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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】作業機及び作業機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20250414BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20250414BHJP
   F15B 11/22 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
E02F9/22 Q
F15B11/08 A
F15B11/22 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022018063
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2023115701
(43)【公開日】2023-08-21
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太樹
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】冨田 淳
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118207(JP,A)
【文献】特開2021-055427(JP,A)
【文献】特開2019-065997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20 - 9/22
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット基端部と前記バケット基端部と反対のバケット先端部とを含むバケットと、
前記バケット基端部を揺動可能に支持するアーム先端部と前記アーム先端部と反対のアーム基端部とを含むアームと、
前記アーム基端部を揺動可能に支持する車両本体と、
前記バケット先端部を下方にチルトさせるときに作動油が流入する第1室と前記バケット先端部を上方にチルトさせるときに作動油が流入する第2室とを含むバケットシリンダと、
前記アーム先端部を上昇させるときに作動油が流入する第3室と前記アーム先端部を下降させるときに作動油が流入する第4室とを含むアームシリンダと、
前記バケットシリンダ及び前記アームシリンダに対して作動油を吐出するように構成される第1油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプと前記バケットシリンダの第1室とを接続する第1油路と、
前記第1油路に設けられ、バケット制御パイロットポートを有し、前記バケット制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧に応じて前記第1室及び前記第2室に供給される作動油を制御するように構成されるバケット制御弁と、
前記バケット制御弁と前記第2室とを接続する第2油路と、
前記第1油圧ポンプと前記アームシリンダの前記第3室とを接続する第3油路と、
前記第3油路に設けられ、アーム制御パイロットポートを有し、前記アーム制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧に応じて前記第3室及び前記第4室に供給される作動油を制御するように構成されるアーム制御弁と、
前記アーム制御弁と前記第4室とを接続する第4油路と、
前記アーム制御弁と前記バケット制御弁を制御するためのパイロット油を吐出するように構成される第2油圧ポンプと、
前記アーム制御パイロットポートと前記第2油圧ポンプとを接続する第1パイロット油路と、
前記第1パイロット油路に設けられ、前記アームの昇降のために操作されるアーム入力部材の操作量に基づいて、前記アーム制御パイロットポートにかかる前記パイロット油の油圧を制御するアームパイロット制御弁と、
前記アーム入力部材の操作を検出するように構成されるアーム操作検出センサと、
前記バケット制御パイロットポートと前記第2油圧ポンプとを接続する第2パイロット油路と、
前記第2パイロット油路に設けられ、前記バケットの揺動のために操作されるバケット入力部材の操作量に基づいて、前記バケット制御パイロットポートにかかる前記パイロット油の油圧を制御するバケットパイロット制御弁と、
前記バケット入力部材の操作を検出するためのバケット操作検出センサと、
前記第4油路と前記第1油路とを接続するように構成されるバイパス油路と、
前記バイパス油路による前記第4油路と前記第1油路との接続と切断とを制御するように構成される切替機構と、
前記アーム操作検出センサの出力と前記バケット操作検出センサの出力とに基づいて、前記アームを上昇させ、且つ、前記バケットを下方にチルトさせるアップチルト操作がされたか否か判定し、前記アップチルト操作がされたと判定された場合、前記第4油路と前記第1油路とを接続させるように前記切替機構を制御するように構成される制御装置と、
を備える、作業機。
【請求項2】
前記切替機構は、
前記バイパス油路と前記第4油路とを接続する第1ジョイントと前記アーム制御弁との間の前記第4油路に設けられ、第1パイロットポートを有し、前記第1パイロットポートに第1閾値圧以上のパイロット油の圧力が加えられると、前記第4油路を介した前記アーム制御弁と前記第4室との接続を遮断し、前記第1パイロットポートに第1閾値圧より小さいパイロット油の圧力が加えられると、前記第4油路を介して前記アーム制御弁と前記第4室とを接続するように構成された第1切替弁と、
前記第1パイロットポートと作動油タンクとを連通させる第1位置と前記第1パイロットポートに前記第1閾値圧以上のパイロット圧をかけることが可能な油路と前記第1パイロットポートとを接続する第2位置とに切り換え可能な電磁弁と、
を備える、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1切替弁と前記アーム制御弁との間の前記第4油路と、前記第2油路との間を接続する追加バイパス油路をさらに備え、
前記切替機構は、
前記バイパス油路に設けられた第2切替弁と、
前記追加バイパス油路に設けられた第3切替弁と、
をさらに備え、
前記作業機は、
前記第4油路と前記追加バイパス油路とを接続する第2ジョイントと前記第3切替弁との間の前記追加バイパス油路と前記第2切替弁とを接続する第1接続路と、
前記バイパス油路と前記第1油路とを接続する第3ジョイントと前記第2切替弁との間の前記バイパス油路と前記第3切替弁とを接続する第2接続路と、
を備え、
前記第2切替弁は、前記第1ジョイントと前記第2切替弁との間の前記バイパス油路の第1油圧が前記第1接続路の第2油圧よりも大きいとき、前記第1ジョイントと前記第3ジョイントとを連通させる第1連通位置に切り換え、前記第2油圧が前記第1油圧以下であるとき、前記第1ジョイントと前記第3ジョイントとの連通を遮断する第1遮断位置に切り換えるように構成され、
前記第3切替弁は、前記第2ジョイントと前記第3切替弁との間の前記追加バイパス油路の第3油圧が前記第2接続路の第4油圧よりも小さいとき、前記第2油路と前記追加バイパス油路とを接続する第4ジョイントと前記第2ジョイントとを連通させる第2連通位置に切り換え、前記第4油圧が前記第3油圧以下であるとき、前記第2ジョイントと前記第4ジョイントとの連通を遮断する第2遮断位置に切り換えるように構成される、
請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第2接続路と前記第2切替弁との間の前記バイパス油路と前記第3切替弁とを接続する第3接続路をさらに備え、
前記第3切替弁は、前記第2ジョイントと前記第3切替弁との間の前記追加バイパス油路の第3油圧が前記第2接続路の第4油圧よりも所定圧以上小さいとき、前記第3接続路と前記バイパス油路とを接続する、
請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
第1切替弁によって前記第4油路を介して前記アーム制御弁と前記第4室とが接続されるときに、前記第4油路と作動油タンクとを接続する第1ドレイン油路をさらに備え、
前記切替機構は、
前記第1ドレイン油路に設けられた第1カウンタバランス弁と、
第4切替弁と、
前記第4切替弁と前記第1切替弁の第1パイロットポートと接続する第3パイロット油路と、
前記第1切替弁と前記第1カウンタバランス弁との間の第1ドレイン油路と前記第4切替弁とを接続する第4パイロット油路と、
前記第4切替弁と前記作動油タンクとを接続する第2ドレイン油路と、
をさらに備え、
前記第4切替弁は、
前記第3パイロット油路と接続される第1接続ポートと、
前記第4パイロット油路と接続される第2接続ポートと、
前記第2ドレイン油路と接続される第3接続ポートと、
前記電磁弁によって前記パイロット圧がかけられる切替弁パイロットポートと、
を備え、
前記切替弁パイロットポートに第2閾値圧以上の前記パイロット油の圧力が加えられると、前記第4切替弁は、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートと前記第3接続ポートとを連通させるドレイン位置に切り換えられ、前記切替弁パイロットポートに前記第2閾値圧よりも小さい前記パイロット油の圧力が加えられると、前記第4切替弁は、前記第1接続ポートと前記第2接続ポートとを連通させ、前記第3接続ポートを前記第1接続ポートと前記第2接続ポートから切断させる昇圧位置に切り換えられる、
請求項2から4のいずれかに記載の作業機。
【請求項6】
前記アーム制御弁は、
前記第3油路を介して前記第1油圧ポンプに接続される第1アーム制御弁ポートと、
前記第4油路に接続される第2アーム制御弁ポートと、
前記第3油路を介して前記アームシリンダの前記第3室に接続される第3アーム制御弁ポートと、
前記アーム制御パイロットポートと、
をさらに備え、
前記アーム入力部材によって前記アームを上昇するための操作がされると、前記アーム制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記アーム制御弁は、前記第1アーム制御弁ポートと前記第3アーム制御弁ポートとを連通し、前記第2アーム制御弁ポートを前記第1ドレイン油路に連通させるアームシリンダ延伸制御位置に切り換えられ、
前記アーム入力部材によって前記アームを下降するための操作がされると、前記アーム制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記アーム制御弁は、前記第1アーム制御弁ポートと前記第2アーム制御弁ポートとを連通し、前記第3アーム制御弁ポートを前記第1ドレイン油路に連通させるアームシリンダ収縮制御位置に切り換えられ、
前記アーム入力部材の操作量が所定の閾値量よりも小さいとき、前記アーム制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記アーム制御弁は、前記第1アーム制御弁ポートと前記第2アーム制御弁ポートと前記第3アーム制御弁ポートとを孤立させるアームシリンダ静止制御位置に切り換えられる、
請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記第1アーム制御弁ポートに掛かる圧力が第3閾値圧以上であるときに限って、前記第1アーム制御弁ポートと前記第2アーム制御弁ポート又は前記第3アーム制御弁ポートとを連通する第1圧力制御弁をさらに備える、請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記バケット制御弁は、
前記第1油路を介して前記第1油圧ポンプに接続される第1バケット制御弁ポートと、
前記第1油路を介して前記バケットシリンダの前記第1室に接続される第2バケット制御弁ポートと、
前記第2油路に接続される第3バケット制御弁ポートと、
前記バケット制御パイロットポートと、
をさらに備え、
前記バケット入力部材によって前記バケット先端部を下方にチルトさせるための操作がされると、前記バケット制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記バケット制御弁は、前記第1バケット制御弁ポートと前記第2バケット制御弁ポートとを連通し、前記第3バケット制御弁ポートを前記第1ドレイン油路に連通させるバケットシリンダ延伸制御位置に切り換えられ、
前記バケット入力部材によって前記バケット先端部を上方にチルトさせるための操作がされると、前記バケット制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記バケット制御弁は、前記第1バケット制御弁ポートと前記第3バケット制御弁ポートとを連通し、前記第2バケット制御弁ポートを前記第1ドレイン油路に連通させるバケットシリンダ収縮制御位置に切り換えられ、
前記アーム入力部材の操作量が所定の閾値量よりも小さいとき、前記バケット制御パイロットポートにかかる前記パイロット圧によって、前記バケット制御弁は、前記第1バケット制御弁ポートと前記第2バケット制御弁ポートと前記第3バケット制御弁ポートとを孤立させるバケットシリンダ静止制御位置に切り換えられる、
請求項6または7に記載の作業機。
【請求項9】
前記第1バケット制御弁ポートに掛かる圧力が第4閾値圧以上であるときに限って、前記第1バケット制御弁ポートと前記第2バケット制御弁ポート又は前記第3バケット制御弁ポートとを連通する第2圧力制御弁をさらに備える、請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御装置に電気的に接続される、バケットの水平制御をON/OFFするためのスイッチをさらに備え、
前記スイッチによって前記水平制御が設定されると、前記制御装置は前記電磁弁を第1位置に切り換える、
請求項8または9に記載の作業機。
【請求項11】
前記水平制御時に、
前記アーム制御弁は前記アームシリンダ延伸制御位置に切り換えられ、
前記バケット制御弁は前記バケットシリンダ静止制御位置に切り換えられる、
請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
前記アームシリンダの前記第3室に流入する作動油の単位量あたりの前記アームの前記車両本体に対する仰角の変化と、前記バケットシリンダの前記第1室に流入する作動油の単位量あたりの前記バケット先端部の前記アームに対する揺動角が実質的に等しい、
請求項11に記載の作業機。
【請求項13】
前記アップチルト操作がされたと判定されるとき、
前記アーム制御弁は前記アームシリンダ延伸制御位置に切り換えられ、
前記バケット制御弁は前記バケットシリンダ延伸制御位置に切り換えられる、
請求項8から12のいずれかに記載の作業機。
【請求項14】
前記第2油圧ポンプと前記アームパイロット制御弁との間の前記第1パイロット油路と、前記第2油圧ポンプと前記バケットパイロット制御弁との間の前記第2パイロット油路との少なくとも一方に設けられ、前記第2油圧ポンプから出力される作動油の圧力を変更可能な追加電磁弁をさらに備える、
請求項1から13のいずれかに記載の作業機。
【請求項15】
第1油圧ポンプから第1油路を介してバケットシリンダの第1室に作動油を送って、バケットのバケット先端部を下方にチルトさせ、
前記第1油路に設けられたバケット制御弁によって、前記第1油圧ポンプから前記バケット制御弁までの前記第1油路と、前記バケット制御弁と前記バケットシリンダの第2室とを接続する第2油路とを連通させて、前記第1油圧ポンプからの前記作動油を前記バケットシリンダの前記第2室に送って、前記バケット先端部を上方にチルトさせ、
前記第1油圧ポンプから第3油路を介してアームシリンダの第3室に作動油を送って、前記バケットの前記バケット先端部と反対のバケット基端部を揺動可能に支持するアームのアーム先端部を上昇させ、
前記第3油路に設けられたアーム制御弁によって、前記第1油圧ポンプから前記アーム制御弁までの前記第3油路と、前記アーム制御弁と前記アームシリンダの第4室とを接続する第4油路とを連通させて、前記第1油圧ポンプからの前記作動油を前記アームシリンダの前記第4室に送って、前記アーム先端部を下降させ、
前記アームの昇降のために操作されるアーム入力部材に、アームを上昇させる第1操作が入力されたことを検出し、
前記バケットの揺動のために操作されるバケット入力部材に、バケットを下方にチルトさせる第2操作が入力されたことを検出し、
前記第1操作と前記第2操作が検出されると、前記第1油路を介して作動油を前記第1室に送るとともに、切替機構によってバイパス油路を介して前記第4油路と前記第1油路とを接続させ、前記第4室の作動油を前記第1室に送る、
作業機の制御方法。
【請求項16】
前記バケット入力部材に、バケットを上方にも下方にもチルトさせない第3操作が入力されたことを検出し、
前記第1操作と前記第3操作が検出されると、前記バケット制御弁によって前記第1油路を切断するとともに、前記切替機構によって前記第4油路と前記第1油路とを接続させ、前記第4室の作動油を前記第1室に送る、
請求項15に記載の作業機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機及び作業機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アームを上昇させる際に、アーム上昇に合わせてバケットのチルト角を変更させて積荷の落下を防止する水平制御を行うための油圧システムを含む作業機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6919479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る作業機において、アームを上昇させながらバケットを下方にチルトさせるアップチルト動作では、水平制御のようにアームの油圧制御とバケットの油圧制御が連動せず、アームの上昇のための油圧制御とバケットのチルトのための油圧制御とが別々に行われるため、水平制御を有効としている状態でのアップチルト動作と水平制御を無効としている状態でのアップチルト動作のチルト速度が異なる問題があった。
【0005】
本願に開示される技術の課題は、水平制御を有効にしてもしなくてもアップチルト動作で同程度の操作性を実現することが可能な作業機及び作業機の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る作業機は、バケットと、アームと、車両本体と、バケットシリンダと、アームシリンダと、第1油圧ポンプと、第1油路と、バケット制御弁と、第2油路と、第3油路と、アーム制御弁と、第4油路と、第2油圧ポンプと、第1パイロット油路と、アームパイロット制御弁と、アーム操作検出センサと、第2パイロット油路と、バケットパイロット制御弁と、バケット操作検出センサと、バイパス油路と、切替機構と、制御装置とを備える。バケットは、バケット基端部とバケット基端部と反対のバケット先端部とを含む。アームは、バケット基端部を揺動可能に支持するアーム先端部とアーム先端部と反対のアーム基端部とを含む。車両本体は、アーム基端部を揺動可能に支持する。バケットシリンダは、バケット先端部を下方にチルトさせるときに作動油が流入する第1室とバケット先端部を上方にチルトさせるときに作動油が流入する第2室とを含む。アームシリンダは、アーム先端部を上昇させるときに作動油が流入する第3室とアーム先端部を下降させるときに作動油が流入する第4室とを含む。第1油圧ポンプは、バケットシリンダ及びアームシリンダに対して作動油を吐出するように構成される。第1油路は、第1油圧ポンプとバケットシリンダの第1室とを接続する。バケット制御弁は、第1油路に設けられ、バケット制御パイロットポートを有する。バケット制御弁は、バケット制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧に応じて第1室及び第2室に供給される作動油を制御するように構成される。第2油路は、バケット制御弁と第2室とを接続する。第3油路は、第1油圧ポンプとアームシリンダの第3室とを接続する。アーム制御弁は、第3油路に設けられ、アーム制御パイロットポートを有する。アーム制御弁は、アーム制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧に応じて第3室及び第4室に供給される作動油を制御するように構成される。第4油路は、アーム制御弁と第4室とを接続する。第2油圧ポンプは、アーム制御弁とバケット制御弁を制御するためのパイロット油を吐出するように構成される。第1パイロット油路は、アーム制御パイロットポートと第2油圧ポンプとを接続する。アームパイロット制御弁は、第1パイロット油路に設けられ、アームの昇降のために操作されるアーム入力部材の操作量に基づいて、アーム制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧を制御する。アーム操作検出センサは、アーム入力部材の操作を検出する。第2パイロット油路は、バケット制御パイロットポートと第2油圧ポンプとを接続する。バケットパイロット制御弁は、第2パイロット油路に設けられ、バケットの揺動のために操作されるバケット入力部材の操作量に基づいて、バケット制御パイロットポートにかかるパイロット油の油圧を制御する。バケット操作検出センサは、バケット入力部材の操作を検出する。バイパス油路は、第4油路と第1油路とを接続するように構成される。切替機構は、バイパス油路による第4油路と第1油路との接続と切断とを制御するように構成される。制御装置は、アーム操作検出センサの出力とバケット操作検出センサの出力とに基づいて、アームを上昇させ、且つ、バケットを下方にチルトさせるアップチルト操作がされたか否か判定し、アップチルト操作がされたと判定された場合、第4油路と第1油路とを接続させるように切替機構を制御するように構成される。
【0007】
本開示の第2態様に係る作業機の制御方法は、第1油圧ポンプから第1油路を介してバケットシリンダの第1室に作動油を送って、バケットのバケット先端部を下方にチルトさせる。当該制御方法は、第1油路に設けられたバケット制御弁によって、第1油圧ポンプからバケット制御弁までの第1油路と、バケット制御弁とバケットシリンダの第2室とを接続する第2油路とを連通させて、第1油圧ポンプからの作動油をバケットシリンダの第2室に送って、バケット先端部が上方にチルトさせる。当該制御方法は、第1油圧ポンプから第3油路を介してアームシリンダの第3室に作動油を送って、バケットのバケット先端部と反対のバケット基端部を揺動可能に支持するアームのアーム先端部を上昇させる。当該制御方法は、第3油路に設けられたアーム制御弁によって、第1油圧ポンプからアーム制御弁までの第3油路と、アーム制御弁とアームシリンダの第4室とを接続する第4油路とを連通させて、第1油圧ポンプからの作動油をアームシリンダの第4室に送って、アーム先端部を下降させる。当該制御方法は、アームの昇降のために操作されるアーム入力部材に、アームを上昇させる第1操作が入力されたことを検出する。当該制御方法は、バケットの揺動のために操作されるバケット入力部材に、バケットを下方にチルトさせる第2操作が入力されたことを検出する。当該制御方法は、第1操作と第2操作が検出されると、第1油路を介して作動油を第1室に送るとともに、切替機構によって第4油路と第1油路とを接続させ、第4室の作動油を第1室に送る。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される技術によれば、例えば、水平制御とアップチルト動作で同程度の操作性を実現することが可能な作業機及び作業機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、作業機の側面図である。
図2図2は、作業機の上面図である。
図3図3は、作業機の油圧システムの概略構成図である。
図4図4は、作業機の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。類似の符号は、各図中において対応、または同一の構成を示している。
【0011】
図1及び図2を参照すると、作業機1、例えばコンパクトトラックローダは、車両本体2と、一対の走行装置3と、作業装置4とを備えている。車両本体2は、走行装置3、及び、作業装置4を支持する。図示の実施形態では、走行装置3は、履帯式の走行装置である。このため、一対の走行装置3のそれぞれは、油圧モータ装置30によって駆動される駆動輪31、従動輪32、33、及び、転輪34を含む。ただし、一対の走行装置3のそれぞれは、履帯式走行装置に限定されない。一対の走行装置3のそれぞれは、例えば、前輪/後輪走行装置であってもよいし、前輪と後部クローラとを有する走行装置であってもよい。作業装置4は、作業装置4の末端(distal end)に器具(work equipment)(バケット)41を含む。バケット41は、バケット基端部41Pとバケット基端部41Pと反対のバケット先端部41Dとを含む。作業装置4の基端(proximal end)は、車両本体2の後部に取り付けられている。作業装置4は、バケットピボット軸43を介してバケット41を回転可能に支持するための一対のアーム組立体(arm assembly)42を含む。一対のアーム組立体42のそれぞれは、リンク44とアーム45を含む。アーム45は、バケット基端部41Pを揺動可能に支持するアーム先端部45Dとアーム先端部45Dと反対のアーム基端部45Pとを含む。アーム先端部45Dは、バケットピボット軸43を揺動可能に支持する。車両本体2は、アーム基端部45Pを揺動可能に支持する。具体的には、車両本体2は、リンク44を介してアーム基端部45Pを揺動可能に支持する。
【0012】
リンク44は、支点軸(fulcrum shaft)46の周りで車両本体2に対して回転可能である。アーム45は、ジョイント軸(joint shaft)47の周りでリンク44に対して回転可能である。作業装置4は、複数のアームシリンダ48と少なくとも1つのバケットシリンダ49とをさらに含む。複数のアームシリンダ48のそれぞれは、車両本体2およびアーム45に回転可能に接続され、リンク44およびアーム45等を移動させて、バケット41を昇降させる。少なくとも1つのバケットシリンダ49は、バケット41を傾けるように構成される。車両本体2は、キャビン5を含む。キャビン5は、開閉自在な前窓51を備え、キャブフレーム53によってその外形が定義される。前窓51は、省略されてもよい。作業機1は、キャビン5内に運転席54および操作レバー55を含む。キャブフレーム53は、図2に示されるように、車両本体2上の回動軸(rotational shaft)RSL及びRSR周りに回転可能である。図1及び図2では、回動軸RSL及びRSRによって規定される共通の旋回軸(pivot)AXCを図示している。つまり、キャブフレーム53は、車両本体2に対して旋回軸AXC周りに回動可能に取り付けられている。
【0013】
なお、本願に係る実施形態において、前後方向DFB(前方向D/後方向D)とは、キャビン5の運転席54に着座したオペレータから見て前後方向(前方向/後方向)を意味する。左方向D、右方向D、幅方向Dとは、当該オペレータから見てそれぞれ、左方向、右方向、左右方向を意味する。上方向D、下方向D、高さ方向Dとは、当該オペレータから見て上方向、下方向、高さ方向を意味する。作業機1の前後/左右(幅)/上下(高さ)方向とは、それぞれ、当該オペレータから見た前後/左右(幅)/上下(高さ)方向と一致するものとする。
【0014】
図1は、作業機1の左側を示している。図2に示すように、車両本体2は、車体中央面Mに対して概ね面対称であり、左側側面である第1側面2Lと、右側側面である第2側面2Rとを含む。一対の走行装置3のうち、第1側面2Lに設けられた走行装置3が第1走行装置3Lとして、第2側面2Rに設けられた走行装置3が第2走行装置3Rとして示されている。一対のアーム組立体42のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム組立体42が第1アーム組立体42Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム組立体42が第2アーム組立体42Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるリンク44が第1リンク44Lとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるアーム45が第1アーム45Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるアーム45が第2アーム45Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられる支点軸46が第1支点軸46Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる支点軸46が第2支点軸46Rとして示されている。車体中央面Mに対して左側に設けられるジョイント軸47が第1ジョイント軸47Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられるジョイント軸47が第2ジョイント軸47Rとして示されている。油圧モータ装置30のうち、車体中央面Mに対して左側に設けられる油圧モータ装置30が第1油圧モータ装置30Lとして、車体中央面Mに対して右側に設けられる油圧モータ装置30が第2油圧モータ装置30Rとして示されている。
【0015】
図1及び図2を参照すると、作業機1は、車両本体2の後部に設けられたエンジン6、並びに、第1走行用油圧ポンプ7L、及び、第2走行用油圧ポンプ7Rを含む複数の油圧ポンプ7をさらに備える。エンジン6は、複数の油圧ポンプ7を駆動する。第1走行用油圧ポンプ7L、及び、第2走行用油圧ポンプ7Rは、駆動輪31を駆動する油圧モータ装置30等)を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。第1走行用油圧ポンプ7L、及び、第2走行用油圧ポンプ7R以外の複数の油圧ポンプ7は、作業装置4に接続された油圧アクチュエータ(複数のアームシリンダ48、少なくとも1つのバケットシリンダ49等)を駆動するために作動油を吐出するように構成されている。エンジン6は、作業機1の幅方向Dにおいて、一対のアーム組立体42の間に設けられている。作業機1は、エンジン6を覆うためのカバー8をさらに備える。作業機1は、車両本体2の後端に設けられているボンネットカバー9をさらに備える。ボンネットカバー9は、開閉可能であり、保守員がエンジン6などの保守作業を行うことができる。
<油圧システム>
【0016】
作業機1は、油圧システム100を備える。図3は、作業機1の油圧システム100の概略構成図である。油圧システム100は、上述するアームシリンダ48及びバケットシリンダ49と、第1油圧ポンプ11と、第2油圧ポンプ12と、アーム制御弁20と、バケット制御弁25と、アームパイロット制御弁60と、バケットパイロット制御弁65と、第1油路R1と、第2油路R2と、第3油路R3と、第4油路R4と、第1パイロット油路PR1と、第2パイロット油路PR2と、バイパス油路BR1と、切替機構70と、アーム操作検出センサAS1、AS2と、バケット操作検出センサBS1、BS2と、制御装置15とを含む。
【0017】
バケットシリンダ49は、バケット先端部41Dを下方にチルトさせるときに作動油が流入する第1室CB1とバケット先端部41Dを上方にチルトさせるときに作動油が流入する第2室CB2とを含む。アームシリンダ48は、アーム先端部45Dを上昇させるときに作動油が流入する第3室CB3とアーム先端部45Dを下降させるときに作動油が流入する第4室CB4とを含む。第1油圧ポンプ11は、エンジン6によって駆動され、バケットシリンダ49及びアームシリンダ48に対して作動油タンク10に貯留された作動油を吐出するように構成される。第1油圧ポンプ11は、例えば、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ12は、エンジン6によって駆動され、アーム制御弁20とバケット制御弁25を制御するためのパイロット油を吐出するように構成される。作動油タンク10に貯留された作動油のうち、第2油圧ポンプ12から吐出され、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧と呼称してもよい。第2油圧ポンプ12は、例えば、定容量型の油圧ポンプである。
【0018】
第1油路R1は、第1油圧ポンプ11とバケットシリンダ49の第1室CB1とを接続する。バケット制御弁25は、第1油路R1に設けられ、バケット制御パイロットポート25P1、25P2を有し、バケット制御パイロットポート25P1、25P2にかかるパイロット油の油圧に応じてバケットシリンダ49の第1室CB1及び第2室CB2に供給される作動油を制御するように構成される。バケット制御弁25は、バケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧とバケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧の圧力差によって、バケットシリンダ静止制御位置BNP、バケットシリンダ延伸制御位置BEP、または、バケットシリンダ収縮制御位置BSPに切り替える。第1油路R1は、第1油圧ポンプ11からジョイントJ11まで延びる第3油路R3と共通の部分油路R10、ジョイントJ11からバケット制御弁25まで延びる部分油路R11、バケット制御弁25の異なる接続ポート同士を接続する部分油路R12、及び、バケット制御弁25からバケットシリンダ49の第1室CB1まで延びる部分油路R13を含む。第2油路R2は、バケット制御弁25とバケットシリンダ49の第2室CB2とを接続する。第1油路R1と第2油路R2とは、バケット制御弁25の異なるポートに接続されることによって分岐される。
【0019】
より具体的には、バケット制御弁25は、第1バケット制御弁ポートYP1と、第2バケット制御弁ポートYP2と、第3バケット制御弁ポートYP3とをさらに備える。第1バケット制御弁ポートYP1は、第1油路R1を介して第1油圧ポンプ11に接続される。第2バケット制御弁ポートYP2は、第1油路R1を介してバケットシリンダ49の第1室CB1に接続される。第3バケット制御弁ポートYP3は、第2油路R2に接続される。バケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧よりも所定圧よりも大きいとき、バケット制御弁25は、第1バケット制御弁ポートYP1と第2バケット制御弁ポートYP2とを連通し、第3バケット制御弁ポートYP3を第1ドレイン油路DR1(後述)に連通させるバケットシリンダ延伸制御位置BEPに切り換えられる。バケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きいとき、バケット制御弁25は、第1バケット制御弁ポートYP1と第3バケット制御弁ポートYP3とを連通し、第2バケット制御弁ポートYP2をDR1(後述)に連通させるバケットシリンダ収縮制御位置BSPに切り換えられる。バケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧とバケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧との差の絶対値が上記所定圧以下であるとき、バケット制御弁25は、第1バケット制御弁ポートYP1と第2バケット制御弁ポートYP2と第3バケット制御弁ポートYP3とを孤立させるバケットシリンダ静止制御位置BNPに切り換えられる。なお、油圧システム100は、第1バケット制御弁ポートYP1に掛かる圧力が第4閾値圧以上であるときに限って、第1バケット制御弁ポートYP1と第2バケット制御弁ポートYP2又は第3バケット制御弁ポートYP3とを連通する第2圧力制御弁77をさらに備える。これによって、第1油圧ポンプ11からの油圧が第4閾値圧に満たなければ、バケット制御を行わないようにすることができる。
【0020】
第3油路R3は、第1油圧ポンプ11とアームシリンダ48の第3室CB3とを接続する。第3油路R3は、第1油圧ポンプ11からジョイントJ11まで延びる第1油路R1と共通の部分油路R10と、ジョイントJ11において第1油路R1から分岐する部分油路R31を含む。アーム制御弁20は、第3油路R3に設けられ、アーム制御パイロットポート20P1、20P2を有し、アーム制御パイロットポート20P1、20P2にかかるパイロット油の油圧に応じてアームシリンダ48の第3室CB3及び第4室CB4に供給される作動油を制御するように構成される。アーム制御弁20は、アーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧とアーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧の圧力差によって、アームシリンダ静止制御位置ANP、アームシリンダ延伸制御位置AEP、または、アームシリンダ収縮制御位置ASPに切り替える。第3油路R3は、さらに、アーム制御弁20の異なる接続ポート同士を接続する部分油路R32と、アームシリンダ48の第3室CB3まで延びる部分油路R33とを含む。第4油路R4は、アーム制御弁20とアームシリンダ48の第4室CB4とを接続する。第3油路R3と第4油路R4とは、バケット制御弁25の異なるポートに接続されることによって分岐される。
【0021】
より具体的には、アーム制御弁20は、第1アーム制御弁ポートXP1と、第2アーム制御弁ポートXP2と、第3アーム制御弁ポートXP3とをさらに備える。第1アーム制御弁ポートXP1は、第3油路R3を介して第1油圧ポンプ11に接続される。第2アーム制御弁ポートXP2は、第4油路R4に接続される。第3アーム制御弁ポートXP3は、第3油路R3を介してアームシリンダ48の第3室CB3に接続される。アーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧よりも所定圧よりも大きいとき、アーム制御弁20は、第1アーム制御弁ポートXP1と第3アーム制御弁ポートXP3とを連通し、第2アーム制御弁ポートXP2を第1ドレイン油路DR1(後述)に連通させるアームシリンダ延伸制御位置AEPに切り換えられる。アーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きいとき、アーム制御弁20は、第1アーム制御弁ポートXP1と第2アーム制御弁ポートXP2とを連通し、第3アーム制御弁ポートXP3を第1ドレイン油路DR1に連通させるアームシリンダ収縮制御位置ASPに切り換えられる。アーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧とアーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧との差の絶対値が上記所定圧以下であるとき、アーム制御弁20は、第1アーム制御弁ポートXP1と第2アーム制御弁ポートXP2と第3アーム制御弁ポートXP3とを孤立させるアームシリンダ静止制御位置ANPに切り換えられる。なお、油圧システム100は、第1アーム制御弁ポートXP1に掛かる圧力が第3閾値圧以上であるときに限って、第1アーム制御弁ポートXP1と第2アーム制御弁ポートXP2又は第3アーム制御弁ポートXP3とを連通する第1圧力制御弁76をさらに備える。これによって、第1油圧ポンプ11からの油圧が第3閾値圧に満たなければ、アーム制御を行わないようにすることができる。
【0022】
第1パイロット油路PR1は、アーム制御パイロットポート20P1、20P2と第2油圧ポンプ12とを接続する。具体的には、第1パイロット油路PR1は、第2油圧ポンプ12からジョイントJ21まで延びる第2パイロット油路PR2と共通の部分油路PR10と、ジョイントJ21からアームパイロット制御弁60まで延びる部分油路PR11と、アームパイロット制御弁60からアーム制御パイロットポート20P1まで延びる部分油路PR12と、アームパイロット制御弁60からアーム制御パイロットポート20P2まで延びる部分油路PR13とを含む。油圧システム100は、部分油路PR10に設けられた追加電磁弁14をさらに備える。つまり、追加電磁弁14は、第2油圧ポンプ12とアームパイロット制御弁60との間の第1パイロット油路PR1と、第2油圧ポンプ12とバケットパイロット制御弁65との間の第2パイロット油路PR2との少なくとも一方に設けられる。追加電磁弁14は、第2油圧ポンプ12から出力される作動油の圧力を変更可能な電磁弁である。この作動油の圧力は制御装置15からの制御により変更可能である。
【0023】
アームパイロット制御弁60は、第1パイロット油路PR1に設けられ、アーム45の昇降のために操作されるアーム入力部材63の操作量に基づいて、アーム制御パイロットポート20P1、20P2にかかるパイロット油の油圧を制御する。具体的には、アームパイロット制御弁60は、部分油路PR12に接続される圧力制御弁61と、部分油路PR12に接続される圧力制御弁62とを含む。アーム入力部材63を前側に傾動させると、圧力制御弁61が操作されて当該圧力制御弁61からパイロット圧が部分油路PR12に出力される。このパイロット圧は、アーム制御弁20のアーム制御パイロットポート20P1に作用する。アーム入力部材63を後側に傾動させると、圧力制御弁62が操作されて当該圧力制御弁62から部分油路PR13にパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、アーム制御弁20のアーム制御パイロットポート20P2に作用する。
【0024】
より具体的には、アーム入力部材63によってアーム45を上昇するための操作(アーム入力部材63を後側に倒す操作)がされると、アーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなる。アーム入力部材63によってアーム45を下降するための操作(アーム入力部材63を前側に倒す操作)がされると、アーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなる。アーム入力部材63の操作量が所定の閾値量よりも小さいとき、アーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧とアーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧との差の絶対値が上記所定圧以下となる。アーム操作検出センサAS1、AS2は、アーム入力部材63を検出するように構成される。アーム操作検出センサAS1は、例えば、部分油路PR12に接続される圧力スイッチである。アーム操作検出センサAS1は、部分油路PR12のパイロット圧が所定圧をこえると所定の電気信号を制御装置15に出力する。アーム操作検出センサAS2は、部分油路PR13のパイロット圧が所定圧をこえると所定の電気信号を制御装置15に出力する。
【0025】
第2パイロット油路PR2は、バケット制御パイロットポート25P1、25P2と第2油圧ポンプ12とを接続する。具体的には、第2パイロット油路PR2は、第2油圧ポンプ12からジョイントJ21まで延びる第1パイロット油路PR1と共通の部分油路PR10と、ジョイントJ21からバケットパイロット制御弁65まで延びる部分油路PR21と、バケットパイロット制御弁65からバケット制御パイロットポート25P1まで延びる部分油路PR22と、バケットパイロット制御弁65からバケット制御パイロットポート25P2まで延びる部分油路PR23とを含む。バケットパイロット制御弁65は、第2パイロット油路PR2に設けられ、バケット41の揺動のために操作されるバケット入力部材68の操作量に基づいて、バケット制御パイロットポート25P1、25P2にかかるパイロット油の油圧を制御する。具体的には、バケットパイロット制御弁65は、部分油路PR22に接続される圧力制御弁66と、部分油路PR23に接続される圧力制御弁67とを含む。
【0026】
バケット入力部材68を右側に傾動させると、圧力制御弁66が操作されて当該圧力制御弁66からパイロット圧が部分油路PR22に出力される。このパイロット圧は、バケット制御弁25のバケット制御パイロットポート25P1に作用する。バケット入力部材68を左側に傾動させると、圧力制御弁67が操作されて当該圧力制御弁67から部分油路PR23にパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、バケット制御弁25のバケット制御パイロットポート25P2に作用する。
【0027】
より具体的には、バケット入力部材68によってバケット先端部41Dを下方にチルトするための操作(バケット入力部材68を右側に倒す操作)がされると、バケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなる。バケット入力部材68によってバケット先端部41Dを上方にチルトするための操作(バケット入力部材68を左側に倒す動作)がされると、バケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなる。バケット入力部材68の操作量が所定の閾値量よりも小さいとき、バケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧とバケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧との差の絶対値が上記所定圧以下となる。
【0028】
なお、図3では、アーム入力部材63とバケット入力部材68は、別の部材として図示されているが、同一の部材であってもよい。この場合、圧力制御弁61、62、66、67は当該同一の部材の周辺に配置されることとなる。バケット操作検出センサBS1は、部分油路PR22のパイロット圧が所定圧をこえると所定の電気信号を制御装置15に出力する。バケット操作検出センサBS2は、部分油路PR23のパイロット圧が所定圧をこえると所定の電気信号を制御装置15に出力する。
【0029】
バイパス油路BR1は、第4油路R4と第1油路R1とを接続するように構成される。バイパス油路BR1は、第1ジョイントJ1において第4油路R4と接続される。バイパス油路BR1は、第3ジョイントJ3において第1油路R1と接続される。切替機構70は、バイパス油路BR1による第4油路R4と第1油路R1との接続と切断とを制御するように構成される。制御装置15は、アーム操作検出センサAS1、AS2の出力とバケット操作検出センサBS1、BS2の出力とに基づいて、アーム45を上昇させ、且つ、バケット41を下方にチルトさせるアップチルト操作がされたか否か判定し、アップチルト操作がされたと判定された場合、第4油路R4と第1油路R1とを接続させるように切替機構70を制御するように構成される。制御装置15は、例えば、ECUなどのハードウェアコントローラである。したがって、制御装置15は、ハードウェアプロセッサやメモリなどの電子回路を備える。
【0030】
切替機構70は、電磁弁71と第1切替弁72とを備える。第1切替弁72は、第1ジョイントJ1とアーム制御弁20との間の第4油路R4に設けられ、第1パイロットポートPP1を有する。第1切替弁72は、第1パイロットポートPP1に第1閾値圧以上のパイロット油の圧力が加えられると、第4油路R4を介したアーム制御弁20とアームシリンダ48の第4室CB4との接続を遮断し、第1パイロットポートPP1に第1閾値圧より小さいパイロット油の圧力が加えられると、第4油路R4を介してアーム制御弁20と第4室CB4とを接続するように構成される。電磁弁71は、第1パイロットポートPP1と作動油タンク10とを連通させる第2位置VP2と第1パイロットポートPP1に第1閾値圧以上のパイロット圧をかけることが可能な油路と第1パイロットポートPP1とを接続する第1位置VP1とに切り換え可能である。
【0031】
電磁弁71のソレノイドには制御装置15が接続される。制御装置15は、例えば、アーム操作検出センサAS1から得られる部分油路PR12のパイロット圧がアーム操作検出センサAS1から得られる部分油路PR13のパイロット圧よりも第1の閾値圧よりも大きく、且つ、バケット操作検出センサBS1から得られる部分油路PR22のパイロット圧がバケット操作検出センサBS2から得られる部分油路PR23のパイロット圧よりも大きいとき、アップチルト操作がされたと判定し、電磁弁71を第1位置VP1に切り換える電気信号を電磁弁71に送信する。
【0032】
さらに、作業機1は、制御装置15に接続されるON/OFF切換スイッチ16をさらに備える。スイッチ16がONに切り換えられると、制御装置15は、電磁弁71を第1位置VP1に切り換える電気信号を電磁弁71に送信する。このスイッチ16は、アーム45の車両本体2に対する仰角に対応してバケット先端部41Dの傾動角を変化させて、バケットピボット軸43からバケット先端部41Dに向かう向きを水平面に対して概ね平行に保つ水平制御を行うときにONに切り換えられる。
【0033】
作業機1は、第1切替弁72とアーム制御弁20との間の第4油路R4と、第2油路R2との間を接続する追加バイパス油路BR2をさらに備える。追加バイパス油路BR2は、第2ジョイントJ2において第4油路R4と接続し、第4ジョイントJ4において第2油路R2と接続する。切替機構70は、バイパス油路BR1に設けられた第2切替弁73と、追加バイパス油路BR2に設けられた第3切替弁74とをさらに備える。バイパス油路BR1は、第1ジョイントJ1から第2切替弁73までの部分油路BR10と、第2切替弁73から第3ジョイントJ3までの部分油路BR11とを含む。追加バイパス油路BR2は、第2ジョイントJ2から第3切替弁74までの部分油路BR20と、第3切替弁74から第4ジョイントJ4までの部分油路BR21とを含む。作業機1は、第2ジョイントJ2と第3切替弁74との間の追加バイパス油路BR2(部分油路BR20)と、第2切替弁73とを接続する第1接続路CR1と、第3ジョイントJ3と第2切替弁73との間のバイパス油路BR1(部分油路BR11)と第3切替弁74とを接続する第2接続路CR2と、第2接続路CR2と第2切替弁73との間のバイパス油路BR1(部分油路BR11)と第2切替弁73とを接続する第3接続路CR3をさらに備える。
【0034】
第2切替弁73は、第1ジョイントJ1と第2切替弁73との間のバイパス油路BR1(部分油路BR10)の第1油圧が第1接続路CR1の第2油圧よりも大きいとき、第1ジョイントJ1と第3ジョイントJ3とを連通させる第1連通位置CP1に切り換え、第2油圧が第1油圧以下であるとき、第1ジョイントJ1と第3ジョイントJ3との連通を遮断する第1遮断位置BP1に切り換えるように構成される。なお、第2切替弁73は、第1遮断位置BP1に切り換えられると、部分油路BR10と第1接続路CR1とを接続するように構成される。第2切替弁73は、第1連通位置CP1に切り換えられると、部分油路BR10と第1接続路CR1とを遮断するように構成される。
【0035】
第3切替弁74は、第2ジョイントJ2と第3切替弁74との間の追加バイパス油路BR2(部分油路BR20)の第3油圧と、第2接続路CR2の第4油圧とに基づいて、第2遮断位置BP2と、第21連通位置CP21と、第22連通位置CP22とのいずれかに切り換える。なお、第21連通位置CP21と、第22連通位置CP22とを総称して第2連通位置CP2と呼称する。第2接続路CR2と第3ジョイントJ3との間にチェック弁CKVが設けられているため、第1油路R1の油圧が第2接続路CR2の油圧に影響することはない。第3切替弁74は、第3油圧が第4油圧よりも小さいとき、第2ジョイントJ2と第4ジョイントJ4とを連通させる第2連通位置CP2に切り換え、第4油圧が第3油圧以下であるとき、第2ジョイントJ2と第4ジョイントJ4との連通を遮断する第2遮断位置BP2に切り換えるように構成される。第3切替弁74は、第4油圧と第3油圧との差が所定圧よりも小さいとき、第21連通位置CP21に切り換え、第2ジョイントJ2と第4ジョイントJ4とを連通させるとともに、第3接続路CR3と部分油路BR11との接続を遮断する。一方、第3油圧が第4油圧よりも所定圧以上小さいとき、第21連通位置CP21に切り換え、第2ジョイントJ2と第4ジョイントJ4とを連通させるとともに、第3接続路CR3とバイパス油路BR1(部分油路BR11)とを接続する。これによって、バイパス油路BR1(部分油路BR11)の油圧が高くなりすぎないようにすることができる。
【0036】
さらに、作業機1は、第1切替弁72によって第4油路R4を介してアーム制御弁20とアームシリンダ48の第4室CB4とが接続されるときに、第4室CB4と作動油タンク10とを接続する第1ドレイン油路DR1をさらに備える。切替機構70は、第1ドレイン油路DR1に設けられた第1カウンタバランス弁BV1と、第4切替弁75と、第4切替弁75と第1切替弁72の第1パイロットポートPP1と接続する第3パイロット油路PR3と、第1切替弁72と第1カウンタバランス弁BV1との間の第1ドレイン油路DR1と第4切替弁75とを接続する第4パイロット油路PR4と、第4切替弁75と作動油タンク10とを接続する第2ドレイン油路DR2をさらに備える。第1カウンタバランス弁BV1は、図示したジョイントJ8の圧力がジョイントJ9の圧力よりも所定圧以上高くなると開かれ、ジョイントJ8からジョイントJ9へ作動油を流すように構成された圧力制御弁である。なお、第1閾値圧は、第1カウンタバランス弁BV1が開く所定圧よりも低い。なお、同様のカウンタバランス弁BV2~BV4は、第3油路R3、第1油路R1、第2油路R2のそれぞれに接続される第4~第6ドレイン油路DR4~DR6に接続される。第4~第6ドレイン油路DR4~DR6は第1ドレイン油路DR1に接続される。
【0037】
第4切替弁75は、第3パイロット油路PR3と接続される第1接続ポートZP1と、第4パイロット油路PR4と接続される第2接続ポートZP2と、第2ドレイン油路DR2と接続される第3接続ポートZP3と、電磁弁71によってパイロット圧がかけられる切替弁パイロットポート75Pとを備える。切替弁パイロットポート75Pに第2閾値圧以上のパイロット油の圧力が加えられると、第4切替弁75は、第1接続ポートZP1と第2接続ポートZP2と第3接続ポートZP3とを連通させるドレイン位置DPに切り換えられる。切替弁パイロットポート75Pに第2閾値圧よりも小さいパイロット油の圧力が加えられると、第4切替弁75は、第1接続ポートZP1と第2接続ポートZP2を連通させ、第3接続ポートZP3を第1接続ポートZP1と第2接続ポートZP2から切断させる昇圧位置UPに切り換えられる。
【0038】
制御装置15によって電磁弁71が第2位置VP2に切り替えられると、切替弁パイロットポート75Pに第2閾値圧以上のパイロット油の圧力が加えられることになる。このため、第4切替弁75がドレイン位置DPに切り換えられ、第1パイロットポートPP1にかかるパイロット圧が第1閾値圧よりも下回ることとなる。このとき、第1切替弁72が開かれ、第4油路R4を介してアーム制御弁20と第4室CB4とが接続するようになり、第4油路R4と第1カウンタバランス弁BV1までの第1ドレイン油路DR1が接続される。
【0039】
このとき、アーム入力部材63を前側に傾動すると、アーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなるため、アーム制御弁20は、アームシリンダ延伸制御位置AEPに切り換えられる。このため、第1油圧ポンプ11からの第3閾値圧を超えた圧力の作動油は、アーム制御弁20を介してアームシリンダ48の第3室CB3に送られることとなる。これにより、アームシリンダ48の第4室CB4から作動油が第4油路R4に出力される。第1切替弁72が開かれているため、当該作動油は、アーム制御弁20の第2アーム制御弁ポートXP2に送られ、第1ドレイン油路DR1に接続される第3ドレイン油路DR3に排出される。
【0040】
また、アーム入力部材63を後側に傾動すると、アーム制御パイロットポート20P2にかかるパイロット圧がアーム制御パイロットポート20P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなるため、アーム制御弁20は、アームシリンダ収縮制御位置ASPに切り換えられる。このため、第1油圧ポンプ11からの第3閾値圧を超えた圧力の作動油は、アーム制御弁20及び第1切替弁72を介してアームシリンダ48の第4室CB4に送られることとなる。これにより、アームシリンダ48の第3室CB3から作動油が第3油路R3に出力される。当該作動油は、アーム制御弁20の第3アーム制御弁ポートXP3に送られ、第1ドレイン油路DR1に接続される第3ドレイン油路DR3に排出される。
【0041】
制御装置15によって電磁弁71が第2位置VP2に切り替えられているとき、バケット41の制御は、アップチルト操作を除いて、アーム45の制御とは独立して行われる。この状態で、バケット入力部材68を右側に傾動すると、バケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなるため、バケット制御弁25は、バケットシリンダ延伸制御位置BEPに切り換えられる。このため、第1油圧ポンプ11からの第4閾値圧を超えた圧力の作動油は、バケット制御弁25を介してバケットシリンダ49の第1室CB1に送られることとなる。これにより、バケットシリンダ49の第2室CB2から作動油が第2油路R2に出力される。当該作動油は、バケット制御弁25の第3バケット制御弁ポートYP3に送られ、第1ドレイン油路DR1に接続される第7ドレイン油路DR7に排出される。
【0042】
また、バケット入力部材68を左側に傾動すると、バケット制御パイロットポート25P2にかかるパイロット圧がバケット制御パイロットポート25P1にかかるパイロット圧よりも上記所定圧よりも大きくなるため、バケット制御弁25は、バケットシリンダ収縮制御位置BSPに切り換えられる。このため、第1油圧ポンプ11からの第4閾値圧を超えた圧力の作動油は、バケット制御弁25を介してバケットシリンダ49の第2室CB2に送られることとなる。これにより、バケットシリンダ49の第1室CB1から作動油が第1油路R1に出力される。当該作動油は、バケット制御弁25の第2バケット制御弁ポートYP2に送られ、第1ドレイン油路DR1に接続される第7ドレイン油路DR7に排出される。
【0043】
制御装置15によって電磁弁71が第2位置VP2に切り替えられた後、制御装置15によって電磁弁71が第1位置VP1に切り替えられると、切替弁パイロットポート75Pに第2閾値圧より小さいパイロット油の圧力が加えられ、第4切替弁75が昇圧位置UPに切り換えられる。切換え当初は、第1パイロットポートPP1にかかるパイロット圧が第1閾値圧よりも下回っているが、すぐに第4油路R4から流れてくる作動油の圧力によって当該パイロット圧が上昇する。第1カウンタバランス弁が開く所定圧は第1閾値圧よりも高いことから、当該パイロット圧は、第1閾値圧を超えることとなり、第1切替弁72が閉じられる。このため、第4油路R4を介したアーム制御弁20とアームシリンダ48の第4室CB4との接続が遮断される。
【0044】
第1切替弁72が閉じられているときに、アーム45を上昇させる操作がなされており(アーム入力部材63を後側に傾動される操作)、バケット41について何ら操作されていない(バケット入力部材68をどこにも傾動されない操作)とき、アーム制御弁20はアームシリンダ延伸制御位置AEPに切り換えられ、バケット制御弁25はバケットシリンダ静止制御位置BNPに切り換えられる。アーム入力部材63とバケット入力部材68とが同一である場合、当該同一の入力部材は、左右に倒すことなく後側に倒す操作をいう。
【0045】
このとき、上述で説明したとおり、作動油はアームシリンダ48の第4室CB4から流出されるが、第1切替弁72が閉じられているため、第1ジョイントJ1から第2切替弁73へ流れることとなる。また、追加バイパス油路BR2及びそれに接続する第1接続路CR1は第3ドレイン油路DR3に接続されているため、第1ジョイントJ1と第2切替弁73との間のバイパス油路BR1(部分油路BR10)の第1油圧が第1接続路CR1の第2油圧よりも大きい。その結果、第2切替弁73が第1連通位置CP1に切り換えられる。このとき、作動油は第2切替弁73からバイパス油路BR1(部分油路BR11)及び第1油路R1(部分油路R13)を介してバケットシリンダ49の第1室CB1に送られる。このとき、バケットシリンダ49の第2室CB2から作動油が第2油路R2及び追加バイパス油路BR2(部分油路BR21)に出力されるが、当初は、第3切替弁74が第2遮断位置BP2に位置しているため、作動油が流れることができず、第2接続路CR2の油圧が上昇する。第2接続路CR2の第4油圧と追加バイパス油路BR2(部分油路BR20)の第3油圧との差が接続閾値圧を超えると、追加バイパス油路BR2(部分油路BR20)の第3油圧と第2接続路CR2の第4油圧との差に基づいて、第21連通位置CP21と第22連通位置CP22とのいずれかに切り換えられる。第4油圧と第3油圧との差が所定の切換閾値よりも小さいとき、第3切替弁74が第21連通位置CP21に切り換えられる。第4油圧と第3油圧との差が所定の切換閾値以上であるとき、第3切替弁74が第22連通位置CP22に切り換えられる。第3切替弁74が、第21連通位置CP21または第22連通位置CP22に切り換えられると、バケットシリンダ49の第2室CB2から出力される作動油が追加バイパス油路BR2及び第3ドレイン油路DR3を介して、作動油タンク10に排出される。
【0046】
ただし、作動油がアームシリンダ48の第4室CB4から流出される際に、第1接続路CR1の第2油圧が上昇し、第2切替弁73が第1遮断位置BP1に切り換えられると、第4室CB4から流出される作動油が第1接続路CR1、追加バイパス油路BR2、及び、第3ドレイン油路DR3を介して作動油タンク10に排出される。このため、アームシリンダ48の第3室CB3に流入することによりアームシリンダ48の第4室CB4から排出される油の量の一部が、バケットシリンダ49の第1室CB1に流入し、残りが作動油タンク10に排出される。作動油の単位量あたりのアーム45の車両本体2に対する仰角の変化と、アーム45に対する揺動角の変化が実質的に等しくなるように、第2切替弁73の第1遮断位置BP1の絞りの大きさが経験的に調整されて、作動油タンク10に排出される量が調整されている。したがって、アームの仰角に対応してバケット先端部41Dのアーム45に対する揺動角を変化させてバケットピボット軸43からバケット先端部41Dに向かう向きが概ね水平方向に向くように制御される。このような制御を水平制御という。
【0047】
第1切替弁72が閉じられているときに、アーム45を下降させる操作がなされており(アーム入力部材63を前側に傾動される操作)、バケット41について何ら操作されていない(バケット入力部材68をどこにも傾動されない操作)とき、アーム制御弁20はアームシリンダ収縮制御位置ASPに切り換えられ、バケット制御弁25はバケットシリンダ静止制御位置BNPに切り換えられる。このとき、第1油圧ポンプ11からの第3閾値圧を超えた圧力の作動油は、第2アーム制御弁ポートXP2から出力される。この第3閾値圧は上述する第1閾値圧や第1カウンタバランス弁BV1を開くための閾値圧よりも大きいため、当該作動油は、第1切替弁72を押して開くことによって、第4油路R4を介してアームシリンダ48の第4室CB4に送られる。このとき、作動油はアームシリンダ48の第3室CB3から第3油路R3及び第3ドレイン油路DR3を介して作動油タンク10に排出される。
【0048】
制御装置15によって電磁弁71が第1位置VP1に切り替えられているとき、バケット41の制御は、アップチルト操作を除いて、アーム45の制御とは独立して行われる。これらの方法については、上述したので省略する。つぎに、アップチルト操作について説明する。アップチルト操作とは、アーム45を上昇させ(アーム入力部材63を前側に倒す操作)、且つ、バケット41を下方にチルトさせる(バケット入力部材68を右側に倒す操作)をアップチルト操作という。アーム入力部材63とバケット入力部材68とが同一である場合、当該同一の入力部材は、右側且つ前側に倒す操作をいう。この操作は、アーム操作検出センサAS1、AS2の出力とバケット操作検出センサBS1、BS2の出力から検出可能である。
【0049】
例えば、アーム操作検出センサAS1から検出される部分油路PR12のパイロット圧が所定圧よりも大きく(アーム操作検出センサAS1が所定の信号を送信する)、且つ、アーム操作検出センサAS2から検出される部分油路PR13のパイロット圧が上記所定圧よりも小さい(アーム操作検出センサAS2が上記所定の信号を送信しない)、且つ、バケット操作検出センサBS1から検出される部分油路PR22のパイロット圧が所定圧よりも大きく(バケット操作検出センサBS1が所定の信号を送信する)、バケット操作検出センサBS2から検出される部分油路PR13のパイロット圧よりも上記所定圧よりも小さい(バケット操作検出センサBS1が上記所定の信号を送信しない)場合に、アップチルト操作がされたと判定することができる。制御装置15は、アーム操作検出センサAS1、AS2の出力とバケット操作検出センサBS1、BS2の出力を取得し、アップチルト操作がされたか否かと判定する。アップチルト操作がされたと判定すると、制御装置15は、ON/OFF切換スイッチ16の設定に関わらず、制御装置15は、電磁弁71を第1位置VP1に切り換える電気信号を電磁弁71に送信する。
【0050】
アップチルト操作がされると、アーム制御弁20はアームシリンダ延伸制御位置AEPに切り換えられ、バケット制御弁25はバケットシリンダ延伸制御位置BEPに切り換えられる。このとき、水平制御の場合と同様に、アームシリンダ48の第4室CB4から流出した作動油がバケットシリンダ49の第1室CB1に送られる。さらに、第1油圧ポンプ11からの第4閾値圧を超えた圧力の作動油は、バケット制御弁25を介してバケットシリンダ49の第1室CB1に送られることとなる。したがって、バケット41のチルトの速度が上昇し、アップチルト操作の応答性が向上される。なお、バケットシリンダ49の第2室CB2から出力される作動油は、上述して説明した場合と同様に第7ドレイン油路DR7に排出される。
<作業機の制御方法>
【0051】
つぎに、本実施形態に係る作業機1の制御方法について説明する。図4は、作業機1の制御方法を示すフローチャートである。ステップS1では、作業機1の制御装置15は、アーム45の昇降のために操作されるアーム入力部材63の操作を検出する。具体的には、制御装置15は、アーム操作検出センサAS1、AS2からの出力をもとに、アーム45を上昇させる操作(第1操作)、アーム45を下降させる操作、及び、アーム45を静止させる操作を検出する。例えば、制御装置15がアーム操作検出センサAS1から所定の信号を受信し、アーム操作検出センサAS2から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がアーム45を上昇させる操作を検出することができる。制御装置15がアーム操作検出センサAS2から所定の信号を受信し、アーム操作検出センサAS1から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がアーム45を下降させる操作を検出することができる。制御装置15がアーム操作検出センサAS1から所定の信号を受信せず、アーム操作検出センサAS2から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がアーム45を静止させる操作を検出することができる。
【0052】
ステップS1においてアーム45を上昇させる操作が検出されると、ステップS2において、作業機1は、第1油圧ポンプ11から第3油路R3を介してアームシリンダ48の第3室CB3に作動油を送って、バケット41のバケット先端部41Dと反対のバケット基端部41Pを揺動可能に支持するアーム45のアーム先端部45Dを上昇させる。ステップS1においてアーム45を下降させる操作が検出されると、ステップS3において、作業機1は、第3油路R3に設けられたアーム制御弁20によって、第1油圧ポンプ11からアーム制御弁20までの第3油路R3と、アーム制御弁20とアームシリンダ48の第4室CB4とを接続する第4油路R4とを連通させて、第1油圧ポンプ11からの作動油をアームシリンダ48の第4室CB4に送って、アーム先端部45Dを下降させる。ステップS1においてアーム45を静止させる操作が検出されると、ステップS4において、作業機1は、アーム制御弁20をアームシリンダ静止制御位置ANPに切り換えて、アーム45を移動させないように制御する。
【0053】
ステップS5では、作業機1の制御装置15は、バケット41の揺動のために操作されるバケット入力部材68の操作を検出する。具体的には、制御装置15は、バケット操作検出センサBS1、BS2からの出力をもとに、バケット41を上方にチルトさせる操作、バケット41を下方にチルトさせる操作(第2操作)、及び、バケット41を上方にも下方にもチルトさせない操作(第3操作)を検出する。例えば、制御装置15がバケット操作検出センサBS2から所定の信号を受信し、バケット操作検出センサBS1から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がバケット41を上方にチルトさせる操作を検出することができる。制御装置15がバケット操作検出センサBS1から所定の信号を受信し、バケット操作検出センサBS2から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がバケット41を下方にチルトさせる操作(第2操作)を検出することができる。制御装置15がバケット操作検出センサBS1から所定の信号を受信せず、バケット操作検出センサBS2から上記所定の信号を受信しないことによって、制御装置15がバケット41を上方にも下方にもチルトさせない操作(第3操作)を検出することができる。
【0054】
ステップS5においてバケット41を上方にチルトさせる操作が検出されると、ステップS6において、作業機1は、第1油路R1に設けられたバケット制御弁25によって、第1油圧ポンプ11からバケット制御弁25までの第1油路R1と、バケット制御弁25とバケットシリンダ49の第2室CB2とを接続する第2油路R2とを連通させて、第1油圧ポンプ11からの作動油をバケットシリンダ49の第2室CB2に送って、バケット先端部41Dを上方にチルトさせる。ステップS5においてバケット41を下方にチルトさせる操作(第2操作)が検出されると、ステップS7において、制御装置15は、ステップS1において第1操作が検出されているかどうか判定する。第1操作が検出されていないと判定される場合(ステップS7でNO)、ステップS8において、作業機1は、第1油圧ポンプ11から第1油路R1を介してバケットシリンダ49の第1室CB1に作動油を送って、バケット41のバケット先端部41Dを下方にチルトさせる。第1操作と第2操作が検出されると(ステップS7でYES)、作業機1は、第1油路R1を介して作動油を第1室CB1に送るとともに、切替機構70によってバイパス油路BR1を介して第4油路R4と第1油路R1とを接続させ、第4油路R4の作動油を第1油路R1に送る。
【0055】
ステップS5において第3操作が検出されると、ステップS10において、作業機1は、ON/OFF切換スイッチ16がONに設定されているかを検出することによって水平制御が指示されているか否かを検出する。さらに、作業機1は、ステップS1において第1操作が検出されているかどうか判定する。水平制御が指示されていない場合、又は、第1操作が検出されていない場合(ステップS10でNO)、作業機1は、ステップS11において、バケット制御弁25をバケットシリンダ静止制御位置BNPに切り換えてバケット41を揺動させないように制御する。水平制御が指示されており、且つ、第1操作と第3操作が検出されている場合(ステップS10でYES)、作業機1は、ステップS12において、作業機1は、バケット制御弁25によって第1油路R1を切断するとともに、切替機構70によって第4油路R4と第1油路R1とを接続させ、第4室CB4の作動油を第1室CB1に送る。
<実施形態の効果>
【0056】
本実施形態に係る作業機1の制御装置15は、アーム操作検出センサAS1、AS2の出力とバケット操作検出センサBS1、BS2の出力とに基づいて、アーム45を上昇させ、且つ、バケット41を下方にチルトさせるアップチルト操作がされたか否か判定し、アップチルト操作がされたと判定された場合、第4油路R4と第1油路R1とを接続させるように切替機構70を制御するように構成される。本実施形態に係る作業機1の制御方法は、アーム45を上昇させる第1操作とバケット41を下方にチルトさせる第2操作が検出されると、第1油路R1を介して作動油を第1室CB1に送るとともに、切替機構70によって第4油路R4と第1油路R1とを接続させ、第4室CB4の作動油を第1室CB1に送る。これによって、水平制御を有効にしてもしなくてもアップチルト動作で同程度の操作性を実現することが可能な作業機1及び作業機の制御方法を提供することができる。
【0057】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0058】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0059】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0060】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0061】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0062】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4