(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-11
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】ジヒドロピリダジン-3,5-ジオン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20250414BHJP
C07D 239/26 20060101ALI20250414BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250414BHJP
A61K 31/506 20060101ALN20250414BHJP
A61P 13/12 20060101ALN20250414BHJP
【FI】
C07D403/12
C07D239/26
C07B61/00 300
A61K31/506
A61P13/12
(21)【出願番号】P 2023527885
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2022023068
(87)【国際公開番号】W WO2022260062
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021096200
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】村形 政利
(72)【発明者】
【氏名】小宮 志央
(72)【発明者】
【氏名】侯 増▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】榎本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷田 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】福田 弘志
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142273(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039458(WO,A1)
【文献】TSUBOI Yoshinorim et al.,EOS789, a novel pan-phosphate transporter inhibitor, is effective for the treatment of chronic kidne,Kidney International,2020年,Vol.98(2),p.343-354
【文献】第十六改正 日本薬局方,2011年,pp.64-68,2070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】
で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶性粉末の製造方法であって、
溶媒中で、式1で表される化合物を前記p-トルエンスルホン酸塩に変換し、析出した固体を回収して、前記p-トルエンスルホン酸塩の粉末であって溶媒を含有する状態の粉末(湿性粉末)を得ること;
前記湿性粉末を乾燥条件に付して、前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の結晶性粉末を得ることを含み、
前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の結晶性粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.5°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有
し、
前記溶媒がエタノールである、前記方法。
【請求項2】
回収前の固体を含有する混合物に貧溶媒をさらに添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貧溶媒が、
ヘプタンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記p-トルエンスルホン酸塩の湿式粉末と、前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の結晶性粉末とが、異なる粉末X線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式2:
【化2】
で表される化合物の製造方法であって、
式3
【化3】
[式中、X
1は脱離基である]で表される化合物をC
1-6アルキルマグネシウムハライド、C
1-6アルキルリチウム、およびハロゲン化亜鉛で処理し、式4
【化4】
[式中、X
2は脱離基である]で表される化合物とパラジウム触媒存在下で反応させて、式5
【化5】
で表される化合物を得ること、および
式5で表される化合物をジカルボン酸イミドアルカリ金属塩と反応させ、得られるイミド化合物の分解反応により、式2で表される化合物を得ることを含む、前記方法。
【請求項6】
X
1がハロゲン原子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
X
2が塩素原子である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
パラジウム触媒が、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド錯体、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、(1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン)(3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、および[1,3-ビス(2,6-ジ-3-ペンチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリドからなる群から選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ジカルボン酸イミドアルカリ金属塩が、フタルイミドカリウム、またはフタルイミドナトリウムである、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式1:
【化6】
で表される化合物を製造する方法であって、
1)請求項5~7のいずれか1項に記載の方法により式2で表される化合物を調製する
こと、
2)式2:
【化7】
で表される化合物とマロン酸誘導体を反応させて、式6:
【化8】
で表される化合物を調製すること、
3)式6で表される化合物と、式7:
【化9】
で表される化合物を縮合剤の存在下、反応させて式8:
【化10】
で表される化合物を調製すること、
4)式8で表される化合物の環化反応により、式1で表される化合物を調製することを含
み、
前記マロン酸誘導体が、メルドラム酸およびマロン酸からなる群から選択される、前記方法。
【請求項11】
前記マロン酸誘導体が、メルドラム酸
である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロピリダジン-3,5-ジオン誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎疾患(CKD)および末期腎疾患(ESKD)などの腎機能障害を有する患者では、生体内にリンが蓄積し、高リン血症をおこすことが知られている。高リン血症による血管の石灰化は心血管系機能障害の原因となりうる。また、副甲状腺ホルモンの分泌過多をもたらし、骨病変を引き起こす。このように高リン血症は、末期腎不全患者および透析患者の予後およびQOLを悪化させる因子になりうる(非特許文献1)。
【0003】
CKDは進行度に応じてステージ1~5に分類されている(非特許文献2、非特許文献3)。CKDのステージ3および4の患者の血中リン濃度が、心血管系疾患の罹患率および死亡率に関係し、これらの患者における血中リン濃度の抑制は、心血管系疾患の軽減または予防につながる可能性がある。さらに、より早期に患者のリン酸塩負荷を制御することは、初期のCDK患者の病態進行を軽減、および/または予防する可能性がある(非特許文献4)。
【0004】
現在の高リン血症の治療には、消化管におけるリン酸吸収を抑制することを目的としたリン吸着剤が用いられている。リン吸着剤として、塩酸セベラマーに代表される非金属性のポリマー吸着剤、沈降炭酸カルシウムに代表されるカルシウム塩製剤、炭酸ランタンに代表される金属性の吸着剤が用いられているが、1日あたり数グラムの服用を必要とするため服薬コンプライアンスが悪いこと、生体内へのカルシウム蓄積による副作用が報告されている。したがって、リン吸着剤のこれらの問題点を改善した新たな高リン血症治療剤の開発が強く望まれている(非特許文献4)。
【0005】
ナトリウム依存性リン酸トランスポーターは、NaPi-I、NaPi-II、およびNaPi-IIIの3ファミリーが知られている。これらのファミリーはさらにアイソタイプに分類され、NaPi-IIファミリーの場合、NaPi-IIa、NaPi-IIb、およびNaPi-IIcが知られている。特に、NaPi-IIb、およびPiT-1、ならびにPiT-2などのリン酸トランスポーターは、消化管におけるリン酸吸収を担っていることが知られており、これらのリン酸吸収に関与しているリン酸トランスポーターのみを選択的に阻害することで、消化管における強いリン酸吸収阻害効果をもたらし、血液中リン濃度を低下させることが期待できる(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、および非特許文献8)。
【0006】
これまでに、NaPi-IIb阻害剤として、NTX1942(特許文献1)、縮合チオフェン誘導体(特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5)が報告されている。式1で表される7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド(以下、化合物Iとも称する)に代表されるジヒドロピリダジン-3,5-ジオン誘導体は、NaPi-IIb、PiT-1、およびPiT-2阻害作用を示すことが報告されている(特許文献6、および特許文献7)。
【0007】
【0008】
特許文献6、および特許文献7では、フェニルボロン酸エステル誘導体とクロロピリミジン誘導体との鈴木カップリング反応により得られる化合物を中間体として用い、式1で表される化合物を製造している。鈴木カップリング反応を反応工程に含む化合物の製造では、製造コストが問題になる。例えば、触媒に用いるパラジウムが製造コストを押し上げる例や、ボロン酸エステルの原料となるビスピナコラートジボロンが原料のコストを押し上げることが知られている(非特許文献9、特許文献8)。
【0009】
非特許文献10には、式1で表される化合物の塩とその結晶の製造法が記載されている。また、固体の低分子化合物の原薬は結晶多形の中でも、室温付近で熱力学的に最も安定な結晶形が選ばれることが望ましく、最安定形を開発候補品の結晶として選択すること、およびその堅牢な製造法の確立は、開発コストに直結する重要な因子であることが知られている(非特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2012/006475号公報
【文献】国際公開第2011/136269号公報
【文献】国際公開第2013/062065号公報
【文献】国際公開第2014/003153号公報
【文献】国際公開第2018/034883号公報
【文献】国際公開第2014/142273号公報
【文献】国際公開第2016/039458号公報
【文献】国際公開第2019/142854号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Hruska, KA et al., Kidney Int., 2008, 74(2), 148-157.
【文献】“Chapter 1: Definition and classification of CKD” Kidney Int. Suppl., 2013, 3(1), 19-62.
【文献】Levey, AS et al., Kidney Int., 2005, 67(6), 2089-2100.
【文献】Ritter, CS et al., Clin. J.Am.Soc.Nephrol.2016, 11(6), 1088-1100.
【文献】Miyamoto, K et al., J. Pharm. Sci., 2011, 100(9), 3719-3730.
【文献】Sabbagh, Y et al., J. Am. Soc. Nephrol., 2009, 20(11), 2348-2358.
【文献】Forster IC et al., Mol Aspects Med., 2013, 34(2-3), 386-395.
【文献】Lederer E et al., Eur. J. Physiol., 2019, 471(1), 137-148.
【文献】Vijayalakshmi C et al., Lett. Org. Chem., 2020, 17(1), 68-72.
【文献】発明推進協会公開技報 技報番号2017-501666
【文献】Chemburkar SR et al., Org. Proc. Res. Dev. 2000, 4(5), 413-417.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ジヒドロピリダジン-3,5-ジオン誘導体が、高リン血症のような慢性疾患の治療薬に用いられること、すなわち薬剤投与による治療が長期にわたることが考えられる。本願発明者らは、医薬品の安定供給の確保のため、および製造コスト削減のために、原薬の製造法を、原材料費の観点や反応条件の観点から精査した。
【0013】
具体的には、式1で表される7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミドのp-トルエンスルホン酸塩の製造法を検討した。式1で表される化合物の製造における鍵中間体である、4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリン(化合物II):
【0014】
【化2】
の原料に用いられていた、2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)アニリンは高価であり、製造原価に大きな影響を与え、原薬の製造コスト押し上げの一因となっていた。また、有効成分となりうる、式1で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の特定の結晶形を製造する工程で、結晶の生成が遅い、反応液中でオイルアウトが生じるなどの不具合が生じ、目的物の収率が低下することに加え、別の結晶形が混入することがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく、鋭意検討を行った。原材料中の原価の中でも高価である、フェニルボロン酸エステル誘導体の代替原料を用いて、従来法と比較して原薬に混入する不純物の増大などを伴うことなく、式1で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩を得る方法を見いだした。さらに、従来法では、式1で表される化合物とp-トルエンスルホン酸を混合することにより、式1で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩を得ていたのに対し、式1で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の特定の溶媒和物を得たのちに、脱溶媒することにより、目的とする結晶を収率よく取得できること、別の結晶形が混入することなく、目的とする結晶を得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1-1]式1
【0017】
【化3】
で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶性粉末の製造方法であって、
溶媒中で、式1で表される化合物を前記p-トルエンスルホン酸塩に変換し、析出した固体を回収して、前記p-トルエンスルホン酸塩の湿性粉末を得ること;
前記湿性粉末を乾燥条件に付して、前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末を得ること
を含む、前記方法。
【0018】
[1-2]A1)式1で表される化合物およびp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液を調製すること、
A2)該溶液に貧溶媒を添加して固体を析出させること、
A3)該固体を回収して前記p-トルエンスルホン酸塩の湿性粉末を得ること、および
A4)該湿性粉末を乾燥条件に付して、前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末を得ること
を含む、[1-1]に記載の方法。
【0019】
[1-3]A1にて使用するエタノールの1重量部に対して、A2にて使用する前記貧溶媒が0.8重量部以上3.5重量部以下の範囲で用いられる、[1-2]に記載の方法。
【0020】
[1-4]B1)エタノールおよび貧溶媒を含む混合溶媒中に式1で表される化合物を溶解させて溶液を得ること、
B2)該溶液にp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液を添加して固体を析出させること、
B3)該固体を回収して前記p-トルエンスルホン酸塩の湿性粉末を得ること、および
B4)該湿性粉末を乾燥条件に付して、前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末を得ること
を含む、[1-1]に記載の方法。
【0021】
[1-5]B1にて使用する、エタノールの1重量部に対して、前記貧溶媒が0.8重量部以上で用いられる、[1-4]に記載の方法。
【0022】
[1-6]B1にて使用する、エタノールの1重量部に対して、前記貧溶媒が0.8重量部以上3.5重量部以下の範囲で用いられる、[1-4]に記載の方法。
【0023】
[1-7]回収前の固体を含有する混合物に貧溶媒をさらに添加することを含む、[1-1]~[1-6]のいずれかに記載の方法。
【0024】
[1-8]前記貧溶媒が、ヘキサンまたはヘプタンを含む溶媒;ヘキサンおよびヘプタンから選択される溶媒;またはヘキサンおよびへプタンを含む混合溶媒である、[1-2]~[1-7]のいずれかに記載の方法。
【0025】
[1-9]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.5°)から選択される、少なくとも1つのピークを含
む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-8]のいずれかに記載の方法。
【0026】
[1-10]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.5°)から選択される、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-9]のいずれかに記載の方法。
【0027】
[1-11]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、15.8°(±0.5°)のピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-10]のいずれかに記載の方法。
【0028】
[1-12]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.2°)から選択される、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-11]のいずれかに記載の方法。
【0029】
[1-13]前記湿性粉末が、湿性結晶である、[1-1]~[1-12]のいずれかに記載の方法。
[1-14]湿性結晶がエタノールを含有する、[1-13]に記載の方法。
【0030】
[1-15]前記貧溶媒が、ヘプタン、ヘキサン、またはペンタンを含む、[1-2]~[1-14]のいずれかに記載の方法。
【0031】
[1-16]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.5°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-15]のいずれかに記載の方法。
【0032】
[1-17]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.5°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-16]のいずれかに記載の方法。
【0033】
[1-18]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、15.8°(±0.5°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-17]のいずれかに記載の方法。
【0034】
[1-19]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.2°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-18]のいずれかに記載の方法。
【0035】
[1-20]前記p-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が、粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9°、9.4°、15.8°、18.9°および22.6°(±0.2°)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する、[1-1]~[1-19]のいずれかに記載の方法。
【0036】
[1-21]式1で表される化合物を前記p-トルエンスルホン酸塩に変換するのに使用する溶媒の量が、式1で表される化合物1重量部に対して、2~15重量部である、[1-1]~[1-20]のいずれかに記載の方法。
【0037】
[1-22]固体を析出させるときの溶液の温度が-5℃以上70℃以下の範囲である、[1-1]~[1-21]のいずれかに記載の方法。
【0038】
[1-23]式1で表される化合物を前記p-トルエンスルホン酸塩に変換するのに使用するp-トルエンスルホン酸の量が、式1で表される化合物1当量に対して、1当量以上1.2当量以下の範囲である、[1-1]~[1-22]のいずれかに記載の方法。
【0039】
[2-1]式2:
【0040】
【化4】
で表される化合物の製造方法であって、
式3
【0041】
【化5】
[式中、X
1は脱離基である]
で表される化合物をC
1-6アルキルマグネシウムハライド、C
1-6アルキルリチウム、およびハロゲン化亜鉛で処理し、式4
【0042】
【化6】
[式中、X
2は脱離基である]
で表される化合物とパラジウム触媒存在下で反応させて、式5
【0043】
【化7】
で表される化合物を得ること、および
式5で表される化合物をジカルボン酸イミドアルカリ金属塩と反応させ、得られるイミド化合物の分解反応により、式2で表される化合物を得ること
を含む、前記方法。
【0044】
[2-2]X1がハロゲン原子である、[2-1]に記載の方法。
【0045】
[2-3]X1がフッ素原子である、[2-1]または[2-2]に記載の方法。
【0046】
[2-4]X2が塩素原子である、[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の方法。
【0047】
[2-5]C1-6アルキルマグネシウムハライドが、C1-6アルキルマグネシウムクロリドである、[2-1]~[2-4]のいずれかに記載の方法。
【0048】
[2-6]ハロゲン化亜鉛が、ZnCl2、ZnBr2、およびZnI2からなる群から選択される、[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の方法。
【0049】
[2-7]パラジウム触媒が、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド錯体、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、(1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン)(3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、および[1,3-ビス(2,6-ジ-3-ペンチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリドからなる群から選択される、[2-1]~[2-6]のいずれかに記載の方法。
【0050】
[2-8]ジカルボン酸イミドアルカリ金属塩が、フタルイミドカリウムである、[2-1]~[2-7]のいずれかに記載の方法。
【0051】
[2-9]イミド分解反応が、ヒドラジン水和物およびメチルアミンから選択される求核剤とイミド化合物との反応により行われる、[2-1]~[2-8]のいずれかに記載の方法。
【0052】
[2-10]式5で表される化合物とジカルボン酸イミドアルカリ金属塩との反応が、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒の混合溶媒中で行われる、[2-1]~[2-9]のいずれかに記載の方法。
【0053】
[2-11]式5で表される化合物を得る反応を、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、および1,3-ジオキサンから選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒を含む反応溶媒中で行う、[2-1]~[2-10]のいずれかに記載の方法。
【0054】
[2-12]式5で表される化合物を得る反応を、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびジメトキシエタンから選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒を含む反応溶媒中で行う、[2-1]~[2-11]のいずれかに記載の方法。
【0055】
[2-13]式5で表される化合物を得る反応を、テトラヒドロフラン、または2-メチルテトラヒドロフランを含む溶媒、または当該溶媒の混合溶媒を含む反応溶媒中で行う、[2-1]~[2-12]のいずれかに記載の方法。
【0056】
[2-14]式3で表される化合物とC1-6アルキルマグネシウムハライドが存在する反応系中に、C1-6アルキルリチウムを滴下して、その後ハロゲン化亜鉛を反応系中に滴下する、[2-1]~[2-13]のいずれかに記載の方法。
【0057】
[2-15]C1-6アルキルマグネシウムハライド、C1-6アルキルリチウム、およびハロゲン化亜鉛により処理した式3で表される化合物を含む反応系中に、パラジウム触媒および式4で表される化合物の溶液を滴下する、[2-1]~[2-14]のいずれかに記載の方法。
【0058】
[3-1]式1:
【化8】
で表される化合物を製造する方法であって、
1)[2-1]~[2-15]のいずれかに記載の方法により式2で表される化合物を調製すること、
2)式2で表される化合物とマロン酸誘導体を反応させて、式6:
【0059】
【化9】
で表される化合物を調製すること、
3)式6で表される化合物と、式7:
【0060】
【化10】
で表される化合物を縮合剤の存在下、反応させて式8:
【0061】
【化11】
で表される化合物を調製すること、
4)式8で表される化合物の環化反応により、式1で表される化合物を調製すること
を含む、前記方法。
【0062】
[3-2]マロン酸誘導体が、メルドラム酸、ジアルキルマロン酸、およびマロン酸からなる群から選択される、[3-1]に記載の方法。
【0063】
[3-3]式2で表される化合物とマロン酸誘導体との反応が、トルエン、ヘプタン、アセトニトリル、メタノール、およびエタノールからなる群から選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒の混合溶媒中で行われる、[3-1]または[3-2]に記載の方法。
【0064】
[3-4]縮合剤が、プロピルホスホン酸無水物(環状トリマー)、クロロリン酸ジエチル、およびN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドからなる群から選択される、[3-1]~[3-3]のいずれかに記載の方法。
【0065】
[3-5]式6で表される化合物と式7で表される化合物の反応が、ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、およびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒の混合溶媒中で行われる、[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の方法。
【0066】
[3-6]式8で表される化合物の環化反応が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、およびアセトニトリルからなる群から選択され溶媒中で、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、およびリン酸カリウムからなる群から選択される塩基の存在下行われる、[3-1]~[3-5]のいずれかに記載の方法。
【0067】
[4-1]式1
【化12】
で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶の製造方法であって、
溶媒中で、式1で表される化合物を前記p-トルエンスルホン酸塩に変換し、析出した固体を回収して、湿性の前記p-トルエンスルホン酸塩を得ること;
前記湿性p-トルエンスルホン酸塩を乾燥条件に付して、前記p-トルエンスルホン酸塩の乾燥1型結晶を得ること
を含む、前記方法。
【0068】
[4-2]前記湿性p-トルエンスルホン酸塩が粉末である、[4-1]に記載の方法。
【0069】
[4-3]前記p-トルエンスルホン酸塩の乾燥1型結晶が粉末である、[4-1]または[4-2]に記載の方法。
【発明の効果】
【0070】
本発明は、NaPi-IIb、PiT-1、およびPiT-2の強い阻害作用を有する、7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド(化合物I)のp-トルエンスルホン酸塩の効率的な製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は化合物Iの合成スキームの一例を示す。
【
図2】
図2は、実施例7において得られた結晶粉末の粉末X線回折測定の結果と、その他の方法で得た結晶の粉末X線回折パターンを示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
【
図3】
図3は実施例7の乾燥粉末の熱重量分析結果を示す。横軸は温度(℃)、縦軸は熱分析において観測された熱流を表す。
【
図4】
図4は、実施例8において得られた結晶粉末の粉末X線回折測定の結果と、その他の方法で得た結晶の粉末X線回折パターンを示す。縦軸は回折強度であり、横軸は回折角2θ(°)である。
【
図5】
図5は実施例8の乾燥粉末の熱重量分析結果を示す。横軸は温度(℃)、縦軸は熱分析において観測された熱流を表す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本明細書において使用される略語を以下に記す。
DIC:N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMI:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMPU:N,N’-ジメチルプロピレン尿素
EtOH:エタノール
GC:ガスクロマトグラフィー
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
MeCN:アセトニトリル
MeOH:メタノール
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
NMP:N-メチルピロリドン
NMR:核磁気共鳴スペクトル
PDA:フォトダイオードアレー検出器
T3P:プロピルホスホン酸無水物
t-Bu:t-ブチル
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
【0073】
(官能基等の定義)
本明細書における「脱離基」とは、化学結合の開裂により脱離可能であり、脱離により陰イオン原子、または陰イオン分子などを生じさせうる基を表し、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、またはヨード基のようなハロゲン原子からなるハロゲノ基のほか、メシル基、トシル基、トリフルオロメタンスルホニル基、またはニトロフェニルスルホニル基のようなスルホニル基が例示される。
【0074】
本明細書における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示される。
本明細書における「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。該アルキル基は直鎖状、分枝鎖状、または環状のものを含む。アルキル基としては、炭素原子数1~20(C1-20、以下「Cp-q」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する。)のアルキル基であり、好ましくはC1-6アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0075】
本明細書中における、化合物を取り扱う温度としては、通常の作業者の作業環境の室内温度付近の温度(室温)、例えば10℃以上30℃以下の範囲、または15℃以上25℃以下の範囲が例示される。化合物を反応容器中で取り扱う温度としては、液体窒素などの冷媒を用いることによる-100℃から、溶媒の沸点付近の温度範囲が例示される。化合物の安定性、出発物質の反応性に応じて目的物を効率よく製造するのに適した温度を選択することができる。
【0076】
本発明の一つの側面において、以下に示す反応スキーム(スキーム1)により、4-(
トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリン(化合物II)を製造することができる。
【0077】
【0078】
式中、X1およびX2はそれぞれ脱離基を表す。出発物質である式3で表される化合物としては購入により入手可能な化合物を用いることができる。脱離基であるX1の例としては、例えば、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、または塩素原子が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい例として挙げられる。脱離基であるX2の例としては、例えば、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられ、特に塩素原子が好ましい例として挙げられる。
【0079】
一つの態様において、式3で表される化合物の溶液に、例えば、-100~10℃、好ましくは-60~0℃、より好ましくは-30~-10℃で、C1-6アルキルマグネシウムハライドとC1-6アルキルリチウムを加える。使用する該試薬のモル比率[C1-6アルキルリチウム/C1-6アルキルマグネシウムハライド]は、例えば1.5~3.0、好ましくは1.8~2.8、より好ましくは2.0~2.5とすることができ、C1-6アルキルマグネシウムハライドの溶液、続いて、C1-6アルキルリチウムの溶液の順に加えることが出来る。この際、アルキルマグネシウムハライドの、式4で表される化合物に対する等量は、特に限定されないが、例えば、0.25~2.0当量、好ましくは0.28~1.0当量、より好ましくは0.30~0.50当量として用いることが出来る。式3で表される化合物は、式4で表される化合物に対して、例えば0.8~3.0当量、好ましくは1.0~2.0当量、より好ましくは1.3~1.7当量を用いることが出来る。滴下時間は反応スケールや反応溶液の温度の変化を勘案して適宜設定することができる。C1-6アルキルリチウムの溶液の滴下後、得られる反応混合物は、例えば-100~10℃、好ましくは-60~0℃、より好ましくは-30~-10℃で撹拌することが出来る。撹拌時間は、例えば0.1~12時間、好ましくは、1~10時間、より好ましくは2~7時間とすることが出来る。
【0080】
式3で表される化合物の溶液に用いる溶媒としては、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなど)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンなど)などが挙げられる。C1-6アルキルマグネシウムハライドの溶液の溶媒としては、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなど)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンなど)などが挙げられる。C1-6アルキルリチウムの溶液の溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンなど)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなど)などが挙げられる。
【0081】
続いて、得られた反応混合物に、例えば、-60~10℃、好ましくは-50~0℃、より好ましくは-30~-10℃で、ハロゲン化亜鉛の溶液を滴下する。ここで、式4で表される化合物に対して、例えば0.1~2.0当量、好ましくは0.6~1.5当量、より好ましくは0.8~1.3当量のハロゲン化亜鉛を用いることができる。滴下時間としては、反応スケールや反応溶液の温度の変化を勘案して適宜設定することができる。ハロゲン化亜鉛の溶液に用いる溶媒としては、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなど)、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンなど)などが挙げられる。
【0082】
ハロゲン化亜鉛の溶液の滴下後、得られる反応混合物は、例えば、-60~10℃、好ましくは-40~10℃、より好ましくは-20~5℃で撹拌することができる。撹拌時間は、例えば、0.1~4時間、好ましくは0.15~2時間、より好ましくは0.2~1.5時間かけておこなうことができる。続いて、当該反応混合物に、式4で表される化合物とパラジウム触媒を加える際には、例えば、-20~20℃、好ましくは-20~10℃、より好ましくは-10~5℃の温度で、添加することができる。ここで、パラジウム触媒の量は、式4で表される化合物に対して、例えば0.001~0.1当量(0.1~10mol%)、好ましくは0.003~0.05当量(0.3~5mol%)、より好ましくは0.005~0.02当量(0.5~2mol%)を用いることができる。
【0083】
式4で表される化合物とパラジウム触媒を添加して得られた反応混合物は、例えば、25~100℃、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃で加熱がおこなわれ、その際の撹拌は、例えば、0.1~12時間、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは1~3時間とすることができる。
【0084】
式4で表される化合物とパラジウム触媒を添加した後の反応混合物の後処理は、HPLC、GCなどを用いた分析により、反応系中の式4で表される化合物の減少または消滅を確認した後に行うことができる。得られる式5で表される化合物は、カラムクロマトグラフィーなどの精製を行った後に次の工程に付してもよく、または特に精製を行うことなく次の工程に付してもよい。
【0085】
上記工程の一つの態様において、C1-6アルキルマグネシウムハライドとしては、例えばC1-6アルキルマグネシウムクロリド、具体的にはC3-6アルキルマグネシウムクロリドが挙げられ、好ましくは、i-プロピルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、シクロペンチルマグネシウムクロリド、およびシクロヘキシルマグネシウムクロリドなどが挙げられる。これらC1-6アルキルマグネシウムハライドは適当な溶媒の溶液を用いることができる。
【0086】
上記工程の一つの態様において、C1-6アルキルリチウムとしては、特に限定されず、例えば工業的原料として入手が容易なC1-6アルキルリチウム、具体的にはメチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウムおよびt-ブチルリチウムなどが挙げられる。C1-6アルキルリチウムは適当な溶媒の溶液を用いることができる。
【0087】
上記工程の一つの態様において、ハロゲン化亜鉛としては、特に限定されず、例えば工業的原料として入手が容易なハロゲン化亜鉛、具体的には塩化亜鉛、臭化亜鉛、またはヨウ化亜鉛などが挙げられる。これらハロゲン化亜鉛は適当な溶媒の溶液を用いることができる。
【0088】
上記工程の一つの態様において、パラジウム触媒としては、反応の触媒として作用するものであれば特に限定されず、例えば1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド錯体、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、(1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン)(3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリド、または[1,3-ビス(2,6-ジ-3-ペンチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロリドなどが挙げられる。
【0089】
上記工程の一つの態様において、X1はフッ素原子であり、X2は塩素原子であり、C1-6アルキルマグネシウムハライドはC3-6アルキルマグネシウムクロリドであり、ハロゲン化亜鉛は塩化亜鉛である。上記工程の別の態様において、X1はフッ素原子であり、X2は塩素原子であり、C1-6アルキルマグネシウムハライドはC3-6アルキルマグネシウムクロリドであり、ハロゲン化亜鉛は塩化亜鉛であり、パラジウム触媒は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド錯体、または1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体である。
【0090】
一つの態様において、式5で表される化合物を適当な溶媒中で、適当な温度下、例えば、50~150℃、好ましくは80~130℃、より好ましくは90~110℃で、ジカルボン酸イミドアルカリ金属塩と反応させることができる。ここで、式5で表される化合物に対して、例えば0.9~2.0当量、好ましくは1.0~1.5当量、より好ましくは1.05~1.2当量のジカルボン酸イミドアルカリ金属塩を用いることができる。反応時間は、反応スケールや反応溶液の温度の変化を勘案して適宜設定することができる。溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、または当該溶媒から選択される2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いることができる。好ましくは、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどを使用することができる。ジカルボン酸イミドアルカリ金属塩としては、フタルイミドカリウム、またはフタルイミドナトリウムなどが例示され、好ましくはフタルイミドカリウムである。
【0091】
反応混合物を、HPLC、GCなどを用いた分析により、反応溶液中の式5で表される化合物の減少または消滅を確認した後に、反応混合物に、求核剤を添加して、イミド構造部をアミンへと変換する(イミド分解反応)。イミド分解反応の反応分析は、省略することもできる。反応温度は特に限定されないが、例えば0~150℃、好ましくは25~100℃、より好ましくは40~60℃でおこなうことができる。ここで求核剤としては、C1-6アルキルアミン、ヒドラジンなどのアミン類などが使用でき、好ましくは、C1-6アルキルアミン、より好ましくはメチルアミン水溶液を用いることができる。メチルアミン水溶液の量は、著しい副反応が起こらない範囲で特に限定されないが、例えばメチルアミンが式5で表される化合物に対する当量として、2~30当量、好ましくは3~20当量、より好ましくは5~15当量含まれるような量として用いることができる。上記反応時間は、反応スケールや反応溶液の温度の変化を勘案して適宜設定することができる。式2で表される化合物(化合物II)の粗生成物は精製することができる。精製方法としては、カラムクロマトグラフィー、再結晶などが挙げられる。
【0092】
上記方法で得られる化合物IIは、公知の文献(特許文献6および7、ならびに非特許文献10)に記載の化合物Iの製造方法において合成中間体として使用することができる。
【0093】
化合物Iの合成中間体の一例として、より具体的には化合物IIとマロン酸誘導体とを適当な溶媒中で反応させて得られる、式6で表される化合物が例示される。
【0094】
【0095】
上記方法で用いられるマロン酸誘導体の一つの態様として、メルドラム酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸などのジアルキルマロン酸、またはマロン酸が例示される。好ましくは、メルドラム酸である。また、この工程を行う際に用いる溶媒は、通常の化学反応で用いられる溶媒であれば、当該反応に支障がない範囲で特に限定されないが、トルエン、ヘプタン、アセトニトリル、メタノール、およびエタノールから選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒の混合溶媒中で行うのが好ましい。
【0096】
化合物Iの合成中間体の一例として、より具体的には、公知の方法(特許文献6および7)により製造可能な式7で表される化合物と式6で表される化合物とを、適当な溶媒中で縮合させて得られる、式8で表される化合物が例示される。
【0097】
【0098】
式6で表される化合物と式7で表される化合物との縮合反応は、当業者がカルボキシル基とアミノ基との縮合反応として通常用いる方法で行うことができる。縮合反応の一つの態様としては、縮合剤を用いる縮合反応があげられる。縮合剤としては、クロロリン酸ジエチル、プロピルホスホン酸無水物(T3P)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、または1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDCI)などが例示される。好ましくは、クロロリン酸ジエチル、またはプロピルホスホン酸無水物(T3P)である。また、この工程を行う際に用いる溶媒は、通常の化学反応で用いられる溶媒であれば、当該反応に支障がない範囲で特に限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドから選択される溶媒、または当該溶媒から選択される2以上の溶媒の混合溶媒中で行われることが好ましい。また、必要に応じて当該縮合反応は塩基の存在下で行われる。塩基の具体例として、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、およびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基があげられる。
【0099】
本発明の一つの側面において、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩(TsOH塩)の結晶粉末の製造方法が提供される。当該製造方法の概要は、以下にスキームによって示される。
【0100】
【0101】
本発明の1つの態様において、溶媒中に化合物Iとp-トルエンスルホン酸を溶解させた溶液から、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を析出させることにより、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を得ることができる。使用するp-トルエンスルホン酸の量としては、化合物Iに対して、例えば1当量以上、具体的には1当量とすることができる。使用するp-トルエンスルホン酸は、市販品を用いることができる、好ましくはp-トルエンスルホン酸塩一水和物である。
【0102】
化合物Iとp-トルエンスルホン酸の溶液の溶媒としては、エタノールを使用することができる、目的のp-トルエンスルホン酸塩の析出のために、種結晶を添加してもよく、および/またはエタノール溶液中に他の溶媒を添加してもよい。他の溶媒としては、目的物の析出量を増加させる目的で、あるいは目的物の析出速度を高める目的で、目的物の溶解度が低い溶媒(貧溶媒)を用いることができる。このような貧溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、またはペンタンなどが挙げられる。当該溶液から結晶を析出させる際のエタノールと他の溶媒の混合比としては、エタノールの1.0重量部に対する他の溶媒の重量部の割合が0.80~3.5、好ましくは1.0~3.0、さらに好ましくは1.2~2.5、最も好ましくは1.5~2.2とすることができる。種結晶としては、例えば非特許文献10に記載の結晶を用いることができる。
【0103】
本発明における「1型結晶」とは、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の結晶の1つの態様であり、この1型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°、および22.6°付近の回折角(2θ)にピークを有することを特徴とすることが記載されている(非特許文献9)。1型結晶の回折角(2θ)は、4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.8°、18.9°、および22.6°(±0.2°)からなる群から選択される、少なくとも1つのピークを含む粉末X線回折パターンを有していても、すべてを有していてもよい。
【0104】
また、熱重量分析において、112.6℃(外挿点)および126.6℃(ピークトップ)に融解に起因するピークを示すことが記載されている。
目的のp-トルエンスルホン酸塩の析出後、析出量をさらに増加させるために、さらに他の溶媒を添加してもよい。他の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンまたはペンタンなどが挙げられる。他の溶媒の再添加後のエタノールと他の溶媒の混合比としては、エタノールの8.0重量部に対する他の溶媒の重量部の割合が7.0~28、好ましくは8.0~24、さらに好ましくは10~20、最も好ましくは14~20とすることができる。
【0105】
上記の工程において、化合物Iとp-トルエンスルホン酸を溶解させるためにエタノール溶液は、例えば22~28℃、具体的には25℃とすることができる。その後、他の溶媒を添加して晶析させる時の温度は、析出量をさらに増加させるために、化合物Iとp-トルエンスルホン酸が溶解している溶液の温度より冷却してもよい。例えば-5~33℃、具体的には25℃とすることができる。さらに、他の溶媒を添加して晶析させる時の温度は、例えば-5~33℃、具体的には25℃とすることができる。
【0106】
本発明の別の態様において、エタノールと他の溶媒の混合溶媒中に化合物Iを溶解させて、そこにp-トルエンスルホン酸のエタノール溶液を添加した後に、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を析出させることにより、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を得ることができる。使用するp-トルエンスルホン酸の量としては、化合物Iに対して、好ましくは1当量以上、1.2当量以下の範囲、さらに好ましくは1当量以上1.1当量以下の範囲、最も好ましくは1当量とすることができる。目的のp-トルエンスルホン酸塩の析出のために、種結晶を添加してもよい。他の溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンまたはペンタンなどが挙げられ、好ましくはヘプタン、より好ましくはn-ヘプタンである。エタノールと他の溶媒の混合比としては、エタノールの8.0重量部に対する他の溶媒の重量部の割合が7.0~28、好ましくは8.0~24、さらに好ましくは10~20、最も好ましくは12~17とすることができる。種結晶としては、例えば非特許文献10に記載の結晶を用いることができる。種結晶を反応液に加える場合、固体の種結晶を用いても、適当な溶媒中に分散させた種結晶の懸濁液を用いてもよい。種結晶の懸濁液を用いる場合の分散用の溶媒は、種結晶が該溶媒に完全に溶解しない溶媒であればよく、好ましくは化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を析出させるために用いる貧溶媒を含む溶媒、より好ましくはn-ヘプタンを含む溶媒、さらに好ましくはn-ヘプタンである。
【0107】
p-トルエンスルホン酸のエタノール溶液の添加により、目的とする化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の析出後、析出量をさらに増加させるために、さらに他の溶媒を添加してもよい。他の溶媒としては、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩を析出させることができる溶媒であればよく、好ましくはヘキサン、ヘプタンまたはペンタンなどが挙げられ、より好ましくはn-ヘプタンを含む溶媒、さらに好ましくはn-ヘプタンである。他の溶媒の再添加後のエタノールと他の溶媒の混合比としては、エタノールの8.0重量部に対する他の溶媒の重量部の割合が7.0~28、好ましくは8.0~24、さらに好ましくは10~20、最も好ましくは12~17とすることができる。
【0108】
上記の工程において、化合物Iを溶解させるためにエタノール溶液は、例えば22~28℃、具体的には25℃とすることができる。その後、他の溶媒を添加して晶析させる時の温度は、例えば-5~33℃、具体的には25℃とすることができる。さらに、他の溶媒を添加して晶析させる時の温度は、例えば-5~33℃、具体的には25℃とすることができる。
【0109】
析出した結晶は、固液分離操作、例えば、ろ過や遠心分離による固体成分と液体成分の分離、固体成分の洗浄用溶媒による洗浄、固体成分に付着した洗浄用溶剤などの減圧乾燥等の公知の分離精製手段によって、前記溶解溶液や混合溶液から単離精製することができる。固体成分の洗浄用溶媒としては、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の目的とする結晶を別の結晶に転移させない溶媒、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の溶解度が低い溶媒、および/または化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩が分解をうけない溶媒など好ましく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、t-ブチルメチルエーテルなど、またはこれら溶媒の混合物が挙げられる。
【0110】
本明細書において「湿性」とは、固体が溶媒を含有する状態を意味する。例えば、固液分離操作により回収した固体が分離した液体の一部を含有する場合に、湿性固体と称することができる。本発明の一つの態様において、溶媒中で析出した化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩は、湿性の固体(すなわち湿性固体)として回収され、該湿性固体は、湿性粉末および/または湿性固体でありうる。
【0111】
本明細書において「粉末」とは、粒子サイズが0.5~20μm、例えば、1.0~10μmの固体を意味する。粉末の粒子径分布は、例えばレーザ回折・散乱法などの情報により測定することができる。
【0112】
本明細書における「湿性粉末」とは、固液分離操作により回収した粉末と、固液分離操作に用いた溶媒および/または粉末の洗浄に用いた溶媒との混合物をあらわす。粉末と溶媒の混合比は任意でありうる。
【0113】
本明細書における「湿性結晶」とは、結晶化操作により析出した結晶と、結晶化操作に用いた溶媒および/または結晶の洗浄に用いた溶媒との混合物をあらわす。結晶と溶媒の混合比は任意でありうる。
【0114】
本明細書における「乾燥粉末」とは、上記湿性粉末と比較して、溶媒成分が気化し、粉末から溶媒成分が減少した状態のものをさす。粉末に対する溶媒の残留量は任意でありうるが、粉末から溶媒が減少しているために、粉末同士の付着がすくなくなり流動性がよくなっている状態のものをさす。
【0115】
本明細書における「乾燥条件」とは、特に限定されないが、例えば湿性固体(例えば、湿性粉末)を乾燥固体(例えば、乾燥粉末)に変換させる条件を指す。常温で気化しやすい溶媒と混合している湿性粉末は、常温常圧で放置することで溶媒が蒸発し、乾燥粉末に変換させることができる。溶媒の気化を促進させるために湿性粉末を加熱してもよい。粉末を形成している物質の性質上、加熱が適さない場合、湿性粉末を減圧下に付すことで溶媒の気化を促進させてもよい。加熱と減圧を同時に行っても別々に行ってもよい。
【0116】
本発明の一つの側面において、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の湿性粉末を乾燥条件に付すことにより、前記化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末を得ることができる。一つの態様において、乾燥条件下で前記湿性粉末に含まれる前記化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の結晶の相転移により、化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の1型結晶の乾燥粉末が得られる。
【0117】
本明細書における「粉末X線回折」は、結晶性物質の同定、構造解析に用いられる、X線の回折現象を用いて求めることができる数値であり、任意の粉体に固有の値である。この値は通常、1つ以上の回折角(2θ値)であらわされる。CuKα1放射を用いて測定することができ、当業者であれば、市販されている粉末X線回折測定用の機器を用い、その取扱説明書に従って測定することができる。より具体的には、測定対象試料にCuKα1のX線を照射し、入射X線に対する回折X線を測定することにより、2θ値を測定することができる。例えば、日本薬局方(第十七改正または第十八改正)に記載されている「粉末X線回折測定法」などの常法に従って行うことができる。
【0118】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角(2θ値)は、測定機器により、もしくは回折角の読み取り条件等の測定条件により、多少の誤差を生じることがある。本明細書において回折角は、±0.5°から±0.2°程度の範囲で測定誤差を有し得る。
【0119】
本明細書における回折角2θの表記において、列記された回折角2θの最後に「(±0.2°)」と記載されている場合は、列記された全ての回折角2θにおいて、記載された各値に対して±0.2°の範囲が許容されることを意味する。列記された回折角2θの最後に「(±0.5°)」と記載されている場合は、列記された全ての回折角2θにおいて、記載された各値に対して±0.5°の範囲が許容されることを意味する。
【0120】
本明細書における「粉末X線回折パターン」とは、粉末X線回折スペクトルの測定により得られた回折による回折角とその強弱がそれぞれ横軸と縦軸にプロットされたものをあらわす。当業者であれば、市販されている粉末X線回折測定用の機器を用い、その取扱説明書に従ってプロットすることができる。
【0121】
本明細書における「熱重量分析」は、試料の物理的及び化学的性質の変化を熱的に分析する手法であり、試料を加熱することによる重量変化を測定する分析手段である。当業者であれば、市販されている熱重量分析測定用の機器を用い、その取扱説明書に従って測定することができる。
【0122】
本明細書における「示差熱分析」は、試料を加熱することによる発熱あるいは吸熱を検出し測定する分析手段である。当業者であれば、市販されている示差熱分析測定用の機器を用い、その取扱説明書に従って測定することができる。「熱重量分析」および/または「示差熱分析」を用いることにより、試料の昇華、融解、凝固、凝縮、蒸発、分解、吸着、または脱着などの物理現象に関する情報を取得することができる。
【0123】
熱重量分析において、測定される吸熱ピーク(ピークトップ値)は、1分あたりの昇温の幅や試料の純度等により測定温度が変化することがある。本明細書において外挿点やピークトップの測定値は±5.0℃程度の範囲で測定誤差を有し得る。
【0124】
本発明の方法により得られる結晶粉末は、粉砕するかまたは粉砕することなく、種々の形態の医薬組成物、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、ドライシロップ剤等の経口剤、または注射剤に加工することができるが、経口剤に利用することが好ましい。これらの医薬組成物は、薬学的に許容される担体を用いて当業者の公知慣用の製剤方法により製造できる。経口用固形製剤を調製する場合は、有効成分に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、ドライシロップ剤、カプセル剤等を製造することができる。経口液状製剤を調製する場合には、有効成分に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により、内服液剤、シロップ剤等を製造することができる。注射剤を調製する場合には、有効成分にpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により、皮下、筋肉内、静脈内用注射剤を製造することができる。
【0125】
上記の医薬組成物中に配合されるべき化合物Iのp-トルエンスルホン酸塩の量はこれを適用すべき患者の症状により或いはその剤型等により一定でないが、一般に投与単位形態当り経口剤では約10~700mg、注射剤では約10~700mgとするのが望ましい。又、上記医薬組成物における1型結晶の1日当りの投与量も症状、投与ルート、患者の年齢等に応じ一概に決定できず医師の処方により決定される、通常約10~500mgとするのが好ましい。
【0126】
本明細書において、「および/または」との用語の意義は、「および」と「または」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B、および/またはC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)AおよびB、(v)AおよびC、(vi)BおよびC、(vii)A、B、およびC。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施に用いたDMF、DMA、NMP、DMI、またはDMPUなどに例示される溶媒は商業的供給業者品を精製せずに用いた。また、水を溶媒として加えない反応では、脱水溶媒、超脱水溶媒、または無水溶媒などの商業的供給業者品を精製せずに用いた。
【0128】
本発明の実施に用いた試薬類は、特に記載したもの以外、商業的供給業者品を精製せずに用いた。
1H-NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置JNM-ECP500(日本電子社製)を用いて測定し、内部標準物質として用いたMe4Siのケミカルシフトを0ppmとし、サンプル溶媒からの重水素ロック信号を参照した。分析対象化合物のシグナルのケミカルシフトはppmで表記した。シグナルの分裂の略語は、s=シングレット、brs=ブロードシングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレットで表記し、シグナルの分列幅はJ値(Hz)で表記した。シグナルの積分値は、各シグナルのシグナル面積強度の比をもとに算出した。
【0129】
粉末X線(XRPD)回折測定は、以下の条件で測定し、走査範囲の2θ値を算出した。X線回折パターンは、回折の角度(2θ値)を横軸上に、線強度を縦軸上にプロットした。
測定装置:SmartLab System(Rigaku Corporation社製)
線源:Cukα1
管電圧:45kV
管電流:200mA
走査範囲:3~35°
サンプリング幅:0.02°
【0130】
熱重量分析(TGA)分析は、EXSTAR TG/DTA6200R装置(セイコーインスツルメンツ(現社名:日立ハイテクサイエンス)社製)を用いて実施した。アルミニウム製容器に、1~3mgのサンプルを入れた。分析の温度は、30℃から350℃の範囲で行った。サンプルを窒素気流下にて、10℃/分の昇温速度で分析した。
【0131】
HPLC分析にはWaters製H-Classシステムを使用し、PDA検出器を用い225nmで測定した。GC分析には島津製作所製GC2010を使用し、FIDで検出した。
【0132】
各工程の生成物は以下の表1に示す分析法で評価した。
【表1】
【0133】
(実施例1-1)4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンの製造
以下に示す製造ルートで製造した。
【0134】
【0135】
[工程1]4-(2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
【0136】
【0137】
窒素置換した3Lフラスコに、1-フルオロ-(4-トリフルオロメチル)ベンゼン(150g、912mmol)とテトラヒドロフラン(700mL)を加えた。得られた溶液を撹拌しながら、内温が-17.8℃になるまで冷却し、n-ブチルマグネシウムクロリド(2.13M、テトラヒドロフラン溶液、100mL、213mmol)を12分かけて滴下した。その後、反応液にn-ブチルリチウム(1.63M、ヘキサン溶液、298mL、486mmol)を1時間21分かけて滴下した。内温幅-10.5℃~-17.6℃で4時間30分撹拌後、反応液に塩化亜鉛(2.03M、2-メチルテトラヒドロフラン溶液、300mL、608mmol)を35分かけて滴下した。その後、反応液に内温0℃で1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(4.9717g、6.08mmol)と4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(111.033g、608mmol)とをテトラヒドロフラン(45mL)を用いて加えた。30分以上かけて反応液の内温60℃まで加熱し、60℃に達してから1時間後にサンプリングし、GC分析によって4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの消失を確認した。その後、反応液の内温25℃まで冷却した。反応液にクエン酸(10%水溶液、555mL)を加え、20分撹拌した後、静置し、水層を排出した。反応液にEDTA-4ナトリウム二水和物(10%水溶液、555mL)を加え、20分撹拌した後、静置し、水層を排出した。反応液に水(555mL)を加え、10分撹拌した後、静置し、水層を排出した。得られた有機層を減圧濃縮し、トルエン(555mL)を加え、再度減圧濃縮し、4-(2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの粗生成物を得た。得られた粗生成物をそのまま次工程に用いた。
【0138】
GC純度:91.17%
測定方法:GC、保持時間:7.4分
[工程2]4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンの製造
【0139】
【0140】
工程1で得られた4-(2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの粗生成物を5Lフラスコに移送し、N,N-ジメチルホルムアミド(1.71L)を加えた。フタルイミドカリウム(124.051g、670mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド(190mL)を加えて得た溶液を、前記溶液に加えた。反応液の撹拌を開始し、フラスコの外温を110℃に設定し加熱を開始した。反応液の内温が100℃に到達してから3時間後にサンプリングし、HPLC分析によって反応転化率99.3%であることを確認し、その後反応液を内温53℃まで冷却した。反応液にメチルアミン水溶液(40%w/w、567mL)を加えた。反応液を内温48℃~53℃で4時間撹拌した後にサンプリングし、HPLC分析によって反応転化率100%であることを確認した。N-アセチル-L-システイン(9.9449g、60.9mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(38mL)の溶液を加え、1時間撹拌した。反応液に水(1134mL)を約1時間20分かけて6分割して滴下した(189mL×6)。水を滴下中に結晶が析出し懸濁液となった。水の滴下終了後1時間撹拌後、反応液を25℃まで冷却した。懸濁液をろ過し、得られた結晶を水で2回洗浄した (1980mL×2)。得られた湿性粉末を減圧下外温35℃で乾燥し、4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンを得た(169.62g、2工程収率90.7%)。
【0141】
HPLC純度:96.42%
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:8.8分
1H-NMR(500MHz,CDCl3)δ:6.71(2H,brs),6.83(1H,d,J=9.0Hz),7.49(1H,d,J=8.5Hz),7.95(1H,s),8.04(1H,s),9.34(1H,s)。
【0142】
(実施例1-2)
[工程1]4-(2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
【0143】
【0144】
窒素置換した3Lフラスコに、1-フルオロ-(4-トリフルオロメチル)ベンゼン(150g、912mmol)とテトラヒドロフラン(720mL)を加えた。この溶液を撹拌しながら、内温が-20.3℃になるまで冷却し、n-ブチルマグネシウムクロリド(2.13M、テトラヒドロフラン溶液、100mL、213mmol)を28分かけて滴下した。続いて、反応液にn-ブチルリチウム(1.63M、ヘキサン溶液、299mL、487mmol)を47分かけて滴下した後、滴下容器内をテトラヒドロフラン(30mL)で洗浄し、洗浄液を反応液に加えた。反応液を内温-8.6℃~-10.2℃で4時間撹拌した後、内温を-20.1℃まで冷却し、塩化亜鉛(1.0Mテトラヒドロフラン溶液、609mL、609mmol)を61分かけて滴下した。反応液の内温を0℃まで昇温し、17分間撹拌した後、反応液に1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド錯体(4.98g、6.09mmol)と4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(111.084g、609mmol)を加えた。反応液の内温を25分かけて60℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌後にサンプリングし、反応液の一部をGC分析により分析し、4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの消失を確認した。反応液の内温を10℃以下に冷却し、1M塩酸(750mL)とトルエン(750mL)を加え、10分間撹拌した後、水層を排出した。続いて、有機層に1M塩酸(300mL)を加え、10分間撹拌した後、水層を排出した。有機層に10%N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸三ナトリウム二水和物水溶液(750mL)を加え、30分間撹拌した後、水層を排出した。有機層に10%塩化ナトリウム水溶液(750mL)を加え、10分間撹拌した後、水層を排出した。得られた有機層を減圧濃縮し、4-(2-トリフルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの粗生成物を得た。得られた粗生成物をそのまま次工程に用いた。
【0145】
GC純度:94.35%(保持時間3.1分以降のピークのみから算出した)
測定方法:GC、保持時間:7.4分
[工程2]4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンの製造
【0146】
【0147】
実施例1-2の工程1で得られた4-(2-トリフルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)-6-(トリフルオロメチル)ピリミジンの粗生成物を5Lフラスコに移送し、N,N-ジメチルホルムアミド(1.5L)を加えた。この溶液にフタルイミドカリウム(124.022g、670mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(378mL)を用いて加えた。反応液を撹拌しながら、反応容器の外温を103℃に設定し加熱を開始した。反応液の内温が100℃に到達してから3時間後に反応液をサンプリングし、HPLC分析によって反応転化率が98.6%であることを確認した。さらに反応液を100℃で3時間撹拌後に再度反応液をサンプリングし、HPLCで反応転化率が99.9%であることを確認した後、反応液の内温を50℃まで冷却した。反応液にメチルアミン水溶液(40%w/w、567mL)を加え、内温50℃付近で3時間撹拌後に反応液をサンプリングし、HPLC分析によって反応転化率が100%であることを確認した。反応液にN-アセチルシステイン(9.9447g、60.9mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(18.9mL)を用いて加え、1時間撹拌した。反応液に水(1134mL)を約1時間20分かけて6分割して滴下した(189mL×6)。水を滴下中に反応液中に結晶が析出し、懸濁液となった。水の滴下終了から1時間撹拌後、反応液を25℃まで冷却した。懸濁液を濾過し、得られた結晶を水で2回洗浄した(1890mL×2)。得られた湿性粉末を減圧下外温30~40℃で乾燥し、4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンを得た(169.73g、2工程収率90.8%)。
【0148】
HPLC純度:96.95%
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:8.8 分。
(参照例1)4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリンの製造(従来法)
以下に示す製造ルートで製造した。
【0149】
【0150】
反応容器に、2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)アニリン(Boron molecular社製(カタログ番号:BM1088)、30.0kg)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液(86.2kg)とN,N-ジメチルアセトアミド(22.2L)を窒素気流下で加えた。次いで、4-クロロ-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン(20.6kg)とN,N-ジメチルアセトアミド(38.2L)を加え、さらに1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(0.408kg)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液(166L)、水(9.55L)を加えた後、減圧下で15分間反応容器を脱気後、窒素で置換した。窒素でバブリングしながらリン酸三カリウム(25.3kg)に水(38.2L)を加えて調製したリン酸三カリウム水溶液を反応液の内温が50℃を超えないように加えた後に、減圧下で5分間反応容器を脱気後、窒素で置換した。反応液を内温50~60℃の範囲で2時間攪拌後、N-アセチル-L-システインの(1.63kg)にN,N-ジメチルアセトアミド(95.5L)を加えて調製した溶液を加え、さらに内温54.4~57.6℃の範囲で1時間攪拌した。反応液に、内温52.0~56.4℃の範囲で、水(28.7L)を10回に分けて加えた。反応液を内温55.8~56.3℃の範囲で30分間攪拌後、25℃に冷却し、さらに19時間45分攪拌した。得られた沈殿を濾取後、水(287L)で2回洗浄した。湿性粉末を0.08~0.10MPaの減圧下、40℃で70時間乾燥し、31.52kg(収率98.2%)の表題化合物を得た。得られた化合物の1H-NMRスペクトルデータとHPLC分析のおける保持時間は実施例1のものと一致した。
【0151】
実施例1-2と参照例1との比較を以下の表2に示した。化合物の純度はHPLC分析により算出した。
【0152】
【0153】
実施例1-2では、参照例1と同等の純度の目的物が得られることが分かった。
(参照例2)1-(2-クロロエトキシ)-2,3-ジフルオロベンゼンの製造
【0154】
【0155】
2,3-ジフルオロフェノールと1,2-ジクロロエタンを用い、文献記載の方法(Williamson, AW et al., J. Chem. Soc. 1852, 106, 229-239)に準じて製造した。
【0156】
(参照例3)2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンズアルデヒドの製造
【0157】
【0158】
参照例2で得られた1-(2-クロロエトキシ)-2,3-ジフルオロベンゼンを用い、国際公開第2014/142273号公報に記載の下記に示す製造ルートで製造した。
【0159】
【0160】
(参照例4)メチル (E)-1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジリデン)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボキシレート シュウ酸塩の製造
【0161】
【0162】
[工程1]
1-(メチルアミノ)シクロペンタン-1-カルボン酸メチルを出発原料とし、参照例3で得られた、2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンズアルデヒドを用い、国際公開第2014/142273号公報に記載の下記に示す製造ルートで製造した。
【0163】
【0164】
[工程2]
反応容器に窒素雰囲気下、メチル (E)-1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジリデン)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボキシレート 塩酸塩(60.0g、129mmol)とトルエン(360mL)を加え、懸濁させた。得られたスラリーを冷却し、内温-5℃に保ちながら、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム21.7gを300mLの水に溶解して調製)を滴下し、室温に昇温し、さらに0.5時間撹拌した。有機層を分離後、得られた水層をさらにトルエン(60mL)で抽出し、合わせた有機層を濃縮し、(E)-1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジリデン)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボキシレート(フリー体)のトルエン溶液(131.9g)を得た。濃縮液に液量が330mLになるようにトルエンを加え、室温にて終夜保管した。13時間後に反応容器の外温を50℃に設定し、反応液の内温48℃にてシュウ酸のメタノール溶液(シュウ酸11.6gを27.6mLのメタノールに溶解して調製)を加え、さらに20分間撹拌した。反応容器の外温を25℃に設定し、得られた溶液にn-ヘプタン(138mL)を加えた。反応容器の外温を0℃に設定し、反応液の内温1℃以下にてさらに1.5時間撹拌した。析出した固体を濾取し、得られた湿性粉末をトルエン(166mL)で洗浄した。この湿性粉末を減圧下外温40℃で乾燥して、目的物(56.7g)を得た(収率:85%)。
【0165】
HPLC純度:99.52%
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:6.7分
1H-NMR(DMSO-D6)δ:7.45-7.41(1H,m),7.27(1H,s),7.06(1H,t,J=8.2Hz),4.42(2H,t,J=5.3Hz),3.65(2H,t,J=5.3Hz),3.61(3H,s),3.42(2H,t,J=5.0Hz),3.29(3H,s),3.22(2H,t,J=5.3Hz),2.85(3H,s),2.76(3H,s),2.28-2.23(2H,m),2.17-2.11(2H,m),1.73-1.67(4H,m)。
【0166】
(実施例2)1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボン酸メチルの製造
【0167】
【0168】
窒素雰囲気下、参照例4で得られたメチル (E)-1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジリデン)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボキシレート シュウ酸塩(50.0g、97mmol)と2-ピコリンボラン(8.7g、77mmol)に、トルエン(375ml)を加え、懸濁させた。この懸濁液へシュウ酸水溶液(シュウ酸17.4gを235mlの水に溶解して調製)を内温25℃以下に保ちながら滴下した後、8.5時間撹拌した。有機層を廃棄し、水層へトルエン(375mL)を加え、室温にて終夜保管した。12時間後に水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム39.5gを150mLの水に溶解して調製)を内温0℃以下に保ちながら滴下した。20℃にて、0.5時間撹拌した後に、水層を廃棄した。有機層に塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム30.1gを150mLの水に溶解して調製)を加え、15分間撹拌した。水層を排出し、有機層を濃縮し、目的物のトルエン溶液を得た。得られた溶液に酢酸エチル(290mL)を加え、室温にて終夜保管した。
【0169】
HPLC純度:97.91%
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:4.3分。
【0170】
(実施例3)3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロパン酸の製造
【0171】
【0172】
反応容器に、窒素雰囲気下、実施例1-2で得られた4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリン(2.0g、6.5mmol)とメルドラム酸(0.94g、6.5mol)を加え、さらにトルエン(10mL)とn-ヘプタン(10mL)を加えて懸濁させた。反応容器の外温を110℃に設定し、反応液の内温を100℃に昇温し5時間撹拌した。HPLCで反応完結を確認した後、反応液の内温を25℃に冷却し、さらに2時間撹拌した。析出した結晶をろ過後、トルエン(4mL)とn-ヘプタン(4mL)より調製した混合液で洗浄した。この湿性粉末を減圧下外温35℃で乾燥して、目的物(2.1g)を得た(収率:80%)。
【0173】
HPLC純度:99.67%
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:7.5分
1H-NMR(DMSO-D6)δ:11.01(1H,s),9.53(1H,s),8.47(1H,s),8.25(1H,d,J=8.6Hz),8.22-8.21(1H,m),7.96-7.94(1H,m),3.42(2H,s)。
【0174】
(参照例5)3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロパン酸の製造(従来法)
【0175】
【0176】
反応容器に、窒素雰囲気下、参照例1で得られた4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)アニリン(54.88kg)とメルドラム酸(25.76kg)を加え、さらにトルエン(274L)とn-ヘプタン(274L)を加えて懸濁させた。反応液の内温を90℃以上に昇温し5時間撹拌した。HPLCで反応完結を確認した後、反応液の内温を25℃以下に冷却し、さらに内温15~25℃にて1時間以上撹拌した。析出した結晶を濾取後、トルエン(110L)とn-ヘプタン(110L)より調製した混合液で洗浄した。この湿性粉末を減圧下外温40℃で乾燥して、目的物(61.82kg)を得た(収率:88%)。
【0177】
HPLC純度:99.9%。
測定方法:HPLC 方法A、保持時間:7.5分。
実施例3と参照例5との比較を以下に示した。化合物の純度はHPLC分析により算出した。
【0178】
【0179】
実施例3では、参照例5と同等の純度の目的物が得られることが分かった。
(実施例4-1)1-((2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)フェニル)メチル)-1-メチル-2-(3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロパノイル)ヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボン酸メチルの製造
【0180】
【0181】
反応容器に、窒素雰囲気下、実施例2で得られた1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボン酸メチルの溶液と、参照例5で得られた3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロピオン酸(39.9g、101mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(145mL)溶液を加えた。得られた溶液に、ピリジン(41.5mL、513mmol)を内温-5℃に保ちながら滴下した。続いて、反応液にプロピルホスホン酸無水物の50%酢酸エチル溶液(43.0g、135mmol)を、反応液の内温-5℃に保ちながら滴下した。反応液を5℃にて、15分間撹拌した後に、3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロピオン酸(1.9g、4.8mmol)を追加して、さらに3.5時間撹拌した。反応液に25℃にて、塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム12.5gを124mLの水に溶解して調製)を加え、20分間撹拌した。水層を廃棄し、有機層にさらに塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム12.5gを124mLの水に溶解して調製)を加え、20分間撹拌した。水層を廃棄し、続いて有機層にリン酸水素二カリウム水溶液(リン酸水素二カリウム45.7gを249mLの水に溶解して調製)を加え、15分間撹拌した後に水層を排出した。有機層を濃縮し、析出した無機塩を桐山ロートで濾去し、濾液を室温にて終夜保管した。13時間後に濾液を濃縮乾固し、残渣に2-プロパノール(116mL)を加えた。得られた溶液を10分間撹拌した後に、さらに2-プロパノール(382mL)を加えた。反応容器の外温を35℃に設定し、反応液の内温31℃~33℃で1時間撹拌した後に、反応容器の外温を1.25時間かけて10℃まで下げた。反応液の内温12℃~14℃で30分間撹拌した後に、反応容器の外温を35℃に上げた。反応液の内温を30℃~35℃に保ちながら30分間撹拌した後に、反応容器の外温を1.75時間かけて0℃まで下げた。反応液の内温を5℃以下に冷却した後、析出した固体を濾取した。得られた湿性粉末を、0℃に冷却した2-プロパノール(207mL)で洗浄した。この湿性粉末を減圧下外温35~40℃で乾燥して、目的物(65.7g)を得た(2工程通算の収率:84%)。
【0182】
HPLC純度:99.49%
測定条件:HPLC 方法B、HPLC保持時間:3.9分。
1H NMR(500MHz,DMSO-D6)δ:11.15(1H,s),9.5
1(1H,d,J=0.9Hz),8.54(1H,d,J=1.4Hz),8.32(1H,d,J=8.6Hz),8.25(1H,d,J=1.4Hz),7.97-7.95(1H,m),7.00-6.98(1H,m),6.93-6.91(1H,m),4.70(1H,d,J=16.3Hz),4.41(1H,d,J=16.3Hz),4.14-4.08(2H,m),3.96(1H,d,J=15.4Hz),3.69(1H,d,J=15.4Hz),3.61(3H,s),3.40(2H,t,J=5.9Hz),3.22(3H,s),2.76(2H,t,J=5.7Hz),2.59-2.57(5H,m),2.27(3H,s),2.04-1.97(2H,m),
1.85-1.48(6H,m)。
【0183】
(実施例4-2)(EtO)
2
POClを用いた1-(2-((2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)フェニル)メチル)-1-メチル-2-(3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロパノイル)ヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボン酸メチルの合成
【0184】
【0185】
メチル 1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-1-メチルヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボキシレート(0.109g、0.254mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液 (1.0mL)と3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロピオン酸(0.101g、0.257mmol)を混合した後、反応容器内を窒素置換した。反応液の内温を-10℃にて、ピリジン(0.031mL、0.381mmol)、(EtO)2POCl(0.073mL、0.509mmol) を順次加えた。反応液の内温を-10℃で1.5 時間撹拌した後、目的物の生成率をHPLC面積比にて求めた。
【0186】
生成率:76.49%。
測定条件HPLC 方法A、保持時間:8.4分。
【0187】
(実施例5)7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミドの製造
【0188】
【0189】
反応容器に1-(2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-1-メチル-2-(3-オキソ-3-((4-(トリフルオロメチル)-2-(6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル)フェニル)アミノ)プロパノイル)ヒドラジニル)シクロペンタン-1-カルボン酸メチル(34kg、42mol)、炭酸カリウム(11.7kg、85mol)、およびエタノール(268kg)を加えて懸濁させ、撹拌と加熱を開始した。反応液の還流開始から2時間撹拌し、HPLC分析によって反応転化率100%を確認した。得られた懸濁液を減圧濃縮し、酢酸エチル(170L)を加えた。反応液に1M塩酸水溶液 (85kg)を加え、15分撹拌した後に静置し、水層を排出した。反応液に10%リン酸二水素カリウム水溶液(170kg)を加え、15分撹拌した後、静置し、水層を排出した。反応液に10%塩化ナトリウム水溶液 (170kg)を加え、15分撹拌した後、静置し、水層を排出した。有機層を減圧濃縮し、得られた濃縮液に酢酸エチル(80L)加えて濾過した。濾過操作の際、酢酸エチル(80L)を容器及び配管洗浄のために用いた。濾過後の溶液を再度減圧濃縮し、1H-NMR分析で酢酸エチルと目的物のモル比率が3以下であることを確認した。得られた表題化合物の粗生成物にエタノール(52kg)とn-ヘプタン(52kg)を加え、次工程へと進んだ。
【0190】
HPLC純度:99.24%。
測定条件:HPLC 方法A、保持時間:9.4分。
【0191】
(実施例6)7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド p-トルエンスルホン酸塩の製造
【0192】
【0193】
窒素雰囲気下,実施例5で得られた7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド(33kg、42mol)に混合溶媒(エタノール52kg、n-ヘプタン56kg)を加え、得られた溶液を内温25℃にて撹拌した。エタノール(13kg)に溶解させたp-トルエンスルホン酸一水和物(8kg、42mol)を加えた。表題化合物(0.03kg、0.035mol)の結晶(非特許文献10に記載の方法で調製)をn-ヘプタン(0.5L)に懸濁させ、種結晶として加えた後、該懸濁液の容器をn-ヘプタン(0.5L)で洗浄し、洗浄液を加えた。1時間撹拌し、結晶の析出を確認した後,n-ヘプタン(56kg)を加え、晶析液を内温33℃に昇温した。内温30℃以上で30分以上撹拌した後、外温15℃まで冷却し、内温25℃以下で30分以上撹拌した。続いて、n-ヘプタン(56kg)を加え、1時間以上撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、湿性粉末をn-ヘプタン(67kg)で2回洗浄した。湿性粉末を減圧下、外温40℃で乾燥し、標題化合物(36.7kg)を得た(収率89%)。
【0194】
HPLC純度:99.92%。
測定条件:HPLC 方法A、保持時間 9.4分。
1H-NMR(CDCl3)δ:16.60(1H,s),12.82(1H,s),11.40(1H,brs),9.60(1H,s),8.49(1H,d,J=8.6Hz),7.95(1H,s),7.90(1H,d,J=1.5Hz),7.79(1H,dd,J=8.6,1.5Hz),7.75(2H,d,J=8.0Hz),7.16(2H,d,J=8.0Hz),7.06(1H,dd,J=7.6,7.7Hz),6.73(1H,dd,J=7.6,7.8),5.05(1H,d,J=14.3Hz),4.56(2H,m),4.21(1H,d,J=14.3Hz),3.86(2H,m),3.80(1H,m),3.60(1H,m),3.54(1H,m),3.40(1H,m),3.36(3H,s),3.08(3H,d,J=4.3Hz),2.48(3H,s),2.35(3H,s),2.16(1H,m),1.74(2H,m),1.57(1H,m),1.53(1H,m),1.48(2H,m),1.31(1H,m)。
【0195】
(実施例7)
7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド p-トルエンスルホン酸塩の製造
7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド(311.6mg)にp-トルエンスルホン酸エタノール溶液(0.5M、0.935mL)を加え、60℃で溶解させた。その後、室温にて撹拌しながら、種結晶を添加すると、30分後に多くの結晶の析出が認められた。24時間後、得られた結晶を濾取し、湿性粉末の粉末X線回折測定を実施した。測定結果を
図2に示す。さらに1時間室温にて放置後、乾燥粉末の粉末X線回折測定を実施した。後者の粉末は既知の結晶形と同じものであるが、前者は異なる粉末X線回折パターンを示しており、乾燥工程にて速やかに結晶転移が生じることが確認された。収量は298.0mgであった。
【0196】
図2の粉末X線回折パターンは、下から順に、文献(非特許文献10、技報番号2017-501666)に記載の方法(酢酸エチルを用いて取得)で得た結晶、前記文献に記載の方法(アセトンを用いて取得)で得た結晶、実施例7で得た湿性粉末、実施例7で得た乾燥粉末の、それぞれ粉末X線回折パターンを示す。
【0197】
湿性粉末の2θ値:3.7°、5.0°、7.4°、7.9°、14.8°、および18.4°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
乾燥粉末の2θ値:4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.9°、18.9°、および22.7°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
【0198】
実施例7の乾燥粉末の熱重量分析を行い、測定結果を
図3に示す。112.6℃(外挿点)および126.6℃(ピークトップ)に融解に起因するピークを示した。
【0199】
(実施例8)
7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキ
サミド p-トルエンスルホン酸塩の製造
7-[[2,3-ジフルオロ-4-[2-[2-メトキシエチル(メチル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-10-ヒドロキシ-6-メチル-8-オキソ-N-[4-(トリフルオロメチル)-2-[6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]フェニル]-6,7-ジアザスピロ[4,5]デカ-9-エン-9-カルボキサミド(311.9mg)に、p-トルエンスルホン酸エタノール溶液(0.5M、0.936mL)を加え、60℃で溶解させた。その後、室温にて撹拌しながら、種結晶とn-ヘプタン(0.936mL)を添加すると、30分後に多くの結晶の析出が認められた。さらにn-ヘプタン(1.871mL)を添加し24時間後、得られた結晶を濾取し、湿性粉末の粉末X線回折測定を実施した。さらに1時間室温にて放置後、乾燥粉末のX線回折測定を実施した。測定結果を
図4に示す。乾燥粉末の粉末X線回折パターンは、1型結晶と同じものであるが、湿性粉末の粉末X線回折パターンは、乾燥粉末とは異なる粉末X線回折パターンを示しており、乾燥工程にて速やかに結晶の相転移が生じることが確認された。収量は257.1mgであった。
【0200】
図4の粉末X線回折パターンは、下から順に、文献(非特許文献10、技報番号2017-501666)に記載の方法(酢酸エチルを用いて取得)で得た結晶、前記文献に記載の方法(アセトンを用いて取得)で得た結晶、実施例8で得た湿性粉末、実施例8で得た乾燥粉末の、それぞれ粉末X線回折パターンを示した。
【0201】
湿性粉末の2θ値:3.7°、4.9°、7.3°、7.7°、14.2°、および18.7°(±0.2°)に回折ピークを有していた。乾燥粉末の2θ値:4.9°、9.4°、9.9°、15.2°、15.9°、18.9°、および22.6°(±0.2°)に回折ピークを有していた。
【0202】
実施例8の乾燥粉末の熱重量分析を行った。分析結果を
図5に示す。
119.6℃(外挿点)および130.2℃(ピークトップ)に融解に起因するピークを示した。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明は、医薬品の有効成分として有用な、7-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-10-ヒドロキシ-6-メチル-N-(4-メチル-2-(6-メチルピリミジン-4-イル)フェニル)-8-オキソ-6,7-ジアザスピロ[4.5]デカ-9-エン-9-カルボキサミドのp-トルエンスルホン酸塩の製造法を提供するものである。本発明の製造方法を用いることにより、7-(2,3-ジフルオロ-4-(2-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)エトキシ)ベンジル)-10-ヒドロキシ-6-メチル-N-(4-メチル-2-(6-メチルピリミジン-4-イル)フェニル)-8-オキソ-6,7-ジアザスピロ[4.5]デカ-9-エン-9-カルボキサミドのp-トルエンスルホン酸塩を効率よく製造し、供給することができる。