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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】細菌の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20250414BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/64 B
C12Q1/04
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021576911
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2020069024
(87)【国際公開番号】W WO2021013523
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】1910655.8
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521562706
【氏名又は名称】オックスフォード、オプトロニックス、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD OPTRONIX LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ボジボイ、ボイノビチ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002394(US,A1)
【文献】特開2005-224411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282993(US,A1)
【文献】実開平04-030406(JP,U)
【文献】特表2016-519655(JP,A)
【文献】米国特許第07547508(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
C12M 1/34
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト糞便中に広く行き渡る細菌からの蛍光を使用してヒト糞便の存在を決定する方法であって、
500nm~645nmの範囲内の励起波長を有する励起光を標的に照射するステップと、
675nm~735nmの範囲内の発光ピークを有する前記標的からの蛍光光の発光を監視するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記照射が光源ライトガイドを用いて行われ、前記光源ライトガイドは、前記光源ライトガイドの長手方向に沿って複数の漏洩部分を備えるように配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励起光の波長は、実質的に635nmの中心波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記励起波長は、1つ以上のポルフィリンQ帯に対応する複数の波長を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的は、体液又は身体の排泄物を受けるための容器である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記容器は、失禁パッド、おむつ、又は、おしめ、或いは、体外で体液もしくは身体排泄物のサンプルを受けるための容器である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記励起光の強度又は周波数を変調するステップを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的によって放出される光における対応する変調を検出するステップと、前記変調を伴わない放出光をフィルタ除去するステップとを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
サンプル蛍光に関連する蛍光寿命を検出するステップであって、前記寿命が時間分解又は位相分解検出手法を使用して検出される、ステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
光源を用意するステップと、前記光源から出力される光をライトガイドに結合するステップとを更に含み、照射する前記ステップは、前記ライトガイドから放出される光によって行われ、随意的に、前記ライトガイドが光ファイバである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
監視する前記ステップは、前記標的から前記ライトガイドに結合される光を監視することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光源及び/又は検出器を失禁パッド、おむつ、又は、おしめに設けるステップを更に含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
蛍光光の発光を測定するステップと、
前記発光を所定の閾値と比較するステップと、
を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光光の波長スペクトルを検出するステップを更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光光の蛍光寿命を検出するステップを更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
細菌の存在をユーザに通知するための信号を生成するステップを更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ヒト糞便中に広く行き渡る細菌からの蛍光を使用してヒト糞便の存在を決定するように構成された検出システムであって、
500nm~645nmの範囲内の光を放出するように構成された光源と、
光源光ファイバであって、前記光源に光学的に結合される、光源光ファイバと、
受信器光ファイバと、
675nm~735nmの範囲内の光を検出するように構成された検出器であって、前記受信器光ファイバに光学的に結合される、検出器と、
複数の電子信号に基づいてヒト糞便の陽性識別を決定するように構成された信号処理ユニットであって、前記複数の電子信号は、前記検出器により検出された前記光が、675nm~735nmの範囲内の発光ピークを有することを示す、信号処理ユニットと、
を備える検出システム。
【請求項18】
前記光源光ファイバ及び前記受信器光ファイバは、同じ光ファイバである、又は異なる光ファイバである、請求項17に記載の検出システム。
【請求項19】
前記光源光ファイバは、コアとクラッドとを備える光ファイバケーブルであり、前記クラッドは、前記光源光ファイバに結合される又は前記光源光ファイバから結合される光のための光路をもたらす複数の不連続部分を備える、請求項17に記載の検出システム。
【請求項20】
前記光ファイバケーブルは、光を近位端部から遠位端部に伝えるように構成され、前記不連続部分は、前記ケーブルに沿って一定程度の光漏れを維持するために隣接するギャップが前記光ファイバケーブルの前記遠位端部に向かって互いに益々近づいて位置付けられる非線形パターンで配置される、請求項19に記載の検出システム。
【請求項21】
前記光源光ファイバ及び前記受信器光ファイバが同じ光ファイバであり、前記光ファイバが前記検出器及び前記光源に光学的に結合され、前記検出器及び前記光源は、前記光ファイバの同じ端部又は前記光ファイバの対向する端部で前記光ファイバに結合される、請求項17、19又は20のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項22】
パッドを更に備え、前記光源光ファイバ及び/又は前記受信器光ファイバが前記パッドに取り付けられる又は前記パッドと一体的に形成される、請求項17から21のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項23】
1つ以上の外部デバイスとの間でデータを送信及び/又は受信するための通信モジュールを更に備える、請求項17から22のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項24】
アラームを更に備え、前記アラームは、光学的アラーム、音響アラーム、又は、触覚アラームのうちの1つである、請求項17から23のいずれか一項に記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌からの蛍光を検出する方法、特に、失禁パッド、おむつ又はおしめにおける細菌の蛍光を検出すること、本方法で使用するための光ファイバケーブル又は他の形態のライトガイド、及び、本発明の方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便失禁(腸を制御できない)は、極めて大きな社会的問題及び衛生的問題であり、成人の2~3%が罹患している。介護施設(看護施設)又は病院環境における虚弱高齢者には特に高い有病率がある。感覚が鈍い(例えば、神経学的状態)又は意識が低下した(例えば、認知症)人は、多くの場合、便(糞便)を偶発的に失禁パッド内にしたかどうかが分からない、或いは、通過する便又は腸内ガスを区別できないため、不必要に繰り返しトイレに行くことがある。これは、一部の患者、例えば、車椅子に拘束されているとともにアクセスできるトイレを見つけて衣類及び失禁パッドを移し代えて除去しなければならない患者にとって負担となり得る。介護者は、病院、介護施設、又は、個人の自宅にいるかどうかにかかわらず、多くの場合、同様にチェックする必要があるが、衣類を脱がずにこれを行う実用的な方法はなく、虚弱な人を伴う場合、それは困難となり得る。
【0003】
既存の尿失禁製品は、疎水性層を組み込み、尿を吸収して収容するように特に設計される。しかしながら、それらの製品は便を吸収することができない。現代の濡れないようにする表面及び超吸収パッドは、脆弱な皮膚の損傷又は不快な臭気を伴うことなく、大量の尿を受け入れることができる。したがって、尿のみがパッドに入った場合、パッドの容量に近づくまで交換を遅らせることができる。しかしながら、排便した時点で、製品を直ちに交換する必要があり、皮膚損傷を防ぐために皮膚をできるだけ早く洗浄しなければならない。したがって、患者が排便してしまったときには迅速且つ正確な信号伝達が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、糞便又は他のフルオロフォアの存在を決定するのに適した細菌からの蛍光を検出する方法であって、励起波長を有する励起光を標的に照射するステップと、励起波長よりも長い波長の標的からの蛍光光の発光を監視するステップとを含む方法が提供される。
【0005】
励起光の波長は、420nm~645nmの範囲内であってもよく、より詳細には、励起光の波長は、実質的に635nmの中心波長を有してもよい。蛍光光が650nm以上の波長を有してもよい。励起波長は、1つ以上のポルフィリンQ帯に対応する複数の波長を含んでもよい。
【0006】
標的は、体液又は身体の排泄物を受けるための容器であってもよく、より具体的には、容器は、失禁パッド、おむつ、又は、おしめ、或いは、体外で体液もしくは身体排泄物のサンプルを受けるための容器であってもよい。
【0007】
第1の態様に係る方法は、励起光の強度又は周波数を変調するステップと、随意的に標的によって放出される光の対応する変調を検出するステップと、前記変調を伴わない放出光をフィルタ除去するステップとを更に含んでもよい。方法は、サンプル蛍光に関連する蛍光寿命を検出するステップを更に含んでもよく、寿命は時間分解又は位相分解検出手法を使用して検出される。
【0008】
方法は、光源を用意するステップと、前記光源から出力される光をライトガイドに結合するステップとを更に含んでもよく、照射する前記ステップは、ライトガイドから放出される光によって行われ、随意的に、ライトガイドが光ファイバである。監視する前記ステップは、励起光の波長よりも大きい前記波長で標的からライトガイドに結合される光を監視することを含んでもよい。
【0009】
光源及び/又は検出器は、失禁パッド、おむつ、又は、おしめに設けられてもよい。
【0010】
方法は、蛍光光の発光を測定するステップと、発光を所定の閾値と比較するステップとを更に含んでもよい。方法は、蛍光光の波長スペクトル及び/又は蛍光寿命を検出するステップを更に含んでもよい。
【0011】
随意的に、細菌の存在をユーザに通知するための信号が生成される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、糞便の存在を検出するための検出システムであって、光源と、光源光ファイバであって、光源に光学的に結合される、光源光ファイバと、受信器光ファイバと、検出器であって、受信器光ファイバに光学的に結合される、検出器と、
を備える検出システムが提供される。
【0013】
光源光ファイバ及び受信器光ファイバは、同じファイバ又は光ファイバであってもよく、異なる光ファイバであってもよい。光源光ファイバは、コアとクラッドとを備える光ファイバケーブルであってもよく、クラッドは、ファイバに結合される又はファイバから結合される光のための光路をもたらす複数の不連続部分を備えてもよい。不連続部分は、ケーブルに沿って一定程度の光漏れを維持するために隣接するギャップが互いに益々遠くに位置付けられる非線形パターンで配置されてもよい。
【0014】
光源光ファイバ及び受信器光ファイバが同じ光ファイバであってもよく、光ファイバが検出器及び光源に光学的に結合されてもよく、検出器及び光源は、光ファイバの同じ端部又は光ファイバの対向する端部で光ファイバに結合されてもよい。
【0015】
システムがパッドを更に備え、光源光ファイバ及び/又は受信器光ファイバがパッドに取り付けられる又はパッドと一体的に形成される。システムは、1つ以上の外部デバイスとの間でデータを送信及び/又は受信するための通信モジュールを更に備えてもよい。システムがアラームを更に備えてもよく、アラームは、光学アラーム、音響アラーム、又は触覚アラームのうちの1つである。
【0016】
ここで、添付図面を参照して、本発明の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】強いソーレー励起帯及び複数の弱いQ帯を示す、典型的なポルフィリン励起スペクトルを例示する。
図2】幾つかの便サンプルからの蛍光発光のスペクトル測定値のグラフである。
図3】「漏洩性」ライトガイドの一例を示す。
図4】標的感知領域内の漏洩性光ファイバの幾つかの配置を概略的に示す。
図5】標的感知領域に配置される工学的ディフューザを使用する構成を概略的に示す。
図6】単一の検出ファイバへの及び単一の検出ファイバからの蛍光光の結合及び検出の例を示す。
図7】蛍光検出に用いられる2つのファイバへの及び2つのファイバからの蛍光光の結合及び検出の例を示す。
図8図4図7のいずれかに示される蛍光検出システムで光学信号を処理するためのブロック図を示す。
図9】方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中では、便中に存在する細菌を検出するための方法及びシステムが開示される。便の存在を検出するという課題は、糞便中に広く行き渡る特定の細菌が特徴的な蛍光特性を有するという事実を利用することによって扱われ得る。正常な糞便は非常に多数の細菌を含有し、それらの質量の25~54%が細菌バイオマスである
糞便からの蛍光は、プロトポルフィリンIX、コプロポルフィリン、及び、ペンプト及びジュウテロポルフィリンへの変換に由来するように思われるが、これらの部分に限定されない。
【0019】
ポルフィリンなどの蛍光種は、通常、大きなストークスシフトを示す。したがって、ポルフィリンの存在、したがって細菌の存在は、所定の波長帯域の光(「励起光」)でポルフィリンを励起し、励起光の波長よりも長い波長での蛍光発光(「蛍光光」)を監視することによって検出され得る。
【0020】
ポルフィリンの吸収(励起)スペクトルは、図1の参照番号1で示されるように、可視スペクトルの青色領域で強いいわゆる「ソーレート帯」を示す。この強烈なソーレー帯は、S0からS2の電子状態/エネルギー遷移に起因する。この帯域の位置は、430nm未満、一般的には400~420nmの範囲の吸収極大を有する。
【0021】
しかしながら、ポルフィリンの吸収スペクトルはソーレー帯に限定されず、図1に参照番号2で示される「Q帯」と呼ばれる他のより弱い吸収帯域がある。ポルフィリンでは、振動励起に起因してQ帯が分割され、それにより、基底状態から励起状態の2つの振動状態(Q(0,0)及びQ(1,0))への遷移に起因して2つの帯域が生成される。更に、NHプロトンの存在が対称性を破り、結果として、これらの帯域が更に2つの帯域にそれぞれ分割される。したがって、4つのQ帯(Qx(0,0)、Qy(0,0)、Qx(1,0)及びQy(1,0))を観測することができる。そのため、ソーレー帯又はQ帯のピークに対応するピーク吸光度波長でのポルフィリンの励起が可能である。
【0022】
一般に、図1に示されるように、4つのポルフィリンQ帯は、約505nm(「Q-IV」)、約535nm(「Q-III」)、約575nm(「Q-II」)及び約635nm(「Q-I」)の吸収ピークを有する。励起光は、ポルフィリンQ-IV帯域、Q-III帯域、Q-II帯域、Q-I帯域のピーク吸収波長に実質的に対応する波長を有するように選択されてもよい。「実質的に対応する」とは、励起光が、それぞれのQ帯のピーク吸収波長に対して±10nm、好ましくは±5nmの範囲内の最適波長を有し得ることを意味する。励起スペクトルの幅は、図示の吸収ピークの幅より小さくても大きくてもよい。
【0023】
約500~645nmの範囲の波長を有する励起光を使用することにより、細菌ポルフィリンのQ帯のうちの1つ以上を励起することができ、それにより、蛍光発光の生成につながる。或いは、強いソーレー帯吸収に起因して、スペクトルの青色領域又はUV領域、例えば約415-420nm又は約400nm未満の照射を使用してポルフィリンを励起することができる。そのような励起波長の使用は、それに対応して強い蛍光発光をもたらし、したがって、細菌の存在の簡単な検出を可能にする。励起が、例えば、約430nm以下の波長を使用して、ポルフィリンソーレー帯で実行される場合、蛍光発光が一般に約650nm以上で観察される。
【0024】
ソーレー帯励起波長は、例えば失禁パッド内の糞便の検出に使用され得る。しかしながら、スペクトルの青色領域及び/又はUV領域の光への長期にわたる又は長期間の曝露は、皮膚及び他の組織に対して潜在的に毒性があると考えられる。そのような波長は、DNAによって容易に吸収されないが、8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)などの変異原性酸化中間体を介して光子エネルギーをDNAに伝達することができる活性酸素種の形成を伴う他の細胞構造を介して間接的にDNA損傷を誘発し得る。したがって、検出方法は、そのような波長の長期使用を回避することが好ましい。
【0025】
更に、皮膚上の微量のグリース(クリーム、軟膏など)及び(一部の種類の失禁パッド及びおしめに見られるような)光学ホワイトナーも青色光又はUV光の下で蛍光を発することができる。そのため、失禁パッド又はおしめにおいてソーレー帯励起光を用いて蛍光検出が実行される場合には、細菌の偽陽性検出が起こり得る。
【0026】
しかしながら、本発明者らは、Q帯励起光(すなわち、500nm~645nmの波長を有する励起光)を安全に使用できることに気付いた。図2は、参照番号3で示されるように、500~645nmの範囲の光が照射された幾つかの糞便サンプルから得られるスペクトルを示す。図2に示されるように、結果として得られるストークスシフトは、約650nm以上の波長の蛍光をもたらす。発光スペクトルは、約675nm~約735nmまでの主発光ピークを示す。これらの波長は、使用される励起波長及びポルフィリン種に依存する。
【0027】
便の存在を検出する目的でより長い波長のQ帯励起光を使用することには他の利点がある。便サンプルは、特に体積が大きい場合、光学的に高密度となり得る。これは、顕著な自己吸収(内部フィルタ効果)をもたらし得る。励起及び蛍光発光光のレイリー散乱は波長の4乗に反比例し、また、ミー散乱も波長が増大されるにつれて減少する。これらの効果は、検出され得る蛍光発光光の強度を高めることができ、それにより、検出を容易にすることができる。励起光の波長が長いほど、自己吸収の程度が大幅に低減され、より深いサンプルを照射することができ、したがって、検出が改善される。
【0028】
そのため、より長い波長のQ帯では吸収が弱いにもかかわらず、Q-I帯域又はQ-II帯域を励起することには、Q-III帯域又はQ-IV帯域を励起することに優る特定の利点がある。
【0029】
したがって、本方法において、細菌の検出は、標的に500nm~645nmの範囲の波長を有する励起光を照射すると同時に650nm以上の波長を有する蛍光光の存在を監視することによって実行されてもよい。標的は、ユーザが着用する汚れた失禁パッド、おむつ、おしめであってもよい。或いは、標的は、体外の体液のサンプル又は細菌を含有すると疑われる他のサンプルであってもよい。
【0030】
尿路感染に関連する特定の細菌も、ポルフィリンを含有する場合があり、したがって、先に概説したのと同様の蛍光プロセスを受ける。したがって、前述のように照射されるべき標的が失禁パッド、おむつ、又は、おしめである場合、細菌の検出は、尿路感染に関連する尿の検出にも対応し得る。
【0031】
照射標的が失禁パッド、おむつ、又は、おしめである場合、細菌の検出は、好ましくは、ユーザが前記失禁パッド、おむつ、又は、おしめを着用している間に実行される。
【0032】
励起光を蛍光発光から分離し、したがって、純粋な蛍光発光のみが検出されるようにするために、様々な方法を使用することができる。例えば、光学検出器を用いて又は分光計を用いて蛍光信号を検出することができる。或いは、周波数変調励起又はパルス励起とそれに続く蛍光位相又は寿命検出とをそれぞれ使用して、蛍光寿命情報を抽出することができる。殆どの場合、1つ以上のフィルタを使用して励起光から蛍光発光を分離することが望ましい。
【0033】
ポルフィリンQ-I帯(例えば635±10nm、特に635±5nm)のピーク吸収波長に実質的に対応する波長を有する励起光は、光源及び検出器の検出能力、発光効率、散乱の最小化、及び、低コストにおいて優れた性能を提供する。
【0034】
通常、収集された蛍光光を意味のある出力に変換することが必要である。この変換ステップは、様々な検出アプローチによって蛍光発光を決定し、それを所定の閾値と比較することを含んでもよい。蛍光のレベルが閾値を上回る場合、細菌の存在、したがって、便の存在を示す陽性識別が行われてもよい。
【0035】
蛍光が検出される場合、方法は、細菌の存在をユーザに通知するための(例えば、便の存在をユーザに通知するための)信号を生成することを更に含んでもよい。信号は、例えば、音又は視覚的表示(例えば、コンピュータ又はハンドヘルドデバイスの画面などの画面上のライト又はメッセージ)であってもよい。
【0036】
標的に励起光を照射し、蛍光発光を収集することは、励起光をライトガイドに沿って標的に伝送することを含んでもよい。標的の近傍では、ライトガイドが意図的に「漏洩性」に される。図3は、標的を照射するのに適したライトガイドとして動作する光ファイバケーブル30の一例を示す。光ファイバケーブル30は、屈折率n1を有するコア31と、屈折率n2を有するクラッド32とを備え、この場合、n2<n1である。コア30及びクラッド32は、光ファイバケーブル用の当技術分野において知られる任意の材料、例えばシリカ、ガラス、又は、ポリマー、或いは、他の形態のライトガイドであってもよい。
【0037】
標的が失禁パッド、おむつ、又は、おしめである場合、細菌の検出を最適化するために標的内の複数の位置を照射することが望ましい。標的領域を照らすべく、励起光を広い領域にわたって分配して前記領域からの蛍光発光を収集する様々な手段を使用することができる。幾つかの手法は、「漏洩性」光ファイバケーブルを使用する。クラッド32は、複数の不連続部分33を備える。クラッド32におけるこれらの不連続部分33(「ギャップ」又は「途切れ」)は、コア31を露出させる。そのような「漏洩性」ケーブルにおいて、励起光は、クラッド32におけるギャップ33を介してコア31から「漏れる」ことができ、それにより、ギャップ33に隣接する標的内の複数の位置を照射する。そのような位置に存在する任意の細菌から生じる蛍光光は、クラッドにおけるギャップ33を介して光ファイバケーブルに入ることもできる(すなわち、蛍光光がケーブルによって「収集」される)。
【0038】
光ファイバケーブル30又は他のタイプのライトガイドの長さに沿って複数の不連続部分33を設けることにより、光ファイバケーブル30によって伝えられる光の全内部反射率は、これらの部分において部分的に抑制され、光ファイバケーブル30の長さにわたって光が浸出する。単一の「開放」端部を有する光ファイバケーブルと比較して、これは、光ファイバケーブル30が標的内の細菌、例えばパッド内の糞便中の細菌の存在を検出できる面積を増大させる。ギャップ33は、光ファイバケーブル30の外周の全体又は一部にわたって延在してもよい。ギャップ33は、クラッドにおけるピンプリック、スリット、スクラッチ、又は、切り欠きの形態をとってもよく、光ファイバケーブル30の外周にわたって延在又は外周の一部のみにわたって延在してもよい。ギャップ33は、光ファイバケーブル30の長さに沿った1つ以上の螺旋カットであってもよい。ギャップ33は、刻設、エッチング、レーザ切断、穿孔、サンディング、サンドブラスト、又は、任意の他の適切な技術によって形成されてもよい。
【0039】
ファイバクラッド32におけるギャップ33は、コア31からの光漏れが各ギャップで実質的に均一であるように位置決めされて寸法付けられてもよい。これは、単位長さ当たり(例えば、mm当たり又はcm当たり)実質的に均一な量の蛍光光が光ファイバによって収集されるようにもする。これは、図3に示されるように、一定程度の光漏れを維持するために隣接するギャップ33が光ファイバの遠位端部に向かって互いに益々近づいて位置付けられる非線形パターンで同様のギャップ33を配置することによって達成され得る。
【0040】
大人用のパッド又はおしめにおいて、標的領域は、最大10~15cmの長さ及び一般に5~10cmの幅をカバーしてもよい。幼児用のおむつ又はおしめでは、この長さがそれに応じて短くされてもよい。
【0041】
光ファイバケーブル30を出る光は、失禁パッド、おむつ、又は、おしめの材料などの標的の材料に直面すると散乱する。このようにして、照射される標的の部分は、クラッド32におけるギャップ33に直接隣接する部分のみを超えて増大する。好ましくは、光ファイバケーブル30は、0.75mm±0.25mm以下などの1mm未満の直径を有するが、他の容易に入手可能な光ファイバケーブル30は、容易に入手可能であり、本明細書中に記載の使用に特に適している。
【0042】
光ファイバケーブルは、他の態様で「漏洩性」にされてもよい。例えば、ケーブルは、例えば波のような形状の多数の曲線を形成するように曲げられてもよい。曲線は、コアとクラッドとの間の界面へとファイバ内を移動する光の入射角を増大させ、それにより、内部反射の量を減少させる。ファイバが材料に織り込まれると、発光及び吸収光をファイバ内又はファイバ外に結合することができる対応する複数の領域を作成するために、複数の曲線を含めることができる。
【0043】
単一の光ファイバケーブルの代わりに、複数のケーブルを使用することができる。ケーブルは、ファイバ束の形態で配置されてもよく、或いは、互いに平行であっても角度(例えば、互いに垂直)を成していてもよい。そのような場合、複数のファイバを製造する技術的困難は、効率の低いファイバを使用する場合であっても許容可能な感度である可能性がある非常に薄いセンサを有すること及び感知領域を更に増大させることによって報いられる。パッドの織物に織り込まれる場合には、ファイバを互いに対してメッシュ型配置で配置することもできる。
【0044】
励起光を送出して蛍光発光光を収集するために使用される光学配置に応じて、1つ以上の漏洩性ファイバを使用することができ、図4に示されるように多数の配置で1つ以上の漏洩性ファイバを配置することができる。図4Aに示されるように、単一のファイバが使用される場合、ファイバ42は、従来のライトガイドとして動作するが、部分41で漏洩性にされ、コネクタ43で終端する。漏洩部分は、糞便物質が存在すると予期される標的領域45を横切って蛇行する。
【0045】
別の配置が図4Bに示される。ここで、2つのファイバ42が、部分41において漏洩性にされ、二重ファイバコネクタ44において終端される。ファイバは互いに隣接して配置され、一方のファイバが励起光を伝送し、他方のファイバが蛍光発光光を収集する。漏洩部分41は標的領域45の全体にわたって蛇行する。光ファイバケーブルの漏洩部分は、2つのケーブルが光を照射し/標的45から光を受けて同じ感知領域と相互作用できるように互いに十分に近接していなければならない。
【0046】
別の手法が図4Cに示される。これも先と同様に二重ファイバコネクタ44を使用するが、これは単一の光ファイバの2つの端部を終端させる。このファイバは、非漏洩部分42を伴う漏洩部分41を有する。したがって、ファイバは、標的領域にわたって励起光を供給し、標的領域45からの蛍光発光を収集する。
【0047】
図4のファイバ41の蛇行部分は、パッドの内在する吸収領域への尿の通過を可能にする高度に多孔性の可撓性基材に取り付けられてもよい。漏洩部分は、互いに平行に延在してもよく、結ばれていてもよく、接着されていてもよく、センサパッドに織り込まれていてもよく、或いはさもなければ、所定位置に取り付けられてもよい。
【0048】
更に他の手法が図5に示される。ここで、非漏洩性ファイバ53が、励起光を伝送するとともに、漏洩性ファイバ52及びLEDバックライトパネルで使用されるものと同様の可撓性ディフューザ51との間で蛍光発光を収集するために使用される。そのような工学的ディフューザは、可撓性PDMS/PMMAから形成され得る。これらの又は他の形態のライトガイドプレートは、1つ以上の光ファイバケーブルを用いて検出ユニットに接続され得る。この例において、ファイバ52は、それらが可撓性ディフューザ51と接触している場所でのみ漏洩性にされる。広い領域にわたって光を分配するための他の同様の手法も適している。ディフューザ51は、内部全反射によって動作する大きなライトガイドとしての機能を果たす。全内部反射は、拡大部分54に示されるように、側面照射型ディフューザを形成するべくシートを横切ってディップ又はバンプを組み込むことによって間隔を置いて乱される。
【0049】
したがって、これは、大きな標的領域を横切る光のコレクタとしても作用し得る。尿の通過を可能にするために、ディフューザ51に多数の穴が存在しなければならない。
【0050】
或いは、光源及び検出器が標的領域の近くに配置され、信号情報が光学的手段によってではなく電気的手段によって信号処理ユニットに取り込まれてもよい。光接続ではなく電気接続を使用する単純さは、検出された信号から励起光を除去するための超薄型で可撓性の光学フィルタを開発するという課題と釣り合っている。
【0051】
前述の光ファイバケーブル(又は複数のケーブル)は、1つ以上のライトガイドと、光源と、光検出器とを備える蛍光検出システムの一部を形成してもよい。これらの構成要素(及び他の随意的な構成要素)に関する更なる詳細は、以下に記載される。
【0052】
光源及び検出器は、一般に、ファイバ光送出及び感知ケーブルに選択的に接続され得るユニットに組み込まれる。光源は、コヒーレント又はインコヒーレントであってもよく、感知期間中に連続的に動作してもよく、変調されてもよく、又は、パルス化されてもよい。
【0053】
赤色(630~640nm)レーザ光源が好ましい場合がある。そのような光源は、低コスト、低光学エテンデュ(ビームを集束させる能力を示す当該技術分野の用語であって、光源面積と光源によって放射された立体角との積)、及び、低動作電力の相反する要件を組み合わせ、これらは全て長期的で信頼性の高い動作に不可欠である。輝度及び低エテンデュは、ファイバ内での簡単な光発射を可能にする。特に、635nmの波長を使用することができる。
【0054】
随意的に、光源の出力電力は、平均出力電力をユーザ定義の値に維持するために、光源(例えば、レーザ)の内部のフォトダイオードによって感知され得る。随意的に、発光波長を安定させるために、光源の温度制御が必要であってもよい。随意的に、光源は、電力を節約するために断続的にのみ、例えば10秒毎、又は、30秒毎、又は、毎分毎の短いパルスで、或いは、任意の他の好都合な期間にオンに切り換えられる。
【0055】
検出器は、フォトダイオード又はアバランシェフォトダイオードであってもよい。シリコンフォトダイオード又はシリコンアバランシェフォトダイオードは、それらの高い光-電気量子効率及び応答性に起因して特に適しており、これらはポルフィリンのQ帯励起に関連する蛍光波長に対応する波長範囲において特に良好である。
【0056】
或いは、検出器は、分光計又は時間分解検出器、例えば単一光子アバランシェダイオード(SPAD)であってもよい。蛍光検出の当業者に公知の多数の蛍光検出手法を使用することができる。
【0057】
光送出及び感知光ファイバケーブルは、一般に、それらが汚染されるため使い捨てであるが、他の信号処理電子機器と共に光源及び検出器を含むユニットは再利用可能である。使い捨て部品は単回使用を意図しており、それらの部品のコストは最小化されることが好ましい。
【0058】
蛍光発光検出器は、励起波長ではなく、検出されるべき蛍光発光帯域に対応する波長範囲の光のみを検出するように構成されてもよい。
【0059】
図4Aに示される構成は、図6A又は図6Bに示される典型的な蛍光励起及び検出システムに結合されてもよい。ロングパス二色性反射器64に基づく従来の蛍光検出システムが図6Aに示される。単一のファイバ61がコネクタ62を介して蛍光検出システムに接続され、その出力はレンズ63によってコリメートされる。コリメートされた蛍光出力は、二色性フィルタ64によってロングパス又はノッチフィルタ67を介して検出器68に伝送される。検出器68は、集束レンズ68aの使用を必要としてもよい。
【0060】
二色性反射器64は、光源66からの励起光を反射する。この光は、蛍光励起源66からより長い波長の発光側波帯を除去するためにコリメートレンズ66a及びローパスフィルタ65を必要としてもよい。コリメートされた蛍光励起光は、レンズ63によってファイバ61上に集束される。
【0061】
或いは、ショートパス二色性反射器65が使用されてもよく、検出器68及びそのフィルタ67並びにレンズ68aの位置は、光源66、そのコリメートレンズ66a及び側波帯除去フィルタ65と入れ替えられてもよい。励起光軸と発光光軸との間の角度は、90度である必要はなく、二色性反射器64の設計によって規定される任意の角度となり得る。
【0062】
或いは、二色性反射器は、50:50のビームスプリッタキューブ又はプレートで置き換えられてもよい。この場合、励起光の約50%が失われ、発光光の50%が失われる。しかしながら、透過波長と反射波長との間の急激な遷移を伴う二色性反射器は製造が困難であるため、近いストークスシフトでの動作が可能である。
【0063】
同様のレベルの損失を与えるとともに二色性反射器の必要性を完全に排除する構成が図6Bに示される。ここで、レンズ68aによるコリメーションを必要とし得る光源68からの光は、ショートパスフィルタ67によってフィルタリングされてレンズ66により光ファイバ64bへと向かうファイバ64bは、3つのポート64a、64b、61aを伴うファイバスプリッタ/コンバイナ構成の一部である。ファイバ64bに入射する光の約50%がポート61aに伝送される。同様に、ポート61aに存在する蛍光光発光の約50%がポート64aの出力に存在する。この光は、レンズ63によってコリメートされ、ロングパスフィルタ65に通されて、集束レンズ69aも必要とし得る検出器69へと向かう。前述と同様に、フィルタは、励起光が検出器69に到達しないように除去する。
【0064】
図6A及び図6Bに示される典型的なシステムにおいて、励起光及び発光光は、単一のファイバによって標的領域に伝えられる。コネクタ62は、ケーブルの自由な回転を可能にしてもよい。好ましくは、コネクタは、回転及び軸方向のラッチを使用する。
【0065】
従来のレンズ及びフィルタが図6A及び図6Bに示されるが、屈折率分布型レンズ、ファブリペローフィルタ及び他の全ファイバ構成要素などの一連の他の光学構成要素が使用されてもよい。
【0066】
図4B及び図4Cに示される構成によって必要とされる、二重ファイバポートを伴う典型的な蛍光励起及び蛍光検出システムが図7に示される。
【0067】
光源78、関連するコリメートレンズ78a、及び、側波帯除去フィルタ77からの励起光は、二重ファイバコネクタ72に接続するために使用される励起光ファイバ71bへとレンズ76により集束される。同様に、蛍光発光光ファイバ71aからの光がレンズ73によってコリメートされ、また、存在する任意の励起光がロングパス又はノッチフィルタ75によって除去される。このようにしてフィルタリングされた光は、レンズ79aによって検出器79へと集光される。
【0068】
この典型的なシステムでは、コネクタ72がケーブルの自由な回転を可能にしてはならない。好ましくは、コネクタが軸方向ラッチ機構を使用する。
【0069】
定常状態励起及び検出は、連続的又は短いバーストで動作して、使用が最も簡単であるが、図6及び図7に示される典型的な構成では他の検出手法も想定し得る。これらは、検出器に取って代わる分光計の使用を含み、この場合、分光計は、放出された光の波長発光スペクトルを検出することができる。或いは、光源出力がサンプルの蛍光寿命に適した1つ以上の周波数でパルス化又は変調される蛍光寿命測定手法が使用されてもよい。このとき、検出器が時間分解検出器又は位相復調検出器であってもよい。スペクトル情報は、(図2に示されるように)スペクトルピークを識別するのに有用となることができ、この場合、分散情報は、患者の健康の他の態様への洞察を潜在的に提供する。同様に、時間分解情報は、光ファイバの減衰変化に影響されないという更なる利点を有しつつ、同様の情報を提供することができる。当業者に公知の任意の適切な光学的配置が使用されてもよい。
【0070】
処理されて検出された蛍光情報のレベルが所定の閾値を超える場合、細菌の陽性識別(例えば糞便態様で)が行われる。好ましくは、これは、ユーザ(例えば、図4及び図5に示される光誘導装置を備える失禁パッドの着用者、又は、看護師もしくは医師などの介護者)に警告を送ることを伴う。便の存在を検出するために検出が実行される場合、この警告は、汚れた尿失禁パッド/おむつを清潔なものと交換することを促してもよい。
【0071】
細菌検出システムは、信号処理ユニットを更に備えてもよい。信号処理ユニットは、検出器から電子信号を受信して、それらを処理し、光学検出器が所定の閾値を超える対象の蛍光情報を検出したかどうかを決定する。所定の閾値は、装置の光学構成要素のいずれかによって本質的に生成される又は他の光源からの蛍光などの不可避のバックグラウンドノイズから生じる細菌の「偽陽性」検出を排除するために設定されてもよい。
【0072】
細菌の検出は、連続的に(すなわち、励起光を連続的に生成して蛍光を監視することによって)実行されてもよく、或いは、検出が実行されない期間により分離される離散的な時間間隔で実行されてもよい。離散的な時間間隔での検出は、電力を節約するのに役立ち得る(例えば、デバイスがバッテリ駆動式である場合、デバイスの寿命が長くなる)。また、特に便検知の場合には、患者が便を出す頻度が低いため、継続的な監視が不要な場合がある。したがって、検出は、一定の間隔で、例えば20分以下、好ましくは5~15分の間隔で実行されてもよい。検出が実行される場合、この検出は、蛍光の有無を検出できるのに十分長い時間にわたって実行されれば足りる。したがって、各検出間隔中、励起光は数秒以下の間提供されることが好ましい。
【0073】
励起光は変調されてもよく、また、信号処理ユニットは、蛍光における対応する変調のみを検出するように構成され得る。励起光の強度及び/又は周波数が変調されてもよい。そのような同期検出手法は、信号処理の当業者に知られている。周囲光などの励起/発光プロセスに関連しない光源は、同じ方法で変調されないため、フィルタ除外され得る。変調波形は、正弦波又は正方形の形状、或いは、同期復調の当業者に知られている他の形状となり得る。
【0074】
前述の蛍光検出システムは、失禁パッド、おむつ、又は、おしめに組み込まれてもよい。パッド、おむつ、及び、おしめは当技術分野で周知であり、また、それらの正確な構造は本発明の実施に必須ではない。しかしながら、それらは、一般に、臭気防止剤を一般に含む長尺な吸収部分を含む。以下の説明では、「パッド」という用語は、簡潔にするために使用されるが、失禁パッドだけでなくおむつ及びおしめも包含すると理解されるべきである。また、パッドは、漏洩性光ファイバ又は他の光拡散構成を伴う別個の挿入体を指すこともでき、それにより、パッドがおむつに挿入され、その結果、おむつの設計を変更する必要がない。
【0075】
前述したような分散型感知装置は、パッド内に一体的に形成されてもよく(すなわち、ケーブル及びパッドの両方がユニットとして使い捨て可能である)、或いは、光ファイバケーブルがパッドから取り外し可能であってもよく、その場合、光ファイバケーブルを使用後に滅菌して再使用することができる。
【0076】
パッドは、分散型感知装置、特に複数の不連続部分を含むケーブルの部分をパッド内の実質的に中央に位置決めするための手段を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、用語「中央」は、パッドのより長い寸法(すなわち、パッドのより長い寸法に関して、ケーブルがパッドのユーザに対して前後に延びる)に対する中央として理解されるべきである。汚れ(例えば、糞便、尿又は他の排出による)は通常パッド内の中央で発生するため、センサの中央配置は、細菌を検出するより信頼性の高い方法を提供する。中央位置は、例えば、ケーブルを定位置に保持するためのスリーブの存在によって、又は、ケーブルを送ることができる材料のループによって達成されてもよい。特定の実施形態では、ケーブルがパッドの布地に織り込まれてもよい。
【0077】
光源、検出器、及び、更なる処理システムが電源を必要とすることが理解される。電源は、検出システム(すなわち、セル又はバッテリ)内に一体化されてもよい。或いは(例えば臨床現場では)、システムは、セル又はバッテリを充電するためにも使用される外部低電圧電源への(例えば、USBコネクタの電力接続を介した)接続手段を含んでもよい。
【0078】
蛍光検出システムは、再使用可能な構成要素(光源、検出器、通信モジュール、信号処理ユニットなど)を収容するためのコンパクトなハウジングを備えてもよい。このハウジングは、おしめなどのポケットに嵌合することができる。ハウジングは、以下に概説するように、光ポートを画定する開口を内部に有してもよい。
【0079】
ハウジングは、プッシュボタン又はスイッチなど、失禁パッドが交換された時点でシステムをリセットするための手段を備えてもよい。或いは、システムは、後述するように、外部データリンクを介してリセットされてもよい。ハウジングは、細菌の陽性識別が行われたときにユーザに警告するように構成されるインジケータを更に備えてもよい。インジケータは、可視光、サウンダ、ブザーであってもよい。蛍光検出システムが例えば車椅子に拘束されたユーザによって装着される場合、振動警告システムが好ましい場合がある。
【0080】
蛍光検出システムは、接続ファイバの端部を受けるための光ポートを更に備えてもよい。接続ファイバは、ポート上又はポート内の磁石上に磁気的に係止するように構成される磁気部分を一端部に更に備えてもよい。したがって、接続ファイバを光ポートに選択的に取り付けることができ(例えば、プラグ接続される/プラグ接続されない)、それにより、漏洩性光ファイバケーブルを使い捨て部分(失禁パッド、おしめ、又は、使い捨て検査プローブなど)に一体的に形成することができる一方で、ハウジング内の残りの構成要素を再利用することができる。
【0081】
光ポートは、接続ファイバがポートに適切に挿入されているかどうか又は接続ファイバが切断されたかどうかを検出するためのセンサ85を更に備えてもよい。センサ85は、図8に示されて以下に示されるように、この「ファイバ接続/切断」信号を処理ユニット及び通信ユニットに送信するように構成されてもよい。或いは、ケーブルの感知は、開放コネクタからの反射を感知することによって実行されてもよい。
【0082】
図8は、図4図7のいずれかに関連して説明したシステム又は構成などの光学検出サブシステム82に接続される光路81(又は光源及び検出器がパッド内に配置される場合は電気接続部)を含む。光学検出サブシステム82は、蛍光励起及び発光信号にそれぞれ対応する電気信号82a、82bを供給する。これらの信号は、電気信号を処理する当業者に周知の設計を使用して電子増幅器、フィルタ、及び/又は、駆動回路83によって処理されるとともに、同期検出手法、蛍光寿命検出を使用して又は光学分光計を使用して、光源及び光電子デバイスからの電気信号を駆動するために使用される。
【0083】
データストリーム83aは、データを処理して糞便の陽性又は陰性識別を決定するためにデジタル処理ユニット84に渡されてもよい。デジタル処理ユニットは、センサ85へのリンク85aを介して、蛍光が予め設定されたベースライン閾値を超えたかどうかを検出して、ライトガイドが差し込まれているかどうかを検出するなどの更なる機能を果たしてもよい。システムは、糞便の陽性識別を示すために点灯又は音を発する光源84c及び/又は可聴サウンダ84dを含んでもよい。また、このサウンダ84dは、例えば携帯電話で使用されるような振動シグナリングデバイスであってもよい。また、システムは、システムを陰性識別の状態、すなわち、細菌が検出されなかった状態にリセットするためのプッシュボタン又はスイッチ84bを含んでもよい。
【0084】
更に、デジタル処理ユニット84は、取得された情報をロギングするシステム制御ユニット86に情報84aを提供してもよく、この情報をコネクタ89aを介して随意的な外部データバス(例えば、ユニバーサルシリアルバス、USB)への随意的なデータリンク89に及び/又は高周波87aによって他のデバイスにリンクする無線モデム又は他の無線トランシーバなどの随意的な無線送受信ユニット87に提供する。
【0085】
制御ユニット86は、バッテリ89からの電力分配装置と、USBポート又は無線充電装置88aのいずれかから前記バッテリを充電するためのシステムとを含んでもよい。
【0086】
データは、細菌が陽性に識別されたことを示す情報、及び/又は、陽性識別が行われる時間を示すタイムスタンプを含んでもよい。陽性識別時、送信されたデータは、音声、ブザー、光、テキストメッセージ、又は、ユーザへの他の通知など、生成されるべき外部デバイスの警告をトリガしてもよい。更に、送信されたデータは、バッテリ残量などの検出システムの状態情報、及び/又は、(後述するように)「ファイバ接続/切断」信号を含んでもよい。
【0087】
ユーザは、検出システムを構成するために1つ以上の外部デバイスを使用して通信モジュールに送信してもよい。例えば、外部デバイスがスマートフォン又はコンピュータである場合、ユーザは、構成のためにインストールされたソフトウェアアプリケーションを使用してもよい。構成は、患者を識別すること、及び、検出システムを陰性識別の状態、すなわち、細菌が検出されなかった状態にリセットすることを含んでもよい。周期的な検出が実行される場合、構成は、先に概説したように、検出のための時間間隔及び持続時間を選択することを含んでもよい。
【0088】
複数の検出システムが単一の外部デバイスと通信してもよい。例えば、看護師又は医師は、複数の患者のデータを監視することができる。
【0089】
図9は、標的に光を照射する第1のステップS1と、蛍光に対して標的を監視する第2のステップS2とを含む方法を示す。この一般的な方法の随意的な更なるステップは先に説明されている。
【0090】
本発明を上記の好ましい実施形態に関して説明してきたが、これらの実施形態が例示にすぎず、特許請求の範囲がそれらの実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲内に入ると考えられる開示を考慮して修正及び代案を成すことができる。本明細書中に開示又は図示された各特徴は、単独で又は本明細書中に開示又は図示された任意の他の特徴との任意の適切な組合せで、本発明に組み込まれ得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9