態においては、細胞はCHO細胞である。
【0073】
抗体は、補体の固定(補体依存性細胞傷害)(CDC)を介した細胞死滅及び抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)の関与による細胞死滅によるよりも、リガンド受容体相互作用を遮断又は受容体成分相互作用を阻害する上で治療上有用であり得る。抗体の定常領域は、抗体の、補体を固定して細胞依存性細胞障害を介在する能力において重要である。そのため、抗体のアイソタイプは、細胞障害性を介在する抗体にとって望ましいか否かに基づいて選択され得る。
【0074】
ヒト免疫グロブリンは、ヒンジ不均一性を伴う2つの形態で存在可能である。第1の形態では、免疫グロブリン分子は、鎖間の重鎖ジスルフィド結合によって二量体が共に保持されるものである、約150~160kDaの安定な4鎖のコンストラクトを含む。第2の形態では、二量体は、鎖間のジスルフィド結合を介して結合しておらず、共有結合した軽鎖及び重鎖(半抗体)から構成される、約75~80kDaの分子が形成される。これらの形態は、親和性精製後であってさえも、分離が極めて困難であった。種々のインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連する構造上の相違に起因するが、これに限定されない。実際には、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における1つのアミノ酸置換により、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観測されたレベルに対して、第2の形態の出現が有意に減少することがある(Angal et al.(1993) Molecular Immunology 30:105)。本開示は、例えば産生において、所望の抗体の形態の収量を向上するために所望され得るような、C2又はC3のヒンジ領域内に1又は複数の変異を有する抗体を包含する。
【0075】
はじめに、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、高親和性のキメラ抗体を単離する。以下に記載するように、この抗体は、hIL-4Rαに対する結合親和性、hIL-4のhIL-4Rαへの結合を遮断する能力、及び/又はヒトタンパク質に対する選択性を含めた、所望の特性に関して特徴づけられて選択される。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域で置換されて、例えば野生型又は改変されたIgG4又はIgG1(例えば、配列番号4、19、20及び23)である、本開示の完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変動し得るが、可変領域には、高親和性の抗原結合特性及び標的特異性が存在する。
【0076】
免疫原性アッセイ
本開示は、C末端重鎖配列LSPG(配列番号21)を含む、モノクローナル抗体又はその抗原結合部分等の非天然の結合分子を提供する。ある実施形態においては、C末端重鎖は、ヒトC3ドメインである。ある実施形態においては、ヒト抗体は、IgG4クラスのものである。ある実施形態においては、重鎖配列は、配列番号7を含む。ある実施形態においては、重鎖配列は、配列番号8を含む。
【0077】
本開示は、免疫原性アッセイを提供するものであって、本開示の抗体又はその抗原結合断片等である、抗IL-4Rα結合分子を含む。本開示の免疫原性アッセイは、抗薬物抗体(ADA)アッセイの形態を取ることが可能である。本開示のADAアッセイは、ADA結合アッセイであり得るか、又は酵素結合免疫吸着(ELISA)アッセイに向けられ得る。ADAブリッジングアッセイにおいては、関心の結合分子のビオチン化形態が、プレート上のストレプトアビジンに結合する。そして抗体に似た結合分子は、試料中に存在すると、ビオチン化結合分子及び同一の結合分子の標識化形態の両方に結合して、標識からの検出可能なシグナルを伴うブリッジング相互作用を形成する。好適な標識は、当業者にとって公知であるだろう。例示的な標識としては、ルテニウム、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びフルオロフォアが挙げられる。ADAブリッジングアッセイは、ブリッジング反応を行って標準曲線を生成するものである試料の滴定と、反応を阻害する非標識の寒冷競合抗体の使用とを含み得る。
【0078】
図4は、パネルAに薬物特異的ブリッジングADAアッセイを、パネルBに、現在のADAアッセイにおける既存の反応性に起因する非薬物特異的ブリッジングアッセイを、そしてパネルCに、捕捉試薬としてREGN-Cを用いたことに起因する非薬物特異的ブリッジングなしのADAアッセイを、示している。既存の反応性は、破線輪郭の小さめの二又構造としてパネルB及びCで見られる。開示の実施形態のアッセイ用試薬の分子類似体REGN-A、B、C、D及びEは、互いに交換可能であり、それにより当業者は、記載のアッセイに様々な並べ替えを設計することが許容されるということを理解されたい。一態様においては、バックグラウンドを低減するため、当業者は、REGN-Dを、以下の試薬:REGN-B、REGN-C又はREGN-Eのいずれかと、配列順が「捕捉試薬」+「検出試薬」となるように(D+B、D+C、D+E、又はB+D、C+DもしくはE+Dのようにひっくり返す)組み合わせて、新規の組み合わせを形成してもよい。別の態様においては、当業者は、バックグラウンドシグナルを低減するために、以下の対を作ってもよい:B+B、C+C、又はE+E。
【0079】
本開示のある実施形態においては、免疫原性(又はADA)のレベルは、例えば抗体(又はその抗原結合部分)等である結合分子を用いて決定する。ある実施形態においては、免疫原性のレベルは、IgG4抗体を用いてデュピルマブで評価する。これら免疫原性試験において典型的に対処が必要である1つの問題は高いバックグラウンドシグナルであるが、これは用いられるIgG4抗体と関連していることが多い。この高いバックグラウンドを緩和するために、本開示は、配列番号21、配列番号22、配列番号7又は配列番号8のいずれかの重鎖配列を含み、結果としてより低いバックグラウンドシグナルをもたらす、IgG4抗体を提供する。
【0080】
本開示のある実施形態においては、例えば抗体又はその抗原結合部分等である結合分子は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14、及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)配列番号21、配列番号22、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるC3又はCH配列を含むものであって、当該結合分子は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)配列番号21、配列番号22、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されないC3又はCH配列を含む結合分子と比較して、免疫原性(ADA)アッセイにおいて、低減したバックグラウンド反応性を呈する。ある実施形態においては、(3)のCHドメイン配列は、配列番号5及び配列番号6を含み得る。
【0081】
本発明の一実施形態においては、例えばデュピルマブ等のIgG4抗体のC3ドメインは、IgG1 C3ドメインに変えられ、より低いバックグラウンドシグナルを結果としてもたらす(図6B)。さらなる実施形態においては、デュピルマブのようなIgG4抗体のC3ドメインは、切断されている。一態様においては、当該切断は、セリン444において生じて、より低いバックグラウンドシグナルを結果としてもたらす(図6C)。
【0082】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)配列番号21、配列番号22、配列番号13、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択されるC3又はCH配列、を含む結合分子を提供する。
【0083】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)C3又はC配列であって、配列番号21、配列番号22、配列番号13、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むC3又はC配列、を含む結合分子を提供する。
【0084】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)C3配列であって、配列番号7、配列番号13又は配列番号21からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むC3配列、を含む結合分子を提供する。
【0085】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)C配列であって、配列番号8、配列番号21及び配列番号22からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むC配列、を含む結合分子を提供する。
【0086】
一部の態様においては、本開示は、C配列であって、配列番号8、配列番号21及び配列番号22からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むC配列、を含む結合分子を提供する。
【0087】
一部の態様においては、本開示は、C3配列であって、配列番号7、配列番号13又は配列番号21からなる群から選択される1つ又は複数の配列を含むC3配列、を含む結合分子を提供する。
【0088】
一部の態様においては、本開示は、445位にプロリンからロイシンへのアミノ酸置換を含むIgG4 Cドメインを含む結合分子を提供する。
【0089】
一部の態様においては、本開示は、配列番号1、配列番号2及び配列番号5を含む結合分子を提供する。
【0090】
一部の態様においては、本開示は、配列番号1、配列番号2及び配列番号6を含む結合分子を提供する。
【0091】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)配列番号1、配列番号2、及び配列番号5を含むC配列を含む結合分子を提供する。
【0092】
一部の態様においては、本開示は、(1)配列番号12、LGS、配列番号14及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、(2)配列番号9、配列番号10、配列番号11及びその組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数のV鎖配列、ならびに(3)配列番号1、配列番号2、及び配列番号6を含むC配列を含む結合分子を提供する。
【0093】
一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約99%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約98%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約97%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約96%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約95%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約94%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約93%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約92%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約91%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。
【0094】
一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約99%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約98%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約97%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約96%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約95%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約94%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約93%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約92%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約91%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約90%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。
【0095】
一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約99%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約98%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約913%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約96%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約95%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約94%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約93%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約92%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約91%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。一部の態様においては、本開示は、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供する。
【0096】
一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約99%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約98%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約97%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約96%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約95%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約94%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約93%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約92%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約91%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。
【0097】
一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約99%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約98%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約97%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約96%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約95%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約94%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約93%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約92%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約91%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。一部の態様においては、本開示は、配列番号8に対して少なくとも約90%の配列同一性を伴う少なくとも1つのポリペプチド配列を含む結合分子を提供するものであって、当該少なくとも1つのポリペプチド配列は、配列番号21を含む。
【0098】
一部の態様においては、本開示のいずれの結合分子は、配列番号3を含むC配列を含む結合分子と比較して、免疫原性(ADA)アッセイにおいて低減したバックグラウンド反応性を呈することが可能である。一部の態様においては、本開示のいずれの結合分子は、配列番号4を含むC配列を含む結合分子と比較して、免疫原性(ADA)アッセイにおいて低減したバックグラウンド反応性を呈することが可能である。
【0099】
治療的投与及び製剤
本開示は、本開示の抗IL-4Rα結合分子を含む治療組成物を提供する。本開示に従う治療組成物の投与は、製剤に包含されて改善された輸送、送達及び耐性等を提供する、好適な担体、賦形剤、ならびに他の試薬と共に投与されることとなる。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に公知である以下の処方集に見ることが可能である:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン。これら製剤としては、例えば、粉剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー、蝋、オイル、脂質、ベシクルを含有する脂質(陽イオン性又は陰イオン性)(例えば、LIPOFECTIN(商標)等)、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油型乳剤及び油中水型乳剤、カーボワックス乳剤(種々の分子量のポリエチレングリコール類)、半固体状ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体状混合物が挙げられる。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311もまた参照されたい。
【0100】
投与量は、投与しようとする対象の年齢及び体格、標的となる疾患、症状、投与経路等に応じて、変動し得る。本開示の結合分子が、成人患者において、IL-4Rαに関連する種々の症状及び疾患を治療するために用いられる場合には、本開示の結合分子を、通常、体重1kg当たり約0.01から約20mgの、より典型的には、体重1kg当たり、約0.02から約7mg、約0.03から約5mg、又は約0.05から約3mgの単一用量で、静脈内投与することが有利である。一部の態様においては、本開示の結合分子が、IL-4Rαに関連する種々の症状及び疾患を治療するために用いられる場合には、投与計画は、300mgを2週間毎(Q2W)に1回とすることができ、また最大4週間毎(Q4W)まで延長することができる。治療の頻度及び期間は、症状の重症度に応じて、調節可能である。
【0101】
種々の送達系が知られており、またそれを用いて本開示の医薬組成物を投与することが可能であり、例えば、リポソームでのカプセル封入、微小粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することが可能である組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシスがある(例えば、Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び口腔内の経路が上げられるが、これに限定されない。組成物は、任意の従来の経路によって、例えば、点滴又はボーラス注入によって、上皮層又は粘膜皮膚層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管の粘膜等)を介した吸収によって、投与され得、また他の生物学的に活性な薬剤と共に投与され得る。投与は、全身投与又は局所投与とすることが可能である。
【0102】
医薬組成物はまた、例えばリポソームであるベシクルで送達することも可能である(Langer(1990)Science 249:1527-1533;Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365のTreat et al.(1989);Lopez-Berestein,ibid.,pp.317-327を参照。
【0103】
ある実施形態においては、医薬組成物は、徐放システムで送達することが可能である。一実施形態においては、ポンプを用いてもよい(上記のLanger;Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態においては、ポリマー材料を用いることが可能である(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974)を参照。さらに別の実施形態においては、徐放システムを、組成物のターゲット近傍に設け、それによりわずかな全身用量の部分のみを要することになる(例えば、Medical Applications of Controlled Release、同上、vol.2,pp.115-138,1984のGoodsonを参照)。他の徐放システムは、Langer(1990)Science 249:1527-1533によるレビューで論じられている。
【0104】
注射用製剤は、静脈内、皮下、皮内、及び筋肉内の注射、点滴注入等の剤形を含み得る。これら注射用製剤は、公知の方法によって調製され得る。例えば、注射用製剤は、例えば無菌水性媒体中もしくは注射に従来用いられる油性媒体中に上記した抗体もしくはその塩を溶解、懸濁又は乳化することによって、調製され得る。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水や、ブドウ糖及び他の助剤等を含有する等張液があり、これらは例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]等である適切な可溶化剤と組み合わせて用いてもよい。油性媒体としては、例えばゴマ油、ダイズ油等が用いられ、これらは、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて用いてもよい。このように調製された注射剤は、適切なアンプル中に充填することが好ましい。
【0105】
上記に記載した経口用又は非経口用の医薬組成物は、有効成分の用量に相応であるように適した単位用量の剤形に調製することが有利である。こうした単位用量の剤形は、例えば、錠剤、丸薬、カプセル剤、注射剤(アンプル)、座薬等が挙げられる。含有される先述の結合分子の量は、概して、単位用量での剤形当たり約5から500mgであり、ある実施形態においては、特に注射剤の形態で、先述の結合分子は、約5から100mgで、及び他の剤形では約10から250mgで含有される。
【0106】
単独療法及び併用療法 本開示の結合分子は、IL-4活性を低減することによって改善、阻害、又は寛解するような疾患及び障害を治療するのに有用である。これら疾患は、IL-4の異常発現もしくは過剰発現、又はIL-4産生に対する異常宿主応答を特徴とする疾患である。
【0107】
本開示は、抗IL-4Rα結合分子(例えば、抗体又は抗体断片)が第2の治療薬と組み合わせて投与されるものである併用療法を包含する。同時投与及び併用療法は、同時での投与に限定されるものではなく、抗IL-4Rα結合分子を、少なくとも1つの他の治療薬を患者に投与することを伴う一連の治療中に少なくとも1回投与するという治療レジメンを含む。第2の治療薬は、例えば別の結合分子等である別のIL-4拮抗薬、又は可溶性サイトカイン受容体、IgE拮抗薬、吸入もしくは他の適切な手段により送達され得る抗ぜん息薬(コルチコステロイド、非ステロイド薬、β-アゴニスト、ロイコトリエン拮抗薬、キサンチン、フルチカゾン、サルメテロール、アルブテロール)であり得る。特定の実施形態においては、本開示の結合分子等である抗IL-4Rα結合分子を、例えばリロナセプト(rilonacept)等であるIL-1拮抗薬又はIL-13拮抗薬と共に投与してもよい。一部の態様においては、本開示の結合分子等の抗IL-4Rα結合分子は、1型又は2型の炎症反応において、サイトカイン及び/又は受容体を標的とする結合分子と組み合わせて投与してもよい。第2の薬剤は、1又は複数のロイコトリエン受容体拮抗薬を含み、例えばぜん息及びアレルギーであるアレルギー炎症性疾患等の疾患を治療することができる。ロイコトリエン受容体拮抗薬の例としては、モンテルカスト、プランルカスト、及びザフィルルカストが挙げられるがこれに限定されない。第2の薬剤としては、例えばTNF(エタネルセプト、ENBREL(商標))、IL-9、IL-5、又はIL-17の拮抗薬のうちの1又は複数等である、サイトカイン阻害薬を挙げることができる。
【0108】
治療用途
本開示は、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療するための組成物及び方法を提供するものであって、本開示の治療有効量の結合分子を対象に投与することを含む。
【0109】
本開示は、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療するための組成物及び方法を提供するものであって、本開示の治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0110】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、1型又は2型の炎症性の疾患又は障害である。
【0111】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、自己免疫性疾患又は自己免疫性障害である。
【0112】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、アレルギー性疾患又はアレルギー性障害である。
【0113】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、免疫性疾患又は免疫性障害である。
【0114】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、良性増殖性疾患又は良性増殖性障害である。本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、悪性の増殖性疾患又は増殖性障害である。
【0115】
本開示のある実施形態においては、当該疾患又は障害は、アトピー性皮膚炎、ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、鼻ポリープ、又はこれらの組合せである。
【0116】
本開示のある実施形態においては、本発明の結合分子は、全身投与される。一態様においては、結合分子は、静脈内に又は皮下に投与される。別の態様においては、結合分子は、注射又は点滴により投与される。さらに別の態様においては、結合分子は、皮下注射により投与される。
【0117】
本開示のある実施形態においては、結合分子は、全身投与される。一態様においては、結合分子は、皮下注射により投与される。別の態様においては、治療有効量は、約75mg、150mg、300mg、又は600mgの皮下注射を含む。さらに別の態様においては、治療有効量は、約75mg、150mg、300mg、もしくは600mgの、少なくとも1回の皮下注射、少なくとも2回の皮下注射、少なくとも3回の皮下注射、又は少なくとも4回の皮下注射を含む。さらにまた別の態様においては、治療有効量は、疾患の症状をコントロールする維持量として、毎週1回、2週毎に1回、4週毎に1回又は長期的に投与される、約75mg、150mg、300mg、もしくは600mgの皮下注射を含む。
【0118】
本開示のある実施形態においては、結合分子は、全身投与される。一態様においては、結合分子は、皮下注射により投与される。別の態様においては、治療有効量は、約600mgの初回量を含む。さらに別の態様においては、初回量は、2箇所の異なる注射部位で投与される、それぞれ300mgの一対の注射を含む。さらにまた別の態様においては、治療有効量が初回量を含む態様を含めて、治療有効量は、約300mgの維持量をさらに含む。別の態様においては、維持量は、隔週で投与される。
【0119】
本開示の方法のある実施形態においては、結合分子は、全身投与される。一態様においては、結合分子は、約1.0mg/kg、3.0mg/kg、8.0mg/kg、又は12.0mg/kgの用量で、静脈内に投与される。
【0120】
本開示のある実施形態においては、結合分子は、第2の治療薬と組み合わせて投与される。一態様においては、第2の治療薬は、免疫抑制剤を含む。一態様においては、第2の治療薬は、アゴニスト抗体を含む。一態様においては、第2の治療薬は、免疫活性化剤(immunoactivator)を含む。別の態様においては、第2の治療薬は、IL-1 β-阻害剤、IL-5阻害剤、IL-9阻害剤、IL-3阻害剤、IL-13阻害剤、IL-17阻害剤、IL-25阻害剤、TNFα阻害剤、エオチキシン-3(eotixin-3)阻害剤、IgE阻害剤、プロスタグランジンD2阻害剤、免疫抑制剤、コルチコステロイド、グルココルチコイド、プロトンポンプ阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はこれらの組み合わせを含む。
【0121】
本開示のある実施形態においては、結合分子は、第2の治療薬と組み合わせて投与される。一態様においては、第2の治療薬は、コルチコステロイドを含む。特定の態様においては、コルチコステロイドは、局所コルチコステロイドである。
【0122】
本開示の組成物、製剤、キット、方法は、任意の1つの病状及び/又は医学的状態に限定されないということを認識されたい。本開示の組成物、製剤、キット及び方法は、患者が抗体医薬に対して既存の反応性を呈するようなあらゆる病状及び/又は医学的状態に適用することが可能である。
【0123】
【表1-1】
【0124】
【表1-2】
【実施例
【0125】
実施例1:IgG4 C3定常領域の置換により、いくつかの患者試料において既存の免疫反応性が低減される。
競合阻害試験を行い、いくつかの試料中で観察された高い既存の反応性のシグナルを特徴づけた。これら試験において、市販の抗体薬剤又はこの目的のために特別に構築されたモノクローナル抗体を用いた。この既存の反応性の特異性を解明するのに役立てた抗体コンストラクト又は抗体薬剤の一覧を、表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
これら抗体コンストラクトを、抗薬物抗体(ADA)確認アッセイフォーマットにおける競合阻害剤として、200μg/mLで使用した。このアッセイフォーマットは、図4に示しており、このアッセイの結果を、図1に示している(図1及び図4)。このアッセイにおいて高阻害率であることは、所与の競合者が、これら試料中の既存の反応性のシグナルを阻害することができたことを示しており、当該競合分子は、既存の反応性が結合する領域を含有しているということを示唆する。低い方の阻害率であることは、競合分子は、既存の反応性が結合できる領域を含有していないことを示す。上記表1に列記した薬剤は、IgG4骨格/Fcヒンジ領域コンストラクト、市販のアイソタイプ抗体、及びデュピルマブ遺伝子操作コンストラクトの3つのカテゴリーに大きく分類することが可能である。最初の実験では、このアッセイの高い反応性が、デュピルマブのCDR又はIgG4骨格に向けられるか否かを調べた。REGN-Aは、デュピルマブと同じIgG4骨格を有するが異なるCDR配列を有するヒトモノクローナル抗体であり、IL-4Rαに結合しない。
【0128】
図1に示すように、デュピルマブ及びREGN-Aの両方を用いた競合阻害実験では、調べた患者からの6種のベースライン試料において、高いアッセイシグナルの有意な阻害を示した。これら2つの抗体のCDR領域配列は異なるため、この阻害結果は、高いシグナル反応性は、デュピルマブのCDR部分を標的にしているのではなく、むしろいくつかの共通の抗体骨格配列を標的としていることを示唆する。デュピルマブ及びREGN-Aの両方は、これらIgG4分子内で抗体ヒンジ領域を安定化する、IgG1の「CPPC」ヒンジ領域配列を含有する。既存の免疫反応性が、このCPPC変異を標的としているか否かを判断するために、競合阻害実験で、ヒンジ領域に野生型(wt)CPSC配列を有する市販のIgG4κ抗体を調べた。図1でわかるように、野生型IgG4抗体もまた、デュピルマブ及びREGN-Aに類似した有意な阻害を示した。この結果は、高いベースラインアッセイシグナルが、デュピルマブ内のCPPCヒンジ領域変異に向けられるのではなく、おそらく、IgG4分子の野生型定常領域に対して向けられていることを示唆する。これら結果は、ベースラインで観察された高いシグナルは、デュピルマブに対して特異的でないことを示す。
【0129】
このアッセイの高い既存の反応性が、様々なIgGサブタイプの中で共通しているであろう定常領域配列に対して向けられるかどうかを判断するために、さらなる実験を行った。同じ競合阻害アプローチを用いて、この既存の反応に対する3つの市販のヒトIgG1κ、IgG2κ、IgG3κ抗体の影響を調べた。これら抗体のうち、これら試料において高いベースラインシグナルを示すものはなかった(図1を参照)。このことは、既存の反応性は、おそらく、IgG4定常領域配列に固有の、かつ、試験したIgGサブタイプのいずれでも共通していなかったものである領域と関連していることを示唆した。
【0130】
ヒトモノクローナル抗体(REGN-B)が構築されたが、これはIgG4 C3ドメインがIgG1 C3ドメインで置換されていることを除いてデュピルマブと類似している(図2を参照)。この抗体を、既存の反応性がデュピルマブのC3ドメインを標的としていたか否かを判断するために競合試験で調べた。REGN-Bは、試料中で高いシグナルを有意に阻害しなかったが(図1を参照)、これは既存の反応性が、おそらく、IgG4分子のC3ドメイン内の一部の領域を標的としていることを示唆した。
【0131】
デュピルマブのC3ドメイン内のこれら高いシグナルと関連するであろう領域をさらに特定するために、IgG4、IgG1及びIgG2抗体のC3ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを行った(図3を参照)。IgG4及びIgG1のC3ドメイン配列間の6つの別個のアミノ酸位置での違いと、IgG4及びIgG2のC3ドメイン配列間の5つの別個のアミノ酸位置での違いとを記録した(図3を参照)。
【0132】
445位におけるロイシン(L)をプロリン(P)で置換したn IgG4コンストラクトが利用可能であり、競合阻害アッセイで調べた。このコンストラクトは、これら高いアッセイシグナルの有意な阻害は見せなかった。このことは、既存の反応性は、おそらく、デュピルマブのL445領域に対して特異的であることを示した。高いアッセイシグナルを含むさらなる試料について、445位におけるLをPで置換したこのコンストラクトを用いて、競合阻害アッセイで調べたところ、同様の低いレベルの阻害が観察された。これにより、既存の反応性は、L445周辺の領域を特異的に標的としていることが確認されたようであった。したがって、デュピルマブ内のロイシン(野生型IgG4にある)をプロリン(野生型のIgG1、IgG2及びIgG3の同位置に存在する)に変えることで、ADAアッセイにおいて高いシグナルを導くこの既存の反応が抑制される。
【0133】
445位におけるロイシン(L)をプロリン(P)で置換したIgG4コンストラクトが利用可能であり、競合阻害アッセイで調べた。このコンストラクトは、これら高いアッセイシグナルの有意な阻害は見せなかった。このことは、既存の反応性は、おそらく、デュピルマブのL445領域に対して特異的であることを示した。高いアッセイシグナルを含むさらなる試料について、445位におけるLをPで置換したこのコンストラクトを用いて、競合阻害アッセイで調べたところ、同様の低いレベルの阻害が観察された。これにより、既存の反応性は、L445周辺の領域を特異的に標的としていることが確認されたようであった。したがって、デュピルマブ内のロイシン(野生型IgG4にある)をプロリン(野生型のIgG1、IgG2及びIgG3の同位置に存在する)に変えることで、ADAアッセイにおいて高いシグナルを導くこの既存の反応が抑制される。
【0134】
第2のデュピルマブ系のヒトモノクローナル抗体コンストラクト(REGN-C)を生成した。このコンストラクトは、抗体配列内の445残基において、ロイシンをプロリンに変える(L>Pとして略記される)ものである点変異を挿入したことを除いて、デュピルマブと同一である。REGN-Cは、試験したベースライン試料において、高いシグナルを有意に阻害することができなかった(図1及び図2を参照)。このことにより、既存の反応性は、デュピルマブ内のL445周辺の領域を特異的に標的としていることが確認され、またADAアッセイにおいてこの遺伝子操作されたデュピルマブを用いることにより、現在のADAアッセイで観察される高いレベルのバックグラウンドシグナルの、全てではないが大部分が除去されるということが示唆された。
【0135】
抗体配列内の445残基におけるロイシンからプロリンへの改変が、既存の反応性を抑制することを実証するために、2つのさらなる抗体REGN-F及びREGN-Gを用いて、さらなる実験を行った。図7に示すように、デュピルマブ、REGN-F及びREGN-Gを用いた競合阻害実験により、6種のベースライン試料における高いアッセイシグナルの有意な阻害が実証され、これによりデュピルマブ、REGN-F及びREGN-Gが高いレベルの既存の反応性を呈することが示された。しかしながら、REGN-F及びREGN-Gが高いアッセイシグナルを阻害することができなかった場合、本明細書においてREGN-F(L445P)及びREGN-G(L445P)とそれぞれ称する、REGN-F及びREGN-Gの445位においてロイシンをプロリンへと置換したものにより、この既存の反応性は抑制された。REGN-F、REGN-F(L445P)、REGN-G及びREGN-G(L445P)はまた、図4に示すものと類似の、薬物特異的ブリッジングの抗薬物抗体アッセイにおける薬剤として試験した。図8及び図9に示すように、REGN-F及びREGN-Gをいずれも捕捉試薬及び検出試薬として用いたとき、高い既存の反応性の兆候である、高いアッセイシグナルを示した。対照的に、捕捉試薬としてのREGN-F(L445P)を、検出試薬としてのREGN-Fと組み合わせて用いた場合(図8)、又は、捕捉試薬としてのREGN-Gを、検出試薬としてのREGN-G(L445P)と組み合わせて用いた場合(図9)、アッセイシグナルが有意に低減したが、これは、L445P置換が、既存の反応性を抑制することを実証している。REGN-F及びREGN-Gは、図1に示す結果において、試験された抗体の可変ドメインと異なるものでもある別個の可変ドメインを含む。すなわち、図7~9で示す結果は、既存の反応性は、可変ドメイン及びCDRとは無関係であるが、代わりにL445周辺の領域に対して特異的であるということを実証する。さらに、これは、L445Pの置換は概してIgG4抗体のCDRの同一性に関係なくIgG4抗体に適用して、既存の反応性を低減することが可能であるということを実証する。
【0136】
既存の反応性の少なくとも大部分がそれを標的としているデュピルマブ配列内の領域が、特定された。ADAアッセイにおける高いシグナルは、C3ドメイン内のL445で又は当該L445付近で結合することによって、アッセイにおいて標識されたデュピルマブ分子間を架橋することが可能であるこれら血清試料中の一部の基質構成に起因して生じていたように思われる。このことは、この既存の反応性は、デュピルマブ薬物特異的ではないが、任意のIgG4分子と結合することが可能であるということを示す。さらに、この結果は、ADAアッセイにおいて、L445P変異を伴うこの改変した形態のデュピルマブを用いることにより、高いレベルのバックグラウンドシグナルの、全てではないが大部分が除去されるということを示唆する。
【0137】
実施例2:患者試料中のバックグラウンド免疫反応性を低減する、改変した抗薬物抗体(ADA)アッセイの開発
改変したADAアッセイを開発したが、これは捕捉試薬としてビオチン化したREGN-C(L445P変異を伴う)を使用する。図4は、現在のADAアッセイとREGN-Cを用いる改変したADAアッセイとの間の、アッセイ設計上の差異を図示している。簡単のため、現在のADAアッセイは、「ADAアッセイ#1」とすることとし、また改変されたADAアッセイは、「ADAアッセイ#2」とすることとする。図5は、全ての患者ベースライン試料からの、現在のADAアッセイ#1対ADAアッセイ#2により得られたADAスクリーニングシグナルの比較解析を示す。パネル5Aは、現在のADAスクリーニングアッセイ(アッセイ#1)におけるこれら高いADAシグナルベースライン試料により生成されたシグナル対ノイズ比のプロットを示し、一方、パネル5Bは、ADAアッセイ#2における全く同じ試料により生成されたシグナル対ノイズ比のプロットを示す。ADAアッセイ#2のアッセイフォーマットにより、現在のADAスクリーニングアッセイで観察された高いシグナルが有意に低減された。ADAアッセイ#2において、いまだ反応性を示す試料もあったが、スクリーニング陽性数は、スクリーニングアッセイに関して予測された偽陽性率とより調和しており、またこうした陽性試料に関するシグナル反応レベルは、概して、現在のADAアッセイを用いて観察されたレベルよりもはるかに低かった。このように観察された、ADAアッセイ#2の大部分の場合でこれら高いアッセイシグナルがベースライン値付近まで低下することは、患者母集団において、治療下で発現したADAおよび薬物特異的ADAの改善された検出を可能にするはずである。
【0138】
参照による援用
本明細書において引用した全ての文書は、あらゆる相互参照のもしくは関連の特許又は出願を含めて、明文で除外又は別段で限定していない限り、その全体を参照により本明細書に援用する。あらゆる文書の引用は、それが本明細書において開示又は主張したあらゆる開示に対する先行技術であるということ、又はそれが単独でもしくはその他の参考文献との任意の組合せでそうした開示を教示、示唆もしくは開示しているということ、についての承認ではない。また、本文書における語の任意の意味又は定義が、参照により援用した文書内の同一の語の任意の意味又は定義と矛盾するという範囲に対しては、本文書内で当該語に割り当てた意味又は定義が支配するものである。
【0139】
他の実施形態
本開示の特定の実施形態について説明して記述してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び変形をなすことが可能である。添付の特許請求の範囲は、本開示の範囲内にある当該変更及び変形の全てを含める。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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