(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】線維性疾患の治療に使用するためのアゼチジンLPA1受容体アンタゴニストのピルフェニドン及び/又はニンテダニブとの合剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4427 20060101AFI20250414BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250414BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250414BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250414BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250414BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250414BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20250414BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20250414BHJP
C07D 401/12 20060101ALN20250414BHJP
【FI】
A61K31/4427
A61P29/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P43/00 121
A61K31/4412
A61K31/496
C07D401/12
(21)【出願番号】P 2022531534
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020084401
(87)【国際公開番号】W WO2021110805
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/083757
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517248845
【氏名又は名称】イドルシア・ファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IDORSIA PHARMACEUTICALS LTD
【住所又は居所原語表記】HEGENHEIMERMATTWEG 91, 4123 ALLSCHWIL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マグダレーナ ビルカー
(72)【発明者】
【氏名】シリル レスコップ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7386183(JP,B2)
【文献】特許第7494222(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/201297(WO,A1)
【文献】特表2011-514909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
C07D201/00-521/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患の予防用又は治療用の医薬の製造のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用:
【化1】
(式中、
- XはCHであり;YはNであり;かつ、R
2は、メチル、エチル又はイソプロピルであるか;又は、
- XはNであり;YはCHであり;かつ、R
2は、メチル、エチル又はイソプロピル又はジフルオロメチルであり;
R
1は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はメチルであり;
R
3は、
- -(CH
2)
2-3-C(CH
3)
2-COOH;
- -CO-(CH
2)
1-2-C(CH
3)
2-COOH;又は、
- -SO
2-NH
2;
を表す。);
であって、
当該医薬が、抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせて
用いられ、
前記抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分が、
- ピルフェニドン又はその薬学的に許容される
塩;
- ニンテダニブ又はその薬学的に許容される
塩;又は、
- ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩及びニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩の両
方;
である;式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
XがCHであり;YがNであり;R
2が、メチル、エチル又はイソプロピルである;請求項1に記載の使用。
【請求項3】
R
1が、フルオロ、クロロ又はブロモである;請求項2に記載の使用。
【請求項4】
XがNであり;YがCHであり;R
2がジフルオロメチルである;請求項1に記載の使用。
【請求項5】
R
1がメチルである;請求項4に記載の使用。
【請求項6】
R
3が、
- -CH
2-CH
2-C(CH
3)
2-COOH;
- -CO-CH
2-C(CH
3)
2-COOH;又は、
- -SO
2-NH
2;
を表す;請求項1に記載の使用。
【請求項7】
R
3が-SO
2-NH
2を表す;請求項3に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物が、
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
5-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
5-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-5-オキソペンタン酸;
N-(2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
4-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-イソプロポキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
5-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
5-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
4-(3-((6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
N-(6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-イソプロポキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;又は、
3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(4-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
又は、その薬学的に許容される塩;
である;請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記化合物が、
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;又は、
N-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
又は、その薬学的に許容される塩;
である;請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬がピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる;請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩が、1日当たり総量で2403mg又はそれ未満の経口投与に適した医薬単位用量剤形での投与が意図される;請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬が、
-
肺線維症;
-
腎線維症;又は、
-
肝線維症;
の予防又は治療を意図する;請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、
- 特発性肺線維症;
- 全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;
- サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;
- 放射線誘発線維症;
- ケイ肺誘発肺線維症;
- アスベスト誘発肺線維症;又は、
- COVID-19と関連する肺線維症;
の予防又は治療を意図する;請求項10に記載の使用。
【請求項14】
有効成分として、請求項1~9のいずれか1項に定義する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を、抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせて含み;さらに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって;前記抗線維化剤がピルフェニドン及び/又はニンテダニブ;又はその薬学的に許容される塩;であり、
- 特発性肺線維症;
- 全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;
- サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;
- 放射線誘発線維症;
- ケイ肺誘発肺線維症;
- アスベスト誘発肺線維症;又は、
- COVID-19と関連する肺線維症;
の予防用又は治療用の、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に定義する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、抗線維化剤であって、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる、抗線維化剤。
【請求項16】
前記抗線維化剤が、
- 特発性肺線維症;
- 全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;
- サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;
- 放射線誘発線維症;
- ケイ肺誘発肺線維症;
- アスベスト誘発肺線維症;又は、
- COVID-19と関連する肺線維症;
の予防又は治療を意図する;請求項15に記載の抗線維化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にピルフェニドン(pirfenidone)等の抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせた、式(I)の化合物
【0002】
【化1】
、及び、線維性疾患(及び/又は線維症と関連する疾患又は障害)の予防及び/又は治療における、LPA
1受容体のアンタゴニストとしてのそれらの使用に関し;かかる線維性疾患は、特に肺線維症、とりわけ、特発性肺線維症又は全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症である。本発明はさらに、式(I)の化合物を、ピルフェニドン又はニンテダニブ(nintedanib)、特にピルフェニドン等の抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせて有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
式(I)の特定の化合物は、LPA1受容体のアンタゴニストとしてWO2019234115(PCT/EP2019/064690)及びPCT/EP2020/066767に開示されており、線維症(及び線維症と関連する疾患又は障害)、又は、LPA1受容体シグナル伝達が介在する他の障害の予防及び/又は治療に有用である可能性がある。特に、当該化合物は、下記の疾患等の予防及び/又は治療に有用性を有する可能性があることが開示されている:
- 特発性肺線維症を含む線維性間質性肺疾患;関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症;SSc)、狼瘡(全身性エリテマトーデス;SLE)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCDT)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;放射線誘発繊維症を含む医原性肺線維症;ケイ肺誘発肺線維症;アスベスト誘発肺線維症;及び胸膜線維症を含む肺線維症;
- CKD、慢性腎不全、尿細管間質性腎炎、及び/又は、(原発性)糸球体腎炎及び狼瘡(SLE)及び強皮症(SSc)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である糸球体腎炎等の慢性腎症、糖尿病、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、腎移植並びにAlport症候群と関連する腎線維症を含む腎線維症;
- 強皮症の二次疾患である消化管線維症及び放射線誘発消化管線維症を含む消化管線維症(gut fibrosis);
- 肝硬変、アルコール誘発性肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎、胆管損傷、(原発
性胆汁性胆管炎としても知られる)原発性胆汁性肝硬変、感染症若しくはウイルス誘発性肝線維症(例えば、慢性HCV感染症)及び自己免疫性肝炎を含む肝線維症;
- 放射線誘発頭頚部線維症を含む頭頚部線維症;
- LASIK(レーシック)、角膜移植及び線維柱帯切除の続発症を含む角膜瘢痕;
- 熱傷誘発性又は外科的肥厚性瘢痕及びケロイドを含む肥厚性瘢痕及びケロイド;
- 並びに、他の繊維性疾患、例えば、子宮内膜症、脊髄線維症、骨髄線維症、心筋線維化(cardiac fibrosis)、血管周囲線維化(perivascular fibrosis);並びに、瘢痕組織の形成、Peyronie病、腹部又は腸の癒着、膀胱線維症(bladder fibrosis)及び鼻孔の繊維症。
【0004】
線維症は、異常で過剰な細胞外マトリクス沈着のプロセスであり、異なるコラーゲンサブタイプの沈着及び架橋及び組織構造の歪みを含む。線維症は種々の疾患における臓器不全の主要因である。
【0005】
損傷の結果としての細胞損傷及び/又は死は、通常、修復プロセスを開始し、本来の組織構造及び機能の再確立を引き起こす。しかしながら、慢性損傷及び場合によっては急性損傷においても、線維症が発症し、正常な組織構造及び器官の機能が失われることがある。線維症は、特に、肺、肝臓、心臓、腎臓及び皮膚の疾患においては、罹患率及び死亡率の主要な原因であることが認識されている(Nanthakumarら、Nat Rev
Drug Discov.2015;14(10):693-720)。線維性疾患の大半に対しては、現在、効果的な治療が存在しない。近年、2種の薬剤(ニンテダニブ、チロシンキナーゼ阻害剤;及びピルフェニドン)が特発性肺線維症(IPF)の患者の治療に対して承認され、両化合物は、治癒はもたらさないが、疾患の進行速度を遅らせることが示された。従って、IPF及び他の線維性疾患の患者を治療するためのさらなる治療法が緊急に必要である。
【0006】
過去数年間に、IPFの進行を引き起こす潜在的遺伝リスク因子(Kaurら、2014)及びメカニズム(McDonoughら、JCI Insight.2019;4(22).doi:10.1172/jci.insight.131597;Reyfmanら、Am J Respir Crit Care Med.2019;199(12):1517-1536)の分子レベルでの理解が進んだ。上皮損傷及びその後の炎症性細胞の浸潤が、常在する線維芽細胞の炎症促進性及び線維化促進性筋線維芽細胞表現型への分化を引き起こし、これは増殖し、アポトーシス抵抗性であり、過剰の細胞外マトリクス(ECM)タンパク質を分泌する。組織の堅牢化はさらに、機械的刺激感受性の(mechanosensing)筋線維芽細胞を刺激して、自己増幅性線維化促進状態を形成する(Lvら、Future Med Chem 2019;11:2595-2620)。結果として、筋線維芽細胞は今日線維化反応の主要な細胞エフェクターであると考えられている。上皮間葉転換(Epithelial-mesenchymal transition)(Hillら、J Lung Health Dis.2019;3(2):31-35)及び浸潤線維細胞(Chongら、Int J Biochem Cell Biol.2019;116:105595)が、筋線維芽細胞表現型に分化できる線維芽細胞のプールを拡大することが提唱されている。従って、筋線維芽細胞への分化傾向を有する線維芽細胞を標的とし、又は、筋線維芽細胞活性を抑制することが、進行性線維性疾患治療の新しい戦略である。
【0007】
IPFにおいては、上皮損傷が、線維芽細胞の筋線維芽細胞表現型への分化に寄与する多くの異なるシグナルを引き起こし、これは、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)の発現の増大、αSMAストレスファイバーの出現、ECMタンパク質分泌活性の増大及び炎症促進性サイトカインの分泌により特徴づけられ、これは線維性状態をさらに悪化させる。TNFα、PDGFα、IL-1、IL-6及びリゾホスファチジン酸(LPA)を含
む他の因子も寄与するものの、線維芽細胞の筋線維芽細胞への変化を引き起こす既知のサイトカインの中で、TGFβ及びその下流エフェクターが最も強力で顕著な線維症誘導物質である(Alsafadiら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.2017;312(6):L896-L902;Peyserら、Am J Respir Cell Mol Biol.2019;61(1):74-85;Distlerら、Nat Rev Rheumatol.2019;15:705-730)。
【0008】
線維化促進状態及び肺線維芽細胞表現型に対する影響は、初代ヒト肺線維芽細胞に対するTGFβ、PDGFα又はLPA等の外因性刺激を用いて、イン ヴィトロで模倣することができ、薬理学的干渉をその効果について試験することができる。分泌活性及び遺伝子発現分析によれば、イン ヴィトロ誘導筋線維芽細胞表現型は、イン ヴィヴォでのIPF-由来(筋)線維芽細胞の表現型とよく一致する(Weigleら、J Biol Methods.2019;6(2):e115)。
【0009】
LPA1受容体アンタゴニストBMS-986020(CAS Reg.No.:1257213-50-5;WO2010/141761、WO2012/7078805、以下、化合物Dとも記載する。)が、IPF患者において、第二相臨床試験(NCT01766817)において試験された。BMS-986020 b.i.d.で治療された患者は、努力肺活量(FVC)の減退速度がプラセボに対して有意に遅くなった。FVCは、努力呼気肺活量試験の間に吐き出した空気の総量であり、スパイロメトリーの間に測定され;肺機能の最も重要な測定であるとみなしてよい。肝酵素の用量相関上昇が両BMS-986020治療群で観察された。3件の胆のう炎が発生し、これはBMS-986020と関連すると非盲検後に判断されたため、試験は早期に終了した。
【0010】
ニンテダニブ((3Z)-2,3-ジヒドロ-3-[[[4-[メチル-[(4-メチル-1-ピペラジニル)-アセチル]-アミノ]-フェニル]-アミノ]-フェニルメチレン]-2-オキソ-1H-インドール-6-カルボン酸メチルエステル エタンスルホネート;例えば、US6,762,180、US7,119,093、US7,989,474、US9,907,756、US10,105,323、US10,154,990を参照されたい。)はトリプルキナーゼ阻害剤であり、受容体チロシンキナーゼ、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)及び血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とし、これらもまた線維症及びIPFの発病と関連している。2つの第三相試験において、ニンテダニブは、肺機能の減退を1年にわたって約50%減少させた。ニンテダニブハードゼラチンカプセルは、例えば、ニンテダニブ(150mg又は100mg)並びに不活性成分である中鎖ハードファットトリグリセリド及び大豆レシチン(E322)を含有する。US FDAで2014年に、欧州で2015年に承認された。米国においては、全身性硬化症関連間質性肺疾患(SSc-ILD)の患者における特発性肺線維症(IPF)の治療及び肺機能の減退速度の低下に適応されている。推奨用量は、約12時間離して1日2回150mg(b.i.d.)であり、食事とともに摂取する。軽度の肝障害(Child Pugh A)を有する患者における推奨用量は、約12時間離して100mg b.i.d.であり、食事とともに摂取する。有害反応に対処するための100mgへの一時的な用量減少、治療の中断又は中止を考慮に入れるべきであり、治療開始前に、すべての患者に対して肝機能試験を、生殖能を有する女性に対して妊娠テストを行うことが推奨される。肝酵素上昇及び薬剤誘発肝損傷:ニンテダニブにより、薬剤誘発肝損傷の事例を含め、ALT、AST及びビリルビン上昇が生じた。市販後の期間においては、致死性転帰を伴う重度肝損傷を含む非重症及び重症例の薬剤誘発肝損傷が報告されている。ニンテダニブのさらなる潜在的副作用が報告されており、これには、下痢、吐き気及び嘔吐等の胃腸障害;胚-胎児毒性;動脈血栓塞栓症;出血イベント;及び消化管穿孔が含まれる。EUでは、ニンテダニブは特発性肺線
維症(IPF)の治療に適応され、さらに、ドセタキセル(docetaxel)と併用して、局所進行性、転移性又は初回化学療法後における腺癌腫瘍組織学的な局所再発性非小細胞肺癌(NSCLC)を有する成人患者の治療に適応され;ニンテダニブの推奨用量は、21日間の標準的ドセタキセル治療サイクルの第2日~第21日における、約12時間離した1日2回200mgの投与である。
【0011】
www.clinicaltrials.govによれば、ニンテダニブは、ピルフェニドンと併用して、IPFを標的とする臨床試験において試験され;さらには、強皮症関連肺線維症;進行性線維性間質性肺疾患(PF-ILD);及び造血幹細胞移植後の閉塞性細気管支炎症候群についても試験され;幾つかの試験は、例えば、甲状腺癌;非小細胞肺癌;小細胞肺癌;食道胃癌(esophagogastric cancer);再発悪性胸膜中皮腫;HER2-ネガティブ転移性炎症性乳癌(MIBC);軟部組織肉腫;進行性卵巣癌;再発又は持続性子宮内膜癌;肺癌;転移性虫垂癌;子宮内膜癌、悪性胸膜中皮腫;及び難治性転移性結腸直腸癌を含む癌を標的としている。
【0012】
ピルフェニドン(5-メチル-1-フェニル-2-(1H)-ピリドン)はIPFの治療に適応される。ピルフェニドンハードゼラチンカプセルは、ピルフェニドン(267mg)、並びに、不活性成分である微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン及びステアリン酸マグネシウムを含有する。ピルフェニドンフィルムコート錠は、ピルフェニドン[267mg(黄色)及び801mg(茶色)]、並びに、不活性成分である微結晶性セルロース、コロイダル無水シリカ、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、タルク及び酸化鉄を含有する。
【0013】
ピルフェニドンの推奨用量は、1日3回、801mg(t.i.d)であり、2403mg/日に相当し;治療開始の際又は治療中断後は、267mg t.i.d.の用量から始める14日間にわたる漸増が推奨される。治療に先立ち、肝機能の状態のテスト(アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びビリルビン)が推奨される。
【0014】
ピルフェニドンについて薬剤誘発肝損傷(DILI)の事例が観察された。市販後の期間においては、致死性転帰を伴う重度肝損傷を含む非重症及び重症例のDILIが報告されている。2403mg/日のピルフェニドンで治療を受けた患者では、3つの第三相試験において、正常の上限(ULN)の3倍以上のALT又はASTの上昇がプラセボ患者よりも高い頻度で発生した(それぞれ3.7%対0.8%)。ULNの10倍以上のALT又はASTの上昇が、ピルフェニドン2403mg/日群の0.3%の患者で起こり、プラセボ群の0.2%の患者で起こった。ULNの3倍以上のALT及びASTの上昇は、用量の修正又は治療の中止により回復させることができた。
【0015】
結果として、DILI等の有害反応に対処するための一時的な用量減少、治療の中断又は中止が推奨される。さらに、光過敏性反応又は発疹;並びに胃腸の有害反応においても場合によっては用量減少又は中止が必要であろう。臨床試験では、ピルフェニドン治療群の患者において、プラセボ摂取群の患者よりも、吐き気、下痢、消化不良、嘔吐、胃食道逆流性疾患及び腹痛の消化管イベントがより多く報告された。プラセボ群の患者の5.8%に対し、2403mg/日群の患者の18.5%で、消化管イベントによる用量減少又は中断が必要であり;プラセボ群の1.0%に対し、ピルフェニドン2403mg/日群の患者の2.2%において、消化管イベントのために治療が中止された。
【0016】
ピルフェニドン、その使用並びに上記の不利益の幾つかを緩和する方法に関する特許が存在する(例えば、US7,566,729、US7,635,707、US7,696
,236、US7,767,225、US7,767,700、US7,816,383、US7,910,610、US7,988,994、US8,013,002、US8,084,475、US8,318,780、US8,383,150、US8,420,674、US8,592,462、US8,609,701、US8,648,098、US8,753,679、US8,754,109、US8,778,947を参照されたい。)。さらに、ピルフェニドンが特定の抗線維化治療において有用であることが幾つかの特許において記載されている(WO2012/162592)。
【0017】
www.clinicaltrials.govによれば、ピルフェニドンは、関節リウマチ関連間質性肺疾患(RA-ILD)、放射線誘発肺損傷、慢性腎疾患(CKD)、糖尿病性腎疾患、糖尿病性腎症、筋無症候性皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis)と関連する進行性間質性肺疾患、抗ミエロパーオキシダーゼ(MPO)抗体を伴う肺線維症若しくは抗MPO関連血管炎を伴う肺線維症、全身性硬化症関連間質性肺疾患(SSc-ILD)、進行性線維性サルコイドーシス(progressive fibrotic sarcoidosis)、進行肝線維症、全身性硬化症における皮膚線維症、全身性硬化症と関連する間質性肺疾患並びに癌の放射線療法により引き起こされる線維症を標的とする臨床試験において試験されている。メキシコにおいては、経口投与ピルフェニドンが肺線維症及び肝線維症の治療に対して承認され、また、ゲルの形態で瘢痕、線維化組織及び皮膚潰瘍の治療に対して承認された。
【0018】
さらに、線維症、特に肺線維症の発症は、COVID-19、特に中等度又は重症COVID-19の続発症の1つである可能性がある。結果、近年、臨床試験において、COVID-19、特にポストCOVID-19肺線維症との関連においてニンテダニブ及びピルフェニドンについて試験を行っていることが開示された(例えば、NCT04607928、NCT04541680、NCT04338802、NCT04619680を参照されたい。)。
【0019】
前臨床モデルにおいて、ピルフェニドンの一般的な抗線維化効果が、肺、心臓、腎及び肝線維症の動物モデル並びにDupuytren拘縮において広く確立された。ピルフェニドンが線維症及び線維形成メディエーターの発現を減少させることが明確に示された。
【0020】
ニンテダニブ及びピルフェニドンの双方について、種々の状態の初代ヒト肺(筋)線維芽細胞を用いて、それらの抗線維化活性がイン ヴィトロで試験された(Atanelishviliら、Clin Exp Rheumatol.2019;37 Suppl
119(4):115-124;Lehtonenら、Respir Res.2016;17:14;Hostettlerら、Respir Res.2014;15:157)。両化合物とも線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化及び/又は(筋)線維芽細胞の線維化促進活性を弱めたが、通常、完全に阻害はしなかった。これらの結果は、このようなイン ヴィトロ系が抗線維化活性について化合物を評価することに適していることを示すが、これらの細胞において複数のシグナル及びシグナル伝達経路が線維化促進表現型の誘発に収束していることを確証させるものでもある。さらに、このことはピルフェニドンもニンテダニブも高濃度においてでさえ最大効果に達することはできないことを示唆する。
【0021】
1日当たり801mgを経口で3回(合計2403mg/日)という高用量でヒトに投与されるピルフェニドンについては特に、イン ヴィトロで有意な効果を観察するのに使用される濃度(>0.5mM)は、ヒトにおいて化合物の高暴露が必要とされることと合致する。これらの知見は、現在利用できる基礎治療(すなわち、ピルフェニドン及び/又はニンテダニブ、及び任意でさらなる基礎治療)に加えて使用することができ、組み合わ
せることによりかかる抗線維化治療の効果を増大させるさらなる治療法の必要性を強調するものである。
【発明の概要】
【0022】
線維性疾患及び障害(例えば、肺線維症;腎線維症;消化管線維症;肝線維症;頭頚部線維症;角膜瘢痕;肥厚性瘢痕及びケロイド;及び本明細書で言及する他の線維性疾患(子宮内膜症、脊髄線維症、骨髄線維症、心筋線維化、血管周囲線維化;瘢痕組織の形成、Peyronie病、腹部又は腸の癒着、膀胱線維症、鼻孔の繊維症及び線維芽細胞が介在する繊維症を含む。))の予防及び治療に有用性を有するLPA1受容体アンタゴニストである、特に以下に定義する式(I)の化合物等のLPA1受容体アンタゴニストが、かかる線維性疾患及び障害の治療においてピルフェニドンと組み合わせると、相補的、さらには相乗的効果を有する可能性があることが見出された。従って、かかる合剤は肺線維症(特にIPF)の予防及び/又は治療に特に有用である可能性がある。さらに、特に式(I)の化合物等のLPA1受容体アンタゴニストのピルフェニドンとの合剤は、ピルフェニドンの用量の低減を可能にする可能性があり、単独で投与される場合のピルフェニドンの確立された最適有効用量未満の用量まで低減できる可能性さえある。従って、高用量のピルフェニドン(2403mg/日、これは一般に801mg t.i.d.として投与される。)に関連する特定の安全上の不利益(例えば、肝酵素に対する影響、光過敏性、発疹又は胃腸系副作用)を軽減できる可能性がある。
【0023】
さらに、特に以下に定義する式(I)の化合物等のLPA1受容体アンタゴニストは、ニンテダニブと組み合わせた場合、かかる線維性疾患及び障害の治療において、少なくとも相補的効果を有する可能性がある。加えて、本発明のLPA1受容体アンタゴニストは、かかる線維性疾患の3剤併用予防及び/又は治療において、ピルフェニドン及びニンテダニブの両方と組み合わせてよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」A、ピルフェニドン及びそれらの併用の効果を示す。
【
図2】
図2は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」B、ピルフェニドン及びそれらの併用の効果を示す。
【
図3】
図3は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」C、ピルフェニドン及びそれらの併用の効果を示す。
【
図4】
図4は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」D、ピルフェニドン及びそれらの併用の効果を示す。
【
図5】
図5は、「化合物」Aの非存在下及び10nM、100nM及び1000nMの「化合物」Aの存在下における、NHLFにおけるTGFβ-誘発αSMA発現に対するピルフェニドンの用量-反応を示す。
【
図6】
図6は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」A、ニンテダニブ及びそれらの併用の効果を示す。
【
図7】
図7は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」B、ニンテダニブ及びそれらの併用の効果を示す。
【
図8】
図8は、ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現に対する、「化合物」C、ニンテダニブ及びそれらの併用の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の詳細な記述
1) 第1の態様は、有効成分として、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【0026】
【化2】
(式中、
- XはCHであり;YはNであり;かつ、R
2は、メチル、エチル又はイソプロピル(特にメチル)であるか;又は、
- XはNであり;YはCHであり;かつ、R
2は、メチル、エチル又はイソプロピル(特にメチル)又はジフルオロメチルであり;
R
1は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はメチル(特に、クロロ又はメチル)であり;
R
3は、
- -(CH
2)
2-3-C(CH
3)
2-COOH(特に、-CH
2-CH
2-C(CH
3)
2-COOH);
- -CO-(CH
2)
1-2-C(CH
3)
2-COOH(特に、-CO-CH
2-C(CH
3)
2-COOH);又は、
- -SO
2-NH
2;
を表す。);
を、抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせて有し;さらに少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を有する医薬組成物であって;当該抗線維化剤が特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ;又はその薬学的に許容される塩;である、医薬組成物に関する。
【0027】
態様1)に従う医薬組成物は、医薬として、例えば、(特に経口等の)経腸又は(局所的適用又は吸入を含む)非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。かかる医薬組成物の製造は、いずれの当業者にもよく知られた方法で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[出版元:Lippincott Williams&Wilkins]を参照されたい。)、本発明の合剤有効成分を、任意で他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより行うことができる。経口投与のための医薬組成物は、特に、カプセル剤又は錠剤の形態であってよい。
【0028】
2) さらなる態様は、式(I)の化合物において、
- XがCHであり;YがNであり;かつ、R2が、メチル、エチル又はイソプロピル(特にメチル)であるか;又は、
- XがNであり;YがCHであり;かつ、R2が、メチル又はジフルオロメチル(特に
ジフルオロメチル)である;
態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0029】
3) さらなる態様は、XがCHであり;YがNであり;R2が、メチル、エチル又はイソプロピル(特にメチル)である;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0030】
4) さらなる態様は、XがNであり;YがCHであり;R2がジフルオロメチルである;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0031】
5) さらなる態様は、R1が、フルオロ、クロロ又はブロモ(特にクロロ)である;態様1)~4)のいずれか1つに従う[特に態様3)に従う]医薬組成物に関する。
【0032】
6) さらなる態様は、R1がメチルである;態様1)~4)のいずれか1つに従う[特に態様4)に従う]医薬組成物に関する。
【0033】
7) さらなる態様は、R3が、
- -CH2-CH2-C(CH3)2-COOH;
- -CO-CH2-C(CH3)2-COOH;又は、
- -SO2-NH2;
を表す;態様1)~6)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0034】
8) さらなる態様は、R3が-(CH2)2-3-C(CH3)2-COOH(特に-CH2-CH2-C(CH3)2-COOH)を表す;態様1)~6)のいずれか1つに従う[特に態様4)又は6)に従う]医薬組成物に関する。
【0035】
9) さらなる態様は、R3が-CO-(CH2)1-2-C(CH3)2-COOH(特に-CO-CH2-C(CH3)2-COOH)を表す;態様1)~6)のいずれか1つに従う[特に態様4)又は6)に従う]医薬組成物に関する。
【0036】
10) さらなる態様は、R3が-SO2-NH2を表す;態様1)~6)のいずれか1つに従う[特に態様3)又は5)に従う]医薬組成物に関する。
【0037】
11) さらなる態様は、式(I)の化合物が:
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
5-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
5-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-5-オキソペンタン酸;
N-(2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニ
ル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;又は、
N-(2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
である;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0038】
12) さらなる態様は、式(I)の化合物が:
4-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-イソプロポキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
5-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
5-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルペンタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
4-(3-((6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
4-(3-((6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;
N-(6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-エトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-クロロ-4-イソプロポキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
N-(6-ブロモ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;又は、
3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(4-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
である;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0039】
13) さらなる態様は、式(I)の化合物が:
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチルブタン酸;
4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸;又は、
N-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニ
ル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド;
である;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0040】
14) さらなる態様は、式(I)の化合物がN-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミドである;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0041】
15) さらなる態様は、式(I)の化合物が4-(3-((2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-イル)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸である;態様1)に従う医薬組成物に関する。
【0042】
16) さらなる態様は、抗線維化剤として作用する当該1又は2種以上の治療的に有効な成分が、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩である;態様1)~15)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0043】
17) さらなる態様は、当該組成物が、式(I)の化合物、及び、加えて、抗線維化剤として作用する2種の治療的に有効な成分を有し、当該抗線維化剤が、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせたピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩である;態様1)~15)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0044】
18) さらなる態様は、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩を、ピルフェニドンの経口投与に適した医薬単位用量(pharmaceutical unit dosage)で有し、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩を、1日当たり総量で約2403mg又はそれ未満(例えば、総量で約801mg t.i.d又はそれ未満)のピルフェニドンの経口投与に適した医薬単位用量で有する;態様1)~17)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0045】
19) さらなる態様は、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩を、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するピルフェニドンの承認書(approval letter)に示された)ピルフェニドンの耐性有効用量(tolerated efficacious dose)であるか又は耐性有効用量よりも低い用量で有する;態様1)~18)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0046】
20) さらなる態様は、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩を、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するピルフェニドンの承認書に示された)ピルフェニドンの耐性有効用量よりも低い用量で有し;かかる用量が総量で1602mg/日又はそれ未満(例えば534mgを1日3回);特に、総量で801mg/日(例えば267mgを1日3回)であってよい;態様1)~18)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0047】
21) さらなる態様は、抗線維化剤として作用する当該1又は2種以上の治療的に有効な成分が、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)である;態様1)~20)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0048】
22) さらなる態様は、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)が存在する場合には、上記ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を、ニンテダニブの経口投与に適した医薬単位用量で有し;ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を、総量で、1日当たり約200mg又はそれ未満(例えば100mg
b.i.d.又はそれ未満)、1日当たり約300mg又はそれ未満(例えば150mg
b.i.d.又はそれ未満)、又は、1日当たり約400mg又はそれ未満(例えば200mg b.i.d.又はそれ未満)のニンテダニブの経口投与に適した医薬単位用量で有する;態様1)~21)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0049】
23) さらなる態様は、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するニンテダニブの承認書に示された)ニンテダニブの耐性有効用量であるか又は耐性有効用量よりも低い用量で有する;態様1)~22)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0050】
24) さらなる態様は、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するニンテダニブの承認書に示された)ニンテダニブの耐性有効用量よりも低い用量で有し;かかる用量が1日当たり総量で200mg又はそれ未満(例えば100mg b.i.d.)のニンテダニブであってよい;態様1)~23)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0051】
態様1)~24)に従うかかる合剤医薬組成物は、本明細書に定義する線維性疾患、特に肺線維症(特にIPF)の予防又は治療に、及び、本明細書に定義する線維性疾患、特に肺線維症(特にIPF)の予防又は治療方法であって、薬学的に効果的な用量のかかる合剤医薬組成物をそれを必要とする対象(特にヒト)に投与することを有する、方法において特に有用である。
【0052】
25) 本発明の別の側面は、肺線維症(特にIPF)の予防において使用するための態様1)~24)に従う医薬組成物に関し、肺線維症(特にIPF)の当該予防は、肺炎又は間質性肺疾患(ILD;あるいは急性間質性肺炎(diffuse parenchymal lung disease)(DPLD)と呼ばれる。)を経験した/肺炎又はILDを経験したと診断された患者において、肺線維症(特にIPF)の発症を遅延させることを包含し;特に、かかる肺炎又はILDは間質性肺炎、特に通常型間質性肺炎である。
【0053】
26) 別の側面において、本発明は、肺線維症の予防又は治療において使用するための態様1)~24)に従う医薬組成物に関し;
- 肺線維症の当該予防は肺線維症の発症を遅延させることを包含し;
- 肺線維症の当該治療は肺機能の減退の速度を遅くすることを包含し;
特に、肺線維症の当該予防又は治療は、関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患を有する(有すると診断された)対象において;サルコイドーシスを有する(有すると診断された)対象において;放射線を経験した/放射線療法で治療された対象において;又は、シリカダスト(ケイ肺)又はアスベストへの暴露を経験した対象において行われ;当該対象は特に間質性肺疾患を有する(有すると診断されている)。
【0054】
27) 本発明の特定の態様において、態様1)~26)に従う当該合剤医薬組成物は、
- 肺における細胞及び/若しくはフィブロネクチン及び/若しくはコラーゲンの異常な蓄積並びに/又は線維芽細胞動員の増大の予防又は治療において;及び/又は、
- 肺の構造的変化の進行を予防又は治療するために/肺の構造的変化の速度を遅くするために;
使用されることが意図され;
特に、治療される上記対象は、本明細書に定義する肺線維症及び/又は肺炎又は間質性肺疾患を有すると診断されている。
【0055】
28) 本発明の第2の側面は、本明細書に定義する線維性疾患、特に肺線維症(特にIPF)の予防又は治療において使用するための、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;当該式(I)の化合物は、抗線維化剤として作用する1又は2種以上の(特に1又は2種の)治療的に有効な成分と組み合わせて投与されることになり(投与されることになることが意図され)/投与され;副態様において、当該合剤は、好ましくは、
- ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩(特に遊離形態のピルフェニドン)との合剤;
- ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)との合剤;又は、
- ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩(特に遊離形態のピルフェニドン)及びニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)の両方との合剤;
であり;
又は、当該合剤は、
- ピルフェニドンアナログ又はその薬学的に許容される塩との合剤;又は、
- ピルフェニドンアナログ又はその薬学的に許容される塩及びニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)の両方との合剤;
である。
【0056】
態様1)~15)に定義される式(I)の化合物は、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ等の抗線維化剤として作用する1又は2種以上の治療的に有効な成分と組み合わせた場合、本明細書に定義する線維性疾患、特に肺線維症(特にIPF)(及び、かかる線維性疾患と関連する疾患又は障害)の予防及び/又は治療に有用であり、加えて、LPA1受容体シグナル伝達が介在する他の障害の予防及び/又は治療に有用である可能性がある。
【0057】
29) さらなる態様は、態様28)に従う使用のための、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;かかる使用は、
- 肺線維症;特に、特発性肺線維症;関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;放射線誘発繊維症を含む医原性肺線維症;ケイ肺誘発肺線維症;アスベスト誘発肺線維症;及び胸膜線維症から選択される肺線維症;並びに、上記のものに加えて、COVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連する肺線維症;
- 腎線維症;特に、CKD、慢性腎不全、尿細管間質性腎炎、及び/又は、(原発性)糸球体腎炎及び狼瘡(SLE)又は強皮症(SSc)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である糸球体腎炎等の慢性腎症、糖尿病、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、腎移植並びにAlport症候群と関連する腎線維症から選択される腎線維症;又は、
- 肝線維症;特に、肝硬変、アルコール誘発性肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変(原発性胆汁性胆管炎としても知られる)、感染症若しくはウイルス誘発性肝線維症(例えば慢性HCV感染症)及び自己免疫性肝炎から選択される肝線維症;
の予防及び/又は治療を意図する。
【0058】
30) さらなる態様は、態様28)に従う使用のための、態様1)~15)のいずれ
か1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;かかる使用は肺線維症の予防及び/又は治療を意図し、特に、当該肺線維症は、
- 特発性肺線維症;
- 関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;
- サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;
- 放射線誘発繊維症を含む医原性肺線維症;
- ケイ肺誘発肺線維症;
- アスベスト誘発肺線維症;又は、
- 胸膜線維症;又は、上記のものに加えて、
- COVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連する肺線維症;
である。
【0059】
31) さらなる態様は、態様28)に従う使用のための、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;かかる使用は、
- 特発性肺線維症;
- 関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;
- サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;
- 放射線誘発線維症;
- ケイ肺誘発肺線維症;又は、
- アスベスト誘発肺線維症;又は、上記のものに加えて、
- COVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連する肺線維症;
の予防及び/又は治療を意図する。
【0060】
32) さらなる態様は、態様28)~31)のいずれか1つに従う併用使用(combination use)のための、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;態様16)~27)のいずれか1つに定義される特徴が併用使用のためのかかる化合物に必要な変更を加えて適用される。
【0061】
33) 特に、態様28)~32)のいずれか1つに従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物は、当該式(I)の化合物が、抗線維化剤として作用する1種の治療的に有効な成分であって、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩(特に遊離形態のピルフェニドン)である上記成分とともに投与されることになる(ことが意図される)/投与される、かかる使用に関する。
【0062】
34) 態様33)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物は、特に、当該式(I)の化合物がピルフェニドンとともに投与されることになり(投与されることになることが意図され)/投与され;ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩が、1日当たり総量で約2403mg又はそれ未満(例えば、総量で約801mg t.i.d又はそれ未満)のピルフェニドンの経口投与に適した医薬単位用量剤形(pharmaceutical unit dosage form)で投与される;かかる使用に関する。
【0063】
35) 態様33)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物はさらに、当該式(I)の化合物がピルフェニドンとともに投与されることになり(投与されることになることが意図され)/投与され;ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩が、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は
障害に関するピルフェニドンの承認書に示された)ピルフェニドンの耐性有効用量であるか又は耐性有効用量よりも低い用量で投与される;かかる使用に関する。
【0064】
36) 態様33)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物はさらに、当該式(I)の化合物がピルフェニドンとともに投与されることになり(投与されることになることが意図され)/投与され;ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩が、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するピルフェニドンの承認書に示された)ピルフェニドンの耐性有効用量よりも低い用量で投与され;かかる用量が総量で1602mg/日又はそれ未満(例えば534mgを1日3回);特に、総量で801mg/日(例えば267mgを1日3回)であってよい;かかる使用に関する。
【0065】
37) 態様28)~32)のいずれか1つに従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物はさらに、当該式(I)の化合物が、抗線維化剤として作用する1種の治療的に有効な成分であって、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエタン-スルホン酸塩等)である上記成分とともに投与されることになる(ことが意図される)/投与される;かかる使用に関する。
【0066】
38) 態様37)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物は、特に、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩がニンテダニブの経口投与に適した医薬単位用量で投与され;ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を、総量で、1日当たり約200mg又はそれ未満(例えば100mg b.i.d.又はそれ未満)、1日当たり約300mg又はそれ未満(例えば150mg b.i.d.又はそれ未満)、又は、1日当たり約400mg又はそれ未満(例えば200mg b.i.d.又はそれ未満)のニンテダニブの経口投与に適した医薬単位用量剤形で有する;かかる使用に関する。
【0067】
39) 態様37)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物はさらに、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩が、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するニンテダニブの承認書に示された)ニンテダニブの耐性有効用量であるか又は耐性有効用量よりも低い用量で投与される;かかる使用に関する。
【0068】
40) 態様37)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物はさらに、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩が、単剤治療として与えられる場合の(例えば、単剤治療として与えられる場合の、特定の疾患又は障害に関するニンテダニブの承認書に示された)ニンテダニブの耐性有効用量よりも低い用量で投与され;かかる用量が1日当たり総量で200mg又はそれ未満(例えば100mg b.i.d.)のニンテダニブであってよい;かかる使用に関する。
【0069】
41) 本発明の別の特定の側面は、態様28)~40)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物に関し;当該式(I)の化合物は、肺線維症(特にIPF)の予防において使用されることが意図され;肺線維症(特にIPF)の当該予防は、肺炎又は間質性肺疾患(ILD;あるいは急性間質性肺炎(DPLD))を経験した/肺炎又はILDを経験したと診断された対象における、肺線維症(特にIPF)の発症を遅延させることを包含し;特に、かかる肺炎又はILDは間質性肺炎、特に通常型間質性肺炎である。
【0070】
42) 本発明の別の特定の側面は、態様28)~41)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物に関し;当該式(I)の化合物は、肺線維症の予防又は治療において使用されることが意図され;
- 肺線維症の当該予防は肺線維症の発症を遅延させることを包含し;
- 肺線維症の当該治療は肺機能の減退の速度を遅くすることを包含し;
特に、当該肺線維症の予防又は治療は、関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患を有する(有すると診断された)対象において;サルコイドーシスを有する(有すると診断された)対象において;放射線を経験した/放射線療法で治療された対象において;又は、シリカダスト(ケイ肺)又はアスベストへの暴露を経験した対象において行われ;当該対象は、特に、間質性肺疾患を有する(有すると診断されている)。
【0071】
本発明に関し、肺機能の減退の速度を遅くすることは、(例えば、標準治療(standard care treatment)に対し又はプラセボに対し)努力肺活量(FVC)の減弱の速度を遅くすることとして特に表されてよいものとする。
【0072】
43) 本発明の別の特定の側面は、態様28)~41)に従う併用使用のためのかかる式(I)の化合物に関し;当該式(I)の化合物は、
- 肺における細胞及び/若しくはフィブロネクチン及び/若しくはコラーゲンの異常な蓄積並びに/又は線維芽細胞動員の増大を予防又は治療するために;及び/又は、
- 肺の構造的変化の進行を予防又は治療するために/肺の構造的変化の速度を遅くするために;
使用され;
特に、治療される対象は、本明細書に定義する肺線維症及び/又は肺炎又は間質性肺疾患を有すると診断されている。
【0073】
従って、本発明に従う、態様1)~15)のいずれか1つに定義する式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、抗線維化活性を有する、本明細書に定義する当該さらなる薬学的有効成分と組み合わせて使用(又は併用療法)するためのものである。
【0074】
ここに記載される定義は、態様1)~43)のいずれか1つに対して一律に適用されることが意図されており、別段の定義によって明示的により広い又はより狭い定義が与えられない限り本明細書及び請求項を通じて必要な変更を加えて適用される。当然ながら、ある用語の定義又は好ましい定義が、ここに定義されるいずれか又は他のすべての用語のいずれか又は好ましい定義におけるそれぞれの用語を、独立して(及びそれらと共に)定義し置き換えるものであってよい。
【0075】
「抗線維化剤として作用する治療的に有効な成分」又は「抗線維化剤」という用語は、(イン ヴィトロ及び/又はイン ヴィヴォモデルにおける試験、特に臨床試験において)治療用途の可能性を示し、及び/又は、かかる治療用途に適応され;かかる治療用途が少なくとも1つの線維性疾患のためのものである、任意の抗線維化剤を意味する。例は、特に、ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩;及びニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩である。加えて、、抗線維化剤のさらなる例は、ピルフェニドンアナログ(すなわち、ピルフェニドンと構造的類似性を有し、本質的にピルフェニドンと類似した/同じ作用機序で作用する化合物)である。具合的なピルフェニドンアナログは、1-フェニル-5-(トリデューテロメチル(trideuteromethyl))ピリジン-2(1H)-オン(SD-560)等の重水素化ピルフェニドンアナログ;化合物、1-メチル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1,5-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン(AK-3280、CAS Reg.No.1799412-33-1、WO2014/055548、WO2019/152863);及び、7-(4-フルオロフェニル)-3-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-3,5-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン、3-エチル-7-(1H-ピラゾール-4-イル)-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-3,5-ジヒド
ロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン又は7-(1-イソプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)-3-メチル-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-3,5-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン等のWO2014/055548に開示されるさらなる化合物;並びに、WO2015/153683/US10,233,195に開示される化合物[特に、特にその中に開示される化合物、712-714及び716-738、とりわけ1-(メチル-d3)-7-(1-(メチル-d3)-1H-ピラゾール-4-イル)-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1,5-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン(化合物724)]である。ピルフェニドンアナログは、加えて、ニンテダニブと組み合わせて使用してよいものとする。
【0076】
従って、副態様において、本発明は、本明細書に定義する線維性疾患、特に肺線維症(特にIPF)の予防又は治療において使用するための、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関し;当該式(I)の化合物は、特に1-フェニル-5-(トリデューテロメチル)ピリジン-2(1H)-オン;又は、1-メチル-7-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-5-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1,5-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-オン又はその薬学的に許容される塩(特にトシレート)等のピルフェニドンアナログと組み合わせて;任意で、さらに、ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩(特にエシレート)と組み合わせて、投与されることになる(ことが意図される)/投与される。
【0077】
「ピルフェニドン又はその薬学的に許容される塩」という用語は、特に遊離形態のピルフェニドンを意味する。
【0078】
「ニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩」という用語は、特に、遊離形態の又は薬学的に許容される塩の形態のニンテダニブを意味し、好ましい薬学的に許容される塩の形態はニンテダニブエタンスルホネート(ニンテダニブエシレート)である。
【0079】
「繊維性疾患」又は、あるいは「繊維症」という用語は、器官における細胞及び/若しくはフィブロネクチン及び/若しくはコラーゲンの異常な蓄積並びに/又は線維芽細胞動員の増大と関連する状態を意味し;心臓、腎臓、肝臓、関節、肺、肋膜組織、腹膜組織、皮膚、角膜、網膜、筋骨格及び消化管等の個別の器官又は組織の繊維症を含む。
【0080】
繊維症という用語は特に、
- すべての形態の線維性間質性肺疾患、特に特発性肺線維症(あるいは、特発性線維化性肺胞炎と呼ばれる。);関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である肺線維症;サルコイドーシスの二次疾患である肺線維症;放射線誘発繊維症を含む医原性肺線維症;ケイ肺誘発肺線維症;アスベスト誘発肺線維症;及び胸膜線維症を含むすべての形態の肺線維症;
- CKD、慢性腎不全、尿細管間質性腎炎、及び/又は、(原発性)糸球体腎炎及び狼瘡(SLE)又は強皮症(SSc)等の全身性炎症性疾患の二次疾患である糸球体腎炎等の慢性腎症、糖尿病、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、腎移植並びにAlport症候群と関連する腎線維症を含む腎線維症;
- 強皮症の二次疾患である消化管線維症及び放射線誘発消化管線維症を含む消化管線維症;
- 肝硬変、アルコール誘発性肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎、胆管損傷、(原発性胆汁性胆管炎としても知られる)原発性胆汁性肝硬変、感染症若しくはウイルス誘発性肝線維症(例えば、慢性HCV感染症)及び自己免疫性肝炎を含むすべての形態の肝線維症
;
- 放射線誘発頭頚部線維症を含む頭頚部線維症;
- LASIK(レーシック)、角膜移植及び線維柱帯切除の続発症を含む角膜瘢痕;
- 熱傷誘発性又は外科的肥厚性瘢痕及びケロイドを含む肥厚性瘢痕及びケロイド;
- 並びに、他の繊維性疾患、例えば、子宮内膜症、脊髄線維症、骨髄線維症、心筋線維化、血管周囲線維化;並びに、瘢痕組織の形成、Peyronie病、腹部又は腸の癒着、膀胱線維症、鼻孔の繊維症及び線維芽細胞が介在する繊維症;
を含むものとして定義してよい。
【0081】
上記のものに加えて、線維症という用語はさらに、SARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連するすべての形態の線維症(特に、肺線維症、腎線維症又は肝線維症、とりわけ肺線維症)を包含する。「と関連する」という用語は、当該線維症(特に、肺線維症、腎線維症又は肝線維症、とりわけ肺線維症)が、診断されたSARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19と同時に又はその後に生じることと理解され、当該線維症の実際の原因が不明/未診断であってよい。かかるSARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連するかかる線維症(特に、肺線維症、腎線維症又は肝線維症、とりわけ肺線維症)は、当該SARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19の続発症(後遺症)であってよく;及び/又は、当該SARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19により誘発されて(により引き起こされて)よいものとする。
【0082】
同様に、肺線維症という用語は、上記の形態の線維性間質性肺疾患に加えて、特に、SARS-CoV-2感染症及び/又はCOVID-19(特に中等度又は重症COVID-19)と関連する肺線維症を包含する。
【0083】
「繊維症の予防(prevention/prophylaxis)」という用語は、器官又は組織の繊維症のリスク、特に肺、肝又は腎線維症のリスクを増大させることが知られている1又は2種以上の環境条件に暴露された対象における;又は、器官又は組織の繊維症を発症する遺伝的素因を有する対象における繊維症の予防;並びに、外科手術を含む損傷後の瘢痕の予防又は最小化を包含する。
【0084】
「肺線維症の予防」という用語(かかる肺線維症は特にIPFである。)はさらに、肺炎又は間質性肺疾患(ILD;あるいは、急性間質性肺炎(DPLD)と呼ばれる。)を経験した/肺炎又はILDを経験したと診断された患者における、肺線維症(特にIPF)の発症を遅延させることを包含し;特に、かかる肺炎又はILDは、間質性肺炎、特に通常型間質性肺炎である。
【0085】
「肺線維症の治療」という用語(かかる肺線維症は特にIPFである。)はさらに、肺炎又は間質性肺疾患(ILD;あるいは、急性間質性肺炎(DPLD)と呼ばれる。)を経験した/肺炎又はILDを経験したと診断された患者における、肺機能の減退の速度を遅くすることを包含し;特に、かかる肺炎又はILDは、間質性肺炎、特に通常型間質性肺炎である。
【0086】
「肺線維症の予防」という用語はさらに肺線維症の発症を遅延させることを包含し、「肺線維症の治療」という用語はさらに肺機能の減退の速度を遅くすることを包含し;当該予防又は治療は、関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎又は混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性疾患を有する(有すると診断された)対象/患者において;サルコイドーシスを有する(有すると診断された)対象/患者において;放射線を経験した/放射線療法で治療された対象/患者におい
て;又は、シリカダスト(ケイ肺)又はアスベストへの暴露を経験した対象/患者において行われ;当該対象/患者は特に、間質性肺疾患を有し/有すると診断されている。
【0087】
「全身性炎症性疾患」という用語は、特に、関節リウマチ、強皮症(全身性硬化症)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性筋炎及び混合性結合組織病(MCTD)等の全身性炎症性及び/又は自己免疫疾患を意味する。
【0088】
「肺線維症の予防又は治療」という用語(かかる肺線維症は特にIPFである。)はさらに、肺における細胞及び/若しくはフィブロネクチン及び/若しくはコラーゲンの異常な蓄積並びに/又は線維芽細胞動員の増大の予防又は治療、及び/又は、肺の構造的変化の進行の予防又は治療/肺の構造的変化の速度を遅くすることを包含し;特に、治療される上記対象/患者は、肺線維症及び/又は肺炎又は間質性肺疾患を有すると診断されている。
【0089】
肺の構造的変化は、胞壁肥厚(septal thickening)、蜂巣(honeycombing)、結節パターン(nodular pattern)、肺減弱パターン(lung attenuation pattern)、スリガラス状陰影(ground-glass opacity)(GGO)等の周知の病理組織学的外観に関連し、胸部の高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)を用いることにより、日常的に検出し、定量することができる。
【0090】
態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物は、ピルフェニドン及び/又はニンテダニブと組み合わせた場合、さらに、LPA1受容体シグナル伝達が介在する疾患又は障害の予防及び/又は治療に有用である可能性があり、かかる疾患又は障害には、特に、皮膚疾患、疼痛、悪性及び良性増殖性疾患、呼吸器疾患、神経系障害、心血管系疾患及び炎症性疾患、肥満症及びインスリン抵抗性が含まれる。
【0091】
「皮膚(dermatological)疾患」という用語は、皮膚(skin)疾患を意味する。そのような皮膚疾患は、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、水疱性疾患、膠原病、乾癬、強皮症、乾癬病巣、皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、じんましん、酒さ、創傷治癒、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド、川崎病、酒さ、Sjogren-Larsso症候群、じんましん等の皮膚の増殖性又は炎症性疾患;特に全身性硬化症を含む。
【0092】
「疼痛」という用語は、急性疼痛、慢性疼痛及び神経因性疼痛を意味する。具体的な例は、繊維筋痛症、特に、収縮筋内の繊維質瘢痕組織の形成から生じる繊維筋痛症及び癌性疼痛である。
【0093】
「悪性及び良性増殖性疾患」という用語は、特に、癌並びに腫瘍細胞の増殖、癌腫の浸潤及び/又は転移の制御を意味する。
【0094】
「癌」という用語は、癌腫;腺癌;白血病;肉腫;リンパ腫;骨髄腫;転移性癌;脳腫瘍;神経芽細胞腫;膵臓癌;消化器癌;肺癌;乳癌;前立腺癌;子宮体癌;皮膚癌;膀胱癌;頭頸部癌;神経内分泌腫瘍;卵巣癌;子宮頚部癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌;及びウイルス誘発性腫瘍等のすべての種類の癌を意味する。特に、この用語は、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫及び骨転移、並びに、脳転移、悪性神経膠腫、多形膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫を含む脳腫瘍;神経芽細胞腫;膵臓腺癌/膵管腺癌を含む膵臓癌;結腸癌、大腸腺腫、大腸腺癌、転移性大腸癌、家族性大腸腺腫症(FAP)、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、肝細胞癌を含む消化器癌;カポジ肉腫;急性骨髄性白血病、成人T細胞白血病を含む白血病;バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、MALTリンパ腫及び原発性眼内B細胞リンパ腫を含むリンパ腫;非小細胞性肺癌を含む肺癌;トリプル・ネガティブ乳癌を含む乳癌;横
紋筋肉腫;去勢抵抗性前立腺癌を含む前立腺癌;食道扁平上皮癌;(口腔)扁平上皮癌;子宮体癌;甲状腺乳頭癌を含む甲状腺癌;転移性癌;肺転移;黒色腫及び転移性黒色腫を含む皮膚癌;膀胱癌(urinary bladder cancer)、尿路上皮癌を含む膀胱癌;多発性骨髄腫;骨肉腫;頭頸部癌;及び腎細胞癌、腎明細胞癌、転移性腎細胞癌、転移性腎明細胞癌を含む腎癌;並びに神経内分泌腫瘍;卵巣癌;子宮頚部癌;口腔腫瘍;上咽頭腫瘍;胸部癌;絨毛癌;ユーイング肉腫;及びウイルス誘発性腫瘍を意味する。
【0095】
「呼吸器疾患」という用語は、鼻、喉、喉頭、エウスタキオ管、気管、気管支、肺、関連筋(例えば、横隔膜及び肋間)及び神経等の呼吸に関与する器官に影響与える疾患を意味する。呼吸器疾患は、間質性肺炎、喘息(いかなる原因(内因性、外因性又は両方;アレルギー性又は非アレルギー性)によるかを問わない気道狭窄と関連する肺の気体流動の変化により特徴づけられるいかなる肺の障害をも意味し、成人呼吸窮迫症候群及びアレルギー性(外因性)喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、急性重篤喘息、慢性喘息、臨床性喘息(clinical asthma)、夜間性喘息、アレルゲン誘発性喘息、アスピリン喘息、運動誘発喘息、等炭酸ガス性過換気症(isocapnic hyperventilation)、小児発症性喘息、成人発症性喘息、咳喘息、職業性喘息、ステロイド抵抗性喘息、季節性喘息(seasonal asthma)を含む。);季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎を含む鼻炎;慢性気管支炎又は肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD);気道炎症、サルコイドーシス、嚢胞性繊維症、低酸素症及び急性肺損傷及び急性呼吸窮迫症(ARDS)(細菌性肺炎誘発性、外傷誘発性、ウイルス性肺炎誘発性、換気装置誘発性、非肺性敗血症(non-pulmonary sepsis)誘発性又は誤嚥誘発性であるARDSを含む。)を含む。
【0096】
「神経系障害」という用語は、脳、脊髄又は末梢神経系の構造又は機能を変化させる疾患を意味し、アルツハイマー病、脳浮腫、多発性硬化症、ニューロパチー、パーキンソン病、鈍的又は外科手術による外傷(blunt or surgical trauma)による神経系障害(手術後認知機能障害及び脊髄又は脳幹損傷及び頭部損傷を含む)、脳浮腫、偏頭痛並びに変性椎間板疾患及び坐骨神経痛等の障害の神経学的側面を含むが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本明細書で使用される「心血管系疾患」という用語は、心臓又は血管又は両方に影響を与える疾患を意味し:不整脈(心房又は心室又は両方);アテローム性動脈硬化及びその続発症;脳虚血、発作、狭心症(angina);心調律異常;心筋虚血;心筋梗塞;大動脈瘤を含む心臓又は血管瘤;網膜虚血;脳、心臓又は他の器官若しくは組織の虚血後の再灌流傷害;再狭窄;四肢、器官又は組織の抹消閉塞性動脈症;内毒性、外科手術性又は外傷性ショック;高血圧、心臓弁疾患、心不全、血圧異常;ショック;血管狭窄(偏頭痛と関連するものを含む。);血管異常、血栓症、単一の器官又は組織に限定された機能不全を含むが、これらに限定されるものではない。
【0098】
「炎症性疾患」という用語は、乾癬、関節リウマチ、血管炎、炎症性腸疾患、皮膚炎、骨関節炎、炎症性筋疾患、膣炎、間質性膀胱炎、強皮症、湿疹、同種又は異種移植(器官、骨髄、幹細胞並びに他の細胞及び組織)片拒絶、移植片対宿主病、混合性結合組織疾患、紅斑性狼瘡、I型糖尿病、皮膚筋炎、静脈炎、シェーグレン症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA、Wegener肉芽腫症)、甲状腺炎(例えば、橋本及び自己免疫性甲状腺炎)、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、慢性再発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、副鼻腔炎及び好中球介在炎症を含む。
【0099】
LPA1受容体が関与するさらなる障害は、特に、前立腺肥大症等の前立腺及び膀胱障害、好酸球及び/又は好塩基球及び/又は樹状細胞及び/又は好中球及び/又は単球及び
/又はT細胞動員と関連する疾患、心筋症、心筋リモデリング、血管リモデリング、血管透過性障害(vascular permeability disorders)、腎疾患、腎乳頭壊死、腎不全、腫瘍成長、代謝疾患、掻痒、眼疾患、黄斑変性症、内分泌疾患、甲状腺機能亢進症、骨粗鬆症、糖尿病関連疾患(腎症、網膜症)を含む。
【0100】
「対象」という用語は、哺乳動物、特にヒトを意味する。
【0101】
組み合わせ治療(又は併用療法)は、(固定用量又は非固定用量で)同時に、別々に又はある期間にわたって(特に同時に)行われてよい。
【0102】
投与形態に関連する場合の、「同時に」は、本出願において、関連する投与形態が、2種又はより多くの有効成分及び/又は治療のほぼ同時投与であることを意味し;同時投与により、対象は当該2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に同時に暴露されることになるものと理解される。同時に投与される場合、当該2種又はより多くの有効成分は、固定用量合剤で、又は、非固定用量合剤であって、かかる非固定合剤が(例えば、同じ投与経路によりほぼ同時に投与されるべき2種又はより多くの異なる医薬組成物を使用することにより)固定用量合剤と同等の非固定用量合剤であってよい非固定用量合剤で、又は、2種又はより多くの異なる投与経路又は投与レジメを用いる非固定用量合剤で投与されてよく;各場合において、当該投与により、対象は組み合わせられる2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に本質的に同時に暴露されることになる。同じ投与経路でほぼ同時に投与されるべき2種の異なる医薬組成物を用いた非固定用量合剤の同時投与の例は、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物がb.i.d.で投与され、各抗線維化剤がb.i.d.で投与される非固定用量合剤である。2種の異なる投与経路を用いた非固定用量合剤の同時投与の別の例は、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物が1日1回又はb.i.d.で投与され、各抗線維化剤がt.i.d.で投与される非固定用量合剤である。2種の異なる投与経路を用いた非固定用量合剤の同時投与の別の例は、態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物が1日1回投与され、各抗線維化剤がb.i.d.で投与される非固定用量合剤である。ピルフェニドン及び/又はニンテダニブと;又は、ピルフェニドンアナログ及び/又はニンテダニブと併用する場合;態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物は、特に「同時に」、とりわけ非固定用量合剤において同時に使用される。
【0103】
「固定用量合剤」は、投与形態に関連する場合、本出願においては、関連する投与形態が、特に態様1)~24)のいずれか1つの医薬組成物のような、2種又はより多くの有効成分を有する1種の単一の医薬組成物の投与であることを意味する。
【0104】
投与形態に関連する場合の、「別々に」は、本出願において、関連する投与形態が、2種又はより多くの有効成分及び/又は治療の異なる時点における投与であることを意味し;別々の投与は、対象が2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に同時に暴露される治療相(例えば、少なくとも1h、特に少なくとも6h、とりわけ少なくとも12h)に導くが;別々の投与は、対象が一定の時間の間(例えば、少なくとも12h、特に少なくとも1日)、上記2種又はより多くの有効成分及び/又は治療の1つにのみ暴露される治療相に導いてもよいものと理解される。別々の投与は、少なくとも1種の有効成分及び/又は治療を、(1日に1回又は2回又は3回等の)連日投与とは実質的に異なる周期で与える状況(例えば、1種の有効成分及び/又は治療を例えば1日に1回又は2回又は3回与え、別のものを、例えば隔日、1週間に1回又はより長い間隔で与える。)を特に意味する。
【0105】
「ある期間に渡る」投与は、本出願において、2種又はより多くの有効成分及び/又は治療を異なる時に続けて投与することを意味する。この用語は、特に、一の有効成分及び
/又は治療の全投与が完結した後に、1又は2種以上の他方の投与を開始する投与法を意味する。この場合、有効成分及び/又は治療の1種を数カ月間投与した後に、他の有効成分及び/又は治療を投与することが可能である。
【0106】
本明細書に定義される線維性疾患の治療における併用使用のための態様1)~15)のいずれか1つに定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であって、当該式(I)の化合物が、ピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩等の1又は2種以上の抗線維化剤と組み合わせて投与されることになる(ことが意図される)/投与される、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩に関する任意の態様は、
- 当該線維性疾患の治療において使用するための当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩であって;当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブが当該式(I)の化合物と組み合わせて投与される(ことが意図される)、当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩;
- 当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩並びに当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を有する医薬/医薬組成物の製造のための、当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用であって、当該医薬/医薬組成物が当該線維性疾患の治療において使用されることが意図される、使用;
- 当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として有する医薬/医薬組成物の製造のための、当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用であって、当該医薬/医薬組成物が当該線維性疾患の治療において使用されることが意図され;当該医薬/医薬組成物が、当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用(併用)される(ことが意図される)、使用;
- 当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を有効成分として有する医薬/医薬組成物の製造のための、当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩の使用であって、当該医薬/医薬組成物が当該線維性疾患の治療において使用されることが意図され;当該医薬/医薬組成物が、当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用される(ことが意図される)、使用;
- 当該線維性疾患の治療のための、当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩並びに当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を有する医薬組成物の使用;
- 当該線維性疾患の予防又は治療において使用するための医薬であって、当該医薬が当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を有し;当該医薬が、当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される(ことが意図される)、医薬;
- 効果的な量の当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩をそれを必要とする対象(好ましくはヒト)に投与することを有する、当該線維性疾患を予防又は治療する方法であって、当該式(I)の化合物が、効果的な量の当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与され;当該組み合わせ投与が固定用量合剤で又は非固定用量合剤であってよいものと理解される、方法;
- 当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩並びに当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその薬学的に許容される塩を有する医薬組成物の効果的な量をそれを必要とする対象に投与することを有する、当該線維性疾患を予防又は治療する方法;及び、
- 効果的な量の当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブ又はその
薬学的に許容される塩をそれを必要とする対象(好ましくはヒト)に投与することを有する、当該線維性疾患を予防又は治療する方法であって、当該抗線維化剤、特にピルフェニドン及び/又はニンテダニブが、効果的な量の当該式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与され;当該組み合わせ投与が固定用量合剤で又は非固定用量合剤であってよいものと理解される、方法;
にも関するものとする。
【0107】
化合物、塩、医薬組成物、疾患等について複数形が使用される場合は、単数の化合物、塩等をも意味することが意図されている。
【0108】
化合物に対するいかなる言及も、状況に応じて、そのような化合物の塩(特に薬学的に許容される塩)をも指すものと解される。
【0109】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象化合物の所望の生物活性を保持し、かつ最小の望ましくない毒性作用を示す塩を意味する。そのよう塩としては、対象化合物中の塩基性基及び/又は酸性基の存在に応じた、無機又は有機の酸及び/又は塩基付加塩が挙げられる。参考としては、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties、Selection and Use.」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(Eds.)、Wiley-VCH、2008;及び「Pharmaceutical Salts
and Co-crystals」、Johan Wouters and Luc Quere(Eds.)、RSC Publishing、2012を参照されたい。
【0110】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-Xの10%からX+Xの10%までの間、好ましくはX-Xの5%からX+Xの5%までの間を表す。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」の用語は、この出願において、Y-10℃からY+10℃にわたる間、好ましくはY-5℃からY+5℃にわたる間、特にY-3℃からY+3℃にわたる間を表す。室温は、約25℃の温度を意味する。本出願において、n当量(nは数である。)の用語が使用される場合、本出願の範囲内において、nは約nを意味し、好ましくはnは正確にnを意味するものとする。
【0111】
数値範囲を記述するために「間」又は「から(~)」の語が使用される場合は常に、示された範囲の末端の点は明示的にその範囲に含まれると解される。これは、例えば、温度範囲が40℃から80℃の間(又は40℃から(~)80℃)であると記述される場合、末端の点である40℃と80℃はその範囲に含まれることを意味し、あるいは、可変数が1から4の間(又は1から(~)4)の整数であると定義される場合、可変数は整数の1、2、3又は4であることを意味する。
【0112】
「本質的に」という用語は、本発明に関しては、各量/純度/時間等が、それぞれの全体の少なくとも90パーセント、特に少なくとも95パーセント、そしてとりわけ少なくとも99パーセントであることを特に意味するものと理解される。例えば、「本質的に同時に暴露」という用語において使用される場合、薬学的有効成分への慢性/定常状態暴露が意図されている場合においては、該当する時間、すなわち該当する日の少なくとも90パーセント、特に少なくとも95パーセント、そしてとりわけ少なくとも99パーセントの間、各暴露が、薬学的に効果的な量のすべての合剤有効成分の同時の暴露という結果をもたらすことを特に意味するものと理解される。
【0113】
本発明の特定の態様を以下の実施例に記載するが、それは、本発明をより詳細に説明するために供されるものであり、その範囲をいかなる意味においても限定するものではない
。
【実施例】
【0114】
実験の項
温度はすべて℃で示す。市販の出発物質は、さらに精製を行うことなく、入手した状態で使用した。別段の記載が無い限り、すべての反応は、窒素又はアルゴン雰囲気下で行った。化合物は、シリカゲル(Biotage)上のフラッシュクロマトグラフィーにより、分取用TLC(MerckのTLCプレート、Silica gel 60 F254)により、又は、分取用HPLCにより精製した。本発明に記載した化合物は、1H-NMR(400MHz又は500MHz Bruker;化学シフトは、使用する溶媒に対するppmで示す;多重度:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、quint=五重項、hex=六重項、hept=七重項、m=多重項、br=広域;結合定数はHzで示す。)及び/又はLC-MS(保持時間tRはmin.で示す;質量分析から得られた分子量はg/molで示す。)によって、以下に記載した条件を用いて特徴を明らかにする。
【0115】
酸性条件でのLC-MS
LCMS-1:Waters Acquity Binary、Solvent Manager、MS:Waters SQ Detector、DAD:Acquity UPLC PDA Detector、ELSD:Acquity UPLC ELSD。カラム:Acquity UPLC Column Manager内で60℃に温度制御されたWaters製Acquity UPLC CSH C18 1.7μm 2.1x50mm。溶出液:A:H2O+0.05%ギ酸;B:AcCN+0.045%FA。方法:勾配:2.0minにわたって2%B 98%B。流速:1.0mL/min。検出:UV214nm及びELSD。
【0116】
LCMS-2:質量分析検出を備えたAligent 1100シリーズ(MS:Finniganシングル四重極)。カラム:Zorbax RRHD SB-Aq(1.8μm、3.0x50mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.04%TFA[溶出液B]。勾配:5minにわたって95%Bから5%Bへ(流速:4.5mL/min)。
【0117】
酸性条件での分取用HPLC
Prep-HPLC-1:カラム:Waters XBridge C18(10μm、75x30mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.5%ギ酸[溶出液B]。勾配:5minにわたって95%Bから5%Bへ(流速:75mL/min)。検出:UV/Vis+MS。
【0118】
Prep-HPLC-2:カラム:Waters Zorbax SB-Aq(5μm、75x30mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.5%ギ酸[溶出液B]。勾配:5minにわたって95%Bから5%Bへ(流速:75mL/min)。検出:UV/Vis+MS。
【0119】
塩基性条件での分取用HPLC
Prep-HPLC-3:カラム:Waters XBridge C18(10μm、75x30mm)。条件:MeCN[溶出液A];水+0.5%NH4OH[溶出液B]。勾配:6.5minにわたって90%Bから5%Bへ(流速:75mL/min)。検出:UV/Vis+MS。
【0120】
(本明細書において使用される)略語:
AcOH 酢酸
aq. 水溶液
b.i.d. (bis in die):1日2回
Boc tert-ブトキシカルボニル
BSA 牛血清アルブミン
Bu tert.-Bu(=3級ブチル)等におけるブチル
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピル-エチルアミン、Huenig塩基、エチル-ジイソプロピルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルフォキシド
EDC N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド
Et (OEt:エトキシ等における)エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Ex. 実施例
h 時間
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
iPr イソプロピル
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
LPA リゾホスファチジン酸
LPAR1 リゾホスファチジン受容体1(lysophosphatidic receptor 1)
Me (OMe:メトキシ等における)メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
PBS リン酸緩衝食塩水
Pd(OH)2/C 水酸化パラジウム炭素
prep. 分取用
q.d. (quaque die):1日1回
Ref Ex 参照実施例
r.t. 室温
sat. 飽和
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
t.i.d. (ter in die);1日3回
TLC 薄層クロマトグラフィー
T3P プロピルホスホン酸無水物
tR 保持時間
【0121】
中間体の製造
中間体1.A: 6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-アミン
2-クロロ-4-メトキシ-5-ニトロピリジン(440mg、2.33mmol)、塩化アンモニウム(624mg、11.7mmol)及び鉄粉末(526mg、11.7
mmol)の、EtOH(12mL)及び水(1.2mL)中の混合物を、80℃で2日間加熱する。反応混合物を冷却し、Whatmannガラスフィルターを通してろ過し、蒸発させる。残渣をEtOAcと飽和NaHCO3水溶液の間で分画する。相を分離する。水相をEtOAcで抽出し、有機抽出物を合わせてMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、表題化合物I-1.Aを茶色がかった固体(253mg、72%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.61(s、1H)、6.89(s、1H)、5.02(s、2H)、3.86(s、3H)。
【0122】
中間体1.B: 6-クロロ-4-イソプロポキシピリジン-3-アミン
2-クロロ-4-イソプロポキシ-5-ニトロピリジン(1g、4.62mmol)のEtOAc(40mL)中の溶液に、白金1%及びバナジウム2%-活性炭(50-70%含水粉末)(75mg)、並びに白金3%-活性炭(25mg)を加える。反応混合物をrtで5日間水素化し、次いでCeliteのパッドを通してろ過し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、表題化合物I-1.Bを黄色のオイル(0.87g、定量的収率)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.61(s、1H)、6.89(s、1H)、4.92(s、2H)、4.74(hept、J=6.0Hz、1H)、1.29(d、J=6.0Hz、6H)。
【0123】
中間体1.C: 4-メトキシ-6-メチルピリジン-3-アミン
2-クロロ-4-メトキシ-6-メチル-3-ニトロピリジン(190mg、0.92mmol)のMeOH(10mL)中の溶液に、10%パラジウム-炭素-50%含水(30mg)を加える。反応混合物をr.t.で1h水素化し、アルゴンで脱気し、次いでCeliteのパッドを通してろ過し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗製物をMeCN中で結晶化して、表題化合物I-1.Cを灰白色の固体(121mg、収率95%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.76(s、1H)、7.30(s、1H)、5.82(s、2H)、4.03(s、3H)。
【0124】
中間体1.D: 2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-アミン
工程1. メタノール(256μL、6.39mmol)を、NaH(オイル中の60%分散液、256mg、6.39mmol)の無水THF(10mL)中の懸濁液中に、撹拌下、0℃にて、滴下により加え、得られた溶液を0.5h撹拌する。この溶液に、2-フルオロ-6-メチル-3-ニトロピリジン(1.0g、6.09mmol)の無水THF(5mL)中の溶液を滴下により加える。添加完了後、溶液を0℃にて0.5h撹拌した後、周囲温度に温まるようにする。反応液を周囲温度にて18h撹拌し、水(30mL)でクエンチし、水層をEtOAc(3x50mL)で抽出する。有機抽出物を合わせたものを塩水(brine)(30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮する。2-メトキシ-6-メチル-3-ニトロピリジンを、prep-HPLC(Prep-HPLC-3)による精製の後、黄色のオイル(539mg、収率53%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:8.34(d、J=8.1Hz、1H)、7.09(d、J=8.1Hz、1H)、4.01(s、3H)、2.51(s、3H)。
【0125】
工程2. 2-メトキシ-6-メチル-3-ニトロピリジン(539mg、3.21mmol)のメタノール(10mL)中の脱気した溶液に、Pd(OH)2/C(255mg)、次いでギ酸アンモニウムを加える。反応混合物を50℃にて20h撹拌し、次いでWhatmann-Filterでろ過し、蒸発させる。残渣をEtOAc(30mL)中に溶解し、有機性溶液をsat.NaHCO3 sol.(15mL)、次いで塩水(15mL)で洗浄する。有機相をMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.Dを黄色のオイル(199mg、収率45%)として得る。LCMS-2:tR=0.38min、[M+1]+139.13;1
H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:6.78(d、J=7.5Hz、1H)、6.54(d、J=7.5Hz、1H)、4.65(s、2H)、3.82(s、3H)、2.23(s、3H)。
【0126】
中間体1.E: 2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-アミン
2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.Eを、市販の2-フルオロ-6-メチル-3-ニトロピリジン及びイソプロパノールを出発物質として、I-1.Dについて記載した方法を用いて合成する。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:6.77(d、J=7.5Hz、1H)、6.49(d、J=7.5Hz、1H)、5.22(m、1H)、4.53(s、2H)、2.21(s、3H)、1.27(d、J=6.2Hz、6H)。
【0127】
中間体1.F: 2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-アミン
2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.Fを、市販の2-フルオロ-6-メチル-3-ニトロピリジン及びエタノールを出発物質として、I-1.Dについて記載した方法を用いて合成する。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:6.78(d、J=7.5Hz、1H)、6.52(d、J=7.5Hz、1H)、4.59(s、2H)、4.28(q、J=7.0Hz、2H)、2.22(s、3H)、1.31(t、J=7.0Hz、3H)。
【0128】
中間体1.G: 2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-アミン
工程1. 6-メチル-3-ニトロピリジン-2-オール(10g、61.6mmol)及びNa2SO4(21.89g、15.4mmol)のMeCN(250mL)中の懸濁液を、60℃まで加熱し、2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルフォニル)酢酸(8.8mL、80mmol)を10minにわたって滴下により加える。反応混合物をさらに1時間撹拌し、次いでNaOH 3M(250mL)でクエンチし、アセトニトリルを真空下で除く。残った水性成分をEtOAc(3x200mL)で抽出する。有機抽出物を合わせて、水(50mL)、次いで塩水(100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮する。黄色のオイルをカラムクロマトグラフィー(Biotage、ヘプタン:EtOAc 1:0から1:1へ)により精製して、2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチル-3-ニトロピリジンを黄色のオイル(10.9g、収率85%)として得、これは放置すると結晶化した。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:8.51(d、J=8.2Hz、1H)、7.82(t、J=71.3Hz、1H)、7.39(d、J=8.2Hz、1H)、2.55(s、3H)。
【0129】
工程2. 脱気したメタノール(100mL)中の2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチル-3-ニトロピリジン(4.65g、22.8mmol)に、10%パラジウム炭素-50%含水(350mg)を加え、反応液を大気圧下で18h水素化する。混合物をCeliteのパッドを通してろ過する。パッドをTHF(3x10mL)でリンスし、有機性溶液を真空下で濃縮して、2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.Gを薄黄色のオイルとして得、それは放置すると結晶化した(4.1g、収率92%)。LCMS-2:tR=0.75min、質量分析なし;1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:7.52(t、J=73.5Hz、1H)、6.96(d、J=7.8Hz、1H)、6.77(d、J=7.8Hz、1H)、2.36(s、3H)。
【0130】
中間体2: 1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸
工程1. 市販の1-ブロモ-2-フルオロベンゼン(5g、28.6mmol)のTHF(60mL)中の溶液に、1-ベンズヒドリルアゼチジン-3-カルボニトリル(1
0.6g、42.9mmol)及びKHMDS 95%(10.3mL、42.9mmol)を加える。反応混合物をr.t.にて一晩撹拌したままにする。次いで、反応混合物を真空下で濃縮してオイルとし、EtOAc(100mL)で希釈し、水(2x50mL)で洗浄する。有機相をMgSO4で乾燥し、真空下で濃縮する。粗製物をprep.HPLC(Prep-HPLC-2条件)で精製して、1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニトリルをベージュ色の固体(7.64g、収率66%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.70(d、J=7.9Hz、1H)、7.47-7.42(m、6H)、7.36-7.31(m、5H)、7.25-7.21(m、2H)、4.56(s、1H)、3.98(d、J=8.0Hz、2H)、3.49-3.42(m、2H)。
【0131】
工程2. 1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニトリル(7.2g、17.9mmol)のエタノール(80mL)中の溶液に、NaOH25%(40mL)を加える。反応混合物を80℃で3-4日間撹拌し(LCMSで反応をモニター)、次いで0℃に冷却し、aq.2M HClで酸性化する。混合物をEtOAc(2x200mL)で抽出し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗製物をカラムクロマトグラフィー(溶出液:DCM/MeOH 9:1)で精製して、1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸I-2を黄色のフォーム(6.37g、収率84%)として得る。LCMS-2:tR=0.83min、[M+1]+ 423.99;1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.54(d、J=7.8Hz、1H)、7.43-7.41(m、4H)、7.37(d、J=4.2Hz、2H)、7.29(t、J=7.3Hz、4H)、7.21-7.17(m、3H)、4.47(s、1H)、3.88(d、J=7.8Hz、2H)、3.36(d、J=7.7Hz、2H)。
【0132】
中間体3: 1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニルクロリド
1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸I-2(538mg、1.38mmol)をDCM(10mL)中に溶解する。3滴のDMF、次いで塩化チオニル(0.5mL、6.9mmol)を加え、反応液を50℃で1h撹拌する(LCMSでモニター)。次いで、反応混合物を蒸発させて、粗製の1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニルクロリドI-3をワックス(620mg)として得、それをそのまま使用する。
【0133】
中間体4: 1-(tert-ブトキシカルボニル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸
工程1. I-2(5.0g、11.8mmol)のMeOH(30mL)中の溶液に、濃硫酸(10mL)を加える。反応混合物を75℃で24h撹拌し、次いで蒸発させる。残渣をEtOAc(100mL)中に溶解し、sat.NaHCO3で洗浄する。相を分離し、有機相を塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗製の化合物をクロマトグラフィー(CombiFlash Hept/EtOAc 9:1)で精製して、メチル 1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボキシレートを黄色のオイル(4.12g、収率80%)として得る。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:7.54(dd、J1=1.1Hz、J2=8.0Hz、1H)、7.49-7.41(m、4H)、7.38-7.32(m、1H)、7.32-7.26(m、5H)、7.24-7.19(m、2H)、7.17(td、J1=1.9Hz、J2=7.9Hz、1H)、4.43(s、1H)、4.08(d、J=8.3Hz、2H)、3.74(s、3H)、3.51(d、J=8.2Hz、2H)。
【0134】
工程2. メチル 1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボキシレート(4.12g、9.44mmol)のジオキサン(50mL)中の溶液に、イソプロペニルボロン酸 ピナコールエステル(2.5g、14.2mmol)、次いでK2CO3(6.5g)及び水(25mL)を加える。次いでPd(PPh3)4(327mg、0.28mmol)を加え、反応混合物を80℃で15h撹拌する。水をr.t.で加え、反応混合物をEtOAcで抽出する。有機抽出物をMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗生成物をクロマトグラフィー(Combiflash、Hept/EtOAc 9:1)で精製して、メチル 1-ベンズヒドリル-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボキシレートを黄色のオイル(3.64g、収率97%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.40-7.38(m、4H)、7.30-7.23(m、7H)、7.21-7.17(m、2H)、7.12-7.10(m、1H)、5.06(s、1H)、4.59(s、1H)、4.42(s、1H)、3.82(d、J=7.7Hz、2H)、3.66(s、3H)、3.21(d、J=7.7Hz、2H)、1.92(s、3H)。
【0135】
工程3. メチル 1-ベンズヒドリル-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボキシレート(3.64g、9.16mmol)のMeOH/THF 1:1(20mL)中の溶液に、aq.2M LiOH(10mL)を加える。反応混合物を50℃で2日間撹拌し、次いで5℃に冷却し、2M HClでpH4に酸性化する。反応混合物をEtOAcで抽出する。有機抽出物をMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、1-ベンズヒドリル-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボン酸をベージュ色の固体(3.35g、収率95%)として得る。 1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:7.39(d、J=7.3Hz、4H)、7.28(t、J=7.4Hz、4H)、7.23-7.17(m、5H)、7.11-7.09(m、1H)、5.06(s、1H)、4.71(s、1H)、4.39(s、1H)、3.82(d、J=7.6Hz、2H)、3.14(d、J=7.5Hz、2H)、1.95(s、3H)。
【0136】
工程4. 1-ベンズヒドリル-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボン酸(3.35g、8.74mmol)、25%HCl溶液(18mL)及びPd(OH)2/C20%(1.6g)の、MeOH(100mL)中の混合物を脱気し、次いで1barで18h水素化する(LCMSで反応をモニター)。次いで反応混合物をアルゴンで脱気し、Celiteのパッドでろ過し、それをMeOHでリンスする。揮発物を蒸発させ、残渣をMeCN中で結晶化して、3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸の塩酸塩を白色の固体(1.17g、収率61%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:13.55(s
br、1H)、9.40(s br、1H)、9.15(s br、1H)、7.39(d、J=6.9Hz、1H)、7.34(t、J=7.2Hz、1H)、7.24(t、J=7.0Hz、1H)、7.18(d、J=7.6Hz、1H)、4.57-4.54(m、2H)、4.39-4.35(m、2H)、1.13(d、J=6.7Hz、6H)。
【0137】
工程5. 3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸 塩酸塩(1.17g、4.57mmol)のDCM(25mL)中の懸濁液に、DIPEA(5.9mL、34.4mmol)、次いでBoc2O(1.1g、5.02mmol)を加える。混合物をr.t.で24h撹拌する。1N HClを5℃にて加えて、pHを1に調整し、反応混合物をDCM(4回)で抽出する。有機抽出物を合わせてMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。残渣をクロマトグラフィー(CombiFlash Hept/EtOAc 1.5:1)で精製して、1-(tert-ブトキシカルボニル)-3-
(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸I-4を白色の固体(0.85g、収率58%)として得る。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:7.36-7.31(m、2H)、7.26-7.21(m、1H)、7.18(d、J=7.0Hz、1H)、4.64(d、J=8.5Hz、2H)、4.37(d、J=8.5Hz、2H)、2.61-2.51(m、1H)、1.46(s、9H)、1.19(d、J=6.7Hz、6H)。
【0138】
参照実施例1: N-(6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド
工程1. 1-(tert-ブトキシカルボニル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボン酸I-4(110mg、0.34mmol)及びDMF(0.3mL)のピリジン(3mL)中の溶液に、POCl3(47μl、0.52mmol)を35minにわたって滴下により加える(その塩化アシルへの完全な変換をLCMSでモニターし、MeOHでクエンチする。)。次に、6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-アミン(50.5mg、0.34mmol)のピリジン(1mL)中の溶液を、反応混合物に加える。数時間後、混合物を、水、次いでNaHCO3でクエンチする。次いで、水溶液をEtOAcで2回抽出する。有機抽出物を合わせてMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗生成物をprep.HPLC(Prep-HPLC-3条件)で精製して、tert-ブチル 3-((6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレート(77mg、収率50%)を薄黄色のオイルとして得る。LCMS-1:tR=1.28min、[M+1]+ 444.20。
【0139】
工程2. ジオキサン(2mL)中のtert-ブチル 3-((6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレート(76mg、0.17mmol)に、ジオキサン中の4N
HCl(0.5mL)を加える。反応混合物をr.t.で一晩撹拌する。揮発物を蒸発させて、表題化合物Ex1の塩酸塩を白色の固体(70mg、定量的収率)として得る。LCMS-1:tR=0.58min、[M+1]+ 344.28。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:8.58(s、1H)、8.21(s、1H)、7.49-7.40(m、3H)、7.34(t、J=7.3Hz、1H)、6.90(s、1H)、4.66(d、J=10.4Hz、2H)、4.40(d、J=10.4Hz、2H)、3.74(s、3H)、2.50-2.40(m、1H)、1.12(d、J=6.5Hz、6H)。
【0140】
表1:参照実施例2~6
Ref Ex2~6を、市販の又は合成したピリジン-3-アミン及び中間体I-4を用いて、Ref.Ex1について記載した方法と同様に製造する。
【0141】
【0142】
参照実施例7: 3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)アゼチジン-3-カルボキサミド
工程1. 2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.D(191mg、1.38mmol)のTHF(10mL)中の溶液に、NaHの懸濁液(オイル中の60%分散液、120mg、2.76mmol)を加える。混合物を30min撹拌した後、ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニルクロリドI-3(608mg、1.38mmol)のTHF(10mL)中の懸濁液を滴下により加え、撹拌を2h続ける(LCMSで反応をモニター)。次いで、反応混合物をDCM(50mL)で希釈し、水(20mL)で洗浄する。有機相をMgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗製の化合物をMeCN中で結晶化させて、1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)アゼチジン-3-カルボキサミドを灰白色の固体(278mg、収率37%)として得る。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:11.10(s、1H)、8.42(d、J=7.9Hz、1H)、7.62-7.57(m、5H)、7.40-7.34(m、5H)、7.28-7.18(m、4H)、6.88(d、J=7.9Hz、1H)、4.73(s、1H)、4.17(s、3H)、4.01(d、J=7.0Hz、2H)、3.52(d、J=7.3Hz、2H)、2.42(s、3H)。
【0143】
工程2. 1-ベンズヒドリル-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボキサミドは、1-ベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)アゼチジン-3-カルボキサミドから、I-4-工程2について記載した方法に従って製造される(216mg、収率84%)。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:11.24(s、1H)、8.44(d、J=7.9Hz、1H)、7.57(d、J=7.5Hz、4H)、7.36(t、J=7.5Hz、4H)、7.26-7.15(m、5H)、7.00(d、J=7.3Hz、1H)、6.88(d、J=7.9Hz、1H)、4.98(s、1H)、4.74(s、1H)、4.68(s、1H)、4.16(s、3H)、3.87(d、J=7.4Hz、2H)、3.33(d、J=7.4Hz、2H)、2.42(s、3H)、1.94(s、3H)。
【0144】
工程3. 1-ベンズヒドリル-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-(プロパ-1-エン-2-イル)フェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド(216mg、0.43mmol)、25%HCl溶液(4.5mL)及びPd(OH)2/C20wt.%(300mg)のMeOH(25mL)中の混合物を、脱気し、次いで1barで18h水素化する(LCMSで反応をモニター)。次いで、反応混合物をアルゴンで脱気し、Celiteのパッドでろ過し、MeOH(10mL)でリンスする。揮発物を蒸発させ、残渣をEtOAc(60mL)中に溶解する。有機性溶液をNaOHの5N水溶液(30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。粗製物質をprep-TLC(溶出液:DCM/MeOH: 9/1)により精製して、3-(2-イソプロピルフェニル)-N-(2-メトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)アゼチジン-3-カルボキサミドRef Ex7を白色の固体(32mg、収率22%)として得る。LCMS-1:tR=0.68min、[M+1]+340.43;1H
NMR(400MHz、CD3OD) δ:8.34(d、J=7.9Hz、1H)、7.46-7.35(m、4H)、6.78(d、J=7.9Hz、1H)、4.31(d、J=8.5Hz、2H)、4.17(d、J=8.5Hz、2H)、3.72(s、3H)、2.49(m、1H)、2.36(s、3H)、1.13(d、J=6.7Hz、6H)。
【0145】
参照実施例8: N-(2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド
N-(2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミドは、2-イソプロポキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.E(1.8g)及びベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニルクロリドI-3(4.36g)から、Ref Ex7について記載した方法に従って製造される(1.29g、白色の固体)。LCMS-1:tR=0.80min、[M+1]+368.34;1H NMR(400MHz、CD3OD) δ:8.45(d、J=7.9Hz、1H)、7.49-7.47(m、2H)、7.43-7.40(m、2H)、6.74(d、J=8.0Hz、1H)、5.51(s、1H)、5.18-5.11(m、1H)、4.38(d、J=8.2Hz、2H)、4.21(d、J=8.0Hz、2H)、2.37-2.44(m、1H)、2.33(s、3H)、1.13(d、J=6.7Hz、7H)、1.02(d、J=6.2Hz、6H)。
【0146】
参照実施例9: N-(2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド
N-(2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミドは、2-(ジフルオロメトキシ)-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.G(229mg)及びベンズヒドリル-3-(2-ブロモフェニル)アゼチジン-3-カルボニルクロリドI-3(608mg)から、Ref Ex7について記載した方法に従って製造される(110mg、黄色のオイル)。LCMS-1:tR=0.71min、[M+1]+376.22;1H NMR(500MHz、DMSO D6) δ:9.90(s、1H)、8.24(d、J=8.0Hz、1H)、7.63(t、J=72.6Hz、1H)、7.33(dd、J1=1.3Hz、J2=7.8Hz、1H)、7.28(td、J1=1.2Hz、J2=7.3Hz、1H)、7.19(m、J1=1.4Hz、J2=7.7Hz、1H)、7.14(dd、J1=1.1Hz、J2=7.7Hz、1H)、7.11(d、J=8.4Hz、1H)、4.07(m、2H)、4.01(m、2H)、2.38(s、3H)、1.09(d、J=6.7Hz、6H)。
【0147】
参照実施例10: N-(6-クロロ-2-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2
-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド
工程1. I-4(40mg、0.125mmol)、市販の6-クロロ-2-メトキシピリジン-3-アミン(25mg、0.15mmol)及びピリジン(70μL、0.07mmol)のEtOAc(1mL)中の溶液に、EtOAc中のT3P 50% sol.(300μL、0.5mmol)を加える。反応混合物を65℃にて一晩撹拌する。次いで、水(5mL)を加え、反応混合物をEtOAc(3x10mL)で抽出する。有機抽出物を合わせて、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させる。残渣をprep.HPLC(Prep-HPLC-1条件)で精製して、tert-ブチル 3-((6-クロロ-2-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレートを黄色のオイル(54mg、収率62%)として得る。LCMS-2:tR=1.22min、[M+1]+ 460.37。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:8.58(d、J=8.2Hz、1H)、7.48-7.41(m、2H)、7.39-7.32(m、3H)、6.92(d、J=8.2Hz、1H)、4.80-4.54(m、2H)、4.52-4.28(m、2H)、3.75(s、3H)、2.43(m、1H)、1.48(s、9H)、1.14(d、J=6.6Hz、6H)。
【0148】
工程2. tert-ブチル 3-((6-クロロ-2-メトキシピリジン-3-イル)カルバモイル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-1-カルボキシレートを標準的Boc脱保護条件に付す:Boc保護前駆体(1.41mmol)のDCM(20mL)中の溶液に、TFA(1.1mL、14.1mmol)を10℃にて加える。反応混合物をr.t.にて2h撹拌し(LCMSでモニター)、次いで蒸発させる。残渣をprep.HPLC(Prep-HPLC-3条件)で精製して、Ref Ex10を無色のオイル(30mg、収率75%)として得る。LCMS-1:tR=0.72min、[M+1]+360.30。1H NMR(400MHz、CDCl3) δ:8.62(d、J=8.2Hz、1H)、8.38(s、1H)、7.41-7.36(m、2H)、7.34-7.29(m、1H)、7.17(d、J=7.7Hz、1H)、6.92(d、J=8.2Hz、1H)、4.27(s br、4H)、3.85(s、3H)、2.51-2.41(m、1H)、1.14(d、J=6.7Hz、6H)。
【0149】
参照実施例11: N-(2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミド
N-(2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミドを、2-エトキシ-6-メチルピリジン-3-アミンI-1.Fから、参照実施例8と同様に製造する。
【0150】
実施例
表2: 参照実施例及び実施例2-1~2-11: 還元的アミノ化
適切なRef Ex1~11(0.139mmol)及び適切なアルデヒド(0.417mmol)の乾燥MeOH(2mL)中の溶液を、不活性雰囲気下で2h撹拌する。次いで、シアノ水素化ホウ素(43mg、0.695mmol)を加える。反応混合物を50℃にて2h撹拌し(反応をLCMSでモニター)、次いで水(2mL)でクエンチする。混合物をMeCN(2mL)で希釈し、prep.HPLC(Prep-HPLC-2条件)で精製して、所望の生成物を得る。
【0151】
参照実施例及び実施例2-1~2-11を適切なRef Ex1~11から、還元的アミノ化により合成する。酸等の官能基を適切なエステル保護基で保護してよい。例えば、エステルは、還元的アミノ化工程の後、2N LiOHでけん化される。
【0152】
【0153】
表3: 実施例3-1:アルキル化
工程1. 適切なアミン前駆体Ref Ex1~11、例えばRef Ex3塩酸塩(50mg、0.11mmol)、適切なメチル(ブロモアルキル)カルボキシレート(0.17mmol)及びCs2CO3(150mg、0.46mmol)のMeCN(1mL)中の混合物を、50℃にて18h撹拌する。反応混合物を蒸発させ、残渣をprep-HPLC(Prep-HPLC-3条件)で精製して、所望のエステルを得る。
【0154】
工程2. 上記エステル(0.06mmol)をMeOH(2mL)中に溶解し、2M
LiOH(1mL、2.0mmol)で処理する。反応液をr.t.にて一晩撹拌する(反応の進行をLCMSでモニター)。反応混合物を0℃に冷却し、2N HClの溶液でpH4にゆっくりと酸性化する。次いで、水溶液をEtOAcで2回抽出する。有機抽
出物を合わせて、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、所望の生成物の塩酸塩を得る。
【0155】
【0156】
表4: 参照実施例及び実施例4-1~4-7:アミドカップリング
適切なRef Ex1~11、例えばN-(6-クロロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)アゼチジン-3-カルボキサミドRef Ex2(30mg、0.08mmol)及び適切な酸(0.12mmol)のDMF(2mL)中の溶液に、EDC(21mg、0.11mmol)、HOBt(17mg、0.11mmol)及びDIPEA(43μL、0.25mmol)を加える。混合物をr.t.にて18h撹拌した後、sat.aq.NaHCO3で希釈し、EtOAcで2回抽出する。有機抽出物を合わせて、MgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮する。粗生成物をprep.HPLC(Prep-HPLC-3条件)で精製して、所望の生成物を得る。
【0157】
参照実施例及び実施例4-1~4-7を、適切なRef Ex1~11から、EDC/HOBt、HATU又はT3P、及び有機塩基(例えば、DIPEA又はピリジン)の存在下における、塩化アシル又はカルボン酸とのアミドカップリングにより合成する。カルボン酸等の官能基は適切なエステル保護基で保護してよい。例えば、エステルは、還元的アミノ化工程の後、2N LiOHでけん化される。
【0158】
けん化 適切なエステル(0.044mmol)をMeOH/THF 1:1(1mL)中に溶解し、2M LiOH(45μL、18.4mmol)で処理する。溶液をr.t.にて2h撹拌する(反応の進行をLCMSでモニター)。次いで、反応混合物を水で希釈し、5℃にて6N HClでpH1に酸性化し、EtOAcで2回抽出する。有機抽出物を合わせて、MgSO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、所望の生成物を得る。
【0159】
【0160】
表5: 実施例5-1~5-10:
実施例5-1: N-(6-フルオロ-4-メトキシピリジン-3-イル)-3-(2-イソプロピルフェニル)-1-スルファモイルアゼチジン-3-カルボキサミド
Ref Ex1(35mg、0.09mmol)及びTEA(39μL、0.28mmol)のジオキサン(1mL)中の溶液に、スルファミド(18mg、0.18mmol)を加える。反応混合物を100℃にて18h撹拌し、次いで蒸発させる粗製化合物をprep.HPLC(Prep-HPLC-2条件)で精製して、表題化合物Ex5-1を白色の固体(15mg、収率39%)として得る。LCMS-1:tR=0.94min、[M+1]+ 423.29。1H NMR(400MHz、DMSO D6) δ:8.69(s、1H)、8.15(s、1H)、7.42-7.32(m、3H)、7.29-7.24(m、1H)、7.05(s、2H)、6.89(s、1H)、4.41(d、J=7.6Hz、2H)、4.14(d、J=7.6Hz、2H)、3.75(s、3H)、2.75-2.64(m、1H)、1.11(d、J=6.6Hz、6H)。
【0161】
実施例5-2~5-10
実施例5-2~5-10を、適切なRef Ex1~11を出発物質として、Ex5-1について記載した方法と同様に合成する。
【0162】
【0163】
生物学的試験
ヒトLPAR1に対するIC50値を決定するためのベータ-アレスチン動員試験
Tango(登録商標) EDG2-bla U2OS細胞をInvitrogenから入手する。これらの細胞は、Tango(登録商標) GPCR-bla U2OS親株細胞中にインテグレートされたTEVプロテアーゼ部位及びGal4-VP16転写因子に結合したヒトLPA1受容体cDNAを有する。この親株細胞は、UAS応答エレメントの制御下で、ベータ-アレスチン/TEVプロテアーゼ融合タンパク質及びベータ-ラクタマーゼ(bla)レポーター遺伝子を安定に発現する。LPA(アゴニスト)が結合すると、LPA1受容体が活性化し、アレスチン-プロテアーゼ動員及び転写因子のタンパク質分解性放出を引き起こす:次いで、転写因子はベータ-ラクタマーゼレポーターコンストラクトの転写を制御し、これは生細胞基質(live-cell substrate)を添加して測定される。
【0164】
30μlのFreestyle 293 Expression Medium(Invitrogen)中の10’000個のTango(登録商標) EDG2-bla U2OS細胞を384ウェル黒色透明底プレートに播き、37℃、5%CO2において20hインキュベートする。アンタゴニスト試験については、1ウェル当たり5μlの試験化合物(DMSO/Freestyle 293 Expression培地/0.1%脂肪酸非含有BSA(Sigma)で段階希釈)又はバッファーコントロールを添加し、
37℃、5%CO2において30minインキュベートする。1ウェル当たり5μlのLPA 18:1(最終濃度500nM)(Freestyle 293 Expression培地/0.1%脂肪酸非含有BSA(Sigma)中の溶液)を添加し、プレートを37℃、5%CO2において16hインキュベートする。次いで、細胞を暗所にてLiveBLAzer-FRET(登録商標) B/G Substrate(Invitrogen)で2hロードし、蛍光照射を460nm及び530nmでSynergyMxリーダー(BioTek)を用いて測定する。両チャンネルからバックグラウンドを差し引いた後、各ウェルについて460/530nm照射比を算出し、次いで、プロットし、4-パラメータロジスティック関数にあてはめ、IC50値を得る。IC50は最大応答の50%を阻害するアンタゴニストの濃度である。
【0165】
例示化合物のアンタゴニスト活性(IC50値)を測定した。アンタゴニスト活性を表6に示す。値を複数回測定した場合には相乗平均値(geomean values)を記載する。
【0166】
【0167】
イン ヴィヴォにおける有効性の評価
式(I)の化合物のイン ヴィヴォにおける有効性は、マウスLPA誘発性皮膚血管漏出モデルを用いて決定することができる。雌性Balb/cマウスを、アルブミンマーカーエバンスブルー(Evans blue)(50mg/kg、i.v.、0.9%NaCl)の投与前に、ベヒクル又は試験化合物(p.o.)で少なくとも1h処理し、その後、LPA(5μg、i.d.)で刺激する。30分後、CO2吸入によりマウスを犠牲にする。注射部位から皮膚を円盤状に除き、ホルムアミド(500μl、37℃、24時間)中で処理し、比色分析法によりエバンスブルーの含量を定量する。結果を、円盤状皮膚片当たりの血管外に遊出したエバンスブルー(μg/disc)として表す。
【0168】
例として、ベヒクルのみで処理した動物群と比較して、本発明の選択した化合物、実施例5-2は、マウスに30mg/kgを経口投与した後、LPA誘発性血管漏出を効果的に減少させることができる。ベヒクル群と比較した血管漏出の減少は≧60%であった。
【0169】
ピルフェニドンと併用した式(I)の化合物の抗線維化効果の例
実施例「化合物」A-C又は参照「化合物」D(BMS-986020)とピルフェニドン単独の又は組み合わせた場合の抗線維化効果は、TGFβ-誘発筋線維芽細胞分化試験においてイン ヴィトロで測定することができる。
【0170】
併用効果実験: ヒト線維芽細胞におけるトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)-誘発α-平滑筋アクチン(αSMA)発現:
正常ヒト肺線維芽細胞(Normal Human Lung Fibroblasts)(NHLF)をLonzaから入手した。10’000個の細胞を300μlのFibroblast Growth Medium-2(FGM(登録商標)-2、Lonza)中で24ウェルプレートに播き、37℃、5%CO2下で20時間インキュベートした。培地を、0.1%脂肪酸非含有BSA(Sigma)を添加したFibroblast Basal Medium(FBM(登録商標)、Lonza)300μlに変え、プレートを37℃、5%CO2下で20時間インキュベートした。1ウェル当たり100μlの「化合物」、ピルフェニドン又はそれらの組み合わせ(FBM(登録商標)/0.1%脂肪酸非含有BSA中の溶液)を加え、30分間インキュベートし、次いで、100μlのTGFβ(最終5ng/ml)(FBM(登録商標)/0.1%脂肪酸非含有BSA中の溶液)を加え、37℃、5%CO2下で48hインキュベートした。細胞を氷冷PBSで洗浄し、NaF、オルトバナジン酸Na、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ジチオスレイトール(DTT)及びベンゾナーゼを添加したRIPAバッファー(Sigma)中で溶解した。試料を、4-12%のNovex Bis-Trisプレキャストゲル(Thermo Fischer Scientific)上でSDS-PAGEにより分離し、αSMA(Sigma)及びHRP-結合二次抗体を用いて、ウエスタンブロットにより分析した。膜をWestern Lighting Enhanced Chemiluminescence Substrate(Perkin Elmer)で処理し、化学発光シグナルを読み取り装置、Fusion FX6(Viber Lourmat)で記録した。シグナルを、Fusionソフトウェア内で濃度測定分析を用いて定量した。TGFβ-誘発αSMA発現の阻害の%を各「化合物」、ピルフェニドン及びそれらの組み合わせについて算出した。相加効果を、「化合物」単独及びピルフェニドン単独による阻害の%の値を足すことにより算出し、「期待併用阻害」として表した。「化合物」とピルフェニドンの併用による阻害の測定した%を「測定併用阻害」として表した。ピルフェニドンの有効性を、GraphPad Prismソフトウェアで下記の設定を用いて決定した:TGFβ刺激のないベヒクルコントロールにより定義した最小値、「化合物」の存在下又は非存在下におけるTGFβの反応により定義した最大値、加重(weighting)及び可変傾斜(variable slope)なし。
【0171】
【0172】
図1~4:10nMの各「化合物」A-D及び2mMのピルフェニドンによる、NHLFにおけるTGFβ-誘発αSMA発現の阻害は軽微であった。「化合物」A-Dのいずれかをピルフェニドンと併用すると相乗効果が見られ、αSMA発現を大幅に減少させた。
【0173】
図5は、「化合物」Aの非存在下及び10nM、100nM及び1000nMの「化合物」Aの存在下における、NHLFにおけるTGFβ-誘発αSMA発現に対するピルフェニドンの用量-反応を示す。「化合物」Aと併用した場合、IC
50(mM)の低下により示されるように、ピルフェニドンの有効性は増大する。
【0174】
ニンテダニブと併用した式(I)の化合物の抗線維化効果の例
各実施例「化合物」A-Cとニンテダニブ単独の又は組み合わせた場合の抗線維化効果は、TGFβ-誘発筋線維芽細胞分化試験においてイン ヴィトロで測定することができる。
【0175】
併用効果実験: ヒト線維芽細胞におけるTGFβ-誘発αSMA発現:
NHLFをLonzaから入手した。10’000個の細胞を300μlのFGM(登録商標)-2中で24ウェルプレートに播き、37℃、5%CO2下で20時間インキュベートした。培地を、0.1%脂肪酸非含有BSA(Sigma)を添加したFBM(登録商標)300μlに変え、プレートを37℃、5%CO2下で20時間インキュベートした。1ウェル当たり100μlの各「化合物」、ニンテダニブ又はそれらの組み合わせ(FBM(登録商標)/0.1%脂肪酸非含有BSA中の溶液)を加え、30分間インキュベートし、次いで、100μlのTGFβ(最終5ng/ml)(FBM(登録商標)/0.1%脂肪酸非含有BSA中の溶液)を加え、37℃、5%CO2下で48hインキュベートした。細胞を氷冷PBSで洗浄し、NaF、オルトバナジン酸Na、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ジチオスレイトール(DTT)を添加したRIPAバッファー(Sigma)中で溶解した。試料を、4-12%のNovex Bis-Trisプレキャストゲル(Thermo Fischer Scientific)上でSDS-PAGEにより分離し、αSMA(Sigma)及びHRP-結合二次抗体を用いて、ウエスタンブロットにより分析した。膜をWestern Lighting Enhanced Chemiluminescence Substrate(Perkin Elmer)で処理し、化学発光シグナルを読み取り装置、Fusion FX6(Viber Lourmat)で記録した。シグナルを、Fusionソフトウェア内で濃度測定分析を用いて定量した。TGFβ-誘発αSMA発現の阻害の%を各「化合物」、ニンテダニブ及びそれらの組み合わせについて算出した。相加効果を、「化合物」単独及びニンテダニブ単独による阻害の%の値を足すことにより算出し、「期待併用阻害」として表した。「化合物」とニンテダニブの併用による阻害の測定した%を「測定併用阻害」として表した。
【0176】
【0177】
図6~8:10nMの各「化合物」A-C及び1μMのニンテダニブによる、NHLFにおけるTGFβ-誘発αSMA発現の阻害は軽微であった。「化合物」A-Cのいずれかをニンテダニブと併用すると、少なくとも相加効果が見られ、αSMA発現を大幅に減少させた。