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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20250414BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250414BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20250414BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20250414BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250414BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20250414BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C12N15/12
C07K2/00
C40B40/10
C12N5/10
C12N15/85 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022537314
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 GB2020053263
(87)【国際公開番号】W WO2021123789
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】1918693.1
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タバソリ,アリ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-042159(JP,A)
【文献】The journal of biological chemistry,2002年,277,37512-37518
【文献】ACS Chem. Biol.,2016年,11,1624-1630
【文献】Cancer Res ,2002年,62,2013-2018
【文献】Curr Opin Chem Biol,2019年06月,50,111-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/02
C12N 15/00-15/90
C07K 2/00
C40B 40/10
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞における環状ペプチドの非毒性産生のための方法であって、
a)ベクターを前記哺乳動物細胞に導入することであって、前記ベクターが、スプリットインテインのC末端インテインドメインおよびN末端インテインドメインをコードする構築物、環化されるポリペプチド配列、ならびに分解タグを含み、前記分解タグが、少なくとも1つのインテインドメインに結合する、導入することと、
b)活性インテインおよび前記ポリペプチド配列を含む中間体を産生するために前記構築物を発現させることであって、それにより、前記活性インテインが、スプライシングを受け、前記ポリペプチドを環化し、前記分解タグが、分解のために、随意にユビキチン-プロテアソーム経路による分解のために前記活性インテインに結合するペプチド配列である、発現させることと、を含む、方法。
【請求項2】
環状ペプチドを発現する哺乳動物細胞であって、前記哺乳動物細胞が、
a)ベクターを前記哺乳動物細胞に導入することであって、前記ベクターが、スプリットインテインのC末端インテインドメインおよびN末端インテインドメインをコードする構築物、環化されるポリペプチド配列、ならびに分解タグを含み、前記分解タグが、少なくとも1つのインテインドメインに結合する、導入することと、
b)活性インテインおよび前記ポリペプチド配列を含む中間体を産生するために前記構築物を発現させることであって、それにより、前記活性インテインが、スプライシングを受け、前記ポリペプチドを環化し、前記分解タグが、分解のために、随意にユビキチン-プロテアソーム経路による分解のために前記活性インテインに結合するペプチド配列である、発現させることと、を含む、方法によって産生される、哺乳動物細胞。
【請求項3】
各哺乳動物細胞が異なる環状ペプチドをコードする異なる核酸を含む、請求項2に記載の哺乳動物細胞を含む哺乳動物細胞のライブラリー。
【請求項4】
スプリットインテインのC末端インテインドメインおよびN末端インテインドメインをコードするポリヌクレオチドカセット、環化されるポリペプチド配列、ならびに哺乳動物細胞における使用に好適な分解タグを含み、前記分解タグが、少なくとも1つのインテインドメインに結合前記分解タグが、分解のために、随意にユビキチン-プロテアソーム経路による分解のために前記活性インテインに結合するペプチド配列である、遺伝子構築物。
【請求項5】
前記活性インテインが、前記分解タグによって分解される前にスプライスする、請求項に記載の遺伝子構築物。
【請求項6】
前記分解タグが、少なくとも部分的にユビキチン化によって分解をもたらす、請求項4又は5に記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
前記分解タグが、低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットまたはタンパク質分解標的キメラ(PROTAC)である、請求項4~6のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項8】
前記分解タグが、キー残基P564を含む低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットの酸素依存的分解(ODD)ドメインである、請求項4~7のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項9】
前記HIF-1αのODDドメインがアミノ酸548~603に及ぶ配列長を含む、請求項に記載の遺伝子構築物。
【請求項10】
前記分解タグが、E3ユビキチンリガーゼを係合することができるタンパク質分解標的キメラ(PROTAC)小分子である、請求項のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項11】
前記活性インテインが、Cfa、Npu、Ssp、またはgp41-1インテインである、請求項4~10のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項12】
前記活性インテインがNpuインテインである、請求項10のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項13】
前記分解タグと前記インテインとの間の連結が直接連結である、請求項4~12のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項14】
前記遺伝子構築物が、少なくとも1つの親和性タグをさらにコードする、請求項4~13のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項15】
前記コードされる少なくとも1つの親和性タグが、抗体認識のためのFLAGタグである、請求項14に記載の遺伝子構築物。
【請求項16】
前記遺伝子構築物が蛍光タグをさらにコードし、前記タグが好ましくはDsRedである、請求項4~15のいずれか一項に記載の遺伝子構築物。
【請求項17】
請求項4~16のいずれか一項に記載の遺伝子構築物を含むベクター。
【請求項18】
請求項4~16のいずれか一項に記載の遺伝子構築物及び/又は請求項17に記載のベクターを含む哺乳動物細胞。
【請求項19】
請求項18に記載の哺乳動物細胞を含む哺乳動物細胞のライブラリー。
【請求項20】
前記ベクターが、請求項17に記載のベクターである、請求項1に記載の哺乳動物細胞における環状ペプチドの非毒性産生のための方法。
【請求項21】
請求項1又は20に記載の方法を使用して環状ペプチドライブラリーを生成する方法。
【請求項22】
前記インテインが、哺乳動物細胞に対して毒性である、請求項1又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物細胞内の効率を高めるためにペプチドおよびタンパク質のスプリットインテイン環式ライゲーション(SICLOPPS)方法に改変を行うことによる環状ペプチドの非毒性産生に関する。
【背景技術】
【0002】
創薬の初期段階での環状ペプチドの使用は、製薬の研究開発においてますます普及してきている。2つのみのアミノ酸が結合したものから、何百ものそのような残基を含むペプチドまで、長さが様々であるこれらのペプチドは、タンパク質間相互作用阻害剤を特定するのに特に有用であり、薬物様小分子の設計のための重要な出発点としての機能においてさらなる用途がある。
【0003】
ペプチドは、別様には「創薬可能でない」標的に対するリガンドとして特別な有用性を有する。そのような創薬可能でない標的は、細胞内分子、特定のタンパク質間相互作用である可能性があり、概して小分子および生物製剤には不適切である。ペプチドのさらなる環化または閉環は、インビボでのそのような分子の寿命を延ばし、その後、それらの薬物動態力学を著しく改善する。自然界に見られる有用な環状ペプチドの範囲は多少限られていますが、実験室での合成ポリペプチドの生産自体は、候補薬を発見する可能性への道を開く。
【0004】
結果として、合成環状ペプチドの大規模なライブラリーの生成は、甚大な経済的および商業的意味のある現代の創薬の土台となっている。そのような遺伝子的にコードされたライブラリーにより、各ペプチドに結合し得るDNAまたはmRNAタグの配列決定を行うことで、標的タンパク質に結合するヒットのハイスループットスクリーニングおよび迅速なデコンボリューションが可能になる。
【0005】
細胞内環状ペプチドライブラリー生成のためにますます使用されている1つの方法は、ペプチドおよびタンパク質のスプリットインテイン環式ライゲーション(SICLOPPS)と称される。アクセスが容易なこの方法は、1億を超えるメンバーのライブラリーをかなりの速度および簡潔さで生成することができ、その細胞内の性質により、インビボでの統合された機能アッセイが可能になる。
【0006】
このアプローチでは、インテインスプライシングを利用して、目的の各ペプチド、つまり「エクステイン」を環化する。インテインは、隣接するエクステイン配列のN末端およびC末端を新しいペプチド結合でライゲーションしながら、2つのペプチド結合の切断をとおして、より大きな前駆体ポリペプチドからの自己切除事象を受けることができる独自の自動プロセシングタンパク質ドメインである。「スプリットインテイン」は、より具体的には、そのポリペプチド配列が2つの遺伝子に由来し、その結果、2つの別個のNインテインドメインおよびCインテインドメインがエクステインに隣接するようになる。翻訳後、2つのドメインは非共有結合で再度アセンブルされて標準的な活性インテインになり、タンパク質のスプライシングを実行する。
【0007】
SICLOPPS構築物は、C末端のインテインドメインと、それに続く環化されるエクステインポリペプチド配列、およびN末端インテインドメインをコードする。転写および翻訳の際に、隣接領域は会合して、スプライシングの結果として、C末端およびN末端のインテインドメイン間の残りのポリペプチド配列を自己切除および環化する活性インテインを付与する。標的ペプチドの最初のアミノ酸が求核性システイン、セリン、またはトレオニンであることを条件として、様々な長さおよびアミノ酸組成のペプチドをSICLOPPS法に組み込むことができる。
【0008】
この技法により、SICLOPPSプラスミド、縮重オリゴヌクレオチド、およびいくつかの単純な分子生物学ステップしか必要としない、環状ペプチドライブラリーを生成するための簡単な方法を提供される。縮重オリゴヌクレオチドは、環状ペプチドの環サイズ、ランダム化されたアミノ酸の数、および組み込まれる任意の設定されたアミノ酸を決定するように設計されることになる。目的の固有のエクステイン配列を含む各オリゴヌクレオチドは、PCR消化およびライゲーション技術を介してSICLOPPSプラスミドに組み込まれ、ライブラリーを創出する。次に、プラスミドライブラリーを、例えば表現型アッセイを含む細胞に形質転換した後、スクリーニングすることができる。活性な環状ペプチドの同一性は、所望の表現型を示す細胞からSICLOPPSプラスミドを単離し、続いてDNA配列決定することにより明らかになる(Tavassoli 2017,Curr Opin Chem Biol 38:30-35)。
【0009】
SICLOPPSの出現により、大腸菌、酵母、および哺乳動物細胞など、様々な生物におけるアッセイと環状ペプチドライブラリーとを調和させる利点がもたらされた。細胞内機能アッセイは、様々な標的に対して実施することができるため、ライブラリーの各メンバーの親和性だけでなく、所与の標的に対するその機能も評価することができる。SICLOPPSライブラリーはDNAでコードされているため、ライブラリーの構成を大幅に制御でき、様々なライブラリーを容易に作成して、そのような標的に対してスクリーニングすることができる。実装が容易なSICLOPPSライブラリーの変形の例には、異なる環サイズの環状ペプチド、異なるアミノ酸組成のライブラリー、またはライブラリーのすべてのメンバーにおける設定された位置への所与のアミノ酸もしくはモチーフの包含が含まれる。このため、使用者は、環状ペプチドライブラリーの構成を、それをコードする縮重オリゴヌクレオチドを介して、完全に制御することができる。
【0010】
SICLOPPSは元々、Synechocystis sp.PCC6803からのDnaEスプリットインテインを使用する。Sspインテインは、スプライス速度が比較的遅く、スプライス接合部付近のアミノ酸変化に対して相当な感度があり、これは、環状ペプチドライブラリーの相当部分が実際には環状ペプチドではなく、むしろ部分的にスプライスされたインテインとして存在し得ることを意味する。しかしながら、この技法のそのような限界は、より高速なスプライシングおよびNostoc punctiformeから操作されたより広宿主域の「Npu」インテインを適合させることにより克服された。
【0011】
代替のインテインタイプを使用することからの明らかな進歩にもかかわらず、インテイン自体の使用は、本技法の細胞における効率のレベルが低いことに関して依然として問題を提起する。Townend and Tavassoli(2016)は、SICLOPPSで生成された環状ペプチドライブラリーが大腸菌の細胞生存率に及ぼす影響を調査した(Townend & Tavassoli 2016,ACS Chem Biol 11(6):1624-1630)。データは、スプライシングの速度が速く、エクステイン配列における変動に対する耐性があるにもかかわらず、Npu SICLOPPSライブラリーの約42%が大腸菌宿主に対して細胞毒性であり、その有用性を大幅に低下させることが見出されたことを示す。この研究では3つの異なる大腸菌株(DH5α、BW27786、およびBL21)を利用しているため、そのような観察された効果が株特異的である可能性は低いとみなされた。このアッセイはさらに、あまり好ましくないSspインテインを用いて実行され、結果は、ライブラリーメンバーの約14%が宿主の生存率にも影響したことを示す。ライブラリーによってコードされる環状ペプチドの一部は、例えば重要なタンパク質または経路への干渉をとおして、大腸菌に対して本質的に毒性がある可能性が高いが、実験では両方のインテインセットが同じライブラリーをコードした。このため、Npuインテインで観察されるものよりも高いレベルの毒性は、Npuインテイン自体にのみ起因し得る。
【0012】
2016年の研究では、科学者は、スプライシングされたインテインを細胞内分解に標的化するために、目的のタンパク質のC末端にSsrAタグ(AANDENYALAA、配列番号11)を設計した(Townend & Tavassoli 2016,ACS Chem Biol 11(6):1624-1630)。SsrA配列を付加すると、タグ付きタンパク質が大腸菌に固有のClpXP機構に誘導されて分解され、タグ付きタンパク質の半減期を約5分に短縮することが示された。
【0013】
大腸菌におけるNpu SICLOPPSインテインの細胞毒性を低減するための調査が行われているが、原核細胞と細胞機能が異なる哺乳動物細胞での使用に適用できる、そのような記載された代替アプローチは存在しない。創薬のための哺乳動物細胞における環状ペプチドの機能アッセイに対する需要がますます高まる中、効率を改善するためのSICLOPPSの修正は、哺乳動物特異的標的に対する化合物の解明に役立つであろう。
【0014】
このため、より効率的な様式で哺乳動物細胞において環状ペプチドを生成する修正されたSICLOPPSアプローチの必要性が存在する。
Kinsella et al 2002 JBC 277:37512-37518は、Ssp SICLOPPSインテインを使用した哺乳動物細胞における最大160,000のメンバーを有する環状ペプチドライブラリーの産生について説明しているが、インテインと関連付けられる毒性については言及も調査もしていない。
【発明の概要】
【0015】
哺乳動物細胞におけるインテインの毒性については、Kinsellaらは調査していない。発明者らは、驚くべきことに、哺乳動物細胞も活性インテインから生じる毒性の影響を受けやすいことを見出した。これ以前は、哺乳動物細胞におけるインテイン関連毒性の問題は認識されていなかった。発明者らは、哺乳動物細胞での使用に好適であり、インテイン関連毒性を未然に防ぎ、スプリットインテインシステムを環状ペプチドの産生のために哺乳動物細胞で広く使用できるようにする分解タグシステムを考案した。
【0016】
本発明は、結果として生じるあらゆるインテイン誘導性細胞毒性を最小限に抑えるために、インテインに結合した分解タグを含むように哺乳動物細胞ベースのSICLOPPS方法論を修正することが可能であるという驚くべき発見に基づいている。分解タグをN末端またはC末端のインテインドメインのいずれかに結合させると、標準的な活性インテインを、目的のエクステインのスプライシングおよび環化に続いて、哺乳動物細胞の分解経路を介した分解に向けることができるようになる。したがって、このアプローチにより、哺乳動物細胞内での環状ペプチド産生中に細胞毒性インテインの有害な蓄積が形成されることが防止される。したがって、そのような分解タグ付きインテインは、哺乳動物細胞内でより効率的に環状ペプチドライブラリーを生成するために、修正されたSICLOPPS方法論において使用することができる。重要なのは、インテインが分解される前にスプライスできることである。
【0017】
このため、本発明の第1の態様では、哺乳動物細胞における環状ペプチドの非毒性産生のための方法が提供され、本方法は、a)ベクターを哺乳動物細胞に導入することであって、ベクターが、C末端インテインドメイン、環化されるポリペプチド配列、N末端インテインドメイン、および分解タグを含み、分解タグが、少なくとも1つのインテインドメインに結合する、導入することと、b)活性インテインおよびポリペプチド配列を含む中間体を産生するために構築物を発現させることであって、活性インテインが、形成された時点でスプライシングを受け、ポリペプチドを環化し、分解タグが、活性インテインを分解する、発現させることと、を含む。
【0018】
本発明はまた、本発明の第1の態様の方法によって産生される哺乳動物細胞を提供する。例えば、本発明は、環状ペプチドを発現する細胞を提供し、ここで、哺乳動物細胞は、
a)ベクターを哺乳動物細胞に導入することであって、ベクターが、スプリットインテインのC末端インテインドメインおよびN末端インテインドメインをコードする構築物、環化されるポリペプチド配列、ならびに分解タグを含み、分解タグが、少なくとも1つのインテインドメインに結合する、導入することと、
b)活性インテインおよびポリペプチド配列を含む中間体を産生するために構築物を発現させることであって、それにより、活性インテインが、スプライシングを受け、ポリペプチドを環化し、分解タグが、活性インテインを分解する、発現させることと、を含む、方法によって産生される。
【0019】
本発明はまた、本発明の第1の態様に従って産生された哺乳動物細胞のライブラリーを提供する。すなわち、ライブラリーは、異なる環状ペプチドをコードする異なる核酸を各々含むある数の哺乳動物細胞を含み、ここで、核酸は、本明細書に記載される本発明の核酸である。いくつかの実施形態では、本発明の第1の態様に従う方法によって産生された哺乳動物細胞のライブラリーは、環状ペプチドレベルで少なくとも128,000、任意選択で、例えば、環状ペプチドレベルで少なくとも150,000または少なくとも200,000のメンバーを含む。当業者であれば理解するように、何百万もの異なる遺伝子構築物を含むライブラリーを作成することは可能であるが、遺伝子がコードするタンパク質またはペプチド(この場合は環状ペプチド)が細胞に対して毒性である場合には、それらの細胞は失われて、タンパク質レベルでのライブラリー内のメンバーの数が減少する。例えば、200万のメンバーのライブラリーが遺伝子レベルで作成されるが、活性インテインが毒性である場合、例えば環状ペプチドを発現する100万のメンバーしか得られない。本発明は、インテインと関連付けられる毒性に対処するので、はるかに大きな環状ペプチドライブラリー、または本発明の第1の態様の方法に従って生成される哺乳動物細胞のはるかに大きなライブラリーを生成することが可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明の第1の態様に従う方法によって生成される哺乳動物細胞のライブラリーは、タンパク質レベルで少なくとも128,000のメンバー、例えば、少なくとも130,000、150,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、100万、150万、200万、250万、300万、320万、350万、または少なくとも400万のメンバーを含む。
【0021】
タンパク質レベルでとは、発現された環化ペプチドレベルのレベルの意味を含む。
【0022】
当技術分野で報告されているように、哺乳動物細胞において環状ペプチドを生成するためのスプリットインテインの使用により、毒性であり得る活性インテインを含む哺乳動物細胞が得られる一方で、分解タグの使用に起因する本発明の細胞は、活性インテインを含まないか、活性インテインを実質的に含まない、例えば、毒性の活性インテインを含まないか、実質的に含まない。
【0023】
本発明は、本発明の哺乳動物細胞から調製された細胞溶解物も提供する。
【0024】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様に従う方法によって生成された環状ペプチドライブラリーが提供される。
【0025】
本発明の第3の態様では、C末端インテインドメインをコードするポリペプチドカセット、環化されるポリペプチド配列、N末端インテインドメイン、および哺乳動物細胞における使用に好適な分解タグを含む遺伝子構築物が提供され、ここで、分解タグは、少なくともインテインドメインに結合し、発現されると、活性インテインが形成される。
【0026】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様に従う遺伝子構築物を含むベクターが提供される。
【0027】
本発明の第5の態様では、本発明の第4の態様に従うベクターまたは本発明の第3の態様に従う遺伝子構築物を含む哺乳動物細胞が提供される。本発明はまた、本発明の第4の態様に従うベクターまたは本発明の第3の態様に従う遺伝子構築物を含む哺乳動物細胞のライブラリーを提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞のライブラリーは、少なくとも200,000のメンバー、例えば、少なくとも300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、100万、150万、200万、250万、300万、320万、350万、または少なくとも400万のメンバーを含む。
【0028】
本発明の第6の態様では、本発明の第1の態様の方法に従って環状ライブラリーを生成する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、以下の図面を参照して例解される。
図1】SICLOPPSの機序の開始を示し、ここでは、目的のエクステインペプチド配列に隣接するN末端およびC末端のインテインドメインが非共有結合して、標準的な活性インテインを形成する(Townend & Tavassoli 2016,ACS Chem Biol 11(6):1624-1630から採用)。
図2】活性インテイン形成後のSICLOPPSの機序を示す。チオエステル中間体およびラリアット中間体が関与する3段階プロセスでは、活性インテインは、スプライスして標的ペプチドエクステインを環化する。
図3】どのように環状ペプチドライブラリーをSICLOPPSプラスミドライブラリーから生成することができるのかを示す。適切な複製起点、選択可能なマーカーおよびプロモーター、ならびに目的のSICLOPPS構築物を含むプラスミドを哺乳動物細胞にトランスフェクトする。転写および翻訳に続いて、発現されたインテイン、この場合DnaEインテインは、目的の各ペプチドを環化して、そのような分子の細胞内ライブラリーを生成する。
図4】Nインテインに分解タグを付加して設計されたeGFP/YFPペプチドのSICLOPPS構築物を示す。結合した分解タグは、低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットの酸素依存的分解(ODD)ドメインである。構築物へのさらな付加には、親和性タグ、mCherryの蛍光タグ、および抗体認識のためのFLAGタグが含まれる。
図5】HeLa細胞にトランスフェクトした図4に従うSICLOPPSプラスミドの蛍光顕微鏡画像を示し、HeLa細胞は、その後、100μMのデフェロキサミン(DFX)処理ありおよびなしで酸素の存在下に置いた。インテインは、酸素が存在し、DFXが存在しない場合にのみ分解するはずである。結果は、mCherry蛍光と関連付けられたインテインが、mCherry蛍光を示したDFX実験と比較して、酸素正常状態で分解したことを示す。GFPでマークしたエクステインは、両方の条件下で存在したままであった。
図6】HeLa細胞にトランスフェクトした、P564Gを分解タグにさらに含む図4に従うSICLOPPSプラスミドの蛍光顕微鏡画像を示し、HeLa細胞は、その後、100μMのデフェロキサミン(DFX)処理ありおよびなしで酸素の存在下に置いた。この変異型構築物では、インテインは、結果において観察されたように、状態に関係なく分解されることは決してないはずである。
図7】HeLa細胞にトランスフェクトし、酸素正常状態、低酸素状態、またはDFX処理した条件下でインキュベートした上記の野生型(WT)およびP564G変異型SICLOPPSプラスミドのウエスタンブロット分析を示す。低酸素状態およびDFX条件では、野生型プラスミドのインテイン分解は示されなかったが、通常の酸素条件ではインテインが分解された。
図8】酸素正常状態または低酸素状態で、上記のWTおよびP564G変異型SICLOPPSプラスミドでトランスフェクトしたHeLa細胞についての48時間にわたる細胞数を示す。この傾向は、低酸素状態では、インテインが分解されることなく、細胞毒性に起因する細胞数の減少が、経時的にWTおよびP564G両方のSICLOPPSプラスミドについて発生することを示す。しかしながら、通常の条件下では、細胞毒性に起因して数が減少するプロリン変異型インテイン含有細胞と比較して、インテインの分解を伴うWTトランスフェクト細胞の細胞数は、経時的に維持される。
図9】GFP-Npu-ODDD-mCherryをコードするプラスミドでトランスフェクトしたTrex293細胞を示す。スプライシング(WT)または非スプライシング(C1A)である。ゲートは、Q1:mCherry+GFP-、Q2:mCherry+GFP+、Q3:mCherry-GFP+、Q4:mCherry-GFP-を表す。A)DFXなしのGFP-WT。Q1:2.53%、Q2:47.5%、Q3:32.1%、Q4:17.8%。B)DFXありのGFP-WT。Q1:3.24%、Q2:69.3%、Q3:10.8%、Q4:16.6%。C)DFXなしのGFP-C1A。Q1:40.4%、Q2:37.5%、Q3:0.65%、Q4:21.4%。D)DFXありのFP-C1A。Q1:25.0%、Q2:54.3%、Q3:0.18%、Q4:20.5%。E)A(暗灰色;-DFX)およびB(淡灰色;+DFX)からのmCherry+細胞のオーバーレイ。DFXの付加により、mCherry(すなわち、インテイン)の分解が防止される。mCherryの値-中央値A:265ユニット、B:618ユニット。
図10】GFP-Npu-ODDD-mCherryスプライシング(WT)をコードするプラスミドを統合したTrex293細胞。ゲートは、Q1:mCherry+GFP-、Q2:mCherry+GFP+、Q3:mCherry-GFP+、Q4:mCherry-GFP-を表す。A)DFXなしのGFP-WT。Q1:0.035%、Q2:0.84%、Q3:67.4%、Q4:31.7%。B)DFXありのGFP-WT。Q1:0.17%、Q2:35.1%、Q3:29.4%、Q4:35.4%。
図11】DFXなしの細胞(-dfx)およびDFXありの細胞(+dfx)を、24時間の培養後の生存率について評価した。値は3つぞろいである(+/-SD)。生存率は、各細胞株についてそれらの-dfx対照に対して正規化した。
図12】実施例5および6で使用したGFP-Npu-mCherry-ODDDのプラスミドマップである。
【0030】
配列表の説明
配列番号1は、Synechocytis sp.株PCC6803から単離したSsp DnaEスプリットインテインのC末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号2は、Synechocytis sp.株PCC6803から単離したSsp DnaEスプリットインテインの対応するN末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号3は、Nostoc sp.株PCC73102から単離したNpu DnaEスプリットインテインのC末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号4は、Nostoc sp.株PCC73102から単離したNpu DnaEスプリットインテインの対応するN末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号5は、安定性および活性を増強するように操作した人工Cfa DnaEスプリットインテインのC末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号6は、安定性および活性を増強するように操作した人工Cfa DnaEスプリットインテインの対応するN末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号7は、スプライシング活性を非常に高速にするように操作した「超高速」gp41-1DnaEスプリットインテインのC末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号8は、スプライシング活性を非常に高速にするように操作した「超高速」gp41-1DnaEスプリットインテインの対応するN末端インテインドメインのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号9は、分解タグとして使用され得る、酸素依存的分解(ODD)ドメインを含むホモサピエンス低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットのアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号10は、分解タグとして使用され得る、ホモサピエンス低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットの酸素依存的分解(ODD)ドメインのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、SICLOPPSベースの方法論への分解タグの付加により、細胞毒性インテイン副産物の蓄積を生成することなく、哺乳動物細胞内での環状ペプチドの生成が可能になるという驚くべき発見を前提とする。このため、環状ペプチドは、そのような方法と通常関連付けられる効率レベルの低下なく、哺乳動物細胞で産生され得る。
【0041】
本明細書で使用される「環状ペプチド」という用語は、その構成原子が環を形成する、「環化」されたポリペプチドまたはタンパク質を指す。例えば、線状ペプチドは、その遊離アミノ(N)末端がその遊離カルボキシ(C)末端に、すなわち、頭から尾への形式で、共有結合するとき、遊離C末端またはN末端がペプチドに残らないように、環化される。本明細書で参照される場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0042】
本発明は、分解タグの使用を組み込むように改変されたSICLOPPS方法論によって哺乳動物細胞内で環状ペプチドを生成する方法を提供する。
【0043】
「哺乳動物細胞」という用語は、細菌および古細菌とは対照的に、構造的に明確な細胞内構成を有する真核細胞を指す。哺乳動物細胞は細胞培養で使用されることが多く、例としては、治療用タンパク質の大量生産に使用される最も一般的な哺乳動物細胞株であるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の使用である(Wurm 2004,Nat Biotech 22(11):1393-1398)。
【0044】
SICLOPPSまたは「ペプチドおよびタンパク質のスプリットインテイン環式ライゲーション」は、環状ペプチドの生成のためにインテインスプライシングを利用する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「インテイン」という用語は、タンパク質の翻訳後プロセシング中にスプライシング反応を触媒することができる前駆体タンパク質内に埋め込まれた天然に存在するまたは人工的に構築されたポリペプチド配列を意味する。インテインは、前駆体タンパク質からそれ自体を切除し、「スプライシング」と呼ばれるプロセスにおいて残りの部分をペプチド結合により接合することができる。「スプリットインテイン」は、2つの別個の遺伝子によってコードされた、互いに融合していない2つ以上の別個の構成要素を有するインテインである。場合によっては、スプリットインテイン構成要素は、「エクステイン」と称されるその中のポリペプチド配列に隣接することになる。エクステインに隣接するとき、スプリットインテイン構成要素は、エクステインのN末端およびC末端に関して、N末端およびC末端インテインドメインと称される。
【0046】
本発明のすべての態様のいくつかの実施形態では、インテインは、哺乳動物細胞に対して毒性であるインテインである。毒性とは、インテインが哺乳動物細胞の増殖速度に悪影響を及ぼしたり、アポトーシスまたは壊死を引き起こしたりするという意味を含む。
【0047】
哺乳動物細胞は、環状ペプチドを発現することが望まれるいずれの哺乳動物細胞であってもよい。
【0048】
現在、350種類を超えるインテインが認識されており、その各々は、スプライシング反応を触媒する速度が異なり得る。インテインの命名法は、それが発見された生物の学名に基づく。例えば、Sspインテインは、Synechocytis sppから最初に分離された一方、より高速のスプライシングNpuインテインは、Nostoc punctiformeから最初に分離された。既知のインテインのうちのいくつかのリストを含むデータベースは、http://www.biocenter.helsinki.fi/bi/iwai/InBase/tools.neb.com/inbase/list.htmlに見ることができる。
【0049】
本発明で使用されるインテインは、結合した分解タグによってその分解時間よりも速くスプライスするいずれのインテインであってもよい。当業者であれば、対応する分解タグとともに使用するのに適切なインテインを選択することができる。
【0050】
一実施形態では、インテインは、Cfaインテインであってもよい。好ましい実施形態では、インテインは、C末端およびN末端インテインドメインについてそれぞれ配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列を含むスプリットCfaインテインであってもよい。
【0051】
別の好ましい実施形態では、インテインは、Sppインテインであってもよい。さらに好ましい実施形態では、インテインは、C末端およびN末端インテインドメインについてそれぞれ配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列を含むスプリットSppインテインであってもよい。
【0052】
別の好ましい実施形態では、インテインは、gp41-1インテインであってもよい。さらに好ましい実施形態では、インテインは、C末端およびN末端インテインドメインについてそれぞれ配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を含むスプリットgp41-1インテインであってもよい。
【0053】
なお別の好ましい実施形態では、インテインは、Npuインテインであってもよい。最も好ましい実施形態では、インテインは、C末端およびN末端インテインドメインについてそれぞれ配列番号3および配列番号4のアミノ酸配列を含むスプリットNpuインテインであってもよい。
【0054】
SICLOPPSのプロセスは、Tavassoli 2017,Curr Opin Chem Biol 38:30-35によって参照されているように、当該技術分野で既知である。SICLOPPS法は、C末端インテインドメインと、それに続く環化されるエクステインポリペプチド配列、およびN末端インテインドメインを含む構築物を利用する。構築物は、mRNA配列の翻訳に続いて、介在するエクステインに隣接するN末端およびC末端のインテインドメインが非共有的に会合して、後に環状ポリペプチドを産生するスプライシング反応を触媒する機能的な活性インテイン(図1)を形成するように、配列される。
【0055】
図2に示すように、折り畳まれたSICLOPPS構築物、つまり「融合タンパク質」は、その活性な標準的インテインとともに、N末端インテインドメインおよびエクステイン接合部でNからSへのアシルシフトを触媒して、チオエステル中間体を生成することになる。チオエステル中間体は、反対側のC末端インテインドメインおよびエクステイン接合部で側鎖求核試薬とのエステル交換を受けて、ラリアット中間体を形成することになる。最後に、アスパラギン側鎖の環化およびそれに続くXからNへのアシルシフトにより、環状ペプチドがインテインから遊離する(Scott et al.,1999,PNAS 96(24):13638-13643)。このため、そのような方法により、環状ペプチドと今や不要なインテインポリペプチドを含む副産物とが生成される。
【0056】
このため、本発明のいくつかの実施形態では、以下の配列を含み得るNpuスプリットインテインを含むポリペプチド構築物を使用する改変されたSICLOPPS法が存在する:
HHHHHHMIKIATRKYLGKQNVYDIGVERYHNFALKNGFIASN X~~~~~CLSYDTEILTVEYGILPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDR GEQEVFEYCLEDGCLIRATKDHKFMTVDGQMMPIDEIFERELDLMRVDNLPN
(配列番号12;ここで、「~」はさらなるXとして表される)。
【0057】
ここで、X~~~~~は、生成されるエクステインおよび環状ペプチドであり、Xは、C、S、またはTであり、「~」は、環状ペプチド配列のアミノ酸を示す。スプライシングが機能するためには、最初の位置が、不変のシステイン、セリン、またはトレオニン残基によって占有されている可能性があることが必要である。上記の配列中の「X」の後にいずれの配列を挿入してもよいことは当業者には明らかとなる。この配列は、1アミノ酸長以上であってもよい。
【0058】
好ましい実施形態では、配列は、3アミノ酸長以上であってもよい。最も好ましい実施形態では、配列は、少なくとも6アミノ酸長であってもよい。
【0059】
上記の配列は、以下の構成要素を含む。
1.
HHHHHH(配列番号13)
精製を支援するための任意選択のヘキサヒスチジン(6×His)タグ、または任意の他のそのような親和性タグを構築物内に含めてもよい。このため、一実施形態では、基礎となるSICLOPPS構築物は、親和性タグをさらに含むことになる。好ましい実施形態では、構築物は6×Hisタグを含むことになる。さらに別の好ましい実施形態では、構築物は2×Strepタグを含むことになる。
2.
MIKIATRKYLGKQNVYDIGVERYHNFALKNGFIASN(配列番号14)
C末端インテインドメインを含む。
3.
X~~~~~
環化されるポリペプチドエクステイン配列を含む。
4.
CLSYDTEILTVEYGILPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEV FEYCLEDGCLIRATKDHKFMTVDGQMMPIDEIFERELDLMRVDNLPN(配列番号15)
N末端インテインドメインを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、SICLOPPS構築物は、抗体認識のためのタグを含むようにさらに修正されてもよい。好ましい実施形態では、抗体認識のためのタグは、FLAGタグであってもよい。
【0061】
本発明は、改変されたSICLOPPS方法を提供し、本方法では、上に例示したようなSICLOPPS構築物が、N末端またはC末端のインテインドメインのいずれかに結合した哺乳動物細胞における使用に好適な分解タグを付加することにより修飾される。
【0062】
「分解タグ」という用語は、細胞の分解機構による分解のためにタンパク質をマークするペプチド配列を包含することを意図している。哺乳動物細胞では、選択的タンパク質分解の主な経路はユビキチン-プロテアソーム経路である。ユビキチン依存的タンパク質分解は、シグナル伝達、細胞周期進行、および転写調節を含む、多くの生物学的プロセスにおいて自然の役割を有する(Groulx & Lee 2002,Mol Cell Biol 22(15):5319-5336)。ユビキチンは、ユビキチン化と呼ばれるプロセスにおいて基質タンパク質に付加することができる小型の調節タンパク質である。ユビキチンの抱合は、3つの酵素が関与するATP依存的プロセスである。E1およびE2タンパク質は、抱合のためにユビキチンを準備し、E3ユビキチンリガーゼは、特定のタンパク質基質を認識して、転移活性化ユビキチン分子を触媒する。タンパク質が単一のユビキチン分子でタグ付けされると、他のE3ユビキチンリガーゼは、さらなるユビキチン分子を結合するようにシグナル伝達を受け、基質タンパク質に結合したポリユビキチン鎖が生じる。
【0063】
続いて、ユビキチン化のタグが付けられたタンパク質は、ユビキチン鎖がプロテアソームによって認識される細胞プロテアソーム複合体を標的とし、結合したタンパク質は7~8アミノ酸長のペプチドに分解される。このため、分解タグは、タグ付けされたタンパク質をE3ユビキチンリガーゼに係合させることによって機能して、ポリユビキチン鎖の付加およびそれに続くプロテアソームによる分解をもたらすことができる。
【0064】
本発明の一実施形態では、N末端またはC末端のインテインドメインのいずれかに結合した分解タグを含み得る、上記のような構築物を使用する改変されたSICLOPPS法が提供される。
【0065】
好ましい実施形態では、結合した分解タグは、ユビキチン化によって少なくとも部分的に分解をもたらし得る。
【0066】
別の好ましい実施形態では、結合した分解タグは、低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1α)サブユニットであってもよい。さらに好ましい実施形態では、結合した分解タグは、ユビキチンリガーゼ複合体と係合するHIF-1αの酸素依存的分解ドメインを含んでもよい。最も好ましい実施形態では、結合した分解タグは、配列番号10に従うアミノ酸配列を含んでもよい。
【0067】
さらに別の実施形態では、結合した分解タグは、タンパク質分解のためにE3ユビキチンリガーゼに係合するタグまたはタンパク質分解標的化キメラであってもよい。
【0068】
低酸素誘導因子(HIF)は、酸素によって調節される、構成的に発現されるHIF-1βサブユニットおよびHIF-1αサブユニットを含むヘテロ二量体転写因子である。HIF-1αは、ユビキチンリガーゼ複合体に係合することによってプロテアソーム分解のためにHIF-1αサブユニットを標的とするように酸素正常状態でヒドロキシル化される重要なプロリン残基P564を含む酸素依存的分解(ODD)ドメインを含む。ユビキチンリガーゼ複合体は、HIF-1αのODDドメインのヒドロキシル化P564残基の認識に関与するヒッペル-リンドウ腫瘍抑制タンパク質(VHL)を含む。
【0069】
このため、P564を含む配列を分解タグとしてのHIF-1αのODDドメインからSICLOPPS構築物ポリペプチドに付加すると、結合したタンパク質の分解が誘導される。本発明において、SICLOPPS構築物の発現時に、活性インテインは、その自己切除ならびに目的のエクステインのスプライシングおよび環化に続いて、そのN末端またはC末端のドメインのいずれかから、P564を含むODDドメインのポリペプチドに結合する。ヒドロキシル化P564残基は、ユビキチンリガーゼ複合体からVHLによって認識され、結合した細胞毒性の活性インテインとともにプロテアソームによってユビキチン化され分解される。
【0070】
このため、いくつかの実施形態では、改変されたSICLOPPS方法論で使用するための上記のポリペプチド構築物は、以下の配列で構成される、N末端インテインドメインに結合した、ヒドロキシル化のための重要なP564を含む、HIF-1αの全長ODDドメインのアミノ酸548~603をさらに含んでもよい:
HHHHHHMIKIATRKYLGKQNVYDIGVERYHNFALKNGFIASN X~~~~~CLSYDTEILTVEYGILPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDR GEQEVFEYCLEDGCLIRATKDHKFMTVDGQMMPIDEIFERELDLMRVDNLPNNPFSTQDTDLDLEMLAPYIPMDDDFQLRSFDQLSPLESSSAS PESASPQSTVTVFQ(配列番号16)
ここで、
NPFSTQDTDLDLEMLAPYIPMDDDFQLRSFDQLSPLESSSASPESASPQSTVTVFQ(配列番号17)は、
【0071】
HIF-1αの全長ODDドメインのアミノ酸548~603を含む。
【0072】
タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)は、同様に分解タグとして機能する。PROTACは、2つの共有結合したタンパク質結合ドメインを含む小分子である。一方のドメインはE3ユビキチンリガーゼに係合することができ、もう一方は分解を目的とした標的タンパク質に結合する。このため、N末端またはC末端のいずれかの分解タグとしてPROTACを組み込むことで、SICLOPPS構築物の発現時に、切除された活性インテインにE3ユビキチンリガーゼが動員されて、そのユビキチン化およびプロテアソーム分解が生じる。
【0073】
活性インテインの分解は、活性インテインと関連付けられることが示されているように、細胞毒性を増加させることなく、哺乳動物細胞内での環状ペプチドの産生を可能にすることが想定される。
【0074】
本明細書で使用される「細胞毒性」という用語は、細胞に対する化合物の毒性の性質を指し、これにより、そのような細胞が、膜の完全性の喪失からの細胞溶解に起因して細胞が急速に死滅する状態である壊死、または細胞がプログラム細胞死を受ける状態であるアポトーシスを受けるようになり得る。細胞毒性効果は、例えば、当業者には理解されるように、環状ペプチドを生成する目的で哺乳動物細胞を利用する際の効率のレベルに影響を与え得る。
【0075】
分解タグは、結合が連続して直接であるかリンカーを介してであるかに関係なく、結合しているタンパク質またはポリペプチドの分解を誘導し得る。そのようなリンカーまたはスペーサーは、2~31アミノ酸の間で変化する短いアミノ酸配列であり、単一のタンパク質の複数のドメインを分離するために実装される。
【0076】
本発明の一実施形態では、分解タグが直接連結をとおしてまたはリンカーを介してのいずれかでN末端またはC末端のインテインドメインのいずれかに結合する、上記のような構築物を使用する改変されたSICLOPPS方法が提供される。好ましい実施形態では、分解タグは、直接結合を介して結合する。
【0077】
使用されるインテインの種類に対して、互換性のある分解タグがSICLOPPS構築物に組み込まれることが想定される。活性インテインが、含まれる分解タグによって分解される前にスプライスを必要とすること、言い換えると、分解タグが、インテインスプライスよりもゆっくりと分解を誘導する必要があることは、当業者には明らかであろう。
【0078】
実験的視覚化の目的で、ペプチドをコードする構築物内に蛍光タグを任意選択で含めることは、当技術分野において一般的な慣行である。そのような蛍光タグは、SICLOPPS構築物内の分解タグに結合し得ることが想定されるため、得られた発現されたタグ付きタンパク質のいずれの分解も、蛍光顕微鏡法または当分野で既知である他のそのような技法を使用して視覚化することができる。顕微鏡法での使用に好適な蛍光タグまたはフルオロフォアは、広範に存在する。フルオロフォアの包括的なリストは、https://www.biosyn.comで利用可能である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、任意の蛍光タグの付加を伴う上記のような構築物を使用する改変されたSICLOPPS法が提供される。別の実施形態では、蛍光タグは、SICLOPPS構築物内に組み込まれた分解タグに結合する。好ましい実施形態では、蛍光タグはDsRedフルオロフォアである。
【0080】
本方法では、修正されたSICLOPPS構築物を、ポリヌクレオチドの発現を促進することができる任意の好適な発現ベクター内で哺乳動物細胞に導入することが想定される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という語句は、好適なインビトロまたはインビボ系において核酸分子の転写および/または翻訳を促進するビヒクルを意味する。発現ベクターを含む宿主系に外因性物質を付加することで、発現ベクターが発現され、例えば、ベクター内の核酸分子がmRNAに転写される場合、発現ベクターは「誘導性」である。
【0082】
そのような好適なベクターには、プラスミド(図4)、バクテリオファージ、およびウイルスベクターが含まれる。これらの大多数は当該技術分野で既知であり、多くは市販されているか、または科学界から入手可能である。当業者であれば、例えば、哺乳動物細胞などの選択された系の種類および選択された発現条件に基づいて、特定の用途における使用に好適なベクターを選択することができる。
【0083】
この方法で使用される発現ベクターは、標的ポリペプチド構築物をコードするヌクレオチドのストレッチ、およびベクター内のヌクレオチド配列の発現を調節または制御する調節ドメインとして機能するヌクレオチドのストレッチを含み得る。例えば、調節ドメインは、プロモーターまたはエンハンサーであり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、本方法内で使用される発現ベクターは、多種多様な環化標的またはスプライシング中間体のクローニングを可能にするために、スプリットインテイン部分をコードする核酸配列間と核酸配列内との両方で制限部位を用いて産生される。いくつかの実施形態では、本発明の発現ベクターは、アラビノース誘導性ベクターなどの誘導性発現ベクターであり得る。そのような発現ベクターは、当業者に既知である標準的な分子生物学技法を使用して生成することができる。プラスミドは、化学ベースまたはエレクトロポレーションベースのトランスフェクションなど、当該技術分野で十分に実践されているいくつかの技法をとおして、一過性発現のために哺乳動物細胞にトランスフェクトすることができる。
【0085】
本発明内で使用される発現ベクターは、哺乳動物細胞で使用するのに好適な複製起点(ORI)を含むことが想定される。「天然の」哺乳動物ORIは存在しないため、ウイルスベースのORIが、ウイルス性エプスタイン・バーウイルス(EBC)またはSV40 ORIなどの哺乳動物細胞を対象とした発現ベクターに使用されることが多い。
【0086】
このため、一実施形態では、哺乳動物細胞内の発現に好適な、上で概説したような修飾されたSICLOPPS構築物を含むプラスミドを利用する改変されたSICLOPPS法が提供される。好ましい実施形態では、プラスミドは、哺乳動物細胞内での発現に好適なSV40複製起点を含む。
【0087】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に従う改変されたSICLOPPS法によって生成された環状ペプチドライブラリーを提供する。
【0088】
「環状ペプチドライブラリー」という用語は、多くの場合1億を超えるペプチドメンバーを含む、複数の区分化された環状ペプチドを指す。
【0089】
ライブラリーの各メンバーは、本発明の第1の態様に記載されているように、独自のプラスミドから哺乳動物細胞内で発現され得る。ライブラリーは、目的のポリペプチドまたはエクステインがランダム化されるように生成された、発現された各プラスミドからの多数のランダム化された環状ペプチドを含むことが想定される。ランダム化されたポリペプチドは本質的に縮重オリゴヌクレオチドであり、ここで「縮重」は、ある数の可能なヌクレオチド塩基を含むその配列を指す。得られたライブラリーには、理論上、後で医薬アッセイおよび他の研究目的に使用することができる多数の可能な環状ペプチド構造が含まれる。細胞内での環状ペプチドライブラリーの生成により、様々な標的に対して機能アッセイを実施できるようになる。
【0090】
SICLOPPSベースのライブラリーは、上で概説したように、DNAでコードされているため、ライブラリーの構成を大幅に制御でき、様々なライブラリーを容易に作成して、所与の標的に対してスクリーニングすることができる(図3)。実装が容易なSICLOPPSライブラリーのそのような変形には、異なる環サイズの環状ペプチド、限定されたコドンセットを使用した異なるアミノ酸組成のライブラリー、またはライブラリーのすべてのメンバーにおける設定された位置への所与のアミノ酸もしくはモチーフの包含が含まれる。このため、SICLOPPSの使用者は、環状ペプチドライブラリーの構成を、それをコードする縮重オリゴヌクレオチドを介して、完全に制御することができる。
【0091】
ベクターに挿入されるランダム化されたポリヌクレオチドの長さは、当業者によって決定され得る様々な要因に左右されることになる。主な考慮事項は、発現される最終的なポリペプチドのサイズ、およびその続の環状ペプチドの環サイズである。好ましい実施形態では、ポリペプチドは6アミノ酸長である。したがって、好適なランダム化ポリヌクレオチドは18核酸長さである。環状ペプチド形成のためには、ポリペプチドの長さが環化反応を進行させるのに十分であるかどうか、すなわち、その長さが閉じたペプチドサイクルの形成を可能にするものであるかどうかを考慮しなければならない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、任意の長さのリンカーによって環化される。したがって、環状ポリペプチドは、2つのアミノ酸のみをコードすることによって達成されてもよく、その場合、ランダム化されたポリヌクレオチドは、少なくとも6核酸長になる。別の考慮事項は、ベクターおよび対応する複製系によって許容される最大インサートサイズである。いくつかの実施形態では、ランダム化された配列は、より長く、例えば、少なくとも9、30、60、90、180、300、600、900、1,800、3,000、またはそれ以上の核酸長であってもよい。好ましい実施形態では、ランダム化されたヌクレオチド配列は、6、9、12、15、18、21、24、27、または30ヌクレオチド長である。ランダム化された配列はポリペプチドをコードすることを意図しているが、その長さは必ずしも3の倍数でなくてもよい。例えば、これは、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23、25、26、28、または29ヌクレオチド長であってもよい。ランダム化されたポリヌクレオチド配列はまた、本明細書では可変配列と称されてもよい。実施形態では、「ランダム」または「可変」配列の1つ以上の位置を実際に固定してもよい。例えば、そのようなSICLOPPS法では、第1の位置は、不変のシステイン、セリン、またはトレオニン残基によって占有され、本発明の第1の態様で説明した可変またはランダムアミノ酸配列が続いてもよい。
【0092】
本発明の第3の態様では、C末端インテインドメインをコードするポリペプチドカセット、環化されるポリペプチド配列、N末端インテインドメイン、および哺乳動物細胞における使用に好適な分解タグを含む遺伝子構築物が提供され、ここで、分解タグは、少なくともインテインドメインに結合し、発現されると、活性インテインが形成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、遺伝子構築物は、本発明の第1の態様に従う修飾または仕様のうちのいずれかをさらに含んでもよい。
【0094】
本発明の第4の態様では、本発明の第3の態様に従う遺伝子構築物を含むベクターが提供される。
【0095】
本発明の第5の態様では、本発明の第4の態様に従うベクターを含む哺乳動物細胞が提供される。
【0096】
本発明の第6の態様では、本発明の第1の態様の方法に従って環状ライブラリーを生成する方法が提供される。
【0097】
本発明がより明確に理解されるように、これより、その実施形態を、添付の図を参照しながら例として説明する。
【0098】
実施例1
分解ドメインをN末端インテインドメインに付加して、哺乳動物細胞での毒性を防止するためにスプライシングされたインテイン産物を枯渇させることで、SICLOPPS構築物を設計した。+2残基でのアミノ酸耐性を高めるために、残基122~124にERDからGEPへの変異を含ませたCfaインテインを、高速のスプライシングおよび高い広宿主域性のために使用した。構築物を以下の配列で設計した。
C末端インテインドメイン(+N末端6×Hisタグ):MGHHHHHHGSGVKIISRKSLGTQNVYDIGVGEPHNFLLKNGLVASN(配列番号18)
N末端インテインドメイン:
CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEV FEYCLEDGSIIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP(配列番号19)
この実施例でeGFPを利用したエクステイン(+N末端2×Strepタグ)。効率を改善するために、野生型Cfaスプライス接合部(CFNおよびAEY)を組み込んだ:
【配列表1】
【0099】
【0100】
ヒドロキシル化のための重要な残基P564を含むHIF-1αからの酸素依存的分解(ODD)ドメインを、C末端からN末端のインテインドメインに組み込んだ:
【配列表2】
【0101】
【0102】
蛍光タンパク質mCherryをODDドメインに対するC末端にさらに融合させた後、抗体認識のためのFLAGタグを付けた:
【0103】
2つのバーションのeGFPエクステインプラスミド(図4)を生成した。
1.野生型またはWT-スプライスして分解する。
2.P564G-ODDドメインにおけるプロリン564の変異により分解が防止される。
【0104】
実施例2
実施例1からの2つのプラスミドを、独立してHeLa細胞へとトランスフェクトし、その後これを、インテインの分解を防止するために、100μMのDFX処理ありおよびなしで、酸素の存在下に置いた。野生型プラスミドでは、HIFプロリルヒドロキシラーゼドメイン(PHD)の阻害に起因して、インテインは、酸素の存在下でのみ分解し、酸素の非存在下またはDFXの存在下で安定化するべきである。対照的に、P564G変異体では、酸素の存在下でもDFX処理ありでも、インテインは決して分解すべきではない。プロリンはグリシンに変異しているため、プロリンがPHDによってヒドロキシル化されること、およびその後のタンパク質の分解が防止される。
【0105】
Zeiss蛍光顕微鏡を使用してHeLa細胞を画像化し、条件に応じてエクステイン(GFP)およびインテイン(mCherryタグ付き)が存在するかどうかを決定した。
【0106】
図5に示すように、mCherry蛍光と関連付けられたWTインテインが、mCherry蛍光を示したDFX実験と比較して、酸素正常状態で分解したことを見出した。P564G変異体(図6)は、酸素正常状態およびDFXでGFPとmCherryとの両方の蛍光を示し、インテインの分解が起こらないことを示した。
【0107】
実施例3
実施例1および2からの野生型プラスミドおよびP564GプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトし、次いでこれを、酸素正常状態、低酸素状態、またはDFX処理条件で24時間インキュベートした。次に、RIPA緩衝液および掻器を使用して、細胞を溶解させた。総タンパク質溶解物をウエスタンブロットにより分析し、その結果を図7に示す。StrepタグをGFPを捕捉するために使用し、FLAGタグをmCherryに使用した。抗FLAGおよび抗Strepタグ抗体を、それぞれAlexa488およびAlexa568に結合した二次抗体を使用して認識した。
【0108】
野生型プラスミドの場合、低酸素状態およびDFX状態では、より多くのmCherryが表示され、インテインの分解は見られなかった。全体として、結果は、すべての条件下で、P564G変異体よりもWTにおいてGFPが多かったこと(エクステインと関連付けられる)を示す。対照として使用したアクチンは、ウェル間で全体的に同等であった。
【0109】
実施例4
細胞数は、HeLa細胞を酸素正常条件および低酸素条件下で増殖させた前の実施例からの2つのプラスミドで独立してトランスフェクトしたトリプシン処理細胞から実行した。トリプシン処理細胞を完全培地に再懸濁させた。次に、MOXI細胞計数機を使用して細胞懸濁液を分析し、生細胞および死細胞を計数した。時点は、0時間、6時間、12時間、24時間、36時間、および48時間に、3連または2連で得た。
【0110】
図8に示すように、この傾向により、酸素正常状態でのP564Gにおける生細胞数の減少と比べた、野生型トランスフェクト細胞における生細胞数の維持が示される。低酸素状態でインキュベートした細胞は、両方のプラスミドについて、48時間からの細胞数の減少、すなわち毒性を示し得、ここではインテインの分解は起きていない。
【0111】
実施例5
スプライシング(WT)および非スプライシング(C1A)のGFP-Npu-mCherry-ODDD構築物のTrex細胞への一過性トランスフェクション
手順:1.2×10Trex293細胞を6cm皿に播種した。翌日、細胞を1ugのプラスミドでトランスフェクトし、1つのウェルをトランスフェクトせずに残して、蛍光ゲートを設定するための陰性対照として使用した。翌日、培地を交換し、1ug/mLのドキシサイクリンを各皿に加え、処理した細胞の皿に、DFXを最終濃度が100mMになるように加えた。翌日、細胞をFACSにより分析した。
【0112】
結果:mCherryおよび酸素依存的分解ドメイン(ODDD)に融合したインテインが酸素の存在下で分解していたかどうか、およびDFXを加えることでこの酸素依存的分解を防止することができたかどうかを調査した。細胞をFACSにより分析したところ、GFPスプライシングバージョン(図9のパネルA)は、Q3集団(GFP+mCherry-)の細胞を示し、これにより、GFPエクステインがスプライスされたこと、およびインテインのみが分解したことが示された。DFXを付加すると(図9のパネルB)、Q3で観察された細胞ははるかに少なく、Q2で観察された細胞(GFP+mCherry+)は多く、インテインの分解が減少したことが示された。これは、非スプライシング変異体の図9(パネルCおよびD)で確認された。パネルAおよびBのmCherry+細胞のオーバーレイ(図9のパネルEに提示)により、DFXの存在下でmCherry蛍光の強度がより高いことが確認され、ODDD経路を介したインテインの分解が少ないことが示唆される。
【0113】
実施例6
GFP-Npu-mCherry-ODDD構築物スプライシング(WT)のTrex細胞への安定した統合
手順:GFP-WT-Npu-mCherry-ODDDと安定して統合されたTrex293細胞を6ウェルプレートに播種した。次に、細胞をドキシサイクリンで処理して、インテインの発現を誘導した。一方の条件をDFX(100mM)で処理し、もう一方の条件を未処理のままでした。翌日、細胞をFACSにより分析した。
【0114】
結果:mCherryおよび酸素依存的分解ドメイン(ODDD)に融合したインテインが酸素の存在下で分解していたかどうか、およびDFXを加えることでこの酸素依存的分解を防止することができたかどうかを調査した。細胞をFACSにより分析すると、DFXの非存在下(図10のパネルA)では、Q1およびQ2で細胞がほとんど観察されず(それぞれ、mCherry+GFP-およびmCherry+GFP+)、Q3で細胞の大部分が観察された(mCherry-GFP+;67.4%)。これにより、スプライシングが生じて、GFPとmCherryとが分離されたこと、およびmCherry-ODDDタグ付きインテインが酸素の存在下で分解され、スプライスされたGFPは無傷のままであることが示される。DFXを付加すると(図10のパネルB)、Q2で多くの細胞が見出され(35.1%)、インテインの分解が減少すると、より多くのmCherryが存在することが示唆された。
【0115】
実施例7
スプライシング(WT)および非スプライシング(C1A)のCFAインテイン-ペプチドエクステイン-ODDD-mCherryをコードする構築物と統合されたTrex293細胞の生存率アッセイ
手順:CFAインテイン-ペプチドエクステイン-ODDD-mCherry(スプライシングおよび非スプライシング)と統合されたTrex細胞を、96ウェルプレートにウェルあたり1000細胞の密度で播種した。翌日、培地を交換し、DFX(最終濃度100mM)を含むまたは含まないドキシサイクリン(1mg/mL)を含む新しい培地と交換した。翌日、Cell Titer Glo Assayを使用して細胞生存率を測定した。
【表1】
【0116】
結果:この生存率アッセイにより、インテインの分解を減少させることが示されているdfxによる処理を行うと、細胞の生存率が大幅に減少することが確認される(図11)。これは、細胞内のインテインの存在が細胞の生存率に悪影響を有することを示唆する。-dfx対照は、インテインの分解、およびそれに続く生存率の増加をもたらす。C1A非スプライシング対照により、スプライシングされたエクステインが存在しないため、これがエクステイン毒性の結果ではないことが確認される。
【0117】
本明細書全体で使用され、説明の一部を形成する配列:
配列番号1(Ssp DnaE C末端インテインドメインのアミノ酸配列)
MVKVIGRRSLGVQRIFDIGLPQDHNFLLANGAIAANC
配列番号2(Ssp DnaE N末端インテインドメインのアミノ酸配列)AEYCLSFGTEILTVEYGPLPIGKIVSEEINCSVYSVDPEGRVYTQAIAQWHDRGE QEVLEYELEDGSVIRATSDHRFLTTDYQLLAIEEIFARQLDLLTLENIKQTEEALD
NHRLPFPLLDAGTIK
配列番号3(Npu DnaE C末端インテインドメインのアミノ酸配列)
MIKIATRKYLGKQNVYDIGVERDHNFALKNGFIASN
配列番号4(Npu DnaE N末端インテインドメインのアミノ酸配列)CLSYETEILTVEYGLLPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEV FEYCLEDGSLIRATKDHKFMTVDGQMLPIDEIFERELDLMRVDNLPN
配列番号5(Cfa DnaE C末端インテインドメインのアミノ酸配列)
VKIISRKSLGTQNVYDIGVEKDHNFLLKNGLVASN
配列番号6(Cfa DnaE N末端インテインドメインのアミノ酸配列)CLSYDTEILTVEYGFLPIGKIVEERIECTVYTVDKNGFVYTQPIAQWHNRGEQEV FEYCLEDGSIRATKDHKFMTTDGQMLPIDEIFERGLDLKQVDGLP
配列番号7(gp41-1 C末端インテインドメインのアミノ酸配列)
MMLKKILKIEELDERELIDIEVSGNHLFYANDILTHNS
配列番号8(gp41-1 N末端インテインドメインのアミノ酸配列)
CLDLKTQVQTPQGMKEISNIQVGDLVLSNTGYNEVLNVFPKSKKKSYKITLEDG KEIICSEEHLFPTQTGEMNISGGLKEGMCLYVKE
配列番号9(ホモサピエンス低酸素誘導因子-1アルファ[HIF-1α]サブユニットのアミノ酸配列)MEGAGGANDKKKISSERRKEKSRDAARSRRSKESEVFYELAHQLPLPHNVSS HLDKASVMRLTISYLRVRKLLDAGDLDIEDDMKAQMNCFYLKALDGFVMVLTDD
GDMIYISDNVNKYMGLTQFELTGHSVFDFTHPCDHEEMREMLTHRNGLVKKGK EQNTQRSFFLRMKCTLTSRGRTMNIKSATWKVLHCTGHIHVYDTNSNQPQCG YKKPPMTCLVLICEPIPHPSNIEIPLDSKTFLSRHSLDMKFSYCDERITELMGYEP EELLGRSIYEYYHALDSDHLTKTHHDMFTKGQVTTGQYRMLAKRGGYVWVET QATVIYNTKNSQPQCIVCVNYVVSGIIQHDLIFSLQQTECVLKPVESSDMKMTQL
FTKVESEDTSSLFDKLKKEPDALTLLAPAAGDTIISLDFGSNDTETDDQQLEEVP LYNDVMLPSPNEKLQNINLAMSPLPTAETPKPLRSSADPALNQEVALKLEPNPE SLELSFTMPQIQDQTPSPSDGSTRQSSPEPNSPSEYCFYVDSDMVNEFKLELV EKLFAEDTEAKNPFSTQDTDLDLEMLAPYIPMDDDFQLRSFDQLSPLESSSASP ESASPQSTVTVFQQTQIQEPTANATTTTATTDELKTVTKDRMEDIKILIASPSPTH
IHKETTSATSSPYRDTQSRTASPNRAGKGVIEQTEKSHPRSPNVLSVALSQRTT VPEEELNPKILALQNAQRKRKMEHDGSLFQAVGIGTLLQQPDDHAATTSLSWK RVKGCKSSEQNGMEQKTIILIPSDLACRLLGQSMDESGLPQLTSYDCEVNAPIQ GSRNLLQGEELLRALDQVN
配列番号10(ホモサピエンス低酸素誘導因子-1アルファ[HIF-1α]サブユニットの酸素依存的分解(ODD)ドメインのアミノ酸配列)NPFSTQDTDLDLEMLAPYIPMDDDFQLRSFDQLSPLESSSASPESASPQSTVT
VFQ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11
図12
【配列表】
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