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特許7665610液体触媒配合物を使用したラクチドを重合する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】液体触媒配合物を使用したラクチドを重合する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20250414BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/08
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2022525562
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2020082045
(87)【国際公開番号】W WO2021094525
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-03
(31)【優先権主張番号】19209447.2
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521488358
【氏名又は名称】トタルエナジーズ コービオン ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ゴビアス デュ サル,ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッドソン,マシュー,グウィリム
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック,ストラッチャン
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166303(JP,A)
【文献】特開平11-060713(JP,A)
【文献】特表2018-532849(JP,A)
【文献】特表2017-515805(JP,A)
【文献】特表2014-505027(JP,A)
【文献】特表2011-529518(JP,A)
【文献】特表2016-516872(JP,A)
【文献】国際公開第2014/177543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチドを重合する方法であって、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップであって、この液体触媒配合物は上記の触媒、開始剤及びラクチドを混合してスラリーを形成し、このスラリーを加熱することによって調製される、ステップ、
b)ステップa)において調製した前記液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含み、
前記触媒は、金属配位化合物であり、
金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
前記化合物の親配位子は、式(I)
【化1】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される、方法。
【請求項2】
前記配合物中のラクチドと触媒のモル比が、50:1~500:1で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配合物中のラクチドと触媒のモル比が100:1~250:1で構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記配合物中の開始剤と触媒のモル比が50:1~500:1で構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記配合物中の開始剤と触媒のモル比が100:1~250:1で構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記配合物中のラクチドと開始剤のモル比が、1:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリーを150~200℃で構成される温度へと加熱して液体触媒配合物を得る請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーを170~190℃で構成される温度へと加熱して液体触媒配合物を得る請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリーが10~120分加熱されて液体触媒配合物が得られる請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリーが30~60分加熱されて液体触媒配合物が得られる請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1、R2、R3、R4、R5、及びR6が、ハロゲン又はヒドロキシルからそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記開始剤がアルコールである請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記開始剤がベンジルアルコール、1-ヘキサノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール及び1-ドデカノールを含む群から選択されるアルコールである請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記開始剤がベンジルアルコールである請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)において提供されるラクチドと触媒のモル比が100,000:1~1,000:1の範囲である請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップb)において提供されるラクチドと触媒のモル比が80,000:1~2,000:1の範囲である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップb)において提供されるラクチドと触媒のモル比が60,000:1~5,000:1の範囲である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップb)において提供されるラクチドと開始剤のモル比が1500:1~2.5:1の範囲である請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップb)において提供されるラクチドと開始剤のモル比が800:1~50:1の範囲である請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)において提供されるラクチドと開始剤のモル比が750:1~50:1の範囲である請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
金属重量として計算した方法における触媒濃度が1ppm~500ppmの範囲である請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
金属重量として計算した方法における触媒濃度が2ppm~200ppmの範囲である請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
金属重量として計算した方法における触媒濃度が5ppm~50ppmの範囲である請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
金属重量として計算した方法における触媒濃度が8ppm~25ppmの範囲である請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
重合が、外来の溶媒の非存在下でステップb)において行われる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ラクチドが少なくとも100℃の温度にて前記液体触媒配合物の存在下で重合される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ラクチドが少なくとも130℃の温度にて前記液体触媒配合物の存在下で重合される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ラクチドが130~240℃で構成される温度にて前記液体触媒配合物の存在下で重合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ラクチドが140~220℃で構成される温度にて前記液体触媒配合物の存在下で重合される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリラクチドの調製のための方法、特に、液体触媒配合物の存在下でラクチド溶融重合によってポリラクチドを調製する方法に関する。本発明はまた、ラクチドを重合するための液体触媒配合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在多くの注目が、ポリ乳酸とまた称され、PLAとして略される、ポリラクチドに専ら向けられている。PLAは、本質的に再生可能資源から製造することができる脂肪族ポリエステルである。このような製造は、デンプン、糖又は他の再生可能な有機基質が乳酸へと発酵することが関与し得る。
【0003】
PLAは、原則として、乳酸、すなわち、乳酸モノマーの直接の重縮合によって合成することができる。しかし、これは、高分子量へと容易に達しないという欠点を有する。
【0004】
したがって、PLAは通常、乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合(ROP)によって調製され、ラクチドは、通常、PLAオリゴマーへの乳酸の重縮合、それに続く、適切な触媒の存在下での、いわゆる、「バックバイティング」機序によるこれらのオリゴマーの脱重合によって製造される。精製の後、生成されたラクチドは、重合触媒の存在下での開環重合反応(ROP)を用いて制御された分子量のPLAへと変換することができる。開環重合は、重合プロセス、及びそれによって生成されたPLAの構造を制御することを可能とする。この方法を使用して、高分子量のPLAを製造することができる。
【0005】
ラクチド重合のための豊富な有望な触媒が存在し、これらの多くは不溶性錯体に依存している。典型的には、このような触媒は、溶媒又は固体状態条件下でバッチスケールで用いられる。
例えば、化合物スズオクトエート又は第一スズオクトエート又は(従来技術においてSn(Oct)2又は第一スズビス(2-エチル-ヘキサノエート)とまた称される)は、工業的大容量条件下でのPLAの製造における重合触媒として周知である。国際公開第2009/121830号パンフレットは、例えば、ポリラクチドを調製する方法について記載しており、ここでは、スズオクトエートは重合触媒として使用される。重合条件が適正に選択されるとき、この方法を用いて高品質のPLAを得ることができる。このような条件下で、ラクチドからPLAへのプロセスにおける触媒としてのスズオクトエートの使用は、望ましい速い重合速度をもたらし、相対的に高い溶融物の安定性及び低いラセミ化速度を有するポリマー樹脂を可能とする。
【0006】
別の例は、ラクチドの開環重合のための活性触媒としての金属配位化合物の使用について報告している国際公開第2014/177543号パンフレットである。その一例は、双性イオン性ジルコニウム(IV)錯体である。この文献において開示されている重合反応は、ラクチドとこの触媒とを混合し、反応混合物を得て、ラクチドが重合され、次いで、少なくとも150℃の温度にて液体状態のポリラクチドを得ることへと進むことからなる。それに続いて、ポリラクチドは凝固及び回収される。触媒を固体状態の(粉末として)混合物に加え、使用の間にラクチドモノマー溶融物中で溶解する。
【0007】
上記の触媒系は最適化された重合条件下で良好に機能し得るが、異なる又は改善された特性又は特徴を有するPLAグレードの製造における可能性を広げるために、代替の重合方法及び触媒系における大きな関心が存在するように思われる。さらに、ラクチドの重合のための、及びその中で使用するための改善された触媒系のための改善された方法を見出すという絶え間ない需要が当技術分野において依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/121830号パンフレット
【文献】国際公開第2014/177543号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、ラクチドの重合のための、及びその中で使用するための改善された触媒系のための、改善された方法を提供することにある。特に、より効率的であり、且つ/又は改善された反応動態を示す重合プロセスを提供することは本発明の目的である。本発明の別の目的は、使用するのに好都合及び効率的である、ラクチドの重合において使用するための触媒系を提供することである。固体重合触媒を使用してポリラクチドを調製することを可能とする重合プロセスを提供することはまた本発明の目的である。明確な特性を有するポリラクチドを調製することを可能とする重合プロセスを提供することはまた本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の必要性及び目的は、本明細書に定義されているようなラクチドの重合のための方法によって、及び本明細書に定義されているような液体触媒配合物の使用によって、個々に又は任意の組合せで達成することができることが今や驚いたことに見出されてきた。
【0011】
特に、第1の態様によれば、本発明は、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合する方法に関する。
【0012】
本発明は、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合する方法を提供し、
ここで、触媒は、金属配位化合物であり、
ここで、金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
ここで、前記化合物の親配位子は、式(I)
【化1】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0013】
別の態様において、本発明は、本明細書に定義されているような触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、ラクチドを重合するための本発明による液体触媒配合物の使用に関する。
【0015】
本発明は、本発明による方法によって得られるか、又は得ることができるポリラクチドをさらに提供する。
【0016】
(少量の)ラクチド及び開始剤との予備反応によって、さもなければ不溶性である触媒錯体を配合することが可能であることを本発明者らは今や見出した。これは、容易に投入され、ラクチドの溶融重合プロセスへと加えて、非常に速いROP動態を実現し得る、安定な液体触媒配合物を生じさせることを可能とする。このような液体配合物が適用される本発明による方法で得られる反応動態は、従来技術の反応について報告されるものよりかなり高い。したがって、本発明による重合プロセスは有利に、ポリラクチドの調製において固体重合触媒を使用することを可能とする。本発明による方法のある特定の実施形態では、液体触媒配合物は、ステップa)において固体形態で提供される触媒と開始剤及びラクチドとを混合することによって調製される。
【0017】
本発明による方法において適用されるような液体触媒配合物は、安定な液体である。本方法によって行われるように産業的に関連性のある重合条件下で溶融したラクチドへと導入されたとき、触媒配合物は、著しく低い金属濃度で触媒誘導期間を伴わずに、極度に速く予測可能な動態を実現する。したがって、本発明による方法は、明確な特性、例えば、明確な分子量及び/又は低い多分散性のポリ乳酸を生じさせる。
【0018】
このアプローチの別の利点は、重合プロセスにおいて用いられる反応物のみが本方法において使用されていることである。驚いたことに、本発明による重合プロセスは、重合ステップの間にさらなる(外来の)反応物、例えば、外来の溶媒又はさらなる開始剤を加えることを伴わずに実行し得ることをこれは意味する。
【0019】
独立請求項及び従属請求項は、本発明の特定及び好ましい特色を説明する。従属請求項からの特色は、独立請求項又は他の従属請求項の特色を必要に応じて合わせ得る。
【0020】
本発明の上記及び他の特徴、特色及び利点は、例として、本発明の原理を例示する添付図面に関連してなされる、下記の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による液体触媒配合物を調製するために使用される反応スキームを示す。用語「錯体1」は、図1において使用されるように、実施例1において記載されたようなZr配位化合物を指す。
図2】比較重合反応と比較した、本発明による重合反応についての時間の関数として形成されたPLAの量をプロットするグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について記載するとき、使用される用語は、文脈が他に指示しない限り、下記の定義によって解釈される。
【0023】
別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含めた本発明の開示において使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するような意味を有する。さらなるガイダンスによって、用語の定義は本発明の教示をより良好に認識するために含められる。
【0024】
下記の節において、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。このように定義された各態様は、明らかに逆の記載がない限り、任意の他の態様と合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特色は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特色と合わせてもよい。
【0025】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載する特定の特色、構造又は特徴が、少なくとも本発明の一実施形態において含まれることを意味する。このように、本明細書を通して様々な場所における語句「一実施形態では」又は「実施形態では」の出現は、同じ実施形態を必ずしも全てが参照しないが、参照し得る。さらに、特定の特色、構造又は特徴は、1つ若しくは複数の実施形態では、本開示から当業者には明らかであろうように任意の適切な様式で合わせ得る。さらに、本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特色ではなくいくつかの特色を含む一方、異なる実施形態の特色の組合せは、本発明の範囲内であることを意味し、当業者が理解するように異なる実施形態を形成する。
【0026】
用語「含むこと」、「含む」及び「から成る」は、本明細書において使用するように、「含めること」、「含める」又は「含有すること」、「含有する」と同義であり、包括的又は拡張可能であり、さらなる列挙しないメンバー、要素又は方法ステップを除外しない。用語「含むこと」、「含む」及び「から成る」は、本明細書において使用するように、用語「からなること」、「なる」及び「からなる」を含むことを認識されたい。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するように、単数形「a」、「an,」及び「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、複数の参照対象を含む。例として、「ステップ」は、1つのステップ又は複数のステップを意味する。
【0028】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書において参照する全ての公開資料は、それへの参照により組み込まれている。
【0029】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、全ての整数及び適切な場合には、その範囲内に包含される分数を含む(例えば、1~5は、例えば、いくつかの要素について言及するとき、1、2、3、4を含むことができ、且つまた、例えば、測定値について言及するとき、1.5、2、2.75及び3.80を含むことができる)。エンドポイントの列挙はまた、エンドポイント値自体を含む(例えば、1.0~5.0は、1.0及び5.0の両方を含む)。本明細書で列挙した任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を含むことを意図する。
【0030】
用語「約」は、本明細書において使用するように、測定可能な値、例えば、パラメーター、量、一時的持続時間などに言及するとき、このような変動が開示した本発明において行われることが適切である限り、指定した値の及び指定した値からの+/-10%若しくはそれ未満、好ましくは、+/-5%若しくはそれ未満、より好ましくは、+/-1%若しくはそれ未満の変動を包含することを意味する。修飾語「約」が参照する値は、それ自体また具体的には、及び好ましくは開示されることを理解すべきである。
【0031】
用語「置換されている」が本発明において使用されるときはいつでも、「置換されている」を使用した表現において示される原子上の1個若しくは複数の水素が、示された基から選択されたもので置き換えられているが、ただし、示された原子の通常の原子価を超えず、且つ置換が化学的に安定な化合物をもたらすことを示すことを意味する。基を置換することができる場合、このような基は、1個若しくは複数の、好ましくは、1個、2個又は3個の置換基で置換されていてもよい。
【0032】
上記の用語及び本明細書において使用される他の用語を、当業者はよく理解する。
【0033】
本発明の方法、配合物及び使用の好ましい記述(特色)及び実施形態を本明細書において下記で記載する。このように定義された本発明のそれぞれの記述及び実施形態は、明らかに逆の記載がない限り、任意の他の記述及び/又は実施形態と合わせ得る。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特色は、好ましい又は有利と示される任意の他の特色又は記述と合わせてもよい。ここで、本発明は、特に、任意の他の態様及び/又は実施形態を伴って、下記で番号付けされた記述及び実施形態の1つ若しくは複数の任意の1つ又は任意の組合せによって捕捉される。
【0034】
1.ラクチドを重合する方法であって、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、方法。
【0035】
2.ラクチドを重合する方法であって、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップであって、前記触媒が固体形態で適用され、配合物が作製されるステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、方法。
【0036】
3.ラクチドを重合する方法であって、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含み、
ここで、ステップa)において適用される触媒は、金属配位化合物であり、ここで、金属は、第IV族からであり、好ましくは、Zr又はHfの少なくとも1つである、方法。
【0037】
4.ラクチドを重合する方法であって、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含み、
ここで、触媒は、金属配位化合物であり、
ここで、金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
ここで、前記化合物の親配位子は、式(I)
【化2】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される、方法。
【0038】
5.前記配合物中のラクチドと触媒のモル比が、50:1~500:1で構成され、好ましくは、100:1~250:1で構成され、例えば、100:1;125:1;145:1;150:1;155:1;175:1;190:1;又は200:1である、記述1~4のいずれかに記載の方法。
【0039】
6.前記配合物中の開始剤と触媒のモル比が、50:1~500:1で構成され、好ましくは、100:1~250:1で構成され、例えば、100:1;125:1;145:1;150:1;155:1;175:1;190:1;又は200:1である、記述1~5のいずれかに記載の方法。
【0040】
7.前記配合物中のラクチドと開始剤のモル比が、1:1である、記述1~6のいずれかに記載の方法。
【0041】
8.前記液体触媒配合物が、触媒、開始剤及びラクチドを混合して、スラリーを形成することによって、並びに前記スラリーを150~200℃、例えば、170~190℃の温度へと加熱して、液体配合物を得ることによって調製される、記述1~7のいずれかに記載の方法。
【0042】
9.前記スラリーが、10~120分、好ましくは、30~60分加熱され、液体配合物が得られる、記述1~8のいずれかに記載の方法。
【0043】
10.前記液体触媒配合物が、ステップa)において固体形態で提供される触媒と開始剤及びラクチドとを混合することによって調製される、記述1~9のいずれかに記載の方法。
【0044】
11.触媒が、金属配位化合物である、記述1~10のいずれかに記載の方法。
【0045】
12.触媒が、金属配位化合物であり、金属が、Zr又はHfの少なくとも1つである、記述1~11のいずれかに記載の方法。
【0046】
13.触媒が、金属配位化合物であり、
ここで、金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
ここで、前記化合物の親配位子は、式(I)
【化3】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される、記述1~12のいずれかに記載の方法。
【0047】
14.前記金属が、Zrである、記述3~13のいずれかに記載の方法。
【0048】
15.R1、R2、R3、R4、R5、及びR6が、ハロゲン又はヒドロキシルからそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される、記述4~14のいずれかに記載の方法。
【0049】
16.R1、R2、R3、R4、R5、及びR6が、C1~10アルキルから、好ましくは、C1~4アルキルからそれぞれ独立に選択される、記述4~15のいずれかに記載の方法。
【0050】
17.R1、R2、R3、R4、R5、及びR6が、同じであり、t-ブチル又はメチル、好ましくは、メチルである、記述4~16のいずれかに記載の方法。
【0051】
18.前記開始剤が、アルコールである、記述1~17のいずれかに記載の方法。
【0052】
19.前記開始剤が、ベンジルアルコール、1-ヘキサノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール及び1-ドデカノールを含む群から選択されるアルコールであり、より好ましくは、ベンジルアルコールである、記述1~18のいずれかに記載の方法。
【0053】
20.ステップb)において提供されるラクチドと触媒のモル比が、100,000:1~1,000:1、好ましくは、80,000:1~2,000:1、又は好ましくは、60,000:1~5,000:1の範囲である、記述1~19のいずれかに記載の方法。
【0054】
21.ステップb)において提供されるラクチドと開始剤のモル比が、1500:1~2.5:1、好ましくは、800:1~50:1、又は好ましくは、750:1~50:1の範囲である、記述1~20のいずれかに記載の方法。
【0055】
22.金属重量として計算した方法における触媒濃度が、1ppm~500ppm、好ましくは、2ppm~200ppm、又は好ましくは、5ppm~50ppm、又は好ましくは、8ppm~25ppmの範囲である、記述1~21のいずれかに記載の方法。
【0056】
23.液体触媒配合物が、ステップb)において溶融したラクチドと接触する、記述1~22のいずれかに記載の方法。
【0057】
24.前記ラクチドが、少なくとも100℃、好ましくは、少なくとも130℃の温度にて、好ましくは、130~240℃で構成される温度にて、より好ましくは、140~220℃で構成される温度にて、前記液体触媒配合物の存在下で重合される、記述1~23のいずれかに記載の方法。
【0058】
25.重合が、外来の溶媒の非存在下でステップb)において行われる、記述1~24のいずれかに記載の方法。
【0059】
26.重合が、外来の開始剤の非存在下でステップb)において行われる、記述1~25のいずれかに記載の方法。
【0060】
27.さらなる外来の開始剤が、ステップb)における重合の間に加えられる、記述1~26のいずれかに記載の方法。
【0061】
28.ステップa)において液体触媒配合物を調製するために適用されるラクチドが、ステップb)において適用されるラクチドと同じである、記述1~27のいずれかに記載の方法。
【0062】
29.ステップa)において液体触媒配合物を調製するために適用されるラクチドが、ステップb)において適用されるラクチドと異なる、記述1~27のいずれかに記載の方法。
【0063】
30.前記配合物が、記述1~19のいずれかに記載されている、触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物。
【0064】
31.ラクチドを重合するための、記述30に記載の液体触媒配合物の使用。
【0065】
32.前記配合物が、100,000:1~1,000:1、好ましくは、80,000:1~2,000:1、又は好ましくは、60,000:1~5,000:1で構成される触媒とラクチドのモル比で適用される、記述31に記載の使用。
【0066】
33.記述1~29のいずれかに記載の方法によって得られるか、又は得ることができるポリラクチド。
【0067】
本発明は、溶液として配合される触媒系を、ラクチドの重合において効率的に使用し得るという驚くべき知見に基づく。より特に、本発明は、液体触媒配合物の使用に基づき、ここで、ある特定の量のラクチドは、明確なモル比の触媒及び開始剤と「予備反応」又は「予備重合」又は「予備接触」される。本発明において定義するような液体触媒配合物において、固体触媒は、この固体触媒と最初の量のラクチド及び開始剤とを反応させることによって反応的に可溶化する。この液体触媒配合物が産業的に関連性のある重合条件下で溶融したラクチドと接触したとき、このような液体触媒配合物は、著しく低い金属濃度で触媒誘導期間を伴わずに、極度に速い予測可能な動態を実現し、明確な特性のポリラクチドを生じさせることを本発明者らは示してきた。本発明によると、ポリラクチドの調製における不溶性重合触媒を使用することを有利に可能とする重合プロセスを提供する。本発明によると、固体形態で提供される重合触媒を使用することを有利に可能とする重合プロセスを提供する。
【0068】
本発明は、ラクチドモノマーの触媒重合によってポリラクチドを調製するための方法に関する。用語「ポリラクチド」、「PLA」及び「ポリ乳酸」は、本明細書において同義語として使用される。
【0069】
本発明は、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合するための方法を提供する。
【0070】
ある特定の実施形態では、本発明は、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップであって、前記触媒が固体形態で適用され、配合物が作製されるステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合するための方法を提供する。
【0071】
このように、本発明によるラクチドを重合する方法は、下記の順序で行われる2つの主要なステップを含む。第1に、本明細書に定義されているような触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物は、別々に調製される。次いで、第2に、この液体触媒配合物を、配合物の存在下でその重合のためにラクチド(モノマー)に加える。言い換えると、ステップa)は、ステップb)の前に行われる。ステップa)において調製される液体触媒配合物は、周囲温度(例えば、25℃)にて安定であり、したがって、ラクチドの重合反応において使用する前に容易に調製及び貯蔵し得る。
【0072】
本発明による方法における第1のステップは、したがって、液体触媒配合物の調製である。本明細書において使用するように、用語「配合物」は、「組成物」のための同義語として使用される。用語「液体触媒配合物」又は「液体触媒組成物」は、本明細書において使用するように、液体組成物、すなわち、溶液を指し、ここで、その成分、すなわち、触媒、開始剤及びラクチドは、可溶化形態である。液体触媒配合物及びその成分を、下記で詳細に記載する。
【0073】
本発明による方法の第2のステップにおいて、液体触媒配合物は、その重合のためにラクチド(ラクチドモノマー)と接触し、ポリラクチドが形成される。用語「接触させること」は、本明細書において、「加えること」又は「合わせること」又は「供給すること」又は「混合すること」又は「補給すること」のための同義語として使用され、後者の重合のためのラクチドへの本明細書に定義されているような配合物の添加を指すことを意図する。
【0074】
ラクチドは、ジアステレオマー関係を有する3つの異なる幾何構造で存在し得ることが留意される。本発明の方法において使用されるようなラクチドは、L-ラクチド(2個のL-乳酸分子に由来する)、D-ラクチド(2個のD-乳酸分子に由来する)、meso-ラクチド(L-乳酸分子及びD-乳酸分子に由来する)、又は上記の2つ若しくはそれより多いものの混合物であり得る。約126℃の融点を有するL-ラクチド及びD-ラクチドの50/50混合物は、文献において、D,L-ラクチド又はラセミラクチドと言及されることが多い(本明細書において「rac-ラクチド」又は「ラセミラクチド」又は「rac-ラクチド」とまた示される)。上記のラクチドの混合物はまた、この方法における使用に適している。
【0075】
一部の実施形態では、出発材料として使用されるラクチドは、50重量%までの他のラクチドを伴うL-ラクチドである。例えば、出発材料として使用されるラクチドは、50~10%のD-ラクチドを含有するL-ラクチドであり得る。他の実施形態では、ラクチドは、実質的に純粋なL-ラクチドであり、ここで、実質的に純粋という言い回しは、これが10重量%までの他のラクチド、例えば、5重量%まで、又は1重量%までを含有し得ることを意味する。別の実施形態では、ラクチドは、実質的に純粋なD-ラクチドであり、ここで、実質的に純粋という言い回しは、これが10重量%までの他のラクチド、例えば、5重量%まで、又は1重量%までを含有し得ることを意味する。
【0076】
本発明のある特定の実施形態では、方法のステップa)において液体触媒配合物を調製するために適用されるラクチドは、本明細書において提供されるような方法の重合ステップb)において適用されるラクチドと同じである。本発明のある特定の他の実施形態では、方法のステップa)において液体触媒配合物を調製するために適用されるラクチドは、本明細書において提供されるような方法の重合ステップb)において適用されるラクチドと同じでない。
【0077】
一実施形態では、液体触媒配合物は、溶融状態であるラクチドと接触する。別の実施形態では、液体触媒配合物は、ステップb)において固体ラクチドと接触する。
【0078】
ラクチドは、少なくとも100℃、好ましくは、少なくとも130℃の温度にて前記液体触媒配合物の存在下で重合される。例えば、ラクチドは、130~240℃の温度にて、又はより好ましくは、140~220℃で構成される温度にて、前記液体触媒配合物の存在下で重合される。好ましくは、この重合ステップの間に、溶媒を加えない。言い換えると、重合は、ステップb)において外来の溶媒の非存在下で行われる。
【0079】
さらなる外来の開始剤を、ステップb)における重合反応の間に加えてもよいが、ステップa)を用いて既に提供された開始剤に加えて加える必要はない。言い換えると、重合は、ステップb)において外来の開始剤の非存在下で有利に実行することができる。ラクチドの重合における開始剤(求核試薬)の役割は、液体触媒配合物の溶媒相によって既に果たされ、このように、別々のさらなる開始剤が重合プロセスに投入される必要性を取り除く。しかし、本方法はまた、ステップb)における重合反応の間にさらなる外来の開始剤の添加を可能とする。
【0080】
本発明のある特定の実施形態では、本明細書に定義されているような液体触媒配合物の存在下でのラクチドの重合はまた、ラクチドモノマーと異なる他のモノマー、例えば、関連する環状エステル、例えば、グリコリドの存在下で実行し得る。重合ステップの間に加え得る別の有用な反応性モノマーは、例えば、カプロラクトンである。異なる用途のための貴重なコポリマーは、ラクチドと一緒にこれら又は関連する反応物を使用するとき、このように製造することができる。
【0081】
本明細書において提供するような液体触媒配合物は、触媒、開始剤及びラクチドを含み、好ましくは、これらからなる。特に、液体触媒配合物を提供し、ここで、これらの3つの成分は、明確な量及びモル比で提供される。
【0082】
一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒のモル比は、50:1~500:1で構成され、好ましくは、100:1~250:1で構成される。50:1~500:1の全ての個々の値及び部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される。例えば、前記配合物中のラクチドと触媒のモル比は、50:1;60:1;70:1;80:1;90:1;100:1;110:1;120:1;130:1;140:1;145:1;150:1;155:1;160:1;165:1の下限から、170:1;175:1;180:1;185:1;190:1;195:1;200:1;210:1;220:1;230:1;240:1;250:1;275:1;300:1;350:1;400:1;450:1;500:1の上限までであり得る。前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比の例には、これらに限定されないが、例えば、約100:1;約125:1;約145:1;約150:1;約155:1;約175:1;約190:1;又は約200:1が含まれる。
【0083】
一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(100:1)+/-10%;好ましくは、(100:1)+/-5%;より好ましくは、(100:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(125:1)+/-10%;好ましくは、(125:1)+/-5%;より好ましくは、(125:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(145:1)+/-10%;好ましくは、(145:1)+/-5%;より好ましくは、(145:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(150:1)+/-10%;好ましくは、(150:1)+/-5%;より好ましくは、(150:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(155:1)+/-10%;好ましくは、(155:1)+/-5%;より好ましくは、(155:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(175:1)+/-10%;好ましくは、(175:1)+/-5%;より好ましくは、(175:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(190:1)+/-10%;好ましくは、(190:1)+/-5%;より好ましくは、(190:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(200:1)+/-10%;好ましくは、(200:1)+/-5%;より好ましくは、(200:1)+/-1%が含まれる。
【0084】
一実施形態では、前記配合物中のラクチドと触媒の適切なモル比の例には、これらに限定されないが、例えば、100:1;125:1;145:1;150:1;155:1;175:1;190:1又は200:1が含まれる。
【0085】
別の実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒のモル比は、50:1~500:1で構成され、好ましくは、100:1~250:1で構成される。50:1~500:1の全ての個々の値及び部分範囲は、本明細書において含まれ、本明細書において開示される;例えば、前記配合物中の開始剤と触媒のモル比は、50:1;60:1;70:1;80:1;90:1;100:1;110:1;120:1;130:1;140:1;145:1;150:1;155:1;160:1;165:1の下限から、170:1;175:1;180:1;185:1;190:1;195:1;200:1;210:1;220:1;230:1;240:1;250:1;275:1;300:1;350:1;400:1;450:1;500:1の上限までであり得る。
【0086】
前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比の例には、これらに限定されないが、例えば、約100:1;約125:1;約145:1;約150:1;約155:1;約175:1;約190:1;又は約200:1が含まれる。
【0087】
一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(100:1)+/-10%;好ましくは、(100:1)+/-5%;より好ましくは、(100:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(125:1)+/-10%;好ましくは、(125:1)+/-5%;より好ましくは、(125:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(145:1)+/-10%;好ましくは、(145:1)+/-5%;より好ましくは、(145:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(150:1)+/-10%;好ましくは、(150:1)+/-5%;より好ましくは、(150:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(155:1)+/-10%;好ましくは、(155:1)+/-5%;より好ましくは、(155:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(175:1)+/-10%;好ましくは、(175:1)+/-5%;より好ましくは、(175:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(190:1)+/-10%;好ましくは、(190:1)+/-5%;より好ましくは、(190:1)+/-1%が含まれる。一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比には、これらに限定されないが、例えば、(200:1)+/-10%;好ましくは、(200:1)+/-5%;より好ましくは、(200:1)+/-1%が含まれる。
【0088】
一実施形態では、前記配合物中の開始剤と触媒の適切なモル比の例には、これらに限定されないが、例えば、100:1;125:1;145:1;150:1;155:1;175:1;190:1又は200:1が含まれる。
【0089】
別の実施形態では、前記配合物中のラクチドと開始剤のモル比は、約1:1、例えば、(1:1)+/-10%、又は例えば、(1:1)+/-5%、又は例えば、(1:1)+/-1%であり、又は例えば、1:1である。好ましくは、ラクチド及び開始剤は、前記配合物中に等モル量で適用される。
【0090】
一例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、約200:1であり;開始剤と触媒のモル比は、約200:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、約1:1である。一例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、(200:1)+/-10%、好ましくは、(200:1)+/-5%、より好ましくは、(200:1)+/-1%であり;開始剤と触媒のモル比は、(200:1)+/-10%、好ましくは、(200:1)+/-5%、より好ましくは、(200:1)+/-1%であり;ラクチドと開始剤のモル比は、(1:1)+/-10%、好ましくは、(1:1)+/-5%、より好ましくは、(1:1)+/-1%である。一例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、200:1であり;開始剤と触媒のモル比は、200:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、1:1である。
【0091】
別の例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、約150:1であり;開始剤と触媒のモル比は、約150:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、約1:1である。一例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、(150:1)+/-10%、好ましくは、(150:1)+/-5%、より好ましくは、(150:1)+/-1%であり;開始剤と触媒のモル比は、(150:1)+/-10%、好ましくは、(150:1)+/-5%、より好ましくは、(150:1)+/-1%であり;ラクチドと開始剤のモル比は、(1:1)+/-10%、好ましくは、(1:1)+/-5%、より好ましくは、(1:1)+/-1%である。別の例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、150:1であり;開始剤と触媒のモル比は、150:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、1:1である。
【0092】
別の例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、約100:1であり;開始剤と触媒のモル比は、約100:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、約1:1である。一例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、(100:1)+/-10%、好ましくは、(100:1)+/-5%、より好ましくは、(100:1)+/-1%であり;開始剤と触媒のモル比は、(100:1)+/-10%、好ましくは、(100:1)+/-5%、より好ましくは、(100:1)+/-1%であり;ラクチドと開始剤のモル比は、(1:1)+/-10%、好ましくは、(1:1)+/-5%、より好ましくは、(1:1)+/-1%である。別の例において、液体触媒配合物を提供し、ここで、ラクチドと触媒のモル比は、100:1であり;開始剤と触媒のモル比は、100:1であり、ラクチドと開始剤のモル比は、1:1である。
【0093】
本発明の液体触媒配合物は、本明細書に定義されているように触媒、開始剤及びラクチドを混合し、スラリーを形成することによって有利に調製し得る。次いで、このスラリーを加熱して、配合物を得る。スラリーを10~120分、例えば、30~60分、例えば、少なくとも20分間、少なくとも35分間、少なくとも40分間、少なくとも45分間、又は少なくとも50分間加熱し、液体配合物が得られる。スラリーは、150~200℃、例えば、170~190℃の温度へと、例えば、175℃又は180℃にて加熱して、液体配合物を得てもよい。
【0094】
液体触媒配合物中に含有される触媒は、ラクチドの重合に適した触媒である。用語「触媒」又は「触媒化合物」は、本明細書において互換的に使用される。
【0095】
一実施形態では、このような触媒は、金属配位化合物又は金属配位錯体又は金属配位子配位化合物である。用語「金属配位錯体」又は「金属配位化合物」又は「金属配位子配位化合物」は、本明細書において互換的に使用され、全ては、中心金属イオン及び1つ若しくは複数の周囲の結合した配位子からなる化合物を指す。
【0096】
ある特定の実施形態では、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合するための方法を提供し、
ここで、ステップa)において適用される触媒は、金属配位化合物であり、ここで、金属は、第IV族からであり、好ましくは、Zr又はHfの少なくとも1つである。
【0097】
好ましい実施形態では、本明細書において適用される触媒は、金属配位化合物であり、
ここで、金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
ここで、前記化合物の親配位子は、式(I)
【化4】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0098】
ある特定の実施形態では、
a)触媒、開始剤及びラクチドを含む液体触媒配合物を調製するステップと、
b)ステップa)において調製した液体触媒配合物とラクチドとを接触させ、前記ラクチドを前記液体触媒配合物の存在下で重合し、ポリラクチドを形成させるステップと
を含む、ラクチドを重合するための方法を提供し、
ここで、触媒は、金属配位化合物であり、
ここで、金属は、Zr又はHfの少なくとも1つであり、
ここで、前記化合物の親配位子は、式(I)
【化5】
に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~10アルキル、ハロC1~10アルキル、C1~10アルコキシ及びハロC1~10アルコキシからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10ヒドロカルビル基からなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0099】
Zr及びHfのそれぞれは、金属配位化合物において金属イオンとして結合している。金属配位子配位化合物において、配位子は、アニオン性、すなわち、負に帯電しており、ヒドロキシル基上のプロトンを欠いていることが留意される。その理由のため、式における配位子は、「親」配位子であることが示される。
【0100】
用語「ヒドロカルビル」、又は「C1~10ヒドロカルビル」又は「C1~10ヒドロカルビル基」は、本明細書において使用するように、C1~C10ノルマル、第二級、第三級、不飽和又は飽和、非芳香族、非環状又は環状炭化水素及びこれらの組合せを指す。したがって、この用語は、アルキル、アルケニル、及びアルキニルを含み、例えば、C1~10アルキル及びC2~10アルケニルを含み得る。
【0101】
用語「C1~10アルキル」は、基又は基の部分として、式Cn2n+1のヒドロカルビル基を指し、式中、nは、1~10の範囲の数である。アルキル基は、直鎖状若しくは分岐状であり得、本明細書において示されるように置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基は、1~6個の炭素原子、好ましくは、1~5個の炭素原子、好ましくは、1~4個の炭素原子、好ましくは、1~3個の炭素原子を含む。炭素原子に続いて添字が本明細書において使用されるとき、添字は、指名された基が含有し得る炭素原子の数を意味する。例えば、用語「C1~6アルキル」は、基又は基の部分として、式Cn2n+1のヒドロカルビル基を指し、式中、nは、1~6の範囲の数である。例えば、C1~6アルキルは、1~6個の炭素原子を有する全ての直鎖状若しくは分岐状アルキル基を含み、このように例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、2-メチル-エチル、ブチル並びにその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル);ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体などを含む。例えば、C1~4アルキルは、1~4個の炭素原子を有する全ての直鎖状若しくは分岐状アルキル基を含み、したがって、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、2-メチル-エチル、ブチル並びにその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチル)などを含む。好ましいアルキルは、メチル又はブチル、並びにその異性体であるn-ブチル、i-ブチル及びt-ブチルである。
【0102】
用語「アルケニル」又は「C2~10アルケニル」は、本明細書において使用するように、不飽和、すなわち、炭素-炭素、sp2二重結合の少なくとも1つの部位(通常、1~3つ、好ましくは、1つ)を有する、C2~C10ノルマル、第二級又は第三級、直鎖状又は環状、分岐状又は直線状炭化水素である。例には、これらに限定されないが、エチレン又はビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、シクロペンテニル(-C57)、及びシクロヘキセニル(-C69)が含まれる。二重結合は、シス又はトランス配置でよい。特定の実施形態では、アルケニルという用語は、本明細書において上記でさらに定義するようなC2~8炭化水素、またより特に、C2~6炭化水素を指す。好ましいアルケニルは、C2~4アルケニルである。
【0103】
本明細書において使用するように、及び他に記述しない限り、用語「アルコキシ」は、基又は基の部分として、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの、アルキル基が単結合を介して酸素原子に付着している置換基を指す。好ましいアルコキシは、C1~4アルコキシである。
【0104】
用語「ハロゲン」、又は「ハロ」は、基又は基の部分として、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードについての総称である。
【0105】
用語「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」は、本明細書において使用するように、基-OHを指す。
【0106】
本明細書において使用するように、用語「アリール」は、基又は基の部分として、親芳香族環系の炭素原子からの水素の除去によって得られる6~30個の炭素原子の芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基には、これらに限定されないが、一緒に縮合した1つの環、又は2つ若しくは3つの環が含まれ、基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来する。用語「親芳香族環系」は、単環式芳香族環系又は二環式若しくは三環式環系を意味し、このうち少なくとも1個の環は、芳香族である。したがって、この実施形態では、典型的なアリール基には、これらに限定されないが、一緒に縮合した1つの環、又は2つ若しくは3つの環が含まれ、基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、5,6,7,8-テトロヒドロナフタレニル、1,2,6,7,8,8a-ヘキサヒドロアセナフチレニル、1,2-ジヒドロアセナフチレニルなどに由来する。特定のアリール基は、フェニル及びナフチル、特に、フェニルである。
【0107】
用語「アリールアルキル」又は「アリールアルキル」は、本明細書において使用するように、炭素原子、典型的には、末端又はsp3炭素原子に結合している水素原子の1つが、アリール基で置き換えられている非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、これらに限定されないが、ベンジル、2-フェニルエタンー1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエチルなどが含まれる。アリールアルキル基は、6~20個の炭素原子を含み、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は、1~6個の炭素原子であり、アリール部分は、5~14個の炭素原子である。
【0108】
好ましい実施形態では、触媒を提供し、ここで、金属は、Zrである。別の好ましい実施形態では、触媒を提供し、ここで、金属は、Hfである。
【0109】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、ハロゲン又はヒドロキシルからそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される。
【0110】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、C1~10アルキル、好ましくは、C1~6アルキル、より好ましくは、C1~4アルキルからそれぞれ独立に選択される。
【0111】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、同じであり、且つハロゲン又はヒドロキシルからそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、H、ハロゲン、-NO2及びC1~10アルキルからなる群から選択される。
【0112】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1及びR2は、同一である。一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R3及びR4は、同一である。一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R5及びR6は、同一である。一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、同一である。
【0113】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、同じであり、且つC1~10アルキル、好ましくは、C1~6アルキル、より好ましくは、C1~4アルキルから選択される。
【0114】
一実施形態では、触媒を提供し、ここで、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、同じであり、且つt-ブチル又はメチル、好ましくは、メチルである。
【0115】
適切な配位子の具体例は、例えば、トリス-(-3.5-ジtert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)アミン及びトリス-(-3.5-ジメチル-2-ヒドロキシベンジル)アミンを含む。
【0116】
本発明による適切な触媒の具体例は、例えば、式(II)
【化6】
によって表される。
【0117】
この特定の実施形態では、1つの金属中心は、2個の配位子と配位している。これは、いわゆる、双性イオン性構造の形成をもたらす。1つの金属中心が2個の配位子と錯体形成している双性イオン性構造は、それ自体重合開始基を含有しない。むしろ、錯体は、より高い温度にてより活性な種を形成することが予想され、これは実際の触媒中心を形成する。このタイプの配位子を有する金属配位子配位化合物は、それらの単純で直接の生成及び貯蔵条件下での化合物の安定性を考慮して本発明の状況において特に興味深い。
【0118】
本液体触媒配合物は、開始剤を含む。用語「開始剤」又は「共開始剤」は、本明細書において互換的に使用される。本発明の状況において、この化合物は、反応の重合速度を増加させ、得られた重合生成物の分子量の制御を実現する。本方法に従って、開始剤を、液体触媒配合物中に加える。また、任意選択で、さらなる外来の開始剤を、重合ステップb)の間に反応混合物に加え得る。
【0119】
本発明による液体触媒配合物中で使用するための適切な開始剤は、アルコールを含み得る。
【0120】
好ましい実施形態では、開始剤は、式R7-OHのアルコールであり、式中、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル及びC1~6アルキルからなる群から選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、C1~20アルキル、C6~30アリール、及びC6~30アリールC1~20アルキルからなる群から選択される。好ましくは、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル、及びC1~6アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、C3~12アルキル、C6~10アリール、及びC6~10アリールC1~12アルキルから選択され;好ましくは、R7は、ハロゲン、ヒドロキシル及びC1~4アルキルからなる群からそれぞれ独立に選択される1個若しくは複数の置換基で任意選択で置換されている、C3~12アルキル、C6~10アリール、及びC6~10アリールC1~12アルキルから選択される。共開始剤は、モノアルコールでよい。アルコールは、ポリオール、例えば、ジオール、トリオール又はより高い官能性の多価アルコールでよい。アルコールは、バイオマス、例えば、グリセロール又はプロパンジオール又は任意の他の糖をベースとするアルコール、例えば、エリスリトールに由来し得る。アルコールは、単独で又は別のアルコールと組み合わせて使用することができる。一実施形態では、共開始剤の非限定的例は、ベンジルアルコール、1-オクタノール、1-デカノール、イソプロパノール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン、2-ブタノール、3-ブテン-2-オール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、4-ブロモフェノール,1,4-ベンゼンジメタノール、及び(4-トリフルオロメチル)ベンジルアルコールを含み;好ましくは、前記化合物は、ベンジルアルコール、1-ヘキサノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール及び1-ドデカノールを含む群から選択される。共開始剤の特に適切な例は、ベンジルアルコールである。
【0121】
別の求核基、例えば、アミン基を有する同様の共開始剤をまた使用し得ることが理解される。巨大分子をまた、これらが適切な末端基、例えば、ヒドロキシル又はアミン末端基を含有する限り、共開始剤として使用し得る。
【0122】
本明細書において提供するような液体配合物において触媒化合物を使用するとき、非常に大量のラクチドを変換するのに単に微量の触媒が必要とされたことを本発明者らは驚いたことに見出した。一実施形態では、本発明による方法をこのように提供し、ここで、ラクチド(ステップbにおいて提供するような)と触媒(配合物中に存在する化合物)のモル比は、約1,000:1~約100,000:1でよい。例えば、前記ラクチドと前記触媒のモル比は、約2,000:1~約80,000:1でよい。例えば、前記触媒と前記ラクチドのモル比は、約3,000:1~約75,000:1;又は約5,000:1~約60,000:1でよい。例えば、前記ラクチドと前記触媒のモル比は、1,000:1~100,000:1;又は2,000:1~80,000:1でよい。例えば、前記触媒と前記ラクチドのモル比は、3,000:1~75,000:1;又は5,000:1~60,000:1でよい。
【0123】
本発明は、方法を提供し、ここで、ステップb)において提供されるラクチドと開始剤のモル比は、1.500:1~2.5:1、好ましくは、800:1~50:1又は好ましくは、750:1~50:1の範囲である。
【0124】
本発明による方法は、この方法において適用される触媒化合物に由来する金属の量が最小化されることをさらに特徴とする。本発明の実施形態では、ラクチドを重合するための方法をこのように提供し、ここで、金属重量として計算される方法における触媒濃度は、1ppm~500ppm、好ましくは、2~200ppm、より好ましくは、5~50ppm、最も好ましくは、10~25ppmの範囲である。金属の量は、これらに限定されないが、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分光法)などの現況技術において公知の通常の分析技術によってアセスメントし得る。
【0125】
本方法は、明確な特性のポリラクチドを調製することを可能とする。
【0126】
一実施形態では、本方法は、約4000~約200000g/molの範囲でよい数平均分子量Mnを有するポリラクチドの調製を可能とする。例えば、得られたポリラクチドのMnは、約5000~約100000g/molの範囲でよい。例えば、得られたポリラクチドのMnは、約6500~約75000g/molの範囲でよい。例えば、得られたポリラクチドのMnは、4000~200000g/mol、例えば、5000~100000g/mol又は6500~75000g/molの範囲でよい。
【0127】
一実施形態では、本方法は、約1.0~約2.0、例えば、1.0~2.0、又は例えば、1.0~1.5、又は例えば、1.0~1.4の分散度(Dストローク又は
【数1】
)を有するポリラクチドの調製を可能とする。
【0128】
本発明の方法は、ポリラクチドへのラクチドの効率的な変換を可能とする。一実施形態では、変換割合は、約70%~約100%でよく;例えば、変換割合は、約75%~約99%、又は約85%~99%でよい。例えば、変換割合は、70%~100%、又は75%~99%、又は85%~99%でよい。
【0129】
本発明の特定の実施形態の下記の非限定的な例示によって本発明をこれから例示する。
【実施例
【0130】
材料
下記の化学物質を使用した。
ラクチド:
L-ラクチド(Puralact L、≧99%(w/w))及びD-ラクチド(Puralact D、≧99%(w/w))は、Total Corbion PLAから得て、それ以上精製することなく使用した。
rac-ラクチド(L-ラクチド及びD-ラクチドの50/50混合物)(Sigma Aldrich、99%)は、本明細書において使用するように、乾燥トルエンから3回再結晶化し、真空中で乾燥させた。
【0131】
共開始剤:
ベンジルアルコール(Sigma Aldrich、無水、>99.8%)は、使用前に動的真空下で脱気し、乾燥窒素雰囲気下で貯蔵した。
【0132】
触媒:
スズオクトエート(Sigma、92.5~100.0%)を得て、それ自体として使用した。トルエン(Fisher、99.8+%)は、MBraun溶媒精製システムを使用して使用前に精製した。
【0133】
双性イオン性ジルコニウム化合物(本明細書で「錯体1」と称する)を、実施例1において説明したように調製した。
【0134】
分析
絶対分子量:
ポリマー分子量データは、三重検出(示差屈折計、粘度計及び二重アングル光散乱検出器(90°/15°、90°データを使用した)を備えたAgilent1260ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムを使用して取得した。PLgel 5μm MIXED Guard 50×7.5mmガードカラムと共に、PLgel 5μm MIXED-D 300×7.5mmカラムを使用した。移動相は1ml分-1の流量でのTHFであった。カラム及び検出器は35℃にて維持した。AgilentのGPC/SECソフトウェア、Revision A.02.01を使用してデータを加工した。他に記述しない限り、ポリマー試料はGPC分析の前に精製しなかった。
【0135】
n,secは、本明細書において使用するように、測定したMnである。
【0136】
n,theoは、本明細書において使用するように、本発明による触媒配合物との重合の場合、下記の等式
【数2】
に従った変換割合(変換%)及び開始剤濃度から計算した予測されるMnであり、式中、Mrは、g/molでの相対的分子量(ラクチドについて144,126、ベンジルアルコールについて108.14)を意味し、
ここで、LAは、ラクチドモノマーを意味し、
ここで、ROHは、本発明による配合物(及びステップb)の間に加える任意選択でさらなるアルコール種)によって重合混合物中に導入されるアルコール種を意味し、
ここで、
【数3】
は、最終重合混合物中のLA:ROHのモル比であり、モルでの総ラクチド量は、このように配合物中で使用されるラクチド及びさらなる重合反応において使用されるラクチドから成る。
【0137】
分散度は、等式
【数4】
を使用して計算することができ、式中、Mwは、重量平均モル質量であり、Mnは、数平均モル質量である。
【0138】
変換割合:
変換割合は、PLA(5.08~5.25ppm)及びラクチドモノマー(5.0~5.07ppm)のメチンプロトンの比を決定することによって、CDCl3中の粗生成物の1H-NMRスペクトルから計算される。NMRスペクトルは、他に記述しない限り、400MHz(1H)、101MHz(13C)Bruker Avance分光計を使用して取得した。16スキャンを使用して1Hスペクトルを取得した。CDCl3はSigma Aldrichから得て、ポリマー分析のために受入れたままで使用した。処理は、ACD/NMR Processor Academic Edition、バージョン12.01を使用して行った。
【0139】
反応動態:
in situでのATR-FTIR分光技術を使用して反応動態をモニターした。
【0140】
触媒の添加と同時に、リアルタイムATR-FT-IRデータの回収を開始した。ラクチド及びポリ(乳酸)濃度の定量化は、それぞれ、波数領域1203~1265cm-1及び1160~1200cm-1でのC-O-Cストレッチングモードに対応するATR-FT-IRシグナルの統合によって達成した。関連性のある波数に対応する曲線上のポイントの間の統合を実行した。さらなるデータ処理及び片対数プロットの構築をMicrosoft Excelを使用して実行した。
【0141】
in situでのATR-FT-IR反応モニタリング装置は、ラクチル基の数(PLA:ラクチド=それぞれ、0:100、20:80、40:60、60:40、80:20、及び100:0)に関して既知のモル組成のPLA及びrac-ラクチドの試料混合物を使用して較正した。各試料に対応する174℃でのATR-FT-IRスペクトルの取得に続いて、較正曲線を構築し、ラクチドシグナルの統合面積及びラクチドの濃度の間の関係を記述した。したがって、174℃でのrac-ラクチドシグナルの統合面積(1203~1265cm-1)及びrac-ラクチド濃度(mol%)の間の直線関係は、
[ラクチド]=2.7367a+10.938
によって記載され、式中、a=ラクチドシグナル統合面積である。
【0142】
較正のための174℃への加熱及びATR-FT-IRスペクトルの取得に続いて、混合物の組成が1H NMR分光法によって未変化であると確認した。
【0143】
TOF:
触媒のターンオーバー頻度又はTOFは、1モルの触媒当たり単位時間当たりで反応することができる基質のモル数を規定する。TOFは、
【数5】
として定義される。
【0144】
実施例1
触媒化合物(錯体1)の調製
本明細書において錯体1と称される式IIの双性イオン性ジルコニウム化合物を、下記のように調製した。
【化7】
【0145】
Zr配位化合物(式II)の親配位子(式I(式中、全てのR基は、メチルである)を参照されたい)は、ヘキサメチレンテトラミン(0.94g、6.66mmol)を2,4二置換フェノール(80mmol)及びパラホルムアルデヒド(3.00g、100mmol)の混合物に加えることによって調製した。次いで、溶液を48時間還流させ、このように得られた白色の粉末がメタノール及びエーテルから再結晶化した。
【0146】
次いで、Zr配位化合物を、室温にて2時間、等モル量のZr(OiPr)4(HOiPr)と配位子とを反応させることによって製造し、(再)結晶化の後、触媒化合物を得た。錯体1と称される固体双性イオン性ジルコニウム化合物を、それによって回収した。
【0147】
実施例2
液体触媒配合物の調製
下記の実施例は、本発明による液体触媒配合物の3つの実施形態の調製を例示する。
【0148】
異なる配合物、f1、f2及びf3において、rac-ラクチド(「材料」セクションを参照されたい)及びベンジルアルコールを、実施例1において調製したような、それぞれ、0.005、0.0067、及び0.010モル当量の錯体1(「固体双性イオン性ジルコニウム化合物」又は「固体Zr化合物」とまた称される)と一緒に不活性雰囲気下で等モル量で合わせ、スラリーを形成させた。
【0149】
配合物を下記のように調製した。乾燥アルゴン雰囲気を充填したグローブボックスにおいて、J YoungのPTFEタップを有する50mlのシュレンクフラスコに、0.347mmol(0.32g)の錯体1、34.7mmol(5g)のrac-ラクチド及び34.7mmol(3.6ml)のベンジルアルコール、BnOHを充填した。次いで、フラスコを密封し、グローブボックスから取り出し、透明な黄色の溶液、配合物f1が得られるまで油浴において激しく撹拌しながら180℃へと50分間加熱した。配合物f1は、周囲温度への冷却によっても液体のままであった。質量分析法は、f1の溶媒相が7までの乳酸単位のラクチルオリゴマーから成ったことを明らかにした。
【0150】
配合物f2及びf3は、配合物f1と同様の方法で調製し、それによって、使用した錯体1の量をそれに応じて調節し、上記で列挙したモル当量を得た。
【0151】
このように得られた配合物の溶媒相は、化学量論的ベンジルアルコールの存在下でのラクチドの開環、及びそれに続くエステル交換事象を介して形成されるオリゴラクチドのベンジルエステルを含有する。
【0152】
表1は、各配合物の調製のために適用される3つの液体触媒配合物のモル組成及び加熱時間を要約する。例示した液体触媒配合物を調製するために使用する反応スキームは、図1において表す。
【0153】
【表1】
【0154】
実施例3
ラクチドの重合
下記の例は、実施例2において開示したようなそれぞれの配合物の存在下での本発明の方法によるラクチドの重合を例示する。
【0155】
ラクチドの重合は、外側ジャケット内に熱流体を通過させることによって加熱した50mlのジャケット付きガラスバッチ反応器において行った。ラクチドをバッチ反応器に供給する前に、反応器をジクロロメタンで洗浄し、乾燥空気の流れ下で1時間乾燥させ、その間に、反応器を174℃へと加熱し、次いで、周囲温度へと冷却した。乾燥反応器に、20gのrac-ラクチド(「材料」セクションを参照されたい)を加えた。それに続いて、反応器を真空下(<1ミリバール)に15分間置いた。アルゴンを反応器に加えることによって真空状態を放出した。2回のさらなる真空状態/アルゴンサイクルを、冷たい反応器においてラクチドフレーク上で行い、周囲雰囲気の除去を確実にした。
【0156】
ラクチドをアルゴン雰囲気下にて174℃へと加熱し、ラクチド溶融物を形成させた。174℃へと到達すると、液体触媒配合物を反応器に加え、ラクチドの重合が進行した。温度を174℃にて確定した期間維持し、溶融物を40rpmで撹拌した。望ましい反応時間が経過した後、生成混合物を反応器からビーカーへと注ぎ、周囲温度へと冷却した。得られたPLAの試料を、分子量(GPC)及び残留するラクチドモノマー含量(1H NMR)に関して分析した。
【0157】
実施例IE1、IE2及びIE3は、実施例2において開示するような触媒配合物f1、f2及びf3をそれぞれ使用した、本発明による重合反応を表す。
【0158】
CE1は、ラクチド重合の比較例を表し、ここで、実施例IE1、IE2、及びIE3におけるのと同じ触媒を適用する。CE1において、触媒及び開始剤を反応器に個々に(別々に)投入した。また、触媒を固体形態(粉末)で反応器へと適用した。本発明による実施例におけるのと同じ反応条件(20gのラクチド及び174℃の温度)を適用した。
【0159】
表2aは、重合条件、触媒及び開始剤の濃度、並びに異なる反応についての得られた速度定数を要約する。表2bは、このように得られたポリラクチドの特性を要約する。
【0160】
【0161】
【0162】
この実施例の結果は、本発明による液体触媒配合物をラセミラクチドの重合において使用することができることを示す。触媒配合物f1、f2、及びf3は、Zr配位化合物及びアルコール性開始剤を様々な比で含有する(表1を参照されたい)。各重合反応において、ラクチドモノマー:開始剤の比は、77:1であった([ベンジルアルコール]=1.30mol%)。これは、100%変換での11200g mol-1の理論的分子量に対応する。最も速い重合動態は、配合物f2(rac-LA:BnOH:触媒化合物=150:150:1)で達成された。
【0163】
実施例4
ラクチドの重合
下記の例は、実施例2において開示するような触媒配合物f1の存在下での、本発明の方法によるラクチドの重合を例示する。ラセミラクチド(「材料」セクションを参照されたい)の重合反応は、実施例3において記載したように実行した。
【0164】
実施例IE1、IE4は、触媒配合物f1を使用した本発明による重合反応を表す。CE2及びCE3は、ラクチド重合の比較例を表し、ここで、液体スズオクトエート重合触媒を適用する。実施例IE1及びIE4におけるのと同じ反応条件を適用した。重合反応の間に外来の溶媒又は開始剤を加えなかった。
【0165】
表3aは、重合条件、触媒及び開始剤の濃度、並びに異なる反応についての得られた速度定数を要約する。表3bは、このように得られたポリラクチドの特性を要約する。
【0166】
異なる反応の重合反応動態を、図2において表す。
【0167】
【0168】
【表5】
【0169】
本発明によると、高いモル質量及び低い多分散性を有するポリラクチドを得た。実験的に得られたモル質量(Mn,sec)は、理論的に予想されるモル質量(Mn,theo)に合致した。本発明による方法は、著しく低い金属濃度で短い変換時間内にラクチドの高い変換を達成した。
【0170】
実施例5:
ラクチドの重合
下記の例は、様々な濃度の本発明による液体触媒配合物の存在下での本発明の方法によるラクチドの重合を例示する。ラセミラクチド(「材料」を参照されたい)の重合反応は、実施例3において記載するように行った。重合反応は、実施例2において記載するように、触媒配合物f1の存在下で行った。対照として、反応は、0.25mol%のベンジルアルコールの存在下であるが、触媒化合物の非存在下で実行した(対照を参照されたい)。
【0171】
表4aは、重合条件、触媒及び開始剤の濃度、並びに異なる反応についての得られた速度定数を要約する。表4bは、このように得られたポリラクチドの特性を要約する。
【0172】
【表6】
【0173】
【0174】
この実施例から、反応速度は、触媒配合物の濃度に対する一次依存を示したと結論付け得る。したがって、所与の触媒添加量での高収率重合のために必要とされる反応時間は、容易に計算することができる。分子量制御は一般に良好であり、様々なPLAポリマー生成物について記録された分散度は、全てのPLAポリマーについて非常に狭かった(概ね1.07~1.1)。
【0175】
実施例6:
L-ラクチドの重合
下記の例は、本発明による様々な液体触媒配合物の存在下での本発明の方法によるL-ラクチドの重合を例示する。この実施例において、配合物f1、f2、及びf3(実施例2を参照されたい)に従って調製した触媒配合物を、L-ラクチド(「材料」セクションを参照されたい)のROPに適用した。
【0176】
ラクチドの開環重合は、2リットルのバッチ反応器中で行った。ラクチドをバッチ反応器に供給する前に、反応器を3ミリバールの真空状態に供した。それに続いて、反応器に窒素を加えることによって真空状態を放出した。この真空状態/窒素サイクルを3回行って、残存する周囲雰囲気を除去した。乾燥反応器に、特定の量のL-ラクチドを反応器に加えた(表5aを参照されたい)。それに続いて、真空状態/窒素サイクルを冷たい反応器においてラクチドフレーク上で行った。次いで、反応器を130℃へと加熱した。L-ラクチドを窒素雰囲気下にて溶融した後、触媒配合物を加え、重合を開始した。溶融物の温度を180℃へと上昇させた。温度を下記で示した期間、180℃にて保持し(表5a)、溶融物を50rpmで撹拌した。反応の間に、一定分量(約10ml)の反応混合物を反応器から定期的に取り出し、氷上で冷却した。次いで、これらを周囲温度へと温めた。次いで、1H NMR分光法により(モノマー及びポリマーメチンシグナルの統合により)混合物を分析し、分子量データをGPCによって得た。これらのデータを動態解析のために使用した。THF中の高分子量PLLAの不溶性によって、粗試料を典型的には0.2mg ml-1へと希釈し、ポリスチレン標準に対して較正した屈折率検出器を使用し、0.58のマーク-フウィンク値の適用を伴って分子量データを決定した。
【0177】
IE10において適用した反応プロセスは、触媒配合物の注入の2時間後に、配合物のさらなる添加を行い(温度を全体を通して180℃にて維持した)、反応をさらに1.5時間進行させたことを除いては上記のものと変化させなかった。この反応からのGPCデータは、配合物のそれぞれの添加について、エステル交換は無視しても構わないことを示す、2つの開始事象に対応して二峰性であった。
【0178】
比較のために、本発明による重合反応を、ポリ-L-ラクチドが液体スズオクトエート(Sn(Oct)2)触媒の存在下で形成された重合反応と比較した。比較反応(CE5)のために適用した手順は、スズオクトエート(Sn(Oct)2)触媒を、アルコール性共開始剤と同時に反応器中に注入したという差異を伴って、実施例IE10~IE14について記載したものと同様であった。
【0179】
表5aは、異なる反応についての重合条件を要約する。表5bは、このように得られたポリ-L-ラクチドの特性を要約する。
【0180】
【0181】
【0182】
n,secポリマー分子量データは、12のポリスチレン標準に対して較正した屈折率検出器を有するAgilent1260ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムを使用して取得したが、0.58のマーク-フウィンク値の適用を伴って報告する。PLgel 5μm MIXED Guard 50×7.5mmガードカラムと共に、PLgel 5μm MIXED-D 300×7.5mmカラムを使用した。移動相は1ml分-1の流量でのTHFであった。カラム及び検出器は、35℃にて維持した。AgilentのGPC/SECソフトウェア、Revision A.02.01を使用してデータを加工した。
【0183】
得られた結果は、実施例IE13及びIE14において、高分子量のポリラクチドが短い時間尺度で、極度に低い金属濃度(0.0013~0.0019mol%、8~12ppm)の存在下で生成されたことを示す。さらに、同様の金属濃度を使用した場合、本発明による触媒液体配合物(IE11)及びスズオクトエート、Sn(Oct)2を使用した反応の比較は、活性が2つの系について同様であったことを示した。
【0184】
反応IE10~IE14の間に、一定分量の反応混合物を、分析のために取った。全てのZr触媒系において、変換及び分子量の間の関係は一貫して直鎖状であり、鎖の切断の証拠は観察されなかった。
図1
図2