(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】混練機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/22 20060101AFI20250414BHJP
B29B 7/10 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
B29B7/22
B29B7/10
(21)【出願番号】P 2021051963
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305014375
【氏名又は名称】NOKエラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】大里 祐平
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-167618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 71/00-71/02
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する混練機において、
開口部を有し、回転することで前記開口部の開口方向を所定の上向き方向と所定の下向き方向との間で切換可能な混合槽であって、前記開口部が前記所定の上向き方向に開口している収容姿勢で、ゴム組成物を収容するとともに、前記開口部が前記所定の下向き方向に開口している排出姿勢で、前記ゴム組成物が混練されてなるゴム生地を排出する混合槽と、
前記収容姿勢の前記混合槽に対し、前記所定の上向き方向とは反対方向から前記開口部を通って前記混合槽内に進入して前記混合槽に収容された前記ゴム組成物を加圧するとともに、前記ゴム組成物の混練後に、前記開口部を通って前記所定の上向き方向に向かって前記混合槽から退出する加圧蓋と、
前記混合槽内に設けられ、中心軸から離れる方向に突き出したブレードを周面に有し前記中心軸の周りに回転する軸部材であって、前記混合槽に収容され前記加圧蓋に加圧された前記ゴム組成物を、回転する前記ブレードにより攪拌することで前記ゴム組成物を混練して前記ゴム生地を形成する軸部材と、
前記所定の上向き方向と交わる平面内に広がる板状部材であって、前記加圧蓋が前記混合槽内に進入している間は、前記加圧蓋および前記混合槽から離れた所定の待機位置で待機し、前記加圧蓋が前記混合槽から退出した後であって前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転する前に前記混合槽と前記加圧蓋との間の介在位置に向かって前記平面内を前記待機位置から移動して、前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転して前記ゴム生地を排出し前記ゴム生地の排出後に前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻るまでの間、前記介在位置で前記混合槽と前記加圧蓋との間に介在し、前記混合槽が前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻った後で、前記介在位置から前記待機位置に向かって前記平面内を移動する板状部材
と、
筒状の筐体部と、先端部が前記板状部材に固定された、前記筐体部からの出し入れが自在なロッドとを有し、該ロッドの出し入れにより前記板状部材を前記待機位置と前記介在位置との間で移動させるエアーシリンダと、を備え、
前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたときに前記板状部材は前記介在位置に到達するものであり、
前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたことを検出する第1のセンサを備え、
前記混合槽は、前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたことを前記第1のセンサが検出したときに、前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転するものである混練機。
【請求項2】
ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する混練機において、
開口部を有し、回転することで前記開口部の開口方向を所定の上向き方向と所定の下向き方向との間で切換可能な混合槽であって、前記開口部が前記所定の上向き方向に開口している収容姿勢で、ゴム組成物を収容するとともに、前記開口部が前記所定の下向き方向に開口している排出姿勢で、前記ゴム組成物が混練されてなるゴム生地を排出する混合槽と、
前記収容姿勢の前記混合槽に対し、前記所定の上向き方向とは反対方向から前記開口部を通って前記混合槽内に進入して前記混合槽に収容された前記ゴム組成物を加圧するとともに、前記ゴム組成物の混練後に、前記開口部を通って前記所定の上向き方向に向かって前記混合槽から退出する加圧蓋と、
前記混合槽内に設けられ、中心軸から離れる方向に突き出したブレードを周面に有し前記中心軸の周りに回転する軸部材であって、前記混合槽に収容され前記加圧蓋に加圧された前記ゴム組成物を、回転する前記ブレードにより攪拌することで前記ゴム組成物を混練して前記ゴム生地を形成する軸部材と、
前記所定の上向き方向と交わる平面内に広がる板状部材であって、前記加圧蓋が前記混合槽内に進入している間は、前記加圧蓋および前記混合槽から離れた所定の待機位置で待機し、前記加圧蓋が前記混合槽から退出した後であって前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転する前に前記混合槽と前記加圧蓋との間の介在位置に向かって前記平面内を前記待機位置から移動して、前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転して前記ゴム生地を排出し前記ゴム生地の排出後に前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻るまでの間、前記介在位置で前記混合槽と前記加圧蓋との間に介在し、前記混合槽が前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻った後で、前記介在位置から前記待機位置に向かって前記平面内を移動する板状部材と、
筒状の筐体部と、先端部が前記板状部材に固定された、前記筐体部からの出し入れが自在なロッドとを有し、該ロッドの出し入れにより前記板状部材を前記待機位置と前記介在位置との間で移動させるエアーシリンダと、を備え、
前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたときに前記板状部材は前記待機位置に到達するものであり、
前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたことを検出する第2のセンサを備え、
前記加圧蓋は、前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたことを前記第2のセンサが検出したときに、前記混合槽内に再び進入するために前記混合槽に向かって移動を開始するものである混練機。
【請求項3】
前記待機位置で前記板状部材を支持する架台を備えた請求項1又は2記載の混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、天然ゴムや合成ゴムといったゴム原料に、カーボンブラック、シリカ、可塑剤等の種々のゴム生地形成用の添加物を添加して混練することでゴム生地を形成し、そのゴム生地を所定の形状に成形/硬化させることによって作製されるのが一般的である。このようにゴム原料にゴム生地形成用の添加物を添加してなるゴム組成物を混練する装置として、ゴム生地形成用の混練機が従来から知られている(たとえば特許文献1,2参照)。ここで、従来の混練機の一例について簡単に説明する。
【0003】
図1は、ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する従来の混練機1’(正確にはその一部)を側面から模式的に表した構成図である。
【0004】
図1に示す従来の混練機1’は、ゴム組成物を収容する混合槽2、収容されたゴム組成物を加圧する加圧蓋3、加圧されたゴム組成物を混練する軸部材4を有している。軸部材4は、ブレード4aを周面に有しており、中心軸4bの周りに回転する。軸部材4の回転に伴いブレード4aが回転してゴム組成物が攪拌されることでゴム組成物の混練が行われてゴム生地が形成される。
【0005】
図2は、ゴム組成物の混練により形成されたゴム生地が排出される様子を表した模式図である。
【0006】
ゴム組成物が十分に混練されてゴム生地が形成されると、加圧蓋3が混合槽2から上向き方向に退出し、加圧蓋3の退出後に、
図2で示すように混合槽2が回転して、混合槽2中のゴム生地が所定のゴム生地収容容器(不図示)に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-289233号公報
【文献】特許第6444683号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ゴム組成物を加圧していた加圧蓋3の面には、混練されずに残ったゴム組成物(たとえば可塑剤)や混練後に排出されなかったゴム生地等の残留物Rが付着していることがある。こうした残留物Rは、
図2のように回転した状態の混合槽2に向かって落下し、混合槽2の外面や混合槽2の周囲を汚す可能性がある。この場合、清掃が必要となりゴム生地形成の生産性が低下するおそれがある。さらに、残留物Rが、混練されずに残ったゴム組成物の場合には、排出中のゴム生地に混入してゴム生地の品質低下を招くおそれもある。
【0009】
上記の事情を鑑み、本発明では、加圧蓋からの混練後の残留物の落下に起因するゴム生地形成の生産性低下やゴム生地の品質低下を抑える混練機の実現を図っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の混練機を提供する。
【0011】
[1] ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する混練機において、開口部を有し、回転することで前記開口部の開口方向を所定の上向き方向と所定の下向き方向との間で切換可能な混合槽であって、前記開口部が前記所定の上向き方向に開口している収容姿勢で、ゴム組成物を収容するとともに、前記開口部が前記所定の下向き方向に開口している排出姿勢で、前記ゴム組成物が混練されてなるゴム生地を排出する混合槽と、前記収容姿勢の前記混合槽に対し、前記所定の上向き方向とは反対方向から前記開口部を通って前記混合槽内に進入して前記混合槽に収容された前記ゴム組成物を加圧するとともに、前記ゴム組成物の混練後に、前記開口部を通って前記所定の上向き方向に向かって前記混合槽から退出する加圧蓋と、前記混合槽内に設けられ、中心軸から離れる方向に突き出したブレードを周面に有し前記中心軸の周りに回転する軸部材であって、前記混合槽に収容され前記加圧蓋に加圧された前記ゴム組成物を、回転する前記ブレードにより攪拌することで前記ゴム組成物を混練して前記ゴム生地を形成する軸部材と、前記所定の上向き方向と交わる平面内に広がる板状部材であって、前記加圧蓋が前記混合槽内に進入している間は、前記加圧蓋および前記混合槽から離れた所定の待機位置で待機し、前記加圧蓋が前記混合槽から退出した後であって前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転する前に前記混合槽と前記加圧蓋との間の介在位置に向かって前記平面内を前記待機位置から移動して、前記混合槽が前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転して前記ゴム生地を排出し前記ゴム生地の排出後に前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻るまでの間、前記介在位置で前記混合槽と前記加圧蓋との間に介在し、前記混合槽が前記排出姿勢から回転して前記収容姿勢に戻った後で、前記介在位置から前記待機位置に向かって前記平面内を移動する板状部材、とを備えた混練機。
【0012】
[2] 前記待機位置で前記板状部材を支持する架台を備えた[1]に記載の混練機。
【0013】
[3] 筒状の筐体部と、先端部が前記板状部材に固定された、前記筐体部からの出し入れが自在なロッドとを有し、該ロッドの出し入れにより前記板状部材を前記待機位置と前記介在位置との間で移動させるエアーシリンダと、を備えた[1]又は[2]記載の混練機。
【0014】
[4] 前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたときに前記板状部材は前記介在位置に到達するものであり、前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたことを検出する第1のセンサを備え、前記混合槽は、前記ロッドが前記筐体部から最大限に出されたことを前記第1のセンサが検出したときに、前記収容姿勢から前記排出姿勢に回転するものである[3]に記載の混練機。
【0015】
[5] 前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたときに前記板状部材は前記待機位置に到達するものであり、前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたことを検出する第2のセンサを備え、前記加圧蓋は、前記ロッドが前記筐体部内に最大限に入れられたことを前記第2のセンサが検出したときに、前記混合槽内に再び進入するために前記混合槽に向かって移動を開始するものである[3]又は[4]に記載の混練機。
【発明の効果】
【0016】
本発明の混練機では、混練後に、混合槽と加圧蓋との間に板状部材を介在させることで、加圧蓋から落下してきた残留物がゴム生地排出中の混合槽付近に到達することが阻止される。この結果、本発明では、残留物の落下に起因するゴム生地形成の生産性低下やゴム生地の品質低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する従来の混練機(正確にはその一部)を側面から模式的に表した構成図である。
【
図2】ゴム組成物の混練により形成されたゴム生地が排出される様子を表した模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態の混練機の構成を正面から表した模式的な構成図である。
【
図4】加圧蓋が混合槽から退出した後であって混合槽が収容姿勢から排出姿勢に回転する前の混練機の様子を正面から模式的に表した図である。
【
図5】混合槽が
図3および
図4の収容姿勢から排出姿勢に向けて回転し始めた時の混練機の様子を正面から模式的に表した図である。
【
図6】排出姿勢の混練機がゴム生地を排出しているときの混練機(正確にはその一部)の様子を側面から模式的に表した図である。
【
図7】混合槽が
図6の排出姿勢から回転して
図3および
図4の収容姿勢に戻った後の混練機の様子を正面から模式的に表した図である。
【
図8】
図7の板状部材が
図3の待機位置に到達した後の混練機の様子を正面から模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0019】
なお、以下の説明で、「ゴム組成物」とは、天然ゴムや合成ゴムといったゴム原料に、カーボンブラック、シリカ、可塑剤等の種々のゴム生地形成用の添加物を混入しただけの、組成分がまだ均一でない状態のものを指している。言い換えれば「ゴム組成物」は、複数種類のゴム素材の単なる集合体を指している。こうした「ゴム組成物」を混練することで、組成分が均一となった「ゴム生地」が形成される。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態の混練機1の構成を正面から表した模式的な構成図である。
【0021】
混練機1は、ゴム組成物を混練してゴム生地を形成する装置であり、混合槽2、加圧蓋3、軸部材4、および、板状部材5を備えている。なお、
図3では、
図1と同じ構成要素については同一の符号を付している。
【0022】
混合槽2は、開口部2aを有しており、以下に説明するように、回転することで開口部2aの開口方向を所定の上向き方向と所定の下向き方向との間で切り換えることができる。混合槽2は、開口部2aが所定の上向き方向に開口している収容姿勢でゴム組成物を収容し、開口部2aが所定の下向き方向に開口している排出姿勢で、ゴム組成物が混練されてなるゴム生地を排出する。
図3では、収容姿勢をとっているときの混合槽2が示されており、混合槽2内にはゴム組成物が収容されている。なお、
図3では混合槽2の正面の様子が表されており、上述の
図1では混合槽2の側面の様子が表されている。
【0023】
ここで、「所定の上向き方向」とは、開口部2aの開口方向が鉛直方向上向きの成分を含み、混合槽2に収容されている内容物(具体的にはゴム組成物)が開口部2aから流出せずに混合槽2内に安定して保持されるような開口部2aの方向を意味する。典型的には「所定の上向き方向」は、
図3に示すような、鉛直方向上向きの方向である。ただし、これはあくまでも典型例であって、本発明の「所定の上向き方向」は、上記の定義を満たすような、斜め上向き方向であってもよい。一方、「所定の下向き方向」とは、開口部2aの開口方向が鉛直方向下向きの成分を含み、混合槽2に収容されている内容物(具体的にはゴム生地)が開口部2aから流出するような開口部2aの方向を意味する。開口部2aが所定の下向き方向に開口している排出姿勢をとっているときの混合槽2については後述する。
【0024】
加圧蓋3は、収容姿勢の混合槽2に対し、上述の所定の上向き方向(
図3では鉛直方向上向きの方向)とは反対方向から開口部2aを通って混合槽2内に進入して混合槽2に収容されたゴム組成物を加圧する部材である。後述するように、加圧蓋3は、ゴム組成物の混練後には、開口部2aを通って上述の所定の上向き方向(
図3では鉛直方向上向きの方向)に向かって混合槽から退出する。ここで、
図3では、混合槽2内に進入して混合槽2内のゴム組成物を加圧している加圧蓋3の正面の様子が表されており、上述の
図1では加圧蓋3の側面の様子が表されている。
【0025】
軸部材4は、混合槽2内に設けられ、中心軸4bから離れる方向に突き出したブレード4aを周面に有し中心軸4bの周りに回転する部材である。軸部材4は、混合槽2に収容され加圧蓋3に加圧されたゴム組成物を、回転するブレード4aにより攪拌することでゴム組成物を混練してゴム生地を形成する。ここで、
図3では、軸部材4の正面の様子が表されており、
図3に示す軸部材4は、
図1に側面が示されている2本の軸部材4のうちの正面側の軸部材4である。
【0026】
板状部材5は、上述の所定の上向き方向(
図3では鉛直方向上向きの方向)と交わる平面内に広がる板状部材である。板状部材5は、加圧蓋3が混合槽2内に進入している間は、加圧蓋3および混合槽から離れた所定の待機位置で待機している。
図3では、その所定の待機位置で待機しているときの板状部材5が示されており、上述の平面は、所定の待機位置に位置する板状部材5に沿った平面である。
【0027】
混練機1では、
図3に示すように、加圧蓋3が混合槽2内に進入して混合槽2に収容されたゴム組成物を加圧している状態で軸部材4がゴム組成物を混練し、この混練によりゴム生地が形成される。ゴム生地が形成するのに十分な混練が行われると、軸部材4の回転が停止し、加圧蓋3が開口部2aを通って混合槽2から退出する。なお、十分な混練が行われたかどうかは、たとえば、軸部材4の回転回数が、あらかじめ定められた閾値回数を超えたかどうかや、軸部材4の回転による混練の持続時間が、あらかじめ定められた閾値時間を超えたかどうかにより判定することができる。
【0028】
図4は、加圧蓋3が混合槽2から退出した後であって混合槽2が収容姿勢から排出姿勢に回転する前の混練機1の様子を正面から模式的に表した図である。
【0029】
加圧蓋3が混合槽2から退出し、鉛直上向き方向である
図4の点線矢印方向に移動して混合槽2から離れると、
図4に示すように板状部材5は、混合槽2と加圧蓋3との間の介在位置に向かって上述の平面内を
図3の待機位置から
図4の太線矢印方向に移動する。板状部材5が介在位置に達すると、混合槽2は、
図3および
図4の収容姿勢から排出姿勢に回転する。
【0030】
図5は、混合槽2が
図3および
図4の収容姿勢から排出姿勢に向けて回転し始めた時の混練機1の様子を正面から模式的に表した図であり、
図6は、排出姿勢の混練機1がゴム生地を排出しているときの混練機1(正確にはその一部)の様子を側面から模式的に表した図である。
【0031】
ここで
図6では、正面側から見た
図5の混練機1の構成のうち、混合槽2、加圧蓋3、軸部材4、および板状部材5のみを抜き出してそれらの側面の様子が示されている。
【0032】
図5に示すように、混合槽2が
図3および
図4の収容姿勢から
図6の排出姿勢に向けて
図5の太線矢印の向きに回転し始めるときには、板状部材5は、すでに混合槽2と加圧蓋3との間の介在位置に位置している。そして、
図6に示すように、排出姿勢の混練機1がゴム生地を排出している間も、板状部材5は、この介在位置において混合槽2と加圧蓋3との間に介在している。このように板状部材5が混合槽2と加圧蓋3との間に介在している状態は、混合槽2がゴム生地の排出後に
図6の排出姿勢から回転して
図3の収容姿勢に戻るまで持続する。従って混合槽2は、混合槽2が
図3および
図4の収容姿勢から
図6の排出姿勢に回転してゴム生地を排出しゴム生地の排出後に
図6の排出姿勢から回転して
図3および
図4の収容姿勢に戻るまでの間、介在位置において混合槽2と加圧蓋3との間に介在することとなる。
【0033】
このように本実施形態の混練機1では、混練後に、混合槽2と加圧蓋3との間に板状部材5を介在させることで、加圧蓋3から落下してきた残留物Rがゴム生地排出中の混合槽2付近に到達することが阻止される。この結果、混練機1では、残留物Rの落下に起因するゴム生地形成の生産性低下やゴム生地の品質低下を抑えることができる。
【0034】
図7は、混合槽2が
図6の排出姿勢から回転して
図3および
図4の収容姿勢に戻った後の混練機1の様子を正面から模式的に表した図である。
【0035】
混合槽2が
図6の排出姿勢から回転して
図3および
図4の収容姿勢に戻ると、
図7に示すように板状部材5は、上述の平面内を
図4~
図6の介在位置から
図3の待機位置に向かって
図7の太線矢印方向に移動する。
【0036】
図8は、
図7の板状部材5が
図3の待機位置に到達した後の混練機1の様子を正面から模式的に表した図である。
【0037】
図7の板状部材5が
図3の待機位置に到達すると、
図8に示すように加圧蓋3は、混合槽2に向かって
図8の点線矢印方向に移動する。それとともに新たなゴム組成物が混合槽2に供給され、混合槽2に進入した加圧蓋3により加圧されながら、回転する軸部材4により混練される。
【0038】
以上が、混練機1の構成要素である、混合槽2、加圧蓋3、軸部材4、および、板状部材5についての説明である。以下、他の構成要素について説明する。
【0039】
本実施形態の混練機1では、
図3~
図5、
図7および
図8に示すように、混合槽2と不図示の回転駆動手段(モータ等)との間に介在し、回転駆動手段から得た回転駆動力を、回転速度が低減された回転駆動力に変換して、収容姿勢と排出姿勢との間の混合槽2の姿勢の切り替えに必要な回転駆動力として混合槽2に供給する減速機6を備えることが好ましい。
【0040】
このような減速機6により、収容姿勢と排出姿勢との間の混合槽2の姿勢の切り替えを、適切な回転速度さらには適切な回転角度で行うことができる。
【0041】
また、本実施形態の混練機1では、
図3に示す混練機1のように混合槽2の上方に設けられ、加圧蓋3が混合槽2に進入している間(
図3参照)以外は、
図4、
図5、
図7および
図8に示すように加圧蓋3の周囲を取り囲む防塵カバー7を備えることが好ましい。
【0042】
このような防塵カバー7を備えることで、外部の塵が加圧蓋3の周囲から混合槽2内に混入しにくくなる。なお、
図3~
図5、
図7および
図8では、一例として、加圧蓋3が混合槽2から退出した状態で移動する際には、加圧蓋3とともに移動する防塵カバー7が示されている。
【0043】
以下では、板状部材5に関連した混練機1の他の構成要素について説明する。
【0044】
本実施形態の混練機1では、
図3に示す混練機1のように、待機位置で板状部材5を支持する架台8を備えることが好ましい。
【0045】
このような架台8を備えることで、待機位置での板状部材5の姿勢が安定化する。なお
図3~
図5、
図7および
図8では、一例として、減速機6上に配置された架台8が示されている。
【0046】
また、本実施形態の混練機1では、筒状の筐体部9aと、先端部90が板状部材5に固定された、筐体部9aからの出し入れが自在なロッド9bとを有し、ロッド9bの出し入れにより板状部材5を
図3の待機位置と
図4の介在位置との間で移動させるエアーシリンダ9と、を備えることが好ましい。
【0047】
このようなエアーシリンダ9を備えることで、
図3の待機位置と
図4の介在位置との間の板状部材5の駆動を簡単に行うことができる。
【0048】
また、エアーシリンダ9を備えた混練機1では、ロッド9bが筐体部9aから最大限に出されたときに板状部材5は
図4および
図5の介在位置に到達するものであり、ロッド9bが筐体部9aから最大限に出されたことを検出する
図5の第1のセンサ10を備え、混合槽2は、ロッド9bが筐体部9aから最大限に出されたことを第1のセンサ10が検出したときに、
図3および
図4の収容姿勢から
図6の排出姿勢に回転するものであることが好ましい。
【0049】
このような第1のセンサ10を備えて混合槽2の回転を行うことで、板状部材5が完全に介在位置に到達した後で混合槽2が収容姿勢から排出姿勢に回転することとなる。この結果、加圧蓋3から落下してきた
図6の残留物Rがゴム生地排出中の混合槽2付近に到達することが確実に阻止される。なお、このような第1のセンサ10としては、たとえば、筐体部9a内で、先端部90とは反対側のロッド9bの端部の位置を検出する位置センサを採用できる。
【0050】
また、エアーシリンダ9を備えた混練機1では、ロッド9bが筐体部9a内に最大限に入れられたときに板状部材5は
図8の待機位置に到達するものであり、ロッド9bが筐体部9a内に最大限に入れられたことを検出する
図8の第2のセンサ11を備え、加圧蓋3は、ロッド9bが筐体部9a内に最大限に入れられたことを第2のセンサ11が検出したときに、混合槽2内に再び進入するために混合槽2に向かって移動を開始するものであることが好ましい。
【0051】
このような第2のセンサ11を備えることで、板状部材5が完全に待機位置に到達した後で加圧蓋3が混合槽2に向かって移動することとなり、板状部材5が、加圧蓋3による加圧動作の障害になることが回避される。
【0052】
なお、
図3~
図8では不図示であるが、
図3~
図8で説明した各部の動作を制御するための制御部を備えることが好ましい。このような制御部を備えることで、
図3~
図8の各部の動作が自動的に行われる。
【0053】
以上が本実施形態の説明である。
【0054】
以上の説明では、本実施形態の混練機1を、ゴム生地形成のためのゴム組成物の混練に適用した例について説明したが、本発明は、ゴム生地と物理的特性が共通しているゴム以外の樹脂材料全般を形成するための樹脂素材の混練に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、混練後の残留物の落下に起因するゴム生地形成の生産性低下やゴム生地の品質低下を抑えるのに有用である。
【符号の説明】
【0056】
1:混練機、
2:混合槽、
2a:開口部、
3:加圧蓋、
4:軸部材、
4a:ブレード、
4b:中心軸、
5:板状部材、
6:減速機、
7:防塵カバー、
8:架台、
9:エアーシリンダ、
9a:筐体部、
9b:ロッド、
10:第1のセンサ、
11:第2のセンサ、
90:先端部、
R:残留物。