IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -冷凍麺の製造方法 図1
  • -冷凍麺の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】冷凍麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20250414BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/109 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021123945
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019315
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内海 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】和田 祐典
(72)【発明者】
【氏名】横石 孝治
(72)【発明者】
【氏名】大西 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-067788(JP,U)
【文献】特開2013-243995(JP,A)
【文献】特開2013-017481(JP,A)
【文献】特開2018-161070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常法で製造した生麺または乾麺を茹で処理することにより調理後の麺の水分よりも5~25重量%少ない水分の茹で麺を作製する工程と、
前記茹で麺の表面に散布または浸漬により水を付着させることにより前記茹で麺の温度を30~60℃に調整する工程と、
表面に水が付着した前記茹で麺と、凍結した水を含む氷塊とを凍結用容器に充填する工程と、
前記茹で麺を前記茹で処理終了から120秒以内に凍結処理する工程と、を含むことを特徴とする冷凍麺の製造方法(ただし、前記冷凍麺は、冷凍冷し麺を除く。)
【請求項2】
前記氷塊の重量は、前記冷凍麺の総重量に対して10~50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項3】
前記氷塊に含まれる水の量が、前記冷凍麺の調理後の麺の重量に対して、5~40重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍麺が中華麺であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項5】
前記冷凍麺は電子レンジ調理用であり、電子レンジ調理により、前記氷塊からの水分が沸騰し、水分を吸収しながら麺が加熱されることで喫食される冷凍麺であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の冷凍麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、茹でたてをすぐに凍結する技術が開示されている(例えば、特許文献1または2)。しかしながら、茹でたてをすぐに凍結することができれば好ましいが、機械的に連続生産をする場合においては、非常に熱い状態の麺を大量に連続的に凍結機に入れるため、凍結機への負荷が大きい。また、茹で上げ後から凍結開始までに機械生産では、少なからず時間がかかり、麺の表面が蒸発による乾きや麺線表面からの溶出により、時間が経つにつれ、麺線のほぐれが悪く、風味、食感が悪くなるといった課題があった。
【0003】
従って、一般に機械的に連続生産する冷凍麺の製造方法としては、水洗冷却を行い、茹で麺の温度を下げることで凍結機への負担を減している。しかしながら、水洗冷却を行った場合、麺の表面の成分が洗い流されるため、中華麺やパスタなどの冷凍麺においては、生麺を茹で上げた直後の豊かな風味が減少するだけでなく、麺が急激に冷却され引き締まった状態となり、生麺や乾麺を茹で上げた直後の食感とは異なる食感となっていた。
【0004】
そこで、これらの問題を解決すべく、特許文献3の製造方法が開示されている。特許文献3の製造方法は、茹で麺を冷風冷却や水洗冷却することなく、茹で麺の表面に水を付着させた後、120秒以内に凍結を開始する冷凍麺の製造方法である。しかしながら、特許文献3の方法は優れた方法であるが、冷風冷却や水洗冷却に比べ、茹で麺が高い温度状態で凍結機に入るため、凍結機の能力を確保するために生産スピードを落としたり、生産を止めて発生する霜を除去するなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-66066号公報
【文献】特開2012-16295号公報
【文献】特許第6357175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、茹で麺を茹で後に素早く凍結処理する冷凍麺の製造方法において、調理後の麺の風味や食感の品質を保ちつつ、凍結機の負担を軽減し、生産性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、特許文献3に記載された発明により冷凍麺の製造を試みたが、上記課題に直面し、生産性を向上する方法について鋭意研究した。その結果、調理後の麺の風味や食感の品質を保ちつつ、凍結機の負担を軽減し、生産性を向上する方法を見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、常法で製造した生麺または乾麺を茹で処理することにより調理後の麺の水分よりも少ない水分の茹で麺を作製する工程と、前記茹で麺の表面に散布または浸漬により水を付着させる工程と、表面に水が付着した前記茹で麺と、凍結した水を含む氷塊とを凍結用容器に充填する工程と、前記茹で麺を凍結処理する工程と、を含む冷凍麺の製造方法であって、前記茹で処理終了から120秒以内に凍結処理を開始すること特徴とする冷凍麺の製造方法である。
【0009】
また、本発明に係る凍結用容器に充填する際の茹で麺の温度は30~60℃であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る氷塊の重量は、氷塊や麺を含む冷凍麺の総重量に対して10~50重量%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明にかかる氷塊に含まれる水の量は、冷凍麺の調理後の麺の重量に対して、5~40重量%であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る冷凍麺は中華麺が好ましい。
【0013】
また、本発明に係る冷凍麺は、電子レンジ調理用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、茹で麺を茹で後に素早く凍結処理する冷凍麺の製造方法において、調理後の麺の風味や食感の品質を保ちつつ、凍結機の負担を軽減し、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る茹で処理終了から凍結処理までの説明図である。
図2】本発明の実施例等の実験に係る凍結処理前の茹で麺の温度測定方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
なお、本発明において製造する冷凍麺の種類は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、中華麺、うどん、そば、パスタ等が挙げられる。
【0017】
1.原料配合
本発明に係る冷凍麺には、通常の麺類の原料が使用できる。すなわち、原料粉としては、小麦粉(デュラム粉を含む)、そば粉、大麦粉及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。これら原料粉に対して麺類の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、各種増粘剤、麺質改良剤、食用油脂、カロチン色素等の各種色素等を添加することができる。これらは、原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0018】
2.製麺工程
前記原料を混練することによって麺生地(ドウ)を製造する。より具体的には、小麦粉や澱粉等の主原料粉に、麺質改良剤等の副原料粉を加え粉体混合した後、さらに水に食塩、アルカリ剤等の副原料を溶解させた練り水を加え、ミキサーを用いて各原料が均一に混ざるように良く混捏してドウを製造する。このとき、真空ミキサーなどにより減圧下でミキシングを行ってもよい。
【0019】
次いで前記混捏工程で作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウを複合等により麺帯化した後、ロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロール又は包丁切りにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。この時、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯または押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。次いで作製した麺線を適当な長さで切断し、生麺とする。
【0020】
また、本発明においては、生麺だけでなく、パスタ、うどん、そば、中華麺などの市販の乾麺も使用することができる。
【0021】
3.茹で処理工程
次いで作製した生麺または乾麺をバケットに充填し、茹で処理し、茹で麺とする。茹で温度及び茹で時間は、麺の種類、麺の太さにより好ましい条件が異なるため、目的とする食感に合わせて、好ましい温度を適宜設定すればよい。茹で温度については、90~100℃程度が好ましい。
【0022】
本発明においては、茹で麺は喫食に最適な水分量まで茹で処理するのではなく、茹で時間を短縮し、水分量を少なくする。水分量を少なくすることで、後述する水付着工程で、麺の温度が下がりやすく、凍結開始前の温度を下げ、茹で麺からの湯気の発生を抑えることができるだけでなく、凍結する茹で麺の重量を低くすることができ、凍結機の負荷を低減することができる。また、少なくした水分を後述する氷塊に移すことで、電子レンジなどの調理時に氷塊から麺線に水分が移行し、喫食時に最適な水分量とすることができる。
【0023】
好ましい茹で処理後の茹で麺の水分としては、麺の種類によって異なるが、調理後の麺の水分量(重量%)よりも5~25重量%低い水分量とすることが好ましい。例えば中華麺の場合は、喫食時の麺の水分量が60~70重量%に対して、茹で処理後の麺の水分を45~65重量%とすることが好ましい。水分量が少なすぎると、糊化が不十分であり、多すぎると凍結機の負荷を低減する効果が少なくなる。
【0024】
4.水付着工程
一般的には、茹で処理された茹で麺は、茹で麺を液切りした後、凍結用容器に充填する前に、水洗冷却が行われている。茹で処理後の麺は、そのままの状態だと麺表面の水分は蒸発して乾燥して麺同士が結着し、麺内部の水分はどんどん均質化してしまい、食感が伸びた状態になっていく。そこで、水洗冷却により急激に麺を冷やして締めることにより、水分の均質化を抑え食感が劣化することを防ぐことができるだけでなく、麺の表面のぬめりを落とし、麺線の結着を抑えることができる。しかしながら、水洗冷却することにより、麺の表面の成分が失われるため、風味が悪くなるだけでなく、急激に麺を締めることにより表面の食感が硬くなる。うどんなどでは、水洗冷却した冷凍麺の食感が好まれることもあるが、中華麺のように表面が柔らかく芯に弾力や硬さを感じる麺類では、水洗冷却した冷凍麺は、麺の風味や食感の面で好ましくない。
【0025】
本発明では、特許文献3同様に茹で後の麺に対して、シャワーやスプレーによる散布または浸漬により麺の表面に水を付着させる。本発明における水を付着させる目的は、麺表面からの水分の蒸散を防ぐことが主目的だが、水洗冷却程急激でないにしろ、凍結機の負担を軽減するために麺の風味を落とさない程度にある程度麺の温度を下げることを目的としている。
【0026】
しかしながら、水の散布量が多すぎたり、浸漬時間が長かったり、浸漬回数が多かったりすると麺の表面の成分が流出してしまうため、水の散布量としては、茹で麺の重量100gに対し30~500mL、浸漬回数は1回で、浸漬時間としては1~5秒程度が好ましい。より好ましい水の散布量としては、茹で麺の重量100gに対し50~300mL、浸漬時間としては1~2秒程度が好ましい。また、使用する水の温度は特に限定はないが、高すぎると茹で麺の温度が下がりにくいため、常温(高くても25℃)以下が好ましい。また、この時、シャワーやスプレーによる散布または浸漬により茹で麺に付着する水分の重量(茹で麺の増加重量)としては、茹で後の茹で麺100gあたり5~30gとなる範囲が好ましい。
【0027】
また、散布または浸漬した後の茹で麺の温度としては、30~60℃程度が好ましい。低すぎると水洗や冷却が進みすぎ、風味や食感が悪くなる。高すぎると後述する氷塊を使用しても茹で麺の温度が下がりきらず、麺から蒸気が発生し、凍結機の負担が高くなる。
【0028】
5.氷塊
本発明においては、水を付着させた茹で麺とともに氷塊を凍結用容器に充填する。本発明に係る氷塊は、凍結していれば特に限定はなく、水のみを凍結したものでもよく、具材と水の混合物して凍結したものや、ソースやスープを凍結したものでもよい。中華麺の場合には、スープを氷塊とすると保存時や調理時に麺にスープの色が移るため好ましくなく、水のみを凍結した氷塊か、チャーシュー、ネギ、メンマなどの具材と水を混合して凍結させた氷塊を用いることが好ましい。氷塊の形状は特に限定はなく、凍結用容器の形状に合わせてできる限り麺との接触する面積を増やすように作製すればよい。例えば、図1のように板状とすることや、キューブ状とする方法が挙げられる。
【0029】
氷塊の重量については、特に限定はないが多すぎると、電子レンジなどによる調理時間が長くなり、少なすぎると茹で麺を冷やす効果が弱くなる。氷塊の重量としては、麺と氷塊を含む冷凍麺全体の重量に対して10~50重量%が好ましい。10重量%未満であると十分に茹で麺を冷やすことが難しく、50重量%よりも多いと電子レンジ調理などの調理時間が長くなる。より好ましくは、20~40重量%である。
【0030】
また、本発明においては、茹で時間を短縮し、茹で麺の水分量を少なくしているため、調理後に最適な水分量となるように氷塊中に水を含ませる。麺の種類や太さなどによって好ましい条件は異なるが、調理後の麺の重量の5~40重量%程度の水を氷塊に含ませることが好ましい。そうすることで、電子レンジ調理時に氷塊に含まれる水分が沸騰し、麺が水分を吸収しながら加熱されることで、茹で調理に近い状態となり、散布や浸漬で減少した風味が向上し、喫食に最適な水分となり食感も向上する。
6.充填工程
【0031】
本発明のおいては、図1(a)~(c)で示すように凍結用容器1に、上述した氷塊2と茹で麺3を充填する。茹で麺3の上に氷塊2を充填すると、冷凍処理において冷気が茹で麺3に伝わるのを妨害するだけでなく、氷塊2の重みにより、茹で麺3が潰れるため、凍結用容器1に氷塊2を充填してから茹で麺3を充填することが好ましい。
【0032】
上記のように氷塊2と茹で麺3を共に凍結用容器1に充填することで、充填から凍結機に入る短い時間の間に氷塊2から茹で麺3に冷気が伝熱し、麺の温度を下げることができ、特許文献3などの従来の方法に比べ、茹で処理後から凍結までの時間が短い場合でも凍結機の負担を減らすことができる。また、本発明においては、水分付着工程で粗熱を除去しているため、氷塊2と茹で麺3が接しても麺が急激に締まることはなく、食感への影響もほとんどない。また、水洗冷却と比して麺表面からの成分の溶出もほとんどないため、風味にもほとんど影響なく、茹で麺の品温を下げることができ、凍結機の負担を軽減することができる。
【0033】
また、本発明においては、茹で時間を短縮しているため、茹で麺の重量が通常の冷凍麺より少なく、凍結自体の負荷が少なくなっているだけでなく、水付着工程においても通常通り茹でた麺よりも少ない水の量で麺の温度を下げることができ、さらには、茹で麺の重量が通常の冷凍麺より少ないことで氷塊により麺の温度を下げることができるため、より一層凍結機への負荷を低減することができる。なお、本発明においては、凍結機の負担を軽減するため、凍結機に入る前の麺の温度としては、55℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以下が好ましい。
【0034】
7.茹で処理終了から凍結処理開始までの時間
本発明においては、茹で処理終了から120秒以内に凍結処理を開始する。120秒よりも長くなると、経時的に風味が悪くなるため好ましくない。より好ましくは100秒以下である。機械生産においては、水付着工程や充填工程などの工程により必然的にかかる時間と、茹で処理終了から冷凍処理開始までの時間が短すぎても氷塊による茹で麺の冷却効果が少なくなるため、好ましくは60秒以上が好ましい。
【0035】
8.凍結処理工程
次いで凍結処理として、氷塊と茹で麺を充填した凍結用容器を凍結機に入れ、凍結する。本発明における凍結処理は、特に限定はないが、エアブラスト式のスパイラルフリーザー、トンネルフリーザー、急速凍結庫等により-30~-60℃程度の温度で急速凍結することが好ましい。本発明に係る凍結処理前の茹で麺は、温度や凍結する麺の重量が従来技術よりも低下しているため、凍結機への負担が軽減され、生産速度を落としたり、間欠運転などをすることなく生産することができる。
【0036】
凍結処理工程で凍結した冷凍麺塊は、凍結用容器ごとそのまま商品とする場合はそのままビニール製の包材で包装してもよく、凍結用容器から脱板した後、ビニール製の包材で包装し、さらに必要により別添でスープやオイル、薬味などを添付して、外包装することで冷凍食品(冷凍麺)として販売することができる。
【0037】
本発明で製造した冷凍麺は、お湯等と共に鍋で調理して喫食することもできるが、電子レンジ調理で簡便に喫食することが好ましい。特に、茹で時間を短縮して茹で麺の水分量を少なくし、氷塊に水を含ませているため、電子レンジ調理することで、氷塊からの水分が沸騰し、水分を吸収しながら麺が加熱されることで茹で調理のような効果があり、麺の風味、食感が向上する。
【0038】
以上、常法で製造した生麺または乾麺を茹で処理することにより調理後の麺の水分よりも少ない水分の茹で麺を作製した後、水を含む氷塊と共に凍結用容器に充填し、茹で処理終了から120秒以内に冷凍処理を開始することで、茹で麺を茹で後に素早く凍結処理する冷凍麺の製造方法において、調理後の麺の風味や食感の品質を保ちつつ、凍結機の負担を軽減し、生産性を向上することができる。なお、本発明係る冷凍麺としては、アルカリ臭などの麺独特の風味が強い中華麺が特に効果的である。
【0039】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0040】
(実施例1)
準強力粉1000gに、食塩15g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム50:炭酸カリウム45:重合リン酸塩5)15g、クチナシ色素1gを水360gに溶解した練水を加え、真空ミキサーにて常圧下で4分間混捏した後、減圧下で8分間混捏し、ドウを作製した。
【0041】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、ロール圧延にて1.7mmまで麺帯を圧延した後、20番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした後、約35cmとなるように麺線(水分36重量%)をカットした。
【0042】
カットした麺線100gを茹で用のバケットに入れ、100℃の沸騰水で45秒間茹で処理した。茹で後20秒間湯切りをし、100mL/秒に設定したシャワーにより常温水(20℃)を1秒間散布した後、10秒間液切りした。
【0043】
茹で後から30秒後に予めチャーシュー14g、カット青ネギ10g、メンマ7g、水10gを型枠(85x85mm)に入れての型枠に入れて凍結し作製した氷塊を入れた凍結用容器(上径145mm、下径135mm、高さ50mm)に水が付着した茹で麺を充填し、軽くエアを吹き付けて麺を均した後、茹で後から90秒後に-35℃のエアブラスト式の凍結庫に入れ30分凍結し、冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0044】
また、このとき茹で後の麺の水分を測定した。また、凍結用容器に充填する直前の麺の温度及び凍結庫に入れる直前の麺の温度を測定した。凍結庫に入れる直前の麺の温度の測定は、図2で示すように、氷塊2を凍結用容器1の中央にセットしたときに、凍結用容器1と氷塊2との距離が最大となる位置において、氷塊から10mm離れた位置で麺の表面、中央、底に温度計(51、52、53)の針を固定して測定した。なお、氷塊を入れていないものも同様に針を固定し測定した。
【0045】
(実施例2)
茹で時間を30秒にし、氷塊の水の重量を45gとする以外は、実施例1の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0046】
(実施例3)
シャワーの代わりに常温水(20℃)に1秒間浸漬する以外は、実施例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0047】
(実施例4)
シャワーを7秒とする以外は、実施例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0048】
(実施例5)
茹で処理終了から凍結処理開始までの時間を60秒とする以外は、実施例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0049】
(実施例6)
茹で終了から凍結処理開始までの時間を120秒とする以外は、実施例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0050】
(比較例1)
茹で処理を50秒行い、茹で処理終了後、バケットごと15℃の冷水に30秒間浸漬し、10秒液切りした後、次10℃の冷水に30秒間浸漬して麺線を水洗冷却し、水を20秒切った後、氷塊を充填していない凍結用容器に充填し、茹で処理終了から150秒後に凍結処理を開始する以外は、実施例1の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0051】
(比較例2)
茹で処理を50秒行い、氷塊を充填しない以外は、実施例1の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0052】
(比較例3)
シャワーの代わりに常温水(20℃)に1秒間浸漬する以外は、比較例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0053】
(比較例4)
シャワーの時間を7秒間とする以外は、比較例2の方法に従って冷凍中華麺サンプルを作製した。
【0054】
作製した冷凍中華麺サンプルについて評価を行った。評価は、調理後の麺の風味、調理後の麺の食感について行った。また、評価方法は、ベテランのパネラー5人によって5点満点で行いを電子レンジで500W、6分間加熱調理した後、予め用意した400mlの熱水に醤油風味の濃縮液体スープを入れた器に麺を入れ、喫食し、麺の風味、食感について評価を行った。
【0055】
調理後の風味については、評価5が茹でたてのような中華麺の風味を強く感じ非常に良好、評価4は茹でたてのような中華麺の風味を強く感じ良好、評価3は茹でたてのような中華麺の風味を感じ概ね可、評価2は茹でたてのような中華麺の風味が弱く不可、評価1は、茹でたてのような中華麺の風味を感じず不可とした。
【0056】
調理後の食感については、評価5が茹でたての中華麺と同等の食感で非常に良好、評価4は、茹でたての生麺に近い食感で良好、評価3は、茹でたての生麺にやや劣るが食感は概ね可、評価2は、茹でたての生麺に劣り食感として不可、評価2は、茹でたての麺に著しく劣り食感として不可、とした。
【0057】
また、調理後の麺の重量と水分量について測定した。
【0058】
各試験区の茹で後の水分、温度変化について下記表1に示す。 また、官能評価結果、調理後の麺の重量及び水分量について下記表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
比較例1で示すように、従来の水洗冷却した中華麺は、充填時の茹で麺の温度や凍結処理前の茹で麺の温度が抑えられており、凍結機への負担が大分抑えられている。しかしながら、調理後の麺の風味は、著しく弱く、食感もつるみも弱く表面が硬く芯が柔らかいバランスの悪い食感であった。
【0062】
比較例2~4で示すように、凍結機の負担を軽減するために特許文献3の方法よりも水付着工程での散布量や付着方法を変更した場合、茹で麺の温度を下げるほど風味が弱く、食感はつるみが弱く、全体的に柔らかな食感となっていった。
【0063】
それに対し、実施例1~4で示すように、茹で時間を短くし、水付着を行った後、水を含んだ氷塊と共に凍結用容器に充填し、凍結機により凍結処理することにより、比較例2~4と比して冷凍処理前の麺の温度をより下げることできた。
【0064】
また、茹で時間を短くすることによる喫食に足らない水分を氷塊に加えることで、電子レンジ調理時に、氷塊の水分が沸騰しながら麺に吸収され加熱されることにより、茹でた麺のような風味が向上し、さらには、表面が柔らかく芯に弾力のあるような食感に近づいた。
【0065】
また、実施例1及び2で示すように茹で時間を短くし、氷塊の水の量を増やすことで、より凍結機の負担を軽減できるだけでなく、調理後の風味や食感も向上していった。しかしながら、データでは示さないが、茹で時間を短くしすぎると表面の糊化が進んでいないため、水付着工程で麺の表面が溶けたり、電子レンジ調理時に同様に麺の表面にぬめりを強く感じるようになるため、ある程度の茹で調理による糊化が必要と考える。
【0066】
実施例2~4で示すように、水付着工程で茹で麺の温度を下げるほど、麺表面の成分が洗い流されるだけでなく、麺に付着(吸収)する水分量が多くなり、その後の電子レンジ調理でも風味が回復しにくく、食感も柔らかくなる傾向が認められた。よって、凍結用容器に充填する際の茹で麺の温度としては、30~60℃の範囲が好ましいと考える。
【0067】
実施例2、5、6で示すように茹で処理終了から凍結処理開始までの時間が長くなるほど麺の風味や食感が劣っていく傾向が認められた。よって、茹で処理終了から凍結処理開始までの時間としては、120秒以下が好ましいと考える。また、時間が短くなるほど凍結処理前の茹で麺の温度が高くなっていくことから、凍結前の茹で麺の温度を下げるという意味では茹で処理終了から冷凍処理開始までの時間としては、60秒以上が好ましいと考える。ただし、凍結用容器に充填時の茹で麺の温度が十分下がっている(45℃以下)の場合は、60秒未満でもできるだけ早く冷凍処理を開始することが好ましいと考える。
【符号の説明】
【0068】
1 凍結用容器
2 氷塊
3 茹で麺
4 冷凍麺
51 温度計(表面)
52 温度計(中央)
53 温度計(底面)
図1
図2