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特許7665588(111)SI上に成長させたIII-V族材料の制御されたNドーピングの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】(111)SI上に成長させたIII-V族材料の制御されたNドーピングの方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/40 20060101AFI20250414BHJP
   C30B 23/08 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
C30B29/40 502K
C30B23/08 M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022500861
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020069052
(87)【国際公開番号】W WO2021005026
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】19185186.4
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517220955
【氏名又は名称】インテグレイテッド ソーラー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッゲ、レナート
(72)【発明者】
【氏名】ミュルヴォーグネス、ゲイル
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-265898(JP,A)
【文献】特開2015-053386(JP,A)
【文献】KAWAI, T. et al.,Initial growth mechanism of AlAs on Si(111) by moleclar beam epitaxy,Appl. Phys. Lett.,59 (23),米国,AIP Publishing,1991年09月10日,2983-2985
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C30B 23/02-23/08
29/40-29/50
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(111)Si基板上にIII-V族材料を成長させることを含む分子線エピタキシ(MBE)成長プロセスにおいて制御可能なnドーピングを提供する方法であって、核生成層はIII-Sb族材料を含み、
-前記核生成層を成長させることと、その後、
-連続的に流れるヒ素フラックスを前記(111)Si基板の成長界面に向けることと、
-第1のステップにおいてIII-V族材料の堆積が行われ、続いて第2のステップにおいて前記III-V族材料の前記堆積が停止される期間を含むステップにおいて前記III-V族材料を堆積させることと、
-最終材料組成物が成長するまで前記ヒ素フラックスが連続的に流れている間に、前記第1のステップおよび前記第2のステップに従って前記III-V族材料の堆積を継続することと、
-エピタキシャル成長プロセスの温度を400℃~580℃の間隔に維持することと、を含み、
・前記堆積された材料の一部または全部は、2×1014cm-3~3.6×1016cm-3の間隔で得られたp型ドーピング濃度で、室温で1.6×10cm/Vs以上のホール移動度で非意図的にドープされ、nドーパント剤による補償ドーピングを可能にし、または
・nドーパント剤が、前記第1のステップにおいて前記III-V族材料と同時に堆積されて、nドープ材料をもたらし、前記nドーパント剤の濃度が、少なくとも1.00×1016cm-3であり、
-前記III-V族材料は、少なくともGaまたはAlを含み、前記III-V族材料の前記堆積は、成長した材料1ナノメートルあたり少なくとも2.94秒間停止される、
前記方法。
【請求項2】
前記nドーパント剤の濃度が、1.0×1016cm-3~3.5×1018cm-3の間隔である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記nドーパント剤が、シリコン、硫黄、テルル、スズ、ゲルマニウム、セレンを含む群からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒ素フラックス源が、600℃~900℃の範囲の温度制御クラッカーを備えた固体As源によって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒ素フラックス源からのヒ素フラックス濃度が、AsとAsの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
クラッカー温度が600℃に近づくと前記Asの濃度が前記Asの濃度より高くなり、クラッカー温度が900℃に近づくと前記Asの濃度が前記Asの濃度より低くなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
線等価圧力(BEP)を使用して測定された非核生成層中のヒ素フラックス濃度が、少なくとも1.33322×10-5mbarから3.99967×10-5mbarの間、または3.99967×10-5mbarを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
インジウムが、前記III-V族材料のうちの1つであり、前記インジウムが、1.1at%~21.4at%の量で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
インジウムが、前記III-V族材料のうちの1つであり、前記インジウムが、1.1at%、1.2at%、1.4at%、2.2at%、2.4at%、2.6at%、2.9at%、3.3at%、3.9at%、4.2at%、4.6at%、5.6at%、7.1at%、8.3at%、10.0at%、14.3at%、16.7at%、または21.4at%の量のうちの1つに応じた量で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のステップおよび前記第2のステップによる前記III-V族材料の前記堆積を継続することが周期的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
成長停止の期間がランダム化された不規則な間隔で現れる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記固体As源からのAsフラックス濃度増加が、成長停止持続時間を減少させる、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
成長停止の期間が20~500秒の長さである、請求項11から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記核生成層が20at%未満のAsを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記(111)Si基板が、前記(111)Si基板表面上に段差を提供するミスカット角を有し、各段差の高さが分子の1つの単層以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記(111)Si基板がオンカット結晶である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記エピタキシャル成長プロセスがデジタル合金成長タイプである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(111)Si上に成長させたnドープIII-V族材料を提供する方法に関し、特に、成長させないステップと交互に配置されたIII-V族材料を成長させるステップを含む方法であって、成長ステップおよび成長させないステップの両方が、一定の連続したヒ素フラックス濃度に曝される、前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性半導体材料は、通常、n型半導体のような外因性半導体を形成するためのドーパント、すなわち、電子が多数キャリアであり、正孔が少数キャリアである材料を必要とする。p型半導体は、正孔が多数キャリアであり、電子が少数キャリアである半導体材料を含む。真性半導体材料ドーピングは、通常、不純物原子を真性半導体に導入することを含む。不純物原子は、半導体材料とは異なる元素からのものであり、不純物原子は、真性半導体に対するドナーまたはアクセプタのいずれかである。ドナーは、それらの余分な原子価原子を半導体の伝導帯に供与する。アクセプタは、半導体の価電子帯から電子を受け取り、それによって真性半導体材料に過剰な正孔を提供する、すなわちp型半導体を提供する。半導体デバイスを作製する場合、n型およびp型半導体を接合して、たとえばp-n接合を形成することができる。
【0003】
しかしながら、半導体材料は、分子線エピタキシ成長プロセスで製造されるとき、たとえばp型またはn型の意図しないドーピングを示し得ることが知られている。その理由は、得られる半導体材料の構造品質が不完全であることである(結晶欠陥等)。そのような状況では、半導体材料に意図しないpまたはnドーピング(自己ドーピングと表わされることもあり、すなわち、添加されたドーパント剤は使用されない)が発生した場合、ドーパントを使用してn型またはp型半導体を作製することができない可能性がある。たとえば、エピタキシャル成長プロセスにおいて意図しないPドーピング(または自己ドーピング)が発生した場合、補償ドーピングと呼ばれるプロセスにおいてnドーピング剤を添加することが、材料をnドープさせるときに可能であることが知られている。しかしながら、この可能性は、補償nドーピングが成功し得る場合、通常、少なくとも材料中に存在するpドーピングのレベルに依存する。
【0004】
GaAsは、それをn型にするために最も一般的にはシリコンでドープされるが、それに加えて、それをそれぞれn型またはp型にドープするためにゲルマニウム、硫黄、テルルもしくはスズ、またはベリリウム、クロムもしくはゲルマニウムなどでドープすることができる。あるタイプのドーパントは、実際には、GaAs格子内のどの位置をとるかに応じて、nドーパントおよびpドーパントの両方として作用することができる。GaAsの場合、これは炭素基のすべてのメンバーに関連し、As位置を占める場合はnドーパントとなり、Ga位置を占める場合はpドーパントとなる。なお、GaAs格子のGa位置を占めるGa原子をGaGa、As位置を占めるGaをGaAs、・・・と表記する。
【0005】
GaAsの二原子特性は、制御可能なドーピングを行う場合に非常に困難な材料となる。2つの構成要素GaとAsとの間の非単位比は、たとえば、GaAsがpドーパントとして作用し、AsGaがnドーパントとして作用するので、材料に強いドーピング効果をもたらす。その結果、GaAsの形成中にGaの濃度がわずかに高くなるとp型材料が得られ、その反対でn型材料が得られる。
【0006】
モノ空孔およびドーパント空孔錯体の不可避的な導入は、GaAsのドーピングを制御する際の複雑さをさらに増す。As空孔(VAS)およびガリウム空孔(VGa)の両方がpドーパントとして作用することが報告されているが(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pssa.2210960237/abstract参照)、SiGaGaなどのドーパント空孔錯体は、Siが一般にGaAs中のnドーパントとして作用しているにもかかわらず、アクセプタとして作用することによってnドーピングを補償することが分かっている。SiGaGaによるnドーピングの補償は、高いSiドーピングに対して最も強いことが示されており、この場合、Si原子は、両性ドーパントSiAsとして作用することによって補償効果をさらに付加する。
【0007】
Ga/As比のバランスは、たとえば分子線エピタキシ(MBE)を用いたGaAsの薄膜堆積中に特に困難である。GaAsのMBE堆積中、Asは、As、AsおよびAsの間の混合物として堆積され、これらはすべて異なる化学吸着特性を有する。たとえば、AsおよびAsは、温度およびGaAs表面上のGaの濃度に応じて、GaAsに異なって付着する。GaAs上へのAsおよびAsの最大付着係数は、それぞれ0.75および0.5を測定したと報告されている。MBEを使用してGaAsを堆積させる場合、2つの元素間の単位比を得るために、Gaよりも高いAsの蒸気圧(フラックス)を維持することが使用される。したがって、薄膜へのAsよりもGaのより高い組込みは、pドープ薄膜をもたらす。
【0008】
[1]T.Yamamoto、M.Inai、A.Shinoda、T.Takebeは、論文「Misorientation Dependence of Crystal Structures and Electrical Properties of Si-Doped AlAsGrown on(111)GaAs by Molecular Beam Epitaxy」、Japanese Journal of Applied Physics Vol 32、p33~46(1993年)において、(111)GaAsのミス配向がドーピング効率にどのように影響するかを開示している。ミス配向が3度未満であると、ミス配向した(111)GaAs上のSiドープAlAs層の効率が低下し、(111)軸上成長で高い電気抵抗が得られた。
【0009】
[2]T.Kawai、H.Yonezu、Y.Yamauchi、Y.Takano、およびK.Pakは、「Initial growth mechanism of AlAs on Si(111)by molecular beam epitaxy」、Physics Letters 59、p29~83(1991年)の記事で、Si上のファセットされていないAlAsおよびGaAsを成長させるためにAsを使用できることを開示している。しかしながら、Asオンドープの効果は調査されなかった。
【0010】
[3]K.Winer、M.Kawashima、およびY.Horikoshiは、論文「Si doping efficiency in GaAs grown at low temperatures」、Applied Physics Letters 58、p28~18(1991年)において、異なるGa/Asフラックス比を用いたドーピングの効果を開示している。ドーピングはGa/Asフラックス比に依存した。
【0011】
[4]A.Saletes、J.Massies、G.Neu、J.P.Contourの「Effect of As4/Ga flux ratio on electrical properties of NID GaAs layers grown by MBE」、Electronic Letters、Vol.20、No.21(1984年)は、いかなる別個のドーピング材料も追加することなく、Si(100)表面上に成長したGaAs膜におけるドーピングのタイプおよびレベルを制御するためにIII/Vフラックス比をどのように使用できるかを開示している。この効果は、分子線エピタキシ系における成長のパラメータを制御することによって材料が可変レベルの自己ドーピングの傾向を示すので、非意図的ドーピング(NID)として示される。
【0012】
材料が非意図的なpドープ材料になる場合、たとえばSiによる補償ドーピングは、必ずしもnドープ材料をもたらす、すなわち、非意図的なpドーピングの補償となるとは限らない。特に、pドーピング濃度が高すぎると、補償ドーピングが不可能になり得る。
【0013】
したがって、本発明は、非意図的なドーピングの制御を提供するMBE(分子線エピタキシ)機械におけるエピタキシャル成長の方法を含み、これは、本発明の目的を考慮して、n型材料をもたらす、材料のnドーピングの補償を可能にすることである。
【0014】
シリコン上にGaAsを成長させる場合、意図しないドーピングが起こり得ることが知られている。したがって、(111)Si上へのIII-V族材料の制御されたドーピングの改善された方法が必要とされている。特に、分子線エピタキシ成長プロセスにおいて、(111)Si上に少なくともGaAsを含むn型半導体の改善された成長が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特に、本発明の目的は、分子線エピタキシ(MBE)成長プロセスにおけるSi(111)成長界面上を連続的に流れるAsフラックス濃度による、Si(111)上の少なくともGaAsを含むn型ドープ半導体を提供することであると見なすことができる。
【0016】
本発明のさらなる目的は、従来技術の代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、上述の目的およびいくつかの他の目的は、本発明の第1の態様において、(111)Si基板上にIII-V族材料を成長させることを含む分子線エピタキシ(MBE)成長プロセスにおいて制御可能なnドーピングの方法を提供することによって得られることが意図されており、核生成層はIII-Sb族材料を含み、方法は、
-核生成層を成長させることと、その後、
-連続的に流れるヒ素フラックスを(111)Si基板の成長界面に向けることと、
-第1のステップにおいてIII-V族材料の堆積が行われ、続いて第2のステップにおいてIII-V族材料の堆積が停止される期間を含むステップにおいてIII-V族材料を堆積させることと、
-最終材料組成物が成長するまでヒ素フラックスが連続的に流れている間に、第1のステップおよび第2のステップに従ってIII-V族材料の堆積を継続することと、
-エピタキシャル成長プロセスの温度を300℃~580℃の間隔に維持することと、を含み、
-堆積された材料は、2×1014cm-3~3.6×1016cm-3の間隔で得られたp型ドーピング濃度で、室温で1.6×10cm/Vs以上の移動度で非意図的にドープされ、nドーピング剤による補償ドーピングを可能にする。
【0018】
本発明の各態様は、他の態様のいずれかと組み合わせてもよい。本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。
他の記載と重複するが、本発明の諸態様を以下に示す。但し、本発明は以下に限定されない。
[1]
(111)Si基板上にIII-V族材料を成長させることを含む分子線エピタキシ(MBE)成長プロセスにおいて制御可能なnドーピングを提供する方法であって、核生成層はIII-Sb族材料を含み、
-前記核生成層を成長させることと、その後、
-連続的に流れるヒ素フラックスを前記(111)Si基板の成長界面に向けることと、
-第1のステップにおいてIII-V族材料の堆積が行われ、続いて第2のステップにおいて前記III-V族材料の前記堆積が停止される期間を含むステップにおいて前記III-V族材料を堆積させることと、
-最終材料組成物が成長するまで前記ヒ素フラックスが連続的に流れている間に、前記第1のステップおよび前記第2のステップに従って前記III-V族材料の堆積を継続することと、
-前記エピタキシャル成長プロセスの温度を300℃~580℃の間隔に維持することと、を含み、
-前記堆積された材料は、2×10 14 cm -3 ~3.6×10 16 cm -3 の間隔で得られたp型ドーピング濃度で、室温で1.6×10 cm /Vs以上の移動度で非意図的にドープされ、nドーピング剤による補償ドーピングを可能にする、
前記方法。
[2]
前記補償nドーパント剤が、前記第1のステップにおいて前記III-V族材料と同時に堆積されて、nドープ材料をもたらす、[1]に記載の方法。
[3]
前記nドーピング濃度が、16×10 17 cm -3 ~3.5×10 18 cm -3 の間隔である、[2]に記載の方法。
[4]
前記nドーパント剤が、シリコン、硫黄、テルル、スズ、ゲルマニウム、セレンを含む群からのものである、[2]に記載の方法。
[5]
前記ヒ素フラックス源が、600℃~900℃の範囲の温度制御クラッカーを備えた固体As源によって提供される、[1]に記載の方法。
[6]
前記源からのヒ素フラックス濃度が、As とAs の混合物である、[4]に記載の方法。
[7]
クラッカー温度が600℃に近づくと前記As の濃度が前記As の濃度より高くなり、クラッカー温度が900℃に近づくと前記As の濃度が前記As の濃度より低くなる、[5]に記載の方法。
[8]
線等価圧力(BEP)を使用して測定された非核生成層中の前記ヒ素フラックス濃度が、少なくとも1.33322×10 -5 mbar(1.00×10 -5 T)から3.99967×10 -5 mbar(3×10 -5 T)の間、または3.99967×10 -5 mbar(3×10 -5 T)を超える、[1]に記載の方法。
[9]
インジウムが、1.1at%~21.4at%の量で堆積される前記III-V族材料のうちの1つである、[1]に記載の方法。
[10]
インジウムが、1.1at%、1.2at%、1.4at%、2.2at%、2.4at%、2.6at%、2.9at%、3.3at%、3.9at%、4.2at%、4.6at%、5.6at%、7.1at%、8.3at%、10.0at%、14.3at%、16.7at%、または21.4at%の量のうちの1つに応じた量で堆積される前記III-V族材料のうちの1つである、[1]に記載の方法。
[11]
前記第1のステップおよび前記第2のステップによる前記III-V族材料の前記堆積を継続することが周期的に行われる、[1]に記載の方法。
[12]
成長停止の期間がランダム化された不規則な間隔で現れる、[1]に記載の方法。
[13]
前記As源からのより高いAsフラックス濃度が、より短い成長停止を可能にする、[1]に記載の方法。
[14]
成長停止を伴う期間が20~500秒の長さである、[11]から[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
前記核生成層が20at%未満のAsを含む、[1]に記載の方法。
[16]
前記(111)Si基板が、前記(111)Si基板表面上に段差を提供するミスカット角を有し、各段差の高さが分子の1つの単層以下である、[1]に記載の方法。
[17]
前記(111)Si基板がオンカット結晶である、[1]に記載の方法。
[18]
前記エピタキシャル成長プロセスがデジタル合金成長タイプとすることができる、[1]に記載の方法。
【0019】
次に、本発明の制御されたnドーピングの方法を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。図は、本発明の実施形態の例を示しており、添付の特許請求の範囲に含まれる他の可能な実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。また、各実施形態の例は、他の実施形態の例と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】完全なGaAs結晶の一例を示す。
図1b】ヒ素原子を欠くGaAs結晶の一例を示す。
図2】本発明の成長プロセスの一例を概略的に示す。
図3a】本発明の実施形態の一例における移動度測定値の一例を示す。
図3b】本発明の実施形態の一例におけるキャリア密度測定の一例を示す。
図4】本発明の実施形態の一例におけるプロセスステップの例を示す。
図5】成長プロセスのパラメータ設定および得られた結果の例を示す。
図6a】ミスカット(111)Si基板表面上の2次元成長を示す。
図6b】ミスカットなし(111)Si基板表面上の3次元成長を示す。
図7】本発明の実施形態の一例で得られた結果を示す。
図8】本発明の実施形態の一例で得られたさらなる結果を示す。
図9】本発明の実施形態の一例で得られたさらなる結果を示す。
図10】本発明の実施形態の一例による、MBE(分子線エピタキシ)マシン内でnドープ材料を成長させる例を示す。
図11a】本発明の実施形態の例の層構造の異なる例を開示している。
図11b】本発明の実施形態の例の層構造の異なる例を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明は決して本例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の文脈において、「備える(comprising)」または「備える(comprises)」という用語は、他の可能な要素またはステップを排除しない。また、「1つの(a)」または「1つの(an)」などの言及は、複数を排除するものとして解釈されるべきではない。図に示される要素に関する特許請求の範囲における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載された個々の特徴は、場合によっては有利に組み合わされてもよく、異なる請求項におけるこれらの特徴への言及は、特徴の組合せが可能でなく有利でないことを排除しない。
【0022】
図1aは、Ga原子およびAs原子を含む完全なGaAs結晶を示し、それぞれの原子は互いに結合して結晶構造を形成する。
【0023】
図1bは、結晶構造中にヒ素原子が欠けている状況を示す。一般に、この状況は、III-V族材料構造における意図しないp型ドーピングの一例である。欠損したヒ素原子は、隣接するガリウム原子からのダングリングボンドを構成する。これらのダングリングボンドは、電子供与体として作用して、局所的な正電荷をもたらし得る。結晶全体にわたるこれらの電荷の移動はp型伝導である。
【0024】
図2は、基板上でのエピタキシャル成長中にフラックス濃度を印加する例の概略図である。従来技術で知られているように、定義されたフラックス濃度を有するそれぞれの材料の原子を含む線は、所与の温度下で基板に向けられてもよい。次いで、それぞれの線に含まれる原子が基板の表面上に堆積され、基板表面上の原子に結合される。それぞれの線をオンおよびオフにし、フラックス濃度、温度および圧力ならびに他のパラメータを変化させて、異なる材料組成物を含み得るいくつかの層を成長界面に追加することができる。このようにして、従来技術で知られているような特定の特性を有する半導体材料を設計することが可能である。
【0025】
図1bに関する説明に関して、本発明の一態様は、ヒ素原子の高いフラックス濃度を有し、それによって結晶内のヒ素空孔を充填し、次いでプロセス内のn型ドーパントとしてたとえばSiを使用するという主要な着想である。図2は、n型ドーパント材料として、As、As、およびSiの混合物から構成されるヒ素フラックス濃度の使用を示す。
【0026】
しかしながら、製造される半導体材料を特徴付ける他の要因も考慮する必要がある。たとえば、過剰なヒ素は、当業者に知られているように、半導体材料の電気特性に影響を及ぼす結晶中の欠陥をもたらし得る。
【0027】
具体的な考慮事項は、結晶中の電荷の十分な移動度ならびに半導体材料中の十分な電荷密度を達成することである。導電率は、移動度とキャリア濃度の積に比例する。たとえば、同じ導電率は、それぞれの移動度が高い少数の電子、またはそれぞれの移動度が低い多数の電子から生じ得る。半導体では、たとえばトランジスタおよび他のデバイスの挙動は、より低い移動度を有する多数の電子が存在するか、またはより高い移動度を有する少数の電子が存在するかに応じて非常に異なり得る。
【0028】
したがって、移動度は半導体材料に関する重要なパラメータである。通常、デバイスの他の特徴またはパラメータがほぼ同じである場合、より高い移動度はより良好なデバイス性能をもたらす。
【0029】
図3aおよび図3bは、III-V族半導体材料の非意図的にドープされたサンプルの一例における電気移動度の測定の一例を示す。図3aは、材料中の電荷の移動度に対する磁束密度の関数としての電界依存性を開示するホール移動度を開示する。図3bは、磁束密度の関数としてのキャリア(電荷濃度)を示す。材料の導電率は、上述のように移動度とキャリア濃度の積に比例する。曲線は、室温で約3.5~3.6×1016cm-3の真性またはp型キャリア濃度および約1.6~1.7×10cm/Vsの移動度を示す。
【0030】
したがって、本発明の背後にある主な原理は、III-V族半導体材料を成長させるときにヒ素原子フラックス濃度を増加させ、n型III-V族半導体を提供するときにたとえばSiをnドーパント剤として使用することによって、たとえばIII-V族半導体材料内のヒ素原子の欠落を回避することである。
【0031】
本発明による方法の一例で適用されるヒ素源は、クラッカーを備えた固体As源であり得る。ヒ素フラックス濃度は、AsとAsの混合物である。
【0032】
本発明による材料サンプルのいくつかの例を開発および試験するとき、本発明者らは、Veeco社によって供給される「Arsenic Valved Cracker Mark V 500cc」をヒ素フラックス生成に使用した。工場推奨設定を使用し、クラッカーは、非常に高い全ヒ素フラックス濃度(3E~5Tまで、場合によっては3E~5Tを超える)であっても、特定のドーパント(Siドーパント)および基板温度を使用する場合、成長プロセス中にAs/Asフラックス比を提供し、n型ドープ材料をもたらした。AsとAsとの比は、クラッカーの温度を、たとえば600℃~900℃の間隔内に設定することによって制御可能である。クラッカー温度が600℃に近づくとAsの濃度はAsの濃度より高くなり、900℃に近づくとAsの濃度はAsの濃度より低くなる。
【0033】
ヒ素フラックス比は、上記のように制御可能であり、ヒ素源設定に依存する。好ましくない条件下では、得られる材料は常に高度にp型の半導体(1×1018cm-3より大きい)であるように見え、したがって意図しないp型ドーピングが材料を支配するため、n型補償ドーピングを達成することはほとんど不可能になる。((100)GaAsで較正された)最大5×1019cm-3の意図的なn型ドーピングを有するnドープ材料の発明者らによって行われた測定は、材料が依然として好ましくない条件下でp型であることを開示している。
【0034】
本発明の実施形態の一例では、(111)Si上の成長プロセスは、AsおよびAs分子を含むがこれらに限定されない異なるヒ素フラックス組成物の混合物を使用することを含む。成長中、nドーピングを有する完全なIII-V族材料構造を構成する他の材料が添加される。これらの材料には、ガリウム、アルミニウム、インジウム、ヒ素、およびnドーピング(シリコン)が含まれ(ただし、これらに限定されない)、アンチモンの添加は任意である。III-V構造では、シリコンがドーパント剤を構成しているが、他のnドーパント剤と交換可能である。成長停止は、半導体のヒ素含有量を増加させるために、ヒ素フラックス濃度の下で特定の間隔で行われてもよい。
【0035】
図4は、経時的な成長プロセスの一例を示す。図示のプロセスは、たとえば図1に開示されているような特定の量の選択された材料を基板上に堆積させることから始まる。この例では、ヒ素フラックス濃度が依然として流れている非成長期間を有するステップで、選択されたIII-V族材料または材料組成物の堆積が継続している間、全成長プロセス中に一定のヒ素フラックス組成物が適用される。材料の厚さは、成長を含むそれぞれのステップにおいて増加する。
【0036】
本発明の実施形態の一例では、成長を伴う期間は停止し、成長を伴う期間は周期的に交替可能である。
【0037】
本発明の実施形態の別の例では、成長停止の期間はランダム化された不規則な間隔で現れる。
【0038】
本発明の実施形態の別の例では、Asフラックス濃度を増加させると、それぞれの成長停止の長さを減少させることができる。
【0039】
成長停止の期間は、20~500秒の長さであり得る。
【0040】
図5は、上記の実施形態の開示された例で使用することができる異なるパラメータ設定のいくつかの例を開示する表1を示す。
【0041】
プロセスパラメータおよび成長停止間隔の例を伴うIII-V成長の結果を図5の表1に示す。例の1つであるGa0.95In0.05Asは、90cm/Vsの移動度を有する3.5×1018cm-3のnドーピングを提供し、例のもう1つであるGa0.83In0.17Asは、87cm/Vsの移動度を有する2.80×1018cm-3のnドーピングを提供する。
【0042】
上述のように処理された材料の構造品質を調べる場合、構造品質はおそらく改善され得る。(111)GaAsに関して従来技術を参照すると、従来技術は、最適な成長温度が約670℃であることを示唆している。これは、核生成層が高レベルのSbを必要とする場合、580℃を超えて成長することが不可能な(111)Si上では不可能であり得る。本発明者らは、(111)Si基板上にIII-V材料を成長させる場合、Sbが核生成層の好ましい部分であることを確認した。
【0043】
さらに、Sb拡散は核生成層からSbを除去し、III-V材料にボイドまたは欠陥を生成するので、高構造品質を得る場合には、高すぎる温度でのアニーリングも賢明ではない。
【0044】
上述のように、ドーピングは、アクセプタまたはドナーとして作用し得るIII-V構造内の欠陥を引き起こす可能性があり、その結果、意図しないドーピングが生じる。したがって、III-V族材料の欠陥および/またはドーピングレベルを制御することは、これらの構造を異なる用途に利用する場合に有利である。
【0045】
n型ドーピングを使用することは、(111)Si上に成長させたIII-V材料を使用する多くの用途にとって重要である。これらの用途には、たとえば、太陽電池、光検出器、半導体レーザおよび高電子移動度トランジスタ(HEMT)が含まれる。
【0046】
(111)Si上に成長させたIII-V族材料のnドーピングのプロセスは、従来技術において論じられている。たとえば、[2](111)SiでのT.Kawaiは、Asを使用してシリコン上のファセットのないAlAsおよびGaAsを首尾よく成長させることができることを示したが、Asのオンドーピングの効果は試験されなかった。GaAs(100)基板上へのGaAsのドーピングは、異なるAsおよびGaフラックスを使用してK.Winerら[3]によって調査され、Ga/Asフラックス比に依存することが示された。Yamamotoら[1]は、誤配向した(111)GaAs上のSiドープAlAs層を調査し、誤配向が3度未満の場合にドーピング効率が低下し、(111)軸上成長で高い電気抵抗を有することを見出した。
【0047】
本発明の(111)Si上の成長プロセスは、単原子ヒ素、AsおよびAs分子を含むがこれらに限定されない異なるヒ素フラックス組成物の混合物の例を使用することを含む。成長中、nドーピングを有する完全なIII-V族材料構造を構成する他の材料が添加される。これらの材料には、ガリウム、アルミニウム、インジウム、ヒ素、およびnドーピング(シリコン)が含まれ(ただし、これらに限定されない)、アンチモンの添加は任意である。III-V構造では、シリコンがnドーパント剤を構成しているが、他のnドーパント剤と交換することもできる。
【0048】
本発明の実施形態の一例によれば、規則的または不規則な成長停止で、ランダム化され得る成長停止が、ヒ素フラックス下で特定の間隔で導入され、それによって半導体材料のヒ素含有量を増加させる。
【0049】
本発明の方法で得られた結果は、2×1014cm-3~3.6×1016cm-3の間隔で真性pドーピングを有する(111)Si基板上の意図しないドープIII-V材料を提供する。これは、これらの材料の制御されたn型ドーピングを提供するときの良好な出発点であり、nドーパント補償ドーピングは、より低いレベルの意図しないpドーピングに起因して可能であり、材料の正味のn型ドーピングをもたらす。さらに興味深い態様は、本発明に従って成長させた材料組成物の例のn型ドーピングがより低い移動度を提供し得るが、これは、高すぎる材料のオーム抵抗をもたらさないことである。
【0050】
さらに、高すぎる温度でのアニーリングは、Sb拡散が核生成層からSbを除去し、III-V材料にボイドまたは欠陥を生成するので、高い構造品質を提供しない可能性がある。Sbを適用する場合、成長温度は580℃を超えてはならない。
【0051】
III-V族材料を成長させる別の態様は、得られる半導体が太陽電池(および他の用途でも)に使用される場合、半導体の表面が平坦でなければならないことである。たとえば結晶ファセットを回避することは、本発明による成長プロセスで使用されるIII-V族材料にインジウムを添加することによって可能である。インジウムの好ましいat%量は、1.1at%~21.4at%の区間である。より具体的には、Inは、1.1at%、1.2at%、1.4at%、2.2at%、2.4at%、2.6at%、2.9at%、3.3at%、3.9at%、4.2at%、4.6at%、5.6at%、7.1at%、8.3at%、10.0at%、14.3at%、16.7at%または21.4at%を含む量の群から選択される。これにより、得られる材料の欠陥が減少することが示されている。
【0052】
成長後アニーリング後の意図しないpドープサンプルは、アクセプタまたはドナーとして作用するIII-V構造の欠陥によって引き起こされることが知られており、意図しないpドープがその結果である。したがって、III-V族材料の欠陥および/またはドーピングレベルを制御することは、これらの構造を異なる用途に利用する場合に有利である。
【0053】
MBE成長に関する別の考慮事項は、ミスカット結晶に対してオンカット(111)Si結晶を成長させることである。本発明の実施形態の例では、シリコン表面上の段差の存在を防止するオンカット結晶が好ましい(図6a参照)。表面のそのような段差は、高さが1つの単層または数層の単層のいずれかである。後者の場合、これらの段差は、成長した結晶に欠陥をもたらす可能性がある。オンカット結晶の場合、段差がないと表面上の3D様成長をもたらす(図6b参照)。たとえば、(111)Si表面の上に核生成層AlAsSbの成長を開始すると、これは表面上に島として現れる。これらの島は、最終的にそれらが出会うまでサイズが大きくなり、したがって表面全体を覆う。このような被覆が達成されると、成長はガリウム含有材料による成長に移行する。ガリウムは、平坦な成長表面、したがって欠陥の低減を達成するために3D様成長を低減するのに役立つ。図11aの表2に開示されている平坦化層2および3も参照されたい。
【0054】
本発明の別の態様は、核生成層の意図しないnドーピングを回避することである。したがって、核生成層は別個に成長されるが、III-V族材料堆積は、核生成層の上方のより高い層にnドープされるべきである。
【0055】
さらに、「デジタル合金成長」と呼ばれる技術を使用することも本発明の範囲内である。これは、より薄いAlInAs層およびより薄いGaLnAs層を使用することを意味し、より高いAl含有量を有する層をもたらす。この手法の効果は、AlInAs層をドープすることなくGaInAs層をドープできることである。Ron Kaspiらによる論文「Digital alloy growth in mixed As/Sb hetero-structures」、Journal of Crystal Growth、251巻、1~4冊、2003年4月、515~520ページを参照されたい。
【0056】
n型ドーピングを使用することは、(111)Si上に直接成長させたIII-V材料を使用する場合、多くの用途にとって重要である。これらの用途には、太陽電池、光検出器、半導体レーザおよび高電子移動度トランジスタ(HEMT)が含まれる。本発明による層の例を含む太陽電池構造を開示する図11aおよび図11bの表2を参照されたい。
【0057】
図7は、本発明の実施形態の一例におけるn型ドーピングの達成された結果の例を示す。ヒ素フラックスの関数としてのn型Ga0.83In0.17Asにおけるn型ドーピング濃度を示す。材料を430℃の温度で50nmの間隔で成長させ、それぞれの間隔の間で294秒成長を停止させる。ヒ素フラックスは常に存在し(適用され)、ガリウムおよびインジウムのフラックスは成長間隔中にのみ存在する(適用される)。異なるAs-フラックス濃度などを有する達成された移動度およびnドーピング濃度を開示する図5の表1も参照されたい。
【0058】
図8は、ヒ素フラックスの関数としてのn型Ga0.83In0.17Asにおける電子移動度の達成された例を示す。材料は、430℃の温度で50nmの厚さ間隔で成長され、それぞれの間隔の間で294秒成長を停止させる。ヒ素フラックスは常に存在するが、ガリウムおよびインジウムフラックスは成長間隔中にのみ存在する。相対的に低いフラックス速度が存在する場合、(図7に見られるように)ヒ素含有量が減少するために移動度は低く、相対的に中間のフラックス速度では移動度は80~90cm/Vsの範囲にある一方で、相対的に高いフラックス速度では移動度は再び減少する。図7と比較して、高いフラックス速度においてキャリア濃度は低下しない。これにより、移動度の低下は、キャリア濃度に影響を及ぼさない過剰なヒ素に関連する欠陥に起因する。
【0059】
成長停止の持続時間とAsフラックス濃度との間には関係がある。Asフラックス濃度が高いほど、成長停止の持続時間を短くすることができる。このようにして、Asフラックス濃度対成長停止持続時間を操作することが可能である。
【0060】
原則として、成長停止持続時間が長すぎる場合には害はない。しかし、エピタキシャル成長の持続時間が長いと、MBE室内の不純物が材料サンプルに取り込まれる傾向がある。これは、MBE機械自体内の不純物が結果として生じる材料構造に欠陥を誘発し、したがって意図しないドーピングを引き起こす可能性があるという周知の問題である。したがって、より高いAsフラックス濃度でより短い成長停止が好ましい。たとえば、図7を参照されたい。
【0061】
図9は、成長温度の関数としてのn型Ga0.83In0.17Asにおける電子移動度の達成された例を示す。材料は、2.0×-5 Torrのヒ素フラックスで50nm間隔で成長され、間隔の間で294秒成長を停止させる。ヒ素フラックスは常に存在するが、ガリウムおよびインジウムフラックスは成長間隔中にのみ存在する。375℃で成長させたサンプルの例では、そのサンプルの抵抗率が高いため、適切な測定ができなかった。これは、低い移動度値および/または低いキャリア濃度を示唆しており、0cm/Vsの点として上記のプロットに示されている。430℃では、移動度はより高い値(87cm/Vs)に達し、500℃では大幅な低下をもたらさない。図5の表1を参照すると、Ga0.83In0.17Asのキャリア濃度は500℃でより低い。同じ表1は、キャリア濃度の減少を打ち消すことができ、さらには増加させることができることを示唆している。これらの温度で成長させるときのインジウム含有量の低下は、これらの効果を提供する。
【0062】
図10は、本発明による材料サンプルを製造するときのセットアップの例を示す。
【0063】
それぞれの材料源は、固体源または固体源とガス源との組合せであり得る。そのような機械は、CVD(化学気相成長)堆積、または従来技術で知られているMOCVD(有機金属気相成長)を利用することができる。
【0064】
図11aは、太陽電池設計の5つの異なる材料サンプルのそれぞれの層の材料組成物の例を開示している。図11bは、それぞれの層の簡単な説明を与える。
【0065】
サンプルは、走査電子顕微鏡(SEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)で行われる半導体分析技術である電子線誘起電流(EBIC)技術で試験されている。これは、半導体内の埋め込み接合または欠陥を識別するため、または従来技術で知られている少数キャリア特性を調べるために使用される。
【0066】
たとえば、太陽電池では、光の光子がセル全体に当たることで、エネルギーが送られ、電子正孔対が生成され、電流が流れる。EBICでは、エネルギー電子が光子の役割を果たし、EBIC電流が流れる。
【0067】
図11aの表2を参照すると、サンプルは10kev線で調査されている。KanayaおよびOkayamaは、線の侵入深さについて以下の式を開発した。
【0068】
式は次のとおりである。
【数1】

式中、RKOはμmの電子範囲であり、Aは原子量(g/モル)であり、Zは原子番号であり、ρは密度(g/cm)であり、Eは線エネルギー(keV)である。
【0069】
図11aの層の例でこの式を使用して、電子は、0.8μmから0.9μm透過するように計算される。これは、電流が主にIII-V層に由来することを意味する。
【0070】
本発明の実施形態の一例によれば、(111)Si基板上にIII-V族材料を成長させることを含む分子線エピタキシ(MBE)成長プロセスにおいて制御可能なnドーピングを提供する方法であって、核生成層がIII-Sb族材料を含む方法は、
-核生成層を成長させることと、その後、
-連続的に流れるヒ素フラックスを(111)Si基板の成長界面に向けることと、
-第1のステップにおいてIII-V族材料の堆積が行われ、続いて第2のステップにおいてIII-V族材料の堆積が停止される期間を含むステップにおいてIII-V族材料を堆積させることと、
-最終材料組成物が成長するまでヒ素フラックスが連続的に流れている間に、第1のステップおよび第2のステップに従ってIII-V族材料の堆積を継続することと、
-エピタキシャル成長プロセスの温度を300℃~580℃の間隔に維持することと、を含み、
-堆積された材料は、2×1014cm-3~3.6×1016cm-3の間隔で得られたp型ドーピング濃度で、室温で1.6×10cm/Vs以上の移動度で非意図的にドープされ、nドーピング剤による補償ドーピングを可能にする。
【0071】
さらに、補償nドーパント剤は、第1のステップにおいてIII-V族材料と同時に堆積されて、nドープ材料をもたらすことができる。
【0072】
さらに、nドーピング濃度は、16×1017cm-3~3.5×1018cm-3の間隔であってもよい。
【0073】
さらに、nドーパント剤は、シリコン、硫黄、テルル、スズ、ゲルマニウム、セレンを含む群からのものであってもよい。
【0074】
さらに、ヒ素フラックス源は、600℃~900℃の範囲の温度制御クラッカーを備えた固体As源によって提供される。
【0075】
また、源からのヒ素フラックス濃度は、AsとAsの混合物である。
【0076】
また、クラッカー温度が600℃に近づくとAsの濃度はAsの濃度より高くなり、クラッカー温度が900℃に近づくとAsの濃度はAsの濃度より低くなる。
【0077】
さらに、線等価圧力(BEP)を使用して測定された非核生成層中のヒ素フラックス濃度は、少なくとも1.33322×10-5mbar(1.00×10-5T)から3.99967×10-5mbar(3×10-5T)の間、または3.99967×10-5mbar(3×10-5T)を超える。
【0078】
さらに、インジウムは、1.1at%~21.4at%の量で堆積されるIII-V族材料のうちの1つであってもよい。
【0079】
さらに、インジウムは、1.1at%、1.2at%、1.4at%、2.2at%、2.4at%、2.6at%、2.9at%、3.3at%、3.9at%、4.2at%、4.6at%、5.6at%、7.1at%、8.3at%、10.0at%、14.3at%、16.7at%、または21.4at%の量のうちの1つに応じた量で堆積されるIII-V族材料のうちの1つであってもよい。
【0080】
さらに、本発明による方法の第1のステップおよび第2のステップによるIII-V族材料の堆積を継続することは、周期的に行うことができる。
【0081】
さらに、成長停止の期間は、ランダム化された不規則な間隔で現れる場合がある。
【0082】
さらに、As源からのより高いAsフラックス濃度は、より短い成長停止を可能にし得る。
【0083】
さらに、成長停止の期間は、20~500秒の長さであり得る。
【0084】
さらに、核生成層は、20at%未満の量のAsを含む。
【0085】
さらに、(111)Si基板は、(111)Si基板表面上に段差を提供するミスカット角を有してもよく、各段差の高さは分子の1つの単層以下である。
【0086】
また、(111)Si基板は、オンカット結晶であってもよい。
【0087】
さらに、エピタキシャル成長プロセスは、デジタル合金成長タイプとすることができる。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b