(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20250414BHJP
【FI】
F16F15/134 Z
F16F15/134 A
(21)【出願番号】P 2021126815
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-097717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯を有する動力伝達シャフトに取り付けられるダンパ装置であって、
前記動力伝達シャフトの外歯と噛み合う内歯を有するハブフランジと、
前記ハブフランジと相対回転可能に配置される入力回転体と、
前記入力回転体と前記ハブフランジとを弾性的に連結する弾性部材と、
前記ハブフランジの内歯と前記動力伝達シャフトの外歯とを接触させるように構成された接触補助機構と、
を備え、
前記接触補助機構は、前記ハブフランジの回転軸が前記動力伝達シャフトの回転軸に対して傾斜するように前記ハブフランジを傾斜させるように付勢する付勢手段であ
る、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、
前記ハブフランジを軸方向第1側に付勢する第1付勢部材と、
周方向において前記第1付勢部材と間隔をあけて配置され、前記ハブフランジを軸方向第2側に付勢する第2付勢部材と、
を有する、
請求項
1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
外歯を有する動力伝達シャフトに取り付けられるダンパ装置であって、
前記動力伝達シャフトの外歯と噛み合う内歯を有するハブフランジと、
前記ハブフランジと相対回転可能に配置される入力回転体と、
前記入力回転体と前記ハブフランジとを弾性的に連結する弾性部材と、
前記ハブフランジの内歯と前記動力伝達シャフトの外歯とを接触させるように構成された接触補助機構と、
を備え、
前記弾性部材は、
前記入力回転体を第1回転方向に付勢するよう圧縮された状態で配置される第1弾性部材と、
前記入力回転体を第2回転方向に付勢するよう圧縮された状態で配置され、前記第1弾性部材よりも小さい剛性を有する第2弾性部材と、
を有し、
前記接触補助機構は、前記第1及び第2弾性部材によって構成され
る、
ダンパ装置。
【請求項4】
外歯を有する動力伝達シャフトに取り付けられるダンパ装置であって、
前記動力伝達シャフトの外歯と噛み合う内歯を有するハブフランジと、
前記ハブフランジと相対回転可能に配置される入力回転体と、
前記入力回転体と前記ハブフランジとを弾性的に連結する弾性部材と、
前記ハブフランジの内歯と前記動力伝達シャフトの外歯とを接触させるように構成された接触補助機構と、
前記ハブフランジの外周端部の一部に取り付けられるウェイト部材
と、
を備え、
前記接触補助機構は、前記ウェイト部材によって構成され
る、
ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備えた車両などでは、動力伝達経路にダンパ装置を設置することによって、エンジンの回転変動を抑制している(特許文献1)。また、特許文献1では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、トルクリミッタ機能を有するダンパ装置が用いられている。
【0003】
ダンパ装置は、フライホイールに取り付けられている。そして、ダンパ装置の中央に形成されたスプライン孔に、動力伝達シャフト(例えば、トランスミッションの入力シャフト)がスプライン嵌合している。詳細には、ダンパ装置のハブフランジの内歯と、動力伝達シャフトの外歯とが噛み合うことによって、動力伝達シャフトがダンパ装置にスプライン嵌合している。これにより、ダンパ装置からの動力が動力伝達シャフトに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ダンパ装置では、無負荷時において、エンジンの回転変動によって動力伝達シャフトの外歯とハブフランジの内歯とが衝突して、衝突音が発生するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上述したような衝突音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係るダンパ装置は、外歯を有する動力伝達シャフトに取り付けられるように構成されている。ダンパ装置は、ハブフランジと、入力回転体と、弾性部材と、接触補助機構と、を備えている。ハブフランジは、動力伝達シャフトの外歯と噛み合う内歯を有する。入力回転体は、ハブフランジと相対回転可能に配置される。弾性部材は、入力回転体とハブフランジとを弾性的に連結する。接触補助機構は、ハブフランジの内歯と動力伝達シャフトの外歯とを接触させるように構成されている。
【0008】
この構成によれば、接触補助機構は、ハブフランジの内歯と動力伝達シャフトの外歯とを互いに接触させている。このため、無負荷時において、エンジンの回転変動があった場合であっても、内歯と外歯との接触状態が維持され、内歯と外歯との衝突音の発生を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、接触補助機構は、ハブフランジの回転軸が動力伝達シャフトの回転軸に対して傾斜するようにハブフランジを傾斜させるように付勢する付勢手段である。
【0010】
好ましくは、付勢手段は、第1付勢部材と第2付勢部材とを有する。第1付勢部材は、ハブフランジを軸方向第1側に付勢する。第2付勢部材は、周方向において第1付勢部材と間隔をあけて配置される。第2付勢部材は、ハブフランジを軸方向第2側に付勢する。
【0011】
好ましくは、弾性部材は、第1弾性部材と、第2弾性部材とを有する。第1弾性部材は、入力回転体を第1回転方向に付勢するよう圧縮された状態で配置される。第2弾性部材は、入力回転体を第2回転方向に付勢するよう圧縮された状態で配置される。第2弾性部材は、第1弾性部材よりも小さい剛性を有する。接触補助機構は、第1及び第2弾性部材によって構成される。
【0012】
好ましくは、ダンパ装置は、ハブフランジの外周端部の一部に取り付けられるウェイト部材をさらに備える。接触補助機構は、ウェイト部材によって構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハブフランジの内歯と動力伝達シャフトの外歯との衝突音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】入力回転体とハブフランジとの位置関係を示す模式図
【
図6】軸方向第1側における内歯と外歯との接触状態を示す図。
【
図7】軸方向第2側における内歯と外歯との接触状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係るダンパ装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置の回転軸が延びる方向である。また、周方向とは、回転軸を中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸を中心とした円の径方向である。
【0016】
[全体構成]
図1及び
図2は、本実施形態に係るトルクリミッタ付きダンパ装置100(以下、単に「ダンパ装置」と記載する)の断面図である。
図1及び
図2において、ダンパ装置100の左側にエンジン(図示せず)が配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニット(図示せず)が配置されている。
【0017】
このダンパ装置100は、フライホイール101と駆動ユニットの入力シャフト102(動力伝達シャフトの一例)との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。
【0018】
フライホイール101は、イナーシャリング1011と、フレキシブルプレート1012とを有している。ダンパ装置100は、イナーシャリング1011にボルトなどによって固定されている。
【0019】
ダンパ装置100は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0020】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20に対して径方向外側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイール101とダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、支持プレート11と、摩擦ディスク13と、プレッシャプレート14と、コーンスプリング15と、を有している。
【0021】
支持プレート11は、外周部において、フライホイール101に固定されている。詳細には、支持プレート11は、フライホイール101のイナーシャリング1011に複数のボルト16によって固定されている。
【0022】
摩擦ディスク13、プレッシャプレート14、及びコーンスプリング15は、軸方向において、支持プレート11とフライホイール101の環状突起1013との間に配置されている。なお、環状突起1013は、イナーシャリング1011の内周面から径方向内側に突出している。環状突起1013は、環状であり、周方向に延びる。
【0023】
摩擦ディスク13は、コアプレート及びコアプレートの両側面に固定された1対の摩擦部材を有している。そして、摩擦ディスク13の内周部が、複数のリベット17によってダンパユニット20に固定されている。プレッシャプレート14及びコーンスプリング15は、摩擦ディスク13と環状突起1013との間に配置されている。
【0024】
プレッシャプレート14は、環状である。プレッシャプレート14は、摩擦ディスク13に対して、環状突起1013側に配置されている。
【0025】
コーンスプリング15は、プレッシャプレート14と環状突起1013との間に配置されている。コーンスプリング15は、プレッシャプレート14を介して摩擦ディスク13を支持プレート11に押圧している。
【0026】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力回転体2と、ハブフランジ3と、複数の弾性部材4と、接触補助機構5と、ヒス発生機構6と、を有している。
【0027】
<入力回転体2>
入力回転体2は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。入力回転体2は、第1入力プレート21及び第2入力プレート22を有している。第1入力プレート21及び第2入力プレート22は、中心部に孔を有する円板状に形成され、互いに軸方向に間隔をあけて配置されている。第1入力プレート21と第2入力プレート22とは、互いに相対回転不能であり、互いに軸方向に移動不能である。
【0028】
図3は、入力回転体2とハブフランジ3との位置関係を示す模式図である。
図3に示すように、第1入力プレート21及び第2入力プレート22は、それぞれ1対の第1支持部23及び1対の第2支持部24を有している。第1入力プレート21の第1支持部23と、第2入力プレート22の第1支持部23とは、同じ位置に形成されており、形状も同じである。同様に、第1入力プレート21の第2支持部24と、第2入力プレート22の第2支持部24とは、同じ位置に形成されており、形状も同じである。
【0029】
1対の第1支持部23は回転軸Oを中心に互いに反対側に配置されている。すなわち、一対の第1支持部23は、回転軸Oを中心に、互いに180度のピッチで配置されている。また、一対の第2支持部24は、回転軸Oを中心に、互いに180度のピッチで配置されている。第1支持部23と第2支持部24とは、回転軸Oを中心に、互いに90度のピッチで配置されている。各支持部23、24は、軸方向に貫通する孔と、この孔の内周縁及び外周縁に切り起こされた縁部と、を有している。
【0030】
第1支持部23は、第1回転方向側(以下、単に「R1側」と記載する)の端部にR1支持面231を有し、第2回転方向側(以下、単に「R2側」と記載する)の端部にR2支持面232を有している。また、第2支持部24は、第1回転方向側の端部にR1支持面241を有し、第2回転方向側の端部にR2支持面242を有している。
【0031】
周方向における、各支持部23,24の長さ(R1支持面とR2支持面との間の距離)はLである。そして、各支持面231,232,241,242には、後述する弾性部材4の端面が当接可能である。
【0032】
なお、
図3では、第1支持部23及び第2支持部24を実線で示し、後述するハブフランジ3の第1収容部33及び第2収容部34を一点鎖線で示している。
【0033】
<ハブフランジ3>
図1及び
図2に示すように、ハブフランジ3は、ハブ31と、フランジ32と、を有している。ハブフランジ3は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。ハブフランジ3は、入力回転体2に対して所定の角度範囲で相対回転可能である。なお、ハブフランジ3は、ストッパ機構によって、入力回転体2に対して、所定の角度範囲を超えて相対回転しないように構成されている。
【0034】
ハブ31は、筒状に形成され、中央部にはスプライン孔が形成されている。すなわち、ハブ31は、内周面に内歯311を有している。このハブ31のスプライン孔に、入力シャフト102がスプライン嵌合している。すなわち、入力シャフト102は外周面に外歯103を有している。ハブ31の内歯311は、入力シャフト102の外歯103と噛み合っている。なお、入力シャフト102は円柱状であり、中実材である。
【0035】
ハブ31は、第1入力プレート21及び第2入力プレート22の中心部の孔を貫通している。
【0036】
フランジ32は、円板状である。フランジ32は、軸方向において、第1入力プレート21と第2入力プレート22との間に配置されている。
【0037】
フランジ32は、ハブ31の外周面から径方向外側に延びている。フランジ32は、ハブ31と一体的に形成されている。すなわち、フランジ32は、ハブ31と一つの部材によって構成されている。したがって、ハブ31とフランジ32とは一体で回転する。なお、この実施形態では、ハブ31とフランジ32とを一つの部材によって構成しているが、これらをそれぞれ別の部材で構成してもよい。
【0038】
図4は、ハブフランジの正面図である。
図4に示すように、ハブフランジ3は、1対の第1収容部33及び一対の第2収容部34を有している。また、ハブフランジ3は、複数の切欠35を有している。
【0039】
図3に示すように、1対の第1収容部33は、1対の第1支持部23に対応する位置に配置されている。また、1対の第2収容部34は、1対の第2支持部24に対応する位置に配置されている。より詳細には、入力回転体2とハブフランジ3との間の相対回転角度が0°であって両者が捩じれていない中立状態(捩り角度0°)では、1対の第1収容部33は、第1支持部23に対して軸方向視で一部が重なるようにかつR1側に角度θ1だけオフセットして配置されている。また、第2収容部34は、第2支持部24に対して軸方向視で一部が重なるようにかつR2側に角度θ1だけオフセットして配置されている。
【0040】
各収容部33,34は、外周縁が円弧状のほぼ矩形の孔である。
図3に示すように、第1収容部33は、R1側の端部にR1収容面331を有し、R2側の端部にR2収容面332を有している。また、第2収容部34は、R1側の端部にR1収容面341を有し、R2側の端部にR2収容面342を有している。
【0041】
周方向における各収容部33,34の孔の長さ(R1収容面331,341と、R2収容面332,342と、の間の距離)は、各支持部23,24の孔の長さと同様にLに設定されている。そして、各収容面331,332,341,342には、後述する弾性部材4の端面が当接可能である。
【0042】
図4に示すように、切欠35は、周方向において隣り合う収容部33,34の間に配置されている。切欠35は、フランジ32の外周面から径方向内方に所定の深さで形成されている。各切欠35が形成された位置は、摩擦ディスク13と第1入力プレート21とを連結するためのリベット17の位置に対応している。したがって、それぞれ別工程で組み立てられたトルクリミッタユニット10及びダンパユニット20を、第2入力プレート22の組付用孔221及びフランジ32の切欠35を利用して、リベット17により固定することが可能である。
【0043】
<弾性部材4>
図1に示すように、弾性部材4は、入力回転体2とハブフランジ3とを弾性的に連結するように構成されている。弾性部材4は、例えば、コイルスプリングである。
図4に示すように、弾性部材4は、フランジ32の各収容部33,34に収容され、入力回転体2の各支持部23,24によって径方向及び軸方向に支持されている。なお、弾性部材4の両端部は、スプリングシート41によって支持されている。
【0044】
弾性部材4のうち、第1収容部33に収容されたものを第1弾性部材4aと称し、第2収容部34に収容されたものを第2弾性部材4bと称する。これらの弾性部材4は並列で作動する。
【0045】
また、各弾性部材4の自由長Sfは、すべて同じである。この弾性部材4の自由長Sfは、各支持部23,24及び各収容部33,34の長さLと同じである。また、各弾性部材4の剛性は同じである。
【0046】
<弾性部材4の収容状態>
ここで、中立状態での、各支持部23,24と各収容部33,34の配置、及び各弾性部材4の収容状態について、以下に詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1支持部23及び第1収容部33を「第1窓セットw1」と記載し、第2支持部24及び第2収容部34を「第2窓セットw2」と記載する場合がある。
【0047】
前述のように、中立状態では、
図3に示すように、1対の第1収容部33は、対応する第1支持部23に対してR1側に角度θ1だけオフセットされている。一方、1対の第2収容部34は第2支持部24に対してR2側に角度θ1だけオフセットされている。そして、各支持部23,24と対応する各収容部33,34の軸方向において重なった部分の開口(軸方向に貫通する孔)に、弾性部材4が圧縮された状態で装着されている。
【0048】
具体的には、
図3に示すように、中立状態において、1対の第1窓セットw1では、第1弾性部材4aのR1側の端面はR1支持面231に当接し、R2側の端面はR2収容面332に当接している。すなわち、第1弾性部材4aは、ハブフランジ3に対して入力回転体2を第1回転方向R1に付勢している。
【0049】
一方、1対の第2窓セットw2では、第2弾性部材4bのR1側の端面はR1収容面341に当接し、R2側の端面はR2支持面242に当接している。すなわち、第2弾性部材4bは、ハブフランジ3に対して入力回転体2を第2回転方向R2に付勢している。
【0050】
<ヒス発生機構6>
ヒス発生機構6は、
図2に示すように、第1ブッシュ61と、第2ブッシュ62と、当接プレート63と、コーンスプリング64と、を有している。
【0051】
第1ブッシュ61は、軸方向において、第1入力プレート21とフランジ32との間に配置されている。第1ブッシュ61の第1入力プレート21との摩擦面には、摩擦部材が固定されている。
【0052】
第2ブッシュ62及び当接プレート63は、軸方向において、第2入力プレート22とフランジ32との間に配置されている。なお、当接プレート63は、第2ブッシュ62とフランジ32との間に配置されている。当接プレート63は、円板状であり、中央に開口部を有する。当接プレート63のフランジ32との摩擦面には、摩擦部材が固定されている。
【0053】
第2ブッシュ62の第2入力プレート22側の面には、軸方向に突出する複数の係合突起621が形成され(
図1参照)、この係合突起621が第2入力プレート22の係合孔に係合している。コーンスプリング64は、第2ブッシュ62と第2入力プレート22との軸方向間に、圧縮された状態で配置されている。
【0054】
以上の構成により、第1ブッシュ61は第1入力プレート21に押圧され、当接プレート63はフランジ32に押圧されている。したがって、入力回転体2とハブフランジ3との間に相対回転が生じたときには、これらの間でヒステリシストルクが発生する。
【0055】
<接触補助機構>
図5は、接触補助機構を説明するための拡大断面図である。
図5において、軸方向第1側とは、
図5の左側を意味し、軸方向第2側とは
図5の右側を意味する。
図5に示すように、接触補助機構5は、ハブフランジ3の内歯311と、入力シャフト102の外歯103とを接触させるように構成されている。
【0056】
接触補助機構5は、付勢手段によって構成されている。詳細には、接触補助機構5は、第1付勢部材51と、第2付勢部材52によって構成されている。この第1付勢部材51と第2付勢部材52は、ハブフランジ3を傾斜させるように付勢している。第1付勢部材51及び第2付勢部材52によってハブフランジ3を傾斜させることにより、ハブフランジ3の回転軸は入力シャフト102の回転軸に対して傾斜する。
【0057】
第1付勢部材51及び第2付勢部材52は、例えばコイルスプリングである。第1付勢部材51は、ハブフランジ3を軸方向の第1側に付勢している。第1付勢部材51は、ハブフランジ3のフランジ32に対して、軸方向第2側に配置されている。
【0058】
第1付勢部材51は、軸方向において、フランジ32と当接プレート63との間に配置されている。フランジ32は、軸方向の第2側を向く面において、第1収容凹部36を有している。この第1収容凹部36内に第1付勢部材51の一部が収容されている。また、当接プレート63は、軸方向の第1側を向く面において、第2収容凹部631を有している。この第2収容凹部631内に、第1付勢部材51の一部が収容されている。
【0059】
第2付勢部材52は、周方向において、第1付勢部材51と間隔をあけて配置されている。好ましくは、第2付勢部材52は、周方向において、第1付勢部材51と略180度の間隔をあけて配置されている。
【0060】
第2付勢部材52は、ハブフランジ3を軸方向第2側に付勢している。すなわち、第2付勢部材52の付勢方向は、第1付勢部材51の付勢方向と逆である。第2付勢部材52は、ハブフランジ3のフランジ32に対して、軸方向第1側に配置されている。
【0061】
第2付勢部材52は、軸方向において、フランジ32と第1ブッシュ61との間に配置されている。フランジ32は、軸方向第1側を向く面において、第3収容凹部37を有している。この第3収容凹部37内に第2付勢部材52の一部が収容されている。また、第1ブッシュ61は、軸方向の第2側を向く面において、第4収容凹部611を有している。この第4収容凹部611内に、第2付勢部材52の一部が収容されている。
【0062】
この第1付勢部材51及び第2付勢部材52によってハブフランジ3を付勢することにより、ハブフランジ3の回転軸が入力シャフト102の回転軸に対して傾斜するようにハブフランジ3が傾斜する。この結果、内歯311と外歯103とが接触する。
【0063】
図6は、軸方向第1側における内歯311と外歯103との接触状態を示す拡大図である。なお、
図6において、接触状態を分かりやすくするため、縮尺を変更している。
図6に示すように、周方向において、第1付勢部材51と第2付勢部材52との中間地点にある内歯311と外歯103とが接触している。
【0064】
詳細には、内歯311の歯面のうち、第2付勢部材52側(
図6の下側)を向く歯面が、外歯103と接触している。また、外歯103の歯面のうち、第1付勢部材51側(
図6の上側)を向く歯面が、内歯311と接触している。
【0065】
図7は、軸方向第2側における内歯311と外歯103との接触状態を示す拡大図である。なお、
図7において、接触状態を分かりやすくするため、縮尺を変更している。
図7に示すように、周方向において、第1付勢部材51と第2付勢部材52との中間地点にある内歯311と外歯103とが接触している。
【0066】
詳細には、内歯311の歯面のうち、第1付勢部材51側(
図7の上側)を向く歯面が、外歯103と接触している。また、外歯103の歯面のうち、第2付勢部材52側(
図7の下側)を向く歯面が、内歯311と接触している。
【0067】
以上のように、第1付勢部材51及び第2付勢部材52によりハブフランジ3が傾斜するように付勢されているため、内歯311と外歯103とが接触している。この結果、無負荷時において、エンジンの回転変動があった場合であっても、内歯311と外歯103との接触を維持し、内歯311と外歯103との衝突音の発生を抑制することができる。なお、無負荷時とは、ダンパ装置100によって伝達するトルクがゼロのときを意味する。
【0068】
[変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0069】
(a)上記実施形態では、第1付勢部材51及び第2付勢部材52によって接触補助機構5が構成されているが、接触補助機構の構成はこれに限定されない。例えば、接触補助機構は、上述した第1弾性部材4aと第2弾性部材4bとによって構成することができる。
【0070】
この場合、第1弾性部材4aがハブフランジ3を第1回転方向に付勢する付勢力を、第2弾性部材4bがハブフランジ3を第2回転方向に付勢する付勢力よりも大きくする。すなわち、第2弾性部材4bの剛性よりも第1弾性部材4aの剛性を大きくする。各弾性部材4a、4bがコイルスプリングの場合は、第2弾性部材4bのバネ定数よりも第1弾性部材4aのバネ定数を大きくする。
【0071】
これにより、ハブフランジ3は第1回転方向に付勢されている状態となり、ハブフランジ3の内歯311と、入力シャフト102の外歯103とが接触する。この結果、無負荷時において、エンジンの回転変動があった場合であっても、内歯311と外歯103との接触を維持し、内歯311と外歯103との衝突音の発生を抑制することができる。
【0072】
(b)上記実施形態では、第1付勢部材51及び第2付勢部材52によって接触補助機構5が構成されているが、接触補助機構の構成はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、接触補助機構5’は、ウェイト部材53によって構成することができる。ウェイト部材53は、ハブフランジ3’の外周部の一部に取り付けられている。すなわち、ウェイト部材53は、ハブフランジ3’の外周部の全周に亘って延びていない。
【0073】
このように、ウェイト部材53が、ハブフランジ3’の外周部の一部のみに取り付けられているため、ハブフランジ3’は偏心して回転する。すなわち、ハブフランジ3’の回転軸は、入力シャフト102’の回転軸からずれる。このため、ダンパ装置が回転すると、ウェイト部材53が取り付けられた位置から180度間隔をあけた位置において、ハブフランジ3’の内歯と入力シャフト102’の外歯とが接触する。この結果、無負荷時において、エンジンの回転変動があった場合であっても、内歯と外歯との接触を維持し、内歯と外歯との衝突音の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 :入力回転体
3 :ハブフランジ
311 :内歯
4 :弾性部材
4a :第1弾性部材
4b :第2弾性部材
5 :接触補助機構
51 :第1付勢部材
52 :第2付勢部材
53 :ウェイト部材
100 :ダンパ装置
102 :入力シャフト
103 :外歯